抗血栓性コーティングを備えたセンサー
本発明の実施形態は、ヘパリンベンザルコニウム抗血栓性コーティングを含む分析物センサー及び分析物センサーをコーティングする方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によりその開示が明示的に本明細書に組み込まれ、かつ明示的に本願の一部となる2009年9月30日付で提出された米国仮特許出願第61/247,500号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明の実施形態は、広義には、血管内グルコースセンサー等の血液に接触する表面を有する医療機器(medical device)用の抗血栓性コーティング、そのようなコーティングの形成方法、及びそのようにして形成された医療機器に関する。
【背景技術】
【0003】
患者の血糖値を連続的又はほぼ連続的にモニタリングすることによって血糖コントロールの実現が容易になる。そのようなモニタリングを実現する方法の1つでは、植え込まれたグルコースセンサーを使用する。例えば、光学グルコースセンサー、例えば特許文献1〜13及び同時係属中の特許文献14〜18(それぞれの全体を参照により本明細書に援用する)に開示されているものを患者の脈管系の中に配置して、グルコースを連続的に又は必要に応じて記録することができる。当然ながら、あらゆる留置血管内グルコースセンサーが、血糖コントロールを実現するためのグルコースのモニタリングに潜在的に使用可能である。
【0004】
患者の脈管系中に血管内グルコースセンサー等の異物が存在すると、センサー周辺で血餅(blood clot)又は血栓(thrombus)が形成され得る。場合によっては、血栓により血管の血流が制限され、センサーの機能性及び/又は患者の健康が損なわれることがある。場合によっては、血栓が離れて、血流を介して心臓、脳等の体の別の部分に移動することがあり、それにより重度の健康上の問題が生じ得る。したがって、センサー上又はセンサーの近くでの血栓形成を最小限に抑えることが望ましい。
【0005】
手術中及び介入手技中における血栓形成の防止及び凝固障害の処置のための静脈内抗凝固剤として、数十年前からヘパリンが臨床的に使用されている。ステント、プロステーシス、カテーテル、管、血液保存容器等の医療機器の外表面をヘパリン又はヘパリン含有複合体(例えばShah, et al.に付与された特許文献19参照)でコーティングすると、(1)フィブリン(これは血栓を保持する)形成に必須の酵素の阻害、(2)デバイス表面上での望ましくない反応の原因となり得る血液タンパク質の吸着低減、並びに(3)血栓形成において重要な役割を果たす血小板の接着及び活性化の低減、により、デバイスが血液に接触した時のデバイスの血栓形成性(thrombogenecity)が低減し得る。理想的には、ヘパリンコーティングがその下の医療機器の表面から血液を実質的に遮蔽し、その結果、血液成分がデバイス表面ではなくヘパリンコーティングに接触するため、血栓又は塞栓(放出されて下流に移動する血餅)の形成が低減する。
【0006】
残念ながら、デバイスの表面材料によっては、ヘパリンでは持続的及び/又は連続的な抗血栓性コーティングが得られないことがある。ヘパリンコーティングの完全性を向上させるために種々の戦略が採られてきた。例えば、ヘパリンをデバイス表面に共有結合させてコーティングの有効寿命を延長させるために光活性化カップリング法(photo−activated coupling method)を用いることができる(例えば非特許文献1のSurmodicsのPHOTOLINK(登録商標)プロセス参照)。あるいは、特定の材料、例えばPVCには、PVC表面から離間してヘパリン分子を配置す
るために、とりわけトリドデシルメチル塩化アンモニウム(TDMAC)及びPEO−ポリエチレンオキシド等のリンカーが用いられてきた(例えばCrouther et al.に付与された特許文献20参照)。ヘパリンをポリペプチドに架橋して、ペプチド特異的機能を有する抗血栓性ヒドロゲルを作製することができる(例えば、創傷治癒機能を開示しているLamberti, et al.に付与された特許文献21参照)。ヘパリンの誘導体又は複合体、例えばヘパリン塩化ベンザルコニウム(以降、「HBAC」)も医療機器の抗血栓性コーティングとして応用されてきた。しかし、HBACの使用は、血中分析物がコーティングを介して通過する必要がある血管内分析物センサー等のデバイスでは成功していない。更に、Hsu(特許文献22)は、血液ガスセンサーをコーティングするための種々のヘパリン複合体の使用を開示しており、ベンザルコニウムヘパリン複合体がそのような血管内センサーには不適であると記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,137,033号
【特許文献2】米国特許第5,512,246号
【特許文献3】米国特許第5,503,770号
【特許文献4】米国特許第6,627,177号
【特許文献5】米国特許第7,417,164号
【特許文献6】米国特許第7,470,420号
【特許文献7】米国特許公開第2006/0083688号
【特許文献8】米国特許公開第2008/0188722号
【特許文献9】米国特許公開第2008/0188725号
【特許文献10】米国特許公開第2008/0187655号
【特許文献11】米国特許公開第2008/0305009号
【特許文献12】米国特許公開第2009/0018426号
【特許文献13】米国特許公開第2009/0018418号
【特許文献14】米国特許出願第11/296,898号
【特許文献15】米国特許出願第12/187,248号
【特許文献16】米国特許出願第12/172,059号
【特許文献17】米国特許出願第12/274,617号
【特許文献18】米国特許出願第61/045,887号
【特許文献19】米国再発行特許第RE39,438号
【特許文献20】米国特許第5,441,759号
【特許文献21】米国特許第7,303,814号
【特許文献22】米国特許第5,047,020号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】www.surmodics.com/technologies-surface-biocompatibility-heparin.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、抗血栓性コーティング及び血管内分析物センサー、特にグルコースセンサーにそのようなコーティングを施すための方法に対する満たされていない重要なニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、細長部材(elongate member);細長部材の遠位部分に沿って配置された分析物反応性指示薬であって、血管中の分析物の濃度に関連した
シグナルを発生できる、指示薬;細長部材の遠位部分に沿った少なくとも指示薬を覆う多孔質膜;並びに多孔質膜の少なくとも一部に安定的に結合したヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティング、を含む、分析物センサーに関する。
【0011】
分析物センサーの好ましい実施形態では、細長部材は、光路を含む光ファイバーを含む。分析物反応性指示薬は、好ましくは、分析物結合部分に作動可能に連結されたフルオロフォアを含み、分析物の結合によってフルオロフォアの発光強度が変化し、分析物反応性指示薬は光ファイバーの光路内に配置されている。より好ましくは、フルオロフォアはHPTS−トリCysMAであり、結合部分は3,3’−oBBVである。
【0012】
特定の実施形態では、多孔質膜はマイクロ多孔質膜である。マイクロ多孔質膜には、ポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリカーボナート、及びポリスルホンからなる群から選択される1又は複数のポリマーが含まれ得る。より好ましくは、マイクロ多孔質膜には少なくとも1つのフルオロポリマーが含まれる。少なくとも1つのフルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシポリマー、フッ化エチレン−プロピレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロエラストマー、及びフルオロエラストマーからなる群から選択され得る。
【0013】
分析物センサーの別の実施形態では、マイクロ多孔質膜は少なくとも1つのポリオレフィンを含む。ポリオレフィンは好ましくはポリエチレンである。
【0014】
本発明の別の実施形態に係る平衡血管内分析物センサーを開示する。平衡血管内分析物センサーは以下を含む:血管内に配置されるように構成され、且つ光路及び外表面を含む光ファイバー;分析物結合部分に作動可能に連結されたフルオロフォアを含み、フルオロフォア及び分析物結合部分が非水溶性有機ポリマー内に固定されており、光ファイバーの遠位部分に沿った光路内に配置されている、化学指示薬系;並びに中に配置された化学指示薬系を覆い、光ファイバーの外表面の少なくとも一部上にあり、外表面に共有結合で架橋されたヘパリンを含む、抗血栓性の分析物透過コーティング。
【0015】
フルオロフォアは好ましくはHPTS−トリCysMAであり、結合部分は好ましくは3,3’−oBBVである。
【0016】
平衡血管内分析物センサーは、化学指示薬系と抗血栓性コーティングとの間に配置された多孔質の分析物透過膜を更に含んでもよい。
【0017】
本発明の別の実施形態に係る、分析物センサーの血栓形成性を低減する方法を開示する。方法は以下の工程を含む:光路を規定する細長光ファイバーと、光路内で光ファイバーの遠位領域に沿って配置された平衡蛍光化学指示薬系と、遠位領域の少なくとも一部の外層を形成する分析物透過多孔質膜と、を含み、指示薬系が多孔質膜によって覆われている、分析物センサーを用意する工程;分析物センサーを、ヘパリンとベンザルコニウムとの混合物を含む単一溶液に又は別個のヘパリンを含む第1の溶液及びベンザルコニウムを含む第2の溶液に接触させる工程;分析物センサーを乾燥させる工程;並びに接触工程及び乾燥工程を2〜10回繰り返す工程。
【0018】
方法の好ましい実施形態では、平衡蛍光化学指示薬系は、非水溶性有機ポリマー内に固定されたフルオロフォア及び分析物結合部分を含む。フルオロフォアはHPTS−トリCysMAであってよく、結合部分は3,3’−oBBVであってよく、非水溶性有機ポリマーはDMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)ヒドロゲルマトリックスであってよ
い。
【0019】
本発明の別の実施形態では、分析物センサーの血栓形成性を低減する方法が開示される。方法は以下の工程を含む:分析物センサーを用意する工程であって、分析物センサーが、光路を規定する細長光ファイバーと、光路内で光ファイバーの遠位領域に沿って配置された平衡蛍光化学指示薬系と、遠位領域の少なくとも一部を覆う外表面を形成する分析物透過性多孔質膜とを含み、指示薬系が多孔質膜で覆われている分析物センサーである、工程;光活性化可能な化学的連結剤(linking agent)及び抗血栓性分子を用意する工程であって、連結剤が、活性化後に、外表面及び抗血栓性分子に共有結合でき、連結剤が、2以上の光反応性基及び1以上の荷電基を含む荷電された2官能性以上の光活性化可能な非ポリマー性化合物を含む、工程;及び2以上の光反応性基を活性化することにより抗血栓性分子を外表面に架橋する工程。
【0020】
平衡蛍光化学指示薬系は、非水溶性有機ポリマー内に固定されたフルオロフォア及び分析物結合部分を含むことが好ましい。方法の特定の好ましい実施形態では、フルオロフォアはHPTS−トリCysMAであり、結合部分は3,3’−oBBVであり、及び非水溶性有機ポリマーはDMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)ヒドロゲルマトリックスである。
【0021】
方法の特定の好ましい実施形態では、多孔質膜はマイクロ多孔質ポリエチレンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】多孔質膜の下の光ファイバー及びヒドロゲルが見えるように多孔質膜のシースを切り取った、センサーの破断図である。
【図2】光ファイバーの遠位にヒドロゲルが配置されているセンサーの長手軸に沿った断面図である。
【図3A】螺旋状の(helical)形態を形成する一連の孔を有するグルコースセンサーを示す図である。
【図3B】角度をもって開けられた又は形成された一連の孔を有するグルコースセンサーを示す図である。
【図3C】つる巻状の(spiral)溝を少なくとも1つ有するグルコースセンサーを示す図である。
【図3D】一連の三角形くさび形切抜きを有するグルコースセンサーを示す図である。
【図4】センサーの遠位部分に空洞を有するグルコースセンサーの一実施形態の断面図である。
【図5】2個の励起光源並びにマイクロ分光計及び/又は分光計を含むグルコース測定系を示す図である。
【図6A】光学グルコースセンサーの代替的実施形態を示す図であり、光学センサーが管状メッシュ(図6A)又はコイル(図6B)で囲まれており、これが開口窓を有するポリマー材料で更に囲まれている。
【図6B】光学グルコースセンサーの代替的実施形態を示す図であり、光学センサーが管状メッシュ(図6A)又はコイル(図6B)で囲まれており、これが開口窓を有するポリマー材料で更に囲まれている。
【図7A】センサーのマイクロ多孔質膜部分へのヘパリンベンザルコニウムコーティングの接着を示す図である。
【図7B】センサーの非多孔質前駆体部分へのヘパリンベンザルコニウムコーティングの接着を示す図である。
【図8】ヘパリン浸漬を行ったグルコースセンサーのヘパリン活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明及び例は本発明の好ましい実施形態を詳細に記載するものである。当業者には、この範囲内に含まれる本発明の多数のバリエーション及び改変例があることが理解されるであろう。したがって、好ましい実施形態の説明は、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0024】
本明細書に開示されている種々の実施形態は、全般的には、生体内配置用に構成された分析物センサー(例えば血管内、組織内等)、好ましくはグルコースセンサーに関し、センサーは抗血栓性の外表面、好ましくはコーティングを更に含む。センサーをコーティングして抗血栓性外表面を作製する方法も開示される。当然、グルコースに加えて他の分析物を検出するための血管内センサーにも、例えばセンサー周辺での血餅又は血栓の形成を低減、阻害、及び/又は防止する本発明の態様は有用であり得る。
【0025】
定義
特に断りのない限り、本明細書中で使用される科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味で使用される。本発明のために、以下の用語を定義する。
【0026】
本発明において、「多孔質(Porous)」とは、材料中を化学種が透過可能な細孔(pore)を中に有する材料を指して使用される。材料は、材料の平均細孔径が約2nm未満であることを意味する「ナノ多孔質」であり得る。材料は、材料の平均細孔径が約2nm〜約50nmであることを意味する「マイクロ多孔質」であり得る。材料は、材料の平均細孔径が約50nmを超えることを意味する「メソ多孔質」であり得る。更に、材料は、一部の化学種だけを通過させ、他の材料の通過は防止又は阻害する、半透性であってもよい。
【0027】
本発明において、「ポリオレフィン」とは、オレフィンから作製されるポリマーを指し、コポリマーを含む。2つの主な例はポリエチレン及びポリプロピレンである。これらは多くの異なるグレードで入手可能であり、グレードは分子量又は密度で記載されることが多い。炭素が2個又は3個より長い鎖のモノマーに由来するポリマーも含まれる。
【0028】
本発明において、「フルオロポリマー」とは、塩素原子及び/又はフッ素原子を含有するポリマーを指す。例としては、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシポリマー、フッ化エチレン−プロピレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロエラストマー、及びフルオロエラストマーが含まれる。これらの材料は剛性(rigid)であってもよく、弾性(elastomeric)であってもよい。商標としては、TEFLON、TEFZEL、FLUON、TEDLAR、HALAR、KYNAR、KEL−F、CTFE、KALREZ、TECNOFLON、FFKM、VITON、FOMBLIN、及びGALDENが含まれる。
【0029】
本発明において、「ポリカーボナート」とは、炭酸基で連結された官能基を有するポリマーを指す。商標としては、LEXAN、CALIBRE、MAKROLON、PANLITE、及びMAKROLIFEが含まれる。
【0030】
本発明において、「ポリスルホン」とは、スルホン又はスルホニル基を含有するポリマーを指し、このポリマーは多くの場合サブユニット(アリール1)−SO2−(アリール2)から構成される。
【0031】
本発明において、「ヘパリン」とは、抗凝固特性及び/又は抗血栓特性を有する多糖材料を含み、多くの場合、グリコシド結合により結合されたD−グリコシアミン(D−glycocyamine)(N−硫酸化又はN−アセチル化)及びウラン酸(硫酸基の異なるL−イズロン酸又はD−グルクロン酸)の交互誘導体を含むもの又はD−グルコサミンとL−イズロン酸又はD−グルクロン酸との反復単位で構成される硫酸化の程度が様々な多糖鎖の異種混合物を含むものを意味する。ヘパリンは、ウシ又はブタの粘膜組織(例えば肺又は腸)等の天然源(natural source)に由来し得、種々の分子量を有し得る。
【0032】
本発明において、「塩化ベンザルコニウム」とは、以下の構造で表されるような、窒素に結合したベンジル及び3個のR基を主に有する第四級アンモニウム化合物並びに第四級アンモニウム化合物の混合物のハロゲン塩を指す。
【0033】
【化1】
【0034】
式中、R1は、炭素数約1〜約5のアルキル基であり、R2は、炭素数約1〜約5のアルキル基であり、R3は、炭素数約6〜約22のアルキル基であり、X-は、ハロゲン対イオンである。「塩化(物)(chloride)」という語の使用は原子番号17の特定のハロゲン対イオンを指すが、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の任意のハロゲン対イオンが本発明の態様で使用され得、最も一般的に使用される対イオンは塩化物である。更に、本発明において、「ベンザルコニウム」は、第四級アンモニウム化合物自体を指す。したがって、ハロゲン塩「塩化ベンザルコニウム」は、「ベンザルコニウム」及び塩化物対イオンを含む。本発明において、「HBAC」とは、ヘパリンと塩化ベンザルコニウムの複合体を指す。種々のグレード及び分子量のヘパリンが使用され得る。種々のグレードの塩化ベンザルコニウム及びR基の鎖長が様々なベンザルコニウムイオンの別の塩も使用することができ、これらは、精製された形態であってもよく、混合物の形態であってもよく、あるいは別の関連する化合物又は無関係の化合物と組み合わされてもよい。
【0035】
分析物センサー
抗血栓性表面を有するコーティングに適した分析物センサーとしては、センサーの少なくとも一部にポリマー外面を有する分析物センサーが含まれる。好ましくは、センサーのこの部分は、生体内配置、より好ましくは血管内配置用に構成されている。外面の一部として用いることができるポリマー材料としては、ポリオレフィン(例えばポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリカーボナート、ポリスルホン、フルオロカーボン等の疎水性ポリマーが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリマー材料はナノ多孔質であり得る。いくつかの実施形態では、ポリマー材料はマイクロ多孔質であり得る。特定のそのような実施形態では、平均細孔径は約2nm〜約10nm、約10nm〜約20nm、約20nm〜30nm、約30nm〜約40nm、又は約40nm〜約50nmであり得、上記範囲の組合せも含まれる。したがって、例えば特定の実施形態では、平均細孔径は、約10nm〜約30nm又は約20nm〜約40nmであり得る。別の実施形態では、ポリマー材料はメソ多孔質であり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、多孔質ポリマー表面は、センサー本体の少なくとも一部の被覆又はシースとなり得る。ポリマー表面が被覆又はシースである場合、これは任意の好適な方法により作製及び/又は塗布され得る。センサーは、センサーに用いる感知化学/技術に適するようにさまざまに構築され得る。一実施形態では、分析物濃度に関連した蛍光反応を生じるセンサー等の光センサーが、センサーアセンブリーの少なくとも一部に多孔質ポリマー外表面を有し得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、センサーは、不溶性ポリマーマトリックスを含み得、これは分析物感受性の化学指示薬系を固定し、目的の分析物に十分に透過性である。好適なポリマーマトリックス材料としてはアクリルポリマーに関連するものが含まれる。いくつかの実施形態では、フルオロフォア及び/又はバインダー/クエンチャーをポリマーマトリックス中に含めてもよい(例えば、米国特許第6,627,177号、同第7,470,420号、及び同第7,417,164号参照;これらぞれぞれの全体を参照により本明細書に援用する)。
【0038】
例えば米国特許公開第2008/0119704号、同第2008/0197024号、同第2008/0200788号、同第2008/0200789号、及び同第2008/0200791号に開示されている電気化学的センサー等の任意のその他の血管内グルコースセンサーが本発明の実施形態に従って用いられ得る。
【0039】
グルコースセンサーの好ましい実施形態は、患者の体内に植え込むための構成をしている。例えば、センサーの植込みは、血中グルコースレベルを直接調べるために動脈系又は静脈系になされ得る。植込み部位は、センサーの特定の形状、構成要素、及び構成に影響し得る。いくつかの実施形態では、センサーは間質(interstitial)配置用の構成であり得る。
【0040】
血管内グルコースモニタリングのための、グルコースを感知する化学指示薬系及びグルコースセンサー構成の例としては、米国特許第5,137,033号、同第5,512,246号、同第5,503,770号、同第6,627,177号、同第7,417,164号、及び同第7,470,420号、及び米国特許公開第2008/0188722号、同第2008/0188725号、同第2008/0187655号、同第2008/0305009号、同第2009/0018426号、同第2009/0018418号、及び同時係属中の米国特許出願第11/296,898号、同第12/187,248号、同第12/172,059号、同第12/274,617号、及び同第12/424,902号(これらそれぞれの全体を参照により本明細書に援用する)に開示されている光センサーが含まれる。
【0041】
血管内配置用に構成された他のグルコースセンサーとしては、電気化学的センサー、例えば米国特許公開第2008/0119704号、同第2008/0197024号、同第2008/0200788号、同第2008/0200789号、及び同第2008/0200791号(これらそれぞれの全体を参照により本明細書に援用する)に開示されているものが含まれる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態に係る光学グルコースセンサーは、化学指示薬系を含む。いくつかの有用な指示薬系は、分析物結合部分に作動可能に結合されたフルオロフォアを含み、分析物の結合によりフルオロフォア濃度の目に見える光学的変化(例えば発光強度)が生じる。例えば、HPTS−トリCysMA等の蛍光色素に作動可能に結合された3,3’−oBBV等のグルコース結合部分は、蛍光色素の発光強度をクエンチングし、クエンチングの程度は、グルコースの結合で弱まり、その結果、グルコース濃度に関連する発光強度が増加する。別の好ましい実施形態では、指示薬系は更に、感知部分(例えば色素
クエンチャー)を固定する手段を含み、その結果、それらは互いに反応(クエンチング)するのに十分な物理的近接が維持される。そのような固定手段は、好ましくは、水性環境(例えば血管内)で不溶性であり、標的分析物に対して透過性であり、感知部分に対して不透過性である。典型的には、固定手段は、非水溶性有機ポリマーマトリックスを含む。例えば、HPTS−トリCysMA色素及び3,3’−oBBVクエンチャーは、DMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)ヒドロゲルマトリックス内に効果的に固定され得る。
【0043】
いくつかの好ましいフルオロフォア(例えば、HPTS−トリCysMA)、クエンチャー/分析物結合部分(例えば、3,3’−oBBV)、及び固定手段(例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド)、並びにそのような指示薬系を合成及び構築する方法の更に詳細な説明は、米国特許第6,627,177号、同第7,417,164号、及び同第7,470,420号、並びに米国特許公開第2008/0188722号、同第2008/0188725号、同第2008/0187655号、同第2008/0305009号、同第2009/0018426号、同第2009/0018418号、並びに同時係属中の米国特許出願第12/187,248号、同第12/172,059号、同第12/274,617号、及び同第12/424,902号に記載されている。
【0044】
その他の指示薬化学物質、例えばGray et al.に付与された米国特許第5,176,882号及びRussellに付与された同第5,137,833号に開示されているものも、本発明の実施形態に従って使用することができる(両方の文献の全体を参照により本明細書に援用する)。いくつかの実施形態では、指示薬系は、米国特許第6,197,534号、同第6,227,627号、同第6,521,447号、同第6,855,556号、同第7,064,103号、同第7,316,909号、同第7,326,538号、同第7,345,160号、及び同第7,496,392号、米国特許出願公開第2003/0232383号、同第2005/0059097号、同第2005/0282225号、同第2009/0104714号、同第2008/0311675号、同第2008/0261255号、同第2007/0136825号、同第2007/0207498号、及び同第2009/0048430号、並びにPCT国際公開第2009/021052号、同第2009/036070号、同第2009/021026号、同第2009/021039号、同第2003/060464号、及び同第2008/072338号(これらの全体を参照により本明細書に援用する)に開示されている指示薬系やグルコース結合タンパク質等のフルオロフォアに作動可能に結合した分析物結合タンパク質を含み得る。
【0045】
図1は、本発明の実施形態に係るセンサー2を示す図である。センサーは、多孔質膜シース14中に配置された遠位端12を有する光ファイバー10を含む。光ファイバー10は、光ファイバー壁中に孔6A等の空洞を有し、これは例えば穴開け(drilling)又は切断(cutting)等の機械的手段により形成することができる。光ファイバー10中の孔6Aにはポリマー等の好適な化合物が充填されている。いくつかの実施形態では、ポリマーはヒドロゲル8である。センサー2の別の実施形態では、図2に示すように、光ファイバー10は、孔6Aを有さず、代わりに、光ファイバー10の遠位端12の遠位側及びミラー23の近位側の空間にヒドロゲル8が配置されている。いくつかの実施形態では、センサー2はグルコースセンサーである。いくつかの実施形態では、グルコースセンサーは血管内グルコースセンサーである。
【0046】
いくつかの実施形態では、多孔質膜シース14は、ポリエチレン、ポリカーボナート、ポリスルホン、ポリプロピレン等のポリマー材料から作製され得る。他の材料、例えばゼオライト、セラミックス、金属、又はこれらの材料の組合せを用いて多孔質膜シース14を作製することもできる。いくつかの実施形態では、多孔質膜シース14はナノ多孔質で
あり得る。別の実施形態では、多孔質膜シース14はマイクロ多孔質であり得る。更に別の実施形態では、多孔質膜シース14はメソ多孔質であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、図2に示すように、多孔質膜シース14はコネクター16によって光ファイバー10に取り付けられている。例えば、コネクター16は、図2に示すように、光ファイバー10に圧縮力を印加することにより多孔質膜シース14を所定の位置に保持する弾性カラー(collar)であり得る。別の実施形態では、コネクター16は接着剤(adhesive)又は熱溶接物である。
