説明

折り返しフロー型のEDI

本発明は、低濃度水チャンバを構成しているカチオン交換膜及びアニオン交換膜の中央セクションが、軸方向に沿って接着されており、低濃度水チャンバは、内部低濃度水チャンバユニットと外部低濃度水チャンバユニットに分離されており、この結果、低濃度水が外部低濃度水チャンバユニット及び内部低濃度水チャンバユニットを折り返し方式によって順番に流れる折り返し型電気式脱イオン装置を開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式脱イオン装置に関するものであり、更に詳しくは、折り返し型の電気式脱イオン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気式脱イオン法(Electrodeionization:EDI)とは、電気透析法とイオン交換法を組み合わせた膜分離脱イオン法である。EDI浄水装置は、水の連続生産、アルカリ及び酸の使用を伴わないイオン交換樹脂の再生、及び自動運転などの多数の利点を具備している。これは、純水生成システム内において使用される最終的な水処理装置として、混床型を徐々に置換している。50年以上にわたる研究、実践、及び開発を経て、EDI法は、益々多くの人々に認知されるようになっており、その環境親和性及び操作の容易性に起因して、医薬、電子、電力、及び化学産業において広く適応されるようになっている。
【0003】
初期に公開及び市販されたEDI装置は、いずれも「積層プレート」構造を具備したものであり、これは、電気透析から導出された技法によって製造された成熟した構造である。しかしながら、この構造は、圧力に対する耐久力が乏しく、運転の際に容易に漏洩し、保守に費用を要し(充填されている樹脂を交換することができない)、その開放的な電界に起因して電界が簡単に漏洩し、この結果、エネルギーの消費量が大きいなどの欠点を有している。中国特許第9822354.3号(CN9822354.3)及び米国特許第6,190,528号(USP6,190,528)は、前述の欠点を克服する、螺旋状に巻き付けられた膜の電気式脱イオン装置について開示している。この螺旋状に巻き付けられた構造は、同心状の閉じた電界を有しており、エネルギーの消費量が小さい。具体的には、この螺旋状に巻き付けられた構造のEDIにおける新しい分離された構造によれば、膜及び樹脂を便利に交換可能であり、この結果、保守が容易である。
【0004】
従来技術においては、前処理済みの水の内部に存在する有機化合物により、しばしば、電気式脱イオン装置の膜、特に、充填されているイオン交換樹脂、に不可逆的な損傷が発生している。この損傷は、アニオン樹脂の場合に、より顕著である。一例としてゲル樹脂が付与された場合に、樹脂微粒子は、全体として、異なるサイズを有する相互に結合したクラック(crack)によって定義された内部チャネルから完全に構成されている。一般に、クラックのサイズは20〜40Åであり、クラックの表面は、活性を有する官能基を有するように分布している。これらの官能基は、イオンを放出可能であり、これらのイオンは、周辺の外部イオンと更に交換可能である。水中の有機化合物は、樹脂(通常は、アニオン樹脂)によって吸収される際に、樹脂微粒子の表面及びそれらのネットワーク状のクラックに付着し、この結果、イオンの拡散が困難になる。この種の吸収は、非常に安定しており、特に、有機化合物が樹脂微粒子の構造内に進入し、内部交換位置に到達した場合に、除去が困難である。この場合には、有機化合物は、互いに絡み合うことになり、一般に使用されている再生法によっては、樹脂構造から分離することがほとんど不可能である。この結果、樹脂の全体的な交換能力が低下する。又、有機化合物のカルボキシル基は、しばしば、この領域内の交換基の極性をも変化させている。
【0005】
EDIモジュールの低濃度水の流れの内部においては、官能基のモバイルイオン吸収特性が「高速の通路」を形成し、これを通じて、溶液中の無機イオンが、直流の下において膜表面に移動する。電気式脱イオン装置を通じて継続的に流れる水の供給容積と比べて、EDI内に充填されているイオン交換樹脂の量は、非常に小さい。この結果、一旦イオン交換通路が有機化合物によって汚染された場合の電気式脱イオン装置の全体的な性能に対する影響は、一般的な脱イオン(DI)ユニットに対する影響と比べて、格段に深刻なものとなる。汚染した樹脂は、再生が困難であるため、EDIの構造に起因して樹脂の交換が非現実的である場合には、そのEDIの全体を破棄することになる。
【0006】
EDI装置の運転の際には、充填されている樹脂が、実質的且つ連続的に再生されることを保証するべく、供給水のTOC(Total Organic Carbon:全有機炭素)を0.5ppm未満の量に維持しなければならない。具体的には、実際に、地表水、浅い地下水、又は汚染した地下水を処理する際には、供給水を従来の逆浸透プロセスによって全体的に前処理すると共に、生成水のTOCを0.5ppm未満のレベルに制御することになるが、EDI装置は、充填されている樹脂に対する長時間の運転による汚染物質の蓄積に起因し、頻繁に機能を停止することになる。この問題を解決するべく、各製造者は、2段階の逆浸透プロセスを適用している。即ち、第1逆浸透プロセスにおいて生成した水を別の逆浸透モジュール内に流すことにより、200ppb未満のTOCを有する前処理済みの水を生成することになる。しかしながら、これは、大きなエネルギー消費量と高額の投資費用に結び付くことになる。実際に、EDI装置の性能を改善するには、充填されている樹脂に時間の経過に伴って汚染物質が蓄積した際に、その充填されている樹脂、並びに、場合によっては、膜モジュール、を交換することが有効であり、経済的である。
【0007】
従来技術においては、当技術分野の技術者は、EDI装置の実際の運転の際に遭遇する多数の技術的な問題点を解決するべく試みており、これには、次のようなものを含まれている。
【0008】
シリコンやボロンなどの弱い電解質を除去する能力は、EDI装置によって生成される水の品質を計測するための最も重要なファクタの1つである。中国特許第1585727号(CN1585727)は、供給水中のシリコン及びボロンの改善された除去比率を有するEDI装置について開示しており、この場合には、脱塩チャンバ及び濃縮チャンバ内にイオン交換樹脂が充填されており、生成水の一部を水の注入口にリサイクルさせることによってその濃度を低減しており、濃縮水を廃棄している。PCT公開特許第03031034号(WO 03031034)には、低ボロン含有量検出制御装置を有する水処理システムが開示されており、この場合には、水処理システム内においてボロン含有量を検出すると共に、EDI装置の電流及び電圧を制御することにより、望ましい脱塩効果を獲得している。
