説明

抗血栓性材料

【課題】本発明は、従来の医療用材料に比べて、抗血栓性、ひいては生体適合性に優れ、かつ、親水性の高い表面処理剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、疎水性(メタ)アクリレートと親水性(メタ)アクリレートとからなる(メタ)アクリレート共重合体であって、疎水性(メタ)アクリレートがシリコーン(メタ)アクリレート及び/又はアルキル(メタ)アクリレートである、水不溶性で、かつ室温で粘性液状である(メタ)アクリレート共重合体を含む抗血栓性材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器に血液適合性を付与する抗血栓性材料に関する。より詳しくは、疎水性(メタ)アクリレートと親水性(メタ)アクリレートとからなる(メタ)アクリレート共重合体であって、疎水性(メタ)アクリレートとして少なくともシリコーン(メタ)アクリレートを含む水不溶性で、かつ室温で粘性液状である抗血栓性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の高分子材料を利用した医療機器の検討が進められており、血液フィルター、人工腎臓用膜、血漿分離用膜、カテーテル、人工肺用膜、人工血管、癒着防止膜、人工皮膚等への利用が期待されている。この場合、生体にとって異物である合成材料を生体内組織や血液と接触させて使用することとなるため、医療機器が生体適合性を有していることが要求される。
【0003】
医療機器を血液と接する材料として使用する際には、(a)血液凝固系の抑制、(b)血小板の粘着・活性化の抑制、および(c)補体系の活性化の抑制の3要素が、生体適合性として重要な項目となる。中でも、体外循環用医療機器(例えば、人工腎臓、血漿分離膜)のように、血液と接する時間が比較的短い材料として使用する場合においては、一般に、ヘパリン、クエン酸ナトリウム等の抗凝固剤を同時に使用するため、特に、前記(b)および(c)の血小板や補体系の活性化の抑制が重要な課題となる。
【0004】
(b)血小板の粘着・活性化の抑制については、ミクロ相分離した表面や、親水性表面、特に、水溶性高分子を表面に結合させたゲル化表面が優れており、ポリプロピレン等の疎水性表面は劣っているといわれている。(非特許文献1、2参照)。しかし、ミクロ相分離構造を有する表面は、適度な相分離状態にコントロールすることにより良好な血液適合性を発現することが可能となるが、そのような相分離を作製できる条件は限られており、用途に制限があった。また、水溶性高分子を表面に結合させたゲル化表面では、血小板の粘着は抑制されるが、材料表面で活性化された血小板や微小血栓が体内に返還され、しばしば異常な血球成分(血小板)の変動が観察され、問題となることがあった。
【非特許文献1】トランスアクションズ オブ アメリカンソサエティ オブ アーティフィカル インターナショナル オルガンズ(Trans.Am.Soc.Artif.Intern.Organs)、vol.XXXIII、p.75〜84(1987)
【非特許文献2】高分子と医療、三田出版会、p.73(1989)
【0005】
一方、(c)補体系の活性化については、セルロース、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のヒドロキシ基を有する表面が高い活性を示し、ポリプロピレン等の疎水性表面では活性が軽微であることが知られている。(非特許文献3参照)。したがって、セルロース系やビニルアルコール系の材料を、例えば、人工臓器用膜に使用すると補体系の活性化の問題が生じるが、逆に、ポリエチレン等の疎水性の表面を使用すると血小板の粘着・活性化の問題が生じてしまう。
【非特許文献3】人工臓器16(2)、p.1045〜1050(1987)
【0006】
また、例えば、人工血管のように、血液と接する時間が比較的長い材料として使用する場合には、上記3項目のほかに、新生内膜形式や生体内組織の新生と再生が良好に行われるために、生体内組織(細胞)と親和性を有する材料である必要がある。この人工血管の材料としては、例えば、超極細ポリエステル繊維よりなる人工血管が知られている。(非特許文献4参照)。この超極細ポリエステル繊維は、生体の異物認識、生体防御による創傷治癒、自己組織再生を利用した医療機器の1つであり、今日、人工血管として主に使用されている。しかし、この人工血管を微小血管に長期間適用すると、人工血管が閉塞してしまうという問題が生じる。
【非特許文献4】人工臓器19(3)、p.1287〜1291
【0007】
更に、血液以外にも生体内組織や体液と接する医療機器、例えば、生体内に長期間埋入して使用される癒着防止膜、インプラント材、または創傷部(皮膚が剥がれて損傷し、生体内組織が露出した部位)に接して使用される創傷被覆材では、生体からの異物認識が少なく、生体からはく離しやすい表面(非癒着性表面)が必要とされる。しかしながら、従来上記材料として使用されているシリコーン、ポリウレタンおよびポリテトラフルオロエチレンでは、材料表面に生体内組織が癒着するため、生体の異物認識が強すぎて、満足する性能が得られていなかった。
【0008】
その他の医療用材料としては、ポリエチレングリコール(PEG)がある。PEGは非常に優れた血液適合性を有しており、医療分野への応用研究も多くなされている。しかし、PEGは水溶性であるため、医療用材料として使用する場合は、他のポリマーとのブロック共重合体やグラフト共重合体にして材料表面に固定化する必要があった。
【0009】
シリコーンも同様に高い生体適合性を有する材料である。しかし、シリコーン特有の高い剥離性は基材との接着性を困難にし、複合材料などの用途への展開は困難であった。
【0010】
さらに、ポリエチレングリコールアクリレートとアクリルアクリレートとの水溶性共重合体が知られている。(特許文献1参照)。この技術は免疫測定の際に固相の表面の保護を実施することができる。しかし、この共重合体は水溶性のため長期間の生体適合性の持続は困難であった。
【特許文献1】特開平11−287802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来の医療用材料に比べて、抗血栓性、ひいては生体適合性に優れ、かつ、血液適合性とその長期安定性を両立した抗血栓性材料を提供することを課題とする。また、血液中のタンパク等の成分の医療機器への吸着(粘着)を抑制することが可能な抗血栓性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは親水性のポリエチレングリコール骨格を持つ(メタ)アクリレートと疎水性の(メタ)アクリレートとを共重合することにより得られる共重合体がPEGの生体適合性、ひいては血液適合性を維持しつつ水に不溶となることを発見し、それを塗布することで医療機器に血液適合性を付与できることを見出した。また、得られる共重合体はイオン性基のような極性の高い官能基を有していないため、血液と接触した際の免疫系の活性化を抑制できることを見出した。さらに、疎水性(メタ)アクリレート成分として、シリコーン(メタ)アクリレートを含有させることにより、シリコーンの有する撥水性に起因する血中タンパク成分の吸着(粘着)抑制できることを見出し、ついに本発明を完成した。すなわち、本発明は以下のような構成を有する。
(1)疎水性(メタ)アクリレートと親水性(メタ)アクリレートとからなる(メタ)アクリレート共重合体であって、疎水性(メタ)アクリレートがシリコーン(メタ)アクリレート及び/又はアルキル(メタ)アクリレートである水不溶性で、かつ室温で粘性液状である(メタ)アクリレート共重合体を含む抗血栓性材料。
(2)アルキル(メタ)アクリレートが下記一般式1で示されるものである抗血栓性材料。
【化4】

(式中、R1は炭素原子数2〜30のアルキル基またはアラルキル基、R2は水素原子またはメチル基を示す。)
(3)シリコーン(メタ)アクリレートが下記一般式2で示されるものである抗血栓性材料。
【化5】

(式中、R3は水素原子またはメチル基、R4は炭素数1〜6のアルキレン基、R5は炭素数1〜6のアルキル基、nは1〜1,000の範囲を示す。)
(4)疎水性(メタ)アクリレート中のシリコーン(メタ)アクリレートの含有量が5〜100重量%である抗血栓性材料。
(5)親水性(メタ)アクリレートが下記一般式3で示されるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである抗血栓性材料。
【化6】

(式中、R6は水素原子またはメチル基、nは2〜1,000の範囲を示す。)
(6)(メタ)アクリレート共重合体の数平均分子量が2,000〜200,000である抗血栓性材料。
(7)抗血栓性材料中の疎水性(メタ)アクリレートと親水性(メタ)アクリレートとの含有重量比が50〜95/50〜5である抗血栓性材料。
(8)(メタ)アクリレート共重合体が、純度95mol%以上に精製されたものである抗血栓性材料。
(9)(メタ)アクリレート共重合体の37℃における粘度が0.5〜10000Pa・sである抗血栓性材料。(10)(メタ)アクリレート共重合体が、炭素数1〜6のアルコールのいずれかに可溶であり、かつ水に不溶である抗血栓性材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明の抗血栓性材料は、生体適合性に優れ、かつ、親水性の高い材料として用いることができる。また、材料としての物性が水に不溶な粘性物質であるため医療機器に担持された抗血栓性材料が血液に接触した場合も、容易に血液中に溶出せず、医療機器が長期の抗血栓性を維持できる。さらに、疎水性(メタ)アクリレートとして、シリコーン(メタ)アクリレートを含んでいるため、その撥水作用により(メタ)アクリレート共重合体の加水分解等を抑制する効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において、疎水性(メタ)アクリレートおよび親水性(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリレート共重合体は水不溶性で、かつ室温で粘性を有する液状であることが好ましい。ここで、水不溶性であるとは、(メタ)アクリレート共重合体を該共重合体1重量%に対して99重量%の37℃生理食塩水に30日間静置した際、該共重合体の重量減少率が1重量%以下であることを指す。水不溶性であることにより、生体組織や血液等と接触した場合にも、該共重合体の血液などへの溶出を防ぐ点で好ましい。
