拮抗剤抗CD40抗体薬学的組成物
治療上又は予防上活性な成分としての拮抗剤抗CD40抗体を含む安定な液体医薬組成物及びその調製において有用な方法を提供する。これらの組成物は拮抗剤抗CD40抗体、約pH5.0〜約pH7.0に組成物のpHを維持するための緩衝剤、及び液体組成物をほぼ等張性とするために十分な量の塩酸アルギニンを含む。本発明の安定な液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物は、増殖性疾患及び自己免疫及び/又は炎症の要素を有する疾患を治療するための方法において使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は医薬品製剤の分野、より詳しくは増殖性疾患及び自己免疫及び/又は炎症の要素を有する疾患を治療する場合に使用するための拮抗剤抗CD40抗体を含む安定な液体医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
遺伝子操作技術の開発における近年の進歩は薬品としての使用のために十分に多くの種々の生物学的に活性なポリペプチドを提供している。しかしながらポリペプチドは変性及び可溶性及び不溶性の凝集体の形成を包含する物理的不安定性、及び、加水分解、酸化及び脱アミド化のような種々の化学的不安定性の結果として生物学的活性を損失する場合がある。液体医薬品製剤中のポリペプチドの安定性は、例えばpH、イオン強度、温度、凍結−解凍の反復サイクル、及び加工中に起こるもののような機械的剪断力への曝露のような要因により影響される場合がある。凝集体形成及び生物学的活性の損失はまた、保存バイアル内部の溶液中及び気液界面での物理的攪拌及びポリペプチド分子相互作用の結果としても起こり得る。別の立体構造変化は、輸送中の攪拌又は別様に起因する界面の圧縮−伸長の間に気液及び固液界面に吸着したポリペプチドにおいて起こり得る。そのような攪拌はタンパク質をもつれさせ、凝集させ、粒子形成させ、最終的には他の吸着されたタンパク質とともに沈潜させる場合がある。タンパク質医薬品の安定性に関する一般的検討は例えばManning等(1989)Pharm.Res.6:903−918及びWang and Hanson(1988)J.Parenteral Sci.Tech.42:S14を参照できる。
【0003】
ポリペプチド含有液体医薬品製剤の不安定性は再構成のための適当な液体媒体とともに凍結乾燥された形態におけるこれらの製剤をパッケージ化すること推進した。凍結乾燥は組成物の保存安定性を向上させるが、多くのポリペプチドは乾燥状態における保存の間(Pikal(1990)Biopharm.27:26−30)、又は液体製剤として再構成する際の凝集体形成又は触媒活性の損失の結果として、低下した活性を示す(例えばCarpenter等(1991)Develop.Biol.Standard74:225−239;Broadhead等(1992)Drug Devel.Ind.Pharm.18:1169−1206;Mumenthaler等(1994)Pharm.Res.11:12−20;Carpenter and Crowe(1988)Cryobiology25:459−470;及びRoser(1991)Biopharm.4:47−53参照)。添加剤の使用は乾燥タンパク質の安定性を向上させているが、多くの再水和した製剤はなお、な凝集したタンパク質を許容できない、又は望ましくない量の不活性な凝集したタンパク質を有している(例えばTownsend and DeLuca(1983)J.Pharm.Sci.80:63−66;Hora等(1992)Pharm.Res.9:33−36;Yoshikawa等(1993)Pharm.Res.10:687−691参照)。更に又、再構成の必要性は不便であり、投薬が不正確になる可能性がある。。
【0004】
薬学的に有用なポリペプチドに包含されるものは組み換えにより製造されたモノクローナル抗体である。これらのクラスの治療薬のうちTNFファミリー受容体メンバーCD40をターゲティングする拮抗剤抗CD40抗体はB細胞関連の悪性疾患及び非血液学的悪性疾患、並びに自己免疫及び/又は炎症の要素を有する疾患の治療において大きく期待されている。CD40受容体は正常及び新生物性のヒトB細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、CD8T細胞、内皮細胞、単球及び上皮細胞、一部の上皮癌細胞、及び多くの固形腫瘍、例えば肺、乳房、卵巣、膀胱及び結腸の癌の表面上に存在する50〜55kDaの細胞表面抗原である。CD40抗原は又。活性化されたT細胞、活性化された血小板、延焼した血管平滑筋細胞、好酸球、慢性関節リューマチの滑膜、皮膚線維芽細胞及び他の非リンパ様細胞型上でも発現される。CD40を発現する細胞の型に応じて、ライゲーションにより細胞間接着、分化、活性化及び増殖を誘導することができる。
【0005】
例えば、CD40のその同族リガンドCD40L(CD154とも標記される)に対する結合はB細胞の増殖及びプラズマ細胞への分化、抗体生産、アイソタイプ切り替え、及びB細胞メモリー発生を刺激する。B細胞分化の間、CD40は前B細胞上で発現されるが、プラズマ細胞への分化時には消失する。APC上のCD40の発現はこれらの細胞の活性化において重要な同時刺激の役割を果たしている。例えばアゴニスト抗CD40モノクローナル抗体(mAb)はB細胞活性化においてTヘルパー細胞の作用を模倣することが分かっている。FcγRIIを発現する接着性細胞上で発現されれば、これらの抗体はB細胞増殖を誘導する(Banchereau等(1989)Science251:70)。更に又、アゴニスト抗CD40mAbはIL−4の存在下でIgM、IgG及びIgEの分泌に関するTヘルパーシグナルを置き換えることができる(Gascan等(1991)J,Immunol.147:8)。更に又、アゴニスト抗CD40mAbはリンパ節から単離されたB細胞のプログラムされた細胞死(アポトーシス)を防止することができる。
【0006】
これら、及び他の観察結果は、CD40とCD40Lの相互作用が体液性及び細胞媒介性の免疫応答の両方の調節において主軸となる役割を果たしているという現在の理論を裏付けている。より最近の研究は多様な生理学的及び病理学的なプロセスにおけるCD40/CD40L相互作用のはるかに広範な役割を明らかにしている。
即ち、CD40LによるCD40の係留とその後のCD40シグナリングの活性化は正常な免疫応答のための必要な工程であるが;CD40シグナリングの脱調節は疾患をもたらす場合がある。CD40シグナリング経路は自己免疫疾患に関与することが分かっている(Ichikawa等(2002)J.Immunol.169:2781−2787及びMoore等(2002)J.Autoimmun.19:139−145)。更に又、CD40/CD40L相互作用は炎症プロセスにおいて重要な役割を果たしている。例えば、CD40とCD40Lの両方がヒト及び実験的なアテローム性動脈硬化症患部で過剰発現される。CD40刺激はマトリックス分解酵素の発現及び組織因子発現をアテローム関連細胞型、内皮細胞、平滑筋細胞及びマクロファージにおいて誘導する。更に又、CD40刺激はプロ炎症性サイトカイン、例えばIL−1、IL−6及びIL−8及び接着分子、例えばICAM−1、E−セレクチン及びVCAMの生産を誘導する。CD40/CD40L相互作用の抑制は動物モデルにおいてアテローム形成を防止する。移植モデルにおいて、CD40/CD40L相互作用のブロッキングは炎症を防止する。CD40/CD40L結合はアルツハイマーのアミロイドベータペプチドと相乗作用的に作用して、小グリア細胞の活性化を増進することにより、神経毒をもたらす。慢性関節リューマチ(RA)を有する患者においては、CD40発現は関節の軟骨細胞において増大しており、即ち、CD40シグナリングは損傷性のサイトカイン及びマトリックスメタロプロテイナーゼの生産に寄与していると考えられる。Gotoh等(2004)J.Rheumatol.31:1506−1512を参照できる。
【0007】
同様に、B細胞系統の腫瘍型に由来する悪性B細胞はCD40を発現し、生存及び増殖のためにはCD40シグナリングに依存していると考えられる。低い、又は高い等級のB細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、及びホジキン病を有する患者に由来する形質転換細胞はCD40を発現する。CD40発現は又急性骨髄芽球性白血病の症例の2/3及びエイズ関連リンパ腫の50%で検出されている。
【0008】
多くの癌及び肉腫もまた高レベルのCD40発現を示すが、これらの癌細胞上のCD40発現に関連するCD40シグナリングの役割はそれほど理解されていない。CD40発現癌は膀胱癌(非特許文献1;非特許文献2)、乳癌(非特許文献3;非特許文献4);前立腺癌(非特許文献5)、腎細胞癌(非特許文献6)、未分化鼻咽頭癌(UNPC)(非特許文献7)、扁平上皮細胞癌(SCC)(非特許文献8;非特許文献9)、甲状腺乳頭状癌(非特許文献10)、皮膚悪性黒色腫(非特許文献11)、胃癌(非特許文献12)、及び肝臓癌(例えばヒト肝細胞癌を考察している非特許文献13参照)を包含する。CD40発現肉腫に関してはヒト骨肉腫及びユーイング肉腫を考察している非特許文献14を参照できる。
【0009】
種々の癌及び自己免疫/炎症性疾患におけるCD40L媒介CD40シグナリングを調節する場合の拮抗剤抗CD40抗体の潜在的な治療上の利点、及びこれらのポリペプチドを製剤化することの困難さを想定すれば、これらの抗体を含む安定な医薬組成物が必要とされている。
【非特許文献1】Paulie等、J.Immunol.(1989)142:590−595
【非特許文献2】Braesch−Andersen等、J.Immunol.(1989)142:562−567
【非特許文献3】Hirano等、Blood(1999)93:2999−3007
【非特許文献4】Wingett等、Breast Cancer Res.Treat.(1998)50:27−36
【非特許文献5】Rokhlin等、Cancer Res.(1997)57:1758−1768
【非特許文献6】Kluth等、Cancer Res.(1997)57:891−899
【非特許文献7】Agathanggelou等、Am.J.Pathol.(1995)147:1152−1160
【非特許文献8】Amo等、Eur.J.Dermatol.(2000)10:438−442
【非特許文献9】Posner等、Clin.Cancer Res.(1999)5:2261−2270
【非特許文献10】Smith等、Thyroid(1999)9:749−755
【非特許文献11】van den Oord等、Am.J.Pathol.(1996)149:1953−1961
【非特許文献12】Yamaguchi等、Int.J.Oncol.(2003)23(6):1697−702
【非特許文献13】Sugimoto等、Hepatology(1999)30(4):920−26
【非特許文献14】Lollini等、Clin.Cancer Res.(1998)4(8):1843−849
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要旨
治療上又は予防上活性な成分としての拮抗剤抗CD40抗体を含む安定な液体医薬組成物及びその調製において有用な方法を提供する。これらの組成物は拮抗剤抗CD40抗体、約pH5.0〜約pH7.0に組成物のpHを維持するための緩衝剤、及び液体組成物をほぼ等張性とするために十分な量の塩酸アルギニンを含む。1つの実施形態において、緩衝剤はクエン酸塩/クエン酸緩衝液であり、拮抗剤抗CD40抗体はCHIR−12.12又はCHIR−5.9拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントであり、組成物は等張性付与剤として塩酸アルギニンを含み、組成物は更にノニオン性界面活性剤及び/又はL−メチオニンを追加的安定化剤として含む。本発明の安定な液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物は、増殖性疾患及び自己免疫及び/又は炎症の要素を有する疾患を治療するための方法において使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ここで本発明は添付図面を参照しながら更に詳細に説明されることになるが、図面には本発明の全てではなく一部の実施形態のみを示している。実際、本発明は多くの異なる形態において実施してよく、本明細書に記載する実施形態に限定されると考えてはならず;これらの実施形態は本開示が適用される法的基準を満足するように提示している。
【0012】
本明細書に記載する本発明の多くの変形例及び他の実施形態は、上記した説明及び関連する図面において提示した教示を利用できる本発明の関連する分野の当業者には、想到されるものである。従って、本発明は開示した特定の実施形態に限定されないこと、及び、変形例及び他の実施形態は添付請求項の範囲内に包含されることを意図されていることを理解しなければならない。本明細書において特定の用語を使用するが、それらは包括的で説明的な意味において使用されているのみであり、限定する目的ではない。
【0013】
本発明は治療上又は予防上活性な成分として拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの少なくとも1つを含む安定な液体医薬組成物、及び、それらの調製において有用な方法に関する。本発明の目的のためには、医薬組成物又は製剤に関連する場合の「液体」という用語は「水性」という用語を包含することを意図される。「治療上又は予防上の活性成分」とは、拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントが組成物内に特異的に取り込まれることにより、対象内の疾患又は状態の治療、防止又は診断に対する所望の治療上又は予防上の応答を、その対象に医薬組成物が投与された時点においてもたらすことを意図する。
【0014】
「安定な」とは、本発明の医薬組成物が拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの物理的及び/又は化学的安定性をもたらすことを意味する。即ち、拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントは本質的にその物理的及び/又は化学的安定性を保持しており、所望の生物学的活性、即ち本明細書において定義する拮抗剤活性の1つ以上、例えば;T細胞により刺激される正常なヒト末梢B細胞による免疫グロブリンの分泌の抑制;JurkatT細胞により刺激される正常なヒト末梢B細胞の生存及び/又は増殖の抑制;CD40L発現細胞又は可溶性CD40リガンド(sCD40L)により刺激される正常なヒト末梢B細胞の生存及び/又は増殖の抑制;sCD40L又は固相CD40Lにより刺激される何れかの細胞における「生存」の抗アポトーシス細胞内シグナルの抑制;sCD40L又は固相CD40Lとのライゲーション時の何れかの細胞におけるCD40シグナルトランスダクションの抑制;ヒト悪性B細胞の増殖の抑制;CD40担持標的細胞又はCD40に対する同族リガンドを担持している細胞、例えば限定しないが、T細胞及びB細胞の欠失、アネルギー及び/又は耐容性誘導;CD4+CD25+調節T細胞の増殖又は活性化の誘導(例えばCD40−CD40L干渉を介したドナー同種抗原特異的組織拒絶、Maurik等(2002)J.Immunol.169:5401−5404参照);何れかの機序による細胞毒性(例えば限定しないが、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、補体依存性細胞毒性(CDC)、増殖のダウンレギュレーション、及び/又は標的細胞におけるアポトーシス);標的細胞サイトカイン分泌及び/又は細胞表面分子発現のモジュレーション;及びこれらの組み合わせを有する。
【0015】
タンパク質安定性をモニタリングするための方法は当該分野で周知である。例えばJones(1993)Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90;Lee編(1991)Peptide and Protein Drug Delivery(Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.);及び本明細書において後に開示する安定性試験を参照できる。一般的にタンパク質の安定性は特定の期間、選択された温度において測定される。好ましい実施形態においては、安定な抗体医薬組成物は、室温(約25℃)において少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、又は少なくとも6ヶ月間、保存された場合に拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの安定性をもたらすか、及び/又は約2〜8℃において少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、安定である。
【0016】
抗体のようなタンパク質は、医薬組成物中に製剤された場合、それがその医薬組成物中において沈殿、凝集、及び/又は変性の目視可能な兆候(即ち変色又は透明性の損失)、又は測定可能な兆候(例えばサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又はUV光散乱を使用)を示していない場合に、所定の時点において物理的安定性を保持していると見なされる。化学的安定性に関しては、抗体のようなタンパク質は、医薬組成物中に製剤された場合、その医薬組成物中において目的の生物学的活性をタンパク質(即ち抗体)が保持していることを化学的安定性の測定が示している場合に、所定の時点においてその化学的安定性を保持していると見なされる。化学的安定性の変化をモニタリングするための方法は当該分野で周知であり、限定しないが、タンパク質の化学的に改変された形態、例えばSDS−PAGE、SEC及び/又はマトリックス支援レーザー脱着イオン化/飛行時間型質量飛行時間型質量分析を用いたクリッピングの結果;及び例えばイオン交換クロマトグラフィーを用いた分子の変化に関連(例えば脱アミド化に関連)する分解を検出するための方法を包含する。例えば本明細書において後に開示する方法を参照できる。
【0017】
拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントは医薬組成物中に製剤された場合、所定の時点において所望の生物学的活性を保持していると見なされるのは、所望の生物学的活性に関する適当な試験において測定した場合に、その時点における所望の生物学的活性が医薬組成物調製時において示された所望の生物学的活性の約30%以内、好ましくは約20%以内である場合である。本明細書に開示した拮抗剤抗CD40抗体及びその抗原結合フラグメントの所望の生物学的活性を測定するための試験は、仮出願である表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2003年11月4日、2003年11月26日及び2004年4月27日のもの、及び、譲渡された各々の米国特許出願60/517,337(代理人案件番号PP20107.001(035784/258442))、60/525,579(代理人案件番号PP20107.002(035784/271525))、及び60/565,710(代理人案件番号PP20107.003(035784/277214))、及び国際出願PCT/US2004/037152(代理人案件番号PP20107.004(035784/282916))、同様に、表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2004年11月4日、WO2005/044854として公開されたものに記載されている通り実施でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。同様に、仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Proliferative Disorders Mediated by CD40 Signaling」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,285(代理人案件番号PP028035.0002(035784/304312))、及び相当する国際出願PCT/US2006/019414(代理人案件番号PP028035.0003(035784/311611))、出願日2006年5月18日、WO2006/125143として公開;及び仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Diseases Having an Autoimmune and/or Inflammatory Component」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,336(代理人案件番号PP028062.0002(035784/304311))、及び相当する国際特許出願PCT/US2006/019325(代理人案件番号PP028062.0003(035784/311608))、出願日2006年5月18日、WO2006/125117として公開されたものに記載された試験も参照でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。同様に、Schultze等(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:8200−8204;Denton等(1998)Pediatr.Transplant.2:6−15;Evans等(2000)J.Immunol.164:688−697;Noelle(1998)Agents Actions Suppl.49:17−22;Lederman等(1996)Curr.Opin.Hematol.3:77−86;Coligan等(1991)Current Protocols in Immunology13:12;Kwekkeboom等(1993)Immunology79:439−444;及び米国特許5,674,492及び5,847,082に記載された試験も参照でき;参照として本明細書に組み込まれる。
【0018】
本発明の方法に従って製剤される拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントは本明細書に開示する方法を包含する当該分野で知られた何れかの方法を用いて調製できる。1つの実施形態において、拮抗剤抗CD40抗体、例えばCHIR−12.12又はCHIR−5.9モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、後述するCHO細胞系統内で組み換え生産される。
【0019】
その調製および精製の後、拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントは本明細書に記載する態様において液体医薬組成物として製剤できる。拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントをその製剤の前に保存しなければならない場合は、それは例えば−20℃以下で凍結し、次に室温で解凍してその後の製剤に付すことができる。
【0020】
本発明の液体医薬組成物は拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの治療上又は予防上有効な量を含む。製剤中に存在する抗体又はその抗原結合フラグメントの量は投与経路及び所望の投薬容量を考慮する。
【0021】
この態様において、本発明の液体医薬組成物は、拮抗剤抗CD40抗体、例えばCHIR−12.12又はCHIR−5.9抗体、又はその抗原結合フラグメントを、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約0.5mg/ml〜約40.0mg/ml、約1.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約1.0mg/ml〜約30.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約25.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約20.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、又は約15.0mg/ml〜約25.0mg/mlの濃度において含む。一部の実施形態においては、液体医薬組成物は拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを、約0.1mg/ml〜約5.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約10.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約15.0mg/ml、約15.0mg/ml〜約20.0mg/ml、約20.0mg/ml〜約25.0mg/ml、約25.0mg/ml〜約30.0mg/ml、約30.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約35.0mg/ml〜約40.0mg/ml、約40.0mg/ml〜約45.0mg/ml、又は約45.0mg/ml〜約50.0mg/mlの濃度において含む。他の実施形態においては、液体医薬組成物は拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを、約15mg/ml、約16mg/ml、約17mg/ml、約18mg/ml、約19mg/ml、約20mg/ml、約21mg/ml、約22mg/ml、約23mg/ml、約24mg/ml、約25mg/ml、約26mg/ml、約27mg/ml、約28mg/ml、約29mg/ml、約30mg/ml、約31mg/ml、約32mg/ml、約33mg/ml、約34mg/ml、又は約35mg/mlの濃度において含む。
【0022】
本発明によれば、拮抗剤抗CD40抗体、例えば本明細書に記載するモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメントは約pH5.0〜約pH7.0の範囲の医薬組成物のpHを維持するための緩衝物質、及び組成物をほぼ等張性とするために十分な塩酸アルギニンと本明細書では称する自身の酸性形態のアルギニンの量とともに製剤される。「ほぼ等張性」とは、水性製剤が約240mmol/kg〜約360mmol/kg、好ましくは約240mmol/kg〜約340mmol/kg、より好ましくは約250mmol/kg〜約330mmol/kg、更により好ましくは約260mmol/kg〜約320mmol/kg、又更により好ましくは約270mmol/kg〜約310mmol/kgの浸透圧重量モル濃度を有することを意図している。一部の実施形態においては、液体医薬組成物は約295mmol/kgの浸透圧重量モル濃度を有する。溶液の等張性を測定するための方法は当業者の知る通りである。例えばSetnikar等(1959)J.Am.Pharm.Assoc.48:628を参照できる。
【0023】
塩酸アルギニンは等張性付与剤として作用するのみならず、本発明の液体医薬組成物の保存中の立体構造的変化、凝集体の形成、フラグメント化、及び/又は脱アミド化に対抗して抗体を安定化させるためにも作用する。「保存中」とは、一旦調製した液体医薬組成物又は製剤が即座に対象に投与されないことを意図している。むしろ、調製後、それは液体形態において、凍結状態において、又は後に再構成して液体形態とするための乾燥形態又は対象への投与に適する他の形態において保存するためにパッケージ化される。「乾燥形態」とは、液体医薬組成物又は製剤がフリーズドライ(即ち凍結乾燥;例えばWilliams and Polli(1984)J.Parenteral Sci.Technol.38:48−59参照)、噴霧乾燥(Masters(1991),Spray−Drying Handbook(第5版、Longman Scientific and Technical,Essez,UK)pp.491−676;Broadhead等(1992)Drug Devel,Ind.Pharm.18:1169−1206;及びMumenthaler等(1994)Pharm.Res.11:12−20参照)又は空気乾燥(Carpenter and Crowe(1988)Cryobiology25:459−470;及びRoser(1991)Biopharm,4:47−53)の何れかにより乾燥されることを意図している。液体医薬組成物の保存中の立体構造的変化、凝集体の形成、フラグメント化、及び/又は脱アミド化は抗体の生物学的活性に悪影響を及ぼし、医薬組成物の治療効果の損失をもたらす場合がある。更に又、凝集体形成は他の問題点、例えば抗含有医薬組成物を輸液刑を用いて投与する場合に配管、膜又はポンプの遮断を誘発する場合がある。
【0024】
アルギニンの何れかの立体異性体(即ちL、D又はDL異性体)又はこれらの立体異性体の組み合わせは、アルギニンがその酸性形態、即ち塩酸アルギニンとして存在する限り、本発明の医薬組成物中に存在してよい。好ましくはL型の立体異性体を使用する。本発明の組成物は又、このアミノ酸の類縁体を用いて製剤してもよい。「アミノ酸類縁体」という用語は組成物をほぼ等張性とする、並びに、本発明の液体医薬組成物の保存中のポリペプチドの凝集体形成、フラグメント化、及び/又は脱アミド化を低減する所望の作用をもたらす天然に存在するアミノ酸の誘導体を意図している。適当なアルギニン類縁体は例えばアミノグアニジン及びN−モノメチルL−アルギニンを包含する。アルギニンの場合と同様、アミノ酸類縁体はその酸性の形態において組成物中に配合される。
【0025】
医薬組成物中の塩酸アルギニンの濃度は張力に対する他の成分の寄与に応じたものとなる。一部の実施形態においては、塩酸アルギニンの濃度は約50mM〜約300mM、約50mM〜約250mM、約50mM〜約200mM、約50mM〜約175mM、約50mM〜約150mM、約75mM〜約175mM、約75mM〜約150mM、約100mM〜約175mM、約100mM〜約200mM、約100mM〜約150mM、約125mM〜約175mM、約125mM〜約150mM、約130mM〜約170mM、約130mM〜約160mM、約135mM〜約155mM、約140mM〜約155mM、約145mM〜約155mMである。1つのそのような実施形態において、塩酸アルギニンの濃度は約125mM、約150mM又は約175mMである。
【0026】
液体抗体含有医薬組成物のpHはそこに含有されている抗体の安定性に対して、主にポリペプチド凝集体形成に対するその作用を介して影響する。即ち、本発明の医薬組成物中に存在する緩衝剤の量は、目的の特定の拮抗剤抗CD40抗体の安定性のために最適であるpHに応じて変動することになる。この最適pHの決定は当該分野で一般的に使用できる方法、例えば立体構造的安定性を測定する示差走査熱量測定(DSC);凝集体形成及びフラグメント化を測定するSDS−PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC);電荷変化関連分解を測定する及びカチオン交換HPLC(CIEX−HPLC)を用いて達成できる。本発明の液体医薬組成物のための好ましいpHは約pH5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9,7.0、及び約pH5.0〜約pH7.0の範囲内の他のこのような値である。一部の実施形態においては、緩衝剤は医薬組成物のpHを約pH5.0〜約pH6.5、約pH5.0〜約pH6.0、約pH5.0〜約pH5.5、約pH5.5〜約pH7.0、約pH5.5〜約pH6.5、又は約pH5.5〜約pH6.0の範囲に維持する。
【0027】
約pH5.0〜約pH7.0の範囲に液体拮抗剤抗CD40抗体医薬組成物のpHを維持する何れの適当な緩衝剤も、抗体の物理化学的安定性及び所望の生物学的活性が上記した通り維持される限り、製剤中で使用することができる。適当な緩衝剤は限定しないが、従来の酸及びその塩を包含し、その場合、対イオンは、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又はマグネシウムであることができる。液体医薬組成物を緩衝するために使用できる従来の酸及びその塩の例は、限定しないが、クエン酸又はクエン酸塩、コハク酸又はコハク酸塩、酢酸又は酢酸塩、酒石酸又は酒石酸塩、リン酸又はリン酸塩、グルコン酸又はグルコン酸塩、グルタミン酸又はグルタミン酸塩、アスパラギン酸又はアスパラギン酸塩、マレイン酸又はマレイン酸塩及びリンゴ酸又はリンゴ酸塩を包含する。当然ながら、緩衝剤は酸と酸の塩型の混合物、例えばクエン酸とクエン酸塩の混合物(本明細書においてはクエン酸塩/クエン酸緩衝液と称する)、コハク酸とコハク酸塩の混合物(本明細書においてはコハク酸塩/コハク酸緩衝液と称する)、酢酸と酢酸塩の混合物(本明細書においては酢酸塩/酢酸緩衝液と称する)、及び上記した酸/酸塩の対の各々に関する同様のものであることができる。緩衝剤の濃度は約1mM〜約50mM、例えば約1mM、2mM、5mM、8mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、又は約1mM〜約50mMの範囲内の他のこのような値であることができる。一部の実施形態においては、緩衝剤の濃度は約5mM〜約15mM、例えば5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、又は約5mM〜約15mMの範囲内の他のこのような値であることができる。
【0028】
本発明の一部の実施形態においては、液体医薬組成物は所望の濃度(即ち上記した通り約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml)の本明細書に記載した拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント、組成物を等張性とするための量の塩酸アルギニン、及びクエン酸塩/クエン酸緩衝液である緩衝剤を含み、ここで、緩衝剤の濃度は緩衝剤が医薬組成物のpHを約pH5.0〜約pH7.0、好ましくは約pH5.0〜約pH6.5、例えば約pH5.0、5.5、6.0及び6.5の範囲に維持するようなものとする。「クエン酸塩」とは、クエン酸の塩を含む緩衝液を意図している。好ましい実施形態においては、クエン酸塩の対イオンはナトリウムカチオンであり、このため、クエン酸塩緩衝液成分はクエン酸ナトリウムとなる。しかしながら、何れのカチオンも有効であると予測される。他の可能なクエン酸塩カチオンは、限定しないが、カリウム、アンモニウム、カルシウム、及びマグネシウムを包含する。上記した通り、クエン酸塩/クエン酸緩衝液は酸(即ちクエン酸)および酸の塩形態(即ちクエン酸塩)の混合物を含み、ここで酸の塩形態の対イオンは何れかの適当なカチオンであることができる。1つのそのような実施形態において、酸の塩形態のための対イオンはナトリウムカチオンであり、従って、緩衝剤はクエン酸とクエン酸ナトリウムの混合物を含む。上記した通り、クエン酸塩/クエン酸緩衝液の濃度は約1mM〜約50mM、例えば約1mM、2mM、5mM、8mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、又は約1mM〜約50mMの範囲内の他のこのような値であることができる。一部の実施形態においては、クエン酸塩/クエン酸緩衝剤の濃度は約5mM〜約15mM、例えば5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、又は約15mMである。
【0029】
他の実施形態において、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、又は約10.0mg/ml〜約20.0mg/mlの濃度の拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;組成物を等張性とするための量の塩酸アルギニンを含み;緩衝剤は約1mM〜約20mM、約5mM〜約15mM、好ましくは約10mMの濃度のクエン酸塩/クエン酸緩衝液である。更に別の実施形態においては、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、又は約10.0mg/ml〜約20.0mg/mlの濃度の拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;組成物を等張性とするための量の塩酸アルギニンを含み;緩衝剤は約1mM〜約20mM、約5mM〜約15mM、好ましくは約10mMの濃度のクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤である。
【0030】
一部の好ましい実施形態においては、液体医薬組成物は、拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;医薬組成物のpHを約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に維持するための緩衝剤を含み;塩酸アルギニンの濃度は約100mM〜約200mMである。これらの実施形態の一部においては、緩衝剤は約5mM〜約15mMの濃度のクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり、液体医薬組成物は拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメントを含み、医薬組成物は約pH5.0〜約pH7.0、約pH5.0〜約pH6.5、又は約pH5.5〜約pH6.0のpHを有する。他の実施形態においては、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約35.0mg/ml、又は約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、例えば約10.0mg/ml、約15.0mg/ml、約20.0mg/ml、約25.0mg/ml、約30.0mg/ml、又は約35.0mg/mlの濃度の拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;約150mMの塩酸アルギニンを含み;緩衝剤は約10mMのクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり;ここで製剤は約pH5.5のpHを有する。
【0031】
本発明の液体医薬品製剤の処理中の凍結解凍または機械的な剪断力に起因するタンパク質の分解は溶液−気体界面における表面張力を低下させるために製剤に界面活性剤を配合することにより抑制できる。即ち、一部の実施形態においては、液体医薬組成物は、拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に医薬組成物のpHを維持するための緩衝剤;液体医薬組成物をほぼ等張性とするための量の塩酸アルギニンを含み;更に界面活性剤を含む。他の実施形態においては、液体医薬組成物は、拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に医薬組成物のpHを維持するための緩衝剤;約50mM〜約300mM、又は約100mM〜約200mMの濃度の塩酸アルギニンを含み;更に界面活性剤を含む。
【0032】
使用される典型的な界面活性剤はノニオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビトールエステル、例えばポリソルベート80(Tween80)およびポリソルベート20(Tween20);ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンエステル、例えばプルロニックF68;ポリオキシエチレンアルコール、例えばBrij35;シメチコン;ポリエチレングリコール、例えばPEG400;リソホスファチジルコリン;及びポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェノール、例えばTritonX−100である。界面活性剤又は乳化剤による医薬品の古典的安定化は例えば参照として本明細書に組み込まれるLevine等(1991)J.Parenteral Sci.Technol.45(3):160−165に記載されている。本発明の実施において使用される好ましい界面活性剤はポリソルベート20又はポリソルベート80である。界面活性剤を含有させる場合は、それは典型的には約0.001%〜約1.0%、約0.001%〜約0.5%、約0.001%〜約0.4%、約0.001%〜約0.3%、約0.001%〜約0.2%、約0.005%〜約0.5%、約0.005%〜約0.2%、約0.01%〜約0.5%、約0.01%〜約0.2%、約0.03%〜約0.5%、約0.03%〜約0.3%、約0.05%〜約0.5%、又は約0.05%〜約0.2%の量で添加され、ここでパーセントは重量/容量(w/v)に基づく。
【0033】
即ち、一部の実施形態においては、液体医薬組成物は、拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメントを含み;緩衝剤は約1mM〜約50mM、約5mM〜約25mM、又は約5mM〜約15mMの濃度のクエン酸塩/クエン酸緩衝液、例えばクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり;組成物は約pH5.0〜約pH7.0、約pH5.0〜約pH6.5、又は約pH5.5〜約pH6.0のpHを有し;塩酸アルギニンが約50mM〜約300mM、約100mM〜約200mM、又は約50mM〜約150mMの濃度で存在し;医薬組成物は更に界面活性剤、例えばポリソルベート20を、約0.001%〜約1.0%(w/v)又は約0.001%〜約0.5%(w/v)の量で含む。他の実施形態においては、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、例えば約10.0mg/ml、約15.0mg/ml、約20.0mg/ml、約25.0mg/ml、約30.0mg/ml、又は約35.0mg/mlの濃度における拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;約50mM〜約200mMの塩酸アルギニン、例えば約150mMの塩酸アルギニンを含み;緩衝剤は約5mM〜約20mM、例えば約10mMの濃度のクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり;医薬組成物は場合により界面活性剤、例えばポリソルベート20を、約0.001%〜約1.0%(w/v)、例えば約0.001%〜約0.5%(w/v)、約0.01%〜約0.25%(w/v)、約0.025%〜約0.2%(w/v)、約0.025%〜約0.1%(w/v)、又は約0.05%〜約0.2%(w/v)の量で含み;ここで液体医薬組成物は約pH5.0〜約pH7.0、約pH5.0〜約pH6.0、約pH5.0〜約pH5.5、約pH5.5〜約pH6.5、約pH5.5〜約pH6.0、又はpH5.5のpHを有する。
【0034】
液体医薬組成物は保存料及び他の担体、賦形剤又は安定化剤のいずれも実質的に非含有であることができる。或いは、医薬組成物は場合により本明細書に記載した1つ以上の保存料、例えば抗細菌剤、製薬上許容しうる担体、賦形剤又は安定化剤を含むことができるが、ただし、それらは抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの物理化学的安定性に悪影響を及ぼしてはならない。許容される担体、賦形剤及び安定化剤の例は、限定しないが、追加的な緩衝剤、共溶媒、界面活性剤、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及びメチオニン、キレート形成剤、例えばEDTA、金属複合体(例えばZn−タンパク質複合体)、及び生体分解性重合体、例えばポリエステルを包含する。製薬上許容しうる担体、安定化剤、及びイソモライト(isomolyte)の形成及び選択の詳細な考察は、参照として本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Science(第18版;Mack Publishing Company,Eaton,Pennsylvania,1990)に記載されている。
【0035】
即ち、1つの実施形態において、本発明の拮抗剤抗CD40抗体含有液体医薬組成物は更に、抗体ポリペプチド鎖内の酸化され得るアミノ酸残基の酸化を抑制するためのアミノ酸メチオニンを含む。「抑制する」とは、経時的な酸化物質種の最小限の蓄積を意図している。酸化を抑制することにより、拮抗剤抗CD40抗体をその適切な分子の形態において、より多く保持することができる。メチオニンの何れかの立体異性体(L、D又はDL異性体)又はそれらの組み合わせを使用できる。添加すべき量は酸化された物質種の量が規制当局の許容するものとなるように酸化され得るアミノ酸残基の酸化を抑制するために十分な量でなければならない。典型的には、このことは、組成物が約10%〜約30%を超えない酸化生成物を含有することを意味する。一般的に、これは、添加されたメチオニンのメチオニン残基に対する比が約1:1〜約1000:1、最も好ましくは10:1〜約100:1の範囲となるようにメチオニンを添加することにより達成できる。
【0036】
添加すべきメチオニンの好ましい量は、実施例1において後述する通り、種々の濃度のメチオニンとともに拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを含む組成物を調製すること、及び、例えば分子種のクロマトグラフィー分離及びポリペプチド分子量標準物質を用いた同定、例えばRP−HPLCによるもの、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いながら、ポリペプチドの酸化の物質種の形成に対する相対的作用を測定することにより、容易に実験的に決定することができる。抗体凝集のアミノ酸関連抑制に対して悪影響を有することなく酸化のアミノ酸残基の酸化の抑制を最大限とするメチオニンの濃度は抗体の安定性を更に向上させるために組成物に添加すべきメチオニンの好ましい量を示すことになる。
【0037】
