説明

抽出装置及び抽出方法

【課題】目的とする成分を効率的に抽出する。
【解決手段】収容部16内の温度を検出する温度センサ41を加熱制御装置42に接続し、収容部16内の抽出対象試料17にマイクロ波を照射して加熱するマイクロ波加熱装置51を加熱制御装置42に接続する。加熱制御装置42は、収容部16内の温度が目的温となるようにマイクロ波加熱装置51からの出力を制御する。収容部16内の気化成分を取り出す取出経路81に真空ポンプ102を接続し、真空ポンプ102からの負圧を収容部16内に供給する。収容部16内の圧力を検出する圧力センサ133を圧力制御装置132に接続し、取込路112での通流量を制御する圧力制御弁131を圧力制御装置132に接続する。圧力制御装置132は、収容部16内の圧力が目的圧となるように圧力制御弁131を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物から抽出物を抽出する抽出装置及び抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抽出装置としては、柑橘類から精油を抽出する装置(例えば、特許文献1参照。)や、酒粕からアルコールを抽出して分離する装置(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【0003】
柑橘類から精油を抽出する抽出装置では、ケーシング内に収容した柑橘類の残渣を減圧下で加熱しながら攪拌し、前記残渣から水分や精油を気化させるとともに、気化した水分や精油を冷却し、凝縮液として抽出できるように構成されている。
【0004】
また、酒粕からアルコールを抽出する抽出装置では、タンクに投入された酒粕を電磁波発生装置を用いて加熱することで、酒粕に含まれた揮発成分を内部から加熱することで、局部的な温度上昇に起因した乾燥むらを防止できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−291007号公報
【特許文献2】実開平05−009300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来の抽出装置にあっては、目的とする成分を効率良く抽出することができなかった。
【0007】
このため、柑橘類の残渣から得た凝縮液から精油を抽出する場合、凝縮液に大量に含まれた水分を精油から分離する作業が不可欠であった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、目的とする成分を効率的に抽出することができる抽出装置及び抽出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の抽出装置にあっては、収容部内の減圧下で加熱された対象物より気化した成分を液化して抽出する抽出装置において、前記収容部内の圧力を目的圧に制御する制御手段を備えている。
【0010】
すなわち、収容部に収容された対象物は、減圧下で加熱された際に気化した成分が回収された後、液化されることによって抽出物として抽出される。
【0011】
このとき、前記対象物を収容した収容部内の圧力は目的圧に保たれている。このため、前記対象物からは、前記目的圧において、所定温度で沸点となる特定成分の気化が前記所定温度にて促進され、当該所定温度において、前記特定成分を主成分とした前記抽出物が前記対象物より抽出される。
【0012】
また、請求項2の抽出装置においては、前記制御手段は、前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路と、該取出経路に負圧を供給する負圧供給手段と、前記収容部内に大気を取り込む取込路と、該取込路から前記収容部内に取り込まれる大気の通流量を制御する取込側制御弁と、前記収容部内の圧力を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段で検出した圧力が前記目的圧となるように前記取込側制御弁を制御して該取込側制御弁での通流量を調整する通流量調整手段と、を備えている。
【0013】
すなわち、収容部内の対象物より気化した成分を取り出す取出経路には、負圧が供給されており、この負圧によって前記収容部からの気化成分の取り出しが促進されるとともに、前記収容部内が減圧される。
【0014】
このとき、前記収容部内には、取込路から大気が取り込まれるが、当該取込路には、取り込む大気の通流量を制御する取込側制御弁が設けられている。そして、この取込側制御弁は、前記収容部内の圧力に基づいて制御され、当該取込側制御弁での通流量が調整される。
【0015】
これにより、前記収容部内での圧力が前記目的圧となるように維持される。また、圧のコントロールが正確に行われるとともに突沸が起こりにくい。
【0016】
さらに、請求項3の抽出装置では、前記制御手段は、前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路と、該取出経路に負圧を供給する負圧供給手段と、前記収容部内に大気を取り込む取込路と、前記収容部内の圧力を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段で検出した圧力が前記目的圧となるように前記負圧供給手段を制御する負圧調整手段と、を備えている。
【0017】
すなわち、収容部内の対象物より気化した成分を取り出す取出経路には、負圧が供給されており、この負圧によって前記収容部からの気化成分の取り出しが促進されるとともに、前記収容部内が減圧される。
【0018】
このとき、前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように前記負圧供給手段が制御され、前記収容部内での圧力が前記目的圧となるように維持される。これにより、圧のコントロールが正確に行われるとともに突沸が起こりにくい。
【0019】
加えて、請求項4の抽出装置にあっては、前記制御手段は、前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路と、該取出経路に負圧を供給する負圧供給手段と、前記収容部内に大気を取り込む取込路と、該取込路から前記収容部内に取り込まれる大気の通流量を制御する取込側制御弁と、前記収容部内の圧力を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段で検出した圧力が前記目的圧となるように前記負圧供給手段及び/又は前記取込側制御弁を制御する負圧調整手段と、を備えている。
【0020】
すなわち、収容部内の対象物より気化した成分を取り出す取出経路には、負圧が供給されており、この負圧によって前記収容部からの気化成分の取り出しが促進されるとともに、前記収容部内が減圧される。
【0021】
このとき、前記収容部内には、取込路から大気が取り込まれるが、当該取込路には、取り込む大気の通流量を制御する取込側制御弁が設けられている。また、前記収容部内の圧力を検出する圧力検出手段を備えており、前記負圧供給手段及び/又は前記取込側制御弁は、前記収容部内の圧力に基づいて制御される。
