説明

折り畳み型ボード及びこの折り畳み型ボードを備えた自動車

【課題】ヒンジ構造に工夫を凝らし、両面側のいずれの方向にもきちんと折り畳み可能な折り畳み型ボード及びこの折り畳み型ボードを備えた自動車を提供する。
【解決手段】両ヒンジ帯60g、60hは、ボードの折り畳み線に沿う方向からみて、前後両側ボード部材60a、60b間にて互いに交差するように連結されている。他のヒンジ帯は、両ヒンジ帯60g、60hから離れた位置にて、ボードの折り畳み線に沿う方向からみて、前後両側ボード部材60a、60b間にて互いに交差するように連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み型ボード及びこの折り畳み型ボードを備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の折り畳み型ボードに関しては、例えば、下記特許文献1に記載のボード成形品が提案されている。このボード成形品は、フラット状の芯材と、この芯材の表面側に一体貼付された表皮材とにより構成されており、このボード成形品には、2分割に折り畳み可能なようにヒンジ部が設けられている。
【0003】
ここで、ヒンジ部は、ボード成形品の折れ線に沿って延びるように芯材に設けた支持凸条と、この支持凸条の両側に表皮材とは反対側から肉抜きされた両凹溝と、ヒンジ中心となるように両凹溝内で支持凸条寄りに設けられた細溝とによって、構成されている。
【0004】
このように構成したボード成形品は、支持凸条を中心として、芯材を表皮材とともに表皮材の表面側へ或いは裏面側へ折り畳まれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3750902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のボード成形品によれば、支持凸条が芯材の折り畳み方向に対する法線方向に幅を有することから、支持凸条の両側の各表皮材部分は、芯材の厚みのために、当該各表皮材部分の間の折り畳み状態は、きちんとした折り畳み状態になり易いものの、芯材を表皮材とともに表皮材の表面側に向け折り畳んだとき、表皮材のうち支持凸条の両側の各表皮材部分の間に隙間ができてしまい、当該各表皮材部分をきちんとした折り畳み状態にすることができない。
【0007】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、ヒンジ構造に工夫を凝らし、両面側のいずれの方向にもきちんと折り畳み可能な折り畳み型ボード及びこの折り畳み型ボードを備えた自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る折り畳み型ボードは、請求項1の記載によれば、
互いに表面に沿う方向に順次配列されて所定のボード材料からなる複数のボード部材(60a、60b)と、
当該複数のボード部材のうち互いに隣接する両ボード部材ごとに当該両ボード部材を相互に表面側或いは裏面側へ折り畳み可能に連結する少なくとも2つのヒンジ手段(60e、60f、60g、60h)とを備える。
【0009】
そして、当該2つのヒンジ手段は、それぞれ、両ボード部材の各対向縁部を介し両ボード部材の一方の表面と他方のボード部材の裏面との間に接続される第1の伸縮不能な柔軟性ヒンジ部材(60e、60g)と、両ボード部材の上記各対向縁部を介し一方のボード部材の裏面と他方のボード部材の表面との間に接続される第2の伸縮不能な柔軟性ヒンジ部材(60f、60h)とにより構成されている。
【0010】
これにより、当該折り畳み型ボードを、例えば、一般家屋の台所や自動車の車室内の床に形成した開口部に嵌装される収納庫の開口部内に着脱可能に嵌装すれば、当該折り畳み型ボードは、上記床の床部材を兼用しつつ、収納庫の蓋としての役割を果たす。
【0011】
このような状態において、収納庫内の収容物を取り出したり、或いは、他の物を収納庫内に収納するにあたっては、ボードを、2つのヒンジ手段を介し折り畳む。
【0012】
しかして、ボードをその表面側へ折り畳むにあたっては、両ボード部材のいずれか一方のボード部材を他方のボード部材に向けてその表面側から回動させて、収納庫の開口部の開口部分を開く。一方、ボードをその裏面側から折り畳むにあたっては、両ボード部材のいずれか一方のボード部材を他方のボード部材に向けてその裏面側から回動させて、収納庫の開口部の開口部分を開く。その結果、収納庫内の収容物を取り出したり、或いは、他の物を収納庫内に収納することができる。
【0013】
