説明

折畳み式機器のヒンジ機構及び折畳み式機器

【課題】長期間の使用によっても筐体間のがたつきが生じない折畳み式機器のヒンジ機構及び折畳み式機器を提供すること。
【解決手段】一対の筐体10、30を折畳み自在に連結する折畳み式機器のヒンジ機構50であって、一方の筐体10の一端部から延設された第1、第2腕片51、55と、第1、第2腕片間に配設されるシャフト70と、他方の筐体30の一端部から延設され中央部にシャフトが回転自在に嵌挿される嵌挿孔62、66が設けられた第3腕片60と、を備え、シャフトの両端部には第1、第2螺合孔71a、72aが設けられ、第1、第2腕片にはシャフトの両端部に当接し支持する第1、第2当接部材51a、55aがそれぞれ設けられ、第1、第2当接部材には第1、第2挿通孔51b、55bが設けられ、シャフトは第1、第2挿通孔を介して第1、第2螺合孔にそれぞれ螺合される第1、第2ビスB1、B2により第1、第2腕片に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は折畳み式機器のヒンジ機構及びこのヒンジ機構を備える折畳み式機器に関し、特に、一対の筐体間に生じるがたつきを防止した折畳み式機器のヒンジ機構及び折畳み式機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータあるいは電子辞書等において、表示部を有する筐体と操作部を有する筐体とを別々に設け、これら一対の筐体をヒンジ機構により連結し、折畳み自在にした折畳み式機器が知られている。このような折畳み式機器は使用の度に開閉動作が行われることから、一対の筐体を連結するヒンジ機構の耐久性は長期間の使用にも耐えうる程度備えていなければならない。
【0003】
図7は下記特許文献1に開示された折畳み式電子機器のヒンジ部分の縦断面図である。
【0004】
例えば下記特許文献1に開示された折畳み式電子機器101には、第1端及び第2端を有する一体的に形成された第1ヒンジ筒111を有する第1筐体110と、第1端及び第2端を有する一体的に形成された第2ヒンジ筒121を有する第2筐体120と、第1ヒンジ筒111の第1端及び第2ヒンジ筒121の第1端に挿入され、第2筐体120を第1筐体110に対して折り畳み可能に連結するパイプ130と、パイプ130内を通して伸長し、第1筐体110に搭載された第1電子部品と第2筐体120に搭載された第2電子部品を接続する配線材150と、パイプ130と第1ヒンジ筒111との間に設けられた第1ガスケット131と、パイプ130と第2ヒンジ筒121との間に設けられた第2ガスケット132と、を具備した折畳み式電子装置101が開示されている。
【0005】
この下記特許文献1に開示された折畳み式電子機器101は、パイプ130がヒンジ筒111の一端及びヒンジ筒121の一端に挿入され、更にヒンジモジュール140がヒンジ筒121の他端及びヒンジ筒111に挿入されて、第2筐体120を第1筐体110に対して折り畳み可能に連結している。なお、ここで述べるヒンジモジュール140は回動部材141を有しており、この回動部材141はヒンジ筒121に対して回転不能に取り付けられている。即ち、符号142で示すキーとキー溝からなるキー構造により、回動部材141はヒンジ筒121に対して回転不能に取り付けられている。
【特許文献1】特開2005−282775号公報(請求項1、段落[0022]、[0029]、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された折畳み式電子機器101においては、第1ヒンジ筒111と第2ヒンジ筒121を連結する構造として、ガスケット131、132により固定されたパイプ130と回動部材141を介して固定されたヒンジモジュール140とを採用している。すなわち、2つの第1ヒンジ筒111とこれら2つの第1ヒンジ筒111間に位置する第2ヒンジ筒121のヒンジ機構が同一軸心上に2つ存在することになる。また、パイプ130はガスケット131、132によりその外周縁が固定されるのみであり、ヒンジモジュール140についても、第1ヒンジ筒111の一端と第2ヒンジ筒121の一端を支持するのみである。そのため、このようなヒンジ機構の構造では複数回(10万回程度)の開閉動作によって軸心となるバイプ130とヒンジモジュール140との間にズレが生じたり、第1、第2ヒンジ筒111、121間が磨耗して劣化したりすることで両筐体110、120間にがたつきが発生する恐れがある。
