説明

抽出装置、抽出方法、定量分析方法

【課題】 フィルム表面に存在している滑剤等の表面成分を抽出するための抽出装置、抽出方法を提供し、それを用いた定量分析方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 フィルム表面の成分を溶媒により抽出するための抽出装置であって、底板と、該底板の表面に前記フィルムを挟んだ状態で設置され、前記空洞を有し、空洞内でフィルムを露出させることのできるフレームと、前記フレームの上部の一部を覆うことができる上板とを順に備え、且つ、前記底板と前記フレームの底面を密着させるための固定化手段を前記底板と前記上板の間に備えることを特徴とする抽出装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム表面の滑剤等の表面成分を抽出する抽出装置およびフィルム表面の滑剤等の表面成分の定量方法に関するものである
【背景技術】
【0002】
飲食品や医薬品、日用雑貨品などあらゆる物品を包装するために使用されるフィルムは、強度、遮光性、バリア性、シール性等様々な特性を持つ。包装袋は様々な特性を持った数種類のフィルムを積層し、その積層フィルムを袋状にすることで得られる。さらに各層のフィルムには機能性を付与するために添加剤を加えることがある。添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤などがある。
【0003】
フィルムに添加される添加剤において、滑剤はフィルムの滑り性を得るために添加される。フィルムの滑り性が適切でないと袋を作成する製袋工程や内容物の充填工程に不具合を生じることがある。具体的には滑り性が一定でないと製袋工程においてフィルムの送り量にばらつきが生じてしまい、シール幅のずれや印刷柄のずれといった問題が生じる。また滑り性が発揮されていないと、内容物充填工程においてシーラント面のフィルム同士がブロッキングして開封できないといった問題が生じる。
【0004】
フィルム中に添加されている滑剤としてよく用いられるのは脂肪酸アミド系滑剤であり、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド等がある。これらは樹脂中に添加されており、製膜した時に添加された滑剤の一部が表面に移動(ブリードアウト)してくることでフィルムに滑り性を付与する。従ってフィルム表面にブリードアウトしている滑剤量を定量的に把握することは、フィルムの滑り性を知る上で非常に重要となってくる。
【0005】
また、脂肪酸アミド系滑剤は樹脂の初期添加量、フィルムの厚み、さらに温度によって表面へのブリードアウト量が変化することがわかっている。これらの因子によって滑り性がどのように変化するのかを定量的に把握することは、フィルム表面の滑剤の挙動を知る上で重要であり、さらには製袋工程および充填工程における不具合の原因を定量的に把握することも可能となってくる。
【0006】
特許文献1にあっては、樹脂ごとヘキサフルオロイソプロパノールに溶かし、クロマトグラフィーにて滑剤の定量をおこなう方法が示されている。また、特許文献2ではフィルムをヒートシールで袋状にして、中に有機溶媒を入れ1分間の振とうをおこなうことで表面の滑剤を抽出し、クロマトグラフィーにて定量をおこなう方法が示されている。
【特許文献1】特開2004−309436
【特許文献2】特開2008−162160
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の方法ではフィルムの片側の表面にブリードアウトしている滑剤だけを定量することはできないという問題がある。また、フィルム片をヘキサンやクロロホルム等の有機溶媒に数分浸してクロマトグラフィーにて滑剤の定量をおこなう方法もあるが、フィルムの片側にコロナ処理をしてある場合や数種類のフィルムを積層してある場合には、目的のフィルム表面のみの滑剤を有機溶媒中に抽出することはできない。
【0008】
また、特許文献2記載の振とう法では、溶媒がフィルム全面に行き渡っているかどうかが明確ではなく測定値のばらつきの原因となりかねない。またフィルムの中にはナイロンやPETフィルムのようにヒートシールにて袋状にできないものもあり、あらゆるフィルムにおいて用いることのできる方法ではないという問題がある。
【0009】
さらには飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF−SIMS)を用いて表面に存在する滑剤を確認する方法もあるが、この方法はフィルム表面の滑剤の有無は確認できるが、定量分析をおこなうことは困難であるという問題があった。
【0010】
