説明

押しボタンスイッチ

【課題】開口部の開口面がパーティングラインになっていても、押圧部を円滑に摺動可能とし、操作性を向上させた押しボタンスイッチを提供する。
【解決手段】フロントパネル1に形成された開口部3内に押圧部11が摺動可能に嵌合され、押圧部11への押圧操作によって押圧部11が開口部3内を摺動するものにおいて、開口部3の内壁に前記摺動方向に延びる案内溝6と、案内溝6内を摺動し押圧部11の外周面に形成されたリブ14とを備え、リブ14は、前記押圧操作によって押圧部11が摺動した際に、案内溝6の摺動方向両端の開口縁6aに接しない長さとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、例えばカーオーディオ、カーナビゲーション等の車載用電装機器や各種民生用電子機器において、使用者が押圧操作するための押しボタンスイッチの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
図1〜図3に示すように、電子機器のフロントパネル1には、押しボタンスイッチ2が複数設けられている。このうちの一つの押しボタンスイッチ2は、フロントパネル1に形成された開口部3と、この開口部3内に摺動可能に嵌合する押圧部4とを備え、この押圧部4を押圧操作し、押圧部4が開口部3内を摺動して接点ゴム5を押圧することにより、スイッチング動作を行うように構成されている。
【0003】
また、この種の押しボタンスイッチ2は、開口部3と押圧部4との間のガタをなくし、操作性を高めるため、開口部3の内壁に押圧部4の摺動方向に延びるように案内溝6が複数形成される一方、押圧部4の外周面には、案内溝6内を摺動するリブ7が複数形成されている。このように開口部3の内壁に案内溝6を形成し、押圧部4の外周面にリブ7を形成した車載用押しボタンスイッチとしては、例えば特許文献1に開示された発明がある。
【特許文献1】特開2006−59619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フロントパネル1は、射出成形により成型されることが一般的で、金型構造上、その開口部3の開口面(上下2箇所)のいずれか一方がパーティングラインとなるため、図3に示すように開口部3の開口縁、つまり案内溝6の摺動方向上端または下端の開口縁6aにエッジやバリが形成されることとなる。
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された発明や従来の車載用押しボタンスイッチでは、押圧部4のリブ7の摺動方向後端が操作部8まで連続して延びているため、当該リブ7が上記パーティングラインを通過して摺動することとなる。そのため、リブ7の摺動時、リブ7が案内溝6の開口縁6aに形成されたエッジやバリに引っ掛かり、円滑な摺動操作ができないという問題がある。
【0006】
本願は、上記の事情を考慮してなされたもので、その課題の一例としては、開口部の開口面がパーティングラインになっていても、押圧部を円滑に摺動可能とし、操作性を向上させた車載用押しボタンスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の車載用押しボタンスイッチは、フロントパネルに形成された開口部内に押圧部が摺動可能に嵌合され、当該押圧部への押圧操作によって当該押圧部が前記開口部内を摺動する押しボタンスイッチにおいて、前記開口部の内壁に前記摺動方向に延びる案内溝と、当該案内溝内を摺動し前記押圧部の外周面に形成されたリブとを備え、前記リブは、前記押圧操作によって前記押圧部が摺動した際に、前記案内溝の摺動方向両端の開口縁に接しない長さとしていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本願の最良の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、車載用電装機器として例えばカーステレオのフロントパネルに取り付けられた押しボタンスイッチに対して本願を適用した場合の実施形態である。
【0009】
図4は本願の押しボタンスイッチの一実施形態において組込み前の状態を示す部分拡大斜視図、図5は図4の押しボタンスイッチの組込み後の状態を示す部分拡大斜視図、図6は図4の押しボタンスイッチの組込み後の状態を破断して示す拡大斜視図、図7は図4の押しボタンスイッチの組込み後の状態を示す断面図、図8は図4の押圧部を示す拡大斜視図である。なお、従来例と同一の部分には、図1〜図3と同一の符号を用いて説明する。
