押釦スイッチ用部材およびその製造方法
【課題】キートップとベースフィルムとの接着時の加圧により押し跡が発生しにくい押釦スイッチ用部材およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】ベースフィルム10に、接着層9を介して1以上のキートップ1を配置した押釦スイッチ用部材100であって、キートップ1の底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層3および文字領域を加飾するための文字色層4を少なくとも備える加飾層2が設けられ、ベース色層3および/または文字色層4は、熱硬化性インクによって形成される層である押釦スイッチ用部材とする。
【解決手段】ベースフィルム10に、接着層9を介して1以上のキートップ1を配置した押釦スイッチ用部材100であって、キートップ1の底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層3および文字領域を加飾するための文字色層4を少なくとも備える加飾層2が設けられ、ベース色層3および/または文字色層4は、熱硬化性インクによって形成される層である押釦スイッチ用部材とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の押釦スイッチに好適な押釦スイッチ用部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯情報端末装置(PDA)等の電子機器においては、デザインの多様化が要求されている。このため、電子機器の操作部に用いられる押釦スイッチ用部材においても同様に、デザインの多様化が求められている。デザイン性に優れる押釦スイッチ用部材の一形態として、ベースフィルムの表面側に透光性樹脂からなるキートップが設けられ、装飾性等の観点から、キートップの表面に文字、数字、記号、図形、あるいは模様等の表示要素を形成する装飾層が付与したものが知られている。この種の押釦スイッチ用部材の場合、一般的には、例えば、特許文献1に開示されているように、樹脂製のキートップ基体の天面に、そのキートップ基体の外表面側から順に、第一の樹脂薄膜層、無機物質被膜層、透明な第二の樹脂薄膜層を積層した被覆層が形成されている。しかしながら、キートップの天面に装飾層を形成するため、押釦の操作を長期間繰り返すうちに、装飾層に傷がつきやすい。その結果、押釦スイッチ用部材のデザイン性が低下するという問題がある。
【0003】
そこで、上述の問題を解決するため、次のような構成の押釦スイッチ用部材が製造されている。例えば、表示印刷層を有する一つ以上のキートップと該キートップを支持するベースフィルムとを有する押釦スイッチ用部材であって、表示印刷層は、キートップの裏面に設けられ、キートップの天面に対して平行に多重積層するアルミニウム箔群と、該アルミニウム箔群の平行積層状態を実質的に乱さない範囲でアルミニウム箔群を接着固定するバインダー樹脂とを有する(例えば、特許文献2を参照)。かかる押釦スイッチ用部材において、金属粒子を含有するバインダー樹脂を用いて、キートップの裏面に表示印刷層を形成しているため、表示印刷層に傷が付きにくく、メタリック色調を呈する押釦スイッチ用部材が得られる。
【0004】
【特許文献1】特開2007−73463号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2005−5237号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の押釦スイッチ用部材には、次のような問題がある。押釦スイッチ用部材のさらなる薄型化と、キートップとベースフィルムとの高い接着性が求められる現状において、ホットメルトテープまたはホットメルトインク等を用い、加熱・加圧によって、キートップとベースフィルムとを全面接着する手法を用いる。特許文献2に開示される押釦スイッチ用部材の場合、通常、キートップに印刷する際に、加飾印刷のバリエーションの豊富さおよび乾燥時間が短い等の作業性の良さから、熱可塑性インクが使われている。しかし、接着の際に熱が加えると、熱可塑性インク自体が軟らかくなる。このため、加熱・加圧した箇所における加飾印刷層が薄くなる等の原因で、加圧に使用する押圧治具用加熱スタンプの押し跡が発生してしまうという問題がある。特に、キートップの裏面にミラー印刷層あるいは高輝度メタリック印刷層を設ける場合には、加飾印刷層の厚みをほとんど変化させないように加熱・加圧を施しても、押圧によって、熱可塑性インクが僅かに流動し、加飾印刷層に含まれる金属粒子の配向が変わりやすい。この結果、上述と同様に、押し跡が容易に発生してしまう。また、照光式押釦スイッチ用部材を製造する場合には、透光性の着色層を有するため、一般的に淡色系インクが使われる。さらに、表示部のみならず面照光の場合は、その照光面積が広いため、特に、加熱スタンプの押し跡が押釦スイッチ用部材の外観上、見えやすくなるという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、キートップとベースフィルムとの接着時の加圧により押し跡が発生しにくい押釦スイッチ用部材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材であって、キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層および文字領域を加飾するための文字色層を少なくとも備える加飾層が設けられ、ベース色層および/または文字色層は、熱硬化性インクによって形成される層である押釦スイッチ用部材としている。
【0008】
熱硬化性インクは、加熱により溶媒中に含まれる主鎖となるモノマーやオリゴマーと架橋剤との反応を促進させて硬化するものであり、その硬化したものが再溶解・溶融を行わない。上述のような押釦スイッチ用部材とすることで、キートップとベースフィルムとの接着時の加圧により押し跡が発生しにくい押釦スイッチ用部材となる。すなわち、キートップの底面に熱硬化性インクを用いて加飾層を構成するベース色層および/または文字色層を設けることによって、加熱・加圧により接着を行う際に、押し跡の見えない良好な表面形態を有する押釦スイッチ用部材となる。
【0009】
また、別の発明は、ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材であって、キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層および文字領域を加飾するための文字色層を少なくとも備える加飾層が設けられ、ベース色層と文字色層との間に、ベース色層の流動を抑えて補強する補強層を含み、当該補強層は、熱硬化性インクによって形成される層である押釦スイッチ用部材としている。
【0010】
このような押釦スイッチ用部材とすることで、加飾層を構成するベース色層と文字色層が色の種類が豊富な熱可塑性インクによって形成することができ、また、ベース色層と文字色層との間に、熱硬化性インクによってベース色層の流動を抑えて補強する補強層を設けるので、多色多様であってかつ押し跡の見えない良好な表面形態を有する押釦スイッチ用部材となる。
【0011】
また、別の発明は、上述の発明に加え、文字色層の接着層側に、文字領域を除く隠蔽層を形成し、当該隠蔽層は、熱硬化性インクによって形成される層である押釦スイッチ用部材としている。
【0012】
このような押釦スイッチ用部材とすることで、より押し跡の見えない良好な表面形態を有する押釦スイッチ用部材となる。
【0013】
また、別の発明は、上述の発明に加え、熱硬化性インクがエポキシ系樹脂を含む押釦スイッチ用部材としている。
【0014】
エポキシ系樹脂を含む熱硬化性インクを用いてベース層、文字色層、補強層または/および隠蔽層を形成することによって、キートップとベースフィルムとの接着時の加圧により押し跡が発生しにくい。
【0015】
また、別の発明では、上述の発明に加え、熱硬化性インクがウレタン系樹脂を含む押釦スイッチ用部材としている。
【0016】
ウレタン系樹脂を含む熱硬化性インクを用いてベース層または/および文字層を形成することによって、加飾層を形成するための熱硬化性インクを適切に選択できる。その結果、良好な表面形態を有する押釦スイッチ用部材が得られる。
【0017】
また、別の発明は、ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材の製造方法であって、キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層もしくは文字領域を加飾するための文字色層のいずれか一方の加飾層を形成する工程と、ベース色層もしくは文字色層のいずれか他方の加飾層を形成する工程と、キートップとベースフィルムとを接着層を介して接着する工程と、を有し、ベース色層および/また文字色層は、熱硬化性インクによって形成する押釦スイッチ用部材の製造方法としている。
【0018】
キートップの底面に熱硬化性インクを用いて加飾層を構成するベース色層および/または文字色層を形成する工程を有するため、キートップとベースフィルムとの接着時の加圧により押し跡が発生しにくい押釦スイッチ用部材を製造できる。
【0019】
また、別の発明は、ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材であって、キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層を形成する工程と、ベース色層の次にベース色層の流動を抑えて補強する補強層を熱硬化性インクによって形成する工程と、補強層の次に、文字領域を加飾するための文字色層を形成する工程と、キートップとベースフィルムとを接着層を介して接着する工程と、を有する押釦スイッチ用部材の製造方法としている。
【0020】
色の種類が豊富な熱可塑性インクを用いて、加飾層を構成するベース色層および文字色層を形成する工程に加えて、熱硬化性インクを用いて、ベース色層の流動を抑えて補強する補強層を形成する工程を有するため、多色多様であってかつ押し跡の見えない良好な表面形態を有する押釦スイッチ用部材を製造できる。
【0021】
本発明に係る押釦スイッチ用部材およびその製造方法に用いられるキートップの材料としては、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の材料が挙げられる。これらの樹脂等は、キートップの裏面に設けられる種々の層にて加飾層を形成し、キートップの表面からこの加飾層を視認できるように、可視光線を効率よく透過する透明性の高い材料である必要がある。そのため、完全に透明な材質であることが好ましいが、少なくとも可視光線透過率で70%以上の透明性を有していることが必要である。さらに、加工性を考慮すると、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂を用いるのがより好ましい。ただし、上述の樹脂材料は一例に過ぎず、他の樹脂材料を採用しても良い。なお、樹脂材料は、上記のような一種類の樹脂材料でも、二種類以上の樹脂材料の混合物でも良い。また、本発明に係る押釦スイッチ用部材を抜き文字照光式とする場合には、キートップを構成する材料に、金属系材料、ガラスあるいはセラミックス等を用いることもできる。金属系材料としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、チタン等金属と、またはこれらの合金類とを好適に用いることもできる。
【0022】
