押出成形型
【課題】押出成形にて中空孔を有する成形体を得る際に、中空孔に気流を供給すると共にこの中空孔内の内圧が過大になったり中空孔間での内圧の差が大きくなることを防止して、成形体の破損を抑制し、安定した生産を行うことができる押出成形型を提供する。
【解決手段】支持部1と、支持部1から突出する複数の突部2とを具備する。突部2に通気孔17が設けられる。支持部1に流通孔3が設けられる。主通気路20が支持部1における突部2が突設されている領域の長手方向に沿った両側の外縁の外側に前記長手方向に沿って設けられる。分枝通気路21が前記領域の内側にこの領域の短手方向に沿って並行並列に複数設けられ、分枝通気路21の両側の端部が各主通気路20に連通される。各分枝通気路21の断面積Sが、この分枝通気路21に接続されている全ての突部2の通気孔17の断面積の合計をsとした場合に、S≧s/2の関係を満たすように形成されている。
【解決手段】支持部1と、支持部1から突出する複数の突部2とを具備する。突部2に通気孔17が設けられる。支持部1に流通孔3が設けられる。主通気路20が支持部1における突部2が突設されている領域の長手方向に沿った両側の外縁の外側に前記長手方向に沿って設けられる。分枝通気路21が前記領域の内側にこの領域の短手方向に沿って並行並列に複数設けられ、分枝通気路21の両側の端部が各主通気路20に連通される。各分枝通気路21の断面積Sが、この分枝通気路21に接続されている全ての突部2の通気孔17の断面積の合計をsとした場合に、S≧s/2の関係を満たすように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系成形材料等の成形材料を押出成形して中空孔を有する成形体を成形するための押出成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント系成形材料等の成形材料を押出成形して形成される、複数の中空孔23を有する成形体B(図10参照)は、建築物の外壁等として使用されている。
【0003】
このような成形体Bは、例えば図11(a)に示すような押出成形型を用いて製造されていた。図示の押出成形型は、本体型31の成形材料が流通する流路33の押出口36付近に、中空孔23を形成するための中子型32が設けられている。中子型32は、図面の紙面と直交する方向に長い複数の各支持部34に対して、複数の突部35が一列に並んで設けられており、このような中子型32が、成形体Bに設けられる中空孔23の数に応じて複数設けられている。
【0004】
このような押出成形型では、支持部34の後端部において成形材料が上下に完全に分岐して各支持部34の間を流通し、更に複数列の突部35の各列の間に導入される。その後、成形材料は突部35の列の間を流通しながら、本体型31の押出口36から成形材料が押し出されるまでの間に、上下に流動して各列内の突部35間に充填される。流路33は支持部34を紙面の上下に間隔を開けて設けるために支持部34の配置位置では流路33が広くなっており、押出口36にいくに従って徐々に狭くなるように形成されている。
【0005】
また、図11(b)に示すような中子型32も提案されている(特許文献1,2参照)。この中子型32は、先端側に複数のスリット37が形成されてこのスリット37間で中空孔23を形成するための複数の突部35が形成され、また後端側には前記各スリット37の交差位置に連通する複数の導入孔38が設けられている。そして、成形材料は各導入孔38に導入された後、スリット37の交差部分からスリット37内に供給されるようになっている。このため、成形材料は各突部2の周囲の複数箇所から突部35間に供給されて、この突部35の周囲に均一に充填されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−254345号公報
【特許文献2】特開2006−51682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記例示したような押出成形型で成形体材料を押出成形する場合、中空孔23を有する成形体Bが連続して形成され、得られた成形体Bの中空孔23の内部には大気が流入することによりこの中空孔23の内圧は成形体Bの外部と同等なものとなる。
【0007】
しかし、成形材料の押出成形過程において中空孔23の一部が何らかの不具合により埋まってしまった場合には、それ以後に形成される中空孔23の内部には空気が供給されず、その内部の圧力が非常に低くなってしまうことがある。このような場合、形成された成形体Bは中空孔23内と外部との圧力差により破損が生じやすい状態となり、成形中に中空孔23が順次潰れていって中空孔23が形成されなかったり、成形体Bの切断時に荷重をかけた場合などに成形体Bが破損してしまったりするおそれがある。
【0008】
このような不具合を防止するため、例えば上記のような押出成形型の突部35の先端から気流を流出させることにより成形時に中空孔23内に気流を供給することが考えられる。このようにすれば、万が一中空孔23が埋まってしまっても突部35から供給される気流によって中空孔23内の圧力が低くなることを防止することができる。
【0009】
しかし、多数の中空孔23を密に形成するために突部35を密に形成すると、押出成形型内においてこの突部35に気流を供給するため通気路を形成する場合、この通気路が微細なものとなって流路抵抗が大きくなるおそれがある。この場合、通気路に気流を流通させるためには大きな圧力で気流を供給する必要が生じ、各突部から流出する気流の圧力が大きくなって中空孔23内の圧力が高くなり、成形体Bが膨張して破損が生じるおそれがある。また気流が通気路を介して各突部から流出するまでの間に、各突部ごとに気流の経路長に差があると、各突部から流出する気流間で圧力に差が生じるが、前記のように通気路への気流の供給圧力が大きくなると各突部間での流出する気流間の圧力差が大きく成りやすくなり、このため成形体B内の中空孔23間の内圧の差が大きくなって、成形体Bの破損の原因となるおそれもある。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、セメント系成形材料等の成形材料を押出成形して中空孔を有する成形体を成形するにあたり、押出成形時に前記中空孔内に気流を供給してこの中空孔の内圧が低下することを抑制すると共に、この気流によって各中空孔内の内圧が過剰に大きくなったり、中空孔同士の内圧の差が大きくなったりすることを防止して、成形体に破損が生じることを抑制し、安定した生産を行うことができる押出成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る押出成形型Aは、成形材料を押出成形することにより複数の中空孔23を有する成形体Bを成形するためのものである。この押出成形型Aは、成形材料の流路をその流通方向の順方向側と逆方向側とに仕切る支持部1と、この支持部1から前記流通方向の順方向側に向けて突出する複数の突部2とを具備する。前記突部2にはこの突部2を前記流通方向に貫通する通気孔17が設けられる。前記支持部1には、この支持部1を前記流通方向に貫通する流通孔3と、外部から供給される気流が流通する主通気路20と、この主通気路20から分岐して前記通気孔17に連通する分枝通気路21とが設けられる。前記主通気路20は支持部1における突部2が突設されている領域の長手方向に沿った両側の外縁の外側に前記長手方向に沿って設けられる。前記分枝通気路21は前記領域の内側にこの領域の短手方向に沿って並行並列に複数設けられると共にこの分枝通気路21の両側の端部がそれぞれ各主通気路20に連通される。前記各分枝通気路21の断面積Sが、この分枝通気路21に接続されている全ての突部2の通気孔17の断面積の合計をsとした場合に、S≧s/2の関係を満たすように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形材料を押出成形して成形体Bを得るにあたり、成形材料が支持部1の流通孔3を通過して突部2を通過することによって、中空孔23を有する成形体Bを成形することができる。また、この成形時に主通気路20、分枝通気路21及び通気孔17を介して中空孔23に気流を流出することにより中空孔23の内圧が低減することを防止することができて、前記内圧が外部の圧力よりも小さくなることによる成形体Bの破損を抑制することができる。また、分枝通気路21の長さを短く形成し、各分枝通気路21に接続される突部2の通気孔17の数を低減し、この分枝通気路21の両端からそれぞれ気流が供給されるようにし、更にこの分枝通気路21の断面積を充分に大きく形成することで、押出成形型A内を気流が流通する際の流路抵抗を低減することができ、押出成形型Aへ気流を大気圧近傍の低圧で供給しても各通気孔17から気流を流出させることができて中空孔23の内圧が過大になることを抑制すると共に、押出成形型Aに供給された気流が各通気孔17から流出されるまでの経路長の差によって生じる各通気孔17から流出する気流同士の間の圧力差を低減することができ、中空孔23の内圧が外部の圧力よりも過大になったり中空孔23の内圧の差が大きくなったりすることによる成形体Bの破損を抑制することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜9を示して説明する。
