説明

拡張型ステント用に最適化されたフレックスリンク

【課題】体内の通路すなわち管の中で使用するための拡張型腔内医療装置を提供する。
【解決手段】本発明は、詳細には、ステントの配置の際の短縮を最小限にする可撓性リンク(614)を有する最適化されたステントに関する。本発明の一実施形態では、腔内プロテーゼ装置は、第1のフープ部分、第2のフープ部分、およびこの第1のフープ部分と第2のフープ部分との間に取り付けられた1または複数のフレックス部材を含む。各フレックス部材は、周方向の波型部分(619B)によって連結された概ね長手方向に延びる2つの湾曲部分(621B)を含む。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、全般的に体内の通路すなわち管の中で使用するための拡張型腔内医療装置に関し、詳細には、ステントの配置の際の短縮を最小限にする最適化されたステント可撓性リンクに関する。
【0002】
〔発明の背景〕
腔内プロテーゼ装置は、その使用により、従来の脈管外科手術の代替になることが実証されている。腔内プロテーゼ装置は、動脈瘤の修復において、血管のライナーとして一般的に使用され、狭窄または閉塞した血管が潰れるのを防止する機械的な支持となる。
【0003】
腔内脈管内補綴術では、脈管または脈管系の他の管状構造内にステントなどの概ね管状のプロテーゼ装置が経皮的に挿入される。ステントは、通常は、カテーテルによって圧縮された状態で脈管内の特定の位置に送られる。所望の位置に達すると、ステントが拡張されて血管内に配置される。拡張されたステントは、通常は、収縮した状態よりも数倍大きい直径を有する。ステントの拡張は、機械式拡張装置(バルーンカテーテル拡張型ステント)または自己拡張型などの当分野で周知のいくつかの方法で行うことができる。
【0004】
脈管内でのステントの位置合わせは、ステントの性能および医療処置の成果に影響を及ぼす極めて重要な因子である。脈管内腔のステントを配置する部位へのアクセスは、通常は、医師にとって非常に困難であるため、医師は、適切な大きさのステントを正確に配置する前に、ステントの配置時の直径と長さを知る必要がある。
【0005】
脈管内腔の所望の領域に対する適切なステントの慎重なサイズの選択は、多くの医師にとって困難な問題であろう。所望の領域の脈管の寸法は知ることができるが、ステントの正確な配置時の直径および長さが不確かであると、最適な性能が発揮されないことがある。ステントの配置時の直径および長さが不確かである1つの理由は、短縮(foreshortening)として知られている状態である。
【0006】
短縮は、配置の前後のステントの長さの変化についての文脈における状態の定義によってより良く理解できるであろう。この定義のために、「クリンプ長さ」を、ステントの開始点とする。すなわち、配置の前にデリバリーカテーテルに取り付けられて拡張していないステントの長さである。「配置長さ」は、変化の臨床的最終点における長さと定義する。すなわち、内腔内に配置されたステントの長さである。短縮は、これらの2つの点の間の距離、すなわち取付け長さ(「クリンプ長さ」)と配置長さとの間の差に等しい。
【0007】
短縮は、程度が様々であるが全てのステントで起こる。短縮は、特に直径が4mmを超える脈管内ステントで著しい。ステントの短縮の程度は、主に、特定のステントのデザインが拡張をどの程度許容するかによって決まる。例えば、自己拡張型ステントは、一般的には、引き戻し可能なシースの操作によって配置される。シースが引き戻されると、まず、ステントの遠位端部が解放される。この遠位部分内で短縮が起こり、ステントが内腔壁に固定されるまで続く。シースがさらに引き戻されると、近位部分が、配置される際に短縮する。
【0008】
バルーン拡張型ステントも、拡張の際に短縮する。標準的なカテーテルバルーンによって配置されるステントは、最も弱い部分でバルーンがまず膨張するのが必ず観察される。通常は、バルーンの最も弱い部分は、露出された遠位端部および/または近位端部、すなわちカテーテルまたはステントによって直接支持されていないバルーンの部分である。したがって、バルーンが膨張する際、まず、バルーンの近位端部および/または遠位端部が膨張する。ステントの拡張した端部は、径方向外向きに押してステントを拡張させると共に軸方向内向きに圧縮するバルーンの圧力を受ける。この軸方向の圧縮力により、ステントの弱い連結リンクすなわち「フレックスリンク」が圧縮されてステントが短縮する。
【0009】