また、室温で粘性を有する液状であるため、医療機器等にコーティングして使用した際にも血液への溶解性を低下することができる利点がある。
【0015】
本発明の抗血栓性材料において、親水性(メタ)アクリレートが下記一般式3のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。下記一般式3において、エチレンオキサイド単位が2〜1,000であるものを使用するのが好ましい。より好ましくは2〜500、さらに好ましくは2〜50、さらにより好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜5である。具体的には、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシペンタエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘプタエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシオクタエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシノナエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシデカエチレングリコール(メタ)アクリレートなどがある。繰り返し単位が大きくなり親水性が増大しすぎると共重体の血液への溶解性が高くなるため、医療材料から容易に溶出する可能性がある。したがって、繰り返しエチレンオキサイド単位が4のメトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、3のメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートがさらに好ましい。3のメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【化7】

(式中、R6は水素原子またはメチル基、nは2〜1,000の範囲を示す。)
【0016】
本発明において、疎水性(メタ)アクリレートとしては、少なくとも下記一般式2のシリコーン(メタ)アクリレートを含むのが好ましい。シリコーン(メタ)アクリレートとしては、ジメチルシロキサン繰り返し単位が1〜1,000であるシリコーン(メタ)アクリレートを用いるのが好ましい。繰り返し単位が大きすぎると、得られる共重合体の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難となることがある。また、繰り返し単位が小さすぎると、粘度が下がりすぎて医療機器等の塗布面から容易に消失してしまう恐れがある。したがって、ジメチルシロキサン繰り返し単位は、より好ましくは1〜500であり、さらに好ましくは5〜100、さらにより好ましくは10〜50、特に好ましくは20〜30である。
【化8】

(式中、R3は水素原子またはメチル基、R4は炭素数1〜6のアルキレン基、R5は炭素数1〜6のアルキル基、nは1〜1,000の範囲を示す。)
【0017】
本発明において、疎水性(メタ)アクリレートとして、シリコーン(メタ)アクリレートに他の疎水性(メタ)アクリレートを含んでいても良い。他の疎水性(メタ)アクリレートは特に限定するものではないが、一例として下記一般式1に示されるようなアルキル(メタ)アクリレートを添加するのが好ましい。下記一般式1において、R1の炭素数が2〜30のものを使用するのが好ましく、より好ましくは4〜24であり、さらに好ましくは6〜18である。このようなアルキル(メタ)アクリレートの具体例として、ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等があるが、コストと性能の観点から2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【化9】

(式中、R1は炭素原子数2〜30のアルキル基またはアラルキル基、R2は水素原子またはメチル基を示す。)
【0018】
本発明の水不溶性の(メタ)アクリレート共重合体に属する代表的なものを具体的に挙げると、シリコーン(メタ)アクリレート−メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート−メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート−メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート−メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−シクロヘキシル(メタ)アクリレート−メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−シクロヘキシル(メタ)アクリレート−メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−シクロヘキシル(メタ)アクリレート−メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−フェニル(メタ)アクリレート−メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−フェニル(メタ)アクリレート−メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−フェニル(メタ)アクリレート−メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−n−オクチル(メタ)アクリレート−メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−n−オクチル(メタ)アクリレート−メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−n−オクチル(メタ)アクリレート−メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート−メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート−メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート−メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ラウリル(メタ)アクリレート−メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ラウリル(メタ)アクリレート−メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ラウリル(メタ)アクリレート−メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−n−ノニル(メタ)アクリレート−メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−n−ノニル(メタ)アクリレート−メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−n−ノニル(メタ)アクリレート−メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−n−デシル(メタ)アクリレート−メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−n−デシル(メタ)アクリレート−メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−n−デシル(メタ)アクリレート−メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ステアリル(メタ)アクリレート−メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ステアリル(メタ)アクリレート−メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ステアリル(メタ)アクリレート−メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ラウリル(メタ)アクリレート−メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ラウリル(メタ)アクリレート−メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ラウリル(メタ)アクリレート−メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ミリスチル(メタ)アクリレート−メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ミリスチル(メタ)アクリレート−メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート−ミリスチル(メタ)アクリレート−メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体のような、これに限定されるものではないが、一般式2のシリコーン(メタ)アクリレート(場合により一般式1のアルキル(メタ)アクリレートを含む)と、一般式3のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの単量体を50〜95/50〜5のモル比で任意に組み合わせて慣用の重合法に従って共重合させたものである。共重合体の重合条件および医療機器としての特性を考慮すれば、好ましくは60〜95/40〜5のモル比で、数平均分子量が2,000〜200,000になるように共重合させたものが最適である。
