説明

抗VEGFモノクローナル抗体およびその抗体を含む薬学的組成物

本発明は、抗VEGFモノクローナル抗体であって、その重鎖の可変ドメインが配列番号l、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列を含み、および/またはその軽鎖の可変ドメインが配列番号4、配列番号5、および配列番号6のアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体を提供する。該抗体は保存番号CGMCC No.3233の細胞系から産生される。本発明はまたVEGF関連疾患を治療するための薬物を調製する際の該抗体の使用も提供し、該抗体を含む薬学的組成物、薬剤、キット及びチップ、並びに、保存番号CGMCC No.3233の細胞系も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体が参照により組み込まれる、「Anti−VEGF Monoclonal Antibody and Pharmaceutical Composition Comprising Said Antibody(抗VEGFモノクローナル抗体およびその抗体を含む薬学的組成物)」という表題の2009年8月28日に出願された中国特許出願第200910171550.9号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、遺伝子操作された抗体の技術分野に関し、特に血管内皮増殖因子(VEGF)と特異的に結合する遺伝子操作された抗体、ならびにその抗体を含む薬学的組成物およびキットに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
血管内皮増殖因子(VEGF)は、インビボで血管形成を誘導することが可能である、血管内皮細胞に特異的なヘパリン結合増殖因子である。ヒトVEGFタンパク質は、1989年に米国人科学者によって成功裏に精製および同定され、彼はまた、その遺伝子をクローニングし、その遺伝子配列を決定した。
【0004】
VEGFは血管形成を促進することが可能である。VEGFファミリーのすべてのメンバーが、結合する細胞の表面上の対応する受容体(VEGFR)を通して細胞反応を活性化することが可能であり、これらはリン酸化によって二量体化され、活性化される。VEGFRは7個の免疫グロブリン様細胞外ドメイン、1個の膜貫通ドメイン、およびチロシンキナーゼドメインを含む1個の細胞内ドメインを含む。VEGF AはVEGF受容体1(受容体Flt−1)およびVEGF受容体2(KDR/Flt−1)と結合することが可能である。VEGF受容体2は、VEGFの知られているほぼすべての生物学的機能を媒介する。VEGFならびにその生物活性および受容体は、Matsumoto et al.およびMarti et al.によって詳細に説明および研究されてきた(Angiogenesis in ischemic disease.Thromb Haemost.1999補遺1:44−52;VEGF receptor signal transduction Sci STKE.2001:RE21を参照のこと)。
【0005】
VEGFは、高度に保存されたホモ二量体糖タンパク質であり、ここでは、各々24kDaの分子量を有する2個の単鎖がジスルフィド結合を通して二量体を形成する。mRNAによる様々なやり方のスプライシングのために、VEGF 121、VEGF 145、VEGF 165、VEGF 185、およびVEGF206を含む少なくとも5通りのタンパク質パターンが生じ、ここで、VEGF121、VEGF 145、およびVEGF 165は、血管内皮細胞に直接的に作用することが可能である分泌性可溶性タンパク質であり、血管内皮細胞の増殖および移動を促進し、そして血管透過性を増強する。
【0006】
VEGF関連疾患は、典型的には、以下の特徴を有する:血管内皮細胞の過剰増殖、血管透過性の増加、傷害、脳卒中または腫瘍によって引き起こされる脳浮腫などの組織浮腫および炎症;乾癬または関節リウマチを含む関節炎などの炎症性疾患によって引き起こされる浮腫;喘息;熱傷に付随する全身水腫;腫瘍、炎症または外傷によって引き起こされる腹水および胸水;慢性気管炎;毛細血管漏出症候群;腐敗血症;タンパク質漏出と関連する腎疾患;加齢に伴う黄斑変性および糖尿病性網膜症などの眼疾患;乳癌、肺癌、結腸直腸癌、脳の神経膠腫、腎臓癌を含む腫瘍など。
【0007】
抗体とその標的の場所との間の結合は特異的であり、これは免疫学的効果のメカニズムを媒介することができ、そして血清中で比較的長い半減期を有する。これらの特徴は抗体の強力な治療適用を生じる。
【0008】
現在、FDAおよびヨーロッパは、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、乳癌、脳の神経膠腫、腎臓癌、および加齢に伴う黄斑変性(AMD)の治療における、組換えヒト化マウス抗VEGFモノクローナル抗体であるアバスチン(AVASTIN)の適用を認可しており、これは、2008年において売り上げが48億USドルに達している。しかし、アバスチン抗体はVEGFに対して高い親和性を有してはいない。さらに、独占的な製造のため、患者は高額を支払う必要がある。現在、患者は、1年あたり約50,000から100,000USドルをこの薬物のために支払う必要がある。従って、新たな抗VEGFモノクローナル抗体を開発し、それによって患者への負担を軽減し、治療コストを低減するという危急の必要性が存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
定義
本発明のさらなる説明の前に、本発明は、記載された特定の実施形態によって限定されないことを理解することが必要である。換言すれば、特定の形式に違いがあってもよい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に従うので、本明細書中の用語は、本発明を限定するのではなく、特定の実施形態を説明することのみを意図したものであることがさらに注意されるべきである。
【0010】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書で交換可能に使用されてもよい。これらの用語は当業者に周知であり、具体的には、抗原と特異的に結合可能である1種以上のポリペプチドからなるタンパク質をいう。1つの型の抗体が抗体の基本構造単位を構成し、これは四量体である。これは、各対が軽鎖および重鎖を有する2対の完全に同一の抗体鎖からなる。抗体鎖の各対において、軽鎖および重鎖の可変ドメインは一緒に結合されて、抗原との結合の原因となるのに対して、定常ドメインは抗体のエフェクター機能の原因である。
【0011】
現在知られている免疫グロブリンポリペプチドには、κおよびλ軽鎖、α、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、εおよびμ重鎖、または他のその等価物が含まれる。免疫グロブリン「軽鎖」(約25kDaまたは約214アミノ酸)は、その全長において、NH2末端に約110アミノ酸からなる可変ドメイン、およびCOOH末端にκまたはλ定常ドメインを含む。同様に、免疫グロブリン「重鎖」(約50kDaまたは約446アミノ酸)は、その全長において、可変ドメイン(約116アミノ酸)およびγなどの重鎖定常ドメイン(約330アミノ酸)のうち1つを含む。
