説明

拡散反射指向性を有する反射構造体及びこれを具備する装置

より確実に拡散反射光に所望の指向性を持たせることのできる反射構造体及びこれを具備する装置を提供する。基体層10により支持され粗面化された光反射層20を有する光拡散反射構造体1。光反射層20は、網目状に配されそれぞれ陥没及び突起の一方の形状を有する網目部2hと、これら網目部2hの周囲において網状に連続して延在し当該陥没及び突起の他方の形状を有する網部2Mとを有する。網部2Mは、平面図において所定の第1方向#1及びこれに略直交する第2方向#2に延在する第1延在部Po′と第1及び第2方向から略45度の角度を有して延在する第2延在部Ps′とに分類される。第1及び第2延在部Po′,Ps′は、それぞれ略一定幅を有し、第1延在部Po′の幅は、その単位延在長当たりの有効反射表面積を大きくされるよう第2延在部Ps′の幅よりも大きくされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を拡散させて反射する反射構造体に関する。より詳しくは、本発明は、拡散反射光に指向性を持たせることの可能な反射構造体に関する。本発明はまた、かかる反射構造体を具備する装置、特に、反射型又は半透過型(transflective)液晶表示装置などの装置に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直配向(VA)液晶を用いて高反射率(42%)かつ高コントラスト比(80:1)を有する反射型カラーTFT−LCDを開発したとの報告がある(非特許文献1)。この非特許文献はまた、VA液晶としてMVA(Multi-domain Vertical Alignment)液晶を採用し、新しく開発したフォトマスクレスプロセスによるしわ(皺)拡散反射電極で、低コストで高い表示性能を有する反射型カラーTFT−LCDを実現することに成功したことも報告している。
【0003】
このしわ(皺)拡散反射電極は、次のように形成される。感光性樹脂層をTFT基板上に形成し、コンタクトホール形成用フォトマスクを用いて露光を行い、現像してコンタクトホールを形成する。次に残存する樹脂にフォトマスクなしでUV光を照射するが、この際、UV強度及び分光特性を調整することで1層の感光性樹脂に収縮率の分布を形成し、上層よりも下層の収縮率を大きくする。そしてこの厚さ方向に収縮率の分布を持つ樹脂を収縮させるためにベーク処理を用いて表面に皺状の凹凸を形成し、最後にこの皺状凹凸上にAlなどの高い光反射率を有するメタル層を形成して同様の皺状凹凸表面を有する拡散反射電極が作製される。
【0004】
この非特許文献はまた、皺状凹凸の方向による反射特性の制御についても触れている。これは、皺状凹凸の方向を制御することにより、入射光を特定の方位だけに反射させることができるというものである。より具体的には、感光性樹脂層と基板間の界面条件を変化させることにより皺状凹凸の方向を制御し、上下方向及び左右方向に高い反射率を有する指向性反射特性を得ている。
【0005】
しかしながら、この皺状の凹凸の形状は、感光性樹脂の厚さやUV照射エネルギーだけでなく、他の種々様々な製造パラメータにも大きく依存するものであり、所望の形状を確実に作ることは簡単ではないと想定される。また、最適なパラメータを見出しこれに従って製造したとしても、実際の製造フローにおいては不測のパラメータ変動が生じることが多く、所望の形状を安定して形成することができず、特に製品間におけるばらつきが生じやすいものと考えられる。
【非特許文献1】杉浦規生、外3名,「MVA技術を用いた反射型カラーTFT−LCD」,液晶第6巻,第4号,2002,日本液晶学会,平成14年10月25日発行,p.383−389
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より確実に拡散反射光に所望の指向性を持たせることのできる反射構造体及びこれを具備する装置並びにこれらの製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、複雑な製造手法に拠ることなく、簡単に、安定した形状でかつ製品間のばらつきの少ない反射構造体及びこれを具備する装置並びにこれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(構成)
これら目的を達成するため、本発明の一態様による反射構造体は、粗面化された光反射層を有する光拡散反射構造体であって、前記光反射層は、網目状に配されそれぞれ陥没及び突起の一方の形状を有する網目部と、これら網目部の周囲において網状に連続して延在し当該陥没及び突起の他方の形状を有する網部とを有し、前記網部は、平面図において所定の第1方向及びこれに所定角度で交差する第2方向に延在する第1延在部と、前記第1方向と前記第2方向との間の中間方向に延在する第2延在部とに分類され、前記第1及び第2延在部は、それぞれ略一定幅を有し、前記第1延在部の前記第1及び第2方向の少なくとも一方に延在する部分は、単位延在長当たりの有効反射表面積が前記第2延在部よりも大きくされている、光拡散反射構造体としている。
【0009】
このようにすることにより、主として第1及び第2延在部の当該有効反射表面積の値の相対関係だけで種々の拡散反射指向性を定めることができるので、所望の拡散反射指向性を確実に実現することができる。また、かかる反射構造体の網目部及び網部は、先述した先行技術におけるが如き不測の皺状パターンに拠らず、いずれの製品においても同じ形状及び配置パターンを持つことができるので、この反射構造体による製品間のばらつきを生じさせない。
【0010】
この態様において、前記第1延在部の前記第1方向に延在する部分と前記第2方向に延在する部分とは、単位延在長当たりの有効反射表面積が異なるものとすることができる。これにより、第1方向と第2方向とにおける反射光分布も異ならせることができる。
【0011】
また、前記中間方向は、前記第1方向と前記第2方向とがなす角を二分する角度方向であるものとすることができる。これにより、当該中間方向における反射光分布をバランスのとれた形で第1及び第2方向におけるものよりも劣勢なものとすることができる。
【0012】
