説明

抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動検証する方法およびシステム

本発明は、照明環境を、抽象記述から、たとえば個別の照明インフラストラクチャーや部屋のレイアウトとは独立なXML(Extensible Markup Language)で指定される照明環境から、レンダリングすることのが可能かどうかを自動検証することに関する。本発明の基本的発想は、照明インフラストラクチャーの可能性をいわゆる照明エレメント・テンプレートに変換することである。照明エレメント・テンプレートは、照明インフラストラクチャーが設けられているある意味論的位置における、たとえば店舗または家庭における、照明インフラストラクチャーの可能性の指標を含む。照明インフラストラクチャーのあらゆる型の照明効果について、異なる照明エレメント・テンプレートが生成されうる。これは、照明インフラストラクチャーにおいて抽象記述からの照明環境をレンダリングする可能性を、照明環境デザイン工程の早い段階で、自動的に検証することを許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明環境(lighting atmosphere)を、抽象記述(abstract description)から、たとえば個別の照明インフラストラクチャーや部屋のレイアウトとは独立にXML(Extensible Markup Language[拡張可能なマークアップ言語])で指定される照明環境から、レンダリングすることの可能性如何を自動検証することに関する。
【背景技術】
【0002】
小売スペースや家庭における照明システムは、照明器具についての接続ソリューションおよび色制御可能な照明の到来によって、より柔軟かつ動的になるであろう。これらのシステムの広範な展開は、抽象的に記述される照明環境の生成を可能にする。照明環境は、たとえば、XML(拡張可能なマークアップ言語)での抽象記述によって記述されうる。「抽象的」という用語は、個別の照明インフラストラクチャー、すなわち照明ユニットとは独立であり、かつ個別の部屋または建物のレイアウトとは独立であることを意味する。照明環境のこれらの抽象記述は、個別の部屋または建物にインストールされることができ、そこで(自動的に)そのスペースの個別的な諸側面、たとえばある店舗のレイアウト、利用可能な壁スイッチ、在室センサー(occupancy sensor)に適合されることができ、前記照明環境の(一意的な)変形を与える。これは、幅広い新しい照明可能性を可能にする。たとえば店舗チェーンは、照明をマーケティング・ツールとして使い始めることができる。たとえば、抽象照明環境は、企業の照明環境をたとえば店舗チェーンの本部において一度だけ生成し、その企業照明環境をすべての店舗事例においてレンダリングすることを可能にする。他方、サービス・プロバイダーは、エンドユーザーが購入でき、たとえばインターネットを通じたダウンロード用に提供される抽象照明環境を生成することを開始できる。
【0003】
米国特許US6,466,234B1は、照明のような環境条件を制御する方法およびシステムを開示する。照明システムは、シーン記述データ構造を含むアーキテクチャを提供する。シーンは、一つまたは複数の回路ならびにそれらの回路に対する光の目標状態を定義する。シーン記述データ構造は、シーン内の回路を指定し、シーン内のそれらの回路に対する光についての目標状態を指定する。この照明システムは、シーンを可能にするためのユーザー・インターフェースを生成するのを支援するためにシーン記述を取得および提供し、シーンを可能にするための要求を受信して照明コントローラにシーン内の各回路についての目標状態を可能にするよう要求する照明ゲートウェイを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特にある照明環境設備での照明環境のレンダリングに対する早期のフィードバックを得るために、抽象記述からの照明環境のレンダリングの可能性の自動検証を提供することが本発明の一つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、独立請求項によって解決される。さらなる実施形態は従属請求項によって示される。
【0006】
本発明の基本的発想は、照明インフラストラクチャーの可能性をいわゆる照明エレメント・テンプレート(light element template)に変換することである。照明エレメント・テンプレートは、照明インフラストラクチャーが設けられているある種の意味論的位置における、たとえば店舗または家庭における、照明インフラストラクチャーの可能性の指標を含む。照明インフラストラクチャーのあらゆる型の照明効果について、異なる照明エレメント・テンプレートが生成されうる。これは、照明インフラストラクチャーにおいて抽象記述からの照明環境をレンダリングする可能性を、照明環境デザイン工程の早い段階で、自動的に検証することを許容する。こうして、照明デザイナーは、照明環境がある照明インフラストラクチャーにおいてレンダリングされうるかどうかについての早期のフィードバックを得ることができる。これは、照明環境が、たとえばリモートの照明インフラストラクチャーについて照明環境デザイン・プログラムを用いて、高い抽象化レベルでデザインされるときに特に有用である。リモートの照明インフラストラクチャーとは、店舗チェーンの本部で、すなわち実際の位置から遠く離れたところである種の照明環境がデザインされる店舗チェーンのようなものである。
【0007】
以下では、本稿で使用されるいくつかの重要な用語について説明する。
【0008】
本稿で使用される「照明環境(lighting atmosphere)」の用語は、照明の種々のスペクトル成分の強度、照明に含まれる色またはスペクトル成分、色勾配などのような、種々の照明パラメータの組み合わせを意味する。
【0009】
照明環境の「抽象記述(abstract description)」は、照明インフラストラクチャーのすべての個別の照明デバイスまたはユニットの強度、色などの設定の記述よりも高い抽象化レベルでの照明環境の記述を意味する。それはたとえば、「散乱環境光(diffuse ambient lighting)」「絞られたアクセント照明(focused accent lighting)」または「壁面照明(wall washing)」といった照明の型の記述ならびにある意味論的位置におけるある意味論的時間における強度、色または色勾配といったある照明パラメータの記述、たとえば「キャッシュ・レジスターにおいて午前中は低強度で青」または「ショッピング・エリア全体でディナー・タイムには中強度で暗い赤」、を意味する。
【0010】
「意味論的位置(semantic location)」または「意味論的時間(semantic time)」の用語は、座標による位置の具体的な記述に対し、店舗における「キャッシュ・レジスター」または「ランチタイム」といった位置または時間の記述である。
【0011】
照明環境の抽象記述は、使用される照明ユニットまたはデバイスの数および位置ならびにその色および利用可能な強度といった、照明インフラストラクチャーの個別的な事例についての具体的な情報は含まないことを理解しておくべきである。
【0012】
