説明

押圧によるスクロール制御が可能なユーザインタフェース装置、画像スクロール方法及びプログラム

【課題】画面に表示し切れない情報における、表示されていない遠い位置の部分も、簡易な操作をもって短時間で表示させることができるユーザインタフェース装置を提供する。
【解決手段】ユーザインタフェース装置は、画像を表示するディスプレイと、指の接触位置を時間経過に応じて逐次出力するタッチパネルと、当該指により該タッチパネルに与えられた押圧力を検出する押圧力検出部とを備えている。さらに、画像全体をスクロールさせるドラッグ操作が終了したか否かを判定する操作判定手段と、操作判定手段が真の判定を行った際、ドラッグ操作後の押圧力の大きさに応じて、ドラッグ操作後のスクロールの速度である「ドラッグ後」速度を決定するスクロール速度決定手段と、ドラッグ操作によるスクロールの後、決定された「ドラッグ後」速度で画像全体を更にスクロールさせるスクロール制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表示するディスプレイと、ユーザインタフェースとしてのタッチパネルとを備えたユーザインタフェース装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画面に指、スタイラス等で触れることによって入力操作を行う、タッチパネルを搭載したユーザインタフェース装置が広く普及している。特に、近年、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、電子書籍、PDA(Personal Digital Assistant)のようなユーザインタフェース装置、いわゆる携帯型情報機器では、指による操作を受け入れるユーザインタフェースとしてタッチパネルが積極的に採用されている。
【0003】
携帯型情報機器は、携帯性を高めるべく小型化を必要とする。このため、ユーザインタフェースとして物理的な入力キーを採用した場合、それら入力キー自体のサイズを小さくしなければならず、操作性の低下が懸念される。これに対し、タッチパネルを採用した場合、仮想ボタンのサイズを、アプリケーションの機能に応じて適切に変更することができ、操作性の向上を図ることができる。
【0004】
指によるタッチパネルへの入力では、ディスプレイに表示される画像全体を移動させる操作を如何に行うかが、操作性向上のための1つのポイントとなる。特に、携帯型情報機器では、ディスプレイの画面のサイズが限定されているので、文書、イメージ等の情報を一画面で表示し切れない場合が多い。従って、画像全体を移動させ、表示し切れない情報部分を表示させるための操作が重要となる。
【0005】
従来、一画面に収まり切らない情報における所望の部分を表示する方法として、スクロールが知られている。スクロールは、画像全体を画面の上下方向、又は左右方向に移動させ、画面外に隠れていた(とされる)情報部分を引き出して表示させる操作手法である。一般に、パーソナルコンピュータでは、画面の端に設けられたスクロールバーを上下に又は左右に移動させたり、マウスのホイールを回転させたり、又はこのホイールを押下しつつマウスを移動させたりして画像全体をスクロールすることができる。
【0006】
また、カーナビゲーション装置では、指の接触位置の直下にある地図の地点が、画面の中心にくるようにスクロールする、いわゆるワンタッチスクロールが採用されている。このワンタッチスクロールでは、タッチの時間間隔が閾値以下の場合に、スクロールと共に画面をズームアウトする技術が提案されている(特許文献1参照)。この技術では、表示中の画面から遠く離れた位置をディスプレイ中心にスクロールすることが図られる。また、操作者がタッチパネル上に置いた指でスクロール操作を行った場合でも、極僅かな時間で瞬間的に触れた場合でも、入力ミスの低減が図られる技術も存在する(特許文献2参照)。
【0007】
一方で、多くの携帯型情報機器でも、指をタッチパネルに接触させたまま移動させる、いわゆるドラッグ操作によって、画像全体をスクロールすることができる。また、機器の傾きを検知し、所定のタッチ操作の下、この傾きの大きさに応じて速度を変化させつつスクロールする技術も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−265835号公報
【特許文献2】特開2007−10645号公報
【特許文献3】特開2011−76349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、携帯型情報機器で、指によるドラッグ操作によってスクロールする場合、画面に表示し切れない情報における、表示されていない遠い位置の部分を表示させようとすると、何度もドラッグ操作を行わなければならない。
【0010】