即ち、本発明の一部の実施形態においては、液体医薬組成物は拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメントを含み;緩衝剤は約1mM〜約50mM、約5mM〜約25mM、又は約5mM〜約15mMの濃度のクエン酸塩/クエン酸緩衝液、例えばクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり;医薬組成物は約pH5.0〜約pH7.0、約pH5.0〜約pH6.5、又は約pH5.5〜約pH6.0のpHを有し;塩酸アルギニンが約50mM〜約300mM、約100mM〜約200mM、又は約50mM〜約150mMの濃度で存在し;界面活性剤は例えば約0.001%〜約1.0%(w/v)、又は約0.001%〜約0.5%(w/v)の量のポリソルベート20を又はポリソルベート80として存在し;医薬組成物は更に、約0.5mM〜約20.0mM、約0.5mM〜約10.0mM、約1.0mM〜約20.0mM、約1.0mM〜約10.0mM、約1.0mM〜約7.0mM、約2.0mM〜約6.0mM、又は約2.5mM〜約5.0mMの濃度のメチオニンを含む。他の実施形態においては、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、例えば約10.0mg/ml、約15.0mg/ml、約20.0mg/ml、約25.0mg/ml、約30.0mg/ml、又は約35.0mg/mlの濃度における拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;約50mM〜約200mMの塩酸アルギニン、例えば約150mMの塩酸アルギニン;約5mM〜約20mM、例えば約10mMの濃度のクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤;場合により約0.001%〜約1.0%(w/v)、例えば約0.001%〜約0.5%(w/v)、約0.01%〜約0.25%(w/v)、約0.025%〜約0.2%(w/v)、約0.025%〜約0.1%(w/v)、又は約0.05%〜約0.2%(w/v)の量の界面活性剤、例えばポリソルベート20;場合により約0.5mM〜約10.0mM、約1.0mM〜約7.0mM、約2.0mM〜約6.0mM、又は約2.5mM〜約5.0mM、例えば約2.0mM、約2.5mM、約3.0mM、約3.5mM、約4.0mM、約4.5mM、約5.0mM、又は約5.5mMの濃度のメチオニンを含み;ここで液体医薬組成物は約pH5.0〜約pH7.0、約pH5.0〜約pH6.0、約pH5.0〜約pH5.5、約pH5.5〜約pH6.5、約pH5.5〜約pH6.0、又はpH5.5のpHを有する。
【0038】
更に他の実施形態においては、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、例えば約10.0mg/ml、約15.0mg/ml、約20.0mg/ml、約25.0mg/ml、約30.0mg/ml、又は約35.0mg/mlの濃度における拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;約100mM〜約200mMの塩酸アルギニン、例えば約150mMの塩酸アルギニン;約5mM〜約20mM、例えば約10mMの濃度のクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤;場合により約0.025%〜約0.1%(w/v)の量の界面活性剤、例えばポリソルベート20;場合により例えば約2.0mM〜約5.5mM、例えば約5.0mMの濃度のメチオニンを含み;ここで液体医薬組成物は約pH5.0〜約pH6.0、例えば約pH5.5のpHを有する。
【0039】
上記開示したこれらの薬剤に加えて、他の安定化剤、例えばアルブミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩の1つ、例えばEDTA2ナトリウムも場合により液体医薬組成物の安定性を更に増強するために添加することができる。望ましい場合は、アルブミンの量は約1.0%w/v以下の濃度で添加することができる。EDTAは多くの酸化反応を触媒することがわかっている金属イオンのスカベンジャーとして作用することにより、追加的な安定化剤となる。所望によりEDTAの量は約0.1〜約5.0mMの濃度において添加することができる。
【0040】
所望により、糖類及び糖アルコールも本発明の安定化された液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物に含有させてよい。何れかの糖類、例えば1糖類、2糖類又は多糖類、又は水溶性グルカン、例えばフラクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、及びカルボキシメチルセルロースNaを使用してよい。スクロースが最も好ましい糖添加物である。糖アルコールは−OH基を有するC4−C8炭化水素として定義され、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを包含し、マンニトールが最も好ましい糖アルコール添加剤である。上記した糖類及び糖アルコールは個別に、又は組み合わせて使用してよい。使用される量には固定された限度はないが、糖類及び糖アルコールは液体調製品中で可溶性であり、本発明の方法を用いて達成される安定化作用に悪影響を及ぼしてはならない。好ましくは、糖類又は糖アルコールの濃度は約1.0%〜約15.0%(w/v)、より好ましくは約2.0%〜約10.0%(w/v)である。
【0041】
本明細書に記載した液体医薬組成物は、調製後、分解を防止するために凍結乾燥することができる。液体組成物を凍結乾燥するための方法は当業者の知る通りである。使用直前に、追加的成分を含んでいてよい滅菌された希釈液(リンゲル液、蒸留水、又は滅菌食塩水等)で組成物を再構成してよい。再構成により、組成物は好ましくは当該分野で知られた方法を用いて対象に投与される。
【0042】
本発明の液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物は安定であり、従って等張性付与剤として塩化ナトリウムを含む緩衝された溶液中に調製された拮抗剤抗CD40抗体組成物と相対比較して、増大した保存安定性を有している。理論に制約されないが、この増大した保存安定性は、後の使用のためにその形態で直接保存されているもの、凍結状態で保存され、使用前に解凍されるもの、又は、後に再構成して使用前に液体形態又は他の形態とするための乾燥形態、例えば凍結乾燥、空気乾燥又は噴霧乾燥された形態の何れであるかに関わらず、液体製剤において観察されている。好ましくは本発明の組成物はその液体形態で直接保存することにより液体形態における増大した保存安定性を有すること、再構成の必要なく投与が容易であること、及び予備充填された即時使用可能なシリンジ中で、又は製剤が制菌剤に適合する場合は多用量調製品として製剤を供給する能力の利便性を最大限に得ることができる。
【0043】
本発明の組成物は、等張性付与剤としての塩酸アルギニン、及び緩衝剤としての酸とその塩形態、例えばクエン酸ナトリウム/クエン酸の混合物の使用が、塩化ナトリウム及び該当する緩衝剤を使用して調製した液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物と相対比較した場合に、増大した保存安定性を有する液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物をもたらすという発見に関連している。組成物の増大した保存安定性は、治療活性拮抗剤抗CD40抗体の安定性に対するアルギニンの酸性形態の影響、より詳しくは、液体製剤中の保存中のポリペプチド凝集体形成、フラグメント化及び脱アミド化に対するその影響を介して達成される。更に又、上記した態様において緩衝された液体拮抗剤抗CD40抗体組成物中に等張性付与剤として塩酸アルギニンを配合することは、塩化ナトリウムのような追加的等張性付与剤を包含させる必要なく、ほぼ等張性の液体医薬組成物をもたらす。
【0044】
本発明の安定な液体医薬組成物中に配合されたアルギニンの酸性形態は物理的および化学的変化に対抗して治療上活性な拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを保護し、これにより、組成物の保存の間の抗体の安定性を増大させる。「安定性を増大させる」とは、液体医薬組成物の保存中の抗体による凝集体形成、フラグメント化及び脱アミド化の1つ以上が、拮抗剤抗CD40抗体及びこの特定の等張性付与及び安定化剤の非存在以外は同じ製剤成分を含む液体医薬組成物の保存中に観察されるものと相対比較して低下していることを意図している。液体組成物中の保存中の拮抗剤抗CD40抗体凝集体形成に対する塩酸アルギニンの作用は、経時的に溶液中の可溶性抗CD40抗体の変化を測定することにより容易に調べることができる。溶液中の可溶性抗CD40抗体の量は目的の抗体の検出のために適合された多くの分析試験により定量できる。そのような試験は例えば逆相(RP)HPLC、サイズ排除(SEC)−HPLC及びUV吸光度測定を包含する。凝集はSDS−PAGEを用いてモニタリングすることもできる。本明細書において後述する実施例も参照できる。
【0045】
凝集の場合、本発明の安定な医薬組成物を得るために拮抗剤抗CD40抗体含有液体医薬組成物内に配合すべき塩酸アルギニンの有効量は、経時的に低下した凝集体形成、その結果としての、その非凝集の生物学的に活性な分子の形態における溶液中の可溶性拮抗剤抗CD40抗体のより大量の保持をもたらした量としてとらえられる。即ち、例えば拮抗剤抗CD40抗体が後述する実施例に記載したCHIR−12.12モノクローナル抗CD40抗体である場合、本発明の安定な組成物を調製する場合に使用される塩酸アルギニンの有効量は、CHIR−12.12抗体のその単量体分子形態におけるより多い保持をもたらす量である。
【0046】
理論に制約されないが、本発明の安定な液体拮抗剤抗CD40抗体含有組成物の増大した保存安定性は又、保存中の抗体のフラグメント化及び/又は治療活性抗体内のグルタミン及び/又はアスパラギン残基の脱アミド化に対する塩酸アルギニンの抑制作用に関連していると考えられる。抗体フラグメント化に対する塩酸アルギニンの作用は例えばSDS−PAGE及び/又はSEC−HPLC分析を用いて経時的に製剤内の分子種の変化をモニタリングすることにより容易に調べることができ;本明細書において後述する実施例を参照できる。液体組成物中の保存の間の抗CD40抗体ポリペプチドの脱アミド化に対する塩酸アルギニンの作用は、経時的に拮抗剤地CD40抗体がその脱アミド形態で存在する量をモニタリングすることにより容易に測定できる。溶液相中に存在するポリペプチドンの分子種、即ちネイティブ又は脱アミド型を測定するための方法は一般的に当該分野で知られており、。そのような方法は後に実施例において記載する通り、分子種のクロマトグラフィー分離及びポリペプチドの分子量標準物質を用いる同定、例えばRP−HPLC、又はカチオン交換クロマトグラフィー(CIEX−HPLC)を包含する。
【0047】
本発明の安定な液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物は、塩酸アルギニンにより達成される一次的安定化作用が悪影響を受けない限り、治療上活性な成分として作用する目的の拮抗剤抗CD40抗体の有効性を増大させるか、所望の品質を増進する他の成分を含有してよい。組成物は選択された経路を介した投与に関して安全でなければならず、滅菌されていなければならず、その所望の治療活性を保持していなければならない。
【0048】
本発明の医薬組成物は例えば安定化剤及び緩衝剤、及び何れかの他の賦形剤を予備混合した後に目的の拮抗剤抗CD40抗体を配合することにより調製できる。本発明の組成物を更に安定化させるために添加してよい何れかの追加的な賦形剤は、本明細書に記載した新しい組成物を得るために使用されるものとしての緩衝剤と更に組み合わせられる一次的な等張性付与および安定化剤、即ち塩酸アルギニンの安定化作用に悪影響を与えてはならない。概ね等張性及び目的の拮抗剤抗CD40抗体の増大した安定性を達成するための塩酸アルギニンの添加の後、液体組成物のpHを、緩衝剤を用いながら、好ましくは本明細書に開示した範囲内に、より好ましくは目的の拮抗剤抗CD40抗体に対して最適なpHに、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12の場合は約pH5.0〜pH7.0、好ましくは約pH5.5に調節する。pHは組成物への拮抗剤抗CD40抗体の添加の後に調節できるが、このポリペプチドの添加より前に調節するほうがポリペプチドの変性の危険性を低減できることから好ましい。次に適切な機械的装置を用いて成分の適切な混合を達成する。
【0049】
即ち本発明は液体医薬組成物中の拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの安定性を増大させるための方法を提供する。方法は約pH5.0〜約pH7.0のpHに医薬組成物を維持する緩衝剤及び組成物をほぼ等張性とするために十分な量の塩酸アルギニンと拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを組み合わせることを包含する。一部の実施形態においては、緩衝材はクエン酸塩/クエン酸緩衝液であり、緩衝材の濃度は約5mM〜約50mMであり、塩酸アルギニンの量は、約50mM〜約300mM塩酸アルギニンの組成物内のこの等張性付与剤の濃度をもたらす。他の実施形態においては、拮抗剤抗CD40抗体はCHIR−12.12又はCHIR−5.9抗体又はその抗原結合フラグメントであり;緩衝剤は約5mM〜約25mMのクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり;組成物中の塩酸アルギニンの濃度は約150mMであり、組成物は約5.0、約5.5、約6.0又は約6.5のpHを有する。
【0050】
目的の拮抗剤抗CD40抗体、例えば拮抗剤抗CD40抗体、例えばCHIR−12.12又はCHIR−5.9モノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントを含む安定化された液体医薬組成物は単位剤型として製剤しなければならず、、溶液、懸濁液又は乳液のような注射可能、又は注入可能な形態であってよい。前述の通り、それを凍結保存するか、又は経口又は非経腸の投与経路を含む種々の方法の何れかによる投与の前に液体の溶液、懸濁液又は乳液に再構成することができる凍結乾燥粉末のような乾燥形態に調製することができる。好ましくは、後述する通り、本発明の方法に従って達成される増大した保存安定性を活用するためには液体製剤として保存する。安定化された医薬組成物は好ましくは膜濾過により滅菌し、密封バイアル又はアンプルのような単位用量又は多用量の容器中に保存する。当該分野で一般的に知られている医薬組成物を製剤するための別の方法も、それが本明細書において上記開示した好ましい安定化及び緩衝剤の有益な作用に悪影響を及ぼさない限り、本明細書に開示した液体医薬組成物の保存安定性を更に増大させるために使用してよい。製薬上許容しうる担体、安定化剤等の形成及び選択の詳細な考察は、参照として本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Science(1990)(第18版;Mack Pub.Co.,Eaton,Pennsylvania)に記載されている。
【0051】
この態様において、本発明は、本発明の安定な液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物を保持する容器を含み、場合によりその使用に関する説明書を含む調製物品を提供する。適当な容器は、例えばバイアル、ビン及びシリンジを包含する。容器は種々の材料、例えばプラスチック又はガラスから形成してよい。1つの実施形態において、容器は3〜50ccの単回使用のガラスバイアルである。或いは、即時使用可能型の製剤とするには、容器は例えば3〜100ccのガラスバイアルであってよい。容器は製剤を保持しており、容器上、又は容器に伴ったラベルには使用方法を記載してよい。調製物品は更に商業的及び使用者側の見地から望ましい他の材料、例えば他の緩衝剤、希釈剤、充填剤、針類、シリンジ、及びパッケージインサートを使用方法説明書とともに包含してよい。
【0052】
本発明の医薬組成物中の抗CD40抗体
本発明の医薬組成物は抗CD40抗体、特にCD40受容体をターゲティングし、ADCCを調節し、CD40シグナリング、特にCD40のCD40リガンド(CD40L)との相互作用又は両方により媒介されるCD40シグナリング経路に干渉する拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。「CD40抗原」、「CD40細胞表面抗原」、「CD40受容体」又は「CD40」とは、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーに属する膜貫通糖タンパク質を意図している(例えば5,674,492及び4,708,871;Stamenkovic等(1989)EMBO8:1403;Clark(1990)Tissue Antigens36:33;Barclay 等(1997)The Leucocyte Antigen Facts Book(第2版;Academic Press,San Diego)を参照できる)。この遺伝子のオルタナティブスプライシング転写物変異体によりコードされているヒトCD40の2つのアイソフォームが発見されている。第1のアイソフォーム(「長鎖アイソフォーム」又は「アイソフォーム1」としても知られている)は、最初の19残基により示されるシグナル配列を有する277アミノ酸前駆体ポリペプチド(配列番号11(ゲンバンクアクセッション番号X60592及びNM_001250参照)によりコードされる配列番号12(最初はゲンバンクアクセッション番号CAA43045として報告され、ゲンバンクアクセッション番号NP_001241においてアイソフォーム1として識別されている))として発現される。第2のアイソフォーム(「短鎖アイソフォーム」又は「アイソフォーム2」としても知られている)は、最初の19残基により示されるシグナル配列も有する203アミノ酸前駆体ポリペプチド(配列番号9(ゲンバンクアクセッション番号NM_152854)によりコードされる配列番号10(ゲンバンクアクセッション番号NP_690593))として発現される。ヒトCD40のこれらの2つのアイソフォームの前駆体ポリペプチドはそれらの最初の165残基を共有している(即ち配列番号10及び配列番号12の残基1〜165)。短鎖アイソフォームの前駆体ポリペプチド(配列番号10に示す)は翻訳のフレームシフトをもたらすコーディングセグメントを欠いている転写物変異体(配列番号9)によりコードされており;結果として生じるCD40アイソフォームはより短く、CD40の長鎖アイソフォームに含有されるもの(配列番号12の残基166〜277に示されるC末端)とは異なるC末端(配列番号10の残基166〜203)を含有している。本発明の目的のためには、「CD40抗原」、「CD40細胞表面抗原」、「CD40受容体」又は「CD40」という用語はCD40の短鎖及び長鎖アイソフォームの両方を包含する。
【0053】
CD40抗原は本明細書に記載する通り種々の細胞片の表面上に表示表示される。「表面上に表示される」及び「表面上に発現される」とは、CD40抗原の全て又は一部分が細胞の外部に曝露されることを意図している。表示又は発現されたCD40抗原は完全又は部分的にグリコシル化されることができる。
【0054】
「アゴニスト活性」とは、物質がアゴニストとして機能することを意図している。アゴニストは細胞上の受容体と組み合わさって、受容体の天然のリガンドにより開始されるもlのと同様か同じである反応又は活性を開始させる。CD40のアゴニストは以下の応答、即ち限定しないが、B細胞メモリー形成、アイソタイプ切り替え、MHCクラスII及びCD80/86の細胞表面発現のアップレギュレーション、及びIL−8、IL−12及びTNFのようなプロ炎症性サイトカインの分泌の何れか、又は全てを誘導する。「拮抗剤活性」とは、物質が拮抗剤として機能することを意図している。CD40の拮抗剤はCD40受容体のアゴニストリガンド、特にCD40Lへの結合により誘導される応答の何れかの誘導を防止又は低減する。拮抗剤はアゴニスト結合への応答の何れか1つ以上の誘導を5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、好ましくは40%、45%、50%、55%、60%、より好ましくは70%、80%、85%、最も好ましくは90%、95%、99%、又は100%低減してよい。抗CD40治療薬、例えば抗CD40抗体のCD40リガンド結合特異性及び拮抗剤活性を測定するための方法は当該分野で知られており、限定しないが、結合試験、B細胞による免疫グロブリン分泌をモニタリングするための試験、B細胞増殖試験、Banchereau様B細胞増殖試験、抗体生産に関するT細胞ヘルパー試験、B細胞増殖試験の同時刺激、及びB細胞活性化まかのアップレギュレーションに関する試験を包含する。例えば参照として本明細書に組み込まれるWO00/75348及び米国特許6,087,329に開示されている試験を参照できる。更に又、仮出願である表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2003年11月4日、2003年11月26日及び2004年4月27日のもの、及び、譲渡された各々の米国特許出願60/517,337(代理人案件番号PP20107.001(035784/258442))、60/525,579(代理人案件番号PP20107.002(035784/271525))、及び60/565,710(代理人案件番号PP20107.003(035784/277214))、及び国際出願PCT/US2004/037152(代理人案件番号PP20107.004(035784/282916))、同様に、表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2004年11月4日、WO2005/044854として公開されたものを参照でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。
【0055】
「有意な」アゴニスト活性とは、B細胞応答の試験において測定した場合に、中立的な物質又は陰性対照により誘導されるアゴニスト活性よりも少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%高値であるアゴニスト活性を意図している。好ましくは「有意な」アゴニスト活性はB細胞応答の試験において測定した場合に、中程度の物質又は陰性対照により誘導されるアゴニスト活性よりも少なくとも2倍高値、又は少なくとも3倍高値であるアゴニスト活性である。即ち、例えば、目的のB細胞応答がB細胞増殖である場合、「有意な」アゴニスト活性は、中立的な物質又は陰性対照により誘導されるB細胞増殖のレベルよりも少なくとも2倍高値、又は少なくとも3倍高値であるB細胞増殖のレベルの誘導となる。1つの実施形態において、CD40に結合しない非特異的免疫グロブリン、例えばIgG1が陰性対照として機能する。「有意なアゴニスト活性を有さない」物質は、B細胞応答の試験において測定した場合に、中立的な物質又は陰性対照により誘導されるアゴニスト活性よりも約25%高値を超えない、好ましくは中立的な物質又は陰性対照により誘導されるアゴニスト活性よりも約20%高値、15%高値、10%高値、5%高値、1%高値、0.5%高値を超えない、更には約0.1%高値を超えないアゴニスト活性を示すことになる。
【0056】
本発明の一部の実施形態においては、本発明の安定な液体医薬組成物は拮抗剤抗CD40抗体を含む。そのような抗体はヒト細胞上のCD40抗原に結合した場合に上記した通り有意なアゴニスト活性を有さない。本発明の1つの実施形態において、拮抗剤抗CD40抗体は1つの細胞応答において有意なアゴニスト活性を有さない。本発明の別の実施形態において、拮抗剤抗CD40抗体は1つより多い細胞応答の試験において有意なアゴニスト活性を有さない(例えば増殖及び分化、又は増殖、分化、及びB細胞の場合は、抗体生産)。本発明の一部の実施形態においては、拮抗剤抗CD40抗体は、例えば後述する通り、完全なヒトモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9又はその抗原結合フラグメントである。
【0057】
当該分野で知られた試験のいずれかを用いて、抗CD40抗体がB細胞応答1つ以上の拮抗剤として機能するかどうか調べることができる。一部の実施形態においては、抗CD40抗体はB細胞増殖、B細胞分化、抗体生産、細胞間接着、B細胞メモリー形成、アイソタイプ切り替え、MHCクラスII及びCD80/86の細胞表面発現のアップレギュレーション、及びIL−8、IL−12及びTNFのようなプロ炎症性サイトカインの分泌よりなる群から選択されるB細胞応答少なくとも1つの拮抗剤として機能する。特に興味深いものはヒトB細胞の表面上のヒトCD40抗原に結合した場合にB細胞増殖に関して有意なアゴニスト活性を有さない拮抗剤抗CD40抗体である。
【0058】
1つのそのような実施形態において、抗CD40抗体は後述する実施例4において記載するもののようなB細胞増殖試験において測定した場合にB細胞の増殖の拮抗剤であり、拮抗剤抗CD40抗体は中立的な物質又は陰性対照により誘導されるB細胞増殖よりも約25%高値を超えない、好ましくは中立的な物質又は陰性対照により誘導されるB細胞増殖よりも約20%高値、15%高値、10%高値、5%高値、1%高値、0.5%高値を超えない、更には約0.1%高値を超えないレベルにおいてB細胞増殖を刺激する。
【0059】
他の実施形態において、抗CD40抗体は後述する実施例4において記載するもののようなB細胞増殖試験において測定した場合に別の抗CD40抗体、例えばS2C6抗CD40抗体により誘導されるB細胞の増殖の拮抗剤であり、、その別の抗CD40抗体により拮抗剤抗CD40抗体の存在下に刺激されたB細胞増殖のレベルは、別の抗CD40抗体により拮抗剤抗CD40抗体の非存在下に誘導されたB細胞増殖の約25%を超えず(即ち少なくとも75%抑制)、好ましくは別の抗CD40抗体により拮抗剤抗CD40抗体の非存在下に誘導されたB細胞増殖の約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%を超えず、更には約0.1%を超えない。
【0060】
更に別の実施形態においては、抗CD40抗体は後述する実施例4において記載するB細胞活性化試験において測定した場合に細胞系統EL4B5により誘導されるB細胞増殖の拮抗剤であり、、拮抗剤抗CD40抗体の存在下にEL4B5細胞系統により刺激されたB細胞増殖のレベルは、この細胞系統により拮抗剤抗CD40抗体の非存在下に誘導されたB細胞増殖の約25%を超えず(即ち少なくとも75%抑制)、好ましくはこの細胞系統により拮抗剤抗CD40抗体の非存在下に誘導されたB細胞増殖の約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%を超えず、更には約0.1%を超えない。
【0061】
更に別の実施形態においては、抗CD40抗体は後述する実施例4において記載するB細胞による抗体生産に関するヒトT細胞ヘルパー試験において測定した場合にヒトB細胞によるヒトT細胞誘導抗体生産の拮抗剤である。この態様において、拮抗剤抗CD40抗体の存在下にT細胞により刺激されたB細胞によるIgG抗体生産、IgM抗体生産、又はIgG及びIgM両方の抗体生産のレベルは、拮抗剤抗CD40抗体の非存在下にT細胞により刺激されたB細胞によるそれぞれの抗体の生産の約50%を超えず(即ち少なくとも75%抑制)、好ましくは拮抗剤抗CD40抗体の非存在下にT細胞により刺激されたB細胞によるそれぞれの抗体の生産の約25%、約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%を超えず、更には約0.1%を超えない。
【0062】
「CD40リガンド」とは、CD40シグナリング経路1つ以上に結合して活性化することができる何れかのペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質を意図している。即ち「CD40リガンド」とは、限定しないが、完全長のCD40リガンドタンパク質、及びCD40発現細胞上のCD40シグナリングに結合して刺激する機能を実施するために十分な活性を保持しているその変異体及びフラグメントを包含する。ネイティブのCD40リガンド、例えばヒトCD40リガンド(CD40L;CD154としても知られている)に対する修飾は、限定しないが、置換、欠失、トランケーション、伸長、融合タンパク質、フラグメント、ペプチドミメティック等を包含する。本発明の一部の実施形態においては拮抗剤抗CD40抗体の生物学的活性を評価するための試験は、CD40発現細胞上のCD40シグナリングを刺激するための可溶性CD40L、例えば可溶性組み換えヒトCD40L(Alexis Corporation,Bingham,Nottinghamshire,UK)の使用を包含する。
【0063】
「CD40L媒介CD40シグナリング」とは、CD40リガンドとの細胞表面受容体CD40の相互作用から生じる生物学的活性の何れかを意図している。CD40シグナリングの例はCD40発現細胞の増殖及び生存、及びCD40発現細胞内のCD40シグナリング経路1つ以上の刺激をもたらすシグナルである。CD40「シグナリング経路」又は「シグナルトランスダクション経路」とは、CD40受容体のCD40リガンド、例えばCD40Lとの相互作用から生じ、、シグナル経路を通過して伝達される場合に、シグナリングカスケードにおける下流分子1つ以上の活性化をもたらすシグナルを発生する少なくとも1つの生化学的反応又は生化学的反応のグループを意味することを意図している。シグナルトランスダクション経路には、細胞の原形質膜を通過する、シグナルトランスダクション分子のシリーズ1つ以上を通過する、細胞の細胞質を通過する、一部の場合においては、細胞の核に至る、細胞表面CD40受容体からのシグナルの伝達をもたらす多くのシグナルトランスダクション分子が関与している。CD40シグナルトランスダクション経路は例えば、AKTの活性化をもたらし、究極的にはNF−κBシグナリング経路を介したNF−κBの活性化をもたらすAKTシグナリング経路;及びそれぞれERK及びp38の活性化をもたらすMEK/ERKシグナリング経路及びMEK/p38シグナリング経路を包含する、有糸分裂促進物質活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナリング経路を包含する。これらのシグナリング経路の活性化及びブロッキングの間の均衡が細胞の生存又はアポトーシスの何れかに好都合なものとなる。
【0064】
一部の実施形態においては、本発明の安定な医薬組成物はCD40L媒介CD40シグナリングをブロックする拮抗剤抗CD40抗体を含む。CD40L媒介CD40シグナリングをブロックする場合の拮抗剤抗CD40抗体の役割のより詳細な説明については、例えば、仮出願である表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2003年11月4日、2003年11月26日及び2004年4月27日のもの、及び、譲渡された各々の米国特許出願60/517,337(代理人案件番号PP20107.001(035784/258442))、60/525,579(代理人案件番号PP20107.002(035784/271525))、及び60/565,710(代理人案件番号PP20107.003(035784/277214))、及び国際出願PCT/US2004/037152(代理人案件番号PP20107.004(035784/282916))、同様に、表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2004年11月4日、WO2005/044854として公開されたものを参照することができ;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。更に又、仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Proliferative Disorders Mediated by CD40 Signaling」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,285(代理人案件番号PP028035.0002(035784/304312))、及び相当する国際出願PCT/US2006/019414(代理人案件番号PP028035.0003(035784/311611))、出願日2006年5月18日、WO2006/125143として公開;及び仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Diseases Having an Autoimmune and/or Inflammatory Component」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,336(代理人案件番号PP028062.0002(035784/304311))、及び相当する国際特許出願PCT/US2006/019325(代理人案件番号PP028062.0003(035784/311608))、出願日2006年5月18日、WO2006/125117として公開されたものも参照でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。
【0065】
本発明の安定な液体医薬組成物は抗CD40抗体、特に、拮抗剤抗CD40抗体及び/又はその抗原結合フラグメントを含む。以下の用語及び定義をそのような抗体に適用する。
【0066】
「抗体」及び「免疫グロブリン」(Ig)は同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。用語は同義語的に使用される。一部の場合においては、免疫グロブリンの抗原特異性は既知であってよい。
【0067】
「抗体」という用語は広義の意味において使用され、完全に組み立てられた抗体、抗原に結合できる抗体フラグメント(例えばFab、F(ab’)2、Fv、単鎖抗体、ダイアボディー、抗体キメラ、ハイブリッド抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体等)、及び上記を含む組み換えペプチドを包含する。
【0068】
「モノクローナル抗体」及び「mAb」という用語は本明細書においては、抗体の実質的に均質な集団から得られた抗体を指し、即ち、集団を含む個々の抗体は、少量において存在してよい可能な天然に存在する突然変異を除き同一である。
【0069】
「ネイティブの抗体」及び「ネイティブの免疫グロブリン」とは、通常は2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖()を有する約150,000ダルトンのヘテロ4量体糖タンパク質である。各軽鎖は1つの共有結合のジスルフィド結合により重鎖に連結されており、ジスルフィド連結部の数は種々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖内で変動する。各重鎖及び軽鎖は又、規則的に間隔をおいた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は一端において可変ドメイン(VH)とそれに続く多くの定常ドメインを有する。各軽鎖は一端において可変ドメイン(VL)及びそのもう一方の端部において定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインとアラインされており、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインとアラインされている。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変ドメインの間の界面を形成すると考えられている。
【0070】
「可変」という用語は可変ドメインの特定の部分が抗体の間で配列において広範に異なっているという事実を指す。可変領域は抗原結合特異性を付与する。しかしながら、変動性は抗体の可変ドメイン全体に渡って均一に分布しているわけではない。それは、共に軽鎖及び重鎖の可変ドメインにある相補性決定領域(CDR)又は超可変領域と称される3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク(FR)領域に収容されている。ネイティブの重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、βプリーツ型シート構造に連結している、一部の場合にはその部分を形成しているループを形成する3つのCDRにより連結されたβプリーツ型シート配置を大半が採用しているFR領域4つを含む。各鎖のCDRはFR領域により近接して共に保持されており、別の鎖に由来するCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等(1991)NIH Publ.No.91−3242,Vol.I,p.647−669参照)。定常ドメインは抗原への抗体の結合には直接関与していないが、種々のエフェクター機能、例えばFc受容体(FcR)結合、抗体依存性細胞性細胞毒性における抗体の参加、補体依存性細胞毒性の開始、及び肥満細胞脱顆粒を示す。
【0071】
「超可変領域」という用語は本明細書においては、抗原結合を担っている抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は「相補性決定領域」即ち「CDR」に由来するアミノ酸残基(即ち軽鎖可変ドメインの残基24〜34(L1)、50〜56(L2)及び89〜97(L3)、及び、重鎖可変ドメインの残基31〜35(H1)、50〜65(H2)及び95〜102(H3);Kabat等(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(5th ed.,Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,Md)及び/又は「超可変領域」に由来する残基(即ち軽鎖可変ドメインの残基26〜32(L1)、50〜52(L2)及び91〜96(L3)、及び重鎖可変ドメインの(H1)、53〜55(H2)及び96〜101(H3);Clothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901−917)を含む。「フレームワーク」即ち「FR」残基は本明細書において想定する場合は超可変領域以外の可変ドメイン残基である。
【0072】
「抗体フラグメント」は未損傷の抗体の一部分、好ましくは未損傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例はFab、F(ab’)2及びFvフラグメント;ダイアボディー;線状抗体(Zapata等(1995)Protein Eng.8(10):1057−1062);単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体を包含する。抗体のパパイン消化は各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと称される2つの同一の抗原結合フラグメント、及び、自身の名称が容易に結晶化する自身の能力を反映している残余の「Fc」フラグメントを生じさせる。ペプシン処理は2つの抗原複合化部位を有し、なお抗原に交差結合することができるF(ab’)2フラグメントを生じさせる。
【0073】
「Fv」は完全な抗原認識及び結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。この領域は堅固な非共有結合性の会合における1重鎖及び1軽鎖の可変ドメインの2量体より成る。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH−VL2量体の表面上に抗原結合部位を定義するのはこの配置においてである。総合すれば、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与している。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的なCDRを僅か3つしか含まないFcの半分)であっても、完全な結合部位よりは低親和性ではあるが、なお抗原を認識して結合する能力を有している。
【0074】
Fabフラグメントは又、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fabフラグメントは、抗体ヒンジ領域からのシステイン1個以上を包含する重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数残基が付加していることにより、Fab’フラグメントとは異なっている。Fab’−SHは遊離のチオール基を定常ドメインのシステイン残基が担持しているFab’に対する本明細書における標記である。Fab’フラグメントはF(ab’)2フラグメントの重鎖ジスルフィド架橋を還元することにより生成される。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも知られている。
【0075】
何れかの脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」はその定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と称される2つの明確に異なった型の一方に割りつけられる。
【0076】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割りつけることができる。ヒト免疫グロブリンには5つの主要なクラス、即ちIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらの数種はさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に分割される。免疫グロブリンの異なるクラスに相当する重鎖定常ドメインはアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューとそれぞれ称される。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元配置はよく知られている。異なるアイソタイプは異なるエフェクター機能を有する。例えば、ヒトIgG1及びIgG3アイソタイプはADCC(抗体依存性細胞媒介細胞毒性)活性を有する。
【0077】
「標識」という単語は、本明細書においては、「標識された」抗体を形成するように抗体に直接又は間接的に共役されている検出可能な化合物又は組成物を指す。標識はそれ自体検出可能であってよく(例えば放射性同位体標識又は蛍光標識)、或いは、酵素標識の場合は、検出可能な化合物又は組成物の化学的改変を触媒してよい。
【0078】
「宿主細胞」とは、本明細書においては、組み換えベクター又は他の転移ポリヌクレオチドに対するレシピエントなることができるか、なっており、トランスフェクトされている元の細胞の子孫を包含することができる、単細胞の実体として培養された微生物又は真核生物の細胞又は細胞系統を指す。当然ながら単細胞の子孫は、天然、偶然又は意図的な突然変異により、元の親と形態学的又はゲノム又は総DNA相補体において完全同一ではなくなっていてもよい。
【0079】
「ヒトエフェクター細胞」FcR1つ以上を発現し、エフェクター機能を発揮する白血球である。好ましくは細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)エフェクター機能を実施する。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、好酸球、及び好中球を包含し、PBMC及びNK細胞が好ましい。ADCC活性を有する抗体は典型的にはIgG又はIgG3アイソタイプのものである。IgG1及びIgG3を単離することに加えて、このようなADCC媒介抗体は非ADCC抗体由来の可変領域又は可変領域フラグメントをIgG1又はIgG3アイソタイプ定常領域に操作することによっても作成できる。
【0080】
「Fc受容体」即ち「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載するために使用する。好ましいFcRはネイティブ配列のヒトFcRである。更に又、好ましいFcRはIgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIのサブクラスの受容体、及びこれらの受容体の対立遺伝子変異体及びオルタナティブスプライシング型を包含する。FcγRII受容体は、
FcγRIIA(活性化受容体)及びFcγRIIB(抑制受容体)を包含し、これらはその細胞質ドメインにおいて主に異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAはその細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有している。抑制受容体FcγRIIBはその細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系抑制モチーフ(ITIM)を含有している(Daeron(1997)Annu.Rev.Immunol.15:203−234参照)。FcRはRavetch and Kinet(1991)Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991);Capel等(1994)Immunomethods 4:25−34;and de Haas等(1995)J.Lab.Clin.Med.126:330−341において考察されている。他のFcR、例えば将来発見されるものも本明細書における「FcR」という用語に包含される。用語は又、母動物IgGの胎仔への転移を担っている生仔受容体FcRnも包含する(Guyer等(1976)J.Immunol.117:587 and Kim等(1994)J.Immunol.24:249(1994))。
【0081】
ヒト抗体を作成するための多くの方法が存在する。例えば、分泌細胞はエプスタイン−バーウィルス(EBV)による感染により不朽化することができる。しかしながら、EBV感染細胞はクローニングが困難であり、通常は比較的低収率の免疫グロブリンしか生産しない(James and Bell(1987)J.Immunol.Methods 100:5−40)。将来において、ヒトB細胞の不朽化が形質転換遺伝子の所定の組み合わせの導入により達成される可能性がある。そのような可能性はSV40大型癌タンパク質及びH−rasの癌遺伝子対立遺伝子を伴ったテロメラーゼ触媒サブユニットの発現が正常ヒト上皮及び線維芽細胞の腫瘍形成性変換をもたらしたことが最近明らかになったことにより注目されている(Hahn等(1999)Nature 400:464−468)。現在では、内因性免疫グロブリン生産の非存在下におけるヒト抗体のレパートリーの生産が免疫化により可能となるトランスジェニック動物(例えばマウス)を作成することができる(Jakobovits等(1993)Nature 362:255−258;Lonberg and Huszar(1995)Int.Rev.Immunol.13:65−93;Fishwild等(1996)Nat.Biotechnol 14:845−851;Mendez等(1997)Nat.Genet.15:146−156;Green(1999)J.Immunol.Methods 231:11−23;Tomizuka等(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722−727;Little等(2000)Immunol.Today 21:364−370において考察)。例えば、キメラ及び生殖細胞系統の突然変異体であるマウスにおける抗体重鎖結合部領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失が内因性抗体生産の完全な抑制をもたらすことが報告されている(Jakobovits等(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551−2555)。ヒト生殖細胞系統免疫グロブリン遺伝子アレイのそのような生殖細胞系統突然変異体マウスにおける転移は抗原攻撃時のヒト抗体の生産をもたらす(Jakobovits等(1993)Nature 362:255−258)。Mendez等(1997)(Nature Genetics 15:146−156)は抗原攻撃時に高親和性の完全ヒト抗体を形成するトランスジェニックマウスの系統を作成している。これは巨大塩基ヒト重鎖及び軽鎖の遺伝子座の欠失保有マウスへの生殖細胞系統取り込みを上記した通り内因性JHセグメント内へに行うことにより達成されている。これらのマウス(XenoMouse(登録商標)II技術(Abgenix;Fremont,California))は約66個のVH遺伝子、完全なDH及びJH領域、及び3個の異なる定常領域を含有する1,020kbのヒト重鎖遺伝子座を保有しており、更に、32個のVκ遺伝子、Jκ遺伝子、及びCκ遺伝子を含有する800kbのヒトκ遺伝子座を保有している、これらのマウスにおいて生産される抗体は遺伝子の再配列、組み立て及びレパートリーを包含する全ての点において、ヒトにおいて観察されるものに極めて近似している。ヒト抗体はネズミ遺伝子座内の遺伝子再配列を防止する内因性セグメントの欠失のために、内因性抗体全体に渡って優先的に発現される。このようなマウスを特定の意図する抗原により免疫化してよい。