【0014】
図示の押出成形型Aは、図3,4,7〜9に示すように、口金部8、ベース部9、支持部1及び突部2(中空ピン)にて構成されている。
【0015】
口金部8は両面が開口する筒状に形成されており、先端側(成形材料の流通方向の順方向側。以下、順方向側という。)の開口から押出成形後の成形体Bが外部に押し出されるようになっている。また、口金部8の基端側(成形材料の流通方向の逆方向側。以下、逆方向側という)の端部の外周からは、外周方向に向けて鍔部10が延出されている。この口金部8の内部の中空部11は成形材料の流路を構成し、この中空部11内において成形材料が口金部8の逆方向側から順方向側に流通するようになっている。図示の例では、板状の成形体Bを成形するために、前記中空部11の断面形状は一対の対向する辺が、他の一対の対向する辺よりも長い断面矩形状に形成されている。
【0016】
ベース部9は一面側が順方向側、他面側が逆方向側に配置される板状体にて形成されている。このベース部9には、上記上記口金部8の中空部11と合致する位置に、逆方向側から順方向側に貫通する中空部12が設けられている。この中空部12も成形材料の流路を構成し、この中空部12内において成形材料がベース部9の逆方向側から順方向側へ流通するようになっている。
【0017】
支持部1は上記口金部8の鍔部10とベース部9との間に介在するように設けられており、前記口金部8の中空部11とベース部9の中空部12とで構成される成形材料の流路をその流通方向の順方向側と逆方向側とに仕切るように設けられている。この支持部1は板状体にて形成されており、その順方向側の面が鍔部10の逆方向側の面と重なると共に逆方向側の面がベース部9の順方向側の面と重なるようになっている。この支持部1の順方向側の面には、複数の突部2が成形材料の流通方向に沿って突設されている。この突部2は口金部8の中空部11内に、支持部1から成形材料の流通方向の順方向側に向けて突出する状態で収容されている。また、支持部1にはこの支持部1を成形材料の流通方向に貫通する複数の流通孔3が設けられており、ベース部9の中空部12と口金部8の中空部11との間ではこの流通孔3を成形材料が流通するようになっている。
【0018】
また、これらの口金部8の鍔部10、支持部1、並びにベース部9には、互いに合致する位置に複数の連通孔13が穿設されており、この連通孔13を、口金部8、支持部1及びベース部9を重ねて押出成形型Aを構成する際の位置合わせの基準としたり、この連通孔13にボルト等の適宜の固着具を挿通して押出成形機に取着するために利用したりすることができる。
【0019】
本実施形態における支持部1及び突部2の構成について、更に詳細に説明する。
【0020】
突部2は並行並列に複数本突設されている。図示の突部2は円柱状であるが、この突部2は成形体Bに形成される中空孔23の形状に応じて六角柱状等の他の適宜の形状に形成される。複数の突部2は互いに間隔をあけて設けられ、且つ平面六方格子状に配列するように設けられている。すなわち、図5等に示すように、隣り合う突部2間の間隔は一定となるように形成され、一つの突部2の周囲を六個の突部2が正六角形状に囲むと共に中心の突部2と周囲の各突部2との間の間隔、並びに周囲の各突部2間の間隔が全て等しくなるように形成されている。尚、図5では一部の突部2を破線で示している。各突部2は円柱状に形成されており、その順方向側の端部には直径が基部側よりも大きくなった大径部14が形成され、また図1,7,8等に示すように各突部2の逆方向側の部分と大径部14との間には、直径が徐々に大きくなる拡径部15が形成されている。また、全ての突部2の端面は面一に形成されている。また、突部2の逆方向側の基端部にはこの基端部よりも順方向側と比べて直径がより小さくなった接続部16が形成されている(図9参照)。また、この突部2には図7〜9等に示すように、その内部を逆方向側から順方向側に成形材料の流通方向に沿って貫通する通気孔17が設けられている。
【0021】
ここで、隣り合う突部2間の間隔(大径部14間の間隔)は適宜設定され、この間隔を小さくすれば成形体Bに形成される中空孔23の間隔が小さくなって軽量化に寄与することができるが、成形体Bに充分な強度を付与できる程度の間隔をあけることが好ましく、例えば成形材料としてセメント系成形材料を用いる場合には、この間隔を1.5mm以上とすることが好ましい。また、通気孔17の内径は1mm以上であることが好ましい。
【0022】
一方、支持部1は、その一面側が順方向側、他面側が逆方向側に配置される板状体にて形成されている。この支持部1は、その順方向側に配置される板状の前部体1a(図1,2参照)と、逆方向側に配置される板状の後部体1bとを重ね合わせて構成されている。
【0023】
前部体1aには、突部2の突設位置と合致する位置に、順方向側の面と逆方向側の面とを貫通する複数の接続孔18が設けられている。すなわち、複数の接続孔18の開口は、前部体1aの両面でそれぞれ平面六方格子状に配列し、且つ突部2の配置と合致する矩形状の領域の内側に設けられる。接続孔18の内径は突部2の接続部16の内径と合致し、この、突部2の接続部16を前記接続孔18に嵌合することにより突部2が支持部1に突設されている(図9等参照)。ここで、接続部16の長さ寸法は接続孔18の長さ寸法よりも小さくなるように形成されており、このため接続孔18の逆方向側の部分は逆方向側の面に開口する中空な接続空間19として形成される。
【0024】
また、支持部1には、気流の流路となる通気路20,21として、主通気路20と分枝通気路21とが設けられている。
【0025】
主通気路20は、前部体1aの逆方向側の面における、上記接続孔18の開口が設けられている矩形状の領域(突部2が突設されている領域)の外側に、逆方向側の面に開口するように溝状に凹設されている。この主通気路20は前記矩形状の領域の対向する二つの長辺の外側にそれぞれ前記長辺に沿って設けられている。
【0026】
また、分枝通気路21は、上記二つの主通気路20の間に、両端で各主通気路20に連通すると共に逆方向側の面に開口するように、並行並列に複数凹設されている。この分枝通気路21は接続孔18の開口が設けられている矩形状の領域の内側に形成され、且つ各分枝通気路21は前記領域内の複数の接続孔18の接続空間19を順次横切るように設けられている。これにより、全ての接続孔18の接続空間19がいずれかの分枝通気路21に連通するようになっている。
【0027】
上記主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19の逆方向側の開口は後部体1bによって閉塞されており、このため主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19は支持部1の内部に設けられる。このように支持部1を前部体1aと後部体1bとで形成すると共に主通気路20及び分枝通気路21や接続空間19を前部体1aと後部体1bとに挟まれた空間に形成することで、支持部1の内部に複雑な形態を有する主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19を容易に形成することが可能となる。ここで、図示の形態では前部体1aを凹設して主通気路20、分枝通気路21、接続空間19を逆方向側の面に開口するように形成すると共にこの主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19の開口を後部体1bで閉塞するようにしているが、このような形態に限られず、例えば後部体1bに主通気路20、分枝通気路21、接続空間19の少なくともいずれかを凹設して前部体1aで閉塞しても良い。
【0028】
