説明

押釦スイッチ

【課題】 端子を小さくしても基板との取付強度を確保することができる押釦スイッチを提供すること。
【解決手段】 押釦2と接点部10を収容するハウジング3と、ハウジング3から外方に向かって導出し基板50に対する半田付け面16を有した端子15とからなる押釦スイッチ1において、端子15の半田付け面16は端子15のハウジング3からの導出方向に対し傾斜する折り曲げ線18で上方に折り曲げて形成される折り曲げ部17を有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチに関し、特に携帯電話、ゲーム機、各種オーディオ機器等の基板上に面実装される小型の押釦スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やゲーム機、各種オーディオ機器等に使用される操作スイッチとしては、絶縁樹脂等で成形されたハウジング上に、中央固定接点と外側固定接点を設け、これら固定接点の上部に外側固定接点と当接するドーム状の可動接点が設けたものが知られている。また、各固定接点は両側方に延びる接続片を有しており、この接続片の両端にはハウジングの外部に露出する端子が設けられる。この端子は接続片の両端から一端曲げ下げられ、その先はハウジングの下面と略平行とされ、端子の下面を基板に対する半田付け面とする。
【0003】
この押釦スイッチは、ドーム状の可動接点を上方から押すことによって可動接点が中央固定接点に接触して導通し、スイッチとして機能する。また、押圧操作を行いやすくするため、可動接点の上部に所定の形状を有する操作釦が設けられる。このような従来の押釦スイッチとしては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【特許文献1】実登録2572590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、携帯電話、ゲーム機、ポータブルオーディオ機器等の小型化に伴い、これらに使用される押釦スイッチを含む面実装製品の実装面積の小型化要求が益々高まっている。しかし、ハウジングを小型化することで、それに伴って端子も小さくなる。このため、端子と基板との半田付け面積が小さくなって、押釦スイッチの取付強度を確保することが困難となり、これにより押釦スイッチの小型化が阻害されていた。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、端子を小さくしても基板との取付強度を確保することができ小型化を図ることのできる押釦スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る押釦スイッチは、押釦と接点部を収容するハウジングと、該ハウジングから外方に向かって導出し基板に対する半田付け面を有した端子とからなる押釦スイッチにおいて、
上記端子の半田付け面は端子のハウジングからの導出方向に対し傾斜する折り曲げ線で上方に折り曲げて形成される折り曲げ部を有してなることを特徴として構成されている。
【0007】
また、本発明に係る押釦スイッチは、上記端子の折り曲げ部は上記折り曲げ線で90度よりも小さい角度に折り曲げられて上記基板との間に空間部を形成してなることを特徴として構成されている。
【0008】
さらに、本発明に係る押釦スイッチは、上記端子は上記ハウジングの両側面からそれぞれ前後一対ずつ導出され、各端子にそれぞれ上記折り曲げ部を形成してなることを特徴として構成されている。
【0009】
さらにまた、本発明に係る押釦スイッチは、上記前後一対の端子のうち前側の端子は上記折り曲げ線が前面側を向くように折り曲げてなると共に、後側の端子は上記折り曲げ線が後面側を向くように折り曲げてなることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る押釦スイッチによれば、端子の半田付け面は端子のハウジングからの導出方向に対し傾斜する折り曲げ線で上方に折り曲げて形成される折り曲げ部を有してなることにより、折り曲げ部を基板に対し半田付けすることで、端子のハウジングからの導出方向及びそれと直交する方向の両方の向きに対する取付強度を向上させることができるので、端子を小型化しても充分な取付強度を確保することができる。すなわち、押釦スイッチの小型化を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る押釦スイッチによれば、端子の折り曲げ部は折り曲げ線で90度よりも小さい角度に折り曲げられて基板との間に空間部を形成してなることにより、空間部に半田を充填することができるので、折り曲げ部の基板に対する取付強度を充分に確保することができる。
【0012】
さらに、本発明に係る押釦スイッチによれば、端子はハウジングの両側面からそれぞれ前後一対ずつ導出され、各端子にそれぞれ折り曲げ部を形成してなることにより、基板に対する取付強度をより向上させることができる。
【0013】
さらにまた、本発明に係る押釦スイッチによれば、前後一対の端子のうち前側の端子は折り曲げ線が前面側を向くように折り曲げてなると共に、後側の端子は折り曲げ線が後面側を向くように折り曲げてなることにより、基板に対する前後方向の取付強度をいずれも向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面に添って詳細に説明する。図1は本実施形態における押釦スイッチ1の平面図、図2は押釦スイッチ1の正面図、図3は図1のA−A断面図、図4は図1のB−B断面図である。これら各図に示すように、本実施形態における押釦スイッチ1は、押釦2と接点部10とを収容するハウジング3と、接点部10に導通すると共にハウジング3の側面4から外部に導出される端子15とを有してなり、押釦2の操作により、スイッチの切り替えを行うものである。