そこで本発明にあっては、フィルム表面に存在している滑剤等の表面成分を抽出するための抽出装置、抽出方法を提供し、それを用いた定量分析方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、フィルム表面の成分を溶媒により抽出するための抽出装置であって、底板と、該底板の表面に前記フィルムを挟んだ状態で設置され、前記空洞を有し、空洞内でフィルムを露出させることのできるフレームと、前記フレームの上部の一部を覆うことができる上板とを順に備え、且つ、前記底板と前記フレームの底面を密着させるための固定化手段を前記底板と前記上板の間に備えることを特徴とする抽出装置とした。
【0012】
また、請求項2に係る発明としては、前記底板が支柱を備え、前記上板が該支柱を貫通する穴を備え、前記底板の支柱が前記上板の穴を貫通し、ナットにより底板と上板を固定することを特徴とする請求項1記載の抽出装置とした。
【0013】
また、請求項3に係る発明としては、前記フレームの上板側の空洞のうち、上板の覆われていない部分を覆うことのできる蓋を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の抽出装置とした。
【0014】
また、請求項4に係る発明としては、請求項1乃至3のいずれかに記載の抽出装置を用い、前記底板と前記フレームの間にフィルムを載置し、前記底板と前記上板を固定し前記底板上に載置されたフィルムと前記フレームを密着させ、前記フレームの空洞内で前記フィルムを露出させ、前記フレームの空洞内に溶媒を注入し、前記フレーム内に注入された溶媒を回収することを特徴とするフィルム表面の成分を溶媒により抽出する抽出方法とした。
【0015】
また、請求項5にかかる発明としては、前記フレームの空洞内の溶媒を注入してから前記フレーム内に注入された溶媒を回収するまでの間において、前記柱状のフレームの上部のうち、上板の覆われていない部分を覆うことを特徴とする請求項4記載の抽出方法とした。
【0016】
また、請求項6にかかる発明としては、請求項4または請求項5で抽出されたフィルムの表面成分が抽出された溶媒についてクロマトグラフィーにより分析をおこない、フィルムの表面成分について定量分析をおこなうことを特徴とする定量分析方法
【発明の効果】
【0017】
本発明の抽出装置、抽出方法を用いることであらゆるフィルムに対してフィルム表面にブリードアウトしている滑剤等の表面成分を抽出することができ、その抽出液をクロマトグラフィーで分析することでフィルム表面の滑剤等の表面成分の定量が可能となる。本発明の抽出装置、抽出方法及び定量分析方法にあっては、フィルムの片面の表面成分を容易に抽出、定量分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の抽出装置を以下に詳細に説明する。
【0019】
図1の本発明の抽出装置の(a)上面図と(b)側面図を示した。
【0020】
本発明の抽出装置にあっては、底板1と、フレーム2と、上板3と、底板1と上板3とを固定化する固定化手段である支柱41とナット42により構成される。底板1とフレーム2の間に試料であるフィルムが載置される。そして、底板1と上板3とを固定化手段である支柱41とナット42で固定することにより、底板1とフレーム2フィルム5を挟んだ状態で密着させることができる。
【0021】
図2に本発明の抽出装置の底板1の斜視図を示した。底板1としては、平滑な表面を有するものであればよい。底板の材質は、例えば、鉄、ステンレス、アルミ等の板を用いることができる。底板の表面1には、支柱41を固定化するための穴が設けられている。
【0022】
図3に本発明の抽出装置のフレーム2の斜視図を示した。フレーム2は、底板1の表面にフィルム5を挟んだ状態で設置され、フィルムを閉じた状態で露出させることのできる空洞を有する。フレーム2とフィルム5によって形成される空間には、溶媒が注入される。そのため、フレーム2は底板1とフィルム5を挟んだ状態で密着する必要がある。
【0023】
フレーム2の空洞に溶媒を注入し一定時間保持後フレームの空洞内の溶媒を回収することによって、試料であるフィルム表面の成分を抽出はおこなわれる。このとき、フレームと空洞とフィルムによって形成される空間に注入された液がフレーム外に流れ出さないようにする必要がある。したがって、フレームの底板側の表面は平滑にし、底板と密着させることができるようにする必要がある。また、フレーム内の底板側の空洞は、予め空洞の面積値が計測されることが好ましい。面積を計測することにより、単位面積あたりの成分量を定量することができる。フレーム2にあっては、図2(a)のように柱状であっても構わないし、図2(b)のように円柱状であっても構わない。また、図2(b)のようにフレーム上部の大部分が覆われており、上部の一部に溶媒を注入、回収するための穴を設けているものでも構わない。