【0007】
本発明者らは上記問題点に鑑み、一対の筐体間を折畳み可能に連結するヒンジ機構において、長期間の使用に十分に耐えうる構造について種々検討した結果、ヒンジ機構の軸心となるシャフトの固定構造を工夫することにより、上述の問題点を解消することが可能なことを見出し、本発明に至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、長期間の使用によっても筐体間のがたつきが生じない折畳み式機器のヒンジ機構及び折畳み式機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様にかかる折畳み式機器のヒンジ機構の発明は、一対の筐体の一端部同士を折畳み自在に連結する折畳み式機器のヒンジ機構であって、
前記一対の筐体のうち一方の筐体の一端部から延設され、互いに所定距離離間して配設される第1、第2腕片と、
前記第1、第2腕片間に配設されて両端部が該第1、第2腕片に固定された実質的に円筒状のシャフトと、
前記一対の筐体のうち他方の筐体の一端部から延設され、中央部に前記シャフトが回転自在に嵌挿される嵌挿孔が設けられた第3腕片と、を備え、
前記シャフトの両端部には該シャフトの軸心方向に向かって第1、第2螺合孔が設けられ、
前記第1、第2腕片には前記シャフトの両端部に当接して支持する第1、第2当接部材がそれぞれ設けられるとともに、該第1、第2当接部材には前記第1、第2螺合孔にそれぞれ連通する第1、第2挿通孔が設けられ、
前記シャフトは、前記第1、第2当接部材の前記シャフトの両端部に当接する面の裏側から前記第1、第2挿通孔を介して前記第1、第2螺合孔にそれぞれ螺合される第1、第2ビスにより前記第1、第2腕片に固定されていることを特徴とする。
【0010】
また、上記発明において、前記第3腕片は前記シャフトの軸心方向に沿った方向に所定の幅を備えるように前記他方の筐体の一端部から延設されており、該第3腕片の幅方向に沿って前記嵌挿孔が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、上記発明において、前記第3腕片は前記他方の筐体の一端部から所定距離離間して延設された一対の左右腕片から構成され、前記一対の左右腕片は前記シャフトの両端部に近接する位置をそれぞれ支持することを特徴とする。
【0012】
また、上記発明において、前記第1、第2腕片の前記第1、第2当接部材の外側に位置する壁面には前記第1、第2ビスが挿入可能なビス挿入孔がそれぞれ設けられており、前記ビス挿入孔には該ビス挿入孔を液密に封止するキャップが着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
また、上記発明において、前記一方の筐体は、該一方の筐体の前面側に設けられたフロントケースと、該一方の筐体の裏面側に設けられたリアケースと、を備えており、前記第1、第2当接部材は、前記フロントケース側に設けられた第1、第2フロントケース側当接部材と、前記リアケース側に設けられた第1、第2リアケース側当接部材と、から構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様にかかる折畳み式機器の発明は、一対の筐体を備え、該一対の筐体のそれぞれの一端部が前記請求項1〜5の何れかに記載の折畳み式機器のヒンジ機構により折畳み自在に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏するものである。すなわち、上記第1の態様にかかる発明によれば、シャフトが第1、第2当接部材に対して固定される構造を、シャフトの軸心方向に沿って螺合される第1、第2ビスによって固定されるので、従来に比べて一方の筐体とシャフトとの固定部分の強度が非常に高くなり、長期間の使用によっても一方の筐体とシャフトとの固定部分にがたつきが生じることがなくなる。