「照明インフラストラクチャー(lighting infrastructure)」の用語は、特定の部屋における照明システムの具体的な実装、たとえば、ある種の店、ホテルのロビーまたはレストランに適用される照明システムの個別的な事例〔インスタンス〕を意味する。用語「照明インフラストラクチャー」は、照明のための複雑なシステム、特にいくつかの照明ユニット、たとえば複数のLED(light emitting diode[発光ダイオード])またはハロゲン電球のような他の照明デバイスを含むものを含む。典型的には、そのような照明インフラストラクチャーは、これらの照明デバイスを数十ないし数百適用し、そのため一つ一つの照明デバイスの特性を個々に制御することによるある照明環境の合成は、コンピュータ化された照明制御設備を要求することになる。
【0013】
本発明のある実施形態によれば、抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を検証する方法であって、以下の特徴的な要素を有するものが提供される:
・照明インフラストラクチャーの照明エレメント・テンプレートを電子的に受け取る。ここで、照明エレメント・テンプレートはある意味論的位置における照明インフラストラクチャーの可能性の指標を含む。
・受け取った照明エレメント・テンプレートを、前記抽象記述の照明エレメントと比較することによって自動処理する。
・前記抽象記述からの前記照明環境をレンダリングすることが可能であるかどうかを信号伝達する。
【0014】
本発明のある実施形態によれば、本方法はさらに、
前記照明インフラストラクチャーの照明ユニットが生成できる光の型に従って、照明インフラストラクチャー情報において種々の領域についての前記照明インフラストラクチャーの可能性を要約し、ここで、各領域は、ある種の意味論的位置の指標として領域セレクター(area selector)を含む、
ステップを有する。
【0015】
このことは、たとえば店舗内の種々の領域について照明可能性を要約し、照明エレメント・テンプレートを生成するためのデータベースを提供することを許容する。照明インフラストラクチャーの可能性の要約(summary)は、たとえば、
・店舗/家庭内の利用可能な照明ユニットおよびその機能についての情報。
・照明ユニットがあるまたはその効果を生じる意味論的位置。
・照明器具が典型的に散乱/環境光を与えるといった発見的方法(heuristics)。この型の発見的方法は、システム製造業者によってシステムに組み込まれることができる。
を使って生成されることができる。
【0016】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、前記方法はさらに、
照明エレメント・テンプレートを生成するために、領域セレクターによって照明インフラストラクチャー情報を組織化およびグループ化し、ここで、領域セレクターは、ある種の意味論的位置の指標であり、一つまたは複数の領域型を含む、
ステップを有してもよい。
【0017】
領域セレクターによる情報の組織化およびグループ化は、ある照明インフラストラクチャーにおいてある抽象照明エレメント(abstract light element)が利用可能であるかどうかを迅速に決定することを許容する。
【0018】
本発明のある実施形態によれば、前記方法は、これを、受け取った照明エレメント・テンプレートを、前記抽象記述の照明エレメントと比較することによって自動処理する前記ステップが、
・前記抽象記述の、ある照明エレメントの領域セレクターを決定し、
・前記ある照明エレメントと同じ領域セレクターをもつ照明エレメント・テンプレートを位置特定し、照明エレメント・テンプレートが位置特定されることができる場合には、
・前記ある照明エレメントのさらなるパラメータを、位置特定された照明エレメント・テンプレートと比較することによって検査する、
ことを含むことにおいて可能にしてもよい。
【0019】
こうして、照明エレメント・テンプレートの領域セレクターは、前記抽象記述の照明エレメントを、受け取った照明エレメント・テンプレートと迅速に照合する好適な手段である。
【0020】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、前記方法はさらに、
前記照明インフラストラクチャーの利用可能な照明ユニットおよびその機能についての情報を、自動的に、サービスおよびデバイス発見機構により、ネットワーク環境内で利用可能にする、
ステップを有してもよい。
【0021】
これは、上記のような本発明の実施形態に基づき、照明インフラストラクチャーの照明ユニットについての情報を自動的に収集し、種々の領域についての前記照明インフラストラクチャーの可能性を含む照明インフラストラクチャー情報を生成するときに非常に役に立つ。よって、照明インフラストラクチャー情報を生成する面倒な作業が、ずっと簡単かつずっと快適にされうる。たとえば、照明インフラストラクチャーは、照明環境検証ワークステーションのようなクライアントによって、照明インフラストラクチャー、特に該照明インフラストラクチャーの照明コントローラに命令を送ることによって、利用可能な照明ユニットについての情報を利用可能にするようトリガーされうる。次いで、照明インフラストラクチャーは、すぐ応答してもよいし、あるいはまず個々の照明ユニットから情報を収集してその情報を要求元のクライアントに送信してもよい。
【0022】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、前記方法はさらに、
自動的なインストールまたは較正手順によって、ある照明ユニットがある、またはその照明効果を生じる意味論的位置を利用可能にする、
ステップを有してもよい。
【0023】
たとえば、照明インフラストラクチャーの暗い部屋用較正手順を用いて、インフラストラクチャーの各照明ユニットの意味論的位置が、照明ユニットの個別的なパラメータとともに、自動的に決定され、利用可能にされてもよい。
【0024】
本発明のある実施形態によれば、前記方法はさらに、
・クライアントがサーバーと通信することによって照明環境を選択し、
・前記クライアントから前記サーバーに照明インフラストラクチャーの照明エレメント・テンプレートを送信し、
・前記サーバー上で、受け取った照明エレメント・テンプレートを、選択された照明環境の抽象記述の照明エレメントと比較することによって自動的に処理し、
・前記サーバーから前記クライアントに前記処理の結果を送信し、
・前記クライアント上で、前記受け取った処理結果に依存して、前記抽象記述からの前記選択された照明環境のレンダリングが可能であるかどうかを、信号伝達する、
ステップを有してもよい。
【0025】
この実施形態は、家庭照明およびインターネットのような通信ネットワークを通じて照明環境を取得することのために有用である。クライアントは、たとえば購入用の照明環境を提供するウェブサイトにアクセスする、家庭にあるパーソナル・コンピュータでもよい。ユーザーは、そのウェブサイト上で所望される照明環境を選択しうる。次に、ユーザーのパーソナル・コンピュータは、たとえばユーザーがウェブサイトのある種のボタンをクリックした後、サーバーに家庭の照明インフラストラクチャーの照明エレメント・テンプレートを送信しうる。前記テンプレートは、前記パーソナル・コンピュータにおいて手動で入力されてもよいし、あるいは照明ユニットとパーソナル・コンピュータが家庭ネットワークで接続されているとして家庭の照明インフラストラクチャーの照明ユニットと通信することによって自動的に入力されてもよい。家庭ネットワークは、たとえば、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)またはWLAN(無線LAN)またはPAN(パーソナル・エリア・ネットワーク)である。クライアントは、照明インフラストラクチャーの照明コントローラ内にまたは各照明ユニット内に記憶されうる照明エレメント・テンプレートを取得してもよい。サーバー上で、受け取られた照明エレメント・テンプレートが次いで、選択された照明環境の抽象記述の照明エレメントと比較することによって、自動的に処理される。その後、処理の結果がサーバーからクライアントに送信されうる。最後に、処理の結果、すなわち前記抽象記述からの選択された照明環境のレンダリングが可能かどうかが、クライアントのパーソナル・コンピュータのモニタ上に表示されうる。こうして、ユーザーは、迅速かつ信頼できる形で、購入用に提供されている所望される照明環境が、自分の自宅の照明インフラストラクチャーでレンダリングされうるかどうかを判定できる。