ここで、「遠い」位置とは、情報空間におけるより離れた位置を意味する。例えば、あるコンテンツの画像としての幅が、画面の幅よりも相当に大きい場合を考える。このコンテンツの表示されていない部分は、コンテンツの幅方向の端に近い位置にあるほど、画面から見てより「遠い」位置にあることになる。
【0011】
実際、画像全体を一度のドラッグ操作で移動させる場合、その移動量は、指の可動範囲、すなわち画面内の2点間の距離に限られる。そのため、表示したい部分がより「遠い」位置にあるほど、より多くの回数だけドラッグ操作が必要となってしまう。
【0012】
この問題は、特許文献1乃至3に開示されたような従来技術を適用しても解決し難い。例えば、特許文献1及び2に開示されたようなワンタッチスクロールでも、画面内の指の接触位置が中心に移動するだけであり、基本的に1回の操作での画像全体の移動量は限られている。また、所望の部分を探し易くするためにスクロール速度を調整することも困難である。さらに、特許文献1の技術では、スクロールとともに画像全体をズームアウトして表示範囲をより広くしている。これは、地図情報のスクロールでは有効であるが、例えば、携帯型情報機器で文書及びイメージのコンテンツにおいて所望の部分を探す場合には、文字が小さくなって確認し難くなる等、弊害が多い。
【0013】
また、特許文献3のように、所定のタッチ動作の下、携帯型情報機器を傾け、その傾きの大きさに応じた速度でスクロールさせる操作は、スクロール速度を調整できる利点を有するものの、ユーザにとって決して容易ではない。また、画面を傾けた状態でスクロールされる画像を確認しなければならず、所望の部分を探し出すのに不便さが残る。
【0014】
そこで、本発明は、画面に表示し切れない情報における、表示されていない遠い位置の部分も、簡易な操作をもって短時間で表示させることができるユーザインタフェース装置、画像スクロール方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、画像を表示するディスプレイと、該ディスプレイの画面上に配置され、指の接触位置を時間経過に応じて逐次出力するタッチパネルと、当該指により該タッチパネルに与えられた押圧力を検出する押圧力検出部とを備えており、当該指によるドラッグ操作によって画像全体をスクロールするユーザインタフェース装置において、
当該指によるドラッグ操作が終了したか否かを判定する操作判定手段と、
操作判定手段が真の判定を行った際、ドラッグ操作後の押圧力の大きさに応じて、ドラッグ操作後のスクロールの速度であるドラッグ後速度を決定するスクロール速度決定手段と、
ドラッグ操作によるスクロールの後、決定されたドラッグ後速度で画像全体を更にスクロールさせるスクロール制御手段と
を有するユーザインタフェース装置が提供される。
【0016】
本発明のユーザインタフェース装置における他の実施形態によれば、ユーザの操作から見て、ドラッグ操作を行った直後に当該指をタッチパネルに対して押し込んだ場合、スクロール制御手段は、スクロールの速度を、ドラッグ後速度にまで増加させるも好ましい。
【0017】
本発明のユーザインタフェース装置における他の実施形態によれば、
タッチパネルに接触した当該指に対して触覚応答を与える触覚応答機構部と、
当該指に対してタッチパネルを介して、スクロールの速度に応じた触覚応答を与えるべく触覚応答機構部を制御する触覚応答制御手段と
を更に有することも好ましい。また、この場合、触覚応答制御手段は、当該指に、スクロールの速度が高いほど強い振動を与えるように触覚応答機構部を制御することも好ましい。
【0018】
本発明のユーザインタフェース装置における他の実施形態によれば、操作判定手段は、自ら真の判定を行った際、さらに、当該指がタッチパネルに接触しているか否かを判定し、スクロール制御手段は、当該指が接触していると判定された場合に、決定されたドラッグ後速度で画像全体を更にスクロールさせることも好ましい。
【0019】
本発明のユーザインタフェース装置における他の実施形態によれば、スクロール速度決定手段は、押圧力が所定の閾値未満である場合、「ドラッグ後」速度をゼロとすることも好ましい。
【0020】
本発明のユーザインタフェース装置における他の実施形態によれば、スクロール制御手段は、ドラッグ操作時のスクロールの向きの情報を保持し、ドラッグ操作後に、このドラッグ操作時のスクロールの向きで、画像全体を更にスクロールさせることも好ましい。
【0021】
本発明によれば、さらに、画像を表示するディスプレイと、該ディスプレイの画面上に配置され、指の接触位置を時間経過に応じて逐次出力するタッチパネルと、当該指により該タッチパネルに与えられた押圧力を検出する押圧力検出部とを備えており、当該指によるドラッグ操作によって画像全体をスクロールするユーザインタフェース装置に搭載されたプログラムにおいて、