【0016】
また、上記発明によれば、シャフトの軸心方向に沿って所定の幅を有する第3腕片に設けられた嵌挿孔がシャフトを保持するので、シャフトと第3腕片との間にもがたつきが生じにくくなる。
【0017】
また、上記発明によれば、第3腕片が2つの腕片、すなわち左右腕片に分かれて形成されると共に、この左右腕片からなる第3腕片が所定の幅を有するので、シャフトと第3腕片との間のがたつきをより生じにくくすることが可能となる。
【0018】
また、上記発明によれば、第1、第2腕片の外側側面にビス挿入用のビス挿入孔を設けることにより、このビス挿入孔を介して簡単に第1、第2ビスのビス止めが可能となると共に、このビス挿入孔がキャップにより液密に封止されるので、このビス挿入孔から水等が浸入する恐れがなく、ビスに錆び等が生じることもない。さらには、このビス挿入孔からの水等の浸入を防止することができるので、例えば本発明のヒンジ機構を備える折畳み式機器を防水構造とする場合にも有利である。
【0019】
また、上記発明によれば、一方の筐体がフロントケースとリアケースとから構成され、両ケースそれぞれに当接部材を形成することで、一方の筐体が2つのケースから構成される場合であっても強固なビス固定を達成することが可能となる。
【0020】
上記第2の態様にかかる発明によれば、上述の効果を奏する折畳み式機器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための折畳み式機器のヒンジ機構及び折畳み式機器を例示する折畳み式携帯電話機であって、本発明をこの折畳み式携帯電話機に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例1】
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係る折畳み式携帯電話機を示す概観斜視図、図2は図1の折畳み式携帯電話機の一側面図、図3は図1の折畳み式携帯電話機を分解して一方向から見た状態を示す分解斜視図、図4は図3とは異なる方向から見た分解斜視図、図5はヒンジ機構部分を示す図であり、図5Aは図1の折畳み式携帯電話機のヒンジ機構部分を拡大して示す拡大正面図、図5Bは図2のVB−VB線で切断した断面図、図6はシャフトを示す図であり、図6Aは一方向から見た斜視図、図6Bは他方向から見た斜視図である。
【0023】
本実施例1に係る折畳み式携帯電話機1は、図1及び図2に示すように、前面に液晶表示パネル等からなる表示部11及びスピーカ12等を有する第1筐体10と、前面あるいは側面に各種操作キー31及びマイク32等を備える第2筐体30と、これら第1、第2筐体10、30を折畳み自在に連結するヒンジ機構50と、から構成されている。
【0024】
第1筐体10は、図1〜図4に示すように、その前面側に位置する第1フロントケース15と、裏面側に位置する第1リアケース20と、第1フロントケース15と第1リアケース20とに収容される表示部11及びスピーカ12等を有するプリント基板(図示省略)と、から構成されている。
【0025】
このうち、第1フロントケース15は、略方形状の板材から構成され、中央部に表示部11を露出するための表示部用開口16を備え、この表示部用開口16の上部にはスピーカ12を保持するスピーカ保持孔17を備え、更にその裏面側は開口となっており、その開口端部が第1リアケース20との接合面18となっている。また、第1リアケース20は、第1フロントケース15と同様に略方形状の板材から構成され、前面側が開口となっており、その開口端部が接合面21となっている。第1フロントケース15と第1リアケース20のそれぞれの接合面18、21間にはその全周に亘ってリング状のパッキン13が配設されており、このパッキン13により第1筐体10の液密性を補償している。
【0026】
なお、第1フロントケース15と第1リアケース20、及び後述する第2フロントケース35と第2リアケース40と本体ハウジング45の材料としては、絶縁性部材、例えば樹脂材を使用し、特に好ましくはポリアミドMXD6をガラス繊維、無機質フィラーなどで強化したものを材料として成形されたものであって、機械的強度、弾性率、耐熱性及び耐油性などが優れたものである。
