説明

押釦式スイッチ装置および操作パネル

【課題】キートップの操作位置に拘わらず良好なクリック感を得る。
【解決手段】プリント配線板10と、押圧操作される操作部材40と、プリント配線板10の表面に装着され、操作部材40の押圧操作により作動するメンブレンスイッチ20と、プリント配線板10と操作部材40の間に介装され、押圧操作により弾性変形して操作部材40に対し弾性変形に応じた非線形の反発力を付与する弾性部材50と、メンブレンスイッチ20の接点21を包囲するようにプリント配線板10に立設して固定されたハウジング30と、ハウジング30に移動可能に支持され、操作部材40の押圧操作時に操作部材40と共に動作して、操作部材40の移動方向を規制する可動部材60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に実装される押釦式スイッチ装置および操作パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板に実装される押釦式トスイッチ装置として、ラバーコンタクトスイッチが知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載のスイッチ装置では、中空状に形成されたラバーコンタクトスイッチの可動部の底面に電極を設けるとともに、この電極に対向してプリント配線板の上面に電極を配置して接点部を構成し、キートップの操作によりラバーコンタクトスイッチを弾性変形させることで、接点部を閉じる際に、クリック感を伴う独特の操作性を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−306900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、例えばキートップを長円形状としてそのキートップの端部が押圧操作されると、キートップが傾いてラバーコンタクトスイッチに対し斜め方向に押圧力が作用する。このため、ラバーコンタクトスイッチの周方向の変形にばらつきが生じ、良好なクリック感を得られないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、プリント配線板と、押圧操作される操作部材と、プリント配線板の表面に装着され、操作部材の押圧操作により作動するスイッチ部材と、プリント配線板と操作部材の間に介装され、操作部材の押圧操作により弾性変形し、操作部材に対して弾性変形に応じた非線形の反発力を付与する弾性部材とを備えた押釦式スイッチ装置に適用され、スイッチ部材が、メンブレンスイッチにより構成され、このメンブレンスイッチの接点部を包囲するようにプリント配線板に立設して固定されたハウジングと、ハウジングに移動可能に支持され、操作部材の押圧操作時に操作部材と共に動作して、操作部材がプリント配線板に対して垂直方向に移動するように操作部材の移動方向を規制する可動部材とをさらに備えることを特徴とする。
また、本発明による操作パネルは、上記の押釦式スイッチ装置が複数配設されたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、操作部材の押圧操作時の移動方向を規制して、操作部材がプリント配線板に対して垂直方向に移動するようにしたので、プリント配線板と操作部材の間の弾性体を周方向均一に弾性変形させることができ、押圧操作時の良好なクリック感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る押釦式スイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】図1のキートップの平面図である。
【図4】(a),(b)は、それぞれ図1の押釦式スイッチ装置の組立手順を示す図である。
【図5】図2の変形例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る押釦式スイッチ装置の分解斜視図である。
【図7】図6の縦断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る操作パネルの平面図である。
【図9】(a),(b)はそれぞれ図4の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−第1の実施の形態−
