説明

抗TYRP1抗体

本発明は、TYRP1に特異的なマウス抗体であるTA99に匹敵するか、またはそれより高い親和性でヒトTYRP1抗原に結合する、完全ヒト抗体およびキメラ抗体を提供する。本発明は、これらの抗体をコードし、そして発現するポリ核酸および宿主細胞をさらに提供する。本発明はまた、有効量の抗体を単独あるいは抗癌剤または抗癌処置と組み合わせてのいずれかで投与することによって、哺乳動物において、TYRP1の活性を調節する方法、癌細胞の増殖を処置する方法、および悪性黒色腫を処置する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2008年3月12日に出願された米国仮出願番号第61/069199号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質−1(TYRP1)に特異的な、そのフラグメントまたは部分を含むヒト抗体およびキメラ抗体に関する。その抗体は、癌細胞の増殖を処置するために使用され、単独または抗腫瘍剤または抗腫瘍処置と組み合わせて使用されることができる。
【背景技術】
【0003】
gp75としても知られるヒトチロシナーゼ関連タンパク質−1(TYRP1)(特許文献1)(配列番号28)は、メラニン生合成に関与するメラノソーム膜糖タンパク質である。それは、メラノサイトのメラノソーム内で主に見出され、メラノサイトおよびヒト黒色腫の細胞表面で発現されることもまた見出される。
【0004】
TYRP1抗原は、高度に免疫原性である。TYRP1に対する抗体およびT細胞が、黒色腫患者において同定されている。細胞性反応および体液性反応の両方が、インビボで黒色腫を除くのに有効であることが明らかである。黒色腫反応性T細胞の養子免疫伝達(adoptive transfer)もまた、腫瘍の後退をもたらす。TYRP1ワクチンによって誘発される抗体反応もまた、動物において黒色腫の増殖および転移を阻害することができた。
【0005】
小分子阻害剤、化学療法、ワクチンを含む免疫療法(例えば、特許文献2)、遺伝子療法/免疫刺激剤、および血管新生阻害剤を含む黒色腫のための様々な治療選択肢が研究されてきたが、今のところ、黒色腫を有する患者のための効果的な治療法は存在しない。この満たされていない医学的必要性のための新しい治療法の開発が、非常に必要とされている。
【0006】
動物研究は、抗体TA99の発見をもたらした。TA99(IgG2a)は、ヒトおよびマウスのTYRP1に特異的なマウスモノクローナル抗体(MAb)であり、インビボでヒト黒色腫皮下に局在する。非特許文献1および特許文献3を参照のこと。TA99処置は、マウスにおいて腫瘍の増殖および転移を阻害した。非特許文献2を参照のこと。
【0007】
TA99で処置されたマウスは、しばしば毛髪の色を消失し(色素脱失)、これは、皮膚におけるメラノサイトの破壊を示唆する。Fc受容体介在性のエフェクター活性化は、TA99によって標的化された細胞の除去において重要な役割を果たすようだ。TA99の抗腫瘍効果は、FcRノックアウトマウスにおいて劇的に低減された。非特許文献3を参照のこと。しかしながら、TA99のマウス性質(murine nature)は、それが免疫原性の潜在的な問題のためにヒトにおける治療薬としての使用から排除され得ること、さらに、その下流免疫エフェクター機能を活性化する能力が制限され得ることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第91/14775号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6168946号明細書
【特許文献3】米国特許第4798790号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Weltら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4200−4204(1987)
【非特許文献2】Takechiら、Clin Cancer Res.2:1837−42(1996)
【非特許文献3】Clynesら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:652−656(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、黒色腫の処置に有効な代替的抗TYRP1抗体を提供する必要性が存在する。本発明は、黒色腫の処置に有効な代替的抗TYRP1抗体を提供する。
【0011】
さらに、当該分野において知られているそれらの抗体と比較して、TYRP1に対して改良された結合親和性を有する代替的抗TYRP1抗体を提供する必要性が存在する。本発明は、当該分野において知られているそれらの抗体と比較して、TYRP1に対して改良された結合親和性を有する代替的抗TYRP1抗体を提供する。
【0012】
さらに、ヒトにおける低減された免疫原性および抗体依存性細胞毒性(ADCC)のような下流免疫エフェクター機能を活性化する改良された能力を有する代替的抗TYRP1抗体を提供する必要性が存在する。本発明は、当該分野において知られているそれらの抗体と比較して、ヒトにおける低減された免疫原性および抗体依存性細胞毒性(ADCC)のような下流免疫エフェクター機能を活性化する改良された能力を有するキメラ抗TYRP1抗体およびヒト抗TYRP1抗体を提供する。
【0013】
また、タンパク質の誤った折り畳みおよび不正確なプロセシングの低減による改良された安定性を有する代替的抗TYRP1抗体を提供する必要性も残る。本発明の好ましい抗体は、タンパク質の誤った折り畳みおよび不正確なプロセシングの低減による改良された安定性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、黒色腫抗原TYRP1(配列番号28)に結合する、ヒトモノクローナル抗体およびキメラモノクローナル抗体、ならびにそのフラグメントに関する。
【0015】
本発明の1つの実施形態は、実験室の周囲温度(20℃−25℃)において0.1×10−9M〜1.6×10−9Mの範囲の解離定数KでヒトTYRP1に特異的に結合するモノクローナル抗体であり、ここで、前記K値は、表面プラスモン共鳴によって決定される。本発明の他の実施形態において、モノクローナル抗体は、キメラ抗体またはヒト抗体である。ヒトTYRP1に特異的に結合する能力を保持する、そのような抗体のフラグメントは、そのようなフラグメントについての解離定数は特定された範囲ではないが、本発明の一部である。
【0016】
本発明の別の実施形態において、モノクローナル抗体は、約0.1×10−9ないし1.2x10−9M、約0.1x10−9Mないし約0.8x10−9M、約0.1x10−9Mないし約0.4x10−9M、約0.2x10−9Mないし約1.2x10−9M、約0.2x10−9Mないし約0.8x10−9M、約0.2x10−9Mないし0.4x10−9M、約0.2x10−9Mないし約0.3x10−9M、あるいは約0.28x10−9MのKでヒトTYRP1に結合する。
【0017】
本発明の1つの実施形態は、配列GYTFTSYAMN(配列番号1)を有するCDRH1、配列WINTNTGNPTYAQGFTG(配列番号2)を有するCDRH2、配列RYSSSWYLDY(配列番号3)を有するCDRH3、配列RASQSVSSYLA(配列番号4)を有するCDRL1、配列DASNRAT(配列番号5)を有するCDRL2、および配列QQRSNWLMYT(配列番号6)を有するCDRL3を含む、TYRP1に結合する抗体またはそのフラグメントであり、ここで、前記抗体は、前記CDR配列のうちの1つの範囲内にアミノ酸置換をさらに含む。別の実施形態において、前述のCDRは、CDR配列のうちの1つにおいてアミノ酸置換を有さない。さらに別の実施形態において、前述のCDRを有する抗体は、0.1×10−9M〜1.5×10−9Mの範囲の解離定数KでヒトTYRP1に特異的に結合する。
【0018】
本発明の別の実施形態において、配列GFNIKDYFLH(配列番号7)を有するCDRH1、配列WINPDNGNTVYDPKFQG(配列番号8)を有するCDRH2、配列DYTYEKAALDY(配列番号9)を有するCDRH3、配列RASGNIYNYLA(配列番号10)を有するCDRL1、配列DAKTLAD(配列番号11)を有するCDRL2、および配列QHFWSLPFT(配列番号12)を有するCDRL3を含む、TYRP1に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントは、前記CDR配列のうちの1つの範囲内にアミノ酸置換をさらに含む。別の実施形態において、前述のCDR(配列番号7〜12)は、アミノ酸置換を有さない。
【0019】
本発明の別の実施形態は、TYRP1に結合し、配列:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWLMYTFGQGTKLEIK(配列番号16)を有するVL、および:
QVQLVQSGSELKKPGASVKISCKASGYTFTSYAMNWVRQAPGQGLECMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSMDTSVSTAYLQISSLKAEDTAIYYCAPRYSSSWYLDYWGQGTLVTVSS(配列番号13)または
QVQLVQSGSELKKPGASVKISCKASGYTFTSYAMNWVRQAPGQGLESMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSMDTSVSTAYLQISSLKAEDTAIYYCAPRYSSSWYLDYWGQGTLVTVSS(配列番号14)
のVH配列を含む、抗体またはそのフラグメントである。
【0020】
本発明の別の実施形態は、配列番号29の重鎖および配列番号32の軽鎖、または配列番号30の重鎖および配列番号32の軽鎖を含む。
【0021】
1つの実施形態において、抗体は、配列番号29の2つの重鎖および配列番号32の2つの軽鎖を含む、または配列番号30の2つの重鎖および配列番号32の2つの軽鎖を含む。そのような抗体のTYRP1結合フラグメントは、本発明の一部である。
【0022】
本発明はまた、そのような抗体およびその一部をコードする単離されたDNAに関する。本発明の他の実施形態は、抗体またはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリ核酸、発現配列に連結された前記ヌクレオチド配列を含む発現ベクター、または前記発現ベクターを含む組換え宿主細胞、あるいは組換え宿主細胞またはその子孫を含み、ここで、前記細胞は抗体またはそのフラグメントを発現する。本発明のさらに別の実施形態は、前記細胞を、抗体またはそのフラグメントの発現を可能にする条件下で培養することを含む、抗体またはそのフラグメントを産生または精製する方法である。
【0023】