【0048】
いくつかの実施形態では、図1に示すように、光ファイバー10の遠位端12の遠位側の多孔質膜シース14内にミラー23及びサーミスター25が配置され得る。光ファイバー10と多孔質膜シース14の間の空間にサーミスターリード27を通すことができる。サーミスター25を示しているが、例えば電熱対、圧力トランスデューサー、酸素センサー、二酸化炭素センサー、pHセンサー等の他のデバイスを代わりに使用することもできる。
【0049】
いくつかの実施形態では、図2に示すように、多孔質膜シース14の遠位端18は開いており、例えば接着剤20で密封(seal)することができる。いくつかの実施形態では、接着剤20は、遠位端18を満たした後に重合させて栓にすることができる重合可能材料を含み得る。あるいは、別の実施形態では、遠位端18は、遠位端18上でポリマー材料の一部を溶融させ、開口部を閉じ、溶融ポリマー材料を再度固化させることにより、熱溶接され得る。図1に示すように、別の実施形態では、ポリマー栓21を遠位端18に挿入し、加熱して、多孔質膜シース14に栓を溶接することができる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボナート、ポリスルホン等の熱可塑性ポリマー材料が特に熱溶接に適している。別の実施形態では、多孔質膜シース14の遠位端18は光ファイバー10に対して密封されてもよい。
【0050】
多孔質膜シース14を光ファイバー10に取り付け、多孔質膜シース14の遠位端18を密封した後、センサー2に、モノマーと、架橋剤と、第1の開始剤とを含む第1の溶液を真空充填してよい。センサー中の空洞中への多孔質膜を介した重合可能溶液の真空充填の詳細は、その全体を参照により本明細書に援用するMarkle et al.に付与された米国特許第5,618,587号に記載されている。第1の溶液で光ファイバー10内の空洞6を満たすことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の溶液は水性であり、モノマー、架橋剤、及び第1の開始剤は水溶性である。例えば、いくつかの実施形態では、モノマーはアクリルアミドであり、架橋剤はビスアクリルアミドであり、第1の開始剤は過硫酸アンモニウムである。別の実施形態では、モノマーは、ジメチルアクリルアミド又はN−ヒドロキシメチルアクリルアミドである。モノマー及び/又は架橋剤の濃度を高くすることで、得られるゲルの多孔度を下げることができる。逆に、モノマー及び/又は架橋剤の濃度を低くすることで、得られるゲルの多孔度を上げることができる。他の種類のモノマー及び架橋剤も想定される。別の実施形態では、第1の溶液は更に、フルオロフォアと分析物結合部分とを含む分析物指示薬系を含み、分析物結合部分は、分析物の濃度に関連した量だけフルオロフォアの蛍光発光をクエンチングするように機能する。いくつかの実施形態では、フルオロフォア及び分析物結合部分は、重合中に固定され、その結果、フルオロフォアと分析物結合部分が作動可能に連結される。別の実施形態では、フルオロフォア及び分析物結合部分は共有結合している。指示薬系化学物質はポリマーマトリックスにも共有結合されていてよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、センサー2に第1の溶液を充填した後、光ファイバー10並
びに第1の溶液が充填された多孔質膜シース14及び空洞6を、第2の開始剤を含む第2の溶液へと移し、浸漬する。いくつかの実施形態では、第2の溶液は水性であり、第2の開始剤はテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)である。いくつかの実施形態では、第2の溶液は更に、第1の溶液と同じ蛍光色素及び/又はクエンチャーをほぼ同じ濃度で含む。第1の溶液及び第2の溶液で蛍光色素及びクエンチャーを同じにすることで、第1の溶液から第2の溶液への蛍光色素及びクエンチャーの拡散を低減することができる。第2の溶液を用いるいくつかの実施形態では、第2の溶液は更に、第1の溶液とほぼ同じ濃度のモノマーを含む。これにより、第1の溶液と第2の溶液の間のモノマー勾配が低減されることにより、第1の溶液からのモノマーの拡散が低減される。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1の溶液と第2の溶液の間の界面で、又はほぼ界面で、第1の開始剤及び第2の開始剤が一緒に反応してラジカルが生成し得る。いくつかの実施形態では、第1の開始剤及び第2の開始剤は酸化還元反応中で一緒に反応する。別の実施形態では、熱分解、光分解による開始(photolytic initiation)、又は電離放射線による開始によりラジカルが生成し得る。これらの別の実施形態では、第1の溶液中のどこかでラジカルが生成し得る。ラジカルが生成すると、その後、ラジカルが第1の溶液中のモノマーと架橋剤の重合を開始させ得る。
【0054】
本明細書に記載されているように、酸化還元反応を介してラジカルが生成する場合、通常、第1の溶液と第2の溶液の間の界面から多孔質膜シース14の内側へ、そして光ファイバー10中の空洞に向かって、重合が進行する。重合を急速に開始させることは、第1の溶液から第2の溶液へと拡散し得る第1の開始剤の量を減らす助けとなり得る。第1の溶液から拡散する第1の開始剤の量を減らすことで、多孔質膜シース14の外側でのモノマー重合の低減が促進され、滑らかな外面形成が促進される。モノマー及び架橋剤の重合によりヒドロゲル8が得られ、これがいくつかの実施形態では指示薬系を実質的に固定し、センサー2が形成される。重合の方法論の更なるバリエーションは、その全体を参照により本明細書に援用する米国特許公開第2008/0187655号に開示されている。
【0055】
図3Aに関して、特定の実施形態では、グルコースセンサー2は、光ファイバーの側部にまっすぐ貫通して開けられた一連の孔6Aを有する中実の光ファイバーである。特定の実施形態では、孔6Aにヒドロゲル8が充填されている。特定の実施形態では、グルコースセンサー2を貫通して開けられた一連の孔6Aは、水平方向に均等に配置され、グルコースセンサー2の側面の周りを等間隔で周回しており、つる巻状又は螺旋状の(spiral又はhelical)形態を形成している。特定の実施形態では、一連の孔6Aは、グルコースセンサー2の直径を通して開けられている。図3Bに関して、特定の実施形態では、グルコースセンサー2は、ファイバーの側面に角度をもって貫通して開けられた一連の孔6Aを有する中実の光ファイバーである。特定の実施形態では、角度をもって開けられた一連の孔6Aは、ヒドロゲル8が充填されており、水平方向に均等に配置され、グルコースセンサー2の側面の周りを等間隔で周回している。図3Cに関して、特定の実施形態では、光ファイバーは、光ファイバーの長手方向に沿った溝6Bを含み、溝6Bにはヒドロゲル8が充填されている。特定の実施形態では、溝6Bの深さは光ファイバーの中心まで及ぶ。特定の実施形態では、溝6Bは光ファイバーの周りにつる巻状になる。特定の実施形態では、溝6Bは光ファイバーの周りにつる巻状になり、少なくとも1回、周回する。特定の実施形態では、溝6Bは光ファイバーの周りにつる巻状になり、光ファイバーを複数回、周回する。
【0056】
図3Dに関して、特定の実施形態では、グルコースセンサー2は、ファイバーから切り抜かれた三角形くさび形6Cを有する、中実の光ファイバーである。特定の実施形態では、三角形くさび形領域6Cにヒドロゲル8が充填されている。特定の実施形態では、三角形くさび形切抜き6Cは、水平方向及びグルコースセンサー2の側面の周りに等間隔に配置されている。特定の実施形態では、グルコースセンサー2中を移動する全ての光が、ヒドロゲル8を充填された少なくとも1つの孔6A又は溝6Bを介して伝えられる。
【0057】
特定の実施形態では、図4に示すように、グルコースセンサー2は、遠位端12を有する光ファイバー10、近位端136及び遠位端138を有する非侵襲性先端部分134、光ファイバー10の遠位端12と非侵襲性先端部分134の近位端136の間の空洞6、並びに光ファイバー10の遠位端12を非侵襲性先端部分134の近位端136に接続するロッド140を含む。グルコース感知化学物質(例えばフルオロフォア及びクエンチャー)を含むヒドロゲル8が空洞6を満たしている。ヒドロゲルが充填された空洞6の被覆は、ヒドロゲル8の中へ及びヒドロゲル8の外へグルコースを通過させる、選択的透過膜14である。これらの実施形態はグルコースセンサー2を用いて説明されているが、当業者には、例えば感知化学物質及び必要に応じて選択的透過膜14を変えることによって、他の分析物測定用にセンサー2を改変することができると理解されよう。センサー2の近位部分は光ファイバー10の近位部分を含む。いくつかの実施形態では、センサー2の遠位部分の直径D1は、センサー2の近位部分の直径D2より大きい。例えば、センサー2の遠位部分の直径D1は約0.0080インチ〜0.020インチであり得、一方、センサー2の近位部分の直径D2は約0.005インチ〜0.015インチであり得る。いくつかの実施形態では、センサー2の遠位部分の直径D1は約0.012インチであり、センサー2の近位部分の直径D2は約0.010インチである。
【0058】
いくつかの実施形態では、グルコースセンサー2は、熱電対、サーミスター等の温度センサー25を含む。温度センサー25は、ヒドロゲル8及びグルコース感知化学物質系の温度を測定することができる。温度センサー25は、フルオロフォア系等のグルコース感知化学物質が温度変化の影響を受ける場合に特に重要である。例えば、いくつかの実施形態では、フルオロフォア系が放出する蛍光強度はフルオロフォア系の温度に依存する。フルオロフォア系の温度を測定することにより、温度によって生じるフルオロフォア蛍光強度の変動を考慮することができ、以下に更に詳細に説明するように、グルコース濃度をより正確に測定することができる。
【0059】
特定の実施形態では、ヒドロゲルは、複数のフルオロフォア系に会合している。特定の実施形態では、フルオロフォア系はグルコースレセプター部位を有するクエンチャーを含む。特定の実施形態では、グルコースレセプターに結合するグルコースが存在しない場合、クエンチャーは、励起光によって色素が励起された時にフルオロフォア系の発光を防止する。特定の実施形態では、グルコ−スレセプターに結合するグルコースが存在する場合、クエンチャーは、励起光によって色素が励起された時にフルオロフォア系の発光ができるようにする。
【0060】
特定の実施形態では、フルオロフォア系によって生じる発光は溶液(例えば血液)のpHにより異なり、その結果、異なる励起波長(酸性型のフルオロフォアを励起する励起波長及び塩基性型のフルオロフォアを励起する励起波長)によって異なる発光シグナルが生じる。好ましい実施形態では、塩基性型のフルオロフォアからの発光シグナルに対する酸性型のフルオロフォアからの発光シグナルの割合は血液のpHレベルに関連する。グルコース及びpHの同時測定は米国特許公開第2008/0188722号に詳細に記載されている(その全体を参照により本明細書に援用する)。特定の実施形態では、干渉フィルターを用い、2つの励起光が一方の型(酸性型又は塩基性型)のフルオロフォアのみを励起するようにする。
【0061】
光学的感知系、光源、ハードウェア、フィルター、及び検出系のバリエーションは、その全体を参照により本明細書に援用する米国特許公開第2008/0188725号に詳細に記載されている。例えば、特定の実施形態が少なくとも2つの光源を含む図5を参照
されたい。特定の実施形態では、光源301A、301Bは、コリメーターレンズ302A、302Bを通して送られる励起光を発する。特定の実施形態では、コリメーターレンズ302A、302Bから得られる光は干渉フィルター303A、303Bに送られる。特定の実施形態では、干渉フィルター303A、303Bから得られる光は、集束レンズ304A、304Bにより光ファイバー線305A、305B中に集束される。特定の実施形態では、光ファイバー線は単繊維であってもよく、繊維束であってもよい。特定の実施形態では、光ファイバー線309は単繊維であってもよく、繊維束であってもよい。特定の実施形態では、光ファイバー線305A、305B、309はジャンクション306で束ねられ、グルコースセンサー307で接続される。グルコースセンサー307はヒドロゲル8を含む。
【0062】
特定の実施形態では、発光及び励起光はミラー13で光ファイバー線309へと反射される。特定の実施形態では、光ファイバー線309は、グルコース測定システム300中の光の全スペクトルを測定するマイクロ分光計310に接続されている。マイクロ分光計310は、データ処理モジュール311、例えばセンサー制御部及び/又は受光/ディスプレイ部に連結されてよい。特定の実施形態では、対応する励起光に対する発光の割合はグルコース濃度に関連する。特定の実施形態では、第2の励起光により生じる発光(例えば塩基性型)に対する第1の励起光により生じる発光(例えば酸性型)の割合は試験溶液(例えば血液)のpHレベルに関連する。
【0063】
特定の好ましい実施形態では、マイクロ分光計は、ベーリンガーインゲルハイム社(Boehringer Ingelheim)製のUV/VIS Microspectrometer Moduleである。任意のマイクロ分光計を使用することができる。あるいは、マイクロ分光計の代わりに別の分光計、例えばオーシャンオプティック社(Ocean Optic Inc.)製の分光計を使用することもできる。
【0064】
上記の特定の実施形態では、比率計算(ratiometric calculation)のために種々の光強度を測定する必要がある。特定の実施形態では、これらの測定値は、特定の波長又は波長域でのピーク振幅を測定することによって決定される。特定の実施形態では、これらの測定値は、例えばマイクロ分光計の出力のように、2つの特定の波長の間の曲線下面積を計算することによって決定される。
【0065】
図6A及び6Bに、血管内光学グルコースセンサーの別の実施形態が図解されている。このセンサー形態は、国際公開第2009/019470号(その全体を参照により本明細書に援用する)に更に詳細に開示されている。体に挿入されていることによる圧力に耐えることができる、より強く、より堅牢なセンサーを提供しつつ、いくらかの柔軟性を維持するために、図6A及び6Bに示されているような内部強化壁を有するセンサーが開発された。図6Aは、メッシュ501Aが高密度に詰められた管を示す図であり、メッシュ501Aは、第1の材料できており、第2の材料の外壁502でコーティングされている。管の外壁502中に線状に配列された3つの四角形の切抜き503が図6Aに見られるが、実施形態に応じて、他の形状、他の配置の切り抜きが可能であることは明らかである。図解されている実施形態では、メッシュ501Aは高密度のフィラメント交差を示している。したがって、この実施形態は強度が増大され、多孔度が低下している。管構造を柔軟にして感知位置を修正する操作を可能にしつつ、センサーに強度を与えるために、編まれた形状(braid)も可能である。
【0066】
図6Bは、第1の材料が第2の材料の外壁502でコーティングされたコイル501Bの形態である実施形態を示している。図6A同様、管の外壁502に線状に配置された3つの四角形の切抜き503が図6Bに見られるが、実施形態に応じて、他の形状、他の配置の切抜きが可能であることは明らかである。この実施形態では、コイル501Bが高密
度に詰められているので、図6Aに示す実施形態と同様に、強度が増大されており、多孔度が低下している。強化壁は、例えば、その全体を参照により本明細書に援用する国際公開第2004/054438号に記載されているように、感知装置を含む編まれた管構造を提供する等の複数の方法で提供することができる。
【0067】
第1の材料はメッシュ501Aの形態であり、得られる管の特性を調節するためにフィラメント交差の密度は変えることができる。例えば高密度のメッシュは強度がより強くなり得、低密度のメッシュは柔軟性がより大きくなり得る。メッシュ密度の変化はメッシュの多孔度も変化させる。このことは、メッシュの多孔度により、試験される材料の管中への拡散速度が調節されるため、外壁開口部の位置において重要である。コイルの密さ(tightness)を変えても同様な影響が生じ得る。
【0068】
中空管の連続的な実質的に不透過性の外壁502を形成するために、第2の材料を用いて第1の材料をコーティングする。本発明において、実質的に不透過性とは、第2の材料が、管の外側から管の内側への材料の進入に対して不透過性である事実上閉じた管を形成することを意味する。したがって、第2の材料の一部が除去されるまで、管は、いくつかの実施形態では末端を除いて、長手方向に沿って事実上密封されている。
【0069】
第2の材料としての使用に適した材料には一般的にポリマー材料が含まれ、より具体的にはポリエステル、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、フルオロポリマー、例えばフッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びパーフルオロアルコキシポリマー(PFA);ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド、例えばポリエーテルブロックアミド(PEBA)、Pebax(登録商標)、ナイロン、及びポリウレタンが含まれる。ポリエステル及びポリオレフィンがコイル501B又は管状メッシュ501Aに対する押出に適しているため好ましい。ポリエステル又はポリオレフィンコーティングの一部の例えばレーザーアブレーションによる選択的除去も簡単明瞭である。ポリオレフィンはレーザーによる除去が容易であるので、特に好ましい。
【0070】
第2の材料の一部を選択的に除去する前に連続的な実質的に不透過性の管を形成するために、第2の材料を用いて最初に、第1の材料で形成されたコイル又は管状メッシュをコーティングする。第2の材料で第1の材料の外表面をコーティングし、第1の材料で形成されたコイル又は管状メッシュの周りに連続的な実質的に不透過性の管を事実上形成してもよく、あるいは、第2の材料で第1の材料を完全に封入し、第1の材料で形成されたコイル又は管状メッシュが埋め込まれた第2の材料の管を事実上形成してもよい。一実施形態では、第1の材料で形成されたコイル又は管状メッシュをディップコーティングすることによって第2の材料を第1の材料に塗布することができる。この実施形態では、第2の材料はおそらくポリアミドであり、それにより非常に堅い管が得られる。別の実施形態では、第1の材料のコイル又は管状メッシュが周りに形成された第2の材料の管を提供することができる。次いで、第2の材料の更なる層を第1の材料の上に塗布することにより、第1の材料が第2の材料の2つの層で挟まれる。
【0071】
好ましい実施形態では、第1の材料は金属性であり、第2の材料はポリマー性である。第1及び第2の材料に加えて、更なる材料を本発明の管に含めることも可能である。例えば、いくつかの応用例では、管を含むセンサーを生体内で見ることができるように、放射線不透過性の添加物を含めることも有用であり得る。例えば、放射線不透過性添加物、例えば硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、及びタングステンを添加することができる。これらは、有する場合には、第2の材料内にドープされることが好ましい。
【0072】
特定のプロセスでは、外壁の領域に少なくとも1つの開口部を作製しつつその領域の第
1の材料を保持するために、第2の材料の一部を選択的に除去する。第1の材料はコイル又は管状メッシュの形態で存在するので、第1の材料は完全に閉じた管を形成していない。したがって、前記領域で第2の材料を除去する時、これは管の連続的な実質的に不透過性の壁に切れ目(break)を事実上形成する。第2の材料が単に第1の材料をコーティングしている場合、単純に、開口部を形成しようとする領域でこの第2の材料により提供されているコーティングを除去することが必要である。第2の材料が第1の材料を事実上封入(encapsulate)している場合、開口部を形成しようとしている領域の第1の材料を囲んで封入している第2の材料を全て除去することが必要である。
【0073】
好ましくは、センサーの化学指示薬系は、第2の材料の選択的除去によって形成される開口部に隣接して配置される。これにより、管壁上の開口部の領域の環境を感知することができる。例えばセンサーがグルコースセンサーである場合、グルコースが、センサーが挿入された場所の血管又は他の腔から、開口部を介して、プローブによってその存在を検出及び測定できる管中へと、通過することができる。
【0074】
外壁中の開口部のサイズは一般的に1〜400mm2、例えば25〜225mm2となる。開口部のサイズが小さすぎると、センサーが挿入される血液又は他の物質が開口部を通過することができないか、正確な測定を行うための十分な量が通過しなくなるため、開口部のサイズは小さ過ぎてはならない。また、開口部は、センサーを体内に挿入した時にプローブがわずかに動いた場合でもプローブを開口部に隣接させるプローブ位置決定ができる十分な大きさでなくてはならない。
【0075】
一実施形態では、管壁中に1つだけ開口部が作製される。すなわち第2の材料の1つの領域だけが選択的に除去される。好ましくは、開口部が及ぶのは管の外周の一部だけである。一実施形態では、管の全長に沿って第2の材料のいくらかの連続性を保持することが好ましく、したがって、開口部が管の外周に完全に及ばないことが好ましい。例えば、開口部は管の外周の最大で75%まで、より好ましくは50%まで及ぶことが好ましいことがある。本発明の別の実施形態では、管壁に複数の開口部を作製してよく、すなわち、第2の材料の2つ以上の領域を選択的に除去してよい。この実施形態では、管の長手方向に沿って複数の箇所にプローブを配置することができ、複数の測定値を得ることができる。したがって、複数のプローブを、各管(each tube)が管壁内の異なる開口部に隣接するように管内に配置することができる。あるいは、1個のプローブを管内に配置し、1つの開口部から別の開口部へとプローブを動かす手段を備わらせることにより、管の長手方向に沿って複数の箇所で測定値を得ることができる。
【0076】
抗血栓性コーティング
抗血栓性薬剤、例えばヘパリン、アルブミン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、ウロキナーゼ等の生体適合性の薬剤分子を医療機器表面に付着させることで生体適合性を向上させる。例えば、生体適合性薬剤は、アルブミン及びヘパリンの両方の分子を含み得る。一実施形態では、生体適合性材料の分子は、互いに結合されて、連結部分により固体表面に付着したフィルムを形成する。別の例では、光学グルコースセンサーの種々の表面処理、例えば米国特許第4,722,906号、同第4,973,493号、同第4,979,959号、同第5,002,582号、同第5,049,403号、同第5,213,898号、同第5,217,492号、同第5,258,041号、同第5,512,329号、同第5,563,056号、同第5,637,460号、同第5,714,360号、同第5,840,190号、同第5,858,653号、同第5,894,070号、同第5,942,555号、同第6,007,833号、同第6,090,995号、同第6,121,027号、同第6,254,634号、同第6,254,921号、同第6,278,018号、同第6,410,044号、同第6,444,318号、同第6,461,665号、同第6,465,178号、同第6,465,525号、同第6,506,895号、同第6,559,132号、同第6,669,994号、同第6,767,405号、同第7,300,756号、同第7,550,443号、同第7,550,444号、並びに米国特許公開第20010014448、同第20030148360号、及び同第20090042742号(これらそれぞれの全体を参照により本明細書に援用する)に開示されているものを利用することができる。
【0077】
一実施形態では、化学的連結部分は、式A−X−Bで表され、式中、Aは、固体表面に共有結合可能な光化学的反応性基を表し;Bは、望ましくは基Aが反応性でない特異的活性化に反応して、生体適合性薬剤と共有結合を形成できる、異なる反応性基を表し;Xは、基「A」及び「B」を連結する、水性の生理学的流体中での切断に抵抗性である比較的不活性な非干渉骨格部分を表す。ここで、生理学的流体とは、Xが接触することになる流体(例えば、血液、間質液等)である。本発明の方法では、連結部分の基「A」は固体表面に共有結合しており、これは、生体適合性薬剤分子が基「B」に共有結合した時に生体適合性薬剤分子が固体表面を事実上遮蔽して生体適合性の有効な表面が得られるのに十分な集団密度である。本発明の生体適合性デバイスは、以下の化学的連結部分を介して生体適合性薬剤の分子が結合した固体表面を含む:固体表面−A残基−X−B残基−生体適合性薬剤分子。
【0078】
一実施形態では、生体適合性薬剤分子は、以下の式で表される化学的連結部分により、生体適合性である有効な表面を得るのに十分な集団密度で固体表面に選択的に結合している:
式中、Rはセレクター基(selector group)を表し、特異的結合対の一員であり、特異的結合対のもう一方の一員を形成する選択された生体適合性薬剤が有するレセプターと結合を形成するよう反応性であり;A及びBは、上記でA及びBとして説明した基を表す。Xは、基「A」、「B」、及び「R」を連結し且つ基「B」を基「R」から立体的に少なくとも約10Å離すことができる、比較的不活性な非干渉骨格ラジカルを表す。
【0079】
基「B」及び「R」は、好ましくは、立体的に明確に識別できる基である。すなわち、これらは、熱振動及び回転の過程で少なくとも約10Åの距離離れ得る。特異的結合対の一員を表す基R(「セレクター」基)は、生体適合性薬剤のエピトープ部位又は他の結合部位(この部位は本発明の「レセプター」の典型例である)で生体適合性薬剤と結合、通常は非共有結合を一般的に形成する。活性化されると生体適合性薬剤と共有結合できる基「B」は、基「R」と立体的に間隔を置いてあってよく、それにより、レセプター部位と間隔を置いた部位で共有結合を形成することが可能になる。セレクター・レセプター結合は、例えば、セレクター基と化学的連結部分の間の脆弱な結合の切断及びその後の例えば透析、環境変化(pH、イオン強度、温度、溶媒極性等)によるセレクターの除去により、あるいは(生体適合性薬剤が酵素である場合のように)セレクター基の自然発生的な触媒修飾により、レセプター部位から解離し得る。したがって、レセプターは再活性化されて、特異的結合対の一員とその後の反応が可能になる。
【0080】
本発明において、「特異的結合対」とは、互いに特異的な結合親和性を有する物質の対を指す。そのような物質としては、抗原及びその抗体、ハプテン及びその抗体、酵素及びその結合相手(例えば補因子、阻害剤、及びその酵素により反応が促進される化学的部分)、ホルモン及びその受容体、特定の炭水化物基及びレクチン、ビタミン及びその受容体、抗生物質及びその抗体、及び天然の結合タンパク質等が含まれる。分析化学において特異的結合対を用いるというコンセプトは周知であり、更なる説明はほとんど必要ない。その教示を参照により本明細書に援用するAdamsに付与された米国特許第4,039,652号、Maggio, et alに付与された米国特許第4,233,402号、及びMurray, et alに付与された米国特許第4,307,071号を引用する。
【0081】
特定の実施形態では、Xは、好ましくは、ポリメチレン等のC1−C10アルキル基、ポリメチロール等の炭水化物、ポリエチレングリコール等のポリオキシエチレン、又はポリリジン等のポリペプチドである。
【0082】
反応性基Bは、好ましくは、好適な活性化後にタンパク質性の又は他の生体適合性の薬剤に共有結合する基である。そのような基の典型例としては、その教示を参照により本明細書に援用するGuireに付与された米国特許第3,959,078号に記載及び例示されているような熱化学基及び光化学基が挙げられる。
【0083】
光化学的反応性基(A)(化学線照射により共有結合が活性化される)の典型例としては、アリール、アルキル、及びアシルアジド、オキサジジン(oxazidine)、イソシアナート(ナイトレン発生剤)、アルキル及び2ケトジアゾ誘導体及びジアジリン(カルベン発生剤)、芳香族ケトン(三重項酸素発生剤)、芳香族ジアゾニウム誘導体、並びに多数のクラスのカルボニウムイオン及びラジカル発生剤を挙げることができる。光化学的反応性基の更なる説明についてはFrederick J. Darfler and Andrew M. Tometsko, chapter 2 of Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins (Boris Weinstein, ed) vol. 5, Marcel Dekker, Inc. New York, 1978を参照されたい。アジドニトロフェニル、フルオロアジドニトロベンゼン、及び芳香族ケトンは、暗黒での化学反応条件に対して安定であり、ほとんどの生体材料に無害な波長の光によって活性化されやすく、生体材料上のほとんどの部位で共有結合を形成できる短寿命の反応性中間体を有用な量形成するので、これらは好ましい基を形成する。
