説明

押出し成形機及びこれを用いた陶板の製造方法

【課題】坏土の螺旋状の配向を抑制し、潜在歪を低減させた状態で坏土を押出す押出し成形機及びこの押出し成形機を用いた陶板の製造方法を提供する。
【解決手段】坏土を圧送するスクリュー102と、スクリューの軸体をなすスクリュー軸101と、スクリュー軸に連接された中玉支持軸106と、中玉支持軸に連接された中玉107とを含んでなる押出し成形機であって、中玉支持軸106と中玉107の少なくとも何れか一方が、坏土押出しに際してスクリュー102とは逆方向に回転するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は針状結晶鉱物が添加された坏土を成形後、焼成して大型の陶板(セラミック板)を製造する押出し成形機及びこれを用いた陶板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型陶板を製造するにあたって、一般に針状鉱物を配合した坏土を湿式成形により円筒状に押し出し、押出し方向に沿って生地を切り開き、圧延して素地を形成するようになっている。これを実現するに際して、押し出し成型時のスクリュー回転に起因する坏土のよじれ(らせん状の配向)に起因して、焼成体の反りが発生することが従来から知られていた。そして、このような焼成体の反りを招く坏土のよじれを解消するために種々の改良がなされているが、どれも反りの解消は十分ではなかった。
【0003】
より具体的には、押出し成形機を用いて大型の陶板を作成する際、一般的に針状結晶鉱物である珪灰石(ウォラストナイト)、粘土、滑石の乾燥粉末を、それぞれ所定量配合、混合した後、水を添加して可塑性の坏土を調製し、この坏土を押出し成形機によって円筒状に押出した後、平板状に広げ、圧延ローラによって例えば厚さ4mm、長さ1800mm、幅900mmの寸法の陶板に仕上げている。
【0004】
この場合、押出し成形機は、坏土を圧送するスクリューと、スクリューの軸体をなすスクリュー軸と、スクリュー軸に連接された中玉支持軸と、中玉支持軸に連接された中玉とで構成されており、坏土はスクリュー軸の回転の影響で捩れた状態で押出される。
【0005】
そこで、この捩れ癖を解消するために中玉軸受ケースが提案されている。この中玉軸受ケースはスラストベアリングを内蔵した構造であるため、スクリュー軸と中玉支持軸は回転力伝達の点で絶縁状態を保ったまま連結されている。これによって、スクリュー軸の回転力はベアリングの作用により中玉支持軸に伝えられず、捩れ応力は低減される。しかしながら、旋回スクリューの回転によって生じた螺旋状の配向が潜在歪となって、乾燥、焼成後、復元する傾向があった。
【0006】
このような、旋回スクリューの回転によって生じた螺旋状の配向を解消するために、特許文献1乃至3に記載の押出し成形機が知られている。特許文献1に記載された押出し成形機は、針状結晶鉱物が同一方向に配向整列された組織を有する大型平板状焼結体を製造するようになっている。より具体的には、この押出し成形機は、坏土を押出し成形機によって円筒状に押出した後にこれを平板状に広げて圧延ローラによってローラ圧延する際、螺旋状の配向を捻り戻すような溝を圧延ローラの表面に設けている。
【0007】
また、特許文献2に記載の押出し成形機は、中玉を中玉軸の回転から絶縁すると共に外胴に固定し、かつ複数の矯正板を設け、坏土のよじれを矯正するようになっている。より具体的には、この押出し成形機は、中玉の後端に設けられた矯正部材が、軸心に対して放射状に設けられた複数枚の矯正板と、これら矯正板の後端が固着された筒体とを有している。そして、矯正部材を中玉の後端に装着した際に、軸心に対して矯正板が中玉の後部の表面に放射状に備えられた状態となる。
【0008】
これによって、坏土が複数枚の矯正板間を強制的に通過する際に、スクリューの回転運動によって生じる坏土組織の螺旋状の配向がほぼ真っ直ぐな配向へと矯正されながら、押出口に向かって中玉の表面上を流れていく。
【0009】