本発明に係る押釦スイッチ用部材およびその製造方法に用いられるベースフィルムの材料は、薄くても引っ張り強度が高い樹脂が好ましく、特に制限はない。ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコーン等の材料を好適に用いることができる。これらの材料のうち、透光性、易成形性、入手容易性、表面状態が良好であることから、特に、ポリカーボネート樹脂またはポリウレタン樹脂を好適に用いることができる。ただし、上述の樹脂材料は一例に過ぎず、他の樹脂材料を採用しても良い。なお、樹脂材料は、上記のような一種類の樹脂材料でも、二種類以上の樹脂材料の混合物でも良い。また、ベースフィルムが透明性を有するものであれば、裏面に光源を配置することにより、任意の箇所が光るように構成した透光性の押釦スイッチ用部材を得ることができる。また、ベースフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を添加することもできる。
【0023】
本発明に係る押釦スイッチ用部材およびその製造方法に用いられる熱硬化性インクに含まれる熱硬化性樹脂は、熱により橋かけ反応を起こす反応性化合物である。このような化合物としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、あるいはポリイソシアネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうち、印刷される印刷層の硬度が高い点から、特に、エポキシ樹脂を好適に用いることができる。また、色の種類が多様であることから、特に、ウレタン樹脂を好適に用いることができる。ただし、上述の樹脂材料は一例に過ぎず、他の熱硬化性樹脂材料を採用しても良い。
【0024】
本明細書において、「文字領域」とは、文字のみならず、記号、数字、絵等により装飾した領域を意味する。また、「加飾層」は、有色層、無色層を問わず、いずれの層を含むものでも良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、キートップとベースフィルムとの接着時の加圧により押し跡が発生しにくい押釦スイッチ用部材およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明に係る押釦スイッチ用部材およびその製造方法の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に説明する好適な各実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100の正面図である。図2は、図1に示す押釦スイッチ用部材100のA−A線断面図である。
【0028】
図1および図2に示すように、押釦スイッチ用部材100は、ベースフィルム10と、その表側に配置される樹脂製のキートップ1と、装飾フレーム50と、ベースシート20とを主に備えている。
【0029】
キートップ1は、好適には、ポリカーボネート樹脂から成形され、その裏面に加飾層2を備える部材である。また、キートップ1の表面の全面若しくは一部には、文字、数字あるいは図柄等の模様を有する装飾層(図示せず)が形成されても良い。装飾層の形成方法は、特に限定されず、蒸着、めっき、印刷または塗装等を用いた公知の方法によって形成することができる。加飾層2に加えて装飾層を形成することによって、押釦スイッチ用部材100の美的効果をより向上させることができる。また、キートップ1の表面に装飾層を形成する場合、装飾層の外側表面に透明樹脂から成る保護層を形成するのが好ましい。このような保護層を形成すれば、装飾層を外傷から効果的に保護できる。
【0030】
ベースフィルム10は、好適には、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂、そのアロイに形成され、より好ましいのがポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂に形成される薄い板状の部材であり、接着層9を介して複数のキートップ5を接着している。ベースフィルム10の好適な厚さは、0.03mm以上0.2mm以下の範囲であり、特に好ましい厚さは、0.05mm以上0.1mm以下の範囲である。ベースフィルム10の厚さが0.03mm以上の場合には、ベースフィルム10に対して加熱・加圧スタンプの加熱・加圧を行う時に、ベースフィルム10が破れるのを低減することができる。また、ベースフィルム10の厚さが0.2mm以下の場合には、押釦スイッチ用部材100をより薄型にできる。また、接着層9は、加熱・加圧により軟化、溶融または反応する材料、例えば、ホットメルトテープまたはホットメルトインク等により形成される。また、ベースフィルム10の裏側に押圧子25を設けても良い。この場合、ベースシート20を配置する必要がない。
【0031】
ベースシート20は、押釦スイッチ用部材100の裏側に配置されるスイッチ(図示せず)を押すための押圧子25を備える部材である。ベースシート20の材料としては、キートップ1を押したときに変形しやすく離したときにはすぐに復帰する反撥性のよい熱硬化性樹脂もしくは熱可塑性樹脂または熱硬化性エラストマーもしくは熱可塑性エラストマーが好ましい。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル系樹脂、アミド樹脂またはそれらの共重合体、シリコーンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、ブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、イソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのゴム状弾性のうち、温度依存性が少ない点から、シリコーンゴムを用いるのがより好ましい。また、押圧子25はベースシート20とは異なる材料を接着しても良い。特に、ポリエステル樹脂に形成されるベースシート20に光硬化性アクリル樹脂による押圧子25を成形したものを用いるのが好適である。
【0032】
フレーム50およびベースシート20は、それぞれ、接着層55および接着層21を介して、ベースフィルム10の上面および下面にそれぞれ接着されている。接着層55,21は、接着層9を構成する接着材料の他、粘着剤あるいは両面テープ等により形成されても良い。
【0033】
図3は、図2に示す押釦スイッチ用部材100のB部分の拡大図である。
【0034】
図3に示すように、キートップ1の裏面に加飾層2が設けられる。加飾層2は、キートップ1の裏面から順に、ベース色層3、文字色層4、隠蔽層5が積層して形成される。ベース色層3は、文字領域を除いて加飾するための層であって、熱可塑性ミラーインクによって形成される。文字色層4は、文字領域を加飾するための層であって、ベース色層3の上から文字領域を埋めるように形成される層である。隠蔽層5は、文字領域を除いて形成され、文字色層4の上から覆うことによって、キートップ1の表からベースフィルム10側が見えないように隠蔽するとともに、下方からの内部光源による照光時に文字領域を除いた部分の光透過を抑えるための層である。この実施の形態では、文字色層4と隠蔽層5は、ベース色層3の流動を防ぐ補強層としての機能を有し、熱硬化性インクによって形成される。一方、ベース色層3は、熱可塑性インクによって形成される。このため、色の種類が豊富な熱可塑性インクを選択でき、多色多様なベース色層3を形成することできる。また、ベース色層3の直下に熱硬化性インクによって文字色層4を形成しているため、ベース色層3の上下両面をキートップ1および熱硬化性インクによって固定される。したがって、接着層9を介して加熱・加圧によりキートップ1とベースフィルム10の接着を行う際、ベース色層3の流動を抑えることができる。その結果、ミラー印刷層であるベース層3を設ける場合に、ベース印刷層3に含まれる金属粒子の配向が変化しにくく、押し跡が生じにくい。
【0035】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100の製造方法について説明する。
【0036】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100の製造工程を示すフローチャートである。図5および図6は、本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100の製造工程を段階的に示す図である。
【0037】
まず、押釦形状に形成された複数のキートップ1を成形する(ステップS101)。この実施の形態では、図5(A)に示すように、キートップ1は樹脂材料を金型内に射出成形することにより成形される。樹脂材料として、ポリカーボネート系樹脂を好適に用いることができる。
【0038】
次に、キートップ1の裏面にベース色層3を形成する(ステップS102)。この実施の形態では、図5(B)に示すように、キートップ1の裏面に、熱可塑性ミラーインクを用いて、文字領域を除く形態にてベース色層3が形成されている。ベース色層3の形成方法の例としては、例えば、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法またはコート印刷法等の印刷法が挙げられる。特に、多色刷りまたは階調表現を行う場合には、スクリーン印刷法、オフセット印刷法またはグラビア印刷法を好適に用いることができる。また、ベース色層3は、表現したい図柄に応じて、全面または部分的に設けることもできる。
【0039】
続いて、文字色層4および隠蔽層5を順次積層して形成する(ステップS103,ステップS104)。具体的には、図5(C)に示すように、まず。ベース色層3の裏面に熱硬化性インクを用いて、ベース色層3の文字領域を充填するように、文字色層4を形成する。次に、文字色層4の上から、熱硬化性インクを用いて、隠蔽層5を形成する。文字色層4および隠蔽層5の形成方法としては、特に限定せず、ベース色層3の形成と同様の印刷法を採用することができる。
【0040】
次に、図5(D)に示すように、ベースフィルム10および加熱・加圧により軟化または溶融可能な接着層9の材料を用意する(ステップS105)。この実施の形態において、ベースフィルム10は、好適には、ポリウレタン樹脂製のフィルムである。ただし、ベースフィルム10をポリウレタン樹脂以外の樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂から構成しても良い。また、接着層9用の材料としては、ホットメルトテープあるいはホットメルトインクを用いるのが好ましい。ホットメルトテープを用いる場合、例えば、キートップ1とベースフィルム10の間に、キートップ1の形状にカットしたホットメルトテープを配置し、加熱・加圧によってキートップ1とベースフィルム10とを接着させる。また、位置決めが難しい場合、ホットメルトテープを予めキートップ1とベースフィルム10のいずれか一方に仮接着させた後に、他方と加熱・加圧によって接着させることができる。また、ホットメルトインクを用いる場合、ホットメルト接着剤に溶剤を添加することによってインクの粘度等を調節する。そして、キートップ1とベースフィルム10のいずれか一方にインクを塗布した後、他方と加熱・加圧によって接着させることができる。ただし、ホットメルトテープあるいはホットメルトインクの他、加熱・加圧により軟化または溶融する接着層9を形成できるものであれば、特に限定せず、好適に用いることができる。
【0041】
次に、キートップ1とベースフィルム10を貼り合せる(ステップS106)。図5(E)に示すように、この実施の形態では、キートップ1を吸着固定された接着用治具61とベースフィルム10とを対向配置し、キートップ1の形状にカットしたホットメルトテープを介してキートップ1とベースフィルム10を精度良く貼り合せる。
【0042】
続いて、キートップ1とベースフィルム10を接着する (ステップS107)。この実施の形態では、図5(F)に示すように、ベースフィルム10側に配置された加熱スタンプ62によって加熱・加圧を行い、熱はベースフィルム10を通してホットメルトテープに伝わる。これによって、ホットメルトテープが硬化して、キートップ1とベースフィルム10との接着が行われる。その後、接着用治具61および加熱スタンプ62を互いに分離して、図6(A)に示すように、外観性および接着性に優れる半製品が得られる。