さらに、本発明は、全て哺乳動物において、有効量の抗体を投与することによって、癌細胞の増殖を阻害する方法および黒色腫を処置する方法に関する。本発明の1つの実施形態は、前述の抗体またはそのフラグメントを薬剤として使用することである。さらに別の実施形態において、前述の抗体またはそのフラグメントは、悪性黒色腫を含むがそれに限定されない、癌の処置において使用される。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、癌を処置するための薬剤の製造のための、本発明の抗体の使用を提供する。好ましい実施形態において、癌は悪性黒色腫である。
【0025】
抗体は、単独で、あるいは抗腫瘍剤または抗腫瘍処置と組み合わせて使用され得る。本発明の1つの実施形態は、前述の抗体をさらなる抗癌剤または抗癌処置と組み合わせて使用することである。さらに別の実施形態において、抗癌剤はダカルバジンである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、TYRP1抗原に特異的なヒト抗体およびキメラ抗体、およびそのフラグメント、ならびにその抗体をコードする単離または精製されたポリヌクレオチド配列を提供する。本発明の抗体は、固形腫瘍および非固形腫瘍を含む腫瘍性疾患を処置するため、および過剰増殖性疾患の処置のために使用されることができる。用語抗体は、他に注記が無い限り、TYRP1に結合するフラグメントを含む。本明細書中での結合パラメータは、異なる大きさのために異なる結合パラメータを必然的に有するフラグメントではなく、全長抗体に対するものである。
【0027】
天然に存在する抗体は、典型的には2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖を含み、各軽鎖は、鎖内ジスルフィド結合によって重鎖に共有結合される。複数のジスルフィド結合が、2つの重鎖を互いにさらに連結する。本明細書中で使用される用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖、およびジスルフィド結合によって相互に結合された2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子を含む。個々の鎖は、同様の大きさ(110〜125個のアミノ酸)および構造を有するが、異なる機能を有するドメインに折り畳まることができる。
【0028】
軽鎖は、1つの可変ドメイン(VLとして本明細書中で略される)および/または1つの定常ドメイン(CLとして本明細書中で略される)を含むことができる。抗体(免疫グロブリン)の軽鎖は、カッパ(Κ)軽鎖またはラムダ(λ)軽鎖のいずれかである。本明細書中で使用される表現VLは、Κ型軽鎖(VΚ)から、およびλ型軽鎖(Vλ)からの両方の可変領域を含むことが意図される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。
【0029】
重鎖はまた、1つの可変ドメイン(VHとして本明細書中で略される)および/または抗体のクラスまたはアイソタイプに依存して、3つまたは4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、およびCH4)(CHとして本明細書中で略される)を含むことができる。ヒトにおいて、アイソタイプは、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMであり、IgAおよびIgGはさらにサブクラスまたはサブタイプ(IgA1〜2およびIgG1〜4)に分類される。本発明は、前述のクラスまたはサブクラス(アイソタイプ)のいずれかの抗体を含む。ヒトIgGは、本発明の抗体にとって好ましいアイソタイプである。
【0030】
一般的に、可変ドメインは、抗体によって、特に抗原結合部位の位置においてかなりのアミノ酸配列変異性を示す。超可変領域または相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの領域が、VLおよびVHの各々において見出され、それらは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより変化しない領域によって支持される。アミノ酸は、Kabat規則(Kabatら、Ann.NY Acad.Sci.190:382−93(1971);Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242(1991))に従って特定のCDR領域またはドメインに割り当てられる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順:FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4で配列された3つのCDRおよび4つのFRからなる。
【0031】
VLおよびVHドメインからなる抗体の一部は、Fv(可変フラグメント)と表わされ、抗原結合部位を構成する。単鎖Fv(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインを1つのポリペプチド鎖上に含有する抗体フラグメントであり、ここで、1つのドメインのN末端および他方のドメインのC末端は、柔軟なリンカーによって結合され(例えば、米国特許第4946778(Ladnerら)、WO 88/09344(Hustonら)、WO 92/01047(McCaffertyら)を参照のこと)は、バクテリオファージのような可溶性組換え遺伝子表示パッケージの表面でのscFvフラグメントの表示を記載する。
【0032】
単鎖抗体を産生するために使用されるペプチドリンカーは、VLおよびVHドメインの適切な3次元折り畳みが起こることを確実にするように選択される柔軟なペプチドであることができる。リンカーは、一般的に10〜50個のアミノ酸残基である。好ましくは、リンカーは、10〜30個のアミノ酸残基である。より好ましくは、リンカーは、12〜30個のアミノ酸残基である。最も好ましくは、リンカーは、15〜25個のアミノ酸残基である。そのようなリンカーペプチドの例は、(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)を含む。
【0033】
「単離された抗体」は、(1)成分の混合物から部分的に、実質的に、または完全に精製された抗体、(2)その自然環境の成分から、同定ならびに分離および/または回収された抗体、(3)モノクローナルな抗体、(4)同じ種の他のタンパク質を含まない抗体、(5)異なる種からの細胞によって発現される抗体、または(6)天然に存在しない抗体である。その自然環境の混入成分は、抗体の診断的使用または治療的使用を妨げ得、酵素、ホルモン、および他のタンパク様または非タンパク様溶質を含み得る。単離された抗体の例は、親和精製された抗体、ハイブリドーマまたは他の細胞株によってインビトロで作製された抗体、およびトランスジェニックマウス由来のヒト抗体を含む。
【0034】
本明細書中で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の個体群から得られた抗体を示し、例えば、個体群を含む個々の抗体は、予想される天然に存在する突然変異または存在し得る小さな翻訳後の変異以外は、実質的に同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の(決定基またはエピトープとしても知られる)抗原部位に対して向けられる。さらに、異なる決定基に対して向けられる異なる抗体を典型的には含み慣習的な(ポリクローナル)抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な個体群から得られる抗体の特性を示し、特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。
【0035】
本明細書中で使用される用語「抗体」はまた、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体における対応する配列と同一であるか、または相同であり、あるいは、特定の抗体のクラスまたはサブクラスに属し、一方その鎖の残りの部分が、別の種(例えば、マウスまたはラット)に由来する抗体における対応する配列と同一であるか、または相同であり、あるいは別の抗体のクラスまたはサブクラスに属す「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそのような抗体のフラグメントを、それらが所望の生物学的活性を示す限り含む。例えば、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984)を参照のこと。したがって、本発明は、例えば、キメラ重鎖および/またはキメラ軽鎖を含むキメラ抗体を含む。キメラ重鎖は、本明細書中に記載される重鎖可変(VH)領域、または非ヒト抗体の重鎖定常領域に融合するその突然変異体または変異体のいずれかを含み得る。キメラ軽鎖は、本明細書中に記載される軽鎖可変(VL)領域、または非ヒト抗体の軽鎖定常領域に融合するその突然変異体または変異体のいずれかを含み得る。
【0036】
本明細書中で使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列(Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242に記載される)に対応する可変領域および定常領域を有する抗体を含む。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的変異誘発によって、またはインビボでの体細胞突然変異によって導入された変異)を、例えば、CDR中に含み得る。ヒト抗体は、アミノ酸残基、例えば、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によってコードされていない活性増強アミノ酸残基で置き換えられた少なくとも1つの位置を有することができる。しかしながら、本明細書中で使用される用語「ヒト抗体」は、マウスのような他の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含むことを意図しない。
【0037】
表現「組換えヒト抗体」は、宿主細胞中にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換え・組み合わせヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子トランスジェニックである動物から単離された抗体のような、組換え手段によって調製、発現、作製、または単離されたヒト抗体、あるいは、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他の配列へのスプライシングを起こす任意の他の手段によって調製、発現、作製、または単離された抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する(Kabatら、上記を参照のこと)。