【0084】
大抵の場合に光化学的反応性基としての使用に適したニトロフェニルアジド誘導体(例えばX基を含む)は、フルオロ−2−ニトロ−4−アジドベンゼンに由来し得、4−アジド−2−ニトロフェニル(ANP)−4−アミノブチリル、ANP−6−アミノカプロイル、ANP−11−アミノウンデカノイル、ANP−グリシル、ANP−アミノプロピル、ANP−メルカプトエチルアミノ、ANP−ジアミノヘキシル、ANP−ジアミノプロピル、及びANP−ポリエチレングリコールが含まれる。ANP−6−アミノカプロイル、ANP−11−アミノウンデカノイル、及びANP−ポリエチレングリコールが好ましい。光化学的反応性基としての使用に好ましい芳香族ケトンとしては、ベンジルベンゾイル及びニトロベンジルベンゾイルが含まれる。
【0085】
熱化学的反応性基(熱エネルギーによって活性化される)の典型例としては、ニトロフェニルハライド、アルキルアミノ、アルキルカルボキシル、アルキルチオール、アルキルアルデヒド、アルキルメチルイミダート、アルキルイソシアナート、アルキルイソチオシアナート、及びハロゲン化アルキル基が含まれる。
【0086】
熱化学的反応性基としての使用に適した基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、第一級アミノ基、チオール基、マレイミド、及びハライド基が含まれる。6−アミノヘキサン酸及びアミノウンデカン酸等の基のN−オキシスクシンイミドカルボキシルエステル;メルカプト無水コハク酸及びベータ−メルカプトプロピオン酸等のアルキルチオール基;ホモシステインチオラクトン、及びポリエテイレングリコール(polyetheylene glycol)誘導体が好ましい。
【0087】
参照により本明細書に援用する米国特許第6,077,698号に開示されているようなその他の連結剤も本開示の実施形態に使用することができる。例えば、二官能性以上の光活性化可能な荷電化合物を含む化学的連結剤を使用することができる。連結剤は、好ましくは、水溶性を向上させるために、使用条件下で荷電されている少なくとも1つの基を提供する。連結剤は更に、連結剤を水系で架橋剤として使用することができるように、2以上の光活性化可能な基を提供してもよい。好ましい実施形態では、荷電は1又は複数の第四級アンモニウムラジカルを含めることにより与えられ、光反応性基はベンゾフェノン等のアリールケトンの2以上のラジカルにより提供される。
【0088】
抗血栓剤は、それに共有結合した1又は複数の潜在的反応性基を有し得る。潜在的反応性基とは、外部から与えられた特定の刺激に反応して活性種を生成して隣接する支持体表面に共有結合を形成する基である。潜在的反応性基は、分子中の、保存条件下では共有結合が変化せずに保持されているが、活性化されると他の分子と共有結合を形成する原子の基である。潜在的反応性基は、外部の電磁エネルギー又は運動(熱)エネルギー吸収すると、活性種(active specie)、例えばフリーラジカル、ナイトレン、カルベン、及び励起状態のケトンを生成する。潜在的反応性基は、電磁スペクトルの種々の部分に反応性であるように選択することができ、スペクトルの紫外部、可視部、又は赤外部に反応性である潜在的反応性基が好ましい。記載されているような潜在的反応性基は一般的に周知である。
【0089】
アジドは潜在的反応性基の好ましいクラスを構成し、アジドには、アリールアジド、例えば参照により本明細書に援用する米国特許第5,002,582号に開示されているアリールアジド、例えばフェニルアジド、特に4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジド、アシルアジド、例えばベンゾイルアジド及びp−メチルベンゾイルアジド;アジドホルマート、例えばエチルアジドホルマート、フェニルアジドホルマート;スルホニルアジド、例えばベンゼンスルホニルアジド;並びにホスホリルアジド、例えばジフェニルホスホリルアジド及びジエチルホスホリルアジドが含まれる。ジアゾ化合物は潜在的反応性基の別のクラスを構成し、これには、ジアゾアルカン(−CHN2)、例えばジアゾメタン及びジフェニルジアゾメタン;ジアゾケトン、例えばジアゾアセトフェノン及び1−トリフルオロメチル−1−ジアゾ−2−ペンタノン、例えばt−ブチルジアゾアセタート及びフェニルジアゾアセタート;並びにベータ−ケトン−アルファ−ジアゾアセタート、例えばtブチルアルファジアゾアセトアセタートが含まれる。その他の潜在的反応性基としては、脂肪族のアゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル;ジアジリン、例えば3−トリフルオロメチル−3−フェニルジアジリン;ケテン(−CH=C=O)、例えばケテン及びジフェニルケテン;並びに光活性化可能なケトン、例えばベンゾフェノン及びアセトフェノンが含まれる。ペルオキシ化合物が潜在的反応性基の別のクラスと考えられ、これには、過酸化ジアルキル、例えば過酸化ジ−t−ブチル及び過酸化ジシクロヘキシル;並びにジアシル過酸化物、例えば過酸化ジベンゾイル及び過酸化ジアセチル;並びにペルオキシエステル(peroxyester)、例えばエチルペルオキシベンゾアートが含まれる。ポリマー分子を結合させる表面への共有結合形成を引き起こす潜在的反応性基の活性化後、ポリマー分子は潜在的反応性基の残基により表面に共有結合する。例示的な潜在的反応性基は、参照により本明細書に援用する米国特許第5,002,582号に記載されている。
【0090】
使用されるポリマー及びオリゴマーは1又は複数の潜在的反応性基を有し得る。特定の実施形態では、ポリマーは、1分子当たり少なくとも1つの潜在的反応性基を有し、反応性基と伸ばしたポリマーの長さの比率はオングストロームで約1/10〜約1/700、好ましくは約1/50〜1/400である。上記の記述から分かるように、光反応性の潜在的反応性基は、多くの場合、芳香族であり、したがって、通常、天然の状態で親水性ではなく疎水性である。
【0091】
潜在的反応性基及びそれらが結合するポリマー分子は、実質的に異なる親溶媒性特性を有し得る。例えば、潜在的反応性基は比較的疎水性であり得、一方、ポリマー分子は比較的親水性であり得、比較的疎水性の表面に分子の溶液が接触した時、疎水性である潜在的反応性基が表面のより近くに向きやすいために潜在的反応性基が活性化された時の結合効率が向上すると考えられる。好ましい潜在的反応性基はベンゾフェノン、アセトフェノン、及びアリールアジドである。
【0092】
潜在的反応性分子(潜在的反応性基を有する分子)を最初に表面に近接結合(close association)(溶媒溶液を用いて)させた後、表面に結合させるポリマーを潜在的反応性分子の潜在的反応性基とは異なる反応性基に接触させて共有結合させるプロセスにより、表面上へのポリマー充填密度(loading density)を向上させることができる。その後、潜在的反応性基を活性化させてそれらを表面に共有結合させることにより、ポリマーを表面に連結することができる。
【0093】
別の実施形態では、最初に潜在的反応性基を介してモノマー、オリゴマー、又は他の反応性化学単位を支持体に共有結合させることによってポリマー鎖を表面又は他の支持体上に提供してもよい。このようにして結合させた反応性単位に、重合反応中でモノマー又はオリゴマーを共有結合させるか、ポリマー鎖上への反応性単位の共有結合(グラフト化)を介してポリマーを共有結合させる。
【0094】
本発明の反応性化学単位には、前処理されていない表面又は他の支持体への共有結合のために、本明細書に記載の潜在的反応性基が共有結合している。これらの分子は、所望の性質を有するポリマーのポリマー分子に共有結合することができる反応性基又は添加されたモノマー若しくはオリゴマーと共に重合反応に入って所望の性質を有するポリマー鎖を生成することができる反応性基を有することを特徴とする。ポリマー分子に共有結合できる反応性化学分子としては、種々の種類のモノマー及びオリゴマーだけでなく、カルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、及びN−オキシスクシンイミドのような官能基を有する分子も含まれ、そのような基は、ポリマー鎖が有する反応性基と反応してポリマー鎖と結合する。反応性化学分子は、好ましくはモノマー又はオリゴマーであり、最も好ましくは、他のエチレン的不飽和モノマーとの付加重合反応に入ることができるエチレン的不飽和モノマーである。特に好ましいのは、アクリル酸又はメタクリル酸とヒドロキシ官能性潜在的反応性基とのエステル化生成物であるアクリラート及びメタクリラートモノマーである。そのような分子の例としては、4−ベンゾイルベンゾイル−リジル−アクリラートが含まれる。
【0095】
潜在的反応性基を有する反応性化学単位を用いて、そのような分子の溶媒溶液で表面又は他の支持体を最初にコーティングしてもよい。溶媒除去後、紫外光等の適切な外部刺激を与えると、潜在的反応性基を介して分子が支持体に共有結合する。その後、支持体を、所望のポリマー、モノマー、又はオリゴマーの分子を含む溶液と適切に接触させることでこれらの分子に共有結合させてよい。例えば、反応性化学単位分子が、カルボキシル官能性である場合、これは、ジヒドロキシポリエチレングリコール等の適切なヒドロキシル官能性ポリマーと反応性であり得且つこれに共有結合し得る。反応性化学分子がモノマー又はオリゴマー、例えばメタクリラートモノマーである場合、分子が共有結合する支持体を、付加重合条件下で、ヒドロキシエチルメタクリラート等の付加重合可能なモノマー及び過酸化ジベンゾイル等のフリーラジカル付加重合開始剤の溶液と接触させ、支持体に共有結合したモノマー分子からポリマー鎖を成長させてもよい。所望の重合が起こった後、支持体を洗浄して、残留するモノマー、溶媒、及び形成された非結合ポリマーを除去してよい。
【0096】
別の実施形態では、平均分子量の大きいポリアミンの層を表面上に吸着させることによる医療機器の表面改質により、抗血栓性コーティングがより良く接着し得る。ポリアミンは、アルデヒド官能基と共役したC−C二重結合を有するモノアルデヒドであるクロトンアルデヒドを用いた架橋により安定化される。その後、アニオン性多糖及び架橋型ポリアミンの1又は複数の交互層、次いで架橋されていない前記ポリアミンの最終層を架橋型ポリアミンの最初の層上に吸着させてよく、これにより、遊離第一級アミノ基を有する表面改質が実現される。
【0097】
特定の実施形態では、抗血栓性コーティングは、pH8〜10、例えばpH9のポリアミン水溶液に支持体を接触させることによってなされてもよい。最初のポリアミン溶液の濃度は1〜10重量%、特に5重量%であり、この溶液1mlを最終体積500〜2000ml、特に1000mlに希釈してよい。この最終溶液は更に、100〜1000μl、特に340μlのクロトンアルデヒドを含んでもよい。あるいは、支持体を、前記濃度及びpHのポリアミン溶液で最初に処理した後、前記濃度及びpHのクロトンアルデヒド溶液で処理してもよい。温度は重要ではないため、処理には室温が好ましい。
【0098】
水ですすいだ後、約10〜約500mg、好ましくは約100mgの多糖を含むアニオン性多糖の溶液1000mlで支持体を処理する。この工程は、40〜70℃、好ましくは約55℃及びpH1〜5、好ましくは約pH3で行う。
【0099】
水でもう一度すすいだ後、これらの最初の工程を1又は複数回繰り返し、最後に、多糖の層を吸着させた後、前記の温度及びpHで上記の1〜20倍、好ましくは10倍の濃度のポリアミン溶液で支持体を処理してよい。ポリアミンは好ましくは、ポリマー性脂肪族アミン、特に平均分子量の大きいポリエチレンイミンであるが、平均分子量が大きく遊離第一級アミノ基を有する任意のポリアミンが使用され得る。アニオン性多糖は好ましくは硫酸化多糖である。アミノ化表面は、必要に応じて、シアノ水素化ホウ素ナトリウム等の好適な還元剤を用いた還元によって更に安定化されてもよい。本発明に係る改質表面は、遊離第一級アミノ基を有し、これによりイオン結合又は共有結合で化学物質(chemical entity)が結合し得る。また、シッフ塩基の形成によってアルデヒド含有化学的実体を結合させ、その後、最終的にシッフ塩基を第二級アミンに変換する還元等の安定化反応を続けてもよい。更なる例は、その全体を参照により本明細書に援用する米国特許第5,049,403号に開示されている。
【0100】
特定の実施形態では、医療機器に抗血栓性コーティングを施すために、溶媒と、溶媒に溶解させた相補的ポリマー(complementary polymer)の組合せと、ポリマー/溶媒混合物中に分散された生物活性剤とを含むように組成物を調製する。溶媒は、好ましくは、その中でポリマーが真溶液を形成する溶媒である。医薬品自体は、溶媒に可溶性であってもよく、溶媒中に分散系を形成してもよい。
【0101】
センサーの外表面にしばしば使用される材料の特性のため、センサーを従来の抗凝固剤又は抗血栓薬(例えばヘパリン)でコーティングして、好ましい血管内への応用において十分に安定であり、長期間持続し、活性であり、しかも目的の分析物への影響が十分小さく、センサーの化学に干渉せず、信頼でき、十分長期間の作動を可能にする、好適な抗凝固コーティングを得ることは困難であり得る。特定のコーティングの好適性に関して種々の問題が生じ得、そのようなものとしては、例えば、センサーの製造及び取扱い中のコーティングの安定性;可溶化、反応等による使用中の除去に対するコーティングの抵抗性;コーティングを介した目的の分析物の拡散に対する抵抗性;及びコーティング中の化学種とセンサー技術の間の相互作用(コーティングに由来する検出可能化学種の加水分解によるものであれ、その他の手段によるものであれ)が含まれる。
【0102】
ヘパリンを含むコーティング材料が好ましいが、他の多糖及び生体由来材料及びアナログも、ヘパリンと一緒に又はヘパリンの代わりに使用することができる。好ましいコーティング塗布方法としては、真空下で、水又は水/界面活性剤で濡らしたセンサーへの、ヘパリン−第四級アンモニウム複合体を含むイソプロパノールの塗布が含まれるが、その他の好適なコーティング塗布方法も使用することができ、例えば、非極性溶媒及び極性溶媒等の溶媒の組合せからヘパリン−第四級アンモニウム複合体を塗布してもよく;例えばその場でヘパリン−第四級アンモニウム複合体を形成させるために、第四級アンモニウム化合物及びヘパリンを順に塗布してもよく;カルメダ(Carmeda)AB(スウェーデンのウプランズバスビー(Upplands Vasby))によって記載されているように表面に個々のヘパリン分子末端を結合させる方法等、センサー表面にヘパリン分子を共有結合させてもよく;架橋された形態のヘパリン又はヘパリンと他の化合物を塗布してもよい。
【0103】
特定の実施形態では、血栓形成を限定又は防止するためにセンサー表面の少なくとも一部にヘパリン又はヘパリン含有材料のコーティングが塗布され得る。しかし、場合によっては、コーティングが表面に最初に適切に接着しないか使用後に表面から剥離又は溶解し易いという接着の問題のため、そのようなコーティングの塗布が困難であり得る。使用によりコーティングが剥離する状況は、微粒子不純物が血流中に放出される可能性及びこれらが小さい血管を閉塞させる可能性があるため、特に問題であり得る。更に、ヘパリンコーティング材料が剥離又は溶解することで、治療量又は治療量以下の抗凝固剤物質が患者に投与されることになり得る。そのような接着問題は、特定の種類の材料、特にポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリカーボナート、ポリスルホン等のプラスチックに塗布する時、特に顕著となり得る。例えば、ポリオレフィン及びフルオロポリマーは特に、これらのプラスチックを接着させた時に通常得られる限定的強度及び困難から明らかなように、特に材料を接着させることが困難である。
【0104】
本発明者らは、驚くべきことに、ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングが、効果的に塗布可能であり且つ本明細書に開示されている分析物センサーのポリマー表面(固定用のポリマーマトリックスを組み込んだセンサー上のポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリカーボナート、ポリスルホン等のポリマー表面、多孔質ポリマー表面、及び多孔質ポリマー表面を含む)上で許容可能な安定性及び活性を有するコーティングのままでありながら、許容可能な分析物センサーの機能性を維持していることを見出した。特定の実施形態では、ヘパリン及びベンザルコニウムを含む許容可能な安定性及び活性を有するコーティングを維持することができる多孔質表面は、より具体的には、マイクロ多孔質、ナノ多孔質、又はメソ多孔質として説明される。
【0105】
好ましい実施形態では、ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングは、医薬品グレードのヘパリン、例えば2008年6月18日に改正された米国薬局方に記載されているヘパリンナトリウム又はヘパリンカルシウムを含み得るが、医薬品の規制が適用されない場合等の種々の応用において、他のグレード及び形態のヘパリンを使用することができる。好ましいグレードのヘパリンは、平均分子量が約12〜約15kDaであり得るが、個々の鎖の分子量は、約40kDa又は50kDaと大きくてもよく、あるいはそれより大きくてもよく、約5kDa又は3kDaと小さくてもよく、あるいはそれより小さくてもよい。別の実施形態では、約12〜約15kDaより大きい又は小さい平均分子量のヘパリン、例えば約20若しくは30kDaと大きいヘパリン又は約7若しくは10kDaと小さいヘパリンをうまく用いることができる。
【0106】
いくつかの好ましい実施形態では、ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングは、R基の2つに炭素数約1〜約5のアルキル基、3番目のR基に炭素数約6〜約22のアルキル基を有する、単一の純粋な化合物として又はR基が異なる化合物の組合せとして
の、塩化ベンザルコニウムの分子を含み得る。いくつかの実施形態では、塩化ベンザルコニウムのグレードには、R基として主に2個のメチル基及び炭素数約6〜約22のアルキル基、より好ましくは2個のメチル基及び炭素数約10〜約18のアルキル基を有する化合物及び化合物の混合物を有するものが含まれる。
【0107】
特定の実施形態では、他のアンモニウム複合体、例えば、その全体を参照により本明細書に援用するHsuに付与された米国特許第5,047,020号に開示されているように、ヘパリンと一緒に高い充填濃度で使用してコーティングを形成できる特定のアルキルベンジルジメチルアンモニウムのカチオン性塩を使用することができる。Hsuは、市販の塩化ベンザルコニウムが一般式[C6H5CH2N(CH3)2R]Cl(式中、Rはアルキルの混合物を表し、C8以上の基の全部又は一部を含み、C12、C14、及びC16が大部分を構成する)で表される塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物を含み得ることを発見した。一般的に、この組成物は、20%超のC14、40%超のC12、30%未満のC8、C10、及びC16の混合物に分解される。逆に、Hsuは、好ましいヘパリン/第四級アンモニウム複合体が、少なくとも約50重量パーセント、好ましくは60〜70重量パーセントの有機カチオン性塩を有することを発見した。Hsuは、セタルコニウムヘパリン及び/又はステアリルコニウムヘパリン(stearylkonium
heparin)及びその混合物からなる複合体で最適な結果が得られることを見出した。実際、Hsuは、セタルコニウムヘパリン及び/又はステアリルコニウムヘパリン及びはその混合物の複合体からなる医療機器用コーティングが「現在最も一般的に使用されているヘパリンと塩化ベンザルコニウムの複合体よりも非常に優れた疎水性及び表面接着」を示すことを教示している。したがって、本発明の別の態様では、ベンザルコニウムを含むものに加えて他のヘパリン/第四級アンモニウム複合体、例えばHsuに開示されているものを使用して、本明細書に開示のグルコースセンサーをコーティングして抗血栓性を付与してもよい。
【0108】
表面コーティング剤
医療機器の抗血栓性コーティングのためのコーティング剤として、種々の化合物、例えば参照により本明細書に援用する米国特許第6,278,018号、同第6,603,040号、同第6,924,390号、同第7,138,541号に開示されているものが有用であり得る。一態様では、本発明は、芳香族基を含む非ポリマーコア分子であって直接又は間接的にそこに結合したコア分子と、負に帯電した基を含む1又は複数の置換基と、独立した光反応性基として提供される2以上の光反応性化学種とを含む化合物を提供する。本コーティング剤の第1及び第2の光反応性化学種は、独立して、同一であってもよく、異なってもよい。
【0109】
特定の実施形態では、コアは、ポリヒドロキシベンゼン開始物質の残基として提供され(例えば、ヒドロキノン、カテコール、又はレゾルシノールの誘導体として形成される)、ヒドロキシ基が、対応する複数の光基(photogroups)と反応してエーテル(又はエーテルカルボニル)結合を形成している。一実施形態では、本発明のコーティング剤は、コア分子を対応する光反応性化学種に結合させる役割をする1又は複数の必要に応じて用いるスペーサーを更に含み、スペーサーは、一般式(式中、nは、1以上、約5未満の数であり、mは、1以上、約4以未満の数である)で表されるラジカルから選択される。
【0110】
別の実施形態では、そのようなコーティング剤は、4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジ(カリウム及び/又はナトリウム)塩、2,5−ビス(4−ベイゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジ(カリウム及び/又はナトリウム)塩(2,5-bis(4-beizoylphenylmethyleneoxy)benzene-l,4-disulfonic acid di(potassium and/or sodium) salt)、2,5−ビス
(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1−スルホン酸一カリウム及び/又は一ナトリウム塩の群から選択される。
【0111】
本発明の好適なコア分子としては、低分子量(例えば100〜1000MW)の非ポリマーラジカルが含まれる。好適なコア分子は、コーティング密度、構造安定性、製造し易さ、コスト等の特性の組合せを向上させる。更に、コア分子は、水溶性領域、生分解性領域、疎水性領域、及び重合可能領域と共に提供することができる。好適なコア分子の例としては、ベンゼン及びその誘導体等の環状炭化水素が含まれる。
【0112】
好ましいコーティング剤中の荷電基の種類及び数は、コーティング剤に少なくとも約0.1mg/ml、好ましくは少なくとも約0.5mg/ml、より好ましくは少なくとも約1mg/mlの水溶性(室温及び最適なpHで)を与えるのに十分である。表面コーティングプロセスの性質を考慮すると、表面上で標的分子(例えばポリマー層)の有用なコーティングを得るためには少なくとも約0.1mg/mlのコーティング剤溶解度レベルで一般的に十分である。
【0113】
したがって、このコーティング剤は、水に不溶性である(例えば、比較可能な水溶性が約0.1mg/ml以下、より多くの場合約0.01mg/ml以下)と通常見なされる当該技術分野の多くのコーティング剤とは対照的である。このため、従来のコーティング剤は、典型的には、水が無いか微量(例えば体積で約50%未満)の成分として提供される溶媒系において提供及び使用される。
【0114】
好適な荷電基の例としては、有機酸の塩(例えば、硫酸塩、リン酸塩、カルボキシル基)及びその組合せが含まれる。本発明のコーティング剤の調製に好ましい荷電基は、スルホン酸塩、例えば、I属アルカリ金属(Na、K、Liイオン)の塩により対イオンが提供されて好適な正に帯電した化学種を与える、SO3-の誘導体である。
【0115】
光反応性アリールケトン、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、及びアントロン様複素環(すなわち、10位にN、O、又はSを有するようなアントロンの複素環式アナログ)、又はその置換(例えば、環置換)誘導体の形態での光反応性化学種の使用が好ましい。好ましいアリールケトンの例としては、アントロンの複素環式誘導体、例えばアクリドン、キサントン、及びチオキサントン、並びにそれらの環置換誘導体が含まれる。特に好ましいのは、約360nmより大きい励起エネルギーを有するチオキサントン及びその誘導体である。
【0116】
そのようなケトンの官能基は本明細書に記載の活性化/不活化/再活性化サイクルを容易に受けることができるため好ましい。ベンゾフェノンは、光化学的励起が可能であり、三重項状態へと項間交差される励起一重項状態を最初に形成するため、特に好ましい光反応性部分である。励起三重項状態は、(例えば支持体から)水素原子を引き抜くことで炭素−水素結合中に挿入することができ、これによりラジカル対が形成される。その後、ラジカル対が崩壊することで、新たな炭素−炭素結合が形成される。反応性結合(例えば炭素−水素)が結合に利用可能でない場合、ベンゾフェノム(benzophenome)基の紫外(ultravieolet)光誘導励起は可逆的であり、エネルギー源が取り除かれると分子は基底状態のエネルギーレベルに戻る。ベンゾフェノン、アセトフェノン等の光活性化可能なアリールケトンは、水中で複数回の再活性化を受け、したがって、コーティング効率を向上させるため、特に重要である。
【0117】
コーティング方法論
本明細書に開示されているコーティングプロセスは、1)ディップコーティングの場合のような、直接塗布によるヘパリン複合体の直接コーティング、及び2)第四級アンモニ
ウム塩及び界面活性剤とイオン性ヘパリンを順次塗布する場合のような、間接的コーティングを含む。ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングを塗布するための好適な方法は、多段階積層技術及びヘパリン複合体の一段階塗布を含み得る。別の実施形態では、センサーをナトリウムヘパリン溶液に浸漬する等の前処理方法が用いられる。
【0118】
特定のポリマー材料に対して不活性な表面に抗血栓性コーティングを塗布することが望まれる場合、その表面上又は表面近くにヒドロキシル基を提供するために表面を化学的に処理することによって、接着を容易化することができる。この点に関する例示的な化学的表面処理としては、化学エッチング、界面活性剤吸着、共押出成形、プラズマ放電、表面の酸化又は還元、放射線活性化及び酸化、ポリビニルアルコール、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)等の材料を用いた表面グラフト化等の公知の手法が含まれる。活性水素を提供するために支持体表面のバルク改質を行ってもよい。この種の従来の改質の例としては、活性水素を有するポリマーとのブレンド、ポリマーの部分的分解、末端基改質、モノマー官能化、酸化、還元、共重合等が含まれる。
【0119】
特定の実施形態では、アミノシランを含有する3次元の高度に架橋されたマトリックスを医療機器表面上に形成する。アミノシランは、抗血栓性を付与すべき表面上で硬化、架橋、又は重合される。これは、3次元マトリックスが形成されるような方法で行われる。マトリックスは、アミノシランホモポリマー又はアミノシランとアミノシラン以外の別のシランとのコポリマー(例えばグラフトコポリマー)のいずれであってもよい。代表的なアミノシランとしては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノウンデシルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、及びトリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミンが含まれる。
【0120】
この種のアミノシランは、ホモポリマーマトリックスを形成するために単独で使用することができる。例えば、特定のアミノシランは、三官能性であり、高度に架橋されたマトリックスを提供する。所望であれば、親水性のアミノシランをアミノシランでない親水性のより低いシランと組み合わせることで親水性を低減させることができる。一実施形態では、マトリックスは、マトリックスの親水性を調整するために、これらのアミノシランの1つとアミノシランより親水性が低いアミノシランでない別のシラン分子とのコポリマーである。参照により本明細書に援用する米国特許第5,053,048号、同第4,973,493号、同第5,049,403号を含むその他の方法及びコーティング剤も当該技術分野で公知である。
【0121】
