説明

拡張剤層または収縮剤層を備えた体積ホログラム

本発明は、レリーフホログラム(4)を用いて提供される体積ホログラム層(3)を含む多層フィルム体の形態のセキュリティエレメントに関する。体積ホログラムのブラッグ格子は、第二の光学情報を付加するために、拡張剤(5)または収縮剤を用いて、例えばカラーイメージの形態で、部分的に拡張(8)される。拡張剤の部分的な印刷、または拡張剤に対して部分的に浸透性の挿入マスク層(6)を用いることにより、イメージ等のパターンが作られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの異なる光学情報を備えた体積ホログラム層を有する多層フィルム体の形態のセキュリティエレメントと、そのようなセキュリティエレメントの製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、紙幣、金銭代替手段、クレジットカード、パスポート、または身分証明書等のセキュリティドキュメントを保護するための、および製品保護のための、セキュリティエレメントとして用いられる。大量生産品は、例えば動的効果等の、興味深い光学可変効果を得ることができ、高いレベルの光強度で際立つ、表面ホログラムをよく利用する。
【0003】
表面ホログラムに対して、白色光ホログラムまたはリップマンホログラムとも呼ばれる体積ホログラムは、部分的な屈折率差を有する透明層のブラッグ平面での光の回折に基づいている。
【0004】
体積ホログラムを有するセキュリティエレメントおよびそのようなセキュリティエレメントの製造は、例えば特許文献1に記載されている。体積ホログラムを含む多層体の製造用マスターとして、表面レリーフが用いられる。マスターの前面は、体積ホログラムが記録される多層体の感光層に、直接、または透明な光学媒体を介して接触される。続いて、マスターはコヒーレント光で露光され、この場合、マスターに放射された光とマスターにより回折された光との重畳により、干渉パターンが生じ、この干渉パターンが体積ホログラムとして感光層に記録される。そして、このように感光層に形成された体積ホログラムは、感光層の硬化により凝固される。これに関し、2つ以上の独立したイメージ情報が、特別な構造のマスターにより、感光層に書き込み可能である。
【0005】
また、特許文献2は、異なるホログラム記録プロセスによりイメージ情報が書き込まれた2つの体積ホログラムの相互積層を記載している。これは、観察者に、2つの体積ホログラム層のイメージ情報から成る全体の印象をもたらす。しかしながら、この場合、2つの体積ホログラム層で構成されているセキュリティエレメントは、相対的に厚いという不利点があり、2つの体積ホログラムを、精確な適合関係で互いに重ねるのは困難である。
【0006】
体積ホログラムに接する有機溶媒は、回折効果の程度を増すことができ、色度に影響を与えることが可能であることが知られている。体積ホログラムへの有機分子の拡散は、拡張と、従って、ホログラム格子面の間隔の変化を引き起こし、これは、特に反射体積ホログラムに対して、色強調効果をもたらす(特許文献3)。しかしながら、溶媒では、新しい視覚情報を提示するホログラムを一部だけ拡張することは出来ないことに留意されたい。この目的のために、拡散特性が部分的で特に目指した状態で変化可能な拡張剤が用いられる。
【0007】
特許文献4は、ホログラムフォトフィルムが、マスク露光を受ける光硬化可能な拡張剤に接し、フォトフィルムにおける拡張剤の分化拡散に依るフォトフィルムの分化拡張が生じ、規定期間後に拡張剤の完全な露光により拡張が終了するプロセスを記載している。
【0008】
特許文献5は、部分的に露光された拡散フィルムが体積ホログラムに適用され、これにより体積ホログラムの部分的拡張が生じるプロセスを記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、改善されたセキュリティエレメントおよびその製造プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、多層フィルム体、特に積層フィルムまたは転写フィルムの形態のセキュリティエレメントの製造プロセスであって、
a1)キャリアフィルムを準備し、
b1)フォトポリマーから形成される体積ホログラム層をキャリアフィルムに適用し、
c1)少なくとも1つの拡張剤および/または収縮剤を体積ホログラム層に適用し、ここで、
c1.1)少なくとも一つの印刷可能な拡張剤および/または印刷可能な収縮剤が、体積ホログラム層に部分的に適用され、または、
c1.2)少なくとも一つのマスク層が体積ホログラム層に部分的に適用され、拡張剤および/または収縮剤の全面層が、マスク層および体積ホログラム層の前記マスク層のない領域に適用され、
d1)ブラッグ格子の部分的な拡張および/または収縮を伴って、体積ホログラム層への拡張剤および/または収縮剤の少なくとも部分的な拡散を可能とし、これにより第二の光学情報を提供し、
あるいは、
a2)キャリアフィルムを準備し、
b2)少なくとも一つの拡張剤および/または収縮剤をキャリアフィルムに部分的に適用し、ここで、
b2.1)少なくとも一つの印刷可能な拡張剤および/または印刷可能な収縮剤が、キャリアフィルムに部分的に適用され、または、
b2.2)拡張剤および/または収縮剤の少なくとも一つの全面層が、キャリアフィルムに適用されて、少なくとも一つのマスク層が、拡張剤および/または収縮剤に部分的に適用され、
c2)フォトポリマーから形成される体積ホログラム層を、拡張剤および/または収縮剤と、拡張剤および/または収縮剤を部分的にカバーするマスク層とに適用し、
d2)ブラッグ格子の部分的な拡張および/または収縮を伴って、体積ホログラム層への拡張剤および/または収縮剤の少なくとも部分的な拡散を可能とし、これにより第二の光学情報を提供し、