【0027】
第2筐体30は、図1〜図4に示すように、その前面側に位置する第2フロントケース35と、裏面側に位置する第1リアケース40と、第2フロントケース35と第2リアケース40とによりその前面及び裏面が覆われる本体ハウジング45と、本体ハウジング45内に収容される操作キー31及びマイク32等を有するプリント基板(図示省略)と、から構成されている。
【0028】
このうち、第2フロントケース35は、略方形状の板材から構成され、前面に操作キー31を露出するための操作キー用開口36を備えるとともに、この操作キー用開口36の下方にはマイク32を露出するマイク用開口37を備えている。そして、その裏面には開口が形成されており、この開口端部は第2リアケース40との接合面38となっている。また、第2リアケース40は、第2フロントケース35と同様に略方形状の板材から構成され、中央部に電池収納用開口41が形成され、前面には開口が形成されており、この開口端部は第2フロントケース35との接合面42となっている。さらにまた、本体ハウジング45は、表面には操作キー31、マイク32等を備えるプリント基板が収納可能な基板収納部46が設けられ、裏面には二次電池を収納する電池収納部47とアンテナ33を収納するアンテナ収納部48が設けられたブロック状体から構成されている。そして、この本体ハウジング45はその表裏面から第2フロントケース35及び第2リアケース40に覆われて、これら第2フロントケース35及び第2リアケース40内に収納されるようになっている。
【0029】
次に、ヒンジ機構50の構成について説明する。
【0030】
このヒンジ機構50は、図3〜図5に示すように、第1筐体10の一方の短辺の両端部から延設された第1、第2腕片51、55と、第2筐体30の一方の短辺の中央部から延設された第3腕片60と、これら第1〜第3腕片51、55、60を回動自在に連結するシャフト70と、から構成されている。
【0031】
第1、第2腕片51、55は、第1フロントケース15の一方の短辺から延設されたフロントケース側第1、第2腕片52、56と、第1リアケース20の一方の短辺から延設されたリアケース側第1、第2腕片53、57と、から構成されている。フロントケース側第1、第2腕片52、56は、第1筐体10の前方に向かって隆起するように、側面視で円弧状に湾曲した形状を有しており、同様に、リアケース側第1、第2腕片53、57は、第1筐体10の前方に向かって先端部が延在するように、側面視で円弧状に湾曲した形状を有している。そして、第1フロントケース15と第1リアケース20とを接合すると、フロントケース側第1、第2腕片52、56の先端部とリアケース側第1、第2腕片53、57の先端部とが当接・係止し、これにより、略円筒状の第1、第2腕片51、55が形成される。また、この第1、第2腕片51、55の互いに対向する側面(つまり内側側面)は、後述するシャフト70の両端部71、72(図6参照)が挿入可能なように開口となっており、この互いに対向する側面の反対側に位置する側面(つまり外側側面)には、後述する第1、第2ビスB1、B2が挿入可能なビス挿入孔54、58が設けられている。また、このビス挿入孔54、58には、第1、第2ビスB1、B2が挿入された後に液密に封止するためのキャップC1、C2が取り付けられる。このキャップC1、C2の構成は、例えばOリングあるいは平パッキンが内側側面に取り付けられた第1フロントケース15及び第2リアケース20と同一材料からなる略円盤状の部材を用いるものとする。
【0032】