好ましい実施形態では、ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングは、最初にセンサー表面を水又は水と界面活性剤の組合せで濡らすことにより塗布される。好ましい界面活性剤としては陰イオン界面活性剤が含まれるが、いくつかの実施形態では陽イオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤等のその他の界面活性剤も使用することができる。特に、好適な界面活性剤としては、ラウレル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウムが含まれる。次いで、濡れたセンサーを、ヘパリン−第四級アンモニウム複合体のアルコール溶液で処理する。特定の実施形態では、アルコール溶液はイソプロパノールを含むが、実施形態に応じて他のアルコールに基づく溶液を使用してもよい。好ましいイソプロパノールの溶液は、イソプロパノール中にヘパリン−ベンザルコニウム複合体を約1〜約99%(wt)、例えば5%、10%、25%、50%、75%、90%、95%(これらの重量百分率を両端とする重量百分率範囲も含む)含み得る。好ましいヘパリン−ベンザルコニウムを含むイソプロパノール溶液の1つは、45241、オハイオ州シンシナティ、ベスト・プレイス12150のセルスス・ラボラトリーズ社(Celsus Laboratories、Inc.)から、製品番号BY−3189(ベンザルコニウムヘパリンのイソプロピルアルコール溶液、8
87U/mLとして記載されている)で製造されている。濡れたセンサーをヘパリン−ベンザルコニウム溶液に浸漬してもよく、センサーの表面上にスプレーしてもよく、別の好適な技術で塗布してもよい。次いで、コーティング溶液が塗布されたセンサーを乾燥させる。コーティングの均一性を向上させるため又はコーティングを厚くするため等の更なるコーティング材料を浸漬、スプレー、又は他の好適な手段により塗布することができる。材料を塗布する場合、好ましい方法としては、センサーをヘパリン−ベンザルコニウム溶液に限定的な時間、例えば1分未満、約30秒未満、約10秒間、又は約1若しくは2秒、例えばセンサーを溶液に約1秒だけ浸漬することにより、さらすことが含まれる(列挙した期間を上端及び下端とする期間、例えば10〜30秒間センサーを溶液に浸漬することを含む)。いくつかの実施形態では、短時間にすることで望ましくない結果、例えばセンサー表面からの材料の過剰な可溶化又はセンサーの過剰な脱水を防止することができる。しかし、いくつかの実施形態では、例えば溶液のヘパリン−ベンザルコニウム濃度を高くするか溶液に更なるベンザルコニウム材料又はヘパリン材料を添加するか、溶液のpH又はイオン強度を調整することにより、より長期間にすることが可能である。いくつかの実施形態では、コーティングプロセス中、必要に応じて又は所望により、水又は水及び界面活性剤及び/又は溶媒の組合せを塗布することによってセンサーを再度水和することができる。
【0122】
しかし、ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングを塗布する別の方法を用いることも可能である。好適な多段階積層技術としては、好適な形態及びグレードの塩化ベンザルコニウムを塗布し、その後好適な形態及びグレードのヘパリンを塗布することを含むプロセスによりヘパリン及びベンザルコニウムを塗布する技術が含まれる。任意の好適な溶媒又は溶媒の組合せ、例えばヘパリンに対して水又は水性アルコールを、塩化ベンザルコニウムに対して非極性有機溶媒(例えば、トルエン、石油エーテル等)を使用することができる。好ましいヘパリン溶液としては、ヘパリンを重量百分率で約0.05%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、90%、95%含む溶液が含まれる(列挙した重量百分率を両端とする重量百分率範囲も含まれる)。特定のそのような実施形態では、好ましいヘパリン溶液は、0.05〜約1%の重量パーセントのヘパリンを含む。好ましい塩化ベンザルコニウム溶液としては、重量百分率で約0.05%、1%、5%、10%、20%、25%、50%、75%、90%、95%のベンザルコニウムを含む溶液が含まれる(列挙した重量百分率を両端とする重量百分率範囲も含まれる)。特定のそのような実施形態では、好ましい塩化ベンザルコニウム溶液は約1.0〜約20%の重量パーセントの塩化ベンザルコニウムを含む。
【0123】
その他の好適なコーティング技術は、例えば、参照によりその全体を本明細書に援用するGrottaに付与された米国特許第3,846,353号及びHsuに付与された米国特許第5,047,020号に記載されている。
【0124】
ヘパリン複合体の一段階塗布は、Hsuに付与された米国特許第5,047,020号に記載されているように好適なグレード及び形態のヘパリン及びベンザルコニウムを含む溶液をセンサーに塗布することを含み得る。特定の実施形態では、溶液は塩化ベンザルコニウムを含み得る。ヘパリン及びベンザルコニウムに好適な溶媒としては、アルコール(例えばイソプロパノール)、ハロゲン化溶媒(例えばトリフルオロ−トリクロロエタン)等の極性有機溶媒(単独又は混合物として)を含むものが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリマー表面に塗布される溶液は、溶液の全重量に対して、合わせた重量百分率が0.1%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、又は約90%のヘパリン及びベンザルコニウムを含み得る(列挙した重量百分率を両端とする重量百分率範囲も含まれる)。特定のそのような実施形態では、溶液は、重量で約0.1%〜約75%のヘパリン/ベンザルコニウムを含み得る。いくつかの実施形態では、例えば所望の厚さ及び/又は耐久性を有するコーティングを構築するために、センサー表面にヘパリン/ベンザルコニウ
ム複合体の連続層を塗布してよい。
【0125】
特定の実施形態では、予め濡らしたセンサーの遠位部分をヘパリン及びベンザルコニウムのイソプロパノール溶液に好ましくは約0.1〜約30秒間、より好ましくは約1〜約10秒間、更により好ましくは約1秒間浸漬する。特定の実施形態では、浸漬したセンサーを、その後、好ましくは少なくとも約10秒間、より好ましくは約0.5分間〜約10分間、更により好ましくは約1分間風乾する。ヘパリン/ベンザルコニウムコーティング及び乾燥工程は、種々の実施形態に従って、好ましくは約1〜約20回、より好ましくは約2〜約10回、更により好ましくは約3〜約8回、更により好ましくは約4〜約6回繰り返される。
【0126】
特定の実施形態では、センサーを浸漬することにより、センサー表面から周囲の血管へのヘパリンの持続放出が実現される。一実施形態では、必要に応じて用いるマイクロ多孔質膜の下にヒドロゲルを含んでいてもよいセンサーを、膨張したヒドロゲル中にへパリンを注入するためにヘパリン溶液に浸漬する。一実施形態では、少なくとも約10%のナトリウムヘパリン水溶液を使用する。より好ましい実施形態では、少なくとも約20%のナトリウムヘパリン水溶液を使用する。非常に好ましい実施形態では、少なくとも約30%のナトリウムヘパリン水溶液を使用する。別の実施形態では、他の有機溶媒及び他の形態のヘパリンを使用してもよい。一実施形態では、ナトリウムヘパリン溶液は、pH約5のリン酸緩衝生理食塩水の形態である。ヒドロゲルを飽和させるのに十分な時間浸漬した後、センサーを溶液から取り出して乾燥させる。一実施形態では、センサーを少なくとも約1時間浸漬する。好ましい実施形態では、センサーを約2時間浸漬する。一実施形態では、センサーを少なくとも約3時間浸漬する。その後センサーを生体内に配置した時、ヒドロゲルは、血流中で再度膨張し、時間を掛けて徐々にヘパリンを放出する。
【0127】
必要に応じて、例えば、溶媒、界面活性剤等の好適な薬剤を用いてセンサー表面を洗浄する工程及び/又は気流、熱、加熱気流、又は1若しくは複数の脱水剤を等用いてコーティングを乾燥させる工程等の更なる工程を用いることができる。いくつかの実施形態では、コーティング後にセンサーの表面が幾分粘着性になり得、微粒子状物質を捕捉することがあるので、いくつかの実施形態では、コーティング後、センサーを可能な限り早く包装することが望ましい。
【0128】
ヘパリンベースのコーティングをセンサーに塗布するその他の方法としては、センサー表面又はセンサー表面に塗布された中間材料へのヘパリン又はヘパリン誘導体の共有結合が含まれる。好適な技術としては、例えばカルメダAB(スウェーデンのウプランズバスビー)が用いている技術等の、センサー表面又は中間体にヘパリン分子の末端を共有結合させる技術が含まれる。その他の好適な方法としては、例えば本明細書及びサーモディックス社(Surmodics)(ミネソタ州イーデンプレーリー)が記載しているような、センサー表面又はセンサー表面に塗布された中間材料にヘパリン又はヘパリン誘導体を光固定化によって結合させる技術、並びにRoorda, et al.の米国特許第6,833,253号に記載されているような、極性及び非極性溶媒を用いてヘパリン複合体を析出させる技術も含まれる。
【実施例】
【0129】
実施例1.抗血栓性コーティングの塗布
ベンザルコニウム/ヘパリンでのコーティングに対する前述した光学グルコースセンサーの準備として、pH3のリン酸緩衝生理食塩水溶液(多くの種類の緩衝水溶液又は単なる水をも使用することができる)中にセンサーのコーティングする部分を浸漬した(例えば図1〜4参照)。
【0130】
1.5%(重量)のベンザルコニウムヘパリンを含むイソプロパノールのコーティング溶液(45241、オハイオ州シンシナティのベストプレイス12150のセルスス・ラボラトリーズ社から、ベンザルコニウムヘパリンのイソプロピルアルコール溶液(887U/mL)、製品番号BY−3189として流通している)を試験管に添加した。緩衝生理食塩水溶液中で平衡化させた後、センサーの感知末端の遠位端部分をベンザルコニウムヘパリン溶液に浸漬させ、すぐに取り出した(ベンザルコニウムヘパリン溶液に浸漬させた時間は約1秒間であった)。濡れたセンサーを約1分間風乾させ、センサー表面上にベンザルコニウムヘパリンのコーティングを得た。
【0131】
ベンザルコニウム/ヘパリン溶液へのセンサーの浸漬及びその後の風乾を4回繰り返してセンサー表面上に更にコーティング材料を重ねた。
【0132】
実施例2.ブランクセンサーの作製
ポリ(メチルメタクリラート)光ファイバー(直径0.010インチ)を囲むポリエチレンマイクロ多孔質膜(外径0.017インチ)からブランクセンサー(sensor blank)を用意した。ポリエチレンマイクロ多孔質膜は92121−2911、カリフォルニア州サンディエゴ、メサ・リム・ロード(Mesa Rim Road)9925のバイオジェネラル社(Biogeneral)から入手した。ブランクセンサーの遠位端(コーティングされる末端)を丸みのあるポリエチレン製の栓に加熱溶接する。他端をシリコーン裏込材(silicone backfill)で密封する。次いで、遠位端を実施例1の緩衝生理食塩水溶液に18時間(但し、これより短い期間でも好適であった)浸漬した。最後に、実施例1と同様に、ブランクセンサーの遠位端を実施例1のコーティング溶液に浸漬し、その後、風乾した。コーティング溶液に浸漬して風乾する工程を4回繰り返した。
【0133】
実施例3.コーティングされたセンサー及びコーティングされたブランクセンサーの比較
ヘパリン/ベンザルコニウムのコーティングをそれぞれ5回ディップコーティングにより塗布された、実施例1及び2に記載されているようにして作製したコーティングされたセンサー及びコーティングされたブランクセンサーを以下のように取扱い試験に供した。
【0134】
センサーは、長さ1.0インチの滑らかな(非多孔質)HDPE管に突き合わせ溶接された長さ1.3インチの中空マイクロ多孔質HDPE膜(外径0.017インチ、92121−2911カリフォルニア州サンディエゴ、メサ・リム・ロード9925のバイオジェネラル社製;これは特注部分である)からなる。マイクロ多孔質末端を、丸みのあるポリエチレン製の栓に加熱溶接した。中空アセンブリーの内側に0.010インチのPMMA光ファイバーを通した。滑らかなHDPE末端にシリコーン裏込材をマイクロ多孔質まで(但しマイクロ多孔質は含まない)充填した。PMMA光ファイバーと中空マイクロ多孔質膜の間の領域には、共有結合された蛍光色素及びクエンチャーも含むジメチルアクリルアミドゲルを充填した。ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングを塗布するためのセンサーの準備として、実施例1と同様にリン酸緩衝生理食塩水の水溶液に遠位(「センサー」)端を約18時間(但し、この時間でなくてもよい)浸漬した。次いで、実施例1に記載されているようにセンサーをヘパリン/ベンザルコニウム溶液に浸漬して風乾した。浸漬及び乾燥工程を4回繰り返した。
【0135】
コーティング溶液への浸漬及び乾燥を繰り返した後、取扱い試験への準備としてセンサー及びブランクセンサーをトルイジンブルーで染色した。具体的には、センサー及びブランクセンサーをシリコーンゴム封止材に通し、その後、0.04%のトルイジンブルー水溶液に1分間浸漬し、水ですすぎ、30分間風乾した。
【0136】
トルイジンブルーはヘパリンを紫色に染色するので、より濃い紫色は、より薄い紫色又
は紫色なしよりも高濃度のヘパリンを示す傾向がある。したがって、ヘパリンコーティングの耐久性を評価するために、染色されたセンサー及びブランクセンサーを以下の取扱い試験に供し、その後、20倍拡大下で視覚的に検査して、トルイジン染色が薄くなることによって示されるヘパリンコーティング中の空隙及び薄さを見分けた。結果は以下にも示す。
【0137】
リン酸緩衝生理食塩水溶液中での保存
センサーをpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水中に37℃で48時間まで浸漬した。マイクロ多孔質膜部分が48時間後でも均一な紫色を保持していることが観察された。非多孔質ポリエチレン部分上の染色は、たった2時間後には、より薄く、より不均一になった。
【0138】
センサーハウジングアセンブリー中での保存
コーティングされたセンサーを、ポリウレタン管からなるセンサーハウジングアセンブリー中に置き、パリレンコーティングされたシリコーンゴム封止材で密封した。ハウジングアセンブリーにpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水を充填し、ハウジング中にセンサーを室温で1時間浸漬した。その後、非多孔質ポリエチレン部分は、(拡大下で)ヘパリンコーティングへの明らかなダメージの跡を示し、紫色の染色中に明らかなすり傷(scrape)及び空隙があった。対照的に、マイクロ多孔質部分には影響が見られず、染色は均一で滑らかな紫色であった。
摩耗:センサーをpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水に室温で1時浸漬し、その後、濡れたニトリル製手袋で1分間激しくこすった。その後、これをトルイジンブルーで染色した。拡大下で、非多孔質ポリエチレン部分は紫色の染色がほとんど完全になく、このことは、ヘパリンコーティングが完全に失われたことを示している。マイクロ多孔質膜部分は、小さくなっており且つ幾分斑状(pachy)であるように見えたが、依然として全長にわたって強く紫色であった。この試験部分での取扱いは非常に極端であることに留意すべきである。
【0139】
イソプロパノールを用いた超音波処理
1個のセンサーを、一連の25mLイソプロパノールバイアル中で3回、それぞれ5分間、超音波処理した。その後、これをトルイジンブルーで染色した。拡大下で、図7Aに示されるように、非多孔質前駆体ポリエチレン部分では、紫色の染色がほとんど完全になく、このことはヘパリンコーティングの完全な消失を示している。マイクロ多孔質膜部分は、図7Bに示されるように、強く均一な紫色を維持したままであり、このことは均一なヘパリンコーティングが保持されていることを示している。
【0140】
上記条件にセンサー及びブランクを供した結果を以下の表に要約する。
【0141】
【表1】
【0142】
これらの結果は、ポリマー表面のみの上のベンザルコニウムヘパリンコーティングと比べた、多孔質ポリマー表面及び親水性ポリマーマトリックスを有するグルコースセンサー上のベンザルコニウムヘパリンコーティングの優れた耐久性を示している。
【0143】
実施例4.抗血栓性コーティングの有効性の実証
ベンザルコニウム/ヘパリンコーティングを有する12個のGLUCATH(登録商標)センサー及びコーティングを有さない対照としての12個のBD L−Cath PICCライン(外径0.037cm(0.0145インチ);ポリウレタン)を用意し、4頭のヒツジの心血管系に挿入した。コーティングされたGluCathセンサーは、米国特許出願第12/026,396号に記載されているように、親水性アクリルマトリックス中に埋め込まれたフルオロフォア/クエンチャー指示薬系から構成される。ベンザルコニウムヘパリンコーティングは実施例3と同様に塗布した。
【0144】
センサー及び対照カテーテルを左右の頸静脈及び左右の橈側皮静脈に、同じヒツジの一方の側にセンサー、他方の側に対照カテーテルで挿入した。25時間後、2頭のヒツジを安楽死させ、試験対象と静脈とを覆う周囲組織及び皮膚を切開して反転させた後、試験対象上若しくは静脈中の細胞蓄積物若しくは細胞片又はセンサー若しくはカテーテルを乱さないように注意しながら静脈を長手方向に開くことにより、外科的にセンサー及び対照を露出させて調べた。更に22時間後(経過時間47時間)、更に2頭のヒツジを安楽死させ、外科的にセンサーを露出させて上記と同様に調べた。
【0145】
各センサー又はカテーテルのデジタル写真をその位置(in place)で撮った。検査後、各センサー又はカテーテルを静脈から取り出し、メチレンブルーで染色し、10〜20倍の一次対物レンズ倍率を用いて顕微鏡的に調べ、フィブリン若しくは細胞材料の蓄積又は表面の異常を観察した低解像度の写真。試験対象の2つは静脈の外側の周囲組織中に配置されていたことが判明し、評価に含めなかった。
【0146】
更に静脈から組織切片を得、試験対象近くの血管の状態について特徴解析した。これらの評価の結果を以下の表に示す。
【0147】
【表2】
【0148】
上記表中、「RC」は「右橈側皮(Right Cephalic)」を意味し、「LJS」は「左上頸静脈(Left Jugular Vein Superior)」を意味し、「LJI」は「左下頸静脈(Left Jugular Vein Inferior)」を意味し、「RJS」は「右上頸静脈(Right Jugular Vein Superior)」を意味し、「RJI」は「右下頸静脈(Right Jugular Vein Inferior)」を意味し、「NGHL」は「肉眼的又は組織学的病変なし」を意味する。更に、上記表中で肉眼及び顕微鏡によるセンサー上のフィブリン蓄積に関する数値による記述は以下の略記である:
「0」は、なし又は静脈穿刺部位のみの止血血栓に限定されていることを表し、
「1」は、わずかな非連続的又は顕微鏡的沈着のみであることを表し、
「2」は、厚さ1mm未満であることを表し、
「3」は、厚さ1mm超を表し、
「4」は、完全な血管閉塞(血栓症)を表す。
【0149】
これらの評価は、肉眼的フィブリン沈着が少なく顕微鏡的フィブリン沈着が少ない点で、ヘパリン/ベンザルコニウムコーティングを有するGluCathセンサーが対照のカテーテルより優れていることを実証している。
【0150】
実施例5.持続放出ヘパリン
GluCathセンサーを30%のナトリウムヘパリンのリン酸緩衝生理食塩水溶液(pH5)に2時間浸漬してヒドロゲルを飽和させた。センサーを浸漬液から取り出した後、ヘパリンベンザルコニウムを含むイソプロピルアルコールを用いてセンサーをディップコーティングして外表面をコーティングした。対照とするために、ナトリウムヘパリン浸漬工程を行わなかった別のセンサーもヘパリンベンザルコニウムでディップコーティングした。一晩風乾後、センサーを、バッファー流(pH7.4、37℃のリン酸緩衝生理食塩水)に48時間までさらした。2.5、24、及び48時間後において、バッファーからセンサーを取り出し、発色性抗FXa活性アッセイを用いてヘパリン活性について試験した。図8に示す結果から、各時点において、ヘパリンに浸漬したセンサーが対照センサーよりも高いレベルの活性を保持していることを示された。
【0151】
本明細書に引用した全ての参照文献、例えば、限定されるものではないが公開及び非公開の出願、特許、及び引用文献、並びに添付書類に列記されている参照文献の全体を参照により本明細書に援用し、本明細書の一部とする。参照により組み込んだ公開物及び特許又は特許出願が本明細書中の開示と矛盾する範囲で、そのような相反する全ての事項について本明細書が優先される。
【0152】
本発明において、「含む」という用語は、「含有する」又は「特徴とする」と同義であり、記載されていない更なる要素又は方法の工程に対して開放されており(open−ended)、それらを排除しない。
【0153】
本明細書中で使用される材料、反応条件等の量を表す全数字は、あらゆる場合において「約」という用語で修飾されているものと理解されるべきである。したがって、特に断りの無い限り、本明細書中に記載されている数値パラメーターは、得ようとする所望の特性によって変わり得る概数である。少なくとも、均等論の適用を本願に優先権を主張する出願の請求項の範囲に限定しようとするものではないが、各数値パラメーターは、有効数字及び通常の丸め手法に鑑みて解釈されるべきである。
【0154】
上記の説明は、本発明の複数の方法及び材料を開示している。本発明は、方法及び材料の改変並びに製造方法及び設備の変更の余地がある。そのような改変は、本開示の検討又は本明細書に開示されている発明の実施から当業者に明らかになる。したがって、本発明
は本明細書に開示されている特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の真の範囲及び精神に含まれる改変例及び代替物を全て含むことが意図される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によりその開示が明示的に本明細書に組み込まれ、かつ明示的に本願の一部となる2009年9月30日付で提出された米国仮特許出願第61/247,500号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明の実施形態は、広義には、血管内グルコースセンサー等の血液に接触する表面を有する医療機器(medical device)用の抗血栓性コーティング、そのようなコーティングの形成方法、及びそのようにして形成された医療機器に関する。
【背景技術】
【0003】
患者の血糖値を連続的又はほぼ連続的にモニタリングすることによって血糖コントロールの実現が容易になる。そのようなモニタリングを実現する方法の1つでは、植え込まれたグルコースセンサーを使用する。例えば、光学グルコースセンサー、例えば特許文献1〜13及び同時係属中の特許文献14〜18(それぞれの全体を参照により本明細書に援用する)に開示されているものを患者の脈管系の中に配置して、グルコースを連続的に又は必要に応じて記録することができる。当然ながら、あらゆる留置血管内グルコースセンサーが、血糖コントロールを実現するためのグルコースのモニタリングに潜在的に使用可能である。
【0004】
患者の脈管系中に血管内グルコースセンサー等の異物が存在すると、センサー周辺で血餅(blood clot)又は血栓(thrombus)が形成され得る。場合によっては、血栓により血管の血流が制限され、センサーの機能性及び/又は患者の健康が損なわれることがある。場合によっては、血栓が離れて、血流を介して心臓、脳等の体の別の部分に移動することがあり、それにより重度の健康上の問題が生じ得る。したがって、センサー上又はセンサーの近くでの血栓形成を最小限に抑えることが望ましい。
【0005】
手術中及び介入手技中における血栓形成の防止及び凝固障害の処置のための静脈内抗凝固剤として、数十年前からヘパリンが臨床的に使用されている。ステント、プロステーシス、カテーテル、管、血液保存容器等の医療機器の外表面をヘパリン又はヘパリン含有複合体(例えばShah, et al.に付与された特許文献19参照)でコーティングすると、(1)フィブリン(これは血栓を保持する)形成に必須の酵素の阻害、(2)デバイス表面上での望ましくない反応の原因となり得る血液タンパク質の吸着低減、並びに(3)血栓形成において重要な役割を果たす血小板の接着及び活性化の低減、により、デバイスが血液に接触した時のデバイスの血栓形成性(thrombogenecity)が低減し得る。理想的には、ヘパリンコーティングがその下の医療機器の表面から血液を実質的に遮蔽し、その結果、血液成分がデバイス表面ではなくヘパリンコーティングに接触するため、血栓又は塞栓(放出されて下流に移動する血餅)の形成が低減する。
【0006】
残念ながら、デバイスの表面材料によっては、ヘパリンでは持続的及び/又は連続的な抗血栓性コーティングが得られないことがある。ヘパリンコーティングの完全性を向上させるために種々の戦略が採られてきた。例えば、ヘパリンをデバイス表面に共有結合させてコーティングの有効寿命を延長させるために光活性化カップリング法(photo−activated coupling method)を用いることができる(例えば非特許文献1のSurmodicsのPHOTOLINK(登録商標)プロセス参照)。あるいは、特定の材料、例えばPVCには、PVC表面から離間してヘパリン分子を配置す
るために、とりわけトリドデシルメチル塩化アンモニウム(TDMAC)及びPEO−ポリエチレンオキシド等のリンカーが用いられてきた(例えばCrouther et al.に付与された特許文献20参照)。ヘパリンをポリペプチドに架橋して、ペプチド特異的機能を有する抗血栓性ヒドロゲルを作製することができる(例えば、創傷治癒機能を開示しているLamberti, et al.に付与された特許文献21参照)。ヘパリンの誘導体又は複合体、例えばヘパリン塩化ベンザルコニウム(以降、「HBAC」)も医療機器の抗血栓性コーティングとして応用されてきた。しかし、HBACの使用は、血中分析物がコーティングを介して通過する必要がある血管内分析物センサー等のデバイスでは成功していない。更に、Hsu(特許文献22)は、血液ガスセンサーをコーティングするための種々のヘパリン複合体の使用を開示しており、ベンザルコニウムヘパリン複合体がそのような血管内センサーには不適であると記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,137,033号
【特許文献2】米国特許第5,512,246号
【特許文献3】米国特許第5,503,770号
【特許文献4】米国特許第6,627,177号
【特許文献5】米国特許第7,417,164号
【特許文献6】米国特許第7,470,420号
【特許文献7】米国特許公開第2006/0083688号
【特許文献8】米国特許公開第2008/0188722号
【特許文献9】米国特許公開第2008/0188725号
【特許文献10】米国特許公開第2008/0187655号
【特許文献11】米国特許公開第2008/0305009号
【特許文献12】米国特許公開第2009/0018426号
【特許文献13】米国特許公開第2009/0018418号
【特許文献14】米国特許出願第11/296,898号
【特許文献15】米国特許出願第12/187,248号
【特許文献16】米国特許出願第12/172,059号
【特許文献17】米国特許出願第12/274,617号
【特許文献18】米国特許出願第61/045,887号
【特許文献19】米国再発行特許第RE39,438号
【特許文献20】米国特許第5,441,759号
【特許文献21】米国特許第7,303,814号
【特許文献22】米国特許第5,047,020号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】www.surmodics.com/technologies-surface-biocompatibility-heparin.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、抗血栓性コーティング及び血管内分析物センサー、特にグルコースセンサーにそのようなコーティングを施すための方法に対する満たされていない重要なニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、細長部材(elongate member);細長部材の遠位部分に沿って配置された分析物反応性指示薬であって、血管中の分析物の濃度に関連した
シグナルを発生できる、指示薬;細長部材の遠位部分に沿った少なくとも指示薬を覆う多孔質膜;並びに多孔質膜の少なくとも一部に安定的に結合したヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティング、を含む、分析物センサーに関する。
【0011】
分析物センサーの好ましい実施形態では、細長部材は、光路を含む光ファイバーを含む。分析物反応性指示薬は、好ましくは、分析物結合部分に作動可能に連結されたフルオロフォアを含み、分析物の結合によってフルオロフォアの発光強度が変化し、分析物反応性指示薬は光ファイバーの光路内に配置されている。より好ましくは、フルオロフォアはHPTS−トリCysMAであり、結合部分は3,3’−oBBVである。