【0026】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、前記方法はさらに:
・いくつかの照明インフラストラクチャーの照明エレメント・テンプレートを電子的に受け取り、
・受け取った照明エレメント・テンプレートをさらなる処理のために組み合わせる、
ステップを有してもよい。
【0027】
このことは、たとえば、店舗チェーンの異なる店舗の照明エレメント・テンプレートを組み合わせることを許容する。これは、店舗チェーンの全店舗のための企業照明デザインのような照明環境を制作する照明環境デザイナーに、デザインされた照明環境が店舗においてどのくらいよくレンダリングできるかについてのフィードバックを与えることを許容する。たとえば、デザイナーは、デザインされた照明環境のある照明効果が全店舗で、すなわち店舗チェーンのすべての照明インフラストラクチャーにおいて、レンダリングされうるかどうかの迅速なフィードバックを得る。
【0028】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、照明エレメント・テンプレートは、照明インフラストラクチャーの照明コントローラとのネットワーク接続を通じて、電子的に受け取られてもよい。
【0029】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、コンピュータによって実行されたときに本発明に基づく方法を実行できるようにされうるコンピュータ・プログラムが提供される。
【0030】
本発明のある実施形態によれば、本発明に基づくコンピュータ・プログラムを記憶するための、CD-ROM、DVD、メモリ・カード、フロッピー(登録商標)・ディスクまたは同様の記憶媒体といった記録担体が提供されうる。
【0031】
本発明のあるさらなる実施形態は、本発明に基づく方法を実行するようプログラムされうるコンピュータを提供する。前記コンピュータは、照明インフラストラクチャーとの通信のためのインターフェースを有してもよい。前記通信は、たとえばインターフェースと照明インフラストラクチャーとの間の有線または無線の通信接続を通じて実行されうる。無線通信接続の場合、インターフェースは、照明インフラストラクチャーのそれぞれの相手と通信接続を確立しうるWLANおよび/またはブルートゥース(登録商標)および/またはジグビー(ZigBee)・モジュールのような無線周波数(RF: radio frequency)通信モジュールを有してもよい。
【0032】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を検証するシステムであって、以下の特徴的な要素を有するものが提供される:
・照明インフラストラクチャーの照明エレメント・テンプレートを電子的に受け取る受領手段。ここで、照明エレメント・テンプレートはある意味論的位置における照明インフラストラクチャーの可能性の指標を含む。
・受け取った照明エレメント・テンプレートを、前記抽象記述の照明エレメントと比較することによって自動処理する処理手段。
・前記抽象記述からの前記照明環境をレンダリングすることが可能であるかどうかを合図する信号伝達手段。
【0033】
本発明のある実施形態によれば、本システムはさらに、
・前記照明環境の抽象記述を生成するよう適応された照明環境デザイン・モジュールと、
・前記受領手段、処理手段および信号伝達手段を有する検証モジュールとを有してもよい。
【0034】
本発明のある実施形態によれば、前記検証モジュールは、コンピュータによって実行されるコンピュータ・プログラムとして実装されてもよい。
【0035】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、前記コンピュータは、前記受領手段を有する通信モジュールを有していてもよい。
【0036】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、前記システムは、前記照明インフラストラクチャーの照明ユニットの照明器具の組み込まれた発見的方法を有していてもよい。ここで、前記発見的方法は照明エレメント・テンプレートを生成するために処理されることができる。
【0037】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、本発明の方法または本発明のシステムと一緒に使うための照明エレメント・テンプレートのデータ構造であって、
・領域セレクター識別子フィールド(area selector identifier field)と、
・前記領域セレクター識別子フィールドの内容によって決定される領域において利用可能な照明型を含む、一つまたは複数の照明型識別子フィールド(light type identifier field)とを有するデータ構造が提供される。
【0038】
本発明のある実施形態によれば、前記データ構造はさらに、最大および/または最小光強度値および色値を含むさらなる照明型識別子フィールドを有する。
【0039】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、本発明に基づくデータ構造を記憶する記録担体、たとえばCD-ROM、DVD、メモリ・カード、ディスケットまたは電子的アクセス用に前記データ構造を記憶するのに好適な同様のデータ担体が提供される。
【0040】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、本発明に基づく前記データ構造を担持する変調されたデータ信号、たとえばインターネットのようなコンピュータ・ネットワークにおいて前記データ構造を搬送するデータ伝送信号が提供されうる。
【0041】
本発明のこれらおよびその他の諸側面は、以下に記載される実施形態を参照することから明白となり、明快にされるであろう。
【0042】
本発明について、以下で、例示的な実施形態を参照しつつ、より詳細に記述するが、本発明はこれらの例示的な実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に基づく、照明環境の抽象記述から、店舗における照明環境を合成する方法のある実施形態を示す流れ図である。
【図2A】本発明に基づく抽象環境記述の実施例として、店舗内での照明環境の抽象記述を含むXMLファイルを示す図である。
【図2B】本発明に基づく抽象環境記述の実施例として、店舗内での照明環境の抽象記述を含むXMLファイルを示す図である。
【図2C】本発明に基づく抽象環境記述の実施例として、店舗内での照明環境の抽象記述を含むXMLファイルを示す図である。
【図3】本発明に基づく、ある店舗事例におけるある領域についての照明インフラストラクチャー情報のデータ構造を示す図である。
【図4】本発明に基づく、図3に示される照明インフラストラクチャー情報を組織化およびグループ化することによって生成される照明エレメント・テンプレートのデータ構造を示す図である。