医療機器という用途を考慮すれば、未反応のモノマーやオリゴマーを、再沈殿方法などの精製処理により除去した、共重合体の純度が95mol%以上になるように精製したものが適している。
【0019】
本発明において、(メタ)アクリレート共重合体の数平均分子量は2,000以上であることが共重合体の精製処理の容易さの点で好ましい。数平均分子量が小さすぎると、血液中に容易に溶出する恐れがあるばかりでなく、塗膜の強度、安定性などが失われる可能性がある。また、分子量が大きいほどコーティング溶液を調製した際に粘度が上昇するためコーティング基材との粘着性が向上するという副次効果もある。したがって、(メタ)アクリレート共重合体の数平均分子量は5,000以上がより好ましく、8,000以上がさらに好ましい。また、該(メタ)アクリレート共重合体の数平均分子量は200,000以下とすることが(メタ)アクリレート共重合体を医療機器等にコーティングする際の作業性が向上するため好ましい。より好ましくは100,000以下、さらに好ましくは50,000以下、さらにより好ましくは30,000以下、特に好ましくは18,000以下である。ここで、数平均分子量とは全分子の分子量の和を分子数で割ったものであり、高分子の特性の指標の一つである。
この(メタ)アクリレート共重合体の数平均分子量を、2,000〜200,000とすることは、該共重合体の精製、処理液の取り扱い、医療機器への適応性、塗膜の安定性などに関する特定の技術課題を達成する為には、非常に重要な技術要件でもある。
数平均分子量を測定する方法としては、末端基定量法、浸透圧法、蒸気圧オスモメトリー、蒸気圧降下法、氷点降下法、沸点上昇法、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法などがあるが、本発明においては操作の容易さの点でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法という慣用の手法を採用する。
【0020】
本発明において、(メタ)アクリレート共重合体の37℃における粘度が0.5〜10000Pa・sであることが好ましい。このような粘度範囲にある共重合体(抗血栓性材料)を用いることにより、コーティング液を調製した際の溶液の取扱い性を良好にすることができる。また、人工心肺回路やカテーテルなどの医療機器にコーティングした際に、該共重合体と医療機器との粘着性に優れ、長期使用での抗血栓性の持続が可能となる。より好ましい粘度範囲は10〜5000Pa・s、さらに好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明の(メタ)アクリレート共重合体は室温で液状であるので、該共重合体をメタノールやエタノール等の適当な溶媒に溶解し、例えばB型粘度計(製品名:Visco Basic plus,FUNGILAB社)を使用して簡便に測定することができる。
【0021】
「医療膜材料を生体組織や血液と接触して使用した際、最初に起こる現象がタンパク質の吸着である。医療膜材料が血液を含む体液と接触した直後(1秒以内)に、医療膜材料表面へのタンパク質吸着は観察される。」(医療用マテリアルと機能膜、シーエムシー出版)と記載されているように、タンパク質の吸着は生体の最初の反応であり、以降に起こる異物認識反応の起点となっている。本願発明の抗血栓性材料を医療機器にコーティングした際の医療機器へのタンパク付着量は1.0μg/m2以下が好ましい。タンパク付着量が前記範囲であれば、医療機器表面へのタンパク付着の積層に起因する異物認識反応の発現が起こりにくいと言える。0.7μg/m2以下がより好ましく、0.5μg/m2以下がさらに好ましく、0.4μg/m2以下がさらにより好ましく、0.3μg/m2以下が特に好ましい。
【0022】
本発明において、抗血栓性材料中の疎水性(メタ)アクリレートと親水性(メタ)アクリレートとの含有重量比が50〜95/50〜5であることが好ましい。疎水性(メタ)アクリレートが少なすぎると共重合体が血液などに溶解しやすくなり、多すぎると親水性(メタ)アクリレートの血液適合性が十分に発揮されない可能性がある。したがって、組成比は55〜95/45〜5であることがより好ましく、60〜90/40〜10がさらに好ましく、60〜85/40〜15がさらにより好ましい。
【0023】
また、本発明において、疎水性(メタ)アクリレートとしてシリコーン(メタ)アクリレートを必ずしも含むものではないが、シリコーンは、その基本骨格からもわかるように耐熱性、耐寒性に優れておりガラス転移温度(Tg)も低いため、種々の温度範囲で安定した特性を発揮できる利点がある。また、結合エネルギーが大きいため、酸、アルカリ耐性があり、化学的にも安定性が高いという利点がある。さらに、(メタ)アクリレートモノマーとの共重合性に優れており、本発明の(メタ)アクリレート共重合体の原料として好ましく利用できる。シリコーン(メタ)アクリレートは、近年コンタクトレンズの材料に採用されるなど生体に対する高い安全性を有する材料としても認知されている。したがって、抗血栓性材料中のシリコーン(メタ)アクリレート含有量は多すぎて問題となることはないと思われ、シリコーン(メタ)アクリレート−メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体でも構わない。しかし現状、シリコーン(メタ)アクリレートは原料価格が比較的高いこともあり、疎水性(メタ)アクリレートとしてシリコーン(メタ)アクリレートを単独で用いると費用対効果の面で不利になることがある。性能、品質、コストなどを総合的に考慮して、シリコーン(メタ)アクリレートの添加量の上限は50重量%以下含まれていれば足りるといえる。より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下である。また、シリコーン(メタ)アクリレートと先述した他のアルキル(メタ)アクリレートを混合して用いても良い。一方、シリコーン(メタ)アクリレート含有量が少なすぎると、保存中に加水分解が進行し、抗血栓性材料として長期安定性が低下することがあるので、疎水性(メタ)アクリレート中のシリコーン(メタ)アクリレート含有量は0.1重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましく、1.0重量%以上含むのがさらにより好ましい。
【0024】
この(メタ)アクリレート共重合体は、上記一般式2のモノマーと一般式3のモノマーが交互に配列した共重合体であることも有り得るが、トータル量から解析すれば、疎水性モノマーからなるセグメント又はブロックと、親水性モノマーからなるセグメント又はブロックからなる共重合体であることも有り得る。疎水性モノマーからなるセグメント又はブロックが、親水性モノマーからなるセグメント又ブロックを固定する機能を果たす、いわゆるミクロ相分離構造、モザイク模様のような構造というような複雑な構造を採ることも有り得ることが一応想定できる。いずれにせよ、共重合体の分子量の大小および親水性モノマーの種類、特性なども多少影響するだろうが、疎水性モノマーの量を若干多くすれば、該共重合体の親水性モノマーからなるセグメント又はブロックの溶出を抑えることができる。また、この疎水性セグメントをやや多くするということは、疎水性医療機器との親和性を上げる機能も果たすものと思われ、被膜として医療機器との固着に有利な役割を果たすことも想定できるが、セグメントの有無およびその親和性の状態に関する挙動に関して、現状では技術的根拠に基づいて正確に検証することができないが、該共重合体は生体にやさしい親和性をもった高分子材料である。
【0025】
「アクリル樹脂 合成・設計と新用途開発 中部経営開発センター 昭和60年発行」、「アクリル酸エステルとそのポリマー[II] 株式会社昭晃堂 昭和50年発行」によると、アルキル(メタ)アクリレートの炭素数が増大するにつれ、そのポリマーのガラス転移点は低下し、ある極小値をむかえた後増大する傾向にある。その極小値はn-アルキルアクリレートでは炭素数が8、n-アルキルメタクリレートでは炭素数が12である。つまり、炭素数8のアルキルアクリレートを共重合成分として組み込むことで共重合体のガラス転移温度を低下させることができることを示唆している。
【0026】
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート単独重合体は親水性が高いため血液適合性には優れているが、水溶性であるので血液等に長期間接触させた場合、徐々に溶出する問題があった。本発明者らは血液適合性に優れるだけでなく、長期使用に耐える材料について鋭意検討した結果、血液等への溶出を防止するための適度な疎水性と、コーティング被膜の物理的な膜剥がれを防止するための柔軟性とを付与することにより得られる共重合体が該課題を解決できることを見出した。
このように、処理液に含まれる該共重合体は、血液に対処する例えば抗血栓性、溶出防止のような機能を有する親水性モノマー、セグメント、又はブロックからなるものと、医療機器に対処する、例えば親和性、固着性のような機能を有する疎水性モノマー、セグメント又はブロックから構成されているという、いわゆる異なる二面の界面機能を果たす二種類のモノマー成分から実質的に構成されているが、一方で、該共重合体を構成する、モノマー、セグメント、又はブロック同志がお互いに分子構造内で補完しあって、溶出、分散などに対して安定な分子も結合又は構造を形成しているようにも見える。