【0038】
Fc(結晶化フラグメント)は、一対の重鎖定常ドメインを含む抗体の一部またはフラグメントについての表示である。例えば、IgG抗体において、FcはCH2およびCH3ドメインを含む。IgAまたはIgM抗体のFcは、CH4ドメインをさらに含む。Fcは、Fc受容体結合、補体介在性細胞毒性およびADCCの活性化と関連する。複数のIgG様タンパク質の複合体であるIgGおよびIgMのような抗体について、複合体形成は、Fc定常ドメインを必要とする。
【0039】
したがって、本発明の抗体は、限定されないが、天然に存在する抗体、抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、組換えヒト抗体、モノクローナル抗体、消化フラグメント、抗体模倣物を含むか、または抗体または特定のフラグメントまたはその一部の構造および/または機能を模倣する抗体の一部を含み、各々少なくとも1つのCDRを含有するその特定の部分および変異体を含む。機能的フラグメントは、TYRP1抗原に結合する抗原結合フラグメントを含む。例えば、TYRP1またはその一部に結合することができ、かつ本発明によって採用される抗体フラグメントは、鎖内ジスルフィド結合が損傷を受けていない(Fab’)のような二価フラグメント、VL CL VL CH1ドメインからなる抗体のフラグメントを意味し、(例えば、パパイン消化によって)重鎖ヒンジ領域を保持しないFab(フラグメント、抗原結合)、重鎖ヒンジ領域を保持するfab、(例えば、プラスミン消化による)facb、F(ab’)、ジスルフィド結合を欠くFab’、(例えば、ペプシンまたはプラスミン消化による)pFc’、(例えば、ペプシン消化、部分的還元、および再配列による)Fd、およびFvまたは(例えば、分子生物学技術による)scFvのような一価フラグメントを含む。抗体フラグメントはまた、例えば、ドメイン欠失抗体、線状抗体、単鎖抗体、scFv、単一ドメイン抗体、多価単鎖抗体、抗原と特異的に結合する二重特異性抗体、三重特異性抗体などを含む抗体フラグメントから形成された多特異性抗体を含むことが意図される。
【0040】
ヒンジ領域は、抗体のFab部分およびFc部分を分離し、互いに対しての、およびFcに対してのFabの移動性を提供し、そして2つの重鎖の共有結合のための複数のジスルフィド結合を含む。
【0041】
本発明の抗体またはそのフラグメントは、TYRP1に対して特異的である。抗体特異性とは、抗原の特定のエピトープに対する抗体の選択的認識を示す。本発明の抗体またはそのフラグメントは、単一特異性、二重特異性、または多特異性であることができる。二重特異性抗体(BsAb)は、2つの異なる抗原結合特性または抗原結合部位を有する抗体である。多特性抗体は、2つより多い抗原結合特異性または抗原結合部位を有する。抗体が1つより多い特異性を有する場合、認識されたエピトープは、単一の抗原と、または1つより多い抗原と関連することができる。したがって、本発明は、TYRP1に対する少なくとも1つの特異性を有する、2つの異なる抗原に結合する二重特異性抗体またはそのフラグメントを提供する。
【0042】
本発明は、TYRP1に特異的な単離された抗体またはそのフラグメントを提供する。TYRP1タンパク質は、哺乳動物のタンパク質であり、好ましくはヒトのタンパク質である。特に好ましい実施形態では、本発明の抗体はヒトのTYRP1とネズミのTYRP1の両方に結合することができ[Shibaharaら、Nucleic Acids Res. 14(6) 2413−2427(1986)]、従って臨床前試験および臨床試験に有効である。本発明の抗体は、以下の活性のうちの1つ以上が可能である、すなわち、(1)TYRP1に対して排他的に高い親和性結合を示すこと、および(2)インビトロおよびインビボで腫瘍の成長を阻害すること。
【0043】
本発明の抗体またはそのフラグメントの、TYRP1に対する特異性は、親和性および/またはアビディティに基づいて決定されることができる。抗体との抗原の解離についての平衡定数(K)によって表わされる親和性は、抗原決定基と抗体結合部位との間の結合強度を測定する。
【0044】
本発明の抗体またはそのフラグメントはまた、その結合特性が、直接的突然変異、親和性成熟の方法、ファージディスプレー、または鎖シャッフリンングによって変更または改良された抗体またはそのフラグメントを含む。親和性および特異性は、CDRを突然変異させること、および所望の特性を有する抗原結合部位をスクリーニングすることによって、変更または改良されることができる(例えば、Yangら、J.Mol.Biol.,(1995)254:392−403を参照のこと)。CDRは、種々の方法で突然変異される。1つの方法は、個々の残基または残基の組み合わせを、他の同一な抗原結合部位の個体群において、全ての20個のアミノ酸が特定の位置に見出されるように任意抽出することである。あるいは、突然変異は、変異性PCR法によってCDR残基の範囲に対して誘発される(例えば、Hawkinsら、J.Mol.Biol.,(1992)226:889−896を参照のこと)。例えば、重鎖および軽鎖可変領域遺伝子を含有するファージディスプレーベクターは、E.coliの突然変異誘発株において増殖されることができる(例えば、Lowら、J.Mol.Biol.,(1996)250:359−368を参照のこと)。これらの変異誘発の方法は、当業者に公知の多くの方法の例示である。
【0045】
置換変異体を生成するための簡便な方法は、ファージディスプレーを使用する親和性成熟である。簡単には、いくつかのCDR領域部位が、各部位において全ての起こりうるアミノ酸置換を生成するように突然変異される。このように生成された抗体変異体は、各粒子内のM13パッケージの第III遺伝子産物との融合物として、線状ファージ粒子から一価の様式で表示される。ファージディスプレーされた変異体は、次いで、本明細書中に開示されるようにそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性、特異性、IC50、EC50、K)についてスクリーニングされる。変更のための候補CDR領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング変異誘発が、抗原結合に顕著に寄与するCDR領域残基を同定するために実施されることができる。代替的に、または追加的に、CDRが可変領域に操作可能に連結されながら、またはCDRが他の可変領域配列と独立でありながらのいずれかで、ランダム変異誘発法が、1つ以上の残基位置において1つ以上のCDR配列に対して実施され得、次いで、変更されたCDRが組換えDNA技術を使用して可変領域に戻される。いったんそのような変異体抗体が生成および発現されると、変異体のパネルが本明細書中に記載されるスクリーニングに供され、1つ以上の関連するアッセイにおいてより優れた性質を有する抗体がさらなる開発のために選択され得る。
【0046】
本明細書中に記載されるように、本明細書中に明確に記載される抗体に加えて、他の「実質的に相同な」変更された抗体が、当業者に周知の様々な組換えDNA技術を利用して容易に設計および製造されることができる。例えば、フレームワーク領域は、いくつかのアミノ酸置換、末端および中間の付加および欠失などによって、一次構造レベルで天然の配列と異なり得る。さらに、種々の異なるヒトフレームワーク領域は、本発明のヒト化免疫グロブリンの基礎として単独または組み合わせて使用され得る。一般的に、遺伝子の変更は、部位特異的突然変異誘発のような、種々の周知技術によって容易に達成され得る。
【0047】
本発明は、記載された全長抗TYRP1抗体の可変領域または超可変領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するTYRP1結合ポリペプチドを含む。実質的に同じアミノ酸配列は、本明細書中で、PearsonおよびLipman(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1988)85:2444−8)に従うFASTA検索方法によって決定されるように、別のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも約80%、およびより好ましくは少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同な配列として定義される。
【0048】
本発明の抗体またはそのフラグメントは、表1に記載されるCDRのアミノ酸配列からなる群から選択される、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、および/または6つの相補性決定領域(CDR)を有するヒト抗体を含む。
【0049】
別の実施形態において、本発明の抗体またはそのフラグメントは、以下に概説される20D7または20D7Sの重鎖可変領域および/または20D7または20D7Sの軽鎖可変領域を有することができる。20D7および20D7Sは、本発明の特に好ましい抗体である。これらの抗体は、ヒトVHおよびVLフレームワーク領域(FR)ならびにヒトCDRを有する。
【0050】
本発明は、本明細書中に開示される任意の変異体を含む、VH領域のいずれか1つまたはその一部、またはVH CDRのいずれか1つを含む抗TYRP1抗体重鎖をコードする核酸配列を含む。本発明はまた、本明細書中に開示される任意の変異体を含む、VL領域のいずれか1つまたはその一部、またはVL CDRのいずれか1つを含む抗TYRP1抗体軽鎖をコードする核酸配列を含む。
【0051】
本発明の抗体の各ドメインは、重鎖または軽鎖可変ドメインを有する完全抗体であり得、または天然に存在するドメインの機能的等価体、または突然変異体、または誘導体、あるいは例えばWO 93/11236(Griffithsら)に記載される技術のような技術を使用してインビトロで構築された合成ドメインであり得る。例えば、少なくとも1個のアミノ酸を欠く抗体可変ドメインに対応するドメインと一緒に結合することは可能である。また、本発明に含まれるのは、CDR配列のうちの1つにおいて1つ以上のアミノ酸が、置換、突然変異、または欠失した抗体である。重要な特徴的特性は、各ドメインの相補的ドメインと結合して抗原結合部位を形成する能力である。したがって、用語可変重鎖および可変軽鎖フラグメントは、特異性に対する重大な影響を有さないCDRに対する変異体を含む変異体を除くものと解釈されるべきではない。
【0052】