然る後、一方のボード部材により、上記2つのヒンジ手段を介し、収納庫の開口部の開口部分を閉塞すると、ボードは、再び、床の床部材を兼用しつつ収納庫に対する蓋としての役割を果たす。
【0014】
ここで、上述のような構成を有する2つのヒンジ手段の各々によれば、伸縮不能で柔軟性を有する第1及び第2のヒンジ部材が、両ボード部材の各対向縁部に沿う方向からみて両ボード部材間にて互いに交差するように連結されていることとなる。
【0015】
このため、上述のように、ボードをその表面側から折り畳む際に、両ボード部材のいずれか一方のボード部材を他方のボード部材に向けてその表面側から回動させるとき、いずれか一方のボード部材は、両ボード部材の各表面の対向表面部位を中心として他方のボード部材に向けてその表面側から回動する。従って、いずれか一方のボード部材は、その表面にて、他方のボード部材の表面に重なるように180°回動する。一方、両ボード部材のいずれか一方のボード部材を他方のボード部材に向けてその裏面側から回動させるとき、両ボード部材をその各対向縁部側から上方へ傾斜状に持ち上げた状態にて、いずれか一方のボード部材を、両ボード部材の各裏面の対向裏面部位を中心として他方のボード部材に向けてその裏面側から回動させる。従って、いずれか一方のボード部材は、その裏面にて、他方のボード部材の裏面に重なるように180°回動する。
【0016】
このことは、ボードは、その表面側或いは裏面側への折り畳みにあたり、他方のボード部材を360°という広い角度範囲以内にて回動させ得ることを意味する。その結果、収納庫内の収容物を取り出したり、或いは、他の物を収納庫内に収納するにあたり、ボードを表面側及び裏面側のいずれに向けて折り畳んでも、収納庫の開口部の開口部分を十分に開くことができて、便利である。
【0017】
ここで、上述のごとく、各ヒンジ部材は、伸縮不能で柔軟性を有することから、ボードをその表面側或いは裏面側に向けて折り畳む際には、他方のボード部材が、両ボード部材の各表面の対向表面部位或いは各裏面の対向裏面部位の間に間隙を形成することなく、当該各表面の対向表面部位或いは各裏面の対向裏面部位を基準に回動することができる。従って、ボードをその表面側或いは裏面側への折り畳みが円滑になされ得る。
【0018】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の折り畳み型ボードにおいて、
上記2つのヒンジ手段は、両ボード部材の各対向縁部に沿う方向においてその両端側に互いに離れて位置しており、
上記2つのヒンジ手段の各々において、第1及び第2のヒンジ部材は、両ボード部材の上記各対向縁部に沿う方向において相互に近接して位置することを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、ボードのその表面側或いは裏面側への折り畳みにあたり、両ボード部材が、その各対向縁部の全体に亘り相互に均一に接合した状態に維持され得る。その結果、請求項1に記載の発明の作用効果がより一層安定的に確保され得る。
【0020】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1または2に記載の折り畳み型ボードにおいて、
各第1のヒンジ部材の一方のボード部材の上記表面に対する各接続部(61a、63a)を介し一方のボード部材の上記表面に装着される第1表皮部材(60c)と、
各第2のヒンジ部材の他方のボード部材の上記表面に対する各接続部(62a、64a)を介し他方のボード部材の上記表面に装着される第2表皮部材(60d)とを備える。
【0021】
ここで、各第1及び各第2のヒンジ部材は、それぞれ、不織布からなるヒンジ帯で形成されていることを特徴とする。
【0022】
これにより、ボードの表面に対し各表皮部材により良好な外観を付与しつつ、各ヒンジ部材であるヒンジ帯のヒンジ機能でもって、請求項1または2に記載の発明の作用効果をより一層向上させることができる。
【0023】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の折り畳み型ボードにおいて、
上記所定のボード材料は、発泡性熱硬化性樹脂を浸透させた両ガラス繊維マットの間に板状ハニカム体を挟むように積層して加熱加圧することにより発泡成形されていることを特徴とする。
【0024】
しかして、このように発泡成形してなる所定のボード材料でもって、両ボード部材を形成することで、当該両ボード部材は、非常に剛性の高い軽量な部材として構成される。その結果、ボードの折り畳みを容易にしつつ、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明の作用効果を達成することができる。