マスク層が、拡張剤および/または収縮剤に対して少なくとも部分的に不浸透性であるとともに、拡張剤および/または収縮剤に対する浸透性の開口を有し、
体積ホログラム層の前記フォトポリマーにおいて、複数の屈折率が部分的に形成され、この屈折率が、ブラッグ格子に第一の光学情報の提示をもたらす。
各ステップを含むプロセスにより、達成される。
【0011】
光学情報という表現は、視認可能なまたは機械読み取り可能な情報を表すために用いられることが好ましい。
【0012】
積層フィルムという表現は、特に、積層によりさらなる層が適用される自立キャリアフィルムを有するフィルム体を表すために用いられる。自立キャリアフィルムとさらなる層との間に、接着層が配置されることが好ましい。自立キャリアフィルムは、さらなる層から剥離不可能であることを保証することが好ましい。
【0013】
転写フィルムという表現は、特に、キャリアフィルムとそれから剥離可能な層(層スタック)を有するフィルム体を表すために用いられる。転写フィルムを基質に適用する場合、層/層スタックが基質に取り付けられ、キャリアフィルムが引き剥がされる。この場合、層または層スタックは、通常自立しない。転写フィルムは、エンボス加工フィルム、特に、熱エンボス加工フィルムの形態であってもよい。転写フィルムは、例えば、商標保護のために用いられる。商標は、転写フィルムにより、容器、ステッカー、ラベル、チケット、および/またはCDスリーブに転写可能である。
【0014】
セキュリティエレメントは、特に、セキュリティドキュメントの偽造に対する保護レベルを上げるため、および商品を守るために用いられるエレメントである。このようなセキュリティドキュメントは、例えば、紙幣、金銭代替手段、銀行カード、パスポート、株式または証券、宝くじ券、および/または身分証明書等を含む。
【0015】
フォトポリマーという表現は、特に、フォトポリマーがコヒーレント光で照射された際に光屈折構造を形成するのに適した、感光剤が分散するポリマー媒体を表すために用いられる。例えば、ゼラチン、カラギーナン、デンプン、寒天、アガロース、ポリビニルアルコール、アクリレート、メタクリレート、多糖、プロテイン、セルロース、セルロースアセテート、ポリアミド、ポリオール、特にポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート、ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、および/またはそれらの共重合体が、ポリマー媒体として使用可能である。
【0016】
標準的なポリマーとして、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルアセテート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリメタクリルアミド、および/またはポリアクリルアミドを用いることができる。ポリヒドロキシエチルメタクリレートは、特に好ましく用いられる。
【0017】
ヒマシ油および/またはヒマシ油派生品が体積ホログラム層に添加されることが好ましい。
【0018】
フォトポリマー媒体は、さらに、拡張剤拡散後の体積拡張および/または収縮剤拡散後の体積収縮を伴うのに適している必要がある。
【0019】
例えば、感光材料として、ハロゲン化銀粉末を用いることができる。また、選択的な照射および重合によりブラッグ格子が形成可能なフォトポリマー媒体を用いることもできる。ここで、光起因重合開始剤が、感光剤として、フォトポリマー媒体に添加されることが好ましい。例えば、キノン、感光還元染料、トリクロロメチルトリアジン、および/または2、4、5−トリフェニルイミダゾリルダイマーが、感光開始剤として用いられる。
【0020】
原則として、フォトポリマー可能な系統に加えて、例えば、写真目的に用いられる、他の光反応性、光発色性、および/または光屈折性系統も、適している。
【0021】
体積ホログラム層は、少なくとも二つのブラッグ格子面を含むブラッグ格子を含むことが好ましい。一実施形態では、体積ホログラム層は、2から100、好ましくは5から50、さらに好ましくは5から20の、ブラッグ格子面を有する。ブラッグ格子面内では、屈折率の部分的変化がある。
【0022】
一実施形態では、体積ホログラム層は、5μmから250μm、好ましくは5から100μm、さらに好ましくは10から30μmの厚みである。
【0023】
本発明によるプロセスの一実施形態では、ステップd1)またはd2)における体積ホログラム層への拡張剤および/または収縮剤の拡散の前に、体積ホログラム層のフォトポリマーに、体積ホログラムが書き込まれ、第一の光学情報を提示する。本発明によるプロセスの他の実施形態では、ステップd1)またはd2)における体積ホログラム層への拡張剤および/または収縮剤の拡散の後に、体積ホログラム層のフォトポリマーに、体積ホログラムが書き込まれ、第一の光学情報を提示する。
【0024】
本発明によるプロセスでは、セキュリティエレメント、キャリアフィルム、体積ホログラム層、印刷可能な拡張剤および/または印刷可能な収縮剤が、次の順に配置され得る。
キャリアフィルム
拡張剤および/または収縮剤
体積ホログラム層
または
キャリアフィルム
体積ホログラム層
拡張剤および/または収縮剤
【0025】
本発明によるプロセスの他の実施形態では、セキュリティエレメント、キャリアフィルム、体積ホログラム層、マスク層、印刷可能な拡張剤および/または印刷可能な収縮剤が、次の順に配置され得る。
キャリアフィルム
拡張剤および/または収縮剤
マスク層
体積ホログラム層
または
キャリアフィルム
体積ホログラム層
マスク層
拡張剤および/または収縮剤
【0026】
セキュリティエレメントの各層は、それぞれ印刷プロセスで適用可能である。