内腔の壁部内への腔内医療装置の拡張を可能にすると共に、腔内医療装置の短縮を最小限にする腔内医療装置が要望されている。
【0010】
〔発明の概要〕
本発明は、全般的に、体内の通路すなわち管の中で使用するための拡張型腔内医療装置に関し、詳細には、ステントの配置の際の短縮を最小限にする最適化された可撓性部材を隣り合うフープ構造間に有するステントに関する。
【0011】
本発明の一実施形態では、腔内プロテーゼ装置は、第1のフープ部分、第2のフープ部分、および複数のフレックス部材を含む。各フレックス部材は、第1の端部および第2の端部を有しており、この第1の端部が第1のフープ部分に取り付けられ、第2の端部が第2のフープ部分に取り付けられている。フレックス部材は、周方向の波型部分によって連結された概ね長手方向に延びる少なくとも2つの湾曲部分をさらに含む。
【0012】
本発明の別の実施形態では、腔内プロテーゼ装置は、第1のフープ部分、第2のフープ部分、およびこの第1のフープ部分と第2のフープ部分との間に取り付けられた1または複数の波型フレックス部材を含む。各フレックス部材は、周方向の波型部分によって連結された概ね長手方向に延びる2つの湾曲部分を含む。
【0013】
〔詳細な説明〕
本発明は、脈管の内腔壁への腔内医療装置の拡張を可能にすると共に、腔内医療装置の要素の軸方向の圧縮によって生じる腔内医療装置の短縮を最小限にする腔内医療装置の可撓性要素を開示する。例示目的で、脈管内ステントを用いて説明する。しかしながら、ここに用いる語、「腔内医療装置」は、限定するものではないが、あらゆる拡張型脈管内プロテーゼ、拡張型腔内脈管移植片、ステント、または体内の通路を維持または拡張させるために用いられるあらゆる他の機械式足場装置を含む。さらに、これに関連して、語「体内の通路」は、哺乳動物の体内のあらゆる管路、すなわち、限定するものではないが、あらゆる静脈、動脈、管路、脈管、通路、気管、尿管、食道、および移植片などのあらゆる人工脈管などのあらゆる体の脈管を包含する。
【0014】
本発明による可撓性要素は、自己拡張型ステントおよび機械拡張型ステントを含め、あらゆる径方向拡張型ステントに含めることができる。機械拡張型ステントの例として、限定するものではないが、バルーンの膨張によるなど、拡張部材によって径方向に拡張されるステントを挙げることができる。
【0015】
添付の各図面において、同等の要素には同等の参照符号が付されている。一例として、図1のストラット108は、図3のストラット308と同等である。
【0016】
図1〜図5を参照すると、従来技術で知られている例示的なステント100、300が例示されている。図1および図3は、拡張していない、すなわちクリンプされて配置前の状態にある典型的な従来技術のステント100、300を例示し、図2および図5は、完全に拡張した状態にあるステント100、300を示している。例示目的でZ型またはS型パターンのステントを示しているが、この例示は、本発明の範囲を限定すると解釈すべきものではない。
【0017】
ここで、図1および図2を参照されたい。ステント100は、開口した近位端部102および開口した遠位端部104を有し、かつこれらの端部の間に延在する長手方向軸103を画定している管状構造の構造要素を含む。ステント100は、患者に挿入して脈管内を移動するための第1の直径D1および脈管の標的部位に配置するための第2の直径D2を有する。この第2の直径は、第1の直径よりも大きい。
【0018】
ステント100の構造は、近位端部102と遠位端部104との間に延在する複数の隣接しているフープ106(a)〜106(d)を含む。フープ106(a)〜106(d)は、長手方向に配置された複数のストラット部材108、および隣り合うストラット108を連結している複数のループ部材110を含む。隣り合うストラット108は、複数のセルを形成するように、両端部で実質的にS型パターンまたはZ型パターンに連結されている。しかしながら、当業者であれば、ストラットによるパターン形成は、本発明を限定する因子ではなく、他のパターン形状も用いることができると、理解するであろう。複数のループ110は、実質的に半円の構造を有し、その中心に対して実質的に対称である。
【0019】
ステント100の構造は、隣接するフープ106(a)〜106(d)を連結する複数のブリッジ部材すなわちフレックスリンク114をさらに含む。各フレックスリンク114は、2つの端部を含む。各フレックスリンク114の一端は、例えばフープ106(c)などの1つのフープの1つのループ110に取り付けられ、各フレックスリンク114の他端は、例えばフープ106(d)などの隣接するフープの1つのループ110に取り付けられている。フレックスリンク114は、隣接するフープ106(a)〜106(d)を相互にフレックスリンクでループ連結部分に連結している。