そして、この第1、第2腕片51、55の内部には、シャフト70の両端部71、72にそれぞれ当接する第1、第2当接部材51a、55aが設けられている。この第1、第2当接部材51a、55aは、フロントケース側第1、第2腕片52、56の内壁面から立設するように形成された板状体からなるフロントケース側第1、第2当接部材52a、56aと、同じくリアケース側第1、第2腕片53、57の内壁面から立設するように形成された板状体からなるリアケース側第1、第2当接部材53a、57aと、から構成されている。そして、これらフロントケース側第1、第2当接部材52a、56a及びリアケース側第1、第2当接部材53a、57aは、フロントケース側第1当接部材52aとリアケース側第1当接部材53aの互いに対向する壁面、及び、フロントケース側第2当接部材56aとリアケース側第2当接部材57aの互いに対向する壁面がそれぞれ当接するように配設されている。このように形成される第1、第2当接部材51a、55aの中心部には、後述するシャフト70の軸心方向に沿って第1、第2挿通孔51b、55bがそれぞれ設けられており、この第1、第2挿通孔51b、55bは、後述する第1、第2ビスB1、B2が挿通される貫通孔となっている。なお、第2挿通孔55bの第2当接部材55aの内側側面方向の開口部55b’は、シャフト70の一方の端部72を回転不能に保持するように、回り止め加工が施されている(図4参照)。これにより、シャフト70は第1筐体10に回動不能に固定される。
【0033】
第3腕片60は、本体ハウジング45の一方の短辺の中央部から延設されて形成されており、第2筐体30の前面に対し所定距離前方に膨出するように形成されている。また、この第3腕片60の幅、つまりシャフト70の軸心方向に沿った方向の長さは、第1、第2腕片51、55の間の距離とほぼ同一となっている。この第3腕片60は、詳しくは所定距離離間して設けられた左側、右側第3腕片61、65から構成されており、この左側、右側第3腕片61、65は略円筒形状である。左側、右側第3腕片61、65の中央部には、後述するシャフト70の中央部73付近が回転自在に嵌挿されるように、シャフト70の軸心方向に沿って嵌挿孔62、66がそれぞれ設けられている。この嵌挿孔62、66はシャフト70が嵌挿された状態でシャフト70に対し第2筐体30ががたつかないように、シャフト70の径に対し実質的に同一かまたは僅かに大きな径を備えている。
【0034】
この左側、右側第3腕片61、65のうち、右側第3腕片65は、左側第3腕片61に比してその外径が小径となっている。これは、シャフト70に沿って巻回されるFPC(Flexible Printed Circuit)3がこの右側第3腕片65の周囲にも巻回可能とするためである。また、左側第3腕片61に設けられる嵌挿孔62の左側第3腕片61の外側側面側の開口62aは、内側側面側の開口に比して大径となっており、この開口62aには後述するカム機構80のカム83を回動不能に保持するようにその内壁面の一部に係止溝62a’が設けられている(図4参照)。そして、左側第3腕片61の外側側面は第1腕片51の内側側面に近接配置されるものであり、右側第3腕片65の外側側面は第2腕片55の内側側面に近接配置されるものである。
【0035】
また、この左側、右側第3腕片61、65の内側側面及び外側側面を除く外周囲は、第2フロントケース35に設けられたフロントケース側舌片39と第2リアケース40に設けられたリアケース側舌片43とによって覆われている。詳しくは、フロントケース側舌片39は第2フロントケース35の一方の短辺から前方に向かって隆起するように側面視で円弧状に延設されて構成されており、リアケース側舌片43は、第2リアケース40の一方の短辺から前方に延在するように、側面視で円弧状に延設されて構成されている。なお、このフロントケース側舌片39及びリアケース側舌片43は、いずれも第3腕片60の幅と同一幅を有している。
【0036】
フロントケース側舌片39及びリアケース側舌片43の先端部には固定孔39a、43aがそれぞれ設けられており、第2フロントケース35と第2リアケース40とを接合した状態において、両舌片39、43の固定孔39a、43aは重なり合うようになっている。そしてこの固定孔39a、43aが重なり合った状態でビス止め等を施し、さらにこのビス止め等を行った部分を化粧カバー67で覆うようになっている。なお、フロントケース側舌片39が設けられた第2フロントケース35の短辺の両端部付近は、図3に示すように円弧状に窪んだ形状となっている。これは、両筐体10、30が連結された後折畳み動作を行なう際に、第1、第2腕片51、55の動作を許容するためのものである。
【0037】