【0027】
一実施形態では、第一の光学情報は、コヒーレント光の2つの光線での照射により、体積ホログラム層を提供するフォトポリマーに形成される。体積ホログラム層は、少なくとも2つのブラッグ平面を備えるブラッグ格子から形成されることが好ましい。そして、フォトポリマーは、第一の光学情報を凝固するために、部分的に熱または光硬化されることが好ましい。本ステップまたは以下の一ステップにおける本発明に従う光硬化という表現は、UV、VIS、および/またはIR放射による硬化を表すために用いられる。硬化は、UV放射により行われることが好ましい。第一の光学情報は、イメージ、文字列、ロゴ、写真、バーコード、フィルム、ギロシェパターン、デザインエレメント、または他のセキュリティ関連情報を提示する、体積ホログラムである。体積ホログラムは、全体積ホログラム層を通じて、またはその一部のみに広がってもよい。セキュリティ関連情報という表現は、セキュリティエレメントの真偽をチェックするのに役立つ光学情報を表すために用いられる。
【0028】
体積ホログラムが体積ホログラム層に書き込まれる前に、体積ホログラム層は、部分的に、熱または光硬化され得る。体積ホログラムが体積ホログラム層に書き込まれた後、体積ホログラム層は、完全に硬化され得る。このステップは、障壁層の適用前または後に、実施可能である。体積ホログラム層の硬化は、場合によりそれ自体に適用される障壁層の硬化とともに実施可能である。
【0029】
さらなる層が、キャリアフィルムと体積ホログラム層との間、または体積ホログラム層と拡張剤および/または収縮剤との間に配置可能である。
【0030】
拡張剤および/または収縮剤が適用される面と体積ホログラム層との間に、分離層が適用可能である。拡張剤および/または収縮剤が適用される面とマスク層との間、または、マスク層と体積ホログラム層との面の間に、分離層が適用可能である。分離層という表現は、体積ホログラム層への拡張剤および/または収縮剤の拡散を低減または防止する層を表すために用いられ、分離層は、拡張剤および/または収縮剤が体積ホログラム層に拡散するように、例えば、熱処理または圧力処理により、不活性化することが可能である。他の実施形態では、分離層の代わりに、拡張剤および/または収縮剤が封入されてもよい。封入材は、好ましくは体積ホログラム層への拡張剤および/または収縮剤の拡散を低減または防止し、封入材は、拡張剤および/または収縮剤が体積ホログラム層に拡散するように、例えば、熱処理および/または圧力処理により、不活性化することが可能である。例えば、分離層として、または封入材として、ワックスを用いることができる。分離層の不活性化は、体積ホログラム層への体積ホログラムの書き込み前または後に、実施可能である。
【0031】
体積ホログラム層を形成するために、表面レリーフを用いることができる。表面レリーフの前面は、体積ホログラムが書き込まれる多層体のフォトポリマー層に、直接、または透明光学媒体を介して接する。そして、表面レリーフは、フォトポリマー層を介してコヒーレント光で露光され、表面レリーフにより回折された光の重畳が、体積ホログラムとしてフォトポリマー層に書き込まれる干渉パターンを作る。このようにフォトポリマー層に形成された体積ホログラムは、フォトポリマー層の部分的硬化の後に、熱硬化および/または光硬化により凝固されることが好ましい。好ましい実施形態は、金属表面レリーフを含む。表面レリーフは、感光層の部分的硬化後に、除去されることが好ましい。そして、事後硬化が、さらに部分的に実施可能である。感光層の部分的硬化という表現は、感光ポリマー層が、拡張剤および/または収縮剤が感光層に拡散可能なように、完全に重合されないことを意味するために用いられることが好ましい。そして、感光ポリマー層は、場合によって、拡張剤および/または収縮剤の熱硬化および/または光硬化により、さらなる重合によって硬化可能である。
【0032】
本発明によるプロセスの一実施形態では、表面レリーフが体積ホログラム層に適用され、表面レリーフから離れた側からの体積ホログラム層の照射により、体積ホログラム層に体積ホログラムが書き込まれる。そして、表面レリーフが除去される。一実施形態では、拡張剤および/または収縮剤と、任意でマスク層とが、表面レリーフから離れた体積ホログラムの面に適用される。他の実施形態では、拡張剤および/または収縮剤と、任意でマスク層とが、表面レリーフが配置された体積ホログラム層の面に適用される。
【0033】
本発明によるプロセスにより、ブラッグ平面の間隔が、少なくとも一つの拡張剤および/または収縮剤の拡散により、増大および/または低減可能であり、体積ホログラムでの色シフトをもたらす。また、収縮剤は、体積ホログラム層に残留可能であり、体積ホログラム層からモノマーまたは他の低分子基質を吸引可能であり、これにより、体積ホログラム層において収縮が生じる。拡張剤および/または収縮剤は、体積ホログラムが書き込まれた照射が適用された体積ホログラム層の側に適用されることが好ましい。色は、拡張剤により、より大きい波長に、場合によっては赤色範囲に、好ましくは赤外範囲に、シフト可能である。拡張剤の拡散により赤外範囲に色がシフトした体積ホログラムの領域は、透明に見える。色は、収縮剤により、短い波長範囲、場合によっては青色範囲に、シフト可能である。このように、第二の光学情報が、拡張剤および/または収縮剤の特に的を絞った部分的な適用により、提示可能である。第二の光学情報は、例えば、イメージ、文字列、ロゴ、写真、バーコード、フィルム、ギロシェパターン、デザインエレメント、および/または他のセキュリティ関連情報であってもよい。拡散作用は、熱調整工程により加速可能である。調整は、温度20℃から140℃、好ましくは20℃から100℃、最も好ましくは20℃から30℃で、5秒から120分、好ましくは30秒から10分の期間に亘って行われることが好ましい。周囲温度(25℃)付近の温度で、色シフトは、最も調和した状態で生じ、補正色で停止可能である。