【0024】
フレーム2は固定することができ溶媒をフレームの空洞内に注入した際に溶媒が漏れないものであればその厚さに指定はないが、フレーム2は5mm以上の厚みを有することが好ましい。フレームの材質は、ステンレス製、テフロン(登録商標)製、PFA等を用いることができ、溶媒である有機溶媒に不溶であり変形しないものであれば特に限定されるものではない。
【0025】
図4に本発明の抽出装置の上板3の斜視図を示した。本発明の上板3は、フレーム2の上部の一部を覆うように設けられ、固定化手段により底板1と固定し、底板1とフレーム2を密着するために設けられる。上板3には、固定化手段である支柱を貫通するための穴31が設けられている。上板の材質は例えば、鉄、ステンレス、アルミ等の板を用いることができる
【0026】
図5に本発明の抽出装置の支柱41とナット42の斜視図を示した。支柱41の一方の端は、底板1の穴11と固定するためにネジ山が切られている。なお、あらかじめ底板1と支柱42は、溶接や接着剤により固定されていてもよい。また支柱のもう一方の端は上板3と底板1を固定するために、上板3の穴31を貫通させた状態で、ナット42を締めるためのネジ山が切られている。上板を貫通させた状態で、支柱41とナット42を締め上げることにより、前記底板とフレームの底面を密着させることができ、フレーム内に溶媒を注入した際に溶媒がフレームの外へ流れ出すことを防ぐことができる。ナット42は手で簡単に締められるために、図5に図示するような蝶ナットを用いることが好ましい。
【0027】
なお、底板とフレームの底面を密着させるための固定化手段としては、支柱とナットに限定されるものではない。例えば、上板と底板を一本のボルトで締め上げて固定しても良い。ただし、操作上、支柱とナットを固定化手段として好適に用いることができる。
【0028】
また、本発明の抽出装置にあっては、フレームの上部のうち、上板の覆われていない部分を覆うことのできる蓋を備えることが好ましい。本発明の抽出装置を用いた抽出方法にあっては、溶媒をフレーム内に注入後、フレーム内の溶媒を回収するまでに、一定の時間保持させる必要がある。このとき、溶媒の蒸発を防ぐために、本発明の抽出装置にあってはフレームの上板側の空洞を覆うための蓋を備えることが好ましい。蓋としてはガラス板、ステンレス板等平坦なものなら何でもよいが、フレームとの間になるべく隙間ができないようなものにすることが望ましい
【0029】
次に、本発明の抽出装置を用いた抽出方法について説明する。図6に本発明の抽出方法の説明図を示した。なお、図6にあっては、固定化手段である支柱、ナットは省略した。
【0030】
本発明の抽出方法にあっては、底板1とフレーム2の間にフィルム5を載置し、底板と上板を固定し、底板1上に載置されたフィルム5とフレーム2を密着させてフレーム2の空洞にフィルム5を露出させる工程(図6(a))と、前記フレーム2の空洞内に溶媒8を注入する工程(図6(b))と、一定時間保持する工程(図6(c))と、前記フレーム2内に注入された溶媒8を回収する工程(図6(d))とを備える。
【0031】
本発明の抽出方法にあっては、まず、底板上にフィルムを載置し、フィルム上にフレームを載置して、上板と底板を固定化手段により固定し、底板上に載置されたフィルムとフレームを密着させる(図6(a))。これによって、フレームの空洞にフィルムを閉じた状態で露出させることができる。このとき、抽出面がフレーム側となるようにフィルムは底板上に載置される。また、フレームの底板側の空洞内はすべてフィルムによって覆われるようにフレームは載置される。
【0032】
本発明に用いられるフィルムの種類としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ナイロン、PET等のプラスチックフィルムを用いることができ、フィルム状になっているものならばあらゆるものが可能である。またこれらを積層した積層フィルムについても好適に用いることができ、フィルム状となっていれば制限はない。本発明の抽出方法にあっては、フィルムの片面について表面成分の抽出が可能である。したがって、片面にコロナ処理等の表面処理がしてあるフィルムや、片面に積層してあるフィルムについても表裏を区別して抽出することが可能である。
【0033】
また、このとき、底板とフレームとの密着性をよくするために底板にゴム板やシリコーンゴム板を敷くことも好ましくおこなわれる。
【0034】