本発明の抗体は、当該分野において公知の方法によって産生され得る。このような方法は、KohlerおよびMilstein,Nature 256:495−497(1975)、およびCampbell,Monoclonal Antibody Technology,The Production and Characterization of Rodent and Human Hybridomas、Burdonら編、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Volume 13,Elsevier Science Publishers,Amsterdam(1985)によって記載される免疫学的方法、ならびにHuseら、Science 246:1275−1281(1989)によって記載される組換えDNA法を含む。
【0053】
抗体フラグメントは、全抗体を切断することによって、またはフラグメントをコードするDNAを発現することによって産生されることができる。抗体のフラグメントは、Lamoyiら、J.Immunol.Methods 56:235−243(1983)およびParham,J.Immunol.131:2895−2902(1983)によって記載される方法によって調製され得る。そのようなフラグメントは、FabフラグメントまたはF(ab’)フラグメントの1つまたは両方を含有し得る。そのようなフラグメントはまた、単鎖フラグメント可変領域抗体、すなわち、scFv、二重特異性抗体、または他の抗体フラグメントを含有し得る。そのような機能的等価体を産生する方法は、PCT出願WO 93/21319、欧州特許出願第239400号、PCT出願WO 89/09622、欧州特許出願第338745号、および欧州特許出願EP332424に開示される。
【0054】
ベクターの形質転換および本発明の抗体の発現のための好ましい宿主細胞は、哺乳動物細胞、例えば、NSO細胞(非分泌(0)マウス骨髄腫細胞)、293細胞、およびCHO細胞、ならびにリンパ腫細胞、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ細胞のようなリンパ系由来の他の細胞株である。酵母のような他の真核細胞宿主が代替的に使用されることができる。
【0055】
形質転換された宿主細胞は、炭素(グルコースまたはラクトースのような炭水化物)、窒素(アミノ酸、ペプチド、タンパク質、またはペプトン、アンモニウム塩などのそれらの分解産物)、および無機塩類(硫酸塩、リン酸塩、および/またはナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムの炭酸塩)の同化可能な供給源を含有する液体培地において当該分野に公知の方法によって培養される。例えば、培地はさらに、例えば、鉄、亜鉛、マンガンなどの痕跡元素のような成長促進物質をさらに含有する。
【0056】
酵母において遺伝子構築物を発現することが所望される場合、酵母における使用のために好適な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である。Stinchcombら、Nature,282:39(1979)、Kingsmanら、Gene,7:141(1979)。trp1遺伝子は、トリプトファンで増殖する能力を欠く突然変異株、例えば、ATCC番号44076またはPEP4−1についての選択マーカーを提供する。Jones,Genetics,85:12(1977)。酵母宿主細胞ゲノム中のtrp1病変の存在は、次いで、トリプトファンの不在下での増殖による形質転換を検出するのに効果的な環境を提供する。同様に、Leu2欠損酵母株(ATCC 20,622または38,626)は、Leu2遺伝子を担持する公知のプラスミドによって補完される。
【0057】
本発明の抗体は、硫酸アンモニウムまたは硫酸ナトリウムによる沈降、その後の生理食塩水に対する透析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーまたはイオンアフィニティクロマトグラフィー、ならびにゲル濾過またはゾーン電気泳動を含む、当該分野において公知のいかなる方法によっても単離または精製され得る。本発明の抗体のための精製の好ましい方法は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーである。
【0058】
ヒト抗体をコードするDNAは、CDR以外の、対応するヒト抗体領域およびヒト由来CDRをコードするDNAから実質的または排他的に由来する、ヒトの定常領域および可変領域をコードするDNAを組み合わせることによって調製されることができる。
【0059】
抗体のフラグメントをコードするDNAの好適な供給源は、ハイブリドーマ細胞および脾臓細胞のような全長抗体を発現する任意の細胞を含む。フラグメントは、抗体等価物としてそれら自身で使用され得るか、または上記に記載されるような等価物へと組換えられ得る。この節において記載されるDNA欠失および組換えは、周知の方法によって実行され得る。DNAの別の供給源は、当該分野において知られているような抗体のファージディスプレーライブラリーである。本発明の例示された抗体は、ハイブリドーマ技術によって免疫化マウスから作製された。
【0060】
あるいは、本発明は、発現配列、プロモーター配列、およびエンハンサー配列に操作可能に連結された既に記載されたポリヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを提供する。細菌のような原核生物系および限定されないが、酵母および哺乳動物の細胞培養系を含む真核生物系における抗体ポリペプチドの効果的な合成のための種々の発現ベクターが開発されている。本発明のベクターは、染色体、非染色体、および合成DNA配列のセグメントを含むことができる。
【0061】
任意の好適な発現ベクターが使用されることができる。例えば、原核生物系クローニングベクターは、colE1、pCR1、pBR322、pMB9、pUC、pKSM、およびRP4のようなE.coli由来のプラスミドを含む。原核生物系ベクターはまた、M13および他の線状単鎖DNAファージのようなファージDNA誘導体を含む。酵母において有用なベクターの例は、2μプラスミドである。哺乳動物細胞における発現のために好適なベクターは、上述されるような機能的哺乳動物ベクターと機能的プラスミドおよびファージDNAとの組み合わせに由来する、SV−40の周知の誘導体、アデノウイルス、レトロウイルス由来DNA配列、およびシャトルベクターを含む。
【0062】
さらなる真核生物系発現ベクターが当該分野において公知である(例えば、P.J.SouthernおよびP.Berg,J.Mol.Appl.Genet.1:327−341(1982)、Subramaniら、Mol.Cell.Biol.1:854−864(1981)、KaufmannおよびSharp,J.Mol.Biol.159:601−664(1982)、Scahillら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:4654−4659(1983)、ならびにUrlaubおよびChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220(1980))。
【0063】
本発明において有用な発現ベクターは、発現されるDNA配列またはフラグメントに操作可能に連結される少なくとも1つの発現制御配列を含有する。制御配列は、クローニングされたDNA配列の発現を制御および調節するためにベクター中に挿入される。有用な発現制御配列の例は、lac系、trp系、tac系、trc系、ファージλの主要なオペレーター領域およびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、酵母の解糖プロモーター、例えば、3−ホスホグリセリン酸キナーゼについてのプロモーター、酵母の酸ホスファターゼのプロモーター、例えば、酵母α−接合因子のプロモーターであるPho5、ならびにポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルス、およびシミアンウイルスに由来するプロモーター、例えば、SV40の初期プロモーターおよび後期プロモーター、ならびに原核細胞または真核細胞の遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列およびそれらのウイルスまたはそれらの組み合わせである。
【0064】
本発明はまた、前述された発現ベクターを含有する組換え宿主細胞を提供する。本発明の抗体は、ハイブリドーマ以外の細胞株において発現されることができる。本発明によるポリペプチドをコードする配列を含む核酸は、好適な哺乳動物宿主細胞の形質転換のために使用されることができる。
【0065】
特定の好みの細胞株は、高レベルの発現、目的のタンパク質の構成的発現、および宿主タンパク質からの最小の混入に基づいて選択される。発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当該分野において周知であり、限定されないが、NSO細胞(非分泌(0)マウス骨髄腫細胞)、マウス骨髄腫細胞、チャイニーズハイスター卵巣(CHO)細胞、胎仔ハムスター腎像(BHK)細胞、および他の多くのもののような多くの不死化細胞株を含む。好適なさらなる真核細胞は、酵母および他の真菌を含む。有用な原核生物宿主は、例えば、E.coli SG−936、E.coli HB 101、E.coli W3110、E.coli X1776、E.coli X2282、E.coli DHI、およびE.coli MRClのようなE.coli、Pseudomonas、Bacillus subtilisのようなBacillus、およびStreptomycesを含む。
【0066】
これらの本発明の組換え宿主細胞は、抗体またはそのフラグメントの発現を可能にする条件下で細胞を培養し、宿主細胞または宿主細胞を囲む培地から抗体またはそのフラグメントを精製することによって抗体またはそのフラグメントを産生するために使用されることができる。組換え宿主細胞における分泌のための発現された抗体またはフラグメントの標的化は、シグナルまたは分泌リーダーペプチドコード配列を目的の抗体コード遺伝子の5’末端に挿入することによって容易にされることができる(Shokriら、(2003)Appl Microbiol Biotechnol.60(6):654−64,Nielsenら、Prot.Eng.(1997)10:1−6およびvon Heinjeら、(1986)Nucl.AcidsRes.14:4683−4690を参照のこと)。これらの分泌リーダーペプチド要素は、原核生物配列または真核生物配列のいずれかに由来することができる。したがって、安定した、分泌リーダー配列が使用され、それはポリペプチドのN−末端に連結されて、そのポリペプチドの宿主細胞細胞質ゾルからの移動および培地中への分泌をさせるアミノ酸である。
【0067】
本発明の抗体は、さらなるアミノ酸残基に融合されることができる。そのようなアミノ酸残基は、おそらく単離を促すためのペプチドタグであることができる。特定の器官または組織への抗体のホーミングのための他のアミノ酸残基もまた企図される。
【0068】
