説明

押釦スイッチ

【課題】周辺固定接点への塵埃の堆積を抑制して固定接点と可動接点との接触性を向上させると共に、弾性バネへの空気の出入りを円滑にできる押釦スイッチを提供すること。
【解決手段】収容部11を有するハウジング2と、ハウジング2の内底面に設けられた中央固定接点5および中央固定接点5の周囲に設けられた周辺固定接点6と、周辺固定接点6に載置され、中央固定接点5に対して離接可能な可動接点7と、押圧により反転可能に膨出して形成され、反転時に可動接点7を中央固定接点5に接触させるラバースプリング3とを備え、周辺固定接点6は、可動接点7側に突出した複数の接点部17a、17bにより可動接点7に接触され、複数の接点部17a、17b間にラバースプリング3の内部と外部とを連通する溝部18を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に組み込まれる押釦スイッチに関し、特に、ラバースプリング等のドーム状の弾性バネを反転動作させてスイッチングする押釦スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドーム状の弾性バネを反転させてスイッチングする押釦スイッチにおいては、弾性バネの反転時に内部の空気を逃がすための流路が形成されている。このように空気の流路が形成された押釦スイッチとして、ゴム製の弾性バネに流路が形成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この押釦スイッチの弾性バネは、円環状の脚部と、脚部から立ち上がりドーム状に膨出する膨出部とを有して構成され、基板に設けられた固定接点を覆うように載置される。
【0003】
弾性バネの脚部には、基板に載置される下面に流路としての複数の溝部が形成され、各溝部は固定接点に向かう半径方向に対して斜めに交差する方向に延在し、固定接点を避ける方向に流路を形成している。そして、押釦スイッチの押圧操作により、弾性バネの反転時に複数の溝部を介して弾性バネの内部の空気が外部に排出され、弾性バネの復帰時に複数の溝部を介して弾性バネの内部に外部から空気が吸入される。この弾性バネの復帰時に、空気と共に塵埃が吸入されても、複数の溝部が固定接点を避ける方向に延在しているため、固定接点付近への塵埃の堆積が防止される。
【0004】
また、空気の流路が形成された押釦スイッチとして、基板上に複数の突起を放射状に配置して、この複数の突起上に弾性バネを配置したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。この押釦スイッチにおいては、複数の突起により形成される基板の上面と弾性バネの下面との隙間が空気の流路となっており、簡易な構成により流路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−281968号公報
【特許文献2】実公平5−9786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、押釦スイッチの接点構造としては、固定接点を中央固定接点および中央固定接点の周囲に配置した周辺固定接点で構成し、可動接点を周辺固定接点に載置した状態で中央固定接点に対して離接可能に構成したものが考えられる。この接点構造に上記した特許文献1に記載の弾性バネを適用した場合には、中央固定接点に塵埃が堆積することを防止できるが、周辺固定接点に塵埃が堆積して周辺固定接点と可動接点との接触性が低下する可能性があった。
【0007】
また、特許文献1に記載の押釦スイッチにおいては、弾性バネがゴム製であるため、弾性バネの反転時に溝部が潰れて所定の溝幅を確保することが困難となり、空気の円滑な出入りが阻害されるおそれがあった。さらに、特許文献2に記載の押釦スイッチにおいては、簡易な構成により流路が形成されるものの、周辺固定接点および中央固定接点に塵埃が堆積することを防止できなかった。