【0012】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、任意のアイソフォーム抗体または免疫グロブリン、または抗原となお特異的に結合される抗体セグメントを含み、これには、Fab、Fv、scFvおよびFdセグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、ならびに抗体の抗原結合部分および非抗体タンパク質を有する融合タンパク質が挙げられるがこれらに限定されない。抗体は、例えば、放射性同位元素、アッセイ可能な物質を産生することが可能な酵素、蛍光タンパク質、およびビオチンによって、標識および検出されてもよい。さらに、抗体は、ポリスチレンプレートまたはビーズが挙げられるがこれらに限定されない固体支持体と結合できる。この用語はさらに、抗原と特異的に結合することが可能である、Fab’、Fv、F(ab’)および/または他の抗体セグメントおよびモノクローナル抗体を含む。
【0013】
抗体はまた、例えば、Fv、Fab、および(Fab’)、ならびに二機能ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al.,Eur.J.Immunol,1987;17,105)を含む種々の型で、ならびに単鎖(例えば、参照により本明細書に引用される、Huston et al.,Proc.NatL Acad.Sci.U.S.A.,1988;85,5879およびBird et al.,Science,1988;242,423)の型で存在してもよい。免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の可変ドメインは、3個の超可変ドメイン(「相補性決定領域」またはCDRとも呼ばれる)からなる。これらの超可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)によって隔てられている。FRおよびCDRの範囲は正確に規定されている(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」E.Kabat et al.,U.S. Department of Health and Human Services,1991を参照のこと)。本明細書で説明されるすべての抗体のアミノ酸配列は、Kabatシステムを参照することによって分類されている。同じ種の異なる軽鎖および重鎖FR配列が比較的保存されている。抗体FRはCDRを位置決めおよび較正するために使用される。CDRは抗原エピトープとの結合の主な原因である。
【0014】
キメラ抗体は、構築された重鎖および軽鎖遺伝子を有する抗体、特に、遺伝子操作されかつ異なる種に属する可変ドメインおよび定常ドメイン遺伝子を有する抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体遺伝子の可変ドメインセグメントは、γ1およびγ3などのヒト抗体の定常ドメインセグメントに結合される。例えば、医学的処置において使用されるキメラ抗体は、キメラタンパク質の一種であり、これは、ヒト抗体定常ドメインまたはエフェクトドメインと合わせたウサギ抗体可変ドメインセグメントまたは抗原結合ドメインセグメントである(例えば、A.T.C.C.番号CRL 9688の保存番号を有する細胞を用いて調製された抗Tacキメラ抗体)。当然、キメラ抗体は、他の哺乳動物種からの遺伝子もまた使用できる。
【0015】
「ヒト化抗体」および「ヒト化免疫グロブリン」という用語は同じ意味を有する。非ヒト化型の抗体と比較して、そのヒト化抗体は、典型的には、ヒト宿主における免疫反応を減少させる。
【0016】
本発明に従って設計および産生されたヒト化抗体は、抗原結合または抗体の他の機能に実質的に影響を与えないいくつかの保存性アミノ酸を置き換えてもよいことが理解されるべきである。言い換えると、アミノ酸は、glyおよびala;val、ileおよびleu;aspおよびglu;asnおよびgln;serおよびthr;lysおよびarg;pheおよびtyrの組み合わせの中で相互に置換できる。同じグループの中にないアミノ酸は「実質的に異なる」アミノ酸である。
【0017】
ある実施形態において、抗体とその標的の場所との間の親和性はK(解離定数)によって表され、これは、10−6M、10−7M、10−8M、10−9M、10−10M、10−11Mより低いか、または約10−12M以下である。
【0018】
抗体の重鎖または軽鎖の「可変ドメイン」は、その鎖のN末端における成熟領域である。すべてのドメイン、CDR、および残基の数は、配列アラインメントを通して、そして既存の構造的知見に基づいて規定される。FRおよびCDR残基の決定および番号付けは、Chothiaおよび他の研究者が記載したことに基づいている(Chothia,Structural determinants in the sequences of immunoglobulin variable domain.J Mol Biol.1998;278,457)。
【0019】
VHは抗体の重鎖の可変ドメインである。VLは抗体の軽鎖の可変ドメインであり、これは、κおよびλアイソタイプを含んでもよい。K−1抗体はκ−1アイソタイプを有するのに対して、K−2抗体はκ−2アイソタイプを有し、そしてVλは可変λ軽鎖である。
【0020】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書で交換可能に使用されてもよい。これらの両方は、任意の長さの重合したアミノ酸をいい、これは、コードアミノ酸および非コードアミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導されたアミノ酸、および修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含んでもよい。この用語は、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質;N末端メチオニン残基を有するかまたは有さない、異種および同種リーダー配列を有する融合タンパク質;免疫学的タグを有するタンパク質;検出可能な融合パートナーを有する融合タンパク質、例えば、蛍光タンパク質、βガラクトシダーゼ、フルオレセインなどを含む融合パートナーとして機能できる融合タンパク質などが挙げられるがこれらに限定されない、融合タンパク質を含んでもよい。ポリペプチドは任意の長さであり得、「ペプチド」という用語は8〜50残基(例えば、8〜20残基)の長さのポリペプチドをいう。
【0021】
「被験体」、「宿主」、「患者」、および「個体」という用語は本明細書では交換可能に使用されてもよく、具体的には、診断または治療される任意の哺乳動物、特にヒトをいう。他の被験体には、サル、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマなどが含まれてもよい。
【0022】
