説明

拘束層減衰組立体

【課題】 低損失係数材料によって減衰効果が低下することのない、共鳴振動の振幅を最小にするための拘束層減衰組立体を提供する。
【解決手段】 実質的平面(104)を有する剛性ベース部材(100)のための拘束層減衰組立体(102)であって、ベース部材(100)の平面(104)上に配置されるガス不透過性減衰層(106)と、該減衰層(106)上に配置される荷重要素(108)とを備える。減衰層(106)は、平面(104)と荷重要素(108)との間に広がる少なくとも一つの空隙領域(112)を形成し、また、荷重要素(108)は、空隙領域(112)内部と拘束層減衰組立体(102)外部との間に圧力差を確立するため、拘束層減衰組立体(102)外部の圧力に比べて低い圧力を空隙領域(112)にかけるための少なくとも一つのチャネル(114)を形成する。該圧力差は、減衰層(106)を圧縮状態に保ち、また、ベース部材(100)上に対し荷重要素(108)及び減衰層(106)を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械構造のための減衰組立体、特に拘束層減衰組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術において、減衰(ダンピング)は、しばしばエラストマー材料を用いてエネルギーの一部を低位熱に変換することにより、機械的組立体における共鳴振動の振幅を低減するために用いられている。一般に、そのような振動減衰材料は、エネルギーを放散する履歴減衰として知られている機構を使用する。これらの材料が変形させられた際、内部摩擦が高エネルギー損失を引き起こす。
【0003】
図1は、二つの剛性板24及び26に適用した先行技術の振動減衰組立体を示す。図1に示すように、番号29で示すエラストマー絶縁台が、剛性板部材24及び26の振動エネルギーを吸収するために該板間に配置される。ボルト29A及びナット29Bは、絶縁台29を圧縮状態に維持したまま板24及び26を共に連結する。絶縁台は、高損失係数(高損失率)を有する材料、例えば、商標ISODAMP(登録商標)を所持するE-A-R Specialty Compositesが製造する材料からなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に示す先行技術組立体の一つの欠点は、板24及び26を共に連結するために用いるボルト29Aが、安全確実な結合をもたらすため、低損失係数を有する剛性材料、例えば鋼からなることである。ボルト29Aは、図1に示すように絶縁材料28によって絶縁されるが、該減衰組立体の減衰効果を格下げする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、共鳴振動の振幅を最小にするための拘束層減衰組立体を提供する。該拘束層減衰組立体は、使用時において、装置本体(装置体)のある面上、例えば剛(性)構造の上面上に配置される。該減衰組立体は、前記上面の少なくとも一部上に重なる実質的ガス不透過性(不浸透性)減衰層と、該減衰層上に配置される慣性塊(例えば荷重要素)とを備える。拘束減衰層組立体は、減衰層を圧縮状態に維持しながら、上記剛構造の上面に対して荷重要素を位置付ける(配置する)ための手段を更に含む。該位置付け手段は、好ましくは、上記剛構造の上面から荷重要素の底面へと減衰層を貫通する少なくとも一つの空隙領域と、拘束層減衰組立体の外部の圧力に比べて低い圧力を空隙領域にかけるための手段とを含む。好ましい一実施形態において、拘束(された)減衰層は二つの空隙領域を形成し、また、荷重要素は、空隙領域を外部真空機(バキューム(源))につなぐ(連通させる)ため、上記二つの空隙領域とそれぞれ関連する二つの真空チャネルを規定する。別の形態において、二つの真空チャネルは、装置本体又は減衰層を通過して、空隙領域を外部真空機につなぐように形成され得る。上記真空機は、チャネルを介して、空隙領域内の圧力を比較的低い値に保ち、荷重要素を横切る圧力差を確立する。該圧力差は、減衰層を圧縮状態に保つ力を与え、また、上記剛構造の上面に荷重要素及び減衰層を固定する。
【0006】
別の好ましい実施形態において、拘束減衰層は複数の空隙領域を形成し、各空隙領域は、空隙領域から荷重要素を通って延びるチャネルを経由して低圧につながれる。
【0007】
拘束減衰層は、例えば0.5よりも大きい比較的高い損失係数によって好ましく特徴付けられる。好ましい一実施形態において、拘束減衰層は、1.0の損失係数によって特徴付けられる。損失係数は、ある材料の履歴減衰のレベルを定量化するために用いられる。損失係数は、該システムから放散されるエネルギーと、振動ごとに該システムに貯蔵されるエネルギーとの比である。高損失係数を有する市販されている材料の例は、熱可塑性材料、例えば商標ISODAMP(登録商標)の下で販売される材料である。
