説明

押し釦スイッチ装置

【課題】装置形状の大型化を抑制して滑らかな操作感覚を得ることが可能な押し釦スイッチ装置を提供する。
【解決手段】ハウジング10を構成する基台11の収容部11a内で、底部近傍に固定接片が配置されている。可動接片18a,18b,19a,19bを有する可動子17は、ばね16により収容部11aの底部から離れる方向に付勢されている。押し釦26の軸部24と可動子17との間にガイド部材としての摺動ガイド20,21が設けられている。摺動ガイド20,21はハウジング10を構成するカバー12の内面に常時、押圧されている。このため、押し釦26の操作時、滑らかな操作感覚を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作子としての押し釦を押圧したり、押圧状態を解除したりすることにより、スイッチのオン、オフ状態を設定する押し釦スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の押し釦スイッチ装置は、ハウジング内に設けられたばねの付勢力に抗して、押し釦をハウジングの底部方向に押圧したり、押圧状態を解除したりすることにより、スイッチのオン、オフ状態が切り換えられるように構成されている。
【0003】
この押し釦スイッチ装置において、押し釦の軸部とハウジングの内面の間には、押し釦をスムーズに移動可能とするため、僅かな間隙が設定されている。しかし、この間隙の距離は、押し釦やハウジングの製造時の誤差により、ばらつきが発生する。このばらつきにより、間隙の距離が大きい場合において、押し釦の中央部以外の周辺部を押圧した場合、押し釦及びそれと一体的に形成された軸部が傾き、軸部の先端がハウジングの内面に当接する。この状態において、押し釦を押し込むと、軸部とハウジングの内面との抵抗により、軸部がハウジングの内面に引っかかり、押し釦を滑らかに押し込むことができず、操作感覚が劣化する。
【0004】
このような操作感覚の劣化を防止するための対策として、例えば押し釦の軸部を長くすることが考えられる。すなわち、軸部を長くすることにより、軸部とハウジングの内面との間隙の距離が大きくなった場合においても、軸部先端と内面との接触角度を小さくすることができるため、軸部とハウジングの内面との接触抵抗を低減できる。このため、押し釦の周辺部を操作した場合においても、操作感覚の劣化を防止することが可能である。
【0005】
しかし、上記のように、軸部を長くした場合、これを収容するハウジングも大型化する。このため、小型の押し釦スイッチ装置にこの構成を採用することは得策ではない。
【0006】
尚、ハウジングの内面と樹脂製の押し釦の軸部との間に、複数の金属ピンを挿入し、このピンをレールとして軸部を滑らかに移動させ、滑らかな操作感覚を実現した技術が開発されている(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2005−93254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、装置形状の大型化を抑制して滑らかな操作感覚を得ることが可能な押し釦スイッチ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の押し釦スイッチ装置の態様は、底部近傍に固定接片が配置されたハウジングと、前記ハウジングの底部から離れる方向、及び接近する方向に移動可能とされた可動子と、前記収容部の底部に設けられ、前記可動子を底部から離れる方向に付勢する第1の弾性部材と、前記可動子に設けられ、前記固定接片に接触可能とされた可動接片と、前記ハウジングの上部に軸部が挿入された操作子と、前記操作子の前記軸部と前記可動子との間に設けられ、前記ハウジングの内面に摺接されて前記操作子及び前記可動子と共に収容部内を移動する第1、第2のガイド部材と、前記第1、第2のガイド部材の相互間に設けられ、第1、第2のガイド部材を互いに離れる方向に付勢する第2の弾性部材とを有し、前記第1、第2のガイド部材は、前記ハウジングの内面に押圧されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置形状の大型化を抑制して滑らかな操作感覚を得ることが可能な押し釦スイッチ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1乃至図3は、押し釦スイッチ装置の実施形態を示している。
【0012】
図1において、基台11及びカバー12は、ハウジング10を構成する。基台11は、収容部11aを有している。この収容部11aの例えば対向する内面で、底部近傍には、図示せぬ例えば4つの固定接片が配置されている。基台11の底部には、これら固定接片にそれぞれ電気的に接続された外部端子13a,13b,14a,14bが配置されている(図1において、14bに対応する外部端子は図示されていない)。さらに、基台11の外側面には、突起11bが設けられている。前記収容部11aの底部、且つ中央部には、例えば発光ダイオード(LED)15が配置される。
【0013】
また、収容部11aの内部には、第1の弾性部材としての例えばコイル状のばね16、及び可動子17が収容される。可動子17は、収容部11aの底部から離れる方向、及び底部に近接する方向に移動可能とされている。ばね16は、可動子17の底部に当接され、可動子17を収容部11aの底部から離れる方向に付勢している。