【0043】
次に、加飾フレーム50をベースフィルム10に接着する(ステップS108)。図6(B)に示すように、この実施の形態では、押釦スイッチ用部材100自体で保持可能とするための補強効果を持つため、加飾フレーム50を両面テープにてベースフィルム10におけるキートップ1の領域より外周部に貼り付ける。加飾フレーム50は、好適には、ポリカーボネート樹脂製の部材である。ただし、加飾フレーム50をポリカーボネート樹脂以外の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂またはABS樹脂から構成しても良い。また、デザイン性を高めるため、加飾フレーム50の表面および底面に図柄等の模様を有する印刷層を形成しても良い。印刷層の形成方法は、特に限定されず、形成面となる加飾フレーム50の表面および底面に、インクまたは塗料等を用いた公知の方法によって形成することができる。ただし、必ずしも、加飾フレーム50を形成する必要はない。
【0044】
最後に、ベースシート20をベースフィルム10に接着する(ステップS109)。図6(C)に示すように、この実施の形態では、予め成形された押圧子25を備えるベースシート20を両面テープにてベースフィルム10の裏面に貼り付ける。ベースシート20は、好適には、ポリエステル樹脂製の部材である。ただし、ベースシート20をポリエステル樹脂以外の材料、例えば、ウレタン系熱可塑性エラストマーやシリコーンゴムから構成しても良い。また、ベースシート20とベースフィルム10との接着については、両面テープ以外、他の公知の接着剤を用いても良い。
【0045】
また、図3に示す形態で、加飾層2を構成するベース色層3、文字色層4および隠蔽層5は、全ての層が熱硬化性インクによって形成されても良い。このようにすると、熱可塑性インクにより形成される層がないため、接着する際に、スタンプの押し跡がより発生しにくい。
【0046】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200について説明する。
【0047】
第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200は、先に説明した第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100と共通の部分を有している。なお、以後、第2の実施の形態以降の実施の形態の説明において、各共通の部分については、第1の実施の形態と同じ符号にて示し、また、同じ工程については、重複する説明を省略する。
【0048】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200における図2に示すB部分と同様の部分の拡大図である。
【0049】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、加飾層2は、キートップ1の裏にベース色層3、ベース色層3の裏面に文字領域を充填するように形成されるクリア層6、文字色層4を順次積層して形成される。ベース色層3は、黒色の熱可塑性インクによって形成される。クリア層6は、ベース色層3の流動を抑制する補強層としての機能を有し、無色透明の熱硬化性インクによって形成される。また、文字色層4は、熱可塑性インクによって形成される。熱硬化性インクでは、硬化時の化学反応が色調にも変化を及ぼすため、微妙な色の調整が熱可塑性インクに比べて難しい。このため、加飾層2のクリア層6以外の層は、色の種類が豊富な熱可塑性インクによって形成できる。また、ベース色層3の次に熱硬化性インクによって形成されるクリア層6を設けているため、接着層9を介して加熱・加圧によりキートップ1とベースフィルム10の接着を行う際、ベース色層3の流動を抑えることができ、スタンプの押し跡が生じにくい。
【0050】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200の製造方法について説明する。
【0051】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200の製造工程を示すフローチャートである。図9は、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200の製造工程の一部を段階的に示す図である。図8に示すステップS201、ステップS202およびステップS205〜ステップS209は、それぞれ、図4に示すステップS101、ステップS102およびステップ105〜ステップS109と同じ工程である。また、図9(C)以降の工程の段階図は、図5(C)以降の工程の段階図と共通する。このため、以下の説明では、重複した説明を省略する。
【0052】
まず、図9(A)に示すように、押釦形状に形成された複数のキートップ1を成形する(ステップS201)。次に、図9(B)に示すように、キートップ1の裏面にベース色層3を形成する(ステップS202)。この実施の形態では、キートップ1の裏面における所定位置に、黒色の熱可塑性インクを用いて、文字領域を除いたベース色層3が形成されている。
【0053】
続いて、クリア層6および文字色層4を順次積層して形成する(ステップS203,ステップS204)。具体的には、図9(C)に示すように、まず、ベース色層3の裏面に無色の熱硬化性インクを用いて、ベース色層3の文字領域を充填するように、クリア層6を形成する。次に、クリア層6上から熱可塑性インクによって文字色層4を形成する。クリア層6および文字色層4の形成方法としては、ベース色層3の形成と同様の印刷法を採用することができる。
【0054】
一方、ベースフィルム10および加熱・加圧により軟化または溶融可能な接着層9の材料を用意する(ステップS205)。この実施の形態において、キートップ1と、ベースフィルム10の面側に、ホットメルトインクを用いて、印刷を行うのが好ましい。
【0055】
次に、キートップ1とベースフィルム10を貼り合せて(ステップS206)、接着する (ステップS207)。その後、接着用治具61および加熱スタンプ62を互いに分離して、外観性および接着性に優れる半製品が得られる。
【0056】
次に、加飾フレーム50をベースフィルム10に接着する(ステップS208)。最後に、ベースシート20をベースフィルム10に接着する(ステップS209)。
【0057】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材300について説明する。
【0058】
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材300における図2に示すB部分と同様の部分の拡大図である。
【0059】
第3の実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、加飾層2は、文字色層4とベース色層3とが順次積層して形成されている。文字色層4は、黒色等の色を有する熱可塑性インクによってキートップ1の裏面の略中央に設けられる。ベース色層3は、白色の熱硬化性インクによって文字色層4を覆うように形成される。このため、接着層9を介して加熱・加圧によりキートップ1とベースフィルム10の接着を行う際、文字色層4が流動せず、変形しにくい。
【0060】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材300の製造方法について説明する。
【0061】
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材300の製造工程を示すフローチャートである。図12および図13は、本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材300の製造工程を段階的に示す図である。図11に示すステップS301およびステップS304〜ステップS307は、それぞれ、図4に示すステップS101およびステップ105〜ステップS108と同じ工程である。図12(A)、図12(D)〜図12(F)および図13(A)と図13(B)は、図5(A)、図5(D)〜図5(F)および図6(A)と図6(B)の各段階と同様の工程である。このため、以下の説明では、重複した説明を省略する。
【0062】
まず、図12(A)に示すように、押釦形状に形成された複数のキートップ1を成形する(ステップS301)。次に、図12(B)に示すように、キートップ1の裏面に文字色層4を形成する(ステップS302)。この実施の形態では、キートップ1の裏面における略中央に、黒色等の色を有する熱可塑性インクを用いて、文字色層4を形成する。
【0063】
続いて、文字色層4の上から当該文字色層4を覆うようにベース色層3を形成する(ステップS303)。具体的には、図12(C)に示すように、白色の熱硬化性インクを用いて、文字色層4およびキートップ1の裏面における文字色層4を設けない部分に接するように、ベース色層3を形成する。
【0064】
一方、図12(D)に示すように、押圧子25付きのベースフィルム10および加熱・加圧により軟化または溶融可能な接着層9の材料を用意する(ステップS304)。
【0065】
次に、図12(E)および図12(F)に示すように、接着用治具61と加熱スタンプ62を用いて、キートップ1とベースフィルム10を貼り合せて(ステップS305)、接着する (ステップS306)。その後、接着用治具61および加熱スタンプ62を互いに分離して、外観性および接着性に優れる半製品が得られる(図13(A))。
【0066】
図13(B)に示すように、加飾フレーム50をベースフィルム10に接着する(ステップS307)。
【0067】
以上、本発明実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100,200,300およびその製造方法について説明したが、本発明に係る押釦スイッチ用部材およびその製造方法は、上述の各実施の形態に限定されず、種々変形した形態にて実施可能である。
【0068】
例えば、キートップ1の形状、大きさ、配置あるいは個数は、要求されるデザインに応じて適切に変更することが可能である。
【0069】
また、ベースフィルム10の直下に各々のキートップ1に設けられた加飾層2の平面形状と対応させる発光層を有するELシートを配置したり、ベースフィルム10の下方にEL素子を印刷等で形成した構成でも良い。
【実施例】
【0070】
次に、本発明の各実施例および比較例について説明する。ただし、本発明は、以下例示する各実施例によって限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
まず、ポリカーボネート系樹脂製(カリバー301−22,住友ダウ社製)キートップを射出成形し、熱可塑性インク(鏡面インクNo.3,セイコーアドバンス社製)にて樹脂製キートップの裏面に、文字領域を除くようにベース色層を形成した。室温で24時間乾燥した後、ウレタン系2液硬化型の熱硬化性インク(SG429B,セイコーアドバンス社製)を用いて、ベース色層の文字領域を充填するように文字色層および隠蔽層を順次積層して形成した。文字色層および隠蔽層をそれぞれ形成した後、80℃で30分間ずつ乾燥した。一方、50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂製ベースフィルムおよびキートップの形状にカットしたホットメルトテープ(AS−11,日東電工社製)をそれぞれ用意した。
【0072】