【0027】
本発明において、(メタ)アクリレート共重合体は炭素数1〜6のアルコールのいずれかに可溶であることが好ましい。炭素数1〜3のアルコールに可溶であることがコーティング後の乾燥が容易になるためより好ましい。ここで、可溶であるとは前記アルコール10mlに(メタ)アクリレート共重合体1gを25℃で浸漬した際、室温下16時間以内に少なくとも90重量%の(メタ)アクリレート共重合体が溶解することを言う。
【0028】
「高分子基礎科学 株式会社昭晃堂 1991年発行」によると、高分子を溶融状態から冷却してゆくと、結晶化せずに過冷却状態を経てついにはガラス状態となり固化してしまうことがある。この液体状態からのガラス状態への転移をガラス転移といい、この温度をガラス転移温度という。ガラス転移温度以下では高分子は流動性を失ってガラス状であるのに対し、ガラス転移温度以上では流動性を持ち、いわば液体の状態にある。つまり、本発明の共重合体に柔軟性を持たせるためには室温(25℃)よりも低いガラス転移温度をもつ必要がある。
【0029】
本発明の(メタ)アクリレート共重合体のガラス転移温度は−100〜20℃であることが好ましい。−80〜5℃であることがより好ましく、−80〜−10℃がさらに好ましく、−80〜−20℃がさらにより好ましく、−80〜−40℃が特に好ましい。ガラス転移温度が高すぎると作業環境において医療機器に担持された抗血栓性物質(共重合体)が物理的に剥離してしまう可能性がある。ガラス転移温度が低すぎると共重合体の流動性が増大し、コーティングの作業性が低下する可能性がある。
【0030】
本発明において、(メタ)アクリレート共重合体からなる抗血栓性材料は抗菌性物質などの物質を含んでいても良い。抗菌性物質は、特に限定されるものではなく、例えば、アンピシリン、ナフシリン、アモキシシリン、オキサシリン、アズロシリン、ペニシリンG、カルベニシリン、ペニシリンV、ジクロキサシリン、フェネチシリン、フロキサシリン、ピペラシリン、メシリナム、スルベニシリン、メチシリン、チカルシリン、メズロシリン、セファクロール、セファロチン、セファドロキシル、セファピリン、セファマンドール、セフラジン、セファトリジン、セフスロジン、セファゾリン、セフタジジム、セフォラニド、セフトリアキソン、セフォキシチン、セフロキシム、セファセトリル、ラタモキセフ、セファレキシン、アミカシン、ネオマイシン、ジベカシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネチルマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、アンホテリシンB、ノボビオシン、バシトラシン、ニスタチン、クリンダマイシン、ポリミキシン、コリスチン、ロヴァマイシン、エリトロマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン、リンコマイシン、バンコマイシン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、ミノサイクリン等の抗生物質、アンホテリシンB、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、エコナゾール、ナタマイシン、フルシトシン、ニスタチン、グリセオフルビン等の抗真菌剤、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のパラオキシ安息香酸エステル、クロルヘキシジン等のビグアニド化合物、ベンゼトニウム、ベンザルコニウム、ラウリル硫酸、アルキルポリアミノエチルグリシン、脂肪酸、臭化ドミフェンなど表面活性を有する化合物、チモール、フェノール、ヘキサクロロフェン、レゾルシン等のフェノール誘導体、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸化合物、ヨウ素、ヨードホルム、ポビドンヨード等のヨウ素化合物、金、銀、銅、水銀などの金属、チメロサール、メチロブロミン、スルファジアジン銀等の金属化合物、アクリノール、メチルロザリニン等の抗菌色素化合物、酢酸マフェニド、スルファジアジン、スルフィソミジン、スルファメトキサゾール等のサルファ剤等が挙げられる。これらの抗菌性物質は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、塩酸塩、硫酸塩、グルコン酸塩等の塩化合物であってもよく、また、2種類以上の抗菌性物質を併用してもよい。
【0031】
上記抗菌性物質は水溶性と難水溶性に大別でき、水溶性の抗菌性物質として代表的なものは塩化ベンザルコニウム、ポビドンヨード、ペニシリンGカリウム、硫酸ストレプトマイシンなどが挙げられる。また、難水溶性の抗菌性物質として代表的なものはスルファジアジン銀、クロルヘキシジンなどが挙げられる。
【0032】
本発明において、医療用具等に抗血栓性物質(共重合体)と難水溶性の抗菌性物質とをコーティングした場合、共重合体が水不溶性であるためか、共重合体の水不溶性と抗菌性物質の難水溶性とが相補的に機能するためか不明だが、抗菌性物質の溶出が極微量かつ持続的となり、長期的な抗菌性を維持することができる。一方、共重合体と水溶性の抗菌性物質とをコーティングした場合には、共重合体は水不溶性であるが、抗菌性物質が水溶性であるため、その溶出量は難水溶性の抗菌性物質を用いた場合に比べて多くなり、瞬間的な強い抗菌性を発現することはできるが、長期的な抗菌性を維持することはできない。例えば、血管内留置カテーテル、輸液チューブ、人工肺などは1〜数日連続して使用される医療用具であり、このような用途には長期的な抗菌性の持続が必要である。また、共重合体に水溶性と難水溶性の抗菌性物質を併用することによって、初期は水溶性の抗菌性物質による強い殺菌力を発揮し、その後は難水溶性の抗菌性物質によって長期的な抗菌性を発揮するといった多段階的な抗菌性を付与することも可能である。この多段階的抗菌性を血管内留置カテーテルに応用すれば、水溶性の抗菌性物質が早期に溶出し、強い抗菌性を発現させることによって、カテーテル挿入時に血管内へ持ち込んでしまう皮膚常在菌を殺菌し、挿入時の感染のリスクを低減させる。そして、カテーテル留置中には、難水溶性の抗菌性物質の長期的な抗菌性により、細菌のカテーテルへの定着や挿入部位から浸入してきた細菌の増殖を阻止することができ、留置時における感染のリスクを低減させることができる。
【0033】
本発明において、抗菌性物質は抗血栓性抗菌性組成物の重量に対して0.01〜70重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜50重量%、さらに好ましくは0.1〜30重量%、さらにより好ましくは0.1〜10重量%である。抗菌性物質の含有量が低すぎる場合は、抗菌性物質の抗菌性が十分に発揮できない可能性がある。また、抗菌性物質の含有量が高すぎる場合は、コーティング等の表面処理後の医療用具に外観不良が発生したり、体内への抗菌性物質の溶出が増加し、溶出した抗菌性物質による局所的な炎症を起こすことがある。したがって、抗菌性物質は医療用具表面全体に存在させてもよいが、皮膚を挿通している刺入部近傍にのみ存在させるのが局所的な炎症を抑制する点で好ましい。
【0034】
本発明の抗血栓性材料は、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、本発明の抗血栓性材料を製造するための共重合反応自体には特別の制限はなく、ラジカル重合、イオン重合、光重合、マクロマーを利用した重合等の公知の方法を用いることができる。
【0035】
本発明の(メタ)アクリレート共重合体を製造するための一例としてラジカル重合による製造方法を以下に示す。
即ち、還流塔を装着した攪拌可能な反応装置にモノマーと重合溶媒、開始剤を加え、窒素置換の後加熱することで重合を開始し、一定時間その温度を保つことで重合を進行させる。重合中に窒素をバブリングすることがより好ましい。この重合の際に連鎖移動剤を併用し、分子量をコントロールすることも可能である。重合終了後の溶液より溶媒を除去し、粗(メタ)アクリレート共重合体を得る。引き続き、得られた粗(メタ)アクリレート共重合体を良溶媒に溶解し、攪拌下の貧溶媒中に滴下して精製処理を行う。精製処理を1〜数回繰り返し(メタ)アクリレート共重合体の純度を上げる。このようにして得られた共重合体を乾燥する。
【0036】
共重合の際に用いる重合溶剤としては、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、トルエン、ベンゼン、メチルエチルケトン等の有機溶剤、あるいは水を用いることができるが、本発明においてはモノマーおよび得られる共重合体の溶解性や入手の容易さの面から酢酸エチル、メタノール、エタノール等を用いるのが好ましい。また、前記溶剤の複数種を混合して用いることもできる。これら重合溶媒とモノマーとの仕込み重量比は20〜90/80〜10が好ましく、30〜90/70〜10がより好ましく、35〜85/65〜15がさらに好ましい。仕込み比が前記範囲にあれば、重合反応率を最大限に高めることができる。
【0037】