当該指によるドラッグ操作が終了したか否かを判定する操作判定手段と、
操作判定手段が真の判定を行った際、ドラッグ操作後の押圧力の大きさに応じて、ドラッグ操作後のスクロールの速度であるドラッグ後速度を決定するスクロール速度決定手段と、
ドラッグ操作によるスクロールの後、決定されたドラッグ後速度で画像全体を更にスクロールさせるスクロール制御手段と
してコンピュータを機能させるユーザインタフェース装置用のプログラムが提供される。
【0022】
本発明によれば、さらにまた、画像を表示するディスプレイと、該ディスプレイの画面上に配置され、指の接触位置を時間経過に応じて逐次出力するタッチパネルと、当該指により該タッチパネルに与えられた押圧力を検出する押圧力検出部とを備えており、当該指によるドラッグ操作によって画像全体をスクロールするユーザインタフェース装置における画像のスクロール方法において、
当該指によるドラッグ操作が終了したか否かを判定する第1のステップと、
第1のステップで真の判定がなされた際、ドラッグ操作後の押圧力の大きさに応じて、ドラッグ操作後のスクロールの速度であるドラッグ後速度を決定する第2のステップと、
ドラッグ操作によるスクロールの後、決定されたドラッグ後速度で画像全体を更にスクロールさせる第3のステップと
を有する画像のスクロール方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明のユーザインタフェース装置、画像スクロール方法及びプログラムによれば、画面に表示し切れない情報における、表示されていない遠い位置の部分も、簡易な操作をもって短時間で表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】「ドラッグクリック」操作を説明するための、携帯型情報機器の前面図、及び指による操作の概略図である。
【図2】押圧力pの関数としての「ドラッグ後」速度vADの種々の態様を示すグラフである。
【図3】「ドラッグクリック」操作における、指による押圧力pの時間変化に対応したスクロール速度の時間変化の一例を示すグラフである。
【図4】本発明による携帯型情報機器の構成を概略的に示す斜視図、及び本発明による画像のスクロール方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図5】本発明による携帯型情報機器の一実施形態を示す機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
本発明によるユーザインタフェース装置は、ディスプレイに表示された画像全体をドラッグ操作によってスクロールした後、指によりタッチパネルに与えられた押圧力の大きさに応じて決定された速度で、更にスクロールする点に特徴を有する。以下、このドラッグ操作と、その後の指によるタッチパネルに対する押し込みとを合わせて、「ドラッグクリック」操作と称する。
【0027】
ここで、「画像全体」とは、ディスプレイの画面に表示された全画像のうち、スクロールの対象となる部分である。当然に、表示された全画像でもあり得る。例えば、一画面に収まり切らない情報における表示された部分は、スクロール対象となる。
【0028】
尚、本発明が対象とするユーザインタフェース装置では、ユーザの指がタッチパネルに接触することによって情報が入力される。そのため、当該装置の多くは、手で携帯して操作可能である、スマートフォンやタブレット型コンピュータのような携帯型情報機器である。従って、以下、本発明の実施形態として、携帯型情報機器を説明する。
【0029】
図1は、「ドラッグクリック」操作を説明するための、携帯型情報機器の前面図、及び指による操作の概略図である。なお、容易な理解のため、以下、画像として検索結果が表示された場合を取り上げているが、本発明は当然に、他の情報を表す画像のスクロールに対しても適用されるものである。
【0030】
図1(A)、(B)及び(C1)は、「ドラッグクリック」操作の一連の流れを示す、携帯型情報機器1の前面図である。また、図1(C2)は、指による押し込みを示す概略図である。最初に、図1(A)によれば、ディスプレイ101の画面に、検索エンジンを用いて検索された結果を含む画像が表示されている。本実施形態では、50件の検索結果104のうち、第1件から第5件までのみが画面に表示されている。
【0031】
ユーザは、指を、タッチパネル100に接触させて直ちに、接触を保ったまま上側に移動(スライド)させる。すなわちいわゆるドラッグ操作を行う。これにより、図1(B)に示したように、検索結果104を含む画像も、この指の移動に合わせて上側にスクロールされる。その結果、例えば、検索結果104の第4件から第8件までが表示される。
【0032】