以下、図1〜図5を参照して本発明の第1の実施の形態に係る押釦式スイッチ装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る押釦式スイッチ装置100の全体構成を示す分解斜視図であり、図2は、押釦式スイッチ装置100の縦断面図である。なお、以下では便宜上、図示のように上下方向および前後左右方向を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
【0009】
第1の実施の形態に係るスイッチ装置100は、プリント配線板10と、プリント配線板10の表面に装着されるメンブレンスイッチ20と、プリント配線板10の上方に立設されるハウジング30と、押圧操作されるキートップ40と、プリント配線板10とキートップ40の間に配置されたカップラバー50と、ハウジング30に摺動可能に支持されたスライダー60と、キートップ40の周囲を覆うアッパーカバー70と、を有する。
【0010】
プリント配線板10(プリント基板とも呼ぶ)は、絶縁性の板に導電性の配線パターンによる電気回路を形成したものであり、フレキシブルではなくリジッドな基板である。プリント配線板10にはハウジング30の固定用の複数の貫通孔11が穿設されている。なお、図では、キートップ40の大きさに合せてプリント配線板10を構成しているが、プリント配線板10を例えば前後左右方向に大型化し、図示しない種々の電子部品を実装することもできる。
【0011】
メンブレンスイッチ20は、上下に対向して配置された一対の接点21と、一対の接点21を各々担持する一対のシート基板22と、一対のシート基板22の間に配設され、シート基板同士を所定距離だけ離間して両接点21を開状態に保持する不図示のスペーサとを有する。シート基板22には、プリント配線板10の貫通孔11に対応して接点21の周囲に複数の貫通孔23が穿設されている。貫通孔23は貫通孔11よりも大きい。
【0012】
各シート基板22は、周知のフレキシブル印刷回路板の構成を有し、そのフィルム基体の表面に、互いに短絡可能な接点21が設けられる。接点21は、ハウジング30のスライド孔33の下方に配置され、キートップ40の押し下げにより接点21に対し所定の押下力が作用すると、接点21は閉じられる。シート基板22は、プリント配線板10上に配置され、図示しないねじ等により、プリント配線板10に固定される。
【0013】
ハウジング30は、略矩形状のベース31と、ベース31上に立設されたガイド32とを有する。ベース31は、高さ方向に段付き形状をなし、ベース31の上部の前後左右方向の長さはベース31の下部の前後左右方向の長さよりも短い。ガイド32は、外周面が円筒形状であり、その内部には断面矩形状のスライド孔33が上下方向に貫通して開口されている。ベース31の底面には複数の脚34が下方に向けて突設されている。以上のハウジング30は、樹脂を構成材として一体成形により形成されている。
【0014】
キートップ40は、長円形状の操作部41と、操作部41の周縁から下方に延在する側壁42とを有する、底面が開放された枠部材である。図3はキートップ40の平面図である。図2,3に示すようにキートップ40の内側には、操作部41の裏面に沿って側壁42の前後方向一端部から他端部にかけ、および左右方向一端部から他端部にかけリブ43が延設されている(図2では左右方向のリブ43のみ図示)。前後方向のリブ43と左右方向のリブ43の交差部にはスライダー60の外形形状に合わせてボックス状の枠部44が形成され、枠部44の下端部には、枠部44の内側空間に向けて突起部43aが突設されている。以上のキートップ40は、樹脂を構成材として一体成形により形成されている。
【0015】
カップラバー50は、キートップ40と略同形状の長円形状をなす平板状の皿部51と、皿部51の外周縁から上方に突設された帯状の周壁部52と、皿部51の中央から上方にドーム状に膨出したドーム部53とを有する。ドーム部53の上部には円筒形状の圧入部54が形成され、ドーム部53の内側には、上面および底面が開放された空間部55が形成されている。空間部55にはハウジング30が収容される。圧入部54を介してドーム部53に押下力が作用すると、ドーム部53は弾性変形し、押下力に対抗した非線形の反発力をキートップ40に付与する。以上のカップラバー50は、ゴム材料から一体成形により形成されている。
【0016】
スライダー60は、上下方向に延在する内筒61と、内筒61の外側で上下方向に延在する外筒62とを有する二重筒構造をなしている。内筒61および外筒62は、頂部の水平部63を介して一体化され、内筒61と外筒62の間には底面が開口した空間部64が形成されている。内筒61は外筒62よりも長尺であり、内筒61は外筒62の下端から下方に突出している。