【0025】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、
車体の床の後部に形成した開口部に嵌装される収納庫(50)と、この収納庫の開口部(51a)を閉塞する蓋とを備える自動車において、
上記蓋は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の折り畳み型ボード(60)であることを特徴とする。
【0026】
このように、請求項1〜4のいずれか1つに記載の折り畳み型ボードを、自動車の車体の床の後部に形成した開口部に嵌装される収納庫の蓋として用いることで、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発明の作用効果を達成し得る折り畳み型ボードを備えた自動車の提供が可能となる。
【0027】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形状に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態を適用した自動車の車体内後部を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の折り畳み型ボードの拡大斜視図である。
【図3】図2のヒンジ構造を示す模式的部分分解図である。
【図4】図2のボードを形成するボード形成材料を示す部分破断斜視図である。
【図5】図1において自動車の車体内後部をボードの後側ボード部材の表面側への折り畳み状態にて示す斜視図である。
【図6】図1において自動車の車体内後部をボードの前後両側ボード部材の裏面側へ折り畳み状態にて示す斜視図である。
【図7】(a)〜(e)は、ボードの折り畳み過程を説明するための図2にて7−7線に沿う断面図である。
【図8】(a)〜(e)は、ボードの折り畳み過程を説明するための図2にて8−8線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図面により説明する。図1は、本発明をハッチバック型自動車に適用してなる一実施形態を示している。この自動車は、荷物室10を備えており、この荷物室10は、当該自動車の車体内にて、この車体の左右両壁後部20(図1では一方の内壁後部20のみを示す)と、左右両側座席30と、上記車体の後部に設けたバックドア(図示しない)とにより囲われて、上記車体の上壁後部(図示しない)と、上記車体の床40の後部との間において形成されている。なお、左右両側座席30は、当該自動車の車体の床40の前部上に左右に配設されている。
【0030】
また、当該自動車は、収納庫50を備えており、この収納庫50は、床40の後部に形成した開口部(図示しない)に嵌装されている。当該収納庫50は、収納庫本体50aと、四角環状フランジ50bとでもって構成されている。収納庫本体50aは、図5及び図6にて示すごとく、四角筒状周壁51及び底壁52でもって断面U字状に形成されており、この収納庫本体50aは、その開口部51aにて、断面L字状に形成されている。これにより、当該ボード60は、その外周下部にて、収納庫本体51の上記横断面L字状開口部51aの環状底面上に着座するようになっている。四角環状フランジ50bは、収納庫本体50aの開口部53の開口端から外方へ断面L字状に延出している。
これにより、当該収納庫50は、収納庫本体50aにて、床40の後部の上記開口部に上方から下方に向け挿入されるとともに、フランジ50bにて、床40の後部の上記開口部上に着座することで、上述のように嵌装されている。
【0031】
また、当該収納庫50は、図5及び図6にて示すごとく、中央突出部54及び左右両側突出部55a、55bを有している。中央突出部54は、収納庫本体50aの底壁52の前後方向中央部にて、その左右方向に沿い底壁52からその上方に向け突出するように長手状に形成されている。ここで、当該中央突出部54の左右方向長さは、収納庫本体50aの底壁52の左右方向幅よりも短くなっており、中央突出部54の突出高さは、収納庫本体50aにおける周壁51の底壁52の内面から開口部53の底面部までの高さに等しい。
【0032】
また、左右両側突出部55a、55bは、収納庫本体50aの周壁51の左右両壁部51b、51cの各前後方向中央部から中央突出部54の左右両端部に向けて突出形成されており、これら左右両側突出部55a、55bの底壁52の内面からの高さは、中央突出部54の突出高さに等しい。なお、収納庫50内には、スペアタイヤその他の物が収容されている。
