説明

押釦部材を備える操作パネルおよびその製造方法

【課題】 スイッチ装置のキートップに発生する輝度むらを低減する技術を提供する。
【解決手段】
本発明の操作パネルは、押釦部材を取り付けるための釦穴を備える筐体と、前記釦穴に取り付けられた少なくとも複数の同一形状の押釦部材と、を備えている。また、前記押釦部材は、背後からの照明光を釦表面に導くための導光体を備え、前記釦表面には、文字、記号、あるいは図形からなり、前記導光体で導かれた光により照明され、かつ、前記釦部材が前記筐体に取り付けられた後に加工形成された表示パターンが形成されている。そして、前記表示パターンは、釦部材が、前記筐体の釦穴に取り付けられた後に加工形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦部材を備える操作パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載する電子機器等に用いられる操作パネルにおいて、複数の押釦を備えるものが知られている。
【0003】
このような操作パネルでは、その製造工程において、予め各押釦部材に文字や記号等が付されている。これを設計通りに配置するためには、各押釦を予め定められた釦穴に嵌め込む必要がある。そのため、各部材には、嵌め込み位置の間違いを防止するための特定の形状が付与されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の技術では、各押釦部材の外周面に個別に形状の異なるリブが形成されている。また、ハウジング部材の釦穴には、リブに対応する形状のガイド溝が形成される。このような構成により、組立て時に釦穴の形状に対応する押釦部材を嵌め込むことで、各押釦の配置の誤りを回避することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−85655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記のような装置では、背後(基板側)から光を照明して押釦の表面を透過照明するような場合、リブおよびガイド溝が押釦への照明光を妨げてしまう。その結果、照明光の透過照明範囲が狭くなり、押釦の表面(キートップ)に輝度むらが発生する場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、バックライトにより表面が照明される釦を備えた操作パネルにおいて、輝度むらを低減し、均一な照明を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明の操作パネルは、嵌め込みの間違いを回避するために付与される特定の形状を排除した押釦および釦穴を備える。
【0009】
例えば、本発明の操作パネルは、押釦部材を取り付けるための釦穴を備える筐体と、前記釦穴に取り付けられた少なくとも複数の同一形状の押釦部材と、を備え、前記押釦部材は、背後からの照明光を釦表面に導くための導光体を備え、前記釦表面には、文字、記号、あるいは図形からなり、前記導光体で導かれた光により照明され、かつ、前記釦部材が前記筐体に取り付けられた後に加工形成された表示パターンが形成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施形態にかかるパネル装置10の斜視図である。
【図2】図2は、パネル装置10の備えるスイッチ装置100の分解図斜視である。
【図3】図3は、パネル装置10の備えるスイッチ装置100の側面図である。
【図4】図4は、図3における押釦1のX−X線断面を、矢視方向から見た断面図である
【図5】図5は、パネル装置10の製造工程を示すフローチャートである。
【図6】図6は、スイッチ装置200の分解図斜視である。
【図7】図7は、従来のスイッチ装置300の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明をより明確にするために、従来の製造方法で製造される操作パネルについて、図7を参照しながら説明する。図7は、従来の操作パネルの備えるスイッチ装置300の分解斜視図である。
【0012】
図7に示すような従来のスイッチ装置300は、押釦8と、筐体9と、基板3と、を組み合わせてなる。押釦8のキートップ81に備えられるガイド82は、ガイド溝83bに沿って光透過部材である導光体83を挟持する。そして、この導光体83が筐体9の釦穴90に嵌まることで、スイッチ装置300を形成する。また、基板3は、その基板上にLED3aを有しており、筐体9の背面から押釦8のキートップ81を照明する。