ここで、前記所定角度は、90°としてもよいし、90°以外の角度としてもよい。いずれの場合も第2延在部の反射に寄与する程度を減らす一方で第1延在部の反射に寄与する程度を増やすことができる。得られる指向性は、直交十字形や楕円形、非直交十字形その他これらの混合形状のものとなる。
【0013】
上記1)から4)の形態において、前記有効反射表面積は、当該延在部の幅により規定されるものとすることにより、当該有効反射表面積を簡単に設定することができる。
【0014】
またこの形態において、前記第1及び第2方向は、当該反射構造体の主面の正面視にて水平及び垂直方向に対応するものとすることができる。これにより、反射構造体の主面を見る者は、視点を当該水平及び垂直方向に移動させても、比較的大なる強度の反射光を見ることができる。かかる用途は広く存在することが想定され有益である。
【0015】
さらに、前記網目部は、平面図視略多角形を呈しているものとすれば、パターン設計上有利な側面を持ちうることになり、前記光反射層の下層に当該光反射層の粗面形状を規定するための凹凸下地層を有するものとすれば、多層構造による反射構造体を提供することができる。
【0016】
また、前記第1及び第2方向に対応する方位角をそれぞれθ1及びθ2とし、α及びβをそれぞれ0°より大なる所定の角度とした場合に、前記第1及び第2延在部は、それぞれθ1+180°×n±α,θ2+180°×n±β[n=0,1]の範囲内の方位角を呈する法線を立てることの可能な反射表面を有する延在部からなる、反射構造体とすることができる。これにより、任意の第1及び第2方向を基準にして確実に所望の反射光分布を持たせることが可能となる。すなわち、様々な方向に延在する個々ないしは処々の延在部を、当該範囲の式に基づいて、第1延在部と第2延在部とに判別し、それぞれに適正な有効反射表面積を設定することが可能となる。ここでα>βの場合は、第1方向における反射光分布が第2方向におけるそれよりも優勢となり、α<βの場合は、第2方向における反射光分布が第1方向におけるそれよりも優勢となる。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の他の態様による反射構造体を用いた装置は、上述した態様の反射構造体を有する。これにより、ばらつきの少ない所望の反射指向性を有する反射構造体が適用されるので、当該装置の歩留まり向上に寄与することになる。
【0018】
この態様において、前記光反射層は電極として用いられるようにすることができる。これにより、反射型又は半透過型液晶表示装置、特にアクティブマトリクス方式の表示装置などの装置に好適となる。
【0019】
なお、本明細書及び請求の範囲の記載において、「網目部」は、当該反射構造体主面において分離して点在する光反射層(又は他の等価な関連の層)の凸又は凹状の島状領域を指し、「網部」は、これら島状領域を実質的に全て取り巻き若しくは画定するいわば縁取り部分であって当該光反射層(又は他の等価な関連の層)の凹又は凸状の連続した囲繞領域を指すものである。この点は以下の記載においてさらに明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき添付図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施例による光拡散反射構造体の主として下地層の平面構造を示し、図2は、図1に示される構造に基づく光拡散反射構造体をII−II線に沿って破断したときに得られる同構造体の断面を示している。
【0022】
この光拡散反射構造体1は、基体層としての基板10により支持され粗面化された、光反射性又はこれに加えて後述する反射電極に適した導電性をも有する金属材料、例えばアルミニウムからなる光反射層20を有する。本例では、反射構造体1がさらに、光反射層20の粗面化すなわち凹凸表面を形成するのにその下層において光反射層20に当該凹凸形成を呈せしめる下地層30を有する形態を採っている。下地層30は、ここでは、当該凹凸の基礎を形成する基礎層31とこの層を覆ってその凹凸形状を比較的滑らかなものとするオーバーコート層40とを含んでいる。これら基礎及びオーバーコート層は、パターン化されるのに適しかつ電気的に絶縁性の材料、例えば感光性樹脂からなり、周知のフォトリソグラフィーに基づく処理によりパターニングされる。
【0023】
基礎層31は、網目状に配されそれぞれ陥没の形状を有する網目部3hと、これら網目部3hの周囲において網状に連続して延在し突起の形状を有する網部3Mとを有する。基礎層31の網目部3hは、本例では完全に当該基礎層材料の除かれた開口となっているが(図2参照)、ある程度の厚さの材料を残した陥没状の穴の形としてもよい。この場合、オーバコート層40を省略することができる。
【0024】
基礎層31の網部3Mは、図1に示されるように、平面図において所定の第1方向#1及びこれに略直交する第2方向#2に延在する第1延在部Poと、所定の第3及び第4方向#3,#4に、すなわち当該第1及び第2方向から略45度の角度を有して延在する第2延在部Psとに分類される。第1延在部Poの各々は、略一定幅を有して当該第1又は第2方向に延在するとともに、第2延在部Psの各々も、略一定幅を有して当該第3又は第4方向に延在する。
【0025】
本発明のもう1つの主要な特徴は、網部3Mの第1延在部Poの幅が、第2延在部Psの幅よりも大きくされていることである。すなわち、図1に示されるように、第1方向#1に沿って延びる第1延在部Poの幅Wo1及び第2方向#2に沿って延びる第1延在部Poの幅Wo2の各々は、第3方向#3に沿って延びる第2延在部Psの幅Ws3及び第4方向#4に沿って延びる第2延在部Psの幅Ws4よりも大きくされている。
【0026】
本例では、このような延在部の幅の条件を満たしつつ、各延在部の幅は、製造上許される範囲内でそれぞれが任意の値を有するようにしているが、第1延在部Po用の幅及び第2延在部Ps用の幅をそれぞれ規定の値に統一して設定するようにしてもよい。
【0027】
このようにして形成される基礎層31の上面全体に、オーバーコート層40が積層され、さらにその上に光反射層20が積層される。したがって、光反射層20は、概して基礎層31及びオーバコート層40の平面パターンに相似の平面パターンを有しつつ、基礎層31の網部3M及び網目部3hによる凹凸(表面粗度)がオーバーコート層40によりある程度緩和された凹凸(表面粗度)に応じて、粗面化されることになる。
【0028】