【0022】
これにより、前記収容部内での圧力が前記目的圧となるように維持される。また、圧のコントロールが正確に行われるとともに突沸が起こりにくい。
【0023】
また、請求項5の抽出装置においては、さらに前記取出経路に流通量を制御する吸引側制御弁を設け、前記圧力検出手段で検出した圧力が前記目的圧となるように前記吸引側制御弁を制御して該吸引側制御弁での通流量を調整する吸引量調整手段を備えている。
【0024】
すなわち、前記取出経路には、吸引側制御弁が設けられており、該吸引側制御弁は、前記圧力検出手段で検出した圧力に基づいて、通流量が制御される。
【0025】
これにより、前記収容部内での圧力が前記目的圧となるように維持される。また、圧のコントロールが正確に行われるとともに突沸が起こりにくい。
【0026】
さらに、請求項6の抽出装置では、前記収容部内に収容された対象物を攪拌する攪拌部を設けるとともに、前記取込路から取り込んだ大気を前記攪拌部の端部へ案内して前記収容部の底部側から噴出する為の案内路を当該攪拌部の軸部に設けた。
【0027】
これにより、前記収容部内に収容された対象物は、攪拌部によって攪拌され、抽出物の抽出が促進される。
【0028】
このとき、前記取込路から取り込まれた大気は、前記攪拌部の軸部に設けられた案内路を介して、当該軸部の端部へ案内され、前記収容部の底部側から噴出される。これにより、当該攪拌部で攪拌される対象物の下部へ大気を送り込むことができるため、当該対象物の上部空間に大気を送り込む場合と比較して、気化成分の回収効率が高められる。
【0029】
また、請求項7の抽出装置にあっては、前記対象物を収容した収容体を前記収容部の底面から浮かした状態で保持する保持手段を備えている。
【0030】
すなわち、前記対象物は、前記収容体に収容されている。
【0031】
このため、前記抽出物を抽出した残渣は、前記収容体に収容された状態で前記収容部から排出される。
【0032】
また、前記対象物を収容した前記収容体は、前記収容部の底面から浮かした状態で保持される。
【0033】
このため、前記収容体に収容された前記対象物は、当該収容体の底部側からも加熱される。
【0034】
さらに、請求項8の抽出装置においては、前記対象物にマイクロ波を照射して加熱するマイクロ波加熱装置を設ける一方、前記収容体を、前記マイクロ波は透過し前記対象物より気化した成分は透過しない部材で構成するとともに、その一部に開口部を設けた。
【0035】
すなわち、前記対象物を収容した前記収容体は、マイクロ波は透過する一方、前記対象物より気化した成分は透過しない部材で構成されており、その一部には、開口部が設けられている。
【0036】
このため、前記対象物を収容した前記収容体にマイクロ波加熱装置からのマイクロ波を照射することによって、内部に収容された前記対象物が加熱される。
【0037】
そして、本発明の請求項9の抽出方法にあっては、収容部内の減圧下で加熱された対象物より気化した成分を液化して抽出物として抽出する抽出方法において、前記収容部内の圧力を目的圧に保った状態で特定の成分を主成分とした前記抽出物を前記対象物より抽出する。
【0038】
すなわち、収容部内の減圧下で加熱された対象物より気化した成分を液化して抽出物として抽出する際には、前記収容部内の圧力が目的圧に維持される。
【0039】
このとき、前記対象物からは、前記目的圧において、所定温度で沸点となる特定成分の気化が前記所定温度にて促進され、当該所定温度において、前記特定成分を主成分とした前記抽出物が前記対象物より抽出される。
【0040】
また、請求項10の抽出方法においては、前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路に負圧を供給して前記収容部内の気化成分の取り出しを促進しつつ前記収容部内を減圧する一方、前記収容部内へ大気を取り込む取込路での通流量を調整して前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように制御する。
【0041】
すなわち、前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路に負圧を供給することによって、前記収容部内の気化成分の取り出しが促進されるとともに、前記収容部内が減圧される。
【0042】
このとき、前記収容部内には、取込路より大気が取り込まれるが、該取込路での通流量が調整されることによって、前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように制御され、該目的圧に維持される。また、圧のコントロールが正確に行われるとともに突沸が起こりにくい。
【0043】
さらに、請求項11の抽出方法では、前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路に負圧を供給して前記収容部内の気化成分の取り出しを促進しつつ前記収容部内を減圧するとともに、供給する負圧を調整して前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように制御する。
【0044】
すなわち、前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路に負圧を供給することによって、前記収容部内の気化成分の取り出しが促進されるとともに、前記収容部内が減圧される。
【0045】
このとき、前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように供給される負圧が調整され、前記収容部内での圧力が前記目的圧となるように維持される。また、圧のコントロールが正確に行われるとともに突沸が起こりにくい。
【0046】
加えて、請求項12の抽出方法にあっては、前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路に負圧を供給して前記収容部内の気化成分の取り出しを促進しつつ前記収容部内を減圧する一方、前記収容部内へ大気を取り込む取込路での通流量及び/又は供給する負圧を調整して前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように制御する。
【0047】
すなわち、前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路に負圧を供給することによって、前記収容部内の気化成分の取り出しが促進されるとともに、前記収容部内が減圧される。
【0048】
このとき、前記収容部内へ大気を取り込む取込路での通流量及び/又は供給する負圧は調整され、前記収容部内での圧力が前記目的圧となるように維持される。また、圧のコントロールが正確に行われるとともに突沸が起こりにくい。
【0049】
また、請求項13の抽出方法においては、前記取出経路の流通量を調整して前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように制御する。
【0050】