【図5】本発明に基づく、抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動検証する方法のある実施形態のフローチャートである。
【図6】本発明に基づく、領域型を使って分類される種々の意味論的領域をもつある店舗事例のレイアウトを示す図である。
【図7】本発明に基づく、抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動検証するシステムのある実施形態を示す図である。
【図8】本発明に基づく、ダウンロード用にインターネットのサーバー・コンピュータに記憶されている抽象環境記述から照明環境を生成するシステムのある実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の記述では、「照明デバイス(lighting device)」「照明ユニット(lighting unit)」「光ユニット(light unit)」および「ランプ(lamp)」の用語は同義に使われる。これらの用語は、本稿では、LEDのような半導体ベースの照明ユニット、ハロゲン電球、蛍光灯、電球といった任意の種類の電気的に制御可能な照明デバイスを意味する。さらに、図面において(機能的な)同様または同一の要素は同じ参照符号で表されることがある。
【0045】
ある店舗について抽象記述から照明環境を合成する方法に基づくフローの概観が図1に描かれている。何らかのデザイン工程11を介して、たとえばグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)をもつ照明環境合成コンピュータ・プログラムを使って、抽象環境記述(abstract atmosphere description)10が生成される(図1ではab atmos descとも記される)。抽象環境記述は、図1の下部に描かれている対話方法の一つから生成されることもできる。抽象記述10は単に、ある意味論的時間/機会におけるある意味論的位置における照明効果の記述を含む。照明効果は、あるパラメータをもつ照明の型によって記述される。抽象記述10は、店舗レイアウトや照明システムとは独立である。よって、特定の照明システムおよび部屋のレイアウトといった照明環境設備(lighting environment)についての知識なしに、照明デザイナーによって生成されうる。デザイナーは、照明環境設備の意味論的位置、たとえば靴屋またはファッション・ショップにおける「キャッシュ・レジスター」または「靴箱1」「靴箱2」「試着室(changing cubicle)」「コート・スタンド」を知るだけでよい。抽象記述10を生成するためにGUIを使うとき、前記意味論的位置を含む店舗レイアウト・テンプレートをロードすることが可能であってもよい。次いで、デザイナーは、照明効果および照明環境を、たとえば利用可能な照明デバイスのパレットからのドラッグアンドドロップ技術によって、生成できる。GUIをもつコンピュータ・プログラムの出力は、抽象記述10を含むXMLファイルであってもよい。
【0046】
そのような抽象環境記述を含むXMLファイルの例が図2Aないし図2Cに示されている。抽象環境記述において、照明環境記述の要素〔エレメント〕は、店舗内の意味論的(機能上の)位置に結び付けられる。図2Aないし図2Cから見て取れるように、意味論的位置は、属性「areaselector〔領域セレクター〕」によって導入される。この意味論的位置における照明環境は、タグ名「lighteffecttype〔照明効果型〕」によって導入される。照明パラメータをもつ照明の型は、タグ名「ambient〔環境光〕」「accent〔アクセント〕」「architectural〔建築的〕」および「wallwash〔壁面照明〕」によって、タグ名「architectural」および「picturewallwash〔ピクチャー壁面照明〕」を使ってピクチャーとして、あるいはlightdistribution〔光分布〕として、記述される。パラメータは、たとえば2000(lux/nit)の属性「intensity〔強度〕」およびたとえばx=0.3、y=0.3の「color〔色〕」によって記述される。ピクチャー壁面照明効果の場合、示されるピクチャーが属性「pngfile〔pngファイル〕」およびその強度によって指定される。光分布の場合、強度が指定され、領域の角における色および可能性としては勾配のs曲線を指定するパラメータ。さらに、いくつかのライトについては、フェードインおよびフェードアウトが、属性「fadeintime〔フェードイン時間〕」および「fadeouttime〔フェードアウト時間〕」によって指定されてもよい。
【0047】
そのような抽象記述は、種々の照明デバイスまたはユニット、すなわち照明システムの個別的な事例のランプ(図1ではランプ設定24として示されている)についての制御値に、三段階で、自動的に変換されうる。
【0048】
1.抽象記述10をコンパイル14して環境モデル20にする:コンパイル段14では、抽象(店舗レイアウトおよび照明インフラストラクチャーに独立な)照明記述10は、店舗レイアウトに依存する環境記述に変換される。これは、意味論的位置12が店舗内の実際の位置(物理的位置)によって置き換えられることを含意する。これは、最小限、物理的位置および各物理的位置についてそれがどんな意味論的意味をもつか(たとえば、一つの店舗は二つ以上のキャッシュ・レジスターをもつことができ、それらはみな異なる名称をもつが、同じ意味論的意味である)の指標をもつ、当該店舗の何らかのモデルを要求する。この情報は、店舗レイアウトにおいて利用可能である。意味論的位置のほか、時間の意味論的概念(たとえば開店時間)も実際の値(たとえば9:00〜18:00)で置き換えられる。この情報は、店舗タイミングにおいて利用可能である。さらに、センサーの読みに依存する照明効果のために、抽象センサーが店舗内の実際のセンサー(の識別子)によって置き換えられる。これらの店舗依存の値は、その店舗および適用される照明システムの個別的なパラメータを含む店舗定義ファイル12に含まれる。店舗定義は、抽象環境、店舗レイアウトおよび店舗タイミングにおいて使用できる語彙を含む。コンパイラー段の出力が、いわゆる環境モデル(atmosphere model)20(atmos model)である。これはいまだダイナミクス(dynamics)、時間依存性およびセンサー依存性を含んでいる。
【0049】
2.環境モデル20を目標22にレンダリング16:レンダリング段では、すべてのダイナミクス、時間依存性およびセンサー依存性が環境モデル20から除去される。よって、レンダリング段は、ある時点およびその時点での所与のセンサー読みにおける、照明環境のスナップショットを生成する。レンダリング段の出力は、目標(target)22と呼ばれる。目標22は、一つまたは複数の視点および視点当たりの色分布、強度分布、CRI(Color Rendering Index[色レンダリング・インデックス])分布……からなることができる。
【0050】
3.目標22を照明デバイス、すなわちランプのための実際の制御値24にマッピング:マッピング段は目標22を実際のランプ制御値24(ランプ設定)に変換する。これらの制御値24を計算するために、マッピング・ループは次のものを要求する:
a.照明システムにおいて利用可能なランプ26の、ランプの型、色空間……のような記述。
b.どのランプがどのようにある種の物理的位置の照明に寄与するかを記述するいわゆる原子的効果(atomic effects)26。これらの原子的効果がどのように生成されるかはのちに述べる。