【0014】
可動子17は、四隅に柱17a,17b,17c,17dが形成され、中央部に発光ダイオード15が挿通される開口部17eを有している。可動子17のほぼ四隅には、前記固定接片に接触可能とされた可動接片18a,18b,19a,19bが配置されている。可動接片18aと18bは、電気的に接続され、可動接片19aと19bは電気的に接続されている。このため、可動子17が押し下げられた場合、可動接片18a,18bにより、外部端子13a,13bに接続された固定接片が電気的に接続され、可動接片19a,19bにより、外部端子14a,14bに接続された固定接片が電気的に接続される。
【0015】
前記カバー12は、例えば熱可塑性樹脂により形成されている。このカバー12の側面には、係合口12eが設けられ、前記基台11に装着した状態において、係合口12eが基台11aの突起11bに係合される。カバー12は、収容部12aを有し、収容部12aの中央部には、発光ダイオード15を保持する保持部12bが形成されている。この保持部12bは、カバー12内に設けられた仕切り板12cに保持され、仕切り板12cの両側には、前記可動子17の柱17b,17dと、柱17a,17cがそれぞれ挿通される2つの開口部12dが形成されている。
【0016】
収容部12aの内部で仕切り板12cの上方には、第1、第2のガイド部材としての摺動ガイド20、21が配置されている。この摺動ガイド20、21は、押し釦の操作力を可動子17に伝達し、押し釦の移動を滑らかとする機能を有している。後述するように、摺動ガイド20は、可動子17の柱17a,17bの上面に当接され、摺動ガイド21は、可動子17の柱17c,17dの上面に当接される。
【0017】
摺動ガイド20、21は、例えば熱可塑性樹脂により構成され、それぞれ例えば3つの端部20a,20b,20c,21a,21b,21cを有している。摺動ガイド20の端部20bと摺動ガイド21の端部21cの間には、第2の弾性部材としてのコイル状のばね22が配置され、摺動ガイド20の端部20cと摺動ガイド21の端部21bの間には、第2の弾性部材としてのコイル状のばね23が配置されている。摺動ガイド20、21は、これらばね22、23により互いに離れる方向に付勢され、端部20a,20b,21a,21bがカバー12の内面に押圧される。摺動ガイド20、21は、カバー12の内面に押圧された状態において、仕切り板12cから離れる方向、及び仕切り板12cに接近する方向に移動可能とされている。
【0018】
摺動ガイド20、21の上方には、押し釦の一部を構成する軸部24が配置されている。この軸部24の底辺は、摺動ガイド20、21の上面のほぼ全体に当接される。軸部24の中央部には、発光ダイオード15を露出する開口部24aが形成され、この開口部24aの周囲に、発光ダイオード15の光を上方に反射する傾斜された反射面24bが形成されている。さらに、軸部24の一側面には、突起24cが形成されている。この突起24cは、前記カバー12の内面に形成された図示せぬ係合部に係合可能とされており、この係合位置から下方に移動可能とされている。
【0019】
軸部24の上面には、発光ダイオード15の光を拡散させる拡散板25が取着される。さらに、軸部24の上面には、例えば透光性の樹脂により形成された操作子としての押し釦26が取着されている。
【0020】
図2は、図1に示す各部品を組み立てた状態を示している。すなわち、図1に示す構成において、先ず、基台11内に発光ダイオード15、ばね16、可動子17を順次組み込み、この後、カバー12が基台11に装着される。この状態において、発光ダイオード15は、ばね16、可動子17の開口部17eを通してカバー12の保持部12bに保持される。
【0021】
この後、カバー12の収容部12a内で、仕切り板12cの上部に、摺動ガイド20、21を、ばね22、23を介在して収容する。次いで、カバー12の収容部12a内で、摺動ガイド20、21の上部に軸部24を組み込み、軸部24に拡散板25、押し釦26を装着する。このようにして、照光式押し釦スイッチ装置が完成される。
【0022】
図3は、押し釦スイッチ装置を組み立てた状態における摺動ガイド20、21と、カバー12等との関係を示している。図2、図3に示すように、摺動ガイド20、21は、ばね22、23によりカバー12の内面方向に付勢され、端部20a,21aがカバー12の対向する角部に押圧され、端部20b、21bがカバー12の内面に押圧されている。
【0023】
摺動ガイド20の端部20b、20aは、可動子17の柱17a,17b上に位置し、摺動ガイド21の端部20b、20a、可動子17の柱17c、17d上に位置している。さらに、軸部24の底面は摺動ガイド20、21の上面のほぼ全面に当接している。
【0024】
上記構成において、押し釦26が押圧されていない場合、押し釦26、摺動ガイド20、21、可動子17は、ばね16により押し上げられ、図2に示す位置にある。このとき、スイッチはオフ状態である。
【0025】
上記状態において、ばね16、及び摺動ガイド20、21とカバー12との摩擦力に抗して押し釦26を押圧すると、摺動ガイド20、21は、カバー12の内面に沿って滑らかに下降する。これに伴い可動子17が下降し、スイッチがオン状態となる。