したがって、光反射層20は、上記網目部3h及び網部3Mに対応する形で、網目状に配されそれぞれ陥没の形状を有する網目部2hと、これら網目部2hの周囲において網状に連続して延在し突起の形状を有する網部2Mとを有することになる。そして、これも上記第1及び第2延在部Po,Psに対応する形で、光反射層20の網部2Mは、平面図において第1方向#1及び第2方向#2に延在する第1延在部Po′と第1及び第2方向から略45度の角度を有して延在する第2延在部Ps′とに分類される。図1には、かかる光反射層の網部2Mと網目部2hとの境界が点線にて示されている。
【0029】
また、光反射層20の網部2Mの第1及び第2延在部Po′,Ps′も、上記基礎層31に係る第1及び第2延在部Po及びPsが略一定幅を有していることに起因し、それぞれ略一定幅を有する。さらに、光反射層20の網部2Mの第1延在部Po′の幅も、上記基礎層31の網部3Mに係る第1延在部Poの幅が第2延在部Psの幅よりも大きくされていることに起因し、光反射層20の網部2Mの第2延在部Ps′の幅よりも大きくされることになる。
【0030】
このように構成される本実施例による反射構造体1によって、当該反射構造体主面を正面から見たときに、以下に説明するような十字形の指向性を有する拡散反射特性が得られる。
【0031】
図3及び図4は、かかる十字形指向性について説明するための反射層20の表面モデルを示している。
【0032】
図3は、上記基礎層31(反射層20)の網部3M(2M)の延在幅が均等である場合の一連のモデルを示しており、図3の左の図(a)は、代表的に第3及び第4方向#3,#4に沿う反射層20の網部2Mの第2延在部Ps′の一部を模して表したものである。この図3の(a)における第2延在部Ps′に例えば真正面から平行光を入射すると、当該延在部から反射する光は、それぞれの延在部の中心軸Aに関し対称な形の強度分布を呈する。したがって、第2延在部Ps′の反射光分布は、図3の(a)の下方に概略的グラフで示される如く、第3方向#3の分布特性(点線)と第4方向#4の分布特性(実線)とが総合されたものとなる。なお、このグラフは、横軸をそれぞれの方向に沿いかつ基板10の主面に鉛直した仮想平面内の視角とし縦軸を反射光強度としたものである。ここでは第2延在部Ps′についてのみ例示したが、実際には、第1延在部Po′による光反射も考慮しなければならない。第1延在部Po′は、第3及び第4方向#3,#4から45°角度変移して延びているので、結局、図3の(a)に示される2つの分布曲線と、これらを縦軸を基準に45°回転させて得られる2つの分布曲線との総和に応じた特性が、概して第1及び第2延在部Po′,Ps′全体の反射光分布特性と考えることができる。
【0033】
こうした考察から、第1及び第2延在部Po′,Ps′の延在幅が均等である場合には、光反射層20は、図3の(b)に示されるような円錐台様体(又は頂部が球面を呈する円錐体)の如き形状の光反射性突起体によって光拡散反射をなすものとみなすことができる。この突起体から反射する光は、図3の(c)に示されるその平面図において象徴的に矢印で表されている如く全方位均等に反射する。
【0034】
これに対し図4は、反射層20の網部2Mの第1延在部Po′の幅を第2延在部Ps′の幅よりも大きくした場合の一連のモデルを示している。図4の(a)は、代表的に第1及び第2方向#1,#2に沿う反射層20の第1延在部Po′の一部を模して表したものである。この図4の(a)における第1延在部Po′に同じく平行光を入射した場合も、図3における場合と同様に第2延在部Ps′を含め全ての延在部における反射光分布を考慮に入れ、得られる反射光分布を考えることができるが、ここでは第1延在部Po′の幅が大きく設定されている点に留意すべきである。
【0035】
すなわち、第1延在部Po′の幅を大きくしたことにより、第1延在部Po′において入射光を反射する表面の面積も大きくなり、全入射光のうち第1延在部Po′で反射する光の割合も第2延在部Ps′のそれに比し大きくなる。換言すれば、反射構造体1全域の拡散反射を考えると、第2延在部Ps′による拡散反射よりも第1延在部Po′による拡散反射がより支配的になる。
【0036】
したがって、本実施例のように第1延在部Po′の幅を第2延在部Ps′の幅よりも大きくした場合には、光反射層20は、図3(b)の円錐台様体形状の光反射性突起体を、第1方向#1に平行な直線を含みかつ当該円錐台様体の母線に平行な2つの対向する平面Bにて切断しかつ第2方向#2に平行な直線を含みかつ当該円錐台様体の母線に平行な2つの対向する平面Cにて切断して得られる形状の図4の(b)に示されるような変形突起体(八角錐様体)によって光拡散反射をなすものとみなすことができる。この変形突起体から反射する光は、図4の(c)に示されるその平面図において象徴的に矢印で表される如く第1及び第2方向#1,#2に偏った形で反射する。すなわち、この変形突起体は、第1及び第2方向#1,#2に多く光を反射し、第3及び第4方向#3,#4にはあまり光を反射しない。この変形突起体の切断平面B,Cが、第1及び第2方向#1,#2の反射光を第3及び第4方向#3,#4の反射光に対し相対的に増大させていると解することができる。
【0037】
かくして、図4の(c)に点線Dで示されるような比較的強度の高い反射光の方位分布が十字状に形成されることになる。
【0038】
なお、光反射層20は、網目部2hにおいても拡散反射するが、この網目部2hも基本的には網部2Mの延在部と同様の曲面を呈するものとみなすことができ、同様に十字状の高強度反射光の方位分布に寄与することとなる。重要なのは網部と網目部との境界部周辺における曲面であり、第1延在部の幅を大きくすることにより当該境界部周辺の曲面の有効反射面積が大きくされ、当該第1延在部の延在方向に直交する方向における反射光を多くすることが可能となるのである。
【0039】
このように第1延在部Po′の幅を第2延在部Ps′のそれよりも大きくすることは、上記切断面B,Cを形成することと等価であり、当該幅を相対的に大きくすればするほど当該切断面の面積が大きくなり、第1延在部Po′において反射する光が増えることになる。
【0040】