c.閉じたフィードバック・ループを用いて光を制御する場合、生成される光を測定するセンサー値28。
【0051】
これらの入力26および28ならびに目標22に基づいて、マッピング・ループ18は、アルゴリズムを使って、照明ユニットまたはランプをそれぞれ制御して、生成される光が目標22からできるだけ違わないようにする。古典的な最適化、ニューラル・ネットワーク、遺伝的アルゴリズムなどのような、さまざまな制御アルゴリズムを使うことができる。
【0052】
すでに示したように、マッピング・プロセス18は、目標照明「シーン」をレンダリング・プロセス16から受け取る。目標22をできるだけ近く近似する光を生成するのに要求されるランプ設定24を計算するために、マッピング・プロセス18は、どのランプがどのようにしてある物理的位置の照明に寄与するかを知る必要がある。これは、環境設備において照明デバイスまたはランプそれぞれの効果を測定できるセンサーを導入することによって行われる。典型的なセンサーは、照明強度を測定するよう適応されたフォトダイオードであるが、カメラ(スチール写真、ビデオ)もそのようなセンサーの個別の例と考えうる。
【0053】
先に示したように、照明環境の抽象記述は、将来、業務(すなわち店舗)領域および消費者領域の両方で、可能になるであろう。いずれの領域でも、あらかじめ、照明環境のそのような抽象記述が、特定の店舗または家庭の照明インフラストラクチャーにおいて、どのくらいよくレンダリングできるかを知ることが望ましい。
【0054】
たとえば、店舗チェーンの本部の照明デザイナーが、その店舗チェーンのための新しい照明環境を作りたい場合、この照明デザイナーが、その環境がその店舗チェーンの店舗に置いてどのくらいよくレンダリングできるかについてのフィードバックを得ることが重要である。
【0055】
これは、チェーンのすべての店舗についての照明インフラストラクチャーの情報(利用可能なユニット、その特性および位置)を照明デザイナーに通信することによってできる。しかしながら、この方法には大きな欠点がある。光源の量は非常に多数になることがあり、店舗当たり数千の光源となることもある。これは、単にどのような照明ユニットが利用可能であるかを通信することは、大規模化〔スケーリング〕できず、照明デザイナーを「圧倒する」であろうことを含意する。さらに、照明デザイナーにとって重要なのは、店舗内での照明ユニットの位置ではなく、単に、その照明効果の意味論的位置(たとえば入口)が何であるかである。これは、チェーン内の全店舗の詳細な店舗レイアウトを店舗の本部(HQ: head quarter)にいる照明デザイナーに転送することを要求し、これも大規模化できない。
【0056】
消費者領域では、抽象照明環境を購入するエンドユーザーはもちろん、そのような照明環境が個別的なレイアウトおよび照明インフラストラクチャーをもつ自宅でレンダリングできることを確かめたいと思う。しかしながら、そのようなエンドユーザーは、通例、照明デザインおよび照明システムのエキスパートではない。よって、事前に、そのような照明環境がレンダリングできるかどうかを検証することが可能である必要がある。レンダリングの不可能または制限は、消費者に対して理解可能な仕方で伝えられる必要がある。
【0057】
本発明は、照明環境が特定の店舗チェーンまたは家庭においてどのくらいよくレンダリングできるかの検証を、スケーラブルかつ意味のある仕方で可能にする機構を提供する。それを以下で詳細に説明する。
【0058】
利用可能な照明ユニットをたとえば照明デザイナーに通信する代わりに、店舗または家庭における照明インフラストラクチャーの可能性がいわゆる照明エレメント・テンプレートに変換される。照明エレメント・テンプレート(light element template)とは、店舗または家庭におけるある(意味論的)位置における照明インフラストラクチャーの可能性の指標である。あらゆる型の照明効果について、異なる照明エレメント・テンプレートが生成されることになる。
【0059】
図6は、いくつかの照明領域1ないし7をもつ店舗事例のレイアウトを描いている。異なる領域、領域1ないし領域7は、型AT1ないしAT5を使って分類される。領域型(area type)の例は「入口」「割引」「食料品」などである。
【0060】
たとえば店舗における異なる領域1ないし7についての照明可能性は、照明ユニットが生成できる照明の型に従って「要約」されることができる。そのような要約の典型的なデータ構造32が、「領域1」と呼ばれる領域について、図3に示される。データ構造32は、「領域1」を含む領域識別子フィールド、「AT1」を含む領域型識別子フィールド、「AT1」を含む領域セレクター・フィールド38、この領域において利用可能な照明型ambient〔環境光〕を含む照明型フィールド36、この領域における最高照明強度1500luxを含む最大強度フィールドおよび白色光についての色white〔白〕を含む照明色フィールドを含む。
【0061】
図6に描かれている店舗レイアウトの種々の領域の照明可能性は、図3に示されるデータ構造32として挙げると、たとえば次のようになる。
領域1
領域型(Area type)=AT1
領域セレクター(Area selector)=AT1
照明型(LightType)=Ambient
最大強度(MaxIntensity)=1500Lux
色(Color)=White

領域2
領域型=AT2
領域セレクター=AT2
照明型=Ambient
最大強度=2000Lux
色=White
照明型=Task
最大強度=6000Lux
色=RGB

領域3
領域型=AT3
領域セレクター=AT3
照明型=Ambient
最大強度=2000Lux
色=White

領域4
領域型=AT4
領域セレクター=AT4‖AT1/AT4
照明型=Accent
最大強度=6000Lux
色=White

領域5
領域型=AT5
領域セレクター=AT5‖AT2/AT5
照明型=Accent
最大強度=4000Lux
色=White

領域6
領域型=AT2
領域セレクター=AT2
照明型=Ambient
最大強度=1000Lux
色=White
照明型=Architectural/wallwash
最大強度=500nit
色=RGB

領域7
領域型=AT1
領域セレクター=AT1‖AT3/AT1
照明型=Ambient
最大強度=1500Lux
色=White
照明型=Architectural/wallwash
最大強度=1000nit
色=RGB。
【0062】
前記店舗事例における種々の領域についての上記に挙げたデータ構造では、領域セレクターは、店舗または家庭における意味論的領域の指標である。領域セレクターは、一つまたは複数の領域型からなっていてもよい。たとえば、領域セレクターAT2/AT5は、型AT2をもつ領域の部分領域である、型AT5をもつすべての領域を指す。
【0063】
上記の「要約」は、次のものを使って生成できる。
・店舗または家庭における利用可能な照明ユニットおよびその機能についての情報。将来のネットワーク化された照明システムでは、この情報は、サービスおよびデバイス発見機構によって自動的に利用可能にされるであろう。
・照明ユニットがある/その効果を生じる意味論的位置。この情報は、手動でも入手可能であるが、好ましくは自動インストールまたは較正手順から入手可能である。
・TL照明器具が典型的に散乱または環境光を与えるといった発見的方法(heuristics)。たとえば、高さ3mのところに取り付けられている場合、14W TLはxルクスの光強度を生じる……。この種の発見的方法は、システム製造業者(たとえばフィリップス・ライティング)によってシステムに組み込まれることができる。