このドラッグ操作の直後、ユーザは、ドラッグ操作が終了した指の接触位置で、指をタッチパネル100に押し込む。これらドラッグ操作とその後の指による押し込みという一連の簡易な操作が、「ドラッグクリック」操作である。この操作によって、図1(C1)に示したように、検索結果104を含む画像は、ドラッグ操作によるスクロールに引き続き、指の押し込みに対応したより高い速度で、更にスクロールされる。
【0033】
ここで、ユーザは、指の押し込みの強さを加減しながらスクロールの速度を調整することができる。その結果、例えば、検索結果104の表示されていない遠い位置であった第42件から第46件までが、短時間で表示される。その後、ユーザは、例えば、所望の第45件を見つけ出して選択し、起動させることができる。
【0034】
尚、ドラッグ操作時における画像の移動量(スクロール量)は、指の移動量と一致していてもよく、指の移動量の定数倍等、指の移動量の適当な関数値であってもよい。また、当然に、指の移動する向きは上側に限定されるものではない。例えば指をタッチパネル100の表面上での任意の向きに移動させ、画像を、この指の移動の向きに対応した、上側、下側、左側、右側、さらには斜めの向きのいずれにも移動可能とすることができる。
【0035】
さらに、ドラッグ操作後のスクロールの向きは、上記のドラッグ操作時のスクロールの向きに一致させることが好ましい。これにより、ユーザは、ドラッグ操作によって意図した向きのスクロールを、更に継続して行うことができる。この際、後述するスクロール制御部123(図5)が、ドラッグ操作時のスクロールの向きの情報を操作判定部121(図5)から入力して保持することも好ましい。スクロール制御部123は、ドラッグ操作後に、このドラッグ操作時のスクロールの向きで、画像全体を更にスクロールさせる。
【0036】
このように、本発明によれば、多数回のドラッグ操作によらずとも、「ドラッグクリック」操作によって、表示されていない遠い位置の情報部分を短時間で表示させることができる。また、スクロールの間、その速度を調整することができるので、画面に表示されていなかった多くの情報部分を、ユーザ自身が望むペースで、短時間に閲覧し確認することができる。
【0037】
図1(C2)によれば、ドラッグ操作後の指の押し込みは、タッチパネル100に対して押圧力pを及ぼす。この押圧力pの大きさに応じて、後述するスクロール速度決定部122(図5)が、ドラッグ操作後のスクロールの速度を決定する。以下、この速度を「ドラッグ後」速度と称する。
【0038】
尚、後述する触覚応答機構部102(図4)が、指に、スクロールの速度に応じた触覚応答を与えることができる。例えば、ユーザが指をより強く押し込んで、「ドラッグ後」速度がより大きい値に決定され、これによりスクロールの速度がより高くなるほど、より強い振動vが指に与えられる。これにより、ユーザは、スクロールの速度の増減を指から体感でき、リアルな操作感を得ることができる。
【0039】
また、ドラッグ操作時及び指の押圧時のスクロール速度に応じて、画面内に速度ベクトル105を表示することも好ましい。速度ベクトル105は、例えば、スクロール速度に比例した長さを有し、スクロールの向きに向いた矢印ベクトルである。ユーザは、速度ベクトル105を視認することによって、スクロールの状態を確認しながら操作を調整することができる。
【0040】
図2は、押圧力pの関数としての「ドラッグ後」速度vADの種々の態様を示すグラフである。
【0041】
図2には、押圧力pと「ドラッグ後」速度vADとの関係として、2a、2b、2c、2d及び2eの5種類が示されている。関係2aでは、指の押圧力pがpTH0≦p<pTH1の区間内にあるとき、「ドラッグ後」速度vADはvAD1に設定され、押圧力pがpTH1≦p<pTH2の区間内にあるとき、「ドラッグ後」速度vADはvAD2(>vAD1)であり、pTH2≦pの区間内にあるとき、vAD3(>vAD2)に設定される。この場合、指を押し込んでいくと、ドラッグ操作後のスクロール速度は、段階的に増加していく。
【0042】
また、関係2bでは、「ドラッグ後」速度vADは、押圧力pと正の傾きの線形関係にあり、押圧力pの増加に応じて連続的により高い値に設定される。この場合、指を押し込めば押し込むほど、その分に比例してドラッグ操作後のスクロール速度は増加していく。
【0043】
さらに、関係2cでは、「ドラッグ後」速度vADは、押圧力pが小さい間はそれほど高くないが、押圧力pが大きくなるにつれて急に増大する。この場合、ドラッグ操作後のスクロール速度は、指を押し込んだ当初、緩やかに増加するが、より強く押し込んでいくにつれて、急に高くなっていく。また、関係2dでは、「ドラッグ後」速度vADは、押圧力pが当初増加するにつれて急に高くなり、その後、押圧力pがより大きくなってもほぼ一定値に収束する。この場合、ドラッグ操作後のスクロール速度は、指を押し込んだ当初から急に高くなるが、ある程度押し込んだ辺りからほぼ一定となる。