また、特許文献3に記載の押出し成形機は、外胴をスクリューに対し逆回転させると共に回転により坏土を流動させるフィンであって、旋回流動手段と補助流動手段との役目を兼ねるフィンを設けている。より具体的には、この押出し成形機は、坏土を押出方向から見て波形をなすように押し出すようになっている。そして、この押出し成形機は、回転体がその軸線に沿って一定の間隔を空けて配置される複数の旋回流動体を内周面に備える円筒状の部材からなり、両端部が軸受及びオイルシールを介してそれぞれ押出室及びノズルに外嵌されることにより、回転自在に支持されている。また、旋回流動体は、回転体の軸線周りに放射状に配置された複数の旋回羽根を備えている。旋回羽根は、薄板状の部材であり、法線方向が回転体の軸線方向に対して所定の角度傾斜した配置となるように回転体の内周面に固定されている。そして、このような構成を有することで、吐出口から押し出される粘土成形体の回転癖を解消するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2998072号公報
【特許文献2】実用新案登録第3145290号公報
【特許文献3】特開2006−51689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の押出し成形機は、坏土押出し後の歪低減が不十分な点を解決するために上述したように坏土のよじれをねじり戻すような溝を圧延ローラに設けている。しかしながら、坏土は塑性が高いため、このような溝を設けることによってせん断歪がかえって残り易くなる。即ち、上述した特許文献1に開示された構成では、坏土に残存した潜在歪を十分に低減させることができず、製品の反り量を低減させる点では限界があり、製品を製造するにあたって適切なものとは言えなかった。
【0012】
また、特許文献2に記載の押し出し成型機は、坏土のよじれ低減を図る点では有効である。しかしながら、坏土が複数の矯正板に接触する際の抵抗により、矯正板近傍の坏土に密度差が生じることが考えられる。そのため、この坏土の密度差が原因となり、坏土が均一な組織とならず、焼成体の表面に凹凸面が形成される恐れがある。場合によっては、陶板の焼成時に焼成体自体に変形をもたらす恐れがある。
【0013】
また、特許文献3に記載の押出し成形機は、外胴をスクリュー軸とを逆方向に回転させるような構成であるため、素地の押出し方向とは垂直の方向に大きなせん断力を与えることになり、これが坏土の潜在歪を助長する方向に作用し、潜在歪が焼成体の変形をもたらすことが考えれる。そのため、特許文献1と同様に、坏土に残存した潜在歪を十分に低減させることができず、製品の反り量を低減させる点では限界があり、製品を製造するにあたってやはり適切なものとは言えない。
【0014】
本発明の目的は、坏土の螺旋状の配向を抑制し、潜在歪を低減させた状態で坏土を押出す押出し成形機及びこの押出し成形機を用いた陶板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、本発明に係る押出し成形機は、
坏土を圧送するスクリューと、該スクリューの軸に連接された中玉支持軸と、該中玉支持軸に連接された中玉とを有する押出し成形機であって、
前記中玉支持軸と前記中玉の少なくとも何れか一方が、前記坏土押出しに際して前記スクリューとは逆方向に回転することを特徴としている。
【0016】
スクリューの後段に設けられた中玉支持軸と中玉の少なくとも何れか一方がスクリューに対して逆回転することで、坏土の捩れ癖を解消し、坏土内のせん断歪を相殺するので、陶板の変形(反り)を大幅に抑制できる。
【0017】
また、本実施形態に係る押出し成形機を用いることによって、運搬時や施工時に割れ難く、施工後にも長期に亘って使用できる陶板を製造可能とする。
【0018】
好ましくは、本発明に係る押出し成形機は、スクリュー軸と中玉支持軸との連接部、中玉支持軸と中玉との連接部の少なくとも何れかに、回転を絶縁する絶縁部を設けているのが良い。回転を絶縁するとは、前段の(絶縁部に伝達される)方向性をもった回転を、該方向性を保持したまま後段に伝達させないことを言い、より具体的には、スクリュー軸の回転を遮断して、後段の中玉支持軸または中玉を坏土の流動抵抗に応じて自由に回転可能に、または変位可能にすること、あるいは、後述する反転機構を用いて、後段の中玉支持軸または中玉の回転方向を変えることを意味する。
【0019】
例えば、ベアリングなどの絶縁部によりスクリュー軸と中玉支持軸間の回転を絶縁できるため、中玉支持軸、中玉の少なくとも何れかをスクリューの回転に対して逆回転させ、他方を坏土の流れに任せて自由に回転させることも可能となり、押出し成型機の設計の自由度を高めることができる。
【0020】
また、スクリュー軸と中玉支持軸の双方を強度上必要最小限の太さに抑えることができる。
【0021】
好ましくは、本発明に係る押出し成形機は、絶縁部に反転機構を設けているのが良い。
【0022】