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、周辺固定接点への塵埃の堆積を抑制して固定接点と可動接点との接触性を向上させると共に、弾性バネへの空気の出入りを円滑にできる押釦スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の押釦スイッチは、収容部を有するハウジングと、前記ハウジングの内底面に設けられた中央固定接点および前記中央固定接点の周囲に設けられた周辺固定接点と、前記周辺固定接点に載置され、前記中央固定接点に対して離接可能な可動接点と、押圧により反転可能に膨出して形成され、反転時に前記可動接点を前記中央固定接点に接触させる弾性バネとを備え、前記周辺固定接点は、前記可動接点に接触する接点部に前記弾性バネの内部と外部とを連通する流路を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、周辺固定接点の接点部に弾性バネの内部と外部とを連通する流路が設けられるため、押釦スイッチの押圧操作による空気の出入りにより、周辺固定接点の接点部周辺の塵埃が押し流される。したがって、周辺固定接点の接点部に塵埃が堆積することがなく、周辺固定接点と可動接点との接触性が向上される。また、周辺固定接点に流路が形成されるため、弾性バネの反転時に流路が潰れることがなく、空気の出入りを円滑にできる。
【0011】
また本発明は、上記押釦スイッチにおいて、前記周辺固定接点の接点部は、複数であり、前記可動接点側に突出して形成され、前記流路は、前記複数の接点部間に形成された溝部であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、接点部が突出して形成されるため、空気が出入りする溝部の上方において周辺固定接点と可動接点とが接触され、空気の出入りにより侵入する塵埃が接点部に付着するのが防止される。また、周辺固定接点に連なる外部端子を半田付により固定する場合には、周辺固定接点と可動接点との接触位置となる接点部が溝部よりも高い位置に配置で接触されるため、接点部にまでフラックスが上がることを抑制でき、フラックス上がりによる接点部での接触不良を防止することができる。
【0013】
また本発明は、上記押釦スイッチにおいて、前記流路が、前記中央固定接点を避けた方向に延在することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上記押釦スイッチにおいて、前記流路の前記弾性バネの内部側の端部が、前記中央固定接点を避けた方向で吸入および排出するように形成されたことを特徴とする。
【0015】
これらの構成によれば、弾性バネの復帰時に空気と共に塵埃が吸入されても、中央固定接点を避けた方向に塵埃が飛散されるため、中央固定接点での塵埃の堆積を防止することができる。
【0016】
また本発明は、上記押釦スイッチにおいて、前記ハウジングの収容部に設けられ、前記弾性バネを押圧するステムを備え、前記ステムは、前記ハウジングの内周面と前記ステムの外周面との間に隙間を形成するように前記ハウジングにガイドされ、前記隙間は、前記ハウジングの側面側よりも前記ハウジングの角側において広く形成され、前記流路は、前記ハウジングの側面における隣り合う両角の中間位置の近傍に位置され、前記流路の前記弾性バネの外部側の端部が当該側面を向くように形成されたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、ハウジングとステムとで形成された隙間により、ステムの押圧操作時に空気を円滑に出入りさせることができる。また、隙間の広いハウジングの角側から離間した位置において、隙間の狭いハウジングの側面側を介して流路に空気が吸入されるため、大きめの塵埃がハウジングの角側の隙間から直に流路内に吸入されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、周辺固定接点への塵埃の堆積を抑制して固定接点と可動接点との接触性を向上させると共に、弾性バネへの空気の出入りを円滑にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る押釦スイッチの実施の形態を示す図であり、押釦スイッチの全体斜視図である。
【図2】本発明に係る押釦スイッチの実施の形態を示す図であり、押釦スイッチの分解斜視図である。
【図3】本発明に係る押釦スイッチの実施の形態を示す図であり、押釦スイッチに形成された流路の説明図である。
【図4】本発明に係る押釦スイッチの実施の形態を示す図であり、押釦スイッチの押圧操作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る押釦スイッチの全体斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係る押釦スイッチの分解斜視図である。
【0021】