本発明における抗体の調製のための別の実施形態は、挿入されたゲノムを産生するヒト抗体の実質的な部分を有し、かつ、内因性の抗体の産生を欠くようにされたトランスジェニック動物における本発明による抗体をコードする核酸の発現である。トランスジェニック動物は、限定されないが、マウス、ヤギ、およびウサギを含む。本発明の1つのさらなる実施形態は、搾乳期の間のポリペプチドの分泌のための、例えば、動物の乳腺における抗体コード遺伝子の発現を含む。
【0069】
哺乳動物に有効量の抗体を投与することによって、哺乳動物において腫瘍成長を処置する方法もまた、本発明によって提供される。本発明によって処置されるべき好適な腫瘍は、好ましくはTYRP1を発現する。いかなる特定の機構にも束縛されることを意図しないが、本発明の方法は、悪性黒色腫を含む癌細胞の増殖の処置を提供する。本発明の文脈における「処置」または「処置する」は、原因となる状態または疾患または障害と関連する望ましくない生理学的変化の進行を阻害すること、遅らせること、緩和すること、または逆転させること、状態の臨床症状を改善すること、あるいは状態の臨床症状の発現を予防することを含む、治療的処置を意味する。有益な臨床結果または所望の臨床結果は、限定されないが、検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず、症状の緩和、疾患または障害の程度の縮小、疾患または障害の安定化(すなわち、疾患または障害が悪くならない場合)、疾患または障害の進行の遅延または遅くすること、疾患または障害の改善または緩和、ならびに疾患または障害の寛解(部分的であるか全体的であるかに関わらない)を含む。「処置」はまた、処置を受けない場合に期待される生存に比べて生存を延長することも意味することができる。処置を必要とするものは、既に疾患を有するものを含む。1つの実施形態において、本発明は薬剤として使用されることができる。
【0070】
用語「黒色腫」は、限定されないが、黒色腫、転移性黒色腫、メラノサイトまたはメラノサイト関連母斑細胞のいずれかに由来する黒色腫、悪性黒色腫、黒色上皮腫、黒色肉腫、原位置の黒色腫、表在拡大型黒色腫、モジュラー黒色腫、黒子悪性黒色腫、末端部黒子黒色腫、侵襲性黒色腫、ならびに家族性非定形母斑および黒色腫(FAM−M)症候群を含む。本発明の1つの実施形態において、黒色腫は、癌の特定の形態である。別の実施形態において、黒色腫は悪性であることができる。本発明の1つの実施形態は、以下に記載されるように、本明細書において記載される抗TYRP1抗体を第一の黒色腫を処置するために使用することであり得る。別の実施形態において、本明細書中に記載される抗TYRP1抗体は、転移性黒色腫のための一次治療であり得、すなわち、それらは、新たに診断された転移性黒色腫の処置の第一段階において使用され得る。
【0071】
本発明の方法において、本発明の治療有効量の抗体が、それを必要とする哺乳動物に投与される。本明細書中に記載されるような障害の処置のための、本発明の組成物の有効な投与量は、処置が予防的であるか治療的であるかにかかわらず、投与手段、標的部位、患者がヒトであるか動物であるかにかかわらない患者の生理学的状態、投与される他の薬物を含む、多くの異なる因子に依存して異なる。本明細書中で使用される用語投与するは、求められる結果を達成することができる任意の方法によって本発明の抗体を哺乳動物に送達することを意味する。それらは、例えば、静脈内に、または筋肉内に投与されることができる。本発明のヒト抗体はヒトに投与されるために特に有用であるが、それらは、他の哺乳動物にも同様に投与されることができる。本明細書中で使用される用語哺乳動物は、限定されないが、ヒト、実験用動物、家庭用ペット、および家畜を含むことが意図される。治療有効量は、哺乳動物に投与された場合に、腫瘍成長を阻害するような所望の治療効果を生成するのに有効な本発明の抗体の量を意味する。処置投与量は、安全性および有効性を最適化するために、当業者に公知の所定の方法を使用して滴定され得る。
【0072】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗TYRP1抗体の「治療有効量」を含み得る。「治療有効量」は、必要な投与量および期間で、所望の治療結果を達成するのに有効な量を意味する。抗体の治療有効量は、疾患の状態、個体の年齢、性別、および体重のような因子、ならびに抗体の能力または個体において所望の反応を引き起こす抗体部分によって異なり得る。治療有効量はまた、治療的に有効な効果が、抗体または抗体部分の毒性または有害作用を上回る量である。投薬養生法は、最適な所望の反応(例えば、治療的反応または予防的反応)を提供するために調整され得る。
【0073】
そのような疾患の同定は、十分に当業者の能力と知識の範囲内である。例えば、悪性黒色腫を患うヒト個体または臨床的に重篤な症状を発症する危険のあるヒト個体は、本発明の抗TYRP1抗体の投与に適している。
【0074】
本発明の抗TYRP1抗体は、治療的処置のために、悪性黒色腫を患う患者に腫瘍または病態の進行を阻害または低減するのに十分な量で投与される。進行は、腫瘍または病態の成長、侵襲性、転移、および/または再発を含む。これを遂行するのに適した量は、治療有効投与量と定義される。この使用のために有効な量は、疾患の重篤度および患者自身の免疫系の全体的な状態に依存するだろう。投薬スケジュールもまた、疾患の状態および患者の状況によって異なり、典型的には、単一ボーラス投薬または持続注入から(例えば、4〜6時間毎の)一日あたり複数回の投与まで、または処置する医師および患者の状態によって指示されるように変動するだろう。本発明の抗体の治療有効量についての、例示的な、非限定的範囲は、0.1〜50mg/kg、より好ましくは3〜35mg/kg、そしてより好ましくは5〜20mg/kgである。投与量および投与頻度は、患者を処置する医師によって決定され、そして1mg/kg未満〜100mg/kgを超える連日投与、1週あたり3回、1週に1回、2週ごとに1回、またはそれより少ない頻度の投与量を含み得る。投与あたりの投与量は、1〜100mg/kg、2〜75mg/kg、または5〜60mg/kgの範囲であり得る。しかしながら、本発明がいずれの特定の投与量にも限定されないことが注意されるべきである。
【0075】
本発明の実施形態において、抗TYRP1抗体は、1種以上の他の抗腫瘍性薬剤と組み合わせて投与されることができる。化学療法剤、放射線、またはそれらの組み合わせのような任意の好適な抗腫瘍性薬剤が使用されることができる。抗腫瘍性薬剤は、アルキル化剤または代謝拮抗物質であることができる。アルキル化剤の例は、限定されないが、シスプラチン、シクロホスファミド、メルファラン、およびダカルバジン(DTIC)を含む。インビボ研究は、20D7をダカルバジン(DTIC)と組み合わせて投与することが、ヒト624mel異種移植片に対して、単一療法に比べて強い抗腫瘍活性を実証することを示す。本発明の1つの実施形態において、本明細書中に記載される抗TYRP1抗体は、ダカルバジンと組み合わせて与えられる。代謝拮抗物質の例は、限定されないが、ドキソルビシン、ダウノルビシン、パクリタキセル、イリノテカン(CPT−11)、およびトポテカンを含む。抗腫瘍性薬剤が放射線である場合、放射線の供給源は、処置される患者に対して外側(外部ビーム照射療法−EBRT)または内側(近接照射療法−BT)のいずれかであることができる。投与される抗腫瘍性薬剤の投与量は、例えば、薬剤のタイプ、処置される腫瘍のタイプおよび重篤度、ならびに薬剤の投与経路を含む、数多くの因子に依存する。しかしながら、本発明がいかなる特定の投与量にも限定されないことが強調されるべきである。
【0076】
本発明において、任意の好適な方法または経路が、本発明の抗TYRP1抗体を投与するために、そして場合により抗腫瘍性薬剤および/または他の受容体のアンタゴニストと同時投与するために使用されることができる。本発明により利用される抗腫瘍性薬剤養生法は、患者の腫瘍性状態の処置に最も適していると考えられる任意の養生法を含む。異なる悪性腫瘍は、特定の抗腫瘍抗体および特性の抗腫瘍性薬剤の使用を必要とし得、それは患者ごとに決定されるだろう。投与の経路は、例えば、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、または筋肉内投与を含む。非経口経路が好ましい。しかしながら、本発明がいかなる特定の投与の方法または経路にも限定されないことは強調されるべきである。
【0077】
本発明の別の態様において、本発明の抗TYRP1抗体は、化学的または生合成的に1種以上の抗腫瘍性薬剤または抗血管形成薬剤に連結されることができる。
【0078】
本発明は、検出可能なシグナル生成因子が抗体に結合体化される診断系において、例として抗腫瘍性薬剤、他の抗体または受容体(例えば、放射線標識されたアイソトープ)を含む、標的部分または受容体部分に連結された抗TYRP1抗体をさらに企図する。
【0079】
予防または処置の目的のための哺乳動物において使用される場合、本発明の抗TYRP1抗体が、医薬的に許容可能なキャリアをさらに含む組成物の形態で投与されるだろうことは理解される。好適な医薬的に許容可能なキャリアは、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1種以上、ならびにそれらの組み合わせを含む。医薬的に許容可能なキャリアは、結合タンパク質の保存期間または有効性を増強する湿潤剤または乳化剤、保存剤、あるいは緩衝剤のような少量の補助物質をさらに含むことができる。注射の組成物は、当該分野において周知であるように、哺乳動物への投与後の活性成分の素早い、持続した、または遅延した放出を提供するために処方されることができる。
【0080】
さらに、本発明の範囲内に含まれるのは、当該分野において周知の研究法または診断法のための、本発明の抗体のインビボおよびインビトロでの使用である。診断法は、本発明の抗体を含有するキットを含む。
【0081】
1つの実施形態において、本発明は、TYRP1に特異的なヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントである。別の実施形態において、本発明は、TYRP1に特異的なキメラモノクローナル抗体またはそのフラグメントである。別の実施形態において、抗体のCDR領域は、CTA99のCDR領域と同一である。異なる実施形態において、抗体のCDR領域は、20D7または20D7SのCDR領域と同一である。
【0082】
1つの実施形態において、抗体は、本明細書中に記載される表面プラスモン共鳴によって測定されるように、実験室の周囲温度(20℃−25℃)において1.7×10−41/s(sec−1、1/秒)〜5×10−41/sの解離速度定数(Kまたはkoff)でTYRP1に結合する。別の実施形態において、抗体は、1.7×10−41/s〜3.5×10−41/sのKまたはkoffでTYRP1に結合する。さらなる実施形態において、抗体は、同じ条件下で20D7、20D7S、またはCTA99について決定された解離速度定数の10%以内の、表面プラスモン共鳴によって測定された解離速度定数でTYRP1に結合する。