好ましくは、本発明に係る押出し成形機は、スクリュー軸と中玉支持軸との連接部に反転機構を設け、中玉支持軸がスクリュー軸と逆回転するのが良い。
【0023】
このように、スクリュー軸と中玉支持軸との連接部において、スクリューの回転を反転する反転機構を有することで、中玉支持軸がスクリューとは逆方向に回転するようになるので、坏土の捩れ癖が相殺され、陶板の変形(反り)を大幅に抑制することができる。また、圧延ローラの表面に特別な溝加工を施す必要がなく、汎用の圧延ローラを用いることができる。
【0024】
また、スクリュー軸や中玉支持軸を駆動する回転駆動源を1つの回転駆動源で兼用できるので、押出し成型機自体の小型化や消費電力の低減を図ることができる。
【0025】
また、スクリュー軸と中玉支持軸の軸線上に反転機構を設けることで、針状鉱物の配向を乱すことなく歪を低減できる。また、排出口側から逆回転の駆動部を接続する実施態様や二重反転シャフト等、他の複雑な実施態様をとる必要がなくなり、押出し成形機自体を小型化することができる。
【0026】
好ましくは、本発明に係る押出し成形機は、中玉が中玉支持軸の回転と絶縁されているのが良い。これによって坏土が中玉を通過する過程ではこの坏土の流れに従うため、坏土の捩れ癖を効率良く相殺することができ、旋回スクリューでよって生じた螺旋状の配向による潜在歪を低減して、陶板の変形(反り)を大幅に抑制することができる。
【0027】
好ましくは、本発明に係る押出し成形機は、中玉支持軸の回転軸芯がスクリュー軸の回転軸芯の延長線上にあるのが良い。これによって坏土の捩れ癖を効率良く相殺することができ、スクリューの旋回を介して生じた螺旋状の配向による潜在歪を低減して、陶板の変形(反り)を大幅に抑制することができる。
【0028】
好ましくは、本発明に係る押出し成形機は、中玉支持軸の回転はスクリュー軸の回転よりも減速されているのが良い。これによって坏土の捩れ癖を効率良く相殺することができ、旋回スクリューでよって生じた螺旋状の配向による潜在歪を低減して、陶板の変形(反り)を大幅に抑制することができる。
【0029】
好ましくは、本発明に係る押出し成形機において、反転機構として波動歯車装置を用いるのが良い。反転機構として波動歯車装置を用いることで、この反転機構の部分をかなりコンパクトにでき、ひいては押出し成型機自体の更なる小型化を達成できる。
【0030】
また、本発明に係る押出し成形機を用いた陶板の製造方法は、押出し成形機を用いて坏土を円筒状に成形する工程、坏土を切り開く工程、切り開いた坏土を圧延する工程を有している。係る陶板を製造するにあたって本発明の押出し成形機を用いることにより、坏土は螺旋状の配向を抑制して円筒状に押出され、乾燥、焼成後、潜在歪の復元しない変形(反り)を大幅に抑制した陶板を製造することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の押出し成形機によると、坏土の螺旋状の配向を抑制し、潜在歪を低減させた状態で坏土を押出す押出し成形機及びこの押出し成形機を用いた陶板の製造方法を提供することができる。
【0032】
特に、坏土押出しに際して、中玉支持軸、中玉の何れか一方か双方をスクリューの回転に対して逆方向に回転させることで、スクリューとは逆方向のせん断力を坏土の所望の領域に生じさせて坏土内の歪を相殺させる。その結果、坏土の捩れ癖を相殺することが可能となり、表面に特別な溝加工を施した圧延ローラを用いることなく、陶板の変形(反り)を大幅に抑制することができる。
【0033】
また、本発明の押出し成形機を用いることにより、坏土は、螺旋状の配向を大幅に抑制されたままの状態で円筒状に押出され、乾燥、焼成後、潜在歪の復元しない陶板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る押出し成形機の一部を、そのスクリュー軸や中玉支持軸の軸線に沿って切断して示す縦断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る押出し成形機の一部を、そのスクリュー軸や中玉支持軸の軸線に沿って切断して示す縦断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る押出し成形機の一部を、そのスクリュー軸や中玉支持軸の軸線に沿って切断して示す縦断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態の変形例に係る押出し成形機の一部を、そのスクリュー軸や中玉支持軸の軸線に沿って切断して示す縦断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る押出し成形機の一部を、そのスクリュー軸や中玉支持軸の軸線に沿って切断して示す縦断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る押出し成形機の構成要素をなす反転機構を示す分解斜面図である。