本実施例では、図5に示されるように、反射構造体1の主面に垂直に立ち第1及び第2方向#1,#2にそれぞれ平行な2つの直交平面1p,2pに沿う任意の視線により当該主面を見たときに、他の方向から見たときよりも強い反射光が得られるようにすることを目的としている。したがって、第1及び第2方向#1,#2に沿って延在する第1延在部Po′の幅を他よりも大きくすることにより、反射させたい方向の反射表面(図4(b)に示されるモデルでは切断表面B,C)の面積を大きくし、当該直交平面1p,2pに平行な視線における拡散反射光を増大せしめているのである。このようにして得られる反射光の分布は、平面図上は十字の形を呈するので、このような分布を本明細書では十字形指向性と呼んでいる。
【0041】
なお、上記幅Wo1,Wo2,Ws3,Ws4は、網部3Mの底部における幅としてもよいが、図2に示されるように、当該網部3Mの底部から所定距離dだけ上方に隔たる位置において基板10の主面に平行な仮想面により当該網部を切断して得られる面における幅(Wo1′)としてもよい。後者の如き網部幅の規定によれば、基板表面が平坦でないなどの理由により網部3Mの頂部高さが一様でない場合においても、網部3Mの幅の設定を適正に行うことができる。
【0042】
上述においては、光反射層20の網部2Mの延在部の形状及び幅を基礎層31の網部3Mの延在部の形状及び幅に基づいて定める形態を挙げたが、基礎層31とオーバーコート層40との2層構造ではなく単一層による凹凸下地層を設ける形態でもよいし、下地層そのものが無く光反射層単独でその表面に所望の凹凸を形成する形態でもよい。このような代替の形態においても、該当する網部の幅を上記dを用いて説明した主旨と同様に規定することができる。すなわち、結果的に本発明特有の特徴を実現するよう反射層の網部を規定することができるのであれば、幅を規定する対象の層の当該網部の頂点からdだけ隔たる位置において基板主面に平行な仮想面により当該網部を切断して得られる面における幅とすることができる。
【0043】
また、幅の値により第1延在部と第2延在部との関係及びこれらの延在形状を規定したが、適宜、幅に代わる当該延在部の他の形状パラメータを採用してもよい。当該他の形状パラメータを採用した場合でも、それが結果的に本発明独自の特徴を有するための等価な値に相当するのであれば、その場合は本発明の技術的思想を有するものと解すべきである。かかる延在部の幅その他のパラメータによる規定の要旨を概括すれば、次のようになる。
【0044】
例えば延在部の幅を変えることは、その有効反射表面積のレートを変えることを意味する。より詳しくは、第1延在部Po′と第2延在部Ps′とを並べた場合、図6に示されるように、幅W1を有する第1延在部Po′とこれよりも小さい幅W2を有する第2延在部Ps′との単位延在長Lo当たりの表面積は、前者が後者よりも大きくなることは明らかである。入射光の反射は、表面積が大きい箇所に支配的になるので、第2延在部Ps′よりも第1延在部Po′による反射の割合が大きくなる。結局、所望の方向(図示の例では#1)に反射光を偏らせるためには、概して当該所望の方向に直角な方向(同#2)に延びる延在部の単位延在長当たりの有効反射表面積を大きくすればよいのである。本実施例では、その所望の方向が第1及び第2方向#1,#2であるので、これらの方向に延びるそれぞれの第1延在部Po′の単位延在長当たりの有効反射表面積を大きくしているのである。これに対し、第1及び第2方向#1,#2のいずれか一方の方向にだけ反射光を偏らせる場合は、それらのうち該当の1つの方向に延びる延在部だけ単位延在長当たりの有効反射表面積を大きくすればよい。
【0045】
これまでは、網部を上下又は左右方向に延びる第1延在部Po(Po′)と斜め方向に延びる第2延在部Ps(Ps′)との2つのタイプに分けて、前者が後者よりも大なる幅を有する旨述べたが、実際は、特に網目の大きさや形状等をランダムにした場合などは、網部の延在方向は様々であり、上述した第1ないし第4方向#1〜#4に厳密には対応づけられない。
【0046】
そこで本実施例においては、網部及び網目部のパターンを設計する際に、次のような工夫をしている。
【0047】
図7は、1つの網目部3h及びこれを取り囲む網部3Mにのみ対応する原パターン部分3h′,3M′を描いたものである。この原パターンは、1つの網目部3h′に対し等しい幅の網部3M′がこれを取り囲む形態を採る。ここでは、網目部3h′が7角形であり、網部3M′が7つのノードを持つ形態が一例として示されている。そして、所定方向x、例えば第2方向#2の一方の方角を基準にして網部3M′のノード間部分すなわち網部セグメントの延在方向をそれぞれ判定する。図7においては、最初の判定対象の網部セグメントとその次の判定対象の網部セグメントとについての延在方向の判定の様子が示されており、それぞれ、所定方向xに対して57°,108°の角度で延在することが判定される。他の網部セグメントについても同様に所定方向xに対する角度(以下、延在角と呼ぶ)が判定される。
【0048】
全ての網部セグメントについて延在角が判定されると、これらの延在角が予め定められた角度範囲のいずれに属するかを判定する。図8は、かかる角度範囲を示したものであり、(90°×n)±A[n=0,1,2,3]、すなわち0°±A,90°±A,180°±A,270°±Aの各範囲と、45°+(90°×n)±B[n=0,1,2,3]、すなわち45°±B,135°±B,225°±B,315°±Bの各範囲との2つの類型に分類される。ここで、B=45°−Aである。Aの値としては、45°の半分である22.5°を用いて良好な結果を得ているが、他の値でもよい。
【0049】
第1の類型oに属する4つの範囲は、それぞれ第1及び第2方向#1,#2に対応する0°,90°,180°,270°を中心とする周辺角度範囲であり、この範囲に入る延在角を呈する網部セグメントは、横方向又は縦方向に延在するとみなされる。一方、第2の類型sに属する4つの範囲は、それぞれ第3及び第4方向#3,#4に対応する45°,135°,225°,315°を中心とする周辺角度範囲であり、この範囲に入る延在角を呈する網部セグメントは、斜め方向に延在するとみなされる。
【0050】
このように延在角がどの類型の範囲に属するかの判定結果に基づいて、その延在角を呈する網部セグメントの幅を決定する。より詳しくは、類型oに属する綱部セグメントは、上記第1及び第2方向#1,#2に概して平行にすなわち縦横に延びているものと判定しその幅を相対的に大きくし、類型sに属する綱部セグメントは、上記第3及び第4方向#3,#4に概して平行にすなわち斜めに延びているものと判定しその幅を相対的に小さくするのである。この結果、図7の原パターンを元にして導かれるパターンは、図9のようなものとなる。