【0034】
したがって、拡張剤および/または収縮剤の特に的を絞った適用は、第一の光学情報の色を特に目指す状態で変更することが可能である。しかしながら、イメージ、文字列、ロゴ、写真、バーコード、フィルム、ギロシェパターン、デザインエレメント、および/または他のセキュリティ関連情報は、第一の光学情報からは独立した第二の光学情報とともに提示されることが好ましい。拡張剤は、膨張剤と呼ばれてもよい。収縮剤は、縮小剤と呼ばれてもよい。
【0035】
本発明によるプロセスでは、一実施形態でのステップc1)またはb2)において、印刷可能な拡張剤および/または印刷可能な収縮剤が、体積ホログラム層に適用可能である。‘印刷可能’という表現は、対応する剤が、第二の光学情報の形態の体積ホログラム層に流出することなく部分的に適用可能であり、第二の光学情報が、イメージ、文字列、ロゴ、写真、バーコード、フィルム、ギロシェパターン、デザインエレメント、および/または他のセキュリティ関連情報の形態で適用されることが好ましいことを意味するために用いられることが好ましい。印刷可能という表現は、拡張剤および/または収縮剤の一貫性を述べているだけである。従って、特に、印刷では適用されないが、例えばスプレーされ流出しないような拡張剤および/または収縮剤は、印刷可能として解釈される。
【0036】
本発明によるプロセスでは、他の実施形態でのステップc1.2)またはb2.2)において、少なくとも一つのマスク層が体積ホログラム層に部分的に適用され、拡張剤および/または収縮剤の層が、全表面積に亘り、マスク層および体積ホログラム層のマスク層がない領域に適用される。マスク層は、拡張剤および/または収縮剤の適用前に、熱硬化および/または光硬化されることが好ましい。マスク層は、完全に、または少なくとも部分的に、拡張剤および/または収縮剤に対して不浸透性である。これは、体積ホログラム層への拡張剤および/または収縮剤の部分的な拡散を、第二の光学情報、好ましくはイメージ、文字列、ロゴ、写真、バーコード、フィルム、および/または他のセキュリティ関連情報の提示とともに提供する。従って、マスク層は、体積ホログラム層への拡張剤および/または収縮剤の拡散がなく、または拡散が少ない、いずれの場所においても適用される。
【0037】
本発明によるプロセスの一実施形態では、重合可能なモノマーおよび/または重合可能な初期段階のポリマーを含む、拡張剤が用いられる。拡張剤は、フォトポリマーキャリア媒体を構成する、重合可能なモノマーおよび/または重合可能な初期段階のポリマーであるか、またはそれらと互換性があることが好ましい。本文脈における互換性という表現は、フォトポリマー層のポリマーとモノマーおよび/または初期段階のポリマーとが、重合作用において互いに結合するまたは結合可能であることを意味するために用いられる。
【0038】
拡張剤として、アクリレート、特にエチレンエチルアクリレート(EEA)、ジエチレングリコールジアクリレート、2, 5-チオフェンジカルボン酸(TDA)、イソボルニルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2-フェニルエチルアクリレート等の芳香族単量体、2-フェノキシエチルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート(POEA)、フェニルアクリレート、好ましくは1:3から1:5の比の2-ナフチルアクリレート/POEA混合物を用いることが可能である。脂肪族または芳香族結合剤等の結合剤を、拡張剤に添加してもよい。使用される拡張剤は、例えば、セルロースアセテート酪酸塩(CAB)、PMMA、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合化体(PSAN)、および/またはスチレン/メチルメタクリレート共重合体(PSMMA)であってもよい。
【0039】
拡張剤および/または収縮剤の拡散は、可逆性または非可逆性である。拡張剤および/または収縮剤は、体積ホログラム層内で凝固されることが好ましい。これは、拡散を止めることができる。拡張剤および/または収縮剤は、光硬化性または熱硬化性であることが好ましく、これにより、凝固可能である。拡散の程度は、凝固の際の時間の選択により、制御可能である。またさらに、拡張剤および/または収縮剤は、体積ホログラム層から洗い落とすことができる。このように、拡張および/または収縮は、ある時間後に停止することもできる。
【0040】
他の実施形態では、少なくとも一つの障壁層が、体積ホログラムの拡張剤および/または収縮剤が適用された側に適用される。障壁層は、拡張剤および/または収縮剤に対して、完全に、または少なくとも実質的に、不浸透性である。このように、拡張剤および/または収縮剤の体積ホログラム層外への部分的な拡散は、防止および/または低減され、これにより体積ホログラム層において、熱硬化または光硬化なしで、第二の光学情報が凝固される。一実施形態では、障壁層は、体積ホログラムの拡張剤および/または収縮剤が適用されない側にも適用される。
【0041】