【0008】
好ましい一実施形態において、減衰組立体が使用されておらず、装置本体に対し荷重要素を押しやる圧力差が全く与えられない際に、装置本体に対し荷重要素及び減衰層をロック(固定)するため、拘束層減衰組立体にロックダウン組立体が設けられる。好ましい一形態において、ロックダウン組立体は、荷重要素及び減衰層を貫通し、かつ装置本体のすくなとも一部分内へと延びる孔と、装置本体に対し荷重要素及び減衰層を固定するため、上記孔内にねじ込まれる少なくとも一つのボルトとを含む。該孔は、減衰層の空隙領域から気密に(空気圧的に)隔絶されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明は、以下の好ましい実施形態を参照して更に詳細に説明される。図2は、本発明の好ましい一実施形態に従う拘束層減衰組立体102の断面図を示し、図3はその分解図を示す。組立体102は、装置本体100の上面104上に配置される。当然のことながら、拘束層減衰組立体102は、振動減衰が望まれるどのような装置のどのような面でも使用することができる。
【0010】
減衰組立体102は、装置本体100の上面104の少なくとも一部と、上面104の少なくとも一部上に重なる実質的ガス不透過性減衰層106と、減衰層106上に配置される慣性塊(an inertial mass)(例えば荷重(負荷)要素(部材))108とによって形成される。上面104は、好ましくは平面で、基準軸線Xに沿って延びる。荷重要素108は、好ましくは剛性(硬質)である。
【0011】
拘束層減衰組立体102は、上面104に対して荷重要素108を位置付けるための手段を更に含む。該位置付け手段は、減衰層106内に形成され、かつ上面104と荷重要素108の底面との間に広がる少なくとも一つの空隙領域と、拘束層減衰組立体102外部の圧力に比べて低い圧力を上記空隙領域にかけるための手段とを好ましくは含む。図2〜3に示す好ましい実施形態において、拘束(された)減衰層106は、上面104と荷重要素108との間に広がる二つの空隙領域112を形成し、また、荷重要素108は、空隙領域112を外部真空機(真空源)118に接続するため、二つの空隙領域112と関連する二つの真空チャネル114を形成する。別の形態において、空隙領域112を真空機118に接続するため、真空チャネル114は、図6に示すように本体100を通過するように形成され得、又は、図7に示すように減衰層106を通過するように形成され得る。使用時において、荷重要素108は、減衰層106上に慣性荷重(慣性負荷)を与え、また、空隙領域112は、減衰層106と上面104と荷重要素108との接触面によって気密に封止される。真空機118は、チャネル114を通じて、空隙領域112内の圧力を、空隙領域112外部の圧力に比べて低い値に維持して、荷重要素108を横切る圧力差を確立する。該圧力差は、矢印Fで示す追加の力を与える。力Fは、荷重要素108を上面104に向かって押し付け、減衰層106を圧縮状態に保ち、また、荷重要素108及び減衰層106を上面104上に固定する。別の実施形態において、空隙領域112を低圧につなぐためのチャネル114はまた、装置本体100内に形成することができる。
【0012】
別の好ましい実施形態において、減衰層106は、三以上の空隙領域を含み得空隙領域112の配列(アレイ)を形成し、また、各空隙領域112は、空隙領域112から荷重要素108を通って延びるチャネルを経由して低圧につながれる。拘束減衰層106は、比較的高い損失係数、例えば0.5を上回る損失係数によって好ましくは特徴付けられる。好ましい一実施形態において、拘束減衰層106は、1.0の損失係数で特徴付けられる。高損失係数を有する市販されている材料の例は、熱可塑性材料、例えば商標ISODAMP(登録商標)の下で販売される材料である。
【0013】