すなわち、前記取出経路の流通量が調整され、前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように制御される。
【0051】
これにより、前記収容部内での圧力が前記目的圧となるように維持される。また、圧のコントロールが正確に行われるとともに突沸が起こりにくい。
【0052】
さらに、請求項14の抽出方法では、前記収容部内に収容された前記対象物を攪拌部で攪拌しならが前記抽出物を抽出する際に、前記取込路から取り込んだ大気を前記攪拌部の軸部を介して前記収容部の底部側へ噴出する。
【0053】
すなわち、前記収容部内に収容された対象物は、攪拌部によって攪拌され、抽出物の抽出が促進される。
【0054】
このとき、前記取込路から取り込まれた大気は、前記攪拌部の軸部を介して前記収容部の底部側から噴出される。これにより、当該攪拌部で攪拌される対象物の下部へ大気を送り込むことができるため、当該対象物の上部空間に大気を送り込む場合と比較して、気化成分の回収効率が高められる。
【0055】
また、請求項15の抽出方法にあっては、前記対象物を収容した収容体を前記収容部の底面から浮かした状態に維持して前記抽出物を前記対象物より抽出する。
【0056】
すなわち、前記対象物を前記収容体に収容することで、前記抽出物を抽出した残渣を、前記収容体に収容された状態で前記収容部から排出することができる。
【0057】
また、前記対象物を収容した前記収容体を、前記収容部の底面から浮かした状態で保持するため、前記収容体に収容された前記対象物を、当該収容体の底部側からも加熱することができる。
【0058】
さらに、請求項16の抽出方法においては、マイクロ波は透過し前記対象物より気化した成分は透過しない部材によって一部開口状に形成された前記収容体に前記マイクロ波を照射して前記対象物を加熱する。
【0059】
すなわち、前記対象物を収容した前記収容体は、マイクロ波は透過する一方、前記対象物より気化した成分は透過しない部材で構成されており、その一部には、開口部が設けられている。
【0060】
このため、前記対象物を収容した前記収容体にマイクロ波を照射することによって、内部に収容された前記対象物を加熱することができる。
【発明の効果】
【0061】
以上説明したように本発明の請求項1の抽出装置及び請求項9の抽出方法にあっては、収容部内の減圧下で加熱された対象物より気化した成分を液化して抽出物として抽出する際には、前記収容部内の圧力が目的圧に維持される。
【0062】
このため、前記対象物からは、前記目的圧における、所定温度で特定成分を主成分とした前記抽出物を、前記対象物から抽出することができる。
【0063】
したがって、前記目的圧を、目的とする成分の気化が促進される圧力に設定した状態で、所定温度毎に抽出物を取得することによって、目的とした特定成分を効率良く抽出することができる。
【0064】
これにより、目的とした成分を主成分とした抽出物を容易に抽出することができるため、対象物の構成成分が、その含有量に応じて抽出されてしまう従来と比較して、抽出作業後において目的外の成分を目的成分から分離するといった分離作業が不要となり、利便性が向上する。
【0065】
また、請求項2の抽出装置及び請求項10の抽出方法においては、対象物より気化した成分を収容部から取り出す取出経路に負圧を供給することによって、前記収容部内の気化成分の取り出しの促進と、前記収容部内の減圧とを同時に行うことができる。
【0066】
このとき、前記収容部内には、取込路より大気が取り込まれるが、該取込路での通流量を調整することによって、前記収容部内の圧力を制御することができる。これにより、前記収容部内での圧力が前記目的圧となるように維持することができる。
【0067】
さらに、請求項3の抽出装置及び請求項11の抽出方法では、対象物より気化した成分を収容部から取り出す取出経路に負圧を供給することによって、前記収容部内の気化成分の取り出しの促進と、前記収容部内の減圧とを同時に行うことができる。
【0068】
このとき、前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように供給される負圧を調整することによって、前記収容部内での圧力が前記目的圧となるように維持することができる。
【0069】
加えて、請求項4の抽出装置及び請求項12の抽出方法にあっては、対象物より気化した成分を収容部から取り出す取出経路に負圧を供給することによって、前記収容部内の気化成分の取り出しの促進と、前記収容部内の減圧とを同時に行うことができる。
【0070】
このとき、前記収容部内へ大気を取り込む取込路での通流量及び/又は供給する負圧を調整することによって、前記収容部内での圧力が前記目的圧となるように維持することができる。
【0071】
また、請求項5の抽出装置及び請求項13の抽出方法においては、前記取出経路の流通量を調整することによって、前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように制御することができる。
【0072】
これにより、圧のコントロールをより正確に行うことができる。
【0073】
さらに、請求項6の抽出装置及び請求項14の抽出方法にあっては、前記収容部内に収容された対象物を攪拌部によって攪拌することで、前記対象物からの抽出物の抽出を促進することができる。
【0074】
このとき、前記取込路から取り込まれた大気を、前記攪拌部の軸部を介して前記収容部の底部側から噴出することができ、当該攪拌部で攪拌される対象物の下部へ送り込むことができる。
【0075】
このため、当該対象物の上部空間に大気を送り込む場合と比較して、気化成分の回収効率を高めることができる。また、前記対象物をむら無く加熱することもできる。
【0076】
加えて、請求項7の抽出装置及び請求項15の抽出方法では、前記抽出物を抽出した残渣を、前記収容体に収容された状態で前記収容部から排出することができる。
【0077】
これにより、前記残渣の運び出し及び取り替えを容易に行うことができる。
【0078】
また、前記対象物を収容した前記収容体は、前記収容部の底面から浮かした状態で保持されるので、前記収容体に収容された前記対象物を、当該収容体の底部側からも加熱することができる。
【0079】
これにより、前記対象物を攪拌することなく、効率的に加熱することができる。
【0080】
さらに、請求項8の抽出装置及び請求項16の抽出方法にあっては、前記対象物を収容した前記収容体は、マイクロ波は透過する一方、前記対象物より気化した成分は透過しない部材で構成されており、その一部には、開口部が設けられている。
【0081】
このため、前記対象物を収容した前記収容体にマイクロ波を照射することによって、内部に収容された前記対象物を加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す説明図である。
【図2】同実施の形態の側面を示す透明図である。
【図3】同実施の形態の平面図である。
【図4】同実施の形態の温度制御を示すフローチャートである。
【図5】同実施の形態の圧力制御を示すフローチャートである。
【図6】同実施の形態で抽出された抽出物の各成分の構成比率を示す説明図である。
