説明

押出成形装置

【課題】 本発明は、無機質混練材料よりなる原料、例えば粘土を主成分とする原料を押出成形し、化粧面に凹凸模様を形成した押出成形体を歪み無く連続的に形成する押出成形装置に関するものである。
【解決手段】 無機質混練材料よりなる原料2aを押出成形部Aにより押し出し、押出成形された押出成形体αに化粧面加工部Fにより凹凸模様α1を形成する押出成形装置Pにおいて、押出機2に口金3を連結すると共に、口金3より押し出される板状の連続成形体αを、口金3出口に一体に設置した口金部エンボスロール部Eにより加工し、その後、複数個の径の異なるエンボスロール9よりなるエンボスロール部Gにより徐々に加工し、押出成形体αの化粧面α1に凹凸模様γを形成した押出成形装置Pである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質混練材料よりなる原料、例えば粘土を主成分とする原料を押出成形し、化粧面に凹凸模様を形成した押出成形体を歪み無く連続的に形成する押出成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘土、例えば木節粘土、蛙目粘土、信楽粘土を用いてセラミック板等を製造するには、押出成形装置により連続続成形体を押し出し、その後、凹凸模様を化粧面に形成する方法によって製造していた。(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭55−093410号公報
【特許文献2】特開昭56−159139号公報
【特許文献3】特開昭59−143603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3によれば、成型用口金部分に凹凸模様を形成するロールを形成し、凹凸模様を形成するために、大きな圧力で化粧面を押圧しても外観上の変形なく、凹凸模様を形成することができるものであった。しかし、全面にエンボス模様を形成するような場合には、大きな圧力が成形体内部に歪みを発生させ、その後の乾燥工程・切断工程・焼成工程・冷却工程、等の工程で、押出成形体の反り、押出成形体の亀裂、押出成形体の変形、等の悪影響が発生し、凹凸模様を形成する押圧力の制御が非常に難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような欠点を解決するために、無機質混練材料よりなる原料を押出成形部により押し出し、押出成形された押出成形体に化粧面加工部により凹凸模様を形成する押出成形装置において、押出機に口金を連結すると共に、口金より押し出される板状の連続成形体を、口金出口に一体に設置した口金部エンボスロール部により加工し、その後、複数個の径の異なるエンボスロールよりなるエンボスロール部により徐々に加工し、押出成形体の化粧面に凹凸模様を形成した押出成形装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る押出成形装置によれば、(1)口金部エンボスロール部での内部歪みを、エンボスロール部で徐々に凹凸模様を形成することにより除去できるために、押出成形体の反り、押出成形体の亀裂、押出成形体の変形、等が発生しない。(2)押出成形装置後の、乾燥工程・切断工程・焼成工程・冷却工程、等の後工程で、押出成形体の反り、押出成形体の亀裂、押出成形体の変形、等が発生しない。(3)口金部エンボスロール部と複数個のエンボスロールよりなるエンボスロール部の組み合わせにより、無限の凹凸模様を形成できる。(4)柄のパターンを判りにくくでき、自然な風合いの凹凸模様を形成できる。等の特徴、効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、図面を用いて本発明に係る押出成形装置の一実施例について詳細に説明する。図1(a)、(b)は上記押出成形装置Pの代表的な一例を示す説明図で、押出成形部Aと化粧面加工部Fよりなるものである。化粧面α1の凹凸加工面βに凹凸模様γを形成した押出成形体αを連続して押し出すものである。
【0008】
図1(a)において、1は押出部、2は押出機で、原料2aを押し出し、口金3によって押出成形体αを成形するものである。
【0009】
この原料2aの一例としては陶石、長石、カオリナイト、ハロイサイト、メタハロイサイト、木節粘土、蛙目粘土、信楽粘土などを打ち砕き、水を加えて練り上げた粘土材料、あるいはセメント材料等である。
【0010】
押出成形部Aは原料供給部B、押出成形機C、口金部D、口金部エンボスロール部Eよりなるものである。
【0011】
口金部エンボスロール部Eは、凹凸加工部6aを形成したエンボスロール6よりなる化粧面加工装置4と受け部5よりなり、口金3に一体に形成されるものである。
【0012】
エンボスロール6は、押出成形体αの押出速度と同期させて矢印方向に回転することにより、押し出された直後の押出成形体αの化粧面α1に凹凸模様γを形成するものである。
【0013】
受け部5は、押出成形体αにエンボスロール6により凹凸模様γを形成する際に押出成形体αを支える状態となり、押出成形体αの断面形状が変形することが無いものである。勿論、受け部5は口金3の下型と同一形状が好ましい。
【0014】
化粧面加工部Fは、エンボスロール部G、架台Hよりなるものである。
【0015】
エンボスロール部Gは架台7と、ロール8、エンボスロール9よりなる複数のロール部10、上下移動部11、凹凸加工部12より形成したものである。
【0016】
さらに説明を加えると、エンボスロール部Gは図3(側面図)、図4(正面図)に詳細に示すように、押出成形体αを上下より挟持するようにして設置したものであり、架台7上に軸架して固定された複数のロール8と複数の径の異なるエンボスロール9によりロール部10を形成し、図示しないがモータ等の駆動装置等により駆動させたものである。勿論、エンボスロール部Gを複数台形成しても良いものである。
【0017】
エンボスロール9は図3に示すように、前段から後段に掛けて径を徐々に大きく形成したものを使用し、徐々にエンボスを凹凸模様γを形成することにより、内部歪みをエンボスロール部で徐々に凹凸模様γを形成することにより除去できるために、押出成形体の反り、押出成形体の亀裂、押出成形体の変形、等が発生しないものである。