【0012】
特定の実施形態では、多孔質膜はマイクロ多孔質膜である。マイクロ多孔質膜には、ポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリカーボナート、及びポリスルホンからなる群から選択される1又は複数のポリマーが含まれ得る。より好ましくは、マイクロ多孔質膜には少なくとも1つのフルオロポリマーが含まれる。少なくとも1つのフルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシポリマー、フッ化エチレン−プロピレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロエラストマー、及びフルオロエラストマーからなる群から選択され得る。
【0013】
分析物センサーの別の実施形態では、マイクロ多孔質膜は少なくとも1つのポリオレフィンを含む。ポリオレフィンは好ましくはポリエチレンである。
【0014】
本発明の別の実施形態に係る平衡血管内分析物センサーを開示する。平衡血管内分析物センサーは以下を含む:血管内に配置されるように構成され、且つ光路及び外表面を含む光ファイバー;分析物結合部分に作動可能に連結されたフルオロフォアを含み、フルオロフォア及び分析物結合部分が非水溶性有機ポリマー内に固定されており、光ファイバーの遠位部分に沿った光路内に配置されている、化学指示薬系;並びに中に配置された化学指示薬系を覆い、光ファイバーの外表面の少なくとも一部上にあり、外表面に共有結合で架橋されたヘパリンを含む、抗血栓性の分析物透過コーティング。
【0015】
フルオロフォアは好ましくはHPTS−トリCysMAであり、結合部分は好ましくは3,3’−oBBVである。
【0016】
平衡血管内分析物センサーは、化学指示薬系と抗血栓性コーティングとの間に配置された多孔質の分析物透過膜を更に含んでもよい。
【0017】
本発明の別の実施形態に係る、分析物センサーの血栓形成性を低減する方法を開示する。方法は以下の工程を含む:光路を規定する細長光ファイバーと、光路内で光ファイバーの遠位領域に沿って配置された平衡蛍光化学指示薬系と、遠位領域の少なくとも一部の外層を形成する分析物透過多孔質膜と、を含み、指示薬系が多孔質膜によって覆われている、分析物センサーを用意する工程;分析物センサーを、ヘパリンとベンザルコニウムとの混合物を含む単一溶液に又は別個のヘパリンを含む第1の溶液及びベンザルコニウムを含む第2の溶液に接触させる工程;分析物センサーを乾燥させる工程;並びに接触工程及び乾燥工程を2〜10回繰り返す工程。
【0018】
方法の好ましい実施形態では、平衡蛍光化学指示薬系は、非水溶性有機ポリマー内に固定されたフルオロフォア及び分析物結合部分を含む。フルオロフォアはHPTS−トリCysMAであってよく、結合部分は3,3’−oBBVであってよく、非水溶性有機ポリマーはDMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)ヒドロゲルマトリックスであってよ
い。
【0019】
本発明の別の実施形態では、分析物センサーの血栓形成性を低減する方法が開示される。方法は以下の工程を含む:分析物センサーを用意する工程であって、分析物センサーが、光路を規定する細長光ファイバーと、光路内で光ファイバーの遠位領域に沿って配置された平衡蛍光化学指示薬系と、遠位領域の少なくとも一部を覆う外表面を形成する分析物透過性多孔質膜とを含み、指示薬系が多孔質膜で覆われている分析物センサーである、工程;光活性化可能な化学的連結剤(linking agent)及び抗血栓性分子を用意する工程であって、連結剤が、活性化後に、外表面及び抗血栓性分子に共有結合でき、連結剤が、2以上の光反応性基及び1以上の荷電基を含む荷電された2官能性以上の光活性化可能な非ポリマー性化合物を含む、工程;及び2以上の光反応性基を活性化することにより抗血栓性分子を外表面に架橋する工程。
【0020】
平衡蛍光化学指示薬系は、非水溶性有機ポリマー内に固定されたフルオロフォア及び分析物結合部分を含むことが好ましい。方法の特定の好ましい実施形態では、フルオロフォアはHPTS−トリCysMAであり、結合部分は3,3’−oBBVであり、及び非水溶性有機ポリマーはDMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)ヒドロゲルマトリックスである。
【0021】
方法の特定の好ましい実施形態では、多孔質膜はマイクロ多孔質ポリエチレンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】多孔質膜の下の光ファイバー及びヒドロゲルが見えるように多孔質膜のシースを切り取った、センサーの破断図である。
【図2】光ファイバーの遠位にヒドロゲルが配置されているセンサーの長手軸に沿った断面図である。
【図3A】螺旋状の(helical)形態を形成する一連の孔を有するグルコースセンサーを示す図である。
【図3B】角度をもって開けられた又は形成された一連の孔を有するグルコースセンサーを示す図である。
【図3C】つる巻状の(spiral)溝を少なくとも1つ有するグルコースセンサーを示す図である。
【図3D】一連の三角形くさび形切抜きを有するグルコースセンサーを示す図である。
【図4】センサーの遠位部分に空洞を有するグルコースセンサーの一実施形態の断面図である。
【図5】2個の励起光源並びにマイクロ分光計及び/又は分光計を含むグルコース測定系を示す図である。
【図6A】光学グルコースセンサーの代替的実施形態を示す図であり、光学センサーが管状メッシュ(図6A)又はコイル(図6B)で囲まれており、これが開口窓を有するポリマー材料で更に囲まれている。
【図6B】光学グルコースセンサーの代替的実施形態を示す図であり、光学センサーが管状メッシュ(図6A)又はコイル(図6B)で囲まれており、これが開口窓を有するポリマー材料で更に囲まれている。
【図7A】センサーのマイクロ多孔質膜部分へのヘパリンベンザルコニウムコーティングの接着を示す図である。
【図7B】センサーの非多孔質前駆体部分へのヘパリンベンザルコニウムコーティングの接着を示す図である。
【図8】ヘパリン浸漬を行ったグルコースセンサーのヘパリン活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明及び例は本発明の好ましい実施形態を詳細に記載するものである。当業者には、この範囲内に含まれる本発明の多数のバリエーション及び改変例があることが理解されるであろう。したがって、好ましい実施形態の説明は、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0024】
本明細書に開示されている種々の実施形態は、全般的には、生体内配置用に構成された分析物センサー(例えば血管内、組織内等)、好ましくはグルコースセンサーに関し、センサーは抗血栓性の外表面、好ましくはコーティングを更に含む。センサーをコーティングして抗血栓性外表面を作製する方法も開示される。当然、グルコースに加えて他の分析物を検出するための血管内センサーにも、例えばセンサー周辺での血餅又は血栓の形成を低減、阻害、及び/又は防止する本発明の態様は有用であり得る。
【0025】
定義
特に断りのない限り、本明細書中で使用される科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味で使用される。本発明のために、以下の用語を定義する。
【0026】
本発明において、「多孔質(Porous)」とは、材料中を化学種が透過可能な細孔(pore)を中に有する材料を指して使用される。材料は、材料の平均細孔径が約2nm未満であることを意味する「ナノ多孔質」であり得る。材料は、材料の平均細孔径が約2nm〜約50nmであることを意味する「マイクロ多孔質」であり得る。材料は、材料の平均細孔径が約50nmを超えることを意味する「メソ多孔質」であり得る。更に、材料は、一部の化学種だけを通過させ、他の材料の通過は防止又は阻害する、半透性であってもよい。
【0027】
本発明において、「ポリオレフィン」とは、オレフィンから作製されるポリマーを指し、コポリマーを含む。2つの主な例はポリエチレン及びポリプロピレンである。これらは多くの異なるグレードで入手可能であり、グレードは分子量又は密度で記載されることが多い。炭素が2個又は3個より長い鎖のモノマーに由来するポリマーも含まれる。
【0028】
本発明において、「フルオロポリマー」とは、塩素原子及び/又はフッ素原子を含有するポリマーを指す。例としては、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシポリマー、フッ化エチレン−プロピレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロエラストマー、及びフルオロエラストマーが含まれる。これらの材料は剛性(rigid)であってもよく、弾性(elastomeric)であってもよい。商標としては、TEFLON、TEFZEL、FLUON、TEDLAR、HALAR、KYNAR、KEL−F、CTFE、KALREZ、TECNOFLON、FFKM、VITON、FOMBLIN、及びGALDENが含まれる。
【0029】
本発明において、「ポリカーボナート」とは、炭酸基で連結された官能基を有するポリマーを指す。商標としては、LEXAN、CALIBRE、MAKROLON、PANLITE、及びMAKROLIFEが含まれる。
【0030】
本発明において、「ポリスルホン」とは、スルホン又はスルホニル基を含有するポリマーを指し、このポリマーは多くの場合サブユニット(アリール1)−SO2−(アリール2)から構成される。
【0031】
本発明において、「ヘパリン」とは、抗凝固特性及び/又は抗血栓特性を有する多糖材料を含み、多くの場合、グリコシド結合により結合されたD−グリコシアミン(D−glycocyamine)(N−硫酸化又はN−アセチル化)及びウラン酸(硫酸基の異なるL−イズロン酸又はD−グルクロン酸)の交互誘導体を含むもの又はD−グルコサミンとL−イズロン酸又はD−グルクロン酸との反復単位で構成される硫酸化の程度が様々な多糖鎖の異種混合物を含むものを意味する。ヘパリンは、ウシ又はブタの粘膜組織(例えば肺又は腸)等の天然源(natural source)に由来し得、種々の分子量を有し得る。
【0032】
本発明において、「塩化ベンザルコニウム」とは、以下の構造で表されるような、窒素に結合したベンジル及び3個のR基を主に有する第四級アンモニウム化合物並びに第四級アンモニウム化合物の混合物のハロゲン塩を指す。
【0033】
【化1】
【0034】
式中、R1は、炭素数約1〜約5のアルキル基であり、R2は、炭素数約1〜約5のアルキル基であり、R3は、炭素数約6〜約22のアルキル基であり、X-は、ハロゲン対イオンである。「塩化(物)(chloride)」という語の使用は原子番号17の特定のハロゲン対イオンを指すが、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の任意のハロゲン対イオンが本発明の態様で使用され得、最も一般的に使用される対イオンは塩化物である。更に、本発明において、「ベンザルコニウム」は、第四級アンモニウム化合物自体を指す。したがって、ハロゲン塩「塩化ベンザルコニウム」は、「ベンザルコニウム」及び塩化物対イオンを含む。本発明において、「HBAC」とは、ヘパリンと塩化ベンザルコニウムの複合体を指す。種々のグレード及び分子量のヘパリンが使用され得る。種々のグレードの塩化ベンザルコニウム及びR基の鎖長が様々なベンザルコニウムイオンの別の塩も使用することができ、これらは、精製された形態であってもよく、混合物の形態であってもよく、あるいは別の関連する化合物又は無関係の化合物と組み合わされてもよい。
【0035】
分析物センサー
抗血栓性表面を有するコーティングに適した分析物センサーとしては、センサーの少なくとも一部にポリマー外面を有する分析物センサーが含まれる。好ましくは、センサーのこの部分は、生体内配置、より好ましくは血管内配置用に構成されている。外面の一部として用いることができるポリマー材料としては、ポリオレフィン(例えばポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリカーボナート、ポリスルホン、フルオロカーボン等の疎水性ポリマーが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリマー材料はナノ多孔質であり得る。いくつかの実施形態では、ポリマー材料はマイクロ多孔質であり得る。特定のそのような実施形態では、平均細孔径は約2nm〜約10nm、約10nm〜約20nm、約20nm〜30nm、約30nm〜約40nm、又は約40nm〜約50nmであり得、上記範囲の組合せも含まれる。したがって、例えば特定の実施形態では、平均細孔径は、約10nm〜約30nm又は約20nm〜約40nmであり得る。別の実施形態では、ポリマー材料はメソ多孔質であり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、多孔質ポリマー表面は、センサー本体の少なくとも一部の被覆又はシースとなり得る。ポリマー表面が被覆又はシースである場合、これは任意の好適な方法により作製及び/又は塗布され得る。センサーは、センサーに用いる感知化学/技術に適するようにさまざまに構築され得る。一実施形態では、分析物濃度に関連した蛍光反応を生じるセンサー等の光センサーが、センサーアセンブリーの少なくとも一部に多孔質ポリマー外表面を有し得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、センサーは、不溶性ポリマーマトリックスを含み得、これは分析物感受性の化学指示薬系を固定し、目的の分析物に十分に透過性である。好適なポリマーマトリックス材料としてはアクリルポリマーに関連するものが含まれる。いくつかの実施形態では、フルオロフォア及び/又はバインダー/クエンチャーをポリマーマトリックス中に含めてもよい(例えば、米国特許第6,627,177号、同第7,470,420号、及び同第7,417,164号参照;これらぞれぞれの全体を参照により本明細書に援用する)。
【0038】
例えば米国特許公開第2008/0119704号、同第2008/0197024号、同第2008/0200788号、同第2008/0200789号、及び同第2008/0200791号に開示されている電気化学的センサー等の任意のその他の血管内グルコースセンサーが本発明の実施形態に従って用いられ得る。
【0039】
グルコースセンサーの好ましい実施形態は、患者の体内に植え込むための構成をしている。例えば、センサーの植込みは、血中グルコースレベルを直接調べるために動脈系又は静脈系になされ得る。植込み部位は、センサーの特定の形状、構成要素、及び構成に影響し得る。いくつかの実施形態では、センサーは間質(interstitial)配置用の構成であり得る。
【0040】
血管内グルコースモニタリングのための、グルコースを感知する化学指示薬系及びグルコースセンサー構成の例としては、米国特許第5,137,033号、同第5,512,246号、同第5,503,770号、同第6,627,177号、同第7,417,164号、及び同第7,470,420号、及び米国特許公開第2008/0188722号、同第2008/0188725号、同第2008/0187655号、同第2008/0305009号、同第2009/0018426号、同第2009/0018418号、及び同時係属中の米国特許出願第11/296,898号、同第12/187,248号、同第12/172,059号、同第12/274,617号、及び同第12/424,902号(これらそれぞれの全体を参照により本明細書に援用する)に開示されている光センサーが含まれる。
【0041】
血管内配置用に構成された他のグルコースセンサーとしては、電気化学的センサー、例えば米国特許公開第2008/0119704号、同第2008/0197024号、同第2008/0200788号、同第2008/0200789号、及び同第2008/0200791号(これらそれぞれの全体を参照により本明細書に援用する)に開示されているものが含まれる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態に係る光学グルコースセンサーは、化学指示薬系を含む。いくつかの有用な指示薬系は、分析物結合部分に作動可能に結合されたフルオロフォアを含み、分析物の結合によりフルオロフォア濃度の目に見える光学的変化(例えば発光強度)が生じる。例えば、HPTS−トリCysMA等の蛍光色素に作動可能に結合された3,3’−oBBV等のグルコース結合部分は、蛍光色素の発光強度をクエンチングし、クエンチングの程度は、グルコースの結合で弱まり、その結果、グルコース濃度に関連する発光強度が増加する。別の好ましい実施形態では、指示薬系は更に、感知部分(例えば色素
クエンチャー)を固定する手段を含み、その結果、それらは互いに反応(クエンチング)するのに十分な物理的近接が維持される。そのような固定手段は、好ましくは、水性環境(例えば血管内)で不溶性であり、標的分析物に対して透過性であり、感知部分に対して不透過性である。典型的には、固定手段は、非水溶性有機ポリマーマトリックスを含む。例えば、HPTS−トリCysMA色素及び3,3’−oBBVクエンチャーは、DMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)ヒドロゲルマトリックス内に効果的に固定され得る。
【0043】
いくつかの好ましいフルオロフォア(例えば、HPTS−トリCysMA)、クエンチャー/分析物結合部分(例えば、3,3’−oBBV)、及び固定手段(例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド)、並びにそのような指示薬系を合成及び構築する方法の更に詳細な説明は、米国特許第6,627,177号、同第7,417,164号、及び同第7,470,420号、並びに米国特許公開第2008/0188722号、同第2008/0188725号、同第2008/0187655号、同第2008/0305009号、同第2009/0018426号、同第2009/0018418号、並びに同時係属中の米国特許出願第12/187,248号、同第12/172,059号、同第12/274,617号、及び同第12/424,902号に記載されている。
【0044】
その他の指示薬化学物質、例えばGray et al.に付与された米国特許第5,176,882号及びRussellに付与された同第5,137,833号に開示されているものも、本発明の実施形態に従って使用することができる(両方の文献の全体を参照により本明細書に援用する)。いくつかの実施形態では、指示薬系は、米国特許第6,197,534号、同第6,227,627号、同第6,521,447号、同第6,855,556号、同第7,064,103号、同第7,316,909号、同第7,326,538号、同第7,345,160号、及び同第7,496,392号、米国特許出願公開第2003/0232383号、同第2005/0059097号、同第2005/0282225号、同第2009/0104714号、同第2008/0311675号、同第2008/0261255号、同第2007/0136825号、同第2007/0207498号、及び同第2009/0048430号、並びにPCT国際公開第2009/021052号、同第2009/036070号、同第2009/021026号、同第2009/021039号、同第2003/060464号、及び同第2008/072338号(これらの全体を参照により本明細書に援用する)に開示されている指示薬系やグルコース結合タンパク質等のフルオロフォアに作動可能に結合した分析物結合タンパク質を含み得る。
【0045】
図1は、本発明の実施形態に係るセンサー2を示す図である。センサーは、多孔質膜シース14中に配置された遠位端12を有する光ファイバー10を含む。光ファイバー10は、光ファイバー壁中に孔6A等の空洞を有し、これは例えば穴開け(drilling)又は切断(cutting)等の機械的手段により形成することができる。光ファイバー10中の孔6Aにはポリマー等の好適な化合物が充填されている。いくつかの実施形態では、ポリマーはヒドロゲル8である。センサー2の別の実施形態では、図2に示すように、光ファイバー10は、孔6Aを有さず、代わりに、光ファイバー10の遠位端12の遠位側及びミラー23の近位側の空間にヒドロゲル8が配置されている。いくつかの実施形態では、センサー2はグルコースセンサーである。いくつかの実施形態では、グルコースセンサーは血管内グルコースセンサーである。
【0046】
いくつかの実施形態では、多孔質膜シース14は、ポリエチレン、ポリカーボナート、ポリスルホン、ポリプロピレン等のポリマー材料から作製され得る。他の材料、例えばゼオライト、セラミックス、金属、又はこれらの材料の組合せを用いて多孔質膜シース14を作製することもできる。いくつかの実施形態では、多孔質膜シース14はナノ多孔質で
あり得る。別の実施形態では、多孔質膜シース14はマイクロ多孔質であり得る。更に別の実施形態では、多孔質膜シース14はメソ多孔質であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、図2に示すように、多孔質膜シース14はコネクター16によって光ファイバー10に取り付けられている。例えば、コネクター16は、図2に示すように、光ファイバー10に圧縮力を印加することにより多孔質膜シース14を所定の位置に保持する弾性カラー(collar)であり得る。別の実施形態では、コネクター16は接着剤(adhesive)又は熱溶接物である。
【0048】
いくつかの実施形態では、図1に示すように、光ファイバー10の遠位端12の遠位側の多孔質膜シース14内にミラー23及びサーミスター25が配置され得る。光ファイバー10と多孔質膜シース14の間の空間にサーミスターリード27を通すことができる。サーミスター25を示しているが、例えば電熱対、圧力トランスデューサー、酸素センサー、二酸化炭素センサー、pHセンサー等の他のデバイスを代わりに使用することもできる。
【0049】
いくつかの実施形態では、図2に示すように、多孔質膜シース14の遠位端18は開いており、例えば接着剤20で密封(seal)することができる。いくつかの実施形態では、接着剤20は、遠位端18を満たした後に重合させて栓にすることができる重合可能材料を含み得る。あるいは、別の実施形態では、遠位端18は、遠位端18上でポリマー材料の一部を溶融させ、開口部を閉じ、溶融ポリマー材料を再度固化させることにより、熱溶接され得る。図1に示すように、別の実施形態では、ポリマー栓21を遠位端18に挿入し、加熱して、多孔質膜シース14に栓を溶接することができる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボナート、ポリスルホン等の熱可塑性ポリマー材料が特に熱溶接に適している。別の実施形態では、多孔質膜シース14の遠位端18は光ファイバー10に対して密封されてもよい。
【0050】
多孔質膜シース14を光ファイバー10に取り付け、多孔質膜シース14の遠位端18を密封した後、センサー2に、モノマーと、架橋剤と、第1の開始剤とを含む第1の溶液を真空充填してよい。センサー中の空洞中への多孔質膜を介した重合可能溶液の真空充填の詳細は、その全体を参照により本明細書に援用するMarkle et al.に付与された米国特許第5,618,587号に記載されている。第1の溶液で光ファイバー10内の空洞6を満たすことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の溶液は水性であり、モノマー、架橋剤、及び第1の開始剤は水溶性である。例えば、いくつかの実施形態では、モノマーはアクリルアミドであり、架橋剤はビスアクリルアミドであり、第1の開始剤は過硫酸アンモニウムである。別の実施形態では、モノマーは、ジメチルアクリルアミド又はN−ヒドロキシメチルアクリルアミドである。モノマー及び/又は架橋剤の濃度を高くすることで、得られるゲルの多孔度を下げることができる。逆に、モノマー及び/又は架橋剤の濃度を低くすることで、得られるゲルの多孔度を上げることができる。他の種類のモノマー及び架橋剤も想定される。別の実施形態では、第1の溶液は更に、フルオロフォアと分析物結合部分とを含む分析物指示薬系を含み、分析物結合部分は、分析物の濃度に関連した量だけフルオロフォアの蛍光発光をクエンチングするように機能する。いくつかの実施形態では、フルオロフォア及び分析物結合部分は、重合中に固定され、その結果、フルオロフォアと分析物結合部分が作動可能に連結される。別の実施形態では、フルオロフォア及び分析物結合部分は共有結合している。指示薬系化学物質はポリマーマトリックスにも共有結合されていてよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、センサー2に第1の溶液を充填した後、光ファイバー10並
びに第1の溶液が充填された多孔質膜シース14及び空洞6を、第2の開始剤を含む第2の溶液へと移し、浸漬する。いくつかの実施形態では、第2の溶液は水性であり、第2の開始剤はテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)である。いくつかの実施形態では、第2の溶液は更に、第1の溶液と同じ蛍光色素及び/又はクエンチャーをほぼ同じ濃度で含む。第1の溶液及び第2の溶液で蛍光色素及びクエンチャーを同じにすることで、第1の溶液から第2の溶液への蛍光色素及びクエンチャーの拡散を低減することができる。第2の溶液を用いるいくつかの実施形態では、第2の溶液は更に、第1の溶液とほぼ同じ濃度のモノマーを含む。これにより、第1の溶液と第2の溶液の間のモノマー勾配が低減されることにより、第1の溶液からのモノマーの拡散が低減される。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1の溶液と第2の溶液の間の界面で、又はほぼ界面で、第1の開始剤及び第2の開始剤が一緒に反応してラジカルが生成し得る。いくつかの実施形態では、第1の開始剤及び第2の開始剤は酸化還元反応中で一緒に反応する。別の実施形態では、熱分解、光分解による開始(photolytic initiation)、又は電離放射線による開始によりラジカルが生成し得る。これらの別の実施形態では、第1の溶液中のどこかでラジカルが生成し得る。ラジカルが生成すると、その後、ラジカルが第1の溶液中のモノマーと架橋剤の重合を開始させ得る。
【0054】
本明細書に記載されているように、酸化還元反応を介してラジカルが生成する場合、通常、第1の溶液と第2の溶液の間の界面から多孔質膜シース14の内側へ、そして光ファイバー10中の空洞に向かって、重合が進行する。重合を急速に開始させることは、第1の溶液から第2の溶液へと拡散し得る第1の開始剤の量を減らす助けとなり得る。第1の溶液から拡散する第1の開始剤の量を減らすことで、多孔質膜シース14の外側でのモノマー重合の低減が促進され、滑らかな外面形成が促進される。モノマー及び架橋剤の重合によりヒドロゲル8が得られ、これがいくつかの実施形態では指示薬系を実質的に固定し、センサー2が形成される。重合の方法論の更なるバリエーションは、その全体を参照により本明細書に援用する米国特許公開第2008/0187655号に開示されている。
【0055】
図3Aに関して、特定の実施形態では、グルコースセンサー2は、光ファイバーの側部にまっすぐ貫通して開けられた一連の孔6Aを有する中実の光ファイバーである。特定の実施形態では、孔6Aにヒドロゲル8が充填されている。特定の実施形態では、グルコースセンサー2を貫通して開けられた一連の孔6Aは、水平方向に均等に配置され、グルコースセンサー2の側面の周りを等間隔で周回しており、つる巻状又は螺旋状の(spiral又はhelical)形態を形成している。特定の実施形態では、一連の孔6Aは、グルコースセンサー2の直径を通して開けられている。図3Bに関して、特定の実施形態では、グルコースセンサー2は、ファイバーの側面に角度をもって貫通して開けられた一連の孔6Aを有する中実の光ファイバーである。特定の実施形態では、角度をもって開けられた一連の孔6Aは、ヒドロゲル8が充填されており、水平方向に均等に配置され、グルコースセンサー2の側面の周りを等間隔で周回している。図3Cに関して、特定の実施形態では、光ファイバーは、光ファイバーの長手方向に沿った溝6Bを含み、溝6Bにはヒドロゲル8が充填されている。特定の実施形態では、溝6Bの深さは光ファイバーの中心まで及ぶ。特定の実施形態では、溝6Bは光ファイバーの周りにつる巻状になる。特定の実施形態では、溝6Bは光ファイバーの周りにつる巻状になり、少なくとも1回、周回する。特定の実施形態では、溝6Bは光ファイバーの周りにつる巻状になり、光ファイバーを複数回、周回する。
【0056】