【図7】本発明の第二の実施の形態を示す説明図である。
【図8】同実施の形態の側面を示す透明図である。
【図9】本発明の第三の実施の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
(第一の実施の形態)
【0084】
以下、本発明の第一の実施の形態を図に従って説明する。
【0085】
図1は、本実施の形態にかかる抽出装置1を示す図であり、該抽出装置1によって本発明の抽出方法が実施できるように構成されている。
【0086】
この抽出装置1は、図2にも示すように、直方体形状に形成されたフレーム11を備えており、該フレーム11の底面12には、テーブルリフター13を介して支持ブロック14が上下動自在に支持されている。該支持ブロック14の天面15には、上部が開口した容器状の収容部16が支持されており、該収容部16には、対象物である抽出対象試料17を収容できるように構成されている(図1参照)。
【0087】
この収容部16の底面21中央からは、内部に連通したドレンパイプ22が下方へ向けて延出しており、該ドレンパイプ22は、前記支持ブロック14の天面15を挿通した後、エルボ23を介して側方へ向けて延出している。前記エルボ23には、開閉コック24が設けられており、前記ドレンパイプ22の通流を制御できるように構成されている。
【0088】
前記フレーム11の上部には、図2及び図3に示すように、円形状の蓋体31が支持されており、前記収容部16の上部開口部は、前記蓋体31で閉鎖して密閉できるように構成されている。この蓋体31は、前記収容部16と別部材で構成されており、該収容部16を前記テーブルリフター13で下降することによって、図2中破線で示したように、当該収容部16の上部開口部を開放できるように構成されている。
【0089】
これにより、前記上部開口部を開放した状態で、当該収容部16内への前記抽出対象試料17の投入が容易に行えるように構成されている。また、前記抽出対象試料17から抽出物Eの抽出が完了した際には、前記上部開口部から前記抽出対象試料17の残渣を取り出せるように構成されており、清掃時には、前記開閉コック24を開放することで、前記収容部16底面21に残った抽出対象試料の残渣や清掃に使用した水等を前記ドレンパイプ22から排出できるように構成されている。
【0090】
また、前記収容部及び前記蓋体は、マイクロ波を反射する素材、例えば金属によって構成されている。
【0091】
前記収容部16には、図1に示したように、温度検出手段としての温度センサ41が設けられており、当温度センサ41は、前記収容部16内の温度を検出できるように構成されている。該温度センサ41は、加熱制御装置42に接続されており、該加熱制御装置42では、前記温度センサ41を用いて前記収容部16内の温度を検出することで、当該収容部16に収容された前記抽出対象試料17の温度を把握できるように構成されている。
【0092】
前記蓋体31には、マイクロ波加熱装置51が六カ所に設けられており、各マイクロ波加熱装置51は、図3に示したように、マイクロ波発振装置52,・・・と、該マイクロ波発振装置52,・・・から発振されたマイクロ波を前記蓋体31に設けられたマイクロ波照射窓53,・・・へ導く導波部54,・・・とによって構成されている。
【0093】
これにより、前記各マイクロ波発振装置52,・・・からのマイクロ波を、前記マイクロ波照射窓53,・・・から前記収容部16内へ供給し、前記収容部16内に収容された前記抽出対象試料17に照射することで、当該抽出対象試料17を内部から加熱できるように構成されており、抽出対象試料17からの気化成分の気化を促進できるように構成されている。
【0094】
前記マイクロ波加熱装置51,・・・を構成する各マイクロ波発振装置52,・・・は、図1に示したように、前記加熱制御装置42に接続されており、該加熱制御装置42からの制御信号に応じた出力のマイクロ波を発振するように構成されている。この加熱制御装置42は、シーケンサやマイコンを備えた電子回路によって構成されており、前記温度センサ41で検出した温度が、当該加熱制御装置42に予め設定入力された目的温となるように、前記各マイクロ波発振装置52,・・・からの出力を制御する出力調整手段を構成している。
【0095】
図4は、前記加熱制御装置42での温度制御の動作を示すフローチャートであり、該加熱制御装置42を構成するシーケンサや電子回路のマイコンがプログラムに従った動作を開始すると、当該加熱制御装置42にスイッチ等の入力手段によって設定入力された目的温を入力するとともに(S1)、前記温度センサ41で検出した検出温を入力する(S2)。
【0096】
そして、前記目的温と前記検出温とを比較し(S3)、前記検出温が前記目的温より低い、具体的には、前記検出温が前記目的温を中心とした所定の温度範囲を下回る場合には、前記マイクロ波発振装置52を構成する各マイクロ波加熱装置51,・・・への出力を増大して各マイクロ波加熱装置51,・・・からのマイクロ波の出力を大きくすることで、前記収容部16内に収容された前記抽出対象試料17の加熱量を大きくして前記収容部16内の温度を上昇してから(S4)、前記ステップS1へ戻る。
【0097】
また、前記検出温が規定範囲内、つまり前記目的温を中心とした所定の温度範囲内にある場合には、前記各マイクロ波加熱装置51,・・・へ現在の出力を維持することで、前記抽出対象試料17への現在の加熱状態を維持したまま(S5)、前記ステップS1へ戻る。
【0098】
一方、前記検出温が前記目的温より高い、具体的には前記検出温が前記目的温を中心とした所定の温度範囲を上回る場合には、前記各マイクロ波加熱装置51,・・・への出力を減少して各マイクロ波加熱装置51,・・・からのマイクロ波の出力を小さくすることで、前記収容部16内に収容された前記抽出対象試料17の加熱量を小さくして前記収容部16内の温度を低下してから(S6)、前記ステップS1へ戻る。
【0099】
これにより、前記収容室16内の温度を、前記目的温を中心とした所定の温度範囲内に維持できるように構成されている。
【0100】
前記蓋体31の中心部には、図2及び図3に示したように、ロータリージョイント61が設けられており、該ロータリージョイント61の側部には、モータ62が設けられている。該モータ62からの出力は、減速機63を介して前記ロータリージョイント61に伝達されるように構成されており、前記モータ62によって前記ロータリージョイント61のロータ64を回動できるように構成されている。
【0101】
このロータリージョイント61の前記ロータ64には、図2に示したように、攪拌部71の軸部72がシールされた状態で回転自在に支持されており、前記収容部16内に延出した前記軸部72の先端部からは、複数の攪拌羽73,・・・が側方へ向けて延出している。各攪拌羽73,・・・は、板状に形成されており、前記収容部16の底面21に沿った円弧状に形成されている。
【0102】
これにより、前記モータ62で前記ロータリージョイント61を回動し、該ロータリージョイント61の前記ロータ64に支持された前記攪拌部71を回動することによって、前記収容部16の底部に収容された前記抽出対象試料17を、前記底面21に沿って回動される前記攪拌羽73,・・・で攪拌できるように構成されている。