【0082】
そのような免疫化された動物に由来する血清は、初期抗原に対する抗体の反応性に関してスクリーニングしてよい。リンパ球はリンパ節又は脾細胞から単離してよく、CD138陰性及びCD19陽性細胞を得るための選択によりB細胞を更に選択してよい。1つの特徴において、そのようなB細胞培養物(BCC)を更に骨髄腫細胞に融合することにより、上記した通りハイブリドーマを作成してよい。
【0083】
別の特長において、そのようなB細胞培養物を更にスクリーニングすることにより好ましくは初期抗原に対する反応性のあるものを得てよい。そのようなスクリーニングは標的/抗原タンパク質を用いた酵素結合免疫吸着試験(ELISA)、目的の抗原に結合する既知抗体を用いた競合試験、及び標的抗原を発現する一過性にトランスフェクトされたCHO又は他の細胞へのインビトロの結合を包含する。
【0084】
CD40に対するモノクローナル抗体は当該分野で知られている。例えば全て参照として本明細書に組み込まれるMcMichael,ed.(1987;1989)Leukocyte Typing III and IV(Oxford University Press,New York);米国特許5,674,492;5,874,082;5,677,165;6,056,959;WO00/63395;国際公開WO02/28905及びWO02/28904;Gordon等(1988)J.Immunol.140:1425;Valle等(1989)Eur.J.Immunol.19:1463;Clark等(1986)PNAS 83:4494;Paulie等(1989)J.Immunol.142:590;Gordon等(1987)Eur.J.Immunol.17:1535;Jabara等(1990)J.Exp.Med.172:1861;Zhang等(1991)J.Immunol.146:1836;Gascan等(1991)J.Immunol.147:8;Banchereau等(1991)Clin.Immunol.Spectrum 3:8;and Banchereau等(1991)Science 251:70におけるB細胞抗原に関する項目を参照できる。他の抗CD40モノクローナル抗体は限定しないが、ヒト化抗CD40抗体、例えばネズミ抗CD40抗体SGN−14(Francisco等(2000)Cancer Res.60:3225−31)のヒト化型であるSGN−40(Tai等(2004)Cancer Res.64:2846−52;米国特許6,838,261)、及び参照として全てが本明細書に組み込まれる米国出願2004/120948に開示されているアゴニスト及び拮抗剤を包含する。
【0085】
本発明において特に有利なものは、CD40L媒介CD40シグナリングをブロックする作用を有し、、例えば後述するCHIR−12.12抗体のようにADCCも調節してよい拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0086】
本発明の安定な液体医薬組成物中で使用するための拮抗剤抗CD40抗体はヒト細胞表面上に発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合できるモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを包含する。一部の実施形態においては、安定な液体医薬組成物中の拮抗剤抗CD40抗体はCD40細胞表面抗原に対して強力な単一部位結合親和性を示す。そのようなモノクローナル抗体はBiacoreTMのような標準的な試験法を用いて測定した場合、少なくとも10−5M、少なくとも3x10−5M、好ましくは少なくとも10−6M〜10−7M、より好ましくは10−8M〜10−12MのCD40に対する解離平衡定数(KD)を示す。Biacore分析は当該分野で知られており、詳細は「BIAapplications handbook」に記載されている。WO01/27160に記載されている方法も結合親和性を調節するために使用できる。
【0087】
特に有利なものは、上記定義した通り有意なアゴニスト活性を有さないが、ヒト細胞上のCD40抗原に結合した場合、特に新生物性のヒトB細胞上のCD40抗原に結合した場合に拮抗剤活性を示す拮抗剤抗CD40抗体である。本発明の1つの実施形態においては、拮抗剤抗CD40抗体は1つのB細胞応答において有意なアゴニスト活性を有さない。本発明の別の実施形態においては、拮抗剤抗CD40抗体は1より多いB細胞応答(例えば増殖及び分化、又は増殖、分化及び抗体生産)の試験において有意なアゴニスト活性を有さない。適当なモノクローナルの抗CD40抗体はひと定常領域を有し;好ましくはそれらはまた完全又は部分的にヒト化されたフレームワーク領域を有し;最も好ましくは完全ヒト抗体又はその抗原結合フラグメントである。そのようなモノクローナル抗体の例はCHIR−5.9及びCHIR−12.12として本明細書に標記する抗体である。
【0088】
即ち、一部の実施形態においては、本発明の安定な液体医薬組成物中に存在する拮抗剤抗CD40抗体は、モノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12である。CHIR−5.9及びCHIR−12.12抗体はハイブリドーマ細胞株131.2F8.5.9(本明細書においては細胞株5.9と称する)及び153.8E2.D10.D6.12.12(本明細書においては細胞株12.12と称する)から生産されるIgG1アイソタイプの完全ヒト抗CD40モノクローナル抗体である。これらの細胞株はトIgG1重鎖遺伝子座及びヒトκ鎖遺伝子座を含有する免疫化された異型マウスに由来する脾細胞を用いて作成されている(XenoMouse(登録商標)II技術、Abgenix;Fremont,California)。脾細胞をマウス骨髄腫細胞SP2/0細胞(Sierra BioSouurce)に融合させた。得られたハイブリドーマを数回サブクローニングし、安定なモノクローナル細胞株5.9及び12.12を作成した。本発明の他の抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座に関してトランスジェニックのマウスを用いながら同様に、又は当該分野で知られた、及び/又は本明細書に記載した他の方法により作成してよい。
【0089】
CHIR−12.12抗体の可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列、及びCHIR−5.9抗体の可変領域のアミノ酸配列は本明細書に開示する通りである。より詳細には、mAbCHIR−12.12に関する軽鎖及び重鎖に関するリーダー、可変及び定常領域に関するアミノ酸配列は、配列番号2(mAbCHIR−12.12の軽鎖に関する完全な配列)、配列番号4(mAbCHIR−12.12の重鎖に関する完全な配列)、及び配列番号5(配列番号4に示されるmAbCHIR−12.12の重鎖の変異体に関する完全な配列;ここで変異体は配列番号4の153位のアラニン残基に対してセリン置換を含む)に示される。mAbCHIR−12.12に関する軽鎖及び重鎖に関するヌクレオチド配列は配列番号1(mAbCHIR−12.12の軽鎖に関するコーディング配列)及び配列番号3(mAbCHIR−12.12の重鎖に関するコーディング配列)に示される。mAbCHIR−5.9に関する軽鎖及び重鎖に関するリーダー、可変及び定常領域に関するアミノ酸配列は、配列番号6(mAbCHIR−5.9の軽鎖に関する完全な配列)、配列番号7(mAbCHIR−5.9の重鎖に関する完全な配列)、及び配列番号8(配列番号7に示されるmAbCHIR−5.9の重鎖の変異体に関する完全な配列;ここで変異体は配列番号7の158位のアラニン残基に対してセリン置換を含む)に示される。更に又、CHIR−5.9(マウスハイブリドーマ系統131.2F8.5.9(CMCC#12047)及びCHIR−12.12(マウスハイブリドーマ系統153.8E2.D10.D6.12.12(CMCC#12056)抗体を発現するハイブリドーマはそれぞれPTA−5542及びPTA−5543の特許寄託記号とともに2003年9月17日にATCC(American Type Culture Collection;10801 University Blvd.,Manassas,Virginia20110−2209(USA))に寄託されている。
【0090】
拮抗剤活性に加えて、本発明の安定な液体医薬組成物中で使用するための抗CD40抗体は腫瘍細胞に対抗する作用の別の機序を有することができる。例えば、ネイティブのCHIR−5.9及びCHIR−12.12抗体はADCC活性を有する。或いは、CHIR−5.9及びCHIR−12.12抗体の可変領域をADCC活性を有する別の抗体アイソタイプ上で発現させることができる。更に又、後に記載する通り、CHIR−5.9又はCHIR−12.12のネイティブ型、組み換え型又は抗原結合フラグメントを細胞毒、治療薬又は放射活性の金属イオン又は放射性同位体に共役することも可能である。
【0091】
CHIR−5.9及びCHIR−12.12モノクローナル抗体はELISA型の試験において可溶性CD40に結合し、CD40リガンドの細胞表面寄与への結合を防止し、予め結合しているCD40リガンドを置き換えることがフローサイトメトリー試験により明らかにされている。抗体CHIR−5.9及びCHIR−12.12はCD40への結合に関して相互に競合するが、共に参照として全てが本明細書に組み込まれる米国仮出願である60/237,556、表題「Human Anti−CD40 Antibodies」、出願日2000年10月2日、及び、PCT国際出願PCT/US01/30857、同様の表題「Human Anti−CD40 Antibodies」、出願日2001年10月2日(代理人案件番号PP16092.003)に記載されている抗CD40モノクローナル抗体である15B8とは競合しない。正常ヒト対象由来のB細胞の増殖に対する作用に関してインビトロで試験した場合、CHIR−5.9及びCHIR−12.12は拮抗剤抗CD40抗体として作用する。更に又、CHIR−5.9及びCHIR−12.12は正常対象由来のヒトリンパ球の強力な増殖を誘導しない。これらの抗体は抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)によりCD40発現標的細胞を殺傷することができる。BiacoreTM試験で測定した場合、CHIR−5.9のヒトCD40に対する結合親和性は1.2x10−8Mであり、CHIR−12.12の結合親和性は5x10−10Mであった。
【0092】
上記したモノクローナル抗体CHIR−5.9及びCHIR−12.12の結合特性を共有する他の拮抗剤抗CD40抗体は、限定しないが、以下のもの、即ち(1)それぞれPTA−5542及びPTA−5543の特許寄託記号とともにATCCに寄託された131.2F8.5.9(本明細書においては細胞株5.9と称する)及び153.8E2.D10.D6.12.12(本明細書においては細胞株12.12と称する)と命名されたハイブリドーマ細胞株から生産されるモノクローナル抗体;(2)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2及び配列番号4に示される配列の双方、及び配列番号2及び配列番号5に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;(3)配列番号6に示される配列、配列番号7に示される配列、配列番号8に示される配列、配列番号6及び配列番号7に示される配列の双方、及び配列番号6及び配列番号8に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;(4)配列番号1に示すヌクレオチド配列、配列番号3に示すヌクレオチド配列、及び配列番号1及び配列番号3のに示す配列の両方よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;(5)ハイブリドーマ細胞株5.9又はハイブリドーマ細胞株12.12により生産されるモノクローナル抗体を結合することが出来るエピトープに結合するモノクローナル抗体;(6)配列番号10又は配列番号12に示すアミノ酸配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;(7)競合的結合試験においてモノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;(8)CHIR−12.12又はCHIR−5.9モノクローナル抗体又は上記項目(1)〜(7)における上記モノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体、ここでフラグメントはヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持しているもの、を包含する。
【0093】
当業者の知る通り、本明細書に記載した抗体及びこれらの抗体の抗原結合フラグメントは、当該分野で周知であり、本明細書において後述する方法を用いて組み換えにより作成された抗体及びその抗原結合フラグメントを包含し、、例えば組み換えにより作成されたモノクローナル抗体CHIR−5.9及びCHIR−12.12を包含する。
【0094】
追加的な拮抗剤抗CD40抗体はそれぞれATCC水性セッション番号HB11339、HB12024及びHB11340を有するハイブリドーマにより分泌される5D12、3A8及び3C6と称されるモノクローナル抗体を包含する。例えば参照として全てが本明細書に組み込まれる米国特許6,315,998を参照できる。
【0095】
他の拮抗剤抗CD40抗体は当該分野で知られている。例えば参照として全てが本明細書に組み込まれる米国特許出願20020142358及び20030059427に開示されているF4−465と命名されたハイブリドーマにより生産されるヒト抗CD40抗体を参照できる。F4−465はHACマウスから得られており(Kuroiwa等(2000)Nature Biotech.10:1086(2000))、このため、ヒトラムダ軽鎖を発現する。
【0096】
本発明の医薬組成物のための抗体の製造
本発明の医薬組成物において使用するための抗体、例えば本明細書に開示した拮抗剤抗CD40抗体は当該分野で知られた何れかの抗体製造方法を用いて製造できる。即ち、ポリクローナル血清は従来の方法により製造してよい。一般的に、目的の抗原、CD40抗原を含有する溶液を先ず使用して適当な動物、好ましくはマウス、ラット、ウサギ、又はヤギを免疫化する。ウサギ又はヤギは入手できる血清の量及び標識された抗ウサギ及び抗ヤギ抗体の入手し易さのため、ポリクローナル血清の製造のために好ましい。
【0097】
ポリクローナル血清はトランスジェニック動物、好ましくはヒト免疫グロブリン遺伝子座を担持したマウスにおいて製造できる。好ましい実施形態においては、目的のタンパク質、例えばCD40を発現するSf9細胞を免疫原として使用する。免疫化は又、食塩水中、好ましくはフロイントの完全アジュバントのようなアジュバント中に抗原含有溶液を混合又は乳化すること、混合物又は乳液を非経腸的(一般的には皮下又は筋肉内)に注射することにより行うこともできる。50〜200μg/注射の用量が典型的には十分である。免疫化は一般的に2〜6週間後に食塩水中のタンパク質の注射1回以上により、好ましくはフロイントの不完全アジュバントを用いながら、ブーストする。或いは、本発明の目的のためにはインビボの免疫化と同等とみなされる当該分野で知られたインビトロの免疫化により抗体を作成してもよい。ポリクローナル抗血清はガラス又はプラスチックの容器内に免疫化した動物を放血させること、血液を25℃で1時間インキュベートすること、その後、4℃で2〜18時間インキュベートすることにより得られる。血清は遠心分離(例えば1000xg、10分間)により回収される。放血当たり約20〜50mlをウサギから得てよい。
【0098】
Sf9(Spodoptera frugiperda)細胞の作製は参照として本明細書に組み込まれる米国特許6,004,552に開示されている。慨すれば、CD40の場合、ヒトCD40をコードする配列を転移ベクターを用いてバキュロウィルス中に組み換えた。プラスミドをSf9細胞内に野生型バキュロウィルスDNAと同時トランスフェクトした。組み換えバキュロウィルス感染Sf9細胞を識別し、クローン的に精製した。
【0099】
好ましくは、抗体は本質的にモノクローナルである。「モノクローナル抗体」という用語は抗体の実質的に均質な集団から得られた抗体を指し、即ち、集団を含む個々の抗体は、少量において存在してよい可能な天然に存在する突然変異を除き同一である。用語は抗体の種又は原料に関して限定されない。用語は完全な免疫グロブリン並びにフラグメント、例えばFab、F(ab’)2、Fv及び抗体の抗原結合機能を保持しているその他のものを包含する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位;例えば抗CD40抗体の場合はCD40細胞表面抗原に対して指向されている。更に又、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向されていた異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製品とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して指向される。「モノクローナル」という修飾語は抗体の実質的に均質な集団から得られるものとしての抗体の特徴を示しており、何れかの特定の方法による抗体の製造を必要とするものとはみなさない。例えば本発明により使用するモノクローナル抗体はKohler等(1975)Nature256:495により最初に報告されたハイブリドーマ法により製造してよく、又は、組み換えDNA方法により製造してもよい(例えば米国特許4,816,567参照)。「モノクローナル抗体」とは又、例えばClackson等(1991)Nature 352:624−628及びMarks等(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;及び米国特許5,514,548に記載された手法を用いてファージ抗体ライブラリから単離してもよい。
【0100】
「エピトープ」とは、抗体が生産される対象となる、抗体が結合することになる抗原分子の部分を意図する。エピトープは線状のアミノ酸残基(即ちエピトープ内の残基が線形の状態で相互に逐次的に配置している)、非線状のアミノ酸残基(本明細書においては「非線状エピトープ」と称する;これらのエピトープは逐次的に配置していない)、又は線状及び非線状のアミノ酸残基の両方を含むことができる。
【0101】
モノクローナル抗体はKohler等(1975)Nature256:495−496の方法及びその変法を用いて調製できる。典型的には、マウスを抗原を含有する溶液で免疫化する。免疫化は、食塩水中、好ましくはフロイントの完全アジュバントのようなアジュバント中に抗原含有溶液を混合又は乳化すること、混合物又は乳液を非経腸的に注射することにより実施できる。当該分野で知られた何れかの免疫化方法を用いて本発明のモノクローナル抗体を得てよい。動物の免疫化の後、脾臓(及び場合により数個の大型のリンパ節)を摘出し、解離させて単細胞とする。脾細胞は目的の抗原でコーティングされたプレート又はウェルに細胞懸濁液を適用することによりスクリーニングしてよい。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現しているB細胞はプレートに結合し、洗浄除去されない。得られたB細胞、又は全ての解離した脾細胞を次に骨髄腫細胞と融合するように誘導してハイブリドーマを形成させ、選択培地中で培養する。得られた細胞を連続希釈によりプレーティングし、目的の抗原に特異的に結合する(そして未関連の抗原には結合しない)抗体の生産に関して試験する。選択されたモノクローナル抗体(mAb)分泌ハイブリドーマを次にインビトロ(例えば組織培養ビン又は中空糸反応器中)又はインビボ(マウス腹水中等)のいずれかで培養する。
【0102】
拮抗剤抗CD40抗体を組み換えDNA法により調製するべきである場合は、モノクローナル抗体をコードするDNAは従来の操作法を用いて容易に単離され、配列決定される(例えばネズミ抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)。本明細書に記載するハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい原料として機能する。単離後、DNAを発現ベクター中に入れ、次にこれを宿主細胞、例えばE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は免疫グロブリンタンパク質を別様には生産しない骨髄腫細胞内にトランスフェクトすることにより組み換え宿主細胞内のモノクローナル抗体の合成を達成する。抗体をコードするDNAの細菌内での組み換え発現に関する考察を記述したものはSkerra等(1993)Curr.Opinion in Immunol.5:256 and Phickthun(1992)Immunol.Revs.130:151を包含する。或いは、参照として本明細書に組み込まれる米国特許5,545,403;5,545,405;and 5,998,144に開示されている通り、CHO細胞系統のような細胞系統内で生産できる。慨すれば、細胞系統をそれぞれ軽鎖及び重鎖を発現できるベクターでトランスフェクトする。異なるベクター上の2つのタンパク質をトランスフェクトすることにより、キメラ抗体を作成できる。他の利点は抗体の正確なグリコシル化である。
【0103】
一部の実施形態においては、拮抗剤抗CD40抗体、例えばCHIR−12.12又はCHIR−5.9抗体又はその抗原結合フラグメントは、マーカーとしてグルタミン合成酵素を使用するGS遺伝子発現系(Lonza Biologics,Portsmouth,New Hampshire)を使用しながらCHO細胞中に生産させる。同様に、参照として全てが本明細書に組み込まれる米国特許5,122,464;5,591,639;5,658,759;5,770,359;5,827,739;5,879,936;5,891,693;及び5,981,216を参照できる。
【0104】
更に又、本発明の医薬組成物中で使用するための抗体は所望の結合特性を有するキメラ抗体であることができる。即ち、例えば、本発明の方法において使用するためのキメラ抗CD40抗体は本明細書に記載するCHIR−5.9及びCHIR−12.12モノクローナル抗体の結合特性を有する。「キメラ」抗体とは、組み換えDNA手法を用いて最も好ましく誘導され、ヒト(免疫学的に「関連する」種、例えばチンバンジーを包含する)及び非ヒト成分の両方を含む抗体を意図している。即ち、キメラ抗体の定常領域は最も好ましくは天然のヒト抗体の定常領域と実質的に同一であり;キメラ抗体の可変領域は最も好ましくは非ヒト原料から誘導され、目的の抗原、即ちCD40抗原に対して所望の抗原特異性を有する。非ヒト原料はヒト抗原に対する抗体、又はヒトCD40抗原を含む物質を形成するために使用できる何れかの脊椎動物の原料であることができる。そのような非ヒト原料は、限定しないが、げっ歯類(例えばウサギ、ラット、マウス等;例えば参照として本明細書に組み込まれる米国特許4,816,567参照)、及び非ヒト霊長類(例えば旧世界サル、類人猿等;例えば参照として本明細書に組み込まれる米国特許5,750,105及び5,756,069参照)を包含する。本明細書においては、「免疫学的に活性な」という表現は例えばキメラ抗CD40抗体に言及して使用する場合、ヒトCD40に結合するキメラ抗体を意味する。
【0105】
「ヒト化」とは、非ヒト免疫グロブリン配列から誘導された最小の配列を含有する抗体の形態を意図している。大部分においては、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、それにおいては、レシピエントの超可変領域(相補性決定領域、即ちCDRとしても知られている)に由来する残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類のような非ヒト種の超可変領域(ドナー抗体)に由来する残基により置き換えられている。「相補性決定基」という表現はネイティブの免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性及び特異性を共に定義するアミノ酸配列である。例えばChothia et al(1987)J.Mol.Biol.196:901−917;Kabat et al(1991)U.S.Dept.of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242を参照できる。「定常領域」という表現はエフェクター機能を付与する抗体分子の部分を指す。ヒト疾患の治療における使用のための非免疫原性抗体を作成することを目的とした過去の研究において、マウスの定常領域をヒト定常領域で置換している。対象のヒト化抗体の定常領域はヒト免疫グロブリンから誘導されている。しかしながら、これらのヒト化抗体はなおヒトにおいて望ましくない、潜在的に危険な免疫応答を誘発しており、親和性の損失もあった。本発明の医薬組成物におけるヒト化抗体、例えばヒト化抗CD40抗体は目的の親抗体、例えば本明細書に記載するCHIR−5.9及びCHIR−12.12モノクローナル抗体により示されるものと同様の結合特性を有している。
【0106】
ヒト化は本質的にWinter等の方法(Jones等(1986)Nature 321:522−525;Riechmann等(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyen等(1988)Science 239:1534−1536)に従って、げっ歯類又は突然変異体のげっ歯類CDR又はCDR配列でヒト抗体の相当する配列を置換することにより実施できる。更に又参照として本明細書に組み込まれる5,225,539;5,585,089;5,693,761;5,693,762;5,859,205も参照できる。一部の例においてはヒト免疫グロブリンの可変領域1つ以上のフレームワーク領域内の残基が相当する非ヒト残基で置き換えられる(例えば米国特許5,585,089;5,693,761;5,693,762;及び6,180,370参照)。更に又、ヒト抗体はレシピエント抗体又はDNA抗体の何れにも存在しない残基を含んでよい。これらの修飾は抗体の性能を更に調整するために行われる(例えば所望の親和性を得るため)。一般的にヒト化抗体は超可変領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、フレームワーク領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである可変ドメイン少なくとも1つ、典型的には2つの実質的に全てを含むことになる。ヒト化抗体は場合により免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含むことになる。更に詳細な説明は参照として本明細書に組み込まれるJones等(1986)Nature 331:522−525;Riechmann等(1988)Nature 332:323−329;and Presta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596を参照できる。従って、このような「ヒト化」抗体は実質的には未損傷には至らないヒト可変ドメインが非ヒト種由来の相当する配列により置換されている抗体を包含してよい。実際には、ヒト化抗体は典型的には、一部のCDR残基及び恐らくは一部のフレームワーク残基がげっ歯類抗体の類似の部位に由来する残基で置換されたヒト抗体である。例えば米国特許5,225,539;5,585,089;5,693,761;5,693,762;5,859,205を参照できる。更に又、ヒト化抗体及び所定の抗原に対して向上した親和性を有するヒト化抗体を作成するための手法を開示している米国特許6,180,370及び国際公開WO 01/27160も参照できる。
【0107】
本発明は又、不活性化された内因性免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を特徴とする非ヒト哺乳類宿主、より詳しくはトランスジェニックマウスにおいて生産された異種又は修飾された抗体を用いて実施できる。そのようなトランスジェニック動物において、宿主免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖サブユニットの発現のためのコンピテントな内因性遺伝子は非機能性とされ、類似のヒト免疫グロブリン遺伝子座で置換される。これらのトランスジェニック動物は軽鎖又は重鎖の宿主免疫グロブリンサブユニットの実質的非存在下においてヒト抗体を生産する。例えば参照として本明細書に組み込まれる米国特許5,877,397及び5,939,598を参照できる。
【0108】
一部の実施形態においては、例えばCD40に対する完全ヒト抗体はトランスジェニックマウスを免疫化することにより得られる。そのようなマウスの1つはXenoMouse(登録商標)技術(Abgenix;Fremont,California)を用いて得られ、全て参照として本明細書に組み込まれる米国特許6,075,181,6,091,001及び6,114,598に開示されている。本明細書に開示する抗体を作成するために、ヒトIgG1重鎖遺伝子座及びヒトκ軽鎖遺伝子座に関してトランスジェニックであるマウスをヒトCD40を発現するSf9細胞で免疫化した。マウスはまた他のアイソタイプに関してもトランスジェニックであることができる。本発明の安定な液体医薬組成物において有用な完全なヒト抗CD40抗体は本明細書に開示するCHIR−5.9及びCHIR−12.12モノクローナル抗体により示されるものと同様の結合特性を特徴とする。
【0109】
目的の特定の抗体、例えば、抗CD40抗体、例えば拮抗剤抗CD40抗体のフラグメントはそれらが完全長抗体の所望の親和性を保持している限り、本発明の安定な液体医薬組成物中における使用に適している。即ち、例えば、抗CD40抗体のフラグメントはCD40B細胞表面抗原に結合する能力を保持することになる。そのようなフラグメントは相当する完全長抗体と同様の特性により特徴づけられる。即ち、例えば完全長拮抗剤抗CD40抗体のフラグメントはヒト細胞の表面上に発現されているヒトCD40抗原に特異的に結合することになり、、有意なアゴニスト活性は有さないが、ヒトCD40発現細胞上のCD40抗原への結合時に拮抗剤活性を示す。そのようなフラグメントは本明細書においては「抗原結合」フラグメントと称する。
【0110】
抗体の適当な抗原結合フラグメントは完全長抗体の一部分、一般的にはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例は限定しないが、Fab、F(ab’)2、及びFvフラグメント、及び単鎖抗体分子を包含する。「Fab」とは、軽鎖及び重鎖の一部を有する免疫グロブリンの1価の抗原結合フラグメントを意図している。F(ab’)2は両方の軽鎖及び両方の重鎖の部分を含有する免疫グロブリンの2価の抗原結合フラグメントを意図している。「単鎖Fv」又は「sFv」抗体フラグメントは抗体のVH及びVLドメインを含むフラグメントを意図しており、この場合、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖内に存在する。例えば参照として本明細書に組み込まれる米国特許4,946,778,5,260,203,5,455,030、及び5,856,456を参照できる。一般的に、Fvポリペプチドは更に抗原結合のための所望の構造をsFvが形成できるようにするVHとVLドメインの間のポリペプチドリンカーを含んでいる。sFvの考察に関してはPluckthun(1994)のThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,Vol.113,ed.Rosenburg and Moore(Springer−Verlag,New York),pp.269−315を参照できる。本明細書に開示する拮抗剤抗CD40抗体の抗原結合フラグメントは又、後述する通り、標的癌細胞の殺傷を起こすために細胞毒に共役できる。
【0111】
抗体又は抗体フラグメントは例えばMcCafferty等(1990)Nature 348:552−554(1990)及び米国特許5,514,548に記載の手法を用いて作成された抗体ファージライブラリから単離できる。Clackson等(1991)Nature 352:624−628及びMarks等(1991)J.Mol.Biol.222:581−597はファージライブラリを使用するそれぞれネズミ及びヒトの抗体の単離を記載している。その後の文献では、鎖シャフリング(Marks等(1992)Bio/Technology 10:779−783)並びに極めて大型のファージライブラリを構築するための方策としてのコンビナトリアルな感染及びインビボの組み換え(Waterhouse等(1993)Nucleic.Acids Res.21:2265−2266)による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の製造が記載されている。即ち、これらの手法はモノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ手法の実用的な代替法である。
【0112】
種々の手法が抗体フラグメントの作成のために開発されている。伝統的には、これらのフラグメントは未損傷抗体のタンパク分解的な消化を介して誘導されている(例えばMorimoto等(1992)Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992)and Brennan等(1985)Science 229:81参照)。しかしながら、これらのフラグメントは現在では組み換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体フラグメントは上記した抗体ファージライブラリから単離できる。或いは、Fab’−SHフラグメントをE.coliから直接回収して化学的にカップリングすることによりF(ab’)2フラグメントを形成できる(Carter等(1992)Bio/Technology 10:163−167)。別の経路によれば、F(ab’)2フラグメントは組み換え宿主細胞培養物から直接単離できる。抗体フラグメントの作成のための他の手法は当該分野で知られている。
【0113】
本発明の安定な液体医薬組成物における使用のための拮抗剤抗CD40抗体は本明細書に開示したCHIR−5.9及びCHIR−12.12モノクローナル抗体、並びにこれらの抗体とは異なるが、CDRを保持している抗体;及び、B細胞増殖及び/又は分化の抑制により拮抗剤活性が測定される1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、又は置換を有する抗体を包含する。本発明は又、例えば参照として本明細書に組み込まれる国際公開WO 98/52976及びWO0034317に記載されているとおり作成できる脱免疫化抗体、特に脱免疫化拮抗剤抗CD40抗体も包含する。この態様において、本発明の拮抗剤抗CD40抗体内の残基は、抗体をヒトに対しては又は低免疫原性とするがヒトCD40発現細胞に対する拮抗剤活性は保持しているように修飾され、この場合そのような活性は本明細書に記載した試験により測定される。同様に本発明の範囲に包含されるものは、目的の抗体、例えば拮抗剤抗CD40抗体又はそのフラグメントを含む融合タンパク質であり、その融合タンパク質は当該分野で知られる通り、合成するか、又は相当するポリヌクレオチドベクターから発現させることができる。そのような融合タンパク質は本明細書に記載する通り抗体のコンジュゲーションを参照しながら説明する。
【0114】
目的の結合親和性を有する何れかの知られた抗体は、例えば参照として本明細書に組み込まれる特許公開EP0983303A1、WO00/34317及びWO98/52976に記載されている方法を用いて作成された配列変異を有することができる。例えばCDR内の配列は抗体を、MHCクラスIIに結合させ、望ましくないヘルパーT細胞応答をトリガーさせることができる。保存的置換は抗体は結合親和性を保持できるが、なお望ましくないT細胞応答をトリガーするその能力を失うようにすることができる。何れかのこのような保存的又は非保存的な置換は当該分野で知られた方法、例えば本明細書に記載するものを用いて行うことができ、、得られた抗体もまた本発明の安定な液体医薬組成物中で使用できる。変異体抗体は特定の活性、例えば拮抗剤活性、親和性及び特異性に関して、本明細書に記載した方法を用いて定型的に試験することができる。
【0115】
上記した方法の何れか、又は本明細書に開示した何れかの他の方法により作成された拮抗剤抗CD40抗体はCHIR−12.12又はCHIR−5.9抗体と同様の態様において使用でき、その場合、それは以下の生物学的活性、即ち、T細胞により刺激される正常なヒト末梢B細胞による免疫グロブリンの分泌の抑制;JurkatT細胞により刺激される正常なヒト末梢B細胞の生存及び/又は増殖の抑制;CD40L発現細胞又は可溶性CD40リガンド(sCD40L)により刺激される正常なヒト末梢B細胞の生存及び/又は増殖の抑制;sCD40L又は固相CD40Lにより刺激される何れかの細胞における「生存」の抗アポトーシス細胞内シグナルの抑制;sCD40L又は固相CD40Lとのライゲーション時の何れかの細胞におけるCD40シグナルトランスダクションの抑制;ヒト悪性B細胞の増殖の抑制;CD40担持標的細胞又はCD40に対する同族リガンドを担持している細胞、例えば限定しないが、T細胞及びB細胞の欠失、アネルギー及び/又は耐容性誘導;CD4+CD25+調節T細胞の増殖又は活性化の誘導(例えばCD40−CD40L干渉を介したドナー同種抗原特異的組織拒絶、Maurik等(2002)J.Immunol.169:5401−5404参照);何れかの機序による細胞毒性(例えば限定しないが、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、補体依存性細胞毒性(CDC)、増殖のダウンレギュレーション、及び/又は標的細胞におけるアポトーシス);標的細胞サイトカイン分泌及び/又は細胞表面分子発現のモジュレーション;及びこれらの組み合わせ、の少なくとも一部分を保有する。本明細書に開示した拮抗剤抗CD40抗体及びその抗原結合フラグメントの所望の生物学的活性を測定するための試験は仮出願である表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2003年11月4日、2003年11月26日及び2004年4月27日のもの、及び、譲渡された各々の米国特許出願60/517,337(代理人案件番号PP20107.001(035784/258442))、60/525,579(代理人案件番号PP20107.002(035784/271525))、及び60/565,710(代理人案件番号PP20107.003(035784/277214))、及び国際出願PCT/US2004/037152(代理人案件番号PP20107.004(035784/282916))、同様に、表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2004年11月4日、WO2005/044854として公開されたものに記載されている通り実施でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。同様に、仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Proliferative Disorders Mediated by CD40 Signaling」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,285(代理人案件番号PP028035.0002(035784/304312))、及び相当する国際出願PCT/US2006/019414(代理人案件番号PP028035.0003(035784/311611))、出願日2006年5月18日、WO2006/125143として公開;及び仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Diseases Having an Autoimmune and/or Inflammatory Component」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,336(代理人案件番号PP028062.0002(035784/304311))、及び相当する国際特許出願PCT/US2006/019325(代理人案件番号PP028062.0003(035784/311608))、出願日2006年5月18日、WO2006/125117として公開されたものに記載された試験も参照でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。同様に、Schultze等(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:8200−8204;Denton等(1998)Pediatr.Transplant.2:6−15;Evans等(2000)J.Immunol.164:688−697;Noelle(1998)Agents Actions Suppl.49:17−22;Lederman等(1996)Curr.Opin.Hematol.3:77−86;Coligan等(1991)Current Protocols in Immunology13:12;Kwekkeboom等(1993)Immunology79:439−444;及び米国特許5,674,492及び5,847,082に記載された試験も参照でき;参照として本明細書に組み込まれる。
【0116】
本明細書において識別されるCD40抗原エピトープに特異的な拮抗剤抗CD40抗体を検出するための代表的な試験は、「競合的結合試験」である。競合的結合試験は、未知物質を検出し、標識された既知リガンドのその特異的抗体への結合を抑制するそれらの能力により定量する血清学的な試験である。これはまた競合的抑制試験とも称される。代表的な競合的結合試験においては、例えば本発明のモノクローナル抗体のエピトープ1つ以上に対して育成されたモノクローナル抗体と組み合わせて、標識されたCD40ポリペプチドを試料中の候補抗体により沈殿させる。目的のエピトープと特異的に反応する抗CD40抗体は、CD40タンパク質又は目的のCD40タンパク質の特定のエピトープを含むタンパク質のフラグメントに対して製造された一連の抗体をスクリーニングすることにより識別できる。例えば、ヒトCD40に関しては、目的のエピトープは、配列番号9によりコードされる配列番号10に示されるヒトCD40の短鎖アイソフォーム(ゲンバンクアクセッション番号NP_690593);ゲンバンクアクセッション番号NM_152854)も参照;又はヒトCD40の長鎖アイソフォーム(配列番号11に示される配列によりコードされる配列番号12に示されるゲンバンクアクセッション番号CAA43045及びNP_001241参照;ゲンバンクアクセッション番号X60592及びNM_001250参照)の線状及び/又は非線状のアミノ酸残基を含むエピトープを包含する。或いは、以前に識別されている適当な拮抗剤抗CD40抗体を用いた競合的結合試験を用いて以前に識別されている抗体に匹敵するモノクローナル抗体を選択することができる。
【0117】
このようなイムノアッセイにおいて使用される抗体は標識されているか、未標識であってよい。未標識抗体は凝集反応において使用してよく;標識された抗体は広範な種類の標識を用いた広範な種類の試験において使用してよい。抗CD40抗体と目的のエピトープとの間の抗体−抗原複合体の形成の検出は、抗体に検出可能な物質を結合させることにより容易にすることができる。適当な検出手段は、標識、例えば放射性核種、酵素、補酵素、蛍光物質、ケミルミネセント物質、発色物質、酵素基質又はコファクター、酵素阻害剤、補欠分子族複合体、フリーラジカル、粒子、染料等の使用を包含する。適当な酵素の例はセイヨウワサビパーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを包含し;適当な補欠分子族複合体の例はストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを包含し;適当な蛍光物質の例はウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリスリンを包含し;ルミネセント物質の例はルミノールであり;バイオルミネセント物質の例はルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを包含し;適当な放射性物質の例は125I、131I、35S及び3Hを包含する。このような標識された試薬は種々の良く知られた試験法、例えばラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、例えばELISA、蛍光イムノアッセイ等において使用してよい。例えば米国特許3,766,162;3,791,932;3,817,837;及び4,233,402を参照できる。
【0118】
以前に記載された拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの何れかを本発明の医薬組成物の使用の前に共役してよい。共役された抗体を作成するための方法は当該分野で知られている。即ち、抗体を間接的な標識又は間接的な標識方法を用いて標識してよい。「間接的な標識」又は「間接的な標識方法」とは、キレート形成剤が共有結合的に抗体に結合し、少なくとも1つの放射性核種がキレート形成剤に挿入されることを意図している。例えば参照として本明細書に組み込まれるSrivastava and Mease(1991)Nucl.Med.Bio.18:589−603に記載されているキレート形成剤及び放射性核種を参照できる。適当な標識は蛍光団、発色団、放射性原始(特に32P及び125I)、電子稠密試薬、酵素及び特異的結合相手を有するリガンドを包含する。酵素は典型的にはその活性により検出される。例えば、セイヨウワサビパーオキシダーゼは通常は分校光度計により定量可能な青色顔料に3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を変換するその能力により検出される。「特異的結合相手」とは、例えば抗原及びそれに対して特異的なモノクローナル抗体の場合のように、高い特異性でリガンド分子を結合できるタンパク質を指す。他の特異的結合相手はビオチンとアビジン又はストレプトアビジン、IgGとプロテインA、及び、当該分野で知られた多くの受容体−リガンド対を包含する。同じ標識が数種の異なる様式で機能する場合があるため、上記した説明は種々の標識を異なるクラスに範疇化する意味を有さない。例えば、125Iは放射性標識として、又は電子稠密試薬として作用してよい。HRPは酵素として、又はmAbに対する抗原として作用してよい。更に又、所望の作用のために種々の標識を組み合わせてもよい。例えばmAb及びアビジンは又、本発明の実施において標識を必要とし;即ち、mAbをビオチンで標識し、その存在を125Iで標識したアビジンを用いて、又はHRPで標識した抗ビオチンmAbを用いて検出してよい。他の序列及び可能性は当業者の知る通りであり、本発明の範囲内の等価物とみなされる。