次に、キートップを吸着固定した接着用治具とベースフィルムとを対向配置し、キートップの形状にカットしたホットメルトテープを介してキートップとベースフィルムを精度良く貼り合せた後、ベースフィルム側に配置された加熱スタンプによって160℃で20秒間加熱・加圧を行った。これによって、ホットメルトテープを硬化させ、接着剤層を介してキートップとベースフィルムを接着した。その後、接着用治具および加熱スタンプを互いに分離して、半製品を得た。続いて、予め裏面に印刷層を設けた加飾フレームを両面テープにてベースフィルムにおけるキートップの領域より外周部に貼り付けた。最後に、予め成形された押圧子を備えるベースシートを両面テープにてベースフィルムの裏面に貼り付けて、押釦スイッチ用部材の製造を完了した。得られた押釦スイッチ用部材は、熱可塑性鏡面インクによってベース色層を形成し、また、熱硬化性インクによって補強層としての機能を有する文字色層および隠蔽層を形成したので、押し跡の見えない良好な表面形態を有していた。
【0073】
(実施例2)
まず、ポリカーボネート系樹脂製(カリバー301−22,住友ダウ社製)キートップを射出成形し、熱硬化性メタリックインク(SG740,セイコーアドバンス社製)にて樹脂製キートップの裏面に、文字領域を除くようにベース色層を形成した。室温で24時間乾燥した後、ウレタン系2液硬化型の熱硬化性インク(SG740,セイコーアドバンス社製)を用いて、ベース色層の文字領域を充填するように文字色層および隠蔽層を順次積層して形成した。文字色層および隠蔽層をそれぞれ形成した後、80℃で30分間ずつ乾燥した。一方、接着インキ(SG740クリア,セイコーアドバンス社製)に10%のイソホロン溶剤を添加することによってインクの粘度等を調節した後、用意した厚さ50μmのポリウレタン樹脂製ベースフィルムに、印刷により接着層を形成した。
【0074】
次に、キートップを吸着固定した接着用治具とベースフィルムとを対向配置し、キートップの位置と対応する接着層を介してキートップとベースフィルムを精度良く貼り合せた後、ベースフィルム側に配置された加熱スタンプによって160℃で20秒間加熱・加圧を行った。これによって、接着層を介してキートップとベースフィルムを接着した。その後、接着用治具および加熱スタンプを互いに分離して、半製品を得た。続いて、予め裏面に印刷層を設けた加飾フレームを両面テープにてベースフィルムにおけるキートップの領域より外周部に貼り付けた。最後に、予め成形された押圧子を備えるベースシートを両面テープにてベースフィルムの裏面に貼り付けて、押釦スイッチ用部材の製造を完了した。得られた押釦スイッチ用部材は、加飾層を構成するベース色層、文字色層および隠蔽層のいずれも熱硬化性インクによって形成されているため、押し跡が全く見えない良好な表面形態を有していた。
【0075】
(実施例3)
まず、ポリカーボネート系樹脂製(カリバー301−22,住友ダウ社製)キートップを射出成形し、熱可塑性インク(CAVメイバン黒,セイコーアドバンス社製)にて樹脂製キートップの裏面に文字領域を除くようにベース色層を形成した。60℃で5分間乾燥した後、エポキシ系2液硬化型の熱硬化性インク(#1000 クリア,セイコーアドバンス社製)を用いて、ベース色層の文字領域を充填するようにクリア層を形成して60℃で5分間乾燥し、さらに、熱可塑性インク(CAVメイバン,セイコーアドバンス社製)にてクリア層の裏面に文字色層を形成した後、80℃で30分間乾燥した。一方、用意した50μmのポリウレタン樹脂製ベースフィルムにホットメルトインク(AD−HM6,十条ケミカル社製)を印刷することにより接着層を形成した。
【0076】
次に、キートップを吸着固定した接着用治具とベースフィルムとを対向配置し、キートップの位置と対応する接着層を介してキートップとベースフィルムを精度良く貼り合せた後、ベースフィルム側に配置された加熱スタンプによって160℃で35秒間加熱・加圧を行った。これによって、形成された接着層を介してキートップとベースフィルムを接着した。その後、接着用治具および加熱スタンプを互いに分離して、半製品を得た。続いて、予め裏面に印刷層を設けた加飾フレームを両面テープにてベースフィルムにおけるキートップの領域より外周部に貼り付けた。最後に、予め成形された押圧子を備えるベースシートを両面テープにてベースフィルム外周部の裏面に貼り付けて、押釦スイッチ用部材の製造を完了した。得られた押釦スイッチ用部材は、加飾層のクリア層以外の着色層が色の種類が豊富な熱可塑性インクによって形成され、また、ベース色層の直下に熱硬化性インクによって形成される無色のクリア層を設けたので、多色多様であってかつ押し跡の見えない良好な表面形態を有していた。
【0077】
(実施例4)
まず、ポリカーボネート系樹脂製(カリバー301−22,住友ダウ社製)キートップを射出成形し、得られたキートップの裏面における略中央に、熱可塑性インク(CAVメイバン,セイコーアドバンス社製)にて文字色層を形成した。60℃で5分間乾燥した後、ウレタン2液硬化型の熱硬化性インク(MIB 白、帝国インキ製造社製)を用いて、文字色層およびキートップの裏面部分に接するようにベース色層を形成し、80℃で30分間乾燥した。一方、接着インキ(SG740クリア,セイコーアドバンス社製)に10%のイソホロン溶剤を添加することによってインクの粘度等を調節した後、用意したアクリル系UV硬化樹脂製の押圧子を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂製ベースフィルムに、印刷により接着層を形成した。
【0078】
次に、キートップを吸着固定された接着用治具とベースフィルムとを対向配置し、キートップの位置と対応する接着層を介してキートップとベースフィルムを精度良く貼り合せた後、ベースフィルム側に配置された加熱スタンプによって160℃で20秒間加熱・加圧を行った。これによって、形成された接着層を介してキートップとベースフィルムを接着した。その後、接着用治具および加熱スタンプを互いに分離して、半製品を得た。続いて、予め裏面に印刷層を設けた加飾フレームを両面テープにてベースフィルムにおけるキートップの領域より外周部に貼り付けた。
【0079】
(比較例1)
まず、ポリカーボネート系樹脂製(カリバー301−22,住友ダウ社製)キートップを射出成形し、熱可塑性インク(CAVメイバン,セイコーアドバンス社製)にてキートップの裏面にベース色層、文字色層および隠蔽層を順次積層して形成した。一方、接着インキ(SG740クリア,セイコーアドバンス社製)に10%のイソホロン溶剤を添加することによってインクの粘度等を調節した後、用意した50μmのポリウレタン樹脂製ベースフィルムに、印刷により接着層を形成した。
【0080】
次に、キートップを吸着固定された接着用治具とベースフィルムとを対向配置し、キートップの位置と対応する接着層を介してキートップとベースフィルムを精度良く貼り合せた後、ベースフィルム側に配置された加熱スタンプによって160℃で20秒間加熱・加圧を行った。これによって、形成された接着層を介してキートップとベースフィルムを接着した。その後、接着用治具および加熱スタンプを互いに分離して、半製品を得た。続いて、予め裏面に印刷層を設けた加飾フレームを両面テープにてベースフィルムにおけるキートップの領域より外周部に貼り付けた。最後に、予め成形された押圧子を備えるベースシートを両面テープにてベースフィルムの裏面に貼り付けて、押釦スイッチ用部材の製造を完了した。得られた押釦スイッチ用部材は、ベース色層、文字色層および隠蔽層がいずれもは熱可塑性インクにて形成されているので、接着層を介して加熱・加圧によりキートップとベースフィルムの接着を行う際、熱可塑性インク自体が軟らかくなり、加熱・加圧した箇所における加飾層が薄くなった。このような原因で生じた押し跡が外観上容易に見えた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、各種の入力装置に利用できる。特に、電子機器の入力装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の正面図である。
【図2】図1に示す押釦スイッチ用部材のA−A線断面図である。
【図3】図3は、図2に示す押釦スイッチ用部材のB部分の拡大図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を段階的に示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を段階的に示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材における図2に示すB部分と同様の部分の拡大図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程の一部分を段階的に示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材における図2に示すB部分と同様の部分の拡大図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を段階的に示す図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を段階的に示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1…キートップ
2…加飾層
3…ベース色層
4…文字色層
5…隠蔽層
6…クリア層
9…接着層
10…ベースフィルム
20…ベースシート
21…接着層
25…押圧子
50…装飾フレーム
55…接着層
61…接着用治具
62…加熱スタンプ
100,200,300…押釦スイッチ用部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の押釦スイッチに好適な押釦スイッチ用部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯情報端末装置(PDA)等の電子機器においては、デザインの多様化が要求されている。このため、電子機器の操作部に用いられる押釦スイッチ用部材においても同様に、デザインの多様化が求められている。デザイン性に優れる押釦スイッチ用部材の一形態として、ベースフィルムの表面側に透光性樹脂からなるキートップが設けられ、装飾性等の観点から、キートップの表面に文字、数字、記号、図形、あるいは模様等の表示要素を形成する装飾層が付与したものが知られている。この種の押釦スイッチ用部材の場合、一般的には、例えば、特許文献1に開示されているように、樹脂製のキートップ基体の天面に、そのキートップ基体の外表面側から順に、第一の樹脂薄膜層、無機物質被膜層、透明な第二の樹脂薄膜層を積層した被覆層が形成されている。しかしながら、キートップの天面に装飾層を形成するため、押釦の操作を長期間繰り返すうちに、装飾層に傷がつきやすい。その結果、押釦スイッチ用部材のデザイン性が低下するという問題がある。
【0003】
そこで、上述の問題を解決するため、次のような構成の押釦スイッチ用部材が製造されている。例えば、表示印刷層を有する一つ以上のキートップと該キートップを支持するベースフィルムとを有する押釦スイッチ用部材であって、表示印刷層は、キートップの裏面に設けられ、キートップの天面に対して平行に多重積層するアルミニウム箔群と、該アルミニウム箔群の平行積層状態を実質的に乱さない範囲でアルミニウム箔群を接着固定するバインダー樹脂とを有する(例えば、特許文献2を参照)。かかる押釦スイッチ用部材において、金属粒子を含有するバインダー樹脂を用いて、キートップの裏面に表示印刷層を形成しているため、表示印刷層に傷が付きにくく、メタリック色調を呈する押釦スイッチ用部材が得られる。
【0004】