拡張剤および/または収縮剤は、体積ホログラム層またはマスク層に対して、それぞれ層厚10から100μm、好ましくは15から30μm、最も好ましくは15から25μmで適用されることが好ましい。横方向の拡散は、このような薄い層厚により、最小化される。拡張剤および/または収縮剤は、適用後にさらに硬化可能である。拡張剤および/または収縮剤の硬化は、障壁層の適用前または後に、行うことができる。後硬化の場合、障壁層は、光透過性、特に、UV透過性である必要がある。また、障壁層は、光硬化および/または熱硬化可能である。拡張剤および/または収縮剤と障壁層の硬化は、一つのステップで実施可能である。マスク層の使用は、拡散可能な拡張剤および/または収縮剤が印刷によって適用される場合よりも、印刷によってより精確な適用を可能とする。250から1500dpi、より好ましくは400から1200dpi、最も好ましくは800から1000dpiの解像度が達成される。マスク層の材料は、印刷によって、流出することなく適用可能である。マスク層を用いる際、例えばアセトン、ピリジン、任意に水またはイソプロパノールと混合されたジクロロメチレン等の溶媒を、拡張剤として用いることもできる。しかしながら、溶媒は、体積ホログラム層の一時的な拡張のみを生じ、これは乾燥時に溶媒が体積ホログラム層から再び拡散し出てしまうため可逆的であるので、拡張剤および/または収縮剤として、重合可能な合成物を用いることが好ましい。
【0042】
一実施形態では、使用される障壁層および/またはマスク層は、以下の通りである。
障壁層の全重量に対して、
ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDA) 25から40重量%、
好ましくは30から35重量%
ペンタエリトリトールトリアクリレート 55から70重量%、
好ましくは60から65重量%
光開始剤 3から10重量%、
好ましくは5から7重量%
【0043】
マスク層および/または障壁層は、インクジェット印刷、凹版印刷、反転グラビア印刷、マイクログラビア印刷、反転スリップ印刷、反転ロール印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、および/またはリソグラフにより、適用可能である。拡張剤および/または収縮剤は、インクジェット印刷、凹版印刷、反転グラビア印刷、マイクログラビア印刷、反転スリップ印刷、反転ロール印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、および/またはフレキソ印刷により、適用可能である。
【0044】
一実施形態では、障壁層を備えたセキュリティエレメントは、接着層により、セキュリティドキュメントに取り付けられる。
【0045】
マスク層は、体積ホログラム層への拡張剤および/または収縮剤の部分的拡散、または体積ホログラム層からのモノマーまたは他の低分子合成物の部分的吸引を可能とする一方、障壁層は、さらに、セキュリティエレメントをセキュリティドキュメントに適用する接着層からの体積ホログラム層への接着剤の拡散と、色シフトの発生とを防ぐ。さらに、障壁層は、体積ホログラム層からの揮発性合成物の拡散放出をも防ぐことができる。従って、障壁層は、拡張剤および/または収縮剤の適用後にのみ、適用される必要がある。
【0046】
本発明によるプロセスの一実施形態では、体積ホログラム層に拡散しなかった拡張剤および/または収縮剤は、少なくとも部分的に除去される。これは、ブラッグ平面のさらなる拡張および/または収縮が防止され、セキュリティエレメントが薄くなるという利点を有する。
【0047】
ブラッグ平面の間隔の増加または減少で生じる色効果は、様々な程度で発生可能である。拡張剤および/または収縮剤は、様々な濃度および/または厚みで適用され、および/または、異なる拡散特性を備えた異なる拡張剤および/または収縮剤が適用され得る。従って、拡張剤および/または収縮剤は、例えば拡張剤および/または収縮剤を単に体積ホログラム層に反応する期間残すだけで、体積ホログラム層に拡散可能となる。拡張剤および/または収縮剤の少なくとも部分的な体積ホログラム層への拡散が可能である。従って、少なくとも一つの拡張剤および/または収縮剤が、体積ホログラム層内にパターンの形態で導入され、拡張剤および/または収縮剤は、体積ホログラム層内のブラッグ平面の格子面の格子面間隔を変え、第二の光学情報が提供される。体積ホログラム層へ拡散する拡張剤および/または収縮剤の量は、適用量、濃度、温度、および反応期間により、影響され得る。
【0048】
拡張剤および/または収縮剤は、体積ホログラム層への完全な拡散で所望の色変化を得られる量で適用済みであるという利点がある。補正反応時間は、例えば、照射光に関する反射、吸収または透過等の分光計測工程により、測定可能である。一実施形態では、体積ホログラム層のある表面領域が、白色光で照射され、透過光の吸収スペクトルが測定される。また、色シフトは、反射光モードでの測定も可能である。
【0049】
多色イメージに対して、複数の手段が組み合わせ可能である。一実施形態では、ステップc1)またはb2)において、拡張剤および/または収縮剤が、少なくとも二つの異なるレベルの濃度および/または厚みで適用され、および/または、異なる拡散特性を有する少なくとも二つの異なる拡張剤および/または収縮剤が適用される。
【0050】
一実施形態では、3色点として、3つのそれぞれ異なる色点の隣り合う配列により、所望の色を得ることが可能である。この場合、各色点はたいへん小さいので、人間の眼では一つ一つは解像できないが、各色点の色の印象の混合色(付加的混合)は知覚可能である。作業は、赤、緑、および青の色の組み合わせで実施されることが好ましい。多色または真色イメージは、そのような3色点の多数の組み合わせにより、生じ得る。
【0051】
本目的は、さらに、多層フィルム体、特に積層フィルムまたは転写フィルムの形態のセキュリティエレメントであって、セキュリティエレメントはフォトポリマーから成る体積ホログラム層を有し、異なる屈折率が部分的に形成されて第一の情報を提示するブラッグ格子をもたらし、少なくとも一つの拡張剤および/または収縮剤が、体積ホログラム層にパターンの形態で導入され、体積ホログラム層内のブラッグ格子の格子面の格子面間隔を変え、第二の光学情報が提供される、セキュリティエレメントにより、達成される。
【0052】
