説明

抗CXCR4抗体および癌治療のためのそれらの使用

本発明は、CXCR4に結合するだけでなく、CXCR4ホモ二量体および/またはヘテロ二量体のコンホメーション変化を誘導することができる新規な単離抗体、またはその誘導体化合物または機能的断片に関する。更に詳細には、本発明は、CXCR4タンパク質に特異的な414H5および515H7抗体、並びに癌治療のためのそれらの使用に関する。このような抗体から構成される医薬組成物およびそのような抗体の選択方法も包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗体、詳細には、ケモカイン受容体(CXCR)に特異的に結合することができるキメラおよびヒト化マウスモノクローナル抗体、並びにこのような抗体をコードするアミノ酸および核酸配列に関する。一側面から見れば、本発明は、CXCR4に特異的に結合することができかつ強力な抗腫瘍活性を有する新規な抗体、誘導化合物または機能的断片に関する。本発明は、癌の予防および/または治療的処置のための薬剤としての並びに癌診断に関係した手順またはキットにおけるこのような抗体の使用も含んでなる。最後に、本発明は、抗体、細胞毒性/細胞増殖抑制性の毒素のような他の抗癌化合物と配合または接合されているこのような抗体を含んでなる組成物、およびある種の癌の予防および/または治療のための前記組成物の使用を含んでなる。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは、特に免疫反応の際にケモカイン勾配として知られるリガンドの化学勾配に沿って白血球の遊走を制御する小さな分泌ペプチドである(Zlotnick A. et al., 2000)。それらは、それらのNH末端のシステイン残基の位置に基づいて2つの主要なサブファミリー、CCおよびCXCに分類され、Gタンパク質共役受容体に結合し、その2つの主要なサブファミリーはCCRおよびCXCRと呼ばれる。50種類を上回るヒトケモカインおよび18種類のケモカイン受容体が、これまでに見出されている。
【0003】
多くの癌は、腫瘍の免疫細胞浸潤、並びに腫瘍細胞増殖、生存、遊走および血管形成に影響を与える複雑なケモカインネットワークを有する。免疫細胞、内皮細胞および腫瘍細胞は、それら自体がケモカイン受容体を発現し、ケモカイン勾配に対応することができる。ヒト癌生験試料およびマウス癌モデルの研究は、癌細胞ケモカイン−受容体発現が転移能の増加と関係していることを示している。様々な種類の癌に由来する悪性細胞は、様々なケモカイン−受容体発現のプロフィールを有するが、ケモカイン受容体4(CXCR4)が最も普通に見られる。少なくとも23種類の上皮、間葉および造血起源のヒト癌の細胞は、CXCR4受容体を発現する(Balkwill F. et al., 2004)。
【0004】
ケモカイン受容体4(フシン(fusin)、CD184、LESTRまたはHUMSTRとしても知られている)は、352または360のアミノ酸を含んでなる2種類のアイソフォームとして存在する。残基Asn11はグリコシル化されており、残基Tyr21は硫酸基の付加によって修飾されており、Cys109および186は受容体の細胞外部分でジスルフィド架橋により結合している(Juarez J. et al., 2004)。
【0005】
この受容体は、様々な種類の正常組織、ナイーブ、非記憶T細胞、調節T細胞、B細胞、好中球、内皮細胞、一次単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、CD34+造血幹細胞によって、および心臓、結腸、肝臓、腎臓および脳において低レベルで発現する。CXCR4は、白血球輸送、B細胞リンパ球産生および骨髄造血に重要な役割を演じている。
【0006】
CXCR4受容体は、結腸癌(Ottaiano A. et al., 2004)、乳癌(Kato M. et al., 2003)、前立腺癌(Sun Y.X. et al., 2003)、肺癌[小細胞および非小細胞癌(Phillips R.J. et al., 2003)]、卵巣癌(Scotton CJ. et al., 2002)、膵臓癌(Koshiba T. et al., 2000)、腎臓癌、脳腫瘍(Barbero S et al., 2002)、膠芽腫およびリンパ腫などこれらに限定されない多数の癌で過剰発現される。
【0007】
これまでに報告されたCXCR4受容体のユニークなリガンドは、間質細胞由来因子1(SDF−1)またはCXCL12である。SDF−1は、リンパ節、骨髄、肝臓、肺において多量に、また腎臓、脳および皮膚によって少量分泌される。CXCR4は、ヒトヘルペスウイルスIII型によってコードされるウイルスマクロファージ炎症性タンパク質II(vMIP−II)である拮抗するケモカインによっても認識される。
【0008】
CXCR4/SDF−1軸は、癌において重要な役割を果たしており、転移を生じる遊走、侵襲に直接関与している。実際に、癌細胞はCXCR4受容体を発現し、それらは体循環へと遊走して入る。次いで、癌細胞は、高レベルのSDF−1を産生する臓器の血管床に止められ、そこで増殖し、血管形成を誘導し、転移腫瘍を形成する(Murphy PM., 2001)。この軸は、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)経路の活性化(Barbero S. et al., 2003)および血管形成(Romagnani P., 2004)を介する細胞増殖にも関与している。実際に、CXCR4受容体およびそのリガンドSDF−1は、VEGF−A発現を刺激することによって明らかに血管形成を促進し、次いで、CXCR4/SDF−1の発現を増加する(Bachelder R.E. et al., 2002)。腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、腫瘍の低酸素領域に蓄積し、刺激されて、腫瘍細胞と協同して血管形成を促進することも知られている。低酸素症は、TAMを含む様々な種類の細胞におけるCXCR4の発現を選択的に増加させることが観察された(Mantovani A. et al., 2004)。CXCR4/SDF−1軸は、CXCR4+造血幹/前駆細胞(HSC)の輸送/移入(ホーミング)を制御し、新血管新生においてある役割を演じている可能性があることが最近になって明らかになった。HSCの他に、機能性CXCR4は、他の組織由来の幹細胞(組織コミット幹細胞=TCSCs)でも発現するので、SDF−1は臓器/組織再生に必要なCXCR4+TCSCsの化学誘引に枢要な役割を演じていることがあるが、これらのTCSCは癌発生の細胞性起源であることもありうる(癌幹細胞理論)ことが明らかにされている。癌の幹細胞起源は、ヒト白血病について、また最近では脳腫瘍および乳癌のような数種類の固形腫瘍について明らかにされている。白血病、脳腫瘍、小細胞肺癌、乳癌、胚芽腫、卵巣および子宮頸癌のような正常なCXCR4+組織/臓器特異的幹細胞に由来することがある数例のCXCR4+腫瘍がある(Kucia M. et al., 2005)。
【0009】
CXCR4受容体を干渉することによる癌転移ターゲッティングは、CXCR4受容体に対するモノクローナル抗体を用いることによってインビボ(in vivo)で明らかにされた(Muller A. et al., 2001)。簡単に言えば、CXCR4受容体に対するモノクローナル抗体(Mab 173 R&D Systems)は、SCIDマウスでの同所性乳癌モデル(MDA−MB231)におけるリンパ節転移の数を有意に減少させることが示された。もう1つの研究(Phillips R.J et al., 2003)でも、SDF−1に対するポリクローナル抗体を用いる同所性肺癌モデル(A549)における転移でのSDF−1/CXCR4軸の決定的役割が示されたが、この研究では、腫瘍増殖にも血管形成にも効果はなかった。幾つかの他の研究では、CXCR4の二本鎖siRNA(Liang Z. et al., 2005)、生体内で安定なCXCR4ペプチド拮抗薬(Tamamura H. et al., 2003)を用いるインビボでの転移またはAMD3100(Rubin J.B. et al., 2003; De Falco V. et al., 2007)またはMab(特許WO2004/059285 A2号公報)のようなCXCR4の小分子拮抗薬を用いるインビボでの腫瘍増殖の抑制も示された。従って、CXCR4は、癌についての確認された治療ターゲットである。
【0010】
もう1つのケモカイン受容体であるケモカイン受容体2(CXCR2)も、腫瘍学における興味深いターゲットとして記載されている。実際に、CXCR2は、幾つかの種類の腫瘍細胞でオートクリン細胞増殖シグナルを伝達し、血管形成を促進することによって間接的に腫瘍増殖に影響を及ぼすこともできる(Tanaka T. et al. 2005)。
【0011】
CXCR2ケモカイン受容体は、360個のアミノ酸を包含する。それは、主として内皮細胞内で、特に新血管新成中に発現する。幾つかのケモカインは、ERL+血管新生促進性ケモカインに属するCXCR2受容体であるCXCL5、−6、−7、IL−8、GRO−α、−βおよびγを結合する。CXCR2受容体は、CXCR4受容体と配列相同性を共有しており、37%の配列同一性および48%の配列相同性を有する。CXCR2/リガンド軸は、転移(Singh RK. et al., 1994)、細胞増殖(Owen J.D. et al., 1997)のような幾つかの腫瘍増殖機構およびERL+ケモカイン媒介性血管形成(Strieter R.M. et al., 2004; Romagnani et al., 2004)に関与している。最後に、腫瘍関連マクロファージおよび好中球は、炎症誘導腫瘍増殖の重要な要素であり、CXCL5、IL−8およびGRO−αのようなケモカインは、好中球動員を開始する。
【0012】
二量体化は、ケモカイン受容体などのGタンパク質共役受容体の機能を制御するための一般機構として明らかになっている(Wang J. and Norcross M., 2008)。ケモカイン結合に応答するホモおよびヘテロ二量体化は、多数のケモカイン受容体によるシグナル伝達の開始および変更に必要とされることが示されている。受容体二量体またはオリゴマーはおそらくケモカイン受容体の基本的機能性単位であろうという概念が、支持される証拠が増えてきている。ケモカイン受容体二量体はリガンドの非存在下で見出されており、ケモカインは、受容体二量体のコンホメーション変化を誘導する。CXCR4は、ホモ二量体を形成することが知られているが、例えば、δ−オピオイド受容体(DOR)(Hereld D., 2008)またはCCR2(Percherancier Y. et al., 2005)ともヘテロ二量体を形成することが知られている。後者の例では、CXCR4の膜貫通ドメイン由来のペプチドは、二量体のリガンド誘導コンホメーション遷移をブロックすることによって活性化を阻害した(Percherancier Y. et al., 2005)。もう1つの研究は、CXCR4の膜貫通領域の合成ペプチドであるCXCR4−TM4ペプチドが、CXCR4ホモ二量体のプロモーター間のエネルギー移動を減少させ、悪性細胞におけるSDF−1誘導遊走およびアクチン重合を阻害することを示した(Wang J. et al., 2006)。更に近年では、CXCR7はCXCR4と機能性ヘテロ二量体を形成し、SDF−1誘導シグナル伝達を増加させることも報告された(Sierro F. et al., 2007)。構成的ヘテロ二量体の他の例としては、CXCR1とCXCR2が相互作用を示し、それぞれのホモ二量体を形成する研究が挙げられる。それらのいずれについても別のGPCR(α(1A)−アドレナリン受容体)との相互作用は見られず、CXCR1とCXCR2の相互作用の特異性を示していた(Wilson S. et al., 2005)。
【0013】
上記のように、CXCR4およびCXCR2受容体は、興味深い腫瘍ターゲットである。これらの受容体による干渉は、腫瘍によっておよびCXCR4癌幹細胞を阻害することによって腫瘍細胞増殖、血管形成、腫瘍細胞遊走および侵襲、好中球およびマクロファージ動員を減少させることにより、腫瘍増殖および転移を極めて効率的に阻害するものである。
【0014】
本発明の発明態様の1つは、CXCR4二量体にコンホメーション変化を誘導するマウスモノクローナル抗体を産生することである。本発明は、CXCR4ホモ二量体およびCXCR4/CXCR2ヘテロ二量体のいずれにも結合しかつコンホメーション変化を誘導することができ、マウス異種移植および生存モデルのいずれでも強力な抗腫瘍活性を有するCXCR4Mab 414H5(またはその断片)を包含する。本発明は、CXCR4ホモ二量体およびCXCR4/CXCR2ヘテロ二量体のいずれにも結合しかつコンホメーション変化を誘導することができ、強力な抗腫瘍活性を有するCXCR4Mab 515H7(またはその断片)も包含する。抗−CXCR4414H5 Mabは、MDA−MB−231異種移植モデルで腫瘍増殖を阻害し、U937モデルでのマウス生存を増加させる。それらは、CXCR4ホモ二量体だけでなくCXCR4/CXCR2ヘテロ二量体でもコンホメーション変化を誘導する。この新規な特性は、癌におけるこれら2種類のケモカイン受容体の重要な役割を考慮すれば、癌治療応用について興味深いものである。
【0015】
受容体のホモおよびヘテロ二量体のターゲッティングは、Mab治療効果を増加することが既に見出されている。実際に、例えば、IGF−1Rおよびインスリン/IGF−1ハイブリッド受容体をいずれもターゲッティングするMab(h7C10)は、IGF−1RのみをターゲッティングするMabよりインビボで腫瘍増殖を一層強力に阻害したことが明らかにされている(Pandini G., 2007)。
【0016】
更に、抗CXCR4Mab 414H5および515H7はCXCR4のサイレント拮抗薬であり、それらはインビトロ試験では基本シグナルを変化させないが、様々なアッセイ(GTPγS結合、cAMP放出)ではSDF−1によるシグナル伝達誘導を阻害し、インビトロでのSDF−1誘導腫瘍細胞増殖および遊走を阻止することもできる。
【0017】
部分作動薬または逆作動薬として作用する分子は、リガンドの非存在下で固有の活性を示す。これらの種類の分子は、リガンドの非存在下においても、それぞれ高親和性または低親和性GPCR状態を安定させ、それによって下流のシグナル伝達カスケードを活性化または阻害する(Galandin et al, 2007; Kenakin, 2004)。
【0018】
414H5および515H7Mabの場合には、これらの分子は、サイレント拮抗薬として作用し、SDF−1の非存在下ではCXCR4受容体では固有活性は全くない。この薬理学的特徴は、オピオイド受容体リガンドについて既に観察されているように、部分または逆作動薬と比較して小さめの反副作用と関連していると思われる(Bosier and Hermans, 2007)。実際に、414H5および515H7Mabの機能活性は、SDF−1の存在に完全に依存しており、CXCR4受容体活性は、SDF−1リガンドが発現せず、分泌せずまたは血流によって供給されない組織や臓器では観察されない。従って、414H5および515H7Mabは、正または負の効力を有する他のCXCR4受容体リガンドと比較して毒性は低めであると思われる。加えて、サイレント拮抗薬は、薬理学的領域では、少数派の種である(Wurch et al., 1999, Kenakin, 2004)。
【発明の開示】
【0019】
驚くべきことには、本発明者らは、初めてCXCR4に結合することができるだけでなくCXCR4ホモ二量体および/またはヘテロ二量体のコンホメーション変化を誘導することもできる抗体を産生することができた。更に詳細には、本発明の抗体は、CXCR4ホモ二量体だけでなくCXCR4/CXCR2ヘテロ二量体のコンホメーション変化を誘導することもできる。
【0020】
下記の明細書において、複数の表現「CXCR4二量体」は、CXCR4ホモ二量体およびCXCR4/CXCR2ヘテロ二量体をも包含するものと理解しなければならない。
【0021】
このような抗体は、従来の技術分野では報告されたことがないことをこの段階で述べておかなければならない。更に、CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体の存在は、全く報告されなかったことを述べなければならない。
【0022】
本発明の一部分は、CXCR4とCXCR2によって形成されたヘテロ二量体の存在を見出したことである。
【0023】
従って、特定態様では、本発明は、CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体を含んでなるまたはCXCR4/CXCR2ヘテロ二量体からなる単離複合体に関する。
【0024】
好ましくは、前記CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体のCXCR4複合部分は、
ジーンバンクアクセッション番号(Genbank accession number)NP 003458 配列番号29:
MEGISIYTSDNYTEEMGSGDYDSMKEPCFREENANFNKIFLPTIYSIIFLTGIVGNGLVILVMGYQKKLRSMTDKYRLHLSVADLLFVITLPFWAVDAVANWYFGNFLCKAVHVIYTVNLYSSVLILAFISLDRYLAIVHATNSQRPRKLLAEKVVYVGVWIPALLLTIPDFIFANVSEADDRYICDRFYPNDLWVVVFQFQHIMVGLILPGIVILSCYCIIISKLSHSKGHQKRKALKTTVILILAFFACWLPYYIGISIDSFILLEIIKQGCEFENTVHKWISITEALAFFHCCLNPILYAFLGAKFKTSAQHALTSVSRGSSLKILSKGKRGGHSSVSTESESSSFHSS
で示される配列を有するケモカイン(C−X−Cモティーフ)受容体4アイソフォームb[ホモサピエンス]、
ジーンバンクアクセッション番号NP 001008540 配列番号30:
MSIPLPLLQIYTSDNYTEEMGSGDYDSMKEPCFREENANFNKIFLPTIYSIIFLTGIVGNGLVILVMGYQKKLRSMTDKYRLHLSVADLLFVITLPFWAVDAVANWYFGNFLCKAVHVIYTVNLYSSVLILAFISLDRYLAIVHATNSQRPRKLLAEKVVYVGVWIPALLLTIPDFIFANVSEADDRYICDRFYPNDLWVVVFQFQHIMVGLILPGIVILSCYCIIISKLSHSKGHQKRKALKTTVILILAFFACWLPYYIGISIDSFILLEIIKQGCEFENTVHKWISITEALAFFHCCLNPILYAFLGAKFKTSAQHALTSVSRGSSLKILSKGKRGGHSSVSTESESSSFHSS
で示される配列を有するケモカイン(C−X−Cモティーフ)受容体4アイソフォームa[ホモサピエンス]、
配列番号29または30を有するこれらbまたはaアイソフォームの1つと少なくとも95%の同一性を有するその選択的転写スプライシング(alternate transcriptional splice)変異体または天然変異体、および
その天然リガンド間質細胞由来因子1(SDF−1)によって特異的に認識することができかつ好ましくは少なくとも100、150および200アミノ酸長を有するその断片
からなる群から選択される2種類のヒトCXCR4アイソフォームの1つである。
【0025】
好ましくは、前記CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体のCXCR2複合部分は、
ジーンバンクアクセッション番号NP 001548 配列番号31:
MEDFNMESDSFEDFWKGEDLSNYSYSSTLPPFLLDAAPCEPESLEINKYFVVIIYALVFLLSLLGNSLVMLVILYSRVGRSVTDVYLLNLALADLLFALTLPIWAASKVNGWIFGTFLCKVVSLLKEVNFYSGILLLACISVDRYLAIVHATRTLTQKRYLVKFICLSIWGLSLLLALPVLLFRRTVYSSNVSPACYEDMGNNTANWRMLLRILPQSFGFIVPLLIMLFCYGFTLRTLFKAHMGQKHRAMRVIFAVVLIFLLCWLPYNLVLLADTLMRTQVIQETCERRNHIDRALDATEILGILHSCLNPLIYAFIGQKFRHGLLKILAIHGLISKDSLPKDSRPSFVGSSSGHTSTTL
で示される配列を有するインターロイキン8受容体β[ホモサピエンス]、
配列番号31を有するこのインターロイキン8受容体βと少なくとも95%の同一性を有するその選択的転写スプライシング変異体または天然変異体、および
IL−8によって特異的に認識することができかつ好ましくは少なくとも100、150および200アミノ酸長を有するその断片
からなる群から選択される。
【0026】
この特定態様では、本発明はまた、前記CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体を含んでなるポリペプチドをコードする単離RNAまたはDNAを含んでなる。
【0027】
本発明は、更に核酸構築物、好ましくは前記CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体をコードするプラスミドのような発現ベクターを含んでなる。
【0028】
本発明は、更に少なくとも1個の核酸構築物、好ましくは前記CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体のCXCR4部分をコードするプラスミドのような発現ベクターと、第二の構築物、好ましくは前記CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体のCXCR2部分をコードするプラスミドのような発現ベクターを含んでなる組成物を含んでなる。
【0029】
この態様では、本発明は、更に前記CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体を発現する組換え宿主細胞の調製方法であって、
a)核酸構築物、好ましくは前記CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体をコードするプラスミドのような発現ベクターにより、または
b)少なくとも1個の核酸構築物、好ましくは前記CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体のCXCR4部分をコードするプラスミドのような発現ベクターと、第二の構築物、好ましくは前記CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体のCXCR2部分をコードするプラスミドのような発現ベクターにより
前記宿主細胞を形質転換する段階を含んでなる、方法を含んでなる。
【0030】
好ましい実施形態では、前記宿主細胞は、哺乳類細胞のような真核細胞である。
【0031】
好ましい実施形態では、前記CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体をコードする核酸構築物は、lucマーカーのようなCXCR4配列と(特に、共有結合(covalent coupling)によって)結合している第一のマーカー、およびGFPマーカー(すなわち、BRET分析用)のようなCXCR2配列と(特に、共有結合によって)結合している第二のマーカーもコードする。
【0032】
本発明は、抗癌活性を有する化合物の選択または癌治療の組成物の調製に用いることができる方法であって、
a)前記CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体を発現する本発明の組換え宿主細胞を供試化合物と接触させ、および
b)この化合物が組換え宿主細胞におけるこのCXCR4/CXCR2ヘテロ二量体複合体の活性を調節する、好ましくは阻害することができるかどうかを測定する
段階を含んでなる、前記方法も含んでなる。
【0033】
第一の態様では、本発明の主題は、本発明による抗体の産生および選択の方法である。
【0034】
更に詳細には、本発明は、CXCR4のリガンド依存性およびリガンドとは独立した活性化のいずれをも阻害することができる抗CXCR4抗体またはその機能的断片または誘導体の1つの選択方法であって、
i)産生した抗体をスクリーニングし、CXCR4に特異的に結合しかつCXCR4の活性化を調節することもできる抗体を選択し、
ii)段階i)で選択された抗体を試験し、CXCR4ホモ二量体にコンホメーション変化を誘導することができる抗体を選択し、次いで、
iii)段階ii)で選択された抗体を試験し、CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体にコンホメーション変化を誘導することができる抗体を選択する
段階を含んでなる、前記方法に関する。
【0035】
「調節する」という表現は、増加または阻害と理解しなければならない。好ましくは、本発明の選択した抗体は、CXCR4活性化を阻害しなければならない。
【0036】
上記で説明したように、CXCR4二量体コンホメーション変化の誘導は、このような抗体がより大きな患者集団に対して実質利益を提供するので、本発明の主要な態様である。
【0037】