【0018】
また、エンボスロール部Gの押出成形体αへの押圧力は押出成形体αの形状、素材、押し出しスピード等の諸条件により異なるものであり、特に限定するものではない。
【0019】
勿論、エンボスロール部Gの押出成形体αと接触している部分は、押出成形体αの断面形状と同一である。また、図7(a)〜(d)に示すような押出成形体αを加工する場合には、ロール8は押出成形体αの裏面の断面形状にあった複数個の分割したロール8により、押出成形体αの裏面を支持し、凹凸模様γを形成するものである。
【0020】
エンボスロール部Gは複数のエンボスロール9、例えば、エンボスロール9a〜9eとすることにより、
(1)エンボスロール9a〜9eの各々の凹凸加工部12(柄)を変える。
(2)エンボスロール9a〜9eの各々の凹凸加工部12(柄)の深さ・意匠・形成範囲、等を各々のエンボスロール9a〜9e毎で変える。
(3)エンボスロール9a〜9eの各々の径を変える。(柄を同じ)
(4)エンボスロール9a〜9eの各々の凹凸加工部12(柄)の深さを変える。
(5)エンボスロール9a〜9eの回転速度を押出成形体αの速度と同期させる。
(6)エンボスロール9a〜9eの回転速度を押出成形体αの速度と同期させない。
(7)エンボスロール9a〜9eの回転速度を変える。
(8)エンボスロール9a〜9eを駆動させない。(押出成形体α移動に任せる。)
(9)(1)〜(8)の組み合わせ。
および、
(10)(1)〜(9)と口金部エンボスロール部Eとの組み合わせ。
等のように形成することにより、押出成形体αの反り、押出成形体αの亀裂、押出成形体αの変形、等の悪影響が発生させずに、今までにない凹凸模様γ(柄)を形成することができる。さらに、凹凸模様γ(柄)のパターンを判りにくくでき、自然な風合いの凹凸模様γを形成できるものである。
【0021】
なお、エンボスロール部Gは図ではエンボスロール9a〜9eの5段形成したが、複数段であれば良いものである。
【0022】
勿論、エンボスロール部Gのエンボスロール9の段数が多い方が、押出成形体αへのエンボス加工の負荷を押さえることができるので、押出成形体αの亀裂、押出成形体αの変形、等の悪影響の発生がさらに抑制されるものであり、エンボスロール部Gを複数台形成しても良いものである。
【0023】
図5(a)〜(g)〜図7(a)〜(d)は押出成形体αの実施例を示す断面図である。
【0024】
図8は押出成形装置Pの後工程をも示すものであり、押出成形装置Pの後工程に乾燥部I、切断部J、移送部K、焼成部L、等を設置し、押出成形体αを製造するセラミック板製造工程を示すものである。勿論、原料2aによっては、押出成形装置Pの後工程が切断部−オートクレーブ養生工程の窯業系板材製造工程の場合もあるものである。
【0025】
なお、図では、上側を化粧面α1として示しているが、下側を化粧面α1としたり、上下両面を化粧面α1として押出成形装置Pで加工できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る押出成形装置によれば、反り、亀裂、変形、等のない押出成形体αを歩留まり良く生産できるので、コスト削減と、省エネルギーに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る押出成形装置の代表例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る押出成形装置の代表例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る押出成形装置の代表例を示す説明図である。
【図4】本発明に係る押出成形装置の代表例を示す説明図である。
【図5】押出成形装置によって成形される押出成形体の例を示す断面図である。
【図6】押出成形装置によって成形される押出成形体の例を示す断面図である。
【図7】押出成形装置によって成形される押出成形体の例を示す断面図である。
【図8】本発明に係る押出成形装置を使用したセラミック板製造ライン全体の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
P 押出成形装置
A 押出成形部
B 原料供給機
C 押出成形機
D 口金部
E 口金部エンボスロール部
F 化粧面加工装置
G エンボスロール部
H 架台
I 乾燥部
J 切断部
K 移送機
L 焼成部
α 押出成形体
α1 化粧面
β 凹凸加工面
γ 凹凸模様
1 押出部
2 押出機
2a 原料
3 口金
4 化粧面加工装置
5 受け部
6 エンボスロール
6a 凹凸加工部
7 架台
8 ロール
9 エンボスロール
9a エンボスロール
9b エンボスロール
9c エンボスロール
9d エンボスロール
9e エンボスロール
10 ロール部
11 上下移動部
12 凹凸加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質混練材料よりなる原料を押出成形部により押し出し、押出成形された押出成形体に化粧面加工部により凹凸模様を形成する押出成形装置において、押出機に口金を連結すると共に、該口金より押し出される板状の連続成形体を、口金出口に一体に設置した口金部エンボスロール部により加工し、その後、複数個の径の異なるエンボスロールよりなるエンボスロール部により徐々に加工し、押出成形体の化粧面に凹凸模様を形成したことを特徴とする押出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−35486(P2006−35486A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215363(P2004−215363)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000126333)株式会社アイジー技術研究所 (138)
【Fターム(参考)】