説明

押出コーティングによる多層印刷メディアの製造方法

本発明は、押出コーティング法を一連の多層製造プロセスの主要な工程として利用し、グラフィック用途の積層体を作製するものである。押出コーティングされた層が補強層として働いて構造に機械的特性を与えながら、インク受容コーティング層によって高い印刷品質が得られる。また、PETキャリアを使用することで光沢が強くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2009年2月25日に出願された米国暫定特許出願第61/155,199号の利益を主張し、本明細書にその全体が参考として組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、押出コーティング法を一連の多層製造プロセスの主要な工程として利用し、グラフィック用途の積層体を作製するものである。押出コーティングされた層が補強層として働いて該構造に機械的特性を与えながら、インク受容コーティング層によって高い印刷品質が得られる。また、PETキャリアを使用することで光沢が強くなる。
【背景技術】
【0003】
長年にわたって、可塑剤で可塑化したビニルフィルムが接着性のラベル、テープおよび装飾シートに利用されてきた。ビニルフィルム、とりわけポリ塩化ビニル(PVC)フィルムは、特に低価格で耐候性を備え、顔料や染料で簡単に着色できることから、かかる用途に広く受け入れられてきた。また、可塑化したポリ塩化ビニル(PVC)は、可塑剤を混入することでその性質を大きく改変できるために特に広く受け入れられてきた。これらのフィルムは多様なグラフィック用途で利用され成功を収めてきた。
【0004】
ビニルフィルムは優れた柔軟性と適応性を備えるのでグラフィックや壁紙の用途で有効に利用されてきたが、PVCを含まないフィルムの開発への要望が続いている。PVCなどのハロゲン含有物質は、燃焼させると、環境に有害で望ましくない副産物を生じさせることが一般的に認識されているためである。
【0005】
このため、環境に優しいハロゲン非含有フィルム、特にハロゲン含有フィルムに相当する特性を持つPVC非含有フィルムへのニーズがある。PVC系ビニル材料は、比較的低コストで材料選択の幅が広く柔軟性を備えるポリオレフィンで代用することもあるが、ポリオレフィン系材料の使用による主な問題は、印刷品質が低くなることである。ビニルフィルムをポリオレフィンフィルムで代用する場合には、インク受容皮膜層を用いた多層共押出フィルムの作製が試されてきた。しかし、これらの共押出フィルムの印刷品質はインクジェットプリンターに適さない。
【0006】
幾つかのグラフィック用途、例えばバスやトレーラーなどの車両の外装では、グラフィックインストーラーによってフィルムを簡単に非平滑面に貼れるような、適応可能なフィルムを使用する必要がある。印刷性のよいPVCフリーのフィルム材料を作るには、ポリプロピレン基体やポリエステル基体などのポリオレフィン材料を使用して印刷可能なトップコートを付けるのが一般的である。しかし、ポリプロピレンやポリエステルは「適応可能な」材料とは考えられておらず、非平滑面でうまく機能しない。一方で、ポリエチレンやエチレン酢酸ビニル(EVA)などのさらに適応性の良い材料は、トップコートが乾いた状態では特に、フィルムの弾性係数が低いため、グラフィック用途で利用するのが難しい。
【0007】
これに加えて、グラフィック業界には、光沢度の高いメディアに印刷したいというニーズがある。共押出フィルムでは、研磨したローラー上に流延させることによって光沢のある表面を得られるが、一般的に、インク付着性に優れてしかもべとつかない押出皮膜材料を選ぶのはバランスが難しい。
【0008】
また、使用期間を通して寸法安定性に優れたグラフィックフィルムへの要望も高い。時間が経つと収縮しやすいグラフィックフィルムは、フィルムの接着端部が塗布後に露出してしまう。従来から、流延ビニルフィルムの収縮率はカレンダー加工ビニルに比べて低い。流延プロセスで掛けられる圧力が低いので収縮率も低くなり、より寸法が安定したフィルムになる。
【0009】
近年、装飾的なグラフィックフィルムを作るためにさまざまなアプローチがとられてきた。こうしたプロセスは通常、溶剤流延法または押出法に分類される。例えば、下記特許文献1(米国特許第4,810,540号のEllison他)および下記特許文献2(米国特許第4,902,557号のRohrbacher)は溶剤流延法を採用しており、この液体流延では溶剤系クリアコーティングおよび顔料系のコーティングを反転ロールコーティングまたはグラビア印刷などのコーティングプロセスによって柔軟な流延シートに塗布する。複数の液体流延層では、別個に塗布して高温で乾燥させ、溶剤を蒸発させる。
【0010】