図3Dに関して、特定の実施形態では、グルコースセンサー2は、ファイバーから切り抜かれた三角形くさび形6Cを有する、中実の光ファイバーである。特定の実施形態では、三角形くさび形領域6Cにヒドロゲル8が充填されている。特定の実施形態では、三角形くさび形切抜き6Cは、水平方向及びグルコースセンサー2の側面の周りに等間隔に配置されている。特定の実施形態では、グルコースセンサー2中を移動する全ての光が、ヒドロゲル8を充填された少なくとも1つの孔6A又は溝6Bを介して伝えられる。
【0057】
特定の実施形態では、図4に示すように、グルコースセンサー2は、遠位端12を有する光ファイバー10、近位端136及び遠位端138を有する非侵襲性先端部分134、光ファイバー10の遠位端12と非侵襲性先端部分134の近位端136の間の空洞6、並びに光ファイバー10の遠位端12を非侵襲性先端部分134の近位端136に接続するロッド140を含む。グルコース感知化学物質(例えばフルオロフォア及びクエンチャー)を含むヒドロゲル8が空洞6を満たしている。ヒドロゲルが充填された空洞6の被覆は、ヒドロゲル8の中へ及びヒドロゲル8の外へグルコースを通過させる、選択的透過膜14である。これらの実施形態はグルコースセンサー2を用いて説明されているが、当業者には、例えば感知化学物質及び必要に応じて選択的透過膜14を変えることによって、他の分析物測定用にセンサー2を改変することができると理解されよう。センサー2の近位部分は光ファイバー10の近位部分を含む。いくつかの実施形態では、センサー2の遠位部分の直径D1は、センサー2の近位部分の直径D2より大きい。例えば、センサー2の遠位部分の直径D1は約0.0080インチ〜0.020インチであり得、一方、センサー2の近位部分の直径D2は約0.005インチ〜0.015インチであり得る。いくつかの実施形態では、センサー2の遠位部分の直径D1は約0.012インチであり、センサー2の近位部分の直径D2は約0.010インチである。
【0058】
いくつかの実施形態では、グルコースセンサー2は、熱電対、サーミスター等の温度センサー25を含む。温度センサー25は、ヒドロゲル8及びグルコース感知化学物質系の温度を測定することができる。温度センサー25は、フルオロフォア系等のグルコース感知化学物質が温度変化の影響を受ける場合に特に重要である。例えば、いくつかの実施形態では、フルオロフォア系が放出する蛍光強度はフルオロフォア系の温度に依存する。フルオロフォア系の温度を測定することにより、温度によって生じるフルオロフォア蛍光強度の変動を考慮することができ、以下に更に詳細に説明するように、グルコース濃度をより正確に測定することができる。
【0059】
特定の実施形態では、ヒドロゲルは、複数のフルオロフォア系に会合している。特定の実施形態では、フルオロフォア系はグルコースレセプター部位を有するクエンチャーを含む。特定の実施形態では、グルコースレセプターに結合するグルコースが存在しない場合、クエンチャーは、励起光によって色素が励起された時にフルオロフォア系の発光を防止する。特定の実施形態では、グルコ−スレセプターに結合するグルコースが存在する場合、クエンチャーは、励起光によって色素が励起された時にフルオロフォア系の発光ができるようにする。
【0060】
特定の実施形態では、フルオロフォア系によって生じる発光は溶液(例えば血液)のpHにより異なり、その結果、異なる励起波長(酸性型のフルオロフォアを励起する励起波長及び塩基性型のフルオロフォアを励起する励起波長)によって異なる発光シグナルが生じる。好ましい実施形態では、塩基性型のフルオロフォアからの発光シグナルに対する酸性型のフルオロフォアからの発光シグナルの割合は血液のpHレベルに関連する。グルコース及びpHの同時測定は米国特許公開第2008/0188722号に詳細に記載されている(その全体を参照により本明細書に援用する)。特定の実施形態では、干渉フィルターを用い、2つの励起光が一方の型(酸性型又は塩基性型)のフルオロフォアのみを励起するようにする。
【0061】
光学的感知系、光源、ハードウェア、フィルター、及び検出系のバリエーションは、その全体を参照により本明細書に援用する米国特許公開第2008/0188725号に詳細に記載されている。例えば、特定の実施形態が少なくとも2つの光源を含む図5を参照
されたい。特定の実施形態では、光源301A、301Bは、コリメーターレンズ302A、302Bを通して送られる励起光を発する。特定の実施形態では、コリメーターレンズ302A、302Bから得られる光は干渉フィルター303A、303Bに送られる。特定の実施形態では、干渉フィルター303A、303Bから得られる光は、集束レンズ304A、304Bにより光ファイバー線305A、305B中に集束される。特定の実施形態では、光ファイバー線は単繊維であってもよく、繊維束であってもよい。特定の実施形態では、光ファイバー線309は単繊維であってもよく、繊維束であってもよい。特定の実施形態では、光ファイバー線305A、305B、309はジャンクション306で束ねられ、グルコースセンサー307で接続される。グルコースセンサー307はヒドロゲル8を含む。
【0062】
特定の実施形態では、発光及び励起光はミラー13で光ファイバー線309へと反射される。特定の実施形態では、光ファイバー線309は、グルコース測定システム300中の光の全スペクトルを測定するマイクロ分光計310に接続されている。マイクロ分光計310は、データ処理モジュール311、例えばセンサー制御部及び/又は受光/ディスプレイ部に連結されてよい。特定の実施形態では、対応する励起光に対する発光の割合はグルコース濃度に関連する。特定の実施形態では、第2の励起光により生じる発光(例えば塩基性型)に対する第1の励起光により生じる発光(例えば酸性型)の割合は試験溶液(例えば血液)のpHレベルに関連する。
【0063】
特定の好ましい実施形態では、マイクロ分光計は、ベーリンガーインゲルハイム社(Boehringer Ingelheim)製のUV/VIS Microspectrometer Moduleである。任意のマイクロ分光計を使用することができる。あるいは、マイクロ分光計の代わりに別の分光計、例えばオーシャンオプティック社(Ocean Optic Inc.)製の分光計を使用することもできる。
【0064】
上記の特定の実施形態では、比率計算(ratiometric calculation)のために種々の光強度を測定する必要がある。特定の実施形態では、これらの測定値は、特定の波長又は波長域でのピーク振幅を測定することによって決定される。特定の実施形態では、これらの測定値は、例えばマイクロ分光計の出力のように、2つの特定の波長の間の曲線下面積を計算することによって決定される。
【0065】
図6A及び6Bに、血管内光学グルコースセンサーの別の実施形態が図解されている。このセンサー形態は、国際公開第2009/019470号(その全体を参照により本明細書に援用する)に更に詳細に開示されている。体に挿入されていることによる圧力に耐えることができる、より強く、より堅牢なセンサーを提供しつつ、いくらかの柔軟性を維持するために、図6A及び6Bに示されているような内部強化壁を有するセンサーが開発された。図6Aは、メッシュ501Aが高密度に詰められた管を示す図であり、メッシュ501Aは、第1の材料できており、第2の材料の外壁502でコーティングされている。管の外壁502中に線状に配列された3つの四角形の切抜き503が図6Aに見られるが、実施形態に応じて、他の形状、他の配置の切り抜きが可能であることは明らかである。図解されている実施形態では、メッシュ501Aは高密度のフィラメント交差を示している。したがって、この実施形態は強度が増大され、多孔度が低下している。管構造を柔軟にして感知位置を修正する操作を可能にしつつ、センサーに強度を与えるために、編まれた形状(braid)も可能である。
【0066】
図6Bは、第1の材料が第2の材料の外壁502でコーティングされたコイル501Bの形態である実施形態を示している。図6A同様、管の外壁502に線状に配置された3つの四角形の切抜き503が図6Bに見られるが、実施形態に応じて、他の形状、他の配置の切抜きが可能であることは明らかである。この実施形態では、コイル501Bが高密
度に詰められているので、図6Aに示す実施形態と同様に、強度が増大されており、多孔度が低下している。強化壁は、例えば、その全体を参照により本明細書に援用する国際公開第2004/054438号に記載されているように、感知装置を含む編まれた管構造を提供する等の複数の方法で提供することができる。
【0067】
第1の材料はメッシュ501Aの形態であり、得られる管の特性を調節するためにフィラメント交差の密度は変えることができる。例えば高密度のメッシュは強度がより強くなり得、低密度のメッシュは柔軟性がより大きくなり得る。メッシュ密度の変化はメッシュの多孔度も変化させる。このことは、メッシュの多孔度により、試験される材料の管中への拡散速度が調節されるため、外壁開口部の位置において重要である。コイルの密さ(tightness)を変えても同様な影響が生じ得る。
【0068】
中空管の連続的な実質的に不透過性の外壁502を形成するために、第2の材料を用いて第1の材料をコーティングする。本発明において、実質的に不透過性とは、第2の材料が、管の外側から管の内側への材料の進入に対して不透過性である事実上閉じた管を形成することを意味する。したがって、第2の材料の一部が除去されるまで、管は、いくつかの実施形態では末端を除いて、長手方向に沿って事実上密封されている。
【0069】
第2の材料としての使用に適した材料には一般的にポリマー材料が含まれ、より具体的にはポリエステル、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、フルオロポリマー、例えばフッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びパーフルオロアルコキシポリマー(PFA);ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド、例えばポリエーテルブロックアミド(PEBA)、Pebax(登録商標)、ナイロン、及びポリウレタンが含まれる。ポリエステル及びポリオレフィンがコイル501B又は管状メッシュ501Aに対する押出に適しているため好ましい。ポリエステル又はポリオレフィンコーティングの一部の例えばレーザーアブレーションによる選択的除去も簡単明瞭である。ポリオレフィンはレーザーによる除去が容易であるので、特に好ましい。
【0070】
第2の材料の一部を選択的に除去する前に連続的な実質的に不透過性の管を形成するために、第2の材料を用いて最初に、第1の材料で形成されたコイル又は管状メッシュをコーティングする。第2の材料で第1の材料の外表面をコーティングし、第1の材料で形成されたコイル又は管状メッシュの周りに連続的な実質的に不透過性の管を事実上形成してもよく、あるいは、第2の材料で第1の材料を完全に封入し、第1の材料で形成されたコイル又は管状メッシュが埋め込まれた第2の材料の管を事実上形成してもよい。一実施形態では、第1の材料で形成されたコイル又は管状メッシュをディップコーティングすることによって第2の材料を第1の材料に塗布することができる。この実施形態では、第2の材料はおそらくポリアミドであり、それにより非常に堅い管が得られる。別の実施形態では、第1の材料のコイル又は管状メッシュが周りに形成された第2の材料の管を提供することができる。次いで、第2の材料の更なる層を第1の材料の上に塗布することにより、第1の材料が第2の材料の2つの層で挟まれる。
【0071】
好ましい実施形態では、第1の材料は金属性であり、第2の材料はポリマー性である。第1及び第2の材料に加えて、更なる材料を本発明の管に含めることも可能である。例えば、いくつかの応用例では、管を含むセンサーを生体内で見ることができるように、放射線不透過性の添加物を含めることも有用であり得る。例えば、放射線不透過性添加物、例えば硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、及びタングステンを添加することができる。これらは、有する場合には、第2の材料内にドープされることが好ましい。
【0072】
特定のプロセスでは、外壁の領域に少なくとも1つの開口部を作製しつつその領域の第
1の材料を保持するために、第2の材料の一部を選択的に除去する。第1の材料はコイル又は管状メッシュの形態で存在するので、第1の材料は完全に閉じた管を形成していない。したがって、前記領域で第2の材料を除去する時、これは管の連続的な実質的に不透過性の壁に切れ目(break)を事実上形成する。第2の材料が単に第1の材料をコーティングしている場合、単純に、開口部を形成しようとする領域でこの第2の材料により提供されているコーティングを除去することが必要である。第2の材料が第1の材料を事実上封入(encapsulate)している場合、開口部を形成しようとしている領域の第1の材料を囲んで封入している第2の材料を全て除去することが必要である。
【0073】
好ましくは、センサーの化学指示薬系は、第2の材料の選択的除去によって形成される開口部に隣接して配置される。これにより、管壁上の開口部の領域の環境を感知することができる。例えばセンサーがグルコースセンサーである場合、グルコースが、センサーが挿入された場所の血管又は他の腔から、開口部を介して、プローブによってその存在を検出及び測定できる管中へと、通過することができる。
【0074】
外壁中の開口部のサイズは一般的に1〜400mm2、例えば25〜225mm2となる。開口部のサイズが小さすぎると、センサーが挿入される血液又は他の物質が開口部を通過することができないか、正確な測定を行うための十分な量が通過しなくなるため、開口部のサイズは小さ過ぎてはならない。また、開口部は、センサーを体内に挿入した時にプローブがわずかに動いた場合でもプローブを開口部に隣接させるプローブ位置決定ができる十分な大きさでなくてはならない。
【0075】
一実施形態では、管壁中に1つだけ開口部が作製される。すなわち第2の材料の1つの領域だけが選択的に除去される。好ましくは、開口部が及ぶのは管の外周の一部だけである。一実施形態では、管の全長に沿って第2の材料のいくらかの連続性を保持することが好ましく、したがって、開口部が管の外周に完全に及ばないことが好ましい。例えば、開口部は管の外周の最大で75%まで、より好ましくは50%まで及ぶことが好ましいことがある。本発明の別の実施形態では、管壁に複数の開口部を作製してよく、すなわち、第2の材料の2つ以上の領域を選択的に除去してよい。この実施形態では、管の長手方向に沿って複数の箇所にプローブを配置することができ、複数の測定値を得ることができる。したがって、複数のプローブを、各管(each tube)が管壁内の異なる開口部に隣接するように管内に配置することができる。あるいは、1個のプローブを管内に配置し、1つの開口部から別の開口部へとプローブを動かす手段を備わらせることにより、管の長手方向に沿って複数の箇所で測定値を得ることができる。
【0076】
抗血栓性コーティング
抗血栓性薬剤、例えばヘパリン、アルブミン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、ウロキナーゼ等の生体適合性の薬剤分子を医療機器表面に付着させることで生体適合性を向上させる。例えば、生体適合性薬剤は、アルブミン及びヘパリンの両方の分子を含み得る。一実施形態では、生体適合性材料の分子は、互いに結合されて、連結部分により固体表面に付着したフィルムを形成する。別の例では、光学グルコースセンサーの種々の表面処理、例えば米国特許第4,722,906号、同第4,973,493号、同第4,979,959号、同第5,002,582号、同第5,049,403号、同第5,213,898号、同第5,217,492号、同第5,258,041号、同第5,512,329号、同第5,563,056号、同第5,637,460号、同第5,714,360号、同第5,840,190号、同第5,858,653号、同第5,894,070号、同第5,942,555号、同第6,007,833号、同第6,090,995号、同第6,121,027号、同第6,254,634号、同第6,254,921号、同第6,278,018号、同第6,410,044号、同第6,444,318号、同第6,461,665号、同第6,465,178号、同第6,465,525号、同第6,506,895号、同第6,559,132号、同第6,669,994号、同第6,767,405号、同第7,300,756号、同第7,550,443号、同第7,550,444号、並びに米国特許公開第20010014448、同第20030148360号、及び同第20090042742号(これらそれぞれの全体を参照により本明細書に援用する)に開示されているものを利用することができる。
【0077】
一実施形態では、化学的連結部分は、式A−X−Bで表され、式中、Aは、固体表面に共有結合可能な光化学的反応性基を表し;Bは、望ましくは基Aが反応性でない特異的活性化に反応して、生体適合性薬剤と共有結合を形成できる、異なる反応性基を表し;Xは、基「A」及び「B」を連結する、水性の生理学的流体中での切断に抵抗性である比較的不活性な非干渉骨格部分を表す。ここで、生理学的流体とは、Xが接触することになる流体(例えば、血液、間質液等)である。本発明の方法では、連結部分の基「A」は固体表面に共有結合しており、これは、生体適合性薬剤分子が基「B」に共有結合した時に生体適合性薬剤分子が固体表面を事実上遮蔽して生体適合性の有効な表面が得られるのに十分な集団密度である。本発明の生体適合性デバイスは、以下の化学的連結部分を介して生体適合性薬剤の分子が結合した固体表面を含む:固体表面−A残基−X−B残基−生体適合性薬剤分子。
【0078】
一実施形態では、生体適合性薬剤分子は、以下の式で表される化学的連結部分により、生体適合性である有効な表面を得るのに十分な集団密度で固体表面に選択的に結合している:
式中、Rはセレクター基(selector group)を表し、特異的結合対の一員であり、特異的結合対のもう一方の一員を形成する選択された生体適合性薬剤が有するレセプターと結合を形成するよう反応性であり;A及びBは、上記でA及びBとして説明した基を表す。Xは、基「A」、「B」、及び「R」を連結し且つ基「B」を基「R」から立体的に少なくとも約10Å離すことができる、比較的不活性な非干渉骨格ラジカルを表す。
【0079】
基「B」及び「R」は、好ましくは、立体的に明確に識別できる基である。すなわち、これらは、熱振動及び回転の過程で少なくとも約10Åの距離離れ得る。特異的結合対の一員を表す基R(「セレクター」基)は、生体適合性薬剤のエピトープ部位又は他の結合部位(この部位は本発明の「レセプター」の典型例である)で生体適合性薬剤と結合、通常は非共有結合を一般的に形成する。活性化されると生体適合性薬剤と共有結合できる基「B」は、基「R」と立体的に間隔を置いてあってよく、それにより、レセプター部位と間隔を置いた部位で共有結合を形成することが可能になる。セレクター・レセプター結合は、例えば、セレクター基と化学的連結部分の間の脆弱な結合の切断及びその後の例えば透析、環境変化(pH、イオン強度、温度、溶媒極性等)によるセレクターの除去により、あるいは(生体適合性薬剤が酵素である場合のように)セレクター基の自然発生的な触媒修飾により、レセプター部位から解離し得る。したがって、レセプターは再活性化されて、特異的結合対の一員とその後の反応が可能になる。
【0080】
本発明において、「特異的結合対」とは、互いに特異的な結合親和性を有する物質の対を指す。そのような物質としては、抗原及びその抗体、ハプテン及びその抗体、酵素及びその結合相手(例えば補因子、阻害剤、及びその酵素により反応が促進される化学的部分)、ホルモン及びその受容体、特定の炭水化物基及びレクチン、ビタミン及びその受容体、抗生物質及びその抗体、及び天然の結合タンパク質等が含まれる。分析化学において特異的結合対を用いるというコンセプトは周知であり、更なる説明はほとんど必要ない。その教示を参照により本明細書に援用するAdamsに付与された米国特許第4,039,652号、Maggio, et alに付与された米国特許第4,233,402号、及びMurray, et alに付与された米国特許第4,307,071号を引用する。
【0081】
特定の実施形態では、Xは、好ましくは、ポリメチレン等のC1−C10アルキル基、ポリメチロール等の炭水化物、ポリエチレングリコール等のポリオキシエチレン、又はポリリジン等のポリペプチドである。
【0082】
反応性基Bは、好ましくは、好適な活性化後にタンパク質性の又は他の生体適合性の薬剤に共有結合する基である。そのような基の典型例としては、その教示を参照により本明細書に援用するGuireに付与された米国特許第3,959,078号に記載及び例示されているような熱化学基及び光化学基が挙げられる。
【0083】
光化学的反応性基(A)(化学線照射により共有結合が活性化される)の典型例としては、アリール、アルキル、及びアシルアジド、オキサジジン(oxazidine)、イソシアナート(ナイトレン発生剤)、アルキル及び2ケトジアゾ誘導体及びジアジリン(カルベン発生剤)、芳香族ケトン(三重項酸素発生剤)、芳香族ジアゾニウム誘導体、並びに多数のクラスのカルボニウムイオン及びラジカル発生剤を挙げることができる。光化学的反応性基の更なる説明についてはFrederick J. Darfler and Andrew M. Tometsko, chapter 2 of Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins (Boris Weinstein, ed) vol. 5, Marcel Dekker, Inc. New York, 1978を参照されたい。アジドニトロフェニル、フルオロアジドニトロベンゼン、及び芳香族ケトンは、暗黒での化学反応条件に対して安定であり、ほとんどの生体材料に無害な波長の光によって活性化されやすく、生体材料上のほとんどの部位で共有結合を形成できる短寿命の反応性中間体を有用な量形成するので、これらは好ましい基を形成する。
【0084】
大抵の場合に光化学的反応性基としての使用に適したニトロフェニルアジド誘導体(例えばX基を含む)は、フルオロ−2−ニトロ−4−アジドベンゼンに由来し得、4−アジド−2−ニトロフェニル(ANP)−4−アミノブチリル、ANP−6−アミノカプロイル、ANP−11−アミノウンデカノイル、ANP−グリシル、ANP−アミノプロピル、ANP−メルカプトエチルアミノ、ANP−ジアミノヘキシル、ANP−ジアミノプロピル、及びANP−ポリエチレングリコールが含まれる。ANP−6−アミノカプロイル、ANP−11−アミノウンデカノイル、及びANP−ポリエチレングリコールが好ましい。光化学的反応性基としての使用に好ましい芳香族ケトンとしては、ベンジルベンゾイル及びニトロベンジルベンゾイルが含まれる。
【0085】
熱化学的反応性基(熱エネルギーによって活性化される)の典型例としては、ニトロフェニルハライド、アルキルアミノ、アルキルカルボキシル、アルキルチオール、アルキルアルデヒド、アルキルメチルイミダート、アルキルイソシアナート、アルキルイソチオシアナート、及びハロゲン化アルキル基が含まれる。
【0086】
熱化学的反応性基としての使用に適した基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、第一級アミノ基、チオール基、マレイミド、及びハライド基が含まれる。6−アミノヘキサン酸及びアミノウンデカン酸等の基のN−オキシスクシンイミドカルボキシルエステル;メルカプト無水コハク酸及びベータ−メルカプトプロピオン酸等のアルキルチオール基;ホモシステインチオラクトン、及びポリエテイレングリコール(polyetheylene glycol)誘導体が好ましい。
【0087】
参照により本明細書に援用する米国特許第6,077,698号に開示されているようなその他の連結剤も本開示の実施形態に使用することができる。例えば、二官能性以上の光活性化可能な荷電化合物を含む化学的連結剤を使用することができる。連結剤は、好ましくは、水溶性を向上させるために、使用条件下で荷電されている少なくとも1つの基を提供する。連結剤は更に、連結剤を水系で架橋剤として使用することができるように、2以上の光活性化可能な基を提供してもよい。好ましい実施形態では、荷電は1又は複数の第四級アンモニウムラジカルを含めることにより与えられ、光反応性基はベンゾフェノン等のアリールケトンの2以上のラジカルにより提供される。
【0088】
抗血栓剤は、それに共有結合した1又は複数の潜在的反応性基を有し得る。潜在的反応性基とは、外部から与えられた特定の刺激に反応して活性種を生成して隣接する支持体表面に共有結合を形成する基である。潜在的反応性基は、分子中の、保存条件下では共有結合が変化せずに保持されているが、活性化されると他の分子と共有結合を形成する原子の基である。潜在的反応性基は、外部の電磁エネルギー又は運動(熱)エネルギー吸収すると、活性種(active specie)、例えばフリーラジカル、ナイトレン、カルベン、及び励起状態のケトンを生成する。潜在的反応性基は、電磁スペクトルの種々の部分に反応性であるように選択することができ、スペクトルの紫外部、可視部、又は赤外部に反応性である潜在的反応性基が好ましい。記載されているような潜在的反応性基は一般的に周知である。
【0089】
アジドは潜在的反応性基の好ましいクラスを構成し、アジドには、アリールアジド、例えば参照により本明細書に援用する米国特許第5,002,582号に開示されているアリールアジド、例えばフェニルアジド、特に4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジド、アシルアジド、例えばベンゾイルアジド及びp−メチルベンゾイルアジド;アジドホルマート、例えばエチルアジドホルマート、フェニルアジドホルマート;スルホニルアジド、例えばベンゼンスルホニルアジド;並びにホスホリルアジド、例えばジフェニルホスホリルアジド及びジエチルホスホリルアジドが含まれる。ジアゾ化合物は潜在的反応性基の別のクラスを構成し、これには、ジアゾアルカン(−CHN2)、例えばジアゾメタン及びジフェニルジアゾメタン;ジアゾケトン、例えばジアゾアセトフェノン及び1−トリフルオロメチル−1−ジアゾ−2−ペンタノン、例えばt−ブチルジアゾアセタート及びフェニルジアゾアセタート;並びにベータ−ケトン−アルファ−ジアゾアセタート、例えばtブチルアルファジアゾアセトアセタートが含まれる。その他の潜在的反応性基としては、脂肪族のアゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル;ジアジリン、例えば3−トリフルオロメチル−3−フェニルジアジリン;ケテン(−CH=C=O)、例えばケテン及びジフェニルケテン;並びに光活性化可能なケトン、例えばベンゾフェノン及びアセトフェノンが含まれる。ペルオキシ化合物が潜在的反応性基の別のクラスと考えられ、これには、過酸化ジアルキル、例えば過酸化ジ−t−ブチル及び過酸化ジシクロヘキシル;並びにジアシル過酸化物、例えば過酸化ジベンゾイル及び過酸化ジアセチル;並びにペルオキシエステル(peroxyester)、例えばエチルペルオキシベンゾアートが含まれる。ポリマー分子を結合させる表面への共有結合形成を引き起こす潜在的反応性基の活性化後、ポリマー分子は潜在的反応性基の残基により表面に共有結合する。例示的な潜在的反応性基は、参照により本明細書に援用する米国特許第5,002,582号に記載されている。
【0090】
使用されるポリマー及びオリゴマーは1又は複数の潜在的反応性基を有し得る。特定の実施形態では、ポリマーは、1分子当たり少なくとも1つの潜在的反応性基を有し、反応性基と伸ばしたポリマーの長さの比率はオングストロームで約1/10〜約1/700、好ましくは約1/50〜1/400である。上記の記述から分かるように、光反応性の潜在的反応性基は、多くの場合、芳香族であり、したがって、通常、天然の状態で親水性ではなく疎水性である。
【0091】
潜在的反応性基及びそれらが結合するポリマー分子は、実質的に異なる親溶媒性特性を有し得る。例えば、潜在的反応性基は比較的疎水性であり得、一方、ポリマー分子は比較的親水性であり得、比較的疎水性の表面に分子の溶液が接触した時、疎水性である潜在的反応性基が表面のより近くに向きやすいために潜在的反応性基が活性化された時の結合効率が向上すると考えられる。好ましい潜在的反応性基はベンゾフェノン、アセトフェノン、及びアリールアジドである。
【0092】
潜在的反応性分子(潜在的反応性基を有する分子)を最初に表面に近接結合(close association)(溶媒溶液を用いて)させた後、表面に結合させるポリマーを潜在的反応性分子の潜在的反応性基とは異なる反応性基に接触させて共有結合させるプロセスにより、表面上へのポリマー充填密度(loading density)を向上させることができる。その後、潜在的反応性基を活性化させてそれらを表面に共有結合させることにより、ポリマーを表面に連結することができる。
【0093】
別の実施形態では、最初に潜在的反応性基を介してモノマー、オリゴマー、又は他の反応性化学単位を支持体に共有結合させることによってポリマー鎖を表面又は他の支持体上に提供してもよい。このようにして結合させた反応性単位に、重合反応中でモノマー又はオリゴマーを共有結合させるか、ポリマー鎖上への反応性単位の共有結合(グラフト化)を介してポリマーを共有結合させる。
【0094】