シャフト70は、図5B及び図6に示すように、剛性部材から構成された所定の径を有する棒状の部材からなる。このシャフト70の両端部71、72にはそれぞれ後述する第1、第2ビスB1、B2が螺合されるように内壁に雌ネジ加工が施された、シャフト70の長手方向に延びる第1、第2螺合孔71a、72aがそれぞれ形成されている。また、このシャフト70の一端部71周辺にはカム機構80が設けられており、シャフト70の他端部72には、第2腕片55の開口部55b’に回動不能に固定されるための切り欠き72bが設けられている。また、このシャフト70の一端部71から所定距離離れた位置には後述する第2カム83を位置決めするためのフランジ75が設けられており、加えて、シャフト70の一端部71に近接する外周囲とシャフト70の中央部73付近の外周囲には後述するカム規制部材84a、84bがそれぞれ取り付けられる細溝74a、74bが設けられている。この2つの細溝74a、74bのうち、細溝74bはシャフト70に固定されたハウジング81の第1カム82が収納される端面から所定距離、詳しくは左側第3腕片61の幅方向の長さとほぼ同一の長さだけ離れた位置に設けられている。
【0038】
カム機構80は、内部にスプリングSを備えたハウジング81と、スプリングSの一端部にその一面が当接し、他面にカム溝が設けられた第1カム82と、第1カム82のカム溝に噛合するカム突起を備える第2カム83と、カム機構80の位置決めを行うための一対のカム規制部材84a、84bと、から構成されている。ハウジング81及び第1、第2カム82、83はその中心部に貫通孔が形成されており、この貫通孔にシャフト70が挿入されている。
【0039】
ハウジング81は略円筒状の部材から構成され、その一端部には第1カム82が収納可能なように第1カム82の径とほぼ同一の径を有する開口が形成されており、他端部はその内壁がスプリングSの一端部が当接するスプリング当接面81aとなっているとともにその中央部にはシャフト70の径とほぼ同一の径を有する開口が形成されている。また、ハウジング81の外周面には、この外周面の一部から延出された延在部81bが形成されており、この延在部81bの中央部には第3挿通孔81cが設けられている。この第3挿通孔81cは第3ビスB3が挿通されるようになっており、この第3ビスB3は、図4に示すように、第1フロントケース15の第1腕片51が延設された基部付近に設けられたハウジング固定用螺合孔19に第3挿通孔81cを介して固定されるものである。
【0040】
第1カム82はハウジング81内に収納可能な径を備える略円盤状の部材から構成されており、ハウジング81に収納された状態でその一面がスプリングSの一端部に当接するようになっている。スプリングSの一端部に当接する一面の反対側に位置する他面には、この第1カム82の円周方向に沿って1乃至複数個のカム溝が形成されている。なお、この第1カム82はハウジング81に対する回動が規制されており、スプリングSの弾性方向への移動のみが許容されている。
【0041】
第2カム83は第1カム82と同様にハウジング81内に収納可能な径を備える略円盤状の部材から構成されている。ただし、第2カム83の肉厚は第1カムの肉厚に比べて厚くなっている。この第2カム83の一面はシャフト70に設けられたフランジ75に当接する面となっており、この一面の反対側に位置する他面には、第1カム82の他面に設けられたカム溝に噛合する1乃至複数個のカム突起が形成されている。また、第2カム83の一面に近接する外周囲の一部には、左側第3腕片61の開口62aに形成された係止溝62a’に係止される係止突起83aが設けられている。
【0042】
カム規制部材84a、84bは略U字状の剛性板材から形成されており、このカム規制部材84a、84bをそのU字状開口部分から細溝74a、74bにそれぞれ嵌め込むことで、シャフト70に固定できるものである。
【0043】
上述の構成を備えるカム機構80をシャフト70に取り付ける際には、先ずシャフト70の一端部71から第2カム83を挿入し、第2カム83のカム突起が設けられていない面をフランジ75に当接させる。次いで、同じくシャフトの一端部71から内部にスプリングS及び第1カム82が順に収納されたハウジング81を挿入し、第1カム82のカム溝と第2カム83のカム突起とを噛合させる。そして、ハウジング81をスプリングSの付勢力に抗してシャフト70の他端部72方向に押し込んだ状態でシャフト70の細溝84aにカム規制部材84aを嵌め込み、上述の部材をシャフト70に固定する。