【0119】
或いは、目的の拮抗剤抗CD40抗体を「直接標識」又は「直接標識方法」を用いて標識してよく、その場合、放射性核種は抗体に直接共有結合する(典型的にはアミノ酸残基を介する)。好ましい放射性核種は上記したSrivastava and Mease(1991)に記載されている。間接的な標識方法が特に好ましい。例えば放射性標識を抗体に結合させるためにリンカーを使用している国際公開WO 00/52031及びWO 00/52473;及び参照として本明細書に組み込まれる米国特許6,015,542に記載されている抗CD40抗体の標識された形態を参照することができる。
【0120】
抗体の変異体
本発明の医薬組成物は当該分野で知られている種々の拮抗剤抗CD40抗体を用いて製剤できる。そのような変異体は親抗体の所望の結合特性を保持していることになる。即ち、例えば製剤すべき拮抗剤抗CD40抗体が親のCHIR−12.12又はCHIR−5.9抗体の変異体である場合、変異体抗体は親CHIR−12.12又はCHIR−5.9抗体の結合特性を保有することになる。抗体変異体を作成するための方法は一般的に当該分野で使用できるものである。
【0121】
例えば、拮抗剤抗CD40抗体、例えば本明細書に記載するCHIR−5.9及びCHIR−12.12モノクローナル抗体のアミノ酸配列変異体は目的の抗体をコードするクローニングされたDNA配列における突然変異により調製できる。突然変異誘発及びヌクレオチド配列改変のための方法は当該分野で周知である。例えば参照として本明細書に組み込まれるWalker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York);Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492;Kunkel等(1987)Methods Enzymol.154:367−382;Sambrook等(1989)Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor,N.Y.);米国特許4,873,192及びこれらにおいて引用されている文献を参照できる。目的のポリペプチドの生物学的活性に影響しない適切なアミノ酸置換に関する指針は参照として本明細書に組み込まれるDayhoff等(1978)、Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルに示されている。保存的置換、例えば1つのアミノ酸の同様の特性を有する別のものとの交換が好ましい。保存的置換の例は限定しないが、GlyとAla、ValとIleとLeu、AspとGlu、LysとArg、AsnとGln、及びPheとTrpとTyrを包含する。
【0122】
目的の拮抗剤抗CD40抗体ポリペプチド、例えばCHIR−12.12イムノアッセイCHIR−5.9抗体の変異体を構築する場合、変異体が所望の活性、即ち同様の結合親和性を保有し続けるように、拮抗剤抗CD40抗体の場合は、ヒト細胞の表面上に発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合することができるように、有意なアゴニスト活性は有さないが、ヒトCD40発現細胞上のCD40抗原への結合時には拮抗剤活性を示すことができるように修飾を行う。当然ながら、変異体ポリペプチドをコードするDNAにおいて生じさせるいかなる突然変異も読み枠外に配列を置いてはならず、好ましくは二次mRNA構造を生じさせる相補領域を生じさせない。EP特許出願公開75,444を参照できる。
【0123】
更に又拮抗剤抗CD40抗体の定常領域は多くの方法でエフェクター機能が改変されるように突然変異させることができる。例えば、Fc受容体への抗体結合を最適化しているFcの突然変異を開示している米国特許6,737,056B1及び米国特許出願公開2004/0132101A1を参照できる。
【0124】
好ましくは、レファレンス拮抗剤抗CD40抗体の変異体は、レファレンス抗体、例えば本明細書に記載するCHIR−5.9又はCHIR−12.12モノクローナル抗体に関するアミノ酸配列に対して、又はレファレンス抗体分子のより短い部分に対して、少なくとも70%又は75%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%又は85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、又は95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。より好ましくは、分子は少なくとも96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を共有している。本発明の目的のためには、パーセント配列同一性は、ギャップオープンペナルティー12、及びギャプエクステンションペナルティー2、BLOSUMマトリックス62としてアファインギャップサーチを用いたSmith−Watermanの相同性検索アルゴリズムを用いて測定される。Smith−Watermanの相同性検索アルゴリズムはSmith and Waterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482−489に記載されている。変異体は、例えばレファレンスの拮抗剤抗CD40抗体とは、1〜15アミノ酸残基程の少数、1〜10アミノ酸残基程の少数、例えば6〜10、5程の少数、4,3、2又は更には1アミノ酸残基程の少数の分だけ異なっていてよい。
【0125】
2つのアミノ酸配列の最適なアライメントに関しては、変異体アミノ酸配列の隣接するセグメントはレファレンスのアミノ酸配列に関して、追加的なアミノ酸残基、又は欠失したアミノ酸残基を有していてよい。レファレンスアミノ酸配列との比較のために使用する隣接するセグメントは少なくとも20隣接アミノ酸残基を含むことになり、、30、40、50又はこれより多いアミノ酸残基であってよい。保存的な残基の置換又はギャップに関連して配列の同一性のための補正を行うことができる(Smith−Watermanの相同性検索アルゴリズムを参照)。
【0126】
本発明の医薬組成物を用いた治療方法
本発明の医薬組成物はCD40発現細胞が関連する癌又は前悪性の状態を有する対象を治療する場合に、又はCD40発現細胞が関連する炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患を治療するために使用される。「治療」とは本明細書においては、対象に対する拮抗剤抗CD40抗体を含む医薬組成物の適用又は投与、又は、対象に由来する単離された組織又は細胞系統に対する拮抗剤抗CD40抗体を含む医薬組成物の適用又は投与として定義され、ここで対象は疾患、疾患の症状、又は疾患に至る素因を有し、ここで目的は疾患、疾患の症状、又は疾患に至る素因の治癒、療養、軽減、緩和、改変、緩解、改良、改善又は影響を及ぼすことである。
【0127】
「対象」とは何れかの動物を意図する。好ましくは対象は哺乳類であり、最も好ましくは対象はヒトである。ヒト以外の特定の重要な哺乳類は限定しないが、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ及びブタを包含する。
【0128】
治療の目的のために投与する場合、投与は予防的又は治療的な目的のためであってよい。予防的に提供する場合は、医薬組成物は何れかの症状の前に提供する。医薬組成物の予防的投与は何れかのその後の症状を防止又は減衰させる働きを有する。治療的に提供する場合は、医薬組成物は症状の発症時(又はその直後)に提供する。医薬組成物の治療的投与は何れかの実際の症状を減衰させる働きを有する。
【0129】
投与の典型的な経路は限定しないが、経口投与及び非経腸投与、例えば静脈内、筋肉内、髄腔内、鼻内、舌下、動脈内及び腹腔内の注射又は注入、及び皮下注射を包含する。この投与を達成するための方法は当該分野で知られている。
【0130】
好ましい実施形態においては、本発明の医薬組成物は静脈内投与される。静脈内投与は投与する拮抗剤抗CD40抗体に応じて、好ましくは約1〜分10時間の期間にわたる、より好ましくは約1〜約8時間にわたる、更に好ましくは約2〜約7時間にわたる、なお好ましくは約4〜約6時間にわたる注入により行う。医薬組成物の初期の注入は約4〜約6時間の期間に渡って行い、後の注入はより速く送達する。後の注入は約1〜約6時間、例えば約1〜約4時間、約1〜約3時間、又は約1〜約2時間の期間に渡って投与してよい。
【0131】
本発明の医薬組成物の薬学的有効量を対象に投与する。「薬学的有効量」とは、治療が上記した通り予防的又は治療的な目的のためであることができる疾患又は状態の治療において有用な量を意図する。この態様において、組成物の薬学的有効量は治療を必要とする対象に対し拮抗剤抗CD40抗体の治療上有効な用量又は量を投与するものとなる。「治療上有効な用量又は量」又は「有効量」とは、投与されればCD40発現細胞を含む疾患を有する患者の治療に関して正の治療応答をもたらす拮抗剤抗CD40抗体の量を意図する。本発明の一部の実施形態においては、拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメントの治療有効量は、約0.01mg/kg〜約40mg/kg、約0.01mg/kg〜約30mg/kg、約0.1mg/kg〜約30mg/kg、約1mg/kg〜約30mg/kg、
約3mg/kg〜約30mg/kg、約3mg/kg〜約25mg/kg、約3mg/kg〜約20mg/kg、約5mg/kg〜約15mg/kg、又は約7mg/kg〜約12mg/kgの範囲である。投与方法は拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの治療有効用量の単回投与または治療有効用量の多数回投与を含んでよい。
【0132】
本発明の医薬組成物は抗CD40治療薬、より詳しくは拮抗剤抗CD40抗体を用いた治療に応答する癌又は前悪性の状態を有する何れかの対象を治療する場合に使用される。癌又は前悪性の状態の抗CD40抗体を用いた治療に対する応答性を測定するための方法は、診断及び予後試験、例えば同時係争中の共通に保有されている暫定特許出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Proliferative Disorders Mediated by CD40 Signaling」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,285(代理人案件番号PP028035.0002(035784/304312))、及び相当する国際出願PCT/US2006/019414(代理人案件番号PP028035.0003(035784/311611))、出願日2006年5月18日、WO2006/125143として公開されたものに記載された試験を包含し;これらの内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。同様に、本発明の医薬組成物は抗CD40治療薬、より詳しくは拮抗剤抗CD40抗体を用いた治療に応答する炎症性及び/又は自己免疫性の疾患を有する何れかの対象を治療する場合に使用される。炎症性及び/又は自己免疫性の疾患の抗CD40抗体を用いた治療に対する応答性を測定するための方法は、診断及び予後試験、例えば同時係争中の共通に保有されている暫定特許出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Diseases Having an Autoimmune and/or Inflammatory Component」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,336(代理人案件番号PP028062.0002(035784/304311))、及び相当する国際特許出願PCT/US2006/019325(代理人案件番号PP028062.0003(035784/311608))、出願日2006年5月18日、WO2006/125117として公開されたものに記載された試験を包含し;これらの内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。
【0133】
「腫瘍」とは、本明細書においては、悪性又は良性に関わらず全ての新生物性の細胞の成育及び増殖、全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を指す。「新生物性」とは、本明細書においては、異常な組織の成育をもたらす、悪性又は良性に関わらず、脱調節された、又は未調節の細胞の生育の何れかの形態を指す。即ち「新生物性の細胞」とは、脱調節された、又は未調節の細胞の生育を有する悪性及び良性の細胞を包含する。
【0134】
「抗腫瘍活性」とは、悪性のCD40発現細胞の増殖又は蓄積の速度の低下、その結果として生じる既存の腫瘍の成育速度又は治療中に生じた腫瘍の減少、及び/又は既存の新生物性(腫瘍)細胞又は新規に形成された新生物細胞の破壊、その結果として生じる治療中の腫瘍の全体寸法の低下を意図している。本明細書の拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物を用いた治療はヒトにおけるCD40発現細胞上のCD40シグナリングの刺激に関連する癌及び前悪性の状態の治療に関連して有利である生理学的応答をもたらす。
【0135】
「癌」及び「癌性の」という用語は未調節の細胞成育を典型的特徴とする哺乳類における生理学的状態を指すか、説明するものである。癌の例は限定しないが、リンパ腫又は白血病、及び固形腫瘍を包含する。「B細胞関連癌」又は「B細胞系統の癌」とは、脱調節された、又は未調節の細胞の生育がB細胞に関連している癌の何れかの型を意図している。
【0136】
「難治性」とは、癌に関する場合、特定の癌が特定の治療薬、例えば目的の拮抗剤抗CD40抗体を用いた治療に対して抵抗性又は非応答性であることを意図している。癌は、特定の治療薬を用いた治療に対して、特定の治療薬を用いた治療の開始時から(即ち治療薬への初回曝露に対して非応答性)、又は治療薬に対する抵抗性の発生の結果として、治療薬を用いた最初の治療機関の過程に渡って、又は治療薬を用いた後の治療期間の間、難治性となる場合がある。
【0137】
本発明の医薬組成物はCD40発現細胞上のCD40シグナリングの刺激により媒介される癌又は前悪性の状態に対して、又はCD40発現細胞上のCD40シグナリングにより媒介される何れかの炎症性又は自己免疫性の疾患に対して、治療介入を必要としている対象を治療する場合に使用される。「CD40発現細胞」とは、CD40抗原を発現する正常、前悪性及び悪性の細胞を意図している。一部の実施形態においては、CD40発現細胞は悪性B細胞である。「悪性」B細胞とは、何れかの新生物性のB細胞、例えば限定しないが、リンパ腫、例えば低、中及び高等級のB細胞リンパ腫、免疫芽細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、エプスタイン・バーウィルス(EBV)誘導リンパ腫、及びエイズ関連リンパ腫、並びにB細胞急性リンパ芽球性白血病、骨髄腫、慢性リンパ性白血病等から誘導されたB細胞を意図している。他の実施形態によれば、CD40発現細胞は癌腫又は肉腫の細胞である。「CD40発現癌腫細胞」又は「CD40発現肉腫細胞」とは、CD40細胞表面抗原を発現する固形腫瘍の何れかの悪性(即ち新生物性)又は前悪性の癌腫又は肉腫の細胞を意図している。本発明の目的のためには、CD40抗原を発現する癌性及び前癌性又は前悪性の細胞は「CD40発現新生物細胞」と称する。細胞におけるCD40発現を検出するための方法は当該分野で周知であり、限定しないがPCRの手法、免疫組織化学、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、ELISA等を包含する。拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを用いた治療が認可される場合、拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物は何れかの適当な投与経路により投与できる。
【0138】
本発明の医薬組成物を用いた治療介入を要する対象はCD40発現新生物細胞上のCD40シグナリングにより媒介される何れかの癌又は前悪性の状態に罹患しているか、発症又は再発の危険性がある場合がある。そのような癌又は前悪性の状態は、限定しないが、B細胞系統の癌、非B細胞血液学的悪性疾患、及びCD40発現新生物細胞上のCD40シグナリングにより媒介されることが分かっている固形腫瘍を包含する。
【0139】
CD40発現新生物細胞を含むB細胞系統の癌の例は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ性白血病(PLL)、ヘアリー細胞白血病、ホジキン病、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖疾患及びリンパ腫、例えば限定しないが、びまん性小細胞型リンパ性リンパ腫、小胞性、DLBCL、粘膜関連のリンパ様組織のリンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、脾リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、血管内リンパ腫症、免疫芽球リンパ腫、エイズ関連リンパ腫等である。
【0140】
即ち、本発明の医薬組成物は異常な、制御不能なB細胞の増殖又は蓄積に関連する非ホジキンリンパ腫を有する対象の治療において使用される。本発明の目的のためには、そのようなリンパ腫はWorking Formulationの分類スキームに従って、低等級、中等級、及び高等級としてカテゴリー化されるB細胞となる(The Non−Hodgkin’s Lymphoma Pathologic Classification Project,” Cancer 49(1982):2112−2135参照)。低等級のB細胞リンパ腫は、小リンパ球性、小胞性小型切れ込み核細胞、及び小胞性混合型小型切れ込み核細胞、及び大細胞リンパ腫を包含し;中等級リンパ腫は小胞性大細胞、びまん性小型切れ込み核細胞、びまん性混合型小及び大細胞、及びびまん性大細胞リンパ腫を包含し;高等級リンパ腫は大細胞免疫芽球、リンパ芽球、及び小型非切れ込み核細胞リンパ腫のバーキット及び非バーキット型を包含する。
【0141】
本発明の医薬組成物はRevised European and American Lymphoma Classification(REAL)のシステムに従って分類されるB細胞リンパ腫の施療的治療において有用である。そのようなB細胞リンパ腫は、限定しないが、前駆体B細胞新生物に分類されるリンパ腫、例えばBリンパ芽球性白血病/リンパ腫;末梢B細胞新生物、例えばB細胞慢性リンパ性白血病/小細胞リンパ性リンパ腫、リンパプラズマ細胞様リンパ腫/免疫細胞腫、被膜細胞リンパ腫(MCL)、小胞中心リンパ腫(小胞性)(例えばびまん性小細胞、びまん性混合型小及び大細胞、及びびまん性大細胞リンパ腫)、境界域B細胞リンパ腫(例えば節外、節性、及び脾性)、プラズマ細胞腫/骨髄腫、びまん性大細胞リンパ腫のサブタイプ一次縦隔(胸腺)バーキットリンパ腫、及びバーキット様高悪性度B細胞リンパ腫;及び未分類の低等級又は高等級のB細胞リンパ腫を包含する。
【0142】
本発明の医薬組成物は又、MGUS(意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症)として知られている前悪性状態を有する対象を治療するためにも使用される。MGUSを有する患者の約25%が最終的には多発性骨髄腫(MM)又は関連のプラズマ細胞障害を発症する(Kyle(1993)Mayo Clinic.Proc.68:26−36)。骨髄における悪性プラズマ細胞の増殖、血清中又は尿中の単一クローンタンパク(Mタンパク質)の検出、貧血、高カルシウム血症、腎不全、及び崩壊性の骨髄疾患がMMの臨床所見であるのに対し、MGUSは臨床的にはMMの他の臨床特徴を伴わない血清または尿中のMタンパク質の存在として認識される(例えばKyle and Lust(1989)Semin.Hematol.26:176−200;Greipp and Lust Stem Cells(1995)13:10−21参照)。MGUS患者は無症候性であり、Mタンパク質の安定した測定値を有している(Kyle(1993)Mayo Clinic.Proc.68:26−36)。MGUSが対象に発見されれば、本発明の適切な医薬組成物、例えば本明細書に開示した拮抗剤抗CD40抗体を含む組成物を用いた維持療法がこれらの対象における多発性骨髄腫の発症をブロックする場合がある。
【0143】
特に本発明の医薬組成物は第1選択肢の癌療法治療に対して難治性である(即ち抵抗性であるか、又は抵抗性となっている)B細胞リンパ腫、例えば上記したものを治療するために有用である。「癌療法」という用語は癌の治療、例えば化学療法、手術、放射線療法、単一の抗癌抗体療法、及びこれらの組み合わせを意味する。CD40L媒介CD40シグナリングを調節する、ADCCを調節する、又はその両方である抗CD40抗体1つ以上を用いた治療介入が必要である患者のサブ集団が存在する。
【0144】
本発明の医薬組成物はまた非B細胞関連の血液学的悪性疾患を治療するためにも有用である。そのような悪性疾患は、限定しないが急性白血病;骨髄芽球性白血病;急性骨髄性白血病;前骨髄性白血病;骨髄単球性白血病;単球性白血病;赤白血病;顆粒球性白血病(慢性骨髄性白血病);真性赤血球増加症等を包含する。
【0145】
CD40発現新生物細胞を含み、このため本発明の医薬組成物を用いた治療に有利に応答する固形腫瘍は、限定しないが卵巣、肺(例えば扁平上皮細胞癌、腺癌、及び第細胞癌腫の型の非小細胞肺癌;及び小細胞肺癌)、乳房、肝臓(例えば肝細胞癌を包含する)、胃、支給警部、前立腺、鼻咽頭、甲状腺(例えば甲状腺乳頭状癌)、皮膚癌、例えば黒色腫、及び肉腫、例えば骨肉腫及びユーイング肉腫を包含する。
【0146】
癌又は前悪性の状態を有する対象に本発明の医薬組成物を投与することにより達成できる有利な結果はその癌又は状態に関する何らかの正の治療応答を包含する。「正の治療応答」とは、癌治療に関する場合、抗CD40治療薬の抗腫瘍活性に関連する疾患の改善及び/又は目的の疾患に伴う症状の改善を意図している。即ち、抗増殖作用、更に腫瘍が派生することの防止、腫瘍サイズの低減、癌細胞数の低減、及び/又はCD40発現細胞の刺激により媒介される症状1つ以上の低下が観察される。即ち、例えば、正の治療応答とは疾患における以下の改善点、即ち、(1)腫瘍サイズの低減;(2)癌(新生物)細胞数の低減;(3)新生物細胞の死滅の増大;(4)新生物細胞の生存の抑制;(4)腫瘍生育の抑制(即ち、ある程度までの緩徐化、好ましくは停止);(5)周辺臓器内への癌細胞の浸潤の抑制(即ち、ある程度までの緩徐化、好ましくは停止);(6)腫瘍転移の抑制(即ち、ある程度までの緩徐化、好ましくは停止);(7)更に腫瘍が派生することの防止;(8)患者生存率の増大;及び(9)癌に伴う症状1つ以上のある程度までの緩解、の1つ以上を指す。何れかの所定の悪性疾患における正の治療応答はその悪性疾患に特化された標準化された応答の基準により測定できる。腫瘍の応答はスクリーニング手法、例えば磁気共鳴画像化(MRI)スキャン、X線撮影画像化、コンピューター断層撮影(CT)、骨スキャン画像化、内視鏡撮影、及び腫瘍生検試料採取、例えば骨髄吸引(BMA)及び循環系中の腫瘍細胞の計数を用いながら腫瘍形態(即ち全体的腫瘍負荷、腫瘍サイズ等)の変化に関して試験することができる。これらの正の治療応答の他に、本発明の拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物を用いた治療を受けている対象は疾患に伴う症状の改善の有利な作用を経験する場合がある。即ちB細胞腫瘍に関しては、対象はいわゆるB症状、即ち寝汗、発熱、体重減少、及び/又は蕁麻疹の低下を経験する場合がある。前悪性状態に関しては、抗CD40治療薬を用いた治療は関連の悪性状態の発症、例えば意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)に罹患した対象における多発性骨髄腫の発症をブロック及び/又はそれに至る時間を延長する場合がある。
【0147】
「抗炎症活性」とは、炎症の低減又は防止を意図している。本発明の拮抗剤抗CD40抗体含有液体医薬組成物を用いた治療は疾患にCD40抗原を発現する細胞が関与している場合の自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患の治療に関して有利である生理学的応答を誘発する。本発明の組成物は増殖、活性化などのような細胞における表現型の変化を防止する場合に有用である。
【0148】
本発明の拮抗剤抗CD40抗体含有液体医薬組成物を用いた治療介入を受けている対象はCD40発現細胞上のCD40シグナリングにより媒介される何れかの炎症性または自己免疫性の疾患に罹患しているか、発症又は再発の危険性がある場合がある。炎症性疾患は炎症及び組織の破壊又はこれらの組み合わせを特徴とする。「炎症性疾患」は自己免疫応答の開始事象又は標的に非自己抗原、例えば同種抗原、異種抗原、ウィルス抗原、細菌抗原、未知抗原又はアレルゲンが関与している何れかの炎症性の免疫媒介性のプロセスを包含する。
【0149】
更に又、本発明の目的のためには「炎症性疾患」という用語は「自己免疫疾患」を包含する。本明細書においては、「自己免疫」という用語は一般的に「自己」抗原が関与する炎症性免疫媒介のプロセスを包含すると理解される。自己免疫疾患においては、自己抗原が宿主免疫応答をトリガーする。
【0150】
更に又、本発明の医薬組成物は組織移植片拒絶に関連する炎症の治療のために使用できる。「移植片拒絶」又は「移植組織拒絶」とは移植片、例えば限定しないがHLA抗原、血液型群抗原等を包含するがこれらに限定されない移植片に対しての、何れかの宿主性の免疫応答を指す。
【0151】
本発明の医薬組成物は又対宿主性移植片病、例えば骨髄移植に関連する者の治療のために有用である場合がある。そのような対宿主性移植片病において、ドナーの骨髄はリンパ球及び成熟してリンパ球となる細胞を包含する。ドナーのリンパ球はレシピエントの抗原を非自己として認識し、炎症免疫応答を生じさせる。従って、本明細書においては、「対宿主性移植片病」又は「対宿主性移植片反応」とはドナーリンパ球が宿主の抗原に反応する何れかのT細胞媒介免疫応答を指す。
【0152】
自己免疫性及び/又は炎症性の疾患の例は、限定しないが全身エリテマトーデス(SLE)、円板状エリテマトーデス、ループス腎炎、サルコイドーシス、炎症性関節炎、例えば若年性関節炎、慢性関節リューマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎、及び痛風性関節炎、臓器又は組織の移植片の拒絶、超急性、急性又は慢性の拒絶及び/又は対宿主性移植片病、多発性硬化症、高IgE症候群、結節性多発性動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病(グルテン感受性腸症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、硬皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス症、橋本甲状腺炎、免疫複合体病、慢性疲労性免疫機能不全症候群(CFIDS)、多発性筋炎及び皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓崩壊、心筋症、尋常性天疱瘡、肺間質性腺維症、I型及びII型の真性糖尿病、1、2、3及び4型遅延過敏症、アレルギー又はアレルギー性障害、治療用タンパク質に対する望ましくない/意図しない免疫応答(例えば米国特許出願US2002/0119151及びKoren等(2002)Curr.Pharm.Biotechnol.3:349−60参照)、喘息、チャーグ−ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性及び刺激性の接触皮膚炎、蕁麻疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化症、血管炎、特発性炎症性ミオパシー、溶血性疾患、アルツハイマー病、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害等を包含する。一部の実施形態においては、本発明の医薬組成物は肺の炎症、例えば限定しないが、肺の移植片拒絶、喘息、サルコイドーシス、肺気腫、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎及び肺のアレルギー性疾患、例えば過敏性肺炎、好酸球性肺炎、骨髄及び/又は肺の移植又は他の原因による閉塞性細気管支炎、移植片のアテローム性動脈硬化症/移植片の静脈硬化症、並びにコラーゲンに起因する肺線維症、血管及び自己免疫性の疾患、例えば慢性関節リューマチ及びエリテマトーデスに対して個体を治療するために使用される。
【0153】
他の実施形態においては、本発明の医薬組成物は、CD40L媒介CD40シグナリングのモジュレーション、ADCCのモジュレーション、又は両方を介するものではない作用様式を有する他の既知治療法に対して初期に抵抗性であるか抵抗性を発生させる自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療するために有用である。本発明の医薬組成物はCD40L媒介CD40シグナリングを調節するか、ADCCを調節するか、両方である拮抗剤抗CD40抗体1つ以上を用いた治療介入が望ましい患者のサブ集団を治療するために有用である場合がある。
【0154】
炎症性疾患又は自己免疫疾患を有する対象に本発明の医薬組成物を投与することにより達成できる有利な結果はその疾患に関する何れかの正の治療応答を包含する。「正の治療応答」とは、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患に関する場合、これらの抗体又はその抗原結合フラグメントの抗炎症活性に関連する疾患の改善、及び/又は疾患に関連する症状の改善を意図している。即ち、抗増殖作用、CD40発現細胞の追加的増殖の防止、炎症応答の低減、例えば限定しないが炎症性サイトカイン、接着分子、補欠分子族、免疫グロブリン(CD40担持細胞がB細胞の場合)、これらの組み合わせ等の分泌の低減、抗炎症タンパク質の生産増大、自己反応性細胞の数の低減、免疫耐容性の増大、自己反応性細胞の生存の抑制、及び/又はCD40発現細胞の刺激により媒介される症状1つ以上の低下が観察できる。そのような正の治療応答は投与経路に限定されず、ドナー、ドナー組織(例えば臓器灌流)、宿主、これらの何れかの組み合わせなどへの投与を含んでよい。
【0155】
臨床応答はスクリーニング手法、例えば磁気共鳴画像化(MRI)スキャン、X線撮影画像化、コンピューター断層撮影(CT)、フローサイトメトリー又は蛍光活性化細胞ソーター(FACS)分析、組織学、肉視的病理学、及び血液科学、例えば限定しないがELISA、RIA、クロマトグラフィー等により検出可能な変化を用いて試験できる。これらの正の治療応答のほかに、本発明の拮抗剤抗CD40抗体含有液体医薬組成物による治療を受けている対象は疾患に関連する症状における改善の有利な作用を経験する場合がある。
【0156】
以下の実施例は説明のために提示しており、限定するものではない。
【実施例】
【0157】
CHIR−12.12はCHO細胞培養プロセスにより製造される完全ヒト化抗CD40IgG1モノクローナル抗体である。分子は150kDaの分子量を有し、分子構造はジスルフィド結合により共に連結された重鎖2つ及び軽鎖2つより成る。CHIR−12.12はヒトCD40細胞表面受容体タンパク質をターゲティングする。これは強力な拮抗剤であり、正常B細胞のインビトロのCD40リガンド媒介増殖を抑制、並びにNHL及びCLL患者由来の癌細胞のインビトロのCD40リガンド媒介増殖を抑制する。CHIR−12.12抗体を発現するハイブリドーマ系統153.8E2.D10.D6.12.12(CMCC#12056)は特許寄託番号PTA−5543の下に2003年9月17日にAmerican Type Culture Collection[ATCC;10801 University Blvd.,Manassas,Virginia20110−2209(USA)]に寄託されている。
【0158】
理論に制約されないが、CHIR−12.12抗体は属性の独特の組み合わせを有する二重作用性の拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体である。この完全ヒトモノクローナル抗体はB細胞の生存及び増殖のためのCD40L媒介CD40シグナリング経路をブロックし;この亀甲作用は究極的には細胞死をもたらす。CHIR−12.12は又エフェクター細胞による認識及び結合を媒介し、抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を開始させる。CHIR−12.12がエフェクター細胞に結合すると細胞溶解酵素が放出され、B細胞のアポトーシス及び溶解をもたらす。
【0159】
CHIR−12.12の生物学的活性及びそれを測定するために使用される試験に関するより詳細な説明に関しては、仮出願である表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2003年11月4日、2003年11月26日及び2004年4月27日のもの、及び、譲渡された各々の米国特許出願60/517,337(代理人案件番号PP20107.001(035784/258442))、60/525,579(代理人案件番号PP20107.002(035784/271525))、及び60/565,710(代理人案件番号PP20107.003(035784/277214))、及び国際出願PCT/US2004/037152(代理人案件番号PP20107.004(035784/282916))、同様に、表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2004年11月4日、WO2005/044854として公開されたものを参照できる。同様に国際公開WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、及びWO2005/044294も参照でき;その内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。更に又、仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Proliferative Disorders Mediated by CD40 Signaling」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,285(代理人案件番号PP028035.0002(035784/304312))、及び相当する国際出願PCT/US2006/019414(代理人案件番号PP028035.0003(035784/311611))、出願日2006年5月18日、WO2006/125143として公開;及び仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Diseases Having an Autoimmune and/or Inflammatory Component」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,336(代理人案件番号PP028062.0002(035784/304311))、及び相当する国際特許出願(代理人案件番号PP028062.0003(035784/311608))、出願日2006年5月18日、WO2006/125117として公開されたものに記載された試験も参照でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。
【0160】
CHIR−12.12の主要な臨床適用は、B細胞関連悪性疾患、例えば慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫(MM)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)、及びCD40発現細胞に関連する自己免疫及び/又は炎症性の疾患の治療である。臨床治験用のCHIR−12.12薬品は液体製剤中20mg/mLCHIR−12.12抗体において製剤される。以下の試験は最適な緩衝液、等張性付与剤、及び液体製剤中の抗体を安定化させるための種々の賦形剤を決定するために実施した。
【0161】
実施例1:CHIR−12.12の安定化に対する種々の緩衝物質種及びメチオニンの作用
溶液の条件(例えばpH、緩衝物質種、及びイオン強度)及び賦形剤(例えば界面活性剤及び安定化剤)は液体製剤中のタンパク質の安定性のための重要な要因である。CHIR−12.12の物理化学的安定性はpH5.5において最適となる。しかしながらCHIR−12.12タンパク質は望ましくない溶液条件下では凝集形成及びフラグメント化を介して分解する場合があり;更に又、特に過酸化物の夾雑物及び/又はTweenのような生原料賦形剤と共に導入される金属の痕跡量の存在下において、酸化する場合もある。以下の実験は最適pH5.5において製剤した場合に、凝集形成、フラグメント化及び酸化に対抗してCHIR−12.12を安定化させるための最良の鑑賞物質種及び適切な賦形剤を発見するために実施した。
【0162】
材料
試験のためのCHIR−12.12薬品物質(DS)ロットはCHO誘導精製バルクのロット#CD021105A及びロット#PD010705Aであった。DSロットはXoma,Ltd(Berkeley,CA)において製造された。本試験のための製剤試料は該当する緩衝溶液に対するDSの透析とその後のTween所望量の強制添加により調製した。全試料中のCHIR−12.12タンパク質の濃度は約20mg/mlであった。
【0163】
分析方法
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
SEC−HPLCは分子量が低下する順序で分子を分離する。その結果、CHIR−12.12凝集体はHPLCカラムから溶出する最初のものであり、その後、単量体が続き最後にフラグメントが溶出する。CHIR−12.12の純度、凝集及びフラグメント化は、0.7mL/分の流量において移動相として50mMリン酸ナトリウム、200mMNaCl、pH7.0を用いながらTosohaasTSK−GEL3000SWX1カラムを有するWaters AllianceHPLCにより分析した。
【0164】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)
CHIR−12.12の酸化はWaterAlliance HPLCシステムを用いながらToshoTSKゲルブチル−NPRカラム、移動相Aとしての2M硫酸アンモニウム/20mMTris、pH7.0、及び移動相Bとしての20mMTris、pH7.0を用いて流量1.0ml/分で測定した。CHIR−12.12抗体をパパインで消化することによりFabおよびFcフラグメントが生じる。CHIR−12.12の酸化生成物は酸化Fcフラグメント(metSO)であり、これはHPLCカラムから主要なFab物質種と主要なFc物質種の間に溶出する前Fc物質種である。
【0165】
実験及び結果
凝集及びフラグメント化に対するクエン酸塩緩衝液の安定化作用
DSロット#PD010705Aに由来するCHIR−12.12を150mMNaCl、0.1%(w/v)Tween80及びpH5.5において、10mMのクエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、又はリン酸塩の緩衝溶液中20mg/mlで製剤した。製剤試料は3ccのガラスバイアル内に1.2ml溶液として充填し、5℃、25℃および40℃において保存した。CHIR−12.12安定性試料はSEC試験により所定の時点において分析した。
【0166】
図1〜3は25℃で保存した試料における、それぞれ純度、凝集体及びフラグメントに関するSEC分析を示す。図4〜6は40℃で保存した試料における、それぞれ純度、凝集体及びフラグメントに関するSEC分析をまとめたものである。すべてのけkkはクエン酸塩系の製剤試料が試験した4製剤のうちで最も高い純度及び最も低い凝集及びフラグメント化のレベルを維持していたことを示している。5か月を通じて5℃で保存した試料については殆ど変化が観察されなかったが(データ示さず)、加速SECデータは、クエン酸塩緩衝液が他の3つの一般的に使用されている緩衝物質種よりも凝集及びフラグメント化に対抗してCHIR−12.12の長期リアルタイム安定性を改善する場合に優秀であると考えられることを予測している。
【0167】
CHIR−12.12に対するクエン酸塩緩衝液の酸化抑制作用
CHIR−12.12安定性試料を0.1%及び0.2%(w/v)のTween80を用いながらクエン酸塩、酢酸塩及びコハク酸塩中に調製した。試料を5℃、25℃および40℃において保存し、所定の時点において酸化に関して疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により分析した。CHIR−12.12の酸化生物はPreFcピーク物質種の合計のパーセント、すなわちPre−Fc%として測定した。表1に示す結果はクエン酸塩系の製材がコハク酸塩及び酢酸塩の緩衝製剤よりも少ない酸化生成物を形成し、クエン酸塩緩衝液がCHIR−12.12の酸化を最小限としたことを示している。これらの結果は、クエン酸が恐らくはキレート形成剤として作用することによりCHIR−12.12タンパク質の微量金属誘導酸化を抑制したことを示唆している。
【0168】
SEC及びHIC分析は凝集及びフラグメント化からCHIR−12.12を保護する場合にコハク酸塩、酢酸塩及びリン酸塩緩衝物質種よりもクエン酸塩緩衝液が優れていることを示している。クエン酸塩緩衝液は又CHIR−12.12タンパク質の酸化を最小限にすることから、コハク酸塩及び酢酸塩の緩衝液よりも優れている。
【0169】
表1 HIC試験により測定した場合のCHIR−12.12(20mg/ml)の酸化に対する緩衝物質種の作用
【0170】
【表1】
N/D:測定せず。
【0171】
CHIR−12.12に対するL−メチオニンの酸化抑制作用
DSロット#CD010705Aを10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mMNaCl、0.1%Tween80又はTween20、並びに種々の量(0〜5mM)のL−メチオニン中、20mg/mlに製剤した。製剤試料は3ccのガラスバイアル内に2.5mlを充填し、40℃において保存した。表2は初期及び40℃3か月における試料に関するHIC結果を示す。初期においては全製剤中のCHIR−12.12の酸化は元のバルク薬品物質(DS)ロット#CD010705Aと同等であった。L−メチオニンを含有しない製剤における酸化のレベルは40℃3か月では倍加を超過していた。しかしながらL−メチオニンを含有する製剤における酸化のレベルは40℃における3か月の保存中を通して殆ど変化していなかった。
【0172】
結果は5mMのL−メチオニンが高ストレス保存条件下のCHIR−12.12の酸化の防止において有効かつ十分であることを示している。CHIR−12.12に対するL−メチオニンの酸化抑制作用はLyc−ペプチドマップにより確認した。
【0173】
表2 CHIR−12.12の酸化に対するL−メチオニンの抑制作用
【0174】
【表2】
N/D:測定せず。
【0175】
総括すれば、クエン酸塩緩衝液はCHIR−12.12の凝集、フラグメント化及び酸化最小限とし、これによりCHIR−12.12液体製剤のための最適な緩衝液となっている。L−メチオニンはCHIR−12.12の酸化を効果的に抑制し、5mMのL−メチオニンが好ましい。
【0176】
実施例2:CHIR−12.12に対する塩酸アルギニンの安定化作用
以下の試験は静脈内注入を介した投与を意図した液体医薬組成物として製剤されたCHIR−12.12の長期保存安定性のために張力付与剤および安定化剤を選択することを目的とした。タンパク質の非経腸製品に対してはNaClが最も一般的に使用されている張力付与剤であるが、抗体治療薬に対しては最適な安定化作用を有していない。本試験は水性製剤中のCHIR−12.12に対する塩化ナトリウム及びアルギニンの酸性形態(塩酸アルギニン)の比較対照させた安定化作用に関して報告する。
【0177】
CHIR−12.12バルク抗体薬品物質をCHIR−12.12液体製剤に対して295mOsm/kgの目標浸透圧重量モル濃度を達成するために150mMNaCl又は150mM塩酸L−アルギニンのいずれかを用いながらクエン酸塩緩衝液中pH5.5において製剤した。示差走査熱量測定(DSC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC)、SDS−PAGE及びカチオン交換HPLC(CIEX−HPLC)を用いてCHIR−12.12抗体の生物物理的及び/又は生物化学的な安定性を評価した。試験は150mMの塩酸L−アルギニンがCHIR−12.12水性製剤に等張性を付与するのみならず、凝集、フラグメント化及び脱アミド化に対抗してCHIR−12.12の立体構造的安定性を増大させることを示した。塩酸L−アルギニンは加速安定性試験条件下においてNaClよりも優れていることが証明された。更に又、加速安定性データはCHIR−12.12塩酸L−アルギニン製剤に関してより長期のシェルフライフを予測させている。
【0178】
材料
本試験のために使用したCHIR−12.12薬品物質(DS)はCHO誘導精製バルクのロット#CD021105Aであった。DSロットはXoma Ltd(Berkeley,CA)において製造された。
【0179】
DSロット由来のCHIR−12.12を以下の製剤において使用した。
製剤1:20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mMNaCl、0.1%Tween80及びpH5.5
製剤2:20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mM塩酸L−アルギニン、0.1%Tween80及びpH5.5
分析方法
示差走査熱量測定(DSC)
CHIR−12.12製剤試料の立体構造的安定性は、MicroCalVP−DSCを用いながら、1℃/分で15℃〜90℃に加熱することにより評価した。
【0180】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC)