【図7】図6とは見る方向を水平方向に反転させた状態の反転機構を示す分解斜面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る押出し成形機に備わる反転機構の組み立て状態をその軸線方向から示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の各実施形態に係る押出し成形機及びこれを用いた陶板の製造方法について図面に基づいて説明する。最初に本発明の第1の実施形態に係る押出し成形機について説明する。
【0036】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る押出し成形機を、そのスクリュー軸や中玉支持軸の軸線に沿って切断して示す縦断面図である。本発明の第1の実施形態に係る押出し成型機100は、外胴103と、外胴内に配置されたスクリュー軸101と、スクリュー軸101の長手方向に関して坏土の押出し方向上流側の一部の周囲に設けられたスクリュー102と、スクリュー軸101に連接された中玉支持軸106と、中玉支持軸106に連接された中玉107と、中玉支持軸106を駆動する反転機構110とを有している。中玉支持軸106と中玉107との連接部にはこの両者の回転を絶縁する絶縁部105が備わると共に、反転機構110を介して中玉107がスクリュー102とは逆方向に回転するようになっている。そして、押出し成形機100は、スクリュー102を介して坏土を中玉107に向かって圧送すると共に、坏土を、外胴103と中玉107との間の隙間を介して押出し成型機100の出口側から外部に円筒状をなした状態で押し出すようになっている。
【0037】
なお、絶縁部105は、中玉内に設けられたベアリングからなり、反転機構110は、一端111aが中玉から延出する回転軸120に接続されたユニバーサルジョイント111と、ユニバーサルジョイント111の他端111bが接続された減速機構115と、減速機構115に接続された駆動モータ116とを有している。減速機構115は、例えば複数の歯車を互いに噛合させた状態で収容したギヤボックス等からなり、駆動モータ116は、例えばサーボモータ等の十分な回転トルクを発生し得る駆動源からなる。
【0038】
そして、駆動モータ116の回転が減速機構115を介して減速されると共に、十分な回転トルクを発生するようにし、この回転トルクがユニバーサルジョイント111を介して中玉から延出する回転軸120に伝達され、中玉107が中玉から延出する回転軸120と一体になって回転するようになっている。なお、駆動モータ116の回転方向は、上述したように中玉107がスクリュー102とは逆方向に回転する方向に対応している。また、図1に示すように、減速機構115及び駆動モータ116は、ユニバーサルジョイント111を介して中玉から延出する回転軸120の軸芯から所定量だけ(図1では上方に)偏倚して配置され、これら減速機構115及び駆動モータ116が押出し成型機100から押し出される坏土と干渉しないようになっている。
【0039】
本実施形態の構成によると、中玉107の中玉支持軸106との連接部にベアリングからなる絶縁部105を設けているので、坏土は外胴内でスクリュー102から圧送されて外胴103と中玉107の間から押出される過程において中玉107のみがスクリュー軸101の回転方向に対して逆回転する。この過程において中玉107のみがスクリュー軸101に対して逆方向に回転することで、坏土に対して逆方向のせん断力を作用させて坏土のよじれ解消と歪低減を実現することができる。
【0040】
また、スクリュー軸101と中玉支持軸106の双方を強度上必要最小限の太さに抑えることができる。
【0041】
続いて、本発明の第2の実施形態に係る押出し成形機について説明する。なお、上述した第1の実施形態と同等の構成については、図面に対応する符号を付して詳細な説明を省略する。図2は、本発明の第2の実施形態に係る押出し成形機を、そのスクリュー軸や中玉支持軸の軸線に沿って切断して示す縦断面図である。