【0051】
図7及び図9から分かるように、延在角108°を呈して類型oに属する網部セグメントは、延在角57°を呈して類型sに属する網部セグメントよりも幅を大きくされている。本例においては、原パターンの網部3M′の幅を最大のものとし、類型oに属する網部セグメントはそのままこの幅を維持するとともに、類型sに属する網部セグメントについてのみ幅を減少させ、より具体的には当該最大幅の約半分に縮小しているが、当該幅の比を4:3,5:4といった別の縮小の形態でもよく、これらにより良好な結果が得られる。
【0052】
このように、様々な延在角を有する網部が第1ないし第4方向#1〜#4のいずれに属するかを判別し分類することにより、幅を大きくすべき網部箇所と小さくすべき網部箇所とを決定しているのである。
【0053】
かかる反射構造体を用いた一製品としての光拡散反射板100においては、第1ないし第4方向#1〜#4を図10に示されるように設定することができる。図10に示される例は、光拡散反射板100の前方に、例えばステンドグラスのような透光性でかつ色彩の施された絵画、広告その他の装飾品200が置かれ、観者300にその装飾を表示させるようなシステムを構成している。かかるシステムにおいて、外光は装飾品200を通過して光拡散反射板100に達しここで拡散反射した光は再び装飾品200を通過して外部へと導かれることになる。
【0054】
図10から分かるように、上記第1及び第2方向#1,#2は、装飾品200を正面から見て垂直及び水平方向に対応付けられている。このようにすることにより、観者300は、当該垂直又は水平方向に移動してその装飾品200に対する視角を上下又は左右方向に変えた場合でも明るい装飾を見ることが可能となる。
【0055】
なお、観者300が垂直方向に移動して装飾品200を見る態様としては、例えば透明なガラス板をエレベータボックスの壁に有し当該ガラス板を通じて外部を視認可能なタイプのエレベータシステムがある。すなわち、当該エレベータボックスが移動する空間を形成する室部の内壁において、図10の如く背面に拡散反射板100が貼り合わされた装飾品200を掲示することにより、エレベータの乗客は当該ガラス板を通してこの装飾品200を見ることができる。この際、上述したように光拡散反射板100が上下方向に高い反射強度の分布を有するので、乗客は、その昇降中においても明るく見やすい装飾を見ることができるのである。
【0056】
図11は、上述した光拡散反射構造体の別の適用例であって、液晶表示装置に適用した例を示している。
【0057】
図11は、主として上述したような反射構造体と当該液晶表示装置に画素駆動素子として組み込まれるTFT(薄膜トランジスタ)との関係を示している。
【0058】
図11において、TFT102は、基板8上に形成されたソース及びドレイン電極71及び72とこの両者に接触しかつ跨る形で形成された半導体層73とを有する。ソース電極71は、透明導電膜7tとこれに積層する金属膜7mとによって構成されている。半導体層73は、ゲート絶縁膜74によって覆われ、この上にゲート電極75が積層する。
【0059】
ゲート絶縁膜74は、ドレイン電極72の接続をなすためのコンタクトホール72hを形成する。TFT102の形成後は、上記下地層30が形成される。より詳しくは、基礎層31がその網部3Mだけを残して当該液晶表示装置の表示領域のほぼ全体にわたって形成され、基礎層31の上にオーバーコート層40が堆積される。基礎層31もオーバーコート層40も、ドレイン電極72のコンタクトホール72hから外れるようにパターン化される。そしてこのようにして出来た下地層30の上に光反射層20が形成される。ここでの光反射層20は、光反射特性だけでなく導電性をも有する材料から形成され、ドレイン電極72との電気的接続がなされるようにしている。
【0060】
かくして粗面化された光反射層20は、TFT102に接続される画素電極として形成される。この態様によれば、光反射層20は、対向基板91及び液晶層92を通じて入射した光の拡散反射をなすとともに、液晶層92の表示単位領域部分すなわち画素領域に対する電位付与手段たる画素電極として機能することができる。
【0061】
図11は構造の一部しか示していないが、このような構造は、当該液晶表示装置の表示領域全域にわたり繰り返され形成されることになる。
【0062】
なお、画素電極を粗面化して光拡散性を持たせ反射型又は半透過型液晶装置を実現すること自体は知られているのでこれ以上は詳述しない。また、基板91及び液晶層92以外にも、種々の層や膜が用いられるのが普通であるが、これらについても種々の公知文献の記述に委ねここでは省略する。
【0063】
図12は、図11の如く液晶表示装置に適用された本実施例による反射構造体1の基礎層31の平面パターンを示している。この図12と比較すべきものとして、図13に網部3Mの延在幅を全て一定の同じ値とした例が示されている。この図12と図13とを比較することによって、本実施例の特徴を視覚的に理解することが容易となる。なお、図12及び図13において点線で示される領域は、画素電極の占める領域に対応するものであるが、ここでは当該画素電極領域の大きさとパターンの個々の網目との大きさとを比べ易いようにするためだけに示しており、画素電極固有のパターン形態を表していない。
【0064】
図14は、本実施例による反射構造体1の光反射層20の指向性を表しており、直交するx及びy軸は、それらの両端において0°,90°,180°及び270°の方位角を指している。ここで言う方位角は、図15に示されるように、光反射層の表面形状を円形断面を基板主面に平行な底部とする半球体で表した場合、当該半球体の任意の球面に立つ法線Nを当該底部に平行な面に垂直に投影させて得られる直線が基準方位(本例ではxの右端)となす角θを意味している。
【0065】
図14には第1象限だけを詳しく示しているが、360°の方位角全体を15°の刻みで指向性の値を測定した。図14における実線の曲線(ケース1)は本実施例による反射構造体の特性を示し、破線(ケース2)は、図13に示される如き網部の延在部の幅が均等である場合の反射構造体の特性を示している。