図4〜5は、本発明の別の好ましい実施形態の断面図及び分解斜視図を示し、該実施形態において、拘束層減衰組立体102が使用されていない場合に、荷重要素108及び減衰層106が装置100から移動することを防ぐため、拘束層減衰組立体102には、組立体102を装置本体100の上面104にロック(固定)するロックダウン組立体130が設けられる。ロックダウン組立体130は、荷重要素108及び減衰層106を貫通し、かつ装置本体100の少なくとも一部分内へと延びる少なくとも一つの孔132と、装置本体100に対し荷重要素108及び減衰層106を固定するために孔132内にねじ込まれる少なくとも一つのボルト134とを含む。好ましい一実施形態において、装置本体100内に形成された孔132の先端部分にはねじが切られ、また、ボルト134の先端部にもねじが切られて、ねじ132の先端部分で孔132及びボルト134のねじ部が係合するように適合される。孔132は、減衰層106の空隙領域112から気密に隔絶される。拘束層減衰組立体102が使用される場合、振動エネルギーがボルト134を通って伝達されないように、ボルト134が孔132から外される。別の好ましい実施形態において、複数の孔及びボルトが、装置本体100に対して荷重要素108及び減衰層106を固定するために設けられる。
【0014】
拘束層減衰組立体は、ヘッド/ディスク・テスターと共に使用することができ、拘束層減衰組立体は、磁気ヘッドキャリッジの面に取り付けられる。模範的な磁気ヘッド/ディスク・テスターは、米国特許第6,006,614号及び米国特許第6,242,910号に記載されており、これらは、参照によって本明細書中に組み込まれる。当業者には当然のことながら、拘束層減衰組立体はまた、ヘッド/ディスク・テスター以外の、振動の減衰/低減/絶縁が望まれる装置でも使用され得る。
【0015】
本発明が、その好ましい実施形態を参照して詳細に図示され記述されたが、当業者は、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の形態及び細部において種々の変更がなされ得ることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】先行技術の振動絶縁機構の概略図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に従う拘束層減衰組立体の軸線X−Xに沿う断面図である。
【図3】図2の拘束層減衰組立体の分解斜視図である。
【図4】本発明の別の好ましい実施形態に従う拘束層減衰組立体の軸線X−Xに沿う断面図である。
【図5】図4の拘束層減衰組立体の分解斜視図である。
【図6】本発明の別の好ましい実施形態に従う拘束層減衰組立体の中央軸線X−Xに沿う断面図である。
【図7】本発明の別の好ましい実施形態に従う拘束層減衰組立体の中央軸線X−Xに沿う断面図である。
【符号の説明】
【0017】
100 装置本体
102 拘束層減衰組立体
104 上面
106 実質的ガス不透過性減衰層
108 荷重要素(慣性塊)
112 空隙領域
114 真空チャネル
118 外部真空機
130 ロックダウン組立体
132 孔
134 ボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準軸線に沿って延び、かつ該基準軸線と整列する外側面を有する剛性ベース部材のための拘束層減衰組立体であって、前記ベース部材が外部から加えられる力によって駆られる際、前記外側面が振動運動を呈する拘束層減衰組立体において、
A.前記外側面の少なくとも一部上に配置され、かつ比較的高い損失係数によって特徴付けられる実質的ガス不透過性減衰層と、
B.前記減衰層上に配置される荷重要素と、
C.前記外側面に対して荷重要素を位置付けるための手段であって、該位置付けにより前記減衰層が圧縮状態となる当該位置付け手段とを備え、
前記位置付け手段は、前記減衰層内に前記外側面と荷重要素との間に広がる少なくとも一つの空隙領域を含むと共に、荷重要素を横切る圧力差を確立して、前記外側面に対する荷重要素の位置付けをもたらし、該位置付けにより前記減衰層が圧縮状態となるように、拘束層減衰組立体の外部の圧力に比べて低い圧力を空隙領域にかけるための手段を含む拘束層減衰組立体。
【請求項2】
前記外側面は平面部分を含み、前記減衰層は、該平面部分の少なくとも一部上に配置される請求項1に従う拘束層減衰組立体。
【請求項3】
前記減衰層は、前記外側面と荷重要素との間に広がる空隙領域の配列を含み、各空隙領域は、空隙領域から荷重要素を通って延びるチャネルを経由して低圧につなぐことができる請求項1に従う拘束層減衰組立体。
【請求項4】
前記荷重要素は剛性である請求項1に従う拘束層減衰組立体。
【請求項5】
前記損失係数は、0.5より大きい請求項1に従う拘束層減衰組立体。
【請求項6】
前記損失係数は、1.0である請求項5に従う拘束層減衰組立体。
【請求項7】
ロックダウン組立体を更に備え、該ロックダウン組立体は、
A.荷重要素及び前記減衰層を貫通し、かつ前記ベース部材の少なくとも一部分内へと延びる少なくとも一つの孔であって、前記ベース部材内における該孔の少なくとも一部がねじを切られ、かつ、前記減衰層内の空隙領域から気密に隔絶される該孔と、