上記主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19の逆方向側の開口は後部体1bによって閉塞されており、このため主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19は支持部1の内部に設けられる。このように支持部1を前部体1aと後部体1bとで形成すると共に前部体1aに主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19を逆方向側の面に開口するように形成することで、支持部1の内部に複雑な形態を有する主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19を容易に形成することが可能となる。
【0029】
また、主通気路20の形成位置は上記接続孔18(接続空間19)の開口が設けられている領域(突部2が突設されている領域)の外側であればよく、分枝通気路21の形成位置は前記領域の内側で全ての接続空間19を横切る位置であればよいが、上記のように主通気路20を前記領域の長手方向に沿った両側の外縁の外側にそれぞれ前記長手方向に沿って設けると共に、この主通気路20を結ぶように前記領域の内側に複数の分枝通気路21を、前記領域の短手方向に沿って並行並列に複数個形成すれば、分枝通気路21の経路長を可能な限り短く形成することができる。
【0030】
また、前部体1aの内部には、主通気路20に連通すると共に前部体1aの外周面で開口して支持部1の外部に連通する給気路22が設けられている。この給気路22は各主通気路20ごとに二つずつ設けられており、合計四個の給気路22が設けられている。
【0031】
また、この支持部1に設けられる複数の流通孔3は、その逆方向側の端部が支持部1の逆方向側の面で開口して上記ベース部9の中空部12と連通し、順方向側の端部が支持部1の順方向側の面で開口して上記口金部8の中空部11と連通し、支持部1を成形材料の流通方向に貫通するように形成されている。
【0032】
この複数の流通孔3は、支持部1から突設されている複数の各突部2の周囲を囲む位置に設けられ、且つこの突部2の周囲を均等に囲むように設けられる。すなわち、各突部2の周囲に設けられた複数の流通孔3は、前記突部2と各流通孔3との間隔がすべて等しくなると共に、流通孔3同士の間隔がすべて等しくなるように形成される。図示の例では各流通孔3は三個の突部2に囲まれた中心位置に形成されると共に、各突部2は正六角形状に配置された六個の流通孔3に囲まれた中心位置に形成され、これにより各突部2とその周囲の各流通孔3との間の間隔が一定であると共に、この周囲の各流通孔3同士の間隔が一定になるように形成されている。
【0033】
この複数の各流通孔3には、順方向側の端部の内周面に、この順方向側に向かって内径が増大する流出側テーパ部4が設けられている。この流出側テーパ部4は支持部1の前部体1aに設けられている。また、この各流通孔3の逆方向側の端部の内周面には、この逆方向側に向かって内径が増大する流入側テーパ部5が設けられている。この流入側テーパ部5は支持部1の後部体1bに設けられている。
【0034】
このとき、支持部1の順方向側の面では隣り合う流通孔3同士の流出側テーパ部4同士が隣接するように形成されており、複数個(図示では六個)の流出側テーパ部4にて囲まれた位置に、接続孔18が形成される平坦な領域24が確保されている(図5参照)。
【0035】
また、図4,6,8等に示されるように、支持部1の逆方向側の面では隣り合う流通孔3の流入側テーパ部5同士が隣接するように形成されており、これにより隣り合う流出側テーパ部4同士の境界に尾根部6が形成される。この尾根部6の両側は流出側テーパ部4が形成されていることからそれぞれ順方向側に向けて下り傾斜するようになっている。またこの尾根部6は逆方向側からみて直線状に形成され、且つこの尾根部6の稜線が順方向側に向けて凹入するように形成される。このとき、流通孔3は複数個(図示では三個)の尾根部6に囲まれた位置に形成されている。また、複数個(図示では六個)の尾根部6の端部同士が交わる位置(接続孔18の形成位置と合致する位置)では、逆方向側へ向けて突出する頂部7が形成されている。図示の例では頂部7の先端には小面積の平坦な領域が形成されているが、更に好ましくはこの頂部7の先端を尖形状に形成する。
【0036】
尚、図1では、後部体1bにおける流入側テーパ部5、尾根部6及び頂部7の図示を省略している。
【0037】
次に、このように形成される押出成形型Aを用いた成形体Bの成形について説明する。
【0038】
上記のような押出成形型Aを適宜の押出成形装置に取り付けて、成形材料に押出圧力をかけてベース部9側から押出成形型A内の成形材料の流路へ供給し、口金部8の順方向側開口から押し出して成形体Bを成形する。
【0039】
成形材料としては、押出成形に用いられる材料であれば特に制限されないが、特にセメント系成形材料を用いることができる。セメント系成形材料2としては適宜の組成のものを用いることができるが、例えばセメントに必要に応じて骨材、繊維、着色剤等を配合して水と混練することによって調製されるものであり、セメントとしては普通ポルトランドセメント、スラグセメント、アルミナセメント、早強セメントなど任意のものを用いることができる。また骨材としては、シリカ、珪石粉、珪砂、フライアッシュ、スラグ、砕石等を用いることができる。繊維としてはポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、パルプ、カーボン繊維、綿、麻、金属繊維等を用いることができる。さらに着色剤としては鉄黒、カーボンブラック、酸化クロム等を用いることができる。
【0040】
また、特にセメント系成形材料として、油性物質を含有すると共に更に必要に応じて非イオン性界面活性剤、各種アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等の乳化剤(逆乳化剤)を含有させた逆エマルション(W/Oエマルション)を形成するものを用いることも好ましい。このような逆エマルションタイプのセメント系成形材料は一定の保形性を有するため中空孔23を有する成形体Bを成形した場合にその形状を維持することができ、またこの押出成形型Aによれば後述するように過大な押圧力がかかることなく押出成形を行うことができて、成形時の逆エマルション構造の破壊が抑制され、その後の養生硬化に支障をきたすようなことを防止することができる。
【0041】
上記油性物質としては、水と逆エマルションを形成しうるものであれば、特に制限はなく、通常疎水性の液状物質が利用され、例えば、トルエン、キシレン、灯油、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。このうち、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等の重合性二重結合を有するもの(ビニル単量体)を使用する場合は、基材1の硬化成形の際に油性物質の重合を促進するために、有機過酸化物や過硫酸塩等の重合開始剤や、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の架橋剤を併用することもできる。
【0042】
この押出成形において、成形材料が支持部1及び突部2を通過する際には、成形材料はまず支持部1の各流通孔3に流入して分岐され、この流通孔3を通過した後、複数の突部2間を通過し、隣り合う突部2の間において各突部2の周囲を成形材料が突部2の突出方向に沿って並列に流動する。このとき、突部2の周囲を囲む位置に均等に配置されるように形成された流通孔3から成形材料が流出することで、突部2の周囲には成形材料の均等な流動が生じる。このため、成形材料を高い押出圧力をかけることなく突部2の周りに充分に充填することができる。また、このように成形材料が突部2間を流動する間、突部2の周囲を流れる成形材料が馴染んで一体化する。
【0043】
このような成形材料の流動の過程においては、成形材料がベース部9の中空部12から流通孔3に流入する際には、支持部1の逆方向側の面に形成された尾根部6と頂部7とによって成形材料が容易に分岐して流通孔3に導かれやすくなっている。特に頂部7の先端が尖形状に形成されていると、この頂部7における成形材料の堆積が抑制され、成形材料の流通孔3への流入が更に促進される。更に、流通孔3の逆方向側端部に流入側テーパ部5が設けられていることによっても、成形材料の流通孔3への流入が促進される。
【0044】
このため、成形材料が流通孔3を通過するために必要とされる押出圧力を低減することができ、成形材料に加わる圧力を抑制することが可能となる。
【0045】
