説明

拡散防止膜付積層体

【課題】 安価に拡散防止膜を形成することができる形成方法を提供する。
【解決手段】 拡散防止膜付積層体1はガラス基板3上に拡散防止膜5が設けられ、拡散防止膜5上には電極7a、7b、7c、7d、7eが形成されている。
電極7a、7b、7c、7d、7eおよび拡散防止膜5上には誘電体層9が形成されている。
ガラス基板3と電極7a、7b、7c、7d、7eおよび誘電体層9の間には拡散防止膜5が設けられており、ガラス基板3と電極7a、7b、7c、7d、7eの間およびガラス基板3と誘電体層9の間で拡散が生じるのを防止している。
なお、拡散防止膜5はスピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スリットスピンコート法、スプレースピンコート法等の方法を用いて塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散防止膜付積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に積層物を積層してなる積層体は、表示装置や半導体基板など、様々なものがあるが、これらは製造工程で数100℃程度の高温にさらされる場合がある。
【0003】
この場合、基板と積層物の間で熱による拡散現象が生じ、積層体の特性を悪化させるるおそれがあるため、真空蒸着等により基板と積層物の間に拡散防止膜を形成している場合があり、以下のようなものが知られている。
(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001-196187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような方法で拡散防止膜を形成すると非常にコストがかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は安価に拡散防止膜を形成することができる形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、基材と、前記基材上に設けられた拡散防止膜と、前記拡散防止膜上に設けられる積層物と、からなり、前記拡散防止膜は、溶液中に粒子が分散された分散溶液を基材上に塗布し、乾燥及び/または焼成することにより基材上に形成されることを特徴とする拡散防止膜付積層体である。
前記基材はガラスまたはセラミックスからなる。
前記粒子は、直径が100nm以下であってもよく、また直径が20nm以下であってもよい。
前記粒子は、金属酸化物及び/または金属窒化物及び/または金属水酸化物及び/またはシリコン酸化物及び/またはシリコン窒化物である。
前記分散溶液は、硝酸及び/または塩酸及び/またはアンモニアにより安定化されている。
前記分散溶液は、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スリットスピンコート法、スプレースピンコート法のうち、いずれかの方法を用いて基材上に塗布されてもよい。
前記積層物は、金属及び/または金属酸化物及び/または金属窒化物及び/または金属水酸化物及び/またはシリコン酸化物及び/またはシリコン窒化物からなる粒子により形成される。
前記積層物は、導電性金属を用いた電極であってもよく、前記電極は、金属粒子および焼結補助材からなってもよい。
前記拡散防止膜は、前記基材と前記積層物との間で拡散が生じることを防止する。
【0007】
また、第2の発明は、基材に、溶液中に粒子が分散された分散溶液を塗布する工程(a)と、前記分散溶液を乾燥及び/または焼成して拡散防止膜を形成する工程(b)と前記拡散防止膜上に積層物を形成する工程(c)と、からなることを特徴とする拡散防止膜付積層体の作製方法である。
前記工程(a)は、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スリットスピンコート法、スプレースピンコート法のうち、いずれの方法により前記分散溶液を塗布してもよい。
【0008】
本発明では、拡散防止膜を塗布によって形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安価に拡散防止膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る拡散防止膜の形成手順を示すフローチャートである。
【0011】
まず、基材としてのガラス基板を洗浄する(ステップ101)。
これはガラス基板状のゴミを除去するためである。
なお、ガラス基板は後述するように積層体の最底部に設けられる基板である。
【0012】
次にガラス基板をアニ−ルする(ステップ102)。
次にガラス基板を再び洗浄する(ステップ103)。
【0013】
次に、ガラス基板表面に拡散防止膜を塗布する(ステップ104)。
ここで拡散防止膜は溶液中に粒子が分散された分散溶液であり、粒子の直径は100nm以下であることが好ましく、最も好ましくは20nm以下である。
これは、粒子の直径が100nmを超える場合、粒子が自重で沈殿してしまい、分散されにくくなるからである。
【0014】
粒子の材質としては金属酸化物及び/または金属窒化物及び/または金属水酸化物及び/またはシリコン酸化物及び/またはシリコン窒化物が挙げられる。
【0015】
また、溶液は分子を安定化する作用があるものが望ましい。このような溶液としては硝酸及び/または塩酸及び/またはアンモニアが挙げられる。
このような溶液を用いることにより、粒子を帯電させ、その反発力によって粒子を安定化させることができる。
【0016】
また、分散溶液の塗布方法は種々の方法を用いることができ、例えばスピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スリットスピンコート法、スプレースピンコート法などが挙げられる。
【0017】