下記特許文献3および4(米国特許第4,317,860号および4,364,886号のStrassel)も、多層フィルムの共押出、例えば共押出シートの片面が主にPVDFで、別の片面が主にアクリル樹脂である2層共押出を開示している。このような一元的な構造は成形品の作成や、成形重合体へのシート付着に使用する。
フィルム押出法は、研磨したドラムに押出した重合体材料をコーティングした遊離フィルムの作製にも過去に利用されてきた。これらのフィルムはその後多様な着色コーティングで下塗りする。しかし、ドラムに接触する押出遊離フィルムの外部表面は(遊離フィルムとしてドラムから離れている)光沢度が低く画像の鮮明度も低い。また、このようにして製造したフィルムにはキャリアシートが付いていないため扱いにくく、この後のプロセスで損傷しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,810,540号
【特許文献2】米国特許第4,902,557号
【特許文献3】米国特許第4,317,860号
【特許文献4】米国特許第4,364,886号
【特許文献5】米国出願第12/323,788号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、一連の加工工程を利用して、優れた印刷品質と高い光沢性を備え、蓄積圧力が低く寸法安定性に秀でたポリオレフィン系グラフィックフィルム表面材を作ってグラフィック業界のニーズに応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態では、押出コーティング法を一連の多層製造プロセスの主要な工程として利用して、グラフィック用途の積層体内に使用できるグラフィックフィルム表面を作製する。押出コーティングされた層は補強層として働いてグラフィックフィルムの表面構造に機械的特性を与えながら、インク受容コーティング層によって高い印刷品質が得られる。また、PETキャリアを使用することでインク受容層の光沢が強くなる。
【0014】
本発明の第2の実施形態では、グラフィックフィルムを作るプロセスに、a)キャリアウェブ上にインク受容層をコーティングして乾燥させる工程と、b)工程(a)のインク受容層上にポリオレフィン材料を押出コーティングする工程と、c)キャリアウェブをインク受容層から取り外してインク受容層の(光沢があってもよい)面を露出する工程とを含む。
【0015】
本発明の別の実施形態では、上述したプロセスのキャリアウェブがPETなどのポリエステルフィルムである。
【0016】
本発明の別の実施形態では、本発明の第2の実施形態に記載するプロセスにおいてインク受容層が、酢酸ビニル単独重合体、酢酸ビニル共重合体、またはこれらの混合物、アクリル共重合体、またはアクリル共重合体と酢酸ビニル/エチレン共重合体との混合物、酢酸ビニル/エチレン共重合体およびアクリルの混成物、またはポリウレタン含有重合体である。
【0017】
本発明の別の実施形態では、本発明の第2の実施形態に記載するプロセスにおいて、乾燥したインク受容層の任意の処理として接着促進層のコーティング、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理、あるいはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定しない。
【0018】
本発明の別の実施形態では、本発明の第2の実施形態に記載するプロセスにおいて、ポリオレフィン材料がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ヘキサン、ブテン、またはオクテンとエチレンとの共重合体、ポリプロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、環状オレフィン重合体、環状オレフィン共重合体、メタロセン触媒系ポリオレフィン、これらの熱可塑性プラスチックおよびエラストマーである。
【0019】
本発明の別の実施形態では、本発明の第2の実施形態に記載するプロセスにおいて、インク受容コーティング層の厚みが60ミクロン未満である。
【0020】
本発明の別の実施形態では、本発明の第2の実施形態に記載するプロセスにおいて、押出コーティングされた層の厚みが20ミクロン〜100ミクロンである。
【0021】
本発明の別の実施形態では、グラフィックフィルムの積層体がa)本明細書中で先に述べたプロセスで作られインク受容面とポリオレフィン表面から成るグラフィックフィルム表面材と、b)ポリオレフィン表面上の接着層と、c)この接着層に付着するライナーとを含む。
【0022】
これらは、本発明の他の特徴および利点と同様に、以下にさらに詳しく説明する本発明の現在の好適な実施形態例を参照し添付図面と関連付けて考えれば、より完全に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に従って作製したフィルムの断面図である。