【0013】
このようなスイッチ装置300では、その製造工程において、キートップ81の表面に予め任意の文字や図形、記号等の表示パターンが付されている。従って、位置を誤ることなく、正しい配置でキートップ81を釦穴90に収めるためには、他の各部材が識別構造を備え、これを導く必要がある。
【0014】
よって、導光体83および釦穴90は、キートップ81に施された表示パターンに対応する識別構造として、溝部83dおよびリブ90dを有している。キートップ81は、その表示パターンと対応する溝部83dを有する導光体83と組み合わされることにより、押釦8を形成する。さらに、このような押釦8は、溝部83dに嵌まるリブ90dを有する釦穴90に収容され、特定の位置に配置される。
【0015】
しかしながら、このような従来の操作パネルの備えるスイッチ装置300では、各部材に、個別に異なる複雑な識別構造を設けねばならない。従って、これらが背面からの照明光を妨げ、キートップの輝度むらの原因となっていた。また、組立て時には、各部材の識別構造を合致させなければならないため、煩雑な組立て作業が必要とされる場合があった。
【0016】
そこで本発明では、新規な製造方法により、各スイッチ装置が識別構造を必要としない操作パネル10を製造する。
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る操作パネル10について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態にかかるスイッチ装置100を備える操作パネル10の斜視図である。なお、図1では、押釦1の全体形状を示すために、便宜上、複数の押釦1aのうちの一部を、筐体2から離脱した状態で表した。また、本実施形態にかかる操作パネル10は、カーナビゲーション装置に適用したものとする。
【0018】
操作パネル10は、図1に示すように、上から押釦1aおよび1b(以下、これらを区別しない場合には、押釦1と称する)と、筐体2と、基板3と、を組み合わせてなる。なお、本実施形態にかかる押釦1aおよび1bは、形状が同一で大きさのみが異なっているものとする。
【0019】
また、図1に示すように、操作パネル10に設けられている複数の押釦1a(アルファベットA〜Eの表示パターンが付されているもの)は、それぞれ同一の形状・大きさで構成されている。これは、押釦1b(数字1〜9の表示パターンが付されているもの)の各々についても同様である。
【0020】
まず、押釦1について説明する。図2は、押釦1を備えるスイッチ装置100の分解斜視図である。また、図3は、押釦1を備えるスイッチ装置100の側面図である。そして、図4は、図3における押釦1のX−X線断面を、矢視方向から見た断面図である。
【0021】
押釦1は、図2に示すように、キートップ11が、導光体13の基板と反対側の面13fを被うようにして構成されている。
【0022】
押釦1は、筐体2に形成される釦穴20に摺動可能に収容される部材である。そして、キートップ11の表面が押圧されると、押釦1は釦穴20を基板側へと移動して、基板3のスイッチ素子3bを押す。これにより、スイッチのON/OFFが切り換わるようにしている。
【0023】
キートップ11は、透光性を有する樹脂材料で形成されており、外側面全体が遮光性の有色塗料で塗装されている。ただし、部分的に、文字、図形、記号等の形状に塗装がレーザ加工処理によって除去されており、表示パターンを形成している。このような除去部分は、背面からの照明光を透過する。従って、操作者に対して、表示パターンをはっきりと認識させることができる。
【0024】
なお、キートップ11本体を形成するための樹脂材料は、基板側からの照明光を透過可能なものであれば特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等が挙げられる。また、遮光性着色層の下に、照明光を着色するための透光性着色層を有していても良い。
【0025】
キートップ11に接続したガイド12は、キートップ11の裏面から基板側方向へと延びるT字型の部材である。このようなガイド12の挟持部12bは、ガイド溝13bに沿って導光体13を挟持する。
【0026】
なお、挟持部12bには、貫通孔である固定孔12cが形成されている。また、ガイド溝13bには、固定孔12cに対応する位置に突起13cが形成されている。これらは、導光体13を挟持部12bが挟み込んだ際に、固定孔12cに突起13cが嵌め込まれることにより、キートップ11と導光体13とを固定する。なお、この際、導光体13の基板と反対側の面13fは、キートップ11の裏面に接した状態となる。