次に、フレーム2の空洞内に溶媒8がピペット6等により注入される(図6(b))。本発明にあっては、フレームの空洞内に入れる溶媒量はフレームの中のフィルム全面にいきわたる最低量を入れることが好ましい。使用する溶媒は目的とする表面成分を溶解するものから選択される。
【0035】
フレーム2内に溶媒8を注入した後は、一定時間保持される(図6(c))。保持する間は、溶媒の蒸発を防ぐことを目的として、フレームの上板側の空洞のうち上板で覆われていない部分を蓋7で覆うことが好ましい。フレーム内に注入する溶媒として揮発性が高い溶媒を用いる場合には、フレームの内に溶媒を入れたら、溶媒の揮発を防ぐことを目的としてすばやく蓋7で覆うことが好ましい。蓋7は板で覆われていない部分すべてを覆うことが好ましく、蓋7とフレーム2の間はできるだけ隙間が無いほうが好ましい。
【0036】
一定時間経過後、フレーム内の溶媒はピペット6等により回収される(図6(d))。抽出された溶媒は表面成分が抽出された溶媒となる。
【0037】
フィルムの表面成分が抽出された溶媒は、クロマトグラフィーにより定量分析をおこなうことができる。
【0038】
クロマトグラフィーによる定量分析は、目的物質である表面成分の既知濃度の標準液を測定して検量線を作成し、未知試料の濃度を定量する絶対検量線法を用いて行うが、標準添加法や内部標準添加法を用いて定量しても構わない。
【0039】
予め、フレームのフィルムと接触する側の面積を算出することにより、濃度で求められた定量値からフィルム一定面積当たりの表面成分を算出して、表面成分量を求めることが可能である。
【0040】
クロマトグラフィーとしては、定量する表面成分の種類に合わせてガスクロマトグラフまたは液体クロマトグラフを選択して用いる。定量値が微量な場合は特にこれらに質量分析計の付いたガスクロマトグラフ/質量分析装置または液体クロマトグラフ/質量分析装置を用いることが好ましい。
【0041】
以上により、フィルム表面の表面成分を抽出し、その量を求めることができる。本発明の抽出方法、定量分析方法にあっては、特に、フィルム表面の滑剤成分を定量するのに好適に用いることができる。滑剤はフィルム中に添加され、表面にブリードアウトすることによりフィルム表面に滑り性を付与するものである。フィルム表面にある滑剤量を本発明の抽出装置および抽出方法を用いて定量分析することによってフィルムの滑り性を定量的に判断することができる。また、滑剤以外にも、酸化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤等の添加剤のフィルム表面での定量をおこなうことができる。
【実施例】
【0042】
以下に具体的実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限られるものではない。
【0043】
<実施例1>
滑剤としてエルカ酸アミドが100ppm、300ppm、600ppm含有したポリエチレンフィルム(厚み100μm)を20cm角に切り取り、ステンレスからなり、支柱を備える底板の上に乗せ、ステンレス製のフレームをその上に置き、ステンレス製の上板をさらに乗せ、ナットを締め上げて上板を押し付けてフィルムとフレームを固定させた。このとき、フレーム内の空洞の面積が100cmである正方形状のフレームを用いた。フレーム内にクロロホルムを10ml流し入れ、すばやくガラス製の蓋をフレームの上に置いて1分間静置させた。1分後、クロロホルム液をピペットにより回収し、ガスクロマトグラフ/質量分析計(Agilent製)に注入し、分析を行った。分析条件は注入量1μl、スプリットレス注入、SIM測定で行い、指定イオンはm/z=59、72、337とした。また、エルカ酸アミド試薬(東京化成工業)を3水準の濃度でクロロホルムにてエルカ酸アミド標準液を調整した。m/z=59のイオンクロマトグラムよりピーク面積を求め、検量線を作成した。この検量線を用いて、各フィルムの抽出液のピーク面積より濃度を算出し、さらにはフレーム内の面積を用いてフィルム1mあたりのエルカ酸アミドの重量に換算した。得られた結果を表1に示す。
<実施例2>
滑剤としてエルカ酸アミドが300ppm含有されたポリエチレンフィルムで、厚みが50μmと100μmのフィルムについて実施例1と同様の方法でフィルム表面に存在するエルカ酸アミドの定量を行った。得られた結果を表1に示す。
<実施例3>
滑剤としてエルカ酸アミドが300ppm含有されたポリエチレンフィルム(厚み100μm)を25℃、45℃、60℃にそれぞれ保存した後に、実施例1と同様の方法でフィルム表面に存在するエルカ酸アミドの定量を行った。得られた結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
<実施例4>