【0044】
さらに、関係2eでは、指の押圧力pがpTH0以上であれば(p≧pTH0)、「ドラッグ後」速度vADは、押圧力pによらず、一定値(vAD4)に設定される。この場合、指をある強さ以上で押し込めば、ドラッグ操作後のスクロールが、ある一定の速度(vAD4)で行われることになる。
【0045】
尚、上述した関係以外の態様も可能である。しかしながら、いずれにおいても、「ドラッグ後」速度vADは、押圧力pの単調増加関数であることが好ましい。すなわち、押圧力pを増加させても「ドラッグ後」速度vADはむしろ低く設定される、といったことはないように設定されるのが好ましい。これにより、ユーザは、より強く押し込むことがより速いスクロールをもたらす、という感覚を維持できる。
【0046】
また、上述したいずれの関係においても、押圧力pが閾値pTH0未満では、「ドラッグ後」速度vADは0(ゼロ)に設定されている。ここで、この閾値pTH0は、通常、指がドラッグ操作を行っている間にタッチパネル100に与える押圧力値よりも大きく設定される。これにより、ドラッグ操作後、すなわち指が停止した後は、押圧力pが閾値pTH0以上となる押圧動作を指が行って初めて、画像全体が再び(又は継続して)スクロールされるようにすることができる。言い換えれば、押圧力pが閾値pTH0以上となって初めて、「ドラッグクリック」操作が行われたとする。なお、閾値pTH0は、例えば、0.5N(ニュートン)乃至2.0Nの範囲内の値に設定可能である。
【0047】
さらに、他の態様として、押圧力pと「ドラッグ後」速度vADとの関係に、閾値pTH0を設けず、この関係として原点を通るグラフを採用することも可能である。但し、この場合、ドラッグ操作後、指による押圧動作を行わなくとも、画像全体は、指の接触による押圧力pに応じた「ドラッグ後」速度vADでスクロールされる。
【0048】
図3は、「ドラッグクリック」操作における、指による押圧力pの時間変化に対応したスクロール速度の時間変化の一例を示すグラフである。
【0049】
図3に示した例では、押圧力pと「ドラッグ後」速度vADとは、図2の関係2bを有しているとした。但し、図2の関係2aで、十分に多くの段階を設けて(閾値pTHを多数設けて)「ドラッグ後」速度vADの離散値の間隔を十分に小さくしたものを採用することにより、以下の例と実質的に同じ結果を得ることも可能である。
【0050】
図3によれば、ドラッグ操作が時刻t=0からt=tまで行われる。その際のスクロールの速度は、指の移動速度に対応しており、vである。次いで、ドラッグ操作終了と同時に(t=t)、指によるタッチパネル100への押し込みが開始され、押圧力pがPCAにまで増加する。これに応じて、スクロール速度は、「ドラッグ後」速度vADA(>v)にまで増加する。
【0051】
ここで、スクロール速度がvから目標のvADAまで増加する間の加速期間3aの長さは、「ドラッグクリック」操作に対するスクロールのレスポンスを決定する。そのため、加速期間3aの長さは、良好な操作感を与えるように調整可能となっていることが好ましい。また、押圧力値pCAは、閾値pTH0(図2)以上の値であり(pCA≧pTH0)、ドラッグ操作後のスクロールを開始するのに十分な値となっている。尚、ドラッグ操作の終了と、指による押し込み開始との間に時間がある場合、スクロールがひとまず終了してその後、押し込みにより再開することもあり得る。
【0052】
次いで、押圧力pが時刻t=tまで維持された後、ユーザは、尚表示されていない遠い位置の情報を表示しようとして、指を更に強く押し込み始める。その結果、指の押圧力pは、時刻t=tからt=tまでの間増加し続け、pCAからpCB(>pCA)に変化する。この変化に応じて逐次決定される「ドラッグ後」速度vADも、vADAからvADB(>vADA)まで時間と共に増加する。その結果、スクロール速度は、少なくとも時刻t=tまで「ドラッグ後」速度vADAに維持された後に増加し、時刻t=tの後に、「ドラッグ後」速度vADBに至る。
【0053】
次いで、所望の情報部分の位置に近づいてきた、と認識したユーザは、指の押し込みを徐々に弱め、その結果、押圧力pは、時刻t=tでpCCにまで低下する。これに応じて、「ドラッグ後」速度vADも時間と共に低下し、スクロール速度は、時刻t=tの後に、「ドラッグ後」速度vADCにまで低下する。次いで、ユーザは、押圧力p=pCCの状態で、所望の情報部分を画面内に発見し、時刻t=tで指をタッチパネル100から離す。これに応じて、スクロール速度も少なくとも時刻t=tまで「ドラッグ後」速度vADCを維持した後、ゼロに至る(スクロールが終了する)。
【0054】