【0015】
ハウジング3は、図1及び図2に示すように、略方形箱状に形成され、樹脂等の絶縁材料から成形される。ハウジング3には、押釦2と接点部10が収容されており、押釦2の操作により各接点部10が当接又は離隔することによって、スイッチ機能を果たす。
【0016】
ハウジング3に収容される接点部10は、固定接点11と可動接点14とから構成される。固定接点11は、上面が凸状に形成された略円形状の中央接触部12aを有する中央固定接点12と、中央固定接点12を挟む対称位置に、上面が凸状に形成された略矩形状の周辺接触部13a、13aを有する周辺固定接点13とからなる。
【0017】
中央固定接点12は金属等の導電性材料から形成され、図1及び図4に示すように、中央接触部12aと導通し、ハウジング3の側面4に向かって直線的に延びる中央連結部12bと、中央連結部12bに略直交して導通し、ハウジング3の両側方へ略直線的に延びる接続片12cとを有する。
【0018】
同様に周辺固定接点13は金属等の導電性材料から形成され、各周辺接触部13cと導通し、中央連結部12bとは反対方向に延びる周辺連結部13bと、周辺連結部13bと導通し、ハウジング3の両側方へ略直線的に延びる接続片13cを有する。両接続片12c、13cは互いに略平行に設けられている。
【0019】
各固定接点11は、図3に示すようにハウジング3の内底面に中央接触部12aと周辺接触部13a、13aとを露出させてインサート成形される。そして、接続片12c、13cの両端にはそれぞれ、ハウジング3の側面4から突出して露出する端子15、15が設けられる。
【0020】
端子15は、図4に示すように接続片12c、13cの両端から一端曲げ下げられ、その先はハウジング3の下面5と略平行となっている。すなわち、ハウジング3の両側面4、4からは中央固定接点12と導通する端子15と、周辺固定接点13と導通する端子15とが前後一対ずつ導出される。ハウジング3から導出された各端子15の下面は基板に取り付けられる半田付け面16であり、押釦スイッチ1全体が基板と半田付け部16との接合により固定される。
【0021】
ハウジング3の側面4から導出された端子15は、その先端に折り曲げ部17が形成される。折り曲げ部17は、端子15の先端角部20を上方に折り曲げることによって形成される。すなわち、端子15の先端角部20が上方に曲げ起こされて、半田付け面16がハウジング3の前面側又は後面側に露出した状態となる。
【0022】
図5は折り曲げ部17の形成について示した図であり、図5(a)は折り曲げ部17の形成前、図5(b)は折り曲げ部17の形成後について示した平面図、図6は図5(b)のC−C断面図である。折り曲げ部17は、端子15の先端角部20において図5(a)に示す折り曲げ線18で上方に折り曲げることによって形成される。折り曲げ線18は、図5(a)に示す矢印方向である端子15の導出方向に対して傾斜する方向とし、この折り曲げ線18に沿って端子15先端を上方に曲げ起こすことによって、図5(b)に示すように折り曲げ部17が形成される。
【0023】
また、図6に示すように、折り曲げ部17の曲げ角度θは90度より小さい角度とする。曲げ角度θを90度より小さい角度としたことで、折り曲げ部17と基板50との間に空間部19を形成することができる。このため、図7に示すように、この空間部19に半田40を充填することによって、折り曲げ部17の基板50に対する取付強度を充分に確保することができる。
【0024】
折り曲げ線18をハウジング3からの導出方向に対して傾斜する方向として折り曲げ部17を形成することにより、折り曲げ部17の半田付け面16は、端子15のハウジング3からの導出方向及びそれと直交する方向であるハウジング3の前面側又は後面側を向いた形状となる。このため、折り曲げ部17を基板50に半田付けすることで、端子15のハウジング3からの導出方向及びそれと直交する方向の両方の向きに対して半田付けすることができる。
【0025】
すなわち、折り曲げ部17を形成することによって、端子15のハウジング3からの導出方向及びそれと直交する方向の両方の向きに対する取付強度を向上させることができるので、端子15自体を小型化しても、基板50に対する充分な取付強度を確保することができる。これにより、スイッチ1全体の小型化を図ることができる。
【0026】
また、各端子15にそれぞれ折り曲げ部17を形成することによって、端子15それぞれを基板50に対して強固に取付けることができ、全体として取付強度を向上させることができる。
【0027】
また、前後一対の端子15、15に形成された折り曲げ部17は、図1に示すように前側の端子15は折り曲げ線18がハウジング3の前面側を向くように折り曲げられ、後側の端子15は折り曲げ線18がハウジング3の後面側を向くように折り曲げられて、それぞれ折り曲げ部17が形成される。すなわち、各折り曲げ部17が前後の端子15、15に対して前後対称となるように、それぞれ外側の先端角部20に形成される。
【0028】