本発明の反応性化学単位には、前処理されていない表面又は他の支持体への共有結合のために、本明細書に記載の潜在的反応性基が共有結合している。これらの分子は、所望の性質を有するポリマーのポリマー分子に共有結合することができる反応性基又は添加されたモノマー若しくはオリゴマーと共に重合反応に入って所望の性質を有するポリマー鎖を生成することができる反応性基を有することを特徴とする。ポリマー分子に共有結合できる反応性化学分子としては、種々の種類のモノマー及びオリゴマーだけでなく、カルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、及びN−オキシスクシンイミドのような官能基を有する分子も含まれ、そのような基は、ポリマー鎖が有する反応性基と反応してポリマー鎖と結合する。反応性化学分子は、好ましくはモノマー又はオリゴマーであり、最も好ましくは、他のエチレン的不飽和モノマーとの付加重合反応に入ることができるエチレン的不飽和モノマーである。特に好ましいのは、アクリル酸又はメタクリル酸とヒドロキシ官能性潜在的反応性基とのエステル化生成物であるアクリラート及びメタクリラートモノマーである。そのような分子の例としては、4−ベンゾイルベンゾイル−リジル−アクリラートが含まれる。
【0095】
潜在的反応性基を有する反応性化学単位を用いて、そのような分子の溶媒溶液で表面又は他の支持体を最初にコーティングしてもよい。溶媒除去後、紫外光等の適切な外部刺激を与えると、潜在的反応性基を介して分子が支持体に共有結合する。その後、支持体を、所望のポリマー、モノマー、又はオリゴマーの分子を含む溶液と適切に接触させることでこれらの分子に共有結合させてよい。例えば、反応性化学単位分子が、カルボキシル官能性である場合、これは、ジヒドロキシポリエチレングリコール等の適切なヒドロキシル官能性ポリマーと反応性であり得且つこれに共有結合し得る。反応性化学分子がモノマー又はオリゴマー、例えばメタクリラートモノマーである場合、分子が共有結合する支持体を、付加重合条件下で、ヒドロキシエチルメタクリラート等の付加重合可能なモノマー及び過酸化ジベンゾイル等のフリーラジカル付加重合開始剤の溶液と接触させ、支持体に共有結合したモノマー分子からポリマー鎖を成長させてもよい。所望の重合が起こった後、支持体を洗浄して、残留するモノマー、溶媒、及び形成された非結合ポリマーを除去してよい。
【0096】
別の実施形態では、平均分子量の大きいポリアミンの層を表面上に吸着させることによる医療機器の表面改質により、抗血栓性コーティングがより良く接着し得る。ポリアミンは、アルデヒド官能基と共役したC−C二重結合を有するモノアルデヒドであるクロトンアルデヒドを用いた架橋により安定化される。その後、アニオン性多糖及び架橋型ポリアミンの1又は複数の交互層、次いで架橋されていない前記ポリアミンの最終層を架橋型ポリアミンの最初の層上に吸着させてよく、これにより、遊離第一級アミノ基を有する表面改質が実現される。
【0097】
特定の実施形態では、抗血栓性コーティングは、pH8〜10、例えばpH9のポリアミン水溶液に支持体を接触させることによってなされてもよい。最初のポリアミン溶液の濃度は1〜10重量%、特に5重量%であり、この溶液1mlを最終体積500〜2000ml、特に1000mlに希釈してよい。この最終溶液は更に、100〜1000μl、特に340μlのクロトンアルデヒドを含んでもよい。あるいは、支持体を、前記濃度及びpHのポリアミン溶液で最初に処理した後、前記濃度及びpHのクロトンアルデヒド溶液で処理してもよい。温度は重要ではないため、処理には室温が好ましい。
【0098】
水ですすいだ後、約10〜約500mg、好ましくは約100mgの多糖を含むアニオン性多糖の溶液1000mlで支持体を処理する。この工程は、40〜70℃、好ましくは約55℃及びpH1〜5、好ましくは約pH3で行う。
【0099】
水でもう一度すすいだ後、これらの最初の工程を1又は複数回繰り返し、最後に、多糖の層を吸着させた後、前記の温度及びpHで上記の1〜20倍、好ましくは10倍の濃度のポリアミン溶液で支持体を処理してよい。ポリアミンは好ましくは、ポリマー性脂肪族アミン、特に平均分子量の大きいポリエチレンイミンであるが、平均分子量が大きく遊離第一級アミノ基を有する任意のポリアミンが使用され得る。アニオン性多糖は好ましくは硫酸化多糖である。アミノ化表面は、必要に応じて、シアノ水素化ホウ素ナトリウム等の好適な還元剤を用いた還元によって更に安定化されてもよい。本発明に係る改質表面は、遊離第一級アミノ基を有し、これによりイオン結合又は共有結合で化学物質(chemical entity)が結合し得る。また、シッフ塩基の形成によってアルデヒド含有化学的実体を結合させ、その後、最終的にシッフ塩基を第二級アミンに変換する還元等の安定化反応を続けてもよい。更なる例は、その全体を参照により本明細書に援用する米国特許第5,049,403号に開示されている。
【0100】
特定の実施形態では、医療機器に抗血栓性コーティングを施すために、溶媒と、溶媒に溶解させた相補的ポリマー(complementary polymer)の組合せと、ポリマー/溶媒混合物中に分散された生物活性剤とを含むように組成物を調製する。溶媒は、好ましくは、その中でポリマーが真溶液を形成する溶媒である。医薬品自体は、溶媒に可溶性であってもよく、溶媒中に分散系を形成してもよい。
【0101】
センサーの外表面にしばしば使用される材料の特性のため、センサーを従来の抗凝固剤又は抗血栓薬(例えばヘパリン)でコーティングして、好ましい血管内への応用において十分に安定であり、長期間持続し、活性であり、しかも目的の分析物への影響が十分小さく、センサーの化学に干渉せず、信頼でき、十分長期間の作動を可能にする、好適な抗凝固コーティングを得ることは困難であり得る。特定のコーティングの好適性に関して種々の問題が生じ得、そのようなものとしては、例えば、センサーの製造及び取扱い中のコーティングの安定性;可溶化、反応等による使用中の除去に対するコーティングの抵抗性;コーティングを介した目的の分析物の拡散に対する抵抗性;及びコーティング中の化学種とセンサー技術の間の相互作用(コーティングに由来する検出可能化学種の加水分解によるものであれ、その他の手段によるものであれ)が含まれる。
【0102】
ヘパリンを含むコーティング材料が好ましいが、他の多糖及び生体由来材料及びアナログも、ヘパリンと一緒に又はヘパリンの代わりに使用することができる。好ましいコーティング塗布方法としては、真空下で、水又は水/界面活性剤で濡らしたセンサーへの、ヘパリン−第四級アンモニウム複合体を含むイソプロパノールの塗布が含まれるが、その他の好適なコーティング塗布方法も使用することができ、例えば、非極性溶媒及び極性溶媒等の溶媒の組合せからヘパリン−第四級アンモニウム複合体を塗布してもよく;例えばその場でヘパリン−第四級アンモニウム複合体を形成させるために、第四級アンモニウム化合物及びヘパリンを順に塗布してもよく;カルメダ(Carmeda)AB(スウェーデンのウプランズバスビー(Upplands Vasby))によって記載されているように表面に個々のヘパリン分子末端を結合させる方法等、センサー表面にヘパリン分子を共有結合させてもよく;架橋された形態のヘパリン又はヘパリンと他の化合物を塗布してもよい。
【0103】
特定の実施形態では、血栓形成を限定又は防止するためにセンサー表面の少なくとも一部にヘパリン又はヘパリン含有材料のコーティングが塗布され得る。しかし、場合によっては、コーティングが表面に最初に適切に接着しないか使用後に表面から剥離又は溶解し易いという接着の問題のため、そのようなコーティングの塗布が困難であり得る。使用によりコーティングが剥離する状況は、微粒子不純物が血流中に放出される可能性及びこれらが小さい血管を閉塞させる可能性があるため、特に問題であり得る。更に、ヘパリンコーティング材料が剥離又は溶解することで、治療量又は治療量以下の抗凝固剤物質が患者に投与されることになり得る。そのような接着問題は、特定の種類の材料、特にポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリカーボナート、ポリスルホン等のプラスチックに塗布する時、特に顕著となり得る。例えば、ポリオレフィン及びフルオロポリマーは特に、これらのプラスチックを接着させた時に通常得られる限定的強度及び困難から明らかなように、特に材料を接着させることが困難である。
【0104】
本発明者らは、驚くべきことに、ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングが、効果的に塗布可能であり且つ本明細書に開示されている分析物センサーのポリマー表面(固定用のポリマーマトリックスを組み込んだセンサー上のポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリカーボナート、ポリスルホン等のポリマー表面、多孔質ポリマー表面、及び多孔質ポリマー表面を含む)上で許容可能な安定性及び活性を有するコーティングのままでありながら、許容可能な分析物センサーの機能性を維持していることを見出した。特定の実施形態では、ヘパリン及びベンザルコニウムを含む許容可能な安定性及び活性を有するコーティングを維持することができる多孔質表面は、より具体的には、マイクロ多孔質、ナノ多孔質、又はメソ多孔質として説明される。
【0105】
好ましい実施形態では、ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングは、医薬品グレードのヘパリン、例えば2008年6月18日に改正された米国薬局方に記載されているヘパリンナトリウム又はヘパリンカルシウムを含み得るが、医薬品の規制が適用されない場合等の種々の応用において、他のグレード及び形態のヘパリンを使用することができる。好ましいグレードのヘパリンは、平均分子量が約12〜約15kDaであり得るが、個々の鎖の分子量は、約40kDa又は50kDaと大きくてもよく、あるいはそれより大きくてもよく、約5kDa又は3kDaと小さくてもよく、あるいはそれより小さくてもよい。別の実施形態では、約12〜約15kDaより大きい又は小さい平均分子量のヘパリン、例えば約20若しくは30kDaと大きいヘパリン又は約7若しくは10kDaと小さいヘパリンをうまく用いることができる。
【0106】
いくつかの好ましい実施形態では、ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングは、R基の2つに炭素数約1〜約5のアルキル基、3番目のR基に炭素数約6〜約22のアルキル基を有する、単一の純粋な化合物として又はR基が異なる化合物の組合せとして
の、塩化ベンザルコニウムの分子を含み得る。いくつかの実施形態では、塩化ベンザルコニウムのグレードには、R基として主に2個のメチル基及び炭素数約6〜約22のアルキル基、より好ましくは2個のメチル基及び炭素数約10〜約18のアルキル基を有する化合物及び化合物の混合物を有するものが含まれる。
【0107】
特定の実施形態では、他のアンモニウム複合体、例えば、その全体を参照により本明細書に援用するHsuに付与された米国特許第5,047,020号に開示されているように、ヘパリンと一緒に高い充填濃度で使用してコーティングを形成できる特定のアルキルベンジルジメチルアンモニウムのカチオン性塩を使用することができる。Hsuは、市販の塩化ベンザルコニウムが一般式[C6H5CH2N(CH3)2R]Cl(式中、Rはアルキルの混合物を表し、C8以上の基の全部又は一部を含み、C12、C14、及びC16が大部分を構成する)で表される塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物を含み得ることを発見した。一般的に、この組成物は、20%超のC14、40%超のC12、30%未満のC8、C10、及びC16の混合物に分解される。逆に、Hsuは、好ましいヘパリン/第四級アンモニウム複合体が、少なくとも約50重量パーセント、好ましくは60〜70重量パーセントの有機カチオン性塩を有することを発見した。Hsuは、セタルコニウムヘパリン及び/又はステアリルコニウムヘパリン(stearylkonium
heparin)及びその混合物からなる複合体で最適な結果が得られることを見出した。実際、Hsuは、セタルコニウムヘパリン及び/又はステアリルコニウムヘパリン及びはその混合物の複合体からなる医療機器用コーティングが「現在最も一般的に使用されているヘパリンと塩化ベンザルコニウムの複合体よりも非常に優れた疎水性及び表面接着」を示すことを教示している。したがって、本発明の別の態様では、ベンザルコニウムを含むものに加えて他のヘパリン/第四級アンモニウム複合体、例えばHsuに開示されているものを使用して、本明細書に開示のグルコースセンサーをコーティングして抗血栓性を付与してもよい。
【0108】
表面コーティング剤
医療機器の抗血栓性コーティングのためのコーティング剤として、種々の化合物、例えば参照により本明細書に援用する米国特許第6,278,018号、同第6,603,040号、同第6,924,390号、同第7,138,541号に開示されているものが有用であり得る。一態様では、本発明は、芳香族基を含む非ポリマーコア分子であって直接又は間接的にそこに結合したコア分子と、負に帯電した基を含む1又は複数の置換基と、独立した光反応性基として提供される2以上の光反応性化学種とを含む化合物を提供する。本コーティング剤の第1及び第2の光反応性化学種は、独立して、同一であってもよく、異なってもよい。
【0109】
特定の実施形態では、コアは、ポリヒドロキシベンゼン開始物質の残基として提供され(例えば、ヒドロキノン、カテコール、又はレゾルシノールの誘導体として形成される)、ヒドロキシ基が、対応する複数の光基(photogroups)と反応してエーテル(又はエーテルカルボニル)結合を形成している。一実施形態では、本発明のコーティング剤は、コア分子を対応する光反応性化学種に結合させる役割をする1又は複数の必要に応じて用いるスペーサーを更に含み、スペーサーは、一般式(式中、nは、1以上、約5未満の数であり、mは、1以上、約4以未満の数である)で表されるラジカルから選択される。
【0110】
別の実施形態では、そのようなコーティング剤は、4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジ(カリウム及び/又はナトリウム)塩、2,5−ビス(4−ベイゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,4−ジスルホン酸ジ(カリウム及び/又はナトリウム)塩(2,5-bis(4-beizoylphenylmethyleneoxy)benzene-l,4-disulfonic acid di(potassium and/or sodium) salt)、2,5−ビス
(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1−スルホン酸一カリウム及び/又は一ナトリウム塩の群から選択される。
【0111】
本発明の好適なコア分子としては、低分子量(例えば100〜1000MW)の非ポリマーラジカルが含まれる。好適なコア分子は、コーティング密度、構造安定性、製造し易さ、コスト等の特性の組合せを向上させる。更に、コア分子は、水溶性領域、生分解性領域、疎水性領域、及び重合可能領域と共に提供することができる。好適なコア分子の例としては、ベンゼン及びその誘導体等の環状炭化水素が含まれる。
【0112】
好ましいコーティング剤中の荷電基の種類及び数は、コーティング剤に少なくとも約0.1mg/ml、好ましくは少なくとも約0.5mg/ml、より好ましくは少なくとも約1mg/mlの水溶性(室温及び最適なpHで)を与えるのに十分である。表面コーティングプロセスの性質を考慮すると、表面上で標的分子(例えばポリマー層)の有用なコーティングを得るためには少なくとも約0.1mg/mlのコーティング剤溶解度レベルで一般的に十分である。
【0113】
したがって、このコーティング剤は、水に不溶性である(例えば、比較可能な水溶性が約0.1mg/ml以下、より多くの場合約0.01mg/ml以下)と通常見なされる当該技術分野の多くのコーティング剤とは対照的である。このため、従来のコーティング剤は、典型的には、水が無いか微量(例えば体積で約50%未満)の成分として提供される溶媒系において提供及び使用される。
【0114】
好適な荷電基の例としては、有機酸の塩(例えば、硫酸塩、リン酸塩、カルボキシル基)及びその組合せが含まれる。本発明のコーティング剤の調製に好ましい荷電基は、スルホン酸塩、例えば、I属アルカリ金属(Na、K、Liイオン)の塩により対イオンが提供されて好適な正に帯電した化学種を与える、SO3-の誘導体である。
【0115】
光反応性アリールケトン、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、及びアントロン様複素環(すなわち、10位にN、O、又はSを有するようなアントロンの複素環式アナログ)、又はその置換(例えば、環置換)誘導体の形態での光反応性化学種の使用が好ましい。好ましいアリールケトンの例としては、アントロンの複素環式誘導体、例えばアクリドン、キサントン、及びチオキサントン、並びにそれらの環置換誘導体が含まれる。特に好ましいのは、約360nmより大きい励起エネルギーを有するチオキサントン及びその誘導体である。
【0116】
そのようなケトンの官能基は本明細書に記載の活性化/不活化/再活性化サイクルを容易に受けることができるため好ましい。ベンゾフェノンは、光化学的励起が可能であり、三重項状態へと項間交差される励起一重項状態を最初に形成するため、特に好ましい光反応性部分である。励起三重項状態は、(例えば支持体から)水素原子を引き抜くことで炭素−水素結合中に挿入することができ、これによりラジカル対が形成される。その後、ラジカル対が崩壊することで、新たな炭素−炭素結合が形成される。反応性結合(例えば炭素−水素)が結合に利用可能でない場合、ベンゾフェノム(benzophenome)基の紫外(ultravieolet)光誘導励起は可逆的であり、エネルギー源が取り除かれると分子は基底状態のエネルギーレベルに戻る。ベンゾフェノン、アセトフェノン等の光活性化可能なアリールケトンは、水中で複数回の再活性化を受け、したがって、コーティング効率を向上させるため、特に重要である。
【0117】
コーティング方法論
本明細書に開示されているコーティングプロセスは、1)ディップコーティングの場合のような、直接塗布によるヘパリン複合体の直接コーティング、及び2)第四級アンモニ
ウム塩及び界面活性剤とイオン性ヘパリンを順次塗布する場合のような、間接的コーティングを含む。ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングを塗布するための好適な方法は、多段階積層技術及びヘパリン複合体の一段階塗布を含み得る。別の実施形態では、センサーをナトリウムヘパリン溶液に浸漬する等の前処理方法が用いられる。
【0118】
特定のポリマー材料に対して不活性な表面に抗血栓性コーティングを塗布することが望まれる場合、その表面上又は表面近くにヒドロキシル基を提供するために表面を化学的に処理することによって、接着を容易化することができる。この点に関する例示的な化学的表面処理としては、化学エッチング、界面活性剤吸着、共押出成形、プラズマ放電、表面の酸化又は還元、放射線活性化及び酸化、ポリビニルアルコール、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)等の材料を用いた表面グラフト化等の公知の手法が含まれる。活性水素を提供するために支持体表面のバルク改質を行ってもよい。この種の従来の改質の例としては、活性水素を有するポリマーとのブレンド、ポリマーの部分的分解、末端基改質、モノマー官能化、酸化、還元、共重合等が含まれる。
【0119】
特定の実施形態では、アミノシランを含有する3次元の高度に架橋されたマトリックスを医療機器表面上に形成する。アミノシランは、抗血栓性を付与すべき表面上で硬化、架橋、又は重合される。これは、3次元マトリックスが形成されるような方法で行われる。マトリックスは、アミノシランホモポリマー又はアミノシランとアミノシラン以外の別のシランとのコポリマー(例えばグラフトコポリマー)のいずれであってもよい。代表的なアミノシランとしては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノウンデシルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、及びトリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミンが含まれる。
【0120】
この種のアミノシランは、ホモポリマーマトリックスを形成するために単独で使用することができる。例えば、特定のアミノシランは、三官能性であり、高度に架橋されたマトリックスを提供する。所望であれば、親水性のアミノシランをアミノシランでない親水性のより低いシランと組み合わせることで親水性を低減させることができる。一実施形態では、マトリックスは、マトリックスの親水性を調整するために、これらのアミノシランの1つとアミノシランより親水性が低いアミノシランでない別のシラン分子とのコポリマーである。参照により本明細書に援用する米国特許第5,053,048号、同第4,973,493号、同第5,049,403号を含むその他の方法及びコーティング剤も当該技術分野で公知である。
【0121】
好ましい実施形態では、ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングは、最初にセンサー表面を水又は水と界面活性剤の組合せで濡らすことにより塗布される。好ましい界面活性剤としては陰イオン界面活性剤が含まれるが、いくつかの実施形態では陽イオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤等のその他の界面活性剤も使用することができる。特に、好適な界面活性剤としては、ラウレル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウムが含まれる。次いで、濡れたセンサーを、ヘパリン−第四級アンモニウム複合体のアルコール溶液で処理する。特定の実施形態では、アルコール溶液はイソプロパノールを含むが、実施形態に応じて他のアルコールに基づく溶液を使用してもよい。好ましいイソプロパノールの溶液は、イソプロパノール中にヘパリン−ベンザルコニウム複合体を約1〜約99%(wt)、例えば5%、10%、25%、50%、75%、90%、95%(これらの重量百分率を両端とする重量百分率範囲も含む)含み得る。好ましいヘパリン−ベンザルコニウムを含むイソプロパノール溶液の1つは、45241、オハイオ州シンシナティ、ベスト・プレイス12150のセルスス・ラボラトリーズ社(Celsus Laboratories、Inc.)から、製品番号BY−3189(ベンザルコニウムヘパリンのイソプロピルアルコール溶液、8
87U/mLとして記載されている)で製造されている。濡れたセンサーをヘパリン−ベンザルコニウム溶液に浸漬してもよく、センサーの表面上にスプレーしてもよく、別の好適な技術で塗布してもよい。次いで、コーティング溶液が塗布されたセンサーを乾燥させる。コーティングの均一性を向上させるため又はコーティングを厚くするため等の更なるコーティング材料を浸漬、スプレー、又は他の好適な手段により塗布することができる。材料を塗布する場合、好ましい方法としては、センサーをヘパリン−ベンザルコニウム溶液に限定的な時間、例えば1分未満、約30秒未満、約10秒間、又は約1若しくは2秒、例えばセンサーを溶液に約1秒だけ浸漬することにより、さらすことが含まれる(列挙した期間を上端及び下端とする期間、例えば10〜30秒間センサーを溶液に浸漬することを含む)。いくつかの実施形態では、短時間にすることで望ましくない結果、例えばセンサー表面からの材料の過剰な可溶化又はセンサーの過剰な脱水を防止することができる。しかし、いくつかの実施形態では、例えば溶液のヘパリン−ベンザルコニウム濃度を高くするか溶液に更なるベンザルコニウム材料又はヘパリン材料を添加するか、溶液のpH又はイオン強度を調整することにより、より長期間にすることが可能である。いくつかの実施形態では、コーティングプロセス中、必要に応じて又は所望により、水又は水及び界面活性剤及び/又は溶媒の組合せを塗布することによってセンサーを再度水和することができる。
【0122】
しかし、ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングを塗布する別の方法を用いることも可能である。好適な多段階積層技術としては、好適な形態及びグレードの塩化ベンザルコニウムを塗布し、その後好適な形態及びグレードのヘパリンを塗布することを含むプロセスによりヘパリン及びベンザルコニウムを塗布する技術が含まれる。任意の好適な溶媒又は溶媒の組合せ、例えばヘパリンに対して水又は水性アルコールを、塩化ベンザルコニウムに対して非極性有機溶媒(例えば、トルエン、石油エーテル等)を使用することができる。好ましいヘパリン溶液としては、ヘパリンを重量百分率で約0.05%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、90%、95%含む溶液が含まれる(列挙した重量百分率を両端とする重量百分率範囲も含まれる)。特定のそのような実施形態では、好ましいヘパリン溶液は、0.05〜約1%の重量パーセントのヘパリンを含む。好ましい塩化ベンザルコニウム溶液としては、重量百分率で約0.05%、1%、5%、10%、20%、25%、50%、75%、90%、95%のベンザルコニウムを含む溶液が含まれる(列挙した重量百分率を両端とする重量百分率範囲も含まれる)。特定のそのような実施形態では、好ましい塩化ベンザルコニウム溶液は約1.0〜約20%の重量パーセントの塩化ベンザルコニウムを含む。
【0123】
その他の好適なコーティング技術は、例えば、参照によりその全体を本明細書に援用するGrottaに付与された米国特許第3,846,353号及びHsuに付与された米国特許第5,047,020号に記載されている。
【0124】
ヘパリン複合体の一段階塗布は、Hsuに付与された米国特許第5,047,020号に記載されているように好適なグレード及び形態のヘパリン及びベンザルコニウムを含む溶液をセンサーに塗布することを含み得る。特定の実施形態では、溶液は塩化ベンザルコニウムを含み得る。ヘパリン及びベンザルコニウムに好適な溶媒としては、アルコール(例えばイソプロパノール)、ハロゲン化溶媒(例えばトリフルオロ−トリクロロエタン)等の極性有機溶媒(単独又は混合物として)を含むものが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリマー表面に塗布される溶液は、溶液の全重量に対して、合わせた重量百分率が0.1%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、又は約90%のヘパリン及びベンザルコニウムを含み得る(列挙した重量百分率を両端とする重量百分率範囲も含まれる)。特定のそのような実施形態では、溶液は、重量で約0.1%〜約75%のヘパリン/ベンザルコニウムを含み得る。いくつかの実施形態では、例えば所望の厚さ及び/又は耐久性を有するコーティングを構築するために、センサー表面にヘパリン/ベンザルコニウ
ム複合体の連続層を塗布してよい。
【0125】
特定の実施形態では、予め濡らしたセンサーの遠位部分をヘパリン及びベンザルコニウムのイソプロパノール溶液に好ましくは約0.1〜約30秒間、より好ましくは約1〜約10秒間、更により好ましくは約1秒間浸漬する。特定の実施形態では、浸漬したセンサーを、その後、好ましくは少なくとも約10秒間、より好ましくは約0.5分間〜約10分間、更により好ましくは約1分間風乾する。ヘパリン/ベンザルコニウムコーティング及び乾燥工程は、種々の実施形態に従って、好ましくは約1〜約20回、より好ましくは約2〜約10回、更により好ましくは約3〜約8回、更により好ましくは約4〜約6回繰り返される。
【0126】
特定の実施形態では、センサーを浸漬することにより、センサー表面から周囲の血管へのヘパリンの持続放出が実現される。一実施形態では、必要に応じて用いるマイクロ多孔質膜の下にヒドロゲルを含んでいてもよいセンサーを、膨張したヒドロゲル中にへパリンを注入するためにヘパリン溶液に浸漬する。一実施形態では、少なくとも約10%のナトリウムヘパリン水溶液を使用する。より好ましい実施形態では、少なくとも約20%のナトリウムヘパリン水溶液を使用する。非常に好ましい実施形態では、少なくとも約30%のナトリウムヘパリン水溶液を使用する。別の実施形態では、他の有機溶媒及び他の形態のヘパリンを使用してもよい。一実施形態では、ナトリウムヘパリン溶液は、pH約5のリン酸緩衝生理食塩水の形態である。ヒドロゲルを飽和させるのに十分な時間浸漬した後、センサーを溶液から取り出して乾燥させる。一実施形態では、センサーを少なくとも約1時間浸漬する。好ましい実施形態では、センサーを約2時間浸漬する。一実施形態では、センサーを少なくとも約3時間浸漬する。その後センサーを生体内に配置した時、ヒドロゲルは、血流中で再度膨張し、時間を掛けて徐々にヘパリンを放出する。
【0127】