【0064】
この要約された照明インフラストラクチャーを領域セレクターによって組織化およびグループ化することによって、本発明に基づく照明エレメント・テンプレートのためのデータ構造が生成されうる。図4は、「LightElementTemplate1〔照明エレメント・テンプレート1〕」についてそのようなデータ構造30を示している。データ構造30は、いくつかのフィールドを含む:領域セレクター・フィールド38「AT1」、領域セレクター「AT1」領域において第一の照明型として利用可能な照明型「Ambient」を含む照明型フィールド36、第一の型の照明についてともに1500luxを含む最高および最低の最大強度のための二つのフィールド、第一の型の照明について「white」を含む色識別子フィールド、この領域セレクター「AT1」領域において利用可能な第二の照明型についての「Architectural/wallwash」を含むさらなる照明型フィールド36、第二の照明型について1000nitおよび0nitを含む最高および最低の最大強度のための二つのフィールド、第二の照明型について「RGB」を含む色識別子フィールド。図6の店舗事例についてのすべての照明エレメント・テンプレートは次のようになる。
照明エレメント・テンプレート(LightElementTemplate)1
領域セレクター(Area selector)=AT1
照明型(LightType)=Ambient
・最高最大強度(Highest MaxIntensity)=1500Lux
・最低最大強度(Lowest MaxIntensity)=1500Lux
・色(Color)=White
照明型(LightType)=Architectural/wallwash
・最高最大強度(Highest MaxIntensity)=1000nit
・最低最大強度(Lowest MaxIntensity)=0nit
・色(Color)=RGB
照明エレメント・テンプレート2
領域セレクター=AT2
照明型=Ambient
・最高最大強度=2000Lux
・最低最大強度=1000Lux
・色=White
照明型=Task
・最高最大強度=6000Lux
・最低最大強度=0Lux
・色=RGB
照明型=Architectural/wallwash
・最高最大強度=500nit
・最低最大強度=0nit
・色=RGB
照明エレメント・テンプレート3
領域セレクター=AT3
照明型=Ambient
・最高最大強度=2000Lux
・最低最大強度=2000Lux
・色=White
照明エレメント・テンプレート4
領域セレクター=AT1/AT4
照明型=Accent
・最高最大強度=6000Lux
・最低最大強度=6000Lux
・色=White
照明エレメント・テンプレート5
領域セレクター=AT2/AT5
照明型=Accent
・最高最大強度=4000Lux
・最低最大強度=4000Lux
・色=White
照明エレメント・テンプレート6
領域セレクター=AT3/AT1
照明型=Ambient
・最高最大強度=1500Lux
・最低最大強度=1500Lux
・色=White
照明型=Architectural/wallwash
・最高最大強度=1000nit
・最低最大強度=1000nit
・色=RGB。
【0065】
領域セレクターAT4およびAT5についての照明エレメント・テンプレートは、この店舗においては「個別に」生起せず、組み合わせAT1/AT4およびAT2/AT5においてしか生起しないので、除去される。
【0066】
図2Aないし図2Cを参照して説明したように、照明デザイナーによって作られる抽象照明環境は、抽象照明エレメントで指定される。たとえば:
照明エレメント(LightElement)1
領域セレクター(Areaselector)=AT1
照明型(LightType)=Ambient
・強度(Intensity)=1200Lux
・色(Color)=White
照明エレメント2
領域セレクター=AT5
照明型=Architectural/wallwash
・強度=1000nit
・色=yellow〔黄色〕
照明型=accent
・強度=3000Lux
・色=white。
【0067】
環境記述の照明エレメントを照明エレメント・テンプレートと比較することによって、その特定の店舗または家庭において照明エレメントをレンダリングすることが可能であるかどうかを迅速かつ自動的に検証できる。今の例では、AT5で終わる領域セレクターをもつ領域において壁面照明が可能でないことがただちに明らかになる。レンダリングが可能でない場合、たとえば意味論的レベルで、照明デザイナーのコンピュータ・モニタに「領域型5をもつ領域で壁面照明効果を生成することは不可能です」のようなメッセージを表示するなどして、フィードバックが与えられることができる。
【0068】
図5は、検証プロセスの本質的なステップをフローチャートで概観するものである。まず、ステップS10において、照明インフラストラクチャーの照明エレメント・テンプレート、たとえば上に挙げた照明エレメント・テンプレートが、検証プロセスを実行するよう構成されたコンピュータ・システムによって電子的に受け取られる。次いで、ステップS12において、受け取られた照明エレメント・テンプレートが、照明環境の抽象記述の照明エレメントと比較される。次のステップS14において、受け取られた照明エレメント・テンプレートによって表されるその店舗事例の照明インフラストラクチャーにおいて、その照明環境をレンダリングすることが可能であるかどうかが検査される。レンダリングが可能であれば、ステップS16で、このことがたとえばユーザーに対して、あるいは所望される照明環境を生成するために照明インフラストラクチャーを自動構成するシステムに対して示される。可能でなければ、ステップS18においてレンダリングが可能でないことが示される。
【0069】
同様に、ある店舗チェーンにおける異なる店舗の照明エレメント・テンプレートが組み合わされることができる(図7参照)。これは、店舗チェーンのすべての店舗についての照明環境を制作する照明デザイナーに、店舗チャーンにおいて照明環境がどのくらいよくレンダリングできるかについてのフィードバックを与えることができる。たとえばある照明領域セレクターについてある照明エレメントの指定された強度が、その領域セレクターについての照明エレメント・テンプレートの最低最大強度値より下である場合、このことは、この照明エレメントがすべての店舗でレンダリングできないことを含意する。他方、指定された強度が照明エレメント・テンプレートの最高最大強度より高い場合、この照明エレメントはチェーン内の店舗のどれでもレンダリングできない。
【0070】
図7は、抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動検証するシステム60を描いている。このシステムは、照明環境を、それがどのくらいよくレンダリングできるかについて検証する二つの可能性を提供する:
・チェーンのすべての店舗においてその照明環境がどのくらいよくレンダリングできるかの指標を与える、すべての店舗についての総合された照明エレメント・テンプレートに対して。
・個々の店舗の照明エレメント・テンプレートに対して。これは店舗事例レベルでフィードバックを与える。
【0071】