抗体の産生は、例えば、骨髄腫細胞と免疫化したマウスまたは選択した骨髄腫細胞と適合性のある他の種由来の脾臓細胞との融合のような、当業者に知られている任意の方法によって実現することができる(Kohler & Milstein, 1975, Nature, 256:495-497)。免疫化した動物としては、ヒト免疫グロブリン座を有するトランスジェニックマウスを挙げることができ、これは次いでヒト抗体を直接産生する。もう一つの可能な実施形態は、ライブラリーのスクリーニングのためファージディスプレイ法を用いることにある。
【0038】
スクリーニング段階i)は、当業者に知られている任意の方法または工程によって実現することができる。非制限的例としては、ELISA、BIAcore、免疫組織化学、FACS分析および機能的スクリーニングを挙げることができる。好ましい方法は、CXCR4トランスフェクタントおよび少なくとも1種類の腫瘍細胞系でのFACS分析によってスクリーニングして、産生した抗体が腫瘍細胞上の本来の受容体を認識することもできることを確かめることにある。この方法を、下記の実施例で一層詳細に説明する。
【0039】
「CXCR4活性化を調節する」という表現は、下記の例4、5、7および13に示される活性の少なくとも1つを調節することを意図する。
【0040】
好ましくは、
受容体CXCR4(例4参照)上、特にヒト野生型CXCR4受容体を安定的に発現するCHO−K1膜のような真核生物の形質転換した細胞膜上での競合によるリガンドSDF−1の細胞膜での特異結合、
受容体CXCR4(例5参照)上、特に野生型CXCR4受容体膜を安定的かつ構成的に発現するNIH−3T3細胞のような真核生物の形質転換した細胞膜上でのGTPγSの細胞膜での特異結合、
cAMP生成のCXCR4媒介性阻害(例7参照)、および
細胞内カルシウム貯蔵のCXCR4受容体媒介性流動化(例13参照)
を調節しようとするものである。
【0041】
更に好ましくは、これらの活性の少なくとも1つの調節は、活性の阻害である。
【0042】
本発明の方法の選択の段階ii)およびiii)の好ましい実施形態では、前記段階ii)およびiii)は、それぞれCXCR4−RLuc/CXCR4−YFPおよびCXCR4−Rluc/CXCR2−YFPを発現する細胞上でBRET分析により抗体を評価し、BRETシグナルの少なくとも40%、好ましくは45%、50%、55%、最も好ましくは60%を阻害することができる抗体を選択することからなる。
【0043】
BRET法は、タンパク質二量体化の典型的なものとして知られている手法である(Angers et al., PNAS, 2000, 97:3684-89)。
【0044】
この方法の段階ii)およびiii)で用いられるBRET法は、当業者に周知であり、下記の実施例で詳細に説明する。更に詳細には、BRET(生物発光共鳴エネルギー移動)は、生物発光供与体(ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc))とGFP(緑色蛍光タンパク質)またはYFP(黄色蛍光タンパク質)の変異体である蛍光受容体との間で起こる非放熱性エネルギー移動である。本発明の場合には、EYFP(増強黄色蛍光タンパク質)を用いた。移動の効力は、供与体と受容体の配向および距離に依存する。次いで、エネルギー移動は、2個の分子が接近(1〜10nm)している場合にのみ起こり得る。この特性を用いて、タンパク質−タンパク質相互作用分析を行う。実際に、2つのパートナー同士の相互作用を研究するため、第一のパートナーをウミシイタケルシフェラーゼに遺伝的に融合させ、第二のパートナーをGFPの黄色変異体に融合させる。融合タンパク質は、通常は哺乳類細胞で発現させるが、必須のものではない。その膜透過性基質(コエレンテラジン)の存在下では、Rlucは青色光を発光する。GFP変異体がRlucから10nmより近くにあれば、エネルギー移動が起こることができ、追加の黄色シグナルを検出することができる。BRETシグナルは、受容体によって発光される光線と供与体によって発光される光線との比として測定される。従って、2個の融合タンパク質が近接しまたはコンホメーション変化によってRlucとGFP変異体が一層近くなると、BRETシグナルは増加する。
【0045】
BRET分析が好ましい実施形態からなる場合には、当業者に知られている任意の方法を用いて、CXCR4二量体コンホメーション変化を測定することができる。制限なしに、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)、HTRF(均一時間分解蛍光)、FLIM(蛍光寿命画像顕微鏡法)またはSW−FCCS(単一波長蛍光相互相関分光法)の手法を挙げることができる。
【0046】
共免疫沈降、α−スクリーン、化学架橋、二重ハイブリッド、アフィニティークロマトグラフィー、ELISAまたはファーウェスタンブロット法のような他の古典的手法を、用いることもできる。
【0047】
本発明による方法の特定態様では、段階ii)は、CXCR4−RLuc/CXCR4−YFPを両方とも発現する細胞上でBRET分析によって抗体を評価し、BRETシグナルの少なくとも40%を阻害することができる抗体を選択することからなる。
【0048】
本発明による方法のもう一つの特定態様では、段階iii)は、CXCR4−RLuc/CXCR2−YFPを両方とも発現する細胞上でBRET分析によって抗体を評価し、BRETシグナルの少なくとも40%を阻害することができる抗体を選択することからなる。
【0049】
第二の態様では、本発明の目的は、前記方法によって得られる単離抗体、またはその機能的断片または誘導体の1つである。前記抗体またはその前記断片または誘導体はヒトCXCR4に特異的に結合することができ、必要ならば、好ましくはさらにそのリガンドの天然付着物を阻害することもでき、前記抗体はCXCR4二量体コンホメーション変化を誘導することもできる。
【0050】
「機能的断片および誘導体」という表現は、本明細書において下記において詳細に定義される。
【0051】
本発明は、天然形態の抗体に関するものではなく、すなわち、それらは、天然環境にはないが、天然供給源から精製によって単離しまたは得ることができたものであり、あるいは遺伝子組換えまたは化学合成によって得ることができるものであり、かつ次にそれらは、更に説明されるように非天然アミノ酸を含むことができることをここで理解しなければならない。
【0052】
更に詳細には、本発明のもう一つの態様によれば、抗体、またはその機能的断片または誘導体が特許請求され、前記抗体は、配列番号1〜12のアミノ酸配列を含んでなる相補性決定領域CDRから選択される少なくとも1個のCDRを含んでなる。
【0053】
更に詳細には、本発明のもう一つの態様によれば、抗体、またはその機能的断片または誘導体が特許請求され、前記抗体は、配列番号2、5または40〜49のアミノ酸配列を含んでなる相補性決定領域CDRから選択される少なくとも1個のCDRを含んでなる。
【0054】
第一の態様によれば、本発明は、配列番号1、2、3、4、5または6の配列のCDRから選択される少なくとも1個のCDR、または配列が、最適アライメント後に配列番号1、2、3、4、5または6の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1個のCDRを含んでなる、単離抗体、またはその誘導化合物または機能的断片に関する。
【0055】
もう一つの態様によれば、本発明は、配列番号40、2、41、42、5または43の配列のCDRから選択される少なくとも1個のCDR、または配列が、最適アライメント後に配列番号40、2、41、42、5または43の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1個のCDRを含んでなる、単離抗体、またはその誘導化合物または機能的断片に関する。
【0056】
抗体の「機能的断片」は、詳細には、断片Fv、scFv(sc=一本鎖)、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv−Fcまたは二重特異性抗体のような抗体断片、または半減期が増加した任意の断片を意味する。このような機能的断片は、本明細書において以下に詳細に説明する。
【0057】
抗体の「誘導化合物」または「誘導体」は、詳細には、CXCR4を認識するその能力を保存するためにペプチド骨格と元の抗体のCDRの少なくとも1個から構成される結合性タンパク質を意味する。当業者に周知のこのような誘導化合物は、本明細書において以下に更に詳細に説明する。
【0058】
更に好ましくは、本発明は、特に遺伝子組換えまたは化学合成によって得られたキメラまたはヒト化した本発明による抗体、それらの誘導化合物またはそれらの機能的断片を含んでなる。
【0059】
好ましい実施形態によれば、本発明による抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、モノクローナル抗体からなることを特徴とする。
【0060】
「モノクローナル抗体」とは、ほぼ均質な抗体の個体群から生じる抗体を意味するものと理解される。更に詳細には、ある個体群の個々の抗体は、最小限の比率で見出すことができる少数の可能な天然に存在する変異体を除き、同一である。換言すれば、モノクローナル抗体は、単一細胞クローン(例えば、ハイブリドーマ、均一抗体をコードするDNA分子でトランスフェクションした真核生物の宿主細胞、均一抗体をコードするDNA分子でトランスフェクションした原核生物の宿主細胞など)の増殖から生じる均一抗体からなり、一般に1個かつただ1種のクラスおよびサブクラスの重鎖、およびただ1タイプの軽鎖を特徴とする。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一抗原に対する。更に、典型的には様々な決定基またはエピトープに対する様々な抗体を包含するポリクローナル抗体の調製とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原の単一エピトープに対する。
【0061】
本発明は、天然形態の抗体に関するものではなく、すなわち、それらの天然環境から得られるものではないが、天然供給源から精製によって単離されまたは得られ、あるいは遺伝子組換えまたは化学合成によって得られるものであり、従って、それらは下記に説明するように非天然アミノ酸を有することができることを理解しなければならない。
【0062】
更に詳細には、本発明の好ましい実施形態によれば、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、配列番号1、2または3のアミノ酸配列のCDRから選択される少なくとも1個のCDR、または配列が、最適アライメント後に配列番号1、2または3の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1個のCDRを含んでなる軽鎖を含んでなるか、または配列番号4、5または6のアミノ酸配列のCDRから選択される少なくとも1個のCDR、または配列が、最適アライメント後に配列番号4、5または6の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1個のCDRを含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0063】
もう一つの実施形態によれば、本発明の抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、配列番号1、2または3の配列である3個のCDRの少なくとも1個、または最適アライメント後に配列番号1、2または3の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1個の配列を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0064】
好ましい様式では、本発明の抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、下記の3種類のCDR、それぞれCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする:ここで、
CDR−L1は、配列番号1または9の配列、または最適アライメント後に配列番号1または9の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでなり、
CDR−L2は、配列番号2または10の配列、または最適アライメント後に配列番号2または10の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでなり、および
CDR−L3は、配列番号3の配列、または最適アライメント後に配列番号3の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでなる。
【0065】
特定実施形態によれば、抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、配列番号1の配列であるCDR−L1、配列番号2の配列であるCDR−L2および配列番号3の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0066】
もう一つの特定実施形態によれば、抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、配列番号9の配列であるCDR−L1、配列番号10の配列であるCDR−L2および配列番号3の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0067】
更に詳細には、本発明の抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、配列番号4、5または6の配列である3個のCDRの少なくとも1個、または最適アライメント後に配列番号4、5または6の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1個の配列を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0068】
更に一層好ましくは、本発明の抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、下記の3種類のCDR、それぞれCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする:ここで、
CDR−H1は、配列番号4、7または11の配列、または最適アライメント後に配列番号4、7または11の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでなり、
CDR−H2は、配列番号5または12の配列、または最適アライメント後に配列番号5または12の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでなり、および
CDR−H3は、配列番号6または8の配列、または最適アライメント後に配列番号6または8の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでなる。
【0069】
特定実施形態によれば、抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、配列番号7の配列であるCDR−H1、配列番号5の配列であるCDR−H2および配列番号8の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0070】
もう一つの特定実施形態によれば、抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的
断片の1つは、配列番号11の配列であるCDR−H1、配列番号12の配列であるCDR−H2および配列番号6の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0071】
更に詳細には、本発明の好ましい実施形態によれば、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、配列番号40、2または41のアミノ酸配列のCDRから選択される少なくとも1個のCDR、または配列が、最適アライメント後に配列番号40、2または41の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1個のCDRを含んでなる軽鎖を含んでなるか、または配列番号42、5または43のアミノ酸配列のCDRから選択される少なくとも1個のCDR、または配列が、最適アライメント後に配列番号42、5または43の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1個のCDRを含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0072】
もう一つの実施形態によれば、本発明の抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、配列番号40、2または41の配列の3個のCDRの少なくとも1個、または最適アライメント後に配列番号40、2または41の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1個の配列を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0073】
好ましい様式では、本発明の抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、下記の3種類のCDR、それぞれCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする:ここで、
CDR−L1は、配列番号40または46の配列、または最適アライメント後に配列番号40または46の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでなり、
CDR−L2は、配列番号2または47の配列、または最適アライメント後に配列番号2または47の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでなり、および
CDR−L3は、配列番号41の配列、または最適アライメント後に配列番号41の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでなる。
【0074】
特定実施形態によれば、抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、配列番号40の配列であるCDR−L1、配列番号2の配列であるCDR−L2および配列番号41の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0075】
もう一つの特定実施形態によれば、抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、配列番号46の配列であるCDR−L1、配列番号47の配列であるCDR−L2および配列番号41の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0076】
更に詳細には、本発明の抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、配列番号42、5または43の配列である3個のCDRの少なくとも1個、または最適アライメント後に配列番号42、5または43の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1個の配列を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0077】
更に一層好ましくは、本発明の抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、下記の3種類のCDRで、それぞれCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする:ここで、
CDR−H1は、配列番号42、44または48の配列、または最適アライメント後に配列番号42、44または48の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでなり、
CDR−H2は、配列番号5または49の配列、または最適アライメント後に配列番号5または49の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでなり、および
CDR−H3は、配列番号45または43の配列、または最適アライメント後に配列番号45または43の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでなる。
【0078】
特定実施形態によれば、抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、配列番号44の配列であるCDR−H1、配列番号5の配列であるCDR−H2および配列番号45の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0079】
もう一つの特定実施形態によれば、抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つは、配列番号48の配列であるCDR−H1、配列番号49の配列であるCDR−H2および配列番号43の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0080】
本発明の明細書において、「ポリペプチド」、「ポリペプチド配列」、「ペプチド」および「抗体化合物またはそれらの配列に結合したタンパク質」という用語は、代替可能である。
【0081】
本発明は、天然形態の抗体に関するものではなく、すなわち、それらは、それらの天然環境からは得られないが、天然供給源から精製によって単離しまたは得ることができるものであり、あるいは遺伝子組換えまたは化学合成によって得ることができるものであり、従ってそれらは、下記に説明されるように非天然アミノ酸を有することができることを理解しなければならない。
【0082】
第一の態様では、相補性決定領域またはCDRは、Kabat et al.によって定義される免疫グロブリンの重および軽鎖の超可変領域を意味する(Kabat et al.,「免疫学的に重要なタンパク質の配列(Sequences of proteins of immunological interest)」, 5th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, NIH, 1991 および以後の版)。3種類の重鎖CDRと3種類の軽鎖CDRがある。本発明では、「CDR」および「CDRs」は、場合によるが、抗体が認識する抗原またはエピトープの抗体の結合親和性に関与するアミノ酸残基の大部分を含む領域の1以上またはすべてを示すのに用いられる。
【0083】
第二の実施形態では、CDR領域またはCDRとは、IMGTによって定義された免疫グロブリンの重および軽鎖の超可変領域を示すことを意図する。
【0084】
IMGTのユニークなナンバリングは、抗原受容体、鎖のタイプまたは種類がなんであれ、可変ドメインを比較するために定義されたものである(Lefranc M. -P., Immunology Today 18, 509 (1997) / Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999) / Lefranc, M.-P., Pommie, C., Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003))。IMGTのユニークなナンバリングでは、保存されたアミノ酸は常に同じ位置を有し、例えばシステイン23(1st−CYS)、トリプトファン41(CONSERVED−TRP)、疎水性アミノ酸89、システイン104(2nd−CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J−PHEまたはJ−TRP)である。IMGTのユニークなナンバリングは、フレームワーク領域(FR1−IMGT:1〜26位、FR2−IMGT:39〜55、FR3−IMGT:66〜104およびFR4−IMGT:118〜128)および相補性決定領域:CDR1−IMGT:27〜38、CDR2−IMGT:56〜65およびCDR3−IMGT:105〜117の標準化限界(standardized delimitation)を提供する。ギャップは非占有位置を表すので、CDR−IMGT長(括弧の中に示され、ドットで区切られる、例えば[8.8.13])は、非常に重要な情報となる。IMGTのユニークなナンバリングは、IMGT Colliers de Perlesと呼ばれる2Dグラフィック表現(Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53, 857-883 (2002) / Kaas, Q. and Lefranc, M.-P., Current Bioinformatics, 2, 21-30 (2007))およびIMGT/3Dstructure−DBにおける3D構造(Kaas, Q., Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., 「T細胞受容体およびMHC構造データー(T cell receptor and MHC structure data)」.Nucl. Acids. Res., 32, D208-D210 (2004))に用いられる。