【0103】
前記蓋体31には、図1から図3に示したように、前記収容部16内で気化された気化成分を前記収容部16から取り出すための取出経路81が接続されており、該取出経路81には、前記蓋体31に沿って延在する横設部82と、該横設部82より下方へ向けて延出した垂下部83とが形成されている。この取出経路81の上流側を構成する前記横設部82は、大径に形成されており、復水器を構成する空冷式の第一コンデンサを形成している。該第一コンデンサより下流側を構成する前記垂下部83の外周部には、冷水が循環する冷却装置84が設けられており(図1及び図2参照)、復水器を構成する水冷式の第二コンデンサが構成されている。
【0104】
該第二コンデンサを構成した前記垂下部83には、図2に示したように、T型ジョイント91を介して貯留部92が接続されており、該貯留部92は、開閉コック93を介して受槽94に接続されている。
【0105】
これにより、前記抽出対象試料17から気化した気化成分を、前記収容部16より前記取出経路81を介して取り出せるように構成されており、当該取出経路81に設定された前記各コンデンサで冷却することで、凝縮液として前記貯留部92に貯留し、前記受槽94に回収できるように構成されている。
【0106】
前記T型ジョイント91には、図1及び図2に示したように、ホース101を介して負圧供給手段としての真空ポンプ102が接続されており、該真空ポンプ102で発生した負圧を前記T型ジョイント91を介して、前記取出経路81に供給できるように構成されている。
【0107】
これにより、該取出経路81に供給された負圧によって前記収容部16内に気化した気化成分を吸引することで前記貯留部92への貯留を促進するとともに、当該収容部16内に負圧を供給できるように構成されており、当該収容部16を減圧して大気圧より低圧に維持できるように構成されている。
【0108】
一方、前記攪拌部71を構成する前記軸部72は、図1に示したように、円筒状に形成されており、当該軸部72の先端には、大気取込口111が開口している。前記蓋部31より延出した前記軸部72の基端側には、前記収容部16内に大気を取り込む為の取込路112が接続されており、当該取込路112の端部に設けられた大気開放口113は、大気開放されている。
【0109】
これにより、前記真空ポンプ102で前記収容部16に加えられた負圧によって、前記取込路112の前記大気開放口113から取り込まれた大気を前記攪拌部71の前記軸部72に先端に開口した前記大気取込口111から当該収容部16内に取り込めるように構成されており、筒状に形成された前記軸部72内には、大気を収容部16内に案内する案内路121が形成されている。
【0110】
前記取込路112には、図1に示したように、当該取込路112を通流し前記収容部16内に取り込まれる大気の通流量を制御する取込側制御弁としての圧力制御弁131が設けられており、該圧力制御弁131は、圧力制御装置132に接続されている。該圧力制御装置132には、前記収容部16内の圧力を検出する圧力検出手段としての圧力センサ133が接続されており、該圧力センサ133は、前記蓋体31の内側面に設けられている。
【0111】
前記圧力制御装置132は、シーケンサやマイコンを備えた電子回路によって構成されており、前記圧力センサ133で検出した検出圧が、当該圧力制御装置に予め設定入力された目的圧となるように、前記圧力制御弁131への出力を制御するように構成されており、前記検出圧に基づいて前記圧力制御弁131への出力信号を制御して該圧力制御弁131での弁開度を調整することで、前記収容部16内へ大気の取込量を調整し、前記収容部16内の圧力が前記目的圧となるように制御する通流量調整手段を構成している。
【0112】
図5は、前記圧力制御装置132での圧力制御の動作を示すフローチャートであり、当該圧力制御装置132を構成するシーケンサや電子回路のマイコンがプログラムに従った動作を開始すると、当該圧力制御装置132にスイッチ等の入力手段によって設定入力された目的圧を入力するとともに(SB1)、前記圧力センサ133で検出した検出圧を入力する(SB2)。
【0113】
そして、前記目的圧と前記検出圧とを比較し(SB3)、前記検出圧が前記目的圧より低い、具体的には前記検出圧が前記目的圧を中心とした所定の圧力範囲を下回る場合には、前記圧力制御弁131への出力を制御して当該圧力制御弁131を所定量開弁することで、前記収容部16内に取り込まれる大気量を増大し、負圧に保たれた前記収容部16内の圧力を昇圧してから(SB4)、前記ステップSB1へ戻る。
【0114】
また、前記検出圧が規定範囲内、つまり前記目的圧を中心とした所定の圧力範囲内にある場合には、前記圧力制御弁131へ現在の出力を維持することで、現在の弁開度を維持したまま(SB5)、前記ステップSB1へ戻る。
【0115】
一方、前記検出圧が前記目的圧より高い、具体的には前記検出圧が前記目的圧を中心とした所定の圧力範囲を上回る場合には、前記圧力制御弁131への出力を制御して当該圧力制御弁131を所定量閉弁することで、前記収容部16内に取り込まれる大気量を減少し、負圧が供給された前記収容部16内の圧力を減圧してから(SB6)、前記ステップSB1へ戻る。
【0116】
これにより、前記収容室16内の圧力を、前記目的圧を中心とした所定の圧力範囲内に維持できるように構成されている。
【0117】
そして、前記圧力制御装置132と前記加熱制御装置42とによって、本発明の制御手段が構成されており、前記収容部16内の温度を前記目的温に制御して前記抽出対象試料17を前記目的温で加熱するとともに、前記収容部16内の圧力を前記目的圧に減圧保持した状態で、当該収容部16内に収容された前記抽出対象試料17から特定の成分の気化を促進し、当該特定成分を主成分とした前記抽出物Eを液化して抽出できるように構成されている。
【0118】
以上の構成にかかる本実施の形態において、前記抽出装置1で抽出対象試料17から目的成分を主成分とした抽出物Eを抽出する際には、前記目的成分が前記抽出対象試料17から気化する条件の温度と圧力との関係を設定、具体的には前記圧力での前記目的成分の沸点を目的温として前記加熱制御装置42に設定入力するとともに、前記圧力を目的圧として前記圧力制御装置132に設定入力する。
【0119】
そして、前記収容部16に前記抽出対象試料17を投入し、上部開口部を蓋体31で密閉閉鎖した状態で当該抽出装置1を作動する。
【0120】
すると、前記収容部16に収容された前記抽出対象試料17は、減圧下で加熱された際に気化した成分、すなわち前記沸点で気化する前記目的成分が取出経路81を介して前記収容部16から取り出された後、液化されることによって抽出物Eとして抽出される。
【0121】
このとき、前記抽出対象試料17を収容した前記収容部16内の圧力は、前記目的圧に保たれており、前記収容部16内の温度は、前記目的温に保たれている。このため、前記抽出対象試料17からは、前記目的圧であって前記目的温の条件下において、気化が促進される特定の成分を主成分とした前記抽出物Eを、前記抽出対象試料17から抽出することができる。