セキュリティエレメントの一実施形態では、印刷可能な拡張剤および/または印刷可能な収縮剤が用いられる。拡張剤および/または収縮剤に対して少なくとも部分的に不浸透性のマスク層が、体積ホログラム層に配置されることが好ましい。また、少なくとも一つの障壁層が、体積ホログラム層および/またはマスク層に配置されてもよい。セキュリティエレメントは、上述したプロセスにより形成されることが好ましい。
【0053】
セキュリティエレメントは、拡張剤および/または収縮剤が適用される層または平面を有することができる。
【0054】
拡張剤および/または収縮剤が適用されるまたは適用された平面と体積ホログラム層との間に、分離層を配置可能である。拡張剤および/または収縮剤が適用されるまたは適用された平面とマスク層との間、または、マスク層の平面と体積ホログラム層との間に、分離層を配置可能である。また、拡張剤および/または収縮剤は、封入形態で存在してもよい。
【0055】
本発明によるセキュリティエレメントは、積層フィルムまたは転写フィルムの形態であり得る。積層フィルムは、特に、積層帯、重畳または被覆層、またはラベル、キャンブリック、セキュリティスレッドまたはウィンドウエレメントとして用いられる。転写フィルムは、熱エンボス加工フィルムであることが好ましい。
【0056】
一実施形態では、セキュリティエレメントは、キャリアフィルムを有する。また、セキュリティエレメントは、障壁層をも有してもよい。キャリアフィルムは、体積ホログラム層の一方の面に配置され、障壁層は体積ホログラム層の他方の面に配置されることが好ましい。
【0057】
セキュリティエレメントの各層は、下記の順に配置される。
キャリアフィルム
拡張剤および/または収縮剤
任意でマスク層
体積ホログラム層
任意で障壁層
または
キャリアフィルム
体積ホログラム層
任意でマスク層
拡張剤および/または収縮剤
任意で障壁層
【0058】
一実施形態では、本発明によるセキュリティエレメントは、例えば、光学回折効果を有するレリーフ構造と一致する、運動学的効果を有する光学回折構造、および/または、フィリグリー金属構造等の、さらなる光学回折効果が備えられている。
【0059】
さらなる障壁層が、体積ホログラム層の観察者から離れた面にさらに配置されてもよい。
【0060】
プロセスおよび好ましい実施形態に関して規定された表現は、セキュリティエレメントに同様に移行可能である。
【0061】
本発明は、貼付図面を参照して、複数の実施形態により、以降に例示される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】セキュリティエレメントの製造のための本発明によるプロセスの実施形態の工程図を示し、拡張剤が印刷により選択的に適用される。
【図2】拡張剤を選択的に適用するためのマスク層を用いた、セキュリティエレメントの製造のための本発明によるプロセスのさらなる実施形態の工程図を示す。
【図3】セキュリティエレメントの製造のための本発明によるプロセスのさらなる実施形態の工程図を示し、拡張剤が、体積ホログラム層に対して2つの異なる厚み/濃度で、印刷により選択的に適用される。
【図4】第一および第二の光学情報を備えたセキュリティエレメントの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明によるプロセスの一実施形態では、キャリアフィルム1に対して、場合によってはさらにそれに適用される機能中間層2に対して適用されるフォトポリマー層3は、表面レリーフ4aを有する層4の前面に接触する。続いて、表面レリーフ4は、フォトポリマー層を介して、コヒーレント光で露光され、表面レリーフ4aに放射される光と表面レリーフで回折される光との重畳により、干渉パターンが形成される。この干渉パターンは、フォトポリマー層に体積ホログラムを書き込む(図1(a))。続いて、フォトポリマー層3に形成された体積ホログラムは、少なくとも部分的な感光層の硬化後に、凝固される(図1(b))。続いて、表面レリーフ4を備えた層は、フォトポリマー3から除去され得る。フォトポリマーの表面に、拡張剤5が印刷される(図1(c))。拡張剤5は、好ましくは昇温30℃で、フォトポリマー層3に約5分で拡散することが好ましく、対応する領域においてブラッグ平面の間隔が増大するフォトポリマー層8を提供する(図1(d))。体積ホログラム層の表面に残る拡張剤は、除去され得る。セキュリティエレメントは、障壁層7の適用前または後に、UV放射により硬化される(図1(e))。
【0064】
本発明によるプロセスの他の実施形態では、キャリアフィルム1に対して、場合によってはさらにそれに適用される機能中間層2に対して適用されるフォトポリマー層3は、表面レリーフマスター4aの層4に接触する。続いて、表面レリーフ4aは、フォトポリマー層3を介して、コヒーレント光で露光され、表面レリーフに放射される光と表面レリーフで回折される光との重畳により、干渉パターンが形成される。この干渉パターンは、体積ホログラムとしてフォトポリマー層3に書き込まれる(図2(a))。続いて、このようにフォトポリマー層3に形成された体積ホログラムは、少なくとも部分的なフォトポリマー層の硬化後に、凝固される(図2(b))。この層は、体積ホログラム層とも呼ばれる。続いて、表面レリーフ4aを備えた層は、フォトポリマー3から除去され得る(図2(c))。パターンおよび/またはイメージの形態のマスク層9が、フォトポリマー3の表面に、印刷により適用され得る(図2(d))。マスク層で部分的に覆われた体積ホログラム層は、拡張剤5により、完全に覆われる(図2(e))。拡張剤5は、好ましくは約30℃の昇温で、フォトポリマー層3に約5分で拡散することが好ましく、対応する領域においてブラッグ平面の間隔が増大するフォトポリマー層8を提供する(図2(f))。体積ホログラム層の表面に残る拡張剤5は、除去され得る。セキュリティエレメントは、障壁層7の適用の前および/または後で、UV放射により硬化可能である(図2(g))。