図1および図2に示すように、押釦スイッチ1は、各種電気機器の操作スイッチとして使用されるものであり、中央固定接点5および一対の周辺固定接点6が設けられたハウジング2に、可動接点7および弾性バネとしてのラバースプリング3を収容し、ハウジング2に上方からステム4を装着して組み立てられる。この組み立てられた押釦スイッチ1は、押圧操作時のラバースプリング3の反転動作により、操作フィーリングが向上されている。
【0022】
ハウジング2は、上面が開放された箱状であり、内部に可動接点7およびラバースプリング3が収容される収容部11が形成されている。収容部11の四隅には底壁から上方に向けて上面視円弧状の円弧状壁部13が突出して形成され、各円弧状壁部13の内周面に可動接点7およびラバースプリング3の脚部31が保持される。また、各円弧状壁部13の外周面は、ハウジング2の側壁の内周面と共にガイド穴部14を形成し、このガイド穴部14によりステム4が収容部11の奥までガイドされる。
【0023】
中央固定接点5および一対の周辺固定接点6は、金属板により形成され、インサート成形等によりハウジング2の底壁に一体的に配設されている。中央固定接点5は、ハウジング2の底壁の中央に配設され、一対の周辺固定接点6は、中央固定接点5を挟んで対向する位置に配設されている。中央固定接点5は、平板部分から上方に突出した接点部16を有し、接点部16は一部を切り欠いた略円形状の外形を有している。
【0024】
一対の周辺固定接点6は、それぞれ平板部分から上方に突出した一対の接点部17a、17bを有し、接点部17a、17b間には流路としての溝部18が形成されている。また、中央固定接点5および一対の周辺固定接点6には、それぞれ外部端子19が接続されており、各外部端子19はハウジング2の四隅から外部に延出されている。なお、一対の周辺固定接点6の溝部18の詳細については後述する。
【0025】
可動接点7は、バネ性を有するリン青銅板等により形成されており、中央が開口された環状板部21と、環状板部21の内側において片持支持された接触片23とを有している。環状板部21は、四方に位置決め用の位置決め片24を有して略円環状に形成され、各位置決め片24が隣り合う円弧状壁部13間の空きスペースに位置合わせされることでハウジング2に前後左右に位置決め載置される。また、環状板部21は、周辺固定接点6の接点部17a、17bの突出端面に載置され、周辺固定接点6と共に流路を形成している。
【0026】
接触片23は、環状板部21の一部から環状板部21の開口22の中心に向かって延在し、自由端側が中央固定接点5の上方に位置される。また、接触片23は、環状板部21の接続部分を支点として揺動し、中央固定接点5に対して離接可能に構成されている。接触片23の自由端側には中央固定接点5に接触する複数の接点部25およびラバースプリング3に押圧される被押圧部26が形成されている。
【0027】
複数の接点部25は、被押圧部26を囲む3箇所において下方に突出して形成され、接触片23の下動時に中央固定接点5の接点部16に3点接触される。このように、可動接点7は、中央固定接点5に対して3点で接触されるため、中央固定接点5上に塵埃等が付着した場合であっても、確実に中央固定接点5に接触される。被押圧部26は、可動接点7の中央において上方に突出して形成され、ラバースプリング3の押圧が集中される。
【0028】
ラバースプリング3は、エラストマーやシリコンゴム等の可撓性樹脂により下面を開口したドーム状に形成され、押圧操作により反転可能に構成されている。ラバースプリング3は、円環状に形成された脚部31と、脚部31から所定の角度で半径方向内側に向かって立ち上がるスカート部32と、スカート部32に連なる円柱状の頭部33とを有している。また、ラバースプリング3の頭部33には、下面から下方に突出する作動突部34が設けられている(図4参照)。
【0029】
また、ラバースプリング3は、複数の円弧状壁部13の内周面に脚部31が保持されることによりハウジング2に位置され、作動突部34の中心が可動接点7の被押圧部26の上方に位置される。作動突部34は、ラバースプリング3の反転時に可動接点7の被押圧部26を押圧可能に構成され、可動接点7の接点部25を中央固定接点5の接点部16に接触させる。
【0030】
ステム4は、下面が開放された箱状であり、ラバースプリング3を覆うようにしてハウジング2に保持されている。ステム4の各側壁には、それぞれ外側面から側方に一対の摺動突起36が僅かに突出して形成され、この摺動突起36によりハウジング2に摺動可能に保持される(図3参照)。また、ステム4の四隅には側壁から下方にガイド突部37が突出しており、各ガイド突部37は押圧操作時にハウジング2のガイド穴部14に挿入されてステム4の摺動をガイドする。