【特許文献1】特開2007−73463号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2005−5237号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の押釦スイッチ用部材には、次のような問題がある。押釦スイッチ用部材のさらなる薄型化と、キートップとベースフィルムとの高い接着性が求められる現状において、ホットメルトテープまたはホットメルトインク等を用い、加熱・加圧によって、キートップとベースフィルムとを全面接着する手法を用いる。特許文献2に開示される押釦スイッチ用部材の場合、通常、キートップに印刷する際に、加飾印刷のバリエーションの豊富さおよび乾燥時間が短い等の作業性の良さから、熱可塑性インクが使われている。しかし、接着の際に熱が加えると、熱可塑性インク自体が軟らかくなる。このため、加熱・加圧した箇所における加飾印刷層が薄くなる等の原因で、加圧に使用する押圧治具用加熱スタンプの押し跡が発生してしまうという問題がある。特に、キートップの裏面にミラー印刷層あるいは高輝度メタリック印刷層を設ける場合には、加飾印刷層の厚みをほとんど変化させないように加熱・加圧を施しても、押圧によって、熱可塑性インクが僅かに流動し、加飾印刷層に含まれる金属粒子の配向が変わりやすい。この結果、上述と同様に、押し跡が容易に発生してしまう。また、照光式押釦スイッチ用部材を製造する場合には、透光性の着色層を有するため、一般的に淡色系インクが使われる。さらに、表示部のみならず面照光の場合は、その照光面積が広いため、特に、加熱スタンプの押し跡が押釦スイッチ用部材の外観上、見えやすくなるという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、キートップとベースフィルムとの接着時の加圧により押し跡が発生しにくい押釦スイッチ用部材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材であって、キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層および文字領域を加飾するための文字色層を少なくとも備える加飾層が設けられ、ベース色層および/または文字色層は、熱硬化性インクによって形成される層である押釦スイッチ用部材としている。
【0008】
熱硬化性インクは、加熱により溶媒中に含まれる主鎖となるモノマーやオリゴマーと架橋剤との反応を促進させて硬化するものであり、その硬化したものが再溶解・溶融を行わない。上述のような押釦スイッチ用部材とすることで、キートップとベースフィルムとの接着時の加圧により押し跡が発生しにくい押釦スイッチ用部材となる。すなわち、キートップの底面に熱硬化性インクを用いて加飾層を構成するベース色層および/または文字色層を設けることによって、加熱・加圧により接着を行う際に、押し跡の見えない良好な表面形態を有する押釦スイッチ用部材となる。
【0009】
また、別の発明は、ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材であって、キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層および文字領域を加飾するための文字色層を少なくとも備える加飾層が設けられ、ベース色層と文字色層との間に、ベース色層の流動を抑えて補強する補強層を含み、当該補強層は、熱硬化性インクによって形成される層である押釦スイッチ用部材としている。
【0010】
このような押釦スイッチ用部材とすることで、加飾層を構成するベース色層と文字色層が色の種類が豊富な熱可塑性インクによって形成することができ、また、ベース色層と文字色層との間に、熱硬化性インクによってベース色層の流動を抑えて補強する補強層を設けるので、多色多様であってかつ押し跡の見えない良好な表面形態を有する押釦スイッチ用部材となる。
【0011】
また、別の発明は、上述の発明に加え、文字色層の接着層側に、文字領域を除く隠蔽層を形成し、当該隠蔽層は、熱硬化性インクによって形成される層である押釦スイッチ用部材としている。
【0012】
このような押釦スイッチ用部材とすることで、より押し跡の見えない良好な表面形態を有する押釦スイッチ用部材となる。
【0013】
また、別の発明は、上述の発明に加え、熱硬化性インクがエポキシ系樹脂を含む押釦スイッチ用部材としている。
【0014】
エポキシ系樹脂を含む熱硬化性インクを用いてベース層、文字色層、補強層または/および隠蔽層を形成することによって、キートップとベースフィルムとの接着時の加圧により押し跡が発生しにくい。
【0015】
また、別の発明では、上述の発明に加え、熱硬化性インクがウレタン系樹脂を含む押釦スイッチ用部材としている。
【0016】
ウレタン系樹脂を含む熱硬化性インクを用いてベース層または/および文字層を形成することによって、加飾層を形成するための熱硬化性インクを適切に選択できる。その結果、良好な表面形態を有する押釦スイッチ用部材が得られる。
【0017】
また、別の発明は、ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材の製造方法であって、キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層もしくは文字領域を加飾するための文字色層のいずれか一方の加飾層を形成する工程と、ベース色層もしくは文字色層のいずれか他方の加飾層を形成する工程と、キートップとベースフィルムとを接着層を介して接着する工程と、を有し、ベース色層および/また文字色層は、熱硬化性インクによって形成する押釦スイッチ用部材の製造方法としている。
【0018】
キートップの底面に熱硬化性インクを用いて加飾層を構成するベース色層および/または文字色層を形成する工程を有するため、キートップとベースフィルムとの接着時の加圧により押し跡が発生しにくい押釦スイッチ用部材を製造できる。
【0019】
また、別の発明は、ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材であって、キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層を形成する工程と、ベース色層の次にベース色層の流動を抑えて補強する補強層を熱硬化性インクによって形成する工程と、補強層の次に、文字領域を加飾するための文字色層を形成する工程と、キートップとベースフィルムとを接着層を介して接着する工程と、を有する押釦スイッチ用部材の製造方法としている。
【0020】
色の種類が豊富な熱可塑性インクを用いて、加飾層を構成するベース色層および文字色層を形成する工程に加えて、熱硬化性インクを用いて、ベース色層の流動を抑えて補強する補強層を形成する工程を有するため、多色多様であってかつ押し跡の見えない良好な表面形態を有する押釦スイッチ用部材を製造できる。
【0021】
本発明に係る押釦スイッチ用部材およびその製造方法に用いられるキートップの材料としては、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の材料が挙げられる。これらの樹脂等は、キートップの裏面に設けられる種々の層にて加飾層を形成し、キートップの表面からこの加飾層を視認できるように、可視光線を効率よく透過する透明性の高い材料である必要がある。そのため、完全に透明な材質であることが好ましいが、少なくとも可視光線透過率で70%以上の透明性を有していることが必要である。さらに、加工性を考慮すると、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂を用いるのがより好ましい。ただし、上述の樹脂材料は一例に過ぎず、他の樹脂材料を採用しても良い。なお、樹脂材料は、上記のような一種類の樹脂材料でも、二種類以上の樹脂材料の混合物でも良い。また、本発明に係る押釦スイッチ用部材を抜き文字照光式とする場合には、キートップを構成する材料に、金属系材料、ガラスあるいはセラミックス等を用いることもできる。金属系材料としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、チタン等金属と、またはこれらの合金類とを好適に用いることもできる。
【0022】
本発明に係る押釦スイッチ用部材およびその製造方法に用いられるベースフィルムの材料は、薄くても引っ張り強度が高い樹脂が好ましく、特に制限はない。ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコーン等の材料を好適に用いることができる。これらの材料のうち、透光性、易成形性、入手容易性、表面状態が良好であることから、特に、ポリカーボネート樹脂またはポリウレタン樹脂を好適に用いることができる。ただし、上述の樹脂材料は一例に過ぎず、他の樹脂材料を採用しても良い。なお、樹脂材料は、上記のような一種類の樹脂材料でも、二種類以上の樹脂材料の混合物でも良い。また、ベースフィルムが透明性を有するものであれば、裏面に光源を配置することにより、任意の箇所が光るように構成した透光性の押釦スイッチ用部材を得ることができる。また、ベースフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を添加することもできる。
【0023】
本発明に係る押釦スイッチ用部材およびその製造方法に用いられる熱硬化性インクに含まれる熱硬化性樹脂は、熱により橋かけ反応を起こす反応性化合物である。このような化合物としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、あるいはポリイソシアネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうち、印刷される印刷層の硬度が高い点から、特に、エポキシ樹脂を好適に用いることができる。また、色の種類が多様であることから、特に、ウレタン樹脂を好適に用いることができる。ただし、上述の樹脂材料は一例に過ぎず、他の熱硬化性樹脂材料を採用しても良い。
【0024】
本明細書において、「文字領域」とは、文字のみならず、記号、数字、絵等により装飾した領域を意味する。また、「加飾層」は、有色層、無色層を問わず、いずれの層を含むものでも良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、キートップとベースフィルムとの接着時の加圧により押し跡が発生しにくい押釦スイッチ用部材およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明に係る押釦スイッチ用部材およびその製造方法の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に説明する好適な各実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100の正面図である。図2は、図1に示す押釦スイッチ用部材100のA−A線断面図である。
【0028】
図1および図2に示すように、押釦スイッチ用部材100は、ベースフィルム10と、その表側に配置される樹脂製のキートップ1と、装飾フレーム50と、ベースシート20とを主に備えている。
【0029】
キートップ1は、好適には、ポリカーボネート樹脂から成形され、その裏面に加飾層2を備える部材である。また、キートップ1の表面の全面若しくは一部には、文字、数字あるいは図柄等の模様を有する装飾層(図示せず)が形成されても良い。装飾層の形成方法は、特に限定されず、蒸着、めっき、印刷または塗装等を用いた公知の方法によって形成することができる。加飾層2に加えて装飾層を形成することによって、押釦スイッチ用部材100の美的効果をより向上させることができる。また、キートップ1の表面に装飾層を形成する場合、装飾層の外側表面に透明樹脂から成る保護層を形成するのが好ましい。このような保護層を形成すれば、装飾層を外傷から効果的に保護できる。
【0030】
ベースフィルム10は、好適には、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂、そのアロイに形成され、より好ましいのがポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂に形成される薄い板状の部材であり、接着層9を介して複数のキートップ5を接着している。ベースフィルム10の好適な厚さは、0.03mm以上0.2mm以下の範囲であり、特に好ましい厚さは、0.05mm以上0.1mm以下の範囲である。ベースフィルム10の厚さが0.03mm以上の場合には、ベースフィルム10に対して加熱・加圧スタンプの加熱・加圧を行う時に、ベースフィルム10が破れるのを低減することができる。また、ベースフィルム10の厚さが0.2mm以下の場合には、押釦スイッチ用部材100をより薄型にできる。また、接着層9は、加熱・加圧により軟化、溶融または反応する材料、例えば、ホットメルトテープまたはホットメルトインク等により形成される。また、ベースフィルム10の裏側に押圧子25を設けても良い。この場合、ベースシート20を配置する必要がない。