【0066】
かかる指向性の値として、反射構造体1の光反射層20の凹凸面全体を小さくかつ多数の升目に区切り、各升目の面がどの方位を向いているのかを全て集計したデータに基づく値を採用した。より詳しくは、総数Sの升目のうち同じ方位角θを有する升目が幾つあるかについて値を求めたものであり、同じ方位角θを有する升目の数がS1であるときには、S1/Sの値が当該光反射層の凹凸面全体において当該方位角θの反射表面が存在する率すなわち頻度(反射表面方位角頻度)を採用した。図14のグラフにおいては、全方位角にわたり原点からの距離に比例して当該反射表面方位角頻度の値が大きくなる極座標の形態を採っている。
【0067】
図14から分かるように、本実施例による反射構造体によれば、方位角0°,90°,180°及び270°の反射表面の頻度が他の方位角のものよりも著しく高い十字形の分布を呈する。一方、網部の延在部が均等である場合の反射構造体(破線)は、全方位角について均等に反射表面が分布することが分かる。
【0068】
かかる反射表面の十字形の分布は、反射構造体表面から当該方位角0°,90°,180°及び270°に偏って光が反射することを意味する。
【0069】
なお、ケース1においては、基礎層31の網部3Mの第1及び第2延在部Po,Psの幅をそれぞれ略4μm,2μmとし、ケース2においては、網部の全延在部の幅を略4μmとした。また、両ケースにおいて、網目部の中心間ピッチを略12μmとし、オーバーコート層及び光反射層は膜厚一定とした。
【0070】
上記実施例においては、網目部及び網部をそれぞれ陥没状及び突起状としたパターンであったが、この逆の形態で網目部及び網部をそれぞれ突起状及び陥没状とした反転パターンとすることもできる。
【0071】
図16は、かかる反転パターンを有する第2実施例による光拡散反射構造体1′の主として下地層の平面構造を示し、図17は、図16に示される構造に基づく光反射構造体をXVI−XVI線に沿って破断したときに得られる同構造体の断面を示している。
【0072】
本実施例においては、基礎層31′の網部3M′が凹状とされ、網目部3h′が凸状とされるので、これを反映した形で光反射層20の網部2M′及び網目部2h′も、それぞれ凹状及び凸状とされる。ここでも、網部3M′の第1延在部Poの幅を第2延在部Psの幅よりも大きくしているが、かかる幅は、本実施例においては基礎層31′の突起体間の距離として規定される。
【0073】
このような形態の反射構造体も、反射を奏する曲面自体は図3及び図4を参照して説明したようなモデルで表すことができるので、同様に上述した作用効果を期待することができる。また、図7ないし図9を参照して説明したような網部の延在部の幅の設定手法も同様に適用可能である
【0074】
なお、上述した網目部3h,3h′は、図1や図16に示されるような平面図視略多角形を呈するものとすれば、パターン設計上有利な面はあるが、必ずしも多角形である必要はない。
【0075】
上記各実施例では、延在部の有効反射表面積を幅という1つの構造パラメータによって規定する態様を述べたが、これ以外にも、延在部の平面図に現れる面積により規定したり、次のように高さや深さによって規定する方法もある。
【0076】
すなわち、図1に示されるような網部が凸状体を形成する場合は、幅の代わりに当該網部の延在部の高さによりその有効反射表面積を変える趣旨のものとしてもよい。この場合、隣接する網目部の最下点(又は周辺網目部の各最下点を結んだラインを含む面)を基準にして処々の延在部の高さを規定するのが好ましい。かかる高さを規定するに際し、上述した幅の規定と同様に、本発明特有の特徴を実現するような反射層の網部の規定となるよう、適宜、対象とする層(基礎層31,オーバーコート層40及び反射層20のいずれか)について行われることになる。
【0077】
図16及び図17に示されるような網部が凹状体を形成する場合は、幅の代わりに当該網部の延在部の深さによりその有効反射表面積を変える趣旨のものとすることができる。この場合、隣接する網目部の頂点(又は周辺網目部の各頂点を結んだラインを含む面)を基準にして処々の延在部の深さを規定するのが好ましい。かかる深さを規定する場合も、適宜、対象とする層(基礎層31′,オーバーコート層40及び反射層20のいずれか)について行われることになる。
【0078】
上記各実施例においては、いわば直交十字形の拡散反射指向性を有し高強度反射光を呈する4方位において同等の反射光分布を呈するものについて説明した。かかる指向性は、図18に示されるよう例えばディジタルカメラ付き携帯電話などの持ち運び自在な電子機器においてその液晶表示パネルが回転可能な機構を有する場合などに好適となる。この例において、当該機器は、図11において説明したような本発明による反射型又は半透過型液晶表示パネルを有し、通常動作時には図18の(a)の如く第1及び第2方向#1,#2が画面の垂直及び水平方向に対応して使用される一方、ディジタルカメラでの撮影時には図18の(b)の如く当該表示パネルを90°回転させてモニタ画面として第1及び第2方向#1,#2が画面の水平及び垂直方向に対応した状態で使用される。既述したように、第1及び第2方向#1,#2において高強度反射光が得られるので、ユーザは、通常動作時においても90°回転後の撮影時においても明るい良好な表示画像を見ることが可能となるのである。
【0079】
なお、反射指向性を互いに90°異なる第1及び第2方向#1,#2に沿う形にしたことは、図18(a)及び(b)のいずれか単一の使用状態においても特有の効果がある。すなわち、かかる機器においては、ユーザは画面をその上下方向及び水平方向に沿う視角で見ることが多く、当該画面の斜め方向から見る場合は極めて希であるので、第3及び第4方向#3,#4に沿う反射光を犠牲にして第1及び第2方向#1,#2に反射光を偏向させることは実用上極めて有益となるのである。
【0080】
他方、本発明によれば、このような指向性以外にも種々の形態を導くことができる。
【0081】
以下、図19,図20及び図21を参照して、これまで説明した直交十字形指向性以外の指向性を実現する変形例を説明する。これらの図は、図14及び図15に倣って示されており、基準方位xを指す軸とこの方位から90°をなすもう1つの基準方位yを指す軸とを用いている。
【0082】