次に、拡散防止膜を塗布した上に積層物としての電極を取り付ける(ステップ105)。
電極は金属及び/または金属酸化物及び/または金属窒化物及び/または金属水酸化物及び/またはシリコン酸化物及び/またはシリコン窒化物の粒子からなり、導電性を有している。
なお、電極には上記の物質に加え、焼結補助材が添加されている。
焼結補助材とは、例えばガラスフリット(鉛ガラス等の低融点ガラス)である。
【0018】
次に、ガラス基板を600℃程度で焼成する(ステップ106)。
これは、拡散防止膜および電極を固化させるためである。
【0019】
次に拡散防止膜および電極上に積層物としての誘電体層を形成する(ステップ107)。
誘電体層は、誘電体の粒子をガラスフリット中に分散させた構造を有している。
次に、ガラス基板を焼成する(ステップ108)。
これは、誘電体層を固化させるためである。
【0020】
最後に、必要に応じて誘電体層上にその他の必要な層を形成する(ステップ109)。
【0021】
このようにして形成された拡散防止膜付積層体1を図2に示す。
図2は拡散防止膜付積層体1を示す図である。
拡散防止膜付積層体1はガラス基板3上に拡散防止膜5が設けられ、拡散防止膜5上には電極7a、7b、7c、7d、7eが形成されている。
電極7a、7b、7c、7d、7eおよび拡散防止膜5上には誘電体層9が形成されている。
【0022】
誘電体層9は、ガラスフリット11中に、誘電体粒子13が分散した構造を有している。
【0023】
ここでガラス基板3と、電極7a、7b、7c、7d、7eおよび誘電体層9の間には拡散防止膜5が設けられているので、拡散防止膜付積層体1が高温にさらされてもガラス基板3と電極7a、7b、7c、7d、7eの間およびガラス基板3と誘電体層9の間で拡散が起こることはない。
【0024】
このように、本実施の形態によれば、拡散防止膜付積層体1は、ガラス基板3と、電極7a、7b、7c、7d、7eおよび誘電体層9の間には拡散防止膜5が設けられており、拡散防止膜5は安価な塗布方法によって形成されている。
従って、安価に拡散防止膜を形成することができる。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0026】
例えば、本実施形態では、基材としてガラス基板を用いているが、セラミックス基板を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】拡散防止膜の形成手順を示すフローチャート
【図2】拡散防止膜付積層体1を示す図
【符号の説明】
【0028】
1…………拡散防止膜付積層体
3…………ガラス基板
5…………拡散防止膜
7a………電極
9…………誘電体層
11………ガラスフリット
13………誘電体粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられた拡散防止膜と
前記拡散防止膜上に設けられる積層物と、
からなり、
前記拡散防止膜は、溶液中に粒子が分散された分散溶液を基材上に塗布し、乾燥及び/または焼成することにより基材上に形成されることを特徴とする拡散防止膜付積層体。
【請求項2】
前記基材はガラスまたはセラミックスからなることを特徴とする請求項1記載の拡散防止膜付積層体。
【請求項3】
前記粒子は、直径が100nm以下であることを特徴とする請求項1記載の拡散防止膜付積層体。
【請求項4】
前記粒子は、直径が20nm以下であることを特徴とする請求項1記載の拡散防止膜付積層体。
【請求項5】
前記粒子は、金属酸化物及び/または金属窒化物及び/または金属水酸化物及び/またはシリコン酸化物及び/またはシリコン窒化物であることを特徴とする請求項3または請求項4記載の拡散防止膜付積層体。
【請求項6】
前記分散溶液は、硝酸及び/または塩酸及び/またはアンモニアにより安定化されていることを特徴とする請求項1記載の拡散防止膜付積層体。
【請求項7】
前記分散溶液は、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スリットスピンコート法、スプレースピンコート法のうち、いずれかの方法を用いて基材上に塗布されることを特徴とする請求項1記載の拡散防止膜付積層体。
【請求項8】
前記積層物は、金属及び/または金属酸化物及び/または金属窒化物及び/または金属水酸化物及び/またはシリコン酸化物及び/またはシリコン窒化物からなる粒子により形成されることを特徴とする請求項1記載の拡散防止膜付積層体。
【請求項9】
前記積層物は、導電性金属を用いた電極であることを特徴とする請求項1記載の拡散防止膜付積層体。
【請求項10】
前記電極は、金属粒子および焼結補助材からなることを特徴とする請求項9記載の拡散防止膜付積層体。
【請求項11】
前記拡散防止膜は、前記基材と前記積層物との間で拡散が生じることを防止することを特徴とする請求項1記載の拡散防止膜付積層体。
【請求項12】
基材に、溶液中に粒子が分散された分散溶液を塗布する工程(a)と、
前記分散溶液を乾燥及び/または焼成して拡散防止膜を形成する工程(b)と、
前記拡散防止膜上に積層物を形成する工程(c)と、
からなることを特徴とする拡散防止膜付積層体の作製方法。
【請求項13】
前記工程(a)は、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スリットスピンコート法、スプレースピンコート法のうち、いずれの方法により前記分散溶液を塗布することを特徴とする請求項12記載の拡散防止膜付積層体の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−269312(P2006−269312A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87701(P2005−87701)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】