説明

拍動検出装置

【課題】 拍動検出装置が放置状態にあることを検出すること。
【解決手段】 被検体の拍動に由来する拍動信号を検出する拍動検出装置100は、脈波センサー10と、脈波センサー10の感度を調整する脈波センサー感度調整部6と、体動センサー20と、脈波センサー感度調整部6の感度GNと、体動センサー20から出力される体動センサー信号fとに基づいて、拍動検出装置が、被検体から取り外されて放置されている放置状態にあることを検出する放置検出部70と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拍動検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
拍動検出装置は、人体の心拍に由来する拍動を検出するための装置であって、例えば、腕、手のひら、手指などに装着される脈波センサーからの信号(脈波信号)から、人体の体動の影響により発生する信号成分(体動影響信号)を雑音として除去し、心拍に由来する信号(拍動信号)を検出する装置である。
【0003】
人の指や手首に装着するタイプの脈拍計は、例えば、特許文献1〜特許文献3に記載されている。
【0004】
また、脈拍計に加速度センサーを搭載し、脈拍計を、運動量計あるいは歩数計等の運動計測機能も備えた生体情報計測装置として使用する例は、例えば特許文献4に記載されている。このような生体情報計測装置を用いることで、被計測者は運動中に自身のペース配分を管理したり、運動後に消費カロリーを確認するなどして運動量を把握したりすることが可能である。
【0005】
また、特許文献5には、加速度センサーやジャイロセンサーの出力信号に基づいて、被検体の動きの有無を判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−198829号公報
【特許文献2】特開2007−54471号公報
【特許文献3】特開2005−131426号公報
【特許文献4】特開2005−211301号公報
【特許文献5】特開2010−98356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
拍動検出装置が被検体(人や動物)の拍動検出動作を行っているときに、被検体が拍動検出装置を取り外して放置する場合がある。このような場合でも、拍動検出装置は、例えば、過去に検出した拍動信号の周波数の傾向を示す情報等を参照して、拍動成分を特定するための処理を続行する。この結果として、例えば、拍動成分に似た挙動を示す偶発的なノイズ成分を拍動成分として誤検出し、誤った脈拍数の情報を表示したり、脈拍数に基づいて、被検体の運動による消費カロリー等を計算して表示したりする、という不都合が生じる場合がある。
【0008】
また、拍動検出装置が放置状態にあるにもかかわらず、脈拍数(被検体の生体情報)等や、消費カロリー(被検体の運動に関する付随的情報)等の表示(被検体への報知)のための処理が続行されると、消費電力が増大する。
【0009】
特許文献4や特許文献5に示される技術によれば、拍動検出装置が、被検体の動作の有無を一応は検出できる。しかし、例えば、被検体が安静状態であるとき、特に被検体が睡眠中であるときのように、被検体がまったく動いていないときには、拍動検出装置が、被検体から取り外されているのか、あるいは、被検体の動きがないだけなのか、の判断が困難である場合がある。
【0010】
また、放置状態の検出方法として、拍動検出装置本体への押圧力を圧力センサー等で検出したり、拍動検出装置のアース(接地)状態を検出したりする方法が考えられる。しかし、これらの方法を採用する場合、放置検出のための特別な構成(特別な構造)が必要となる。また、例えば、拍動検出装置のアース部(接地部)を金属に接触させた場合と、人に接触させた場合とで、アース部が検出するアース電位が似ていることから、放置状態を正確に検出することができない場合もあり得る。
【0011】
本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、拍動検出装置が放置状態にあることを検出することができる。また、例えば、特別な構成を使用することなく、拍動検出装置の放置状態を高い確度で検出することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の拍動検出装置の一態様は、被検体の拍動に由来する拍動信号を検出する拍動検出装置であって、前記拍動信号を含む可能性がある脈波信号を出力する脈波センサーと、前記脈波センサーへの入力信号または前記脈波信号の強度に基づいて、前記脈波センサーの感度を調整する脈波センサー感度調整部と、前記被検体の体動を検出し、前記体動に由来する体動センサー信号を出力する体動センサーと、前記脈波センサー感度調整部によって調整された前記脈波センサーの感度と前記体動センサーから出力される前記体動センサー信号とに基づいて、前記拍動検出装置が前記被検体から外されている放置状態を検出する。
【0013】
本態様では、放置検出部は、脈波センサー感度調整部によって調整された前記脈波センサーの感度と、体動センサーから出力される体動センサー信号と、に基づいて、拍動検出装置の放置状態を検出する。
【0014】
拍動検出装置が被検体に装着されて、拍動検出処理が実行されている状態では、脈波センサー感度調整部によって設定される感度は、通常の計測時に生じる範囲内の値となっている。これに対して、拍動検出装置が、被検体から取り外されて放置されている場合、感度は、通常の計測時に生じる範囲(許容範囲)から外れた値となっている可能性が高い。
【0015】
すなわち、拍動検出装置が、例えば机上に放置されているとき、室内の照明光や窓等から差し込む室外の光(これらを総称して外光ということができる)が、脈波センサーに入射する可能性が高い。外光は直接に拍動検出装置に入射されるが、拍動検出に使用される光は、血管で反射した反射光(散乱光でもあり、間接的に入射される光)である。よって、直接光である外光のレベルは、拍動検出に使用される反射光のレベルに比べて高い場合が多い。また、拍動検出装置が、例えば、机の引き出しや鞄の中に収納されているような場合、外光はほとんど遮断されていることから、外光のレベルは零に近い。つまり、この場合には、外光のレベルが、拍動検出に使用される反射光のレベルに比べて十分に低い状態となる。
【0016】
つまり、拍動検出装置が放置状態にあるとき、脈波センサーに入射する光の強度(光のレベル)は、通常の検出処理時にはあり得ない範囲の強度(レベル)となる可能性が高い。このとき、脈波センサーの感度も、通常の計測時に生じる範囲(許容範囲)から外れた値となっている。よって、脈波センサー感度調整部によって設定された、脈波センサーの感度は、拍動検出装置の放置状態を検出するための有力な情報として使用することができる。
【0017】
また、拍動検出装置が放置状態にあるとき、体動がないため、体動センサーから出力される体動センサー信号(被検体の体動由来の信号)のレベルは、零とみなせる範囲内のレベルであると考えられる。
【0018】
よって、本態様では、脈波センサーの感度と、体動センサー信号とに基づいて、拍動検出装置の放置状態を判断することとした。例えば、感度も、通常の計測時に生じる範囲(許容範囲)から外れた値となっており、かつ、体動センサー信号のレベルが、零とみなせる範囲内のレベル(つまり、体動無しとみなし得るレベル)であるとき、放置検出部は、拍動検出装置は放置状態にあると判断する。
【0019】
本態様では、脈波センサー感度調整部によって調整された脈波センサーの感度を参照し、さらに、体動センサー信号の大きさの情報を併用して放置状態を判断することから、確度の高い放置状態の判断が可能である。また、特別な構成を使用せずに、拍動検出装置の放置を検出することができる。
【0020】
(2)本発明の拍動検出装置の他の態様は、前記放置検出部は、前記脈波信号、または、前記脈波信号に、前記脈波信号に含まれるノイズを抑制するフィルタリングを施して得られるフィルタリング後信号に基づいて、所定時間毎に周波数解析を実行する周波数解析部を有し、前記脈波センサー感度調整部によって調整された前記脈波センサーの感度と、前記体動センサーから出力される前記体動センサー信号と、さらに、前記周波数解析部による、前記脈波信号の周波数解析の結果と、に基づいて、前記放置状態を検出する。
【0021】
本態様では、放置検出部は、脈波センサーの感度、体動センサー信号に加えて、さらに、周波数解析部による、脈波信号の周波数解析の結果を参照して、拍動検出装置の放置状態を判断する。これにより、放置検出の精度がより向上する。
【0022】
拍動検出装置が被検体に装着されていて、拍動検出処理が行われているとしたとき、脈波センサーから出力される脈波信号には、被検体の拍動に由来する、周期性をもつ拍動信号、ならびに被検体の、周期性のある体動に由来する周期性のある体動センサー信号が含まれていると考えられる。
【0023】
脈波信号を周波数分解して周波数スペクトルを解析したとき、周期性のある信号は、周波数軸上での特定の周波数位置に現れる。よって、例えば、信号値が大きな拍動信号の周波数スペクトルが存在する場合には、拍動検出装置の状態は、非放置状態である可能性が高い。
【0024】
また、信号値が大きな拍動信号と信号値が大きな体動センサー信号とが併存している周波数スペクトルは、被検体が定常的(周期的)な運動状態(例えば、被検体が腕を規則的に振りながら一定のピッチでウォーキングしている状態)にあるときに現れる。よって、例えば、信号値が大きな拍動信号と信号値が大きな体動センサー信号とが併存している周波数スペクトルが現れたときは、拍動検出装置は、非放置状態である可能性が高い。