【0085】
3種類の重鎖CDRと3種類の軽鎖CDRが存在する。CDRまたはCDRsという用語は、本明細書では、場合によるが、抗体が認識する抗原またはエピトープの抗体の親和性よる結合に関与するアミノ酸残基の大部分を含むこれらの領域の1つまたは数個またはすべてを示すのに用いられる。
【0086】
より分かりやすくするため、下記の説明および更に詳細には、表2および3において、CDRはIMGTナンバリング、Kabatナンバリングおよび共通ナンバリングによって定義されることを理解しなければならない。
【0087】
共通ナンバリングでは、IMGTおよびKabatナンバリングシステムによって定義されたCDRに共通するそれぞれのCDRの残基部分を再編成する。
【0088】
IMGTナンバリングシステムは、上記で定義したようにIMGTシステムに準じてCDRを定義し、一方、Kabatナンバリングシステムは、上記で定義したようにKabatシステムに準じてCDRを定義する。
【0089】
更に詳細には、CDR−L1は、共通およびIMGTナンバリングシステムでは配列番号1(QSLYNSRTRKNY)からなり、Kabatナンバリングシステムでは配列番号9(KSSQSLYNSRTRKNYLA)からなる。
【0090】
CDR−L2に関しては、共通およびIMGTナンバリングシステムでは配列番号2(WAS)からなり、Kabatナンバリングシステムでは配列番号10(WASTRES)からなる。
【0091】
CDR−L3は、3種類のナンバリングシステムのそれぞれについて配列番号3(KQSYNLRT)からなる。
【0092】
重鎖については、CDR−H1は共通ナンバリングシステムでは配列番号4(TDYY)からなり、IMGTナンバリングシステムでは配列番号7(GFTFTDYY)からなり、Kabatナンバリングシステムでは配列番号11(TDYYMS)からなる。
【0093】
CDR−H2は、共通およびIMGTナンバリングシステムでは配列番号5(IRNKANGYTT)からなり、Kabatナンバリングシステムでは配列番号12(FIRNKANGYTTEYSASVKG)からなる。
【0094】
最後に、CDR−H3は、共通およびKabatナンバリングシステムでは配列番号6(DIPGFAY)からなり、一方、IMGTナンバリングシステムでは配列番号:8(ARDIPGFAY)からなる。
【0095】
更に詳細には、CDR−L1は、共通およびIMGTナンバリングシステムでは配列番号40(QSLFNSRTRKNY)からなり、Kabatナンバリングシステムでは配列番号46(KSSQSLFNSRTRKNYLA)からなる。
【0096】
CDR−L2に関しては、共通およびIMGTナンバリングシステムでは配列番号2(WAS)からなり、Kabatナンバリングシステムでは配列番号47(WASARDS)からなる。
【0097】
CDR−L3は、3種類のナンバリングシステムのそれぞれについて配列番号41(MQSFNLRT)からなる。
【0098】
重鎖については、CDR−H1は、共通ナンバリングシステムでは配列番号42(DNY)からなり、IMGTナンバリングシステムでは配列番号44(GFTFTDNY)からなり、Kabatナンバリングシステムでは配列番号48(DNYMS)からなる。
【0099】
CDR−H2は、共通およびIMGTナンバリングシステムでは配列番号5(IRNKANGYTT)からなり、Kabatナンバリングシステムでは配列番号49(FIRNKANGYTTDYSASVRG)からなる。
【0100】
最後に、CDR−H3は、共通およびKabatナンバリングシステムでは配列番号43(DVGSNYFDY)からなり、一方、IMGTナンバリングシステムでは配列番号45(ARDVGSNYFDY)からなる。
【0101】
本発明の意味において、核酸またはアミノ酸の2つの配列の「同一性率」とは、最適アライメント後に得られた比較を行う2つの配列の間の同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の割合を意味し、この割合は純粋に統計的なものでありかつ2つの配列の間の差はそれらの長さに沿ってランダムに分布する。2つの核酸またはアミノ酸配列の比較は、従来的にはそれらを最適アライメントした後に配列を比較することによって行われ、前記比較はセグメントによってまたは「アライメントウインドウ」を用いることによって行うことができる。比較のための配列の最適アライメントは、手作業による比較の他に、Smith and Waterman(1981)の局所相同性アルゴリズム法(Ad. App. Math. 2:482)によって、Neddleman and Wunsch(1970)の局所相同性アルゴリズム法(J. Mol. Biol. 48:443)によって、Pearson and Lipman(1988)の同様な検索方法(Proc. Natl. Acad. Sci. 米国 85:2444)によって、またはこれらのアルゴリズムを用いるコンピューターソフトウェア法(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIでのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、または比較ソフトウェアBLAST NRまたはBLAST Pによる)によって行うことができる。
【0102】
2つの核酸またはアミノ酸配列の間の同一性率は、2つの最適アライメントした配列であって、比較する核酸またはアミノ酸配列が2つの配列間の最適アライメントのための参照配列と比較して付加または欠失を有することができるものを比較することによって決定される。同一性率は、アミノ酸、ヌクレオチドまたは残基が2つの配列、好ましくは2つの完全配列の間で同一である位置の数を決定し、同一位置の数をアライメントウインドウにおける位置の総数で割り、結果に100を乗じて、2つの配列間の同一性率を得ることによって計算される。
【0103】
例えば、サイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlで入手可能なBLASTプログラム「BLAST 2 sequences」(Tatusova et al,「Blast 2配列−タンパク質とヌクレオチド配列の比較のための新たなツール(Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences)」, FEMS Microbiol, 1999, Lett. 174:247-250)をデフォルトパラメーター(特にパラメーターについては、「オープン・ギャップ・ペナルティ」:5、および「エクステンション・ギャップ・ペナルティ」:2;選択したマトリックスは、例えば、プログラムによって提案された「BLOSUM 62」マトリックス)で用いることができ、2つの配列間の同一性率は、このプログラムによって直接計算される。
【0104】
参照アミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を示すアミノ酸配列については、好ましい例としては、参照配列、ある種の修飾、特に少なくとも1個のアミノ酸の欠失、付加または置換、切断または伸張を含むものが挙げられる。1以上の連続または非連続アミノ酸の置換の場合には、置換されるアミノ酸が「同等な」アミノ酸によって置き換わる置換が好ましい。本発明において、「同等なアミノ酸」という表現は、対応する抗体および下記で定義するそれら具体例の生物活性を変更することなく構造アミノ酸の1つを置換すると思われる任意のアミノ酸を示すことを意味する。
【0105】
同等なアミノ酸は、置換するアミノ酸とそれらの構造的相同性または産生されると思われる様々な抗体間での生物活性の比較試験の結果に基づいて決定することができる。
【0106】
非制限的例として、下表1には、対応する修飾された抗体の生物活性の有意な変更を生じることなく行われると思われる可能な置換がまとめてあり、逆置換は同じ条件下にて自然に可能である。
【0107】
【表1】

【0108】
当該技術分野の現在の状態では、6つのCDRの間の最大可変性(長さおよび組成)は、3種類の重鎖CDR、更に詳細にはこの重鎖のCDR−H3で見出されることが当業者に知られている。従って、本発明の抗体、またはそれらの誘導化合物または機能的断片の1つの好ましい特徴的なCDRは、重鎖の3種類のCDRであり、すなわち、414H5については、それぞれIMGTおよびKabatに準じて定義された配列番号7、5、8および11、12、6の配列によってコードされたCDRであり、515H7については、それぞれIMGTおよびKabatに準じて定義された配列番号44、5、45および48、49、43の配列によってコードされたCDRであることは明らかであろう。更に一層好ましくは、414H5については、CDRは配列番号8または6の配列によってコードされたCDR−H3に対応し、515H7については、45または43の配列によってコードされたCDR−H3に対応する。
【0109】
具体的実施形態では、本発明は、マウス抗体、またはその誘導化合物または機能的断片に関する。
【0110】
本発明のもう一つの実施形態は、下記の3種類のCDRを含んでなる軽鎖:
配列番号1の配列、または最適アライメント後に配列番号1の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L1、
配列番号2の配列、または最適アライメント後に配列番号2の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L2、および
配列番号3の配列、または最適アライメント後に配列番号3の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L3、および
下記の3種類のCDRを含んでなる重鎖:
配列番号4の配列、または最適アライメント後に配列番号4の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H1、
配列番号5の配列、または最適アライメント後に配列番号5の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H2、および
配列番号6の配列、または最適アライメント後に配列番号6の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H3
を含んでなる、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片を開示する。
【0111】
本発明の更にもう一つの実施形態は、下記の3種類のCDRを含んでなる軽鎖:
配列番号1の配列、または最適アライメント後に配列番号1の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−L1、
配列番号2の配列、または最適アライメント後に配列番号2の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−L2、および
配列番号3の配列、または最適アライメント後に配列番号3の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−L3、および
下記の3種類のCDRを含んでなる重鎖:
配列番号7の配列、または最適アライメント後に配列番号7の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−H1、
配列番号5の配列、または最適アライメント後に配列番号5の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−H2、および
配列番号8の配列、または最適アライメント後に配列番号8の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−H3
を含んでなる、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片を開示する。
【0112】
本発明の更にもう一つの態様は、下記の3種類のCDRを含んでなる軽鎖:
配列番号9の配列、または最適アライメント後に配列番号9の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−L1、
配列番号10の配列、または最適アライメント後に配列番号10の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−L2、および
配列番号3の配列、または最適アライメント後に配列番号3の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−L3、および
下記の3種類のCDRを含んでなる重鎖:
配列番号11の配列、または最適アライメント後に配列番号11の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−H1、
配列番号12の配列、または最適アライメント後に配列番号12の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−H2、および
配列番号6の配列、または最適アライメント後に配列番号6の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−H3を含んでなる、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片を開示する。
【0113】
本発明による抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、
配列番号1の配列であるCDR−L1、配列番号2の配列であるCDR−L2、および配列番号3の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖、および
配列番号7の配列であるCDR−H1、配列番号5の配列であるCDR−H2、および配列番号8の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖
を含んでなることを特徴とする。
【0114】
もう一つの実施形態では、本発明による抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、
配列番号9の配列であるCDR−L1、配列番号10の配列であるCDR−L2、および配列番号3の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖、および
配列番号11の配列であるCDR−H1、配列番号12の配列であるCDR−H2および配列番号6の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖
を含んでなることを特徴とする。
【0115】
更にもう一つの実施形態によれば、本発明の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、配列番号13のアミノ酸配列または最適アライメント後に配列番号13の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖配列を含んでなり、かつ配列番号14のアミノ酸配列または最適アライメント後に配列番号14の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなる重鎖配列を含んでなることを特徴とする。
【0116】
本発明のもう一つの実施形態は、下記の3種類のCDRを含んでなる軽鎖:
配列番号40の配列、または最適アライメント後に配列番号40の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L1、
配列番号2の配列、または最適アライメント後に配列番号2の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L2、および
配列番号41の配列、または最適アライメント後に配列番号41の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L3、および 下記の3種類のCDRを含んでなる重鎖:
配列番号42の配列、または最適アライメント後に配列番号42の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H1、
配列番号5の配列、または最適アライメント後に配列番号5の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H2、および
配列番号43の配列、または最適アライメント後に配列番号43の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H3
を含んでなる、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片を開示する。
【0117】
本発明の更にもう一つの実施形態は、下記の3種類のCDRを含んでなる軽鎖:
配列番号40の配列、または最適アライメント後に配列番号40の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−L1、
配列番号2の配列、または最適アライメント後に配列番号2の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−L2、および
配列番号41の配列、または最適アライメント後に配列番号41の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−L3、および
下記の3種類のCDRを含んでなる重鎖:
配列番号44の配列、または最適アライメント後に配列番号44の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−H1、
配列番号:の配列、または最適アライメント後に配列番号5の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−H2、および
配列番号45の配列、または最適アライメント後に配列番号45の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−H3
を含んでなる、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片を開示する。
【0118】
本発明の更にもう一つの実施形態は、下記の3種類のCDRを含んでなる軽鎖:
配列番号46の配列、または最適アライメント後に配列番号46の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−L1、
配列番号47の配列、または最適アライメント後に配列番号47の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−L2、および
配列番号41の配列、または最適アライメント後に配列番号41の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−L3、および
下記の3種類のCDRを含んでなる重鎖:
配列番号48の配列、または最適アライメント後に配列番号48の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−H1、
配列番号49の配列、または最適アライメント後に配列番号49の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−H2、および
配列番号43の配列、または最適アライメント後に配列番号43の配列と少なくとも80%の同一性を有する配列のCDR−H3
を含んでなる、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片を開示する。
【0119】
本発明による抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、
配列番号40の配列であるCDR−L1、配列番号2の配列であるCDR−L2、および配列番号41の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖、および
配列番号44の配列であるCDR−H1、配列番号5の配列であるCDR−H2、および配列番号45の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖
を含んでなることを特徴とする。
【0120】
もう一つの実施形態では、本発明による抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、
配列番号46の配列であるCDR−L1、配列番号47の配列であるCDR−L2、および配列番号41の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖、および
配列番号48の配列であるCDR−H1、配列番号49の配列であるCDR−H2、および配列番号43の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖
を含んでなることを特徴とする。
【0121】
更にもう一つの実施形態によれば、本発明の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、配列番号50のアミノ酸配列または最適アライメント後に配列番号50の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖配列を含んでなり、かつ配列番号51のアミノ酸配列または最適アライメント後に配列番号51の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなる重鎖配列を含んでなることを特徴とする。
【0122】
上記から分かるように、本発明は、本発明で記載された抗体から誘導される任意の化合物にも関する。
【0123】
更に詳細には、本発明の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、前記誘導化合物が、初期抗体のパラトープ認識特性のすべてまたは一部を保存するような方法で少なくとも1個のCDRがグラフトしているペプチド骨格を含んでなる結合タンパク質からなることを特徴としている。
【0124】
本発明で記載される6種類のCDR配列の中の1以上の配列は、様々な免疫グロブリンタンパク質骨格形成時にも存在することができる。この場合には、タンパク質配列は、グラフトしたCDRの折り畳みに適したペプチド骨格を回復することができ、それらにパラトープ抗原認識特性を保存させることができる。
【0125】
一般に、当業者であれば、元の抗体から生じるCDRの少なくとも1個をグラフトするためのタンパク質骨格のタイプを決定する方法を知っている。更に詳細には、選択されるには、このような骨格は、下記のような最大数の基準:
良好な系統発生的保存、
既知の三次元構造(例えば、結晶学、NMR分光法、または当業者に知られている任意の他の手法による)、
小サイズ、
転写後修飾が僅かまたは全くない、および/または
産生、発現および精製が容易
に適合しなければならないことが知られている(Skerra A., J. MoI. Recogn., 2000, 13:167-187)。
【0126】
このようなタンパク質骨格の起源は、フィブロネクチンおよび優先的にはフィブロネクチンIII型ドメイン10、リポカリン、アンチカリン(Skerra A., J. Biotechnol, 2001, 74(4):257-75)、Staphylococcus aureusのプロテインAのドメインBから生じるプロテインZ、チオレドキシンA、または「アンキリン反復」(Kohl et al., PNAS, 2003, vol. 100, No. 4, 1700-1705)、「アルマジロ反復」、「ロイシンリッチ反復」および「テトラトリコペプチド反復」のような反復モティーフを有するタンパク質から選択される構造であることができるが、これらに限定されない。
【0127】
例えば、サソリ、昆虫、植物、軟体動物由来の毒素などのような毒素由来の骨格、および神経型NO合成酵素のタンパク質阻害剤(PIN)も挙げられる。
【0128】
このようなハイブリッド構成物の一例は、決して制限的なものではなく、PINにおけるループの1つでの抗CD4抗体、すなわち13B8.2のCDR−H1(重鎖)の挿入であり、このようにして得られた新規結合タンパク質は、元の抗体と同じ結合特性を保存している(Bes et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 2006, 343(1), 334-344)。純粋に説明的基盤では、抗リゾチームVHH抗体のCDR−H3(重鎖)の、ネオカルジノスタチンのループの1つへのグラフトを挙げることもできる(Nicaise et al., Protein Science, 2004, 13(7):1882-1891)。
【0129】
最後に、上記のように、このようなペプチド骨格は、元の抗体から生じる1〜6種類のCDRを含んでなることができる。必要条件ではないが好ましくは、当業者であれば重鎖から少なくとも1つのCDRを選択するであろうし、この重鎖は主として抗体の特異性に関与していることが知られている。1以上の関連CDRの選択は当業者には明らかであり、適当な既知の手法を選択するであろう(Bes et al., FEBS letters 508, 2001, 67-74)。
【0130】
本発明の具体的態様は、本発明による抗体から誘導される化合物を選択する方法に関し、前記誘導化合物はインビトロおよび/またはインビボで腫瘍細胞の増殖を阻害することができ、かつ前記誘導化合物は少なくとも1つの抗体CDRがグラフトしているペプチド骨格を含んでなり、