【0020】
これらの図面は、フレックスリンク114が各ループ110で隣接するフープ106に連結されているクローズドセルのデザインのステントを示している。上記した構造のいずれにおいても、フープ構造106と隣接するフレックスリンク114との間の連結は、各ループ部材110で、または別法として、フープ106の周囲のサブセットのループ部材110で連結することができる。言い換えれば、フープ部分106の周囲に画定された特定のパターンで、連結されたループ部材110が、連結されていないループ部材110と交互することができる。
【0021】
図3および図5は、当分野で知られている典型的なステント300を例示している。図3は、ステント300を長手方向にカットして2次元構造に平坦に延ばした場合に現れる、ステント300の配置前のクリンプされた状態を示している。同様に、図5のステント300は、配置後すなわち径方向外向きに拡張した後の円筒ステント300の2次元の表現である。図3および図5に示されているステント300は、図1に示されているステント100と同様に、実際には円筒状であり、例示目的のために平坦な構造に示されていることを理解されたい。この円筒状は、図3および図5の平坦な構造を丸めて、上部の点Cと下部の点Dが連結された円筒状にして得ることができる。ステント300は通常、円筒状のステンレス鋼チューブのレーザー加工によって形成される。
【0022】
一連のストラット部材(点線の長方形内に示されている)が、図1のフープ106(c)に類似したステント300の閉じた円筒状のフープ部分306を形成している。上記したように、フープ部分306は、長手方向に配置されたストラット部材308によって連結された複数のループ部材310を含む。フープ部分306は、複数のストラット要素からなっていると言える。各ストラット要素は、1つのストラット308に連結された1つのループ部材310からなっている。
【0023】
隣り合ったフープ306間の各湾曲ループ部材310は、ステント300の終端部を除き、N型フレックスリンク314またはJ型フレックスリンク316のいずれかであるフレックスリンクに取り付けられている。したがって、完全に連結されたステント300は、「クローズドセル」ステントと呼ばれる。しかしながら、他のオープンセルデザインおよびクローズドセルデザインも本発明の範囲内であり、各湾曲ループ部材310をフレックスリンクに取り付けなくてもよい。例えば、フープ構造306と隣接するフレックスリンク314との間の連結は、各ループ部材310で、または別法として、フープ306の周囲のサブセットのループ部材310で行うことができる。言い換えれば、フープ部分306の周囲に画定された特定のパターンで、連結されたループ部材310が、連結されていないループ部材310と交互することができる。
【0024】
図5は、周辺部に2つのJ型フレックスリンク316を有する、配置された構造セル336と、周辺部に2つの可撓性N型フレックスリンク314を有する、配置された特殊な拡張型セル334を示している。上記したように、周方向に延びるセルのセットは、この場合は、1つの円筒部分につき正確に6個のセルを備えたフープ状周方向円筒部分(フープ部分306)に形成されている。通常は、多セルステントは、各フープ部分につき少なくとも3つのセルを有する。図3および図5に例示されているステント300は、構造セル336の正確に2つの円筒フープ(部分337として平坦に例示)、および拡張型セル334の4つの円筒部分335を有する。
【0025】
ステント300の完全に連結した構造を示す別の方法は、可撓性N型フレックスリンク324のセットまたは可撓性J型フレックスリンク326のセットによって相互に連結された、長手方向に離間した多数のフープ部分306のセットであり、N型フレックスリンク324の各セットは、周方向に離間した多数のN型フレックスリンク314を含む。各N型フレックスリンク314は、隣り合うフープ部分306の2つの湾曲ループ部材310に連結されている。N型フレックスリンク324のセットにおけるN型フレックスリンク314の数は、フープ部分306における湾曲ループ部材310の合計数の2分の1以下である。
【0026】