【0042】
第2の実施形態に係る押出し成形機は、基本的に第1の実施形態と同様の構成を有するが、第1の実施形態と異なる点として、スクリュー軸201と中玉支持軸206との連接部にこの両者の回転を絶縁する絶縁部205を設け、中玉支持軸206及び中玉207がスクリュー軸201と逆回転するようになっている。このような構成の押出し成型機200を用いることで、押出された坏土を展開して焼成する際に焼成体の変形を少なくすることができる。
【0043】
なお、この第2の実施形態に係る押出し成型機の変形例として、ここでは図示しないが、中玉207と中玉支持軸206との連接部分にもベアリング等からなる絶縁部を設けることにより、反転機構210を介して中玉支持軸206のみがスクリュー軸201と逆回転するようにしても良い。この場合、逆方向のせん断力は、第2の実施形態よりも小さくなるが、焼成後の坏土の変形を抑制することが期待できる。
【0044】
続いて、本発明の第3の実施形態に係る押出し成型機について説明する。なお、上述した第1の実施形態、第2の実施形態及びその変形例と同等の構成については、図面に対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
本発明の第3の実施形態に係る押出し成型機300は、図3に示すように、反転機構305として二重反転シャフト301,306からなる二重反転機構を用いている。なお、本実施形態では中玉支持軸306のみがスクリュー軸301と逆回転するようになっている。また、中玉支持軸306がスクリュー軸301と逆回転可能とするために、中玉支持軸306と中玉307との連接部分に例えばベアリングからなる絶縁部(図示せず)を設けている。
【0046】
これによって、押出し生地が円筒状に押し出されてくる押出し成型機の出口側に、上述した実施形態のようなユニバーサルジョイント、減速機構、及び駆動モータを設けなくて済むため、押出し成型機の構造が複雑化しないようにし、押出し成形機自体の小型化を図ることが可能となる。
【0047】
なお、中玉支持軸306と中玉307との間に絶縁部を設けずに、この両者が一体になってスクリュー軸301の回転方向と逆方向に回転するようにしても良い。
【0048】
なお、この第3の実施形態においては、二重反転シャフト305をなすスクリュー軸301と中玉支持軸と306は互いに同一の駆動モータ316を備えて例えば遊星歯車315を介して互いに逆方向に回転するように同時に減速している。これによって、スクリュー軸や中玉支持軸を駆動する回転駆動源を1つの回転駆動源で兼用できるので、押出し成型機自体の小型化や消費電力の低減を図ることができる。
【0049】
しかしながら、ここでは図示しないが別々の駆動モータ及び減速機構を介してスクリュー軸と中玉支持軸とが互いに所定の回転数で相対的に逆方向に回転するようにしても良い。
【0050】
続いて、本発明の第3の実施形態の変形例に係る押出し成型機について説明する。なお、上述した第1の実施形態、第2の実施形態及びその変形例、第3の実施形態と同等の構成については、図面に対応する符号を付して詳細な説明を省略する。図4は、本発明の第3の実施形態の変形例に係る押出し成形機を、そのスクリュー軸や中玉支持軸の軸線に沿って切断して示す縦断面図である。
【0051】
本発明の第3の実施形態の変形例に係る押出し成形機300’においては、中玉支持軸306と中玉307との間に絶縁部を設けずに、この両者が一体になってスクリュー軸301の回転方向と逆方向に回転するようになっている。そして、上述した第3の実施形態において外側の軸体をなすスクリュー軸301を中玉307の近傍まで延在させることで、中玉支持軸306の周囲をスクリュー軸301で覆い、中玉307のみをスクリュー軸301に対して逆回転させるようになっている。このような構成を有する押出し成形機300’を用いても、上述した第1及び第2の実施形態に比べて、押出し成形機の出口側の構造を複雑化せずに済み、押出し成形機自体の小型化を図ることができる。
【0052】
続いて、本発明の第4の実施形態に係る押出し成型機について説明する。なお、上述した第1の実施形態、第2の実施形態及びその変形例、第3の実施形態及びその変形例と同等の構成については、図面に対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