【0024】
【図2】本発明に従ってフィルムを作製する方法の概略フロー図である。
【0025】
【図3】一般的な押出コーティングプロセスの概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明を詳細な説明によって例示して、本発明を実施する現在最も知られた最適な態様を表す。しかし、本記載は本発明を限定するものではなく、本発明の一般的な特徴を例示する目的で提示するものである。
【0027】
本発明によれば、キャリアウェブを最初にインク受容層でコーティングして、これを乾燥させて基体を作る。
【0028】
インク受容印刷層の製法はさまざまである。例えば、インク受容層は酢酸ビニル単独重合体、酢酸ビニル共重合体、またはこれらの混合物、アクリル共重合体、またはアクリル共重合体と酢酸ビニル/エチレン共重合体の混合物、酢酸ビニル/エチレン共重合体およびアクリルの混成物、またはポリウレタン含有重合体の中から選択できる。インク受容印刷層の別の実施形態は、上記特許文献5(米国出願第12/323,788号)に詳述されており、本明細書にその全体が参考として組み込まれる。インク受容印刷層は、キャリアフィルム(ウェブ)上へのダイコーティングによって作る。一実施形態において、インク受容層の表面光沢度が比較的高いことが望ましい場合に、PETキャリアをキャリアウェブとして使用する。これは、PETの表面粗さが低いためプロセスの後半でキャリアを取り除いた後で、インク受容層の表面光沢度が高くなるからである。上記特許文献5(米国出願第12/323,788号)号に記載するキャリアだけでなく他のキャリアも使用できる。インク受容層としてコーティングした表面の光沢度はBYK Gardner社のTriglossmeterを用いて角度60度で測定した光沢度が70以上となる。当然、表面の光沢度が80超となればさらに望ましく、90超が最も望ましい。このコーティング法としては例えば、ダイコーティングやグラビアコーティングなど、当業者が利用できるさまざまなコーティング法が可能である。その一方でマットフィルムが望ましい用途では、表面粗さが比較的高いキャリアフィルム上にインク受容印刷層をコーティングできる。
【0029】
インク受容層の厚みは、インク受容層の製法によって変動する。一般的に、インク受容層はインクの受容性を良くするためにできるだけ薄くするのがよい。本発明の一実施形態によれば、インク受容層の厚みは60ミクロン未満である。
【0030】
単層のインク受容コーティング層は通常、グラフィック用途のフィルム単体として使用しない。インク受容層のPET側でない方に補強層を付けるのが非常に望ましい。コーティングしたインク受容層を押出コーティングしたポリオレフィン層に組み合わせることによって、ポリオレフィンの多様な物理的特性を有効に利用して、グラフィック用途でのあらゆる要件を満たすことができる。例えば、流延ビニルフィルムは適応性に優れることで知られるが、一方、低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリオレフィン材料も好まれ、所定の厚みになるように押出コーティングして適応性を持たせることができる。カレンダー加工ビニルなどのこれよりも適応性が低いほかの材料については、ポリプロピレン材料の押出コーティングの方が適切である。
【0031】
基体に押出コーティングをするには、図3に示すプロセスを使用する。この場合、インク受容層でコーティングしたキャリアウェブをポリオレフィンで押出コーティングする。まず、ポリオレフィン樹脂が押出機バレル内部の熱や圧力などによって融け、これが押出機のスクリュに押し出されて、押出コーティングダイの狭いスリットを通って流れる。ここでポリオレフィン材料とは、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体または、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンオクタン共重合体、エチレンヘキサン共重合体、およびエチレンブタン共重合体など他のエチレン系共重合体とする。具体的には、ポリオレフィンはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ヘキサン、ブテン、またはオクテンとのエチレン共重合体、ポリプロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、環状オレフィン重合体、環状オレフィン共重合体、メタロセン触媒系ポリオレフィン、これらの熱可塑性プラスチックおよびエラストマーの中から1つ以上選ばれる。別の実施形態では、エチレンおよび酢酸ビニルから成る密接に関係した次の2つの共重合体が本発明にかかるポリオレフィンとして使用される。この2つとは、酢酸ビニルが一般に組成中に含有率が約10〜40%、約50%未満で含まれるエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体と、酢酸ビニルの含有率が組成の約60〜90%で変動する酢酸ビニルエチレン(VAE)共重合体である。ここでEVAは固形材料であり、VAE通常は水性エマルションである。