【0031】
このように構成された押釦スイッチ1においては、ステム4が押圧操作されると、ラバースプリング3の反転により可動接点7と中央固定接点5とが接触され、周辺固定接点6と中央固定接点5とが可動接点7を介して導通される。このとき、ラバースプリング3の反転時にラバースプリング3の内部の空気が外部に排出され、ラバースプリング3の復帰時にラバースプリング3の内部に外部から空気が吸入される。
【0032】
ここで、図3を参照して、ラバースプリング3の反転、復帰時の空気が出入りする流路について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る押釦スイッチに形成された流路の説明図である。なお、図3においては、説明の便宜上、可動接点を省略し、ラバースプリングおよびステムの外形を破線で示している。
【0033】
図3に示すように、ステム4は、複数の摺動突起36によりステム4の外周面とハウジング2の外周面との間に隙間が生じるようにハウジング2に保持されている。この場合、ハウジング2の角側の隙間41は、ハウジング2の側面側の隙間42と比較して広めに形成され、ハウジング2とステム4との摺動時の接触面積を抑制することでステム4の操作感触を向上させている。この隙間41、42は、押釦スイッチ1の外部とハウジング2の底壁側とを連ねる操作方向(上下方向)の流路として機能する。
【0034】
ハウジング2の対向する一対の側壁の左右方向の中間位置近傍には、それぞれ周辺固定接点6が設けられており、各周辺固定接点6には一対の接点部17a、17bが設けられている。一対の接点部17a、17bは、板状部分から突出して形成され、各周辺固定接点6と可動接点7との間に隙間を生じさせている。また、一対の接点部17a、17bは、上面視台形状に形成されており、台形の斜面を対向させるよう配置される。この一対の接点部17a、17bの対向する斜面により、各周辺固定接点6に溝部18が形成される。
【0035】
各溝部18は、一端が可動接点7の開口22を介してラバースプリング3の内部に連通され、他端がハウジング2の側面側の隙間42に連通される。この各溝部18は、一対の接点部17a、17bの周辺と共に、ハウジング2の底壁側において隙間41、42とラバースプリング3の内部とを連ねる平面方向の流路として機能する。
【0036】
また、各溝部18は、中央固定接点5に向かう半径方向に対して斜めに交差する方向に延在している。この溝部18の延在方向は、溝部18の延長線L上から中央固定接点5が外れる方向を向いている。この場合、各溝部18は、中央固定接点5を中心として点対象となっており、ラバースプリング3の復帰時にラバースプリング3の内部で渦を巻くように空気が吸入される。したがって、ラバースプリング3の復帰時に空気と共に塵埃が吸入されても、塵埃が中央固定接点5から外れる方向に飛散されるため、中央固定接点5に塵埃が堆積されることが抑制される。
【0037】
各溝部18の溝幅は、一対の接点部17a、17bの鋭角部分が、中央固定接点5に向かう半径方向において重なる幅に形成されている。この構成により、一対の接点部17a、17bの斜面(溝部18の側面)によって各溝部18の他端から中央固定接点5に直線的に向かう流れが阻害されるため、中央固定接点5に向かって塵埃が飛散されることがなく、中央固定接点5での塵埃の堆積がさらに抑制される。
【0038】
また、各溝部18において押釦スイッチ1内の流路が狭められているため、各溝部18における圧力が低下される。したがって、各溝部18内の空気の出入りにより一対の接点部17a、17bの周辺の塵埃が引き寄せられて空気により押し流されるため、接点部17a、17bの周辺に塵埃が堆積することが抑制される。また、接点部17a、17bは、溝部18よりも高い位置において可動接点7に接触されるため、接点部17a、17bに対する塵埃の付着、および外部端子19の半田付け時のフラックス上がりによる接触不良が防止される。
【0039】
さらに、溝部18は、他端がハウジング2の側面側の隙間42に連通され、ハウジング2の側面側の幅狭の隙間42を介して溝部18に空気が吸入されるため、ハウジング2の角側の幅広の隙間41から大きめの塵埃が直に吸入されるのが防止される。また、ハウジング2の角側の隙間41は、ハウジング2のガイド穴部14に連通されるため、大きめの塵埃がラバースプリング3の内部に吸入され難く構成されている。このように、本実施の形態に係る押釦スイッチ1では、中央固定接点5および周辺固定接点6における塵埃の堆積を抑制して、可動接点7との接触性が向上される。