【0065】
本発明によるプロセスの一実施形態では、キャリアフィルム1に対して、場合によってはさらにそれに適用される機能中間層2に対して適用されるフォトポリマー層3は、表面レリーフ4aを有する層4の前面に接触する。続いて、表面レリーフ4aは、フォトポリマー層3を介して、コヒーレント光で露光され、表面レリーフに放射される光と表面レリーフで回折される光との重畳により、干渉パターンが形成される。この干渉パターンは、体積ホログラムとして、フォトポリマー層に書き込まれる(図3(a))。続いて、このようにフォトポリマー層に形成された体積ホログラムは、少なくとも部分的なフォトポリマー層3の硬化後に、凝固される(図3(b))。続いて、表面レリーフマスター4aを備えた層4は、フォトポリマー3から除去され得る(図3(c))。拡張剤5が、複数の厚さ、または、複数の濃度レベルで(5a、5b)、フォトポリマーの表面に印刷により適用され得る(図3(d))。拡張剤5は、好ましくは約30℃の昇温で、フォトポリマー層3に約5分で拡散することが好ましく、対応する領域においてブラッグ平面の間隔が増大するフォトポリマー層8a、bを提供し(図3(e))、複数の体積ホログラム層3の拡張が、拡散された拡張剤5の量/濃度に依存して生じる。体積ホログラム層の表面に残る拡張剤5は、除去され得る。セキュリティエレメントは、障壁層7の適用後に、UV放射により硬化される(図3(f))。
【0066】
図4(a)は、拡張剤の拡散による色変化のない体積ホログラムの平面図を示す。体積ホログラムは、スイスの輪郭の形態であり、数字945が緑色に見える。
【0067】
図4(b)は、拡張剤の拡散による色変化のある体積ホログラムの平面図を示す。体積ホログラムは、スイスの輪郭の形態であり、数字945が緑色に見える。また、数字50が、拡張剤の拡散により、スイスの地図に赤色で書き込まれている。
【符号の説明】
【0068】
1 キャリアフィルム
2 機能層
3 フォトポリマー/体積ホログラム層
4 表面レリーフを備える層
4a 表面レリーフ
5 拡張剤
6 マスク層
7 障壁層
8 拡張された体積ホログラム層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】DE 10 2006 016 139 A1
【特許文献2】EP 1 187 728 B1
【特許文献3】US 5 415 950
【特許文献4】WO 2007/131496
【特許文献5】US 5 182 180

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルム体、特に積層フィルムまたは転写フィルムの形態のセキュリティエレメントの製造プロセスであって、以下の各ステップを含む。
a1)キャリアフィルムを準備し、
b1)フォトポリマーから形成される体積ホログラム層を前記キャリアフィルムに適用し、
c1)少なくとも1つの拡張剤および/または収縮剤を前記体積ホログラム層に適用し、ここで、
c1.1)少なくとも一つの印刷可能な拡張剤および/または印刷可能な収縮剤が、前記体積ホログラム層に部分的に適用され、または、
c1.2)少なくとも一つのマスク層が前記体積ホログラム層に部分的に適用され、拡張剤および/または収縮剤の全面層が、前記マスク層および前記体積ホログラム層の前記マスク層のない領域に適用され、
d1)ブラッグ格子の部分的な拡張および/または収縮を伴って、前記体積ホログラム層への前記拡張剤および/または収縮剤の少なくとも部分的な拡散を可能とし、これにより第二の光学情報を提供し、
あるいは、
a2)キャリアフィルムを準備し、
b2)少なくとも一つの拡張剤および/または収縮剤を前記キャリアフィルムに部分的に適用し、ここで、
b2.1)少なくとも一つの印刷可能な拡張剤および/または印刷可能な収縮剤が、前記キャリアフィルムに部分的に適用され、または、
b2.2)拡張剤および/または収縮剤の少なくとも一つの全面層が、前記キャリアフィルムに適用されて、少なくとも一つのマスク層が、前記拡張剤および/または収縮剤に部分的に適用され、
c2)フォトポリマーから形成される体積ホログラム層を、前記拡張剤および/または収縮剤と、前記拡張剤および/または収縮剤を部分的にカバーする前記マスク層とに適用し、
d2)ブラッグ格子の部分的な拡張および/または収縮を伴って、前記体積ホログラム層への前記拡張剤および/または収縮剤の少なくとも部分的な拡散を可能とし、これにより第二の光学情報を提供し、
前記マスク層が、前記拡張剤および/または収縮剤に対して少なくとも部分的に不浸透性であるとともに、前記拡張剤および/または収縮剤に対する浸透性の開口を有し、
前記体積ホログラム層の前記フォトポリマーにおいて、複数の屈折率が部分的に形成され、この屈折率が、ブラッグ格子に第一の光学情報の提示をもたらす。
【請求項2】
ステップd1)またはd2)において、前記体積ホログラム層への前記拡張剤および/または収縮剤の拡散の前または後で、前記体積ホログラム層の前記フォトポリマーに、第一の光学情報を提示する前記体積ホログラムが書き込まれる、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記セキュリティエレメント、前記キャリアフィルム、前記体積ホログラム層、前記印刷可能な拡張剤および/または印刷可能な収縮剤が、以下の順に配置される、請求項1または2に記載のプロセス。
キャリアフィルム
拡張剤および/または収縮剤
体積ホログラム層
または
キャリアフィルム
体積ホログラム層
拡張剤および/または収縮剤
【請求項4】