a)少なくとも1つの抗体CDRがグラフトしているペプチド骨格からなる化合物を、腫瘍細胞を増殖させる条件下で増殖することができるこれらの細胞を含む生物試料とインビトロで接触させ、
b)前記化合物がこれらの腫瘍細胞の増殖を阻害することができるときには、前記化合物を選択する
段階を含んでなることを特徴とし、かつ前記の少なくとも1つのグラフトしたCDRが、下記のCDR:
配列番号1、9、40、46の配列または最適アライメント後に配列番号1、9、40、46の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR、
配列番号2、10、47の配列または最適アライメント後に配列番号2、10、47の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR、
配列番号3、41の配列または最適アライメント後に配列番号3、41の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR、
配列番号4、7、11、42、44、48の配列または最適アライメント後に配列配列番号4、7、11、42、44、48の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR、
配列番号5、12、49の配列または最適アライメント後に配列番号5、12、49の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR、および
配列番号6、8、43、45の配列または最適アライメント後に配列番号6、8、43、45の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR
から選択されることを特徴とする。
【0131】
好ましい様式によれば、この方法は、段階a)における少なくとも2または3種類の抗体CDRがグラフトしているペプチド骨格を含んでなる化合物をインビトロで接触させることを包含することができる。
【0132】
この方法の更に一層好ましい様式によれば、ペプチド骨格は、構造について上記した骨格または結合タンパク質から選択される。
【0133】
明らかに、これらの実施例は決して制限的なものではなく、当業者に知られているまたは明らかな任意の他の構造を、本特許出願明細書によって与えられる保護によって守られるものと考えるべきである。
【0134】
従って、本発明は、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片に関し、ペプチド骨格が、a)系統発生的に良好に保存され、b)強固な構造であり、c)周知な3D分子構成を有し、d)サイズが小さく、および/またはe)安定性特性を変更することなく欠失および/または挿入によって修飾することができる領域を含んでなるタンパク質から選択されることを特徴とする。
【0135】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、前記ペプチド骨格が、i)フィブロネクチン、優先的にはフィブロネクチン3型ドメイン10、リポカリン、アンチカリン、Staphylococcus aureusのプロテインAのドメインBから生じるプロテインZ、チオレドキシンA、または「アンキリン反復」(Kohl et al., PNAS, 2003, vol. 100, No. 4, 1700-1705)、「アルマジロ反復」、「ロイシンリッチ反復」および「テトラトリコペプチド反復」のような反復モティーフを有するタンパク質、またはiii)神経型NO合成酵素タンパク質阻害剤(PIN)から選択されることを特徴とする。
【0136】
本発明のもう一つの態様は、上記抗体の機能的断片に関する。
【0137】
更に詳細には、本発明は、前記機能的断片が断片Fv、Fab、(Fab’)、Fab’、scFv、scFv−Fcおよび二重特異性抗体、またはPEG化断片のような半減期が増加した任意の断片から選択されることを特徴とする、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片に関する。
【0138】
本発明による抗体のこのような機能的断片は、例えば、断片Fv、scFv(sc=一本鎖)、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv−Fcまたは二重特異性抗体、またはポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコールの付加(PEG化)(PEG化断片は、Fv−PEG、scFv−PEG、Fab−PEG、F(ab’)−PEGおよびFab’−PEGと呼ばれる)のような化学修飾によってもしくはリポソーム、微小球またはPLGAに、特に一般的な様式で断片が生じる抗体の活性を部分的であっても発揮することができる本発明の特徴的CDRの少なくとも1つを有する前記断片を組込むことによって半減期を増加した任意の断片からなる。
【0139】
好ましくは、前記機能的断片は、それらが誘導される抗体の可変重鎖または軽鎖の部分配列を含んでなりまたは包含すると、前記部分配列は、それが生じる抗体と同じ結合特異性および十分な親和性、好ましくはそれが生じる抗体の少なくとも1/100、更に好ましくは少なくとも1/10の親和性を保持するだろう。
【0140】
このような機能的断片は、それが生じる抗体の配列の少なくとも5個のアミノ酸、好ましくは6、7、8、10、15、25、50または100個の連続的アミノ酸を含むだろう。
【0141】
好ましくは、これらの機能的断片は、Fv、scFv、Fab、F(ab’)、F(ab’)、scFv−Fcまたは二重特異性抗体のタイプであり、一般的に断片が生じる抗体と同じ結合特異性を有する。本発明によれば、本発明の抗体の断片は、ペプシンまたはパパインを含む酵素消化のような方法によっておよび/または化学還元によるジスルフィド架橋の開裂によって上記抗体から得ることができる。抗体断片は、これもまた当業者に知られている組換え遺伝学の手法によって、または例えば、Applied BioSystemsなどによって発売されているような自動ペプチド合成装置によるペプチド合成によって得ることもできる。
【0142】
更に分かりやすくするために、下表2には、本発明の抗体に対応する様々なアミノ酸配列をまとめている。
【0143】
【表2】

【0144】
本発明のもう一つの具体的態様は、キメラ抗体、またはその誘導化合物または機能的断片であって、前記抗体が、マウスとは異種の、特にヒトの抗体由来の軽鎖および重鎖定常領域をも含んでなることを特徴とするものに関する。
【0145】
更にもう一つの本発明の具体的態様は、ヒト化抗体、またはその誘導化合物または機能的断片であって、ヒト抗体由来の軽鎖および重鎖の定常領域がそれぞれλまたはκ領域、およびγ−1、γ−2、またはγ−4領域であることを特徴とするものに関する。
【0146】
もう一つの態様によれば、本発明は、本発明によるモノクローナル抗体を分泌することができるマウスハイブリドーマ、特に2007年10月22日に国立微生物カルチャーコレクション(French collection for microrganism cultures)(CNCM,Pasteur Institute,パリ,仏国)にI−3860の番号で寄託したマウス起源のハイブリドーマに関する。前記ハイブリドーマは、Balb/C免疫化マウス脾臓細胞と骨髄腫Sp2/O−Ag14系の細胞との融合によって得られた。
【0147】
本発明において414H5と呼ばれるモノクローナル抗体、またはその誘導化合物または機能的断片であって、前記抗体が、2007年10月22日にCNCMにI−3860の番号で寄託したハイブリドーマによって分泌されることを特徴とするものは、明らかに本発明の部分を形成する。
【0148】
もう一つの態様によれば、本発明は、本発明によるモノクローナル抗体を分泌することができるマウスハイブリドーマ、特に2008年6月25日に国立微生物カルチャーコレクション(French collection for microrganism cultures)(CNCM,Pasteur Institute,パリ,仏国)にI−4019の番号で寄託したマウス起源のハイブリドーマに関する。前記ハイブリドーマは、Balb/C免疫化マウス脾臓細胞と骨髄腫Sp2/O-Ag14系の細胞との融合によって得られた。
【0149】
本発明において515H7と呼ばれるモノクローナル抗体、またはその誘導化合物または機能的断片であって、前記抗体が、2008年6月25日にCNCMにI−3860の番号で寄託したハイブリドーマによって分泌されることを特徴とするものは、明らかに本発明の部分を形成する。
【0150】
本発明の抗体は、キメラ化またはヒト化抗体をも含んでなる。
【0151】
キメラ抗体は、所定の種の抗体由来の天然可変領域(軽鎖および重鎖)を含み、前記所定の種に異種の抗体の軽鎖および重鎖の定常領域を組合せたものである。
【0152】
抗体、またはそのキメラ断片は、組換え遺伝学の手法を用いて調製することができる。例えば、キメラ抗体は、プロモーターと、本発明の非ヒト、特にマウスのモノクローナル抗体の可変領域をコードする配列と、ヒト抗体定常領域をコードする配列とを含む組換えDNAをクローニングすることによって産生することができた。このような組換え遺伝子によってコードされる本発明によるキメラ抗体は、例えば、マウス−ヒトキメラであり、この抗体の特異性は、マウスDNA由来の可変領域およびヒトDNA由来の定常領域によって決定されるそのアイソタイプによって決定することができた。キメラ抗体の調製方法については、Verhoeyn et al.(BioEssays, 8:74, 1988)を参照されたい。
【0153】
もう一つの態様では、本発明は、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片であって、キメラ抗体にあるものを説明する。
【0154】
特に好ましい実施形態では、本発明のキメラ抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、配列番号64のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖配列を含んでなり、かつ配列番号65のアミノ酸配列を含んでなる重鎖配列を含んでなる。
【0155】
もう一つの好ましい実施形態では、本発明のキメラ抗体、またはその誘導化合物または機能的断片は、配列番号66のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖配列を含んでなり、かつ配列番号67のアミノ酸配列を含んでなる重鎖配列を含んでなる。
【0156】
「ヒト化抗体」は、非ヒト起源の抗体由来のCDR領域を含む抗体であって、この抗体分子の他の部分は1(または数)種類のヒト抗体由来であることを意味する。更に、骨格部分残基(FRと呼ばれる)の幾つかは、修飾して結合親和性を保存することができる(Jones et al., Nature, 321:522-525, 1986; Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536, 1988; Riechmann et al., Nature, 332:323-327, 1988)。
【0157】
本発明のヒト化抗体、またはその断片は、当業者に知られている手法(例えば、Singer et al., J. Immun., 150:2844-2857, 1992; Mountain et al., Biotechnol. Genet. Eng. Rev., 10:1-142, 1992;およびBebbington et al., Bio/Technology, 10:169-175, 1992の文献に記載の手法など)によって調製することができる。このようなヒト化抗体は、インビトロでの診断、またはインビボでの予防的および/または治療的処置などの方法におけるそれらの使用に好ましい。これもまた当業者に知られている、例えば「CDRグラフト」法のような他のヒト化手法は、欧州特許第0451261号公報、欧州特許第0682040号公報、欧州特許第0939127号公報、欧州特許第0566647号公報、または米国特許第5,530,101号公報、米国特許第6,180,370号公報、米国特許第5,585,089号公報、および米国特許第5,693,761号公報にPDLによって記載されている。米国特許第5,639,641号公報またはUS6,054,297号公報、5,886,152号公報および5,877,293号公報も、引用することができる。
【0158】
更に、本発明は、上記のマウス抗体から生じるヒト化抗体にも関する。
【0159】
好ましい様式では、ヒト抗体由来の軽鎖および重鎖の定常領域は、それぞれλまたはκ、およびγ−1、γ−2またはγ−4領域である。
【0160】
アイソタイプIgG1に対応する実施形態では、この抗体の追加的特徴は、抗体依存性細胞障害(ADCC)および/または補体依存性細胞障害(CDC)のようなエフェクター機能を示すことである。
【0161】
本発明の新規な態様は、下記の核酸(任意の縮重遺伝子コードを含む):
本発明による抗体、またはその誘導化合物または機能的断片をコードする核酸、DNAまたはRNA、
a)で定義した核酸に相補性の核酸、
配列番号15〜26または配列番号52〜61の核酸配列または最適アライメント後に配列番号15〜26または配列番号52〜61の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDRの少なくとも1個と高ストリンジェント条件下でハイブリダイズすることができる少なくとも18個のヌクレオチドの核酸、および
少なくとも配列番号27または配列番号62または配列番号68または70の核酸配列の軽鎖および/または配列番号28または配列番号63または配列番号69または71の核酸配列の重鎖または最適アライメント後に配列番号27および/または28または配列番号62および/または63または配列番号68および/または69または配列番号70および/または71の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列と高ストリンジェント条件下でハイブリダイズすることができる少なくとも18個のヌクレオチドの核酸
から選択されることを特徴とする、単離核酸に関する。
【0162】
下表3は、本発明の抗体に関する様々なヌクレオチド配列をまとめている。
【0163】
【表3】

【0164】
本発明で代替可能に用いられる「核酸」、「核酸配列(nucleic sequence)」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」という用語は、修飾されたまたはされていない、核酸の断片または領域を画定する、非天然ヌクレオチドを含むまたは含まない、二本鎖DNA、一本鎖DNAまたは前記DNAの転写産物であるヌクレオチドの正確な配列を意味する。
【0165】
本発明は、天然の染色体環境、すなわち、天然状態でのヌクレオチド配列に関するものではないことも本発明に包含されるべきである。本発明の配列は、単離されおよび/または精製され、すなわち、それらは、例えば複製によって直接または間接的にサンプリングされ、それらの環境は少なくとも部分的に修飾されている。例えば宿主細胞による組換え遺伝学の方法によって得られたまたは化学合成によって得られた単離核酸も、本明細書において記載される。
【0166】
「最適アライメント後に、好ましい配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性率を示す核酸配列」は、詳細には、特に規則的な欠失、切断、伸張、キメラ融合および/または置換のようなある種の修飾を参照核酸配列に関して示す核酸配列を意味する。好ましくは、これらは、参照配列と同じアミノ酸配列をコードする配列であり、これは、遺伝子コードの縮重、または好ましくは高ストリンジェント条件、特に以下に定義される条件下で、参照配列と特異的にハイブリダイズすると思われる相補性配列に関するものである。
【0167】
高ストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションは、温度およびイオン強度に関する条件がハイブリダイゼーションを2つの相補性DNA断片の間で保持できるような方法で選択されることを意味する。純粋に説明的基盤では、上記のポリヌクレオチド断片を画定するためのハイブリダイゼーション段階の高ストリンジェント条件は、下記の通りであるのが有利である。
【0168】
DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションは、(1)5xSSC(1xSSCは0.15M NaCl+0.015Mクエン酸ナトリウムの溶液に相当する)、50%ホルムアミド、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10xデンハルト溶液、5%デキストラン硫酸および1%サケ精子DNAを含むリン酸緩衝液(20mM,pH7.5)中での42°C、3時間のプレハイブリダイゼーション、(2)プローブの長さによって変化する温度(すなわち、長さが>100ヌクレオチドのプローブについては42°C)で20時間の主ハイブリダイゼーションの後、2xSSC+2%SDS中で20°Cで2回の20分間の洗浄、0.1xSSC+0.1%SDS中で20°Cで1回の20分間の洗浄。最後の洗浄は、0.1xSSC+0.1%SDS中で、長さが>100ヌクレオチドのプローブについては60°Cにて30分間行う。画定されたサイズのポリヌクレオチドについて上記した高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、当業者によって更に長いまたは短いオリゴヌクレオチドについてSambrook,et al.に記載の手順に準じて適合させることができる(「分子クローニング:実験室便覧(Molecular cloning: a laboratory manual)」,Cold Spring Harbor Laboratory;第3版,2001年)。
【0169】
本発明は、本発明に記載の核酸を含んでなるベクターにも関する。
【0170】
本発明は、特にこのようなヌクレオチド配列を含むクローニングおよび/または発現ベクターに関する。
【0171】
本発明のベクターは、好ましくは所定の宿主細胞においてヌクレオチド配列を発現および/または分泌することができる要素を含む。従って、ベクターは、プロモーター、翻訳開始および終結シグナル、並びに適当な転写調節領域を含んでいなければならない。このベクターは、宿主細胞で安定的に保持することができなければならず、場合によっては、翻訳されたタンパク質の分泌を指定する特異的シグナルを有することがある。これらの様々な要素は、用いられる宿主細胞に準じて当業者によって選択され、最適化される。この目的のため、ヌクレオチド配列を、選択された宿主内の自己複製ベクターに挿入し、または選択された宿主の組込みベクターに挿入することができる。
【0172】
このようなベクターは、当業者によって典型的に用いられる方法によって調製され、生成するクローンをリポフェクション、電気穿孔、熱ショックまたは化学的方法のような標準的方法によって適当な宿主に導入することができる。
【0173】
ベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルス起源のベクターである。それらは、本発明のヌクレオチド配列をクローニングまたは発現する目的で宿主細胞を形質転換するのに用いられる。
【0174】
本発明は、本発明に記載のベクターによって形質転換されたまたはベクターを含んでなる宿主細胞も含んでなる。
【0175】
宿主細胞は、例えば、細菌細胞だけでなく、酵母細胞または動物細胞、特に哺乳類細胞のような原核細胞または真核細胞系から選択することができる。昆虫または植物細胞を、用いることもできる。
【0176】
本発明は、本発明による形質転換した細胞を有するヒト以外の動物にも関する。
【0177】
本発明のもう一つの態様は、本発明による抗体、またはその機能的断片の1つの産生方法であって、
a)本発明による宿主細胞の培地および適当な培養条件での培養、および
b)このようにして培養培地または前記培養細胞から産生した前記抗体、またはその機能的断片の1つの回収
の段階を含んでなることを特徴とする、前記方法に関する。
【0178】
本発明による形質転換した細胞は、本発明による組換えポリペプチドの調製方法に有用である。組換え形態の本発明によるポリペプチドの調製方法であって、本発明によるベクターおよび/または本発明によるベクターによって形質転換した細胞を用いることを特徴とする前記方法も、本発明に含まれる。好ましくは、本発明によるベクターによって形質転換された細胞は、上記ポリペプチドを発現させかつ前記組換えペプチドを回収することができる条件下で培養される。
【0179】
上記のように、宿主細胞は、原核細胞または真核細胞系から選択することができる。詳細には、このような原核細胞または真核細胞系において、分泌を促進する本発明のヌクレオチド配列を確認することができる。従って、このような配列を有する本発明によるベクターは、分泌される組換えタンパク質の産生の目的で有利に用いることができる。実際に、目的のこれらの組換えタンパク質の精製は、それらが宿主細胞内よりは細胞培養物の上清に存在するという事実によって容易になる。
【0180】
本発明のポリペプチドは、化学合成によって調製することもできる。このような調製方法も、本発明の目的である。当業者であれば、断片の縮合によるまたは溶液中の通常の合成による固相法(特にSteward et al., 1984, 「固相ペプチド合成(Solid phase peptides synthesis)」, Pierce Chem. Company, Rockford, 111,第2版を参照)または部分固相法のような化学合成の方法を知っている。化学合成によって得られかつ対応する非天然アミノ酸を含むことができるポリペプチドも、本発明に含まれる。
【0181】
本発明の方法によって得られると思われる抗体、またはその誘導化合物または機能的断片も、本発明に含まれる。
【0182】
更にもう一つの態様によれば、本発明は、上記抗体であって、更にヒトケモカインファミリー受容体に特異的に結合することができおよび/またはこのような受容体のシグナル伝達を特異的に阻害することができることを特徴とする前記抗体に関する。
【0183】
新規な実施形態によれば、本発明は、例えば、VEGFR、VEGF、EGFR、IGF−1R、HER2neu、HGF、cMET、FGF、テトラスパニン、インテグリン、CXCR4(本発明の抗体以外、すなわち、別のエピトープをターゲッティングする)、CXCR7またはCXCR2のような、腫瘍の発達に関与した任意の受容体と相互作用することができる第二のモティーフを含んでなるという意味において二重特異性である抗体からなる、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片に関する。
【0184】
二重特異性または二重機能性抗体は、2つの異なる可変領域が同一分子で結合しているモノクローナル抗体の第二世代を構成している(Hollinger and Bohlen, 1999, Cancer and metastasis, rev. 18:411-419)。それらの有用性は、新たなエフェクター機能を補充しまたは腫瘍細胞の表面上の幾つかの分子を目標とするそれらの能力に関して診断および治療ドメインのいずれにおいても明らかにされ、このような抗体は、化学的方法(Glennie MJ et al., 1987, J. Immunol. 139, 2367-2375; Repp R. et al., 1995, J. Hemat., 377-382)または体細胞法(Staerz U.D. and Bevan M.J., 1986, PNAS 83, 1453-1457; Suresh M.R. et al., 1986, Method Enzymol, 121 :210-228)だけでなく、優先的にはヘテロ二量体化を強行することによって求める抗体の精製を容易にすることができる遺伝子工学の手法によって得ることもできる(Merchand et al., 1998, Nature Biotech., 16:677-681)。
【0185】
これらの二重特異性抗体は、総IgG、二重特異性Fab’2、Fab’PEG、二重特異性抗体または二重特異性scFvとして構築することができるだけでなく、2つの結合部位が目標としたそれぞれの抗原に対して存在する四価の二重特異性抗体(Park et al., 2000, Mol. Immunol., 37(18): 1123-30)、または上記したものの断片としても構築することができる。
【0186】
二重特異性抗体の産生および投与は2種類の特異性抗体の産生より廉価であることを考慮した経済的利点に加えて、このような二重特異性抗体の使用は治療上の毒性を少なくする利点を有する。実際に、二重特異性抗体の使用により、循環抗体の全量、従って、起こり得る毒性を減少させることができる。
【0187】
本発明の好ましい実施形態では、二重特異性抗体は二価または四価の抗体である。
【0188】
最後に、本発明は、薬剤として使用するための上記抗体、またはその誘導化合物または機能的断片に関する。
【0189】
本発明は、本発明の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片の1つからなる化合物を活性成分として含んでなる医薬組成物にも関する。好ましくは、前記抗体は、賦形剤および/または薬学上許容可能なキャリヤーにより補足される。