外面から、PET(膜厚15μm)/Al箔(膜厚7μm)/ポリエチレン(エルカ酸アミド初期添加量300ppm、膜厚100μm)の積層フィルムにおいて最外層のPETフィルム表面に付着しているエルカ酸アミドの量を実施例1と同様の方法で行い、定量した。得られた結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
実施例1ではエルカ酸アミド初期添加量と表面にブリードアウトしているエルカ酸アミドの量は比例関係にあることが本発明の方法を用いることで定量的に確認できた。実施例2ではエルカ酸アミド初期添加量は一定でもフィルムの膜厚によって表面にブリードアウトしているエルカ酸アミドの量は異なり、膜厚と比例関係にあることが本発明の方法を用いることで定量的に確認できた。実施例3ではエルカ酸アミド初期添加量、膜厚が同一であってもフィルムの保管温度によって表面にブリードアウトしているエルカ酸アミドの量に違いが生じており、保管温度が高くなると表面ブリードアウト量は減少する傾向にあることが本発明の方法を用いることで定量的に確認できた。実施例4ではポリエチレン面の影響を受けることなく、最外層であるPET面に付着したエルカ酸アミドのみを抽出することが可能であり、PET表面の付着量を定量することが可能となった。PETはヒートシール性が悪いことから袋状にして抽出を行うことが不可能であり、本発明の方法を用いることが有効である。以上のことから本発明の方法を用いることで、フィルム表面に存在する滑剤量を定量することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は本発明の抽出装置の(a)上面図と(b)側面図である。
【図2】図2は本発明の抽出装置の底板1の斜視図である。
【図3】図3は本発明の抽出装置のフレーム2の斜視図である。
【図4】図4は本発明の抽出装置の上板3の斜視図である。
【図5】図5は本発明の抽出装置の支柱41とナット42の斜視図である。
【図6】図6は本発明の抽出方法の説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 底板
2 フレーム
3 上板
41 支柱
42 ナット
5 フィルム
6 ピペット
7 蓋
8 溶媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム表面の成分を溶媒により抽出するための抽出装置であって、
底板と、
該底板の表面に前記フィルムを挟んだ状態で設置され、前記空洞を有し、空洞内でフィルムを露出させることのできるフレームと、
前記フレームの上部の一部を覆うことができる上板とを順に備え、且つ、
前記底板と前記フレームの底面を密着させるための固定化手段を前記底板と前記上板の間に備えることを特徴とする抽出装置。
【請求項2】
前記底板が支柱を備え、前記上板が該支柱を貫通する穴を備え、前記底板の支柱が前記上板の穴を貫通し、ナットにより底板と上板を固定することを特徴とする請求項1記載の抽出装置。
【請求項3】
前記フレームの上板側の空洞のうち、上板の覆われていない部分を覆うことのできる蓋を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の抽出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の抽出装置を用い、
前記底板と前記フレームの間にフィルムを載置し、
前記底板と前記上板を固定し前記底板上に載置されたフィルムと前記フレームを密着させ、前記フレームの空洞内で前記フィルムを露出させ、
前記フレームの空洞内に溶媒を注入し、
前記フレーム内に注入された溶媒を回収する
ことを特徴とするフィルム表面の成分を溶媒により抽出する抽出方法。
【請求項5】
前記フレームの空洞内の溶媒を注入してから前記フレーム内に注入された溶媒を回収するまでの間において、前記柱状のフレームの上部のうち、上板の覆われていない部分を覆うことを特徴とする請求項4記載の抽出方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5で抽出されたフィルムの表面成分が抽出された溶媒についてクロマトグラフィーにより分析をおこない、フィルムの表面成分について定量分析をおこなうことを特徴とする定量分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−60492(P2010−60492A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228149(P2008−228149)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】