【0017】
内筒61は、スライド孔33に対応して外形が略ボックス形状をなし、その上面には下方に向けて所定長さの有低孔61aが穿設されている。内筒61の底面には嵌合溝61bが設けられ、嵌合溝61bには下方からコイルスプリング66が圧入されて、スライダー60にコイルスプリング66が一体に取り付けられる。外筒62は、外形が略ボックス形状をなし、その外側面には、上下方向に細長の突起部62aが設けられ、底面には水平方向外側に突出した円形状のリング部65が設けられている。リング部65はカップラバー50の圧入部54に圧入される。以上のスライダー60は、樹脂を構成材として一体成形により形成されている。
【0018】
アッパーカバー70は、キートップ40よりやや大きな長円形状の開口部70aが形成された上板部71と、開口部70aから下方に延設された筒状の周壁部72とを有する。周壁部72はカップラバー50の周壁部52の内周面に隙間なく嵌合し、これによりカップラバー50の裏側への水滴の浸入を防止できる。以上のアッパーカバー70は、樹脂を構成材として一体成形により形成されている。
【0019】
押釦式スイッチ装置100の組立手順について説明する。プリント配線板10上にメンブレンスイッチ20のシート基板22を配置した状態で、ハウジング30の脚34をシート基板22の貫通孔23およびプリント配線板10の貫通孔11に貫通させ、ハウジング30をプリント配線板10上に立設する。次いで、ハウジング30の上方からカップラバー50を被せてカップラバー50をシート基板22上に固定し、カップラバー50内の空間部55にハウジング30を収容する。さらに、カップラバー50の周壁部52にアッパーカバー70の周壁部72を上方から嵌合し、カップラバー50の皿部51の上面に周壁部72の下端面を押し当て、アッパーカバー70とシート基板22の間にカップラバー50を挟持する。
【0020】
次いで、予めコイルスプリング66が圧入されたスライダー60の内筒61をハウジング30のスライド孔33に嵌合しつつ、スライダー60のリング部65をカップラバー50の圧入部54に圧入してリング部65と圧入部54とを密着させ、スライダー60をカップラバー50に一体に取り付ける。このときスライダー60の内筒61と外筒62の間の空間部64に、ハウジング30のガイド32が嵌入される。さらに、キートップ40の底面の枠部44をスライダー60の上部に嵌合し、スライダー60の突起部62aの下側にキートップ40のリブ43の突起部43aを係合して、キートップ40をスライダー60に一体に取り付ける。
【0021】
最後に、ハウジング30の脚34の先端部をかしめ、ハウジング30をプリント配線板10に固定する。図4(a)、(b)はそれぞれカシメ前およびカシメ後のスイッチ装置100の断面図(一部拡大図)である。図4(a)に示すように、ハウジング30の脚34には上方に大径部34aが、下方に小径部34bがそれぞれ設けられている。大径部34aは、メンブレンスイッチ20の貫通孔23よりも小径であり、貫通孔23を貫通してプリント配線板10の上面に大径部34aの下端面が当接している。これにより、メンブレンスイッチ20にかしめによる圧力が作用することを防止できる。
【0022】
プリント配線板10の貫通孔11は小径部34bとほぼ同径であり、小径部34bは貫通孔11を貫通し、その先端部はプリント配線板10の底面から突出している。脚34の先端部は例えば加熱されてかしめられる。すなわち熱カシメされる。これにより図3(b)に示すようにハウジング30は貫通孔11に位置決めされ、プリント配線板10にがたつきなく固定できるとともに、接点21の上方にハウジング30のスライド孔33を精度よく位置決めできる。
【0023】
なお、スイッチ装置100の組立手順は上述したものに限らない。例えば、ハウジング30を熱カシメした後に、カップラバー50を取り付けるようにしてもよい。スライダー60をキートップ40の枠部44に嵌合した後、キートップ40と一体にカップラバー50に圧入するようにしてもよい。スライダー60をカップラバー50に圧入した後、スライダー60と一体にカップラバー50をシート基板22上に取り付けるようにしてもよい。アッパーカバー70を最後に取り付けるようにしてもよい。
【0024】
第1の実施の形態に係るスイッチ装置100の主要な動作を説明する。キートップ40の非操作時には、カップラバー50の弾性力によりキートップ40はスライダー60とともに押し上げられ、キートップ40の上面はアッパーラバー70の上面よりも突出した初期位置にある。このとき、コイルスプリング66の下端面はメンブレンスイッチ20の接点21の上方に位置し、接点21は開放(オフ)されている。