【0027】
なお、ガイド溝13bは、挟持部12bの厚みよりも深く構成されている。よって、これらを組み合わせた際に生じる段差に合わせて、筐体2の釦穴20には、ガイドリブ2bが設けられている。
【0028】
導光体13は、キートップ11と同様に、透光性を有する樹脂材料により形成される長方体の部材である。導光体13の側面には、上下にガイド凸部13dが設けられており、これらの間にガイド溝13bが形成される。ガイド凸部13dは、挟持部12bを、間(ガイド溝13b)に挟むことによって、ガイド12の長手方向への摺り動きを規定する。
【0029】
このようにして、押釦1の各部材は、図4に示すように、突起13cがガイド12の固定孔12cに嵌まり込み、かつ、導光体13の基板と反対側の面13fがキートップ11の裏面に当接した状態で固定される。
【0030】
筐体2には、各押釦1の導光体13を摺動自在に収容する釦穴20が、所定の位置に形成されている。なお、筐体2を基板3と重ねることによって、基板3が釦穴20の底面を構成する。釦穴20の内側面には、ガイド溝13bと挟持部12bとを組み合わせた際の段差に応じた2つのガイドリブ2bが、対向する位置に形成されている。これらは、押釦1の基板方向への摺動を案内すると共に、そのがたつきを抑制する。
【0031】
なお、釦穴20内には、収容される押釦1を表示側に押す付勢部材、および、収容される押釦1が釦穴20から抜け落ちるのを防ぐための保持部材等が設けられているが、ここでは説明を省略する(図示しない)。
【0032】
基板3は、筐体2に重ねられて釦穴20の底面をなす。また、釦穴20ごとの位置にLED3aとスイッチ素子3bとを備えている。
【0033】
LED3aは、図3に示すように、基板3表面から表示側方向へと発光する。その照明光は導光体13を経てキートップ11へと達する。
【0034】
スイッチ素子3bは、押釦1に対する押圧操作および押圧の解除操作に応じて、ON/OFF信号を切り換える。なお、スイッチ素子3bは、基板に搭載可能なスイッチ素子であればどのようなものを用いても良い。例えば、メンブレンスイッチ等の小型スイッチが利用可能である。
【0035】
以上、本実施形態にかかる操作パネル10の備えるスイッチ装置100について説明した。
【0036】
次に、操作パネル10の製造工程について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施形態にかかる操作パネル10の製造工程を示すフローチャートである。
【0037】
まず、操作パネル10の備えるスイッチ装置100を構成する各部材が準備される(S101)。
【0038】
ここで、前述の従来のスイッチ装置300の場合、レーザ加工によって、押釦8を構成するキートップ81に任意の文字や図形、記号等の表示パターンが施される。さらに、表示パターンの相違する押釦8を正しい配置で操作パネルに収容するため、導光体83に溝部83dが、釦穴90にリブ90dが、それぞれ形成される。
【0039】
これに対して、本実施形態にかかるスイッチ装置100の押釦1を構成する各部材では、全て同一の形状・大きさのものが準備される。また、キートップ11には、レーザ加工が施される前の状態のものが準備される。なお、種類が相違する押釦(例えば、押釦1aと押釦1b)を設ける場合には、押釦の種類間で形状および大きさの異なる部材を用意すれば良い。
【0040】
次に、各部材が組み立てられる(S102)。
【0041】
具体的に、まず、キートップ81を導光体13と組み合わせて押釦1を形成する。そして、これを基板3と重ねた筐体2に形成される釦穴20へと収容する。なお、同種の押釦1を構成する各部材(すなわち、キートップ81、導光体13および釦穴20)は、全て同様の形状および大きさをしているために、これらはどのようも組み合わせても良い。
【0042】
そして、キートップ11の表面に、レーザ加工が施される(S103)。
【0043】
具体的には、キートップ11に形成される遮光性着色層が、レーザ装置によって所望の形状に除去される。例えば、遮光性着色層を平均粒径が小さく電磁波吸収性に優れた材料(例えば、カーボンブラック等)を含有する塗料で形成しておくことによって、効率的に除去することが可能である。
【0044】