【0025】
一方、脈波信号の周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに、所定の閾値以上のスペクトルが無い場合、すなわち、被検体の拍動や運動状態についての有効な情報をもつスペクトル(有意なスペクトル)が何ら存在しない場合には、拍動検出装置は、放置状態にある可能性がある。
【0026】
このように、周波数解析部による、脈波信号の周波数解析の結果も参照して放置状態を判断することによって、放置状態/非放置状態の判断の精度を高めることができる。
【0027】
(3)本発明の拍動検出装置の他の態様は、前記放置検出部は、前記脈波センサー感度調整部によって調整された前記脈波センサーの感度が、前記拍動信号が検出されているときに取り得る許容範囲の外の感度であり、前記体動センサーから出力される前記体動センサー信号のレベルが、前記被検体の体動が無いと判断される範囲内にあり、かつ、前記脈波信号の周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに第1の閾値以上のスペクトルが無い場合に、前記放置状態と判断する。
【0028】
本態様では、放置検出部の判断の一例が明確化される。本態様では、放置検出部は、脈波センサーの感度が、拍動信号が検出されているときに取り得る許容範囲の外の値であり、体動センサーから出力される体動センサー信号のレベルが、被検体の体動が無いと判断される範囲内にあり、かつ、脈波信号の周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに第1の閾値以上のスペクトルが無い場合に、前記拍動検出装置は放置状態にあると判断する。
【0029】
本態様によれば、特別な構成を使用することなく、拍動検出装置の放置状態を高い確度で検出することができる。
【0030】
(4)本発明の拍動検出装置の他の態様は、前記放置検出部は、前記脈波センサー感度調整部によって調整された前記脈波センサーの感度が、前記拍動信号が検出されているときに取り得る許容範囲の外の感度であり、前記体動センサーから出力される前記体動センサー信号のレベルが、前記被検体の体動が無いと判断される範囲内にあり、前記脈波信号の周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに第1の閾値以上のスペクトルが無く、かつ、前記周波数スペクトルに基づいて、前記脈波信号に含まれるノイズ量の程度が、所定量以上と判断された場合に、前記放置状態と判断する。
【0031】
本態様では、上記(3)の態様において、「脈波信号の周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに所定の閾値以上のスペクトルが無い」という条件を、「脈波信号の周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに基づいて、脈波信号のノイズ量の程度を、例えばノイズ少、中程度ならびにノイジーに分類したとき、中程度またはノイジーに分類される」という条件に置換している。
【0032】
脈波信号のノイズ量の程度が「ノイズ少」と判断される場合としては、例えば、被検体が定常的(周期的)な運動状態(例えば、規則的な腕振りをしながらウォーキングをしている状態)にある場合や、被検体が安静状態にある場合が該当する。
【0033】
脈波信号のノイズ量の程度が「中程度(まあまあ)」と判断される場合としては、例えば、被検体が定常的運動をしている(例えば、規則的な腕振りをしながらウォーキングをしている)が、手首を不規則に動かす等の非周期的な運動も行っている状態などが該当する。
【0034】
このような場合の周波数スペクトルの状態は、例えば、信号値が所定閾値を超える拍動信号および体動センサー信号が併存し、さらに、外乱ノイズ(周期性のないノイズ)が周波数軸上で広範囲にわたって存在する、というような状態となる。
【0035】
脈波信号のノイズ量の程度が「ノイジー」と判断される場合としては、例えば、被検体が、不規則な体操やバスケットボール等の球技を行っている状態が該当する。この場合、例えば、脈波信号の周波数スペクトルにおいて、周波数軸上の広範囲な位置に、外乱ノイズ判断用の所定閾値を超える信号値をもつ外乱ノイズが現れることが多い。
【0036】
上記の3分類の中で、少なくとも、脈波信号の状態が「ノイズ少」である場合は、拍動検出装置は、被検体に装着され、非放置である可能性が極めて高い。但し、脈波信号の状態が「中程度」あるいは「ノイジー」の場合としては、「拍動検出装置が放置状態で、かつ、何らかの理由で大きなノイズが生じた場合」も想定できる。
【0037】
よって、本態様では、放置検出部は、脈波センサーの感度が、拍動信号が検出されているときに取り得る許容範囲の外の値であり、体動センサーから出力される体動センサー信号のレベルが、被検体の体動が無いと判断される範囲内にあり、かつ、脈波信号のノイズ量の程度が、中程度またはノイジーに分類される場合に、拍動検出装置は放置状態にあると判断する。なお、脈波信号のノイズ量の程度の判断の指標としては、主要なスペクトルの中から選ばれる2本のスペクトルの信号値の比、あるいは統計情報(標準偏差と偏差値等)などがある。
【0038】
本態様によれば、特別な構成を使用することなく、拍動検出装置の放置状態を、より高い確度で検出することができる。また、本態様によれば、放置検出部は、被検体が、例えば、安静状態(非定常運動要素無し)にあるときと、拍動検出装置が放置状態にあるときとを、区別することができる。
【0039】
(5)本発明の拍動検出装置の他の態様では、前記放置検出部は、前記所定時間毎に前記放置状態の検出を実行し、前記放置状態でないと判断し、かつ、前記所定時間前に前記放置状態と判断したときは、前記周波数スペクトルに第2の閾値以上のスペクトルが有る場合には前記放置状態でないと判断し、前記周波数スペクトルに前記第2の閾値以上のスペクトルが無い場合には前記放置状態と判断する。
【0040】
本態様では、放置状態が解除されたことの判断の一例を明確化している。上述の(3)および(4)の態様において、前回の検出処理によって放置状態と判断され、かつ今回の検出処理によって非放置状態と判断されたとき、直ちに放置状態が解除された(放置状態から装着状態に移行した)と判断するのは、判断を誤る可能性が高い。例えば、拍動検出装置が机上に放置されている状態において、近くを人が通過したことによって、脈波センサーに入射する光の強度が偶然、変動し、これによって、脈波信号の状態が、拍動検出装置が被検体に装着されたときの信号状態に近似した状態となる場合がある。
【0041】
そこで、本態様では、一旦、放置状態であると判断され、次に、非放置状態(装着状態)と判断されたときは、放置検出部は、さらに、追加の条件による判断を実行することとした。すなわち、脈波信号の周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに第2の閾値以上の(大きさの)スペクトルが有るか否かを調べ、有る場合には非放置状態と判断し、無い場合には放置状態と判断する。
【0042】
本態様では、放置状態が解除されたことの判断に際して、条件を加重し、より慎重に判断している。よって、判断を誤る可能性が低減される。
【0043】
(6)本発明の拍動検出装置の他の態様では、前記放置検出部は、前記所定時間毎に放置検出を実行し、今回の検出処理によって前記拍動検出装置の放置状態を検出したときは、過去の前記脈波信号の周波数解析結果および前記脈波信号の周波数解析に使用される前記拍動信号の周波数の傾向を示す情報の少なくとも一方を破棄させる。
【0044】
拍動信号の検出は、過去の周波数解析結果や、過去の拍動信号の周波数傾向等に基づいて行われるため、拍動信号の誤検出が生じると、それ以降、ノイズ成分に追従した誤った検出処理が続行される可能性がある。
【0045】
そこで、本態様では、放置検出部は、今回の検出によって拍動検出装置の放置状態が検出されると、過去の脈波信号の周波数解析結果および脈波信号の周波数解析に使用される拍動信号の周波数の傾向を示す情報の少なくとも一方を破棄させる。これによって、放置されていた拍動検出装置が、被検体に再び装着された場合、拍動検出装置は、例えば初期状態から拍動検出処理を開始することができる。よって、拍動信号を正確に検出することができる。
【0046】
(7)本発明の拍動検出装置の他の態様では、前記拍動検出装置は、前記被検体の生体情報、および被検体の運動に関する付随的情報の少なくとも一方を取得する被検体情報取得部を有し、前記放置検出部は、前記放置状態を検出したときは、前記被検体情報取得部の動作を停止させる。
【0047】
拍動検出装置が放置状態にあるにもかかわらず、脈拍数(被検体の生体情報)等や、消費カロリー(被検体の運動に関する付随的情報)等の表示(被検体への報知)のための処理が続行されると、消費電力が増大する。
【0048】
そこで、本態様では、放置検出部は、拍動検出装置の放置状態が検出されたときは、被検体情報取得部(被検体の生体情報、および被検体の運動に関する付随的情報の少なくとも一方を取得する機能をもつ)の動作を停止させる。これによって、無駄な電力消費が生じない。また、誤った情報の表示(広義には報知)も防止される。
【0049】
なお、「被検体情報取得部の動作を停止させる」ことには、例えば、情報取得動作を行わせないこと、あるいは、被検体情報取得部の電源をオフにして、動作自体ができないようにすることを含む。電源をオフする方が消費電力の削減効果が高い。
【0050】