CHIR−12.12の純度、凝集、及びフラグメント化は、0.7mL/分の流量において移動相として50mMリン酸ナトリウム、200mMNaCl、pH7.0を用いながらTosohaasTSK−GEL3000SWXLカラムを有するWaters AllianceHPLCにより分析した。
【0181】
SDS−PAGE(非還元及び還元)
CHIR−12.12の純度もまた非還元及び還元条件下において12%Tris−グリシンゲルを用いながら評価した。タンパク質はクーマシーブルー染色により検出した。
【0182】
カチオン交換HPLC(CIEX−HPLC)
CHIR−12.12の電荷変化関連脱アミド化は、Dionex PropacWCX−10カラムを有するWaterAlliance HPLCシステム、移動相Aとしての50mMHEPES、pH7.3及び移動相Bとしての500mMNaCl含有50mMHEPES、pH7.3を用いながら、0.8ml/分の流量で測定した。
【0183】
以下に後述する結果のセクションにおいて言及する図面における略記に対する略語一覧を示す。
コハク酸塩、NaCl,0.1%Tw80=10mMコハク酸ナトリウム/コハク酸緩衝液、150mMNaCl、0.1%Tween 80,pH5.5
クエン酸塩、NaCl,0.1%Tw80=10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤、150mMNaCl、0.1%Tween 80,pH5.5
酢酸塩、NaCl,0.1%Tw80=10mM酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液、150mMNaCl、0.1%Tween 80,pH5.5
リン酸塩、NaCl,0.1%Tw80=10mM2塩基性リン酸ナトリウム/1塩基性リン酸ナトリウム緩衝液、150mMNaCl、0.1%Tween 80,pH5.5
クエン酸塩、Arg,0.1%Tw80=10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤、150mM塩酸L−アルギニン、0.1%Tween 80,pH5.5
結果
示差走査熱量測定(DSC)
図7は上記「材料」のセクションにおいて記載した2種の製剤中のCHIR−12.12のDSCセオグラムを示す。CHIR−12.12の熱的展開(thermal unfolding)は少なくとも2つの熱遷移を呈し、恐らくはそれぞれFab及びFcドメインの展開/融解を示していると考えられる。より高温においては、タンパク質はおそらくは凝集し、DSCシグナルの損失をもたらす。本試験においては、最低の熱遷移温度は融解温度Tmとして定義した。塩酸L−アルギニン含有製剤はNaCl含有製剤よりも高値のTmを呈し、塩酸L−アルギニンがNaClを用いた場合よりも高い立体構造的安定性を有するCHIR−12.12を与えることが示唆された。
【0184】
SEC−HPLC分析
6か月まで5℃でインキュベートしたのち、SEC−HPLCによれば塩酸L−アルギニン及びNaCl含有製剤中ではタンパク質の凝集体およびフラグメントの量は無視できる程度であり(<0.5%)、2種の製剤の間には安定性にほとんど差がなかった(データ示さず)。加速保存条件下、即ち25℃6か月においては、塩酸L−アルギニン含有製剤は図8に示す通りより高値のパーセントの単量体を含有していた。単量体に費やされたため、凝集体およびフラグメントの含量は両方とも保存時間とともに緩徐に増大した。しかしながら、塩酸L−アルギニン含有製剤が発生した凝集体及びフラグメンはそれぞれ図9及び10に示す通りNaCl含有製剤よりも少量であった。同様に、40℃で保存した場合、塩酸L−アルギニン含有製剤はそれぞれ図11、12及び13に示す通り、NaCl含有製剤の場合よりも高値のパーセントの単量体及び低値のパーセントの凝集体及びフラグメントを示していた。40℃4カ月保存により、塩酸L−アルギニン含有製剤では残存単量体91.8%、凝集体1.7%、及びフラグメント6.5%であったのに対し、NaCl含有製剤の場合は、単量体87.9%、凝集体2.2%、及びフラグメント9.9%であった。SEC−HPLCの結果は塩酸L−アルギニンはNaClと比較して、CHIR−12.12タンパク質の安定性を向上させることを示している。
【0185】
SDS−PAGE(非還元及び還元)
表3は非還元(NR)及び還元(R)条件下に分析した塩酸L−アルギニン及びNaCl含有製剤に関するSDS−PAGEの結果を示す。CHIR−12.12の純度は非還元条件下の主要バンドのパーセントとして、又は、還元条件下の重鎖及び軽鎖の合計のパーセントとして測定した。ゼロ時を除き、塩酸L−アルギニン含有製剤は非還元及び還元条件下の両方においてNaCl含有製剤の場合よりも高値の純度を示した。SDS−PAGEの観察結果はNaClよりも塩酸L−アルギニンがCHIR−12.12の安定性を増大させたSEC−HPLCの結果と合致していた。
【0186】
表3 SDS−PAGE分析による塩酸L−アルギニンとNaClの比較
【0187】
【表3】
CIEX−HPLC分析
CIEX−HPLCは酸性の変異体が主要ピーク物質種の前に溶出し、、塩基性の変異体が主要ピーク物質種の後に溶出するように電荷に基づいて分子を分離する。CHIR−12.12の純度及びその脱アミド化産物の含有量をそれぞれ主要ピークのパーセント及び酸性変異体のパーセントとして測定した。
【0188】
図14、15及び16はそれぞれ、2種の製剤中の純度、脱アミド化産物の含有量、及び塩基性変異体の含有量を示す。ゼロ時においては、2種の製材は純度68.6%及び脱アミド化産物15.5%並びに塩基性変異体15.9%を有していた。25℃で保存した場合、塩酸L−アルギニン含有製剤はNaCl含有製剤よりも高値の純度及び高値の塩基性変異体含有量を有しており、低いパーセントの脱アミド化産物を示した。25℃6カ月保存時には、塩酸L−アルギニン含有製剤は純度47.3%、塩基性変異体12.5%、及び生成した脱アミド化産物40.0%を有していたのに対し、NaCl含有製剤は純度45.6%、塩基性変異体11.7%、及び脱アミド化産物42.7%を有していた。塩酸L−アルギニン及びNaCl含有製剤は5℃で6カ月保存中を通じてほとんど変化を示さなかったが、加速保存条件(25℃)下のCIEX−HPLCの結果は、塩酸L−アルギニンが脱アミド化に対抗してCHIR−12.12の長期リアルタイム安定性を改善する場合にNaClよりも優秀であると考えられることを予測している。
【0189】
総括すれば、本試験は150mM塩酸L−アルギニンがCHIR−12.12液体製剤に等張性を付与するのみならず、凝集、フラグメント化及び脱アミド化に対抗してCHIR−12.12の立体構造的安定性を増大させることを示している。塩酸L−アルギニンは加速安定性試験条件下においてNaClよりも優れており、、加速安定性データはCHIR−12.12塩酸L−アルギニン製剤に関してより長期のシェルフライフを予測させている。
【0190】
実施例3:凍結保存由来のCHIR−12.12バルク薬品物質の凝集を最小限とする場合のTween80及びTween20の作用
CHIR−12.12バルク薬品物質の凍結保存は幾つかの理由、例えば向上した製品の安定性及びシェルフライフ、低下した微生物生育、並びに輸送中の発泡の排除などのために、液体保存よりも好ましい。しかしながら凍結及びその後の解凍は、氷/液体の界面及び溶液の濃度勾配をもたらすことにより、タンパク質溶液にストレスをもたらす場合がある。ストレスはタンパク質を変成させ、凝集、及び悪い例においては目視可能な粒子又は沈殿物の形成をもたらす場合がある。タンパク質の凝集体は低減した薬剤の力価及び増大した免疫原性を伴う場合が多いため、タンパク質製剤の成分及び凍結解凍条件を最適化することにより凝集を最小限とすることは極めて重要である。
【0191】
製剤賦形剤、例えば糖類、多価アルコール、アミノ酸、及び界面活性剤は恐らくはタンパク質及び抗体を凝集に対抗して安定化させることができる。1つのモノクローナル抗体試験において、数種の一般的に使用されている糖類、多価アルコール、及びアミノ酸が凍結解凍誘発性の凝集体形成の低減において界面活性剤よりも有効であることが分かっている。しかしながら、CHIR−12.12を用いた早期の試験は糖類(例えばトレハロース)、多価アルコール(例えばソルビトール)、又はアミノ酸(例えばグリシン)を単独で使用した場合には凍結及び解凍の間のCHIR−12.12の凝集を有意に低減できなかったことを示している。
【0192】
本試験は凍結及び解凍の間のCHIR−12.12の凝集を最小限とするための製剤方法に着目している。この態様において、CHIR−12.12の凍結解凍誘導性の凝集を最小限にするために種々の界面活性剤を評価した。実際に凍結されているCHIR−12.12薬品物質が本試験で評価するように多数回の凍結解凍のサイクル反復を経験することは考えにくいが、広範な凍結解凍ストレス試験は、長期の保存及び輸送の間に偶発的に多数回の凍結及び解凍が起こったとした場合に、製剤バルク薬品が凝集する潜在的可能性を予測するために使用される最悪事例のシナリオの評価となる。
【0193】
材料
CHIR−12.12バルクDSロット#UA7870、#TC23−2、#UB1291、#PD010705A、及び#CD083005Aを本試験のために使用した。Tween80、Tween20、Brij35、及びプルロニックF68はそれぞれ、Sigma、J.T.Baker、Alfa Aesar及びMediaTechCellgroより購入した。CHIR−12.12薬品物質の凍結保存用のポリカーボネート(PC)ビンはNalgeneから購入した。
【0194】
方法
対照試料を除いて、全ての他の試料は−20℃及び−60℃における完全凍結とその後の多数サイクル反復する周囲温度における完全解凍に付した。
【0195】
これらの分析方法は単量体から目視可能な凝集体までの範囲のCHIR−12.12タンパク質を検出するために使用した。目視による観察は目視可能な粒子を検出するためのTyndalライト(M.W.Technologiies,Inc.)の下で実施した。液体粒子計数システム(HIAC/Royco)を用いて≧10μmおよび≧25μmの目視可能に至らない凝集体を計数した。動的光散乱分析器(MalvernNanoSeries)を用いて単量体及び凝集体の流体力学的直径及び粒径分布を測定した。
【0196】
目視可能な粒子の評価
凍結解凍試験のための試料はCHIR−12.12薬品物質ロット#UA7870及び#TC23−2から作成した。全試料は10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mMNaCl、及びpH5.5の緩衝溶液中、透析とその後の種々のパーセント(0〜0.5%w/v)の以下のノニオン系界面活性剤、即ちTween80、Tween20、Brij35、及びプルロニックF68の1つを添加することにより製剤した。2.5mlの各試料をガラスバイアル中に充填し、−60℃で一夜凍結し、最大8サイクルまで周囲温度において完全解凍した。初期(ゼロ時)及び各凍結解凍サイクル後の試料を透明性及び目視可能な沈殿/凝集体に関して目視的に検査した。
【0197】
目視可能に至らない粒子の計数
CHIR−12.12薬剤物質ロット#UB1291及び#PD010705Aを溶液(20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mMNaCl、pH5.5)中に製剤し、その後0〜0.5%(w/v)のTween80又はTween20を添加した。製剤試料20mlの小分量ずつを125ccのポリカーボネートのビンに充填し、−60℃凍結及び周囲温度解凍に付した。凍結解凍5サイクルの後、HIAC−Royco液体粒子計数システムを用いて≧10μm及び≧25μmの目視可能に至らない凝集体に関して試料を測定した。
【0198】
動的光散乱分析
5サイクルの凍結解凍の前後において、製剤(20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mM塩酸L−アルギニン、5mML−メチオニン、0〜0.2%Tween20及びpH5.5)を動的光散乱分析器を用いて凝集体に関して評価した。
【0199】
動的光散乱(DLS)スペクトル分析器はストークス−アインシュタインの方程式及び粒子が球形であるという仮定を用いながら、粒子の拡散係数測定値から単量体及び凝集体を包含する粒子の流体力学的直径を計算する。凝集体物質種の数および多分散性もまたDLS試験から求められる。
【0200】
結果
目視可能な粒子の評価
表4は目視による観察の結果を総括したものである。凍結解凍サイクルを開始する前であるゼロ時において、試料は全て僅かに不透明であるが目視可能な凝集体/沈殿は含有していなかった。1回の凍結解凍サイクルの後、界面活性剤無添加の製剤全てにおいて、Tween80を0〜0.05%(w/v)含有する製剤において、及び0〜0.1%(w/v)Brij35を含有する製剤において、並びに0〜0.5%(w/v)プルロニックF68を含有する試料において、数個の目視可能な凝集体/沈殿が形成していた。0.0%〜0.5%(w/v)Tween20を含有する試料には凍結解凍8サイクル全体に渡って如何なる凝集体及び沈殿も観察されなかった。このことは、Tween20は多数回の凍結解凍サイクルに起因する大型の不溶性凝集体の形成を防止することにおいてTween80よりも有効であることを示唆している。Brij35及びプルロニックF68はTween80及びTween20よりもはるかに低有効性であった。
【0201】
表4 界面活性剤の種々の濃度を用いた場合のクエン酸塩緩衝製剤におけるCHIR−12.12の目視的外観
【0202】
【表4】
注:XFT=凍結解凍サイクル数;SO=僅かに不透明;ppt=沈澱/凝集体。
【0203】
目視可能に至らない粒子の計数
表5は種々の濃度のTween80を含有するクエン酸塩/クエン酸緩衝製剤のml当たりの目視可能に至らない凝集体の計数値を示す。Tween80濃度の上昇に伴って目視可能に至らない粒子の計数値の低下傾向が観察され、目視可能に至らない粒子の計数の低下はTween80が0.1%(w/v)を超えている場合に顕著さが低下し、Tween80の使用に関する適切な濃度は0.1〜0.2%(w/v)であることが示唆された。
【0204】
表5 20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mMNaCl、及び種々の濃度(0〜0.2%)のTween80をpH5.5で含有する製剤における目視可能に至らない粒子の計数
【0205】
【表5】
表6は種々の濃度のTween20含有又は非含有のクエン酸塩/クエン酸緩衝製剤のml当たりの目視可能に至らない凝集体の計数値を示す。製剤中のTween20添加により凝集体計数は大きく低減した。Tween20が0.05%(w/v)以上になった時点で、目視可能に至らない凝集体の計数値の低下はほぼ平衡状態に達し、Tween20の適切な濃度は約0.05〜0.2%(w/v)であることが示唆された。
【0206】
表6 20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mMNaCl、及び種々の濃度(0〜0.2%)のTween20をpH5.5で含有する製剤における目視可能に至らない粒子の計数
【0207】
【表6】
更に又、表5及び表6はTween80及びTween20含有製剤の両方において≧25μmの凝集体の形成は殆ど無く、Tween20含有製剤ではTween80含有製剤の場合よりも≧10μm凝集体が少数であることが5サイクルの凍結解凍後に観察されたことを示している。結果はCHIR−12.12クエン酸塩/クエン酸緩衝製剤における目視可能に至らない凝集体の形成を最小限とすることにおいてはTween20がTween80より効果的であることを示している。
【0208】
表4,5及び6における結果に基づけば、CHIR−12.12製剤における凝集体の形成を最小限にするためにはTween20がTween80より好ましい賦形剤となる。従って、な試験を実施することによりCHIR−12.12製剤における凝集体の形成を防止するために必要なT20の濃度を最適にするために追加的な試験を実施した。製剤(20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mM塩酸L−アルギニン、5mML−メチオニン、0〜0.2%Tween20、pH5.5)をCHIR−12.12薬品物質ロット#CD083005Aから調製した。20mlの製剤試料を125ccのポリカーボネートのビンに充填し、−20℃凍結及び周囲温度解凍に付した。凍結解凍5サイクルの前後において、HIAC−Royco液体粒子計数器を目視可能に至らない粒子の計数値について製剤試料を測定した。結果を表7に総括する。
【0209】
表7 20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mM塩酸L−アルギニン、5mML−メチオニン、0〜0.2%Tween20をpH5.5で含有する製剤における目視可能に至らない粒子の計数
【0210】
【表7】
注:XFT=凍結解凍サイクル数。
【0211】
凍結解凍5サイクルの後、塩酸L−アルギニン及びL−メチオニンを含有する試料は塩酸L−アルギニン及びL−メチオニンを含有しない製剤よりもはるかに少数の凝集体を形成し、即ち、169粒子/ml≧10μmであったのに対し、Tween20非存在下においては1439又は1671粒子/ml≧10μmであった(表6及び7参照)。しかしながら、Tween20を導入するまでは、塩酸L−アルギニン及びL−メチオニンは凍結解凍誘導凝集体を最低レベルまで有意に低下させることはなかった。このことは塩酸L−アルギニン及びL−メチオニンはCHIR−12.12の凍結解凍誘導凝集を最小限とするためには十分効果的ではないことを示唆している。
【0212】
表5〜7に総括したデータから、0.025〜0.1%(w/v)Tween20を含有する凍結解凍試料の目視可能に至らない凝集体の計数値は凍結解凍サイクル実施前の対応する試料と同等であり続けた。このことは塩酸L−アルギニン及びL−メチオニンと組み合わせてTween20を含有する製剤は最小限の目視可能に至らない凝集体を形成したことを示している。即ち、Tween20は凍結及び解凍の間の目視可能に至らない凝集体の形成からCHIR−12.12を効果的に回避させる製剤中の賦形剤である。Tween20の有効濃度は0.025〜0.1%(w/v)であると決定された。
【0213】
動的光散乱分析
表8はCHIR−12.12の粒子の平均の流体力学的直径、多分散性及び単量体物質種のパーセント強度を示す。動的光散乱分析は単量体物質種の100%強度で示されるとおり、凍結解凍の5サイクルの前後における全試料において唯一の単量体物質種のみを検出している。このことは全試料が主に単量体よりなるものであったことを示唆している。凍結乾燥試験5サイクルの後、流体力学的直径及び多分散性の増大により示される通り、Tween20を含有しない、0.005%(w/v)Tween20を含有する試料中では、数個の凝集体(恐らくは2量体又は3量体)が単量体と共存していると考えられる。0.025〜0.1%(w/v)Tween20を含有する試料は流体力学的直径及び多分散性の値の変化を殆ど示しておらず、それらがそれほど凝集体形成をすることなく単量体の以前のレベルであり続けたことを示している。
【0214】
表8 20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mM塩酸L−アルギニン、5mML−メチオニン、及び種々の濃度(0〜0.2%)のTween20をpH5.5で含有する製剤における凍結解凍5サイクルの前後のCHIR−12.12の動的光散乱分析
【0215】
【表8】
注:FT=凍結解凍;XFT=凍結解凍サイクル数。
【0216】
目視による観察、目視可能に至らない粒子の計数値、及び動的光散乱分析に基づけば、凍結解凍誘導性の凝集体の形成からCHIR−12.12を回避させるためのTween20の最適濃度は0.025〜0.1%(w/v)であると決定された。
【0217】
総括すれば、Tween20及びTween80の両方とも凍結及び解凍の間のCHIR−12.12の凝集を最小限とすることが分かった。Tween20及びTween80の最適濃度はそれぞれ0.025〜0.1%(w/v)及び0.1〜0.2(w/v)%であった。Tween20が及びTween80よりも有効であった点は、より低濃度のTween20が凝集体形成の数及び程度をより低いレベルまで低減した点である。本試験は好ましくは塩酸L−アルギニン及びL−メチオニンと組み合わせたTweenの最適濃度の添加が有意な凝集を伴うことなく−20℃以下においてクエン酸塩/クエン酸緩衝CHIR−12.12バルク薬品物質の保存を可能にすることを示している。
【0218】
実施例4:抗CD40抗体の拮抗剤活性に関する試験
抗CD40抗体の拮抗剤活性を評価するために以下の試験を使用することができる。これらの試験のためのヒトB細胞は例えば本質的にDe Groot等(1990)Lymphokine Research(1990)9:321に記載されている通り、扁桃腺切除術を受けた個体から得られた扁桃腺から単離することにより得ることができる。慨すれば、組織をメスの刃を用いて分散させ、貪食細胞及びNK細胞を5mML−ロイシンメチルエステル処理により枯渇させ、臭化2−アミノエチルイソチオウロニウムで処理したヒツジ赤血球(SRBC)とのロゼット形成1サイクルによりT細胞を除去する。得られたBリンパ球プレパレーションの純度は抗(CD20)mAbB1(Coulter Clone,Hialeah,FA)又は抗(CD3)mAbOKT3(Ortho,Raritan,NJ)及びウサギ抗(マウスIg)のFITC共役F(ab’)2フラグメント(Zymed,San Francisco,CA)を用いた間接的免疫蛍光標識及びFACS分析により確認できる。
【0219】
B細胞増殖試験
B細胞(ウェル当たり4x104)を平底96穴マイクロプレート中10%うし胎児血清を添加した200μlのIMDM中で培養する。固定化抗(IgM)抗体(イムノビーズ;5μg/ml;BioRad,Richmond,California)を添加することによりB細胞を刺激する。所望により100U/mlの組み換えIL−2を添加する。種々の濃度の被験モノクローナル抗体(mAb)をマイクロ培養物発生時に添加し、第3日に18時間パルス処理後の(3H)チミジンの取り込みの測定により増殖を評価する。
【0220】
拮抗剤抗CD40抗体は固定化された抗IgMの存在下、又は固定化された抗IgM及びIL−2の存在下においてヒトB細胞増殖を有意に同時刺激しない。
【0221】
Banchereau様B細胞増殖試験
Banchereau等(1989)Science251:70に記載されたものと類似の培養系においてB細胞増殖を刺激する抗CD40モノクローナル抗体の能力に関して試験するために、ヒトFcγRIIのHR対立遺伝子型を発現するマウス3T6トランスフェクション体を使用する。B細胞(ウェル当たり2x104)を10%ウシ胎児血清及び100U/ml組み換えIL−4を添加した200μlのIMEM中、1x104のトランスフェクション体細胞(5000Radで照射)の存在下に平底マイクロウェル中で培養する。B細胞添加の前に、3T6細胞を少なくとも5時間培養プラスチックに接着させる。抗CD40mAbを15ng/ml〜200ng/mlの種々の濃度で添加し、B細胞の増殖を第7日に[3H]チミジンによる18時間パルス処理後のチミジン取り込みの測定により評価する。
【0222】
拮抗剤抗CD40mAbを用いたS2C6刺激B細胞増殖の抑制
拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体(mAb)はまた上記したB細胞増殖試験を用いながらS2C6(正常B細胞の増殖のCD40刺激のアゴニストとも報告されているSGN−14としても知られている;Francisco等(2000)Cancer Res.60:3225−3231)のような抗CD40抗体によるB細胞増殖の刺激を抑制するそれらの能力により特性化することもできる。ヒト扁桃腺B細胞(4x104)をセファロースビーズにカップリングさせた抗IgM(5μg/ml)及び抗CD40mAbS2C6(1.25μg/ml)の存在下にマイクロウェル中200μl中で培養する。種々の濃度の目的の抗CD40を添加し、[3H]チミジン取り込みを3日後に試験する。対照として抗(グルコセレブロシダーゼ)mAb8E4を同濃度において添加できる。Barneveldら(1983)Eur.J.Biochem.134:585。拮抗剤抗CD40抗体は例えば少なくとも75%以上mAbS2C6による抗IgM誘導ヒトB細胞増殖の同時刺激を抑制できる(即ち、拮抗剤抗CD40抗体存在下のS2C6刺激増殖は拮抗剤抗CD40抗体非存在下に観察されるものの25%以下である)。これとは対照的に、β−グルコセレブロシダーゼに対して指向された非関連のmAb8E4の等量を用いた場合には有意な抑制は観察されない。Barneveld等、上出。このような結果は、抗CD40mAbはヒトB細胞の増殖のための刺激シグナルは送達しないが、逆に、別のmAbでCD40をトリガーすることにより生じる刺激シグナルを抑制することができることを示している。
【0223】
EL4B5細胞を用いたB細胞活性化試験
Zubler等(1985)J.Immunol.(1985)134:3662の観察によれば、EL4B5として知られているマウス胸腺腫EL−4系統の突然変異体サブクローンは、ネズミ及びヒトの両方の起源のB細胞が増殖して免疫グロブリン分泌プラズマ細胞に分化することをインビトロで強力に刺激することができる。この活性化は、抗原非依存性であり、MHC制限性ではないことがわかっている。ヒトB細胞の最適な刺激のためには、活性化ヒトT細胞由来の上澄みの存在が必要であったが、B細胞応答は又EL4B5細胞をホルボール−12−ミリステート13−アセテート(PMA)又はIL−1で予備活性化した場合にも起こっている。Zubler等(1987)Immunological Reviews 99:281;及びZhang等(1990)J.Immunol.144:2955。この培養系におけるB細胞活性化は効率的であり、限界希釈法による実験ではヒトB細胞の大多数が活性化されて増殖し、抗体分泌細胞に分化した。Wen等(1987)Eur.J.Immunol.17:887。
【0224】
B細胞(ウェル当たり100)を10%熱不活性化ウシ胎児血清、5ng/mlホルボール−12−ミリステート13−アセテート(Sigma)及び5%ヒトT細胞上澄みを添加した200μlのIMDM中、平底マイクロウェル中で照射(5000Rad)EL4B5細胞(ウェル当たり5x104)とともに培養する。培養開始時にmAbを種々の濃度で添加し、第6日に[3H]チミジンによる18時間パルス処理後のチミジン取り込みを試験する。T細胞上澄みの調製のためには、精製したT細胞を1μg/mlPHA及び10ng/mlPMAの存在下に36時間106/mlの密度で培養する。Wen等(1987)Eur.J.Immunol.(1987)17:887。T細胞上澄みは細胞を遠心分離することにより得られ、−20℃において保存する。EL4B5細胞培養におけるヒトB細胞の増殖を増強する場合のT細胞上澄みの有効性を試験し、最も有効な上澄みを実験で使用するためにプールする。EL4B5誘導ヒトB細胞増殖に対する抗CD40抗体の作用を試験する場合は、MOPC−141(IgG2b)のようなモノクローナル抗体を対照として加えることができる。
【0225】
拮抗剤抗CD40抗体は例えば少なくとも75%以上EL4B5細胞系統により刺激されたB細胞増殖を抑制できる(即ち、拮抗剤抗CD40抗体存在下のEL4B5誘導B細胞増殖は拮抗剤抗CD40抗体非存在下に観察されるものの25%以下である)。これとは対照的に、MOPC−141のような対照抗体はEL4B5誘導B細胞増殖に対して有意な作用を有さない。
【0226】
B細胞による抗体生産に関するヒトT細胞ヘルパー試験
拮抗剤抗CD40抗体はB細胞による免疫グロブリン生産の拮抗剤として機能できる。抗CD40抗体はこの型の拮抗剤活性に関して、T細胞ヘルパー試験において活性化されたT細胞により接触依存性の態様において刺激されているB細胞による免疫グロブリン生産を抑制する抗体の能力を評価することにより試験できる。この態様において、96穴組織培養プレートを抗CD3mAbCLB−T3/3の復水1:500希釈物でコーティングした(CLB、Amsterdam、The Neterlands)。記載通り、」同時刺激性のmAb、即ち、抗CD2mAbCLB−T11.1/1及びCLB−T11.2/1た(CLB、Amsterdam、The Neterlands)、両方の復水1:1000、及び抗CD28mAbCLB−28/1(CLB、Amsterdam、The Neterlands)を添加する。その後、扁桃腺T細胞(照射、3000Rad;ウェル当たり105)、扁桃腺B細胞(ウェル当たり104)、及びrIL−2(20U/ml)を添加した。各細胞培養物の最終容量は200μlとする。8日後、細胞を回転沈降させ、細胞非含有上澄みを採取する。(希釈した)試料中のヒトIgM及びIgGの濃度は後述する通りELISAにより推定する。
【0227】
1つの実施形態においては、ヒト扁桃腺B細胞(105/ウェル)を照射された精製T細胞(3000Rad;105/ウェル)とともに、抗CD3mAbでコーティングされた96穴プレート中、異なるmAbの存在下又は非存在下において培養することによりT細胞を同時刺激した。培養8日間の後、上澄みを採取してB細胞による免疫グロブリン生産の測定に付す。B細胞による免疫グロブリン生産は後述するELISAにより試験する。目的の抗CD40抗体を培養開始時から種々の濃度で添加する。対照としてmAbMOPC−141を添加できる。
【0228】
拮抗剤抗CD40抗体は少なくとも50%以上ヒトT細胞により刺激されたB細胞のIgG及びIgM抗体生産を抑制できる(即ち、拮抗剤抗CD40抗体存在下のB細胞によるT細胞誘導抗体生産は拮抗剤抗CD40抗体非存在下に観察されるものの50%以下である)。これとは対照的に、MOPC−141のような対照抗体はB細胞によるT細胞誘導抗体生産に対して有意な作用を有さない。
【0229】
免疫グロブリン定量のためのELISA試験
ヒトIgM及びIgGの濃度はELISAにより推定される。96穴ELISAプレートを4℃で16時間インキュベートすることにより4μg/mlのマウス抗ヒトIgGmAbMH16−01(CLB,Amsterdam,The Netherlands)又は1.2μg/mlのマウス抗ヒトIgMMab4102(Tago,Burlinga,e.CA)でコーティングする。プレートをPBS−0.05%Tween20(PBS−Tween)で3回洗浄し、1時間BSAで飽和させる。2回洗浄後、プレートを被験試料の種々の希釈度で37℃1時間インキュベートする。3回洗浄後、結合したIgを1μg/mlのパーオキシダーゼ標識マウス抗ヒトIgGmAbMH16−01(CLB)又はマウス抗ヒトIgMmAbMH15−01(CLB)とともに、37℃で1時間インキュベートすることにより検出する。プレートを4回洗浄し、結合パーオキシダーゼ活性を気質としてO−フェニレンジアミンを添加することにより顕在化する。ヒト標準血清(H00,CLB)を用いて各試験に関する標準曲線を確立する。
【0230】
本明細書においては、単数表記の物品は物品の文法的対象1つ又は1つより多く(即ち少なくとも1つ)を指す。例えば「要素」とは1つ以上の要素を意味する。
【0231】
本明細書において言及した全ての公開物及び特許出願は本出願関連する技術の当業者の水準を示している。全ての公開物及び特許出願は、各個別の公開物又は特許出願が特に個別に参照として本明細書に組み込まれることを示す場合と同程度に参照として本明細書に組み込まれる。
【0232】
上記した本発明は理解の明確化の目的のために説明および例示により一部詳細に説明したが、特定の変更及び改変は添付請求項の範囲内で実施されることは明らかである。
【0233】
【数1】
【0234】
【数2】
【0235】
【数3】
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1】図1はSEC−HPLC分析により測定した場合の3ヶ月間又は5ヶ月間25℃において採点されたmAbCHIR−12.12製剤の純度に対する緩衝物質種の作用を示す。
【図2】図2はSEC−HPLC分析により測定した場合の3ヶ月間又は5ヶ月間25℃において採点された種々の抗体製剤内におけるmAbCHIR−12.12の凝集体形成に対する緩衝物質種の作用を示す。
【図3】図3はSEC−HPLC分析により測定した場合の3ヶ月間又は5ヶ月間25℃において採点された種々の抗体製剤内におけるmAbCHIR−12.12のフラグメント化に対する緩衝物質種の作用を示す。
【図4】図4はSEC−HPLC分析により測定した場合の3ヶ月間又は5ヶ月間40℃において採点されたmAbCHIR−12.12製剤の純度に対する緩衝物質種の作用を示す。
【図5】図5はSEC−HPLC分析により測定した場合の3ヶ月間又は5ヶ月間40℃において採点された種々の抗体製剤内におけるmAbCHIR−12.12の凝集体形成に対する緩衝物質種の作用を示す。
【図6】図6はSEC−HPLC分析により測定した場合の3ヶ月間又は5ヶ月間40℃において採点された種々の抗体製剤内におけるmAbCHIR−12.12のフラグメント化に対する緩衝物質種の作用を示す。
【図7】図7は等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12に関する示差走査熱量測定のサーモグラムを示す。
【図8】図8はSEC−HPLC分析により測定した場合の2、4又は6ヶ月間25℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中に残存するmAbCHIR−12.12の%単量体形態を示す。
【図9】図9はSEC−HPLC分析により測定した場合の2、4又は6ヶ月間25℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%凝集体を示す。
【図10】図10はSEC−HPLC分析により測定した場合の2、4又は6ヶ月間25℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%フラグメントを示す。
【図11】図11はSEC−HPLC分析により測定した場合の2又は4ヶ月間40℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中に残存するmAbCHIR−12.12の%単量体形態を示す。
【図12】図12はSEC−HPLC分析により測定した場合の2又は4ヶ月間40℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%凝集体を示す。
【図13】図13はSEC−HPLC分析により測定した場合の2又は4ヶ月間40℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%フラグメントを示す。
【図14】図14はCIEX−HPLC分析により測定した場合の2、4又は6ヶ月間25℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%純度を示す。
【図15】図15はCIEX−HPLC分析により測定した場合の2、4又は6ヶ月間25℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%酸性変異体を示す。
【図16】図16はCIEX−HPLC分析により測定した場合の2、4又は6ヶ月間25℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%塩基性変異体を示す。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は医薬品製剤の分野、より詳しくは増殖性疾患及び自己免疫及び/又は炎症の要素を有する疾患を治療する場合に使用するための拮抗剤抗CD40抗体を含む安定な液体医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
遺伝子操作技術の開発における近年の進歩は薬品としての使用のために十分に多くの種々の生物学的に活性なポリペプチドを提供している。しかしながらポリペプチドは変性及び可溶性及び不溶性の凝集体の形成を包含する物理的不安定性、及び、加水分解、酸化及び脱アミド化のような種々の化学的不安定性の結果として生物学的活性を損失する場合がある。液体医薬品製剤中のポリペプチドの安定性は、例えばpH、イオン強度、温度、凍結−解凍の反復サイクル、及び加工中に起こるもののような機械的剪断力への曝露のような要因により影響される場合がある。凝集体形成及び生物学的活性の損失はまた、保存バイアル内部の溶液中及び気液界面での物理的攪拌及びポリペプチド分子相互作用の結果としても起こり得る。別の立体構造変化は、輸送中の攪拌又は別様に起因する界面の圧縮−伸長の間に気液及び固液界面に吸着したポリペプチドにおいて起こり得る。そのような攪拌はタンパク質をもつれさせ、凝集させ、粒子形成させ、最終的には他の吸着されたタンパク質とともに沈潜させる場合がある。タンパク質医薬品の安定性に関する一般的検討は例えばManning等(1989)Pharm.Res.6:903−918及びWang and Hanson(1988)J.Parenteral Sci.Tech.42:S14を参照できる。
【0003】
ポリペプチド含有液体医薬品製剤の不安定性は再構成のための適当な液体媒体とともに凍結乾燥された形態におけるこれらの製剤をパッケージ化すること推進した。凍結乾燥は組成物の保存安定性を向上させるが、多くのポリペプチドは乾燥状態における保存の間(Pikal(1990)Biopharm.27:26−30)、又は液体製剤として再構成する際の凝集体形成又は触媒活性の損失の結果として、低下した活性を示す(例えばCarpenter等(1991)Develop.Biol.Standard74:225−239;Broadhead等(1992)Drug Devel.Ind.Pharm.18:1169−1206;Mumenthaler等(1994)Pharm.Res.11:12−20;Carpenter and Crowe(1988)Cryobiology25:459−470;及びRoser(1991)Biopharm.4:47−53参照)。添加剤の使用は乾燥タンパク質の安定性を向上させているが、多くの再水和した製剤はなお、な凝集したタンパク質を許容できない、又は望ましくない量の不活性な凝集したタンパク質を有している(例えばTownsend and DeLuca(1983)J.Pharm.Sci.80:63−66;Hora等(1992)Pharm.Res.9:33−36;Yoshikawa等(1993)Pharm.Res.10:687−691参照)。更に又、再構成の必要性は不便であり、投薬が不正確になる可能性がある。。
【0004】
薬学的に有用なポリペプチドに包含されるものは組み換えにより製造されたモノクローナル抗体である。これらのクラスの治療薬のうちTNFファミリー受容体メンバーCD40をターゲティングする拮抗剤抗CD40抗体はB細胞関連の悪性疾患及び非血液学的悪性疾患、並びに自己免疫及び/又は炎症の要素を有する疾患の治療において大きく期待されている。CD40受容体は正常及び新生物性のヒトB細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、CD8T細胞、内皮細胞、単球及び上皮細胞、一部の上皮癌細胞、及び多くの固形腫瘍、例えば肺、乳房、卵巣、膀胱及び結腸の癌の表面上に存在する50〜55kDaの細胞表面抗原である。CD40抗原は又。活性化されたT細胞、活性化された血小板、延焼した血管平滑筋細胞、好酸球、慢性関節リューマチの滑膜、皮膚線維芽細胞及び他の非リンパ様細胞型上でも発現される。CD40を発現する細胞の型に応じて、ライゲーションにより細胞間接着、分化、活性化及び増殖を誘導することができる。
【0005】
例えば、CD40のその同族リガンドCD40L(CD154とも標記される)に対する結合はB細胞の増殖及びプラズマ細胞への分化、抗体生産、アイソタイプ切り替え、及びB細胞メモリー発生を刺激する。B細胞分化の間、CD40は前B細胞上で発現されるが、プラズマ細胞への分化時には消失する。APC上のCD40の発現はこれらの細胞の活性化において重要な同時刺激の役割を果たしている。例えばアゴニスト抗CD40モノクローナル抗体(mAb)はB細胞活性化においてTヘルパー細胞の作用を模倣することが分かっている。FcγRIIを発現する接着性細胞上で発現されれば、これらの抗体はB細胞増殖を誘導する(Banchereau等(1989)Science251:70)。更に又、アゴニスト抗CD40mAbはIL−4の存在下でIgM、IgG及びIgEの分泌に関するTヘルパーシグナルを置き換えることができる(Gascan等(1991)J,Immunol.147:8)。更に又、アゴニスト抗CD40mAbはリンパ節から単離されたB細胞のプログラムされた細胞死(アポトーシス)を防止することができる。
【0006】
これら、及び他の観察結果は、CD40とCD40Lの相互作用が体液性及び細胞媒介性の免疫応答の両方の調節において主軸となる役割を果たしているという現在の理論を裏付けている。より最近の研究は多様な生理学的及び病理学的なプロセスにおけるCD40/CD40L相互作用のはるかに広範な役割を明らかにしている。
即ち、CD40LによるCD40の係留とその後のCD40シグナリングの活性化は正常な免疫応答のための必要な工程であるが;CD40シグナリングの脱調節は疾患をもたらす場合がある。CD40シグナリング経路は自己免疫疾患に関与することが分かっている(Ichikawa等(2002)J.Immunol.169:2781−2787及びMoore等(2002)J.Autoimmun.19:139−145)。更に又、CD40/CD40L相互作用は炎症プロセスにおいて重要な役割を果たしている。例えば、CD40とCD40Lの両方がヒト及び実験的なアテローム性動脈硬化症患部で過剰発現される。CD40刺激はマトリックス分解酵素の発現及び組織因子発現をアテローム関連細胞型、内皮細胞、平滑筋細胞及びマクロファージにおいて誘導する。更に又、CD40刺激はプロ炎症性サイトカイン、例えばIL−1、IL−6及びIL−8及び接着分子、例えばICAM−1、E−セレクチン及びVCAMの生産を誘導する。CD40/CD40L相互作用の抑制は動物モデルにおいてアテローム形成を防止する。移植モデルにおいて、CD40/CD40L相互作用のブロッキングは炎症を防止する。CD40/CD40L結合はアルツハイマーのアミロイドベータペプチドと相乗作用的に作用して、小グリア細胞の活性化を増進することにより、神経毒をもたらす。慢性関節リューマチ(RA)を有する患者においては、CD40発現は関節の軟骨細胞において増大しており、即ち、CD40シグナリングは損傷性のサイトカイン及びマトリックスメタロプロテイナーゼの生産に寄与していると考えられる。Gotoh等(2004)J.Rheumatol.31:1506−1512を参照できる。
【0007】
同様に、B細胞系統の腫瘍型に由来する悪性B細胞はCD40を発現し、生存及び増殖のためにはCD40シグナリングに依存していると考えられる。低い、又は高い等級のB細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、及びホジキン病を有する患者に由来する形質転換細胞はCD40を発現する。CD40発現は又急性骨髄芽球性白血病の症例の2/3及びエイズ関連リンパ腫の50%で検出されている。
【0008】
多くの癌及び肉腫もまた高レベルのCD40発現を示すが、これらの癌細胞上のCD40発現に関連するCD40シグナリングの役割はそれほど理解されていない。CD40発現癌は膀胱癌(非特許文献1;非特許文献2)、乳癌(非特許文献3;非特許文献4);前立腺癌(非特許文献5)、腎細胞癌(非特許文献6)、未分化鼻咽頭癌(UNPC)(非特許文献7)、扁平上皮細胞癌(SCC)(非特許文献8;非特許文献9)、甲状腺乳頭状癌(非特許文献10)、皮膚悪性黒色腫(非特許文献11)、胃癌(非特許文献12)、及び肝臓癌(例えばヒト肝細胞癌を考察している非特許文献13参照)を包含する。CD40発現肉腫に関してはヒト骨肉腫及びユーイング肉腫を考察している非特許文献14を参照できる。
【0009】
種々の癌及び自己免疫/炎症性疾患におけるCD40L媒介CD40シグナリングを調節する場合の拮抗剤抗CD40抗体の潜在的な治療上の利点、及びこれらのポリペプチドを製剤化することの困難さを想定すれば、これらの抗体を含む安定な医薬組成物が必要とされている。
【非特許文献1】Paulie等、J.Immunol.(1989)142:590−595
【非特許文献2】Braesch−Andersen等、J.Immunol.(1989)142:562−567
【非特許文献3】Hirano等、Blood(1999)93:2999−3007
【非特許文献4】Wingett等、Breast Cancer Res.Treat.(1998)50:27−36
【非特許文献5】Rokhlin等、Cancer Res.(1997)57:1758−1768
【非特許文献6】Kluth等、Cancer Res.(1997)57:891−899
【非特許文献7】Agathanggelou等、Am.J.Pathol.(1995)147:1152−1160
【非特許文献8】Amo等、Eur.J.Dermatol.(2000)10:438−442
【非特許文献9】Posner等、Clin.Cancer Res.(1999)5:2261−2270
【非特許文献10】Smith等、Thyroid(1999)9:749−755
【非特許文献11】van den Oord等、Am.J.Pathol.(1996)149:1953−1961
【非特許文献12】Yamaguchi等、Int.J.Oncol.(2003)23(6):1697−702
【非特許文献13】Sugimoto等、Hepatology(1999)30(4):920−26
【非特許文献14】Lollini等、Clin.Cancer Res.(1998)4(8):1843−849
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要旨
治療上又は予防上活性な成分としての拮抗剤抗CD40抗体を含む安定な液体医薬組成物及びその調製において有用な方法を提供する。これらの組成物は拮抗剤抗CD40抗体、約pH5.0〜約pH7.0に組成物のpHを維持するための緩衝剤、及び液体組成物をほぼ等張性とするために十分な量の塩酸アルギニンを含む。1つの実施形態において、緩衝剤はクエン酸塩/クエン酸緩衝液であり、拮抗剤抗CD40抗体はCHIR−12.12又はCHIR−5.9拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントであり、組成物は等張性付与剤として塩酸アルギニンを含み、組成物は更にノニオン性界面活性剤及び/又はL−メチオニンを追加的安定化剤として含む。本発明の安定な液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物は、増殖性疾患及び自己免疫及び/又は炎症の要素を有する疾患を治療するための方法において使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ここで本発明は添付図面を参照しながら更に詳細に説明されることになるが、図面には本発明の全てではなく一部の実施形態のみを示している。実際、本発明は多くの異なる形態において実施してよく、本明細書に記載する実施形態に限定されると考えてはならず;これらの実施形態は本開示が適用される法的基準を満足するように提示している。
【0012】