【0010】
図4〜図7に示すように、フロントパネル1には、例えばカーステレオの電源等のオン、オフに用いられる押しボタンスイッチ10が設けられる。この押しボタンスイッチ10は、フロントパネル1に略角形に形成された開口部3と、この開口部3内に摺動可能に嵌合する押圧部11とを備え、この押圧部11を押圧し、押圧部11が開口部3内を摺動して図7に示す接点ゴム5を押圧することにより、スイッチング動作を行うように構成されている。
【0011】
また、押しボタンスイッチ10は、開口部3の内壁に押圧部11の摺動方向に延びるように案内溝6が4方向、つまり互いに対向して直線状に2組形成されている。
【0012】
一方、押圧部11は、図8に示すように扁平な角パイプ状に形成された筒部12と、この筒部12の一端に被着するように平面略楕円板状に形成された操作部13と、筒部12の外周面に案内溝6に対応して直線状に形成され、かつ案内溝6内を摺動する4本のリブ14と、筒部12の下部に外側に向けて突設された抜け止め用の係止突起15とを備えている。
【0013】
なお、以下の説明では、4本のリブ14において下端側を押圧部11の摺動方向の先端側とし、操作部13近傍の上端側を押圧部11の摺動方向の後端側として説明する。
【0014】
4本のリブ14は、図8に示すように押しボタンスイッチ10の摺動動作に対してそれぞれ案内溝6のガイド範囲を越えないような長さ、すなわち押圧部11が摺動した際に、案内溝6の摺動方向両端の開口縁6aに接しない長さに設定されている。これにより、リブ14は、案内溝6の開口縁6a上を摺動することなく、しかも開口縁6aに接触することがなくなる。
【0015】
また、4本のリブ14は、図7及び図8に示すように摺動方向に延びるように直線状に形成され、その摺動方向の後端側に切欠部14aが形成されている。この切欠部14aは、操作部13の近傍が切り欠いて形成されている。具体的には、切欠部14aは、リブ14において、押圧部11への使用者による押圧操作側の後端に形成されている。そして、リブ14は、押圧部11への使用者による押圧操作側の先端(下端側)までの長さが案内溝6の下端より少し短くなっている。
【0016】
さらに、4本のリブ14は、押圧部11の摺動方向に対して直交する高さ(張出し)方向にテーパ部14bが形成されている。さらに、4本のリブ14は、押圧部11の組み込む際の挿入方向に対して先端及び後端がそれぞれ半球状に形成された半球部14cを有している。
【0017】
係止突起15は、開口部3の係合段部(図示せず)に係合し、押圧部11が開口部3から抜け出さないようにしている。
【0018】
次に、本実施形態の押しボタンスイッチ10の作用を説明する。
【0019】
ここで、フロントパネル1は射出成形により成型されることから、図7に示すようにその開口部3における上下の開口面のいずれか一方がパーティングラインとなり、開口部3の開口縁、つまり案内溝6の摺動方向上端または下端の開口縁6aにエッジやバリが形成されている。
【0020】
しかしながら、本実施形態の押しボタンスイッチ10では、図7に示す上端の開口縁6aがパーティングラインであった場合、押圧部11への使用者による押圧操作側におけるリブ14の後端に切欠部14aが形成されているため、押圧部11の摺動時、エッジやバリにリブ14の後端側が接触することがなくなる。
【0021】
一方、図7に示す下端の開口縁6aがパーティングラインであった場合、押圧部11の使用者による押圧操作側におけるリブ14の先端(下端側)までの長さが案内溝6の下端より少し短くなっていることにより、押圧部11の摺動時、エッジやバリにリブ14の先端側が接触することがなくなる。
【0022】
要するに、本実施形態の押しボタンスイッチ10のリブ14は、押圧部11が摺動した際に、案内溝6の摺動方向両端の開口縁6aに接しない長さに設定されていることにより、リブ14は、案内溝6の開口縁6a上を摺動することなく、しかも開口縁6aに接触することがなくなるため、エッジやバリにリブ14の先端側及び後端側が接触することがなくなる。その結果、押圧部11の円滑な摺動操作が可能となり、操作性を格段と向上させることができる。
【0023】
また、本実施形態によれば、リブ14は、押圧部11の摺動方向に対して直交する高さ方向にテーパ部14bが形成されていることから、金型による成型時にリブ14の高さ分だけの最小の抜きテーパとすることができる。これにより、案内溝6に対するギャップを狭小にすることができ、開口部3と押圧部11との間のガタを可及的に少なくすることが可能となる。
【0024】