【0033】
また、当該自動車は、図1にて示すごとく、折り畳み型ボード60を備えている。このボード60は、その外周下部にて、収納庫50の収納庫本体50aの断面L字状開口部51a内に着脱可能に嵌装されており、当該ボード60前後方向中央部は、その左右方向両端部及び中央部にて、左右両壁部51b、51c及び中央突出部54により下方から受承されるようになっている。
【0034】
当該ボード60は、図2にて拡大して示すごとく、前後両側ボード部材60a、60bと、前後両側表皮部材60c、60dとを備えており、前後両側ボード部材60a、60bは、ともに、折り畳み線L(図1及び図2参照)を基準に、収納庫本体50aの開口部51aをその前後に亘り半分ずつ閉じるように、ボード材料Mでもって、同一の平板形状に形成されている。
【0035】
ボード材料Mは、図4にて示すごとく、両ガラス繊維マットM1、M2と、当該両ガラス繊維マットM1、M2の間に積層したハニカム体M3とを備えている。本実施形態では、両ガラス繊維マットM1、M2は、それぞれ、50〜100(mm)以内の長さに切断したガラス繊維をバインダーにより固結してシート状に成形することで、形成されている。このように形成した両ガラス繊維マットM1、M2は、軽量で、ハニカム体M3の厚さ方向と直交する方向の応力に対して強いという特性を有する。
【0036】
また、ハニカム体M3は、所定の厚さの板状紙製ハニカム体からなるもので、このハニカム体M3は、複数の紙片を、相隣り合う両紙片毎に、順次所定間隔にて接着した上で、多数の六角形状の開孔部を形成するように紙片の厚さ方向に広げて、形成されている。このように形成したハニカム体M3は、軽量で、その厚さ方向に作用する応力に対し強いという特性を有する。
【0037】
しかして、ボード材料Mは、上述のように形成した両ガラス繊維マットM1、M2及びハニカム体M3を用いて次のようにして製造されている。
【0038】
まず、両ガラス繊維マットM1、M2を切断により形成するためのロール状ガラス繊維マット材料(ガラス繊維マットM1、M2と同様の形成材料からなる)を準備する。そして、このように準備したロール状ガラス繊維マット材料をコンベアによりその上に順次水平状に引き出しながら、このように順次引き出されるロール状ガラス繊維マット材料の上に、一定量の発泡性熱硬化性樹脂を順次均一に散布する。
【0039】
然る後、このように発泡性熱硬化性樹脂を順次散布されるロール状ガラス繊維マット材料を、上記発泡性熱硬化性樹脂の溶融温度以上及び硬化開始温度以下の範囲の加熱温度にて加熱する。これにより、ロール状ガラス繊維マット材料上に順次散布された熱硬化性樹脂を、その溶融により、当該ガラス繊維マットに付着させる。
【0040】
ついで、このように熱硬化性樹脂をその溶融により付着させたガラス繊維マット材料を一対のローラにより挟持して加圧しながら送り出すことで、上記発泡性熱硬化性樹脂が冷却固化される。その後、このように熱硬化性樹脂を冷却固化したガラス繊維マット材料を両ガラス繊維マットM1、M2の各々に対応する各所定の長さに切断して当該両ガラス繊維マットM1、M2とする。
【0041】
然る後、上述したハニカム体M3を当該両ガラス繊維マットM1、M2の間に挟持するように積層する。このとき、両ガラス繊維マットM1、M2は、その各熱硬化性樹脂の付着面にて、ハニカム体M3の各面に対向するように、積層される。
【0042】
そして、このように積層された積層体をプレス機により加圧及び加熱して成形する。この成形過程では、上述のように両ガラス繊維マットM1、M2に付着済みの発泡性熱硬化性樹脂が発泡し当該両ガラス繊維マットM1、M2の間及びハニカム体M3の各六角形状開孔部内に入り込みながら硬化する。このようにしてボード材料Mが製造されている。
【0043】
このように製造されたボード材料Mにおいては、両ガラス繊維マットM1、M2が、上述のごとく、軽量でその厚さ方向と直交する方向の応力に対して強いという特性を有するとともに、ハニカム体M3が、上述のごとく、軽量でその厚さ方向に作用する応力に対し強いという特性を有する。従って、このような両ガラス繊維マットM1、M2及びハニカム体M3の双方の特性が、相俟って、軽量で高い剛性を有するボード材料Mが提供され得る。
【0044】
なお、上述した発泡性熱硬化性樹脂のその発泡によるハニカム体M3の各開孔部内への入り込みは、ハニカム体M3の各開孔部内の空圧による抵抗のため、完全にはなされない。従って、ハニカム体M3の各開孔部内には空気部が残存する。その結果、ボード材料Mは高い吸音性及び断熱性を有する。