【0032】
次に、溶融フィルムがダイの下の2つのローラー間のニップに流れ落ちる。この2つのローラーは通常、被駆動の冷却ローラーと、ゴムで覆われた圧延ローラーである。融体が移動中の基体に接触すると、所定の厚みのフィルムを基体上に形成できる。このフィルムは最大1000ft/minの速度でコーティングできる。
【0033】
適切な層間接着を得るためには、ポリオレフィンを押出コーティングする前に、キャリアとコーティングされたインク受容層から成る基体を処理したり下塗りしたりする、任意の工程が必要な場合もある。この処理方法には接着促進層のコーティング、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理またはこれらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。例えば、コロナ処理によって基体が40ダインを超えるようにするのもこの処理の1つの方法である。任意で処理後に、ポリエチレンイミン分散剤などの接着下塗剤を、コロナ処理したインク受容層にインラインでコーティングして乾燥させてから押出コーティングを行うこともできる。
【0034】
さらに、適切な層間接着を得るために、押出機の温度を650°Fにまで上げるのが一般的である。したがってこのプロセスは、これよりかなり低い温度に設定する流延フィルムプロセスとは異なる。このように高温にするためには、押出機バレルの長さ対直径の比率を20:1以上28:1以下にするのが望ましい。バレルが長いほど混ざりが良く内部温度を高くできる。また、バレルが長いほど押出機バレルに取り付ける電熱器を増やせる。
【0035】
押出材料の幅は基体に接触する前に狭くなるので、押出コーティングダイの幅は通常、コーティング対象の基体の幅よりも広い。つまり、ダイの幅よりもかなり幅が狭い基体に押出コーティングをするのが一般的である。このために、調整可能な型枠をダイの端部に挿し込んだりダイの底面に締め付けて固定して使用する。
【0036】
本発明の一実施形態では、本明細書で先に述べたように処理したインク受容印刷層にポリオレフィンを押出コーティングする。押出コーティングした層の厚みは数ミクロンから数百ミクロンまで可能であり、この数値は最終構造に求められる物理的特性によって決まる。一実施形態では、押出コーティングしたポリオレフィンの厚みは例えば、20ミクロン〜100ミクロンである。
【0037】
本発明のプロセスに従って作製したグラフィックフィルム表面は、図1に示すようなグラフィックフィルム積層構造に使用できる。このグラフィックフィルム積層構造には例えば、本明細書で先に述べたプロセスで作製したグラフィックフィルム表面材を備え、この表面材は(光沢があってもよい)インク受容面、ポリオレフィン表面、ポリオレフィン表面上の接着層、および接着層に付着するライナーを備える。この接着剤は例えば、接着積層によって塗布し、接着剤には感圧接着剤を含む。接着剤はハロゲンフリーの接着剤の中から選んでハロゲンフリーのフィルムを作るのが望ましい。ハロゲンフリーの接着剤の例としては、ホットメルトのアクリル接着剤や水性ラテックスアクリル接着剤などのアクリル接着剤がある。この他のハロゲンフリー接着剤には、ホットメルトのゴム接着剤、シリコーン接着剤、熱可塑性エラストマー、その他当分野で知られるハロゲンフリー接着剤や、これらをあらゆる比率で組み合わせたものなどがある。
【0038】
この後で行う接着剤への積層を良くするために、例えば押出コーティングしたポリオレフィン層のコロナ処理を、押出コーティングプロセスのインラインで、または接着積層前にオフラインで行っても良い。場合によっては、少なくとも1つの接着促進用の層を備える複数層を共押出コーティングすることも望ましい。この接着促進層は薄い1層(1um未満)にして、印刷層と補強層、あるいは補強層と感圧接着剤層との間の接着力をさらに高めることができる。
【0039】
本発明のプロセスの例を図2に示す。
【0040】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を説明する。本発明の請求の範囲内の様々な変更は、当業者に自明であり、本発明は以下の実施例に限定されない。特に明記されない限り、以下の実施例に記載される全ての要素、パーセンテージ、および割合は重量を基準としており、本実施例で使用する全ての試薬は、以下に特定する化学物質供給業者から得ており、もしくは得ることができ、または従来の技術により合成することができる。