必要に応じて、例えば、溶媒、界面活性剤等の好適な薬剤を用いてセンサー表面を洗浄する工程及び/又は気流、熱、加熱気流、又は1若しくは複数の脱水剤を等用いてコーティングを乾燥させる工程等の更なる工程を用いることができる。いくつかの実施形態では、コーティング後にセンサーの表面が幾分粘着性になり得、微粒子状物質を捕捉することがあるので、いくつかの実施形態では、コーティング後、センサーを可能な限り早く包装することが望ましい。
【0128】
ヘパリンベースのコーティングをセンサーに塗布するその他の方法としては、センサー表面又はセンサー表面に塗布された中間材料へのヘパリン又はヘパリン誘導体の共有結合が含まれる。好適な技術としては、例えばカルメダAB(スウェーデンのウプランズバスビー)が用いている技術等の、センサー表面又は中間体にヘパリン分子の末端を共有結合させる技術が含まれる。その他の好適な方法としては、例えば本明細書及びサーモディックス社(Surmodics)(ミネソタ州イーデンプレーリー)が記載しているような、センサー表面又はセンサー表面に塗布された中間材料にヘパリン又はヘパリン誘導体を光固定化によって結合させる技術、並びにRoorda, et al.の米国特許第6,833,253号に記載されているような、極性及び非極性溶媒を用いてヘパリン複合体を析出させる技術も含まれる。
【実施例】
【0129】
実施例1.抗血栓性コーティングの塗布
ベンザルコニウム/ヘパリンでのコーティングに対する前述した光学グルコースセンサーの準備として、pH3のリン酸緩衝生理食塩水溶液(多くの種類の緩衝水溶液又は単なる水をも使用することができる)中にセンサーのコーティングする部分を浸漬した(例えば図1〜4参照)。
【0130】
1.5%(重量)のベンザルコニウムヘパリンを含むイソプロパノールのコーティング溶液(45241、オハイオ州シンシナティのベストプレイス12150のセルスス・ラボラトリーズ社から、ベンザルコニウムヘパリンのイソプロピルアルコール溶液(887U/mL)、製品番号BY−3189として流通している)を試験管に添加した。緩衝生理食塩水溶液中で平衡化させた後、センサーの感知末端の遠位端部分をベンザルコニウムヘパリン溶液に浸漬させ、すぐに取り出した(ベンザルコニウムヘパリン溶液に浸漬させた時間は約1秒間であった)。濡れたセンサーを約1分間風乾させ、センサー表面上にベンザルコニウムヘパリンのコーティングを得た。
【0131】
ベンザルコニウム/ヘパリン溶液へのセンサーの浸漬及びその後の風乾を4回繰り返してセンサー表面上に更にコーティング材料を重ねた。
【0132】
実施例2.ブランクセンサーの作製
ポリ(メチルメタクリラート)光ファイバー(直径0.010インチ)を囲むポリエチレンマイクロ多孔質膜(外径0.017インチ)からブランクセンサー(sensor blank)を用意した。ポリエチレンマイクロ多孔質膜は92121−2911、カリフォルニア州サンディエゴ、メサ・リム・ロード(Mesa Rim Road)9925のバイオジェネラル社(Biogeneral)から入手した。ブランクセンサーの遠位端(コーティングされる末端)を丸みのあるポリエチレン製の栓に加熱溶接する。他端をシリコーン裏込材(silicone backfill)で密封する。次いで、遠位端を実施例1の緩衝生理食塩水溶液に18時間(但し、これより短い期間でも好適であった)浸漬した。最後に、実施例1と同様に、ブランクセンサーの遠位端を実施例1のコーティング溶液に浸漬し、その後、風乾した。コーティング溶液に浸漬して風乾する工程を4回繰り返した。
【0133】
実施例3.コーティングされたセンサー及びコーティングされたブランクセンサーの比較
ヘパリン/ベンザルコニウムのコーティングをそれぞれ5回ディップコーティングにより塗布された、実施例1及び2に記載されているようにして作製したコーティングされたセンサー及びコーティングされたブランクセンサーを以下のように取扱い試験に供した。
【0134】
センサーは、長さ1.0インチの滑らかな(非多孔質)HDPE管に突き合わせ溶接された長さ1.3インチの中空マイクロ多孔質HDPE膜(外径0.017インチ、92121−2911カリフォルニア州サンディエゴ、メサ・リム・ロード9925のバイオジェネラル社製;これは特注部分である)からなる。マイクロ多孔質末端を、丸みのあるポリエチレン製の栓に加熱溶接した。中空アセンブリーの内側に0.010インチのPMMA光ファイバーを通した。滑らかなHDPE末端にシリコーン裏込材をマイクロ多孔質まで(但しマイクロ多孔質は含まない)充填した。PMMA光ファイバーと中空マイクロ多孔質膜の間の領域には、共有結合された蛍光色素及びクエンチャーも含むジメチルアクリルアミドゲルを充填した。ヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティングを塗布するためのセンサーの準備として、実施例1と同様にリン酸緩衝生理食塩水の水溶液に遠位(「センサー」)端を約18時間(但し、この時間でなくてもよい)浸漬した。次いで、実施例1に記載されているようにセンサーをヘパリン/ベンザルコニウム溶液に浸漬して風乾した。浸漬及び乾燥工程を4回繰り返した。
【0135】
コーティング溶液への浸漬及び乾燥を繰り返した後、取扱い試験への準備としてセンサー及びブランクセンサーをトルイジンブルーで染色した。具体的には、センサー及びブランクセンサーをシリコーンゴム封止材に通し、その後、0.04%のトルイジンブルー水溶液に1分間浸漬し、水ですすぎ、30分間風乾した。
【0136】
トルイジンブルーはヘパリンを紫色に染色するので、より濃い紫色は、より薄い紫色又
は紫色なしよりも高濃度のヘパリンを示す傾向がある。したがって、ヘパリンコーティングの耐久性を評価するために、染色されたセンサー及びブランクセンサーを以下の取扱い試験に供し、その後、20倍拡大下で視覚的に検査して、トルイジン染色が薄くなることによって示されるヘパリンコーティング中の空隙及び薄さを見分けた。結果は以下にも示す。
【0137】
リン酸緩衝生理食塩水溶液中での保存
センサーをpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水中に37℃で48時間まで浸漬した。マイクロ多孔質膜部分が48時間後でも均一な紫色を保持していることが観察された。非多孔質ポリエチレン部分上の染色は、たった2時間後には、より薄く、より不均一になった。
【0138】
センサーハウジングアセンブリー中での保存
コーティングされたセンサーを、ポリウレタン管からなるセンサーハウジングアセンブリー中に置き、パリレンコーティングされたシリコーンゴム封止材で密封した。ハウジングアセンブリーにpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水を充填し、ハウジング中にセンサーを室温で1時間浸漬した。その後、非多孔質ポリエチレン部分は、(拡大下で)ヘパリンコーティングへの明らかなダメージの跡を示し、紫色の染色中に明らかなすり傷(scrape)及び空隙があった。対照的に、マイクロ多孔質部分には影響が見られず、染色は均一で滑らかな紫色であった。
摩耗:センサーをpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水に室温で1時浸漬し、その後、濡れたニトリル製手袋で1分間激しくこすった。その後、これをトルイジンブルーで染色した。拡大下で、非多孔質ポリエチレン部分は紫色の染色がほとんど完全になく、このことは、ヘパリンコーティングが完全に失われたことを示している。マイクロ多孔質膜部分は、小さくなっており且つ幾分斑状(pachy)であるように見えたが、依然として全長にわたって強く紫色であった。この試験部分での取扱いは非常に極端であることに留意すべきである。
【0139】
イソプロパノールを用いた超音波処理
1個のセンサーを、一連の25mLイソプロパノールバイアル中で3回、それぞれ5分間、超音波処理した。その後、これをトルイジンブルーで染色した。拡大下で、図7Aに示されるように、非多孔質前駆体ポリエチレン部分では、紫色の染色がほとんど完全になく、このことはヘパリンコーティングの完全な消失を示している。マイクロ多孔質膜部分は、図7Bに示されるように、強く均一な紫色を維持したままであり、このことは均一なヘパリンコーティングが保持されていることを示している。
【0140】
上記条件にセンサー及びブランクを供した結果を以下の表に要約する。
【0141】
【表1】
【0142】
これらの結果は、ポリマー表面のみの上のベンザルコニウムヘパリンコーティングと比べた、多孔質ポリマー表面及び親水性ポリマーマトリックスを有するグルコースセンサー上のベンザルコニウムヘパリンコーティングの優れた耐久性を示している。
【0143】
実施例4.抗血栓性コーティングの有効性の実証
ベンザルコニウム/ヘパリンコーティングを有する12個のGLUCATH(登録商標)センサー及びコーティングを有さない対照としての12個のBD L−Cath PICCライン(外径0.037cm(0.0145インチ);ポリウレタン)を用意し、4頭のヒツジの心血管系に挿入した。コーティングされたGluCathセンサーは、米国特許出願第12/026,396号に記載されているように、親水性アクリルマトリックス中に埋め込まれたフルオロフォア/クエンチャー指示薬系から構成される。ベンザルコニウムヘパリンコーティングは実施例3と同様に塗布した。
【0144】
センサー及び対照カテーテルを左右の頸静脈及び左右の橈側皮静脈に、同じヒツジの一方の側にセンサー、他方の側に対照カテーテルで挿入した。25時間後、2頭のヒツジを安楽死させ、試験対象と静脈とを覆う周囲組織及び皮膚を切開して反転させた後、試験対象上若しくは静脈中の細胞蓄積物若しくは細胞片又はセンサー若しくはカテーテルを乱さないように注意しながら静脈を長手方向に開くことにより、外科的にセンサー及び対照を露出させて調べた。更に22時間後(経過時間47時間)、更に2頭のヒツジを安楽死させ、外科的にセンサーを露出させて上記と同様に調べた。
【0145】
各センサー又はカテーテルのデジタル写真をその位置(in place)で撮った。検査後、各センサー又はカテーテルを静脈から取り出し、メチレンブルーで染色し、10〜20倍の一次対物レンズ倍率を用いて顕微鏡的に調べ、フィブリン若しくは細胞材料の蓄積又は表面の異常を観察した低解像度の写真。試験対象の2つは静脈の外側の周囲組織中に配置されていたことが判明し、評価に含めなかった。
【0146】
更に静脈から組織切片を得、試験対象近くの血管の状態について特徴解析した。これらの評価の結果を以下の表に示す。
【0147】
【表2】
【0148】
上記表中、「RC」は「右橈側皮(Right Cephalic)」を意味し、「LJS」は「左上頸静脈(Left Jugular Vein Superior)」を意味し、「LJI」は「左下頸静脈(Left Jugular Vein Inferior)」を意味し、「RJS」は「右上頸静脈(Right Jugular Vein Superior)」を意味し、「RJI」は「右下頸静脈(Right Jugular Vein Inferior)」を意味し、「NGHL」は「肉眼的又は組織学的病変なし」を意味する。更に、上記表中で肉眼及び顕微鏡によるセンサー上のフィブリン蓄積に関する数値による記述は以下の略記である:
「0」は、なし又は静脈穿刺部位のみの止血血栓に限定されていることを表し、
「1」は、わずかな非連続的又は顕微鏡的沈着のみであることを表し、
「2」は、厚さ1mm未満であることを表し、
「3」は、厚さ1mm超を表し、
「4」は、完全な血管閉塞(血栓症)を表す。
【0149】
これらの評価は、肉眼的フィブリン沈着が少なく顕微鏡的フィブリン沈着が少ない点で、ヘパリン/ベンザルコニウムコーティングを有するGluCathセンサーが対照のカテーテルより優れていることを実証している。
【0150】
実施例5.持続放出ヘパリン
GluCathセンサーを30%のナトリウムヘパリンのリン酸緩衝生理食塩水溶液(pH5)に2時間浸漬してヒドロゲルを飽和させた。センサーを浸漬液から取り出した後、ヘパリンベンザルコニウムを含むイソプロピルアルコールを用いてセンサーをディップコーティングして外表面をコーティングした。対照とするために、ナトリウムヘパリン浸漬工程を行わなかった別のセンサーもヘパリンベンザルコニウムでディップコーティングした。一晩風乾後、センサーを、バッファー流(pH7.4、37℃のリン酸緩衝生理食塩水)に48時間までさらした。2.5、24、及び48時間後において、バッファーからセンサーを取り出し、発色性抗FXa活性アッセイを用いてヘパリン活性について試験した。図8に示す結果から、各時点において、ヘパリンに浸漬したセンサーが対照センサーよりも高いレベルの活性を保持していることを示された。
【0151】
本明細書に引用した全ての参照文献、例えば、限定されるものではないが公開及び非公開の出願、特許、及び引用文献、並びに添付書類に列記されている参照文献の全体を参照により本明細書に援用し、本明細書の一部とする。参照により組み込んだ公開物及び特許又は特許出願が本明細書中の開示と矛盾する範囲で、そのような相反する全ての事項について本明細書が優先される。
【0152】
本発明において、「含む」という用語は、「含有する」又は「特徴とする」と同義であり、記載されていない更なる要素又は方法の工程に対して開放されており(open−ended)、それらを排除しない。
【0153】
本明細書中で使用される材料、反応条件等の量を表す全数字は、あらゆる場合において「約」という用語で修飾されているものと理解されるべきである。したがって、特に断りの無い限り、本明細書中に記載されている数値パラメーターは、得ようとする所望の特性によって変わり得る概数である。少なくとも、均等論の適用を本願に優先権を主張する出願の請求項の範囲に限定しようとするものではないが、各数値パラメーターは、有効数字及び通常の丸め手法に鑑みて解釈されるべきである。
【0154】
上記の説明は、本発明の複数の方法及び材料を開示している。本発明は、方法及び材料の改変並びに製造方法及び設備の変更の余地がある。そのような改変は、本開示の検討又は本明細書に開示されている発明の実施から当業者に明らかになる。したがって、本発明
は本明細書に開示されている特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の真の範囲及び精神に含まれる改変例及び代替物を全て含むことが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長部材;
血管中の分析物の濃度に関連したシグナルを発生することができる、前記細長部材の遠位部分に沿って配置された分析物反応性指示薬;
少なくとも前記細長部材の前記遠位部分に沿った前記指示薬を覆う、多孔質膜;並びに
前記多孔質膜の少なくとも一部に安定的に結合したヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティング
を含む、分析物センサー。
【請求項2】
前記細長部材が、光路を含む光ファイバーを含む、請求項1に記載の分析物センサー。
【請求項3】
前記分析物反応性指示薬が、分析物結合部分に作動可能に連結されたフルオロフォアを含み、分析物の結合により前記フルオロフォアの発光強度が変化し、前記分析物反応性指示薬が、前記光ファイバーの前記光路内に配置されている、請求項2に記載の分析物センサー。
【請求項4】
前記フルオロフォアがHPTS−トリCysMAであり、前記結合部分が3,3’−oBBVである、請求項3に記載の分析物センサー。
【請求項5】
前記多孔質膜がマイクロ多孔質膜である、請求項1に記載の分析物センサー。
【請求項6】
前記マイクロ多孔質膜が、ポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリカーボナート、及びポリスルホンからなる群から選択される1又は複数のポリマーを含む、請求項5に記載の分析物センサー。
【請求項7】
前記マイクロ多孔質膜が、少なくとも1つのフルオロポリマーを含む、請求項6に記載の分析物センサー。
【請求項8】
前記少なくとも1つのフルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシポリマー、フッ化エチレン−プロピレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロエラストマー、及びフルオロエラストマーからなる群から選択される、請求項7に記載の分析物センサー。
【請求項9】
前記マイクロ多孔質膜が、少なくとも1つのポリオレフィンを含む、請求項5に記載の分析物センサー。
【請求項10】
前記少なくとも1つのポリオレフィンがポリエチレンである、請求項9に記載の分析物センサー。
【請求項11】
前記分析物反応性指示薬が、ヘパリンを含むヒドロゲル内に固定されている、請求項3に記載の分析物センサー。
【請求項12】
血管内に配置されるように構成され、且つ光路及び外表面を含む、光ファイバー;
分析物結合部分に作動可能に連結されたフルオロフォアを含む化学指示薬系であって、前記フルオロフォア及び分析物結合部分が非水溶性有機ポリマー内に固定されており、前記化学指示薬系が前記光ファイバーの遠位部分に沿った光路内に配置されている、化学
指示薬系;及び
中に配置された前記化学指示薬系を覆い、前記光ファイバーの前記外表面の少なくとも一部の上にあり、前記外表面に共有結合的に架橋されたヘパリンを含む、抗血栓性の分析物透過コーティング
を含む、平衡血管内分析物センサー。
【請求項13】
前記フルオロフォアがHPTS−トリCysMAであり、前記結合部分が3,3’−oBBVである、請求項12に記載の分析物センサー。
【請求項14】
前記化学指示薬系と前記抗血栓性コーティングの間に配置された多孔質の分析物透過膜を更に含む、請求項12に記載の分析物センサー。
【請求項15】
分析物センサーの血栓形成性を低減する方法であって、
光路を規定する細長光ファイバーと、ヒドロゲル内に固定されて前記光ファイバーの遠位領域に沿って前記光路内に配置された平衡蛍光化学指示薬系と、前記遠位領域の少なくとも一部の外層を形成する分析物透過性の多孔質膜とを含み、前記指示薬系が前記多孔質膜によって覆われている、分析物センサーを用意する工程;
前記分析物センサーを、ヘパリンとベンザルコニウムの混合物を含む単一溶液又は別個のヘパリンを含む第1の溶液及びベンザルコニウムを含む第2の溶液に接触させる工程;及び
前記分析物センサーを乾燥させる工程
を含む、方法。
【請求項16】
前記接触工程及び乾燥工程が2〜10回繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分析物センサーをヘパリンを含む溶液に前記ヘパリンが前記ヒドロゲルを飽和するのに十分な時間浸漬する工程を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記平衡蛍光化学指示薬系が、フルオロフォア及び分析物結合部分を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記フルオロフォアがHPTS−トリCysMAであり、前記結合部分が3,3’−oBBVであり、前記ヒドロゲルがDMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)ヒドロゲルマトリックスである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記多孔質膜がマイクロ多孔質ポリエチレンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
分析物センサーの血栓形成性を低減する方法であって、
分析物センサーを用意する工程であって、前記分析物センサーが、光路を規定する細長光ファイバーと、前記光ファイバーの遠位領域に沿って前記光路内に配置された平衡蛍光化学指示薬系と、前記遠位領域の少なくとも一部を覆う外表面を形成する分析物透過性の多孔質膜とを含み、前記指示薬系が前記多孔質膜で覆われている分析物センサーである、工程;
光活性化可能な化学的連結剤及び抗血栓性分子を用意する工程であって、前記連結剤が、活性化後に前記外表面及び前記抗血栓性分子に共有結合でき、前記連結剤が、2以上の光反応性基及び1以上の荷電基を含む荷電された二官能性以上である光活性化可能な非ポリマー化合物を含む、工程;及び
前記2以上の光反応性基を活性化させることより、前記抗血栓性分子を前記外表面に架橋する工程
を含む、方法。
【請求項22】
前記平衡蛍光化学指示薬系が、非水溶性有機ポリマー内に固定されたフルオロフォア及び分析物結合部分を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記フルオロフォアがHPTS−トリCysMAであり、前記結合部分が3,3’−oBBVであり、前記非水溶性有機ポリマーがDMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)ヒドロゲルマトリックスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記多孔質膜が、マイクロ多孔質ポリエチレンを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項1】
細長部材;
血管中の分析物の濃度に関連したシグナルを発生することができる、前記細長部材の遠位部分に沿って配置された分析物反応性指示薬;
少なくとも前記細長部材の前記遠位部分に沿った前記指示薬を覆う、多孔質膜;並びに
前記多孔質膜の少なくとも一部に安定的に結合したヘパリン及びベンザルコニウムを含むコーティング
を含む、分析物センサー。
【請求項2】
前記細長部材が、光路を含む光ファイバーを含む、請求項1に記載の分析物センサー。
【請求項3】
前記分析物反応性指示薬が、分析物結合部分に作動可能に連結されたフルオロフォアを含み、分析物の結合により前記フルオロフォアの発光強度が変化し、前記分析物反応性指示薬が、前記光ファイバーの前記光路内に配置されている、請求項2に記載の分析物センサー。
【請求項4】
前記フルオロフォアがHPTS−トリCysMAであり、前記結合部分が3,3’−oBBVである、請求項3に記載の分析物センサー。
【請求項5】
前記多孔質膜がマイクロ多孔質膜である、請求項1に記載の分析物センサー。
【請求項6】
前記マイクロ多孔質膜が、ポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリカーボナート、及びポリスルホンからなる群から選択される1又は複数のポリマーを含む、請求項5に記載の分析物センサー。
【請求項7】
前記マイクロ多孔質膜が、少なくとも1つのフルオロポリマーを含む、請求項6に記載の分析物センサー。
【請求項8】
前記少なくとも1つのフルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシポリマー、フッ化エチレン−プロピレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロエラストマー、及びフルオロエラストマーからなる群から選択される、請求項7に記載の分析物センサー。
【請求項9】
前記マイクロ多孔質膜が、少なくとも1つのポリオレフィンを含む、請求項5に記載の分析物センサー。
【請求項10】
前記少なくとも1つのポリオレフィンがポリエチレンである、請求項9に記載の分析物センサー。
【請求項11】
前記分析物反応性指示薬が、ヘパリンを含むヒドロゲル内に固定されている、請求項3に記載の分析物センサー。
【請求項12】
血管内に配置されるように構成され、且つ光路及び外表面を含む、光ファイバー;
分析物結合部分に作動可能に連結されたフルオロフォアを含む化学指示薬系であって、前記フルオロフォア及び分析物結合部分が非水溶性有機ポリマー内に固定されており、前記化学指示薬系が前記光ファイバーの遠位部分に沿った光路内に配置されている、化学
指示薬系;及び
中に配置された前記化学指示薬系を覆い、前記光ファイバーの前記外表面の少なくとも一部の上にあり、前記外表面に共有結合的に架橋されたヘパリンを含む、抗血栓性の分析物透過コーティング
を含む、平衡血管内分析物センサー。
【請求項13】
前記フルオロフォアがHPTS−トリCysMAであり、前記結合部分が3,3’−oBBVである、請求項12に記載の分析物センサー。
【請求項14】
前記化学指示薬系と前記抗血栓性コーティングの間に配置された多孔質の分析物透過膜を更に含む、請求項12に記載の分析物センサー。
【請求項15】
分析物センサーの血栓形成性を低減する方法であって、
光路を規定する細長光ファイバーと、ヒドロゲル内に固定されて前記光ファイバーの遠位領域に沿って前記光路内に配置された平衡蛍光化学指示薬系と、前記遠位領域の少なくとも一部の外層を形成する分析物透過性の多孔質膜とを含み、前記指示薬系が前記多孔質膜によって覆われている、分析物センサーを用意する工程;
前記分析物センサーを、ヘパリンとベンザルコニウムの混合物を含む単一溶液又は別個のヘパリンを含む第1の溶液及びベンザルコニウムを含む第2の溶液に接触させる工程;及び
前記分析物センサーを乾燥させる工程
を含む、方法。
【請求項16】
前記接触工程及び乾燥工程が2〜10回繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分析物センサーをヘパリンを含む溶液に前記ヘパリンが前記ヒドロゲルを飽和するのに十分な時間浸漬する工程を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記平衡蛍光化学指示薬系が、フルオロフォア及び分析物結合部分を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記フルオロフォアがHPTS−トリCysMAであり、前記結合部分が3,3’−oBBVであり、前記ヒドロゲルがDMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)ヒドロゲルマトリックスである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記多孔質膜がマイクロ多孔質ポリエチレンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
分析物センサーの血栓形成性を低減する方法であって、
分析物センサーを用意する工程であって、前記分析物センサーが、光路を規定する細長光ファイバーと、前記光ファイバーの遠位領域に沿って前記光路内に配置された平衡蛍光化学指示薬系と、前記遠位領域の少なくとも一部を覆う外表面を形成する分析物透過性の多孔質膜とを含み、前記指示薬系が前記多孔質膜で覆われている分析物センサーである、工程;
光活性化可能な化学的連結剤及び抗血栓性分子を用意する工程であって、前記連結剤が、活性化後に前記外表面及び前記抗血栓性分子に共有結合でき、前記連結剤が、2以上の光反応性基及び1以上の荷電基を含む荷電された二官能性以上である光活性化可能な非ポリマー化合物を含む、工程;及び
前記2以上の光反応性基を活性化させることより、前記抗血栓性分子を前記外表面に架橋する工程
を含む、方法。
【請求項22】
前記平衡蛍光化学指示薬系が、非水溶性有機ポリマー内に固定されたフルオロフォア及び分析物結合部分を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記フルオロフォアがHPTS−トリCysMAであり、前記結合部分が3,3’−oBBVであり、前記非水溶性有機ポリマーがDMAA(N,N−ジメチルアクリルアミド)ヒドロゲルマトリックスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記多孔質膜が、マイクロ多孔質ポリエチレンを含む、請求項21に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図8】
【図7A】
【図7B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図8】
【図7A】
【図7B】
【公表番号】特表2013−506503(P2013−506503A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532317(P2012−532317)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/050910
【国際公開番号】WO2011/041546
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(505370235)グルメトリクス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/050910
【国際公開番号】WO2011/041546
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(505370235)グルメトリクス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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