以上、本発明によれば、ドラッグ操作に次ぐ指の押し込み、さらにはその押圧力pの調整、という簡易な「ドラッグクリック」操作によって、スクロール速度を制御することができる。その結果、ユーザの所望の情報部分を短時間で表示させることができる。
【0055】
図4は、本発明による携帯型情報機器の構成を概略的に示す斜視図、及び本発明による画像のスクロール方法の一実施形態を示すフローチャートである。また、図5は、本発明による携帯型情報機器の一実施形態を示す機能構成図である。
【0056】
図4によれば、携帯型情報機器1は、タッチパネル100と、ディスプレイ101と、触覚応答機構部102と、押圧力検出部103と、プロセッサ・メモリとを有する。ここで、プロセッサ・メモリは、プログラムを実行することによってその機能を実現させる。
【0057】
ディスプレイ101は、画面に画像を表示する。また、タッチパネル100は、ディスプレイ100の画面上に配置されており、ユーザの指の接触位置を時間経過に応じて逐次出力する。このタッチパネル100としては、投影型静電容量方式タッチパネル、表面型静電容量方式タッチパネル、抵抗膜方式タッチパネル、超音波表面弾性波方式タッチパネル、又は赤外線走査方式タッチパネル等を採用することができる。
【0058】
触覚応答機構部102は、タッチパネル100に接触した指に対して、タッチパネル100を振動させることにより触覚応答を与える。例えば、ドラッグ操作の後、指がタッチパネル100に押し込まれた際、その押圧力pによって制御されたスクロール速度に対応した振動v(図1(C1)及び(C2))を指に与える。触覚応答機構部102は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料を用いて形成された圧電アクチュエータとすることができる。
【0059】
押圧力検出部103は、指によってタッチパネル100に与えられる押圧力pを検出する。押圧力検出部103は、例えば、タッチパネル100の四隅下に設置されており、指を押し付けられて撓んだタッチパネル100が自身に及ぼす押圧の合計を、押圧力pとして検出する。この押圧力検出部103が出力する押圧力信号は、後述するスクロール速度決定部122に入力される。押圧力検出部103は、例えば、PZT等の圧電材料を用いて形成された圧電センサとすることができる。また、圧電アクチュエータで構成された触覚応答機構部102を設ける代わりに又は設けると共に、この押圧力検出部103を触覚応答機構部として利用することも可能である。
【0060】
プロセッサ・メモリは、タッチパネル100から出力される指の接触位置信号と、押圧力検出部103から出力される押圧力信号とを入力し、これらの信号に基づいてユーザの指による「ドラッグクリック」操作を認知し、その操作の内容に合わせて画像全体をスクロールさせる。ここで、図5を用いて、このプロセッサ・メモリの機能構成を説明する。
【0061】
図5によれば、プロセッサ・メモリは、操作判定部121と、スクロール速度決定部122と、スクロール制御部123と、触覚応答制御部124と、表示制御部111と、アプリケーション処理部112とを有している。
【0062】
操作判定部121は、タッチパネル100から出力される指の接触位置信号を入力し、指のタッチパネル100への接触直後に指の接触位置が移動したか否か、すなわちドラッグ操作が開始されたか否かを判定し、この判定結果をスクロール制御部123に出力する。さらに、その後、接触位置の移動が終了したか否か、すなわちドラッグ操作が終了したか否かを判定し、この判定結果もスクロール制御部123に出力する。
【0063】
スクロール速度決定部122は、押圧力検出部103から出力された押圧力信号を入力し、ドラッグ操作後の押圧力pの大きさに応じて、「ドラッグ後」速度vADを決定する。スクロール速度決定部122は、図2に示したような、押圧力pと「ドラッグ後」速度vADとの所定の関係を、例えばメモリに保持している。スクロール速度決定部122は、この保持した関係を用いて、押圧力検出部103から受け取った押圧力p値に対応する「ドラッグ後」速度vADを、逐次算出し、スクロール制御部123に逐次出力する。
【0064】
スクロール制御部123は、操作判定部121からドラッグ操作が開始されたとの判定結果を入力した場合、画像全体をスクロールさせるよう表示制御部111に指示する。スクロール制御部123は、さらに、スクロールの向き及びスクロールの量を、操作判定部121から入力した、ドラッグ操作における指の接触位置の移動の向き及び移動量に基づいて決定し、表示制御部111に指示する。
【0065】