【0045】
以上のように製造されたボード材料Mは、前後両側ボード部材60a、60bの各々の外形形状に合わせて加工形成されることで、前後両側ボード部材60a、60bとして構成される。
【0046】
前後両側表皮部材60c、60dは、ともに、不織布により形成されており、当該前後両側表皮部材60c、60dは、それぞれ、前後両側ボード部材60a、60bの各表面に沿い接着されている。なお、表皮部材60dには、開口部Hが、図1にて示すごとく、後側ボード部材60bの後縁中央部近傍に形成した把持用凹所61に対応して形成されている。
【0047】
また、ボード60は、図2にて示すごとく、両左側ヒンジ帯60e、60f及び両右側ヒンジ帯60g、60hを備えており、これら各ヒンジ帯60e、60f、60g、60hは、不織布でもって形成されている。両右側ヒンジ帯60g、60hのうち右側ヒンジ帯60gは、図2或いは図3にて示すごとく、前後両側ボード部材60a、60bの各右端部間に連結されており、一方、右側ヒンジ帯60hは、右側ヒンジ帯60gの左側にて、当該右側ヒンジ帯60gに近接して並んで前後両側ボード部材60a、60bの各右端部間に連結されている。
【0048】
ここで、右側ヒンジ帯60gは、前端部61aにより、前側表皮部材60cの裏側にて前側ボード部材60aの表面の右側後部上に接着されるとともに、後端部61bにより、後側ボード部材60bの裏面の右側前部上に接着されて、前後両側ボード部材60a、60bの各右端部を連結している。また、右側ヒンジ帯60hは、後端部62aにより、後側表皮部材60dの裏側にて後側ボード部材60bの表面の右側前部上に接着されるとともに、前端部61bにより、前側ボード部材60aの裏面の右側後部上に接着されて、前後両側ボード部材60a、60bの各右端部を連結している。
【0049】
また、両左側ヒンジ帯60e、60fのうち左側ヒンジ帯60eは、図2、図7或いは図8から分かるように、前後両側ボード部材60a、60bの各左端部間に連結されており、一方、左側ヒンジ帯60fは、左側ヒンジ帯60eの右側にて、当該左側ヒンジ帯60eに並んで前後両側ボード部材60a、60bの各左端部間に連結されている。
【0050】
ここで、左側ヒンジ帯60eは、前端部63aにより、前側表皮部材60cの裏側にて前側ボード部材60aの表面の左側後部上に接着されるとともに、後端部61bにより、後側ボード部材60bの裏面の左側前部上に接着されて、前後両側ボード部材60a、60bの各左端部を連結している。また、左側ヒンジ帯60fは、後端部64aにより、後側表皮部材60dの裏側にて後側ボード部材60bの表面の左側前部上に接着されるとともに、前端部61bにて、前側ボード部材60aの裏面の左側後部上に接着されて、前後両側ボード部材60a、60bの各左端部を連結している。
【0051】
本実施形態において、上記不織布としては、ボード60の表面の外観を良好にするとともに前後両側ボード部材60a、60bをヒンジ連結するためのヒンジ機能を良好に発揮し得るように、十分な強度を有するニードルパンチ不織布、或いはこのニードルパンチ不織布にその裏面からラテックスを塗布した不織布が採用されている。なお、表皮部材のための不織布は、ヒンジ機能を有さない不織布であってもよい。
【0052】
以上のように構成した本実施形態において、折り畳み型ボード60が、図1にて示すごとく、収納庫50の収納庫本体51の横断面L字状開口部51a内に着脱可能に嵌装されていれば、当該ボード60は、上述したごとく、その外周下部にて、収納庫本体51の上記横断面L字状開口部51aの環状底面上に着座している。これにより、ボード60は、当該自動車内の床40の後部の床部材を兼用しつつ収納庫50の蓋としての役割を果たす。
【0053】
このような状態において、収納庫50内の収容物、例えば、スペアタイヤを取り出したり、或いは、他の物を収納庫50内に収納するにあたっては、乗員が、当該自動車の車体の後部側にて、上記バックドアを開いて、ボード60の後側ボード部材60bの上記把持部を把持して上方に持ち上げる。ここで、上述したごとく、後側ボード部材60bは、軽量なボード材料Mにより形成されているため、軽量である。従って、乗員は、後側ボード60bを上述のごとく容易に持ち上げることができる。
【0054】
これに伴い、後側ボード部材60bは、前側ボード部材60aとの境界である折り畳み線Lを基準として、図1にて反時計方向へ回動して、図5にて示すごとく、前側表皮部材60cの上方に半開き状態となり、さらに同一方向に回動されて、前側表皮部材60cを介し前側ボード部材60a上に折り畳まれる。このことは、ボード60が、折り畳み線Lを基準に、表面側へ二つ折りに折り畳まれることを意味する。