【0190】
本発明は、同時、個別または拡張手法で使用する配合物としてCXCR4に対する抗体以外の抗腫瘍抗体を更に含んでなることを特徴とする組成物にも関する。
【0191】
更にもう一つの実施形態によれば、本発明は、IGF−1R、EGFR、HER2/neu、cMET、VEGFRまたはVEGFのような受容体のチロシンキナーゼ活性を特異的に阻害することができる化合物、または当業者に知られている任意の他の抗腫瘍化合物から選択される少なくとも1種類の第二の抗腫瘍化合物を含んでなる、上記の医薬組成物にも関する。
【0192】
本発明の第二の好ましい態様では、前記の第二の化合物は、前記受容体によって促進される転移性伝播の増殖および/または抗アポトーシスおよび/または血管形成および/または誘導活性を阻害することができる単離された抗体である抗EGFR、抗GF−IR、抗HER2/neu、抗cMET、VEGFR、VEGFなど、またはそれらの機能的断片および誘導化合物から選択することができる。
【0193】
リツキシマブ、イブリツモマブまたはトシツモマブのような抗CD20抗体、ゲムツズマブまたはリンツズマブのような抗CD33抗体、エプラツズマブのような抗CD22抗体、アレムツズマブのような抗CD52抗体、エドレコロマブ、Ch17−1AまたはIGN−101のような抗EpCAM抗体、ザクチンのような抗CTP21または16抗体、131I−Cotara TNT−1のような抗DNA−Ag抗体、ペムツモマブ(pemtumomab)またはR1150のような抗MUC1抗体、ABX−Malのような抗MUC18抗体、ミツモマブのような抗GD3抗体、CeaVacまたはラベツズマブのような抗ECA抗体、OvaRexのような抗CA125抗体、アポリズマブのような抗HLA−DR抗体、MDX−010のような抗CTLA4抗体、MDX−070、111In&90Y−J591、177Lu J591、J591−DM1のような抗PSMA抗体、IGN311のような抗ルイスY抗体、AS1405および90YmuBC1のような血管形成阻害抗体、TRAIL R1mAbまたはTRAIL R2mAbのような抗Trail−R1抗体も適しているものとして挙げられる。
【0194】
本発明の補足的なもう一つの実施形態は、同時、個別または拡張使用のため配合または接合生成物として細胞毒性/細胞増殖抑制剤を更に含んでなる上記組成物からなる。
【0195】
「同時使用」は、含まれている組成物の両化合物を単一投薬形態で投与することを意味する。
【0196】
「個別使用」は、同時に、含まれている組成物の両化合物を別個の投薬形態で投与することを意味する。
【0197】
「広汎な使用」は、組成物の両化合物であって、それぞれが別個の投薬形態に含まれているものを連続的に投与することを意味する。
【0198】
一般に、本発明による組成物は、癌治療の有効性をかなり増加させる。換言すれば、本発明の抗体の治療効果は、細胞毒性剤の投与によって予期しない方法で増強される。本発明の組成物によって得られるもう一つの主要な続いて得られる利点は、活性成分を低めの有効用量で用いることができ、従って、副作用、特に細胞毒性剤の効果の出現の危険性を回避または減少させることができることに関する。更に、この組成物は、予想される治療効果を一層迅速に達成することができる。
【0199】
「治療用抗癌剤」または「細胞毒性剤」は、それを患者に投与すると、患者における癌の発達を治療または妨げる物質を意味する。このような薬剤の非制限的例としては、「アルキル化」剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能化阻害剤、血管形成阻害剤、抗エストロゲン剤、抗アンドロゲン剤、および免疫調節剤が挙げられる。
【0200】
このような薬剤は、例えば、VIDALの「細胞毒性」の見出しで腫瘍学および血液学に関する化合物に費やされた頁に引用されており、この文献の参照によって引用された細胞毒性化合物は、好ましい細胞毒性剤として本明細書に引用される。
【0201】
「アルキル化剤」は、任意の分子、優先的には細胞中の核酸(例えば、DNA)と共有結合することができるまたはアルキル化することができる任意の物質を表す。このようなアルキル化剤の例としては、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、クロルハイドレート、ピポブロマン、プレドニムスチン、リン酸二ナトリウムまたはエストラムスチンのようなナイトロジェンマスタード;シクロホスファミド、アルトレタミン、トロホスファミド、スルホホスファミドまたはイホスファミドのようなオキサザホスホリン;チオテパ、トリエチレンアミンまたはアルテトラミンのようなアジリジンまたはエチレンイミン;カルムスチン、ストレプトゾシン、フォテムスチンまたはロムスチンのようなニトロソウレア;ブスルファン、トレオスルファンまたはインプロスルファンのようなアルキルスルホン酸塩;ダカルバジンのようなトリアジン;またはシスプラチン、オキサリプラチンまたはカルボプラチンのような白金錯体が挙げられる。
【0202】
「代謝拮抗剤」は、ある種の活性、一般的にはDNA合成を妨げることによって増殖および/または細胞代謝を遮断する物質を表す。代謝拮抗剤の例としては、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、フロクスリジン、5−フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、シトシンアラビノシド、6−メルカプトプリン(6−MP)、6−チオグアニン(6−TG)、クロロデソキシアデノシン、5−アザシチジン、ゲムシタビン、クラドリビン、デオキシコホルマイシンおよびペントスタチンが挙げられる。
【0203】
「抗腫瘍抗生物質」は、DNA、RNAおよび/またはタンパク質の合成を妨げまたは阻害することができる化合物を表す。このような抗腫瘍抗生物質の例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ダクチノマイシン、ミトラマイシン、プリカマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシンおよびプロカルバジンが挙げられる。
【0204】
「有糸分裂阻害剤」は、細胞サイクルおよび有糸分裂の正常な進行を妨げる。一般に、パクリタキセルまたはドセタキセルのような微小管阻害剤または「タキソイド」は、有糸分裂を阻害することができる。ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンのようなビンカアルカロイドも、有糸分裂を阻害することができる。
【0205】
「クロマチン阻害剤」または「トポイソメラーゼ阻害剤」は、トポイソメラーゼIおよびIIのようなクロマチンを形成するタンパク質の正常な機能を阻害する物質である。このような阻害剤の例としては、トポイソメラーゼIについては、カンプトテシンおよびイリノテカンまたはトポテカンのようなその誘導体、トポイソメラーゼIIについては、エトポシド、エチポシドホスフェートおよびテニポシドが挙げられる。
【0206】
「血管形成阻害剤」は、血管の増殖を阻害する任意の薬物、化合物、物質または薬剤である。血管形成阻害剤の例としては、ラゾキシン、マリマスタット、バチマスタット、プリノマスタット、タノマスタット、イロマスタット、CGS−27023A、ハロフジノン、COL−3、ネオバスタット、BMS−275291、タリドミド、CDC501、DMXAA、L−651582、スカラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、インターフェロン−α、EMD121974、インターロイキン−12、IM862、アンジオスタチンおよびビタキシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0207】
「抗エストロゲン剤」または「エストロゲン拮抗剤」は、エストロゲン作用を減少させ、拮抗しまたは阻害する任意の物質を表す。このような薬剤の例は、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、およびエクセメスタンである。
【0208】
「抗アンドロゲン剤」または「アンドロゲン拮抗剤」は、アンドロゲン作用を減少させ、拮抗しまたは阻害する任意の物質を表す。抗アンドロゲン剤の例としては、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、スプリロノラクトン、シプロテロン酢酸、フィナステリドおよびシミチジンが挙げられる。
【0209】
免疫調節剤は、免疫系を刺激する物質である。免疫調節剤の例としては、アルデスロイキン、OCT−43、デニロイキン・ジフチトックス、またはインターロイキン−2のようなインターフェロン、インターロイキン、タソネルミンのような腫瘍壊死因子、またはレンチナン、シゾフィラン、ロキニメックス、ピドチモド、ペガデマーゼ、チモペンチン、ポリI:C、または5−フルオロウラシルと組合せたレバミソールのような他の種類の免疫調節剤が挙げられる。
【0210】
更に詳細については、当業者であれば、「治療化学,第6巻、癌の治療における抗腫瘍薬および展望(Therapeutic chemistry, vol. 6, Antitumor drugs and perspectives in the treatment of cancer)」TECおよびDOC監修、2003年[仏国]」という標題のFrench Association of Therapeutic Chemistry Teachersによって刊行されたマニュアルを参照することができる。
【0211】
特に好ましい実施形態では、配合物としての本発明の前記組成物は、同時使用のために、前記細胞毒性剤が化学的に前記抗体に結合していることを特徴とする。
【0212】
特に好ましい実施形態では、前記組成物は、前記細胞毒性/細胞増殖抑制剤が、紡錘体阻害剤または安定剤、好ましくはビノレルビンおよび/またはビンフルニンおよび/またはビンクリスチンから選択されることを特徴とする。
【0213】
前記細胞毒性剤と本発明による抗体の間の結合を促進するため、ポリ(アルキレン)グリコール、ポリエチレングリコールまたはアミノ酸のような2つの化合物の間に結合するように導入することができるスペーサー分子、または、もう一つの実施形態態様では、前記抗体と反応することができる機能を導入した前記細胞毒性剤の活性誘導体を用いることができる。これらの結合技術は当業者に周知であり、本明細書では更に詳細には説明しない。
【0214】
他のEGFR阻害剤としては、モノクローナル抗体C225および抗EGFR22Mab(ImClone Systems Incorporated)、ABX−EGF(Abgenix/Cell Genesys)、EMD−7200(Merck KgaA)または化合物ZD−1834、ZD−1838およびZD−1839(Astra Zeneca)、PKI−166(Novartis)、PKI−166/CGP−75166(Novartis)、PTK 787(Novartis)、CP 701(Cephalon)、フルノミド(Pharmacia/Sugen)、CI−1033(Warner Lambert Parke Davis)、CI−1033/PD 183、805(Warner Lambert Parke Davis)、CL−387、785(Wyeth-Ayerst)、BBR−1611(Boehringer Mannheim GMBH/Roche)、Naamidine A(Bristol-board Myers Squibb)、RC−3940−II(Pharmacia)、BIBX−1382(Boehringer Ingelheim)、OLX−103(Merck & Co)、VRCTC−310(Ventech Research)、EGF融合毒素(Seragen Inc.)、DAB−389(Seragen/Lilgand)、ZM−252808(Imperial Cancer Research Fund)、RG−50864(INSERM)、LFM−A12(Parker Hughes Center Cancer)、WHI−P97(Parker Hughes Center Cancer)、GW−282974(Glaxo)、KT−8391(Kyowa Hakko)または「EGFRワクチン」(York Medical/Centro of Immunologia Molecular)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
本発明のもう一つの態様は、前記抗体、またはその誘導化合物または機能的断片の少なくとも1つが細胞毒素および/または放射性同位体と配合または接合していることを特徴とする、組成物に関する。
【0216】
好ましくは、前記毒素または前記放射性同位体は、腫瘍細胞の成長または増殖を妨げ、特に前記腫瘍細胞を完全に不活性化することができる。
【0217】
また好ましくは、前記毒素は、腸内細菌毒素、特にシュードモナス外毒素Aである。
【0218】
治療抗体と優先的に結合した放射性同位体は、γ線、好ましくはヨウ素131、イットリウム90、金199、パラジウム100、銅67、ビスマス217およびアンチモン211を放射する放射性同位体である。αおよびβ線を放射する放射性同位体も、理論的には用いることができる。
【0219】
「本発明の抗体、またはその機能的断片の少なくとも1つと結合した毒素または放射性同位体」は、結合する分子を導入しまたはせずに、前記毒素または前記放射性同位体を少なくとも1つの抗体に、特に2つの化合物の間の共有結合によって結合することができる任意の手段を表す。
【0220】
接合体の要素のすべてまたは部分を化学的(共有)、静電的または非共有結合させる薬剤の例としては、詳細には、ベンゾキノン、カルボジイミド、更に詳細には、EDC(l−エチル−3−[3−ジメチル−アミノプロピル]−カルボジイミド−塩酸)、ジマレイミド、ジチオビス−ニトロ安息香酸(DTNB)、N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)、1以上の基を有し、1以上のフェニルアジド(phenyaside)基を有し、紫外(UV)線と反応する架橋剤、最も好ましくはN−[4−(アジドサリチルアミノ)ブチル]−3’−(2’−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド(APDP)、N−スクシンイミド−イル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)および6−ヒドラジノ−ニコチンアミド(HYNIC)が挙げられる。
【0221】
特に放射性同位体についてのもう一つの結合形態は、二官能化イオンキレート化剤の使用からなることができる。
【0222】
このようなキレート化剤の例としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)から誘導されるキレート化剤であって、金属、特に放射性金属を免疫グロブリンと結合させる目的で開発されたものが挙げられる。従って、DTPAおよびその誘導体は、リガンド−金属錯体の安定性と剛性を増加させるような方法で、炭素鎖上で様々な基によって置換することができる(Krejcarek et al., 1977; Brechbiel et al., 1991; Gansow, 1991;米国特許第4,831,175号公報)。
【0223】
例えば、その遊離形態または金属イオンとの錯体で薬剤および生物学において広く長期間用いられてきたDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)およびその誘導体は、癌治療のための放射性免疫接合体の開発を目的とする抗体のような治療または診断上重要なタンパク質とカップリングすることができる金属イオンと安定なキレートを形成する注目すべき特徴を示す(Meases et al., 1984; Gansow et al., 1990)。
【0224】
また好ましくは、前記接合体を形成する本発明の少なくとも1つの抗体は、その機能的断片、特にscFv断片のようなそれらのFc部分を喪失した断片から選択される。
【0225】
本発明は、癌の予防または治療を目的とする薬剤を調製するための組成物の使用をも含んでなる。
【0226】
本発明は、腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤の調製のための、本発明による抗体、またはその誘導化合物または機能的断片、好ましくはヒト化したもの、および/または組成物の使用にも関する。一般に、本発明は、癌の予防または治療のための薬剤の調製のための、抗体、またはその誘導化合物または機能的断片、好ましくはヒト化したもの、および/または組成物の使用に関する。
【0227】
予防および/または治療することができる好ましい癌としては、前立腺癌、骨肉腫、肺癌、乳癌、子宮内膜癌、結腸癌、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵臓癌、または任意の他の癌が挙げられる。
【0228】
本発明は、細胞におけるCXCR4活性を調節する薬剤の調製のために、上記の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片、および/または組成物の使用にも関する。
【0229】
本発明のもう一つの態様は、CXCR4発現レベルに関する疾患の診断方法、好ましくはインビトロでの診断方法における上記抗体の使用に関する。好ましくは、前記の診断方法における前記CXCR4タンパク質関連疾患は癌である。
【0230】
従って、本発明の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片を、インビトロでの生物試料におけるCXCR4タンパク質の検出および/または定量の方法、特にこのタンパク質の異常発現に関連した癌などの疾患の診断の方法であって、
a)生物試料を本発明による抗体、またはその誘導化合物または機能的断片と接触させ、
b)形成される可能性がある抗原−抗体複合体を明らかにする
段階を含んでなる、前記方法に用いることができる。
【0231】
従って、本発明は、下記の要素:
a)本発明のポリクローナルまたはモノクローナル抗体、
b)場合によっては、免疫反応に好都合な媒体を構成する試薬、
c)場合によっては、免疫反応によって産生される抗原−抗体複合体を明らかにする試薬
を含んでなる、上記方法の実施のためのキットまたは付属品も含んでなる。
【0232】
好都合には、抗体またはその機能的断片を、支持体、特にタンパク質チップ上に固定することができる。1つのこのようなタンパク質チップは、本発明の目的である。
【0233】
好都合には、タンパク質チップを、生物試料のCXCR4タンパク質の検出および/または定量に必要なキットまたは付属品に用いることができる。
【0234】
「生物試料」という用語は、本発明では、生体から採取される試料(特に、哺乳類、特にヒトから採取される血液、組織、臓器、または他の試料)、またはこのようなCXCR4タンパク質を含むと思われる任意の試料(例えば、必要ならば、形質転換した細胞の試料)に関する。
【0235】
前記抗体、またはその機能的断片は、検出可能および/または定量可能なシグナルを得るために、免疫接合体または標識抗体の形態であることができる。
【0236】
本発明の標識抗体、またはその機能的断片としては、例えば、抗体接合体(免疫接合体)が挙げられ、これは、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、α−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースアミラーゼ、炭酸脱水酵素、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼまたはグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼのような酵素、またはビオチン、ジゴキシゲニンまたは5−ブロモ−デオキシウリジン(desoxyuridine)のような分子によって結合することができる。蛍光標識も、本発明の抗体、またはその機能的断片と結合することができ、特にフルオレセインおよびその誘導体、フルオロクロム、ローダミンおよびその誘導体、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ダンシル、ウンベリフェロンなどが挙げられる。このような接合体において、本発明の抗体、またはその機能的断片は、当業者に知られている方法によって調製することができる。それらは、酵素または蛍光標識と、直接、ポリアルデヒド、グルタルアルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)のようなスペーサー基または結合基を介して、または治療接合体について上記したもののような結合剤の存在下にて結合することができる。フルオレセイン標識を有する接合体は、イソチオシアネートとの反応によって調製することができる。
【0237】
他の接合体は、ルミノールおよびジオキセタンのような化学発光標識、ルシフェラーゼおよびルシフェリンのような生物発光標識、またはヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素126、ヨウ素133、臭素77、テクネチウム99m、インジウム111、インジウム113m、ガリウム67、ガリウム68、ルテニウム95、ルテニウム97、ルテニウム103、ルテニウム105、水銀107、水銀203、レニウム99m、レニウム101、レニウム105、スカンジウム47、テルル121m、テルル122m、テルル125m、ツリウム165、ツリウム167、ツリウム168、フッ素18、イットリウム199およびヨウ素131のような放射性標識が挙げられる。放射性同位体を抗体と、直接にまたは上記EDTAまたはDTPAのようなキレート化剤を介して結合させるための当業者に知られている既成の方法を、診断用放射性同位体に用いることができる。従って、クロラミン−T法による[I125]Naの標識(Hunter W.M. and Greenwood F. C.(1962) Nature 194:495)、Crockford et al.(米国特許第4,424,200号公報)に記載のテクネチウム99mの標識またはHnatowich(米国特許第4,479,930号公報)に記載のDTPAを介する結合が挙げられる。
【0238】
本発明は、CXCR4を発現または過剰発現する細胞に生物活性を有する化合物を特異的にターゲッティングするための薬剤を調製する目的での本発明による抗体の使用にも関する。
【0239】
本発明の説明の意味において、「生物活性化合物」は、細胞活性、特に成長、増殖、転写および遺伝子翻訳を調節する、特に阻害することができる任意の化合物である。
【0240】
本発明は、本発明による抗体、またはその機能的断片であって、好ましくは標識され、特に放射性標識したものを含むインビボでの診断試薬、および医療画像化におけるその使用であって、特にCXCR4を発現または過剰発現する細胞に関係した癌の検出を目的とするものにも関する。
【0241】
本発明は、薬剤として用いられる本発明による配合物としての組成物または抗−CXCR4/毒素接合体または放射性同位体にも関する。
【0242】
好ましくは、配合物としての前記組成物または前記接合体は、賦形剤および/または薬学ビヒクルが補足される。
【0243】
本発明の説明において、「薬ビヒクル」は、二次的反応を引き起こさず、かつ例えば活性化合物の投与を容易にし、生体でのその寿命および/または有効性を増加させ、溶液でのその溶解性を増加させ、またはその保管を向上させる医薬組成物に入る化合物または化合物の配合物を意味する。このような薬学キャリヤーは周知であり、選択された活性化合物の性質および投与経路に準じて当業者によって適合させるであろう。
【0244】
好ましくは、このような化合物は、全身経路、特に静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下または経口経路によって投与される。更に好ましくは、本発明による抗体を含む組成物は、等しい時間間隔を置いて数回投与される。
【0245】
それらの投与経路、投薬計画、および最適剤形(optimal galenic forms)は、患者に適する治療法を確立するときに一般に考慮される基準、例えば患者の年齢または体重、患者の総体的状態の重度、患者の治療に対する耐性および体験した副作用に準じて決定することができる。
【0246】
従って、本発明は、CXCR4を発現または過剰発現する細胞に対して生物活性を有する化合物を特異的にターゲッティングするための薬剤を調製するための、抗体、またはその機能的断片の1つの使用に関する。
【0247】
本発明の他の特徴および利点は、実施例と以下に説明が示される図を用いる説明において更に明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】図1Aおよび1Bは、それぞれ、qPCR分析による癌細胞でのCXCR4およびCXCR2の発現を示す。
【図2】図2は、FACS分析による癌細胞でのCXCR4およびCXCR2タンパク質発現を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、野生型ヒトCXCR4を安定的に発現するCHO−K1細胞の細胞膜における未標識SDF−1(図3A)および414H5および515H7Mab(図3B)による特異的[125I]SDF1結合の競合を示す(T:総結合;NS:非特異的結合)。