さらに、スクロール制御部123は、操作判定部121からドラッグ操作が終了したとの判定結果を入力した場合、スクロール速度決定部122から出力された「ドラッグ後」速度vADで画像全体を更にスクロールさせるように、表示制御部111に指示する。ここで、この更なるスクロールの向きは、好ましくは、ドラッグ操作によるスクロールの向きと同じとされる。
【0066】
触覚応答制御部124は、スクロール制御部123から出力される、更なるスクロールの指示情報を入力し、スクロール速度に応じた触覚応答(例えば振動v(図1(C1)及び(C2)))を指に対して与えるべく触覚応答機構部102を制御する。この際、例えば、押圧力がpC1からpC2に急に増加した場合、対応して設定される「ドラッグ後」速度もvAD1からvAD2に急に変化する。しかしながら、実際のスクロール速度では、vAD1からvAD2への変化を段階的ではなく連続的に且つ滑らかに行うことができる。この場合、触覚応答制御部124は、この実際の滑らかに変化するスクロール速度に連動するように、触覚応答(振動v)の強さを変化させることができる。
【0067】
表示制御部111は、アプリケーション処理部112からのアプリケーション処理情報を入力して、アプリケーションの実行に応じた画像をディスプレイ101に表示させる。また、表示制御部111は、スクロール制御部123から出力される、画像全体をスクロールさせる指示情報を入力し、指示されたスクロール条件に応じて画像全体をスクロールするようにディスプレイ101に表示させる。
【0068】
次いで、図4に示されたフローチャートを用いて、プロセッサ・メモリで実施される、画像のスクロール方法の一実施形態を説明する。
【0069】
図4によれば、最初に、タッチパネル100が指の接触を検知する(ステップS401)。次いで、操作判定部121が、ドラッグ操作が開始されたか否かを判定する(ステップS402)。ドラッグ操作が開始されたと判定されると、スクロール制御部123が、このドラッグ操作に合わせて画像全体をスクロールさせる(ステップS403)。次いで、操作判定部121は、ドラッグ操作が終了したか否かを判定する(ステップS404)。ここで、ドラッグ操作が終了していないと判定された場合は、スクロールが続行される(ステップS403)。
【0070】
一方、ドラッグ操作が終了したと判定されると、操作判定部121は、さらに、指がタッチパネル100に接触しているか否かを判定する(ステップS411)。ここで、指がタッチパネル100に接触していない(指がタッチパネル100から離れた)と判定された場合、「ドラッグクリック」操作は行われないとして、スクロールは終了する。
【0071】
これに対し、指がタッチパネル100に接触していると判定された場合、押圧力検出部103が、指による押圧力pを測定する(ステップS412)。ここで、所定の閾値pTH0(図2)以上の押圧力pが検出されれば、「ドラッグクリック」操作が行われたことになる。尚、押圧力検出部103は、常時、押圧力pをモニタ(監視)していてもよい。
【0072】
次いで、スクロール速度決定部122が、ドラッグ操作後の押圧力pの大きさに応じて、スクロールの「ドラッグ後」速度vADを決定する(ステップS413)。次いで、スクロール制御部123は、決定された「ドラッグ後」速度vADで画像全体を更にスクロールさせる(ステップS414)。尚、以上述べたS412からS414までのステップは、ステップS411で指が接触していないと判定されるまで繰り返される。
【0073】
以上、詳細に説明したように、本発明のユーザインタフェース装置、画像スクロール方法及びプログラムでは、指の押圧力pの大きさに応じて決定された「ドラッグ後」速度vADで、ドラッグ操作後、画像全体が更にスクロールされる。これにより、画面に表示し切れない情報における、表示されていない遠い位置の部分も、簡易な操作をもって短時間で表示させることができる。
【0074】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0075】
1 携帯型情報機器(ユーザインタフェース装置)
100 タッチパネル
101 ディスプレイ
102 触覚応答機構部
103 押圧力検出部
104 検索結果
105 速度ベクトル
111 表示制御部
112 アプリケーション処理部
121 操作判定部
122 スクロール速度決定部
123 スクロール制御部
124 触覚応答制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示するディスプレイと、該ディスプレイの画面上に配置され、指の接触位置を時間経過に応じて逐次出力するタッチパネルと、当該指により該タッチパネルに与えられた押圧力を検出する押圧力検出部とを備えており、当該指によるドラッグ操作によって画像全体をスクロールするユーザインタフェース装置において、
当該指によるドラッグ操作が終了したか否かを判定する操作判定手段と、