【0031】
ベースシート20は、押釦スイッチ用部材100の裏側に配置されるスイッチ(図示せず)を押すための押圧子25を備える部材である。ベースシート20の材料としては、キートップ1を押したときに変形しやすく離したときにはすぐに復帰する反撥性のよい熱硬化性樹脂もしくは熱可塑性樹脂または熱硬化性エラストマーもしくは熱可塑性エラストマーが好ましい。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル系樹脂、アミド樹脂またはそれらの共重合体、シリコーンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、ブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、イソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのゴム状弾性のうち、温度依存性が少ない点から、シリコーンゴムを用いるのがより好ましい。また、押圧子25はベースシート20とは異なる材料を接着しても良い。特に、ポリエステル樹脂に形成されるベースシート20に光硬化性アクリル樹脂による押圧子25を成形したものを用いるのが好適である。
【0032】
フレーム50およびベースシート20は、それぞれ、接着層55および接着層21を介して、ベースフィルム10の上面および下面にそれぞれ接着されている。接着層55,21は、接着層9を構成する接着材料の他、粘着剤あるいは両面テープ等により形成されても良い。
【0033】
図3は、図2に示す押釦スイッチ用部材100のB部分の拡大図である。
【0034】
図3に示すように、キートップ1の裏面に加飾層2が設けられる。加飾層2は、キートップ1の裏面から順に、ベース色層3、文字色層4、隠蔽層5が積層して形成される。ベース色層3は、文字領域を除いて加飾するための層であって、熱可塑性ミラーインクによって形成される。文字色層4は、文字領域を加飾するための層であって、ベース色層3の上から文字領域を埋めるように形成される層である。隠蔽層5は、文字領域を除いて形成され、文字色層4の上から覆うことによって、キートップ1の表からベースフィルム10側が見えないように隠蔽するとともに、下方からの内部光源による照光時に文字領域を除いた部分の光透過を抑えるための層である。この実施の形態では、文字色層4と隠蔽層5は、ベース色層3の流動を防ぐ補強層としての機能を有し、熱硬化性インクによって形成される。一方、ベース色層3は、熱可塑性インクによって形成される。このため、色の種類が豊富な熱可塑性インクを選択でき、多色多様なベース色層3を形成することできる。また、ベース色層3の直下に熱硬化性インクによって文字色層4を形成しているため、ベース色層3の上下両面をキートップ1および熱硬化性インクによって固定される。したがって、接着層9を介して加熱・加圧によりキートップ1とベースフィルム10の接着を行う際、ベース色層3の流動を抑えることができる。その結果、ミラー印刷層であるベース層3を設ける場合に、ベース印刷層3に含まれる金属粒子の配向が変化しにくく、押し跡が生じにくい。
【0035】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100の製造方法について説明する。
【0036】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100の製造工程を示すフローチャートである。図5および図6は、本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100の製造工程を段階的に示す図である。
【0037】
まず、押釦形状に形成された複数のキートップ1を成形する(ステップS101)。この実施の形態では、図5(A)に示すように、キートップ1は樹脂材料を金型内に射出成形することにより成形される。樹脂材料として、ポリカーボネート系樹脂を好適に用いることができる。
【0038】
次に、キートップ1の裏面にベース色層3を形成する(ステップS102)。この実施の形態では、図5(B)に示すように、キートップ1の裏面に、熱可塑性ミラーインクを用いて、文字領域を除く形態にてベース色層3が形成されている。ベース色層3の形成方法の例としては、例えば、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法またはコート印刷法等の印刷法が挙げられる。特に、多色刷りまたは階調表現を行う場合には、スクリーン印刷法、オフセット印刷法またはグラビア印刷法を好適に用いることができる。また、ベース色層3は、表現したい図柄に応じて、全面または部分的に設けることもできる。
【0039】
続いて、文字色層4および隠蔽層5を順次積層して形成する(ステップS103,ステップS104)。具体的には、図5(C)に示すように、まず。ベース色層3の裏面に熱硬化性インクを用いて、ベース色層3の文字領域を充填するように、文字色層4を形成する。次に、文字色層4の上から、熱硬化性インクを用いて、隠蔽層5を形成する。文字色層4および隠蔽層5の形成方法としては、特に限定せず、ベース色層3の形成と同様の印刷法を採用することができる。
【0040】
次に、図5(D)に示すように、ベースフィルム10および加熱・加圧により軟化または溶融可能な接着層9の材料を用意する(ステップS105)。この実施の形態において、ベースフィルム10は、好適には、ポリウレタン樹脂製のフィルムである。ただし、ベースフィルム10をポリウレタン樹脂以外の樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂から構成しても良い。また、接着層9用の材料としては、ホットメルトテープあるいはホットメルトインクを用いるのが好ましい。ホットメルトテープを用いる場合、例えば、キートップ1とベースフィルム10の間に、キートップ1の形状にカットしたホットメルトテープを配置し、加熱・加圧によってキートップ1とベースフィルム10とを接着させる。また、位置決めが難しい場合、ホットメルトテープを予めキートップ1とベースフィルム10のいずれか一方に仮接着させた後に、他方と加熱・加圧によって接着させることができる。また、ホットメルトインクを用いる場合、ホットメルト接着剤に溶剤を添加することによってインクの粘度等を調節する。そして、キートップ1とベースフィルム10のいずれか一方にインクを塗布した後、他方と加熱・加圧によって接着させることができる。ただし、ホットメルトテープあるいはホットメルトインクの他、加熱・加圧により軟化または溶融する接着層9を形成できるものであれば、特に限定せず、好適に用いることができる。
【0041】
次に、キートップ1とベースフィルム10を貼り合せる(ステップS106)。図5(E)に示すように、この実施の形態では、キートップ1を吸着固定された接着用治具61とベースフィルム10とを対向配置し、キートップ1の形状にカットしたホットメルトテープを介してキートップ1とベースフィルム10を精度良く貼り合せる。
【0042】
続いて、キートップ1とベースフィルム10を接着する (ステップS107)。この実施の形態では、図5(F)に示すように、ベースフィルム10側に配置された加熱スタンプ62によって加熱・加圧を行い、熱はベースフィルム10を通してホットメルトテープに伝わる。これによって、ホットメルトテープが硬化して、キートップ1とベースフィルム10との接着が行われる。その後、接着用治具61および加熱スタンプ62を互いに分離して、図6(A)に示すように、外観性および接着性に優れる半製品が得られる。
【0043】
次に、加飾フレーム50をベースフィルム10に接着する(ステップS108)。図6(B)に示すように、この実施の形態では、押釦スイッチ用部材100自体で保持可能とするための補強効果を持つため、加飾フレーム50を両面テープにてベースフィルム10におけるキートップ1の領域より外周部に貼り付ける。加飾フレーム50は、好適には、ポリカーボネート樹脂製の部材である。ただし、加飾フレーム50をポリカーボネート樹脂以外の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂またはABS樹脂から構成しても良い。また、デザイン性を高めるため、加飾フレーム50の表面および底面に図柄等の模様を有する印刷層を形成しても良い。印刷層の形成方法は、特に限定されず、形成面となる加飾フレーム50の表面および底面に、インクまたは塗料等を用いた公知の方法によって形成することができる。ただし、必ずしも、加飾フレーム50を形成する必要はない。
【0044】
最後に、ベースシート20をベースフィルム10に接着する(ステップS109)。図6(C)に示すように、この実施の形態では、予め成形された押圧子25を備えるベースシート20を両面テープにてベースフィルム10の裏面に貼り付ける。ベースシート20は、好適には、ポリエステル樹脂製の部材である。ただし、ベースシート20をポリエステル樹脂以外の材料、例えば、ウレタン系熱可塑性エラストマーやシリコーンゴムから構成しても良い。また、ベースシート20とベースフィルム10との接着については、両面テープ以外、他の公知の接着剤を用いても良い。
【0045】
また、図3に示す形態で、加飾層2を構成するベース色層3、文字色層4および隠蔽層5は、全ての層が熱硬化性インクによって形成されても良い。このようにすると、熱可塑性インクにより形成される層がないため、接着する際に、スタンプの押し跡がより発生しにくい。
【0046】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200について説明する。
【0047】
第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200は、先に説明した第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100と共通の部分を有している。なお、以後、第2の実施の形態以降の実施の形態の説明において、各共通の部分については、第1の実施の形態と同じ符号にて示し、また、同じ工程については、重複する説明を省略する。
【0048】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200における図2に示すB部分と同様の部分の拡大図である。
【0049】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、加飾層2は、キートップ1の裏にベース色層3、ベース色層3の裏面に文字領域を充填するように形成されるクリア層6、文字色層4を順次積層して形成される。ベース色層3は、黒色の熱可塑性インクによって形成される。クリア層6は、ベース色層3の流動を抑制する補強層としての機能を有し、無色透明の熱硬化性インクによって形成される。また、文字色層4は、熱可塑性インクによって形成される。熱硬化性インクでは、硬化時の化学反応が色調にも変化を及ぼすため、微妙な色の調整が熱可塑性インクに比べて難しい。このため、加飾層2のクリア層6以外の層は、色の種類が豊富な熱可塑性インクによって形成できる。また、ベース色層3の次に熱硬化性インクによって形成されるクリア層6を設けているため、接着層9を介して加熱・加圧によりキートップ1とベースフィルム10の接着を行う際、ベース色層3の流動を抑えることができ、スタンプの押し跡が生じにくい。
【0050】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200の製造方法について説明する。