店舗チェーン本部において、環境デザイナーは、デザイン・ツール62を使ってチェーンの店舗のための照明環境を作成する。デザイン・ツール62は、照明環境をデザインするためのデザイナーの入力に対する追加的な入力として、店舗定義を受け取る。検証システム60は、検証ツール64と、チェーンの種々の店舗の照明システム70、72および74から総合された照明エレメント・テンプレートを計算する計算モジュール66と、チェーンの種々の店舗の照明システム70、72および74から照明エレメント・テンプレートを収集する収集モジュール68とを有する。デザイナーがある照明環境のデザインを完了し、デザイン・ツール62によって自動生成されてもよい照明環境の抽象記述を生成したとき、デザイナーは、たとえばデザイン・ツール62の検証ボタンをクリックすることによって、本発明に基づく検証プロセスを開始しうる。するとデザイン・ツール62は検証ツール64をトリガーする。検証ツール64は、デザイン・ツール62から抽象記述を受け取り、店舗事例レベルの検証を実行するための収集モジュール68からの収集された照明テンプレートまたはすべての店舗についての検証およびすべての店舗においてその環境がどのくらいよくレンダリングされうるかについての標示を実行するための計算モジュール66からの総合された照明エレメント・テンプレートを受け取る。検証の結果は、デザイナーのコンピュータのモニタ上に表示され、それにより、デザイナーは次に、その抽象環境記述がチェーンの種々の店舗の照明システム70、72および74に送信されるかどうかを決定しうる。
【0072】
すでに示したように、本発明は、たとえば自宅用に照明環境を購入する意図のある消費者によって使用されることもできる。その場合、照明環境は、問題となる家庭の照明エレメント・テンプレートに対して検証される。照明環境がある種の領域セレクターについて実現可能でない場合、ユーザーへのフィードバックが明瞭かつ具体的な仕方で与えられるべきである。これは、レンダリング問題について、そのレンダリング問題が発生する最も特定的な領域セレクターがユーザーに提供されるべきであることを含意する。AT5についての照明エレメントが領域セレクターAT5およびAT2/AT5の照明エレメント・テンプレートと衝突していた先の例では、ユーザーへの標示は、壁面照明が領域AT2/AT5では可能でないというものであるべきである。実際には、照明デザイナーにとっては、問題は、たとえば図7に示されるような照明デザイナーのコンピュータによって実行される検証モジュール64によって、照明デザインにおいて標示される。一方で、末端消費者にとっては、潜在的な問題は、家庭における照明インフラストラクチャーの表現である照明エレメント・テンプレート(LightElementTemplates)を用いて標示される。
【0073】
図8は、ユーザーの家庭照明インフラストラクチャーにおいて抽象環境記述から照明環境を生成するためのシステムを示している。本システムは、ユーザーのパソコン100を有する。パソコン100は、いくつかの照明ユニット54を含む照明システムと通信するインターフェース102を有する。インターフェース102は、通信バス112およびRF通信接続110を介して照明ユニット54と通信するよう適応されている。パソコン100は、照明ユニット54を、特にその照明強度および色を調節するために、通信接続110および112を通じて、制御値または設定を照明ユニット54に送信する。最後に、パソコン100は、ネットワーク・アダプターのような、サーバー・コンピュータ108からインターネット106を通じて抽象環境記述10を受信するための受信手段104を含んでいる。サーバー・コンピュータ108は、抽象照明環境のためのウェブサイトをホストしてもいる。よって、ユーザーは自分のパソコン100を使ってこのウェブサイトにアクセスし、所望の抽象照明環境を選択できる。ウェブサイト上であるボタンをクリックすることによって、パソコン100は、ユーザーのパソコン100に記憶されているユーザーの家庭照明システムの照明エレメント・テンプレートをアップロードしうる。サーバー・コンピュータ108は次いで、受信された照明エレメント・テンプレートを用いて、たとえば図6に示されるようなユーザーの照明システムにおいて、所望される照明環境をレンダリングすることが可能かどうかを検証する。検証プロセスが完了すると、結果がウェブサイトによって表示されてもよい。それにより、ユーザーは、所望される照明環境が自分の照明システムでレンダリングされうるかどうかを見る。その後、ユーザーは、たとえば抽象照明環境の供給者に支払いをしたのち、サーバー・コンピュータ108から自分のパソコン100に所望される照明環境の所望される抽象記述をダウンロードしてもよい。パソコン100は、ダウンロードされた抽象環境記述10を処理することを開始してもよい。ダウンロードされた抽象環境記述10はパソコン100において処理され、ユーザーの家庭照明システムにおいて照明環境を実装するために接続110および112を通じて照明ユニット54に通信されうる制御値のセットが得られる。
【0074】
本発明は、抽象照明環境が多数の照明インフラストラクチャーおよび/または部屋レイアウトのために作成されるあらゆる状況に適用できる。
【0075】
照明環境がある種の照明インフラストラクチャーによって実現できない状況では、たとえばコンピュータ・モニタ上にそれぞれのユーザーのヘルプを表示することによって、店舗/家庭内のどの意味論的領域(単数または複数)にどんな型の照明ユニットを追加すべきかについて助言が与えられることもできる。
【0076】
本発明は、機能的な照明のほかに効果のためにも使われる(比較的大きな)照明システムにおいて使用されることができる。本発明の一つの重要な特徴は、照明シーンまたは環境が、たとえば全店舗チェーンのために、一度記述される必要があるだけであるということである。ローカルな状況での抽象照明環境の自動検証は、照明デザイン工程の早い段階で、その照明環境のレンダリングが可能であるかどうかを検査することを可能にする。部屋および照明インフラストラクチャーに独立なため、サービス・モデルにおいて使用されることもできる。たとえば、サービス・プロバイダーは、照明シーンの提供を、その照明シーンがレンダリングされる必要のあるレイアウトや照明システムについての正確な知識を必要とすることなく、できる。
【0077】
検証プロセスのような本発明の機能の少なくとも一部は、ハードウェアまはたソフトウェアによって実行されうる。ソフトウェアでの実装の場合、単一または複数の標準的なマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ構成が使用されうる。本発明は、単一または複数のアルゴリズムによって実装されうる。
【0078】
「有する」の語は他の要素やステップを排除しないこと、要素の単数形の表現は複数を排除しないことを注意しておくべきである。さらに、請求項に参照符号があったとしても、その発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動検証する方法であって、
・照明インフラストラクチャーの照明エレメント・テンプレートを電子的に受け取る段階であって、照明エレメント・テンプレートはある意味論的位置における照明インフラストラクチャーの可能性の指標を含む、段階と、
・受け取った照明エレメント・テンプレートを、前記抽象記述の照明エレメントと比較することによって自動処理する段階と、
・前記抽象記述からの前記照明環境をレンダリングすることが可能であるかどうかを信号伝達する段階とを有する、
方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、さらに、
前記照明インフラストラクチャーの照明ユニットが生成できる光の型に従って、種々の領域についての前記照明インフラストラクチャーの可能性を照明インフラストラクチャー情報に要約する段階を有し、ここで、各領域は、ある意味論的位置の指標として領域セレクターを含む、