【図4】図4Aおよび4Bは、NIH−3T3細胞で安定的に発現した野生型CXCR4受容体の[35S]GTPγS結合応答を観察することによる、414H5Mab(図4A)および515H7Mab(図4B)によるGタンパク質活性化の調節を示す。
【図5】図5は、SDF−1(10および100nM)で刺激したHeLaヒト腫瘍細胞の[35S]GTPγS結合応答を観察することによる、抗−CXCR4Mab 414H5および515H7によるGタンパク質活性化の調節を示す。
【図6】図6A〜6Fは、HEK293細胞における生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法を用いるSDF−1および414H5および515H7Mabによる様々な相互作用パートナーとのCXCR4受容体との会合の調節を示す(図6Aおよび6B:CXCR4:CXCR4ホモ二量体化、図6Cおよび6D:CXCR2:CXCR4ヘテロ二量体化、および図6Eおよび6F:β−アレスチンのCXCR4媒介性動員)。
【図7】図7Aおよび7Bは、CXCR4受容体を安定的に発現するNIH3T3細胞におけるSDF−1および414H5および515H7Mabによるホルスコリン刺激cAMP産生の阻害を示す。
【図8】図8は、CHO−K1細胞で安定的に発現した構成的活性変異体Asn119SerCXCR4受容体における[35S]GTPyS結合応答を観察することによる、抗−CXCR4Mab 414H5および515H7によるGタンパク質活性化の調節を示す。
【図9】図9は、インビトロでのMab414H5によるSDF−1誘導Hela細胞増殖の阻害を表す。
【図10】図10Aおよび10Bは、インビトロでのCXCR4Mab414H5(図10A)およびMab515H7(図10B)によるSDF−1誘導U937細胞遊走の阻害を示す。
【図11】図11は、Nod/Scidマウスでの抗−CXCR4Mab414H5(A)およびMab515H7(B)によるMDA−MB−231異種移植腫瘍増殖の阻害を示す。
【図12】図12は、U937Nod/Scidマウス生存モデルにおける抗−CXCR4Mab414H5活性を示す。
【図13】図13A〜13Cは、CHO−CXCR4細胞(図13A)、MDA−MB−231(図13B)およびU937癌細胞(図13C)における抗−CXCR4Mab515H7によるSDF−1誘導カルシウム放出阻害を示す。
【図14】図14は、414H5によるNod/ScidマウスにおけるT細胞KARPAS299異種移植腫瘍の阻害を示す。
【図15】図15は、U937Nod/Scidマウス生存モデルにおけるマウス抗−CXCR4Mabm515H7の活性を示す。
【図16】図16は、Nod/ScidマウスでのT細胞KARPAS299異種移植腫瘍増殖の阻害におけるマウス抗−CXCR4Mabm515H7の活性を示す。
【図17】図17は、野生型ヒトCXCR4を安定的に発現するCHO−K1細胞の細胞膜でのマウスm414H5およびm515H7MabおよびキメラMab c414H5およびc515H7による特異的[125I]SDF1結合の競合を示す(T:総結合;NS:非特異的結合)。
【図18】図18は、SDF−1(10nM)で刺激したNIH−3T3細胞で安定的に発現した野生型CXCR4受容体での[35S]GTPγS結合応答を観察することによるマウスm414H5およびm515H7MabおよびキメラMab c414H5およびc515H7によるGタンパク質活性化の調節を示す。
【図19】図19は、SDF−1(10nM)で刺激したHeLaヒト腫瘍細胞での[35S]GTPγS結合応答を観察することによる、抗−CXCR4マウスm414H5およびm515H7MabおよびキメラMab c414H5およびc515H7によるGタンパク質活性化の調節を示す。
【図20】図20A〜20Cは、HEK293細胞における生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法を用いるSDF−1およびm414H5、c414H5、m515H7およびc515H7Mabによる様々な相互作用パートナーとのCXCR4受容体会合の調節を示す(図20A:CXCR4:CXCR4ホモ二量体化、図20B:CXCR2:CXCR4ヘテロ−二量体化、および図20C:β−アレスチンのCXCR4媒介性動員)。
【図21】図21Aおよび21Bは、CHO−CXCR4細胞(図21A)およびU937細胞(図21B)におけるSDF−1誘導カルシウム放出の阻害を示す。
【図22】図22Aおよび22Bは、インビトロでのCXCR4Mab m414H5およびc414H5(図22A)およびMab m515H7およびc515H7(図22B)によるSDF−1誘導U937細胞遊走の阻害を示す。
【図23】図23は、U937Nod/Scidマウス生存モデルにおける抗−CXCR4キメラMab c414H5およびc515H7活性を示す。
【実施例】
【0249】
例1:癌細胞でのCXCR4およびCXCR2の発現
Q−PCR分析:
様々な癌細胞系におけるCXCR4およびCXCR2の相対発現を定量するため、リアルタイムRT−PCRを用いた。
【0250】
RNA試料は、RNeasy MiniまたはMidi Protocols(Qiagen Corporation, 仏国)を用いて様々な細胞系から抽出した。次いで、RNA試料をExperion自動電気泳動システム(BIO-RAD Corporation, 仏国)を用いて泳動し、良好な品質/完全性を示した。それぞれのRNA試料1μgを、iScript cDNA Synthesisキット(BIO-RAD Corporation, 仏国)を用いてcDNA鋳型に転換した。cDNAレベルを、CXCR2についてはTaqManプローブまたはCXCR4についてはSYBERGreenを用いるqPCRによって定量した。試料の比較には規格化が必要であったので、内部参照RPL0を導入した。TaqManプローブ(CXCR2について用いた)は、5’FAMレポーター標識と3’TAMRAクエンチャー基を有していた。PCR酵素を、50°Cで2分間および95°Cで10分間加熱して活性化した。50μlの総容積中にcDNA鋳型(希釈倍率1/20)5μl、1xqPCR Mastermix(TaqMan Universal PCR Master Mix, Applied Biosystems corporation, Branchburg New Jersey, 米国)、それぞれのプライマー50〜900nM、および50〜100nMプローブを含むPCRミックスで、40または45サイクル、95°Cで15秒間および62°Cで1分間の二段階処理を用いた。総ての反応は、iCycler装置(BIO-RAD Corporation)を用いて行った。Q−PCRにより、サイクル閾値(Ct)を決定した。Ct値が小さいほど、供試遺伝子が多量に発現する。ヒトリボソームタンパク質、ラージ、P0についてのプライマーおよびプローブは、
フォワードプライマー:5’−GAAACTCTGCATTCTCGCTTCCTG−3’(配列番号32)、
リバースプライマー:5’−AGGACTCGTTTGTACCCGTTGA−3’(配列番号33)、
プローブ:5−(FAM)−TGCAGATTGGCTACCCAACTGTTGCA−(TAMRA)−3’(配列番号34)
であった。
【0251】
ヒトCXCR4(ケモカイン受容体4)のプライマーは、
フォワードプライマー:5’−CTCCTTCATCCTCCTGGAAATC−3’(配列番号35)、
リバースプライマー:5’−CCAAGGAAAGCATAGAGGATGG−3’(配列番号36)
であった。
【0252】
ヒトCXCR2(ケモカイン受容体2)についてのプライマーとプローブは、
フォワードプライマー:5’−GTGGTCATTATCTATGCCCTGG−3’(配列番号37)、
リバースプライマー:5’−CGACCCTGCTGTATAAGATGAC−3’(配列番号38)、
プローブ:5−(FAM)−TATTCCTGCTGAGCCTGCTGGGAAA−(TAMRA)−3’(配列番号39)
であった。
【0253】
この比較研究では、2個の遺伝子[供試遺伝子(CXCR4またはCXCR2)およびRPL0])の発現を、供試細胞系および参照細胞系の異なる2種類の試料で定量した。参照細胞系は、最低発現の定量した遺伝子を含む細胞系に相当した。比較遺伝子発現は、下式:
相対的遺伝子発現=(1+E遺伝子−ΔCt(1)/(1+ERPL0−ΔCt(2)
遺伝子=定量した遺伝子のプライマー/プローブを用いるPCR効率
RPL0=RPL0プライマー/プローブを用いるPCR効率
Ct=サイクル閾値
ΔCt(l)=Ct遺伝子(供試細胞系)−Ct遺伝子(参照細胞系)
ΔCt(2)=CtRPL0(供試細胞系)−CtRPL0(参照細胞系)
を用いて計算した。
【0254】
それぞれのPCRシリーズについて、相対遺伝子量の値を計算し、癌細胞系を、最高からネガティブまでの発現レベルを考慮して群に分類した。すべてのデーターを、図1Aおよび1Bに示す。試験した総ての癌細胞系は、CXCR2についてのDU145およびU−87MGを除き、CXCR4(図1A)およびCXCR2(図1B)を発現した。
【0255】
FACS分析:
MDA−MB−231、PC3およびU937癌細胞系を透過性化した後、抗−CXCR4モノクローナル抗体[44717(R&D Systems)対そのアイソタイプコントロールIgG2b(SIGMA)]10μg/mlまたは抗−CXCR2モノクローナル抗体(抗h−CXCR2、クローン48311,R&D Systems,Mab331対そのアイソタイプコントロールIgG2a)10μg/mlとインキュベーションした。細胞を、次に1%BSA/PBS/0.01%NaNで洗浄した。次いで、Alexa標識した二次抗体を細胞に加え、4°Cで20分間インキュベーションした。細胞を、次に2回再度洗浄した。2回目の洗浄の後、FACS分析を行った。これらの結合研究の結果を、図2に示す。従って、MDA−MB−231、PC3およびU937のような腫瘍細胞は、CXCR4およびCXCR2タンパク質を両方とも発現した。
【0256】
例2:ヒトCXCR4に対するモノクローナル抗体(Mab)の産生
CXCR4に対するモノクローナル抗体を産生させるため、Balb/cマウスを、組換えNIH3T3−CXCR4細胞および/またはCXCR4細胞外N末端およびループに対応するペプチドで免疫した。最初の免疫時に6〜16週齢のマウスを、完全フロイントアジュバント中の抗原で1回皮下(s.c.)免疫した後、不完全フロイントのアジュバント中の抗原で2〜6回皮下免疫した。免疫応答を、後眼窩採血によって観察した。血清をELISAによってスクリーニングし(後記)、高い力価の抗−CXCR4抗体を有するマウスを用いて融合した。マウスに抗原を静脈内投与で追加免疫し、2日後に屠殺して、脾臓を取り出した。
【0257】
ELISA
抗−CXCR4抗体を産生するマウスを選択するため、免疫化マウスの血清をELISAによって試験した。簡単に説明すれば、マイクロタイタープレートを、5μg当量ペプチド/mlでBSAに接合した精製した[1−41]N末端ペプチドでコーティングし、100μl/ウェルを4°Cで一晩インキュベーションした後、250μl/ウェルの0.5%ゼラチン/PBSでブロックした。CXCR4を免疫したマウスからの血漿の希釈物をそれぞれのウェルに加え、37°Cで2時間インキュベーションした。プレートをPBSで洗浄した後、HRP(Jackson Laboratories)に接合したヤギ抗−マウスIgG抗体と37°Cにて1時間インキュベーションした。洗浄後、プレートをTMB基質で展開し、100μl/ウェルの1MHSOを加えて5分後に反応を停止した。最高力価の抗−CXCR4抗体を発現したマウスを用いて、抗体を産生した。
【0258】
CXCR4に対するMabを産生するハイブリドーマの生成
最高力価の抗−CXCR4抗体を発現したBalb/cマウスから単離したマウス脾臓細胞を、マウス骨髄腫細胞系Sp2/OにPEGを用いて融合した。細胞を、約1x10/ウェルでマイクロタイタープレートにて培養した後、ウルトラ(ultra)培養培地+2mML−グルタミン+1mMピルビン酸ナトリウム+1xHATを含む選択培地で2週間培養した。次いで、ウェルを抗−CXCR4モノクローナルIgG抗体についてELISAによってスクリーニングした。次に、抗体を分泌するハイブリドーマを、限定希釈によって少なくとも2回サブクローニングし、インビトロで培養し、抗体を産生して更に分析した。
【0259】
例3:抗−CXCR4Mab 414H5および515H7の結合特異性および癌細胞系認識のFACS分析による特性決定
この実験では、抗−CXCR4Mab 414H5および515H7のヒトCXCR4に対する特異的結合を、FACS分析によって検討した。
【0260】
NIH3T3、NIH3T3−hCXCR4トランスフェクション細胞、MDA−MB−231、HelaおよびU937癌細胞系を、10μg/mlのモノクローナル抗体414H5および515H7でインキュベーションした。次に、細胞を、1%BSA/PBS/0.01%NaN3で洗浄した。次いで、Alexa標識した二次抗体を細胞に加え、4°Cで20分間インキュベーションした。次いで、細胞を2回再度洗浄した。2回目の洗浄の後、FACS分析を行った。これらの結合研究を、下表4に示すが、これは、[FACSによって得られた平均蛍光強度(MFI)]であって、抗−CXCR4Mab 414H5および515H7がヒトCXCR4−NIH3T3トランスフェクション細胞系に特異的に結合したが、親NIH3T3細胞では認識されないことを示している。これらのMabは、ヒト癌細胞系、例えば、MDA−MB−231乳癌細胞、U937前骨髄球癌細胞およびHela子宮頸部癌細胞を認識することもできた。
【0261】
抗−CXCR4Mab 414H5および515H7はNIH3T3−hCXCR4トランスフェクタントを認識したが、親NIH3T3野生型細胞は認識しなかった。Mab 414H5および515H7は、癌細胞系を認識することもできた。
【0262】
【表4】

【0263】
例4:ヒトCXCR4受容体を安定的に発現するCHO−K1膜における[125I]SDF−1についての抗−CXCR4Mab 414H5および515H7の競合結合
この分析により、414H5および515H7 Mabの放射性標識した[125I]SDF−1のヒトCXCR4受容体へのオルソステリックまたはアロステリック結合部位のいずれかにおける結合について競合する能力を評価することができる。
【0264】
ヒトCXCR4受容体を安定的かつ構成的に発現するCHO−K1細胞は、ナイーブCHO−K1細胞(ATCC CCL−61)と、ヒトCXCR4受容体の全コード配列(参照配列NM 003467)を有する哺乳類発現ベクターとのトランスフェクションによって得られた。細胞を、完全培養培地[5%ウシ胎児血清(FCS)およびゲネチシン500μg/mlを補足したDMEM−Ham’sF12]で増殖させた。放射性リガンド結合実験を、ライシスバッファー[Hepes20mM、pH7.4、NaCl150mM]中でCHO/CXCR4細胞を機械的に破砕した後、遠心分離(10000g、15分間)して得た細胞膜で行った。[125I]SDF−1結合(比活性:1500Ci/mmol)は、SPA法(シンチレーション近接分析−GE Healthcare)を用いて行った。簡単に説明すると、細胞膜(30μg/ウェル)を、結合緩衝液[Hepes20mM、pH7.4、CaCl1mM、MgCl5mM、NaCl150mM、BSA1%]中で評価を行う化合物(SDF−1またはmAb)、放射性リガンド(1nM)および最後にSPA−WGA−PVTビーズ(7.3mg/ウェル)と共にインキュベーションした。25°Cで1時間後に結合平衡に達した。遠心分離[1000g、10分間]した後、放射能をシンチレーションカウンター(TopCount,Perkin Elmer)で測定した。非特異的結合は、10μMの未標識SDF−1の存在下にて評価した。
【0265】
未標識SDF−1は、7.75±0.27nM(n=4)のpKi値(IC50=特異的[125I]SDF−1結合の50%阻害を生じるリガンド濃度)で、[125I]SDF−1結合を用量依存的に阻害した(図3A)。同じ実験条件下では、本発明者らの抗−CXCR4Mab(100nM)は、[125I]SDF−1結合について下記の順位序列の競合効率で競合した([125I]SDF−1の阻害率):515H7(64±3%)414H5(43±4%)(図3B)。
【0266】
例5:抗−CXCR4Mab 414H5and515H7による野生型CXCR4受容体を発現する細胞膜での[35S]GTPγS結合の調節
この機能分析により、野生型ヒトCXCR4受容体を介するGタンパク質活性化およびCXCR4リガンドおよび414H5および515H7mAbによるその調節を観察することができる。
【0267】
野生型CXCR4受容体を安定的にかつ構成的に発現するNIH−3T3細胞は、CHO−K1細胞についての上記例で記載した方法によって得た。HeLa(ヒト子宮頸部癌)細胞を、完全培養培地[10%FCS、1%L−グルタミン、2μ重炭酸ナトリウムを補足したEMEM]で増殖させた。[35S]GTPγS結合は、ライシスバッファー[Hepes20mM、pH7.4、NaCl150mM]中で機械的に破砕し、更に遠心分離(10000g、15分間)して得た細胞膜で行った。[35S]GTPγS(比活性:1000Ci/mmol)の組込みおよび検出は、SPA法(シンチレーション近接分析−GE Healthcare)を用いて行った。簡単に説明すれば、細胞膜(10μg/ウェル)を、結合緩衝液[Hepes20mM、GDP3μM、MgCl10mM、NaCl100mM、EDTA1mM、pH=7.4]中で評価を行う化合物(目的のSDF−1またはMAb)、[35S]GTPγS(0.2〜0.4nM)、および最後にSPA−WGA−PVTビーズ(7.3mg/ウェル)と共にインキュベーションした。結合反応は、25°Cで1時間行った。遠心分離[1000g、10分間]の後、放射能の数値をシンチレーションカウンター(TopCount,PerkinElmer)で測定した。拮抗剤の効果を、Cheng Prussofの式:
KB=[拮抗剤濃度]/{(EC50’/EC50)−l}
(式中、EC50およびEC50’は、それぞれmAbの非存在下および存在下でのSDF−1の効能である)
を適用することによって計算した。
【0268】
CXCR4受容体によるGタンパク質活性化の結果として、SDF−1は、[35S]GTPγS結合を用量依存的に増加させた。[35S]GTPyS結合の最大刺激は、HeLaおよびNIH3T3/CXCR4細胞膜について基底[35S]GTPγS結合に対しそれぞれ167%および320%である。SDF−1の効能は両細胞系について同様であり、41.3±9.7nMに相当した(図4A〜4B)。これらの実験条件下で、NIH3T3/CXCR4細胞で測定した414H5および515H7Mabの拮抗剤の効能は、それぞれ51nMおよび15nMであった。同様な拮抗剤の有効性が、HeLa細胞について観察された(図5)。
【0269】
例6:CXCR4と様々な相互作用パートナーの会合:ホモおよびヘテロ二量体化、生物発光共鳴エネルギー移動法(BRET)によるβ−アレスチンの動員、およびこれらの二量体に対する414H5および515H7Mabの影響
この機能分析により、CXCR4ホモ二量体およびCXCR2/CXCR4ヘテロ−二量体形成並びにβ−アレスチン−2シグナル伝達タンパク質の動員のレベルでCXCR4受容体に結合するSDF−1および/または414H5および515H7Mabで誘導されるコンホメーション変化を評価することができる。
【0270】
検討した相互作用パートナーのそれぞれについての発現ベクターを、通常の分子生物学の手法を適用することによって対応する色素(Renilla reniformisルシフェラーゼ、Rluc、および黄色蛍光タンパク質、YFP)との融合タンパク質として構築した。BRET実験を行う2日前に、HEK293細胞を、対応するBRETパートナー:CXCR4ホモ二量体化の検討のための[CXCR4/Rluc+CXCR4/YFP]、CXCR4およびCXCR2ヘテロ−二量体化の検討のための[CXCR4/Rluc+CXCR2:YFP]、およびβ−アレスチン−2のCXCR4媒介性動員の検討のための[CXCR4/Rluc+β−arr2:YFP]をコードする発現ベクターを用いて一過的にトランスフェクションした。翌日、細胞を、完全培養培地[10%FBSを補足したDMEM]中でポリ−リシンをプレコートした白色96MWプレートに分注した。細胞を、最初にCO5%で37°Cにて培養し、細胞をプレートに接着させた。次いで、細胞を、200μlDMEM/ウェルで一晩飢餓状態に置いた。BRET実験の直前に、DMEMを除き、細胞をPBSで速やかに洗浄した。次いで、細胞を抗体の存在下または非存在下にてPBS中で37°Cで10分間インキュベーションした後、5μMコエレンテラジンHを300nMSDF−1と共にまたはなしで追加し、最終容積を50μlとした。37°Cで更に10分間インキュベーションした後、485nmおよび530nmでの発光取得(light-emission acquisition)をMithras LB940マルチラベルリーダー(Berthold)を用いて開始した(1s/波長/ウェルで、室温にて15回反復)。
【0271】
BRET比の計算は、以前に報告されている方法で行った(Angers et al.,2000):[(発光530nm)−(発光485nm)xCf]/(発光485nm
(式中、同一実験条件下でRluc融合タンパク質のみを発現する細胞については、Cf=(発光530nm)/(発光485nm)である)。この式の簡略化は、BRET比は、2つのBRETパートナーが存在するときに得られる比530/485nmに対応し、Rlucに融合したパートナーのみが分析で存在するときに同じ実験条件下で得られる比530/485nmによって補正されることを示している。判読しやすくするため、結果はミリBRET単位(mBU)で表され、mBUは、BRET比に1000を乗じたものに相当する。
【0272】
SDF1(300nM)は、CXCR4受容体に融合したアダプターおよび受容体タンパク質の空間的近接から生じるBRETシグナルを約20%増加させ、これは、CXCR4/CXCR4ホモ二量体形成、または以前に存在していた二量体のコンホメーション変化を示していると思われる(図6Aおよび6B)。興味深いことには、SDF1(300nM)は、CXCR2およびCXCR4に融合したアダプターおよび受容体タンパク質の空間的近接から生じるBRETシグナルを約24%減少させ、同様にCXCR2/CXCR4ヘテロ二量体形成または以前に存在していた二量体のコンホメーション変化を示していると思われる(図6Cおよび6D)。この後者の場合には、CXCR4/CXCR2のSDF−1によって活性化したコンホメーションは、BRETエネルギー移動には余り好ましくないと思われる。いずれの場合にも、414H5および515H7Mabは、CXCR4ホモ二量体のSDF−1誘導コンホメーション変化を調節することができ(414H5についてSDF−1誘導BRETの阻害は63%増加、515H7についてSDF−1誘導BRETの阻害は69%増加、それぞれ図6Aおよび6B)、同様に、CXCR2/CXCR4ヘテロ−二量体形成を調節することができる(414H5についてSDF−1誘導BRETの阻害は50%減少、S515H7についてDF−1誘導BRETの阻害は90%減少、それぞれ図6Cおよび6D)。414H5および515H7Mabもそれら自身で、それぞれCXCR4/CXCR4およびCXCR2/CXCR4空間的近接を調節することができ、CXCR4/CXCR4ホモおよびCXCR2/CXCR4ヘテロ−二量体コンホメーションの両方に対する414H5および515H7Mabの影響を示している(図6A、6B、6Cおよび6D)。
【0273】
SDF−1(300nM)によるCXCR4活性化は、BRETシグナルが233%増大することによって示されるように、細胞内シグナル伝達分子β−アレスチンが大幅な動員を生じる(図6Eおよび6F)。この動員は、414H5および515H7Mabによって部分的に阻害され(414H5について約20%阻害および515H7について95%阻害、それぞれ、図6Eおよび6F)、シグナル伝達に対するMab 414H5および515H7の効果を示していた。
【0274】
例7:cAMP産生のCXCR4依存性阻害
この機能分析は、阻害性Gi/oタンパク質を介するアデニレートシクラーゼのレベルでのCXCR4受容体シグナル伝達を観察する目的で行った。
【0275】
cAMP LANCE処理(Perkin Elmer)を、供給業者によって詳細に説明されているように適用した。簡単に説明すれば、野生型CXCR4受容体を安定的にかつ構成的に発現するNIH3T3細胞を、上記の方法で得て、増殖させた。細胞をトリプシンフリー薬剤のVerseneを用いて集め、AlexaFluor結合抗cAMPMab(l/100倍希釈液)および化合物(ホルスコリン、SDF−1および/または414H5および515H7Mab)を含む溶液中に10個/mlの濃度で再懸濁した。室温で30分間インキュベーションした後、ユーロピウム−ストレプトアビジン(1/125倍希釈液)およびビオチン−cAMP(1/125倍希釈液)複合体を含む検出ミックスを加えた。室温で1時間インキュベーションした後、生成するFRETシグナルをMithras LB940(Berthold)マルチラベルリーダーで測定した。データーは、任意蛍光値としてまたはFK効果を差し引いたSDF−1に対する相対刺激として表される。
【0276】