【0083】
本発明の1つの実施形態は、表1および表2におけるCDRからなる群から選択される1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含む、TYRP1に特異的なモノクローナル抗体またはそのフラグメントを含む。別の実施形態において、本発明は、配列:RASQSVSSYLA(配列番号4)を有する軽鎖CDR1領域を有する、TYRP1に特異的なモノクローナル抗体またはそのフラグメントである。別の実施形態において、本発明は、配列:RYSSSWYLDY(配列番号3)を有する重鎖CDR3領域を有する、TYRP1に特異的なモノクローナル抗体またはそのフラグメントである。異なる実施形態において、本発明は、(i)20D7、20D7S、およびCTA99からなる群から選択される軽鎖可変領域、および(ii)20D7、20D7S、およびCTA99からなる群から選択される重鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体またはそのフラグメントである。別の実施形態において、本発明は、(i)CTA99の軽鎖可変領域、(ii)CTA99の重鎖可変領域、および(iii)ヒト免疫グロブリンG(hIgG)定常領域を含む、TYRP1に特異的なモノクローナル抗体またはそのフラグメントである。
【0084】
本発明の別の実施形態は、既に記載されるいずれかの実施形態の抗体またはそのフラグメントの有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において癌を処置する方法である。本発明はまた、悪性黒色腫を処置する方法も提供する。本発明によって提供される別の処置方法は、本発明の抗体またはそのフラグメントを使用することと、さらなる抗癌剤または抗癌処置を施すことを合わせる。1つの処置方法において、抗癌剤はダカルバジン(DTIC)である。
【0085】
本明細書中に開示される原理の変化が、当業者によってなされ得ることは理解および期待されるべきであり、そして、そのような変更が本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0086】
本明細書中で言及された全ての文献は、全体として援用される。
【実施例】
【0087】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するが、決して本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。しかしながら、それらは、決して本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。ベクターおよびプラスミドの構築、そのようなベクターおよびプラスミド中へのポリペプチドをコードする遺伝子の挿入、宿主細胞中へのプラスミドの導入、ならびに遺伝子および遺伝子産物の発現およびその決定において利用される方法のような従来の方法の詳細な説明は、Sambrook,J.ら、(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを含む数多くの出版物から得られることができる。
【0088】
動物および細胞株
SKmel28、SKmel23、624mel、1102mel、およびA375を、10%の加熱不活性化したウシ胎仔血清(HyClone Laboratories,Logan,UT)と共にRPMI 1640(Invitrogen Life Technologies)中で維持し、マイコプラズマ混入について定期的に試験する。SKmel23およびSKmel28は、Alan Houghton博士(Memorial Sloan−Kettering Cancer Center,New York,NY)によって提供された。624melおよび1102melを、Steve Rosenberg博士(National Cancer Institute,Bethesda,MD)から入手した。A375を、American Type Culture Collection(Manassas,VA)から購入した。6〜8週齢の雌性Nu/Nuマウスを、Taconic Farms(Germantown,NY)から購入した。
【0089】
ヒト抗TYRP1抗体およびキメラ抗TYRP1抗体の発現および精製
各抗体について、PCRクローニングのような好適な方法によって、好適な重鎖ヌクレオチド配列、例えば、(それぞれ20D7、20D7S、およびCTA99について)配列番号21、配列番号22、または配列番号23を、好適な発現プラスミド、例えば、pGSHC中に操作し、そして、好適な軽鎖ヌクレオチド配列、例えば、(それぞれ20D7/20D7S、およびCTA99について)配列番号26または配列番号27を、好適な発現プラスミド、例えば、pGSLC中に操作する。安定した細胞株を確立するために、エレクトロポレーションおよび透析されたウシ胎仔血清およびグルタミンシンテターゼを補完したグルタミン不含Dulbecco変更イーグル培地のような好適な培地における培養によって、NSO細胞のような好適な宿主細胞株において線状化した重鎖および軽鎖プラスミドと同時トランスフェクトする。酵素免疫測定法(ELISA)によって、クローンを抗体発現についてスクリーニングし、スピナーフラスコにおける培養のために最も高い産生クローンを選択する。プロテインAアフィニティクロマトグラフィーのような好適な方法によって、抗体を精製する。
【0090】
本発明の1つの実施形態は、細胞表面に発現されたチロシナーゼ関連タンパク質−1(TYRP1またはTRP1)を標的化する全長IgG1κである、組換えヒトモノクローナル抗体20D7である。抗体は、ヒトγ−1重鎖(HC)(サブグループI)およびヒトκ軽鎖(サブグループIII)からなる。20D7は、高親和性でのヒトTYRP1に対する選択的結合および介在性の強力な抗腫瘍活性を、免疫エフェクター機能の活性化に関与する機構による異種移植片モデルにおいて示された。
【0091】
本発明の1つの実施形態は、細胞表面に発現されたチロシナーゼ関連タンパク質−1(TYRP1またはTRP1)を標的化する全長IgG1κである、組換えヒトモノクローナル抗体20D7Sである。抗体は、ヒトγ−1重鎖(HC)(サブグループI)およびヒトκ軽鎖(サブグループIII)からなる。20D7Sを、さらにより安定な分子を生成するする目的で作製した、すなわち、重鎖可変領域(C47)内の遊離システイン残基を、部位特異的突然変異誘発によってセリン残基へと変換した。この不対システインまたは遊離システインは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドとの鎖内および鎖間のジスルフィド結合に関与する他のシステインと誤対合する可能性を有する。誤対合することは、正しくない折り畳みおよびプロセシングを生じる可能性があり、生成物の多様性および潜在的なその安定性を高め得る。本明細書中に記載されるSDS PAGEゲル分析は、20D7の調製における遊離軽鎖および遊離重鎖の存在を確認するが、遊離軽鎖および遊離重鎖の存在は、20D7Sの調製において低減または除去される。
【0092】
本発明の別の実施形態は、ヒト定常領域IgG1とのキメラ抗体である、CTA99である。マウス抗体TA99(米国特許第4798790号)は、2つの軽鎖を含有し、1つのTA99軽鎖はTYRP1に特異的であり、他方の軽鎖は親のマウス骨髄腫細胞に由来する。混入した軽鎖がTYRP1に結合できないために、活性は減少される。CTA99を、この不具合を修正し、それによって活性を改良するように構築した。本発明の1つの実施形態において、CTA99を、2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖で設計した。本明細書中に記載される研究は、CTA99の増大された活性および結合親和性、ならびにヒトにより適したエフェクター機能を例示する。
【0093】
表1および表2は、本発明の種々のCDRのアミノ酸配列および配列番号を提供する。表3は、本発明に関する種々の配列の配列番号を提供する。以下に開示されるアミノ酸配列をコードするポリ核酸配列もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0094】
表1:20D7抗体および20D7S抗体のアミノ酸配列
重鎖および軽鎖の可変領域CDR
【表1】

【0095】
表2:CTA99抗体のアミノ酸配列
重鎖および軽鎖の可変領域CDR
【表2】

【0096】
表3:20D7抗体、20D7S抗体、およびCTA99抗体のアミノ酸配列の配列番号
【表3】

【0097】
表3に示すように、実験に使用された抗体は、シグナル配列を有さない完全長重鎖および軽鎖を含んだ。
【表4】

ND =未決定
ND =未決定
【0098】
競合酵素免疫測定法(ELISA)
ファルコン軟性96ウェル平底プレートを、組換えヒトTYRP(0.5ug/mL×50μL)で、4℃で一晩コーティングする。次の日、プレートを、0.1%Twenn−20を含有するPBS中の5%FBSで、2時間室温でブロッキングする。100μLサンプル中の様々な量の抗体を添加する。プレートを、PBS/Tweenで3回洗浄し、100μL中1:5000に希釈した100μLのホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体化ヤギ抗ヒト抗体(Biosource,Camarillo,CA)をプレートに添加し、1時間室温(20〜25℃)でインキュベートする。プレートを3回洗浄し、50μL/ウェルの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB;KPL,Gaithersburg,MD)基質をプレートに添加する。マイクロプレートリーダー(例えば、Molecular Devices)を使用して、450nmでプレートを読み取る。
【0099】
表5:酵素免疫測定法(ELISA)
【表5】

【0100】
最小有効濃度の半分(EC50)を、モル濃度(M)で測定する。ヒト20D7、ヒト20D7S、およびCTA99を含む抗体は、ELISAアッセイにおいてヒトTYRP1に対する特異的結合を示す。
【0101】
フローサイトメトリ
624mel細胞を、1時間氷上で、1% BSA/PBS中の5μg/mLヒトIgGまたは抗TYRP1 Mabのいずれかで処理する。細胞を、1% BSA/PBS中で3回洗浄し、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識されたヤギ抗ヒトIgGで1時間インキュベートする。細胞を洗浄し、Epics XL Flow Cytometer(Coulter)のような好適なフローサイトメーターによって分析する。フローサイトメトリ分析は、本明細書中に例示される20D7S抗体がコントロールヒトIgGに比べて、ヒト細胞株SKmel28およびSKmel23を発現する天然TYRP1に対して結合を示すことを示す。同様に、フローサイトメトリ分析は、本明細書中に例示されるCTA99抗体および20D7抗体がコントロールヒトIgGに比べて、ヒト細胞株624melを発現する天然TYRP1に対して結合を示すことを示す。