重合開始剤としては、一般的にラジカル重合で用いられる過酸化物系、アゾ系のラジカル開始剤が用いられる。過酸化物系ラジカル開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機系過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンパーオキサイド等の有機系過酸化物が、アゾ系ラジカル開始剤としては例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)ジハイドロクロライド、ジメチル2,2’−アゾビスブチレート、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が用いられる。また、過酸化物系の開始剤に還元剤を組み合わせたレドックス開始剤も使用できる。これらの重合開始剤等は重合溶液中のモノマーに対して0.01〜1重量%添加するのが好ましい。より好ましい添加量は0.05〜0.5重量%、0.05〜0.3重量%がさらに好ましい。重合開始剤等の添加量を前記範囲にすることにより、良好なモノマー反応率で適正な数平均分子量を有する共重合体を得ることができる。
【0038】
重合する際の温度は、溶剤の種類、開始剤の種類によって異なるが、開始剤の10時間半減期温度付近を使用するのが好ましい。具体的には、前記開始剤を使用する場合20〜90℃が好ましい。30〜90℃がより好ましく、40〜90℃がさらに好ましい。重合の際に分子量を制御するため用いられる連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、チオリンゴ酸、チオグリコール酸等の高沸点のチオール化合物、イソプロピルアルコール、亜リン酸、次亜リン酸等を用いることができる。
【0039】
本発明において、(メタ)アクリレート共重合体は親水性と疎水性のモノマーを共重合してできるものであるため、親水性と疎水性の両方の性質を有する。したがって、共重合後の溶液中には、未反応モノマーである親水性モノマー(メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート)と疎水性モノマー(シリコーン(メタ)アクリレート、場合によりアルキル(メタ)アクリレート)、および(メタ)アクリレート共重合体からなる成分が混在している。これらの混合物の中から水不溶性の(メタ)アクリレート共重合体を単離するためには、例えば親水性モノマーを溶解する溶媒に該共重合体溶液を滴下して精製を行い、続いて疎水性モノマーを溶解する溶媒を用いて共重合体を精製することができる。また、アルコールと水とを特定の割合で混合した再沈殿貧溶媒を用いることにより効率よく(メタ)アクリレート共重合体を回収できる。さらに、重合反応が完了した溶液中に、特定の割合のアルコールと水との混合液からなる貧溶媒を添加して攪拌することにより、重合溶媒とポリマーを分離した後、特定の割合のアルコールと水との混合液からなる貧溶媒を洗浄液として添加して攪拌を行って沈殿をデカンテーションにて回収し、洗浄液を添加して同じ方法を繰り返し行うことによる精製方法をとることもできる。
【0040】
本発明において、該共重合体を再沈澱処理により精製するために用いる溶媒としては、該共重合体を溶解せず、親水性・疎水性モノマーの両方を溶解する溶媒を用いるのが好ましい。アルコールのみを用いた場合は(メタ)アクリレート共重合体を沈殿させるためには、アルコールよりも親水性を向上させるか、低下させる必要がでてくる。このようなアルコールの親水性を制御する方法として、アルコールに親水性の高い溶媒を混合して用いる方法が挙げられる。そのような溶媒の具体例として、水、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどがあるが、作業の安全性、容易性、揮発しやすさとコストの面から水を用いるのが好ましい。アルコールと水を一定の混合比で混合して貧溶媒として用いることにより、(メタ)アクリレート共重合体を簡便、低コストで、かつ高回収率で得ることができる。
【0041】
本発明において、再沈殿処理に用いるアルコールとしては、炭素数1〜10のアルコールを用いるのが好ましく、より好ましくは炭素数1〜7のアルコールであり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルコールである。このようなアルコールの具体例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メトキシ−1−プロパノール、ターシャリーブタノールなどがあるが、低温、短時間乾燥ができることからメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが特に好ましい。
【0042】
本発明における再沈殿処理溶媒としては、炭素数1〜10のアルコールと水とを40〜99/60〜1の重量比で混合して用いることが好ましく、より好ましくは50〜99/50〜1であり、さらに好ましくは60〜95/40〜5である。アルコール比が大きくなりすぎると(メタ)アクリレート共重合体が析出しにくくなり、水比が大きくなりすぎると析出した(メタ)アクリレート共重合体に不純物として未反応のモノマーが混入する恐れがあるため、70〜95/30〜5が特に好ましい。
【0043】
本発明において、炭素数1〜10のアルコールと水との混合液を再沈殿の貧溶媒として用いる態様を詳細に説明する。良溶媒としては、(メタ)アクリレート共重合体が溶解され、貧溶媒と混和し得るものであれば何でもよい。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどがあるが、容易に乾燥できる点で沸点の低いテトラヒドロフラン、アセトンが特に好ましい。これらを良溶媒として用いて上記貧溶媒に添加する再沈殿処理を複数回繰り返すことにより精製するのが好ましい。
【0044】
前記説明したような精製処理操作を1回、必要により2〜8回行うことにより、未反応モノマー含有量が5mol%未満である水不溶性の(メタ)アクリレート共重合体を50重量%以上という高回収率で回収することが可能となる。該共重合体中に含まれる未反応モノマー、オリゴマー、重合残渣の含有量が多い場合には、それが血液中に溶出して、患者のショック症状などの原因物質となることが考えられる。それらの原因物質は精製処理で大部分は除去できるが、その原因物質を反応モノマー換算で、患者の安全を考慮すれば、その含有量を5mol%以下にする必要がある。しかし、精製工程に配慮すれば、3mol%以下、好ましくは1mol%以下にすることが好ましい。本発明においては、医療機器という特殊な用途を考慮して細心の注意をした結果、精製処理における該共重合体の若干の損失又は放棄などを伴う精製工程を採用した結果、未反応モノマー残留量が理想の0.1mol%以下をはるかに超えた、0.06mol%程度を達成した共重合体を提供することができた。これは、別の慣用の指標である純度で表示すれば、精製共重合体の前重量(W1)に含まれる、共重合体だけの重量(W2)として、両者の比でW2/W1×100により算定をするなら、共重合体の純度に換算すれば、90重量%以上、好ましくは95重量%以上、特に99重量%以上といい得るが、本発明では、99.9重量%以上のものを提供することができる。
【0045】
本発明において、精製処理後の(メタ)アクリレート共重合体の回収率が90重量%を超えると回収物中に未反応モノマー含有の恐れが生じ、50重量%を下回ると生産効率が低下するため、回収率は50〜90重量%であることが好ましい。この回収率を50〜90重量%にとどめるということは、共重合体の回収を若干損失又は放棄することにもなるが、未反応モノマーの混入をできるだけ防ぐということからすれば仕方がないことである。というのも、医療機器に適用する親水性、疎水性の性質を兼ね備えた共重合体であるという特有の事情からすれば、それぐらいの配慮は当然にしなければならないことである。
【0046】
精製された共重合体を医療機器の抗血栓性材料として用いるためには乾燥により溶媒の除去が必要となる。乾燥方法としては例えば、60℃で1Torr以下の減圧下において2〜10日間継続して実施し、十分な乾燥が得られないときは引き続き減圧乾燥を行えば良い。このようにして得られた(メタ)アクリレート共重合体は純度が95mol%以上であることが好ましい。共重合体純度が95mol%以上であれば、例えば後述するような医療機器のコーティング材料として用いた場合に血液中にモノマー、オリゴマー等が溶出しないなど医療用として安全性の高い材料を提供することができる。
【0047】
上述した本発明の抗血栓性材料は、水不溶性であり、医療材料等の表面処理剤として好ましく用いることができる。具体的な態様として、得られた抗血栓性材料を有機溶媒に溶解することにより得られる溶液を医療機器等の基材表面に塗布した後、溶媒を除去することによって得ることができる。本発明の抗血栓性材料を基材表面に担持させる方法としては、コーティング法や放射線、電子線、紫外線によるグラフト重合を利用する方法、基材の官能基との化学反応を利用する方法等の公知の方法が挙げられる。中でも、コーティング法は、製造工程が容易であるため、実用上好ましい。コーティング法は、特に限定されず、塗布法、スプレー法、ディップ法等を用いることができる。例えば、塗布法によるコーティング法は、例えば、アルコール、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等の適当な有機溶媒に本発明の抗血栓性材料を溶解したコーティング液に、基材を浸せきした後、余分な溶液を除き、ついで風乾させるなどの簡単な操作で実施できる。また、コーティング後の基材に熱を加え乾燥させることも好ましい。これにより、基材と本発明の抗血栓性材料との接着性をより高め、より強固に固定することができる。
【0048】
有機溶媒としては基材である医療機器にできる限り損傷を与えないものが選択され、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、アセトン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、1、4-ジオキサン、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が使用されるが、この中でも沸点が低く、コーティング後の乾燥が容易なメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールがより好ましい。