本明細書に記載する本発明の多くの変形例及び他の実施形態は、上記した説明及び関連する図面において提示した教示を利用できる本発明の関連する分野の当業者には、想到されるものである。従って、本発明は開示した特定の実施形態に限定されないこと、及び、変形例及び他の実施形態は添付請求項の範囲内に包含されることを意図されていることを理解しなければならない。本明細書において特定の用語を使用するが、それらは包括的で説明的な意味において使用されているのみであり、限定する目的ではない。
【0013】
本発明は治療上又は予防上活性な成分として拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの少なくとも1つを含む安定な液体医薬組成物、及び、それらの調製において有用な方法に関する。本発明の目的のためには、医薬組成物又は製剤に関連する場合の「液体」という用語は「水性」という用語を包含することを意図される。「治療上又は予防上の活性成分」とは、拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントが組成物内に特異的に取り込まれることにより、対象内の疾患又は状態の治療、防止又は診断に対する所望の治療上又は予防上の応答を、その対象に医薬組成物が投与された時点においてもたらすことを意図する。
【0014】
「安定な」とは、本発明の医薬組成物が拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの物理的及び/又は化学的安定性をもたらすことを意味する。即ち、拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントは本質的にその物理的及び/又は化学的安定性を保持しており、所望の生物学的活性、即ち本明細書において定義する拮抗剤活性の1つ以上、例えば;T細胞により刺激される正常なヒト末梢B細胞による免疫グロブリンの分泌の抑制;JurkatT細胞により刺激される正常なヒト末梢B細胞の生存及び/又は増殖の抑制;CD40L発現細胞又は可溶性CD40リガンド(sCD40L)により刺激される正常なヒト末梢B細胞の生存及び/又は増殖の抑制;sCD40L又は固相CD40Lにより刺激される何れかの細胞における「生存」の抗アポトーシス細胞内シグナルの抑制;sCD40L又は固相CD40Lとのライゲーション時の何れかの細胞におけるCD40シグナルトランスダクションの抑制;ヒト悪性B細胞の増殖の抑制;CD40担持標的細胞又はCD40に対する同族リガンドを担持している細胞、例えば限定しないが、T細胞及びB細胞の欠失、アネルギー及び/又は耐容性誘導;CD4+CD25+調節T細胞の増殖又は活性化の誘導(例えばCD40−CD40L干渉を介したドナー同種抗原特異的組織拒絶、Maurik等(2002)J.Immunol.169:5401−5404参照);何れかの機序による細胞毒性(例えば限定しないが、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、補体依存性細胞毒性(CDC)、増殖のダウンレギュレーション、及び/又は標的細胞におけるアポトーシス);標的細胞サイトカイン分泌及び/又は細胞表面分子発現のモジュレーション;及びこれらの組み合わせを有する。
【0015】
タンパク質安定性をモニタリングするための方法は当該分野で周知である。例えばJones(1993)Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90;Lee編(1991)Peptide and Protein Drug Delivery(Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.);及び本明細書において後に開示する安定性試験を参照できる。一般的にタンパク質の安定性は特定の期間、選択された温度において測定される。好ましい実施形態においては、安定な抗体医薬組成物は、室温(約25℃)において少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、又は少なくとも6ヶ月間、保存された場合に拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの安定性をもたらすか、及び/又は約2〜8℃において少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、安定である。
【0016】
抗体のようなタンパク質は、医薬組成物中に製剤された場合、それがその医薬組成物中において沈殿、凝集、及び/又は変性の目視可能な兆候(即ち変色又は透明性の損失)、又は測定可能な兆候(例えばサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又はUV光散乱を使用)を示していない場合に、所定の時点において物理的安定性を保持していると見なされる。化学的安定性に関しては、抗体のようなタンパク質は、医薬組成物中に製剤された場合、その医薬組成物中において目的の生物学的活性をタンパク質(即ち抗体)が保持していることを化学的安定性の測定が示している場合に、所定の時点においてその化学的安定性を保持していると見なされる。化学的安定性の変化をモニタリングするための方法は当該分野で周知であり、限定しないが、タンパク質の化学的に改変された形態、例えばSDS−PAGE、SEC及び/又はマトリックス支援レーザー脱着イオン化/飛行時間型質量飛行時間型質量分析を用いたクリッピングの結果;及び例えばイオン交換クロマトグラフィーを用いた分子の変化に関連(例えば脱アミド化に関連)する分解を検出するための方法を包含する。例えば本明細書において後に開示する方法を参照できる。
【0017】
拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントは医薬組成物中に製剤された場合、所定の時点において所望の生物学的活性を保持していると見なされるのは、所望の生物学的活性に関する適当な試験において測定した場合に、その時点における所望の生物学的活性が医薬組成物調製時において示された所望の生物学的活性の約30%以内、好ましくは約20%以内である場合である。本明細書に開示した拮抗剤抗CD40抗体及びその抗原結合フラグメントの所望の生物学的活性を測定するための試験は、仮出願である表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2003年11月4日、2003年11月26日及び2004年4月27日のもの、及び、譲渡された各々の米国特許出願60/517,337(代理人案件番号PP20107.001(035784/258442))、60/525,579(代理人案件番号PP20107.002(035784/271525))、及び60/565,710(代理人案件番号PP20107.003(035784/277214))、及び国際出願PCT/US2004/037152(代理人案件番号PP20107.004(035784/282916))、同様に、表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2004年11月4日、WO2005/044854として公開されたものに記載されている通り実施でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。同様に、仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Proliferative Disorders Mediated by CD40 Signaling」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,285(代理人案件番号PP028035.0002(035784/304312))、及び相当する国際出願PCT/US2006/019414(代理人案件番号PP028035.0003(035784/311611))、出願日2006年5月18日、WO2006/125143として公開;及び仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Diseases Having an Autoimmune and/or Inflammatory Component」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,336(代理人案件番号PP028062.0002(035784/304311))、及び相当する国際特許出願PCT/US2006/019325(代理人案件番号PP028062.0003(035784/311608))、出願日2006年5月18日、WO2006/125117として公開されたものに記載された試験も参照でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。同様に、Schultze等(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:8200−8204;Denton等(1998)Pediatr.Transplant.2:6−15;Evans等(2000)J.Immunol.164:688−697;Noelle(1998)Agents Actions Suppl.49:17−22;Lederman等(1996)Curr.Opin.Hematol.3:77−86;Coligan等(1991)Current Protocols in Immunology13:12;Kwekkeboom等(1993)Immunology79:439−444;及び米国特許5,674,492及び5,847,082に記載された試験も参照でき;参照として本明細書に組み込まれる。
【0018】
本発明の方法に従って製剤される拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントは本明細書に開示する方法を包含する当該分野で知られた何れかの方法を用いて調製できる。1つの実施形態において、拮抗剤抗CD40抗体、例えばCHIR−12.12又はCHIR−5.9モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、後述するCHO細胞系統内で組み換え生産される。
【0019】
その調製および精製の後、拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントは本明細書に記載する態様において液体医薬組成物として製剤できる。拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントをその製剤の前に保存しなければならない場合は、それは例えば−20℃以下で凍結し、次に室温で解凍してその後の製剤に付すことができる。
【0020】
本発明の液体医薬組成物は拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの治療上又は予防上有効な量を含む。製剤中に存在する抗体又はその抗原結合フラグメントの量は投与経路及び所望の投薬容量を考慮する。
【0021】
この態様において、本発明の液体医薬組成物は、拮抗剤抗CD40抗体、例えばCHIR−12.12又はCHIR−5.9抗体、又はその抗原結合フラグメントを、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約0.5mg/ml〜約40.0mg/ml、約1.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約1.0mg/ml〜約30.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約25.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約20.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、又は約15.0mg/ml〜約25.0mg/mlの濃度において含む。一部の実施形態においては、液体医薬組成物は拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを、約0.1mg/ml〜約5.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約10.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約15.0mg/ml、約15.0mg/ml〜約20.0mg/ml、約20.0mg/ml〜約25.0mg/ml、約25.0mg/ml〜約30.0mg/ml、約30.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約35.0mg/ml〜約40.0mg/ml、約40.0mg/ml〜約45.0mg/ml、又は約45.0mg/ml〜約50.0mg/mlの濃度において含む。他の実施形態においては、液体医薬組成物は拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを、約15mg/ml、約16mg/ml、約17mg/ml、約18mg/ml、約19mg/ml、約20mg/ml、約21mg/ml、約22mg/ml、約23mg/ml、約24mg/ml、約25mg/ml、約26mg/ml、約27mg/ml、約28mg/ml、約29mg/ml、約30mg/ml、約31mg/ml、約32mg/ml、約33mg/ml、約34mg/ml、又は約35mg/mlの濃度において含む。
【0022】
本発明によれば、拮抗剤抗CD40抗体、例えば本明細書に記載するモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメントは約pH5.0〜約pH7.0の範囲の医薬組成物のpHを維持するための緩衝物質、及び組成物をほぼ等張性とするために十分な塩酸アルギニンと本明細書では称する自身の酸性形態のアルギニンの量とともに製剤される。「ほぼ等張性」とは、水性製剤が約240mmol/kg〜約360mmol/kg、好ましくは約240mmol/kg〜約340mmol/kg、より好ましくは約250mmol/kg〜約330mmol/kg、更により好ましくは約260mmol/kg〜約320mmol/kg、又更により好ましくは約270mmol/kg〜約310mmol/kgの浸透圧重量モル濃度を有することを意図している。一部の実施形態においては、液体医薬組成物は約295mmol/kgの浸透圧重量モル濃度を有する。溶液の等張性を測定するための方法は当業者の知る通りである。例えばSetnikar等(1959)J.Am.Pharm.Assoc.48:628を参照できる。
【0023】
塩酸アルギニンは等張性付与剤として作用するのみならず、本発明の液体医薬組成物の保存中の立体構造的変化、凝集体の形成、フラグメント化、及び/又は脱アミド化に対抗して抗体を安定化させるためにも作用する。「保存中」とは、一旦調製した液体医薬組成物又は製剤が即座に対象に投与されないことを意図している。むしろ、調製後、それは液体形態において、凍結状態において、又は後に再構成して液体形態とするための乾燥形態又は対象への投与に適する他の形態において保存するためにパッケージ化される。「乾燥形態」とは、液体医薬組成物又は製剤がフリーズドライ(即ち凍結乾燥;例えばWilliams and Polli(1984)J.Parenteral Sci.Technol.38:48−59参照)、噴霧乾燥(Masters(1991),Spray−Drying Handbook(第5版、Longman Scientific and Technical,Essez,UK)pp.491−676;Broadhead等(1992)Drug Devel,Ind.Pharm.18:1169−1206;及びMumenthaler等(1994)Pharm.Res.11:12−20参照)又は空気乾燥(Carpenter and Crowe(1988)Cryobiology25:459−470;及びRoser(1991)Biopharm,4:47−53)の何れかにより乾燥されることを意図している。液体医薬組成物の保存中の立体構造的変化、凝集体の形成、フラグメント化、及び/又は脱アミド化は抗体の生物学的活性に悪影響を及ぼし、医薬組成物の治療効果の損失をもたらす場合がある。更に又、凝集体形成は他の問題点、例えば抗含有医薬組成物を輸液刑を用いて投与する場合に配管、膜又はポンプの遮断を誘発する場合がある。
【0024】
アルギニンの何れかの立体異性体(即ちL、D又はDL異性体)又はこれらの立体異性体の組み合わせは、アルギニンがその酸性形態、即ち塩酸アルギニンとして存在する限り、本発明の医薬組成物中に存在してよい。好ましくはL型の立体異性体を使用する。本発明の組成物は又、このアミノ酸の類縁体を用いて製剤してもよい。「アミノ酸類縁体」という用語は組成物をほぼ等張性とする、並びに、本発明の液体医薬組成物の保存中のポリペプチドの凝集体形成、フラグメント化、及び/又は脱アミド化を低減する所望の作用をもたらす天然に存在するアミノ酸の誘導体を意図している。適当なアルギニン類縁体は例えばアミノグアニジン及びN−モノメチルL−アルギニンを包含する。アルギニンの場合と同様、アミノ酸類縁体はその酸性の形態において組成物中に配合される。
【0025】
医薬組成物中の塩酸アルギニンの濃度は張力に対する他の成分の寄与に応じたものとなる。一部の実施形態においては、塩酸アルギニンの濃度は約50mM〜約300mM、約50mM〜約250mM、約50mM〜約200mM、約50mM〜約175mM、約50mM〜約150mM、約75mM〜約175mM、約75mM〜約150mM、約100mM〜約175mM、約100mM〜約200mM、約100mM〜約150mM、約125mM〜約175mM、約125mM〜約150mM、約130mM〜約170mM、約130mM〜約160mM、約135mM〜約155mM、約140mM〜約155mM、約145mM〜約155mMである。1つのそのような実施形態において、塩酸アルギニンの濃度は約125mM、約150mM又は約175mMである。
【0026】
液体抗体含有医薬組成物のpHはそこに含有されている抗体の安定性に対して、主にポリペプチド凝集体形成に対するその作用を介して影響する。即ち、本発明の医薬組成物中に存在する緩衝剤の量は、目的の特定の拮抗剤抗CD40抗体の安定性のために最適であるpHに応じて変動することになる。この最適pHの決定は当該分野で一般的に使用できる方法、例えば立体構造的安定性を測定する示差走査熱量測定(DSC);凝集体形成及びフラグメント化を測定するSDS−PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC);電荷変化関連分解を測定する及びカチオン交換HPLC(CIEX−HPLC)を用いて達成できる。本発明の液体医薬組成物のための好ましいpHは約pH5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9,7.0、及び約pH5.0〜約pH7.0の範囲内の他のこのような値である。一部の実施形態においては、緩衝剤は医薬組成物のpHを約pH5.0〜約pH6.5、約pH5.0〜約pH6.0、約pH5.0〜約pH5.5、約pH5.5〜約pH7.0、約pH5.5〜約pH6.5、又は約pH5.5〜約pH6.0の範囲に維持する。
【0027】
約pH5.0〜約pH7.0の範囲に液体拮抗剤抗CD40抗体医薬組成物のpHを維持する何れの適当な緩衝剤も、抗体の物理化学的安定性及び所望の生物学的活性が上記した通り維持される限り、製剤中で使用することができる。適当な緩衝剤は限定しないが、従来の酸及びその塩を包含し、その場合、対イオンは、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又はマグネシウムであることができる。液体医薬組成物を緩衝するために使用できる従来の酸及びその塩の例は、限定しないが、クエン酸又はクエン酸塩、コハク酸又はコハク酸塩、酢酸又は酢酸塩、酒石酸又は酒石酸塩、リン酸又はリン酸塩、グルコン酸又はグルコン酸塩、グルタミン酸又はグルタミン酸塩、アスパラギン酸又はアスパラギン酸塩、マレイン酸又はマレイン酸塩及びリンゴ酸又はリンゴ酸塩を包含する。当然ながら、緩衝剤は酸と酸の塩型の混合物、例えばクエン酸とクエン酸塩の混合物(本明細書においてはクエン酸塩/クエン酸緩衝液と称する)、コハク酸とコハク酸塩の混合物(本明細書においてはコハク酸塩/コハク酸緩衝液と称する)、酢酸と酢酸塩の混合物(本明細書においては酢酸塩/酢酸緩衝液と称する)、及び上記した酸/酸塩の対の各々に関する同様のものであることができる。緩衝剤の濃度は約1mM〜約50mM、例えば約1mM、2mM、5mM、8mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、又は約1mM〜約50mMの範囲内の他のこのような値であることができる。一部の実施形態においては、緩衝剤の濃度は約5mM〜約15mM、例えば5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、又は約5mM〜約15mMの範囲内の他のこのような値であることができる。
【0028】
本発明の一部の実施形態においては、液体医薬組成物は所望の濃度(即ち上記した通り約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml)の本明細書に記載した拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント、組成物を等張性とするための量の塩酸アルギニン、及びクエン酸塩/クエン酸緩衝液である緩衝剤を含み、ここで、緩衝剤の濃度は緩衝剤が医薬組成物のpHを約pH5.0〜約pH7.0、好ましくは約pH5.0〜約pH6.5、例えば約pH5.0、5.5、6.0及び6.5の範囲に維持するようなものとする。「クエン酸塩」とは、クエン酸の塩を含む緩衝液を意図している。好ましい実施形態においては、クエン酸塩の対イオンはナトリウムカチオンであり、このため、クエン酸塩緩衝液成分はクエン酸ナトリウムとなる。しかしながら、何れのカチオンも有効であると予測される。他の可能なクエン酸塩カチオンは、限定しないが、カリウム、アンモニウム、カルシウム、及びマグネシウムを包含する。上記した通り、クエン酸塩/クエン酸緩衝液は酸(即ちクエン酸)および酸の塩形態(即ちクエン酸塩)の混合物を含み、ここで酸の塩形態の対イオンは何れかの適当なカチオンであることができる。1つのそのような実施形態において、酸の塩形態のための対イオンはナトリウムカチオンであり、従って、緩衝剤はクエン酸とクエン酸ナトリウムの混合物を含む。上記した通り、クエン酸塩/クエン酸緩衝液の濃度は約1mM〜約50mM、例えば約1mM、2mM、5mM、8mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、又は約1mM〜約50mMの範囲内の他のこのような値であることができる。一部の実施形態においては、クエン酸塩/クエン酸緩衝剤の濃度は約5mM〜約15mM、例えば5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、又は約15mMである。
【0029】
他の実施形態において、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、又は約10.0mg/ml〜約20.0mg/mlの濃度の拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;組成物を等張性とするための量の塩酸アルギニンを含み;緩衝剤は約1mM〜約20mM、約5mM〜約15mM、好ましくは約10mMの濃度のクエン酸塩/クエン酸緩衝液である。更に別の実施形態においては、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、又は約10.0mg/ml〜約20.0mg/mlの濃度の拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;組成物を等張性とするための量の塩酸アルギニンを含み;緩衝剤は約1mM〜約20mM、約5mM〜約15mM、好ましくは約10mMの濃度のクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤である。
【0030】
一部の好ましい実施形態においては、液体医薬組成物は、拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;医薬組成物のpHを約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に維持するための緩衝剤を含み;塩酸アルギニンの濃度は約100mM〜約200mMである。これらの実施形態の一部においては、緩衝剤は約5mM〜約15mMの濃度のクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり、液体医薬組成物は拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメントを含み、医薬組成物は約pH5.0〜約pH7.0、約pH5.0〜約pH6.5、又は約pH5.5〜約pH6.0のpHを有する。他の実施形態においては、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約35.0mg/ml、又は約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、例えば約10.0mg/ml、約15.0mg/ml、約20.0mg/ml、約25.0mg/ml、約30.0mg/ml、又は約35.0mg/mlの濃度の拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;約150mMの塩酸アルギニンを含み;緩衝剤は約10mMのクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり;ここで製剤は約pH5.5のpHを有する。
【0031】
本発明の液体医薬品製剤の処理中の凍結解凍または機械的な剪断力に起因するタンパク質の分解は溶液−気体界面における表面張力を低下させるために製剤に界面活性剤を配合することにより抑制できる。即ち、一部の実施形態においては、液体医薬組成物は、拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に医薬組成物のpHを維持するための緩衝剤;液体医薬組成物をほぼ等張性とするための量の塩酸アルギニンを含み;更に界面活性剤を含む。他の実施形態においては、液体医薬組成物は、拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に医薬組成物のpHを維持するための緩衝剤;約50mM〜約300mM、又は約100mM〜約200mMの濃度の塩酸アルギニンを含み;更に界面活性剤を含む。
【0032】
使用される典型的な界面活性剤はノニオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビトールエステル、例えばポリソルベート80(Tween80)およびポリソルベート20(Tween20);ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンエステル、例えばプルロニックF68;ポリオキシエチレンアルコール、例えばBrij35;シメチコン;ポリエチレングリコール、例えばPEG400;リソホスファチジルコリン;及びポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェノール、例えばTritonX−100である。界面活性剤又は乳化剤による医薬品の古典的安定化は例えば参照として本明細書に組み込まれるLevine等(1991)J.Parenteral Sci.Technol.45(3):160−165に記載されている。本発明の実施において使用される好ましい界面活性剤はポリソルベート20又はポリソルベート80である。界面活性剤を含有させる場合は、それは典型的には約0.001%〜約1.0%、約0.001%〜約0.5%、約0.001%〜約0.4%、約0.001%〜約0.3%、約0.001%〜約0.2%、約0.005%〜約0.5%、約0.005%〜約0.2%、約0.01%〜約0.5%、約0.01%〜約0.2%、約0.03%〜約0.5%、約0.03%〜約0.3%、約0.05%〜約0.5%、又は約0.05%〜約0.2%の量で添加され、ここでパーセントは重量/容量(w/v)に基づく。
【0033】
即ち、一部の実施形態においては、液体医薬組成物は、拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメントを含み;緩衝剤は約1mM〜約50mM、約5mM〜約25mM、又は約5mM〜約15mMの濃度のクエン酸塩/クエン酸緩衝液、例えばクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり;組成物は約pH5.0〜約pH7.0、約pH5.0〜約pH6.5、又は約pH5.5〜約pH6.0のpHを有し;塩酸アルギニンが約50mM〜約300mM、約100mM〜約200mM、又は約50mM〜約150mMの濃度で存在し;医薬組成物は更に界面活性剤、例えばポリソルベート20を、約0.001%〜約1.0%(w/v)又は約0.001%〜約0.5%(w/v)の量で含む。他の実施形態においては、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、例えば約10.0mg/ml、約15.0mg/ml、約20.0mg/ml、約25.0mg/ml、約30.0mg/ml、又は約35.0mg/mlの濃度における拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;約50mM〜約200mMの塩酸アルギニン、例えば約150mMの塩酸アルギニンを含み;緩衝剤は約5mM〜約20mM、例えば約10mMの濃度のクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり;医薬組成物は場合により界面活性剤、例えばポリソルベート20を、約0.001%〜約1.0%(w/v)、例えば約0.001%〜約0.5%(w/v)、約0.01%〜約0.25%(w/v)、約0.025%〜約0.2%(w/v)、約0.025%〜約0.1%(w/v)、又は約0.05%〜約0.2%(w/v)の量で含み;ここで液体医薬組成物は約pH5.0〜約pH7.0、約pH5.0〜約pH6.0、約pH5.0〜約pH5.5、約pH5.5〜約pH6.5、約pH5.5〜約pH6.0、又はpH5.5のpHを有する。
【0034】
液体医薬組成物は保存料及び他の担体、賦形剤又は安定化剤のいずれも実質的に非含有であることができる。或いは、医薬組成物は場合により本明細書に記載した1つ以上の保存料、例えば抗細菌剤、製薬上許容しうる担体、賦形剤又は安定化剤を含むことができるが、ただし、それらは抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの物理化学的安定性に悪影響を及ぼしてはならない。許容される担体、賦形剤及び安定化剤の例は、限定しないが、追加的な緩衝剤、共溶媒、界面活性剤、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及びメチオニン、キレート形成剤、例えばEDTA、金属複合体(例えばZn−タンパク質複合体)、及び生体分解性重合体、例えばポリエステルを包含する。製薬上許容しうる担体、安定化剤、及びイソモライト(isomolyte)の形成及び選択の詳細な考察は、参照として本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Science(第18版;Mack Publishing Company,Eaton,Pennsylvania,1990)に記載されている。
【0035】
即ち、1つの実施形態において、本発明の拮抗剤抗CD40抗体含有液体医薬組成物は更に、抗体ポリペプチド鎖内の酸化され得るアミノ酸残基の酸化を抑制するためのアミノ酸メチオニンを含む。「抑制する」とは、経時的な酸化物質種の最小限の蓄積を意図している。酸化を抑制することにより、拮抗剤抗CD40抗体をその適切な分子の形態において、より多く保持することができる。メチオニンの何れかの立体異性体(L、D又はDL異性体)又はそれらの組み合わせを使用できる。添加すべき量は酸化された物質種の量が規制当局の許容するものとなるように酸化され得るアミノ酸残基の酸化を抑制するために十分な量でなければならない。典型的には、このことは、組成物が約10%〜約30%を超えない酸化生成物を含有することを意味する。一般的に、これは、添加されたメチオニンのメチオニン残基に対する比が約1:1〜約1000:1、最も好ましくは10:1〜約100:1の範囲となるようにメチオニンを添加することにより達成できる。
【0036】
添加すべきメチオニンの好ましい量は、実施例1において後述する通り、種々の濃度のメチオニンとともに拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを含む組成物を調製すること、及び、例えば分子種のクロマトグラフィー分離及びポリペプチド分子量標準物質を用いた同定、例えばRP−HPLCによるもの、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いながら、ポリペプチドの酸化の物質種の形成に対する相対的作用を測定することにより、容易に実験的に決定することができる。抗体凝集のアミノ酸関連抑制に対して悪影響を有することなく酸化のアミノ酸残基の酸化の抑制を最大限とするメチオニンの濃度は抗体の安定性を更に向上させるために組成物に添加すべきメチオニンの好ましい量を示すことになる。
【0037】
即ち、本発明の一部の実施形態においては、液体医薬組成物は拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメントを含み;緩衝剤は約1mM〜約50mM、約5mM〜約25mM、又は約5mM〜約15mMの濃度のクエン酸塩/クエン酸緩衝液、例えばクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり;医薬組成物は約pH5.0〜約pH7.0、約pH5.0〜約pH6.5、又は約pH5.5〜約pH6.0のpHを有し;塩酸アルギニンが約50mM〜約300mM、約100mM〜約200mM、又は約50mM〜約150mMの濃度で存在し;界面活性剤は例えば約0.001%〜約1.0%(w/v)、又は約0.001%〜約0.5%(w/v)の量のポリソルベート20を又はポリソルベート80として存在し;医薬組成物は更に、約0.5mM〜約20.0mM、約0.5mM〜約10.0mM、約1.0mM〜約20.0mM、約1.0mM〜約10.0mM、約1.0mM〜約7.0mM、約2.0mM〜約6.0mM、又は約2.5mM〜約5.0mMの濃度のメチオニンを含む。他の実施形態においては、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、例えば約10.0mg/ml、約15.0mg/ml、約20.0mg/ml、約25.0mg/ml、約30.0mg/ml、又は約35.0mg/mlの濃度における拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;約50mM〜約200mMの塩酸アルギニン、例えば約150mMの塩酸アルギニン;約5mM〜約20mM、例えば約10mMの濃度のクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤;場合により約0.001%〜約1.0%(w/v)、例えば約0.001%〜約0.5%(w/v)、約0.01%〜約0.25%(w/v)、約0.025%〜約0.2%(w/v)、約0.025%〜約0.1%(w/v)、又は約0.05%〜約0.2%(w/v)の量の界面活性剤、例えばポリソルベート20;場合により約0.5mM〜約10.0mM、約1.0mM〜約7.0mM、約2.0mM〜約6.0mM、又は約2.5mM〜約5.0mM、例えば約2.0mM、約2.5mM、約3.0mM、約3.5mM、約4.0mM、約4.5mM、約5.0mM、又は約5.5mMの濃度のメチオニンを含み;ここで液体医薬組成物は約pH5.0〜約pH7.0、約pH5.0〜約pH6.0、約pH5.0〜約pH5.5、約pH5.5〜約pH6.5、約pH5.5〜約pH6.0、又はpH5.5のpHを有する。
【0038】
更に他の実施形態においては、液体医薬組成物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約35.0mg/ml、例えば約10.0mg/ml、約15.0mg/ml、約20.0mg/ml、約25.0mg/ml、約30.0mg/ml、又は約35.0mg/mlの濃度における拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメント;約100mM〜約200mMの塩酸アルギニン、例えば約150mMの塩酸アルギニン;約5mM〜約20mM、例えば約10mMの濃度のクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤;場合により約0.025%〜約0.1%(w/v)の量の界面活性剤、例えばポリソルベート20;場合により例えば約2.0mM〜約5.5mM、例えば約5.0mMの濃度のメチオニンを含み;ここで液体医薬組成物は約pH5.0〜約pH6.0、例えば約pH5.5のpHを有する。
【0039】
上記開示したこれらの薬剤に加えて、他の安定化剤、例えばアルブミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩の1つ、例えばEDTA2ナトリウムも場合により液体医薬組成物の安定性を更に増強するために添加することができる。望ましい場合は、アルブミンの量は約1.0%w/v以下の濃度で添加することができる。EDTAは多くの酸化反応を触媒することがわかっている金属イオンのスカベンジャーとして作用することにより、追加的な安定化剤となる。所望によりEDTAの量は約0.1〜約5.0mMの濃度において添加することができる。
【0040】
所望により、糖類及び糖アルコールも本発明の安定化された液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物に含有させてよい。何れかの糖類、例えば1糖類、2糖類又は多糖類、又は水溶性グルカン、例えばフラクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、及びカルボキシメチルセルロースNaを使用してよい。スクロースが最も好ましい糖添加物である。糖アルコールは−OH基を有するC4−C8炭化水素として定義され、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを包含し、マンニトールが最も好ましい糖アルコール添加剤である。上記した糖類及び糖アルコールは個別に、又は組み合わせて使用してよい。使用される量には固定された限度はないが、糖類及び糖アルコールは液体調製品中で可溶性であり、本発明の方法を用いて達成される安定化作用に悪影響を及ぼしてはならない。好ましくは、糖類又は糖アルコールの濃度は約1.0%〜約15.0%(w/v)、より好ましくは約2.0%〜約10.0%(w/v)である。
【0041】
本明細書に記載した液体医薬組成物は、調製後、分解を防止するために凍結乾燥することができる。液体組成物を凍結乾燥するための方法は当業者の知る通りである。使用直前に、追加的成分を含んでいてよい滅菌された希釈液(リンゲル液、蒸留水、又は滅菌食塩水等)で組成物を再構成してよい。再構成により、組成物は好ましくは当該分野で知られた方法を用いて対象に投与される。
【0042】
本発明の液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物は安定であり、従って等張性付与剤として塩化ナトリウムを含む緩衝された溶液中に調製された拮抗剤抗CD40抗体組成物と相対比較して、増大した保存安定性を有している。理論に制約されないが、この増大した保存安定性は、後の使用のためにその形態で直接保存されているもの、凍結状態で保存され、使用前に解凍されるもの、又は、後に再構成して使用前に液体形態又は他の形態とするための乾燥形態、例えば凍結乾燥、空気乾燥又は噴霧乾燥された形態の何れであるかに関わらず、液体製剤において観察されている。好ましくは本発明の組成物はその液体形態で直接保存することにより液体形態における増大した保存安定性を有すること、再構成の必要なく投与が容易であること、及び予備充填された即時使用可能なシリンジ中で、又は製剤が制菌剤に適合する場合は多用量調製品として製剤を供給する能力の利便性を最大限に得ることができる。
【0043】
本発明の組成物は、等張性付与剤としての塩酸アルギニン、及び緩衝剤としての酸とその塩形態、例えばクエン酸ナトリウム/クエン酸の混合物の使用が、塩化ナトリウム及び該当する緩衝剤を使用して調製した液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物と相対比較した場合に、増大した保存安定性を有する液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物をもたらすという発見に関連している。組成物の増大した保存安定性は、治療活性拮抗剤抗CD40抗体の安定性に対するアルギニンの酸性形態の影響、より詳しくは、液体製剤中の保存中のポリペプチド凝集体形成、フラグメント化及び脱アミド化に対するその影響を介して達成される。更に又、上記した態様において緩衝された液体拮抗剤抗CD40抗体組成物中に等張性付与剤として塩酸アルギニンを配合することは、塩化ナトリウムのような追加的等張性付与剤を包含させる必要なく、ほぼ等張性の液体医薬組成物をもたらす。
【0044】
本発明の安定な液体医薬組成物中に配合されたアルギニンの酸性形態は物理的および化学的変化に対抗して治療上活性な拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを保護し、これにより、組成物の保存の間の抗体の安定性を増大させる。「安定性を増大させる」とは、液体医薬組成物の保存中の抗体による凝集体形成、フラグメント化及び脱アミド化の1つ以上が、拮抗剤抗CD40抗体及びこの特定の等張性付与及び安定化剤の非存在以外は同じ製剤成分を含む液体医薬組成物の保存中に観察されるものと相対比較して低下していることを意図している。液体組成物中の保存中の拮抗剤抗CD40抗体凝集体形成に対する塩酸アルギニンの作用は、経時的に溶液中の可溶性抗CD40抗体の変化を測定することにより容易に調べることができる。溶液中の可溶性抗CD40抗体の量は目的の抗体の検出のために適合された多くの分析試験により定量できる。そのような試験は例えば逆相(RP)HPLC、サイズ排除(SEC)−HPLC及びUV吸光度測定を包含する。凝集はSDS−PAGEを用いてモニタリングすることもできる。本明細書において後述する実施例も参照できる。
【0045】
凝集の場合、本発明の安定な医薬組成物を得るために拮抗剤抗CD40抗体含有液体医薬組成物内に配合すべき塩酸アルギニンの有効量は、経時的に低下した凝集体形成、その結果としての、その非凝集の生物学的に活性な分子の形態における溶液中の可溶性拮抗剤抗CD40抗体のより大量の保持をもたらした量としてとらえられる。即ち、例えば拮抗剤抗CD40抗体が後述する実施例に記載したCHIR−12.12モノクローナル抗CD40抗体である場合、本発明の安定な組成物を調製する場合に使用される塩酸アルギニンの有効量は、CHIR−12.12抗体のその単量体分子形態におけるより多い保持をもたらす量である。
【0046】
理論に制約されないが、本発明の安定な液体拮抗剤抗CD40抗体含有組成物の増大した保存安定性は又、保存中の抗体のフラグメント化及び/又は治療活性抗体内のグルタミン及び/又はアスパラギン残基の脱アミド化に対する塩酸アルギニンの抑制作用に関連していると考えられる。抗体フラグメント化に対する塩酸アルギニンの作用は例えばSDS−PAGE及び/又はSEC−HPLC分析を用いて経時的に製剤内の分子種の変化をモニタリングすることにより容易に調べることができ;本明細書において後述する実施例を参照できる。液体組成物中の保存の間の抗CD40抗体ポリペプチドの脱アミド化に対する塩酸アルギニンの作用は、経時的に拮抗剤地CD40抗体がその脱アミド形態で存在する量をモニタリングすることにより容易に測定できる。溶液相中に存在するポリペプチドンの分子種、即ちネイティブ又は脱アミド型を測定するための方法は一般的に当該分野で知られており、。そのような方法は後に実施例において記載する通り、分子種のクロマトグラフィー分離及びポリペプチドの分子量標準物質を用いる同定、例えばRP−HPLC、又はカチオン交換クロマトグラフィー(CIEX−HPLC)を包含する。
【0047】
本発明の安定な液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物は、塩酸アルギニンにより達成される一次的安定化作用が悪影響を受けない限り、治療上活性な成分として作用する目的の拮抗剤抗CD40抗体の有効性を増大させるか、所望の品質を増進する他の成分を含有してよい。組成物は選択された経路を介した投与に関して安全でなければならず、滅菌されていなければならず、その所望の治療活性を保持していなければならない。
【0048】
本発明の医薬組成物は例えば安定化剤及び緩衝剤、及び何れかの他の賦形剤を予備混合した後に目的の拮抗剤抗CD40抗体を配合することにより調製できる。本発明の組成物を更に安定化させるために添加してよい何れかの追加的な賦形剤は、本明細書に記載した新しい組成物を得るために使用されるものとしての緩衝剤と更に組み合わせられる一次的な等張性付与および安定化剤、即ち塩酸アルギニンの安定化作用に悪影響を与えてはならない。概ね等張性及び目的の拮抗剤抗CD40抗体の増大した安定性を達成するための塩酸アルギニンの添加の後、液体組成物のpHを、緩衝剤を用いながら、好ましくは本明細書に開示した範囲内に、より好ましくは目的の拮抗剤抗CD40抗体に対して最適なpHに、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12の場合は約pH5.0〜pH7.0、好ましくは約pH5.5に調節する。pHは組成物への拮抗剤抗CD40抗体の添加の後に調節できるが、このポリペプチドの添加より前に調節するほうがポリペプチドの変性の危険性を低減できることから好ましい。次に適切な機械的装置を用いて成分の適切な混合を達成する。
【0049】
即ち本発明は液体医薬組成物中の拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの安定性を増大させるための方法を提供する。方法は約pH5.0〜約pH7.0のpHに医薬組成物を維持する緩衝剤及び組成物をほぼ等張性とするために十分な量の塩酸アルギニンと拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを組み合わせることを包含する。一部の実施形態においては、緩衝材はクエン酸塩/クエン酸緩衝液であり、緩衝材の濃度は約5mM〜約50mMであり、塩酸アルギニンの量は、約50mM〜約300mM塩酸アルギニンの組成物内のこの等張性付与剤の濃度をもたらす。他の実施形態においては、拮抗剤抗CD40抗体はCHIR−12.12又はCHIR−5.9抗体又はその抗原結合フラグメントであり;緩衝剤は約5mM〜約25mMのクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり;組成物中の塩酸アルギニンの濃度は約150mMであり、組成物は約5.0、約5.5、約6.0又は約6.5のpHを有する。