また、成形材料が各流通孔3から口金部8の中空部11側に流出する際には、流通孔3に流出側テーパ部4が設けられていることで、成形材料が横方向に広がりながら流出することとなる。このため、成形材料が流通孔3から流出する際の流動性が向上して成形材料の堆積を抑制することができる。また、成形材料が突部2間を通過する際での突部2の周りでの充填性が更に向上すると共に、突部2の周囲での成形材料間の馴染み性を更に向上することができる。
【0046】
そして、この成形材料が口金部8の順方向側の開口から押し出されることにより、図10に示すような中空孔23を有する成形体Bが形成される。図10(a)は本実施形態のように円柱状の突部2を適用する場合に得られる成形体Bを示し、断面円形状の中空孔23を有する。また、突部2として六角柱状のものを適用する場合には、図10(b)に示すような、断面六角形状の中空孔23を有する成形体Bを得ることができ、その他適宜の形状の突部2を採用することで、所望の形状の中空孔23を有する成形体Bを得ることができる。
【0047】
得られた成形体Bは、必要に応じて所望の寸法となるように切断し、また特にセメント系成形材料にて形成する場合には、必要に応じて養生硬化させる。
【0048】
また、上記のような押出成形過程においては、各給気路22の支持部2の外部の開口からそれぞれエアー等の気流を供給する。このため、供給された気流は各給気路22から各主通気路20に流入し、更に複数の各分枝通気路21に分岐して流入する。このとき複数の各分枝通気路21にはその両側の端部からそれぞれ気流が流入する。そしてこの気流は各分枝通気路21から接続空間19を介して各突部2内の通気孔17に流入し、この各突部2の順方向側端面の開口から流出する。このため、成形体Bに形成される中空孔23には、エア等の気流が供給されることとなる。
【0049】
このように成形体Bの中空孔23に気流を供給すると、中空孔23内の圧力が低下することを防止し、この中空孔23が埋まってしまわないようにすることができる。
【0050】
また、成形材料の押出成形過程において中空孔23の一部が何らかの不具合により埋まってしまった場合には、それ以後に形成される中空孔23の内部には空気が供給されずその内部の圧力が非常に低くなってしまうことがある。このような場合、形成された成形体Bは中空部内と外部との圧力差により破損が生じやすい状態となってしまう。このため、成形中に中空孔23が順次潰れていって中空孔23が形成されなくなるおそれがあり、また中空孔23が形成されたとしても成形体Bを切断するために荷重をかけた場合などに成形体Bが破損してしまうおそれがある。しかしながら、上記のように成形体Bの中空孔23に気流を供給すると、たとえ中空孔23の一部が埋まってしまったとしても中空孔23の内部の圧力が低下することを防止することができ、前記のような成形体Bの破損を防止することができる。
【0051】
ここで、中空孔23内に供給される気流の圧力が高すぎると中空孔23の内部の圧力と成形体Bの外部の圧力との差によって逆に成形体Bが破損するおそれがあるため、この気流の圧力は大気圧近傍の圧力であることが好ましい。このとき給気路22から、主通気路20、分枝通気路21、接続空間19及び通気孔17を介して流出する気流の流路抵抗が大きい場合には、大気圧に近い低圧で気流を供給することが困難となる。
【0052】
しかしながら、本実施形態では既述の通り分枝通気路21の経路長をできるだけ短く形成しており、また気流は分枝通気路21の両端からそれぞれ供給されるため、分枝通気路21における気流の経路長は最大でも分枝通気路21の長さの1/2に留まることとなる。このため気流の全体の経路長が短くなり、流路抵抗が低減される。また、各分枝通気路21に接続されている突部2の通気孔17の個数を低減することができることで、流路抵抗が更に低減される。また、このように分枝通気路21の両側から気流を供給するため、たとえ分枝通気路21の途中で詰まりが生じたとしても気流を各通気孔17に安定して供給することができる。
【0053】
また、各突部2の中空孔23から流出する気流同士の間で、中空孔23から流出するまでの流路抵抗の差が大きくなると、各気流間で圧力の差が大きくなり、成形体Bに形成される各中空孔23内の圧力差が大きくなって、成形体Bの破損の原因となるおそれがある。
【0054】
しかしながら、上記流路抵抗の差は、主として気流が分枝通気路21に流入してから各突部2の通気孔17に流入するまでの間の経路長の差によって生じるが、上記のように分枝通気路21における気流の経路長が短くなるようにすることで、気流の経路長の差が小さくなるようにすることができ、これにより各突部2の中空孔23から流出する気流間の圧力差を低減することができる。
【0055】
また、分枝通気路21の長手方向と直交する面(気流の流通方向と直交する面)の断面積をできるだけ大きくすることにより分枝通気路21における流路抵抗を低減すれば、全体の流路抵抗の低減に寄与することができ、気流を更に低圧で供給することができるようになる。また、分枝通気路21における経路長の相違による流路抵抗の差を小さくすることができるため、各突部2の中空孔23から流出する気流間での流路抵抗の差も小さくなり、この気流間の圧力差を更に低減することができる。この場合の分枝通気路21の断面積は、各分枝通気路21につき、この分枝通気路21の断面積をS、この分枝通気路21における気流の流入位置の個数をn、この分枝通気路21に接続されている全ての突部2の通気孔17の長手方向と直交する面(気流の流通方向と直交する面)の断面積の合計をsとすると、S≧s/nの関係を有することが必要であり、本実施形態では分枝通気路21の両端からそれぞれ気流が流入するため、n=2となり、S≧s/2の関係を有する必要がある。ここで、通気孔17の断面積は突部2の断面積、すなわち成形体Bに形成される中空孔23の径に依存し、成形体Bの中空孔23の径が小さいと通気孔17の断面積も小さくする必要があるため、成形体Bに形成される中空孔23の径に応じて分子通気路21の断面積を設計する必要がある。
【0056】
上記のような分枝通気路21を形成するにあたり、成形体Bに中空部23を密に形成するために突部2を密に形成する場合には、通気孔17も密に形成されることとなり、分枝通気路21は前記通気孔17の間を縫って形成する必要があるため、分枝通気路21の幅を充分に大きく形成することは困難になる。このため、分枝通気路21の断面積を充分に大きくなるように形成するためにはこの分枝通気路21の深さを充分な大きさに確保する必要がある。そのためには前部体1aの厚みを充分に厚くなるように形成することが好ましい。
【0057】
また、更に主通気路20の長手方向と直交する面(気流の流通方向と直交する面)の断面積をできるだけ大きくすることにより主通気路21における流路抵抗を低減すれば、全体の流路抵抗を更に低減することができる。特に、各主通気路20につき、この主通気路20の断面積をS′、この主通気路20に連通している全ての分枝通気路21の断面積の合計をs′とすると、S′≧s′の関係を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態の一例における、支持部及び突部の構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】同上の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図4】同上の他の斜視図である。
【図5】同上の一部の正面図である。
【図6】同上の一部の背面図である。
【図7】同上の一部破断した斜視図である。
【図8】同上の一部破断した他の斜視図である。
【図9】同上の一部の断面図である。
【図10】(a)及び(b)は成形体の例を示す一部破断した斜視図である。
【図11】(a)は従来技術の一例を示す断面図、(b)は従来技術の他例を示す一部破断した斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
A 押出成形型
B 成形体
1 支持部
2 突部
3 流通孔
17 通気孔
20 主通気路
21 分枝通気路
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系成形材料等の成形材料を押出成形して中空孔を有する成形体を成形するための押出成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント系成形材料等の成形材料を押出成形して形成される、複数の中空孔23を有する成形体B(図10参照)は、建築物の外壁等として使用されている。
【0003】