【0102】
表面プラスモン共鳴/Biacore分析
抗体の組換えヒトTYRP1への結合反応速度を、表面プラスモン共鳴、例えば、Biacoreバイオセンサー(Pharmacia)を使用して実験室の周囲温度(20℃−25℃)において測定する。TYRP1タンパク質を、CM5リサーチグレードセンサーチップ上に固定し、抗体を、0.5nM〜100nMの範囲の濃度で注入する。各濃度についてセンサーグラムを獲得し、BIA Evaluations 3.2プログラムを使用して評価して、速度定数konおよびkoffを決定する。koffとも呼ばれるKは、解離反応の速度定数である。konとも呼ばれるKは、結合反応の速度定数である。Kは、結合親和性の指標であり、Kを、モル濃度(M)で測定した速度定数koff/konの比率から計算する。本明細書中に例示される抗体TA99,CTA99、20D7、および20D7SについてのK、K、およびKが、以下の表6において要約される。
【0103】
表6:抗体の組換えヒトTYRP1に対する結合反応速度
【表6】

【0104】
20D7および20D7SのヒトTYRP1への結合のBiacore分析は、実質的な特異的結合親和性を実証する。したがって、20D7および20D7Sは、治療抗体についての有効な候補物である。
【0105】
補体依存性細胞毒性(CDC)アッセイ
ヒト黒色腫細胞株624melを3回洗浄し、AIM V培地(Invitrogen Life Technologies)のような好適な培地において10生存細胞/mLの濃度にする。100μLの細胞を96ウェル丸底ファルコンプレートに平板培養し、37℃で1時間、1:3に希釈された3.7μg/mLで開始して、MAb 20D7またはhIgG(Jackson Immunoresearch,West Grove,PA)でインキュベートする。50μl/ウェルでAIM V中に1:5に希釈された低−Tox−Mウサギ補体(Cedarlane Labs,Westbury,NY)を添加し、37℃で1時間インキュベートする。細胞を、トリパンブルー(Invitrogen Life Technologies)を用いて生死について数える。
【0106】
表7は、CDCアッセイにおける種々の抗体濃度での細胞毒性の割合を示す。データは、20D7抗体およびCTA99抗体が、インビトロでTYRP1(+)ヒト624mel細胞に対してCDCを誘発することを実証する。20D7は、624mel細胞の投与量依存性補体介在性細胞溶解を引き起こし、3.7μg/mLの抗体濃度でこのアッセイにおいて完全な細胞溶解に到達した。したがって、20D7およびCTA99においてCDCについて強い免疫エフェクター反応が存在する。特異的溶解(%)=試験細胞毒性(%)−陰性コントロール細胞毒性(%)
【0107】
表7:20D7およびCTA99による補体活性化を実証するCDCデータ
【表7】

【0108】
インビトロでのヒト黒色腫に対する抗体依存性細胞毒性(ADCC)
624mel細胞を、AIM V培地(Invitrogen Life Technologies)のような好適な培地で回収および洗浄し、細胞を、96ウェルファルコンU底プレートにおいて、100μL容量で10,000細胞/ウェルの密度で平板培養する。抗体を、50μL容量中の5μg/mLで添加し、標的細胞とともに37℃で0.5時間インキュベートする。エフェクター細胞を、種々のE:T(エフェクター:標的)比で50μLの容量で添加した。プレートを、37℃で4時間さらにインキュベートした。インキュベーション後、プレートを、800gで沈降させ、100μLの上清を96ウェル平底プレートに静かに移した。乳酸脱水素酵素アッセイ試薬を、製造者(Roche)によって規定されるように添加し、プレートを、490nmで読み込んだ。アッセイにおけるコントロール:標的自然発生および標的最大(50μLの4%トリトンを添加することによる)。
【0109】
溶解は、100:1のE:T比において起こる標的細胞の50%の溶解で、標的濃度に対するエフェクターに依存する。固定された濃度(5μg/mL)で、20D7およびCTA99は、624mel細胞の溶解を活性化する。表8は、ADCCアッセイにおける腫瘍細胞比(E:T比)に対して、種々のエフェクター細胞の存在下での細胞毒性の割合を示す。20D7S抗体、20D7抗体、およびCTA99抗体は、インビトロでTYRP1(+)ヒト624mel細胞に対してADCCを誘発する。20D7S、20D7およびCTA99においてADCCについて強い免疫エフェクター反応が存在する。
細胞毒性(%)=(実験−標的自然発生)/(標的最大−標的自然発生)×100
【0110】
表8:インビトロでのヒト黒色腫に対するADCC
【表8】

【0111】
20D7Sおよび20D7安定性アッセイ
20D7および20D7Sを、SDS−PAGEゲル中に充填する(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)。BioRad装置を使用して、ブロモフェノールブルー色素が出るまでゲルを泳動する。分離されたタンパク質を、クマシー色素を使用して視覚化する。
【0112】
SDS PAGE分析において、より安定な分子は、もしあれば多少の遊離軽鎖および遊離重鎖はあるが、単一のバンドとして見られ、遊離軽鎖および遊離重鎖の存在は、あまり安定でない分子の証拠である。20D7のSDS PAGEゲルは、明らかな遊離軽鎖および遊離重鎖の存在を示した。20D7SのSDS PAGEゲルは、遊離軽鎖および遊離重鎖をほとんど示さなかった。したがって、20D7Sは、20D7よりも安定なIgG1分子である。
【0113】
CTA99および20D7は、ヒト黒色腫異種移植片を有効に処置する。
以下の皮下研究について、腫瘍体積を、式[π/6(W1×W2×W2)]によって計算する(式中、W1は最も大きな腫瘍直径を表し、そしてW2は最も小さい腫瘍直径を表す)。T/C(%)=100×(処置体積/開始体積)/(コントロール体積/開始体積)。統計学的分析を、伝統的なp値技術を使用して行う。皮下研究について、p値を、抗TYRP抗体を受ける動物の腫瘍体積 対 コントロール動物の腫瘍体積に基づいて計算する。
【0114】
以下の転移性研修について、腫瘍阻害を、肺表面小節を数えることによって測定する。阻害(%)=100×(コントロール小節数−処置小節数)/(コントロール小節数)。統計学的分析を、伝統的なp値技術を使用して行う。転移性研究について、p値を、抗TYRP抗体を受ける動物において観察される小節 対 コントロール動物において観察される小節に基づいて計算する。
【0115】
ヒト黒色腫の異種移植片モデルに対するインビボでの抗TYRP1抗体の単剤活性
624mel培養細胞を、MatrigelおよびRPMI 1640培地(加熱不活性化された10% FBS)の50/50溶液において回収、洗浄、および再懸濁する。皮下腫瘍モデルについて、2×10個の細胞を、ヌードマウスの左側腹中に皮下注射する。腫瘍が200mmに到達したとき、マウスを、抗TYRP1抗体またはコントロールヒトIgGで処置する、すなわち、抗体1mg/マウスを1週につき3回投与する。腫瘍を、週に2回カリパスで測定し、T/C(%)を計算する。
【0116】
ヒト黒色腫の異種移植片モデルに対するインビボでの抗TYRP1抗体の単剤活性について、SKmel28異種移植片の成長を、ヒトIgGコントロールと比較して20D7処置によって阻害した(43日目において、T/C=51%;P=0.01)。確立された624mel腫瘍はまた、20D7処置よりも有意に阻害されたことが示された。腫瘍成長は阻害され、抗体処置の開始後16日目に統計的に有意に達した(T/C=44%;P=0.01)。さらなるヒト黒色腫異種移植片を、20D7の抗腫瘍活性について評価した。細胞株A375および1102melは、抗体処置後11日目に単剤の20D7によって有意に阻害されることが示された(A375および1102melについて、それぞれ、T/C=42%;P=0.01およびT/C=43%;P=0.004)。様々な種から得た皮膚の溶解物を室温で2時間TA99(5μg/ml)とともに培養した。次にその溶解物を蛋白質Aで沈殿させ、4つの12%勾配ゲルを用いて減圧および非減圧条件下でSDS−PAGEにかけた。電気泳動の後、ゲルをPVDF膜(Invitrogen Life Technologies)に移した。その膜を20D7S(5μg/ml)、次にHRP標識抗ヒトIgG(Zymed、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)で調べた。ブロットを化学発光基質(KPL、メリーランド州ゲイサーバーグ)を用いて発光させた。20D7は、マウスTYRP1と容易に相互反応する。しかしながら、明白な細胞毒性は、20D7で処置されたどの動物においても見出されなかった。体重および全体の外観は、ヒトIgGコントロール処理マウスに対して、20D7処置動物において顕著に異なることはなかった。
【0117】
ヒト黒色腫の異種移植片モデルに対するインビボでの抗TYRP1抗体の単剤用量反応活性
Skmel28細胞を、MatrigelおよびRPMI 1640培地(加熱不活性化された10% FBS)の50/50溶液において混合する。2×10個の細胞を、ヌードマウスの左側腹中に皮下注射する。腫瘍が200mmに到達したとき、マウスを、抗TYRP1抗体(6mg/kg、20mg/kg、または60mg/kg)またはコントロールヒトIgGで1週につき3回処置する。腫瘍を、週に2回カリパスで測定し、T/C(%)を計算する。
【0118】
Skmel28異種移植片に対する20D7の用量反応研究は、用量依存性抗腫瘍反応を示した。6mg/kg用量においても、腫瘍は、20D7によって顕著に阻害された(T/C=69%;P<0.0001)。各用量における抗腫瘍効果は、統計学的に有意であった:6mg/kgおよび20mg/kg(T/C=50%;P=0.04)、6mg/kgおよび60mg/kg(T/C=19%;P<0.003)。
【0119】
2つの転移性黒色腫モデルにおける抗TYRP1抗体のインビボでの単剤活性
B16BL6は、攻撃的かつ自然発生的に生じるマウス黒色腫である。それは、静脈内投与の後に、ヌードマウスにおいて肺転移を形成する。培養されたSKmel23およびB16BL6細胞黒色腫細胞を、RPMI 1640培地(加熱不活性化された10% FBS)において回収、洗浄、および再懸濁する。
【0120】
モデル1:1×10個のB16BL6細胞を静脈内に注射する。腫瘍注射の二日後に、3つの異なる用量濃度(200μg/マウス、500μg/マウス、および1mg/マウス)にしたがって、マウスに抗TYRP1抗体またはコントロールヒトIgGを投与する。20日目にマウスを犠牲にし、肺を除去し、肺表面の小節を数え、阻害率を計算する。
【0121】