同様に、可撓性J型フレックスリンク326の各セットは、それぞれがフープ部分306の2つの湾曲したループ部材310に連結されている周方向に離間した多数のJ型フレックスリンク316からなる。J型フレックスリンク326のセットにおけるJ型フレックスリンク316の数は、フープ部分306における湾曲したループ部材310の合計数の2分の1以下である。
【0027】
図4Aおよび図4Bはそれぞれ、ステント300のN型フレックスリンク314の3次元斜視図およびJ型フレックスリンク316の3次元斜視図を示している。N型フレックスリンク314は、概ね周方向に延びる3つの部分319(b)によって連結された、概ね長手方向に延びる4つの湾曲部分321(b)を含み、各N型フレックスリンク314は、取付け点355で湾曲ループ部材310に取り付けられている2つの端部を有する。図4Aに示されているN型フレックスリンク314は、ステントの表面に概ね沿った方向で測定されるストラット幅315を有する。このストラット幅315は、ステントの長手方向軸328から径方向で測定される肉厚325よりも小さい。N型フレックスリンク314の中心長さ360が図4Aに例示されている。この中心長さは、フレックスリンクの可撓性に正比例する。
【0028】
ステントのストラット幅315は、良好な可撓性が得られるように、通常は0.10mm未満であり、肉厚325は、良好なステントの放射線不透過性が得られるように、通常は0.10mmを超える。理想的には、厚み325に対する幅315の比率は、1.0未満であり、好ましくは0.8未満である。ステントの場合、公称ストラット幅315は、通常は0.08mmであり、公称肉厚325は、通常は0.12mmである。
【0029】
細いストラット幅315と厚い肉厚325の組合せにより、N型フレックスリンク314が容易に伸縮してステントの可撓性が向上すると同時に、ステント300の内腔内への内側への膨らみに対してN型フレックスリンク314が比較的曲がりにくくなる。この曲がりにくさにより、ステント300が配置された後、冠状動脈のプラークを外向きに押すN型フレックスリンク314の能力が向上する。加えて、N型フレックスリンク314の狭い幅315により、フレックスリンク314が、ステントの拡張の際に伸長することができ、これによりステント300の短縮が軽減される。しかしながら、この軸方向の可撓性は、ステントの短縮を助長する。
【0030】
図4Bに例示されているように、各J型リンク316は、周方向直線部分319(a)によって連結された概ね長手方向に延びる2つの湾曲部分321(a)からなり、各J型フレックスリンク316は、取付け点356で湾曲ループ部材310に等しく取り付けられた2つの端部を有する。図4Bに示されているJ型フレックスリンク316は、ステントの表面に概ね沿った方向に測定されるストラット幅317を有する。このストラット幅317は、ステントの長手方向軸328から径方向に測定される肉厚326よりも小さい。また、J型フレックスリンク316の中心長さ361が図4Bに例示されている。この中心長さは、フレックスリンクの可撓性に正比例する。
【0031】
上記したように、図3および図5に示されているステント300は、複数のN型フレックスリンク314または複数のJ型フレックスリンク316によって連結された隣り合ったフープ部分306を有するといえる。各N型フレックスリンク314は、図3に明確に例示されているように、隣接するN型フレックスリンク314に対して互いに入れ子状になるように成形されている。この「入れ子状」は、第1の可撓性リンクの頂部が、そのすぐ上に位置する第2の可撓性リンクの底部を越えて挿入された状態と定義する。同様に、第1の可撓性リンクの底部が、そのすぐ下側に位置する第3の可撓性リンクの頂部のすぐ下まで挿入される。したがって、個々の可撓性リンクが入れ子状のステントでは、各個々の可撓性リンクが、そのすぐ下に位置する可撓性リンクおよびそのすぐ上に位置する可撓性リンクの両方に対して入れ子状になっている。この入れ子状の構造により、N型フレックスリンク314を重ね合わせなくても、ステント300がクリンプして小さい直径になることができる。
【0032】
ステント300に類似したステントが、経皮的に体内の内腔内に送られるため、フレックスリンクは、湾曲した動脈および脈管を通る際にステント300が比較的容易に曲がることができるように設計されている。この必要な可撓性を得るために、N型フレックスリンク314は、ステント300が内腔内を通る際に、曲がったステント300の外側で延び、曲がったステント300の内側で縮む。この増大した可撓性は、ステント300を所望の部位に経皮的に送るために必要であると共に、上記した短縮効果にも寄与しうる。