(8)本発明の拍動検出装置の他の態様では、前記放置検出部は、前記放置状態を検出したときは、前記周波数解析部による周波数解析動作を停止させる。
【0051】
拍動検出装置が放置状態にあるときに、周波数解析を実行したとしても、有意な周波数スペクトルを得ることはできない。そこで、本態様では、放置検出部は、拍動検出装置の放置状態が検出されたときは、周波数解析部による周波数解析動作を停止させる。これによって、無駄な電力消費が生じない。また、誤った情報の表示(広義には報知)も防止される。なお、「周波数解析部の周波数解析動作を停止させる」ことには、例えば、周波数解析処理を行わせないこと、あるいは、周波数解析部の周波数解析処理を実行する部分の電源をオフにして、動作自体ができないようにすることを含む。電源をオフする方が消費電力の削減効果が高い。
【0052】
このように、本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、拍動検出装置が放置状態にあることを検出することができる。また、例えば、特別な構成を使用することなく、拍動検出装置の放置状態を高い確度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】発明の拍動検出装置の一例の構成を示す図
【図2】図2(A)および図2(B)は、脈波センサーの感度調整動作を説明するための図
【図3】ノイズ成分を多く含む脈波信号の周波数スペクトルの一例を示す図
【図4】図4(A)〜図4(C)は、脈波信号に含まれる外乱ノイズに着目した脈波信号のノイズ量の程度の評価例と、各評価例に対応する運動状態の評価例を示す図
【図5】拍動検出装置における、放置検出処理を含む処理フローの一例を示すフローチャート
【図6】放置検出処理の処理フローの一例を示すフローチャート
【図7】図7(A)および図7(B)は、図6の処理フローのステップST16において、Yと判断される例、ならびにNと判断される例を示す図
【図8】図8(A)および図8(B)は、図6の処理フローのステップST17において、Yと判断される例、ならびにNと判断される例を示す図
【図9】拍動検出装置による、脈拍の計測例を示す図
【図10】図10(A)および図10(B)は、拍動検出装置の、被検体への装着例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、図面を参照して、具体的に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0055】
(第1実施形態)
図1は、本発明の拍動検出装置の一例の構成を示す図である。図1に示される拍動検出装置100は、被検体(人や動物を含む)の拍動に由来する拍動信号、拍動信号に対応する心拍等の生体情報等を検出するセンサー装置の一種である。
【0056】
ここで、拍動とは、医学的には心臓のみならず内臓一般の周期的な収縮、弛緩が繰り返された場合に起こる運動のことをいう。ここでは、心臓が周期的に血液を送るポンプとしての動きを拍動と呼ぶ。なお、心拍数とは、1分間の心臓の拍動の数をいう。また、脈拍数は、末梢血管における脈動の数をいう。心臓が血液を送り出す際に、動脈に脈動が生じるので、この回数を数えたものを脈拍数あるいは単に脈拍と呼ぶ。腕で脈を計測する限りは、医学的には心拍数とは呼ばずに脈拍数と呼ぶのが通常である。また、以下の説明では、体動という用語が使用される。
【0057】
ここで、「体動」とは、広義には、体を動かすことすべてを意味する。体動センサー信号は、この広義の体動に由来する信号である。体動センサー信号には、被検体の周期的な体動に伴う信号成分である体動信号(定常ノイズに相当する)が含まれる。体動信号(あるいは体動成分)というときの「体動」は、「周期性のある体動」という意味の、狭義の体動である。被検体の周期的な体動は、例えば、歩行・ジョギングなどに伴う周期的、つまり定常的な腕の動き等である。
【0058】
(全体構成)
図1に示される拍動検出装置100は、拍動信号、周期性を有する定常ノイズおよび周期性を有さない非定常ノイズの少なくとも一つを含む可能性がある脈波信号dを出力する脈波センサー10と、脈波センサー感度調整部6と、脈波信号蓄積部(4秒分の脈波信号dのデータを蓄積する第1バッファメモリー13および16秒分の脈波信号dのデータを蓄積する第2バッファメモリー15を有する)12と、適応フィルター32および体動成分除去フィルター34を含むフィルター部30と、体動センサー(加速度センサーやジャイロセンサー等)20と、体動センサー信号蓄積部22と、周波数解析部50と、放置検出部70(回路状態判断部72、体動判断部74、脈波信号状態判断部76、放置状態判断部78、動作停止部82を含む)と、履歴格納部84と、被検体情報取得部(脈拍数・消費カロリー算出部)90と、表示処理部92と、表示部94と、を有する。
【0059】
周波数解析部50は、信号分配部39と、第1周波数分解部40a、第2周波数分解部40b、第3周波数分解部40cと、周波数傾向情報44を蓄積している脈波信号解析部42と、後処理部60(ピーク順ソート部62、相関判定部64、拍動/体動分離部66、拍動呈示スペクトル特定部68とを含む)と、拍動呈示スペクトル捕捉処理部80と、を有する。
【0060】
脈波センサー10は、例えば、光電脈波センサー及びその原理に基づく脈波センサーである。脈波センサー10は、拍動信号を含む可能性がある脈波信号dを出力する。脈波センサー10は、LED等の光源(図1では不図示)と、光源の出力光が、生体情報源である血管(図1では不図示)で反射して生じる反射光を受光して電気信号に変換する光電変換部2と、光電変換部2の出力信号を増幅する増幅器(可変利得アンプ)4と、を有する。脈波センサー10の感度は、増幅器4の増幅率(ゲイン)によって決定される。増幅器4のゲイン、すなわち、脈波センサー10の感度は、脈波センサー感度調整部6によって調整することができる。脈波センサー感度調整部6は、例えば、増幅器のゲインを自動調整するAGC回路(自動利得制御回路)によって構成される。以下の説明では、脈波センサー感度調整部6を、単に感度調整部6という場合がある。
【0061】
感度調整部6は、脈波センサー10への入力信号または脈波信号dの強度(レベル)に基づいて、脈波センサー10の感度(すなわち、増幅器4のゲイン)を調整する。例えば、脈波センサー10への入力信号の強度(レベル)に基づいて、脈波センサー10の感度(増幅器4のゲイン)を調整する場合には、感度調整部6は、脈波信号dのレベルが所定レベルになるように脈波センサー10の感度(増幅器4のゲイン)を調整(制御)することができる(フィードフォワード方式)。また、例えば、脈波センサー10から出力される脈波信号dの強度(レベル)に基づいて、脈波センサー10の感度(増幅器4のゲイン)を調整する場合には、感度調整部6は、脈波信号dのレベルが所定レベルになるように脈波センサー10の感度(増幅器4のゲイン)を調整(制御)することができる(フィードバック方式)。以下の説明では、フィードバック方式の回路(AGC回路)を用いる例について説明する。
【0062】
また、体動センサー20は、被検体の体動を検出し、体動に由来する体動センサー信号fを出力する。
【0063】
脈波センサー10から出力される脈波信号dの、4秒分の信号が、第1バッファメモリー13に蓄積される。4秒分の脈波信号dは、4秒周期で、第2バッファメモリー15に転送される。第2バッファメモリー15はFIFO(ファーストイン・ファーストアウト)メモリーであり、16秒分の脈波信号は、4秒分ずつ更新される。16秒分の脈波信号を蓄積するのは、周波数解析によって拍動成分を特定するとき、ある程度の時間幅で信号の推移を観測し、相関の有無等を慎重に検討する必要があるからである。
【0064】
フィルター部30は、入力信号に含まれるノイズを最小化する。また、体動成分除去フィルター34によって、例えば、脈波信号dに含まれる体動に由来する信号成分が最小化される。
【0065】
周波数解析部50は、脈波信号d、または、脈波信号dに、脈波信号に含まれるノイズを抑制するフィルタリング(フィルター部30による)を施して得られるフィルタリング後信号eに基づいて、所定時間毎(例えば4秒毎)に周波数解析を実行する。さらに、拍動信号を示す拍動呈示スペクトルを特定してもよい。
【0066】
信号分配部39は、フィルター後信号eを第1周波数分解部(高速フーリエ変換部:FFT)40aに供給し、フィルター前の脈波信号dを第3周波数分解部40cに供給する。また、体動センサー信号fは第2周波数分解部40bに供給される。
【0067】
後処理部60は、周波数スペクトルをスペクトル値の大きい順にソーティングするピーク順ソート部62と、ピーク順が上位の主要なスペクトルと、直近の過去(例えば4秒前)の拍動信号のスペクトルとの相関判定を実行する相関判定部64と、相関判定の結果を利用して拍動信号とノイズ成分とを分離する拍動/ノイズ分離部と66と、拍動/ノイズ分離処理によってノイズから分離された拍動成分のスペクトルを、拍動呈示スペクトルとして特定する拍動呈示スペクトル特定部68と、を有する。
【0068】
拍動呈示スペクトルの特定に成功すると、被検体情報取得部(脈拍数・消費カロリー算出部)90は、被検体の生態情報である脈拍数、および、被検体の運動に関する付随的情報である消費カロリーの少なくとも一方を算出する。脈拍数は、例えば、拍動呈示スペクトルの周波数に基づいて算出される。また、消費カロリーは、脈拍数に基づいて算出される。
【0069】