このような成形体Bは、例えば図11(a)に示すような押出成形型を用いて製造されていた。図示の押出成形型は、本体型31の成形材料が流通する流路33の押出口36付近に、中空孔23を形成するための中子型32が設けられている。中子型32は、図面の紙面と直交する方向に長い複数の各支持部34に対して、複数の突部35が一列に並んで設けられており、このような中子型32が、成形体Bに設けられる中空孔23の数に応じて複数設けられている。
【0004】
このような押出成形型では、支持部34の後端部において成形材料が上下に完全に分岐して各支持部34の間を流通し、更に複数列の突部35の各列の間に導入される。その後、成形材料は突部35の列の間を流通しながら、本体型31の押出口36から成形材料が押し出されるまでの間に、上下に流動して各列内の突部35間に充填される。流路33は支持部34を紙面の上下に間隔を開けて設けるために支持部34の配置位置では流路33が広くなっており、押出口36にいくに従って徐々に狭くなるように形成されている。
【0005】
また、図11(b)に示すような中子型32も提案されている(特許文献1,2参照)。この中子型32は、先端側に複数のスリット37が形成されてこのスリット37間で中空孔23を形成するための複数の突部35が形成され、また後端側には前記各スリット37の交差位置に連通する複数の導入孔38が設けられている。そして、成形材料は各導入孔38に導入された後、スリット37の交差部分からスリット37内に供給されるようになっている。このため、成形材料は各突部2の周囲の複数箇所から突部35間に供給されて、この突部35の周囲に均一に充填されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−254345号公報
【特許文献2】特開2006−51682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記例示したような押出成形型で成形体材料を押出成形する場合、中空孔23を有する成形体Bが連続して形成され、得られた成形体Bの中空孔23の内部には大気が流入することによりこの中空孔23の内圧は成形体Bの外部と同等なものとなる。
【0007】
しかし、成形材料の押出成形過程において中空孔23の一部が何らかの不具合により埋まってしまった場合には、それ以後に形成される中空孔23の内部には空気が供給されず、その内部の圧力が非常に低くなってしまうことがある。このような場合、形成された成形体Bは中空孔23内と外部との圧力差により破損が生じやすい状態となり、成形中に中空孔23が順次潰れていって中空孔23が形成されなかったり、成形体Bの切断時に荷重をかけた場合などに成形体Bが破損してしまったりするおそれがある。
【0008】
このような不具合を防止するため、例えば上記のような押出成形型の突部35の先端から気流を流出させることにより成形時に中空孔23内に気流を供給することが考えられる。このようにすれば、万が一中空孔23が埋まってしまっても突部35から供給される気流によって中空孔23内の圧力が低くなることを防止することができる。
【0009】
しかし、多数の中空孔23を密に形成するために突部35を密に形成すると、押出成形型内においてこの突部35に気流を供給するため通気路を形成する場合、この通気路が微細なものとなって流路抵抗が大きくなるおそれがある。この場合、通気路に気流を流通させるためには大きな圧力で気流を供給する必要が生じ、各突部から流出する気流の圧力が大きくなって中空孔23内の圧力が高くなり、成形体Bが膨張して破損が生じるおそれがある。また気流が通気路を介して各突部から流出するまでの間に、各突部ごとに気流の経路長に差があると、各突部から流出する気流間で圧力に差が生じるが、前記のように通気路への気流の供給圧力が大きくなると各突部間での流出する気流間の圧力差が大きく成りやすくなり、このため成形体B内の中空孔23間の内圧の差が大きくなって、成形体Bの破損の原因となるおそれもある。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、セメント系成形材料等の成形材料を押出成形して中空孔を有する成形体を成形するにあたり、押出成形時に前記中空孔内に気流を供給してこの中空孔の内圧が低下することを抑制すると共に、この気流によって各中空孔内の内圧が過剰に大きくなったり、中空孔同士の内圧の差が大きくなったりすることを防止して、成形体に破損が生じることを抑制し、安定した生産を行うことができる押出成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る押出成形型Aは、成形材料を押出成形することにより複数の中空孔23を有する成形体Bを成形するためのものである。この押出成形型Aは、成形材料の流路をその流通方向の順方向側と逆方向側とに仕切る支持部1と、この支持部1から前記流通方向の順方向側に向けて突出する複数の突部2とを具備する。前記突部2にはこの突部2を前記流通方向に貫通する通気孔17が設けられる。前記支持部1には、この支持部1を前記流通方向に貫通する流通孔3と、外部から供給される気流が流通する主通気路20と、この主通気路20から分岐して前記通気孔17に連通する分枝通気路21とが設けられる。前記主通気路20は支持部1における突部2が突設されている領域の長手方向に沿った両側の外縁の外側に前記長手方向に沿って設けられる。前記分枝通気路21は前記領域の内側にこの領域の短手方向に沿って並行並列に複数設けられると共にこの分枝通気路21の両側の端部がそれぞれ各主通気路20に連通される。前記各分枝通気路21の断面積Sが、この分枝通気路21に接続されている全ての突部2の通気孔17の断面積の合計をsとした場合に、S≧s/2の関係を満たすように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形材料を押出成形して成形体Bを得るにあたり、成形材料が支持部1の流通孔3を通過して突部2を通過することによって、中空孔23を有する成形体Bを成形することができる。また、この成形時に主通気路20、分枝通気路21及び通気孔17を介して中空孔23に気流を流出することにより中空孔23の内圧が低減することを防止することができて、前記内圧が外部の圧力よりも小さくなることによる成形体Bの破損を抑制することができる。また、分枝通気路21の長さを短く形成し、各分枝通気路21に接続される突部2の通気孔17の数を低減し、この分枝通気路21の両端からそれぞれ気流が供給されるようにし、更にこの分枝通気路21の断面積を充分に大きく形成することで、押出成形型A内を気流が流通する際の流路抵抗を低減することができ、押出成形型Aへ気流を大気圧近傍の低圧で供給しても各通気孔17から気流を流出させることができて中空孔23の内圧が過大になることを抑制すると共に、押出成形型Aに供給された気流が各通気孔17から流出されるまでの経路長の差によって生じる各通気孔17から流出する気流同士の間の圧力差を低減することができ、中空孔23の内圧が外部の圧力よりも過大になったり中空孔23の内圧の差が大きくなったりすることによる成形体Bの破損を抑制することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜9を示して説明する。
【0014】
図示の押出成形型Aは、図3,4,7〜9に示すように、口金部8、ベース部9、支持部1及び突部2(中空ピン)にて構成されている。
【0015】
口金部8は両面が開口する筒状に形成されており、先端側(成形材料の流通方向の順方向側。以下、順方向側という。)の開口から押出成形後の成形体Bが外部に押し出されるようになっている。また、口金部8の基端側(成形材料の流通方向の逆方向側。以下、逆方向側という)の端部の外周からは、外周方向に向けて鍔部10が延出されている。この口金部8の内部の中空部11は成形材料の流路を構成し、この中空部11内において成形材料が口金部8の逆方向側から順方向側に流通するようになっている。図示の例では、板状の成形体Bを成形するために、前記中空部11の断面形状は一対の対向する辺が、他の一対の対向する辺よりも長い断面矩形状に形成されている。
【0016】
ベース部9は一面側が順方向側、他面側が逆方向側に配置される板状体にて形成されている。このベース部9には、上記上記口金部8の中空部11と合致する位置に、逆方向側から順方向側に貫通する中空部12が設けられている。この中空部12も成形材料の流路を構成し、この中空部12内において成形材料がベース部9の逆方向側から順方向側へ流通するようになっている。
【0017】