【0055】
一方、ボード60をその裏面側から折り畳むにあたっては、前側ボード部材60aをその後側ボード部材60bとの対向縁部にて上方へ持ち上げて傾斜状にした状態にて、後側ボード部材60bを前側ボード部材に60bに向けてその裏面側から回動させる(図6参照)。このことは、ボード60が、折り畳み線Lを基準に、裏面側へ二つ折りに折り畳まれることを意味する。
【0056】
このようなボード60の折り畳み過程につき、両左側ヒンジ帯60e、60f及び両右側ヒンジ帯60g、60hとの関係において説明すると、ボード60が、図1にて示す状態にあるとき、両左側ヒンジ帯60e及び60fは、図7(c)及び図8(c)にて示すごとく、クランク形状に折れ曲がった状態にあるとともに、両右側ヒンジ帯60g、60hも、それぞれ、両左側ヒンジ帯60e、60fとは逆のクランク形状に折れ曲がった状態にある。
【0057】
即ち、左側ヒンジ帯60eは、図7(c)にて示すごとく、前端部64bから中間部64cを介し後端部64aにかけて階段状に上がるようなクランク形状となっており、一方、左側ヒンジ帯60fは、図8(c)にて示すごとく、前端部63aから中間部63cを介し後端部63bにかけて階段状に下がるようなクランク形状となっている。また、両右側ヒンジ帯60g、60hのうち、右側ヒンジ帯60gは、左側ヒンジ帯60eと同様のクランク形状に折れ曲がった状態にあるとともに、右側ヒンジ帯60hは、左側ヒンジ帯60fと同様のクランク形状に折れ曲がった状態にある。
【0058】
このような状態において、後側ボード部材60bを上述のごとく持ち上げて反時計方向に回動させたとき、後側ボード部材60bは、図7(b)及び図8(b)にて示すごとく、前側ボード部材60aに対し垂直に立ち上がった状態となり、然る後、図7(a)及び図8(a)にて示すごとく、前側ボード部材60a上に前後両側表皮部材60c、60dを介し折り畳まれた状態になる。
【0059】
ここで、後側ボード部材60bが上述のごとく前側ボード部材60aに対し垂直に立ち上がった状態になったとき、左側ヒンジ帯60eが、図7(b)にて示すごとく、中間部64c及び後端部64aを前端部64bに対し垂直にかつ直線状に立ち上げるようなL字形状になる。一方、左側ヒンジ帯60fは、図8(b)にて示すごとく、直線状に位置する前端部62a及び中間部63bに対し後端部63bを垂直に立ち上げるようなL字形状になる。また、両右側ヒンジ帯60g、60hのうち、右側ヒンジ帯60gは、左側ヒンジ帯60eと同様のL字形状になるとともに、右側ヒンジ帯60bhは、左側ヒンジ帯60fと同様のL字形状になる。
【0060】
さらに、上述のように後側ボード部材60bが前側ボード部材60a上に折り畳まれた状態になったとき、両左側ヒンジ帯60e、60fは、図7(a)及び図8(a)にて示すごとく、ともに、コ字形状となる。このとき、両右側ヒンジ帯60g、60hも同様に、ともに、コ字形状となる。
【0061】
このようにして、ボード60は、後側ボード部材60b及び後側表皮部材60cでもって、収納庫50の開口部の後側半分部分を開く。その結果、収納庫50内のスペアタイヤを取り出したり、或いは、他の物を収納庫50内に収納することができる。
【0062】
然る後、乗員が、後側ボード部材60bの上記把持部を把持して上方に持ち上げることにより、後側ボード部材60bを、折り畳み線Lを基準として、各ヒンジ帯60e〜60hを介し、収納庫50の開口部の後側半分部分を閉塞するように回動する。これにより、ボード部材60は、再び、当該自動車内の床40の後部の床部材を兼用しつつ収納庫50の蓋としての役割を果たす。
【0063】
ここで、上述のように前後両側ボード部材60a、60bに連結された各ヒンジ帯60e〜60hによれば、両ヒンジ帯60e、60gは、折り畳み線Lに沿う方向からみて、両ヒンジ帯60f、60hに対し前後両側ボード部材60a、60b間にて互いに交差するように連結されていることとなる。
【0064】