算出された被検体情報(脈拍数および消費カロリーの少なくとも一方)は、被検体情報取得部(脈拍数・消費カロリー算出部)90から表示処理部92を経由して表示部94に供給される。この結果、例えば、脈拍数や消費カロリーを示す数値が、表示部94によって表示される。なお、脈拍数ではなく、検出した脈の、時間軸上における変化を信号波形やグラフの形式で表示(広義には報知)してもよい。
【0070】
周波数解析部50に含まれる拍動呈示スペクトル捕捉処理部80は、例えば、後処理部60が、フィルター後信号eに基づく拍動呈示スペクトルの特定に失敗したときに動作を開始することが好ましい。拍動呈示スペクトル捕捉処理部80は、フィルタリング前の脈波信号d(フィルタリングによる信号の減衰が生じないため、フィルター後信号よりも大きな信号値をもつ)に基づいて、例えば、過去の拍動信号の周波数傾向に基づく相関判定によって、拍動呈示スペクトルの捕捉を試みる。
【0071】
脈波信号解析部42は、脈波信号dの周波数スペクトルを解析し、脈波信号dの信号状態を評価し、また、拍動信号を示す拍動呈示スペクトルの周波数傾向情報44や、周波数解析結果情報45を取得する。脈波信号dの信号状態は、例えば、脈波信号dのノイズ量の程度(脈波信号dのきれいさの程度としてもよい)に基づいて評価される。脈波信号dのノイズ量の程度は、評価指標を用いて評価することができる。評価指標としては、主要な周波数スペクトルのスペクトル値の比(例えば、後述するr5,r10という指標)や、標準偏差ならびに偏差値のような統計情報(統計指標)を用いることができる(この点については後述する)。
【0072】
放置検出部70は、感度調整部6によって調整された脈波センサー10の感度(ゲイン値)と、体動センサー20から出力される体動センサー信号fと、に基づいて、拍動検出装置100が、被検体から取り外されて放置されている放置状態にあることを検出する。
【0073】
放置検出部70は、回路状態判断部72と、体動判断部74と、脈波信号状態判断部76と、放置状態判断部78と、動作停止部82とを含む。
【0074】
回路状態判断部72は、感度調整部6によって調整された脈波センサー10の感度(ゲイン値)の情報に基づいて、回路状態(ここでは、脈波センサー10に含まれる増幅器4の状態)を判断する。
【0075】
体動判断部74は、体動センサー信号fの信号値が、体動が有ると判断できる程度に大きいか否かを判断する。
【0076】
脈波信号状態判断部76は、脈波信号dの中に、所定閾値(ここでは第1閾値)以上の信号値をもつ有意なスペクトルがあるか否かを判断する。また、脈波信号状態判断部76は、例えば、脈波信号解析部42の解析結果を参照して、脈波信号dのノイズ量の程度(例えば、ノイズ少、中程度、ノイジー)を判断する。
【0077】
放置状態判断部78は、例えば、放置状態の判断のための条件が満足されるかを調べ、放置状態/非放置状態(装着状態)の判断を行う。
【0078】
動作停止部82は、放置状態判断部78によって、拍動検出装置100が放置状態にあると判断されたときに、過去の周波数傾向情報44を破棄(例えば初期化)させることが好ましい。また、後処理部60による拍動提示スペクトルの特定処理や、拍動呈示スペクトル捕捉処理部80による拍動呈示スペクトル捕捉処理を停止させてもよい。また、被検体情報取得部90による被検体情報(脈拍数や消費カロリー)の算出処理を停止させてもよい。
【0079】
また、履歴格納部84には、特定あるいは捕捉された拍動呈示スペクトルの周波数情報や、放置/非放置を示す情報、算出された被検体情報(脈拍数や消費カロリー)が、時系列で格納されている。格納されている情報は、各部が、必要に応じて参照可能である。
【0080】
(放置検出部の動作等)
上述のように、放置検出部70は、回路の状態を示す情報である、脈波センサー感度調整部6によって調整された脈波センサー10の感度(GN)と、体動センサー20から出力される体動センサー信号fと、に基づいて、拍動検出装置100の放置状態を検出する。
【0081】
ここで、図2(A)および図2(B)を参照する。図2(A)および図2(B)は、脈波センサーの感度調整動作を説明するための図である。図2(A)は、シングル型の脈波センサーを示し、図2(B)は、ツイン型の脈波センサーを示している。
【0082】
まず、図2(A)に示される、シングル型の脈波センサー10について説明する。シングル型の脈波センサー10は、1個のセンサー構造Qを使用するタイプの脈波センサーである。
【0083】
脈波センサー10に含まれるセンサー構造Qは、例えば、LED等の光源1と、光源1の出力光L1が、被検体の所定部位(手首や指等)7における血管(生体情報源)9で反射して生じる反射光L2を受光して電気信号に変換する光電変換部(フォトダイオード:PD)2と、ドーム状の反射面3と、光透過性を有する基板(例えばガラス基板)5と、を有する。
【0084】
光電変換部(PD)2の出力信号は、増幅器(例えば可変利得アンプ)4によって増幅される。脈波センサー10の感度GNは、増幅器4の増幅率(ゲイン)によって決定される。増幅器4のゲイン、すなわち、脈波センサー10の感度GNは、脈波センサー感度調整部(感度調整部)6によって調整する。感度調整部6は、例えば、増幅器4のゲインGNを自動調整するAGC回路(自動利得制御回路)によって構成される。感度調整部6は、脈波センサー10の出力信号である脈波信号dのレベルが所定レベル(例えば一定)になるように、増幅器4のゲインGNを自動調整する。
【0085】
拍動検出装置100が被検体に装着されて、拍動検出処理が実行されている状態では、感度調整部6によって調整(設定)される感度(GN)は、血管9からの反射光L2を受光して生じる電気信号の大きさに対応した範囲内の値となっている。
【0086】
これに対して、拍動検出装置100が、被検体から取り外されて放置されている場合、感度は、通常の計測時に生じる範囲(許容範囲)から外れた値となっている可能性が高い。
【0087】
すなわち、拍動検出装置100が、例えば、机上に放置されているとき、室内の照明光や窓等から差し込む室外の光(これらを総称して外光L3ということができる)が、脈波センサーに入射することがある。外光L3は直接に拍動検出装置に入射されるが、拍動検出に使用される光は、血管で反射した反射光L2(散乱光でもあり、間接的に入射される光)である。よって、直接光である外光L3のレベルは、拍動検出に使用される反射光L2のレベルに比べて高いと考えられる。この場合には、増幅器4のゲイン(脈波センサー10の感度GN)は、脈波信号dのレベルが大きくなり過ぎないように、十分に小さい値に調整される、例えば、最小のゲイン付近に調整される可能性がある。
【0088】
また、拍動検出装置100が、例えば、机の引き出しや鞄の中に収納されているような場合、外光L3はほとんど遮断されていることから、外光L3のレベルは零に近い。つまり、この場合には、外光のレベルが、拍動検出に使用される反射光のレベルに比べて十分に低い状態となる。この場合には、増幅器4のゲイン(脈波センサー10の感度GN)は、脈波信号dのレベルを所定のレベルにするために、十分に大きな値に調整される可能性、例えば、最大のゲイン付近に調整される可能性がある。
【0089】
つまり、拍動検出装置が放置状態にあるとき、脈波センサーに入射する光の強度(光のレベル)は、通常の検出処理時にはあり得ない範囲の強度(レベル)となる可能性がある。このとき、感度(GN)も、通常の計測時に生じる範囲(許容範囲)から外れた値となっている。よって、脈波センサー感度調整部によって設定された、脈波センサーの感度は、拍動検出装置の放置状態を検出するための有力な情報として使用することができる。
【0090】
次に、図2(B)に示される、ツイン型の脈波センサーについて説明する。ツイン型の脈波センサーによれば、外光の影響を除去できるという効果が得られる。ツイン型の脈波センサーでは、図2(A)に示されるセンサー構造Qを2個、使用する。
【0091】
図2(B)に示されるツイン型の脈波センサー10におけるセンサー構造Qa,Qbは、図2(A)に示されるセンサーと同じ構造を有しており、構成要素には、同じ参照符号を付してある。但し、2個のセンサー構造(第1センサー構造Qa,第2センサー構造Qb)を区別する必要があることから、参照符号にはaとbの添え字を付している。なお、第2センサーQbにはLED1bはなくてもよい。
【0092】
図2(B)のツイン型の脈波センサー10では、血管9aの表面からの反射光L2aを受光するのは、第1センサー構造Qaのみである。第2センサー構造Qbは、外光L3bのみを受光する。また、図2(B)に示される脈波センサーでは、増幅器4として、差動増幅器が使用されている。第1センサー構造Qaの出力信号と第2センサー構造Qbの出力信号は、差動増幅器4の各入力端子に入力される。このとき、各入力信号に含まれる外光L3に対応するノイズ成分は相殺されて除去される。
【0093】
拍動検出装置100が、例えば、机上に放置されているとき、第1センサー構造Qaおよび第2センサー構造Qbに、かなり強い外光L3a、L3bが入射するものとする。この場合、増幅器(差動増幅器)4から出力される脈波信号dのレベルは、差動構成による外光成分の相殺の効果によってほとんど零になることから、感度調整部6は、脈波信号dのレベルを増大させようとし、この結果、増幅器4のゲイン(脈波センサー10のGN)は、十分に大きな値に調整される可能性、例えば、最大のゲイン付近に調整される可能性が高い。拍動検出装置100が、例えば、机の引き出しの中や鞄の中に放置されているとき(外光L3のレベルが零に近いとき)も同様である。すなわち、脈波信号dのレベルは、差動構成による外光成分の相殺の効果によってほとんど零になることから、感度調整部6は、脈波信号dのレベルを増大させようとし、この結果、増幅器4のゲイン(脈波センサー10の感度)は、十分に大きな値に調整される可能性、例えば、最大のゲイン付近に調整される可能性が高い。