【0009】
EDI装置のスケール問題:米国特許第6,149,788号(USP6,149,788)は、電気式脱イオン装置システムのスケールの形成を抑制すると共に、特に、供給水中の金属イオンの沈殿を抑制することによって、供給水の硬度に対する装置の許容度を改善し、これにより、装置の水処理効率を改善する、方法及び装置について開示している。
【0010】
中国特許第1615273号(CN1615273)は、液体を処理する部分的な電気式脱イオン法について開示しており、この場合には、沈殿又はスケールの形成を伴うことなしに、イオンをそのイオン強度の観点において順番に除去している。この方法においては、EDI装置の全体を2つのセクションに分割しており、それぞれのセクションの動作電圧を水質に応じてそれぞれ調節している。
【0011】
前述の中国特許第9822354.3号(CN9822354.3)及び米国特許第6,190,528号(USP6,190,528)も、螺旋状に巻き付けられたEDI装置について開示している。この装置においては、アニオン及びカチオン交換膜のペアの間に絶縁されたネット分離パーティションを配設することにより、特殊な膜のバッグを形成している。この膜のバッグの開放側は、濃縮水収集管の側壁内にスロット状に形成されている水収集孔と液体連通状態にあり、濃縮水チャンバを形成している。隣接する膜のバッグの間には、絶縁ネットが配置されており、このネットの2つの端部を接着剤によってシーリングすることにより、イオン交換樹脂微粒子を充填可能な低濃度水チャンバを形成している。そして、これらを濃縮水収集管の周りに巻きつけることにより、円筒構造を形成している。次いで、この円筒を外部から金属性の外層によって包んでおり、次いで、これを絶縁ポリマーレイヤによってコーティングしている。尚、この円筒膜モジュールの両端には、フィルタ及びカバーが嵌め込まれている。この構造は、構造が簡単であり、膜を非常に効率的に入手可能であり、低濃度水チャンバの抵抗が小さく、圧力の降下量も小さく、漏洩しないなどの多くの利点を具備している。この構造は、積層された機械的なシートタイプのEDIの欠陥を克服すると共に、スケールの形成と弱い電解質(例えば、シリコン及びボロン)の除去に伴う技術的な問題点を解決しており、特に、EDI装置の運転中に不可逆的に汚染された場合に、充填されている樹脂をタイミング良く便利に交換することに伴う問題点を克服しており、これにより、前処理の費用及び要件を低減している。
【0012】
しかしながら、この螺旋状に巻き付けられた構造は、電流密度の不均等な分布という欠点を具備している。同心状に設計された陰極及び陽極間における電界は、中央から放射されている。従って、この電界は、中央管に近づくほど強くなり、反対方向においては弱くなる。この結果、EDI装置のそれぞれのセクション内において脱塩性能が変化しており、性能は、中心に近づくほど良好になる。
【0013】
米国特許第5,376,253号(USP5,376,253)も、螺旋状に巻き付けられたEDI装置について開示しており、この場合には、陰極及び陽極が同心状に配設されており、低濃度水は、弱い電界を有する周辺側から強い電界を有する中央に向かって、半径方向に沿って螺旋状に且つ放射状に流れている。これは、内部と外部の間における電流密度の差の問題を解決している。しかしながら、この装置の水の生産性を確保するには、この構造を軸方向において長くしなければならず、従って、電極の長さが増大することになる。又、低濃度水の螺旋状の流れに起因して水の流体抵抗が増大すると共に、構造が複雑であって、樹脂の充填及び交換が困難である。
【0014】
中国特許公開第1426970A(CN1426970A)は、高濃度水及び低濃度水を循環させる巻き付けられた電気透析装置について開示しており、この場合には、低濃度水は、装置内に流入し、中央管(これは、膜のバッグ内におけるU字形状の流路である)を通じて流出している。高濃度水は、軸方向に沿って流路を通じて流れると共に、モジュールを通じて直接的に流れており、装置の側部内の排出口を通じて流出している。この設計は、電界の不平等な強度によって発生する問題を部分的に解決している。しかしながら、高濃度水及び低濃度水の流路の設計が望ましいものではなく、これにより、特定のエリア内において高濃度水の圧力が低濃度水の圧力を上回っており、この結果、高濃度水が低濃度水チャンバ内に逆浸透することになり、生成水の品質に悪影響を与えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、EDI装置のそれぞれのセクション内における大きな電流密度の差に起因した不安的な生成物の品質と、特に、弱い電解質の除去及び容易なスケールの除去に関連した望ましくない能力を含む従来技術の技術的な問題点を解決することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、望ましい構造を具備すると共に、EDI装置のそれぞれのセクション内における電流密度の差を効果的に利用することにより、安定した生成物の品質を入手可能な折り返し型のEDI装置を提供することにある。又、本装置の膜モジュール及び樹脂は、便利に交換可能であり、相対的に経済的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述の技術的な問題点は、折り返し型のEDI装置を提供することによって主に解決されており、この装置は、電極としての中央管と、中央管と同心状になっている外層と、外部電極と、それぞれ中央管及び外層の両端に配設された上部及び下部カバーと、中央管と外層の間に交互に配設されたアニオン及びカチオン交換膜と、それぞれイオン交換膜の間に形成された高濃度水チャンバ及び低濃度水チャンバと、低濃度水チャンバ内に嵌め込まれた支持フレームと、高濃度水チャンバ内に嵌め込まれたネット分離パーティションと、高濃度水チャンバ又は低濃度水チャンバの少なくとも1つの内部に充填されたイオン交換樹脂と、を有している。この折り返し型EDI装置は、前述のアニオン及びカチオン交換膜、高濃度水チャンバ内のネット分離パーティション、低濃度水チャンバ内の支持フレーム、及びイオン交換樹脂が、中央管の周りに巻きつくことによって螺旋状に巻き付けられた円筒形のユニットを形成し、且つ、電極をそれぞれDC電源の2つの端子に接続することによって同心状の電界を形成するような構造を具備しており、この場合に、低濃度水チャンバは、内部低濃度水チャンバユニットと、外部低濃度水チャンバユニットに分離されており、低濃度水の流れは、まず、外部低濃度水チャンバユニット、次いで、内部低濃度水チャンバユニットを通過し、この結果、低濃度水が、折り返された状態において流れるようになっている。中央管近傍の低濃度水チャンバユニットが内部低濃度水チャンバユニットであり、外層近傍の低濃度水チャンバが外部低濃度水チャンバユニットである。そして、低濃度水の流れは、外部低濃度水チャンバユニットと内部低濃度水チャンバユニットを通過し、この結果、内部低濃度水チャンバユニット内の流れと外部低濃度水チャンバユニット内の流れが直列に接続されており、低濃度水の流れが、折り返された状態となっている。従って、この構造は、実質的に、外部における弱い電解強度と内部における強い強度を有する同心状の電界の特性を利用しており、供給水は、まず、外部電界において脱イオンされた後に、内部電界を最後に通過しており、この結果、水中の弱い電解質残留物が強力な電界内において実質的に除去されており、これにより、脱イオン効率を向上させると共に、電力消費量を低減するようになっている。又、この折り返し型の設計は、軸の長さを短縮することにより、高価な電極材料を節約すると共に、製造コストをも低減している。
【0018】
EDI装置内においては、供給水中の塩イオンは、次の3つの移動方式を具備することになる。
【0019】
(1)カチオン及びアニオンは、カチオン及びアニオン交換樹脂とそれぞれ交換し、従って、樹脂粒子に付着する。
【0020】
(2)イオンは、電界の影響下において、樹脂粒子によって形成されたイオン流路を通じて移動する。これは、本出願のEDIシステム内においては、樹脂の導電率が、水溶液のものと比べて、数桁大きいためである。
【0021】
(3)イオンは、イオン交換膜を通じて高濃度水チャンバ内に移動し、従って、水の脱イオンプロセスを完了させる。
【0022】
(4)特定の電流密度において、樹脂膜と水の境界面における濃縮分極に起因して水がH+及びOH-に分解し、従って、樹脂が再生される。
【0023】
EDI装置内においては、イオン交換のプロセス、電気透析のプロセス、及び樹脂再生のプロセスが同時に発生している。この結果、EDI装置は、連続的且つ安定的に動作すると共に、高度な水の脱イオンを実現することにより、高度に純化された(又は、超高純度の)水を生成可能である。但し、EDIモジュール内においては、脱イオンシーケンスは、それぞれの種類のイオンごとに異なっている。第1に脱イオンされるイオンは、Ca2+、MG2+などの大きな原子価を有するイオンであり、これに続くのが、相対的に小さな原子価を具備した脱イオンされやすいNa+、Cl-などのイオンである。最後に脱イオンされるイオンは、HSiO3-、CO32-などの弱いイオンと、H+、OH-である。本発明のEDIの折り返し型の設計においては、処理対象である供給水は、まず、装置の外部低濃度水チャンバユニット内に流れ込んでいる。外部低濃度水チャンバユニットの電界は弱いが、これは、Ca2+、MG2+などの高原子価を有するイオン及び強力な電解質イオンを脱イオンするのに十分なものになっている。水が折り返した状態において内部低濃度水チャンバユニットに流入する際に水中に含まれているイオンは、一般に、HSiO3-、CO32-などの弱いイオンと、H+、OH-、並びに、少量の低原子価を有する強力な電解質イオンである。この段階においては、脱イオンが相対的に困難であるこれらの弱いイオンは、内部低濃度水チャンバユニットの強力な電界内に位置しており、この強力な電界の下において脱イオン可能である。
【0024】
中央管は、金属管であってよく、エンジニアリングプラスチック又はその他の材料から製造された構造上に導電性材料を表面被覆することも可能である。導電性材料は、ルテニウムによってコーティングされたチタニウム金属、プラチナによってコーティングされたチタニウム金属、或いは、グラファイトなどの非金属性の導電体材料であってもよい。陰極としてのみ使用される場合には、導電性材料は、チタニウム金属又はステンレススチール金属であってもよい。
【0025】
外部電極は、外層であるか、或いは、外層上に配設された導電性材料であってよい。これは、シート又はグリッドであるか、或いは、中央電極を有する同心構造を形成するべく、ストリップを巻きつけるか又は編みこむことによって形成されており、且つ、外層と螺旋状に巻き付けられた円筒形モジュールの間に配置された円筒形の構造であってもよい。
【0026】
好ましくは、中央管が陽極として機能し、外層が陰極として機能している。
【0027】
カバーは、外部カバーと内部カバーを有している。外部カバー、これは、圧力に耐えるべく使用されている、は、金属性材料から構成可能である。内部カバー、これは、外層と共に閉じた容器を形成するべく使用されている、は、ポリオレフィンやエンジニアリングプラスチックなどの高分子量の高分子材料から構成可能である。
【0028】
低濃度水チャンバの分離は、低濃度水チャンバの形成に使用されているカチオン交換膜及びアニオン交換膜を接着又は縫製することによるか、又は低濃度水チャンバ内にネット分離パーティションを配置することによるなどの任意の既知の方式によって実現可能である。好ましくは、低濃度水チャンバは、カチオン交換膜とアニオン交換膜のペア、並びに、その内部に充填されたカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂から構成されている。中央管に対して平行な低濃度水チャンバの2つの端部はシーリングされており、その他の2つは開放されている。低濃度水チャンバを構成しているカチオンとアニオン交換膜のペアの中央セクションは、軸方向に沿って接着されている。中央管に対して平行な低濃度水チャンバの2つの端部はシーリングされており、その他の2つは開放されているため、低濃度水は、軸方向に沿って流れることになる。低濃度水チャンバを構成しているカチオン及びアニオン交換膜のペアは、軸方向に沿って中央セクションの辺りにおいて接着されており、外部及び内部低濃度水チャンバユニットを形成している。
【0029】
好ましくは、内部低濃度水チャンバユニットの膜面積と外部低濃度水チャンバユニットの膜面積の比率は、1:1〜1:3であり、更に好ましくは、1:1.25〜1:1.15である。低濃度水チャンバの厚さは、3〜8mmである。
【0030】
好ましくは、上部及び下部カバーは、タイバーを介して接続されている。タイバーは、中央バーと、円周状に配列された側部バーを有している。中央バーは、本装置をシーリングするべく中央管の内部に配置されている。側部バーは、本装置のエッジに均一に配置されており、且つ、本装置をシーリングすると共に上部カバーを下部カバーと接続するべく使用されている。
【0031】
好ましくは、中央管と外部低濃度水チャンバユニットの外部直径比率は、1:1.5〜1:2.5である。
【0032】
好ましくは、EDI装置の高さと直径の比率は、1:0.7〜1:2である。
【0033】
好ましくは、この折り返し型のEDI装置は、螺旋状に巻き付けられた構造を具備しており、この場合に、カチオン及びアニオン交換膜、隣接するカチオン及びアニオン交換膜の間に配置されたネット分離パーティション又は支持フレーム、並びに、低濃度水チャンバ内に充填されているカチオン及びアニオン交換樹脂は、螺旋状に巻き付けられた方式によって構成されている。
【0034】
好ましくは、この折り返し型のEDI装置は、同心構造を具備しており、この場合に、カチオン及びアニオン交換膜、隣接するカチオン交換膜及びアニオン交換膜の間に配置されているネット分離パーティション又は支持フレーム、並びに、低濃度水チャンバ内に充填されているカチオン及びアニオン交換樹脂は、螺旋状に巻き付けられた方式によって構成されている。
【0035】
好ましくは、中央管に対して垂直のカチオン及びアニオン交換膜の2つの端部の中の1つは、平坦であり、他方は、ラダー形状を具備しており、シーリング要素を有している。内部低濃度水チャンバユニットの軸方向の長さは、外部低濃度水チャンバユニットの軸方向の長さよりも長くなっている。従って、EDI装置の良好なシーリング効果を実現するべく、イオン交換膜の一端をラダーの形状とすることによってシーリング要素を配置することが有利である。
【0036】
内部及び外部低濃度水チャンバユニットを複数のサブチャンバユニットにそれぞれ分離し、この複数のサブチャンバユニットを直列に接続することによって低濃度水の流れを形成し、これにより、複数の折り返しを有する低濃度水の流れを実現可能である。又、内部及び外部低濃度水チャンバユニットは、連続したもの(straight−through)であってよく、低濃度水チャンバを内部及び外部低濃度水チャンバユニットにのみ分離することにより、低濃度水が低濃度水チャンバ内において1回だけ折り返すようにすることも可能である。好ましくは、内部低濃度水チャンバユニットと外部低濃度水チャンバユニットは、いずれも、軸方向に沿って連続していることが好ましく、この理由は、このような構造は、単純であって費用効率が優れており、且つ、優秀な脱イオン効果を実現可能であるためである。
【0037】
物質移動の原理から、イオンは、高濃度から低濃度に向かって自発的に移動する傾向を有していることが理解されよう。イオン交換膜による100%の選択的透析は実現不可能であるため、実際に、EDI装置内において、高濃度側の少量のイオンが低濃度側に移動するのは不可避である。このような望ましくない移動、この結果、生成水の品質が損なわれることになる、を除去するには、脱イオンプロセス全体のあらゆる時点において低濃度水チャンバの圧力が高濃度水チャンバの圧力を上回っているように制御しなければならない。
【0038】
好ましくは、中央管に対して平行な高濃度水チャンバの2つの端部は開放されており、その他の2つの端部はシーリングされている。高濃度水チャンバには、軸方向に沿って減圧帯が提供されている。高濃度水は、半径方向に沿って流れており、従って、中央管に対して平行な2つの端部は開放している。高濃度水は、外層からEDI装置内に流入し、EDI装置の半径方向に沿って流れた後に、中央管の端部から流出している。減圧帯を使用することにより、高濃度側の圧力を均衡させると共に、低濃度水の圧力が排出口側における高濃度水の圧力を上回ることを保証している。高濃度水チャンバ内における減圧帯の位置は、カチオン交換膜とアニオン交換膜の間の中央位置近傍における低濃度水チャンバ内の内部及び外部低濃度水チャンバユニットの境界面に対応可能である。圧力を低減するべく、減圧帯を複数のセグメントに分離することにより、減圧帯の複数のセグメントによって形成されるギャップを通じた高濃度水の流れを実現可能である。減圧帯は、ゴム、プラスチック、又はその他の弾性材料から構成可能であり、これは、接着、溶接、又はその他の手段によって固定可能である。
【0039】
高濃度水チャンバを複数のチャンバユニットに分離することも可能である。好ましくは、中央管に対して平行な高濃度水チャンバの2つの端部は開放されており、その他の2つの端部はシーリングされている。高濃度水チャンバを構成しているカチオン交換膜及びアニオン交換膜のペアの中央セクションは、軸方向に沿って接着されている。内部及び外部高濃度水チャンバユニットの中の少なくとも1つの内部に半径方向に沿ってガイド帯が配置されている。高濃度水チャンバは、高濃度水チャンバを構成しているカチオン交換膜及びアニオン交換膜のペアを中央近傍の位置において接着することにより、内部及び外部高濃度水チャンバユニットに分離されており、従って、高濃度水の圧力は、排出口側における低濃度水の圧力よりも低くなっている。この高濃度水チャンバ内におけるガイド帯の配列により、高濃度水は、軸方向に沿って内部及び外部高濃度水チャンバユニット内を折り返された状態において流れることができる。高濃度水は、まず、装置の中央管内の高濃度水注入口を通じて内部高濃度水チャンバユニット内に流入する。次いで、これは、中央管側から半径方向に沿って外層側に向かって流れる。高濃度水は、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の接着部分の近傍を流れる際に、ガイド帯を通じて中央管側に折り返し、中央管側の高濃度水排出口を通じて装置から流出することになる。次いで、高濃度水は、再度、外部高濃度水管システムを介して外部高濃度水チャンバ内に流入し、次いで、外層側から中央管側に向かって半径方向に沿って流れる。高濃度水は、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の接着位置の近傍を流れる際に、ガイド帯を通じて外層側に折り返し、外層側の高濃度水排出口を通じて装置から流出する。次いで、高濃度水は、再度、外部高濃度水管システムを介して中央管内の注入口に流入する。ガイド帯は、ゴム、プラスチック、又はその他の弾性材料から製造可能であり、これは、接着、溶接、又はその他の手段によって固定可能である。このガイド帯の構成により、高濃度水の圧力勾配が低濃度水の圧力勾配と略等しくなることが保証されており、且つ、膜の面積全体において低濃度水の圧力が高濃度水の圧力を上回ることが保証されている。
【0040】
高濃度水チャンバ内における高濃度水の連続的な循環により、改善された水の回収率を実現している。しかしながら、低濃度水チャンバ内においては(特に、水の純度が相対的に高い低濃度水チャンバの端部においては)、水が容易にイオン化する。更に具体的には、イオン交換樹脂とイオン交換膜の間の境界面において、水は、電気分解してH+及びOH-を形成する傾向を有している。このような場合には、H+及びOH-の一部がイオン交換膜を通じて高濃度水チャンバ内に浸透し、H2Oに再合成されることになる。しかしながら、カチオン交換膜の高濃度水チャンバ側の表面は、強力な酸性を呈しており、局所的に高いH+濃度の存在を示している。対照的に、アニオン交換膜の高濃度水チャンバの表面は、強いアルカリ性を呈しており、局所的に高いOH-濃度の存在を示している。
【0041】
Ca2+、Mg2+などの硬化イオン(hardening ion)を含む水が局所的に高いOH-濃度を有する位置(略排出口において)を通じて流れる際に、Ca2+及びMg2+などの硬化イオンは、恐らくは、OH-及びCO32-と反応して沈殿を形成し、これがチャンバ内に付着してスケールを形成し、この結果、EDI装置の正常な動作に影響が及ぶことになる。
【0042】
従って、好ましくは、循環させることなしに、高濃度水を装置から外に破棄することにより、Ca2+及びMg2+などの硬化イオンがOH-及びCO32-と反応して沈殿を形成することを防止可能である。これは、高濃度水と低濃度水の間の圧力差を維持するのに有用である。
【0043】
水の回収率を改善すると共にスケールの形成を回避するべく、脱イオンプロセスにおいて、高濃度水の循環型の流れと非循環型の流れを高濃度水チャンバ内において交互に実施可能である。
【0044】
又、水溶性溶液内においては、電流は、カチオン及びアニオンの移動によって搬送されている。しかしながら、外部回路内においては、電流は、電子の移動によって搬送されている。EDI装置内においては、電子及びイオンは、電極と溶液の間の境界面において互いに変換又は結合しているため、EDI装置の陰極及び陽極の両方の内部において、電極反応が不可避に発生し、ガスを放出することになる。
【0045】
陽極: OH−4e=O2+2H2
2Cl−2e=Cl2
陰極: 2H++2e=H2↑
【0046】
従って、このEDIの高濃度水チャンバ内には、強力な酸化能力を有する特定量の自由塩素が存在しており、これが、高濃度側においてイオン交換膜を汚染することになる。好ましくは、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の高濃度側に保護吸収膜が配設されている。この保護吸収膜は、活性を有する炭素繊維又はその他の類似の材料から製造可能である。これを使用することにより、高濃度水中の自由塩素を吸収すると共に、イオン交換膜の汚染を防止するのである。
【0047】
要すれば、本発明は、次のような利点を具備している。(1)本発明のEDI装置には、折り返し方式における低濃度水の流れを生成する内部及び外部低濃度水チャンバユニットが提供されている。この設計は、単純な構造、望ましい設計、及び相対的に小さな流体抵抗を実現すると共に、供給水の高度な脱イオンを実現しており、特に、装置の内部及び外部間における電流密度の差を実質的に利用することにより、弱い電解質の脱イオンを事実上改善している。従って、不均等な電流密度によって発生する望ましくない生成物の品質問題が克服されており、生成水の品質が改善される。(2)内部チャンバユニットは、外部チャンバユニットよりも高くなっており、この結果、流速の生成と抵抗の低減が促進されている。(3)折り返し型の設計は、軸方向における長さを短縮し、陰極、陽極、及び交換装置内において使用される材料を節約すると共に、コストを低減しており、生成物の品質も保証されている。(4)高濃度水チャンバ内に減圧帯が配設されており、この結果、高濃度水の圧力が均衡している。従って、低濃度水の圧力は、動作プロセス全体におけるあらゆる時点において高濃度水よりも高くなっており、この結果、低濃度水の圧力が装置の排出口側の高濃度水の圧力よりも高いことが保証されている。(5)本発明の装置は、従来技術の中央セクション内における過電流に伴う技術的な問題を解決し、電力消費量を低減すると共に、装置の製造コストを節約している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
代表的な実施例及び添付の図面を参照し、本発明について更に説明することとする。
【0049】
(例1)
図1、図2、及び図3に示されているように、折り返し型のEDI装置は、中央軸として中央管7を具備している。この中央管7は、エンジニアリングプラスチック管から製造されており、電極端子19から延長して本装置の陽極として機能するルテニウムコーティングされたチタンシートによって覆われている。カチオン交換膜及びアニオン交換膜の8つのペア22が、中央管7の円周方向において均等に分散している。換言すれば、中央管7の円周は、8つの部分に均等に分割されており、それぞれの部分が、カチオン交換膜及びアニオン交換膜のペア22の1つの端部と接続している。中央管7に対して垂直のカチオン交換膜及びアニオン交換膜のペア22の2つの端部の中の1つは、平坦であり、もう1つは、ラダー形状であって、このラダー上に配設されたシーリング要素11を有している。このシーリング要素は、本装置をシーリングするべく使用されるエンドリングである。交換膜22の2つの面上には、低濃度水チャンバ及び高濃度水チャンバ5が交互に配設されている。高濃度水チャンバ5は、カチオン交換膜及びアニオン交換膜のペア22と、この内部に充填されたネット分離パーティション21から構成されている。中央管7に対して垂直のイオン交換膜のペア22の2つの端部は、ポリウレタン樹脂によって接着されており、別の2つの端部は、開放されている。開口部は、中央管7上に位置している。ネット分離パーティション21は、2つの膜によって挟持されている。高濃度水チャンバ5に近接したカチオン交換膜及びアニオン交換膜22の面は、高濃度水中の残留塩素を吸収するべく、活性を有する炭素繊維のレイヤによって覆われている。低濃度水チャンバは、高濃度水チャンバ5に隣接している。低濃度水チャンバを構成しているカチオン交換膜及びアニオン交換膜のペア22内の中央管7に対して垂直の2つの端部には、ストリップの形状の支持フレーム23が提供されている。その他の2つの端部もポリウレタン樹脂によって接着されており、その内部には、イオン交換樹脂2が充填されている。
【0050】
低濃度水チャンバを形成しているカチオン交換膜及びアニオン交換膜のペア22は、内部低濃度水チャンバユニット6と外部低濃度水チャンバユニット4を形成するべく、軸方向に沿った中央管の近傍において、エポキシ樹脂によって垂直方向に接着されている。内部低濃度水チャンバユニット6及び外部低濃度水チャンバユニット4は、それぞれ、連続しており(straight−through)、2つのユニットの膜面積の比率は、1:1である。供給水は、上端13から外部低濃度水チャンバユニット4に進入し、軸方向に沿ってそのそれぞれのセクションを流れた後に、低濃度水チャンバの下端17に到達する。次いで、供給水は、折り返し、内部低濃度水チャンバユニット6のそれぞれのセクションを通じて流れた後に、装置の内部排出口10に戻り、これにより、折り返し型の流路(図6に示されている)が形成されている。この設計は、装置の周辺部の様々なセクションと中央の間における電流密度の差を大幅に低減している。供給水は、外部チャンバユニットから流れて内部チャンバユニットに折り返している。この結果、本発明のEDI装置は、同一の水質を保証しつつ、供給水が流れることを要する同一の長さについて、相対的に小さなサイズで(即ち、軸方向の長さを短縮して)構築可能である。この結果、本発明のEDI装置は、材料及び製造費用の両方を低減可能である。
【0051】
中央管7に対して平行な高濃度水チャンバ5の2つの端部は、開放されており、その他の2つの端部は、シーリングされており、この結果、半径方向に沿った高濃度水の流れを生成している。高濃度水チャンバを形成しているカチオン交換膜及びアニオン交換膜のペア22を中央管に対して平行な方向において高濃度水チャンバ5内の中央セクションの近傍において接着することにより、内部高濃度水チャンバユニット26と外部高濃度水チャンバユニット27を形成している。中央管7に対して垂直の方向において、内部及び外部チャンバユニットの中央セクションの近傍に、ガイド帯24が配設されている。高濃度水は、高濃度水注入口から流入し、内部高濃度水チャンバユニット26及び外部高濃度水チャンバユニット27をそれぞれ通過した後に、高濃度水排出口から流出しており、閉じた流路を形成している。この閉じた流路内において、高濃度水は、まず、本装置の中央管内の注入口から内部高濃度水チャンバユニット26内に流入し、中央管7側から半径方向に螺旋状の内部高濃度水チャンバユニット26に沿って外層1側に向かって流れている。高濃度水は、ガイド帯24を介してカチオン及びアニオン交換膜22の接着位置の近傍において中央管7に向かって折り返し、次いで、中央管7の高濃度水排出口から流出する。次いで、高濃度水は、外部管システムを介して外部高濃度水チャンバユニット27に流入し、半径方向において外層1側から螺旋状の外部高濃度水チャンバユニット27に沿って中央管7に向かって流れた後に、ガイド帯24を介してカチオン及びアニオン交換膜22の接着部分の近傍において外層1側に向かって折り返している。高濃度水は、最終的に、その外部排出口を介して本装置から流出し、高濃度水注入口に循環している(図6に示されている)。高濃度水注入口は、中央管上の開口部8であり、高濃度水排出口は、外層上の開口部14である。この設計は、低濃度水排出口側と高濃度水排出口側の間の圧力差を低減すると共に、低濃度水の圧力勾配と高濃度水の圧力勾配を互いに略同一にすることにより、膜面積全体において低濃度水の圧力が高濃度水の圧力を上回ることを保証するのに有用である。
【0052】
カチオン交換膜及びアニオン交換膜22から形成された高濃度水チャンバ及び低濃度水チャンバは、中央管7の周りに巻き付くことにより、円筒膜モジュールを形成している。巻き付けられた膜モジュールは、外層1によって包まれている。カチオン交換膜及びアニオン交換膜22、ネット分離パーティション21、及びカチオン交換膜及び隣接するアニオン交換膜の間に介在している支持構造、並びに、低濃度水チャンバ内に充填されているカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂は、螺旋状に巻き付けられた構造において構成されている。外層1と、巻き付けられた円筒の間には、陰極としてチタニウムシート16が配設されている。上部カバー12及び下部カバー18が、中央管7と外層1の上端及び下端にそれぞれ配設されており、中央のタイバー9と周辺部の円周に均等に分散された12個の側部タイバーを通じて外層1が上部カバー12及び下部カバー18と接続されている。
【0053】
外部低濃度水チャンバユニットの直径は、Φ400mmである。内部低濃度水チャンバユニットの直径は、Φ340mmである。中央管7の直径は、Φ250mmである。本EDI装置の全体は、Φ440mmの周囲直径と、450mmの高さを具備している。
【0054】
(例2)
図1、図2、及び図4に示されているように、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の15個のペア22が、折り返し型のEDI装置の中央管の周囲に巻き付いている。中央管7に対して垂直のカチオン交換膜及びアニオン交換膜のそれぞれのペア22の2つの端部は、エポキシ樹脂によって接着されている。接着されたカチオン交換膜及びアニオン交換膜22内には、ネット分離パーティション21が配設されており、これにより、高濃度水チャンバ5が形成されている。中央管7に対して平行なカチオン交換膜及びアニオン交換膜22の2つの端部は、高濃度水収集管及び分配管とそれぞれ接続されている。カチオン交換膜及びアニオン交換膜の15個のペア22が中央管の周りに巻きつくことにより、同心構造を形成している。互いに隣接するカチオン交換膜及びアニオン交換膜の2つのペア22の間の空間が低濃度水チャンバである。中央管7に対して平行な低濃度水チャンバの2つの端部は、エポキシ樹脂によって接着されており、その他の2つの端部は、支持フレーム23によって接着され、この中には、イオン交換樹脂2が充填されている。螺旋状に巻きつけられた構造の外部には、外層1が配置されている。中央管7及び外層1の上端及び下端には、上部カバー12及び下部カバー18がそれぞれ配設されている。中央管7上には、開口部8が配置されており、高濃度水は、これを通じて外層内の注入口14から到来し、陰極チャンバ15及び高濃度水チャンバ5を通過して最終的に本装置から流出可能である。図5に示されているように、高濃度水チャンバ5内の中央セクションの近傍には、減圧帯20が配設されており、減圧帯20の中央には、ギャップ25が提供されており、この結果、高濃度水は、半径方向に沿って流れる際に、減圧されることになる。この結果、低濃度水の圧力は、排出口における高濃度水よりも高くなっている。高濃度水は、循環方式によって流れている。これは、高濃度水注入口から流入し、高濃度水分配管を介して同心構造のそれぞれの流路に進入し、次いで、半径方向において減圧帯20を通じて流れ、高濃度水収集管内において合流している。最終的に、高濃度水は排出口8から流出する。外部低濃度水チャンバユニットの直径は、Φ350mmである。内部低濃度水チャンバユニットの直径は、Φ280mmである。中央管7の直径は、Φ160mmである。EDI装置全体の周囲直径は、Φ400mmである。本装置の高さは、430mmである。その他の部分の構造は、例1のものと同一である。
【0055】
(例3)
図1、図2、及び図3に示されているように、カチオン交換膜及びアニオン交換膜22は、中央パイプ7の周りに巻き付いている。イオン交換膜22の2つの面上に低濃度水チャンバ及び高濃度水チャンバ5が提供されている。低濃度水チャンバ内には、イオン交換樹脂2が充填されており、高濃度水チャンバ5内には、ネット分離パーティション21が充填されている。EDI装置は、螺旋状に巻き付けられた構造であり、この螺旋状に巻き付けられた構造の外部が外層1である。中央管7と外層1の上端及び下端には、上部カバー12と下部カバー18がそれぞれ配設されている。図7に示されているように、高濃度水は、中央管7の高濃度水注入口から流入し、内部高濃度水チャンバユニット26及び外部高濃度水チャンバユニット27を順番に通過した後に、外層1の側部上の高濃度水排出口から流出しており、これにより、部分的に開いた流路を形成している。この流路内において、高濃度水は、まず、本装置の中央管内の注入口から内部高濃度水チャンバユニット26内に流れ込み、次いで、半径方向において中央管7側から外層1に向かって螺旋状の内部高濃度水チャンバユニット26に沿って流れている。高濃度水は、ガイド帯24を介してイオン交換膜22の接着位置の近傍において中央管7側に戻り、中央管7の高濃度水排出口から流出する。次いで、水は、外部高濃度水管を通じて外部高濃度水チャンバユニット27に移送され、半径方向において外層1側から中央管7に向かって螺旋状の外部高濃度水チャンバユニット27に沿って流れ、次いで、イオン交換膜22の接着セクション近傍の位置においてガイド帯24を介して外層1側に戻り、最終的に、その外部高濃度水排出口を介して本装置から流出することになる。高濃度水は、非循環方式において流れている(図7に示されている)。中央管内の開口部8が高濃度水注入口であり、外層内の開口部14が高濃度水排出口である。この設計は、高硬度を有する供給水に適している。これは、装置のスケールを防止可能であると共に、低濃度水の排出口と高濃度水の排出口の間の圧力差を低減し、これにより、膜面積全体において低濃度水の圧力が高濃度水の圧力を上回ることを保証するべく、低濃度水の圧力勾配を高濃度水の圧力勾配に類似したものにするのに有用である。外部フローユニットの直径は、Φ600mmである。内部フローユニットの直径は、Φ340mmである。中央管7の直径は、Φ200mmである。EDI装置全体の周囲直径は、Φ440mmである。EDI装置の高さは、450mmである。低濃度水チャンバの幅は、6mmである。その他の部分の構造は、例1のものと同一である。
【0056】
(例4)
脱イオン試験を実行し、本発明のEDI装置の脱イオン性能と従来技術によるEDIの脱イオン性能を比較した。試験結果が、次の表1に示されている(図8(1)及び図8(2))。
【0057】
生成又は処理された水の流速(低濃度水):2.8m3/h
供給水の導電率(低濃度水):40μS/m
供給水の温度(低濃度水):25°
高濃度水の導電率:400μS/cm
供給水のpH(低濃度水):6.5
回収率:90%
【0058】
【表1】

【0059】
(例5)
シリカ除去性能の観点において本発明のEDI装置を従来技術によるEDIと比較するシリカ除去試験を実施した。試験結果が、表2(図9)に示されている。
【0060】
生成又は処理された水の流速(低濃度水):2.8m3/h
供給水の導電率(低濃度水):40μS/m
供給水の温度(低濃度水):25°
高濃度水の導電率:400μS/cm
供給水のpH(低濃度水):6.5
回収率:90%
【0061】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による折り返し型の電気式脱イオン装置の概略図である。
【図2】本発明による折り返し型の電気式脱イオン装置の3次元分解図である。
【図3】本発明による折り返し型の電気式脱イオン装置の断面図である。
【図4】本発明による別の折り返し型の電気式脱イオン装置の断面図である。
【図5】本発明による折り返し型の電気式脱イオン装置の高濃度水チャンバ及び低濃度水チャンバを示す断面図である。
【図6】本発明による別の折り返し型の電気式脱イオン装置の高濃度水チャンバ及び低濃度水チャンバを示す断面図である。
【図7】本発明による更に別の折り返し型の電気式脱イオン装置の高濃度水チャンバ及び低濃度水チャンバを示す断面図である。
【図8】脱イオン試験において本発明による電気式脱イオン装置の性能を従来技術によるEDIの性能と比較した図である。
【図9】シリコン除去試験において本発明による電気式脱イオン装置の性能を従来技術によるEDIの性能と比較した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極として機能する中央管と、
前記中央管と同心状である外層と、
外部電極と、
それぞれ前記中央管及び前記外層の端部に配設されている上部及び下部カバーと、
前記中央管と前記外層の間に交互に配置されたアニオン交換膜及びカチオン交換膜であって、それぞれ前記イオン交換膜の2つの面に高濃度水チャンバ及び低濃度水チャンバを形成しているアニオン交換膜及びカチオン交換膜と、
前記低濃度水チャンバ内に嵌め込まれた支持フレームと、
前記高濃度水チャンバ内に嵌め込まれたネット分離パーティションと、
前記高濃度水チャンバ及び低濃度水チャンバの中の少なくとも1つの内部に充填されたイオン交換樹脂と、
を有しており、
前記アニオン交換膜及びカチオン交換膜、前記高濃度水チャンバ内の前記ネット分離パーティション、前記低濃度水チャンバ内の前記支持フレーム、並びに、前記アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂は、前記中央管の周りに巻き付くことにより、螺旋状に巻き付けられた円筒形ユニットを形成しており、
前記2つの電極は、DC電源の2つの端子とそれぞれ接続することにより、中心電界を形成しており、
前記低濃度水チャンバは、内部低濃度水チャンバユニット及び外部低濃度水チャンバユニットに分離されており、
前記低濃度水は、前記外部低濃度水チャンバユニット及び内部低濃度水チャンバユニットを折り返し方式において順番に通過していることを特徴とする折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記低濃度水チャンバは、カチオン交換膜及びアニオン交換膜のペアによって形成されており、この内部には、カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填されており、
前記中央管に対して平行な前記低濃度水チャンバの2つの端部は、シーリングされており、その他の2つの端部は、開放されており、
前記低濃度水チャンバを構成しているカチオン交換膜及びアニオン交換膜の前記ペアの中央セクションは、軸方向に沿って接着されている、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、
前記内部低濃度水チャンバユニット及び前記外部低濃度水チャンバユニットの膜面積比率は、1:1〜1:3である、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
前記折り返し型電気式脱イオン装置は、螺旋状に巻き付けられた構造を具備しており、この場合に、前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜、前記隣接するカチオン交換膜及びアニオン交換膜の間に配設された前記ネット分離パーティション及び前記支持フレーム、並びに、前記低濃度水チャンバ内に充填されているカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂は、螺旋状に巻き付けられた方式において構成されている、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項5】
請求項1記載の装置において、
前記折り返し型電気式脱イオン装置は、同心構造を具備しており、この場合に、前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜、前記隣接するカチオン交換膜及びアニオン交換膜の間に配設された前記ネット分離パーティション及び前記支持フレーム、並びに、前記低濃度水チャンバ内に充填されたカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂は、同心状に構成されている、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の装置において、
前記内部低濃度水チャンバユニット及び前記外部低濃度水チャンバユニットは、軸方向に沿って連続している、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の装置において、
前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜は、前記中央管に対して垂直の2つの端部を具備しており、この中の1つの端部は、平坦であり、他方は、ラダーの形状を具備しており、その上部に配設されたシーリング要素を有している、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項8】
請求項6記載の装置において、
前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜は、前記中央管に対して垂直の2つの端部を具備しており、この中の1つの端部は、平坦であり、他方の端部は、ラダーの形状を具備しており、その上部に配設されたシーリング要素を有している、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
前記中央管に対して平行な前記高濃度水チャンバの2つの端部は、開放されており、他方の2つの端部は、シーリングされており、前記高濃度水チャンバ内には、軸方向に沿って減圧帯が配設されている、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項10】
請求項8記載の装置において、
前記中央管に対して平行な前記高濃度水チャンバの2つの端部は、開放されており、他方の2つの端部は、シーリングされており、
前記高濃度水チャンバを形成しているカチオン交換膜及びアニオン交換膜の前記ペアの中央セクションは、軸方向に沿って接着されており、
前記内部高濃度水チャンバユニット及び前記外部高濃度水チャンバユニットの中の少なくとも1つの内部には、半径方向に沿ってガイド帯が配設されている、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項11】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の装置において、
前記上部カバー及び前記下部カバーは、タイバーを介して接続されており、前記タイバーは、中央バーと側部タイバーを有しており、前記中央バーは、前記中央管内に配設されており、前記側部タイバーは、前記装置のエッジに円周状に配列されている、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項12】
請求項9記載の装置において、
前記上部カバー及び前記下部カバーは、タイバーを介して接続されており、前記タイバーは、中央バーと側部タイバーを有しており、前記中央バーは、前記中央管内に配設されており、前記側部バーは、前記装置のエッジに円周状に配列されている、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項13】
請求項10記載の装置において、
前記上部カバー及び前記下部カバーは、タイバーを介して接続されており、前記タイバーは、中央バーと側部タイバーを有しており、前記中央バーは、前記中央管内に配設されており、前記側部バーは、前記装置のエッジに円周状に配列されている、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項14】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の装置において、
前記中央管と前記外部低濃度水チャンバユニットの間の外部直径比率は、1:1.5〜1:2.5である、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項15】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の装置において、
前記電気式脱イオン装置の高さと直径の間の比率は、1:0.7〜1:2である、折り返し型電気式脱イオン装置。
【請求項16】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の装置において、
前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の前記高濃度水チャンバ側は、保護吸収膜によって覆われている、折り返し型電気式脱イオン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−518749(P2008−518749A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538250(P2007−538250)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【国際出願番号】PCT/CN2005/001822
【国際公開番号】WO2006/047945
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(507144090)浙江欧美フアン境工程有限公司 (1)
【Fターム(参考)】