【0040】
なお、本実施の形態においては、溝部18が中央固定接点5に向かう半径方向に対して斜めに交差する方向に延在する構成としたが、この構成に限定されるものではない。少なくとも、溝部18のラバースプリング3の内部側の一端が中央固定接点5を避ける方向に空気を吸入排出する構成であればよく、例えば、溝部18が上面視において湾曲して延在する構成としてもよい。
【0041】
図4を参照して、押釦スイッチ1の押圧操作について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る押釦スイッチの押圧操作の説明図であり、(a)は押釦スイッチの初期状態、(b)は押釦スイッチの押圧状態をそれぞれ示している。
【0042】
図4(a)に示すように、ステム4が押圧されていない初期状態においては、ラバースプリング3の弾性力によりステム4が上方に押し上げられている。この場合、可動接点7の環状板部21は一対の周辺固定接点6の接点部17a、17bに接触し、接触片23が中央固定接点5から離間している。この初期状態からステム4が押圧されると、ラバースプリング3のスカート部32が撓み始め、ラバースプリング3の内部の空気が押し出される。
【0043】
ラバースプリング3の内部の空気は、可動接点7の環状板部21に形成された開口22、周辺固定接点6の接点部17a、17b周辺および溝部18、ハウジング2とステム4との隙間41、42を介して押釦スイッチ1の外部に排出される。このとき、空気の排出と共に、周辺固定接点6の接点部17a、17b周辺に付着した塵埃が空気により押し流され、周辺固定接点6が洗浄される。
【0044】
さらに、ラバースプリング3に加わる荷重が所定荷重以上になると、ラバースプリング3が反転して作動突部34により可動接点7の接触片23が押圧される。そして、図4(b)に示すように、ラバースプリング3の反転が完了すると、接触片23に設けられた複数の接点部25が中央固定接点5の接点部16に接触され、中央固定接点5と周辺固定接点6とが可動接点7を介して導通する。
【0045】
このステム4が押圧された押圧状態から押圧力を除去すると、ラバースプリング3の復元力によりステム4が押し上げられ、作動突部34が接触片23から離間されて、接触片23と中央固定接点5との導通状態が解除される。そして、ラバースプリング3の復帰と共にラバースプリング3の内部に空気が吸入される。押釦スイッチ1の外部の空気は、ハウジング2とステム4との隙間41、42、周辺固定接点6の接点部17a、17b周辺および溝部18、可動接点7の環状板部21に形成された開口22を介してラバースプリング3の内部に吸入される。
【0046】
このとき、空気と共にラバースプリング3の内部に塵埃が吸入されても、空気により接点部17a、17b周辺から塵埃が押し流されると共に、中央固定接点5から外れた位置に塵埃が飛散されるため、中央固定接点5および一対の周辺固定接点6における塵埃の堆積が抑制される。また、溝部18がハウジング2の側面側の幅狭の隙間42に連通しているため、ハウジング2の角側の幅広の隙間41から大きめの塵埃が侵入するのが防止される。
【0047】
以上のように、本実施の形態に係る押釦スイッチ1によれば、周辺固定接点6の接点部16にラバースプリング3の内部と外部とを連通する溝部18が設けられるため、押釦スイッチ1の押圧操作による空気の出入りにより、周辺固定接点6の接点部16の周辺の塵埃が押し流される。したがって、周辺固定接点6の接点部16に塵埃が堆積することがなく、周辺固定接点6と可動接点7との接触性が向上される。また、周辺固定接点6に流路が形成されるため、ラバースプリング3の反転時に溝部18が潰れることがないため、空気の出入りを円滑にできる。
【0048】
なお、上記した実施の形態においては、周辺固定接点において一対の接点部を突出させることにより流路を設ける構成としたが、この構成に限定されるものではない。周辺固定接点の接点部に流路を設ける構成であればどのような構成であってもよく、例えば、一つの接点部に浅溝を設ける構成としてもよい。
【0049】
また、上記した実施の形態においては、一対の周辺固定接点の溝部が、中央固定接点を中心とした点対象となるように設けられる構成としたが、この構成に限定されるものではない。ラバースプリングの内部において渦を巻くように空気が吸入されるように溝部が設けられていれば、どのように設けられてもよい。