【0041】
試験方法
【0042】
サンプルの物理的特性をInstronなどの機械特性測定技法を用いてテストする。本発明のフィルムの引張強度および伸び率を判定するために改良したASTM D882を使用する。手順は次のとおりである。
1.試料を、加工方向または加工方向に交差する方向に1インチ×4インチのサイズで切り抜く。
2.フィルムを両端から1インチのところでつかむ。このため両端のつかみ位置間の距離は2インチとなる。
3.クロスヘッド速度を12インチ/分(「ipm」)に設定する。
4.伸び率を機械が報告する。
【0043】
押出コーティング 実施例1
【0044】
TiO混合アクリル製の、1.4milPETに1.4milでコーティングしたインク受容コーティング(IRC)シート(PET/IRC)を最初にIRC側でコロナ処理して50ダイン/cm超の表面エネルギーを確保した。コロナ処理後に、このシートをグラビアシリンダーを使用して下塗りした。ポリエチレンイミン分散剤(Mica社)を水に溶かし固形分2.5%以下となるように作った水性下塗剤を使用した。下塗剤のコーティング重量は0.1g/m2未満であった。
【0045】
EVA共重合体樹脂(AT Plastics社のVA16%含有Ateva AT 1651)を下塗剤の上に押出コーティングした。低い粘度の溶融を得るためと、EVA樹脂のゲル生成を防ぐために押出温度は通常420°Fとした。押出コーティング後、PETキャリアを取り外して光沢面を露出する。こうして作ったサンプル(IRC/下塗剤/EVA)とその特性を別表に示し、市販のAvery流延ビニルフィルムと比較した。
【0046】
【表1】

【0047】
押出コーティング 実施例2
【0048】
上記の実施例1と同じインク受容コーティングシートをコロナ処理して下塗剤をコーティングした。低密度のポリエチレン樹脂(Westlake Polymer社のE6838−850P、密度0.915g/cm3、メルトインデックスは190°C/2.16kgにて12.5g/10min)をベースシートのインク受容コーティング(IRC)側に約600°Fの温度で押出コーティングした。こうして作ったフィルムサンプル(IRC/下塗剤/LDPE)とその特性を別表に示し、Averyグラフィックカレンダー加工ビニルフィルムMPI2000と比較した。
【0049】
【表2】

【0050】
実施例3
【0051】
本実施例の目的は、Avery MPI2000などのカレンダー加工ビニルフィルムにさらに密着する押出コーティング材料を開発することである。TiO混合のフィルムサンプルを作成し、機械的特性および不透明度についてテストした。
【0052】
材料:
a:PP DS6D81(ランダム共重合体、ダウ・ケミカル社)
b:E6838−850P(LDPE、Westlake Polymers社)
c:Ateva 1651(EVA共重合体、AT Plastics社
d:Pro−fax PH835(ホモポリプロピレン、LyondellBasell社)
e:P9H8M−015(ポリプロピレン、Flint Hills Resources社)
【0053】
次の実施例のすべての混合物には15部のTiO混合のPolybatch White P8555SD(A・シュルマン社)を含む。
【0054】
実施例 3−1
【0055】
co−PP/LDPEの混合物から成るフィルムの機械的特性に対するLDPEの影響
【0056】
【表3】

【0057】
SD−標準偏差
【0058】
LDPEを加えるとヤング率および引張強度が低下する。
【0059】
実施例3−2 EVA系フィルムとPP系フィルムの機械的特性の比較
【0060】
【表4】

【0061】
PP系フィルムの方がはるかに硬くて強い。
【0062】
実施例3−3 PPへの添加剤としてのco−PPおよびLDPEの比較
【0063】
【表5】

【0064】
co−PPを加えるとフィルムの硬度を弱める(ヤング率を低下させる)が、他の特性に大きな影響はない。
【0065】
特許請求の範囲、要約、図面を含む本明細書に記載した全ての特徴、および記載した任意の方法または工程中の全てのステップは、この特徴および/またはステップの少なくともいくつかが互いに相容れない組み合わせを除く、いかなる組み合わせを用いても良い。特許請求の範囲、要約、図面を含む本明細書に記載した各特徴は、明示的に別段の定めがある場合を除き、同一、同等、または類似の目的を達成する代替的な特徴に置き換えることができる。このため、明示的に別段の定めがある場合を除き、各特徴は、一般的な一連の同等または類似の特徴の一例が記載されているのみである。
【0066】