さらに、本実施形態によれば、リブ14は、押圧部11を組み込む際の挿入方向に対して先端側に半球部14cが形成されていることから、押圧部11の組込み時、リブ14の先端を案内溝6内に容易に案内することができ、組込み時の作業性を大幅に高めることができる。
【0025】
そして、本実施形態によれば、リブ14は、押圧部11の摺動方向に直線状に形成されていることから、押圧部11を円滑に摺動させることが可能となる。
【0026】
また、本実施形態によれば、案内溝6は、開口部3の内壁に複数形成されるとともに、リブ14は、押圧部11の外周面に複数形成されたことにより、開口部3と押圧部11との間のガタをなくし、操作性を一段と高めることができる。
【0027】
なお、本願は、上記実施形態に限定することなく、種々の変更が可能である。例えば上記実施形態では、車載用機器としてのカーステレオのフロントパネルに取り付けられた押しボタンスイッチに対して本願を適用した例について説明したが、これに限定することなく、各種民生用の他の電子機器に取り付けられた押しボタンスイッチに対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来の押しボタンスイッチにおいて組込み前の状態を示す部分拡大斜視図である。
【図2】図1の押しボタンスイッチの組込み後の状態を破断して示す拡大斜視図である。
【図3】図1の押しボタンスイッチの組込み後の状態を示す断面図である。
【図4】本願の押しボタンスイッチの一実施形態において組込み前の状態を示す部分拡大斜視図である。
【図5】図4の押しボタンスイッチの組込み後の状態を示す部分拡大斜視図である。
【図6】図4の押しボタンスイッチの組込み後の状態を破断して示す拡大斜視図である。
【図7】図4の押しボタンスイッチの組込み後の状態を示す断面図である。
【図8】図4の押圧部を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1:フロントパネル
3:開口部
5:接点ゴム
6:案内溝
10:押しボタンスイッチ
11:押圧部
12:筒部
13:操作部
14:リブ
14a:切欠部
14b:テーパ部
14c:半球部
15:係止突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントパネルに形成された開口部内に押圧部が摺動可能に嵌合され、当該押圧部への押圧操作によって当該押圧部が前記開口部内を摺動する押しボタンスイッチにおいて、
前記開口部の内壁に前記摺動方向に延びる案内溝と、当該案内溝内を摺動し前記押圧部の外周面に形成されたリブとを備え、
前記リブは、前記押圧操作によって前記押圧部が摺動した際に、前記案内溝の摺動方向両端の開口縁に接しない長さとしていることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の押しボタンスイッチにおいて、
前記リブは、前記押圧部への使用者による押圧操作側の後端に切欠部を形成したことを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の押しボタンスイッチにおいて、
前記リブは、前記摺動方向に対して直交する高さ方向にテーパが形成されていることを特徴とする車載用押しボタンスイッチ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の押しボタンスイッチにおいて、
前記リブは、前記押圧部を前記開口部内に組み込む際の挿入方向に対して先端が半球状に形成されていることを特徴とする車載用押しボタンスイッチ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の押しボタンスイッチにおいて、
前記リブは、前記摺動方向に直線状に形成されていることを特徴とする車載用押しボタンスイッチ。
【請求項6】
請求項1に記載の押しボタンスイッチにおいて、
前記案内溝は、前記開口部の内壁に複数形成されるとともに、前記リブは、前記押圧部の外周面に複数形成されたことを特徴とする車載用押しボタンスイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−135245(P2010−135245A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312029(P2008−312029)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】