【0050】
目的の拮抗剤抗CD40抗体、例えば拮抗剤抗CD40抗体、例えばCHIR−12.12又はCHIR−5.9モノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントを含む安定化された液体医薬組成物は単位剤型として製剤しなければならず、、溶液、懸濁液又は乳液のような注射可能、又は注入可能な形態であってよい。前述の通り、それを凍結保存するか、又は経口又は非経腸の投与経路を含む種々の方法の何れかによる投与の前に液体の溶液、懸濁液又は乳液に再構成することができる凍結乾燥粉末のような乾燥形態に調製することができる。好ましくは、後述する通り、本発明の方法に従って達成される増大した保存安定性を活用するためには液体製剤として保存する。安定化された医薬組成物は好ましくは膜濾過により滅菌し、密封バイアル又はアンプルのような単位用量又は多用量の容器中に保存する。当該分野で一般的に知られている医薬組成物を製剤するための別の方法も、それが本明細書において上記開示した好ましい安定化及び緩衝剤の有益な作用に悪影響を及ぼさない限り、本明細書に開示した液体医薬組成物の保存安定性を更に増大させるために使用してよい。製薬上許容しうる担体、安定化剤等の形成及び選択の詳細な考察は、参照として本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Science(1990)(第18版;Mack Pub.Co.,Eaton,Pennsylvania)に記載されている。
【0051】
この態様において、本発明は、本発明の安定な液体拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物を保持する容器を含み、場合によりその使用に関する説明書を含む調製物品を提供する。適当な容器は、例えばバイアル、ビン及びシリンジを包含する。容器は種々の材料、例えばプラスチック又はガラスから形成してよい。1つの実施形態において、容器は3〜50ccの単回使用のガラスバイアルである。或いは、即時使用可能型の製剤とするには、容器は例えば3〜100ccのガラスバイアルであってよい。容器は製剤を保持しており、容器上、又は容器に伴ったラベルには使用方法を記載してよい。調製物品は更に商業的及び使用者側の見地から望ましい他の材料、例えば他の緩衝剤、希釈剤、充填剤、針類、シリンジ、及びパッケージインサートを使用方法説明書とともに包含してよい。
【0052】
本発明の医薬組成物中の抗CD40抗体
本発明の医薬組成物は抗CD40抗体、特にCD40受容体をターゲティングし、ADCCを調節し、CD40シグナリング、特にCD40のCD40リガンド(CD40L)との相互作用又は両方により媒介されるCD40シグナリング経路に干渉する拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。「CD40抗原」、「CD40細胞表面抗原」、「CD40受容体」又は「CD40」とは、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーに属する膜貫通糖タンパク質を意図している(例えば5,674,492及び4,708,871;Stamenkovic等(1989)EMBO8:1403;Clark(1990)Tissue Antigens36:33;Barclay 等(1997)The Leucocyte Antigen Facts Book(第2版;Academic Press,San Diego)を参照できる)。この遺伝子のオルタナティブスプライシング転写物変異体によりコードされているヒトCD40の2つのアイソフォームが発見されている。第1のアイソフォーム(「長鎖アイソフォーム」又は「アイソフォーム1」としても知られている)は、最初の19残基により示されるシグナル配列を有する277アミノ酸前駆体ポリペプチド(配列番号11(ゲンバンクアクセッション番号X60592及びNM_001250参照)によりコードされる配列番号12(最初はゲンバンクアクセッション番号CAA43045として報告され、ゲンバンクアクセッション番号NP_001241においてアイソフォーム1として識別されている))として発現される。第2のアイソフォーム(「短鎖アイソフォーム」又は「アイソフォーム2」としても知られている)は、最初の19残基により示されるシグナル配列も有する203アミノ酸前駆体ポリペプチド(配列番号9(ゲンバンクアクセッション番号NM_152854)によりコードされる配列番号10(ゲンバンクアクセッション番号NP_690593))として発現される。ヒトCD40のこれらの2つのアイソフォームの前駆体ポリペプチドはそれらの最初の165残基を共有している(即ち配列番号10及び配列番号12の残基1〜165)。短鎖アイソフォームの前駆体ポリペプチド(配列番号10に示す)は翻訳のフレームシフトをもたらすコーディングセグメントを欠いている転写物変異体(配列番号9)によりコードされており;結果として生じるCD40アイソフォームはより短く、CD40の長鎖アイソフォームに含有されるもの(配列番号12の残基166〜277に示されるC末端)とは異なるC末端(配列番号10の残基166〜203)を含有している。本発明の目的のためには、「CD40抗原」、「CD40細胞表面抗原」、「CD40受容体」又は「CD40」という用語はCD40の短鎖及び長鎖アイソフォームの両方を包含する。
【0053】
CD40抗原は本明細書に記載する通り種々の細胞片の表面上に表示表示される。「表面上に表示される」及び「表面上に発現される」とは、CD40抗原の全て又は一部分が細胞の外部に曝露されることを意図している。表示又は発現されたCD40抗原は完全又は部分的にグリコシル化されることができる。
【0054】
「アゴニスト活性」とは、物質がアゴニストとして機能することを意図している。アゴニストは細胞上の受容体と組み合わさって、受容体の天然のリガンドにより開始されるもlのと同様か同じである反応又は活性を開始させる。CD40のアゴニストは以下の応答、即ち限定しないが、B細胞メモリー形成、アイソタイプ切り替え、MHCクラスII及びCD80/86の細胞表面発現のアップレギュレーション、及びIL−8、IL−12及びTNFのようなプロ炎症性サイトカインの分泌の何れか、又は全てを誘導する。「拮抗剤活性」とは、物質が拮抗剤として機能することを意図している。CD40の拮抗剤はCD40受容体のアゴニストリガンド、特にCD40Lへの結合により誘導される応答の何れかの誘導を防止又は低減する。拮抗剤はアゴニスト結合への応答の何れか1つ以上の誘導を5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、好ましくは40%、45%、50%、55%、60%、より好ましくは70%、80%、85%、最も好ましくは90%、95%、99%、又は100%低減してよい。抗CD40治療薬、例えば抗CD40抗体のCD40リガンド結合特異性及び拮抗剤活性を測定するための方法は当該分野で知られており、限定しないが、結合試験、B細胞による免疫グロブリン分泌をモニタリングするための試験、B細胞増殖試験、Banchereau様B細胞増殖試験、抗体生産に関するT細胞ヘルパー試験、B細胞増殖試験の同時刺激、及びB細胞活性化まかのアップレギュレーションに関する試験を包含する。例えば参照として本明細書に組み込まれるWO00/75348及び米国特許6,087,329に開示されている試験を参照できる。更に又、仮出願である表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2003年11月4日、2003年11月26日及び2004年4月27日のもの、及び、譲渡された各々の米国特許出願60/517,337(代理人案件番号PP20107.001(035784/258442))、60/525,579(代理人案件番号PP20107.002(035784/271525))、及び60/565,710(代理人案件番号PP20107.003(035784/277214))、及び国際出願PCT/US2004/037152(代理人案件番号PP20107.004(035784/282916))、同様に、表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2004年11月4日、WO2005/044854として公開されたものを参照でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。
【0055】
「有意な」アゴニスト活性とは、B細胞応答の試験において測定した場合に、中立的な物質又は陰性対照により誘導されるアゴニスト活性よりも少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%高値であるアゴニスト活性を意図している。好ましくは「有意な」アゴニスト活性はB細胞応答の試験において測定した場合に、中程度の物質又は陰性対照により誘導されるアゴニスト活性よりも少なくとも2倍高値、又は少なくとも3倍高値であるアゴニスト活性である。即ち、例えば、目的のB細胞応答がB細胞増殖である場合、「有意な」アゴニスト活性は、中立的な物質又は陰性対照により誘導されるB細胞増殖のレベルよりも少なくとも2倍高値、又は少なくとも3倍高値であるB細胞増殖のレベルの誘導となる。1つの実施形態において、CD40に結合しない非特異的免疫グロブリン、例えばIgG1が陰性対照として機能する。「有意なアゴニスト活性を有さない」物質は、B細胞応答の試験において測定した場合に、中立的な物質又は陰性対照により誘導されるアゴニスト活性よりも約25%高値を超えない、好ましくは中立的な物質又は陰性対照により誘導されるアゴニスト活性よりも約20%高値、15%高値、10%高値、5%高値、1%高値、0.5%高値を超えない、更には約0.1%高値を超えないアゴニスト活性を示すことになる。
【0056】
本発明の一部の実施形態においては、本発明の安定な液体医薬組成物は拮抗剤抗CD40抗体を含む。そのような抗体はヒト細胞上のCD40抗原に結合した場合に上記した通り有意なアゴニスト活性を有さない。本発明の1つの実施形態において、拮抗剤抗CD40抗体は1つの細胞応答において有意なアゴニスト活性を有さない。本発明の別の実施形態において、拮抗剤抗CD40抗体は1つより多い細胞応答の試験において有意なアゴニスト活性を有さない(例えば増殖及び分化、又は増殖、分化、及びB細胞の場合は、抗体生産)。本発明の一部の実施形態においては、拮抗剤抗CD40抗体は、例えば後述する通り、完全なヒトモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9又はその抗原結合フラグメントである。
【0057】
当該分野で知られた試験のいずれかを用いて、抗CD40抗体がB細胞応答1つ以上の拮抗剤として機能するかどうか調べることができる。一部の実施形態においては、抗CD40抗体はB細胞増殖、B細胞分化、抗体生産、細胞間接着、B細胞メモリー形成、アイソタイプ切り替え、MHCクラスII及びCD80/86の細胞表面発現のアップレギュレーション、及びIL−8、IL−12及びTNFのようなプロ炎症性サイトカインの分泌よりなる群から選択されるB細胞応答少なくとも1つの拮抗剤として機能する。特に興味深いものはヒトB細胞の表面上のヒトCD40抗原に結合した場合にB細胞増殖に関して有意なアゴニスト活性を有さない拮抗剤抗CD40抗体である。
【0058】
1つのそのような実施形態において、抗CD40抗体は後述する実施例4において記載するもののようなB細胞増殖試験において測定した場合にB細胞の増殖の拮抗剤であり、拮抗剤抗CD40抗体は中立的な物質又は陰性対照により誘導されるB細胞増殖よりも約25%高値を超えない、好ましくは中立的な物質又は陰性対照により誘導されるB細胞増殖よりも約20%高値、15%高値、10%高値、5%高値、1%高値、0.5%高値を超えない、更には約0.1%高値を超えないレベルにおいてB細胞増殖を刺激する。
【0059】
他の実施形態において、抗CD40抗体は後述する実施例4において記載するもののようなB細胞増殖試験において測定した場合に別の抗CD40抗体、例えばS2C6抗CD40抗体により誘導されるB細胞の増殖の拮抗剤であり、、その別の抗CD40抗体により拮抗剤抗CD40抗体の存在下に刺激されたB細胞増殖のレベルは、別の抗CD40抗体により拮抗剤抗CD40抗体の非存在下に誘導されたB細胞増殖の約25%を超えず(即ち少なくとも75%抑制)、好ましくは別の抗CD40抗体により拮抗剤抗CD40抗体の非存在下に誘導されたB細胞増殖の約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%を超えず、更には約0.1%を超えない。
【0060】
更に別の実施形態においては、抗CD40抗体は後述する実施例4において記載するB細胞活性化試験において測定した場合に細胞系統EL4B5により誘導されるB細胞増殖の拮抗剤であり、、拮抗剤抗CD40抗体の存在下にEL4B5細胞系統により刺激されたB細胞増殖のレベルは、この細胞系統により拮抗剤抗CD40抗体の非存在下に誘導されたB細胞増殖の約25%を超えず(即ち少なくとも75%抑制)、好ましくはこの細胞系統により拮抗剤抗CD40抗体の非存在下に誘導されたB細胞増殖の約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%を超えず、更には約0.1%を超えない。
【0061】
更に別の実施形態においては、抗CD40抗体は後述する実施例4において記載するB細胞による抗体生産に関するヒトT細胞ヘルパー試験において測定した場合にヒトB細胞によるヒトT細胞誘導抗体生産の拮抗剤である。この態様において、拮抗剤抗CD40抗体の存在下にT細胞により刺激されたB細胞によるIgG抗体生産、IgM抗体生産、又はIgG及びIgM両方の抗体生産のレベルは、拮抗剤抗CD40抗体の非存在下にT細胞により刺激されたB細胞によるそれぞれの抗体の生産の約50%を超えず(即ち少なくとも75%抑制)、好ましくは拮抗剤抗CD40抗体の非存在下にT細胞により刺激されたB細胞によるそれぞれの抗体の生産の約25%、約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%を超えず、更には約0.1%を超えない。
【0062】
「CD40リガンド」とは、CD40シグナリング経路1つ以上に結合して活性化することができる何れかのペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質を意図している。即ち「CD40リガンド」とは、限定しないが、完全長のCD40リガンドタンパク質、及びCD40発現細胞上のCD40シグナリングに結合して刺激する機能を実施するために十分な活性を保持しているその変異体及びフラグメントを包含する。ネイティブのCD40リガンド、例えばヒトCD40リガンド(CD40L;CD154としても知られている)に対する修飾は、限定しないが、置換、欠失、トランケーション、伸長、融合タンパク質、フラグメント、ペプチドミメティック等を包含する。本発明の一部の実施形態においては拮抗剤抗CD40抗体の生物学的活性を評価するための試験は、CD40発現細胞上のCD40シグナリングを刺激するための可溶性CD40L、例えば可溶性組み換えヒトCD40L(Alexis Corporation,Bingham,Nottinghamshire,UK)の使用を包含する。
【0063】
「CD40L媒介CD40シグナリング」とは、CD40リガンドとの細胞表面受容体CD40の相互作用から生じる生物学的活性の何れかを意図している。CD40シグナリングの例はCD40発現細胞の増殖及び生存、及びCD40発現細胞内のCD40シグナリング経路1つ以上の刺激をもたらすシグナルである。CD40「シグナリング経路」又は「シグナルトランスダクション経路」とは、CD40受容体のCD40リガンド、例えばCD40Lとの相互作用から生じ、、シグナル経路を通過して伝達される場合に、シグナリングカスケードにおける下流分子1つ以上の活性化をもたらすシグナルを発生する少なくとも1つの生化学的反応又は生化学的反応のグループを意味することを意図している。シグナルトランスダクション経路には、細胞の原形質膜を通過する、シグナルトランスダクション分子のシリーズ1つ以上を通過する、細胞の細胞質を通過する、一部の場合においては、細胞の核に至る、細胞表面CD40受容体からのシグナルの伝達をもたらす多くのシグナルトランスダクション分子が関与している。CD40シグナルトランスダクション経路は例えば、AKTの活性化をもたらし、究極的にはNF−κBシグナリング経路を介したNF−κBの活性化をもたらすAKTシグナリング経路;及びそれぞれERK及びp38の活性化をもたらすMEK/ERKシグナリング経路及びMEK/p38シグナリング経路を包含する、有糸分裂促進物質活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナリング経路を包含する。これらのシグナリング経路の活性化及びブロッキングの間の均衡が細胞の生存又はアポトーシスの何れかに好都合なものとなる。
【0064】
一部の実施形態においては、本発明の安定な医薬組成物はCD40L媒介CD40シグナリングをブロックする拮抗剤抗CD40抗体を含む。CD40L媒介CD40シグナリングをブロックする場合の拮抗剤抗CD40抗体の役割のより詳細な説明については、例えば、仮出願である表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2003年11月4日、2003年11月26日及び2004年4月27日のもの、及び、譲渡された各々の米国特許出願60/517,337(代理人案件番号PP20107.001(035784/258442))、60/525,579(代理人案件番号PP20107.002(035784/271525))、及び60/565,710(代理人案件番号PP20107.003(035784/277214))、及び国際出願PCT/US2004/037152(代理人案件番号PP20107.004(035784/282916))、同様に、表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2004年11月4日、WO2005/044854として公開されたものを参照することができ;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。更に又、仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Proliferative Disorders Mediated by CD40 Signaling」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,285(代理人案件番号PP028035.0002(035784/304312))、及び相当する国際出願PCT/US2006/019414(代理人案件番号PP028035.0003(035784/311611))、出願日2006年5月18日、WO2006/125143として公開;及び仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Diseases Having an Autoimmune and/or Inflammatory Component」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,336(代理人案件番号PP028062.0002(035784/304311))、及び相当する国際特許出願PCT/US2006/019325(代理人案件番号PP028062.0003(035784/311608))、出願日2006年5月18日、WO2006/125117として公開されたものも参照でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。
【0065】
本発明の安定な液体医薬組成物は抗CD40抗体、特に、拮抗剤抗CD40抗体及び/又はその抗原結合フラグメントを含む。以下の用語及び定義をそのような抗体に適用する。
【0066】
「抗体」及び「免疫グロブリン」(Ig)は同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。用語は同義語的に使用される。一部の場合においては、免疫グロブリンの抗原特異性は既知であってよい。
【0067】
「抗体」という用語は広義の意味において使用され、完全に組み立てられた抗体、抗原に結合できる抗体フラグメント(例えばFab、F(ab’)2、Fv、単鎖抗体、ダイアボディー、抗体キメラ、ハイブリッド抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体等)、及び上記を含む組み換えペプチドを包含する。
【0068】
「モノクローナル抗体」及び「mAb」という用語は本明細書においては、抗体の実質的に均質な集団から得られた抗体を指し、即ち、集団を含む個々の抗体は、少量において存在してよい可能な天然に存在する突然変異を除き同一である。
【0069】
「ネイティブの抗体」及び「ネイティブの免疫グロブリン」とは、通常は2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖()を有する約150,000ダルトンのヘテロ4量体糖タンパク質である。各軽鎖は1つの共有結合のジスルフィド結合により重鎖に連結されており、ジスルフィド連結部の数は種々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖内で変動する。各重鎖及び軽鎖は又、規則的に間隔をおいた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は一端において可変ドメイン(VH)とそれに続く多くの定常ドメインを有する。各軽鎖は一端において可変ドメイン(VL)及びそのもう一方の端部において定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインとアラインされており、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインとアラインされている。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変ドメインの間の界面を形成すると考えられている。
【0070】
「可変」という用語は可変ドメインの特定の部分が抗体の間で配列において広範に異なっているという事実を指す。可変領域は抗原結合特異性を付与する。しかしながら、変動性は抗体の可変ドメイン全体に渡って均一に分布しているわけではない。それは、共に軽鎖及び重鎖の可変ドメインにある相補性決定領域(CDR)又は超可変領域と称される3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク(FR)領域に収容されている。ネイティブの重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、βプリーツ型シート構造に連結している、一部の場合にはその部分を形成しているループを形成する3つのCDRにより連結されたβプリーツ型シート配置を大半が採用しているFR領域4つを含む。各鎖のCDRはFR領域により近接して共に保持されており、別の鎖に由来するCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等(1991)NIH Publ.No.91−3242,Vol.I,p.647−669参照)。定常ドメインは抗原への抗体の結合には直接関与していないが、種々のエフェクター機能、例えばFc受容体(FcR)結合、抗体依存性細胞性細胞毒性における抗体の参加、補体依存性細胞毒性の開始、及び肥満細胞脱顆粒を示す。
【0071】
「超可変領域」という用語は本明細書においては、抗原結合を担っている抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は「相補性決定領域」即ち「CDR」に由来するアミノ酸残基(即ち軽鎖可変ドメインの残基24〜34(L1)、50〜56(L2)及び89〜97(L3)、及び、重鎖可変ドメインの残基31〜35(H1)、50〜65(H2)及び95〜102(H3);Kabat等(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(5th ed.,Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,Md)及び/又は「超可変領域」に由来する残基(即ち軽鎖可変ドメインの残基26〜32(L1)、50〜52(L2)及び91〜96(L3)、及び重鎖可変ドメインの(H1)、53〜55(H2)及び96〜101(H3);Clothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901−917)を含む。「フレームワーク」即ち「FR」残基は本明細書において想定する場合は超可変領域以外の可変ドメイン残基である。
【0072】
「抗体フラグメント」は未損傷の抗体の一部分、好ましくは未損傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例はFab、F(ab’)2及びFvフラグメント;ダイアボディー;線状抗体(Zapata等(1995)Protein Eng.8(10):1057−1062);単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体を包含する。抗体のパパイン消化は各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと称される2つの同一の抗原結合フラグメント、及び、自身の名称が容易に結晶化する自身の能力を反映している残余の「Fc」フラグメントを生じさせる。ペプシン処理は2つの抗原複合化部位を有し、なお抗原に交差結合することができるF(ab’)2フラグメントを生じさせる。
【0073】
「Fv」は完全な抗原認識及び結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。この領域は堅固な非共有結合性の会合における1重鎖及び1軽鎖の可変ドメインの2量体より成る。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH−VL2量体の表面上に抗原結合部位を定義するのはこの配置においてである。総合すれば、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与している。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的なCDRを僅か3つしか含まないFcの半分)であっても、完全な結合部位よりは低親和性ではあるが、なお抗原を認識して結合する能力を有している。
【0074】
Fabフラグメントは又、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fabフラグメントは、抗体ヒンジ領域からのシステイン1個以上を包含する重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数残基が付加していることにより、Fab’フラグメントとは異なっている。Fab’−SHは遊離のチオール基を定常ドメインのシステイン残基が担持しているFab’に対する本明細書における標記である。Fab’フラグメントはF(ab’)2フラグメントの重鎖ジスルフィド架橋を還元することにより生成される。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも知られている。
【0075】
何れかの脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」はその定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と称される2つの明確に異なった型の一方に割りつけられる。
【0076】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割りつけることができる。ヒト免疫グロブリンには5つの主要なクラス、即ちIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらの数種はさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に分割される。免疫グロブリンの異なるクラスに相当する重鎖定常ドメインはアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューとそれぞれ称される。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元配置はよく知られている。異なるアイソタイプは異なるエフェクター機能を有する。例えば、ヒトIgG1及びIgG3アイソタイプはADCC(抗体依存性細胞媒介細胞毒性)活性を有する。
【0077】
「標識」という単語は、本明細書においては、「標識された」抗体を形成するように抗体に直接又は間接的に共役されている検出可能な化合物又は組成物を指す。標識はそれ自体検出可能であってよく(例えば放射性同位体標識又は蛍光標識)、或いは、酵素標識の場合は、検出可能な化合物又は組成物の化学的改変を触媒してよい。
【0078】
「宿主細胞」とは、本明細書においては、組み換えベクター又は他の転移ポリヌクレオチドに対するレシピエントなることができるか、なっており、トランスフェクトされている元の細胞の子孫を包含することができる、単細胞の実体として培養された微生物又は真核生物の細胞又は細胞系統を指す。当然ながら単細胞の子孫は、天然、偶然又は意図的な突然変異により、元の親と形態学的又はゲノム又は総DNA相補体において完全同一ではなくなっていてもよい。
【0079】
「ヒトエフェクター細胞」FcR1つ以上を発現し、エフェクター機能を発揮する白血球である。好ましくは細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)エフェクター機能を実施する。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、好酸球、及び好中球を包含し、PBMC及びNK細胞が好ましい。ADCC活性を有する抗体は典型的にはIgG又はIgG3アイソタイプのものである。IgG1及びIgG3を単離することに加えて、このようなADCC媒介抗体は非ADCC抗体由来の可変領域又は可変領域フラグメントをIgG1又はIgG3アイソタイプ定常領域に操作することによっても作成できる。
【0080】
「Fc受容体」即ち「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載するために使用する。好ましいFcRはネイティブ配列のヒトFcRである。更に又、好ましいFcRはIgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIのサブクラスの受容体、及びこれらの受容体の対立遺伝子変異体及びオルタナティブスプライシング型を包含する。FcγRII受容体は、
FcγRIIA(活性化受容体)及びFcγRIIB(抑制受容体)を包含し、これらはその細胞質ドメインにおいて主に異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAはその細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有している。抑制受容体FcγRIIBはその細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系抑制モチーフ(ITIM)を含有している(Daeron(1997)Annu.Rev.Immunol.15:203−234参照)。FcRはRavetch and Kinet(1991)Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991);Capel等(1994)Immunomethods 4:25−34;and de Haas等(1995)J.Lab.Clin.Med.126:330−341において考察されている。他のFcR、例えば将来発見されるものも本明細書における「FcR」という用語に包含される。用語は又、母動物IgGの胎仔への転移を担っている生仔受容体FcRnも包含する(Guyer等(1976)J.Immunol.117:587 and Kim等(1994)J.Immunol.24:249(1994))。
【0081】
ヒト抗体を作成するための多くの方法が存在する。例えば、分泌細胞はエプスタイン−バーウィルス(EBV)による感染により不朽化することができる。しかしながら、EBV感染細胞はクローニングが困難であり、通常は比較的低収率の免疫グロブリンしか生産しない(James and Bell(1987)J.Immunol.Methods 100:5−40)。将来において、ヒトB細胞の不朽化が形質転換遺伝子の所定の組み合わせの導入により達成される可能性がある。そのような可能性はSV40大型癌タンパク質及びH−rasの癌遺伝子対立遺伝子を伴ったテロメラーゼ触媒サブユニットの発現が正常ヒト上皮及び線維芽細胞の腫瘍形成性変換をもたらしたことが最近明らかになったことにより注目されている(Hahn等(1999)Nature 400:464−468)。現在では、内因性免疫グロブリン生産の非存在下におけるヒト抗体のレパートリーの生産が免疫化により可能となるトランスジェニック動物(例えばマウス)を作成することができる(Jakobovits等(1993)Nature 362:255−258;Lonberg and Huszar(1995)Int.Rev.Immunol.13:65−93;Fishwild等(1996)Nat.Biotechnol 14:845−851;Mendez等(1997)Nat.Genet.15:146−156;Green(1999)J.Immunol.Methods 231:11−23;Tomizuka等(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722−727;Little等(2000)Immunol.Today 21:364−370において考察)。例えば、キメラ及び生殖細胞系統の突然変異体であるマウスにおける抗体重鎖結合部領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失が内因性抗体生産の完全な抑制をもたらすことが報告されている(Jakobovits等(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551−2555)。ヒト生殖細胞系統免疫グロブリン遺伝子アレイのそのような生殖細胞系統突然変異体マウスにおける転移は抗原攻撃時のヒト抗体の生産をもたらす(Jakobovits等(1993)Nature 362:255−258)。Mendez等(1997)(Nature Genetics 15:146−156)は抗原攻撃時に高親和性の完全ヒト抗体を形成するトランスジェニックマウスの系統を作成している。これは巨大塩基ヒト重鎖及び軽鎖の遺伝子座の欠失保有マウスへの生殖細胞系統取り込みを上記した通り内因性JHセグメント内へに行うことにより達成されている。これらのマウス(XenoMouse(登録商標)II技術(Abgenix;Fremont,California))は約66個のVH遺伝子、完全なDH及びJH領域、及び3個の異なる定常領域を含有する1,020kbのヒト重鎖遺伝子座を保有しており、更に、32個のVκ遺伝子、Jκ遺伝子、及びCκ遺伝子を含有する800kbのヒトκ遺伝子座を保有している、これらのマウスにおいて生産される抗体は遺伝子の再配列、組み立て及びレパートリーを包含する全ての点において、ヒトにおいて観察されるものに極めて近似している。ヒト抗体はネズミ遺伝子座内の遺伝子再配列を防止する内因性セグメントの欠失のために、内因性抗体全体に渡って優先的に発現される。このようなマウスを特定の意図する抗原により免疫化してよい。
【0082】
そのような免疫化された動物に由来する血清は、初期抗原に対する抗体の反応性に関してスクリーニングしてよい。リンパ球はリンパ節又は脾細胞から単離してよく、CD138陰性及びCD19陽性細胞を得るための選択によりB細胞を更に選択してよい。1つの特徴において、そのようなB細胞培養物(BCC)を更に骨髄腫細胞に融合することにより、上記した通りハイブリドーマを作成してよい。
【0083】
別の特長において、そのようなB細胞培養物を更にスクリーニングすることにより好ましくは初期抗原に対する反応性のあるものを得てよい。そのようなスクリーニングは標的/抗原タンパク質を用いた酵素結合免疫吸着試験(ELISA)、目的の抗原に結合する既知抗体を用いた競合試験、及び標的抗原を発現する一過性にトランスフェクトされたCHO又は他の細胞へのインビトロの結合を包含する。
【0084】
CD40に対するモノクローナル抗体は当該分野で知られている。例えば全て参照として本明細書に組み込まれるMcMichael,ed.(1987;1989)Leukocyte Typing III and IV(Oxford University Press,New York);米国特許5,674,492;5,874,082;5,677,165;6,056,959;WO00/63395;国際公開WO02/28905及びWO02/28904;Gordon等(1988)J.Immunol.140:1425;Valle等(1989)Eur.J.Immunol.19:1463;Clark等(1986)PNAS 83:4494;Paulie等(1989)J.Immunol.142:590;Gordon等(1987)Eur.J.Immunol.17:1535;Jabara等(1990)J.Exp.Med.172:1861;Zhang等(1991)J.Immunol.146:1836;Gascan等(1991)J.Immunol.147:8;Banchereau等(1991)Clin.Immunol.Spectrum 3:8;and Banchereau等(1991)Science 251:70におけるB細胞抗原に関する項目を参照できる。他の抗CD40モノクローナル抗体は限定しないが、ヒト化抗CD40抗体、例えばネズミ抗CD40抗体SGN−14(Francisco等(2000)Cancer Res.60:3225−31)のヒト化型であるSGN−40(Tai等(2004)Cancer Res.64:2846−52;米国特許6,838,261)、及び参照として全てが本明細書に組み込まれる米国出願2004/120948に開示されているアゴニスト及び拮抗剤を包含する。
【0085】
本発明において特に有利なものは、CD40L媒介CD40シグナリングをブロックする作用を有し、、例えば後述するCHIR−12.12抗体のようにADCCも調節してよい拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0086】
本発明の安定な液体医薬組成物中で使用するための拮抗剤抗CD40抗体はヒト細胞表面上に発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合できるモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを包含する。一部の実施形態においては、安定な液体医薬組成物中の拮抗剤抗CD40抗体はCD40細胞表面抗原に対して強力な単一部位結合親和性を示す。そのようなモノクローナル抗体はBiacoreTMのような標準的な試験法を用いて測定した場合、少なくとも10−5M、少なくとも3x10−5M、好ましくは少なくとも10−6M〜10−7M、より好ましくは10−8M〜10−12MのCD40に対する解離平衡定数(KD)を示す。Biacore分析は当該分野で知られており、詳細は「BIAapplications handbook」に記載されている。WO01/27160に記載されている方法も結合親和性を調節するために使用できる。
【0087】
特に有利なものは、上記定義した通り有意なアゴニスト活性を有さないが、ヒト細胞上のCD40抗原に結合した場合、特に新生物性のヒトB細胞上のCD40抗原に結合した場合に拮抗剤活性を示す拮抗剤抗CD40抗体である。本発明の1つの実施形態においては、拮抗剤抗CD40抗体は1つのB細胞応答において有意なアゴニスト活性を有さない。本発明の別の実施形態においては、拮抗剤抗CD40抗体は1より多いB細胞応答(例えば増殖及び分化、又は増殖、分化及び抗体生産)の試験において有意なアゴニスト活性を有さない。適当なモノクローナルの抗CD40抗体はひと定常領域を有し;好ましくはそれらはまた完全又は部分的にヒト化されたフレームワーク領域を有し;最も好ましくは完全ヒト抗体又はその抗原結合フラグメントである。そのようなモノクローナル抗体の例はCHIR−5.9及びCHIR−12.12として本明細書に標記する抗体である。
【0088】
即ち、一部の実施形態においては、本発明の安定な液体医薬組成物中に存在する拮抗剤抗CD40抗体は、モノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12である。CHIR−5.9及びCHIR−12.12抗体はハイブリドーマ細胞株131.2F8.5.9(本明細書においては細胞株5.9と称する)及び153.8E2.D10.D6.12.12(本明細書においては細胞株12.12と称する)から生産されるIgG1アイソタイプの完全ヒト抗CD40モノクローナル抗体である。これらの細胞株はトIgG1重鎖遺伝子座及びヒトκ鎖遺伝子座を含有する免疫化された異型マウスに由来する脾細胞を用いて作成されている(XenoMouse(登録商標)II技術、Abgenix;Fremont,California)。脾細胞をマウス骨髄腫細胞SP2/0細胞(Sierra BioSouurce)に融合させた。得られたハイブリドーマを数回サブクローニングし、安定なモノクローナル細胞株5.9及び12.12を作成した。本発明の他の抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座に関してトランスジェニックのマウスを用いながら同様に、又は当該分野で知られた、及び/又は本明細書に記載した他の方法により作成してよい。
【0089】
CHIR−12.12抗体の可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列、及びCHIR−5.9抗体の可変領域のアミノ酸配列は本明細書に開示する通りである。より詳細には、mAbCHIR−12.12に関する軽鎖及び重鎖に関するリーダー、可変及び定常領域に関するアミノ酸配列は、配列番号2(mAbCHIR−12.12の軽鎖に関する完全な配列)、配列番号4(mAbCHIR−12.12の重鎖に関する完全な配列)、及び配列番号5(配列番号4に示されるmAbCHIR−12.12の重鎖の変異体に関する完全な配列;ここで変異体は配列番号4の153位のアラニン残基に対してセリン置換を含む)に示される。mAbCHIR−12.12に関する軽鎖及び重鎖に関するヌクレオチド配列は配列番号1(mAbCHIR−12.12の軽鎖に関するコーディング配列)及び配列番号3(mAbCHIR−12.12の重鎖に関するコーディング配列)に示される。mAbCHIR−5.9に関する軽鎖及び重鎖に関するリーダー、可変及び定常領域に関するアミノ酸配列は、配列番号6(mAbCHIR−5.9の軽鎖に関する完全な配列)、配列番号7(mAbCHIR−5.9の重鎖に関する完全な配列)、及び配列番号8(配列番号7に示されるmAbCHIR−5.9の重鎖の変異体に関する完全な配列;ここで変異体は配列番号7の158位のアラニン残基に対してセリン置換を含む)に示される。更に又、CHIR−5.9(マウスハイブリドーマ系統131.2F8.5.9(CMCC#12047)及びCHIR−12.12(マウスハイブリドーマ系統153.8E2.D10.D6.12.12(CMCC#12056)抗体を発現するハイブリドーマはそれぞれPTA−5542及びPTA−5543の特許寄託記号とともに2003年9月17日にATCC(American Type Culture Collection;10801 University Blvd.,Manassas,Virginia20110−2209(USA))に寄託されている。
【0090】
拮抗剤活性に加えて、本発明の安定な液体医薬組成物中で使用するための抗CD40抗体は腫瘍細胞に対抗する作用の別の機序を有することができる。例えば、ネイティブのCHIR−5.9及びCHIR−12.12抗体はADCC活性を有する。或いは、CHIR−5.9及びCHIR−12.12抗体の可変領域をADCC活性を有する別の抗体アイソタイプ上で発現させることができる。更に又、後に記載する通り、CHIR−5.9又はCHIR−12.12のネイティブ型、組み換え型又は抗原結合フラグメントを細胞毒、治療薬又は放射活性の金属イオン又は放射性同位体に共役することも可能である。
【0091】
CHIR−5.9及びCHIR−12.12モノクローナル抗体はELISA型の試験において可溶性CD40に結合し、CD40リガンドの細胞表面寄与への結合を防止し、予め結合しているCD40リガンドを置き換えることがフローサイトメトリー試験により明らかにされている。抗体CHIR−5.9及びCHIR−12.12はCD40への結合に関して相互に競合するが、共に参照として全てが本明細書に組み込まれる米国仮出願である60/237,556、表題「Human Anti−CD40 Antibodies」、出願日2000年10月2日、及び、PCT国際出願PCT/US01/30857、同様の表題「Human Anti−CD40 Antibodies」、出願日2001年10月2日(代理人案件番号PP16092.003)に記載されている抗CD40モノクローナル抗体である15B8とは競合しない。正常ヒト対象由来のB細胞の増殖に対する作用に関してインビトロで試験した場合、CHIR−5.9及びCHIR−12.12は拮抗剤抗CD40抗体として作用する。更に又、CHIR−5.9及びCHIR−12.12は正常対象由来のヒトリンパ球の強力な増殖を誘導しない。これらの抗体は抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)によりCD40発現標的細胞を殺傷することができる。BiacoreTM試験で測定した場合、CHIR−5.9のヒトCD40に対する結合親和性は1.2x10−8Mであり、CHIR−12.12の結合親和性は5x10−10Mであった。
【0092】
上記したモノクローナル抗体CHIR−5.9及びCHIR−12.12の結合特性を共有する他の拮抗剤抗CD40抗体は、限定しないが、以下のもの、即ち(1)それぞれPTA−5542及びPTA−5543の特許寄託記号とともにATCCに寄託された131.2F8.5.9(本明細書においては細胞株5.9と称する)及び153.8E2.D10.D6.12.12(本明細書においては細胞株12.12と称する)と命名されたハイブリドーマ細胞株から生産されるモノクローナル抗体;(2)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2及び配列番号4に示される配列の双方、及び配列番号2及び配列番号5に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;(3)配列番号6に示される配列、配列番号7に示される配列、配列番号8に示される配列、配列番号6及び配列番号7に示される配列の双方、及び配列番号6及び配列番号8に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;(4)配列番号1に示すヌクレオチド配列、配列番号3に示すヌクレオチド配列、及び配列番号1及び配列番号3のに示す配列の両方よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;(5)ハイブリドーマ細胞株5.9又はハイブリドーマ細胞株12.12により生産されるモノクローナル抗体を結合することが出来るエピトープに結合するモノクローナル抗体;(6)配列番号10又は配列番号12に示すアミノ酸配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;(7)競合的結合試験においてモノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;(8)CHIR−12.12又はCHIR−5.9モノクローナル抗体又は上記項目(1)〜(7)における上記モノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体、ここでフラグメントはヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持しているもの、を包含する。