【0033】
ステントを配置する(開く)際に、ステントのフレックスコネクタが、伸張し始めて短縮を補償する。この配置後のフレックスコネクタの伸長(殆どの部分が、増大する圧力でのバルーンの伸長に基づく)が十分でない場合、フレックスコネクタの拡張は、初めの短縮を補償できないであろう。したがって、短縮を最小限にするためには、フレックスコネクタの軸方向の圧縮性を最小限にすると同時に、フレックスコネクタの最終圧縮性を最小限にするデザインが望ましい。
【0034】
ステントの配置の際のフレックスリンクの軸方向の圧縮性を最小限にする本発明の一実施形態が図6に例示されている。この図から分かるように、ステントを長手方向にカットして2次元構造に平坦な延ばした場合に現れる、配置前のクリンプされた状態にある改良されたN型フレックスリンク614が例示されている。改良されたN型リンクは、例示目的で用いているが、当業者であれば、本発明を、改良されたJ型フレックスリンクを含め他のフレックスリンクの構造にも同様に適用できることを理解できよう。
【0035】
各N型フレックスリンク614は、3つの概ね周方向の波型部分619(b)によって連結された4つの概ね長手方向に延びる湾曲部分621(b)を含む。波型部分619(b)は、図6から分かるように、中心長さ662および全長661を有する。この中心長さは、通常は、全長よりも約5%〜25%長い。上記したようにフレックスリンク614は、隣り合うフープ部分606(不図示)の2つの湾曲ループ部材610に連結されている。
【0036】
同様に、改良されたJ型フレックスリンク(不図示)を、概ね周方向の波型部分619(b)によって連結された2つの概ね長手方向に延びる湾曲部分621(b)から構成することができる。この波型部分619(b)は、図6に示されている波型部分619(b)と同様に、改良されたN型フレックスリンクの中心長さおよび全長を有する。この中心長さは、通常は、全長よりも約5%〜25%、好ましくは約12%長い。
【0037】
再び図6を参照すると、長手方向に延びる4つの湾曲部分621(b)が、図1〜図5に例示されている従来技術のステントに示されている部分321(b)に形状および構造が類似していることが分かるであろう。しかしながら、ステントの配置の際のフレックスリンク614の軸方向の圧縮性を最小限にするために、従来技術のステントの概ね周方向に延びる部分319(b)の代わりに、周方向の波型要素619(b)を用いている。波型要素619(b)の形状により、ステント配置の際に隣り合う波型要素619(b)間の直接接触、または波型要素619(b)と隣接するループ部材610との接触によって、フレックスリンク614が圧縮されうる横方向の距離が縮小する。しかしながら、ステントをクリンプした状態で配置部位に送る際には、隣り合う波型要素619(b)間およびループ部材610と波型要素619(b)との間に、ある程度のギャップを維持するのが好ましい。
【0038】
好適な実施形態では、波型要素619(b)は、位相が互いにずれるように配置されている。この「位相」は、各要素間の角度の関係と定義することができる。一例では、図6の各波型要素619(b)は、別の波型要素619(b)に対して直接先行するかまたは後に続き、別の波型要素619(b)に対して位相が180度ずれている。すなわち、各波型要素は、基準線670を中心として、隣接する波型要素の鏡像である。したがって、隣り合う要素は、位相が互いに180度ずれ、1つおきの波型要素は、互いに位相が合っている。
【0039】
例示目的で、180度の位相のずれが示されているが、当業者であれば、他の位相角度のずれを用いても同様の結果が得られることを理解できよう。
【0040】
上記したように、全てのステントに生じる短縮の程度の差は、主に、ステントのデザインがどの程度拡張を許容するかによって決まる。標準的なカテーテルバルーンによって配置されるステントは、通常は露出した遠位端部および/または近位端部である最も弱い部分でバルーンがまず膨張するのが必ず観察される。ステントの拡張した端部は、径方向外向きに押してステントを拡張させると共に軸方向内向きに圧縮するバルーンの圧力を受ける。互いに位相が180度異なる隣り合う波型要素619(b)の配置により、ステントの配置の際にフレックスリンク614が圧縮可能な横方向距離が最小限になっている。
【0041】