【0094】
このように、拍動検出装置が放置状態にあるとき、脈波センサー10の感度(GN)は、通常の計測時に生じる範囲(許容範囲)から外れた値となっている可能性が高く、よって、感度調整部6によって設定された、脈波センサー10の感度(GN)は、拍動検出装置の放置状態を検出するための有力な情報として使用することができる。
【0095】
ここで、脈波センサー感度(GN)が、例えば、最大付近の値となっているときに、何らかの理由で外光L3に変化が生じて、光電変換部PDからノイズが出力されたとする。この場合、このノイズは、高ゲインの増幅器4で増幅されることから、脈波信号dには、ある程度大きなノイズ成分が含まれることになる。
【0096】
この脈波信号dを、周波数解析部50に含まれる脈波信号解析部42によって解析したとき、例えば、この脈波信号dに、偶然、過去の拍動信号と類似する周波数成分が含まれていた場合、ノイズと拍動信号との峻別がむずかしくなる。
【0097】
図3は、拍動検出処理が実行されている状態のまま、拍動検出装置を被検体から取り外して机上に放置した場合の脈波信号および周波数スペクトルの一例を示す図である。図3の上側には、16秒間のFFT前の脈波信号dの信号波形が示されている。横軸は時間を示し、縦軸は信号の振幅を示す。また、下側には、0から4Hzの周波数帯域における周波数スペクトルが示されている。横軸は周波数を示し、縦軸は信号値(スペクトル値)を示す。
【0098】
図3において、周波数スペクトルS1が、ノイズ成分の内の、過去の拍動信号と類似する周波数成分のスペクトルである。本実施形態では、放置検出部70が拍動検出装置の放置を検出し、例えば、動作停止部82が後処理部60の動作を停止させる。よって、図3における周波数スペクトルS1が、拍動呈示スペクトルと判断されることがない。
【0099】
また、拍動検出装置100が放置状態にあるとき、体動センサー20から出力される体動センサー信号(被検体の体動由来の信号)のレベルは、零とみなせる範囲内のレベルである可能性が高い(体動がないため)。
【0100】
よって、本実施形態では、放置検出部70は、脈波センサー10の感度(感度GNの値)と、体動センサー信号fとに基づいて、拍動検出装置100の放置状態を判断することとした。例えば、感度が、通常の計測時に生じる範囲(許容範囲)から外れた値となっており、かつ、体動センサー信号fのレベルが、零とみなせる範囲内のレベル(つまり、体動無しとみなし得るレベル)であるとき、放置検出部70は、拍動検出装置100は放置状態にあると判断することができる。
【0101】
なお、体動センサー信号fのレベルが、零とみなせる範囲内のレベルであるか否かは、周波数分解(FFT)前の体動センサー信号fの信号値に基づいて判断することができ、また、体動センサー信号fを周波数分解(FFT)して得られる周波数スペクトルに基づいて判断することもできる。例えば、被検体が周期的な運動をしているのであれば、FFTの結果として得られる周波数スペクトルにおいて、体動信号に相当する大きなスペクトルが現れる。
【0102】
このように、本実施形態の放置検出部70は、回路の状態を示す情報である、脈波センサー感度調整部6によって調整された脈波センサー10の感度を参照し、さらに、体動センサー信号fの大きさの情報を併用して放置状態を判断することから、確度の高い放置状態の判断が可能である。また、特別な構成(例えば、装置本体への押圧力を検出したり、アース電位を検出したりする構成)を使用しないことから、拍動検出装置100の構造が複雑化しない。また、拍動検出装置100を小型化でき、ユーザビリティの高い拍動検出装置100が実現される。
【0103】
また、放置検出部70は、脈波センサー10の感度、体動センサー信号fの大きさに加えて、さらに、周波数解析部50(具体的には、脈波信号解析部42)による、脈波信号dの周波数解析の結果を参照して、拍動検出装置100の放置状態を判断してもよい。これにより、放置検出の精度が向上する。脈波信号解析部42による、脈波信号dの周波数解析の結果に基づく放置状態の可能性の判断は、例えば、放置検出部70に含まれる脈波信号状態判断部76によって実行される。
【0104】
拍動検出装置100が被検体に装着されていて、例えば、被検体が定常的な運動状態にあるとき、脈波センサー10から出力される脈波信号dには、被検体の拍動に由来する拍動信号、ならびに被検体の体動に由来する信号成分が含まれる可能性が高い。
【0105】
脈波信号dを周波数分解して周波数スペクトルを解析したとき、周期性のある信号は、周波数軸上での特定の周波数位置に現れる。よって、例えば、所定の閾値(ここでは第1の閾値とする)よりも信号値が大きい周波数スペクトルが存在するときは、脈波信号状態判断部76は、拍動検出装置100が非放置状態にあると判断する。
【0106】
また、信号値が大きな拍動信号と信号値が大きな体動センサー信号とが併存している周波数スペクトルは、例えば、被検体が定常的(周期的)な運動状態(例えば、被検体が腕を規則的に振りながら一定のピッチでウォーキングしている状態)にあるときに現れる。つまり、この場合の体動センサー信号には、被検体の定常的な運動に由来する特徴的な体動信号が含まれることから、大きな体動センサー信号が観測される。よって、第1の閾値よりも信号値が大きい複数の信号が併存している周波数スペクトルが現れたときは、脈波信号状態判断部76は、拍動検出装置100が非放置状態にあると判断する。
【0107】
一方、脈波信号dの周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルを第1の閾値と比較した結果、信号値が所定の閾値を超えるスペクトルが無い場合、すなわち、被検体の拍動や運動状態についての有効な情報をもつスペクトル(有意なスペクトル)がないときは、脈波信号状態判断部76は、拍動検出装置100は放置状態にあると判断する。
【0108】
このように、周波数解析部50(具体的には、脈波信号解析部42)による、脈波信号の周波数解析の結果も参照して放置状態を判断することによって、放置状態判断部78による、放置状態/非放置状態の判断の精度を高めることができる。
【0109】
放置検出部70に含まれる放置状態判断部78は、上述の複数の条件が満たされるか否かという観点から、拍動検出装置100の放置/非放置を、総合的に判断する。
【0110】
例えば、放置検出部70は、脈波センサー10の感度が、拍動信号が検出されているときに取り得る許容範囲の外の値であり、体動センサー20から出力される体動センサー信号fのレベルが、被検体の体動が無いと判断される範囲内にあり、かつ、脈波信号dの周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに第1の閾値以上のスペクトルが無い場合に、拍動検出装置100は放置状態にあると判断してもよい。この場合、特別な構成を使用することなく、拍動検出装置100の放置状態を高い確度で検出することができる。
【0111】
また、拍動検出装置100の放置状態の検出に際して、上述の、「脈波信号の周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに第1の閾値以上のスペクトルが無い」という条件を、「脈波信号の周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに基づいて、脈波信号のノイズ量の程度を、例えばノイズ少、中程度ならびにノイジーに分類したとき、中程度またはノイジーに分類される」という条件に置換することもできる。
【0112】
脈波信号dのノイズ量の程度が「ノイズ少」と判断される場合としては、例えば、被検体が定常的(周期的)な運動状態(例えば、規則的な腕振りをしながらウォーキングをしている)にあるときが該当する。
【0113】
脈波信号dのノイズ量の程度が「中程度(まあまあ)」と判断される場合としては、例えば、被検体が定常的運動をしている(例えば、規則的な腕振りをしながらウォーキングをしている)が、手首を不規則に動かす等の非周期的な運動も行っているときが該当する。このような場合の周波数スペクトルは、「所定閾値よりも信号値が大きな拍動信号および体動センサー信号が併存し、さらに、外乱ノイズが周波数軸上で広範囲にわたって存在する」というようなスペクトルとなる。
【0114】
脈波信号dのノイズ量の程度が「ノイジー」と判断される場合は、例えば、被検体が、不規則な体操やバスケットボール等の球技を行っているときが該当する。この場合、例えば、脈波信号の周波数スペクトルにおいて、周波数軸上の広範囲な位置に、外乱ノイズ判断用の所定閾値を超える信号値をもつ外乱ノイズが現れることが多い。
【0115】
なお、脈波信号dのノイズ量の程度の評価と、被検体の運動状態との関係については、図4を用いて後述する。
【0116】
上記の3分類の中で、少なくとも、脈波信号dの状態が「ノイズ少」である場合は、拍動検出装置100は、被検体に装着され、非放置である可能性が極めて高い。但し、脈波信号dの状態が「中程度」あるいは「ノイジー」の場合は、「拍動検出装置100が放置状態で、かつ、何らかの理由で大きなノイズが生じた場合」も想定できる。
【0117】