「一致するアミノ酸」とは、2個以上のアミノ酸配列が比較されるときに、同じ位置におけるアミノ酸残基をいう(すなわち、これらは互いに一致している)。抗体配列の比較および番号付けの方法は、Chothia(上記を参照のこと)、Kabat(上記を参照のこと)、およびその他によって詳細に記載されてきた。時折、1個、2個、または3個のギャップが作製されてもよく、および/または1個、2個、3個、もしくは4個の残基もしくは最大で約15個の残基(特に、L3およびH3 CDR中)が抗体の1個または2個のアミノ酸の中に挿入され、それによって、比較を完了してもよいことが当業者に知られている(例えば、Kabat 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest,DHHS,Washington,DCを参照のこと)。
【0023】
「置換可能な位置」とは、抗体の結合活性を有意に減少させることなく、異なるアミノ酸によって置換できる、抗体の特別な位置をいう。置換可能な位置を決定するための方法、およびこれらがどのように置換できるかは、以下により詳細に記載される。置換可能な位置は、「変動耐容性位置」と呼ばれることもある。
【0024】
「親の」抗体とは、アミノ酸置換の標的抗体をいう。ある実施形態において、「ドナー」抗体は親の抗体にアミノ酸を「供与」して、変化した抗体を産生する。「関連抗体」とは、類似の配列を有し、共通のB細胞祖先を有する細胞によって産生される抗体をいう。このB細胞祖先は、再編成された軽鎖VJCドメインおよび再編成された重鎖VDJCドメインを有するゲノムを含み、そしてさらに、親和性成熟を受けていない抗体を産生する。脾臓組織に存在するこの「未感作」または「一次」B細胞がB細胞の共通の祖先である。同一のエピトープとの関連抗体の結合は、典型的には、配列、特に、それらのL3およびH3 CDRが非常に類似している。関連抗体のすべてのH3およびL3 CDRが同じ長さおよびほぼ同一の配列を有する(0〜4個の異なるアミノ酸残基を伴う)。関連抗体は、共通の抗体祖先、すなわち、もともとのB細胞祖先によって産生された抗体を通して相関している。
【0025】
発明の要旨
本発明の目的は、VEGFとのより高い親和性を有するモノクローナル抗体を提供することである。本発明に従うVEGFモノクローナル抗体は、配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖の可変ドメイン、ならびに/または配列番号4、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖の可変ドメインを有する。
【0026】
本明細書における「抗体」は、必要とされる特異性を伴う結合ドメインを有する任意の特異的結合因子を包含するように解釈されるべきである。従って、この用語は、その同種抗体セグメント、誘導体、およびヒト化抗体、ならびに抗体の機能的等価物および相同物を包含し、天然または合成のいずれかである、抗原結合ドメインを有する任意のポリペプチドもまた含む。抗体の例は、免疫グロブリンサブタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)ならびにそのサブタイプおよびサブクラスであり;これは、さらにFab、scFv、Fv、dAb、およびFdなどの抗原結合ドメイン;およびダイアボディを含有するセグメントであってもよい。別のポリペプチドに融合し、抗原結合ドメインまたはその等価物を含有するキメラ分子もまた含まれる。キメラ抗体のクローニングおよび発現はEP.A−0120694およびEP.A.0125023に記載されている。
【0027】
本発明に従うモノクローナル抗体は、例えば、一価または単鎖抗体、二本鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ならびに上記の抗体の誘導体、機能的等価物、および相同物であってもよく、そして抗体セグメント、および抗原結合ドメインを含有する任意のポリペプチドをさらに含有してもよい。
【0028】
抗体は、様々な方法を通して修飾されてもよく、DNA組換え技術を使用してもともとの抗体特異性を保持する他の抗体またはキメラ分子を産生してもよい。この技術は、抗体の免疫グロブリン可変ドメインまたはCDRをコードするDNAを、異なる免疫グロブリンの定常ドメインまたは定常ドメインプラスフレームワーク領域に導入し得る。EP.A.184187、GB 2188638AまたはEP.A.239400を参照のこと。遺伝子変異または他の変化は、抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞に対して実施されてもよく、これは、産生される抗体の結合特異性を変化させてもよいし、変化させなくてもよい。
【0029】
重鎖および軽鎖における高度な可変ドメインCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにリンカー配列以外では、本発明に従うモノクローナル抗体の残りの部分はフレームワーク領域である。このフレームワーク領域は、結合により必要とされる三次元構造が影響を受けないという条件で、他の配列によって置き換えられてもよい。抗体の特異性の分子的基礎は、主として、その高度な可変ドメインCDR1、CDR2、およびCDR3に由来し、これらは抗原と結合するための鍵となる位置である。好ましい結合特異性を維持するために、CDR配列は可能な限り保持されるべきである。しかし、結合特異性を最適化するためにいくつかのアミノ酸を変化させることが必要であるかもしれない。当業者は標準的な実務を通してこの目的を達成し得る。
【0030】
ある好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、以下のような可変ドメインを含む:例えば、CDR1(SNNDVMCW;配列番号1)、CDR2(GCIMTTDVVTEYANWAKS;配列番号2)およびCDR3(RDSVGSPLMSFDLW;配列番号3)を含む配列番号7を含む重鎖可変ドメイン;ならびに、例えば、CDR1(QASQSIYNNNELS;配列番号4)、CDR2(RASTLAS;配列番号5)、およびCDR3(GGYKSYSNDGNG;配列番号6)を含む配列番号8を含む軽鎖可変ドメイン。
【0031】
最大で6個のアミノ酸の置換に違いがあることを除けば、可変ドメインCDRの改変体は上記のCDRと実質的に同じであり(例えば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸の置換)、このモノクローナル抗体のCDRはVEGF結合活性を有する。
【0032】
他の実施形態において、抗体は、a)アミノ酸配列が最大で6個のアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸置換を有するという点で配列番号7とは異なる、重鎖可変ドメイン;およびb)アミノ酸配列が最大で6個のアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸置換を有するという点で配列番号8とは異なる、軽鎖可変ドメインを含んでもよい。標的抗体は、これらの置換のいずれか1つまたはその組み合わせを含んでもよい。