これにより、前側の端子15の半田付け面16はハウジング3からの導出方向及びハウジング3の前面側を向き、後側の端子15の半田付け面16はハウジング3からの導出方向及びハウジング3の後面側を向いた形状となる。このため、上述のように、前側の端子15は折り曲げ部17によりハウジング3からの導出方向及びこれと直交するハウジング3の前面側からの方向に対する取付強度が向上し、後側の端子15は折り曲げ部17によりハウジング3からの導出方向及びこれと直交するハウジング3の後面側からの方向に対する取付強度が向上する。
【0029】
すなわち、前後一対の端子15、15に、折り曲げ部17を互いに前後対称となるように形成することによって、ハウジング3の導出方向及びこれと直交するハウジング3の前後方向両方に対して取付強度を向上させることができる。また、前後の端子で折り曲げ部17が異なる向きに傾斜しているので、表面実装時に半田溶融差が生じることによるマンハッタン現象(チップ立ち現象)を防止することが可能となる。本実施形態では、折り曲げ部17を端子15の外側の先端角部20に設けることとしたが、折り曲げ部17を端子15の内側の先端角部20にそれぞれ設けることとしてもよい。
【0030】
また、従来の折り曲げ部17を設けない端子15では、端子15の下面が基板50と接合されるので、半田付けの確認が困難であり、半田付けされていない端子があっても発見しにくいという問題があった。しかし、本実施形態では、各端子15先端に折り曲げ部17がそれぞれ形成されており、折り曲げ部17により半田付け面16の一部がそれぞれハウジング3の前面側又は後面側に露出するので、半田付け面16を目視で確認しやすく、容易に半田付けされているかどうか確認することができる。
【0031】
また、ハウジング3は、図1及び図3に示すように、周辺固定接点13の周辺接触部13aに外周下端を当接させて配置された可動接点14を備えている。可動接点14は金属等の導電性材料からなり、弾性を有する円形ドーム状に形成される。可動接点14の上部には、下面に粘着剤が塗布された可撓性を有する略円形の絶縁フィルム30が固着されている。この絶縁フィルム30は可動接点14の中央頂点部14aにも固着されており、円形ドーム状の可動接点14をハウジング3内の所定位置に保持すると共に、スイッチ接点部分に対する粉塵、フラックス等の侵入を防止する。
【0032】
そして、この絶縁フィルム30の上部に押釦2が配置され、押釦2の操作によって絶縁フィルム30を介して可動接点14を押圧する。なお、本実施形態では可動接点14の形状を円形としているが、特にこれに限られるものではなく、例えば八角形、方形等、他の形状でもよい。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこれら実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。本実施形態におけるハウジング3の形状については略方形状としたが、本発明の適用はこれに限られず、各接点部10を収容できる形状であれば、底部を略円形状とする等、本実施形態には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態における押釦スイッチの平面図である。
【図2】押釦スイッチの正面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【図5】本実施形態における折り曲げ部の形成について示す平面図である。
【図6】折り曲げ部が形成された端子の断面図である。
【図7】折り曲げ部が形成された端子を基板に取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 押釦スイッチ
2 押釦
3 ハウジング
4 側面
5 下面
10 接点部
11 固定接点
12 中央固定接点
13 周辺固定接点
14 可動接点
15 端子
16 半田付け面
17 折り曲げ部
18 折り曲げ線
19 空間部
20 先端角部
30 絶縁フィルム
40 半田
50 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押釦と接点部を収容するハウジングと、該ハウジングから外方に向かって導出し基板に対する半田付け面を有した端子とからなる押釦スイッチにおいて、
上記端子の半田付け面は端子のハウジングからの導出方向に対し傾斜する折り曲げ線で上方に折り曲げて形成される折り曲げ部を有してなることを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項2】
上記端子の折り曲げ部は上記折り曲げ線で90度よりも小さい角度に折り曲げられて上記基板との間に空間部を形成してなることを特徴とする請求項1記載の押釦スイッチ。
【請求項3】
上記端子は上記ハウジングの両側面からそれぞれ前後一対ずつ導出され、各端子にそれぞれ上記折り曲げ部を形成してなることを特徴とする請求項1または2記載の押釦スイッチ。
【請求項4】
上記前後一対の端子のうち前側の端子は上記折り曲げ線が前面側を向くように折り曲げてなると共に、後側の端子は上記折り曲げ線が後面側を向くように折り曲げてなることを特徴とする請求項3記載の押釦スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−210194(P2006−210194A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22086(P2005−22086)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】