図19においては、第1方向#1と第2方向#2とで反射表面頻度の分布態様が異なる直交十字形指向性を示している。しかもこの指向性は、反射光を偏向させるべき方向である第1及び第2方向#1,#2が基準方位からそれぞれ所定の角度θ1,θ2だけ偏倚させられている。
【0083】
図19から分かるように、第1方向#1における反射表面頻度は第2方向#2におけるものよりも高いものとなっており、第1方向#1における反射光は、第2方向#2における反射光よりも高強度を呈することになる。また、図14における実線のものとは45°回転した直交十字状の分布を呈している。
【0084】
このような指向性とするためには、θ1+180°×n±α[n=0,1]の第1範囲p、θ2+180°×n±β[n=0,1]の第2範囲qに収まる方位角を呈する法線(図15参照)を持つことのできる反射表面を主として有する網部の延在部が、これら以外の延在部よりも大なる単位延在長当たりの有効反射表面積を有するようにすればよい。本例では、0<θ1<90°,90°<θ2<180°であり、θ2−θ1=90°,α>βとしている。αはθ1の方位を中心としたときに第1方向#1に属する方位角の法線を持つことのできる反射表面を有する延在部(以下、θ1延在部と言う)の範囲を定めるための当該法線の方位角度に相当し、βはθ2の方位を中心としたときに第2方向#2に属する方位角の法線を持つことのできる反射表面を有する延在部(以下、θ2延在部と言う)の範囲を定めるための当該法線の方位角度に相当する。
【0085】
α>βは、第1方向#1における反射表面方位角頻度を第2方向#2におけるものよりも高いものとする1つの条件である。もう1つの条件は、上記第1範囲pに属するθ1延在部の当該有効反射表面積を第2範囲qに属するθ2延在部のそれよりも大きくすることによって達成される。これらの条件を複合して実現してもよい。
【0086】
なお、概して本例の場合、θ1延在部は第2方向#2に延びる延在部となり、θ2延在部は第1方向#1に延びる延在部となる。このことを端的に示したのが図19の下方の図であり、それぞれ図3のモデルに倣い半円筒形にて延在部が表されている。第2方向#2に延びる延在部pθ1の反射表面に立ついずれの法線も、点線で描かれた平面の如き第1方向#1に平行な鉛直平面内にあり、第1方向#1に延びる延在部pθ2の反射表面に立ついずれの法線も、点線で描かれた平面の如き第2方向#2に平行な鉛直平面内にあることになる。したがって、第1及び第2範囲p,qに属する各延在部は、図19の下方の図からそれぞれ延在方向を角度±α,±βだけ偏倚して延びる延在部まで含むことになる。
【0087】
本例では、上述から分かるように、対象の延在部が、第1及び第2範囲p,qに収まる方位角を呈する法線を持つことのできる反射表面を主として有するか否かに基づいてその有効反射表面積を定めるようにしている。これは、延在部の延在方向に基づいて当該延在部の幅を定めるようにした先に図7ないし図9を参照して説明した形態を一般化した形態に相当する。
【0088】
第1方向#1における反射表面頻度と第2方向#2におけるものとを等しくするには、α=βとする。特にそれぞれ45°/2=22.5°前後の値が好ましく、例えば10°から35°の範囲内とすることができる。α=β=22.5°とした例は、図14に示される形態に相当し、ここでは第1方向#1に属する延在部も第2方向#2に属する延在部も同じ当該有効反射表面積とされている(同じ幅とされている)ので、両方向における反射表面方位角頻度の分布が等しいものとなっている。
【0089】
図20においては、第1方向#1と第2方向#2とで反射表面方位角頻度の分布の優劣を反対にし分布範囲を45°回転させた指向性(実線)、第2方向#2の反射表面方位角頻度のみ高くした指向性(一点鎖線)、及び図14と同じ形態の指向性(点線)が示されている。
【0090】
実線が示す指向性とするためには、上記式に対し、θ1,θ2をそれぞれ0°,90°とし、β>αとする。β>αとする代わりに若しくはこれに加えて、当該θ2延在部の当該有効反射表面積を当該θ1延在部のそれよりも大きくしてもよい。
【0091】
一点鎖線が示す指向性とするためには、上記式に対し、θ1,θ2をそれぞれ0°,90°とし、β≫αすなわちβをαに比し著しく大きくする。β≫αとする代わりに若しくはこれに加えて、当該θ2延在部の当該有効反射表面積を当該θ1延在部のそれよりも著しく大きくしてもよい。この指向性は、これまで説明した2つの方向に対するものとは異なり、単一の方向に対してのみ高い反射表面頻度の分布を持つものである。かかる指向性は、例えば画面の上下方向のみ又は左右方向のみに強い反射光を必要とする装置に好適となる。
【0092】
図21においては、第1方向#1と第2方向#2とが直交しない場合であって両方向における反射表面頻度の分布が均等である指向性が示されている。
【0093】
このような指向性とするためには、上記式に対し、θ2−θ1>90°とし、α=βとする。ここでは当該θ1延在部の当該有効反射表面積を当該θ2延在部のそれと等しくしている。第1方向#1と第2方向#2とにおける反射表面頻度の分布が均等でないものとするためには、α≠βとすればよく、或いはこれに等価な当該有効反射表面積の設定をすればよい。
【0094】
なお、図21の如き指向性は、図22のような用途に好適となる。図22は、当該指向性を呈するよう構成された本発明による反射構造体を図11の如き反射型又は半透過型液晶表示装置に設けた場合におけるその表示装置の使用態様を示している。この表示装置は、当該画面の対角線方向に第1及び第2方向#1,#2が設定され、ユーザは、概して専らこれらの方向においてその画面の表示画像を見るような位置に半固定的に定められている。これの具体例としては、自動車室内の中央にこのような表示装置を置く形態が挙げられる。このような使用態様は、各ユーザの画面に対する視線が直交するものではなく、かつ視角がある程度狭い範囲内で殆ど固定状態を保つようなものであり、当該画面の対角線方向において明るく良好な画像を表示させることができて好都合である。
【0095】
以上、本発明による代表的実施例の幾つかを説明したが、当業者であれば、請求の範囲に記載の発明の主旨に逸脱することなく、これら実施例を必要に応じて種々改変することができる。
(産業上の利用の可能性)
【0096】