【0033】
同様に、これらの置換位置のいずれか1つを有する抗体、およびすべての置換位置を有する抗体はVEGF結合活性を有する。アミノ酸置換はフレームワーク領域に存在してもよく、CDRはフレームワーク領域またはCDRに同時にまたは単独で出現する。従って、ある好ましい実施形態において、重鎖可変ドメインのフレームワーク領域のアミノ酸配列は、最大で6個のアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸置換を有するという点で配列番号7とは異なってもよく、そして軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域のアミノ酸配列は、最大で6個のアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸置換を有するという点で配列番号8とは異なってもよい。
【0034】
ある抗体において、アミノ酸置換は、複数のCDRに広がってもよい。従って、重鎖可変ドメインの複数のCDRのアミノ酸配列が、最大で6個のアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸置換を有するという点で配列番号7とは異なってもよく、軽鎖可変ドメインの複数のCDRのアミノ酸配列が、最大で6個のアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸置換を有するという点で配列番号8とは異なってもよい。
【0035】
特別に好ましい実施形態において、この抗体は、a)アミノ酸配列が配列番号7と同じである重鎖可変ドメイン、およびb)アミノ酸配列が配列番号8と同じである軽鎖可変ドメインを含んでもよい。
【0036】
特別に好ましい実施形態において、この抗体は、a)アミノ酸配列が配列番号7と少なくとも95%同一性を有する重鎖可変ドメイン、およびb)アミノ酸配列が配列番号8と少なくとも95%同一性を有する軽鎖可変ドメインを含んでもよい。従って、標的抗体は、a)アミノ酸配列が配列番号7と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有する重鎖可変ドメイン、およびb)アミノ酸配列が配列番号8と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有する軽鎖可変ドメインを含んでもよい。
【0037】
特別に好ましい実施形態において、この抗体は、a)アミノ酸配列が配列番号9と同じである重鎖、およびb)アミノ酸配列が配列番号10と同じである軽鎖を含んでもよい。
【0038】
特別に好ましい実施形態において、この抗体は、a)アミノ酸配列が配列番号9と少なくとも95%同一性を有する重鎖、およびb)アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも95%同一性を有する軽鎖を含んでもよい。従って、標的抗体は、a)アミノ酸配列が配列番号9と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有する重鎖、およびb)アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有する軽鎖を含んでもよい。上記に記載されたアミノ酸置換に加えて、標的抗体は、重鎖または軽鎖の両端においてさらなるアミノ酸を有してもよい。例えば、標的抗体は、重鎖および/または軽鎖のC末端またはN末端において、それぞれ、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、または6個以上のさらなるアミノ酸を含んでもよい。ある実施形態において、標的抗体は、本明細書に記載される例示的なアミノ酸よりも短くてもよく、その主な違いは、重鎖および軽鎖の2つの末端が、それぞれ、例示的なアミノ酸よりも1個、2個、3個、4個、5個、または6個少ないアミノ酸を有することである。
【0039】
標的抗体はヒト化されてもよい。一般的に言えば、ヒト化抗体は、親の抗体のフレームワーク領域においてアミノ酸置換を実施することを通して修飾された抗体であり、そして親の抗体と比較して、ヒト化抗体は、より低い免疫原性を有する。抗体は、CDR移植(ERA−239、400;PCT公開WO 91/09967;米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号;および同第5,585,089号)および鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)などを含む当該分野において周知である多くの技術を用いてヒト化されてもよい。ある好ましい実施形態において、フレームワーク置き換えは、CDRとフレームワーク残基の間との相互作用を模倣することを通して抗原結合におけるフレームワーク残基の重要性を明らかにし、そして配列アラインメントを通して通常ではないフレームワーク残基を同定する(例えば、米国特許第5,585,089号;Riechmann,et al.,Nature,1988;332,323を参照のこと)。抗体ヒト化方法の具体的な詳細のための2004年11月8日に出願されかつ「Methods for antibody engineering」という表題の米国特許出願第10/984,473号を参照のこと。この出願は、その全体が参考として組み込まれる。一般的に言えば、このようなヒト化方法は、同一の抗原を結合することが可能である抗体配列を比較することを通しての適切な部位の同定、およびその部位上のアミノ酸を類似のアミノ酸の同じ部位における異なるアミノ酸で置換することを含む。これらの方法に従って、親の抗体のアミノ酸配列は、他の関連する抗体と比較され(例えば、配列アラインメント)、それによって、変動耐容性位置を同定する。典型的には、親の抗体の可変ドメインのアミノ酸配列は、ヒト抗体データベース中のアミノ酸配列と比較され、親の抗体と類似のアミノ酸配列を有するヒト化抗体が選択される。親の抗体の配列とヒト化抗体の配列が比較され(例えば、配列アラインメント)、親の抗体の1個以上の変動耐容性位置のアミノ酸が、ヒト化抗体中の対応する位置におけるアミノ酸によって置換される。
【0040】
変動耐容性位置の上記の置換方法は、任意の公知のヒト化方法と容易に合わせられることができ、CDRを含むヒト化抗体の産生において容易に応用されることができ、これらの抗体のCDRは修飾されるが、親の抗体のCDRに対して忠実である。従って、本発明は、親の抗体の修飾バージョンからの複数のCDRを含むヒト化VEGF中和抗体をさらに提供する。
【0041】
先行技術に従う製品であるアバスチンと比較すると、本発明に従うヒト化ウサギ抗VEGFモノクローナル抗体の方が、より低い解離定数Kdを有し(本発明に従うモノクローナル抗体は0.485nMのKdを有するのに対して、アバスチンのKdは47.9nMである)、本発明に従うモノクローナル抗体はVEGFとのより高い親和性を有し、本発明がVEGFに対してより強い阻害を有することを示す。マウスモデルを用いる実験は、本発明に従う抗体がアバスチンよりも著しく高い腫瘍阻害速度を有することを示した(実施例5を参照のこと)。従って、本発明はアバスチンよりも理論的に高い潜在的な臨床治癒効果を有する。