支持部1は上記口金部8の鍔部10とベース部9との間に介在するように設けられており、前記口金部8の中空部11とベース部9の中空部12とで構成される成形材料の流路をその流通方向の順方向側と逆方向側とに仕切るように設けられている。この支持部1は板状体にて形成されており、その順方向側の面が鍔部10の逆方向側の面と重なると共に逆方向側の面がベース部9の順方向側の面と重なるようになっている。この支持部1の順方向側の面には、複数の突部2が成形材料の流通方向に沿って突設されている。この突部2は口金部8の中空部11内に、支持部1から成形材料の流通方向の順方向側に向けて突出する状態で収容されている。また、支持部1にはこの支持部1を成形材料の流通方向に貫通する複数の流通孔3が設けられており、ベース部9の中空部12と口金部8の中空部11との間ではこの流通孔3を成形材料が流通するようになっている。
【0018】
また、これらの口金部8の鍔部10、支持部1、並びにベース部9には、互いに合致する位置に複数の連通孔13が穿設されており、この連通孔13を、口金部8、支持部1及びベース部9を重ねて押出成形型Aを構成する際の位置合わせの基準としたり、この連通孔13にボルト等の適宜の固着具を挿通して押出成形機に取着するために利用したりすることができる。
【0019】
本実施形態における支持部1及び突部2の構成について、更に詳細に説明する。
【0020】
突部2は並行並列に複数本突設されている。図示の突部2は円柱状であるが、この突部2は成形体Bに形成される中空孔23の形状に応じて六角柱状等の他の適宜の形状に形成される。複数の突部2は互いに間隔をあけて設けられ、且つ平面六方格子状に配列するように設けられている。すなわち、図5等に示すように、隣り合う突部2間の間隔は一定となるように形成され、一つの突部2の周囲を六個の突部2が正六角形状に囲むと共に中心の突部2と周囲の各突部2との間の間隔、並びに周囲の各突部2間の間隔が全て等しくなるように形成されている。尚、図5では一部の突部2を破線で示している。各突部2は円柱状に形成されており、その順方向側の端部には直径が基部側よりも大きくなった大径部14が形成され、また図1,7,8等に示すように各突部2の逆方向側の部分と大径部14との間には、直径が徐々に大きくなる拡径部15が形成されている。また、全ての突部2の端面は面一に形成されている。また、突部2の逆方向側の基端部にはこの基端部よりも順方向側と比べて直径がより小さくなった接続部16が形成されている(図9参照)。また、この突部2には図7〜9等に示すように、その内部を逆方向側から順方向側に成形材料の流通方向に沿って貫通する通気孔17が設けられている。
【0021】
ここで、隣り合う突部2間の間隔(大径部14間の間隔)は適宜設定され、この間隔を小さくすれば成形体Bに形成される中空孔23の間隔が小さくなって軽量化に寄与することができるが、成形体Bに充分な強度を付与できる程度の間隔をあけることが好ましく、例えば成形材料としてセメント系成形材料を用いる場合には、この間隔を1.5mm以上とすることが好ましい。また、通気孔17の内径は1mm以上であることが好ましい。
【0022】
一方、支持部1は、その一面側が順方向側、他面側が逆方向側に配置される板状体にて形成されている。この支持部1は、その順方向側に配置される板状の前部体1a(図1,2参照)と、逆方向側に配置される板状の後部体1bとを重ね合わせて構成されている。
【0023】
前部体1aには、突部2の突設位置と合致する位置に、順方向側の面と逆方向側の面とを貫通する複数の接続孔18が設けられている。すなわち、複数の接続孔18の開口は、前部体1aの両面でそれぞれ平面六方格子状に配列し、且つ突部2の配置と合致する矩形状の領域の内側に設けられる。接続孔18の内径は突部2の接続部16の内径と合致し、この、突部2の接続部16を前記接続孔18に嵌合することにより突部2が支持部1に突設されている(図9等参照)。ここで、接続部16の長さ寸法は接続孔18の長さ寸法よりも小さくなるように形成されており、このため接続孔18の逆方向側の部分は逆方向側の面に開口する中空な接続空間19として形成される。
【0024】
また、支持部1には、気流の流路となる通気路20,21として、主通気路20と分枝通気路21とが設けられている。
【0025】
主通気路20は、前部体1aの逆方向側の面における、上記接続孔18の開口が設けられている矩形状の領域(突部2が突設されている領域)の外側に、逆方向側の面に開口するように溝状に凹設されている。この主通気路20は前記矩形状の領域の対向する二つの長辺の外側にそれぞれ前記長辺に沿って設けられている。
【0026】
また、分枝通気路21は、上記二つの主通気路20の間に、両端で各主通気路20に連通すると共に逆方向側の面に開口するように、並行並列に複数凹設されている。この分枝通気路21は接続孔18の開口が設けられている矩形状の領域の内側に形成され、且つ各分枝通気路21は前記領域内の複数の接続孔18の接続空間19を順次横切るように設けられている。これにより、全ての接続孔18の接続空間19がいずれかの分枝通気路21に連通するようになっている。
【0027】
上記主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19の逆方向側の開口は後部体1bによって閉塞されており、このため主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19は支持部1の内部に設けられる。このように支持部1を前部体1aと後部体1bとで形成すると共に主通気路20及び分枝通気路21や接続空間19を前部体1aと後部体1bとに挟まれた空間に形成することで、支持部1の内部に複雑な形態を有する主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19を容易に形成することが可能となる。ここで、図示の形態では前部体1aを凹設して主通気路20、分枝通気路21、接続空間19を逆方向側の面に開口するように形成すると共にこの主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19の開口を後部体1bで閉塞するようにしているが、このような形態に限られず、例えば後部体1bに主通気路20、分枝通気路21、接続空間19の少なくともいずれかを凹設して前部体1aで閉塞しても良い。
【0028】
上記主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19の逆方向側の開口は後部体1bによって閉塞されており、このため主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19は支持部1の内部に設けられる。このように支持部1を前部体1aと後部体1bとで形成すると共に前部体1aに主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19を逆方向側の面に開口するように形成することで、支持部1の内部に複雑な形態を有する主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19を容易に形成することが可能となる。
【0029】
また、主通気路20の形成位置は上記接続孔18(接続空間19)の開口が設けられている領域(突部2が突設されている領域)の外側であればよく、分枝通気路21の形成位置は前記領域の内側で全ての接続空間19を横切る位置であればよいが、上記のように主通気路20を前記領域の長手方向に沿った両側の外縁の外側にそれぞれ前記長手方向に沿って設けると共に、この主通気路20を結ぶように前記領域の内側に複数の分枝通気路21を、前記領域の短手方向に沿って並行並列に複数個形成すれば、分枝通気路21の経路長を可能な限り短く形成することができる。
【0030】
また、前部体1aの内部には、主通気路20に連通すると共に前部体1aの外周面で開口して支持部1の外部に連通する給気路22が設けられている。この給気路22は各主通気路20ごとに二つずつ設けられており、合計四個の給気路22が設けられている。
【0031】
また、この支持部1に設けられる複数の流通孔3は、その逆方向側の端部が支持部1の逆方向側の面で開口して上記ベース部9の中空部12と連通し、順方向側の端部が支持部1の順方向側の面で開口して上記口金部8の中空部11と連通し、支持部1を成形材料の流通方向に貫通するように形成されている。
【0032】
この複数の流通孔3は、支持部1から突設されている複数の各突部2の周囲を囲む位置に設けられ、且つこの突部2の周囲を均等に囲むように設けられる。すなわち、各突部2の周囲に設けられた複数の流通孔3は、前記突部2と各流通孔3との間隔がすべて等しくなると共に、流通孔3同士の間隔がすべて等しくなるように形成される。図示の例では各流通孔3は三個の突部2に囲まれた中心位置に形成されると共に、各突部2は正六角形状に配置された六個の流通孔3に囲まれた中心位置に形成され、これにより各突部2とその周囲の各流通孔3との間の間隔が一定であると共に、この周囲の各流通孔3同士の間隔が一定になるように形成されている。