図7Aは、配置されているステント600の近位端部の斜視図である。ステント600は、本発明の一実施形態に従った波型フレックスリンク614を有する。バルーン(不図示)が膨張し始めると、近位端部および遠位端部(近位端部のみを図示)が、ステント600の他の部分よりも先に拡張し始める。この膨張が進むと、近位端部に沿ったフレックスコネクタ614が、隣り合う波型要素619(b)が互いに接触するまで圧縮される。同様に、波型要素619(b)は、隣り合うフープ部分606(606(a)および606(b))のループ部材610に接触しうる。隣り合う要素間のこの接触は、ステントの横方向の圧縮を実質的に防止する。
【0042】
図7Bおよび図7Cはそれぞれ、ステントの配置(拡張)の際の最適化されたフレックスリンクおよび従来のフレックスリンクの最小圧縮長さ(L)を例示している。
【0043】
図7Bから分かるように、ステントの拡張の際に、バルーンの端部によって軸方向に圧縮され、フレックスリンク614が、波型要素619(b)が互いに接触するまで圧縮される。この位置に達すると、フレックスリンク614は、最小圧縮長さL1を有する。
【0044】
図7Cに示されている従来技術のステントが拡張する際と同様に、フレックスリンク314も圧縮される。しかしながら、従来技術のステントでは、周方向に延びる部分319(b)のジオメトリ(直線状)により、最小圧縮長さL2に達するまでにフレックスリンク314が大幅に圧縮される。図面から分かるように、フレックスリンク614の最小圧縮長さL1は、従来技術のフレックスリンク314の最小圧縮長さL2よりも長い。
【0045】
図7Aに例示されているデザインの別の特徴は、フレックスリンク614が圧縮可能な横方向の距離を短縮することにより、湾曲部分621(b)に対する応力が軽減されることである。
【0046】
図6を再び参照されたい。フレックスリンク614の中心長さ660が示されている。上記したように、フレックスリンクの中心長さは、フレックスリンクの可撓性に正比例する。好適な実施形態では、フレックスリンク614の中心長さ660は、従来技術のフレックスリンク314の中心長さ360よりも5%〜25%、好ましくは約12%長いため、フレックスリンク614の可撓性が増大すると共に、ステント配置の際にフレックスリンク614の圧縮可能な横方向距離が最小限になっている。
【0047】
本発明のいくつかの変更形態を詳細に図示および説明したが、当業者であれば、本開示を基に、本発明の範囲内である他の変更形態および使用方法に容易に想到するであろう。特定の実施形態の様々な組合せまたは部分的な組合せが、本発明の範囲内で可能であると考えられる。
【0048】
添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内であるここに開示する主題のいくつかの利点の例を例示するために付されている。
【0049】
〔実施の態様〕
(1)腔内プロテーゼ装置において、
第1のフープ部分と、
第2のフープ部分と、
複数のフレックス部材であって、前記各フレックス部材が、第1の端部および第2の端部を有し、前記各フレックス部材の前記第1の端部が、前記第1のフープ部分に取り付けられ、前記各フレックス部材の前記第2の端部が、前記第2のフープ部分に取り付けられ、前記各フレックス部材が、周方向の波型部分によって連結された概ね長手方向に延びる2つの湾曲部分を有する、複数のフレックス部材と、
を含む、腔内プロテーゼ装置。
(2)実施態様(1)に記載の腔内プロテーゼ装置において、
前記第1および第2のフープ部分は、長手方向に配置された複数のストラット部材、および隣り合う前記ストラット部材を連結する複数のループ部材を含む、腔内プロテーゼ装置。
(3)実施態様(2)に記載の腔内プロテーゼ装置において、
前記長手方向に配置されたストラットは、両端部で実質的にZ型のパターンに連結されている、腔内プロテーゼ装置。
(4)実施態様(2)に記載の腔内プロテーゼ装置において、
前記フレックス部材の前記第1の端部は、前記第1のフープ部分の1つのループに取り付けられ、
前記フレックスリンクの前記第2の端部は、前記第2のフープ部分の1つのループに取り付けられている、
腔内プロテーゼ装置。
(5)実施態様(1)に記載の腔内プロテーゼ装置において、
前記周方向の波型部分は、中心長さおよび全長を有しており、
前記中心長さは、前記全長よりも約5%〜25%長い、
腔内プロテーゼ装置。
【0050】
(6)実施態様(4)に記載の腔内プロテーゼ装置において、