よって、放置検出部70は、脈波センサー10の感度(GN)が、拍動信号が検出されているときに取り得る許容範囲の外の値であり、体動センサーから出力される体動センサー信号fのレベルが、被検体の体動が無いと判断される範囲内にあり、かつ、脈波信号のノイズ量の程度が、中程度またはノイジーに分類される場合に、拍動検出装置100は放置状態にあると判断することが好ましい。なお、脈波信号dのノイズ量の程度は、例えば、主要なスペクトルの中から選ばれる2本のスペクトルの信号値の比や、統計情報(標準偏差と偏差値等)を指標として用いて判断することができる。
【0118】
脈波信号dの信号状態も考慮して放置/非放置の判断を行うことで、特別な構成を使用することなく、拍動検出装置の放置状態を、より高い確度で検出することができる。また、放置検出部70は、被検体が、例えば、安静状態(非定常運動要素無し)にあるときと、拍動検出装置が放置状態にあるときとを区別することができる。
【0119】
ここで、図4(A)〜図4(C)を参照する。図4(A)〜図4(C)は、脈波信号に含まれる外乱ノイズに着目した脈波信号のノイズ量の程度の評価例と、各評価例に対応する運動状態の評価例を示す図である。
【0120】
図4(A)〜図4(C)において、上側には、16秒間のFFT前の脈波信号dの信号波形が示されている。横軸は時間を示し、縦軸は信号の振幅を示す。また、下側には、0から4Hzの周波数帯域における周波数スペクトルが示されている。横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル値を示す。
【0121】
脈波信号のノイズ量の程度の評価は、評価指標を用いて評価することができる。例えば、脈波信号dの周波数分解によって得られる周波数スペクトルのうちの、最大のスペクトル値を示す第1スペクトルと、第1スペクトル以外の、少なくとも1つの第2スペクトルとのスペクトル値の比であるスペクトル比を算出し、これを評価指標とすることができる。
【0122】
図4(A)〜図4(C)の例では、外乱ノイズ量の程度を推定する指標として、主要な周波数スペクトルのスペクトル値の比(つまり、基線の高さの比)を用いる。具体的には、r5およびr10という指標を用いる(ただし、一例であり、他の統計的指標、例えば、標準偏差等を用いてもよい)。ここで、r5とは、16秒分の脈波信号の周波数スペクトルの中から、ピーク値の大きさの順に5本のスペクトルを並べたとき(つまり、ソーティングしたとき)、第1番目のスペクトルのスペクトル値(パワー)を分母とし、第5番目のスペクトルのスペクトル値(パワー)を分子とすることによって得られる指標である。
【0123】
また、r10とは、16秒分の脈波信号の周波数スペクトルの中から、ピーク値の大きさの順に10本のスペクトルを並べたとき(つまりソーティングしたとき)、第1番目のスペクトルのスペクトル値(パワー)を分母とし、第10番目のスペクトルのスペクトル値(パワー)を分子とすることによって得られる指標である。指標r5,r10は、例えば、脈波信号解析部42によって取得される。
【0124】
脈波信号解析部42は、脈波信号dの周波数解析結果に基づいて、指標r5およびr10を算出し、指標r5、r10を所定の閾値と比較し、その比較結果によって、脈波信号dのノイズ量の程度を評価し、この評価の結果、図4(A)〜図4(C)のように、脈波信号dの状態を判別する。
【0125】
ここでは、一例として、r5<0.5かつr10<0.2のときをノイズ少(脈波信号のきれいさの程度がきれい)とし、r5>0.7かつr10>0.5のときをノイズ多(ノイジー)とし、上記いずれでもない場合をノイズが中程度(まあまあ)とする。
【0126】
図4(A)の例では、r5=0.14かつr10=0.08であることから、外乱ノイズ少(きれい)と判断される。また、図4(B)の例では、r5=0.56かつr10=0.35であることから、外乱ノイズが中程度(まあまあ)と判断される。図2(C)の例では、r5=0.82かつr10=0.62であることから、ノイズ多(ノイジー)と判断される。
【0127】
図4(A)〜図4(C)の各々の比較から明らかなように、脈波信号dの波形と周波数スペクトルとは密接に関連しており、脈波信号dの波形に対応して、周波数スペクトルの分布状態やスペクトル値が変化する。よって、FFTによって得られる周波数スペクトルに基づいて、脈波信号dに重畳する外乱ノイズの状態(外乱ノイズ量の程度)を推定(評価)することが可能である。
【0128】
また、被検体の運動状態も、上述の指標r5、r10を用いて推定することができる。被検体の運動状態によって脈波信号dの波形が変化すると、その変化は、周波数スペクトルの変化となって現れ、周波数スペクトルの変化は、指標r5,r10に反映されるからである。
【0129】
例えば、図4(A)の例では、被検体は、定常的運動状態(非定常運動要素無し)、あるいは、安静状態(非定常運動要素無し)と判断される。例えば、被検体が一定のピッチで歩行しており、かつ、手首をランダムに動かすといった非周期的な動作をしていない場合が該当する。また、安静状態(非定常運動要素無し)の場合としては、被検体がベッドに横になっており、かつ、手首をランダムに動かすような非周期的な動作をしていない場合が考えられる。
【0130】
図4(B)の例では、被検体は、定常的運動状態(非定常運動要素有り)、あるいは、安静状態(非定常運動要素有り)と判断される。定常的運動状態(非定常運動要素有り)の場合としては、例えば、被検体が一定のピッチで歩行しており、かつ、手首をランダムに動かすといった非周期的な動作をしている場合が考えられる。また、安静状態(非定常運動要素有り)の場合としては、被検体がベッドに横になっているが、手首をランダムに動かしている場合が考えられる。
【0131】
図4(C)の例では、被検体は、非定常的運動状態と判断される。被検体が周期性をもたない動作を行っている場合であり、例えば、被検体が体操をする、被検体がバスケットボールをする、といった場合が該当する。
【0132】
このように、脈波信号dのノイズ量の程度の評価(信号状態の評価)に基づいて、被検体の運動状態を判断してもよい。
【0133】
次に、一旦、放置状態が検出された後、その後、放置状態が解除されたか否かを判断する例、すなわち、放置状態が解除されたことの判断の例について説明する。
【0134】
放置検出部70は、所定時間毎(例えば4秒毎)に放置検出を実行する。ここで、前回の検出処理によって放置状態と判断され、かつ今回の検出処理によって非放置状態と判断された場合を想定する。このとき、直ちに放置状態が解除された(放置状態から装着状態に移行した)と判断するのは、判断を誤る可能性が高い。
【0135】
例えば、拍動検出装置100が机上に放置されている状態において、近くを人が通過したことによって、脈波センサー10に入射する光の強度が偶然、変動し、あたかも拍動検出装置100が被検体に装着されたかに見える場合もあり得る。
【0136】
したがって、一旦、放置状態であると判断され、次に、非放置状態(装着状態)と判断されたときは、放置検出部70は、さらに、追加の条件による判断を実行することが好ましい。例えば、「脈波信号dの周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに所定の閾値(ここでは第2の閾値)以上の(大きさの)スペクトルが有るか否か」を調べ、有る場合には非放置状態と判断し、無い場合には放置状態と判断することが好ましい。
【0137】
このように、放置状態が解除されたことの判断に際して、条件を加重し、より慎重に判断することによって、判断を誤る可能性が低減される。
【0138】
次に、放置検出部70によって、放置状態が検出されたときに取り得る対策について説明する。
【0139】
拍動信号の検出は、過去の周波数解析結果や、過去の拍動信号の周波数傾向等に基づいて行われる。この点を考慮して、放置検出部70は、今回の検出によって拍動検出装置100の放置状態が検出されると、脈波信号解析部42に蓄積されている、過去の脈波信号dの周波数解析結果情報45および脈波信号dの周波数解析に使用される拍動信号の周波数の傾向を示す情報(周波数傾向情報)44の少なくとも一方を破棄させる(例えば初期化させる、情報を削除する等)ことが好ましい。より好ましくは、双方の情報44,45を破棄させるのがよい。
【0140】
これによって、放置されていた拍動検出装置100が、被検体に再び装着された場合、拍動検出装置100は、例えば初期状態から拍動検出処理を開始することができる。よって、拍動信号を正確に検出することができる。
【0141】
また、放置検出部70は、拍動検出装置100の放置状態が検出されたときは、被検体情報取得部(脈拍数・消費カロリー算出部:被検体の生体情報、および被検体の運動に関する付随的情報の少なくとも一方を算出する機能をもつ)の動作を停止させてもよい。これによって、無駄な電力消費が生じない。また、誤った情報の表示(広義には報知)も防止される。
【0142】
なお、「被検体情報取得部の動作を停止させる」ことには、例えば、情報取得動作を行わせないこと、あるいは、被検体情報取得部90の電源をオフにして、動作自体ができないようにすることを含む。電源をオフする方が消費電力の削減効果が高い。
【0143】
また、拍動検出装置100が放置状態にあるときに、周波数解析を実行したとしても、有意な周波数スペクトルを得ることはできない。そこで、放置検出部70は、拍動検出装置100の放置状態が検出されたときは、周波数解析部50による周波数解析動作を停止させることが好ましい。これによって、無駄な電力消費が生じない。また、誤った情報の表示(広義には報知)も防止される。なお、「周波数解析部の周波数解析動作を停止させる」ことには、例えば、周波数解析処理を行わせないこと、あるいは、周波数解析部50の周波数解析処理を実行する部分の電源をオフにして、動作自体ができないようにすることを含む。電源をオフする方が消費電力の削減効果が高い。