重度の転移を、ヒトIgG処置マウスにおいて肺の表面上に検出し、有意に少ない転移が、20D7処置動物において見られる。20D7の全ての3つの濃度は、肺転移のレベルを低減する(それぞれ、阻害=65%、74%、および95%)。
【0122】
モデル2:1×10個のヒトSLmel23細胞を静脈内に注射する。腫瘍注射の二日後に、2つの異なる用量濃度(200μg/マウスおよび500μg/マウス)にしたがって、マウスに抗TYRP1抗体またはコントロールヒトIgGを投与する。20日目にマウスを犠牲にし、肺を除去し、肺表面の小節を数え、阻害率を計算する。
【0123】
転移性小節は、200μg/用量および500μg/用量での20D7およびCTA99での処置によって有意に低減される。20D7は、転移をそれぞれ58%および73%低減した。CTA99は、転移をそれぞれ63%および75%低減した。これらの結果は、2つの別個のモデルにおいて黒色腫転移が20D7およびCTA99によって阻害されることを実証する。
【0124】
ヒト黒色腫の皮下異種移植片モデルおよび転移性モデルに対する、腫瘍成長の20D7および20D7S阻害のインビボ比較研究
皮下腫瘍モデルについて、624mel培養細胞を、MatrigelおよびRPMI 1640培地(加熱不活性化された10% FBS)の50/50溶液において、回収、洗浄、および再懸濁し、次いで、2×10個の624mel細胞を、ヌードマウスの左側腹中に皮下注射する。腫瘍が200mmに到達したとき、マウスを、20D7または20D7Sで、1週につき2回、40mg/kgで処置する。腫瘍を、週に2回カリパスで測定し、T/C(%)を計算する。624mel皮下異種移植片モデルにおいて、20D7で阻害された腫瘍の成長はT/C=21%であり、20D7SについてはT/C=25%である。20D7および20D7Sの両方が、異種移植片モデルにおいて腫瘍の成長を阻害した。
【0125】
転移性モデルについて、888mel培養細胞を、RPMI 1640培地(加熱不活性化された10% FBS)において、回収、洗浄、および再懸濁し、888mel細胞を、静脈内注射する。腫瘍注射の二日後に、マウスに抗TYRP1抗体またはコントロールヒトIgGを投与する。20日目にマウスを犠牲にし、肺を除去し、肺表面の小節を数え、阻害率を計算する。ヌードマウスにおける888melの転移モデルにおいて、20D7および20D7Sの両方が、肺表面の転移を有意に阻害した:20D7阻害=77%、p=0.0005;20D7S阻害=80%、p=0.0005。20D7および20D7Sの両方が、転移性モデルにおいて黒色腫の転移を低減した。
【0126】
20D7およびダカルバジン(DTIC)の併用療法は、ヒト異種移植片に対して、単一療法と比較してより強い抗腫瘍活性を実証した。
皮下腫瘍モデルについて、培養された624mel細胞を、MatrigelおよびRPMI 1640培地(加熱不活性化された10% FBS)の50/50溶液において、回収、洗浄、および再懸濁する。2×10個の624mel細胞を、ヌードマウスの左側腹中に注射する。腫瘍が200mmに到達したとき、マウスを、抗TYRP1抗体、DTIC、または抗TYRP1抗体とDTICの併用で処置する。40mg/kgの抗体を1週につき1回投与する。DTIC 5mg/kgを1週につき1回投与する。腫瘍を、週に2回カリパスで測定し、T/C(%)を計算する。転移性モデルについて、培養されたSKmel23、888mel、およびB16黒色腫細胞を、RPMI 1640培地(加熱不活性化された10% FBS)において、回収、洗浄、および再懸濁する。SKmel23、888mel、およびB16黒色腫細胞を、静脈内注射する。腫瘍注射の二日後に、マウスに抗TYRP1抗体またはコントロールヒトIgGを投与する。20日目にマウスを犠牲にし、肺を除去し、肺表面の小節を数え、阻害率を計算する。
【0127】
皮下モデルで証明されているように、20D7およびDTICの併用療法は、20D7(p<0.001)またはDTIC(p<0.001)単独よりも、有意に良好に腫瘍の成長を阻害した。
【0128】
表9:20D7のインビボでの抗腫瘍活性の要約
【表9】

【0129】
表9は、4つのモデルにおける20D7またはDTIC単剤投与と比較した20D7Sのインビボでの抗腫瘍活性を要約する。20D7のインビボでの抗腫瘍活性を、転移性モデルにおける阻害(%)によって示す(は、統計学的有意を示し、NDは決定されていないことを示す)。インビボでの20D7の抗腫瘍活性を、皮下モデルにおけるT/C(%)によって示す。20D7とダカルバジン(DTIC)とを組み合わせた処置は、単一療法と比較してより強い抗腫瘍活性を実証した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解離定数Kを0.1x10−9Mから1.6x10−9Mの範囲にてヒトTYRP1(配列番号28)に特異的に結合するモノクローナル抗体であって、Kは実験室の周囲温度(20℃−25℃)において表面プラスモン共鳴により決定される、モノクローナル抗体。
【請求項2】
0.1x10−9Mから0.8x10−9Mの範囲のKを有する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
配列GYTFTSYAMN(配列番号1)を有するCDRH1、配列WINTNTGNPTYAQGFTG(配列番号2)を有するCDRH2、配列RYSSSWYLDY(配列番号3)を有するCDRH3、配列RASQSVSSYLA(配列番号4)を有するCDRL1、配列DASNRAT(配列番号5)を有するCDRL2、および配列QQRSNWLMYT(配列番号6)を有するCDRL3を含む、請求項1または2の抗体。
【請求項4】
アミノ酸配列:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWLMYTFGQGTKLEIK(配列番号16)を含むVLおよびアミノ酸配列:
QVQLVQSGSELKKPGASVKISCKASGYTFTSYAMNWVRQAPGQGLECMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSMDTSVSTAYLQISSLKAEDTAIYYCAPRYSSSWYLDYWGQGTLVTVSS(配列番号13)を含むVH、またはアミノ酸配列:
QVQLVQSGSELKKPGASVKISCKASGYTFTSYAMNWVRQAPGQGLESMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSMDTSVSTAYLQISSLKAEDTAIYYCAPRYSSSWYLDYWGQGTLVTVSS(配列番号14)を含むVH
を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
完全なヒトまたはキメラ抗体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
完全なヒト抗体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
ヒト定常領域を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
重鎖定常領域がヒトIgG1またはその誘導体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
(i)配列番号29の重鎖および配列番号32の軽鎖、または
(ii)配列番号30の重鎖および配列番号32の軽鎖
を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
配列番号29の2つの重鎖および配列番号32の2つの軽鎖を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項11】
配列番号30の2つの重鎖および配列番号32の2つの軽鎖を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項12】
ヒトTYRP1に特異的に結合する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体のいずれかのフラグメント。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗体またはフラグメントをコードする核酸配列を含む、単離されたポリ核酸。
【請求項14】
コードされた抗体またはフラグメントが発現され得るように、発現制御要素に操作可能に連結された請求項13に記載のポリ核酸を含む発現ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載の発現ベクターを含む組換え細胞であって、請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗体またはフラグメントを産生することができる、組換え細胞。
【請求項16】
抗体またはフラグメントが産生されるように請求項15に記載の組換え細胞を培養し、そして抗体またはフラグメントを培養物から回収することによって産生される抗体またはフラグメント。
【請求項17】
請求項1〜12または16のいずれか1項に記載の抗体またはフラグメントを、医薬的に許容可能なキャリア、希釈剤、または賦形剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項1〜12または16のいずれか1項に記載の抗体および追加の抗癌剤を含む製品、あるいは治療において同時使用、分離使用または連続使用による併用治療。
【請求項19】
請求項18に記載の製品であり、抗癌剤がデカルバジンである製品。
【請求項20】
薬剤として使用するための、請求項1〜12または16のいずれか1項に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項21】
癌の処置において使用するための、請求項1〜12または16のいずれか1項に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項22】
前記癌が悪性黒色腫である、請求項19に記載の抗体またはフラグメント。

【公表番号】特表2011−516041(P2011−516041A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550830(P2010−550830)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/036739
【国際公開番号】WO2009/114585
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(508188662)イムクローン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (23)
【氏名又は名称原語表記】Imclone LLC
【Fターム(参考)】