前記中心長さは、前記全長よりも約12%長い、腔内プロテーゼ装置。
(7)腔内プロテーゼ装置において、
第1のフープ部分と、
第2のフープ部分と、
前記第1のフープ部分と前記第2のフープ部分との間に取り付けられた1または複数のフレックス部材であって、周方向の波型部分によって連結された概ね長手方向に延びる少なくとも2つの湾曲部分を有する、1または複数のフレックス部材と、
を含む、腔内プロテーゼ装置。
(8)拡張型ステントの隣り合うフープ部分を連結するためのフレックス部材において、
周方向の波型部分によって連結された概ね長手方向に延びる少なくとも2つの湾曲部分、
を含む、フレックス部材。
(9)実施態様(8)に記載のフレックス部材において、
前記周方向の波型部分は、中心長さおよび全長を有しており、
前記中心長さが、前記全長よりも約5%〜25%長い、
フレックス部材。
(10)腔内プロテーゼ装置において、
第1のフープ部分と、
第2のフープ部分と、
前記第1のフープ部分と前記第2のフープ部分との間に取り付けられた1または複数のフレックス部材であって、概ね周方向の3つの波型部分によって連結された概ね長手方向に延びる4つの湾曲部分を有する、1または複数のフレックス部材と、
を含む、腔内プロテーゼ装置。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】拡張されていないクリンプされた配置前の状態にある例示的なステントの斜視図である。
【図2】拡張されて配置された状態にある例示的なステントの斜視図である。
【図3】長手方向にカットして平坦に延ばした場合に現れる、クリンプされた配置前の構造にある例示的なステントの平面図である。
【図4A】例示的な従来技術のN型フレックスリンクの斜視図である。
【図4B】例示的な従来技術のJ型フレックスリンクの斜視図である。
【図5】長手方向にカットして平坦に延ばした場合に現れる、拡張されて配置された構造にある例示的なステントの平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に従った、改良された波型フレックスリンクの拡大平面図である。
【図7A】本発明の一実施形態に従った、配置の際のステントの近位端部の斜視図である。
【図7B】本発明の一実施形態に従った、改良された波型フレックスリンクの最小圧縮長さを示す拡大平面図である。
【図7C】例示的なN型フレックスリンクの最小圧縮長さを示す拡大平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腔内プロテーゼ装置において、
長手方向軸と周囲とを持つ円筒形状を有する第1のフープ部分であって、前記腔内プロテーゼ装置を長手方向にカットして2次元構造に平坦に延ばしたとき、前記円筒形状が、前記長手方向軸に沿って概ね配向された長手方向と前記周囲に沿って概ね配向された周方向とを画定し、当該第1のフープ部分が、外側半径を有するループ部材によって連結された、長手方向に配向された複数のストラットを備える、第1のフープ部分と、
円筒形状を有し、軸方向に整列されているが前記長手方向軸に沿って前記第1のフープ部分から長手方向にずれている第2のフープ部分であって、当該第2のフープ部分が、外側半径を有するループ部材によって連結された、長手方向に配向された複数のストラットを備える、第2のフープ部分と、
複数のフレックス部材であって、前記各フレックス部材が、第1の端部および第2の端部を有し、前記各フレックス部材の前記第1の端部が、ループ部材の前記外側半径において前記第1のフープ部分に取り付けられ、前記各フレックス部材の前記第2の端部が、ループ部材の前記外側半径において前記第2のフープ部分に取り付けられ、前記各フレックス部材が、端から端まで周方向に概ね延びる少なくとも2つの波型部分を備え、周方向に延びる前記各波型部分の開始点および終点が、すぐ隣接した周方向に延びる前記波型部分の対応する開始点および終点と長手方向に整列されている、複数のフレックス部材と、
を備える腔内プロテーゼ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の腔内プロテーゼ装置において、
前記第1および第2のフープ部分は、長手方向に配置された複数のストラット部材と、隣接した前記ストラット部材を連結する複数のループ部材とを備える、腔内プロテーゼ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の腔内プロテーゼ装置において、