本発明の第4の実施形態に係る押出し成型機は、本発明において開示する各実施形態のうち押出し成型機自体の構造の小型化及び簡略化を図る上で最も優れた形態である。
【0054】
図5は、本発明の第4の実施形態に係る押出し成形機を、そのスクリュー軸や中玉支持軸の軸線に沿って切断して示す縦断面図である。この第4の実施形態に係る押出し成型機400は、反転機構404が絶縁部405aに設けられたことを特徴とする。すなわち、この第4の実施形態に係る押出し成型機400は、図5に示すように、押出し成形機の外胴403の中心部に、スクリュー402の軸体をなすスクリュー軸401が配設されている。
【0055】
スクリュー軸401の一端は反転機構404の一端側に設けられたスラストベアリング405に支持されている。また、反転機構404の他端側に設けられたスラストベアリング405には、中玉支持軸406の一端が支持されている。このように、反転機構404は、スクリュー軸401と中玉支持軸406との連接部に設けられ、スラストベアリング405を備えてなる絶縁部405aと一体的に構成されている。
【0056】
一方、中玉支持軸406の他端側にはスラストベアリング405を介して中玉407が中玉支持軸406とは絶縁した状態で支持されている。そして、中玉407は中玉支持軸側が小径で、外胴403の口金408に対向する側に向かって大径となる円錐形をなし、その大径部と口金408との間には坏土を押し出すための隙間Gが形成されている。
【0057】
スラストベアリング405は上述した絶縁部405aとは異なる絶縁部405bとして構成され、この絶縁部405bを備えることで、前段の中玉支持軸406の回転を中玉407に伝達しないようにして、中玉407が坏土の流動抵抗に応じて自由に回転可能に、または変位可能となるようにしている。
【0058】
反転機構404としては、従来から周知の遊星歯車減速機、ボール減速機、遊星ローラ減速機、波動歯車装置((ハーモニックドライブ(登録商標))、平行軸歯車減速機、ヘリカル減速機、ウォーム減速機、ハイポイド減速機、ローラ減速機のうちの何れかを用いることができる。
【0059】
特に本発明の第4の実施形態に係る反転機構404としては、中玉支持軸406の回転軸芯がスクリュー軸401の回転軸芯の延長線上となる波動歯車装置、遊星歯車減速機、ボール減速機、遊星ローラ減速機が適している。なお、本実施形態では波動歯車装置を適用した場合について説明する。
【0060】
図6は、反転機構404としての波動歯車装置の分解斜面図である。また、図7は、図6とは見る方向を水平方向に反転させた状態の波動歯車装置の分解斜面図である。また、図8は、波動歯車装置の組み立て状態をその軸線方向から示す端面図である。
【0061】
図6乃至図8において、反転機構404としての波動歯車装置は、スクリュー軸401に取付けられたウエーブ・ジェネレータ409と、中玉支持軸406の一端にウエーブ・ジェネレータ409に対向して設けられたフレックススプライン410と、このフレックススプライン410の外周面に形成されたギア410aと噛合うギア411aを内周面に形成したサーキュラ・スプライン411とで構成されている。
【0062】
この波動歯車装置は、楕円と真円の差動を利用した減速機で、フレックススプライン410はウエーブ・ジェネレータ409により楕円に撓められ、フレックススプライン410のギア410aが長軸の部分でサーキュラ・スプライン411のギア411aと噛合い、短軸の部分ではギア410aとギア411aとが完全に離れた状態になる。従って、サーキュラ・スプライン411を固定し、ウエーブ・ジェネレータ409を矢印aの反時計方向に回すと、フレックススプライン410は弾性変形し、ギア410aとギア411aの噛合い位置が順次移動し、ウエーブ・ジェネレータ409が1回転すると、歯数差分だけフレックススプライン410は矢印a’の時計方向に移動する。
【0063】
そこで、スクリュー軸401にウエーブ・ジェネレータ409を取付け、中玉支持軸406にフレックススプライン410を取付け、サーキュラ・スプライン411を支持部材(図示を省略)を介して外胴403の内面に固定すれば、スクリュー軸401の回転を減速しかつ回転方向を反転させて中玉支持軸406に伝達することができる。
【0064】
以下、本発明の第4の実施形態に係る押出し成形機の作用及びこれを用いた陶板の製造方法について説明する。スクリュー軸401の回転により、スクリュー402によって押出された可塑性の坏土は押出し成形機の外胴403内を旋回しながら送られる。スクリュー軸401と連結された中玉支持軸406は、反転機構404としての波動歯車装置を介して、スクリュー軸401よりは減速されるとともに回転方向が反転される。