前記キャリアフィルム、前記体積ホログラム層、前記マスク層、前記拡張剤および/または収縮剤が、以下の順に配置される、請求項1または2に記載のプロセス。
キャリアフィルム
拡張剤および/または収縮剤
マスク層
体積ホログラム層
または
キャリアフィルム
体積ホログラム層
マスク層
拡張剤および/または収縮剤
【請求項5】
前記拡張剤および/または収縮剤が、光硬化性または熱硬化性に形成される、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記拡張剤および/または収縮剤と、前記体積ホログラム層との間に、分離層が適用される、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップc1)またはb2)後に、前記体積ホログラム層に拡散しなかった前記拡張剤および/または収縮剤が、少なくとも部分的に除去される、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップd1)またはd2)後で、
可能であれば、前記体積ホログラム層に拡散しなかった前記拡張剤および/または収縮剤が、少なくとも部分的に除去された後に、
続くステップe)で、障壁層が、前記体積ホログラム層および/またはマスク層に適用される、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記マスク層が、適用後に、光硬化または熱硬化される、
請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記拡張剤および/または収縮剤が、ステップd1)またはd2)後に、光硬化または熱硬化される、
請求項1〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記拡張剤および/または収縮剤が、少なくとも二つの異なる濃度および/または厚みのレベルで適用され、および/または、異なる拡散特性を有する少なくとも二つの異なる前記拡張剤および/または収縮剤が適用される、
請求項1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
多層フィルム体、特に積層フィルムまたは転写フィルムの形態のセキュリティエレメントであって、前記セキュリティエレメントはフォトポリマーから成る体積ホログラム層を有し、異なる屈折率が前記フォトポリマーにおいて部分的に形成されて第一の情報を提示するブラッグ格子をもたらし、少なくとも一つの拡張剤および/または収縮剤が、前記体積ホログラム層にパターンの形態で導入され、前記体積ホログラム層内の前記ブラッグ格子の格子面の格子面間隔を変え、第二の光学情報が提供される、セキュリティエレメント。
【請求項13】
第二の光学情報が、イメージ、文字列、ロゴ、写真、バーコード、フィルム、ギロシェパターン、デザインエレメント、および/または第一の光学情報と独立した他のセキュリティ関連情報を提示する、
請求項12に記載のセキュリティエレメント。
【請求項14】
マスク層が、前記拡張剤および/または収縮剤がパターンを形成しない領域において、前記体積ホログラム層に適用される、
請求項12または13に記載のセキュリティエレメント。
【請求項15】
前記拡張剤および/または収縮剤が適用される面と前記体積ホログラム層との間に、分離層が配置される、
請求項12〜14のいずれか1項に記載のセキュリティエレメント。
【請求項16】
前記体積ホログラム層と前記拡張剤および/または収縮剤が適用される面との間に、マスク層が配置され、マスク層が、前記拡張剤および/または収縮剤に対して、少なくとも部分的に不浸透性である、
請求項12〜15のいずれか1項に記載のセキュリティエレメント。
【請求項17】
少なくとも一つの障壁層が、前記体積ホログラム層および/または前記マスク層上に形成される、
請求項12〜16のいずれか1項に記載のセキュリティエレメント。
【請求項18】
前記セキュリティエレメントが、キャリアフィルムを含む、
請求項12〜17のいずれか1項に記載のセキュリティエレメント。
【請求項19】
前記セキュリティエレメントが、前記体積ホログラム層の一方の面に備えられたキャリアフィルムと、前記体積ホログラム層の他方の面に備えられた障壁層とを有する、
請求項18に記載のセキュリティエレメント。
【請求項20】
各層が、以下の順に配置される、請求項12〜19のいずれか1項に記載のセキュリティエレメント。
キャリアフィルム
拡張剤および/または収縮剤
任意でマスク層
体積ホログラム層
任意で障壁層
または
キャリアフィルム
体積ホログラム層
任意でマスク層
拡張剤および/または収縮剤
任意で障壁層
【請求項21】
前記体積ホログラム層と前記マスク層との間、または、前記マスク層と前記拡張剤および/または収縮剤との間に、分離層が配置される、
請求項20に記載のセキュリティエレメント。
【請求項22】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセスにより形成され得る、請求項12〜21のいずれか1項に記載のセキュリティエレメント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−506062(P2012−506062A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531400(P2011−531400)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007429
【国際公開番号】WO2010/043403
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(506151626)オーファウデー キネグラム アーゲー (30)
【Fターム(参考)】