【0042】
1つの実施形態において、本発明に従うモノクローナル抗体は、配列番号9によって示されるその重鎖アミノ酸配列および配列番号10によって示されるその軽鎖アミノ酸配列を有する、保存番号CGMCC No.3233の細胞系統によって産生される。そのVEGFとの解離定数は0.485nMであり、これはアバスチンの解離定数の1/100であり、このことは、アバスチンよりもEPI003がVEGFとのより強い結合能力を有することを示す。
【0043】
本発明はさらに、the China General Microbiological Culture Collection Centerに保存されており、保存番号CGMCC No.3233を有する細胞系統を提供する。これはモノクローナル抗体を産生し、この抗体は、配列番号9として示される重鎖アミノ酸配列および配列番号10として示される軽鎖アミノ酸配列を有する。本発明に従う実施形態において、これはEPI0030抗体と名付けられる。細胞実験およびインビボ動物実験は、この抗体がVEGFによって誘導される内皮細胞の増殖および移動のインビトロ阻害が可能であり、そして動物の体内で腫瘍増殖を阻害できることを示してきた。この抗体はVEGF関連疾患を治療するために使用できる。
【0044】
本発明はさらに、VEGF関連疾患を治療するために薬物を調製する際のこのモノクローナル抗体の適用を提供する。このVEGF関連疾患には、腫瘍、AMD、神経変性疾患、肥満、および糖尿病が含まれる。この標的抗体は、発生生物学、細胞生物学、代謝、構造生物学、および機能ゲノミクスを含む様々な分野における研究などのVEGF関係研究、または腫瘍、AMD、神経変性疾患、肥満、および糖尿病などに対する薬学的研究において使用されてもよい。
【0045】
本発明はさらに、有効量の上記のモノクローナル抗体および薬学的に許容されるキャリアを含むことを特徴とする薬学的組成物を提供する。
【0046】
本発明はさらに、上記のモノクローナル抗体を含む試薬、キット、またはチップを提供する。
【0047】
本発明はさらに、VEGF活性を阻害するためにこの標的抗体を使用し、VEGF関連疾患を治療するためにこの標的抗体を使用し、またはVEGF関連診断およびアッセイを実施するためにこの抗体を含むキットを使用する方法を提供する。
【0048】
本発明に従う抗体分子が調製されるとき、これは、免疫グロブリン分子を精製するための当該分野において公知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、特に、プロテインAを通しての特定の抗原のためのアフィニティークロマトグラフィー、および他のカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の違い、またはタンパク質を精製するための任意の他の標準的な技術を用いて精製できる。多くの実施形態において、抗体は細胞から培養培地に分泌され、そして抗体は培養培地を収集することおよび精製を通して得られる。
【0049】
抗体は様々な手法を通して修飾されてもよく、DNA組換え技術を使用して、もともとの抗体の特異性を保持する他の抗体またはキメラ分子を産生してもよい。この技術は、抗体の免疫グロブリン可変ドメインまたはCDRをコードするDNAを、異なる免疫グロブリンの定常ドメインまたは定常ドメインプラスフレームワーク領域に導入してもよい。EP.A.184187、GB 2188638A、またはEP.A.239400を参照のこと。遺伝子変異または他の変化もまた、抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞に対して実施されてもよく、これは、産生された抗体の結合特異性に変化を与えてもよいし、変化を与えなくてもよい。
【0050】
本発明において使用されるモノクローナル抗体はまた、ハイブリドーマ法を用いて調製されてもよい。本発明に従うヒト化抗体をコードするDNA配列は、当業者に公知の従来的な手段、例えば、本発明において公開されるアミノ酸配列の人工合成またはPCR増幅などを通して入手できるので、従って、この配列はまた、組換えDNA法を用いて、および当該分野で公知である種々の方法を用いて、適切な発現キャリアに連結できる。最終的に、本発明に従う抗体の発現のために適切な条件下で、当業者は、得られた宿主細胞を培養および形質転換し、次いで、周知の従来的な分離および精製手段を利用して、本発明に従うモノクローナル抗体を精製する。
【0051】
上記のように、本発明は、本発明に従う抗体を実行するための試薬、キット、またはチップをさらに提供する。これらの試薬、キット、またはチップは、以下の1つ以上を少なくとも含む:上記の方法に従って調製される抗体、この抗体をコードするリボヌクレオチド、またはこの抗体を含有する真核生物細胞、原核生物細胞、およびウイルス。この抗体はヒト化されてもよい。
【0052】
これらの試薬、キット、またはチップの他の任意の成分には、抗体活性アッセイの実験を実施するための制限エンドヌクレアーゼ、プライマーおよびプラスミド、緩衝溶液などが含まれる。これらの試薬、キット、またはチップの核酸は、非ウサギ抗体核酸とのこれらの接続のための制限エンドヌクレアーゼ部位、マルチプルクローンサイト、プライマーサイトなどをさらに含んでもよい。これらの試薬、キット、またはチップのすべての成分は、別々の容器に個別に保存されてもよく、またはいくつかの適合可能な成分が必要に応じて単一の容器にあらかじめ集められてもよい。
【0053】
薬学的に許容されるキャリアは、標的抗体を調製するときに加えられてもよい。「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、天然または合成であってもよく、抗体と合わせた後で抗体の適用を促進できる、1種以上の有機または無機成分をいう。薬学的に許容されるキャリアは、滅菌生理食塩水溶液、または薬学的に利用可能でありかつ当該分野において公知である他の水系もしくは非水系等浸透圧性溶液および滅菌懸濁液を含む。「有効用量」とは、病理学的状態、変性状態、または損傷状態の進行を改善させることができるかまたは遅らせることができる用量をいう。
【0054】
有効用量の定義は個体ベースであり、具体的には、これは、徴候の治療、および個体に基づく結果を模索することを考慮する。有効用量は当該分野における一般的な技術を通して決定され、これを使用するためのこれらの因子は従来的な実験を超えるものではない。
【0055】
生物学的材料の保存の説明
保存番号CGMCC NO.3233を有する細胞系統は、2009年8月20日にDatun Road,Chaoyang District,Beijingの所在地で保存されており、その分類名はチャイニーズハムスター卵巣細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、HZD−V1、HZD−V2、HZD−V5、およびHZD−V6クローンを通して発現された組換え抗体によるVEGFおよびKDRの結合の競合阻害を示す。