ホルスコリン(FK)は、NIH3T3/CXCR4細胞で約0.3μMの効能でcAMP産生を用量依存的に刺激した(図7A)。SDF−1の同時存在では、細胞内cAMPレベルは、CXCR4受容体による阻害性Gi/oタンパク質活性化の結果として減少した。SDF−1の効能は、5.0±3.1nMであった(図7A)。414H5および515H7Mabは、SDF−1(100nM)のホルスコリン刺激効果を414H5については60%を上回るだけ、また515H7については80%を上回るだけ効率的に阻害した(図7B)。
【0277】
例8:Mab 414H5および515H7による活性変異体Asn119SerCXCR4受容体を構成的に発現する細胞膜における[35S]GTPγS結合の調節
この機能分析により、構成的活性変異体(CAM)Asn119SerCXCR4受容体を介するGタンパク質活性化を観察することができる(Zhang et al, 2002参照)。この高感度の分析により、固有活性に基づいてCXCR4リガンドを識別することができる(部分作動薬、サイレント拮抗薬または逆作動薬)。Zhangと協同研究者らによって以前に報告されているように、AMD3100またはT140のようなCXCR4リガンドは、CAM CXCR4受容体でそれぞれ部分作動薬および逆作動薬として作用した。このクラスの分子はCXCR4の活性および不活性状態のいずれについても同様の親和性を示さなければならないので、サイレント拮抗薬の同定は困難なことがある(Wurch et al., 1999)。
【0278】
CXCR4受容体のコード配列へのAsn119Ser変異の導入は、通常の分子生物学の手法を適用することによって行った(QuickChange site directed mutagenesis kit、 Stratagene、米国)。CAM CXCR4受容体を安定的かつ構成的に発現するCHO−K1細胞は、上記例に記載の方法で得た。[35S]GTPγS結合は、ライシスバッファー[Hepes20mM、pH7.4、NaCl150mM]で機械的に破砕し、更に遠心分離(10000g、15分間)して得た細胞膜で行った。[35S]GTPγS(比活性:1000Ci/mmol)の組込みは、SPA法(シンチレーション近接分析−GE Healthcare)を用いて行った。簡単に説明すれば、細胞膜(10μg/ウェル)を、結合緩衝液[Hepes20mM、GDP3μM、MgCl10mM、NaCl100mM、EDTA1mM、pH=7.4]中で評価を行う化合物(SDF−1またはmAb)、[35S]GTPγS(0.2〜0.4nM)および最後にSPA−WGA−PVTビーズ(7.3mg/ウェル)と共にインキュベーションした。結合反応は、25°Cで1時間行った。遠心分離[1000g、10分間]した後、放射能をシンチレーションカウンター(TopCount, Perkin Elmer)で測定した。
【0279】
SDF−1(100nM)は、[35S]GTPγS結合を130%刺激した。逆作動薬T140は、基底(−17%)およびSDF−1刺激(−159%)[35S]GTPγS結合の両方を阻害した。対照的に、414H5および515H7Mabは、CAM CXCR4ではサイレント拮抗薬として作用し、基底[35S]GTPγS結合を変更させなかったが(図8)、SDF−1誘導[35S]GTPγS結合を阻害した(図8)。
【0280】
例9:インビトロでのCXCR4Mab414H5によるSDF−1誘導Hela細胞増殖の阻害
ATCCからのHeLa細胞を、EMEM培地(Lonza Corporation. Venders.ベルギー)、10%FCS(SIGMA Corporation,St Louis,米国)、1%L−グルタミン(Invitrogen Corporation,スコットランド.英国)、2%重炭酸ナトリウム7.5%溶液(Invitrogen Corporation.スコットランド.英国)中で常法により培養した。細胞を、増殖分析3日前に継代し、コンフルエントになるようにした。
【0281】
SDF−1誘導Hela細胞増殖
HeLa細胞を、96−ウェル組織培養プレートに200μlの無血清培地(EMEM培地+1%L−グルタミン、2%重炭酸ナトリウム7.5%溶液)中1x10細胞/ウェルの密度で播種した。播種から24時間後、SDF−1の適当な希釈液をHeLa細胞に加えた。全部で76時間の培養後、細胞に0.25μCiの[H]チミジン(Amersham Biosciences AB,Uppsala,スウェーデン)を16時間加えた。DNAに組込まれた[H]チミジンの大きさを、液体シンチレーションカウンティングによって定量した。
【0282】
結果は、増殖指数=[細胞の平均cpm+SDF−1/細胞−SDF−1の平均cpm]として表した。
【0283】
HeLa細胞を、SDF−1(0〜1000ng/ml)と共にインキュベーションした。SDF−1は、インビトロでHeLa細胞増殖を1.5〜2倍に刺激した。最高かつ再現性のある増殖指数を得るためのSDF−1の濃度は、200ng/ml(25nM)であった。
【0284】
インビトロでのCXCR4414H5MabによるSDF−1誘導Hela細胞増殖の阻害
HeLa細胞を、96−ウェル組織培養プレートに200μlの無血清培地(EMEM培地+1% L−グルタミン、2%重炭酸ナトリウム7.5%溶液)中1x10細胞/ウェルの密度で播種した。播種の24時間後に、抗−CXCR4Mab414H5の適当な希釈液である希釈培地を、SDF−1の存在下または非存在下にて最終濃度200ng/ml(25nM)でHeLa細胞に3回加えた。全部で76時間の培養の後、細胞に0.25μCiの[H]チミジン(Amersham Biosciences AB,Uppsala,スウェーデン)を16時間加えた。DNAに組込まれた[H]チミジンの大きさを、液体シンチレーションカウンティングによって定量した。
【0285】
結果は、式:
Fa=[1−[Mab+SDF−1とインキュベーションした細胞の平均cpm/希釈培地+SDF−1とインキュベーションした細胞の平均cpm)]x100
を用いて計算した影響比(affected fraction;Fa)として表した。
【0286】
SDF−1誘導HeLa細胞増殖に対する抗−CXCR4Mab414H5のインビトロ効果を、特性決定した。HeLa細胞を、SDF−1(200ng/ml)を含むまたは含まず414H5Mabまたはコントロールのいずれかとインキュベーションした。SDF−1は、HeLa細胞のインビトロ増殖を刺激した(1.5〜2倍)。細胞播種の24時間後に、0〜1500nMの範囲のMabの連続2倍希釈液で細胞を処理することによって、414H5Mabの用量−応答曲線を得た。播種の76時間後に細胞増殖を評価したので、それぞれの試験条件はMabまたはコントロールへの48時間の暴露時間に対応する。結果は、上記のFa式を用いて影響比として表した。結果(図9に表した)は、CXCR4Mab414H5がSDF−1誘導Hela細胞増殖をインビトロで阻害することを示した。
【0287】
例10:SDF−1誘導U937細胞遊走に対する抗−CXCR4Mab 414H5および515H7の効果
遊走過程に対する抗−CXCR4モノクローナル抗体414H5および515H7の阻害効果を評価するため、2%FCSを補足したRPMI1640培地中の100 000個のU−937細胞を、ウェルの下室にSDF−1の存在下または非存在下にてかつ上室にMab 414H5および515H7の有りまたはなしで、遊走チャンバー(8−μm細孔径を有する24ウェルプレート)の上室に播種した。この試験では、マウスIgG2aおよびIgG2Bをアイソタイプコントロールとして導入した。播種の2時間後に、遊走細胞を計数した。414H5について図10Aおよび515H7について図10Bに示した結果は、予想したように、SDF−1がU−937細胞遊走の有意な増加を誘導することができることを示していた。IgG2アイソタイプコントロールとインキュベーションした細胞には、効果は全く見られなかった。対照的に、414H5および515H7 Mabとインキュベーションした細胞については、SDF−1誘導U937細胞遊走の有意かつ再現性のある減少が観察された:414H5Mabでは50%であり、515H7Mabでは80%を上回った。
【0288】
例11:Nod/ScidマウスにおけるMDA−MB−231異種移植腫瘍増殖の抗−CXCR4Mab414H5阻害
これらの実験の目的は、Nod/ScidマウスでのMDB−MB−231異種移植片の増殖を阻害する抗−CXCR4Mab 414H5および515H7の能力を評価することであった。
【0289】
ECACCからのMDA−MB−231細胞を、DMEM培地(Invitrogen Corporation,スコットランド,英国)、10%FCS(Sigma,St Louis, MD,米国)中で常法により培養した。細胞を、移植48時間前に継代し、対数増殖期となるようにした。10個のMDA−MB−231細胞を、PBS中で7週齢のNod/Scidマウス(Charles River,仏国)に移植した。移植から5日後に、腫瘍は測定可能となり(34mm<V<40mm)、動物を類似の腫瘍サイズの6尾ずつのマウス群に分けた。マウスに、それぞれMab414H5およびMab515H7 2mg/マウス負荷用量を腹腔内(i.p.)投与した。
【0290】
次いで、マウスに、Mab414H5 1mg/用量/マウスを週2回またはMab515H7 0.5mg/用量/マウスを週3回投与した。PBS群は、この実験ではコントロール群として導入した。腫瘍体積を週に2回測定し、式:π/6x長さx幅x高さによって計算した。統計分析は、Mann−Whitney検定を用いて、それぞれの測定時に行った。
【0291】
これらの実験では、治療中に死亡は観察されなかった。PBS群と比較して、415H5 Mab 1mg/用量または515H7 0.5mg/用量についてはD7およびD39(p0.002)の間で腫瘍増殖の有意な阻害があり、治療から5週間後の平均腫瘍体積は、それぞれMab 415H5および515H7についてPBSに対して82%および50%減少した(図11Aおよび11B)。
【0292】
例12:U937マウス生存モデルにおける抗−CXCR4Mab414H5活性
ATCCからのU937細胞を、RPMI1640培地、10%FCS、1%L−グルタミンで培養した。細胞を、移植2日前に継代し、対数増殖期となるようにした。10個のU937細胞を、雌のNOD/SCIDマウスにi.p.投与した。移植から2日後に、マウスに414H5mAb/マウス 2mg負荷用量を皮下注射(s.c.)処理した後、抗体/マウス1mgを週2回処理した。以前の検討では、PBSを投与したマウスとマウスIgGアイソタイプコントロールを投与したマウスとの間には、生存率の差は見られなかったことが示されているので、コントロールマウスにはPBS注射液を投与した。マウスの生存は、毎日観察した。
【0293】
図12に示した結果は、414H5Mabを投与したマウスは、寿命が劇的かつ有意に増加し、T/C%は約343となったことを示した。
【0294】
例13:細胞内カルシウム貯蔵のCXCR4受容体媒介性流動化
この機能分析は、小胞体からの細胞内貯蔵からカルシウム遊離を誘導するホスホリパーゼC経路の刺激によるCXCR4受容体シグナル伝達の観察を目的として行った。
【0295】
野生型CXCR4受容体を安定的かつ構成的に発現するCHO−K1細胞は、上記例で記載した方法で得た。MDA−MB−231(ヒト乳腺癌)およびU937(ヒトリンパ腫)細胞を、完全培養培地、それぞれ[10%FCSを補足したDMEM]および[10%FCS、20mMHEPES、1%非必須アミノ酸溶液、1%ピルビン酸ナトリウム、1%L−グルタミン、4.5g/1グルコースを補足したRPMI1640]で増殖させた。すべての細胞タイプは、黒色の96MWプレートに適当な培養培地中100,000個の細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を一晩飢餓状態にした後、実験を行った。細胞に、蛍光カルシウム色素(Fluo-4 No Wash, Invitrogen 米国)をローディングバッファー[HBSS1x、HEPES20mM、プロベネシド酸25mM]に溶解したものを37°Cで30分間、次いで25°Cで30分間装填した。SDF−1による刺激は、それぞれのウェルに直接投与することによって行った。拮抗実験のため、Mab溶液10μlを、ローディングバッファーにSDF−1の少なくとも10分前に直接加えた。動的蛍光測定は、マルチモード蛍光マイクロプレートリーダーMithras LB940(Berthold)で、下記の設定値:励起485nm、発光535nm、励起エネルギー10000任意単位で行った。それぞれのウェルの蛍光を、毎秒0.1秒およびSDF−1投与前は20秒間(基底シグナル)記録する。次いで、SDF−1 20μlを投与し、データー記録を2分間行う。それぞれの実験条件は、2回行う。それぞれのウェルの値を、最初に、基底蛍光および細胞なしのコントロールウェルによって発光された蛍光を差し引くことによって補正する。相対データーは、SDF−1(100nM)によって得られる最大刺激の割合として表される。
【0296】
SDF1(100nM)は、組換えCHO/CXCR4において細胞内カルシウムの速やかかつ強力な放出を誘導したが、ナイーブCHO−K1細胞では蛍光シグナルは検出されなかった。最大強度は、基底蛍光に対して>160%に達し、SDF−1で刺激したときには約30秒間観察され、同様な動的曲線がMDA−MB−231およびU−937のいずれでも見られたが(図13A、13B、13C)、SDF−1(100nM)による最大蛍光強度は低めであった(基底蛍光に対して130〜140%)。515H7抗体(133nM)は、3種類すべての検討した細胞系でSDF−1(100nM)誘導カルシウムシグナルを強力かつほぼ完全に阻害した。
【0297】
例14:Nod/ScidマウスにおけるT細胞KARPAS299異種移植腫瘍増殖の抗−CXCR4Mab414H5阻害
この実験の目的は、Nod/ScidマウスでのKARPAS299異種移植片の増殖を阻害する抗−CXCR4Mab 414H5および515H7の能力を評価することであった。
【0298】
ECACCからのKARPAS229細胞を、RPMI培地、1%L−Gluおよび10%FCS(Sigma,St Louis, MD, 米国)中で、常法により培養した。細胞を、移植48時間前に継代し、対数増殖期となるようにした。5x10個のKARPAS299細胞を、PBS中で7週齢のNod/Scidマウス(Charles River,仏国)に移植した。移植から5日後に、腫瘍は測定可能となり(32mm<V<49mm)、動物を類似の腫瘍サイズの6尾ずつのマウス群に分けた。マウスに、Mab414H5 2mg/マウス負荷用量をi.p.投与した。
【0299】
次いで、マウスに、Mab414H5 1mg/用量/マウスを週2回投与した。PBS群は、この実験ではコントロール群として導入した。腫瘍体積を週に2回測定し、式:π/6x長さx幅x高さによって計算した。統計分析は、Mann−Whitney検定を用いて、それぞれの測定時に行った。
【0300】
この実験では、治療中に死亡は観察されなかった。PBS群と比較して、414H5 Mab 1mg/用量についてはD7およびD33(p0.002)の間で腫瘍増殖の有意な阻害があり、治療から5週間後の平均腫瘍体積は、Mab414H5についてPBSに対して73%減少した(図14)。
【0301】
例15:U937マウス生存モデルにおける抗−CXCR4Mab515H7活性
ATCCからのU937細胞を、RPMI1640培地、10%FCS、1%L−グルタミンで培養した。細胞を、移植2日前に継代し、対数増殖期となるようにした。10個のU937細胞を、雌のNOD/SCIDマウスにi.p.投与した。移植から2日後に、マウスに515H7Mab/マウス2mgの負荷用量をs.c.投与した後、抗体/マウス1mgを週2回投与した。以前の検討では、PBSを投与したマウスとマウスIgGアイソタイプコントロールを投与したマウスとの間には生存率の差は見られなかったことが示されているので、コントロールマウスにはPBS注射液を投与した。マウスの生存は、毎日観察した。
【0302】
図15に示した結果は、515H7Mabを投与したマウスは、寿命が劇的かつ有意に増加し、T/C%は約280となったことを示した(図15)。
【0303】
例16:Nod/ScidマウスにおけるT細胞KARPAS299異種移植腫瘍増殖の抗−CXCR4Mab515H7阻害
この実験の目的は、Nod/ScidマウスにおけるKARPAS299異種移植片の増殖を阻害する抗−CXCR4Mab515H7の能力を評価することである。
【0304】
ECACCからのKARPAS299細胞を、RPMI培地、1%L−Gluおよび10%FCS(Sigma, St Louis, MD, 米国)中で、常法により培養した。細胞を、移植48時間前に継代し、対数増殖期となるようにした。5x10個のKARPAS299細胞を、PBS中で7週齢のNod/Scidマウス(Charles River, 仏国)に移植した。移植から5日後に、腫瘍は測定可能となり(32mm<V<49mm)、動物を類似の腫瘍サイズの6尾ずつのマウス群に分割した。マウスに、Mab515H7 2mg/マウス負荷用量をi.p.投与した。
【0305】
次いで、マウスに、Mab515H7 1mg/用量/マウスを週2回投与した。PBS群は、この実験ではコントロール群として導入した。腫瘍体積を週に2回測定し、式:π/6x長さx幅x高さによって計算した。統計分析は、Mann−Whitney検定を用いて、それぞれの測定時に行った。
【0306】
この実験では、治療中に死亡は観察されなかった。PBS群と比較して、515H7Mab 1mg/用量についてはD7およびD33(p0.002)の間で腫瘍増殖の有意な阻害が見られ、治療から5週間後の平均腫瘍体積は、Mab515H7についてPBSに対して63%減少した(図16)。
【0307】
例17:抗−CXCR4キメラMab c414H5およびc515H7の産生
マウス414H5および515H7Mabのキメラ型を、下記のようにして設計した:それらは、ヒトCκおよびIgG1定常ドメインに遺伝学的に融合した目的のマウス抗体の軽および重鎖可変ドメインに相当する。すべての組換えMabは、pCEP4発現ベクターを有するHEK293/EBNAシステム(InVitrogen,米国)を用いることによって一過性トランスフェクションによって産生した。
【0308】
414H5および515H7Mab軽および重鎖の可変ドメインに相当する全ヌクレオチド配列は、包括的遺伝子合成(Genecust,ルクセンブルグ)によって合成した。それらを、ヒトIgG1免疫グロブリン軽鎖[Cκ]または重鎖[CHl−Hinge−CF2−CF3]の定常ドメインの全コード配列を有するpCEP4ベクター(InVitrogen,米国)にサブクローニングした。すべてのクローニング段階は、「実験室マニュアル(Laboratory manual)」(Sambrook and Russel, 2001)に記載の通常の分子生物学の手法または供給業者の使用説明に準じて行った。それぞれの遺伝子構築物は、Big Dyeターミネーターサイクルシークエンシングキット(Applied Biosystems,米国)を用いるヌクレオチドシークエンシングによって完全検証し、3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems,米国)を用いて分析した。
【0309】
懸濁液適合(suspension-adapted)HEK293EBNA細胞(InVitrogen,米国)を、250mlフラスコ中でオービタルシェーカー(110rpm回転速度)上で6mMグルタミンを補足した無血清培地Excell293(SAFC Biosciences)50ml中で常法により増殖させた。一過性トランスフェクションは、水中で、混合して1mg/mlの最終濃度に調製した線状25kDaポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences)とプラスミドDNA(重鎖対軽鎖プラスミド比1:1については最終濃度1.25μg/ml)を用いて、2.106細胞/mlで行った。トランスフェクションの4時間後に、培養物を新鮮な培養培地1容で希釈し、最終細胞密度を106細胞/mlとした。培養工程は、細胞の生存可能性およびMab産生に基づいて観察した。典型的には、培養物を4〜5日間保持した。Mabは、プロテインA樹脂(GE Healthcare, 米国)上で通常のクロマトグラフィー法を用いて精製した。すべての様々なMabは、機能性評価に適当なレベルで産生した。生産性レベルは、典型的には精製Mabが6〜15mg/lの範囲である。
【0310】
例18:抗−CXCR4キメラMab c414H5およびc515H7結合特異性のFACS分析による特性決定および癌細胞系認識
この実験では、ヒトCXCR4への抗−CXCR4キメラMab c414H5およびc515H7の特異的結合を、FACS分析によって検討した。
【0311】
NIH3T3、NIH3T3−hCXCR4トランスフェクション細胞およびMDA−MB−231癌細胞系を、モノクローナル抗体c414H5およびc515H7 10μg/mlとインキュベーションした。次いで、細胞を1%BSA/PBS/0.01%NaNで洗浄した。次いで、Alexa−標識した二次抗体を細胞に加え、4°Cで20分間インキュベーションした。次いで、細胞を更に2回洗浄した。2回目の洗浄の後、FACS分析を行った。これらの結合研究の結果を下表5に挙げるが、これは、抗−CXCR4キメラMab c414H5およびc515H7がヒトCXCR4−NIH3T3トランスフェクション細胞系に特異的に結合した[FACSによって得られる平均蛍光強度(MFI)]、およびヒト癌細胞系、例えばMDA−MB−231乳癌細胞をも認識することをも示している。
【0312】
【表5】

【0313】
例19:ヒトCXCR4受容体を安定的に発現するCHO−K1膜における放射能標識[125I]SDF−1に対する抗−CXCR4マウスMab m414H5およびm515H7およびキメラMab c414H5およびc515H7の競合結合
この分析により、放射能標識[125I]SDF−1のヒトCXCR4受容体のオルソステリックまたはアロステリック結合部位での結合を競合するマウスMab m414H5、m515H7およびキメラMab c414H5、c515H7の能力を評価することができる。
【0314】
ヒトCXCR4受容体を安定的かつ構成的に発現するCHO−K1細胞は、ナイーブCHO−K1細胞(ATCC CCL−61)とヒトCXCR4受容体の全コード配列(参照配列NM 003467)を有する哺乳類発現ベクターのトランスフェクションによって得た。細胞を、完全培養培地[5%ウシ胎児血清(FCS)およびゲネチシン500μg/mlを補足したDMEM−Ham’sF12]で増殖させた。放射性リガンド結合実験を、ライシスバッファー[Hepes20mM、pH7.4、NaCl150mM]中でCHO/CXCR4細胞を機械的に破砕した後、遠心分離(10000g、15分間)して得た細胞膜で行った。[125I]SDF−1結合(比活性:1500Ci/mmol)は、SPA法(シンチレーション近接分析−GE Healthcare)を用いて行った。簡単に説明すると、細胞膜(30μg/ウェル)を、結合緩衝液[Hepes20mM、pH7.4、CaCl1mM、MgCl5mM、NaCl150mM、BSA1%]中で評価を行う化合物(SDF−1またはmAb)、放射性リガンド(1nM)および最後にSPA−WGA−PVTビーズ(7.3mg/ウェル)と共にインキュベーションした。25°Cで1時間後に結合平衡に達した。遠心分離[1000g、10分間]した後、放射能をシンチレーションカウンター(TopCount, Perkin Elmer)で測定した。非特異的結合(NS)は、10μMの未標識SDF−1の存在下にて評価した。
【0315】
抗−CXCR4Mab(100nM)は、[125I]SDF−1結合について下記の順位序列の競合効率で競合した([125I]SDF−1の阻害率%):m515H7(62±10%)、c515H7(55±4%)、m414H5(30±5%)およびc414H5(21±10%)(図17)。
【0316】
例20:抗−CXCR4マウスMab m414H5およびm515H7およびキメラMab c414H5およびc515H7による野生型CXCR4受容体を発現する細胞膜での[35S]GTPγS結合の調節
この機能分析により、野生型ヒトCXCR4受容体を介するGタンパク質活性化および抗−CXCR4マウスMab m414H5、m515H7およびキメラMab c414H5、c515H7によるその調節を観察することができる。
【0317】
野生型CXCR4受容体を安定的にかつ構成的に発現するNIH−3T3細胞は、CHO−K1細胞についての上記例で記載した方法によって得た。HeLa(ヒト子宮頸部癌)細胞を、完全培養培地[10%FCS、1%L−グルタミン、2μM重炭酸ナトリウムを補足したEMEM]で増殖させた。[35S]GTPγS結合は、ライシスバッファー[Hepes20mM、pH7.4、NaCl150mM]中で機械的に破砕し、更に遠心分離(10000g、15分間)して得た細胞膜で行った。[35S]GTPγS(比活性:1000Ci/mmol)の組込みおよび検出は、SPA法(シンチレーション近接分析−GE Healthcare)を用いて行った。簡単に説明すれば、細胞膜(10μg/ウェル)を、結合緩衝液[Hepes20mM、GDP3μM、MgCl10mM、NaCl100mM、EDTA1mM、pH=7.4]中で、評価を行う化合物(目的のSDF−1またはMAb)、[35S]GTPγS(0.2〜0.4nM)、および最後にSPA−WGA−PVTビーズ(7.3mg/ウェル)と共にインキュベーションした。結合反応は、25°Cで1時間行った。遠心分離[1000g、10分間]の後、放射能の数値をシンチレーションカウンター(TopCount, Perkin Elmer)で測定した。IC50を、それぞれのMabについて計算した。