【0122】
したがって、前記目的圧及び前記目的温を、目的として成分の気化が促進される圧力及び温度に設定することで、前記目的成分を効率良く抽出することができる。
【0123】
これにより、前記目的成分を主成分とした抽出物Eを容易に抽出することができるのため、前記抽出対象試料17の構成成分が、その含有量に応じて抽出されてしまう従来と比較して、抽出作業後において目的外成分を目的成分から分離するといった分離作業が不要となり、利便性が向上する。
【0124】
ここで、本実施の形態の抽出装置1を用いて、抽出対象試料17から抽出物Eを抽出した際の実験結果に付いて説明する。
【0125】
なお、本願出願人は、α−pinene、β−pinene、limonene、β−myrcene等の共役不飽和結合を有するモノテルペン炭化水素類が、二酸化窒素及び二酸化硫黄の濃度低減効果があること、及びsabinene、terpinolene、γ−terpinene等の共役系でない不飽和結合を有するモノテルペン炭化水素は、二酸化窒素の濃度低減効果があることを実験により確認している。
【0126】
また、これらの有用成分は、伐採時や剪定時に大量に発生し廃棄されていたスギ葉に含まれていることが知られており、このスギ葉を抽出対象試料17として抽出作業を行う際には、「約20kPa」の減圧下で「約67℃」に加熱することで、これらの有用成分の気化を促進できることが実験により確認されている。
【0127】
これらに基づいて、前記圧力制御装置132の目的圧を「約20kPa」と設定入力するとともに、前記加熱制御装置42の目的温を「約67℃」と設定入力し、スギ葉を抽出対象試料17として抽出物Eの抽出を行った。また、この抽出方法での効果を確認する為に、従来から行われている水蒸気蒸留による抽出方法によってスギ葉から抽出物の抽出を行った。
【0128】
そして、本実施の形態の抽出方法で抽出された抽出物Eに含まれる各成分の構成比率と、従来の抽出方法(水蒸気蒸留)で抽出された抽出物に含まれる各成分の構成比率とを図6に示す。
【0129】
この図からも分かるように、本実施の形態で抽出された抽出物Eと従来の抽出方法で抽出された抽出物とでは、抽出物に含まれた成分の構成比率が異なり、本実施の形態では、抽出目的とした有用成分(共役不飽和結合を有するモノテルペン炭化水素類や共役系でない不飽和結合を有するモノテルペン炭化水素)の割合が他の成分と比較して多いことが分かった。これにより、前記有用成分を主成分とした抽出物Eを抽出できることが確認できた。
【0130】
また、本実施の形態の抽出装置1では、前記収容部16内の抽出対象試料17より気化した気化成分を取り出す取出経路81に真空ポンプ102によって負圧が供給されており、この負圧によって前記収容部16からの気化成分の取り出しが促進されるとともに、前記収容部16内が減圧される。
【0131】
これにより、前記収容部16内の気化成分の取り出しの促進と、前記収容部16内の減圧とを同時に行うことができる。
【0132】
このとき、前記収容部16内には、取込路112から大気が取り込まれるが、当該取込路112には、取り込む大気の通流量を制御する圧力制御弁131が設けられており、該圧力制御弁131は、圧力制御装置132によって前記収容部16内の圧力に基づいて制御され、当該圧力制御弁131での通流量が調整される。
【0133】
これにより、前記収容部16内での圧力が前記目的圧となるように維持することができる。
【0134】
そして、前記収容部16内に収容された前記抽出対象試料17を、攪拌部71で攪拌することにより、前記抽出対象試料17からの抽出物Eの抽出を促進することができる。
【0135】
このとき、前記取込路112から取り込まれた大気を、前記攪拌部71の軸部72が構成する案内路121を介して前記収容部16の底部側から噴出することができ、前記攪拌部71の攪拌羽73,・・・で攪拌される抽出対象試料17の下部へ送り込むことができる。
【0136】
このため、当該抽出対象試料17の上部空間に大気を送り込む場合と比較して、気化成分の回収効率を高めることができる。また、取り込んだ大気を、前記攪拌羽73,・・・で攪拌される前記抽出対象試料17の間を通過させることができるので、当該抽出対象試料17をむら無く加熱することができる。
【0137】
また、本実施の形態では、前記抽出対象試料17にマイクロ波を照射して加熱するマイクロ波加熱装置51,・・・を備えており、このマイクロ波加熱装置51,・・・からの出力は、前記加熱制御装置42によって前記収容部16内の温度が前記目的温となるように調整される。
【0138】
これにより、前記収容部16内の温度に基づいて、前記抽出対象試料17への加熱状態を調整できるため、当該抽出対象試料17の温度を直接的に前記目的温に維持することができる。
【0139】
したがって、前記抽出対象試料17を内部から加熱する前記マイクロ波加熱装置51,・・・を利用することによって、前記抽出対象試料17を間接的に加熱するヒータ等を用いる場合と比較して、前記抽出対象試料17の温度を一定に維持する効果を高めることができる。
【0140】
このため、目的の成分の気化を促進させるために、前記抽出対象試料17を目的温に維持する必要がある本実施の形態において、適切な温度管理が可能となる。
【0141】
なお、本実施の形態にあっては、前記収容部16内を前記目的圧に制御するとともに前記目的温度に制御する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前記収容部16内が前記目的圧となるように制御するだけでも良い。
【0142】
また、本実施の形態にあっては、前記収容部16内に前記抽出対象試料17を直接収容した場合に付いて説明したが、これに限定されるものではない。
【0143】
(第二の実施の形態)
【0144】
図7及び図8は、本発明の第二の実施の形態を示す図であり、第一の実施の形態と同一及び同等部分に付いては、同符号を付して説明を割愛し、異なる部分に付いてのみ説明する。
【0145】
すなわち、本実施の形態にかかる抽出装置201では、収容部16内の圧力のみを制御するとともに、前記抽出対象試料17は、収容体202に収容された状態で前記収容部16内に配置されるように構成されている。
【0146】
この抽出装置201における前記収容部16の底部21は、図外の昇降機構によって上下移動される昇降部211で構成されており、当該昇降部211が構成する前記底面21は、前記マイクロ波を反射する素材で構成されている。
【0147】
この昇降部211より上方には、複数の孔212,・・・が開けられた簀の子状の載置部213が前記底面21より離れた位置に設けられており、前記収容体202を前記載置部213上に載置できるように構成されている。
【0148】
これにより、前記抽出対象試料17を収容した前記収容体202を前記収容部16の底面21から浮かした状態で保持できるように構成されており、本願発明の保持手段が構成されている。
【0149】