本発明は、光拡散反射機能を有する反射構造体及びこれを用いた装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1実施例による光拡散反射構造体の主として下地層の平面構造を示す平面図。
【図2】図1に示される構造に基づく光反射構造体をII−II線に沿って破断したときに得られる同構造体の断面図。
【図3】反射層の網部の延在幅が均等である場合の一連のモデル図。
【図4】反射層の第1延在部の幅を第2延在部の幅よりも大きくした場合の一連のモデル図。
【図5】本発明の実施例による十字形の拡散反射指向性を説明するための模式的斜視図。
【図6】第1及び第2延在部の単位延在長当たりの有効反射表面積について説明するための模式図。
【図7】1つの網目部及びこれを取り囲む網部にのみ対応する原パターンを示す模式図。
【図8】網部の延在部の延在角が予め定められた角度範囲のいずれに属するかを判定する態様を説明するための図。
【図9】図7の原パターンを元に延在部の幅を変更して得られるパターンを示す模式図。
【図10】本発明による反射構造体を用いた適用例を示す外観図。
【図11】本発明による反射構造体の別の適用例の液晶表示装置の一部構造を示す概略断面図。
【図12】本実施例による反射構造体の基礎層の平面パターンを示す平面図。
【図13】比較例による反射構造体の基礎層の平面パターンを示す平面図。
【図14】本実施例による反射構造体の光反射層の指向性を表すグラフ。
【図15】反射表面の方位角を説明するための模式図。
【図16】反転パターンを有する第2実施例による光拡散反射構造体の主として下地層の平面構造を示す平面図。
【図17】図16に示される構造に基づく光反射構造体をXVI−XVI線に沿って破断したときに得られる同構造体の断面図。
【図18】本発明による反射構造体を用いた他の適用例を示す外観図。
【図19】一変形例による反射構造体の反射表面方位角頻度の分布態様を説明するための図。
【図20】他の変形例による反射構造体の反射表面方位角頻度の分布態様を説明するための図。
【図21】さらに他の変形例による反射構造体の反射表面方位角頻度の分布態様を説明するための図。
【図22】本発明による反射構造体を用いたさらに他の適用例を示す概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗面化された光反射層を有する光拡散反射構造体であって、
前記光反射層は、網目状に配されそれぞれ陥没及び突起の一方の形状を有する網目部と、これら網目部の周囲において網状に連続して延在し当該陥没及び突起の他方の形状を有する網部とを有し、
前記網部は、平面図において所定の第1方向及びこれに所定角度で交差する第2方向に延在する第1延在部と、前記第1方向と前記第2方向との間の中間方向に延在する第2延在部とに分類され、
前記第1及び第2延在部は、それぞれ略一定幅を有し、
前記第1延在部の前記第1及び第2方向の少なくとも一方に延在する部分は、単位延在長当たりの有効反射表面積が前記第2延在部よりも大きくされている、
光拡散反射構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の反射構造体であって、前記第1延在部の前記第1方向に延在する部分と前記第2方向に延在する部分とは、単位延在長当たりの有効反射表面積が異なる、反射構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の反射構造体であって、前記中間方向は、前記第1方向と前記第2方向とがなす角を二分する角度方向である、反射構造体。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の反射構造体であって、前記所定角度は、90°である、反射構造体。
【請求項5】
請求項1,2又は3に記載の反射構造体であって、前記所定角度は、90°以外の角度である、反射構造体。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちいずれか1つに記載の反射構造体であって、前記有効反射表面積は、当該延在部の幅により規定される、反射構造体。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちいずれか1つに記載の反射構造体であって、前記第1及び第2方向は、当該反射構造体の主面の正面視にて水平及び垂直方向に対応する、反射構造体。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちいずれか1つに記載の反射構造体であって、前記網目部は、平面図視略多角形を呈している、反射構造体。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちいずれか1つに記載の反射構造体であって、前記光反射層の下層に当該光反射層の粗面形状を規定するための凹凸下地層を有する、反射構造体。
【請求項10】
請求項1ないし9のうちいずれか1つに記載の反射構造体であって、前記第1及び第2方向に対応する方位角をそれぞれθ1及びθ2とし、α及びβをそれぞれ0°より大なる所定の角度とした場合に、前記第1及び第2延在部は、それぞれθ1+180°×n±α,θ2+180°×n±β[n=0,1]の範囲内の方位角を呈する法線を立てることの可能な反射表面を有する延在部からなる、反射構造体。
【請求項11】
請求項1ないし10のうちいずれか1つに記載の反射構造体を有する装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、前記光反射層は電極として用いられる、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2007−506118(P2007−506118A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525994(P2006−525994)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051748
【国際公開番号】WO2005/026791
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(501344315)コニンクリユケ フィリップス エレクトロニクス エヌ.ブイ. (174)
【Fターム(参考)】