【0051】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200の製造工程を示すフローチャートである。図9は、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200の製造工程の一部を段階的に示す図である。図8に示すステップS201、ステップS202およびステップS205〜ステップS209は、それぞれ、図4に示すステップS101、ステップS102およびステップ105〜ステップS109と同じ工程である。また、図9(C)以降の工程の段階図は、図5(C)以降の工程の段階図と共通する。このため、以下の説明では、重複した説明を省略する。
【0052】
まず、図9(A)に示すように、押釦形状に形成された複数のキートップ1を成形する(ステップS201)。次に、図9(B)に示すように、キートップ1の裏面にベース色層3を形成する(ステップS202)。この実施の形態では、キートップ1の裏面における所定位置に、黒色の熱可塑性インクを用いて、文字領域を除いたベース色層3が形成されている。
【0053】
続いて、クリア層6および文字色層4を順次積層して形成する(ステップS203,ステップS204)。具体的には、図9(C)に示すように、まず、ベース色層3の裏面に無色の熱硬化性インクを用いて、ベース色層3の文字領域を充填するように、クリア層6を形成する。次に、クリア層6上から熱可塑性インクによって文字色層4を形成する。クリア層6および文字色層4の形成方法としては、ベース色層3の形成と同様の印刷法を採用することができる。
【0054】
一方、ベースフィルム10および加熱・加圧により軟化または溶融可能な接着層9の材料を用意する(ステップS205)。この実施の形態において、キートップ1と、ベースフィルム10の面側に、ホットメルトインクを用いて、印刷を行うのが好ましい。
【0055】
次に、キートップ1とベースフィルム10を貼り合せて(ステップS206)、接着する (ステップS207)。その後、接着用治具61および加熱スタンプ62を互いに分離して、外観性および接着性に優れる半製品が得られる。
【0056】
次に、加飾フレーム50をベースフィルム10に接着する(ステップS208)。最後に、ベースシート20をベースフィルム10に接着する(ステップS209)。
【0057】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材300について説明する。
【0058】
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材300における図2に示すB部分と同様の部分の拡大図である。
【0059】
第3の実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、加飾層2は、文字色層4とベース色層3とが順次積層して形成されている。文字色層4は、黒色等の色を有する熱可塑性インクによってキートップ1の裏面の略中央に設けられる。ベース色層3は、白色の熱硬化性インクによって文字色層4を覆うように形成される。このため、接着層9を介して加熱・加圧によりキートップ1とベースフィルム10の接着を行う際、文字色層4が流動せず、変形しにくい。
【0060】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材300の製造方法について説明する。
【0061】
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材300の製造工程を示すフローチャートである。図12および図13は、本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材300の製造工程を段階的に示す図である。図11に示すステップS301およびステップS304〜ステップS307は、それぞれ、図4に示すステップS101およびステップ105〜ステップS108と同じ工程である。図12(A)、図12(D)〜図12(F)および図13(A)と図13(B)は、図5(A)、図5(D)〜図5(F)および図6(A)と図6(B)の各段階と同様の工程である。このため、以下の説明では、重複した説明を省略する。
【0062】
まず、図12(A)に示すように、押釦形状に形成された複数のキートップ1を成形する(ステップS301)。次に、図12(B)に示すように、キートップ1の裏面に文字色層4を形成する(ステップS302)。この実施の形態では、キートップ1の裏面における略中央に、黒色等の色を有する熱可塑性インクを用いて、文字色層4を形成する。
【0063】
続いて、文字色層4の上から当該文字色層4を覆うようにベース色層3を形成する(ステップS303)。具体的には、図12(C)に示すように、白色の熱硬化性インクを用いて、文字色層4およびキートップ1の裏面における文字色層4を設けない部分に接するように、ベース色層3を形成する。
【0064】
一方、図12(D)に示すように、押圧子25付きのベースフィルム10および加熱・加圧により軟化または溶融可能な接着層9の材料を用意する(ステップS304)。
【0065】
次に、図12(E)および図12(F)に示すように、接着用治具61と加熱スタンプ62を用いて、キートップ1とベースフィルム10を貼り合せて(ステップS305)、接着する (ステップS306)。その後、接着用治具61および加熱スタンプ62を互いに分離して、外観性および接着性に優れる半製品が得られる(図13(A))。
【0066】
図13(B)に示すように、加飾フレーム50をベースフィルム10に接着する(ステップS307)。
【0067】
以上、本発明実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100,200,300およびその製造方法について説明したが、本発明に係る押釦スイッチ用部材およびその製造方法は、上述の各実施の形態に限定されず、種々変形した形態にて実施可能である。
【0068】
例えば、キートップ1の形状、大きさ、配置あるいは個数は、要求されるデザインに応じて適切に変更することが可能である。
【0069】
また、ベースフィルム10の直下に各々のキートップ1に設けられた加飾層2の平面形状と対応させる発光層を有するELシートを配置したり、ベースフィルム10の下方にEL素子を印刷等で形成した構成でも良い。
【実施例】
【0070】
次に、本発明の各実施例および比較例について説明する。ただし、本発明は、以下例示する各実施例によって限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
まず、ポリカーボネート系樹脂製(カリバー301−22,住友ダウ社製)キートップを射出成形し、熱可塑性インク(鏡面インクNo.3,セイコーアドバンス社製)にて樹脂製キートップの裏面に、文字領域を除くようにベース色層を形成した。室温で24時間乾燥した後、ウレタン系2液硬化型の熱硬化性インク(SG429B,セイコーアドバンス社製)を用いて、ベース色層の文字領域を充填するように文字色層および隠蔽層を順次積層して形成した。文字色層および隠蔽層をそれぞれ形成した後、80℃で30分間ずつ乾燥した。一方、50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂製ベースフィルムおよびキートップの形状にカットしたホットメルトテープ(AS−11,日東電工社製)をそれぞれ用意した。
【0072】
次に、キートップを吸着固定した接着用治具とベースフィルムとを対向配置し、キートップの形状にカットしたホットメルトテープを介してキートップとベースフィルムを精度良く貼り合せた後、ベースフィルム側に配置された加熱スタンプによって160℃で20秒間加熱・加圧を行った。これによって、ホットメルトテープを硬化させ、接着剤層を介してキートップとベースフィルムを接着した。その後、接着用治具および加熱スタンプを互いに分離して、半製品を得た。続いて、予め裏面に印刷層を設けた加飾フレームを両面テープにてベースフィルムにおけるキートップの領域より外周部に貼り付けた。最後に、予め成形された押圧子を備えるベースシートを両面テープにてベースフィルムの裏面に貼り付けて、押釦スイッチ用部材の製造を完了した。得られた押釦スイッチ用部材は、熱可塑性鏡面インクによってベース色層を形成し、また、熱硬化性インクによって補強層としての機能を有する文字色層および隠蔽層を形成したので、押し跡の見えない良好な表面形態を有していた。
【0073】
(実施例2)
まず、ポリカーボネート系樹脂製(カリバー301−22,住友ダウ社製)キートップを射出成形し、熱硬化性メタリックインク(SG740,セイコーアドバンス社製)にて樹脂製キートップの裏面に、文字領域を除くようにベース色層を形成した。室温で24時間乾燥した後、ウレタン系2液硬化型の熱硬化性インク(SG740,セイコーアドバンス社製)を用いて、ベース色層の文字領域を充填するように文字色層および隠蔽層を順次積層して形成した。文字色層および隠蔽層をそれぞれ形成した後、80℃で30分間ずつ乾燥した。一方、接着インキ(SG740クリア,セイコーアドバンス社製)に10%のイソホロン溶剤を添加することによってインクの粘度等を調節した後、用意した厚さ50μmのポリウレタン樹脂製ベースフィルムに、印刷により接着層を形成した。
【0074】
次に、キートップを吸着固定した接着用治具とベースフィルムとを対向配置し、キートップの位置と対応する接着層を介してキートップとベースフィルムを精度良く貼り合せた後、ベースフィルム側に配置された加熱スタンプによって160℃で20秒間加熱・加圧を行った。これによって、接着層を介してキートップとベースフィルムを接着した。その後、接着用治具および加熱スタンプを互いに分離して、半製品を得た。続いて、予め裏面に印刷層を設けた加飾フレームを両面テープにてベースフィルムにおけるキートップの領域より外周部に貼り付けた。最後に、予め成形された押圧子を備えるベースシートを両面テープにてベースフィルムの裏面に貼り付けて、押釦スイッチ用部材の製造を完了した。得られた押釦スイッチ用部材は、加飾層を構成するベース色層、文字色層および隠蔽層のいずれも熱硬化性インクによって形成されているため、押し跡が全く見えない良好な表面形態を有していた。
【0075】
(実施例3)
まず、ポリカーボネート系樹脂製(カリバー301−22,住友ダウ社製)キートップを射出成形し、熱可塑性インク(CAVメイバン黒,セイコーアドバンス社製)にて樹脂製キートップの裏面に文字領域を除くようにベース色層を形成した。60℃で5分間乾燥した後、エポキシ系2液硬化型の熱硬化性インク(#1000 クリア,セイコーアドバンス社製)を用いて、ベース色層の文字領域を充填するようにクリア層を形成して60℃で5分間乾燥し、さらに、熱可塑性インク(CAVメイバン,セイコーアドバンス社製)にてクリア層の裏面に文字色層を形成した後、80℃で30分間乾燥した。一方、用意した50μmのポリウレタン樹脂製ベースフィルムにホットメルトインク(AD−HM6,十条ケミカル社製)を印刷することにより接着層を形成した。
【0076】
次に、キートップを吸着固定した接着用治具とベースフィルムとを対向配置し、キートップの位置と対応する接着層を介してキートップとベースフィルムを精度良く貼り合せた後、ベースフィルム側に配置された加熱スタンプによって160℃で35秒間加熱・加圧を行った。これによって、形成された接着層を介してキートップとベースフィルムを接着した。その後、接着用治具および加熱スタンプを互いに分離して、半製品を得た。続いて、予め裏面に印刷層を設けた加飾フレームを両面テープにてベースフィルムにおけるキートップの領域より外周部に貼り付けた。最後に、予め成形された押圧子を備えるベースシートを両面テープにてベースフィルム外周部の裏面に貼り付けて、押釦スイッチ用部材の製造を完了した。得られた押釦スイッチ用部材は、加飾層のクリア層以外の着色層が色の種類が豊富な熱可塑性インクによって形成され、また、ベース色層の直下に熱硬化性インクによって形成される無色のクリア層を設けたので、多色多様であってかつ押し跡の見えない良好な表面形態を有していた。