また、前記載置部213は、開設された複数の孔212,・・・を介して、前記底面21で反射した前記マイクロ波を透過できるように構成されており、当該載置部213に載置した前記収容体202の底面に前記マイクロ波を当てられるように構成されている。
【0150】
前記収容体202は、上面に開口部221を有した袋体で構成されており、例えば麻袋で構成されている。この収容体202の内側面は、防水加工が施されており、当該収容体202は、前記マイクロ波加熱装置51のマイクロ波発振装置52,・・・からのマイクロ波を透過するように構成されている。一方、前記収容体202は、前記抽出対象試料17より気化した気化成分は透過しないように構成されており、前記抽出対象試料17からの気化成分は、当該収容体202に設けられた前記開口部221から外部へ排出されるように構成されている。
【0151】
以上の構成にかかる本実施の形態においては、前記収容部16内の減圧下で加熱された前記抽出対象試料17より気化した成分を液化して抽出物Eとして抽出する際には、前記収容部16内の圧力が前記目的圧に維持される。
【0152】
このため、前記抽出対象試料17からは、前記目的圧において、所定温度で沸点となる特定成分の気化が前記所定温度で促進され、当該所定温度において、前記特定成分を主成分とした前記抽出物Eを、前記抽出対象試料17から抽出することができる。
【0153】
したがって、前記目的圧を、目的とする成分の気化が促進される圧力に設定した状態で、目的とした特定成分が沸点となる温度毎に抽出物Eを取得することによって、目的とした特定成分を効率良く抽出することができる。
【0154】
これにより、目的とした成分を主成分とした抽出物Eを容易に抽出することができるため、抽出対象試料17の構成成分が、その含有量に応じて抽出されてしまう従来と比較して、抽出作業後において目的外の成分を目的成分から分離するといった分離作業が不要となり、利便性が向上し、第一の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0155】
また、前記抽出対象試料17は、前記収容体202に収容された状態で前記収容部16に収容されており、前記抽出物E抽出後の前記抽出対象試料17の残渣を、前記収容体202に収容された状態で前記収容部16から排出することができる。
【0156】
このため、前記抽出対象試料17を直接前記収容部16内に収容する場合と比較して、前記残渣の運び出し及び取り替えを容易に行うことができる。
【0157】
さらに、前記抽出対象試料17を収容した前記収容体202は、前記昇降部211を上昇することによって、前記収容部16の底面21から浮かした状態で保持されるので、前記収容体202に収容された前記抽出対象試料17を、当該収容体202の底部側からも加熱することができる。
【0158】
これにより、前記抽出対象試料17を攪拌することなく、効率的に加熱することができる。
【0159】
そして、前記抽出対象試料17を収容した前記収容体202は、前記マイクロ波を透過する一方、前記抽出対象試料17より気化した成分は透過しない部材で構成されており、その上部には、開口部221が設けられている。
【0160】
このため、前記抽出対象試料17を収容した前記収容体202に前記マイクロ波加熱装置51からのマイクロ波を照射することによって、内部に収容された前記抽出対象試料17を加熱することができる。
【0161】
このとき、前記開口部221は、その開口面積を狭くした方が、前記抽出物Eをより効率的に抽出できることが実験により確認されている。
【0162】
なお、前記各実施の形態において、前記収容部16内の圧力の調整方法としては、空気吸引側で制御する方法、例えば真空ポンプ102の出力を制御する方法や、吸引側の流路をバルブにより開閉する方法が挙げられる。
【0163】
ただし、空気供給側で開放度合いを制御することで、吸気側で制御する場合と比べて以下のような利点が挙げられる。
【0164】
(1)圧のコントロールを正確に行うことができる。
【0165】
(2)抽出物Eにより開閉弁が汚れることがなく、動作不良を起こしにくい。
【0166】
(3)突沸が起こりにくい。
【0167】
また、負圧供給手段として、真空ポンプ102を用いた例を挙げたが、減圧のレベルによっては、アスピレーター等の他の負圧供給手段を用いることもできる。さらに本実施の形態では、大気開放口113から大気(空気)を取り込む様にしたが、抽出時の酸化を防止する目的で、窒素ガス等の不活性ガスを取り込む様にすることが好ましい。
【0168】
(第三の実施の形態)
【0169】
図9は、本発明の第三の実施の形態を示す模式図であり、第一又は第二の実施の形態と同一及び同様部分に付いては、同符号を付して説明を割愛し、異なる部分に付いてのみ説明する。
【0170】
すなわち、本実施の形態にかかる抽出装置301では、前記収容部16に空気を取り込む取込路112に前述の圧力制御弁131に相当する取込側制御弁311が設けられており、当該取込路112を通流する空気の通流量を制御できるように構成されている。
【0171】
また、気化された気化成分を前記収容部16から取り出すための取出経路81には、吸引側制御弁321が設けられており、当該取出経路81の通流量を制御できるように構成されている。
【0172】
そして、前記収容部16内の圧力を検出する前記圧力センサ133は、前記圧力制御装置132に接続されており、該圧力制御装置132は、前記圧力センサ133で検出した検出圧が当該圧力制御装置132に予め設定入力された目的圧となるように前記取込側制御弁311への出力を制御して該取込側制御弁311の弁開度を調整することにより前記収容部16内へ大気の取込量を調整するように構成されている。
【0173】
また、前記圧力制御装置132は、前記圧力センサ133で検出した検出圧が前記目的圧となるように前記吸引側制御弁321への出力を制御して該吸引側制御弁321の弁開度を調整することにより前記収容部16内へ大気の取込量を調整するとともに、前記圧力センサ133で検出した検出圧が前記目的圧となるように負圧供給手段としての前記真空ポンプ102への出力を制御して該真空ポンプ102の出力を制御することより前記収容部16内への負圧供給量を調整すうように構成されている。
【0174】
これらによって、前記圧力制御装置132は、前記圧力センサ133で検出した前記収容部16内の圧力が前記目的圧となるように制御できるよう構成されている。
【0175】
以上の構成にかかる本実施の形態にあっては、前述した作用効果に加えて、前記収容部16内の圧力のコントロールをより正確に行うことができる。
【0176】
なお、本実施の形態では、前記取込路112に設けられた前記取込側制御弁311と、前記取出経路81に設けられた前記吸引側制御弁321と、前記収容部16に負圧を供給する前記真空ポンプ102とを制御することによって、前記収容部16内の圧力が前記目的圧となるように制御する場合に付いて説明したが、これに限定されるものではなく、これらのいずれか一つ又は二つ以上組み合わせてによって制御しても良く、その場合、フィードバック制御しないものに関しては、手動で調整しても良い。
【符号の説明】
【0177】
1 抽出装置
16 収容部
17 抽出対象試料
21 底面
41 温度センサ