B.先端部にねじが切られ、かつ前記孔を貫通するために適合されるボルトであって、前記ねじが切られた先端部が、前記ベース部材内における孔のねじが切られた部分と係合するために適合され、該係合により、該ロックダウン組立体が、前記ベース部材に対し荷重要素及び前記減衰層を固定する該ボルトとを含む請求項1に従う拘束層減衰組立体。
【請求項8】
拘束層減衰組立体であって、
A.基準軸線に沿って延び、かつ該基準軸線と整列する外側面を有するベース部材と、
B.前記外側面の少なくとも一部上に配置される実質的ガス不透過性減衰層と、
C.前記減衰層上に配置される荷重要素と、
D.前記外側面に対して荷重要素を位置付けるための手段であって、該位置付けにより前記減衰層が圧縮状態となる当該位置付け手段とを備え、
前記位置付け手段は、前記減衰層内に前記外側面と荷重要素との間に広がる少なくとも一つの空隙領域を含むと共に、荷重要素を横切る圧力差を確立して、前記外側面に対する荷重要素の位置付けをもたらし、該位置付けにより前記減衰層が圧縮状態となるように、拘束層減衰組立体の外部の圧力に比べて低い圧力を空隙領域にかけるための手段を含む拘束層減衰組立体。
【請求項9】
前記外側面は平面部分を含み、前記減衰層は、該平面部分の少なくとも一部上に配置される請求項8に従う拘束層減衰組立体。
【請求項10】
前記減衰層は、前記外側面と荷重要素との間に広がる空隙領域の配列を含み、各空隙領域は、空隙領域から荷重要素を通って延びるチャネルを経由して低圧につなぐことができる請求項8に従う拘束層減衰組立体。
【請求項11】
前記荷重要素は剛性である請求項8に従う拘束層減衰組立体。
【請求項12】
前記損失係数は、0.5より大きい請求項8に従う拘束層減衰組立体。
【請求項13】
前記損失係数は、1.0である請求項12に従う拘束層減衰組立体。
【請求項14】
ロックダウン組立体を更に備え、該ロックダウン組立体は、
A.荷重要素及び前記減衰層を貫通し、かつ前記ベース部材の少なくとも一部分内へと延びる少なくとも一つの孔であって、前記ベース部材内における該孔の少なくとも一部がねじを切られ、かつ、前記減衰層内の空隙領域から気密に隔絶される該孔と、
B.先端部にねじが切られ、かつ前記孔を貫通するために適合されるボルトであって、前記ねじが切られた先端部が、前記ベース部材内における孔のねじが切られた部分と係合するために適合され、該係合により、該ロックダウン組立体が、前記ベース部材に対し荷重要素及び前記減衰層を固定する該ボルトとを含む請求項8に従う拘束層減衰組立体。
【請求項15】
前記拘束層減衰組立体の外部の圧力に比べて低い圧力を空隙領域にかけるための手段は、空隙領域を真空機につなぐために空隙領域と関連する少なくとも一つのチャネルを備える請求項1に従う拘束層減衰組立体。
【請求項16】
前記少なくとも一つのチャネルは、空隙領域を真空機につなぐため、荷重要素を通過するように形成される請求項15に従う拘束層減衰組立体。
【請求項17】
前記少なくとも一つのチャネルは、空隙領域を真空機につなぐため、ベース部材を通過するように形成される請求項15に従う拘束層減衰組立体。
【請求項18】
前記少なくとも一つのチャネルは、空隙領域を真空機につなぐため、前記減衰層を通過するように形成される請求項15に従う拘束層減衰組立体。
【請求項19】
前記拘束層減衰組立体の外部の圧力に比べて低い圧力を空隙領域にかけるための手段は、空隙領域を真空機につなぐために空隙領域と関連する少なくとも一つのチャネルを備える請求項8に従う拘束層減衰組立体。
【請求項20】
前記少なくとも一つのチャネルは、空隙領域を真空機につなぐため、荷重要素を通過するように形成される請求項19に従う拘束層減衰組立体。
【請求項21】
前記少なくとも一つのチャネルは、空隙領域を真空機につなぐため、ベース部材を通過するように形成される請求項19に従う拘束層減衰組立体。
【請求項22】
前記少なくとも一つのチャネルは、空隙領域を真空機につなぐため、前記減衰層を通過するように形成される請求項19に従う拘束層減衰組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−57846(P2006−57846A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234467(P2005−234467)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(597167184)ガジック・テクニカル・エンタープライゼス (10)
【Fターム(参考)】