【0077】
(実施例4)
まず、ポリカーボネート系樹脂製(カリバー301−22,住友ダウ社製)キートップを射出成形し、得られたキートップの裏面における略中央に、熱可塑性インク(CAVメイバン,セイコーアドバンス社製)にて文字色層を形成した。60℃で5分間乾燥した後、ウレタン2液硬化型の熱硬化性インク(MIB 白、帝国インキ製造社製)を用いて、文字色層およびキートップの裏面部分に接するようにベース色層を形成し、80℃で30分間乾燥した。一方、接着インキ(SG740クリア,セイコーアドバンス社製)に10%のイソホロン溶剤を添加することによってインクの粘度等を調節した後、用意したアクリル系UV硬化樹脂製の押圧子を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂製ベースフィルムに、印刷により接着層を形成した。
【0078】
次に、キートップを吸着固定された接着用治具とベースフィルムとを対向配置し、キートップの位置と対応する接着層を介してキートップとベースフィルムを精度良く貼り合せた後、ベースフィルム側に配置された加熱スタンプによって160℃で20秒間加熱・加圧を行った。これによって、形成された接着層を介してキートップとベースフィルムを接着した。その後、接着用治具および加熱スタンプを互いに分離して、半製品を得た。続いて、予め裏面に印刷層を設けた加飾フレームを両面テープにてベースフィルムにおけるキートップの領域より外周部に貼り付けた。
【0079】
(比較例1)
まず、ポリカーボネート系樹脂製(カリバー301−22,住友ダウ社製)キートップを射出成形し、熱可塑性インク(CAVメイバン,セイコーアドバンス社製)にてキートップの裏面にベース色層、文字色層および隠蔽層を順次積層して形成した。一方、接着インキ(SG740クリア,セイコーアドバンス社製)に10%のイソホロン溶剤を添加することによってインクの粘度等を調節した後、用意した50μmのポリウレタン樹脂製ベースフィルムに、印刷により接着層を形成した。
【0080】
次に、キートップを吸着固定された接着用治具とベースフィルムとを対向配置し、キートップの位置と対応する接着層を介してキートップとベースフィルムを精度良く貼り合せた後、ベースフィルム側に配置された加熱スタンプによって160℃で20秒間加熱・加圧を行った。これによって、形成された接着層を介してキートップとベースフィルムを接着した。その後、接着用治具および加熱スタンプを互いに分離して、半製品を得た。続いて、予め裏面に印刷層を設けた加飾フレームを両面テープにてベースフィルムにおけるキートップの領域より外周部に貼り付けた。最後に、予め成形された押圧子を備えるベースシートを両面テープにてベースフィルムの裏面に貼り付けて、押釦スイッチ用部材の製造を完了した。得られた押釦スイッチ用部材は、ベース色層、文字色層および隠蔽層がいずれもは熱可塑性インクにて形成されているので、接着層を介して加熱・加圧によりキートップとベースフィルムの接着を行う際、熱可塑性インク自体が軟らかくなり、加熱・加圧した箇所における加飾層が薄くなった。このような原因で生じた押し跡が外観上容易に見えた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、各種の入力装置に利用できる。特に、電子機器の入力装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の正面図である。
【図2】図1に示す押釦スイッチ用部材のA−A線断面図である。
【図3】図3は、図2に示す押釦スイッチ用部材のB部分の拡大図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を段階的に示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を段階的に示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材における図2に示すB部分と同様の部分の拡大図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程の一部分を段階的に示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材における図2に示すB部分と同様の部分の拡大図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を段階的に示す図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を段階的に示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1…キートップ
2…加飾層
3…ベース色層
4…文字色層
5…隠蔽層
6…クリア層
9…接着層
10…ベースフィルム
20…ベースシート
21…接着層
25…押圧子
50…装飾フレーム
55…接着層
61…接着用治具
62…加熱スタンプ
100,200,300…押釦スイッチ用部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材であって、
上記キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層および上記文字領域を加飾するための文字色層を少なくとも備える加飾層が設けられ、
上記ベース色層および/または上記文字色層は、熱硬化性インクによって形成される層であることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材であって、
上記キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層および上記文字領域を加飾するための文字色層を少なくとも備える加飾層が設けられ、
上記ベース色層と上記文字色層との間に、上記ベース色層の流動を抑えて補強する補強層を含み、当該補強層は、熱硬化性インクによって形成される層であることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
前記文字色層の前記接着層側に、前記文字領域を除く隠蔽層を形成し、当該隠蔽層は、熱硬化性インクによって形成される層であることを特徴とする請求項1または2に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
前記熱硬化性インクは、エポキシ系樹脂を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項5】
前記熱硬化性インクは、ウレタン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項6】
ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材の製造方法であって、
上記キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層もしくは上記文字領域を加飾するための文字色層のいずれか一方の加飾層を形成する工程と、
上記ベース色層もしくは上記文字色層のいずれか他方の加飾層を形成する工程と、
上記キートップと上記ベースフィルムとを接着層を介して接着する工程と、
を有し、上記ベース色層および/また上記文字色層は、熱硬化性インクによって形成することを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項7】
ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材であって、
上記キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層を形成する工程と、
上記ベース色層の次に上記ベース色層の流動を抑えて補強する補強層を熱硬化性インクによって形成する工程と、
上記補強層の次に、上記文字領域を加飾するための文字色層を形成する工程と、
上記キートップと上記ベースフィルムとを接着層を介して接着する工程と、
を有することを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項1】
ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材であって、
上記キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層および上記文字領域を加飾するための文字色層を少なくとも備える加飾層が設けられ、
上記ベース色層および/または上記文字色層は、熱硬化性インクによって形成される層であることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材であって、
上記キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層および上記文字領域を加飾するための文字色層を少なくとも備える加飾層が設けられ、
上記ベース色層と上記文字色層との間に、上記ベース色層の流動を抑えて補強する補強層を含み、当該補強層は、熱硬化性インクによって形成される層であることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
前記文字色層の前記接着層側に、前記文字領域を除く隠蔽層を形成し、当該隠蔽層は、熱硬化性インクによって形成される層であることを特徴とする請求項1または2に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
前記熱硬化性インクは、エポキシ系樹脂を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項5】
前記熱硬化性インクは、ウレタン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項6】
ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材の製造方法であって、
上記キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層もしくは上記文字領域を加飾するための文字色層のいずれか一方の加飾層を形成する工程と、
上記ベース色層もしくは上記文字色層のいずれか他方の加飾層を形成する工程と、
上記キートップと上記ベースフィルムとを接着層を介して接着する工程と、
を有し、上記ベース色層および/また上記文字色層は、熱硬化性インクによって形成することを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項7】
ベースフィルムに、接着層を介して1以上のキートップを配置した押釦スイッチ用部材であって、
上記キートップの底面に、文字領域を除いて加飾するためのベース色層を形成する工程と、
上記ベース色層の次に上記ベース色層の流動を抑えて補強する補強層を熱硬化性インクによって形成する工程と、
上記補強層の次に、上記文字領域を加飾するための文字色層を形成する工程と、
上記キートップと上記ベースフィルムとを接着層を介して接着する工程と、
を有することを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−272145(P2009−272145A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121792(P2008−121792)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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