前記操作判定手段が真の判定を行った際、ドラッグ操作後の前記押圧力の大きさに応じて、ドラッグ操作後のスクロールの速度であるドラッグ後速度を決定するスクロール速度決定手段と、
ドラッグ操作によるスクロールの後、決定された前記ドラッグ後速度で画像全体を更にスクロールさせるスクロール制御手段と
を有することを特徴とするユーザインタフェース装置。
【請求項2】
ユーザの操作から見て、ドラッグ操作を行った直後に当該指をタッチパネルに対して押し込んだ場合、前記スクロール制御手段は、スクロールの速度を、前記ドラッグ後速度にまで増加させることを特徴とする請求項1に記載のユーザインタフェース装置。
【請求項3】
前記タッチパネルに接触した当該指に対して触覚応答を与える触覚応答機構部と、
当該指に対して前記タッチパネルを介して、スクロールの速度に応じた触覚応答を与えるべく前記触覚応答機構部を制御する触覚応答制御手段と
を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のユーザインタフェース装置。
【請求項4】
前記触覚応答制御手段は、当該指に、スクロールの速度が高いほど強い振動を与えるように前記触覚応答機構部を制御することを特徴とする請求項3に記載のユーザインタフェース装置。
【請求項5】
前記操作判定手段は、自ら真の判定を行った際、さらに、当該指が前記タッチパネルに接触しているか否かを判定し、前記スクロール制御手段は、当該指が接触していると判定された場合に、決定された前記ドラッグ後速度で画像全体を更にスクロールさせることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のユーザインタフェース装置。
【請求項6】
前記スクロール速度決定手段は、前記押圧力が所定の閾値未満である場合、前記「ドラッグ後」速度をゼロとすることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のユーザインタフェース装置。
【請求項7】
前記スクロール制御手段は、前記ドラッグ操作時のスクロールの向きの情報を保持し、該ドラッグ操作後に、該ドラッグ操作時のスクロールの向きで、画像全体を更にスクロールさせることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のユーザインタフェース装置。
【請求項8】
画像を表示するディスプレイと、該ディスプレイの画面上に配置され、指の接触位置を時間経過に応じて逐次出力するタッチパネルと、当該指により該タッチパネルに与えられた押圧力を検出する押圧力検出部とを備えており、当該指によるドラッグ操作によって画像全体をスクロールするユーザインタフェース装置に搭載されたプログラムにおいて、
当該指によるドラッグ操作が終了したか否かを判定する操作判定手段と、
前記操作判定手段が真の判定を行った際、ドラッグ操作後の前記押圧力の大きさに応じて、ドラッグ操作後のスクロールの速度であるドラッグ後速度を決定するスクロール速度決定手段と、
ドラッグ操作によるスクロールの後、決定された前記ドラッグ後速度で画像全体を更にスクロールさせるスクロール制御手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするユーザインタフェース装置用のプログラム。
【請求項9】
画像を表示するディスプレイと、該ディスプレイの画面上に配置され、指の接触位置を時間経過に応じて逐次出力するタッチパネルと、当該指により該タッチパネルに与えられた押圧力を検出する押圧力検出部とを備えており、当該指によるドラッグ操作によって画像全体をスクロールするユーザインタフェース装置における画像のスクロール方法において、
当該指によるドラッグ操作が終了したか否かを判定する第1のステップと、
第1のステップで真の判定がなされた際、ドラッグ操作後の前記押圧力の大きさに応じて、ドラッグ操作後のスクロールの速度であるドラッグ後速度を決定する第2のステップと、
ドラッグ操作によるスクロールの後、決定された前記ドラッグ後速度で画像全体を更にスクロールさせる第3のステップと
を有することを特徴とする画像のスクロール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−25594(P2013−25594A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160406(P2011−160406)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【復代理人】
【識別番号】100141313
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 富彦
【Fターム(参考)】