以上説明したように、本実施形態にかかる操作パネル100の製造工程では、キートップに表示パターンを施すためのレーザ加工処理は、組立て後の操作パネル10に対して行われる。従って、組立て作業時、キートップに施された表示パターンによって各押釦の配置を特定するものではないため、表示パターンが異なる押釦の間で各部材を共有することが可能である。従って、操作パネル10に複数の押釦を搭載する場合でも、各押釦および釦穴を同一の形状・大きさに設計・製造することが可能である。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0046】
上記実施形態によれば、各押釦および釦穴にお互いを特定するための識別構造を付さなくてもよいため、各部材を簡易な形状で構成することができる。これにより、基板からの照明光が識別構造によって妨げられることがない。よって、透過照明範囲が広く確保され、キートップ表面に生じる輝度むらを低減することが可能である。
【0047】
さらに、上記のように構成された操作パネル10によれば、搭載される複数の押釦部材および釦穴が同一の形状・大きさで構成されているため、押釦部材は相互に置換が可能となり、簡便な組立て作業によって組み立てることができる。
【0048】
また、レーザ加工処理を各釦について同条件で施すことが可能であるため、各釦間の表示パターンのバラツキを低減することができる。
【0049】
また、本発明は、上記実施形態に制限されない。上記実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、ガイド溝13bが挟持部12bの厚みよりも深く構成され、これらを組み合わせた際に生じる段差がガイドリブ2bに嵌まる例について説明した。しかしながら、例えば、図6に示すスイッチ装置200のように、キートップ41を導光体43と組み合わせて押釦4を組み立てたときに、ガイド42の挟持部42bとガイド溝43bとの間に段差が生じないような構成としても良い。
【0051】
このような構成によれば、導光体43を通過する照明光を妨げる構造がほとんど存在しないため、キートップ41の輝度むらをより低減することが可能である。また、釦穴50内側面にガイドリブを設ける必要が無いため、より簡便な構造体として筐体5を設計・製造することが可能である。
【0052】
また、各部材の数、大きさ、位置等についても上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で変更可能である。
【0053】
なお、上記の実施形態では、本発明をナビゲーション装置に適用した例について説明したが、本発明は、車載の電子機器以外、例えば携帯電話等についても適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
100・200:スイッチ装置、1・4.8:押釦、2・5・9:筐体、3:基板、11・41・81:キートップ、12・42・82:ガイド、13・43・83:導光体、3a:LED、3b:スイッチ装置、20:釦穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押釦部材を取り付けるための釦穴を備える筐体と、
前記釦穴に取り付けられた少なくとも複数の同一形状の押釦部材と、を備え、
前記押釦部材は、背後からの照明光を釦表面に導くための導光体を備え、
前記釦表面には、文字、記号、あるいは図形からなり、前記導光体で導かれた光により照明され、かつ、前記釦部材が前記筐体に取り付けられた後に加工形成された表示パターンが形成されていること
を特徴とする操作パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の操作パネルであって、
前記表示パターンは、押釦部材によって異なること
を特徴とする操作パネル。
【請求項3】
押釦部材を取り付けるための釦穴を備える筐体と、
少なくとも複数の同一形状の釦部材であって、背面からの照明光を釦表面に導くための導光体を備える釦部材と、を用意する工程と、
前記釦部材を前記筐体の釦穴に取り付ける工程と、
前記釦表面に、前記導光体で導かれた光により照明される、文字、記号あるいは図形からなる表示パターンを加工形成する工程と、を含むこと
を特徴とする操作パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−146611(P2012−146611A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6108(P2011−6108)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】