長手方向に配置された前記ストラットは、両端部で実質的にZ型のパターンに連結されている、腔内プロテーゼ装置。
【請求項4】
請求項2に記載の腔内プロテーゼ装置において、
前記フレックス部材の前記第1の端部は、前記第1のフープ部分の1つのループに取り付けられ、前記フレックス部材の前記第2の端部は、前記第2のフープ部分の1つのループに取り付けられている、腔内プロテーゼ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の腔内プロテーゼ装置において、
周方向の前記波型部分は、中心長さおよび全長を有し、前記中心長さは、前記全長よりも約5%〜25%長い、腔内プロテーゼ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の腔内プロテーゼ装置において、
前記中心長さは、前記全長よりも約12%長い、腔内プロテーゼ装置。
【請求項7】
腔内プロテーゼ装置において、
長手方向軸と第1の周囲とを画定する円筒形状を有する第1のフープ部分であって、当該第1のフープ部分が、外側半径を有するループ部材によって連結された、長手方向に配向された複数のストラットを備える、第1のフープ部分と、
前記長手方向軸に沿って配向され、第2の周囲を有する円筒形状を有する第2のフープ部分であって、当該第2のフープ部分が、軸方向に整列されているが前記長手方向軸に沿って前記第1のフープ部分から長手方向にずれており、前記腔内プロテーゼ装置を長手方向にカットして2次元構造に平坦に延ばしたとき、前記第1および第2のフープ部分の前記円筒形状が、前記長手方向軸に沿って概ね配向された長手方向と前記周囲に沿って概ね配向された周方向とを画定し、当該第2のフープ部分が、外側半径を有するループ部材によって連結された、長手方向に配向された複数のストラットを備える、第2のフープ部分と、
1または複数のフレックス部材であって、前記各フレックス部材が、前記第1および第2のフープ部材のループ部材の前記外側半径において取付けられた両端部を有し、前記各フレックス部材が、端から端まで概ね周方向に延びる少なくとも2つの波型部分を備え、すぐ隣接した周方向に延びる波型部分が、前記長手方向軸に垂直な周面について鏡映対称である、1または複数のフレックス部材と、
を備える腔内プロテーゼ装置。
【請求項8】
請求項1および7に記載の腔内プロテーゼ装置において、
前記フレックス部材は、前記腔内プロテーゼ装置を長手方向にカットして2次元構造に平坦に延ばしたとき、隣接した周方向に延びる波型部分を端から端まで直接連結する概ね長手方向に延びる湾曲部分を備える、腔内プロテーゼ装置。
【請求項9】
請求項7に記載の腔内プロテーゼ装置において、
周方向に延びる前記波型部分は、中心長さおよび全長を有し、前記中心長さは、前記全長よりも約5%〜25%長い、腔内プロテーゼ装置。
【請求項10】
腔内プロテーゼ装置において、
第1のフープ部分と、
第2のフープ部分と、
前記第1のフープ部分と前記第2のフープ部分との間に取り付けられた1または複数のフレックス部材であって、前記腔内プロテーゼ装置を長手方向にカットして2次元構造に平坦に延ばしたとき、前記各フレックス部材が、概ね周方向に延びる波型部分によって端から端まで直接連結された概ね長手方向に延びる湾曲部分を備え、概ね周方向に延びる前記各波型部分が、実質的に等しい中心長さを有し、S型の構造を有する、1または複数のフレックス部材と、
を備える腔内プロテーゼ装置。
【請求項11】
請求項1に記載の腔内プロテーゼ装置において、
周方向の前記各波型部分の起伏箇所は、前記長手方向軸に沿って、すぐ隣接した周方向の波型部分の起伏箇所から位相がずれている、腔内プロテーゼ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公開番号】特開2012−120873(P2012−120873A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37277(P2012−37277)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【分割の表示】特願2007−531367(P2007−531367)の分割
【原出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(597041828)コーディス・コーポレイション (206)
【氏名又は名称原語表記】Cordis Corporation
【Fターム(参考)】