【0065】
この構成により、スクリュー軸401とは反対方向に中玉支持軸406をゆっくり回転させ、捩れ方向と反対の応力を坏土に与えることにより、捩れ癖を解消する。そして、捩れ癖を解消された坏土は、中玉支持軸406の回転と絶縁された中玉407の円錐形斜面に沿って口金408に向かって移動し、この中玉407と口金408との間の隙間Gから円筒状に押し出される(坏土を円筒状に成形する工程)。この円筒状に押出された坏土を切り開き(坏土を切り開く工程)、切り開いた坏土を圧延ローラで所定の寸法に圧延して(圧延する工程)、変形(反り)を大幅に抑制した状態で乾燥した後焼成し、陶板を製造する。
【0066】
本発明の第4の実施形態に係る押出し成形機400によると、スクリュー軸と中玉支持軸とが絶縁された従来技術とは異なり、中玉支持軸が常に回転しているので、スラストベアリングのベアリング球も回転しており、ベアリング球は均一な状態で磨耗してスラストベアリングの回転を維持する。従ってスラストベアリングの耐久性が向上すると考えられる。
【実施例】
【0067】
次に本発明の第4の実施形態に係る押出し成形機を用いた実施例と、特許文献1に開示された押出し成形機を用いた比較例を対比して説明する。なお、両者を対比するにあたっての諸条件は全く同一とした。この諸条件は、具体的には以下の通りとした。
【0068】
坏土:珪灰石50%、粘土40%、滑石10%の乾燥粉末を、それぞれ所定量配合、混合した後、水を添加して可塑性の坏土を調製した。
【0069】
圧延:円筒状に生地を切り開き、ローラで圧延して、幅600mm長さ900mm厚さ4mmの生地平板を作成した。
【0070】
焼成:生地平板は、乾燥後、最高1150℃でローラーハースキルンにて焼成し、陶板を得た。
【0071】
評価:焼成前の乾燥平板及び焼成体の陶板について、端部の反りあがりの高さ(反り量)を測定した。この測定結果を表1に示した。
【0072】
【表1】

表1における平均は、乾燥平板と焼成体の観測数(サンプル数)各16枚に関する実施例と比較例の端部の反り上がりの高さ(mm)であり、この評価結果から実施例の方が比較例よりも端部の反り量が少ないことが分かった。また、分散は、上記実施例と比較例のそれぞれの反り量のばらつきを示す統計値であり、この値が小さいほど測定値のばらつきが小さいとされる。この分散の結果から明らかなように、乾燥平板と焼成体のそれぞれについて実施例の方が比較例よりも反り量のばらつきがかなり小さいことが分かった。
【0073】
即ち、この表から明らかなように、試作品の乾燥時・焼成時の両状態共に、実施例(本発明の押出し成形機)を用いて成形した陶板は、特許文献1に開示された押出し成形機を用いて成形した陶板よりも反り量及びそのばらつきが少ないことが分かった。この結果からして、本発明の押出し成形機を用いる優位性が立証できた。
【0074】
以上説明したように、本発明の第4の実施形態に係る押出し成形機は、スクリュー軸と中玉支持軸との連接部に、スクリューの回転を反転する反転機構を有し、中玉支持軸が前記スクリュー軸とは逆方向に回転するようになっている。このような構成を有することで、坏土の押出し時にその捩れ癖を相殺することができ、陶板の変形(反り)を大幅に抑制することができる。
【0075】
なお、本発明の作用を発揮する上で、反転機構としては上述したように従来から周知の遊星歯車減速機、ボール減速機、遊星ローラ減速機、波動歯車装置((ハーモニックドライブ(登録商標))、平行軸歯車減速機、ヘリカル減速機、ウォーム減速機、ハイポイド減速機、ローラ減速機のうちの何れかを用いることができる。
【0076】
一方、本発明の反転機構としては、中玉支持軸の回転軸芯がスクリュー軸の回転軸芯の延長線上となる遊星歯車減速機、ボール減速機、遊星ローラ減速機、波動歯車装置を使用することが好ましい。
【0077】
これは、これらの構成要素を用いることで、中玉支持軸の回転軸芯がスクリュー軸の回転軸芯の延長線上にあるようにできるので、坏土の捩れ癖を効率良く相殺することができ、旋回スクリューでよって生じた螺旋状の配向による潜在歪を低減して、陶板の変形(反り)を大幅に抑制することができるからである。
【0078】