このため、上述のように、ボード60をその表面側から折り畳む際に、後側ボード部材60bを前側ボード部材60aに向けてその表面側から回動させるとき、後側ボード部材60bは、両ボード部材60a、60bの各表面の対向表面部位を中心として前側ボード部材60aに向けてその表面側から回動する。従って、後側ボード部材60bは、その表面にて、前側ボード部材60aの表面に重なるように180°回動する。一方、後側ボード部材60bを前側ボード部材60bに向けてその裏面側から回動させるとき、前側ボード部材60aを後側ボード部材60bとの対向縁部側から上方へ傾斜状に持ち上げた状態にて、後側ボード部材60bを、前後両側ボード部材60a、60bの各裏面の対向裏面部位を中心として前側ボード部材60aに向けてその裏面側から回動させる。従って、後側ボード部材60bは、その裏面にて、前側ボード部材60aの裏面に重なるように180°回動する。
【0065】
このことは、ボード60は、その表面側或いは裏面側への折り畳みにあたり、後側ボード部材60bを360°という広い角度範囲以内にて回動させ得ることを意味する。その結果、収納庫50内の収容物を取り出したり、或いは、他の物を収納庫50内に収納するにあたり、ボード60を表面側及び裏面側のいずれに向けて折り畳んでも、収納庫50の開口部の開口部分を十分に開くことができて、便利である。
【0066】
ここで、上述のごとく、各ヒンジ帯60e〜60hは、ともに、上述した不織布でもって形成されているから、当該各ヒンジ帯60e〜60hは、伸縮不能で柔軟性を有する。従って、ボード60をその表面側或いは裏面側に向けて折り畳む際には、後側ボード部材60bが、前後両側ボード部材60a、60bの各表面の対向表面部位或いは各裏面の対向裏面部位の間に間隙を形成することなく、当該各表面の対向表面部位或いは各裏面の対向裏面部位を基準に回動することができる。従って、ボード60をその表面側或いは裏面側への折り畳みが円滑になされ得る。
【0067】
また、左側ヒンジ帯60e、60fは、前後両側ボード部材60a、60bの各対向縁部の右端部側に位置し、一方、右側ヒンジ帯60g、60hは、前後両側ボード部材60a、60bの各対向縁部の左端部側に位置する。しかも、左側ヒンジ帯60e、60fは、互いに近接して位置するとともに、右側ヒンジ帯60g、60hも互いに近接して位置する。このため、左側ヒンジ帯60e、60fの間隔及び右側ヒンジ帯60g、60hの間隔は、共に、左側ヒンジ帯60e、60fと右側ヒンジ帯60g、60hとの間隔に比べて狭い。
【0068】
このため、ボード60のその表面側或いは裏面側への折り畳みにあたり、前後両側ボード部材60a、60bが、その各対向縁部の全体に亘り相互に均一に接合した状態に維持され得る。その結果、ボード60のその表面側或いは裏面側への折り畳みが円滑になされ得る。
【0069】
また、各ヒンジ帯60e〜60hを形成する不織布が、上述のごとく、十分な強度を有するニードルパンチ不織布、或いはこのニードルパンチ不織布にその裏面からラテックスを塗布した不織布でもって形成されているから、各ヒンジ帯60e〜60hは、損傷等を招くことなく、長期に亘り良好にヒンジ機能を発揮し得る。また、表皮部材60c、60dも不織布でもって形成されているから、外観を損ねることもない。
【0070】
また、ボード部材60が、上述のように、収納庫50の開口部を閉じて、床40の後部の床部材を兼用しつつ収納庫50の蓋としての役割を果たしている状態において、例えば、乗員がボード60上に乗ったり、或いは荷物がボード60上に置かれたりすると、乗員或いは荷物による荷重が、ボード60に対しその上側から収納庫50内に向けて作用することとなる。
【0071】
ここで、ボード60は、収納庫50の収納庫本体51の横断面L字状開口部51a内に着脱可能に嵌装されて、その外周下部にて、収納庫本体51の上記横断面L字状開口部51aの環状底面上に着座している。また、当該ボード60は、上述のごとく、前後両側ボード部材60a、60bの各対向縁部(折り畳み線Lに対応する)にて、中央突出部54及び左右両側突出部55a、55bにより下方から受承されている。
【0072】
このため、上述した荷重がボード60に作用しても、ボード60は、下方へ向けて湾曲することなく、原形状を良好に維持して、上記蓋としての役割を十分に果たすことができる。ここで、ボード60は、上述のごとき高い剛性を有するボード材料Mでもって形成されている。従って、ボード60は、より一層良好に原形状を維持し得る。
【0073】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)両ガラス繊維マットM1、M2は、ガラス繊維を切断することなくバインダーにより固結してシート状に成形することで形成してもよく、また、ガラス繊維不織布或いはガラス繊維織布であってもよい。
(2)上記実施形態とは異なり、前後両側ボード部材60a、60bの形成材料は、ボード材料Mに限ることなく、剛性の高い合成樹脂板材料や木板材料等であってもよい。