【0318】
これらの実験条件下では、NIH3T3/CXCR4細胞で測定したm414H5、c414H5、m515H7およびC515H7MabのIC50は、それぞれ1.6nM、1.1nM、1.9nMおよび1.5nMであった(図18)。同じ実験条件下でHela細胞を用いて測定したm414H5、c414H5、m515H7およびc515H7MabのIC50は、それぞれ0.5nM、0.3nM、0.2nMおよび0.6nMであった(図19)。
【0319】
例21:CXCR4と様々な相互作用パートナーの会合:ホモおよびヘテロ二量体化、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法によるβ−アレスチンの動員、およびこれらの二量体に対するネズミMab m414H5、m515H7およびキメラMab c414H5およびc515H7の影響
この機能分析により、CXCR4ホモ二量体およびCXCR2/CXCR4ヘテロ−二量体形成並びにβ−アレスチン−2シグナル伝達タンパク質の動員のレベルでCXCR4受容体に結合するSDF−1および/またはm414H5、m515H7マウスMabおよびc414H5、およびc515H7キメラMabで誘導されるコンホメーション変化を評価することができる。
【0320】
検討した相互作用パートナーのそれぞれについての発現ベクターを、通常の分子生物学の手法を適用することによって対応する色素(Renilla reniformisルシフェラーゼ、Rluc、および黄色蛍光タンパク質、YFP)との融合タンパク質として構築した。BRET実験を行う2日前に、HEK293細胞を、対応するBRETパートナー:CXCR4ホモ二量体化の検討のための[CXCR4/Rluc+CXCR4/YFP]、CXCR4およびCXCR2ヘテロ−二量体化の検討のための[CXCR4−Rluc+CXCR2−YFP]、およびβ−アレスチン−2のCXCR4媒介性動員の検討のための[CXCR4−Rluc+β−arr2−YFP]をコードする発現ベクターを用いて一過的にトランスフェクションした。翌日、細胞を、完全培養培地[10%FBSを補足したDMEM]中でポリ−リシンをプレコートした白色96MWプレートに分注した。細胞を、最初にCO5%で37°Cにて培養し、細胞をプレートに接着させた。次いで、細胞を、200μlDMEM/ウェルで一晩飢餓状態に置いた。BRET実験の直前に、DMEMを除き、細胞をPBSで速やかに洗浄した。次いで、細胞を抗体の存在下または非存在下にてPBS中で37°Cで10分間インキュベーションした後、5μMコエレンテラジンHを100nMSDF−1と共にまたはなしで追加し、最終容積を50μlとした。ホモおよびヘテロ二量体について、37°Cで5分間インキュベーションし、室温で20分間更にインキュベーションした後、485nmおよび530nmの発光取得をMithras LB940マルチラベルリーダー(Berthold)を用いて開始した(1s/波長/ウェルで、室温にて15回反復)。
【0321】
BRET比の計算は、以前に報告されている方法で行った(Angers et al., 2000):[(発光530nm)−(発光485nm)xCf]/(発光485nm
(式中、同一実験条件下でRluc融合タンパク質のみを発現する細胞については、Cf=(発光530nm)/(発光485nm)である)。この式の簡略化は、BRET比は、2つのBRETパートナーが存在するときに得られる比530/485nmに対応し、Rlucに融合したパートナーのみが分析に存在するときに同じ実験条件下で得られる比530/485nmによって補正されることを示している。判読しやすくするため、結果はミリBRET単位(mBU)で表され、mBUは、BRET比に1000を乗じたものに相当する。
【0322】
SDF1(100nM)は、CXCR4受容体に融合した供与体および受容体タンパク質の空間的近接から生じるBRETシグナルを約10%増加させ、これは、CXCR4/CXCR4ホモ二量体形成、または以前に存在していた二量体のコンホメーション変化を示していると思われる(図20A)。興味深いことには、SDF1(100nM)は、CXCR2およびCXCR4に融合した供与体および受容体タンパク質の空間的近接から生じるBRETシグナルを約17%減少させ、同様にCXCR2/CXCR4ヘテロ二量体形成または以前に存在していた二量体のコンホメーション変化を示していると思われる(図20B)。この後者の場合には、CXCR4/CXCR2のSDF−1によって活性化したコンホメーションは、BRETエネルギー移動には余り好ましくないと思われる。いずれの場合にも、m414H5、c414H5およびm515H7、c515H7Mabは、CXCR4ホモ二量体のSDF−1誘導コンホメーション変化を調節することができ(SDF−1誘導BRETの阻害はc414H5については75%増加、SDF−1誘導BRETの阻害はc515H7については96%増加、図20A)、同様に、CXCR2/CXCR4ヘテロ−二量体形成を調節することができる(SDF−1誘導BRETの阻害はc414H5について77%減少、SDF−1誘導BRETの阻害はc515H7について98%減少、図20B)。m414H5、c414H5、m515H7およびc515H7Mabもそれら自身で、それぞれCXCR4/CXCR4およびCXCR2/CXCR4空間的近接を調節することができ、CXCR4/CXCR4ホモおよびCXCR2/CXCR4ヘテロ−二量体コンホメーション両方に対するこれらのMabの影響を示している(図20Aおよび20B)。
【0323】
SDF−1(100nM)によるCXCR4活性化は、BRETシグナルの400%増大することによって示されるように、細胞内シグナル伝達分子β−アレスチンが大幅に動員された(図20C)。この動員は、c414H5およびc515H7Mabによって部分的に阻害され(c414H5について約63%阻害およびc515H7について93%阻害、図20C)、シグナル伝達に対するこれらのMabの効果を示していた。
【0324】
例22:細胞内カルシウム貯蔵のCXCR4受容体媒介性流動化
この機能分析は、小胞体からの細胞内貯蔵からカルシウム遊離を誘導するホスホリパーゼC経路の刺激によるCXCR4受容体シグナル伝達の観察を目的として行った。
【0325】
野生型CXCR4受容体を安定的かつ構成的に発現するCHO−K1細胞は、上記例で記載した方法で得た。U937(ヒトリンパ腫)細胞を、完全培養培地、それぞれ[10%FCSを補足したDMEM]および[10%FCS、20mMHEPES、1%非必須アミノ酸溶液、1%ピルビン酸ナトリウム、1%L−グルタミン、4.5g/1グルコースを補足したRPMI1640]で増殖させた。すべての細胞タイプは、黒色の96MWプレートに適当な培地中100,000個の細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を一晩飢餓状態にした後、実験を行った。細胞に、蛍光カルシウム色素(Fluo-4 No Wash, Invitrogen 米国)をローディングバッファー[HBSS1x、HEPES20mM、プロベネシド酸25mM]に溶解したものを37°Cで30分間、次いで25°Cで30分間装填した。SDF−1による刺激は、それぞれのウェルに直接投与することによって行った。拮抗実験のため、Mab溶液10μlを、装填緩衝液にSDF−1の少なくとも10分前に直接加えた。動的蛍光測定は、マルチモード蛍光マイクロプレートリーダーMithras LB940(Berthold)で、下記の設定値:励起485nm、発光535nm、励起エネルギー10000任意単位で行った。それぞれのウェルの蛍光を、毎秒0.1秒およびSDF−1投与前は20秒間記録する(基底シグナル)。次いで、SDF−1 20μlを投与し、データー記録を2分間行う。それぞれの実験条件は、2回行う。それぞれのウェルの値を、最初に、基底蛍光および細胞なしのコントロールウェルによって放射された蛍光を差し引くことによって補正する。相対データーは、SDF−1(100nM)によって得られる最大刺激の割合として表される。
【0326】
SDF1(100nM)は、組換えCHO/CXCR4において細胞内カルシウムの速やかかつ強力な放出を誘導したが、ナイーブCHO−K1細胞では蛍光シグナルは検出されなかった。最大強度は、基底蛍光に対し>140%に達し、SDF−1で刺激したときには約40秒間観察され、同様な動的曲線がU−937で見られた(図21A、21B)。キメラ抗体c515H7(133nM)は、検討したいずれの細胞系でもSDF−1(100nM)誘導カルシウムシグナルを強力かつほぼ完全に阻害した。
【0327】
例23:SDF−1誘導U937細胞遊走に対する抗−CXCR4マウスMabm414H5、m515H7およびキメラMab c414H5、c515H7の効果
遊走工程に対する抗−CXCR4Mabm414H5、m515H7、c414H5およびc515H7の阻害効果を評価するため、2%FCSを補足したRPMI1640培地中の100 000 U−937細胞を、ウェルの下室にSDF−1の存在下または非存在下にて、かつ上室にMabc414H5、m414H5、c515H7およびm515H7の有りまたはなしで、遊走チャンバー(8−μm細孔径を有する24ウェルプレート)の上室に播種した。この試験では、マウスIgG2aおよびIgG2Bをアイソタイプコントロールとして導入した。播種の2時間後に、遊走細胞を計数した。図22A(c414H5対m414H5)および図22B(c515H7対m515H7)に示した結果は、予想したように、SDF−1がU−937細胞遊走の有意な増加を誘導することができることを示していた。細胞をIgG2アイソタイプコントロールとインキュベーションしたときには、効果は全く見られなかった。対照的に、c414H5、m414H5、c515H7およびm515H7Mabとインキュベーションした細胞については、SDF−1−誘導U937細胞遊走の有意かつ再現性のある減少が観察され、c414H5およびm414H5Mabでは50%であり、c515H7およびm515H7Mabでは80%を上回った。
【0328】
例24:U937マウス生存モデルにおける抗−CXCR4キメラMab c414H5およびc515H7活性
ATCCからのU937細胞を、RPMI1640培地、10%FCS、1%L−グルタミンで培養した。細胞を、移植2日前に継代し、対数増殖期となるようにした。10個のU937細胞を、雌のNOD/SCIDマウスにi.p.投与した。移植から2日後に、マウスにc414H5またはc515H7Mab/マウス 2mgの負荷用量をs.c.投与した後、抗体/マウス1mgを週2回投与した。以前の検討では、PBSを投与したマウスと、マウスIgGアイソタイプコントロールを投与したマウスとの間には生存率の差は見られなかったことが示されているので、コントロールマウスにはPBS注射液を投与した。マウスの生存は、毎日観察した。
【0329】
図23に示した結果は、c414H5およびc515H7Mabを投与したマウスは、寿命が劇的かつ有意に増加し、T/C%はc414H5およびc515H7について、それぞれ約210および180となった。
【図4A】

【図4B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
CXCR4の活性化を阻害することができる抗CXCR4抗体、またはその機能的断片または誘導体の選択方法であって、
i)産生した抗体をスクリーニングし、CXCR4に特異的に結合しかつCXCR4の活性化を調節することができる抗体を選択し、
ii)段階i)で選択された抗体を試験し、CXCR4ホモ二量体にコンホメーション変化を誘導することができる抗体を選択し、次いで、
iii)段階ii)で選択された抗体を試験し、CXCR4/CXCR2ヘテロ二量体にコンホメーション変化を誘導することができる抗体を選択する
段階を含んでなる、方法。
【請求項2】
段階ii)が、CXCR4−RLuc/CXCR4−YFPを両方とも発現する細胞上でBRET分析によって抗体を評価し、BRETシグナルの少なくとも40%を阻害することができる抗体を選択することからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階iii)が、CXCR4−RLuc/CXCR2−YFPを両方とも発現する細胞上でBRET分析によって抗体を評価し、BRETシグナルの少なくとも40%を阻害することができる抗体を選択することからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法によって得ることができる単離抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項5】
モノクローナル抗体からなる、請求項4に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項6】
少なくとも配列番号1、2、3、4、5または6を含んでなる配列のCDRから選択される少なくとも1個のCDRを含んでなる、請求項4に記載の単離抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項7】
配列番号1の配列であるCDR−L1、配列番号2の配列であるCDR−L2および配列番号3の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなる、請求項6に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項8】
配列番号9の配列であるCDR−L1、配列番号10の配列であるCDR−L2および配列番号3の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなる、請求項6に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項9】
配列番号7の配列であるCDR−H1、配列番号5の配列であるCDR−H2および配列番号8の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖を含んでなる、請求項6に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項10】
配列番号11の配列であるCDR−H1、配列番号12の配列であるCDR−H2および配列番号6の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖を含んでなる、請求項6に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項11】
配列番号1の配列であるCDR−L1、配列番号2の配列であるCDR−L2および配列番号3の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖、および
配列番号7の配列であるCDR−H1、配列番号5の配列であるCDR−H2および配列番号8の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖
を含んでなる、請求項6に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項12】
配列番号9の配列であるCDR−L1、配列番号10の配列であるCDR−L2および配列番号3の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖、および
配列番号11の配列であるCDR−H1、配列番号12の配列であるCDR−H2および配列番号6の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖
を含んでなる、請求項6に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項13】
配列番号13のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖配列を含んでなり、かつ配列番号14のアミノ酸配列を含んでなる重鎖配列を含んでなる、請求項6に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項14】
少なくとも配列番号40、2、41、42、5または43を含んでなる配列のCDRから選択される少なくとも1個のCDRを含んでなる、請求項4に記載の単離抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項15】
配列番号40の配列であるCDR−L1、配列番号2の配列であるCDR−L2および配列番号41の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなる、請求項14に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項16】
配列番号46の配列であるCDR−L1、配列番号47の配列であるCDR−L2および配列番号41の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなる、請求項14に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項17】
配列番号44の配列であるCDR−H1、配列番号5の配列であるCDR−H2および配列番号45の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖を含んでなる、請求項14に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項18】
配列番号48の配列であるCDR−H1、配列番号49の配列であるCDR−H2および配列番号43の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖を含んでなる、請求項14に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項19】
配列番号40の配列であるCDR−L1、配列番号2の配列であるCDR−L2および配列番号41の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖、および
配列番号44の配列であるCDR−H1、配列番号5の配列であるCDR−H2および配列番号45の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖
を含んでなる請求項14に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項20】
配列番号46の配列であるCDR−L1、配列番号47の配列であるCDR−L2および配列番号41の配列であるCDR−L3を含んでなる軽鎖、および
配列番号48の配列であるCDR−H1、配列番号49の配列であるCDR−H2および配列番号43の配列であるCDR−H3を含んでなる重鎖
を含んでなる、請求項14に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項21】
配列番号50のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖配列を含んでなり、かつ配列番号51のアミノ酸配列を含んでなる重鎖配列を含んでなる、請求項14に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項22】
2007年10月22日にCNCM、Pasteur Institute、パリにI−3860の番号で寄託されたまたは2008年6月25日にCNCM、Pasteur Institute、パリにI−4019の番号で寄託されたハイブリドーマから選択される、マウスハイブリドーマ。
【請求項23】
請求項22に記載のハイブリドーマによって分泌される、抗体。
【請求項24】
キメラ抗体からなる、請求項6または14に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項25】
配列番号64のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖配列を含んでなり、かつ配列番号65のアミノ酸配列を含んでなる重鎖配列を含んでなる、請求項6および24に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項26】
配列番号66のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖配列を含んでなり、かつ配列番号67のアミノ酸配列を含んでなる重鎖配列を含んでなる、請求項14および24に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項27】
請求項4〜21および23〜26のいずれか一項に記載の抗体またはその誘導化合物または機能的断片をコードする核酸、DNAまたはRNA、
a)に記載の核酸に相補的な核酸、
配列番号15〜26または配列番号52〜61の核酸配列のCDRの少なくとも1個と高ストリンジェント条件下でハイブリダイズすることができる少なくとも18個のヌクレオチドの核酸、および
少なくとも配列番号27または配列番号62または配列番号68または70の核酸配列の軽鎖および/または配列番号28または配列番号63または配列番号69または71の核酸配列の重鎖と高ストリンジェント条件下でハイブリダイズすることができる少なくとも18個のヌクレオチドの核酸
から選択される、単離核酸。
【請求項28】
請求項27に記載の核酸から構成される、ベクター。
【請求項29】
請求項28に記載のベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項30】
請求項29に記載のベクターによって形質転換した細胞を含んでなる、ヒト以外のトランスジェニック動物。
【請求項31】
請求項4〜21および23〜26のいずれか一項に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片の産生方法であって、
請求項29に記載の宿主細胞の培地および適当な培養条件での培養、および
培地からまたは前記培養細胞から産生した前記抗体、またはその機能的断片の1つの回収
の段階を含んでなる、前記方法。
【請求項32】
薬剤として使用するための、請求項4〜21および23〜26のいずれか一項に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片。
【請求項33】
請求項4〜21、23〜26および32のいずれか一項に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片からなる化合物を活性成分として含んでなる、組成物。
【請求項34】
同時、個別または拡張手法で使用する配合物としてCXCR4に対する抗体以外の抗腫瘍抗体を更に含んでなる、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
同時、個別または拡張手法で使用する配合または接合生成物として細胞毒性/細胞増殖抑制剤、細胞毒素および/または放射性同位体を更に含んでなる、請求項33または34に記載の組成物。
【請求項36】
薬剤として使用するための、請求項33〜35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
細胞におけるCXCR4活性を調節する薬剤としての、請求項4〜21、23〜26および32のいずれか一項に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片、および/または請求項33〜36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
癌の予防または治療のための、請求項4〜21、23〜26および32のいずれか一項に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片、および/または請求項33〜36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記癌が、前立腺癌、骨肉腫、肺癌、乳癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵臓癌および結腸癌から選択される癌である、請求項38に記載の抗体、またはその誘導化合物または機能的断片、および/または組成物。

【図8】
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【図18】
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【図19】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2012−504401(P2012−504401A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529559(P2011−529559)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062787
【国際公開番号】WO2010/037831
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(500033483)ピエール、ファーブル、メディカマン (73)
【Fターム(参考)】