【0144】
図1の例では、拍動検出装置の放置状態が検出されたとき、放置検出部70に含まれる動作停止部82が、後処理部60、拍動呈示スペクトル捕捉処理部80ならびに被検体情報取得部(脈拍数・消費カロリー算出部)90の動作を停止させる。
【0145】
次に、拍動検出装置100の、放置検出処理を含む処理フローについて説明する。図5は、拍動検出装置における、放置検出処理を含む処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0146】
まず、脈波センサー10によって、脈波信号dが取得される(ステップST1)。次に、脈波信号dに対して、フィルター部30によってフィルタリング処理が施される(ステップST2)。次に、周波数解析部50によって周波数解析処理が実行される(ステップST3)。具体的には、拍動呈示スペクトルを検出するための処理(拍動呈示スペクトル特定処理や拍動呈示スペクトルの捕捉処理)が実行される。
【0147】
次に、放置検出部70による放置検出処理が実行される(ステップST4)。ステップST4においてNのときは、被検体情報取得部90によって、被検体情報の取得処理(脈拍数や消費カロリーの算出処理等)が実行され(ステップST5)、続いて、被検体情報が表示(報知)される(ステップST6)。
【0148】
また、ステップST4でYのときは、周波数解析処理(拍動呈示スペクトル特定処理や拍動呈示スペクトルの捕捉処理)が停止され、また、被検体情報(脈拍数や消費カロリー
)の取得処理が停止される(ステップST7)。続いて、周波数解析結果(過去の周波数解析情報)が破棄(初期化等)される(ステップST8)。続いて、脈波信号周波数解析用の周波数傾向情報(周波数トレンド情報)が破棄(初期化等)される(ステップST9)。
【0149】
次に、放置検出処理の処理フローについて説明する。図6は、放置検出処理の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0150】
まず、放置検出部70に含まれる回路状態判断部72が、脈波センサー10の感度を取得する(ステップST10)。次に、放置検出部70に含まれる放置状態判断部78は、前回(所定時間、例えば4秒前)の検出にて、放置状態と判定されているかを判断する(ステップST11)。ステップST11の判断結果に応じて、感度の大きさを判断するための閾値のレベルを変更する。閾値のレベルとしては第1レベルと第2レベルとがある(第1レベル<第2レベルである)。
【0151】
すなわち、ステップST11において、Yのときは感度の大きさを判断するための閾値を、第1レベルに設定し(ステップST12)、Nのときは閾値を、第2レベル(第2レベル>第1レベル)に設定する(ステップST13)。ステップST11にてYのときは、次のステップにて、放置状態が継続しているか否かの判断が必要となる。よって、より慎重に判断するのが好ましい。よって、ステップST11において、Yのときは、閾値のレベルを引き下げて、次のステップST14の判断にて、脈波センサーの感度が、何らかの原因で多少、変動したとしても、その変動に追従することなく、確実に放置状態と判断できるようにしている。
【0152】
上述のとおり、拍動検出装置100が放置状態にあるとき、脈波センサー10の感度(GN)は、通常計測時にはとり得ない範囲の値となっている可能性が高い。特に、感度が最大付近であるときには、増幅器4のゲインが高いことから、ノイズが大きく増幅され、誤検出の可能性が高まる。よって、ステップST14は、脈波センサー10の感度が、閾値を超えているか、つまり、感度(増幅器4のゲイン値)が、通常の範囲外の大きい値となっているかを検出する。なお、ST14に図示していないが、感度(増幅器4のゲイン値)が、通常の範囲外の小さい値となっているかを検出してもよい。
【0153】
ステップST14にて、Yのときは、放置状態である可能性があるため、次に、放置検出部70に含まれる脈波信号状態判断部76は、脈波信号dのノイズ量の程度に基づく判断を実行し、脈波信号dの状態が、「ノイズ少」以外であるか、を判断する(ステップST15)。Yならば、放置状態である可能性があるため、次に、脈波信号状態判断部76は、脈波信号dのFFT結果(周波数スペクトル)に、所定閾値(脈波信号の状態判断のための閾値)以上のスペクトルが存在しないか、を判断する(ステップST16)。Yならば、放置状態である可能性があるため、次に、放置検出部70に含まれる体動判断部74は、体動センサー20(ここでは加速度センサーであるとする)から得られる体動センサー信号(つまり加速度信号)fのふれ幅(振幅あるいは信号値(スペクトル値))が、所定閾値(加速度信号の大きさ判断のための閾値)よりも小さいかを判断する(ステップST17)。加速度信号として、X軸方向加速度信号、Y軸方向加速度信号ならびにZ軸方向加速度信号が含まれる場合には、例えば、3つの加速度信号がすべて、閾値より小さいかを判断することができる。
【0154】
ステップST17で、Yならば、放置検出部70に含まれる放置状態判断部78は、拍動検出装置100は放置状態にあると判断する(ステップST18)。
【0155】
また、ステップST14〜ステップST17のいずれかでNの場合、放置状態判断部78は、拍動検出装置100は非放置状態(装着状態)にあると判断する(ステップST19)。なお、以上の処理フローは一例であり、これに限定されるものではない。
【0156】
図7(A)および図7(B)は、図6の処理フローのステップST16において、Yと判断される例、ならびにNと判断される例を示す図である。
【0157】
図7(A)および図7(B)において、上側には、16秒間のFFT前の脈波信号dの信号波形が示されている。横軸は時間を示し、縦軸は信号の振幅を示す。また、下側には、0から4Hzの周波数帯域における周波数スペクトルが示されている。横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル値を示す。
【0158】
上述のとおり、図6の処理フローのステップST16では、脈波信号状態判断部76は、脈波信号dのFFT結果(周波数スペクトル)に、所定閾値(脈波信号の状態判断のための閾値)以上のスペクトルが存在しないか、を判断する。図7(A)および図7(B)の例では、この所定閾値として、Vth1を使用している。図7(A)の例では、閾値Vth1を超える信号値(スペクトル値)をもつスペクトルは存在しない。これに対して、図7(B)の例では、閾値Vth1を超える信号値(スペクトル値)をもつスペクトルS2が存在する。したがって、図7(A)の例では、図6の処理フローのステップST16において、Yと判断される。また、図7(B)の例では、ステップST16において、Nと判断される。
【0159】
図8(A)および図8(B)は、図6の処理フローのステップST17において、Yと判断される例、ならびにNと判断される例を示す図である。
【0160】
図8(A)および図8(B)において、上側には、16秒間のFFT前の体動センサー信号fの信号波形が示されている。横軸は時間を示し、縦軸は信号の振幅を示す。また、下側には、0から4Hzの周波数帯域における周波数スペクトルが示されている。横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル値を示す。
【0161】
上述のとおり、図6の処理フローのステップST17では、放置検出部70に含まれる体動判断部74は、体動センサー20(ここでは加速度センサーであるとする)から得られる体動センサー信号(つまり加速度信号)fのふれ幅(振幅あるいは信号値(スペクトル値))が、所定閾値(加速度信号の大きさ判断のための閾値)よりも小さいかを判断する。
【0162】
図8(A)および図8(B)の例では、この所定閾値として、Vth2を使用している。図8(A)の例では、閾値Vth2を超える信号値(スペクトル値)をもつスペクトルは存在しない。これに対して、図8(B)の例では、閾値Vth2を超える信号値(スペクトル値)をもつスペクトルS3、S4およびS5が存在する。したがって、図8(A)の例では、図6の処理フローのステップST17において、Yと判断される。また、図8(B)の例では、ステップST17において、Nと判断される。
【0163】
次に、拍動検出装置による、脈拍の計測例について説明する。図9は、拍動検出装置による、脈拍の計測例を示す図である。図9の横軸は、計測開始からの経過時間を示し、縦軸は、計測された脈拍数(回/分)を示す。
【0164】
図9の例では、被検体(ユーザー)が手首に拍動検出装置100を装着し、計測開始後20秒経過時点から歩行(ウォーキング)を開始する。この歩行は、計測開始後164秒まで継続される。次に、被検体は、拍動検出装置100を手首から取り外し、机上に放置する。すなわち、計測開始後、164秒〜444秒までの期間は、拍動検出装置100が放置状態になっている期間である。この期間中、被検体は動かず、起立状態を維持する。
【0165】
計測開始後444秒が経過した時点で、被検体は、再び拍動検出装置100を手首に装着する。再装着時は、被検体は動いておらず、起立した状態である。
【0166】
図9の例では、放置検出部70が放置検出処理を行う場合において計測される脈拍数の推移が実線で示されている。また、放置検出部70が放置検出処理を行わない場合(比較例)において計測される脈拍数の推移が波線で示されている。拍動信号に基づく脈拍数の検出は、4秒毎に(つまり4秒に1回)実行され、放置検出部70による放置検出処理も、同様に4秒毎に行われる。
【0167】