方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、さらに、
照明エレメント・テンプレートを生成するために、前記照明インフラストラクチャー情報を領域セレクターによって組織化およびグループ化する段階を有し、ここで、領域セレクターは、ある意味論的位置の指標であり、一つまたは複数の領域型を含む、
方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法であって、受け取った照明エレメント・テンプレートを、前記抽象記述の照明エレメントと比較することによって自動処理する前記段階が、
・前記抽象記述の、ある照明エレメントの領域セレクターを決定し、
・前記ある照明エレメントと同じ領域セレクターをもつ照明エレメント・テンプレートを位置特定し、照明エレメント・テンプレートが位置特定されることができる場合には、
・前記ある照明エレメントのさらなるパラメータを、位置特定された照明エレメント・テンプレートと比較することによって検査する、
ことを含む、方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか一項記載の方法であって、さらに、
前記照明インフラストラクチャーの利用可能な照明ユニットおよびその機能についての情報を、自動的に、サービスおよびデバイス発見機構により、ネットワーク環境内で利用可能にする段階を有する、
方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちいずれか一項記載の方法であって、さらに、
自動的なインストールまたは較正手順によって、ある照明ユニットが存在するまたはその照明効果を生じる意味論的位置を利用可能にする段階を有する、
方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちいずれか一項記載の方法であって、さらに、
・クライアントがサーバーと通信することによって照明環境を選択する段階と、
・前記クライアントから前記サーバーに照明インフラストラクチャーの照明エレメント・テンプレートを送信する段階と、
・前記サーバー上で、受け取られた照明エレメント・テンプレートを、選択された照明環境の抽象記述の照明エレメントと比較することによって自動的に処理する段階と、
・前記サーバーから前記クライアントに前記処理の結果を送信する段階と、
・前記クライアント上で、受け取られた処理結果に依存して、前記選択された抽象記述からの前記照明環境のレンダリングが可能であるかどうかを信号伝達する段階とを有する、
方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちいずれか一項記載の方法であって、さらに、
・いくつかの照明インフラストラクチャーの照明エレメント・テンプレートを電子的に受け取る段階と、
・受け取った照明エレメント・テンプレートをさらなる処理のために組み合わせる段階とを有する、
方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちいずれか一項記載の方法であって、さらに、照明エレメント・テンプレートが、照明インフラストラクチャーの照明コントローラとのネットワーク接続を通じて、電子的に受信される、方法。
【請求項10】
コンピュータによって実行されたときに請求項1ないし9のうちいずれか一項記載の方法を実行できるようにされたコンピュータ・プログラム。
【請求項11】
請求項10記載のコンピュータ・プログラムを記憶する記録担体。
【請求項12】
抽象記述から照明環境をレンダリングする可能性を自動検証するシステムであって、
・照明インフラストラクチャーの照明エレメント・テンプレートを電子的に受け取る受領手段であって、照明エレメント・テンプレートはある意味論的位置における照明インフラストラクチャーの可能性の指標を含む、受領手段と、
・受け取った照明エレメント・テンプレートを、前記抽象記述の照明エレメントと比較することによって自動処理する処理手段と、
・前記抽象記述からの前記照明環境をレンダリングすることが可能であるかどうかを示す信号伝達手段とを有するシステム。
【請求項13】
・前記照明環境の抽象記述を生成するよう適応された照明環境デザイン・モジュールと、
・前記受領手段、処理手段および信号伝達手段を有する検証モジュールとを有する、
請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記検証モジュールは、コンピュータによって実行されるコンピュータ・プログラムとして実装される、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記コンピュータが、前記受領手段を有する通信モジュールを有する、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記照明インフラストラクチャーの照明ユニットの照明器具の組み込まれた発見的方法を有し、ここで、前記発見的方法は照明エレメント・テンプレートを生成するために処理されることができる、請求項12ないし15記載のシステム。
【請求項17】
請求項1ないし9のうちいずれか一項記載の方法または請求項12ないし16のうちいずれか一項記載のシステムと一緒に使うための照明エレメント・テンプレートのデータ構造であって、
・領域セレクター識別子フィールドと、
・前記領域セレクター識別子フィールドの内容によって決定される領域において利用可能な照明型を含む、一つまたは複数の照明型識別子フィールドとを有するデータ構造。
【請求項18】
最大および/または最小光強度値および色値を含むさらなる照明型識別子フィールドを有する、請求項17記載のデータ構造。
【請求項19】
請求項17または18記載のデータ構造を記憶している記録担体。
【請求項20】
請求項17または18記載のデータ構造を担持する変調されたデータ信号。

【図1】
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【図2A−1】
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【図2A−2】
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【図2A−3】
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【図2B−1】
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【図2B−2】
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【図2C−1】
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【図2C−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−514048(P2010−514048A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542365(P2009−542365)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/IB2007/055218
【国際公開番号】WO2008/078286
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】