【0049】
本発明のアルキル(メタ)アクリレート及び/又はシリコーン(メタ)アクリレートとメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとを共重合することにより得られる(メタ)アクリレート共重合体は、親水性と疎水性が適度にバランスされているので、血液適合性材料として好適に使用することができる。特に、シリコーン(メタ)アクリレートを特定の範囲含有する(メタ)アクリレート共重合体は、血中タンパク等の吸着や粘着を抑制することができるため、医療機器や人工臓器の処理材料として好適に使用することができる。
また、本発明の(メタ)アクリレート共重合体は、単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0050】
本抗血栓性材料を用いて処理を行った医療機器が血液と接触した際、親水性の高いメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが表面に張り出して抗血栓性を発揮し、また疎水性(メタ)アクリレートは基材近傍に留まることによって血液と医療機器が直接接触することを防いでいるものと考えられる。
【0051】
本抗血栓性材料の水不溶性を確認する方法としてエージング処理が挙げられる。エージング処理に用いる抽出溶媒としては、簡便性とその後に実施する血液適合性評価の信頼性を向上させる点で、生理食塩水を用いることが好ましい。37℃恒温下にて行うのがさらに好ましい。本発明の抗血栓性材料は水不溶性であるので、医療機器より容易に溶出せず、エージング処理後も高い血液適合性が維持される。
【0052】
本発明において、(メタ)アクリレート共重合体の免疫活性化度を評価する方法として補体価の比較が挙げられる。CH50を測定するMayer法は簡便で速やかな測定が可能であり、しかも測定キットの入手が容易で安価なため好ましい(「人工臓器」23(3)、654−659(1994))。ヒツジ感作赤血球と血清中の補体とが反応することにより、感作赤血球が溶血する。補体系が活性化されるほど溶血度が低下することから、評価方法として有意に利用することができる。
【0053】
本発明の免疫系評価の別法として、アナフィラトキシンとよばれるC3aの定量が挙げられる。生体内でC3aが産生されると血管透過性の変化、平滑筋の収縮、肥満細胞と好塩基球によりヒスタミン遊離を起こし、炎症反応を主にきたす(「補体の分子生物学」−生体防御における役割− 株式会社南江堂)。
C3aの数値が大きいほど補体系が活性化していることを意味し、その数値の比較により、評価方法として有意に利用することができる。
【0054】
さらに本発明の別の免疫系評価方法として、最終補体複合体(Terminal Complement Complex、以下TCCと表記する)の定量が挙げられる。補体系の活性化により膜障害複合体(以下、MACと表記する)が産生され、標的となる細胞膜を溶解する効果をもたらす一方、プロテインSによってMACの細胞膜溶解効果を不活性化することにより、免疫効果を制御している。プロテインSとMACが結合することによって生じ、細胞膜溶解能をもたないTCCについて、その数値の比較により補体系の活性化度を定量することができる。すなわち、TCC濃度が増大するほど補体系が活性化されるとみなすことができる。
【0055】
本発明において、(メタ)アクリレートの血液適合性評価方法の一つとして、フィブリンゲル形成実験が挙げられる。この手法では、血液凝固因子のひとつであるフィブリノゲンの活性化度を評価することができる。具体的には、血漿中のフィブリノゲンがカルシウムイオンによってゲル化し、フィブリンゲルになる反応を利用するものである。サンプルと接触したカルシウムイオン添加血漿において、ゲル化に要す時間(以下、ゲル化時間とする)を計測することにより、血液凝固系の活性化を特別な測定機器を要すことなく容易に評価することができるため、本手法が好ましい。ゲル化時間が長くなるほど血中タンパクの異物認識作用が惹起されにくいことを意味し、血液適合性が高いことを意味する。
【0056】
本発明の抗血栓性材料により表面の少なくとも一部が被覆された医療機器は、優れた抗血栓性を発現することができる。そのような医療機器としては、例えば、血液フィルター、血液保存容器、血液回路、留置針、カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、人工肺装置、透析装置、癒着防止材、創傷被覆材、生体組織の粘着材、生体組織再生用の補修材が挙げられる。特に、体外循環回路を有し、そこに血液接触部を有する医療機器が好ましい態様である。
【0057】
ここで医療機器の基材としては通常使用される全ての材料が含まれる。すなわち、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、架橋部を有するポリジメチルシロキサン等のシリコーンゴム、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアセタール、ポリスチレン、ABS樹脂およびこれらの樹脂の混合物、ステンレス、チタニウム、アルミニウム等の金属などが挙げられる。
【0058】
本発明において、抗血栓性材料を医療機器に担持させるための方法は特に限定されないが、例えば、有機溶媒等に該抗血栓性材料を溶解または分散させた処理液に医療機器を浸漬したのち、加熱するなどして溶媒を除去すればよい。該処理液中の(メタ)アクリレート共重合体の濃度は0.001〜10重量%であることが好ましい。(メタ)アクリレート共重合体の濃度が低すぎると、例えば医療機器に適用した場合に十分に性能が発現しない可能性があるため、0.01重量%以上であることがより好ましい。また、濃度が高すぎると、溶液粘度が上昇しすぎて作業性が低下する恐れがあるために5重量%以下であることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0060】
(数平均分子量の測定)
試料15 mgに3 mLのGPC測定用の移動相を加えて溶解し、0.45μmの親水性PTFE(Millex-LH、日本ミリポア社)でろ過を行った。GPC測定は510高圧ポンプ、717plus自動注入装置(日本ウォーターズ社)、RI-101(昭和電工社)の測定装置を用い、カラムPLgel 5μMIXED-D(600x7.5 mm)(Polymer Laboratories社)、カラム温度は常温で行い、移動相は0.03重量%のジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を添加したテトラヒドロフラン(THF)を用いた。RIにて検出を行い、50 μL注入した。分子量構成は単分散PMMA(Easi Cal: Polymer Laboratories社)で行った。
【0061】
(共重合組成比の測定)
NMR用試験管(規格;N-5、日本精密化学社製)中にサンプル50 mgをパスツールピペットにて加えた後、重クロロホルム(和光純薬製)0.7 mLを加え十分に混和し、試料用キャップ(規格NC-5、日本精密化学社製)で蓋をした。共重合組成比は、VARIAN社のGEMINI-200を用いて室温下1H NMR測定を実施し、共重合組成比を算出した。共重合組成比は、アルキル(メタ)アクリレートの末端メチル基由来プロトンの積分比および、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの末端メトキシ基由来のプロトン積分比を用いて決定した。
【0062】
(収率の計算)
仕込みモノマーの総重量に対する、精製処理及び乾燥後の共重合体重量比を収率として算出した。収率が50〜90%の範囲内に入れば、良好と評価した。
【0063】
(アルコール可溶性テスト)
50 mLバイアル中にサンプル 500mgを加えた後、炭素数1〜6いずれかのアルコール 2 mLを加え、十分混和させた。その後、目視により溶解を確認した。
【0064】
(ガラス転移温度の測定)
示差走査熱量計(島津DSC-50)を用いた。試料10 mgをセル(Alセル、6mmφ、島津製作所)につめ、蓋をして、シーラ・クリンパ(島津製作所社)でクリンプおよびシールした後、測定機器にセットして測定を行った。サンプルを30℃から300℃まで50℃/minの速度で昇温し5min保持した後、10℃/minの速度で−100℃まで冷却し、5min保持した。その後の−100℃から300℃までの熱履歴によりガラス転移温度(Tg)を算出した。
【0065】
(粘度の測定)
Visco Basic plus(Lタイプ、FUNGILAB社)を用いて行った。共重合体をいれた容器を、37℃に設定したウォーターバス内に1時間静置したのち、3回の測定を行い、それらの平均値を粘度値とした。
【0066】
(エージング処理)
抗血栓性材料0.2 gにエタノール19.8 gを加えて溶解することで1重量%のエタノール溶液を調製し、処理液を得た。処理液中に25×25×1mmの軟質塩ビシートを浸漬した後、軟質塩ビシートを取り出し、60℃で24時間乾燥させた。さらに、37℃生理食塩水中で30日間エージングを行い、血液適合性試験用エージングサンプルとした。30日間エージング後のサンプルについて、重量減少率が20重量%以下であれば、抗血栓性材料は水不溶であると判断した。
【0067】
(タンパク吸着量の測定)
25×25×1(mm)のポリスチレン製シートに、上記方法と同様に表面処理を行ったサンプルが入った20 mLポリスチレン製容器に濃度300 μg/mLに調整したウシ血漿フィブリノゲン(BPF)のリン酸緩衝液(pH:7.4)を16 mL添加し、37℃にて1時間インキュベートを行った。BPF溶液を除去したのち、上記リン酸緩衝液10mLにて容器内をリンスする操作を10回行った。さらに、1%SDSを2 mL用いてサンプル表面を十分洗浄した。洗浄液中のタンパク濃度をmicro BCAキットにて定量した。