【0044】
次に、上述の各構成部材からなるヒンジ機構の組み立て工程について特に図3〜図5を参照して以下に詳述する。
【0045】
先ず、カム機構80が固定されたシャフト70を、他端部72を先端として左側第3腕片61の開口62aから挿入する。この挿入の際は、第2カム83の係止突起83aが左側腕片61の開口62a部分に形成された係止溝62a’に係止されるように挿入する。次いで、左側第3腕片61と右側第3腕片65との間に露出された細溝74bにカム規制部材84bを嵌め込む。これにより、第3腕片60とシャフト70とが固定される。
【0046】
次いで、第3腕片60に固定されたシャフト70に第1フロントケース15を固定する。詳しくは、シャフト70の両端部71、72をフロントケース側第1、第2腕片52、56のフロントケース側第1、第2当接部材52a、56aに設けられた開口部にそれぞれ挿入する。このとき、シャフト70の他端部72は開口部55b’の形状に合わせて挿入されるため、この挿入によってシャフト70は第1フロントケース15に対して回動不能に固定される。また、これと同時に、ハウジング81の延在部81bに形成された第3挿通孔81cに第3ビスB3を挿通し、この第3ビスB3をハウジング固定用螺合孔19に螺合させてハウジング81の回動を規制することにより、シャフト70の第1フロントケース15に対する固定はより強固なものとなる。
【0047】
次に、上述の工程により本体ハウジング45に固定された第1フロントケース15と第1リアケース20とを接合する。そして、この接合の後、第1、第2腕片51、55のビス挿入孔54、58から第1、第2ビスB1、B2をそれぞれ挿入し、この第1、第2ビスB1、B2を第1、第2挿通孔51b、55bに挿通させ、第1、第2螺合孔71a、72aに螺合させる。これにより、シャフト70が第1、第2腕片51、55に強固に固定されることになり、長期間の使用を行ってもこのシャフト70の両端部71、72と第1、第2当接部材52a、56aとの間にがたつきが発生することを抑えることができる。そして、ビス挿入孔54、58をキャップC1、C2によって液密に封止し、第2フロントケース35及び第2リアケース40を本体ハウジング45を覆うように接合して一連の組み立てが完了する。
【0048】
上述のとおり、本実施例に係る折畳み式携帯電話機1によれば、シャフト70が第1、第2腕片51、55に対してシャフト70の軸心方向に沿って螺合される第1、第2ビスB1、B2によってその両端部71、72が固定されることになるので、その固定構造は従来の固定構造に比して大幅に強固なものとなり、以って長期間の使用によっても劣化することがなく、したがって第1、第2筐体10、30間にがたつきが生じることがなくなる。
【0049】
また、キャップC1、C2が液密に封止することができる構成を備えているので、このヒンジ機構50部分に水等が浸入することを効果的に防止でき、水等の浸入による第1、第2ビスB1、B2の錆び等も生じないので、固定構造の劣化をよりなくすることが可能となる。更には、上述の構成によりヒンジ機構50部分への水等の浸入を抑えることが可能となるため、本実施例に係る折畳み式携帯電話機1全体に防水構造を施した場合にも有利な構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る折畳み式携帯電話機を示す概観斜視図である。
【図2】図2は図1の折畳み式携帯電話機の一側面図である。
【図3】図3は図1の折畳み式携帯電話機を分解して一方向から見た状態を示す分解斜視図である。
【図4】図4は図3とは異なる方向から見た分解斜視図である。
【図5】図5はヒンジ機構部分を示す図であり、図5Aは図1の折畳み式携帯電話機のヒンジ機構部分を拡大して示す拡大正面図、図5Bは図2のVB−VB線で切断した断面図である。
【図6】図6はシャフトを示す図であり、図6Aは一方向から見た斜視図、図6Bは他方向から見た斜視図である。