しかしながら、最も好ましい反転機構としては、波動歯車装置((ハーモニックドライブ(登録商標))を用いるのが良い。これによって、スクリュー軸と中玉支持軸の軸線同士のぶれを最小限にできると共に、この反転機構の部分を軽量かつコンパクトに構成でき、ひいては押出し成型機自体の小型化を達成できるからである。
【0079】
なお、中玉支持軸の回転はスクリュー軸の回転よりも減速されているので、坏土の捩れ癖を効率良く相殺することができ、旋回スクリューでよって生じた螺旋状の配向による潜在歪を低減して、陶板の変形(反り)を大幅に抑制することができる。
【0080】
また、中玉は中玉支持軸の回転と絶縁されているので、坏土が中玉を通過する過程では該坏土の流れに従うため、坏土の捩れ癖が効率良く相殺することができ、旋回スクリューでよって生じた螺旋状の配向による潜在歪を低減して、陶板の変形(反り)を大幅に抑制することができる。
【0081】
また、押出し成形機を用いて坏土を円筒状に成形する工程、坏土を切り開く工程、切り開いた坏土を圧延する工程を含んでいる本発明に係る陶板の製造方法は、上述した本発明の押出し成形機を用いることにより、坏土は螺旋状の配向を抑制して円筒状に押出され、乾燥、焼成後における潜在歪の復元がし難くなる。この結果、変形(反り)を大幅に抑制して陶板を製造することができる。
【符号の説明】
【0082】
100 押出し成型機
101 スクリュー軸
102 スクリュー
103 外胴
105 絶縁部
106 中玉支持軸
107 中玉
110 反転機構
111 ユニバーサルジョイント
111a 一端
111b 他端
115 減速機構
116 駆動モータ
120 中玉から延出する回転軸
200 押出し成型機
201 スクリュー軸
205 絶縁部
206 中玉支持軸
207 中玉
210 反転機構
300,300’ 押出し成形機
301,306 二重反転シャフト
301 スクリュー軸
305 反転機構
305 二重反転シャフト
306 中玉支持軸
307 中玉
315 遊星歯車
316 駆動モータ
400 押出し成型機
401 スクリュー軸
402 スクリュー
403 外胴
404 反転機構
405 スラストベアリング
405a,405b 絶縁部
406 中玉支持軸
407 中玉
408 口金
409 ウエーブ・ジェネレータ
410 フレックススプライン
410a ギア
411 サーキュラ・スプライン
411a ギア
G 隙間



【特許請求の範囲】
【請求項1】
坏土を圧送するスクリューと、該スクリューの軸に連接された中玉支持軸と、該中玉支持軸に連接された中玉とを有する押出し成形機であって、
前記中玉支持軸と前記中玉の少なくとも何れか一方が、前記坏土押出しに際して前記スクリューとは逆方向に回転することを特徴とする押出し成形機。
【請求項2】
前記スクリュー軸と中玉支持軸との連接部、中玉支持軸と中玉との連接部の少なくとも何れかに、回転を絶縁する絶縁部を設けることを特徴とする、請求項1に記載の押出し成型機。
【請求項3】
前記絶縁部に反転機構を設けることを特徴とする、請求項2に記載の押出し成型機。
【請求項4】
前記スクリュー軸と中玉支持軸との連接部に反転機構を設け、中玉支持軸がスクリュー軸と逆回転することを特徴とする、請求項1に記載の押出し成型機。
【請求項5】
前記中玉は前記中玉支持軸の回転と絶縁されていることを特徴とする、請求項4に記載の押出し成型機。
【請求項6】
前記中玉支持軸の回転軸芯が前記スクリュー軸の回転軸芯の延長上にあることを特徴とする、請求項1に記載の押出し成型機。
【請求項7】
前記中玉支持軸又は中玉の回転は、前記スクリュー軸の回転よりも減速されることを特徴とする、請求項1に記載の押出し成型機。
【請求項8】
前記反転機構として波動歯車装置を用いることを特徴とする、請求項1に記載の押出し成型機。
【請求項9】
押出し成形機を用いて坏土を円筒状に成形する工程、坏土を切り開く工程、切り開いた坏土を圧延する工程を有する陶板の製造方法であって、請求項1乃至請求項8に記載の何れかの押出し成型機を用いて前記陶板を製造することを特徴とする陶板の製造方法



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−234802(P2010−234802A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29588(P2010−29588)
【出願日】平成22年2月13日(2010.2.13)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】