【図2】図2は、SDS−PAGEを通してのHZD−V6クローンによって発現されたEPI0030抗体の純度を示す。レーン1は還元電気泳動である。レーン2は分子量標準を示す−上から下に連続して、170kD、130kD、100kD、70kD、55kD、40kD、35kD、25kD、15kD、およびl0kDである。レーン3は非還元電気泳動である。
【図3】図3は、HZD−V6クローンによって発現されたEPI0030抗体の純度のSEC−HPLC分析グラフを示す。
【図4】図4は、VEGF直接結合法を使用して決定されたヒトVEGFとの抗体の結合活性を示す。
【図5】図5は、EPI0030およびアバスチンによるVEGFおよびKDRの結合の阻害のIC50アッセイを示す;EPI0030のIC50=166.3ng/ml、アバスチンのIC50=253.7ng/mlである。
【図6】図6は、HCT−116腫瘍の増殖に対する5mg/kg EPI0030およびアバスチンの影響を示す。
【図7】図7は、NCI−H460腫瘍の増殖に対する5mg/kg EPI0030およびアバスチンの影響を示す。
【図8】図8は、NCI−H460腫瘍の増殖に対する1.5mg/kg EPI0030の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
特定の実施形態の説明
実施例1:ヒトVEGF165ウサギモノクローナル抗体およびその遺伝子クローンを発現するハイブリッド腫瘍細胞の調製
ウサギモノクローナルクローン抗体はハイブリドーマ技術を用いて調製される。関連する実験計画についは、米国特許第7,429,487号、特に、実施例1〜4を参照のこと。
【0058】
最初に、組換え技術を通して、IgG Fc−hVEGF−A(ヒトVEGF 165)融合タンパク質を調製し、ここで、IgG Fc配列はウサギ由来である。IgG Fc−hVEGF−AのDNA配列をpTT5プラスミドにクローニングし、このプラスミドをΗΕΚ 293−6Ε細胞系統に一過性にトランスフェクトし、無血清培地中で細胞を培養し、上清を収集し、そして一過性に発現されたIgG Fc−hVEGF−A融合タンパク質を精製し、これはプロテインAカラムで精製される。
【0059】
精製されたIgG Fc−hVEGF−Aを(抗原成分として)使用して、ニュージーランドウサギに対する初回免疫のための多点皮下注射において、完全フロイントアジュバントと混合し、次いで、3週間あたり1回のウサギへの免疫の増強のための皮下注射において、精製タンパク質を不完全フロイントアジュバントと混合し、そして脾臓収集の4日前に最終免疫のためにウサギへの静脈内注射において抗原プラスPBSを使用する。
【0060】
米国特許第7429487号によって開示される方法に従って、ウサギ脾臓細胞を、免疫脾臓細胞と同種である不死化HRGTP−Bリンパ球、240E−W2細胞と2:1の比率で融合させ、96ウェルプレート中のHAT培地中で培養し、次いで、ハイブリドーマ細胞をスクリーニングし、そして得られた細胞クローンを入れ、スクリーニングのために新たなIgG Fc−hVEGF−Aと結合させる。
【0061】
同定およびスクリーニングプロセスは2段階のポジティブクローンスクリーニングプロセスを含む:(1)96ウェルELISAプレート上でIgG Fc−hVEGF−A抗原を固定化し、クローニングおよび発現上清を加えそして1時間インキュベートし、PBSで3回洗浄し、酵素標識抗体を使用して、IgG Fc−hVEGF−A結合活性を有する細胞クローン上清を同定し、そしてそれによって、IgG Fc−hVEGF−Aと直接的に結合可能であるポジティブクローンを得る。(2)続いて、工程(1)におけるポジティブクローンを培養のための24ウェルプレートに移し、より多くの発現産物を得る。96ウェルELISAプレート上にIgG Fc−VEGFR2(KDR/Flk−1)細胞外領域を固定化し、IgG Fc−hVEGF−Aならびにクローニングおよび発現産物を加え、1時間一緒にインキュベートし、PBSで3回洗浄し、酵素標識抗体を使用してIgG Fc−hVEGF−A含量を決定し、その結果、VEGF−VEGFR2結合活性に対するクローンの阻害を同定し、それによって、VEGF−VEGFR2結合を遮断することが可能であるポジティブクローンを同定する。
【0062】
スクリーニングされたポジティブクローンのハイブリドーマ細胞は溶解を受け、mRNAを抽出し、そして逆転写を通してcDNAを得る。このcDNAを鋳型として用いて、PCR法を使用して、ウサギIgG抗体の軽鎖および重鎖可変ドメインのヌクレオチド配列をそれぞれ増幅し、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインをアッセイし、コードされた重鎖可変ドメインは、配列番号1の親の配列(Ser Asn Asn Asp Val Met Cys Trp)、配列番号2の親の配列(Gly Cys Ile Met Thr Thr Asp Val Val Thr Glu Tyr Ala Asn Trp Ala Lys Ser)、および配列番号3の親の配列(Arg Asp Ser Val Gly Ser Pro Leu Met Ser Phe Asp Leu Trp)を含み、そして軽鎖可変ドメインは、配列番号4の親の配列(Gln Ala Ser Gln Ser Val Tyr Gly Asn Asn Glu Leu Ser)、配列番号5の親の配列(Arg Ala Ser Thr Leu Ala Ser)、および配列番号6の親の配列(Gly Gly Tyr Lys Ser Tyr Ser Asn Asp Gly Asn Gly)を含む。軽鎖ヌクレオチド配列はpTT5プラスミドにクローニングされている。重鎖可変ドメインのヌクレオチド配列は、重鎖定常ドメインを有するpTT5プラスミドにクローニングされる。ΗΕΚ 293−6Ε細胞系統に軽鎖、重鎖のプラスミドを同時トランスフェクトし、5日間培養し、プロテインAで上清を精製し、そして組換えウサギ抗ヒトVEGF 165モノクローナル抗体を最終的に得る。上記のポジティブクローンスクリーニング法を使用して、発現された組換え抗体の親和性を確認する。
【0063】
実施例2:本発明に従うヒト化ウサギ抗VEGF165 モノクローナル抗体の調製
ヒト化技術については、米国特許第7,462,697号、特に、その好ましい実施形態の詳細な説明を参照のこと。
【0064】
米国特許第7,462,697号によって開示される技術に従って、参照配列として、ヒト配列VKI−2−l−(U)−A20_JK4およびVH3−1−3−3−21_JH4を使用する。4バージョンのVKおよびVHが、各々発現されたウサギ抗VEGFモノクローナル抗体配列について、それがヒト化された後で得られる。軽鎖可変ドメインは、VK−HZD1(例えば、配列番号12)、VK−HZD2(例えば、配列番号14)、VK−HZD5(例えば、配列番号16)、およびVK−HZD6(例えば、配列番号8)を含み;重鎖可変ドメインは、VH−HZD1(例えば、配列番号11)、VH−HZD2(例えば、配列番号13)、VH−HZD5(例えば、配列番号15)、およびVH−HZD6(例えば、配列番号7)を含む。VK−HZD1と比較して、VK−HZD2はCDR1に2個の異なる残基を有する。VK−HZD1およびVK−HZD2は、それらのN末端に2個の余分のアミノ酸残基を加えることによって、それぞれ、VK−HZD5およびVK−HZD6になる。VH−HZD1およびVH−HZD2は71位に異なる残基を有し、VH−HZD1の71位はKであるのに対して、VH−HZD2の71位はRである。VK(H)−HZD1およびVK(H)−HZD2の配列はウサギシグナルペプチドを含むの対して、VK(H)−HZD5およびVK(H)−HZD6の配列はヒトシグナルペプチドを含む。