42 加熱制御装置
51 マイクロ波加熱装置
71 攪拌部
72 軸部
73 攪拌羽
81 取出経路
102 真空ポンプ
112 取込路
121 案内路
131 圧力制御弁
132 圧力制御装置
133 圧力センサ
201 抽出装置
202 収容体
211 昇降部
213 載置部
221 開口部
311 取込側制御弁
321 吸引側制御弁
E 抽出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部内の減圧下で加熱された対象物より気化した成分を液化して抽出する抽出装置において、
前記収容部内の圧力を目的圧に制御する制御手段を備えたことを特徴とする抽出装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路と、
該取出経路に負圧を供給する負圧供給手段と、
前記収容部内に大気を取り込む取込路と、
該取込路から前記収容部内に取り込まれる大気の通流量を制御する取込側制御弁と、
前記収容部内の圧力を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段で検出した圧力が前記目的圧となるように前記取込側制御弁を制御して該取込側制御弁での通流量を調整する通流量調整手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の抽出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路と、
該取出経路に負圧を供給する負圧供給手段と、
前記収容部内に大気を取り込む取込路と、
前記収容部内の圧力を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段で検出した圧力が前記目的圧となるように前記負圧供給手段を制御する負圧調整手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の抽出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路と、
該取出経路に負圧を供給する負圧供給手段と、
前記収容部内に大気を取り込む取込路と、
該取込路から前記収容部内に取り込まれる大気の通流量を制御する取込側制御弁と、
前記収容部内の圧力を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段で検出した圧力が前記目的圧となるように前記負圧供給手段及び/又は前記取込側制御弁を制御する負圧調整手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の抽出装置。
【請求項5】
さらに前記取出経路に流通量を制御する吸引側制御弁を設け、
前記圧力検出手段で検出した圧力が前記目的圧となるように前記吸引側制御弁を制御して該吸引側制御弁での通流量を調整する吸引量調整手段
を備えたことを特徴とする請求項2、3又は4記載の抽出装置。
【請求項6】
前記収容部内に収容された対象物を攪拌する攪拌部を設けるとともに、前記取込路から取り込んだ大気を前記攪拌部の端部へ案内して前記収容部の底部側から噴出する為の案内路を当該攪拌部の軸部に設けたことを特徴とする請求項2から5にいずれか記載の抽出装置。
【請求項7】
前記対象物を収容した収容体を前記収容部の底面から浮かした状態で保持する保持手段を備えたことを特徴とする請求項1から5にいずれか記載の抽出装置。
【請求項8】
前記対象物にマイクロ波を照射して加熱するマイクロ波加熱装置を設ける一方、
前記収容体を、前記マイクロ波は透過し前記対象物より気化した成分は透過しない部材で構成するとともに、その一部に開口部を設けたことを特徴とする請求項7記載の抽出装置。
【請求項9】
収容部内の減圧下で加熱された対象物より気化した成分を液化して抽出物として抽出する抽出方法において、
前記収容部内の圧力を目的圧に保った状態で特定の成分を主成分とした前記抽出物を前記対象物より抽出することを特徴とした抽出方法。
【請求項10】
前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路に負圧を供給して前記収容部内の気化成分の取り出しを促進しつつ前記収容部内を減圧する一方、
前記収容部内へ大気を取り込む取込路での通流量を調整して前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように制御することを特徴とした請求項9記載の抽出方法。
【請求項11】
前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路に負圧を供給して前記収容部内の気化成分の取り出しを促進しつつ前記収容部内を減圧するとともに、供給する負圧を調整して前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように制御することを特徴とした請求項9記載の抽出方法。
【請求項12】
前記対象物より気化した成分を前記収容部から取り出す取出経路に負圧を供給して前記収容部内の気化成分の取り出しを促進しつつ前記収容部内を減圧する一方、
前記収容部内へ大気を取り込む取込路での通流量及び/又は供給する負圧を調整して前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように制御することを特徴とした請求項9記載の抽出方法。
【請求項13】
前記取出経路の流通量を調整して前記収容部内の圧力が前記目的圧となるように制御することを特徴とした請求項10、11又は12記載の抽出方法。
【請求項14】
前記収容部内に収容された前記対象物を攪拌部で攪拌しならが前記抽出物を抽出する際に、前記取込路から取り込んだ大気を前記攪拌部の軸部を介して前記収容部の底部側へ噴出することを特徴とした請求項10から13にいずれか記載の抽出方法。
【請求項15】
前記対象物を収容した収容体を前記収容部の底面から浮かした状態に維持して前記抽出物を前記対象物より抽出することを特徴とした請求項9から13にいずれか記載の抽出方法。
【請求項16】
マイクロ波は透過し前記対象物より気化した成分は透過しない部材によって一部開口状に形成された前記収容体に前記マイクロ波を照射して前記対象物を加熱することを特徴とした請求項15記載の抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−16061(P2011−16061A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161548(P2009−161548)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)独立行政法人科学技術振興機構 平成19年度 独創的シーズ展開事業 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(509057132)日本かおり研究所株式会社 (5)
【出願人】(501186173)独立行政法人森林総合研究所 (91)
【Fターム(参考)】