【0026】
軸部24とカバー12の内面との間には、図3に示すように間隙Gが存在する。しかし、軸部24の底面は摺動ガイド20、21の上面のほぼ全面に当接されている。このため、押し釦26の周辺を押圧した場合においても押し釦26の傾きを抑制することができ、軸部24の下端部がカバー12の内面に引っかかることを抑制できる。
【0027】
上記状態より、押し釦26に対する操作力を解除すると、可動子17、摺動ガイド20、21、軸部24、及び押し釦26がばね16により復帰され、オフ状態とされる。
【0028】
上記実施形態によれば、ハウジング10を構成するカバー12の内壁に押圧され、押し釦26の操作に伴い可動子17を駆動する摺動ガイド20、21を設けている。この摺動ガイド20、21は、常時、カバー12の内面に押圧されているため、押し釦26の押し込み操作時に傾斜することがなく、安定に移動する。したがって、押し釦26を操作する際、滑らかな操作感覚を得ることができる。
【0029】
また、この摺動ガイド20、21の上面には押し釦26の一部を構成する軸部24が当接されている。軸部24の底面は、摺動ガイド20、21の上面のほぼ全体に当接されている。このため、押し釦26を操作した際、軸部24の傾斜を抑制でき、軸部24の下端部がカバー12の内面に引っかかることを防止できる。
【0030】
しかも、摺動ガイド20、21の厚み分、軸部24の長さを短く設定している。このため、押し釦スイッチ装置全体の形状の大型化を抑制することができる。
【0031】
さらに、摺動ガイド20、21を設けたことにより、軸部24とカバー12との間の距離にばらつきが生じた場合においても、操作感覚に与える影響が少ない。このため、部品の精度を厳密に管理する必要がない利点を有している。
【0032】
また、摺動ガイド20、21の複数の端部20a,20b,20c,21a,21b,21cのそれぞれは厚みを有し、各端部20a,20b,20c,21a,21b,21cは、カバー12の内面に線接触している。このため、摺動ガイド20,21の移動時に、摺動ガイド20,21が傾斜してカバー12の内面に引っかかることがない。したがって、安定した動作を保証することができる。
【0033】
尚、基台11、カバー12、軸部24の断面形状は、四角形とした。しかし、これに限定されるものではなく、これらの断面形状を円形とすることも可能である。この場合、摺動ガイド20、21の形状を、それぞれ例えば半円形状とすればよい。このような形状によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0034】
また、摺動ガイド20,21の相互間には、第2の弾性部材として、コイルばねを設けた。しかし、これに限定されるものではなく、板ばねやスポンジゴムなどを適用することも可能である。
【0035】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変えない範囲において種々変形実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る押し釦スイッチ装置の実施形態を示す分解斜視図。
【図2】図1に示す押しボタンスイッチ装置を組み立てた状態を示す一部切除した斜視図。
【図3】図1に示す押しボタンスイッチ装置を組み立てた状態を示す上面図。
【符号の説明】
【0037】
10…ハウジング、11…基台、12…カバー、13a,13b,14a,14b…外部端子(図示せぬ固定接片に接続される)16…ばね(第1の弾性部材)、17…可動子、20、21…摺動ガイド、20a,20b,20c,21a,21b,21c…端部、22、23…ばね(第2の弾性部材)、24…軸部、26…押し釦。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部近傍に固定接片が配置されたハウジングと、
前記ハウジングの底部から離れる方向、及び接近する方向に移動可能とされた可動子と、
前記収容部の底部に設けられ、前記可動子を底部から離れる方向に付勢する第1の弾性部材と、
前記可動子に設けられ、前記固定接片に接触可能とされた可動接片と、
前記ハウジングの上部に軸部が挿入された操作子と、
前記操作子の前記軸部と前記可動子との間に設けられ、前記ハウジングの内面に摺接されて前記操作子及び前記可動子と共に収容部内を移動する第1、第2のガイド部材と、
前記第1、第2のガイド部材の相互間に設けられ、第1、第2のガイド部材を互いに離れる方向に付勢する第2の弾性部材とを有し、
前記第1、第2のガイド部材は、前記ハウジングの内面に押圧されていることを特徴とする押し釦スイッチ装置。
【請求項2】
前記操作子の前記軸部の底面は、前記第1、第2のガイド部材の上面のほぼ全体に当接されていることを特徴とする請求項1記載の押し釦スイッチ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−66194(P2008−66194A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244503(P2006−244503)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(390002543)株式会社フジソク (11)
【Fターム(参考)】