【0065】
人工合成後、ヒトCK配列およびヒトCH配列を有するpTT5プラスミドに4バージョンのVKおよびVHのDNA配列をそれぞれクローニングし、ヒトシグナルペプチドを通して抗体を発現する。上記の2種のプラスミドをΗΕΚ 293−6Ε細胞に同時トランスフェクトし、ヒト化抗VEGF抗体を一過性に発現する。実施例1におけるスクリーニング方法に従って、最終的に使用されるクローンとして適切な親和性を有するHZD−V6クローンを選択し、それによって、発現されたヒト化抗VEGF抗体はEPI0030と称され、そしてそのアミノ酸配列は、配列番号9によって示される重鎖および配列番号10によって示される軽鎖である。
【0066】
収率を増加させ、工業的製造のための細胞系統を得るために、配列番号9によって示される重鎖と配列番号10によって示される軽鎖のアミノ酸配列を有する発現プラスミドを、2009年8月20日に、Datun Road,Chaoyang District,Beijinの所在地で、CGMCCにおいて、CGMCC No.3233の保存番号で保存された、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系統に同時トランスフェクトする。
【0067】
実施例3:本発明に従うモノクローナル抗体ΕΡΙ0030のVEGFとの結合の検討
VEGF抗体はVEGFと結合して、受容体KDRとのその結合を遮断し、VEGFシグナルチャネルを阻害する。様々な組換え抗体(HZD−V1、HZD−V2、HZD−V5、HZD−V6)およびアバスチン(90μg/ml−45ng/ml)の1:3での段階希釈後、IgG Fc−hVEGF(1μg/ml)と混合し、混合した抗体−VEGF複合体をIgG Fc−VEGFR2を広げたプレートのウェルに加え、そしてマウス抗ヒトVEGF抗体を加えた後、ヤギ抗マウスIgG抗体−APを用いる発色を通して検出する。結果は、発現された組換え抗体が、VEGFのKDRとの結合の競合阻害においてアバスチンと同様の活性を有することを示す。測定結果は、HZD−V1、HZD−V2、HZD−V5、およびHZD−V6クローンによって発現されるすべての抗体がVEGFのKDRとの結合を遮断できることを示す(図1を参照のこと)。
【0068】
上記の実験アプローチを参照して、EPI0030およびアバスチンのIC50値、すなわち、メジアン阻害濃度を決定する。結果は図5に示され、これは、EPI0030およびアバスチンが同様の競合阻害活性を有することを示す。
【0069】
BIAcore−3000を使用して、EPI0030のVEGFとのKdを決定する。CM5チップ上にヒトVEGFを固定化し、HBS−EP緩衝溶液への2回の段階希釈後のEPI0030およびアバスチンを、30μl/分の流速で注入する。Kdはkoff/konである。EPI0030およびアバスチンのヒトVEGFとの解離定数は表1に示され、EPI0030のVEGFとの解離定数は0.485nMであり、これはアバスチンの1/100であり、このことは、EPI0030のVEGFとの結合能力がアバスチンのそれよりも強力であることを示す。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例4:本発明に従うモノクローナル抗体ΕΡΙ0030の特徴付けおよびそのインビトロ活性の決定
HEK 293−6E細胞のHZD−V6クローンによって一過性に発現されたEPI0030抗体を精製した後に、特定の分析項目を用いて関連する定性分析を以下のように実施する:
A:純度
SDS−PAGE(還元および非還元)およびSEC−HPLCを使用して、図2および図3に示される結果を用いて純度を分析し、EPI0030抗体の純度は98%より高く、重合体含量は5%より低く、主ピーク(保持時間10.572分)面積は全体の面積の95%より大きく(左から右にピーク1、2、および3を示す)、そしてピーク1および2は重合体であることを示す。
【0072】
B:インビトロ結合活性
IgG Fc−hVEGFを使用してプレートに広げ、1% BSAを使用してシールし、8段階の1:3段階希釈を通してEPI0030抗体およびアバスチンを希釈し(1μg/ml〜0.46ng/ml)、これをIgG Fc−hVEGFを広げたウェルに加え、−AP検出のためにロバ抗ヒトIgG抗体を加える。結果はEPI0030抗体およびアバスチンが同様の結合活性を有することを示す。
【0073】
IgG Fc−hVEGF直接結合法(実施例1を参照のこと)およびKDR競合結合法(実施例3)を含むELISA法を使用する。結果は、EPI0030抗体のVEGFとの結合が、用量によって、VEGFのKDRとの結合の阻害と相関することを示し、これらは図4および5に示される。
【0074】
実施例5:本発明に従うモノクローナル抗体ΕΡΙ0030のインビボ活性の検出
実験の2週間前に、液体窒素タンクから、凍結したヒト結腸癌HCT−116細胞およびヒト非小細胞肺癌NCI−H460細胞の1つの系統(約1×10細胞)を取り、これらを素早く37℃ウォーターバスに配置して融解させる。次いで、あらかじめ37℃に加熱したMcCoyの5A培地およびDMEM培地を有する75CM細胞培地に細胞を接種し、それぞれ、10%ウシ胎仔血清(GIBCOより購入)を加え、細胞が80%融合比率まで増殖したときに1:5で継代培養し、そして連続して3回継代培養する。全細胞量が接種によって必要とされる数に達したとき、膵臓酵素で細胞を消化しおよび遠心分離し、PBSを使用して細胞を洗浄して血清を除去し、そして最後に、無血清で抗生物質を含まないMcCoyの5A培地およびDMEM培地を使用して、処理されたヒト結腸癌HCT−116細胞およびヒト非小細胞肺癌NCI−H460細胞の細胞密度を5×10/mlにそれぞれ調整し、細胞懸濁液を氷上に配置し、6−9週齢のヌードマウスの腹部に接種し、各マウスに0.1ml、すなわち、5×10細胞/マウスで接種する。副尺付きカリパスを使用して、2日ごとにヌードマウスの腫瘍直径を測定し、すべてのマウスの腫瘍が100mm−300mmに成長したときに、腫瘍体積SD<1/3のものを選択し、それらを、群あたり6匹の5つの群にランダムに分ける。ヒト結腸癌HCT−116モデル群は、モデル対照群、(1群)、5mg/kg アバスチン(1群)、および5mg/kg EPI−0030(1群)であり、そして生理食塩水を使用してアバスチンおよびEPI−0030を0.5mg/mlに希釈する。ヒト非小細胞肺癌NCI−H460モデル群は、モデル対照群(1群)、5mg/kg アバスチン(1群)、および1.5mg/kg、5mg/kg EPI−0030(2群)であり、そして生理食塩水を使用してアバスチンおよびEPI−0030を0.5mg/mlおよび0.15mg/mlに希釈する。薬物投与群については、0.2ml アバスチンおよびEPI−0030は、それぞれ、各週の1日、3日、および5日に1回、腹腔内注射を通して投与され、0.2ml生理食塩水は同時にかつ同じやり方を介してモデル対照群に投与され、投与は3週間継続された(21日間、全体で9回)。