【0068】
(血液適合性試験)
ウサギより脱血した加クエン酸新鮮血60 mLを50 mL遠沈管二本に等分し、それを1000 rpmにて10分間遠心分離した。その上澄みを10 mL遠沈管四本に等分した。それをさらに1500 rpmで10分間遠心分離した後、上澄みを除去し、沈殿である血小板ペレットを分離した。その中にHBSS(ハンクス平衡塩溶液)を添加して希釈することで、血小板濃度3.0x108/mLの血小板溶液を得た。血小板濃度は血球カウンター(KX-21 シスメックス社)で確認した。この濃度の血小板溶液を試験液とした。得られた試験液を0.2mLとり、60×15mmのシャーレ(コーニング社、ポリスチレン製)内の血液適合性試験用エージングサンプル上面に滴下した後、蓋をして37℃で1時間インキュベートした。その後、2.5重量%のグルタルアルデヒド水溶液5 mLを加え、室温で24時間静置した。水でシャーレ内の溶液を置換する操作を3回行った後、排水した。水で洗浄した塩ビシートを−5℃で24時間凍結させた後、0.1Torrにて24時間乾燥させた。塩ビシートから血小板液滴下部位から10×10 mm分を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)用サンプル台に両面テープではりつけ、測定サンプルとした。イオン蒸着を行ったサンプルを用いてSEMにて粘着血小板の様子を撮影した。撮影したSEM写真(×3000倍)を目視により比較観察した。付着血小板数が50以下であれば、良好と評価した。付着血小板数が50以下であれば、撮影部位の血小板分布を加味しても有意に血小板が粘着しないとみなすことができる。
【0069】
(補体価評価−サンプル調整)
(メタ)アクリレート共重合体0.2 gにエタノール19.8 gを加えて溶解することにより得られた処理液に直径1 mmのガラスビーズ1 gを10秒間浸漬後、排液し、60℃にて24時間乾燥させることにより、補体(補体価、C3a)評価用サンプルとした。
【0070】
(補体価評価−測定)
50mLポリプロピレン製遠沈管(IWAKI社)内に分取したヒト新鮮血10 mLを室温にて静置することで凝固させ、3000 rpmにて30分間遠心(LC06、TOMY SEIKO CO. LTDを使用)させることにより血清3.5 mL得た。前記の方法で、表面処理を行った直径1 mmのガラスビーズ1 gに希釈液0.1 mLを添加した後、37℃にて1時間インキュベートした。得られた血清0.2 mLを添加し、同様に37℃にて1時間インキュベートを行った。希釈液2.6 mL、接触した血清12.5 μL及び感作ヒツジ赤血球0.4 mLを十分混合した後、37℃にて1時間インキュベートを行い、0℃にて10分冷却した後、2000rpmにて遠心し、上澄み2 mLの吸光度を541nmにて測定した(U-2000 Spectrometer、HITACHIを使用)。同時に希釈液2.6 mLおよび感作ヒツジ赤血球0.4 mLを添加したものを溶血なしのものとしてデータを差し引いた。測定にはオートCH50−L「生研」(統一商品番号400437・希釈液52 mL、感作ヒツジ赤血球6 mL)を用いた。表面処理を行わないガラスビーズの吸光度値を1としての相対的な吸光度を算出した。1.2未満であれば、測定誤差を考慮しても有意に補体が活性化したと判断できるため、良好と判断した。
【0071】
(補体−C3a−測定)
50 mLポリプロピレン製遠沈管(IWAKI社)内に分取したヒト新鮮血10 mLと3.2重量%のクエン酸三ナトリウム水溶液1 mLとを十分混合したのち、2000rpmにて30分間遠心(LC06、TOMY SEIKO CO. LTDを使用)させることにより血漿を4.5 mL得た。前記の方法で表面処理を行った直径1 mmのガラスビーズ4.6 gに生理食塩水0.5 mLを添加した後、37℃にて1時間インキュベートし、得られた血漿1 mLを添加して同様に37℃にて1時間インキュベートを行い、うち0.5 mLを評価検体とした。検体は速やかに−20℃以下に冷却し、測定まで保存した。評価はHuman Complement C3a Des Arg[125I] Biotrak Assay System, code RPA518(Amersham Biosciences社)を用い、添付マニュアルに従って行った。データ数3の平均値として算出した。未処理評価検体の値が94 ng/mLであったことから、C3a値が100 ng/mL以上の場合は、測定誤差を考慮しても有意に補体が活性化されたとみなせるため、不良と評価した。
【0072】
(フィブリンゲル形成実験)
50 mLポリプロピレン製遠沈管(IWAKI社)中の加クエン酸牛血45 mLを、2000rpmにて30分間遠心(LC06、TOMY SEIKO CO. LTDを使用)することによりウシ血漿を8 mL得た。先述の方法で表面処理を行った直径1 mmのガラスビーズ1 gおよび、同様に内面を表面処理した10 mLポリスチレン製遠沈管を評価サンプルとした。表面処理済みのガラスビーズが封入された同遠沈管内に、ウシ血漿1.8 mLを添加後、37℃にて3分間インキュベートし、0.125 NのCaCl2水溶液0.2 mLを添加、混合した直後を反応開始とし、37℃にてインキュベートした。反応開始後10秒間隔でゲル化完了の有無を確認し、ゲル化時間を計測した。N数を5とし、その平均値を求めた。表面未処理のサンプルの凝固時間は635秒であったことから、測定誤差を考慮しても600秒未満となった場合に有意に凝固系を活性化させていると判断できるため、良好と評価した。なお、実験に用いたウシ血漿中のタンパク濃度は凍結乾燥後の秤量値により算出すると、79 mg/mLであった。
【0073】
(未反応モノマー残存量測定)
NMR用試験管(規格;N-5、日本精密化学社)中にサンプル50 mgをパスツールピペットにて加えた後、重クロロホルム(和光純薬社)0.7 mLを加え十分に混和し、試料用キャップ(規格NC-5、日本精密化学社)で蓋をした。共重合組成比は、VARIAN社のGEMINI-200を用いて室温下1H NMR測定を実施し、算出した。算出には、未反応モノマー由来の二重結合に存在するプロトン積分比(M1)および、ポリマー中のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレート由来プロトンの積分比の和(P1)による、M1/(P1+M1)×100の演算式を用いた。モノマー含有量が5 mol%以下となれば、良好と評価した。
【0074】
(補体−TCC−評価用試験片の調製)
塩ビ(アラム社)は直径3/32インチ球を100個、ポリプロピレン(PP)は直径3/32インチ球(PPコード、アラム社)を100個、ポリカーボネート(PC、アラム社)は5×5×1(mm)のチップを0.6 g、ポリメチルペンテン(TPX)は直径3 mm球を0.3 g、シリコーン(アラム社)は直径2 mm、長さ3.17 mmの円柱45個を1サンプルにつき使用し、処理液20 g中にそれぞれ10秒間浸漬後排液し、60℃にて24時間乾燥させることにより調製した。
【0075】
(補体−TCC−測定)
50 mLポリプロピレン製遠沈管(IWAKI社)内に分取したヒト新鮮血10 mLを室温にて静置することで凝固させ、3000rpmにて30分間遠心(LC06、TOMY SEIKO CO. LTDを使用)することにより血清を3.5 mL得た。前記試験片に希釈液0.1 mLを添加した後、37℃にて1時間インキュベートし、得られた血清0.2 mLを添加し同様に37℃にて1時間インキュベートを行い、これを接触血清とした。評価サンプルは、接触血清10μLに対してspecimen diluent 240μLを加えることにより希釈したものを用いた。評価はA009-CS5b-9 Enzyme Immunoassay Kit(Quidel社)を用い、添付マニュアルに従って行った。測定データはn数3の平均値を用い、平均値が未処理試験片のものよりも小さい場合に良好と判断した。
【0076】
(実施例1)
メトキシノナエチレングリコールアクリレート(MNEGA)(新中村化学工業社)10.2 gおよび下記一般式4で示されるシリコーンメタクリレート(信越シリコーン社、製品名;X-24-8201、数平均分子量;2,100)42.3 gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(和光純薬社)0.047 gを加え、酢酸エチル(東京化成工業社)200.5 g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後、反応液10 mLを攪拌下のエタノール50 mLに滴下して溶解させ、水を滴下することにより重合物を単離した。上清をデカンテーションにより除去した。この精製処理を2回繰り返した後、一昼夜60℃にて減圧乾燥して共重合体1を得た。
【化10】

【0077】
(実施例2)
メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)(新中村化学工業社)17.8 gおよびシリコーンメタクリレート(信越シリコーン社、製品名;X-24-8201、数平均分子量;2,100)4.8 gおよび2-エチルヘキシルアクリレート(東京化成工業社)27.5 gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(和光純薬社)0.052 gを加え、酢酸エチル(東京化成工業社)200.2 g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後、反応液10 mLを攪拌下のエタノール50 mLに滴下して溶解させ、水を滴下することにより重合物を単離した。上清をデカンテーションにより除去した。この精製処理を2回繰り返した後、沈殿を一昼夜60℃にて減圧乾燥して共重合体2を得た。
【0078】