図9において、脈拍数が零(脈拍数=0)である箇所が存在する。脈拍数が零であるということは、脈拍数が算出されなかったことを意味する。この原因としては、脈波信号dの周波数解析結果、例えば、拍動信号に対応した有意な信号スペクトルがあるとは認められず、拍動検出に失敗したことが考えられ、あるいは、放置検出の結果として、脈拍数の算出処理が停止されたことが考えられる。
【0168】
図9の例では、放置検出部70が、放置検出を行わないとき(比較例の場合)、拍動検出装置100が放置状態となっている期間(計測開始後164秒〜444秒の期間)のほとんどで、脈拍数が計測されている。すなわち、105〜115程度の脈拍数が計測され続けている。当然のことながら、この脈拍数は誤った脈拍数であり、計測の意味は失われている。放置状態であっても、周波数解析部50が、拍動信号の、過去の周波数傾向情報を参照するなどして、拍動信号の検出処理を続行することから、このような結果となった。
【0169】
一方、放置検出部70が放置検出処理を実行する場合には、拍動検出装置100が放置状態となっている期間(計測開始後164秒〜444秒の期間)では、脈拍数は零となっている。また、計測開始後444秒が経過した時点で、被検体が再び拍動検出装置100を手首に装着すると、拍動検出装置100は、起立状態の被検体の脈拍数(約80)を正しく計測している。比較例では、計測開始後444秒が経過した時点で、105〜115程度の脈拍数を計測しており、正しい脈拍数を計測できていない。
【0170】
上述のとおり、放置検出部70によって、放置状態と判断された場合、過去の周波数解析結果や、拍動信号の周波数傾向情報は破棄される。よって、被検体が再び拍動検出装置100を手首に装着したとき(計測開始後444秒が経過したとき)、拍動検出装置100は、例えば、初期状態から脈拍数の検出を開始でき、よって、過去の誤った情報に追従することなく、正しい脈拍数を計測することができる。
【0171】
このように、本実施形態によれば、例えば、拍動検出装置が放置状態にあることを検出することができる。また、例えば、特別な構成を使用することなく、拍動検出装置の放置状態を高い確度で検出することができる。
【0172】
例えば、本実施形態の拍動検出装置100は、被検体が安静/就寝中のときと、拍動検出装置100が放置されているときとを区別できることから、確度の高い放置検出(放置/非放置の判断)が可能である。
【0173】
また、放置状態が継続されているときに、例えば、拍動検出装置100に入射する外光の強度が変動してノイズが入力された場合に、放置検出部70は、放置状態が解除されたか否かを慎重に判断する(例えば、脈波信号の解析結果等を加味して判断する)ことから、誤った判断(装着状態への復帰判断)がなされる可能性が低減される。
【0174】
また、拍動検出装置100が放置状態にあるときは、脈拍数や消費カロリーの算出(被検体情報の取得)や表示を停止することから、誤った計測結果の表示が防止され、また、拍動検出装置100の省電力化が実現される。拍動検出装置100が省電力化されれば、拍動検出装置100を用いた、より長時間の連続した脈拍検出等が可能となる。
【0175】
図10(A)および図10(B)は、拍動検出装置の、被検体への装着例を示す図である。
【0176】
図10(A)の例は、腕時計型の拍動検出装置の例である。脈波センサー10および表示部94を含むベース部400は、リストバンド300によって、被検体(ユーザー)の左手首200に装着されている。
【0177】
図10(B)の例は、指装着型の拍動検出装置の例である。被検体の指先に挿入するためのリング状のガイド302の底部に、脈波センサー10が設けられている。
【0178】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0179】
6 脈波センサー感度調整部、10 脈波センサー、
11 体動センサー(加速度センサーやジャイロセンサー等)、
12 脈波信号蓄積部、30 フィルター部、34 体動成分除去フィルター、
40(40a〜40c) 周波数分解部、42 脈波信号解析部、
44 周波数傾向情報、45 周波数解析結果情報、50 周波数解析部、
60 後処理部、62 ピーク順ソート部、64 相関判定部、
66 拍動/体動分離部(拍動/ノイズ分離部)、68 拍動呈示スペクトル特定部、
70 放置検出部、72 回路状態判断部、74 体動判断部、
76 脈波信号状態判断部、78 放置状態判断部、
80 拍動呈示スペクトル捕捉処理部、82 動作停止部、84 履歴格納部、
90 被検体情報取得部(脈拍数・消費カロリー算出部)、92 表示処理部、
94 表示部、100 拍動検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の拍動に由来する拍動信号を検出する拍動検出装置であって、
前記拍動信号を含む可能性がある脈波信号を出力する脈波センサーと、
前記脈波センサーへの入力信号または前記脈波信号の強度に基づいて、前記脈波センサーの感度を調整する脈波センサー感度調整部と、
前記被検体の体動を検出し、前記体動に由来する体動センサー信号を出力する体動センサーと、
前記脈波センサー感度調整部によって調整された前記脈波センサーの感度と前記体動センサーから出力される前記体動センサー信号とに基づいて、前記拍動検出装置が前記被検体から外されている放置状態を検出する放置検出部と、
を有することを特徴とする拍動検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の拍動検出装置であって、さらに、
前記脈波信号、または、前記脈波信号に、前記脈波信号に含まれるノイズを抑制するフィルタリングを施して得られるフィルタリング後信号に基づいて、所定時間毎に周波数解析を実行する周波数解析部を有し
前記放置検出部は、前記脈波センサー感度調整部によって調整された前記脈波センサーの感度と前記体動センサーから出力される前記体動センサー信号と前記周波数解析部による前記脈波信号の周波数解析の結果とに基づいて、前記放置状態を検出することを特徴とする拍動検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の拍動検出装置であって、
前記放置検出部は、
前記脈波センサー感度調整部によって調整された前記脈波センサーの感度が、前記拍動信号が検出されているときに取り得る許容範囲の外の感度であり、
前記体動センサーから出力される前記体動センサー信号のレベルが、前記被検体の体動が無いと判断される範囲内にあり、
かつ、前記脈波信号の周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに第1の閾値以上のスペクトルが無い場合に、前記放置状態と判断することを特徴とする拍動検出装置。
【請求項4】
請求項2記載の拍動検出装置であって、
前記放置検出部は、
前記脈波センサー感度調整部によって調整された前記脈波センサーの感度が、前記拍動信号が検出されているときに取り得る許容範囲の外の感度であり、
前記体動センサーから出力される前記体動センサー信号のレベルが、前記被検体の体動が無いと判断される範囲内にあり、
前記脈波信号の周波数解析の結果として得られる周波数スペクトルに第1の閾値以上のスペクトルが無く、
かつ、前記周波数スペクトルに基づいて、前記脈波信号に含まれるノイズ量の程度が、所定量以上と判断された場合に、前記放置状態と判断することを特徴とする拍動検出装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4記載の拍動検出装置であって、
前記放置検出部は、前記所定時間毎に前記放置状態の検出を実行し、前記放置状態でないと判断し、かつ、前記所定時間前に前記放置状態と判断したときは、前記周波数スペクトルに第2の閾値以上のスペクトルが有る場合には前記放置状態でないと判断し、前記周波数スペクトルに前記第2の閾値以上のスペクトルが無い場合には前記放置状態と判断することを特徴とする拍動検出装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項4記載の拍動検出装置であって、
前記放置検出部は、前記所定時間毎に前記放置状態の検出を実行し、前記放置状態と判断したときは、前記所定時間以前の前記脈波信号の周波数解析結果および前記脈波信号の周波数解析に使用される前記拍動信号の周波数の傾向を示す情報の少なくとも一方を破棄させることを特徴とする拍動検出装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の拍動検出装置であって、
前記拍動検出装置は、前記被検体の生体情報、および被検体の運動に関する付随的情報の少なくとも一方を取得する被検体情報取得部を有し、
前記放置検出部は、前記放置状態を検出したときは、前記被検体情報取得部の動作を停止させることを特徴とする拍動検出装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7記載の拍動検出装置であって、
前記放置検出部は、前記放置状態を検出したときは、前記周波数解析部による周波数解析動作を停止させることを特徴とする拍動検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−170702(P2012−170702A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36801(P2011−36801)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】