【0033】
この複数の各流通孔3には、順方向側の端部の内周面に、この順方向側に向かって内径が増大する流出側テーパ部4が設けられている。この流出側テーパ部4は支持部1の前部体1aに設けられている。また、この各流通孔3の逆方向側の端部の内周面には、この逆方向側に向かって内径が増大する流入側テーパ部5が設けられている。この流入側テーパ部5は支持部1の後部体1bに設けられている。
【0034】
このとき、支持部1の順方向側の面では隣り合う流通孔3同士の流出側テーパ部4同士が隣接するように形成されており、複数個(図示では六個)の流出側テーパ部4にて囲まれた位置に、接続孔18が形成される平坦な領域24が確保されている(図5参照)。
【0035】
また、図4,6,8等に示されるように、支持部1の逆方向側の面では隣り合う流通孔3の流入側テーパ部5同士が隣接するように形成されており、これにより隣り合う流出側テーパ部4同士の境界に尾根部6が形成される。この尾根部6の両側は流出側テーパ部4が形成されていることからそれぞれ順方向側に向けて下り傾斜するようになっている。またこの尾根部6は逆方向側からみて直線状に形成され、且つこの尾根部6の稜線が順方向側に向けて凹入するように形成される。このとき、流通孔3は複数個(図示では三個)の尾根部6に囲まれた位置に形成されている。また、複数個(図示では六個)の尾根部6の端部同士が交わる位置(接続孔18の形成位置と合致する位置)では、逆方向側へ向けて突出する頂部7が形成されている。図示の例では頂部7の先端には小面積の平坦な領域が形成されているが、更に好ましくはこの頂部7の先端を尖形状に形成する。
【0036】
尚、図1では、後部体1bにおける流入側テーパ部5、尾根部6及び頂部7の図示を省略している。
【0037】
次に、このように形成される押出成形型Aを用いた成形体Bの成形について説明する。
【0038】
上記のような押出成形型Aを適宜の押出成形装置に取り付けて、成形材料に押出圧力をかけてベース部9側から押出成形型A内の成形材料の流路へ供給し、口金部8の順方向側開口から押し出して成形体Bを成形する。
【0039】
成形材料としては、押出成形に用いられる材料であれば特に制限されないが、特にセメント系成形材料を用いることができる。セメント系成形材料2としては適宜の組成のものを用いることができるが、例えばセメントに必要に応じて骨材、繊維、着色剤等を配合して水と混練することによって調製されるものであり、セメントとしては普通ポルトランドセメント、スラグセメント、アルミナセメント、早強セメントなど任意のものを用いることができる。また骨材としては、シリカ、珪石粉、珪砂、フライアッシュ、スラグ、砕石等を用いることができる。繊維としてはポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、パルプ、カーボン繊維、綿、麻、金属繊維等を用いることができる。さらに着色剤としては鉄黒、カーボンブラック、酸化クロム等を用いることができる。
【0040】
また、特にセメント系成形材料として、油性物質を含有すると共に更に必要に応じて非イオン性界面活性剤、各種アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等の乳化剤(逆乳化剤)を含有させた逆エマルション(W/Oエマルション)を形成するものを用いることも好ましい。このような逆エマルションタイプのセメント系成形材料は一定の保形性を有するため中空孔23を有する成形体Bを成形した場合にその形状を維持することができ、またこの押出成形型Aによれば後述するように過大な押圧力がかかることなく押出成形を行うことができて、成形時の逆エマルション構造の破壊が抑制され、その後の養生硬化に支障をきたすようなことを防止することができる。
【0041】
上記油性物質としては、水と逆エマルションを形成しうるものであれば、特に制限はなく、通常疎水性の液状物質が利用され、例えば、トルエン、キシレン、灯油、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。このうち、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等の重合性二重結合を有するもの(ビニル単量体)を使用する場合は、基材1の硬化成形の際に油性物質の重合を促進するために、有機過酸化物や過硫酸塩等の重合開始剤や、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の架橋剤を併用することもできる。
【0042】
この押出成形において、成形材料が支持部1及び突部2を通過する際には、成形材料はまず支持部1の各流通孔3に流入して分岐され、この流通孔3を通過した後、複数の突部2間を通過し、隣り合う突部2の間において各突部2の周囲を成形材料が突部2の突出方向に沿って並列に流動する。このとき、突部2の周囲を囲む位置に均等に配置されるように形成された流通孔3から成形材料が流出することで、突部2の周囲には成形材料の均等な流動が生じる。このため、成形材料を高い押出圧力をかけることなく突部2の周りに充分に充填することができる。また、このように成形材料が突部2間を流動する間、突部2の周囲を流れる成形材料が馴染んで一体化する。
【0043】
このような成形材料の流動の過程においては、成形材料がベース部9の中空部12から流通孔3に流入する際には、支持部1の逆方向側の面に形成された尾根部6と頂部7とによって成形材料が容易に分岐して流通孔3に導かれやすくなっている。特に頂部7の先端が尖形状に形成されていると、この頂部7における成形材料の堆積が抑制され、成形材料の流通孔3への流入が更に促進される。更に、流通孔3の逆方向側端部に流入側テーパ部5が設けられていることによっても、成形材料の流通孔3への流入が促進される。
【0044】
このため、成形材料が流通孔3を通過するために必要とされる押出圧力を低減することができ、成形材料に加わる圧力を抑制することが可能となる。
【0045】
また、成形材料が各流通孔3から口金部8の中空部11側に流出する際には、流通孔3に流出側テーパ部4が設けられていることで、成形材料が横方向に広がりながら流出することとなる。このため、成形材料が流通孔3から流出する際の流動性が向上して成形材料の堆積を抑制することができる。また、成形材料が突部2間を通過する際での突部2の周りでの充填性が更に向上すると共に、突部2の周囲での成形材料間の馴染み性を更に向上することができる。
【0046】
そして、この成形材料が口金部8の順方向側の開口から押し出されることにより、図10に示すような中空孔23を有する成形体Bが形成される。図10(a)は本実施形態のように円柱状の突部2を適用する場合に得られる成形体Bを示し、断面円形状の中空孔23を有する。また、突部2として六角柱状のものを適用する場合には、図10(b)に示すような、断面六角形状の中空孔23を有する成形体Bを得ることができ、その他適宜の形状の突部2を採用することで、所望の形状の中空孔23を有する成形体Bを得ることができる。
【0047】
得られた成形体Bは、必要に応じて所望の寸法となるように切断し、また特にセメント系成形材料にて形成する場合には、必要に応じて養生硬化させる。
【0048】
また、上記のような押出成形過程においては、各給気路22の支持部2の外部の開口からそれぞれエアー等の気流を供給する。このため、供給された気流は各給気路22から各主通気路20に流入し、更に複数の各分枝通気路21に分岐して流入する。このとき複数の各分枝通気路21にはその両側の端部からそれぞれ気流が流入する。そしてこの気流は各分枝通気路21から接続空間19を介して各突部2内の通気孔17に流入し、この各突部2の順方向側端面の開口から流出する。このため、成形体Bに形成される中空孔23には、エア等の気流が供給されることとなる。
【0049】
このように成形体Bの中空孔23に気流を供給すると、中空孔23内の圧力が低下することを防止し、この中空孔23が埋まってしまわないようにすることができる。
【0050】