【0050】
また、上記した実施の形態においては、一対の周辺固定接点の溝部の延在方向が、溝部の延長線上から中央固定接点が外れる方向を向くように構成としたが、この構成に限定されるものではない。可動接点の接触片と中央固定接点の接点部との接触性を確保できるのであれば、例えば、溝部が中央固定接点に向かう半径方向に延在していてもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態においては、中央固定接点を挟んで一対の周辺固定接点を対向位置に配置する構成としたが、この構成に限定されるものではない。一対の周辺固定接点は、1つでもよいし、3以上であってもよい。また、中央固定接点の周囲において可動接点と接触可能であれば、どの位置に配置されていてもよい。
【0052】
また、上記した実施の形態においては、弾性バネとしてラバースプリングを例示して説明したが、これに限定されるものではない。反転により可動接点を駆動させるものであれば、どのような構成であってもよく、例えば、金属性の反転バネであってもよい。
【0053】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明は、周辺固定接点への塵埃の堆積を抑制して固定接点と可動接点との接触性を向上させると共に、弾性バネへの空気の出入りを円滑にできるという効果を有し、特に、ラバースプリング等のドーム状の弾性バネを反転動作させてスイッチングする押釦スイッチに有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 押釦スイッチ
2 ハウジング
3 ラバースプリング(弾性バネ)
4 ステム
5 中央固定接点
6 周辺固定接点
7 可動接点
11 収容部
16 接点部
17a、17b 接点部
18 溝部(流路)
21 環状板部
22 開口
23 接触片
25 接点部
41、42 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を有するハウジングと、
前記ハウジングの内底面に設けられた中央固定接点および前記中央固定接点の周囲に設けられた周辺固定接点と、
前記周辺固定接点に載置され、前記中央固定接点に対して離接可能な可動接点と、
押圧により反転可能に膨出して形成され、反転時に前記可動接点を前記中央固定接点に接触させる弾性バネとを備え、
前記周辺固定接点は、前記可動接点に接触する接点部に前記弾性バネの内部と外部とを連通する流路を有することを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項2】
前記周辺固定接点の接点部は、複数であり、前記可動接点側に突出して形成され、
前記流路は、前記複数の接点部間に形成された溝部であることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ。
【請求項3】
前記流路が、前記中央固定接点を避けた方向に延在することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の押釦スイッチ。
【請求項4】
前記流路の前記弾性バネの内部側の端部が、前記中央固定接点を避けた方向で吸入および排出するように形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の押釦スイッチ。
【請求項5】
前記ハウジングの収容部に設けられ、前記弾性バネを押圧するステムを備え、
前記ステムは、前記ハウジングの内周面と前記ステムの外周面との間に隙間を形成するように前記ハウジングにガイドされ、
前記隙間は、前記ハウジングの側面側よりも前記ハウジングの角側において広く形成され、
前記流路は、前記ハウジングの側面における隣り合う両角の中間位置の近傍に位置され、前記流路の前記弾性バネの外部側の端部が当該側面を向くように形成されたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の押釦スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−267440(P2010−267440A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116499(P2009−116499)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】