【0025】
この状態からキートップ40を押圧操作すると、スライダー60はハウジング30の中央のスライド孔33に沿って鉛直下方に移動し、コイルスプリング66の下端部が接点21に接近する。キートップ40の押し下げ量が所定量以上となると、コイルスプリング66の下端部が接点21に当接する。その後、さらにキートップ40を押し下げると、コイルスプリング60が縮退して接点21にばね力が作用し、接点21は閉成される(オンされる)。
【0026】
この際、仮にキートップ60の長円の端部が押圧操作されたとしても、スライダー60はハウジング30に案内されて傾くことなく移動するため、カップラバー50のドーム部53がキートップ40の押し下げ力により周方向均一に弾性変形する。ドーム部53が弾性変形することで、キートップ40に作用する反発力が非線形的に増加し、ドーム部53が弾性座屈変形すると、反発力が急激に低下する。本実施形態では、接点オン時にドーム部53が弾性座屈変形するようにドーム部53の形状や初期位置におけるスプリング66の下端から接点21までの長さが設定されている。これにより、キートップ40の操作位置に拘わらず、接点オン時にクリック感を伴う良好な操作性を得ることができる。なお、ハウジング30のベース部31は段付き形状をなし、上部が小型化されているため、ドーム部53の弾性変形時にドーム部53がハウジング30に干渉することを防止できる。
【0027】
第1の実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)プリント配線板10上のメンブレンスイッチ20とキートップ40の間にカップラバー50を介装するとともに、このカップラバー50のドーム部53の内側に、メンブレンスイッチ20の接点21を包囲するようにハウジング30を立設してプリント配線板10に固定し、さらにキートップ40と一体に、かつハウジング30に沿って移動可能にスライダー60を設けるようにした。これにより、キートップ40の押圧操作時におけるキートップ40の移動方向が規制され、キートップ40の操作部位に拘わらずカップラバー50を周方向均一に弾性変形させることができる。このため、押圧操作時に常に一定のクリック感を得ることができ、操作性が向上する。
【0028】
これに対し、本実施の形態と異なり、キートップ40の端部(例えば左端部)を押圧操作した際に、カップラバー50が斜めに弾性変形する場合には、カップラバーのドーム部53は、まず左側が変形し、その後、右側が変形する。このため、2度のクリック感が生じ、操作性が悪い。
【0029】
(2)スイッチ部材としてメンブレンスイッチ20を用いるようにしたので、接点21が露出することなく、スイッチの安定したオンオフ動作が得られる。タクトスイッチのような板バネを有するスイッチを用いる場合に比べ、スイッチの耐久性も向上する。
(3)スライダー60の下端にコイルスプリング66を取り付け、コイルスプリング66がメンブレンスイッチ20に当接するようにしたので、押圧操作時に接点21に過大な荷重が作用することを防止でき、接点21の損傷を防ぐことができる。
(4)ハウジング30の脚34をプリント配線板10に貫通させ、その先端部を熱カシメするようにしたので、ハウジング30をがたつきなくプリント配線板10に固定できる。
(5)アッパーカバー70の周壁部72をカップラバー50の周壁部52に隙間なく嵌合するようにしたので、カップラバー50の裏側への水滴の浸入を防止できる。
【0030】
なお、プリント配線板10にはLEDなどの発光部材を取り付けることができる。図5は、その一例を示すスイッチ装置100の断面図である。図5では、シート基板22に貫通孔25を形成し、この貫通孔25を介してプリント配線板10の上面に一対のLED15を取り付け、LED15の上方を覆うようにカップラバー50に凸部56を形成している。この場合、例えばカップラバー50とキートップ15とは、周知の透光部材により構成される。これによりLED15の発光によりキートップ40の表面を照光させることができる。なお、スイッチ装置100の操作に連動してLED15をオンオフさせるようにしてもよい。
【0031】