(実施例3)
メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)(新中村化学工業社)16.6 gおよびシリコーンメタクリレート(信越シリコーン社、製品名;X-24-8201、数平均分子量;2,100)0.6 gおよび2-エチルヘキシルアクリレート(東京化成工業社)32.7 gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(和光純薬社)0.052 gを加え、酢酸エチル(東京化成工業社)200.2 g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後、反応液10 mLを攪拌下のエタノール50 mLに滴下して溶解させ、水を滴下することにより重合物を単離した。上清をデカンテーションにより除去した。この精製処理を2回繰り返した後、沈殿を一昼夜60℃にて減圧乾燥して共重合体3を得た。
【0079】
(実施例4)
メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)(新中村化学工業社)17.1 gおよびシリコーンメタクリレート(信越シリコーン社、製品名;X-24-8201、数平均分子量;2,100)10.2 gおよびラウリルアクリレート(新中村化学工業社)23.9 gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(和光純薬社)0.052 gを加え、酢酸エチル(東京化成工業社)200.2 g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後、反応液10 mLを攪拌下のエタノール50 mLに滴下して溶解させ、水を滴下することにより重合物を単離した。上清をデカンテーションにより除去した。この精製処理を2回繰り返した後、沈殿を一昼夜60℃にて減圧乾燥して共重合体4を得た。
【0080】
(実施例5)
メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)(新中村化学工業社)16.9 gおよび2-エチルヘキシルアクリレート(東京化成工業社)33.2 gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(和光純薬社)0.052 gを加え、酢酸エチル(東京化成工業社)200.2 g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後、反応液10 mLを攪拌下のエタノール50 mLに滴下して溶解させ、水を滴下することにより重合物を単離した。上清をデカンテーションにより除去した。この精製処理を2回繰り返した後、沈殿を一昼夜60℃にて減圧乾燥して共重合体5を得た。
【0081】
(実施例6)
メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)(新中村化学工業社)16.9 gおよびシリコーンメタクリレート(信越シリコーン社、製品名;X-24-8201、数平均分子量;2,100)0.1 gおよび2-エチルヘキシルアクリレート(東京化成工業社)33.1 gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(和光純薬社)0.052 gを加え、酢酸エチル(東京化成工業社)200.2 g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後、反応液10 mLを攪拌下のエタノール50 mLに滴下して溶解させ、水を滴下することにより重合物を単離した。上清をデカンテーションにより除去した。この精製処理を2回繰り返した後、沈殿を一昼夜60℃にて減圧乾燥して共重合体6を得た。
【0082】
(比較例1)
メトキシポリエチレングリコールアクリレート(MPEGA)(新中村化学工業社)95.2 gおよびエチルアクリレート(EA)(東京化成工業社)5.1 gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(和光純薬社)0.125 gを加え、イソプロピルアルコール(東京化成工業社)250 g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行った。なお、メトキシポリエチレングリコールアクリレートにおいてエチレンオキシドの重合度が9のポリエチレングリコールを用いた。重合反応終了後、反応液をn-ヘキサンに滴下し沈殿させ、生成物を単離した。生成物をイソプロピルアルコールに溶解し、n-ヘキサンに滴下する操作を二回行い、精製した。これを一昼夜60℃にて減圧乾燥し、共重合体3を得た。
【0083】
(比較例2)
2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)(東京化成工業社)22.3 gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(和光純薬社)0.0467 gを加え、酢酸エチル(東京化成工業社)100 g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後、反応液をメタノールに滴下し沈殿させ、生成物を単離した。生成物をn-ヘキサンに溶解し、メタノールに滴下する操作を二回行い、精製した。これを一昼夜60℃にて減圧乾燥し、共重合体4を得た。
【0084】
血液適合性試験の結果、表2に示すように比較例1、2では多数の血小板が積み重なるように粘着していたが、一方、表1に示すように実施例においては表面の血小板粘着数が低く良好な血液適合性を示すことがわかった。また、免疫系評価の結果、良好な補体活性抑制作用があることがわかった。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
本発明において、30日間のエージング後も良好な血液適合性を示すことがわかった。これにより、長期間の性能維持が予測される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の共重合体は、血液適合性に優れ、かつ、親水性の高い材料として用いることができる。また材料としての物性が水に不溶な粘性物質であるため医用機材の物性を損なうことなく血液回路全体にコーティングできる材料を提供できる。したがって、産業の発展に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本願発明と従来技術との相違点を示す概念図。
【図2】実施例1の共重合体を用いた血液適合性試験の結果を示すSEM画像。
【図3】実施例2の共重合体を用いた血液適合性試験の結果を示すSEM画像。
【図4】比較例1の共重合体を用いた血液適合性試験の結果を示すSEM画像。
【図5】比較例2の重合体を用いた血液適合性試験の結果を示すSEM画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性(メタ)アクリレートと親水性(メタ)アクリレートとからなる(メタ)アクリレート共重合体であって、疎水性(メタ)アクリレートがシリコーン(メタ)アクリレート及び/又はアルキル(メタ)アクリレートである水不溶性で、かつ室温で粘性液状である(メタ)アクリレート共重合体を含む抗血栓性材料。
【請求項2】
アルキル(メタ)アクリレートが下記一般式1で示されるものであることを特徴とする請求項1に記載の抗血栓性材料。
【化1】

(式中、R1は炭素原子数2〜30のアルキル基またはアラルキル基、R2は水素原子またはメチル基を示す。)
【請求項3】
シリコーン(メタ)アクリレートが下記一般式2で示されるものである請求項1または2に記載の抗血栓性材料。
【化2】

(式中、R3は水素原子またはメチル基、R4は炭素数1〜6のアルキレン基、R5は炭素数1〜6のアルキル基、nは1〜1,000の範囲を示す。)
【請求項4】
疎水性(メタ)アクリレート中のシリコーン(メタ)アクリレートの含有量が5〜100重量%である請求項1〜3いずれかに記載の抗血栓性材料。
【請求項5】
親水性(メタ)アクリレートが下記一般式3で示されるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである請求項1〜4いずれかに記載の抗血栓性材料。
【化3】

(式中、R6は水素原子またはメチル基、nは2〜1,000の範囲を示す。)
【請求項6】
(メタ)アクリレート共重合体の数平均分子量が2,000〜200,000であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の抗血栓性材料。
【請求項7】
抗血栓性材料中の疎水性(メタ)アクリレートと親水性(メタ)アクリレートとの含有重量比が50〜95/50〜5である請求項1〜6いずれかに記載の抗血栓性材料。
【請求項8】
(メタ)アクリレート共重合体が、純度95mol%以上に精製されたものである請求項1〜7いずれかに記載の抗血栓性材料。
【請求項9】
(メタ)アクリレート共重合体の37℃における粘度が0.5〜10000Pa・sであることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の抗血栓性材料。
【請求項10】
(メタ)アクリレート共重合体が、炭素数1〜6のアルコールのいずれかに可溶であり、かつ水に不溶である請求項1〜9いずれかに記載の抗血栓性材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−289864(P2008−289864A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100979(P2008−100979)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】