【図7】図7は従来技術の折畳み式電子機器のヒンジ部分の縦断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 折畳み式携帯電話機
10 第1筐体
15 第1フロントケース
20 第1リアケース
30 第2筐体
35 第2フロントケース
40 第2リアケース
45 本体ハウジング
50 ヒンジ機構
51 第1腕片
51a 第1当接部材
51b 第1挿通孔
52 フロントケース側第1腕片
53 リアケース側第1腕片
54、58 ビス挿入孔
55 第2腕片
55a 第2当接部材
55b 第2挿通孔
60 第3腕片
61 左側第3腕片
62、66 嵌挿孔
65 右側第3腕片
70 シャフト
71a 第1螺合孔
72a 第2螺合孔
80 カム機構
B1〜B3 第1〜第3ビス
C1、C2 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の筐体の一端部同士を折畳み自在に連結する折畳み式機器のヒンジ機構であって、
前記一対の筐体のうち一方の筐体の一端部から延設され、互いに所定距離離間して配設される第1、第2腕片と、
前記第1、第2腕片間に配設されて両端部が該第1、第2腕片に固定された実質的に円筒状のシャフトと、
前記一対の筐体のうち他方の筐体の一端部から延設され、中央部に前記シャフトが回転自在に嵌挿される嵌挿孔が設けられた第3腕片と、を備え、
前記シャフトの両端部には該シャフトの軸心方向に向かって第1、第2螺合孔が設けられ、
前記第1、第2腕片には前記シャフトの両端部に当接して支持する第1、第2当接部材がそれぞれ設けられるとともに、該第1、第2当接部材には前記第1、第2螺合孔にそれぞれ連通する第1、第2挿通孔が設けられ、
前記シャフトは、前記第1、第2当接部材の前記シャフトの両端部に当接する面の裏側から前記第1、第2挿通孔を介して前記第1、第2螺合孔にそれぞれ螺合される第1、第2ビスにより前記第1、第2腕片に固定されていることを特徴とする折畳み式機器のヒンジ機構。
【請求項2】
前記第3腕片は前記シャフトの軸心方向に沿った方向に所定の幅を備えるように前記他方の筐体の一端部から延設されており、該第3腕片の幅方向に沿って前記嵌挿孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の折畳み式機器のヒンジ機構。
【請求項3】
前記第3腕片は前記他方の筐体の一端部から所定距離離間して延設された一対の左右腕片から構成され、前記一対の左右腕片は前記シャフトの両端部に近接する位置をそれぞれ支持することを特徴とする請求項1に記載の折畳み式機器のヒンジ機構。
【請求項4】
前記第1、第2腕片の前記第1、第2当接部材の外側に位置する壁面には前記第1、第2ビスが挿入可能なビス挿入孔がそれぞれ設けられており、前記ビス挿入孔には該ビス挿入孔を液密に封止するキャップが着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の折畳み式機器のヒンジ機構。
【請求項5】
前記一方の筐体は、該一方の筐体の前面側に設けられたフロントケースと、該一方の筐体の裏面側に設けられたリアケースと、を備えており、前記第1、第2当接部材は、前記フロントケース側に設けられた第1、第2フロントケース側当接部材と、前記リアケース側に設けられた第1、第2リアケース側当接部材と、から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の折畳み式機器のヒンジ機構。
【請求項6】
一対の筐体を備え、該一対の筐体のそれぞれの一端部が前記請求項1〜5の何れかに記載の折畳み式機器のヒンジ機構により折畳み自在に連結されていることを特徴とする折畳み式機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−10793(P2009−10793A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171318(P2007−171318)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】