【0075】
ヌードマウスの腫瘍小結節の最大直径aおよび最小直径bを測定し、式V=0.5×a×bに従って腫瘍体積を計算し、そして相対的な腫瘍増殖速度、T/C%を治癒効率を評価するための指標として使用する。
【0076】
結果は、ヒト結腸癌HCT−116モデルにおいて、5mg/kg群におけるEPI−0030およびアバスチンの腫瘍阻害速度がそれぞれ65.7%および15.7%であることを示す(図6を参照のこと)。ヒト非小細胞肺癌NCI−H460モデルにおいて、EPI−0030およびアバスチンの腫瘍阻害速度は、それぞれ、95.5%および66.7%であり(図7を参照のこと);1.5mg/kg群においては、EPI−0030の腫瘍阻害速度は57.6%である(図8を参照のこと)。結果はEPI−0030が腫瘍増殖を阻害する顕著な能力を有することを示す。
【0077】
アバスチンの臨床適応を参照することによって、EPI−0030によるヒト結腸癌およびヒト非小細胞肺癌の阻害を確証するために、EPI−0030がヒト結腸癌およびヒト非小細胞肺癌の異種移植片腫瘍の顕著な阻害を有するという条件で、ヌードマウスにおけるヒト結腸癌HCT−116およびヒト非小細胞肺癌NCI−H460の異種移植片腫瘍モデルを選択する。これらのモデルにおいて、EPI−0030はアバスチンよりも強力な腫瘍阻害活性を有する。
【0078】
上記の説明は本発明の好ましい実施形態を開示したに過ぎない。多くの改良および修飾が本発明の原理から逸脱することなくなされ得ることが当業者に注目されるべきである。これらのすべての改良および修飾は、本発明の保護範囲によって包含されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクローナル抗体であって、その重鎖の可変ドメインが配列番号l、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列を含み、および/またはその軽鎖の可変ドメインが配列番号4、配列番号5、および配列番号6のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、モノクローナル抗体。
【請求項2】
請求項1に記載のモノクローナル抗体であって、前記モノクローナル抗体は、単鎖抗体、二本鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ならびに上記の抗体の誘導体、機能的等価物および相同物を含み、抗体セグメント、および抗原結合ドメインを含む任意のポリペプチドをさらに含んでもよいことを特徴とする、モノクローナル抗体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモノクローナル抗体であって、その重鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号7によって示され、またはその重鎖可変ドメインが配列番号7によって示されるアミノ酸配列の1個もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、もしくは付加によって誘導され、配列番号7と少なくとも95%同一性を有し、そして前記モノクローナル抗体がVEGFと特異的に結合する活性を有することを特徴とする、モノクローナル抗体。
【請求項4】
請求項1または2に記載のモノクローナル抗体であって、その軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号8によって示され、またはその軽鎖可変ドメインが配列番号8によって示されるアミノ酸配列の1個もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、もしくは付加によって誘導され、配列番号8と少なくとも95%同一性を有し、そして前記モノクローナル抗体がVEGFと特異的に結合する活性を有することを特徴とする、モノクローナル抗体。
【請求項5】
請求項1または2に記載のモノクローナル抗体であって、その重鎖アミノ酸配列が配列番号9によって示され、またはその重鎖が配列番号9によって示されるアミノ酸配列の1個もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、もしくは付加によって誘導され、配列番号9と少なくとも95%同一性を有し、そして前記モノクローナル抗体がVEGFと特異的に結合する活性を有することを特徴とする、モノクローナル抗体。
【請求項6】
請求項1または2に記載のモノクローナル抗体であって、その軽鎖のアミノ酸配列が配列番号10によって示され、またはその軽鎖が配列番号10によって示されるアミノ酸配列の1個もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、もしくは付加によって誘導され、配列番号10と少なくとも95%同一性を有し、そして前記モノクローナル抗体がVEGFと特異的に結合する活性を有することを特徴とする、モノクローナル抗体。
【請求項7】
保存番号CGMCC No.3233を有する細胞系統によって産生されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
保存番号CGMCC No.3233を有するCGMCCに保存されていることを特徴とする細胞系統。
【請求項9】
VEGF関連疾患を治療するための薬物を調製する際の請求項1〜7のいずれかに記載のモノクローナル抗体の使用。
【請求項10】
前記VEGF関連疾患が腫瘍、AMD、神経変性疾患、肥満、および糖尿病を含むことを特徴とする、請求項9に記載のモノクローナル抗体の使用。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の有効量のモノクローナル抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含むことを特徴とする薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の上記のモノクローナル抗体を含む、試薬、キット、またはチップ。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−502445(P2013−502445A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525877(P2012−525877)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/CN2010/076420
【国際公開番号】WO2011/023130
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(512046279)チャンスー シムサー ファーマシューティカル アールアンドディー カンパニー リミテッド (1)
【出願人】(512046280)エピトミクス インク (1)
【Fターム(参考)】