(3)ボード60は、2分割構成の前後両側ボード部材60a、60bに限ることなく、例えば、3分割構成の3つのボード部材で構成してもよく、一般的には、少なくとも2つ以上のボード部材で構成してもよい。なお、各ヒンジ帯は、ボードの分割数に合わせて設ければよい。
(4)ボード60は、前側ボード部材60a及び後側ボード部材60bを、それぞれ、後側及び前側に位置させて、収納庫本体51の横断面L字状開口部51aに嵌装するようにしてもよい。この場合、把持用凹所64bは、後側ボード部材60bの後方に位置する前側ボード部材60aの後端部に形成すればよい。
(5)本発明の実施にあたり、ボード60は、上記実施形態とは異なり、例えば、家屋の台所の床の開口部に嵌装される収納庫の蓋として適用されてもよい。
(6)本発明の実施にあたり、ボード材料Mは、上記実施形態とは異なり、次のようにして製造するようにしてもよい。
(7)即ち、上記実施形態にて述べたハニカム体M3を両ガラス繊維マットM1、M2の間に介装するようにして積層し、然る後、この積層体の両ガラス繊維マットM1、M2にその各表面側から、順次、発泡性液状熱硬化性樹脂をスプレー等により一様に散布して塗布して両ガラス繊維マットM1、M2に含浸させる。ついで、このように含浸させた上記積層体を、プレス機により加圧及び加熱して成形する。このように成形した上記積層体を冷却により固化した上で、ボード材料Mとして製造される。このようにして製造したボード材料Mを用いて、上記実施形態にて述べた前後両側ボード部材60a、60bを形成しても、上記実施形態と同様の作用効果を達成することができる。
(8)各ヒンジ帯60e〜60hは、上記不織布に限ることなく、折り曲げ可能な金属膜或いは樹脂膜であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
50…収納庫、60…折り畳み型ボード、60a、60b…ボード部材、
60c、60d…表皮部材、60e〜60h…ヒンジ帯、61a、63a…前端部、62a、64a…後端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに表面に沿う方向に順次配列されて所定のボード材料からなる複数のボード部材と、
当該複数のボード部材のうち互いに隣接する両ボード部材ごとに当該両ボード部材を相互に表面側或いは裏面側へ折り畳み可能に連結する少なくとも2つのヒンジ手段とを備えて、
当該2つのヒンジ手段は、それぞれ、前記両ボード部材の各対向縁部を介し前記両ボード部材の一方の表面と他方のボード部材の裏面との間に接続される第1の伸縮不能な柔軟性ヒンジ部材と、前記両ボード部材の前記各対向縁部を介し前記一方のボード部材の裏面と前記他方のボード部材の表面との間に接続される第2の伸縮不能な柔軟性ヒンジ部材とにより構成されている折り畳み型ボード。
【請求項2】
前記2つのヒンジ手段は、前記両ボード部材の各対向縁部に沿う方向においてその両端側に互いに離れて位置しており、
前記2つのヒンジ手段の各々において、前記第1及び第2のヒンジ部材は、前記両ボード部材の前記各対向縁部に沿う方向において相互に近接して位置することを特徴とする請求項1に記載の折り畳み型ボード。
【請求項3】
前記各第1のヒンジ部材の前記一方のボード部材の前記表面に対する各接続部を介し前記一方のボード部材の前記表面に装着される第1表皮部材と、
前記各第2のヒンジ部材の前記他方のボード部材の前記表面に対する各接続部を介し前記他方のボード部材の前記表面に装着される第2表皮部材とを備えて、
前記各第1及び各第2のヒンジ部材は、それぞれ、不織布からなるヒンジ帯で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の折り畳み型ボード。
【請求項4】
前記所定のボード材料は、発泡性熱硬化性樹脂を浸透させた両ガラス繊維マットの間に板状ハニカム体を挟むように積層して加熱加圧することにより発泡成形されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の折り畳み型ボード。
【請求項5】
車体の床の後部に形成した開口部に嵌装される収納庫と、この収納庫の開口部を閉塞する蓋とを備える自動車において、
前記蓋は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の折り畳み型ボードであることを特徴とする折り畳み型ボードを備えた自動車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate