説明

折畳み式小幅板面材

【課題】 近年の外材コンパネや国産材針葉樹合板に代表される各種面材の台頭で、木造建築において屋根下地や壁下地に使われてきた野地板などの板材はその需要が激減し、国産材製材システムの低迷が余儀なくされている。南洋材コンパネなど面材の持つ製品性能及び施工性に匹敵する板材の新たな利用法が求められている。
【解決手段】 板材は十分な乾燥を行う。常温では固体である天然油脂系脂肪酸あるいはワックス類を加熱溶融した高温液相下において、所定の寸法例えば厚さ12mm幅9cm長さ200cmに仕上げた板材を浸漬し、防水・防腐処理を行う。次に粘着シートで隣り合う2枚の板の片面のみに貼り、幅接ぎする。次に3枚目の板を添えその裏面に粘着シートを貼る。順次、表と裏に交互に貼り足し、例えば幅90cmまで小幅板10枚を一体化させ面材化する。高温液相下での浸漬を省くことは可能である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
本発明は、一般建築において大量に用いられているコンパネなど屋根下地材や壁下地材に関するものである。
【背景技術】
【0001】
木造建築において屋根下地材や壁下地材として嘗ては国産小幅板が主流であったが、これまではコンパネが大量に用いられてきた。近年では地球環境保全の観点から南洋材合板の利用が懸念され、他の外材合板やパーテイクルボード並びに国産針葉樹合板が増加しつつある。
合板など面材は原料および製造法により幾つかに分類される。寸法規格は、12mm×91cm×182cm、12mm×120cm×240cmが一般的である。製造法別では、合板、パーテイクルボード、OSB、LVLなどがある。木材原産地の国別では、南洋材、北洋材、米材、北欧材及び国産針葉樹材である。
【0002】
従来の国産小幅板は、これらと比較すると寸法精度、製品強度、作業効率及び価格などから市場性を失いつつある。こうしたなか小幅板の価格はますます安価になり、現状の平均的国産材製材業の生産システムでは小幅板市場の喪失のみにとどまらず、国産材全体の生産供給の存在さえ危ぶまれている。更に、柱取り製材システムの見直しも謳われ、その壊滅というリスクを負いながらも集成材加工システムへの動きが活発化している。
【0003】
しかしながら、近年では地球温暖化現象の抑制に向けた二酸化炭素削減の国際的数値目標が明らかにされるに従い、都道府県行政の積極的対応も見られ、間伐材の利用拡大を目指す南洋材合板型枠から国産板材型枠への試みなどが進められている。
【0004】
国産小幅板を用いる面材化の事例を以下に示す。
【参考技術1】
小幅板に実加工を施し幅接ぎ接着する幅接ぎ板。
製造法上、製品コストが高く屋根下地材などには利用できない。
【参考技術2】
小幅板複数枚の裏面にシートを接着し巻き取り可能な形状としたもの。
製品コストが高く、内装材向け利用である。
総じて、現状の南洋材合板や北洋材合板より安価な面材の価格並びに建築施工コストの低減が可能な小幅板による面材化の手法は確立していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
わが国の森林資源整備促進の観点から、従来の木造建築において大量に用いられた(小幅板)野地板がコンパネなどに替わり得る性能及び価格を達成し得る新たな加工法や発想が必要である。
第1の課題は、面材としての材料規格である。1枚板としての強度は、小幅板では困難であるため、一定の強度が求められる建築部位は望み得ない。また合板は1枚板としての平面性、直線度、直角精度において小幅板より数段優れている。
第2の課題は、使い勝手である。同じ面積の釘打ち施工では、小幅板利用はコンパネより多くの労力を要する。しかし、1枚板として重量は重く、面積が大きいコンパネは時として風に煽られ危険な場合がある。
第3の課題は、価格である。資材価格としては市場情勢にもよるが、小幅板が必ずしも高価な訳ではない。
第4の課題は、環境保全からの視点である。特に近年の排出ガス取引の具体化につれ、製造エネルギーの小さい小幅板に優勢な社会的背景が生まれつつある。二酸化炭素吸収に欠かせない森林整備に繋がる小幅板は有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1に、スギなど国産材小幅板は、十分な乾燥材を用い、部材寸法の精度を高める。厚さ、幅、長さを揃え、特に長さ方向の直線精度を確保する。
第2に、常温では固体である特定な天然油脂系脂肪酸あるいはワックス類を高温に溶融したタンク内に小幅板を浸漬し、防水処理を行う。ただし、本発明の施工部位により必要がない場合は、この処理を省くことができる。
第3に、現場での施工性を高めるため、隣接する小幅板2枚の長さ方向に粘着テープあるいは接着テープで幅接ぎし、面材の表と裏に交互に規定の数枚の小幅板を順次貼り、折り畳みできるように一体化する。
【発明の効果】
【0007】
天然油脂系脂肪酸あるいはワックスを用いる高温液相浸漬処理により、既に十分乾燥され加工された小幅板は、防水性や防蟻性を持つ。これにより板材の耐久性と寸法安定性が高まる。
【0008】
粘着テープあるいは接着テープで折り畳みができるよう一体化された小幅板面材は、軽量で、屋根下地施工の場合でも容易に作業が行える。折畳んだ形状は柱角より短く細めの寸法部材であるが、巻いた絨毯を広げる如くワンタッチで垂木の上に広げることができる。またコンパネ同様の直角精度があるため、釘打ち作業も迅速に行える。
総じて本発明の施工コストが削減され、地域完結型の新たな間伐材利用製品となり得る。
【0009】
合板製造は大規模な製造設備が必要で地域ごとの立地は困難であるが、本発明は簡易な製造設備で可能である。住宅1軒当りのコンパネの使用量は膨大な数量であるため、本発明の利用により間伐材の利用が大いに図られ、森林の整備も促進される。なお、小幅板の利用とともに、製材木取りにおける梁や桁あるいは柱角製材の有利性にも繋がり、林産業の要である製材業経営の健全化も予想され得る。
【実施例】
【0010】
十分に乾燥した小幅板を厚さ12mm、幅91mm、長さおよそ200cmに寸法採りした。この小幅板10枚を2枚ごと表と裏交互に粘着テープにより貼り合わせ、厚さ12mm、幅91cm、長さ182cmの小幅板面材とした。折畳んだ形状は厚さ125mm、幅92mm、長さ182mmの角材状である。
【0011】
総重量は7.5Kgほどである。女性でも折畳みを広げ両手で摘むように持つことができる。一般に合板はこの2倍程度重く、男性でも摘むようには決して持ち得ない。1軒当りの住宅で50枚使用するとすれば、コンパネ利用に比べ住宅の荷重負担が350kg程小さくなる。
【0012】
乾燥材を用い粘着テープで10枚前後の小幅板をコンパネ形状に面材化し、コンパネ同様の寸法精度を有しているため、釘打ち施工が従来の未乾燥材小幅板(野地板)による場合より短時間で済む。概してコストの低減が図られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する2板の板材に架かるよう接着性能を有するテープで裏表交互に複数枚の板を順次接ぎ合わせたコンパネ同様の寸法である折畳み式小幅板面材
【請求項2】
請求項目1において、常温では固体である天然油脂系脂肪酸又はワックス類の高温溶融液相下で浸漬処理し、防水・防腐機能を付与した板を用いる折畳み式小幅板面材

【公開番号】特開2008−88789(P2008−88789A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294870(P2006−294870)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(597142206)
【Fターム(参考)】