本発明は好ましい実施形態に関して記載されているが、当業者は、変更が本発明の請求の範囲内で、形式上及び細部において成され得ると認識する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフィックフィルムを製造するプロセスであって、
a.キャリアウェブ上にインク受容層をコーティングして乾燥させる工程と、
b.工程(a)の前記インク受容層上にポリオレフィン材料を押出コーティングする工程と、
c.前記キャリアウェブを前記インク受容層から取り外して、前記インク受容層の表面を露出する工程と、
を含むプロセス。
【請求項2】
前記キャリアウェブはポリエステルフィルムである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記キャリアウェブはPETである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記工程(c)によって露出した前記インク受容層の表面に光沢がある、請求項1乃至3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記インク受容層は、酢酸ビニル単独重合体、酢酸ビニル共重合体、またはこれらの混合物、アクリル共重合体、またはアクリル共重合体と酢酸ビニル/エチレン共重合体との混合物、酢酸ビニル/エチレン共重合体およびアクリルの混成物、またはポリウレタン含有重合体の中から選ばれる、請求項1乃至4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記ポリオレフィン材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ヘキサン、ブテン、またはオクテンとのエチレン共重合体、ポリプロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、環状オレフィン重合体、環状オレフィン共重合体、メタロセン触媒系ポリオレフィン、またはこれらの熱可塑性プラスチックおよびエラストマーの中から1つ以上選ばれる、請求項1乃至5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記インク受容コーティング層は60ミクロン未満の厚みでコーティングされる、請求項1乃至6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記ポリオレフィン層は20ミクロン〜100ミクロンの厚みで押出コーティングされる、請求項1乃至7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記プロセスは、工程(a)で乾燥させた前記インク受容層の接着性を改善するために、該インク受容層を処理する工程をさらに含む、請求項1乃至8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
前記処理は、接着促進層のコーティング、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理またはこれらの組み合わせの中から選ばれる、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記光沢度は70超である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の前記プロセスによって製造したグラフィックフィルム表面材。
【請求項13】
グラフィックフィルムの積層構造であって、
a.請求項1乃至11のいずれかに記載の前記プロセスによって製造され、インク受容面およびポリオレフィン表面を含む、グラフィックフィルム表面材と、
b.前記ポリオレフィン表面にコーティングされた接着層と、
c.前記接着層に付着するライナーと、
を含む積層構造
【請求項14】
前記接着剤はハロゲンフリー接着剤である、請求項13に記載の積層構造。
【請求項15】
前記グラフィックフィルム表面材の前記インク受容面に光沢がある、請求項13または14に記載の積層構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−518560(P2012−518560A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551321(P2011−551321)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/025370
【国際公開番号】WO2010/099290
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511205046)エイブリィ デニソン コーポレーション (15)
【Fターム(参考)】