LED15の取付位置や個数は上述したものに限らない。例えばLED15をプリント配線板10の裏面に取り付けるとともに、そのプリント配線板10の取付部に、LED15からの光をキートップ40側に導くような開口部を設けるようにしてもよい。LED15の取付位置によっては、キートップ40のみを透光部材により構成してもよい。カップラバー50とキートップ40とハウジング30とを透光部材により構成してもよい。透光部材としては透明、非透明のいずれでもよい。発光部材はLED15以外でもよい。
【0032】
−第2の実施の形態−
図6、図7を参照して本発明の第2の実施の形態に係る押釦式スイッチ装置について説明する。第2の実施の形態では、スライダー60の代わりに一対のリンク部材を用いる。図6は、本発明の第2の実施の形態に係る押釦式スイッチ装置200の全体構成を示す分解斜視図であり、図7は、押釦式スイッチ装置200の縦断面図である。なお、図1,2と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0033】
第2の実施の形態に係るスイッチ装置200は、プリント配線板10と、プリント配線板10の表面に装着されるメンブレンスイッチ20と、プリント配線板10の上方に立設されるハウジング30と、押圧操作されるキートップ40と、プリント配線板10とキートップ40の間に配置されたカップラバー50と、ハウジング30に回動可能に支持された一対のリンク部材80と、を有する。
【0034】
メンブレンスイッチ20のシート基板22には、ハウジング30の取付位置に対応して略矩形状の一対の貫通孔24が開口され、これら貫通孔24の間のシート基板22の中央には、カップラバー50が装着されている。カップラバー50は、シート基板22の上面に固定された略リング状の底部57と、底部58から立ち上がるドーム部58と、ドーム部58の上端部に形成された略リング状の頂部59とを有し、カップラバー50の内側にメンブレンスイッチ20の接点21が配置されている。図示は省略するが、頂部59の中央部には下方に向けて突起部が突設され、ドーム部58の変形により突起部の先端が接点21を押圧可能となっている。
【0035】
ハウジング30は、カップラバー50の底部57の外周面に嵌合する開口部35aが形成された枠体35と、枠体35から下方に突設された脚36とを有する。各脚36は、シート基板22の貫通孔24およびプリント配線板10の貫通孔11を貫通し、例えば熱カシメ(図4)等によりプリント配線板10に固定される。枠体35の前後方向に対向する一対のフレーム部35bには、その底面から上方にかけて略円弧状の一対の切り欠き部35cがそれぞれ設けられている。
【0036】
各リンク部材80は、互いに同一形状であり、前後方向に離間して略平行に延在する一対の腕部81と、腕部81の一端部(上端部)同士を連結する連結部82とをそれぞれ有する。腕部82の他端部(下端部)には歯部83が形成され、歯部83は互いに歯合されて側面視V字状を呈するV字ギアリンクが構成される。各腕部81の他端部側の内表面には、それぞれ略円柱状の突起部84が前後方向に向けて突設されている。各連結部82の両端部には、それぞれ略円柱状の突起部85が前後方向に向けて突設されている。以上のリンク部材80は、樹脂を構成材として一体成形により形成されている。
【0037】
キートップ40の底面にはリブ43(図3)は設けられず、代わりにリンク部材80の突起部85に係合する係合溝45が左右方向外側にかけて形成されている。なお、プリント配線板10の表面に、図5に示したのと同様、LED等の発光部材を取り付けるようにしてもよい。キートップ40の周囲にアッパーカバー70(図1)を設けることもできる。
【0038】
スイッチ装置200を組み立てる場合には、各リンク部材80の歯部83を互いに歯合した状態で、その上方からハウジング30のフレーム部35bの切り欠き部35cをリンク部材80の突起部84に嵌合させつつ、シート基板22の貫通孔24にフレーム部35bを嵌入し、プリント配線板10にハウジング30を固定する。これによりリンク部材80は突起部84を支点にハウジング30に回動可能に支持される。さらに、リンク部材80の連結部の両端の突起部85をキートップ底面の係合溝45に係合し、リンク部材80をキートップ40に連結する。
【0039】
第2の実施の形態に係るスイッチ装置200の主要な動作を説明する。図7に示すように、キートップ40の非操作時には、キートップ40はカップラバー50の弾性力により押し上げられ、リンク部材80はV字状に立ち上がっている。このとき、カップラバー50の頂部59の内側の突起部はメンブレンスイッチ20の接点21の上方に位置し、接点21はオフされている。
【0040】