また、成形材料の押出成形過程において中空孔23の一部が何らかの不具合により埋まってしまった場合には、それ以後に形成される中空孔23の内部には空気が供給されずその内部の圧力が非常に低くなってしまうことがある。このような場合、形成された成形体Bは中空部内と外部との圧力差により破損が生じやすい状態となってしまう。このため、成形中に中空孔23が順次潰れていって中空孔23が形成されなくなるおそれがあり、また中空孔23が形成されたとしても成形体Bを切断するために荷重をかけた場合などに成形体Bが破損してしまうおそれがある。しかしながら、上記のように成形体Bの中空孔23に気流を供給すると、たとえ中空孔23の一部が埋まってしまったとしても中空孔23の内部の圧力が低下することを防止することができ、前記のような成形体Bの破損を防止することができる。
【0051】
ここで、中空孔23内に供給される気流の圧力が高すぎると中空孔23の内部の圧力と成形体Bの外部の圧力との差によって逆に成形体Bが破損するおそれがあるため、この気流の圧力は大気圧近傍の圧力であることが好ましい。このとき給気路22から、主通気路20、分枝通気路21、接続空間19及び通気孔17を介して流出する気流の流路抵抗が大きい場合には、大気圧に近い低圧で気流を供給することが困難となる。
【0052】
しかしながら、本実施形態では既述の通り分枝通気路21の経路長をできるだけ短く形成しており、また気流は分枝通気路21の両端からそれぞれ供給されるため、分枝通気路21における気流の経路長は最大でも分枝通気路21の長さの1/2に留まることとなる。このため気流の全体の経路長が短くなり、流路抵抗が低減される。また、各分枝通気路21に接続されている突部2の通気孔17の個数を低減することができることで、流路抵抗が更に低減される。また、このように分枝通気路21の両側から気流を供給するため、たとえ分枝通気路21の途中で詰まりが生じたとしても気流を各通気孔17に安定して供給することができる。
【0053】
また、各突部2の中空孔23から流出する気流同士の間で、中空孔23から流出するまでの流路抵抗の差が大きくなると、各気流間で圧力の差が大きくなり、成形体Bに形成される各中空孔23内の圧力差が大きくなって、成形体Bの破損の原因となるおそれがある。
【0054】
しかしながら、上記流路抵抗の差は、主として気流が分枝通気路21に流入してから各突部2の通気孔17に流入するまでの間の経路長の差によって生じるが、上記のように分枝通気路21における気流の経路長が短くなるようにすることで、気流の経路長の差が小さくなるようにすることができ、これにより各突部2の中空孔23から流出する気流間の圧力差を低減することができる。
【0055】
また、分枝通気路21の長手方向と直交する面(気流の流通方向と直交する面)の断面積をできるだけ大きくすることにより分枝通気路21における流路抵抗を低減すれば、全体の流路抵抗の低減に寄与することができ、気流を更に低圧で供給することができるようになる。また、分枝通気路21における経路長の相違による流路抵抗の差を小さくすることができるため、各突部2の中空孔23から流出する気流間での流路抵抗の差も小さくなり、この気流間の圧力差を更に低減することができる。この場合の分枝通気路21の断面積は、各分枝通気路21につき、この分枝通気路21の断面積をS、この分枝通気路21における気流の流入位置の個数をn、この分枝通気路21に接続されている全ての突部2の通気孔17の長手方向と直交する面(気流の流通方向と直交する面)の断面積の合計をsとすると、S≧s/nの関係を有することが必要であり、本実施形態では分枝通気路21の両端からそれぞれ気流が流入するため、n=2となり、S≧s/2の関係を有する必要がある。ここで、通気孔17の断面積は突部2の断面積、すなわち成形体Bに形成される中空孔23の径に依存し、成形体Bの中空孔23の径が小さいと通気孔17の断面積も小さくする必要があるため、成形体Bに形成される中空孔23の径に応じて分子通気路21の断面積を設計する必要がある。
【0056】
上記のような分枝通気路21を形成するにあたり、成形体Bに中空部23を密に形成するために突部2を密に形成する場合には、通気孔17も密に形成されることとなり、分枝通気路21は前記通気孔17の間を縫って形成する必要があるため、分枝通気路21の幅を充分に大きく形成することは困難になる。このため、分枝通気路21の断面積を充分に大きくなるように形成するためにはこの分枝通気路21の深さを充分な大きさに確保する必要がある。そのためには前部体1aの厚みを充分に厚くなるように形成することが好ましい。
【0057】
また、更に主通気路20の長手方向と直交する面(気流の流通方向と直交する面)の断面積をできるだけ大きくすることにより主通気路21における流路抵抗を低減すれば、全体の流路抵抗を更に低減することができる。特に、各主通気路20につき、この主通気路20の断面積をS′、この主通気路20に連通している全ての分枝通気路21の断面積の合計をs′とすると、S′≧s′の関係を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態の一例における、支持部及び突部の構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】同上の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図4】同上の他の斜視図である。
【図5】同上の一部の正面図である。
【図6】同上の一部の背面図である。
【図7】同上の一部破断した斜視図である。
【図8】同上の一部破断した他の斜視図である。
【図9】同上の一部の断面図である。
【図10】(a)及び(b)は成形体の例を示す一部破断した斜視図である。
【図11】(a)は従来技術の一例を示す断面図、(b)は従来技術の他例を示す一部破断した斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
A 押出成形型
B 成形体
1 支持部
2 突部
3 流通孔
17 通気孔
20 主通気路
21 分枝通気路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を押出成形することにより複数の中空孔を有する成形体を成形するための押出成形型であって、
成形材料の流路をその流通方向の順方向側と逆方向側とに仕切る支持部と、この支持部から前記流通方向の順方向側に向けて突出する複数の突部とを具備し、
前記突部にはこの突部を前記流通方向に貫通する通気孔が設けられ、
前記支持部には、この支持部を前記流通方向に貫通する流通孔と、外部から供給される気流が流通する主通気路と、この主通気路から分岐して前記通気孔に連通する分枝通気路とが設けられ、
前記主通気路は支持部における突部が突設されている領域の長手方向に沿った両側の外縁の外側に前記長手方向に沿って設けられ、
前記分枝通気路は前記領域の内側にこの領域の短手方向に沿って並行並列に複数設けられると共にこの分枝通気路の両側の端部がそれぞれ各主通気路に連通され、
前記各分枝通気路の断面積Sが、この分枝通気路に接続されている全ての突部の通気孔の断面積の合計をsとした場合に、S≧s/2の関係を満たすように形成されていることを特徴とする押出成形型。
【請求項1】
成形材料を押出成形することにより複数の中空孔を有する成形体を成形するための押出成形型であって、
成形材料の流路をその流通方向の順方向側と逆方向側とに仕切る支持部と、この支持部から前記流通方向の順方向側に向けて突出する複数の突部とを具備し、
前記突部にはこの突部を前記流通方向に貫通する通気孔が設けられ、
前記支持部には、この支持部を前記流通方向に貫通する流通孔と、外部から供給される気流が流通する主通気路と、この主通気路から分岐して前記通気孔に連通する分枝通気路とが設けられ、
前記主通気路は支持部における突部が突設されている領域の長手方向に沿った両側の外縁の外側に前記長手方向に沿って設けられ、
前記分枝通気路は前記領域の内側にこの領域の短手方向に沿って並行並列に複数設けられると共にこの分枝通気路の両側の端部がそれぞれ各主通気路に連通され、
前記各分枝通気路の断面積Sが、この分枝通気路に接続されている全ての突部の通気孔の断面積の合計をsとした場合に、S≧s/2の関係を満たすように形成されていることを特徴とする押出成形型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−83259(P2009−83259A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255395(P2007−255395)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】
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