この状態からキートップ40を押圧操作すると、カップラバー50の頂部59がキートップ40の底面に押されてカップラバー50のドーム部58が弾性変形し、頂部59の内側の突起部が接点21に接近する。押圧操作量が所定量以上となると、ドーム部58が弾性座屈変形するとともに、頂部59の内側の突起部が接点21を押圧して接点21がオンされる。
【0041】
この際、一対のリンク部材80は歯部83を介して互いに連結されているため、キートップ40の端部が押圧操作されたとしても、各リンク部材80は下部の突起部84を支点にして互いに対称に左右方向に回動し、突起部85は係合部45に沿って左右水平方向に摺動する。このため、キートップ40は水平姿勢を維持したまま下方に移動し、カップラバー50のドーム部58は周方向均一に弾性変形する。これにより、キートップ40の操作位置に拘わらず、接点オン時にクリック感を伴う良好な操作性を得ることができる。
【0042】
このように第2の実施の形態では、一端部がキートップ40の底面に沿って摺動可能に支持され、他端部がハウジング30の切り欠き部35cに回動可能に支持される一対のリンク部材80を設け、各リンク部材80同士を、歯部83を介して互いに連結するようにした。これにより第1の実施の形態と同様、キートップ40の押圧操作時におけるキートップ40の移動方向が規制され、キートップ40の操作部位に拘わらずカップラバー50を周方向均一に弾性変形させることができ、押圧操作時に常に一定のクリック感を得ることができる。リンク部材80を用いることで、スイッチ装置全体の高さを抑えることができ、低背型のスイッチ装置に用いて好適である。
【0043】
以上のスイッチ装置100,200は単独で用いることができるが、操作パネルに複数配列することもできる。図8は、その一例を示す平面図である。操作パネル300には複数のスイッチ装置100または200が配列されている。この場合、プリント配線板10は操作パネル300の全体にわたって延設され、各スイッチ装置100でプリント配線板10が共通化されている。メンブレンスイッチ20のシート基板22に関しても同様に、操作パネル300の全体にわたって延設することができる。
【0044】
操作パネル300は水平方向に配置するだけでなく、鉛直方向に配置することもでき、斜めに傾けて配置することもできる。したがって、プリント配線板10に対して垂直方向に移動するのであれば、キートップ40の移動方向は上述したものに限らず、水平方向や斜め方向にキートップ40を移動可能としてもよい。操作部材としてのキートップ40を長円形状としたが、他の形状であってもよい。プリント配線板10とキートップ40の間に介装され、キートップ40の押圧操作により弾性変形し、その弾性変形に応じた非線形の反発力をキートップ40に付与するのであれば、弾性部材としてのカップラバー50の構成は上述したものに限らない。
【0045】
メンブレンスイッチ20の接点21を包囲するようにプリント配線板10に立設して固定されるのであれば、ハウジング30の構成はいかなるものでもよい。ガイド32(筒部)に設けられるスライド孔33は矩形状でなくてもよい。カバー部材としてのアッパーカバー70の構成も上述したものに限らない。アッパーカバー70の周壁部72(周壁)の下端面をカップラバー50の周壁部52(周壁)の内側の皿部51の上面に当接して周壁部52,72同士を嵌合するようにしたが、カップラバー50の周壁部52をアッパーカバー70の上板部71の裏面に当接して、周壁部52,72同士を嵌合してもよい。
【0046】
上記実施の形態(図4)では、ハウジング30の脚34を熱カシメしてハウジング30をプリント配線板10に固定するようにしたが、ハウジング30の固定方法はこれに限らない。例えば図9(a)に示すように、脚34の先端にフック部34cを設け、フック部34cを貫通孔11に貫通させるとともに、プリント配線板10の裏面にフック部34cを係止して、ハウジング30を固定するようにしてもよい。プリント配線板10に脚34を貫通させるのではなく、例えば図9(b)に示すように貫通孔11を介してプリント配線板10の裏側からねじ部材39を貫通させ、ハウジング30のベース31に設けたねじ孔38にねじ部材39を螺合して、ハウジング30を固定するようにしてもよい。
【0047】
上記実施の形態では、ハウジング30に移動可能にスライダー60あるいはリンク部材80を支持し、キートップ40の押圧操作時に、キートップ40と共にスライダー60が上下方向にスライドあるいはリンク部材80が左右方向に回動して、キートップ40の移動方向を規制するようにしたが、ハウジング30に移動可能に支持されてキートップ40がプリント配線板10に対して垂直方向に移動するようにキートップ40の移動方向を規制するのであれば、可動部材の構成はいかなるものでもよい。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の押釦式スイッチ装置に限定されない。
【符号の説明】
【0048】
10 プリント配線板
15 LED
20 メンブレンスイッチ
21 接点
30 ハウジング
32 ガイド
34 脚
39 ねじ部材
40 キートップ
50 カップラバー
60 スライダー
70 アッパーカバー
52,72 周壁部
80 リンク部材
100,200 押釦式スイッチ装置
300 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板と、
押圧操作される操作部材と、
前記プリント配線板の表面に装着され、前記操作部材の押圧操作により作動するスイッチ部材と、
前記プリント配線板と前記操作部材の間に介装され、前記操作部材の押圧操作により弾性変形し、前記操作部材に対して弾性変形に応じた非線形の反発力を付与する弾性部材とを備えた押釦式キースイッチ装置において、
前記スイッチ部材は、メンブレンスイッチにより構成され、
このメンブレンスイッチの接点部を包囲するように前記プリント配線板に立設して固定されたハウジングと、
前記ハウジングに移動可能に支持され、前記操作部材の押圧操作時に前記操作部材と共に動作して、前記操作部材が前記プリント配線板に対して垂直方向に移動するように前記操作部材の移動方向を規制する可動部材とをさらに備えることを特徴とする押釦式スイッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の押釦式スイッチ装置において、
前記ハウジングは、前記接点部の周囲に立設する筒部を有し、
前記可動部材は、前記操作部材と一体に設けられるとともに、前記筒部内を摺動可能に支持されていることを特徴とする押釦式スイッチ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の押釦式スイッチ装置において、
前記可動部材は、一端部が前記操作部材の底面に沿って前記操作部材に摺動可能に支持され、他端部が前記ハウジングに回動可能に支持された一対のリンク部材であることを特徴とする押釦式スイッチ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の押釦式スイッチ装置において、
前記ハウジングの端部は、前記プリント配線板を貫通して前記前記プリント配線板に固定されていることを特徴とする押釦式スイッチ装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の押釦式スイッチ装置において、
前記ハウジングは、前記プリント配線板を貫通するねじ部材により前記前記プリント配線板に固定されていることを特徴とする押釦式スイッチ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の押釦式スイッチ装置において、
前記前記操作部材に対向してプリント配線板の表面に実装された発光部材をさらに有し、
前記操作部材、前記弾性部材および前記可動部材のうち、少なくとも前記操作部材は透光性を有する材料により構成されていることを特徴とする押釦式スイッチ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の押釦式スイッチ装置において、
前記操作部材が嵌合する開口部が形成されたカバー部材をさらに備え、
前記弾性部材は、前記接点部を包囲する略ドーム形状を呈し、その底面の周縁部は前記操作部材の周縁部と略同一形状となるように形成され、
前記カバー部材の開口部および前記弾性部材の周縁部には、それぞれ周壁が形成され、これら周壁を介して前記カバー部材と前記弾性部材とが互いに嵌合されていることを特徴とする押釦式スイッチ装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の押釦式スイッチ装置が複数配設された操作パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−253685(P2011−253685A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126103(P2010−126103)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】