【0093】
当業者の知る通り、本明細書に記載した抗体及びこれらの抗体の抗原結合フラグメントは、当該分野で周知であり、本明細書において後述する方法を用いて組み換えにより作成された抗体及びその抗原結合フラグメントを包含し、、例えば組み換えにより作成されたモノクローナル抗体CHIR−5.9及びCHIR−12.12を包含する。
【0094】
追加的な拮抗剤抗CD40抗体はそれぞれATCC水性セッション番号HB11339、HB12024及びHB11340を有するハイブリドーマにより分泌される5D12、3A8及び3C6と称されるモノクローナル抗体を包含する。例えば参照として全てが本明細書に組み込まれる米国特許6,315,998を参照できる。
【0095】
他の拮抗剤抗CD40抗体は当該分野で知られている。例えば参照として全てが本明細書に組み込まれる米国特許出願20020142358及び20030059427に開示されているF4−465と命名されたハイブリドーマにより生産されるヒト抗CD40抗体を参照できる。F4−465はHACマウスから得られており(Kuroiwa等(2000)Nature Biotech.10:1086(2000))、このため、ヒトラムダ軽鎖を発現する。
【0096】
本発明の医薬組成物のための抗体の製造
本発明の医薬組成物において使用するための抗体、例えば本明細書に開示した拮抗剤抗CD40抗体は当該分野で知られた何れかの抗体製造方法を用いて製造できる。即ち、ポリクローナル血清は従来の方法により製造してよい。一般的に、目的の抗原、CD40抗原を含有する溶液を先ず使用して適当な動物、好ましくはマウス、ラット、ウサギ、又はヤギを免疫化する。ウサギ又はヤギは入手できる血清の量及び標識された抗ウサギ及び抗ヤギ抗体の入手し易さのため、ポリクローナル血清の製造のために好ましい。
【0097】
ポリクローナル血清はトランスジェニック動物、好ましくはヒト免疫グロブリン遺伝子座を担持したマウスにおいて製造できる。好ましい実施形態においては、目的のタンパク質、例えばCD40を発現するSf9細胞を免疫原として使用する。免疫化は又、食塩水中、好ましくはフロイントの完全アジュバントのようなアジュバント中に抗原含有溶液を混合又は乳化すること、混合物又は乳液を非経腸的(一般的には皮下又は筋肉内)に注射することにより行うこともできる。50〜200μg/注射の用量が典型的には十分である。免疫化は一般的に2〜6週間後に食塩水中のタンパク質の注射1回以上により、好ましくはフロイントの不完全アジュバントを用いながら、ブーストする。或いは、本発明の目的のためにはインビボの免疫化と同等とみなされる当該分野で知られたインビトロの免疫化により抗体を作成してもよい。ポリクローナル抗血清はガラス又はプラスチックの容器内に免疫化した動物を放血させること、血液を25℃で1時間インキュベートすること、その後、4℃で2〜18時間インキュベートすることにより得られる。血清は遠心分離(例えば1000xg、10分間)により回収される。放血当たり約20〜50mlをウサギから得てよい。
【0098】
Sf9(Spodoptera frugiperda)細胞の作製は参照として本明細書に組み込まれる米国特許6,004,552に開示されている。慨すれば、CD40の場合、ヒトCD40をコードする配列を転移ベクターを用いてバキュロウィルス中に組み換えた。プラスミドをSf9細胞内に野生型バキュロウィルスDNAと同時トランスフェクトした。組み換えバキュロウィルス感染Sf9細胞を識別し、クローン的に精製した。
【0099】
好ましくは、抗体は本質的にモノクローナルである。「モノクローナル抗体」という用語は抗体の実質的に均質な集団から得られた抗体を指し、即ち、集団を含む個々の抗体は、少量において存在してよい可能な天然に存在する突然変異を除き同一である。用語は抗体の種又は原料に関して限定されない。用語は完全な免疫グロブリン並びにフラグメント、例えばFab、F(ab’)2、Fv及び抗体の抗原結合機能を保持しているその他のものを包含する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位;例えば抗CD40抗体の場合はCD40細胞表面抗原に対して指向されている。更に又、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向されていた異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製品とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して指向される。「モノクローナル」という修飾語は抗体の実質的に均質な集団から得られるものとしての抗体の特徴を示しており、何れかの特定の方法による抗体の製造を必要とするものとはみなさない。例えば本発明により使用するモノクローナル抗体はKohler等(1975)Nature256:495により最初に報告されたハイブリドーマ法により製造してよく、又は、組み換えDNA方法により製造してもよい(例えば米国特許4,816,567参照)。「モノクローナル抗体」とは又、例えばClackson等(1991)Nature 352:624−628及びMarks等(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;及び米国特許5,514,548に記載された手法を用いてファージ抗体ライブラリから単離してもよい。
【0100】
「エピトープ」とは、抗体が生産される対象となる、抗体が結合することになる抗原分子の部分を意図する。エピトープは線状のアミノ酸残基(即ちエピトープ内の残基が線形の状態で相互に逐次的に配置している)、非線状のアミノ酸残基(本明細書においては「非線状エピトープ」と称する;これらのエピトープは逐次的に配置していない)、又は線状及び非線状のアミノ酸残基の両方を含むことができる。
【0101】
モノクローナル抗体はKohler等(1975)Nature256:495−496の方法及びその変法を用いて調製できる。典型的には、マウスを抗原を含有する溶液で免疫化する。免疫化は、食塩水中、好ましくはフロイントの完全アジュバントのようなアジュバント中に抗原含有溶液を混合又は乳化すること、混合物又は乳液を非経腸的に注射することにより実施できる。当該分野で知られた何れかの免疫化方法を用いて本発明のモノクローナル抗体を得てよい。動物の免疫化の後、脾臓(及び場合により数個の大型のリンパ節)を摘出し、解離させて単細胞とする。脾細胞は目的の抗原でコーティングされたプレート又はウェルに細胞懸濁液を適用することによりスクリーニングしてよい。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現しているB細胞はプレートに結合し、洗浄除去されない。得られたB細胞、又は全ての解離した脾細胞を次に骨髄腫細胞と融合するように誘導してハイブリドーマを形成させ、選択培地中で培養する。得られた細胞を連続希釈によりプレーティングし、目的の抗原に特異的に結合する(そして未関連の抗原には結合しない)抗体の生産に関して試験する。選択されたモノクローナル抗体(mAb)分泌ハイブリドーマを次にインビトロ(例えば組織培養ビン又は中空糸反応器中)又はインビボ(マウス腹水中等)のいずれかで培養する。
【0102】
拮抗剤抗CD40抗体を組み換えDNA法により調製するべきである場合は、モノクローナル抗体をコードするDNAは従来の操作法を用いて容易に単離され、配列決定される(例えばネズミ抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)。本明細書に記載するハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい原料として機能する。単離後、DNAを発現ベクター中に入れ、次にこれを宿主細胞、例えばE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は免疫グロブリンタンパク質を別様には生産しない骨髄腫細胞内にトランスフェクトすることにより組み換え宿主細胞内のモノクローナル抗体の合成を達成する。抗体をコードするDNAの細菌内での組み換え発現に関する考察を記述したものはSkerra等(1993)Curr.Opinion in Immunol.5:256 and Phickthun(1992)Immunol.Revs.130:151を包含する。或いは、参照として本明細書に組み込まれる米国特許5,545,403;5,545,405;and 5,998,144に開示されている通り、CHO細胞系統のような細胞系統内で生産できる。慨すれば、細胞系統をそれぞれ軽鎖及び重鎖を発現できるベクターでトランスフェクトする。異なるベクター上の2つのタンパク質をトランスフェクトすることにより、キメラ抗体を作成できる。他の利点は抗体の正確なグリコシル化である。
【0103】
一部の実施形態においては、拮抗剤抗CD40抗体、例えばCHIR−12.12又はCHIR−5.9抗体又はその抗原結合フラグメントは、マーカーとしてグルタミン合成酵素を使用するGS遺伝子発現系(Lonza Biologics,Portsmouth,New Hampshire)を使用しながらCHO細胞中に生産させる。同様に、参照として全てが本明細書に組み込まれる米国特許5,122,464;5,591,639;5,658,759;5,770,359;5,827,739;5,879,936;5,891,693;及び5,981,216を参照できる。
【0104】
更に又、本発明の医薬組成物中で使用するための抗体は所望の結合特性を有するキメラ抗体であることができる。即ち、例えば、本発明の方法において使用するためのキメラ抗CD40抗体は本明細書に記載するCHIR−5.9及びCHIR−12.12モノクローナル抗体の結合特性を有する。「キメラ」抗体とは、組み換えDNA手法を用いて最も好ましく誘導され、ヒト(免疫学的に「関連する」種、例えばチンバンジーを包含する)及び非ヒト成分の両方を含む抗体を意図している。即ち、キメラ抗体の定常領域は最も好ましくは天然のヒト抗体の定常領域と実質的に同一であり;キメラ抗体の可変領域は最も好ましくは非ヒト原料から誘導され、目的の抗原、即ちCD40抗原に対して所望の抗原特異性を有する。非ヒト原料はヒト抗原に対する抗体、又はヒトCD40抗原を含む物質を形成するために使用できる何れかの脊椎動物の原料であることができる。そのような非ヒト原料は、限定しないが、げっ歯類(例えばウサギ、ラット、マウス等;例えば参照として本明細書に組み込まれる米国特許4,816,567参照)、及び非ヒト霊長類(例えば旧世界サル、類人猿等;例えば参照として本明細書に組み込まれる米国特許5,750,105及び5,756,069参照)を包含する。本明細書においては、「免疫学的に活性な」という表現は例えばキメラ抗CD40抗体に言及して使用する場合、ヒトCD40に結合するキメラ抗体を意味する。
【0105】
「ヒト化」とは、非ヒト免疫グロブリン配列から誘導された最小の配列を含有する抗体の形態を意図している。大部分においては、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、それにおいては、レシピエントの超可変領域(相補性決定領域、即ちCDRとしても知られている)に由来する残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類のような非ヒト種の超可変領域(ドナー抗体)に由来する残基により置き換えられている。「相補性決定基」という表現はネイティブの免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性及び特異性を共に定義するアミノ酸配列である。例えばChothia et al(1987)J.Mol.Biol.196:901−917;Kabat et al(1991)U.S.Dept.of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242を参照できる。「定常領域」という表現はエフェクター機能を付与する抗体分子の部分を指す。ヒト疾患の治療における使用のための非免疫原性抗体を作成することを目的とした過去の研究において、マウスの定常領域をヒト定常領域で置換している。対象のヒト化抗体の定常領域はヒト免疫グロブリンから誘導されている。しかしながら、これらのヒト化抗体はなおヒトにおいて望ましくない、潜在的に危険な免疫応答を誘発しており、親和性の損失もあった。本発明の医薬組成物におけるヒト化抗体、例えばヒト化抗CD40抗体は目的の親抗体、例えば本明細書に記載するCHIR−5.9及びCHIR−12.12モノクローナル抗体により示されるものと同様の結合特性を有している。
【0106】
ヒト化は本質的にWinter等の方法(Jones等(1986)Nature 321:522−525;Riechmann等(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyen等(1988)Science 239:1534−1536)に従って、げっ歯類又は突然変異体のげっ歯類CDR又はCDR配列でヒト抗体の相当する配列を置換することにより実施できる。更に又参照として本明細書に組み込まれる5,225,539;5,585,089;5,693,761;5,693,762;5,859,205も参照できる。一部の例においてはヒト免疫グロブリンの可変領域1つ以上のフレームワーク領域内の残基が相当する非ヒト残基で置き換えられる(例えば米国特許5,585,089;5,693,761;5,693,762;及び6,180,370参照)。更に又、ヒト抗体はレシピエント抗体又はDNA抗体の何れにも存在しない残基を含んでよい。これらの修飾は抗体の性能を更に調整するために行われる(例えば所望の親和性を得るため)。一般的にヒト化抗体は超可変領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、フレームワーク領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである可変ドメイン少なくとも1つ、典型的には2つの実質的に全てを含むことになる。ヒト化抗体は場合により免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含むことになる。更に詳細な説明は参照として本明細書に組み込まれるJones等(1986)Nature 331:522−525;Riechmann等(1988)Nature 332:323−329;and Presta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596を参照できる。従って、このような「ヒト化」抗体は実質的には未損傷には至らないヒト可変ドメインが非ヒト種由来の相当する配列により置換されている抗体を包含してよい。実際には、ヒト化抗体は典型的には、一部のCDR残基及び恐らくは一部のフレームワーク残基がげっ歯類抗体の類似の部位に由来する残基で置換されたヒト抗体である。例えば米国特許5,225,539;5,585,089;5,693,761;5,693,762;5,859,205を参照できる。更に又、ヒト化抗体及び所定の抗原に対して向上した親和性を有するヒト化抗体を作成するための手法を開示している米国特許6,180,370及び国際公開WO 01/27160も参照できる。
【0107】
本発明は又、不活性化された内因性免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を特徴とする非ヒト哺乳類宿主、より詳しくはトランスジェニックマウスにおいて生産された異種又は修飾された抗体を用いて実施できる。そのようなトランスジェニック動物において、宿主免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖サブユニットの発現のためのコンピテントな内因性遺伝子は非機能性とされ、類似のヒト免疫グロブリン遺伝子座で置換される。これらのトランスジェニック動物は軽鎖又は重鎖の宿主免疫グロブリンサブユニットの実質的非存在下においてヒト抗体を生産する。例えば参照として本明細書に組み込まれる米国特許5,877,397及び5,939,598を参照できる。
【0108】
一部の実施形態においては、例えばCD40に対する完全ヒト抗体はトランスジェニックマウスを免疫化することにより得られる。そのようなマウスの1つはXenoMouse(登録商標)技術(Abgenix;Fremont,California)を用いて得られ、全て参照として本明細書に組み込まれる米国特許6,075,181,6,091,001及び6,114,598に開示されている。本明細書に開示する抗体を作成するために、ヒトIgG1重鎖遺伝子座及びヒトκ軽鎖遺伝子座に関してトランスジェニックであるマウスをヒトCD40を発現するSf9細胞で免疫化した。マウスはまた他のアイソタイプに関してもトランスジェニックであることができる。本発明の安定な液体医薬組成物において有用な完全なヒト抗CD40抗体は本明細書に開示するCHIR−5.9及びCHIR−12.12モノクローナル抗体により示されるものと同様の結合特性を特徴とする。
【0109】
目的の特定の抗体、例えば、抗CD40抗体、例えば拮抗剤抗CD40抗体のフラグメントはそれらが完全長抗体の所望の親和性を保持している限り、本発明の安定な液体医薬組成物中における使用に適している。即ち、例えば、抗CD40抗体のフラグメントはCD40B細胞表面抗原に結合する能力を保持することになる。そのようなフラグメントは相当する完全長抗体と同様の特性により特徴づけられる。即ち、例えば完全長拮抗剤抗CD40抗体のフラグメントはヒト細胞の表面上に発現されているヒトCD40抗原に特異的に結合することになり、、有意なアゴニスト活性は有さないが、ヒトCD40発現細胞上のCD40抗原への結合時に拮抗剤活性を示す。そのようなフラグメントは本明細書においては「抗原結合」フラグメントと称する。
【0110】
抗体の適当な抗原結合フラグメントは完全長抗体の一部分、一般的にはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例は限定しないが、Fab、F(ab’)2、及びFvフラグメント、及び単鎖抗体分子を包含する。「Fab」とは、軽鎖及び重鎖の一部を有する免疫グロブリンの1価の抗原結合フラグメントを意図している。F(ab’)2は両方の軽鎖及び両方の重鎖の部分を含有する免疫グロブリンの2価の抗原結合フラグメントを意図している。「単鎖Fv」又は「sFv」抗体フラグメントは抗体のVH及びVLドメインを含むフラグメントを意図しており、この場合、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖内に存在する。例えば参照として本明細書に組み込まれる米国特許4,946,778,5,260,203,5,455,030、及び5,856,456を参照できる。一般的に、Fvポリペプチドは更に抗原結合のための所望の構造をsFvが形成できるようにするVHとVLドメインの間のポリペプチドリンカーを含んでいる。sFvの考察に関してはPluckthun(1994)のThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,Vol.113,ed.Rosenburg and Moore(Springer−Verlag,New York),pp.269−315を参照できる。本明細書に開示する拮抗剤抗CD40抗体の抗原結合フラグメントは又、後述する通り、標的癌細胞の殺傷を起こすために細胞毒に共役できる。
【0111】
抗体又は抗体フラグメントは例えばMcCafferty等(1990)Nature 348:552−554(1990)及び米国特許5,514,548に記載の手法を用いて作成された抗体ファージライブラリから単離できる。Clackson等(1991)Nature 352:624−628及びMarks等(1991)J.Mol.Biol.222:581−597はファージライブラリを使用するそれぞれネズミ及びヒトの抗体の単離を記載している。その後の文献では、鎖シャフリング(Marks等(1992)Bio/Technology 10:779−783)並びに極めて大型のファージライブラリを構築するための方策としてのコンビナトリアルな感染及びインビボの組み換え(Waterhouse等(1993)Nucleic.Acids Res.21:2265−2266)による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の製造が記載されている。即ち、これらの手法はモノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ手法の実用的な代替法である。
【0112】
種々の手法が抗体フラグメントの作成のために開発されている。伝統的には、これらのフラグメントは未損傷抗体のタンパク分解的な消化を介して誘導されている(例えばMorimoto等(1992)Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992)and Brennan等(1985)Science 229:81参照)。しかしながら、これらのフラグメントは現在では組み換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体フラグメントは上記した抗体ファージライブラリから単離できる。或いは、Fab’−SHフラグメントをE.coliから直接回収して化学的にカップリングすることによりF(ab’)2フラグメントを形成できる(Carter等(1992)Bio/Technology 10:163−167)。別の経路によれば、F(ab’)2フラグメントは組み換え宿主細胞培養物から直接単離できる。抗体フラグメントの作成のための他の手法は当該分野で知られている。
【0113】
本発明の安定な液体医薬組成物における使用のための拮抗剤抗CD40抗体は本明細書に開示したCHIR−5.9及びCHIR−12.12モノクローナル抗体、並びにこれらの抗体とは異なるが、CDRを保持している抗体;及び、B細胞増殖及び/又は分化の抑制により拮抗剤活性が測定される1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、又は置換を有する抗体を包含する。本発明は又、例えば参照として本明細書に組み込まれる国際公開WO 98/52976及びWO0034317に記載されているとおり作成できる脱免疫化抗体、特に脱免疫化拮抗剤抗CD40抗体も包含する。この態様において、本発明の拮抗剤抗CD40抗体内の残基は、抗体をヒトに対しては又は低免疫原性とするがヒトCD40発現細胞に対する拮抗剤活性は保持しているように修飾され、この場合そのような活性は本明細書に記載した試験により測定される。同様に本発明の範囲に包含されるものは、目的の抗体、例えば拮抗剤抗CD40抗体又はそのフラグメントを含む融合タンパク質であり、その融合タンパク質は当該分野で知られる通り、合成するか、又は相当するポリヌクレオチドベクターから発現させることができる。そのような融合タンパク質は本明細書に記載する通り抗体のコンジュゲーションを参照しながら説明する。
【0114】
目的の結合親和性を有する何れかの知られた抗体は、例えば参照として本明細書に組み込まれる特許公開EP0983303A1、WO00/34317及びWO98/52976に記載されている方法を用いて作成された配列変異を有することができる。例えばCDR内の配列は抗体を、MHCクラスIIに結合させ、望ましくないヘルパーT細胞応答をトリガーさせることができる。保存的置換は抗体は結合親和性を保持できるが、なお望ましくないT細胞応答をトリガーするその能力を失うようにすることができる。何れかのこのような保存的又は非保存的な置換は当該分野で知られた方法、例えば本明細書に記載するものを用いて行うことができ、、得られた抗体もまた本発明の安定な液体医薬組成物中で使用できる。変異体抗体は特定の活性、例えば拮抗剤活性、親和性及び特異性に関して、本明細書に記載した方法を用いて定型的に試験することができる。
【0115】
上記した方法の何れか、又は本明細書に開示した何れかの他の方法により作成された拮抗剤抗CD40抗体はCHIR−12.12又はCHIR−5.9抗体と同様の態様において使用でき、その場合、それは以下の生物学的活性、即ち、T細胞により刺激される正常なヒト末梢B細胞による免疫グロブリンの分泌の抑制;JurkatT細胞により刺激される正常なヒト末梢B細胞の生存及び/又は増殖の抑制;CD40L発現細胞又は可溶性CD40リガンド(sCD40L)により刺激される正常なヒト末梢B細胞の生存及び/又は増殖の抑制;sCD40L又は固相CD40Lにより刺激される何れかの細胞における「生存」の抗アポトーシス細胞内シグナルの抑制;sCD40L又は固相CD40Lとのライゲーション時の何れかの細胞におけるCD40シグナルトランスダクションの抑制;ヒト悪性B細胞の増殖の抑制;CD40担持標的細胞又はCD40に対する同族リガンドを担持している細胞、例えば限定しないが、T細胞及びB細胞の欠失、アネルギー及び/又は耐容性誘導;CD4+CD25+調節T細胞の増殖又は活性化の誘導(例えばCD40−CD40L干渉を介したドナー同種抗原特異的組織拒絶、Maurik等(2002)J.Immunol.169:5401−5404参照);何れかの機序による細胞毒性(例えば限定しないが、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、補体依存性細胞毒性(CDC)、増殖のダウンレギュレーション、及び/又は標的細胞におけるアポトーシス);標的細胞サイトカイン分泌及び/又は細胞表面分子発現のモジュレーション;及びこれらの組み合わせ、の少なくとも一部分を保有する。本明細書に開示した拮抗剤抗CD40抗体及びその抗原結合フラグメントの所望の生物学的活性を測定するための試験は仮出願である表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2003年11月4日、2003年11月26日及び2004年4月27日のもの、及び、譲渡された各々の米国特許出願60/517,337(代理人案件番号PP20107.001(035784/258442))、60/525,579(代理人案件番号PP20107.002(035784/271525))、及び60/565,710(代理人案件番号PP20107.003(035784/277214))、及び国際出願PCT/US2004/037152(代理人案件番号PP20107.004(035784/282916))、同様に、表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2004年11月4日、WO2005/044854として公開されたものに記載されている通り実施でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。同様に、仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Proliferative Disorders Mediated by CD40 Signaling」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,285(代理人案件番号PP028035.0002(035784/304312))、及び相当する国際出願PCT/US2006/019414(代理人案件番号PP028035.0003(035784/311611))、出願日2006年5月18日、WO2006/125143として公開;及び仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Diseases Having an Autoimmune and/or Inflammatory Component」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,336(代理人案件番号PP028062.0002(035784/304311))、及び相当する国際特許出願PCT/US2006/019325(代理人案件番号PP028062.0003(035784/311608))、出願日2006年5月18日、WO2006/125117として公開されたものに記載された試験も参照でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。同様に、Schultze等(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:8200−8204;Denton等(1998)Pediatr.Transplant.2:6−15;Evans等(2000)J.Immunol.164:688−697;Noelle(1998)Agents Actions Suppl.49:17−22;Lederman等(1996)Curr.Opin.Hematol.3:77−86;Coligan等(1991)Current Protocols in Immunology13:12;Kwekkeboom等(1993)Immunology79:439−444;及び米国特許5,674,492及び5,847,082に記載された試験も参照でき;参照として本明細書に組み込まれる。
【0116】
本明細書において識別されるCD40抗原エピトープに特異的な拮抗剤抗CD40抗体を検出するための代表的な試験は、「競合的結合試験」である。競合的結合試験は、未知物質を検出し、標識された既知リガンドのその特異的抗体への結合を抑制するそれらの能力により定量する血清学的な試験である。これはまた競合的抑制試験とも称される。代表的な競合的結合試験においては、例えば本発明のモノクローナル抗体のエピトープ1つ以上に対して育成されたモノクローナル抗体と組み合わせて、標識されたCD40ポリペプチドを試料中の候補抗体により沈殿させる。目的のエピトープと特異的に反応する抗CD40抗体は、CD40タンパク質又は目的のCD40タンパク質の特定のエピトープを含むタンパク質のフラグメントに対して製造された一連の抗体をスクリーニングすることにより識別できる。例えば、ヒトCD40に関しては、目的のエピトープは、配列番号9によりコードされる配列番号10に示されるヒトCD40の短鎖アイソフォーム(ゲンバンクアクセッション番号NP_690593);ゲンバンクアクセッション番号NM_152854)も参照;又はヒトCD40の長鎖アイソフォーム(配列番号11に示される配列によりコードされる配列番号12に示されるゲンバンクアクセッション番号CAA43045及びNP_001241参照;ゲンバンクアクセッション番号X60592及びNM_001250参照)の線状及び/又は非線状のアミノ酸残基を含むエピトープを包含する。或いは、以前に識別されている適当な拮抗剤抗CD40抗体を用いた競合的結合試験を用いて以前に識別されている抗体に匹敵するモノクローナル抗体を選択することができる。
【0117】
このようなイムノアッセイにおいて使用される抗体は標識されているか、未標識であってよい。未標識抗体は凝集反応において使用してよく;標識された抗体は広範な種類の標識を用いた広範な種類の試験において使用してよい。抗CD40抗体と目的のエピトープとの間の抗体−抗原複合体の形成の検出は、抗体に検出可能な物質を結合させることにより容易にすることができる。適当な検出手段は、標識、例えば放射性核種、酵素、補酵素、蛍光物質、ケミルミネセント物質、発色物質、酵素基質又はコファクター、酵素阻害剤、補欠分子族複合体、フリーラジカル、粒子、染料等の使用を包含する。適当な酵素の例はセイヨウワサビパーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを包含し;適当な補欠分子族複合体の例はストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを包含し;適当な蛍光物質の例はウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリスリンを包含し;ルミネセント物質の例はルミノールであり;バイオルミネセント物質の例はルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを包含し;適当な放射性物質の例は125I、131I、35S及び3Hを包含する。このような標識された試薬は種々の良く知られた試験法、例えばラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、例えばELISA、蛍光イムノアッセイ等において使用してよい。例えば米国特許3,766,162;3,791,932;3,817,837;及び4,233,402を参照できる。
【0118】
以前に記載された拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの何れかを本発明の医薬組成物の使用の前に共役してよい。共役された抗体を作成するための方法は当該分野で知られている。即ち、抗体を間接的な標識又は間接的な標識方法を用いて標識してよい。「間接的な標識」又は「間接的な標識方法」とは、キレート形成剤が共有結合的に抗体に結合し、少なくとも1つの放射性核種がキレート形成剤に挿入されることを意図している。例えば参照として本明細書に組み込まれるSrivastava and Mease(1991)Nucl.Med.Bio.18:589−603に記載されているキレート形成剤及び放射性核種を参照できる。適当な標識は蛍光団、発色団、放射性原始(特に32P及び125I)、電子稠密試薬、酵素及び特異的結合相手を有するリガンドを包含する。酵素は典型的にはその活性により検出される。例えば、セイヨウワサビパーオキシダーゼは通常は分校光度計により定量可能な青色顔料に3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を変換するその能力により検出される。「特異的結合相手」とは、例えば抗原及びそれに対して特異的なモノクローナル抗体の場合のように、高い特異性でリガンド分子を結合できるタンパク質を指す。他の特異的結合相手はビオチンとアビジン又はストレプトアビジン、IgGとプロテインA、及び、当該分野で知られた多くの受容体−リガンド対を包含する。同じ標識が数種の異なる様式で機能する場合があるため、上記した説明は種々の標識を異なるクラスに範疇化する意味を有さない。例えば、125Iは放射性標識として、又は電子稠密試薬として作用してよい。HRPは酵素として、又はmAbに対する抗原として作用してよい。更に又、所望の作用のために種々の標識を組み合わせてもよい。例えばmAb及びアビジンは又、本発明の実施において標識を必要とし;即ち、mAbをビオチンで標識し、その存在を125Iで標識したアビジンを用いて、又はHRPで標識した抗ビオチンmAbを用いて検出してよい。他の序列及び可能性は当業者の知る通りであり、本発明の範囲内の等価物とみなされる。
【0119】
或いは、目的の拮抗剤抗CD40抗体を「直接標識」又は「直接標識方法」を用いて標識してよく、その場合、放射性核種は抗体に直接共有結合する(典型的にはアミノ酸残基を介する)。好ましい放射性核種は上記したSrivastava and Mease(1991)に記載されている。間接的な標識方法が特に好ましい。例えば放射性標識を抗体に結合させるためにリンカーを使用している国際公開WO 00/52031及びWO 00/52473;及び参照として本明細書に組み込まれる米国特許6,015,542に記載されている抗CD40抗体の標識された形態を参照することができる。
【0120】
抗体の変異体
本発明の医薬組成物は当該分野で知られている種々の拮抗剤抗CD40抗体を用いて製剤できる。そのような変異体は親抗体の所望の結合特性を保持していることになる。即ち、例えば製剤すべき拮抗剤抗CD40抗体が親のCHIR−12.12又はCHIR−5.9抗体の変異体である場合、変異体抗体は親CHIR−12.12又はCHIR−5.9抗体の結合特性を保有することになる。抗体変異体を作成するための方法は一般的に当該分野で使用できるものである。
【0121】
例えば、拮抗剤抗CD40抗体、例えば本明細書に記載するCHIR−5.9及びCHIR−12.12モノクローナル抗体のアミノ酸配列変異体は目的の抗体をコードするクローニングされたDNA配列における突然変異により調製できる。突然変異誘発及びヌクレオチド配列改変のための方法は当該分野で周知である。例えば参照として本明細書に組み込まれるWalker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York);Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492;Kunkel等(1987)Methods Enzymol.154:367−382;Sambrook等(1989)Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor,N.Y.);米国特許4,873,192及びこれらにおいて引用されている文献を参照できる。目的のポリペプチドの生物学的活性に影響しない適切なアミノ酸置換に関する指針は参照として本明細書に組み込まれるDayhoff等(1978)、Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルに示されている。保存的置換、例えば1つのアミノ酸の同様の特性を有する別のものとの交換が好ましい。保存的置換の例は限定しないが、GlyとAla、ValとIleとLeu、AspとGlu、LysとArg、AsnとGln、及びPheとTrpとTyrを包含する。
【0122】
目的の拮抗剤抗CD40抗体ポリペプチド、例えばCHIR−12.12イムノアッセイCHIR−5.9抗体の変異体を構築する場合、変異体が所望の活性、即ち同様の結合親和性を保有し続けるように、拮抗剤抗CD40抗体の場合は、ヒト細胞の表面上に発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合することができるように、有意なアゴニスト活性は有さないが、ヒトCD40発現細胞上のCD40抗原への結合時には拮抗剤活性を示すことができるように修飾を行う。当然ながら、変異体ポリペプチドをコードするDNAにおいて生じさせるいかなる突然変異も読み枠外に配列を置いてはならず、好ましくは二次mRNA構造を生じさせる相補領域を生じさせない。EP特許出願公開75,444を参照できる。
【0123】
更に又拮抗剤抗CD40抗体の定常領域は多くの方法でエフェクター機能が改変されるように突然変異させることができる。例えば、Fc受容体への抗体結合を最適化しているFcの突然変異を開示している米国特許6,737,056B1及び米国特許出願公開2004/0132101A1を参照できる。
【0124】
好ましくは、レファレンス拮抗剤抗CD40抗体の変異体は、レファレンス抗体、例えば本明細書に記載するCHIR−5.9又はCHIR−12.12モノクローナル抗体に関するアミノ酸配列に対して、又はレファレンス抗体分子のより短い部分に対して、少なくとも70%又は75%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%又は85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、又は95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。より好ましくは、分子は少なくとも96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を共有している。本発明の目的のためには、パーセント配列同一性は、ギャップオープンペナルティー12、及びギャプエクステンションペナルティー2、BLOSUMマトリックス62としてアファインギャップサーチを用いたSmith−Watermanの相同性検索アルゴリズムを用いて測定される。Smith−Watermanの相同性検索アルゴリズムはSmith and Waterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482−489に記載されている。変異体は、例えばレファレンスの拮抗剤抗CD40抗体とは、1〜15アミノ酸残基程の少数、1〜10アミノ酸残基程の少数、例えば6〜10、5程の少数、4,3、2又は更には1アミノ酸残基程の少数の分だけ異なっていてよい。
【0125】
2つのアミノ酸配列の最適なアライメントに関しては、変異体アミノ酸配列の隣接するセグメントはレファレンスのアミノ酸配列に関して、追加的なアミノ酸残基、又は欠失したアミノ酸残基を有していてよい。レファレンスアミノ酸配列との比較のために使用する隣接するセグメントは少なくとも20隣接アミノ酸残基を含むことになり、、30、40、50又はこれより多いアミノ酸残基であってよい。保存的な残基の置換又はギャップに関連して配列の同一性のための補正を行うことができる(Smith−Watermanの相同性検索アルゴリズムを参照)。
【0126】
本発明の医薬組成物を用いた治療方法
本発明の医薬組成物はCD40発現細胞が関連する癌又は前悪性の状態を有する対象を治療する場合に、又はCD40発現細胞が関連する炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患を治療するために使用される。「治療」とは本明細書においては、対象に対する拮抗剤抗CD40抗体を含む医薬組成物の適用又は投与、又は、対象に由来する単離された組織又は細胞系統に対する拮抗剤抗CD40抗体を含む医薬組成物の適用又は投与として定義され、ここで対象は疾患、疾患の症状、又は疾患に至る素因を有し、ここで目的は疾患、疾患の症状、又は疾患に至る素因の治癒、療養、軽減、緩和、改変、緩解、改良、改善又は影響を及ぼすことである。
【0127】
「対象」とは何れかの動物を意図する。好ましくは対象は哺乳類であり、最も好ましくは対象はヒトである。ヒト以外の特定の重要な哺乳類は限定しないが、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ及びブタを包含する。
【0128】
治療の目的のために投与する場合、投与は予防的又は治療的な目的のためであってよい。予防的に提供する場合は、医薬組成物は何れかの症状の前に提供する。医薬組成物の予防的投与は何れかのその後の症状を防止又は減衰させる働きを有する。治療的に提供する場合は、医薬組成物は症状の発症時(又はその直後)に提供する。医薬組成物の治療的投与は何れかの実際の症状を減衰させる働きを有する。
【0129】
投与の典型的な経路は限定しないが、経口投与及び非経腸投与、例えば静脈内、筋肉内、髄腔内、鼻内、舌下、動脈内及び腹腔内の注射又は注入、及び皮下注射を包含する。この投与を達成するための方法は当該分野で知られている。
【0130】
好ましい実施形態においては、本発明の医薬組成物は静脈内投与される。静脈内投与は投与する拮抗剤抗CD40抗体に応じて、好ましくは約1〜分10時間の期間にわたる、より好ましくは約1〜約8時間にわたる、更に好ましくは約2〜約7時間にわたる、なお好ましくは約4〜約6時間にわたる注入により行う。医薬組成物の初期の注入は約4〜約6時間の期間に渡って行い、後の注入はより速く送達する。後の注入は約1〜約6時間、例えば約1〜約4時間、約1〜約3時間、又は約1〜約2時間の期間に渡って投与してよい。
【0131】
本発明の医薬組成物の薬学的有効量を対象に投与する。「薬学的有効量」とは、治療が上記した通り予防的又は治療的な目的のためであることができる疾患又は状態の治療において有用な量を意図する。この態様において、組成物の薬学的有効量は治療を必要とする対象に対し拮抗剤抗CD40抗体の治療上有効な用量又は量を投与するものとなる。「治療上有効な用量又は量」又は「有効量」とは、投与されればCD40発現細胞を含む疾患を有する患者の治療に関して正の治療応答をもたらす拮抗剤抗CD40抗体の量を意図する。本発明の一部の実施形態においては、拮抗剤抗CD40抗体、例えばモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメントの治療有効量は、約0.01mg/kg〜約40mg/kg、約0.01mg/kg〜約30mg/kg、約0.1mg/kg〜約30mg/kg、約1mg/kg〜約30mg/kg、
約3mg/kg〜約30mg/kg、約3mg/kg〜約25mg/kg、約3mg/kg〜約20mg/kg、約5mg/kg〜約15mg/kg、又は約7mg/kg〜約12mg/kgの範囲である。投与方法は拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントの治療有効用量の単回投与または治療有効用量の多数回投与を含んでよい。
【0132】
本発明の医薬組成物は抗CD40治療薬、より詳しくは拮抗剤抗CD40抗体を用いた治療に応答する癌又は前悪性の状態を有する何れかの対象を治療する場合に使用される。癌又は前悪性の状態の抗CD40抗体を用いた治療に対する応答性を測定するための方法は、診断及び予後試験、例えば同時係争中の共通に保有されている暫定特許出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Proliferative Disorders Mediated by CD40 Signaling」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,285(代理人案件番号PP028035.0002(035784/304312))、及び相当する国際出願PCT/US2006/019414(代理人案件番号PP028035.0003(035784/311611))、出願日2006年5月18日、WO2006/125143として公開されたものに記載された試験を包含し;これらの内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。同様に、本発明の医薬組成物は抗CD40治療薬、より詳しくは拮抗剤抗CD40抗体を用いた治療に応答する炎症性及び/又は自己免疫性の疾患を有する何れかの対象を治療する場合に使用される。炎症性及び/又は自己免疫性の疾患の抗CD40抗体を用いた治療に対する応答性を測定するための方法は、診断及び予後試験、例えば同時係争中の共通に保有されている暫定特許出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Diseases Having an Autoimmune and/or Inflammatory Component」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,336(代理人案件番号PP028062.0002(035784/304311))、及び相当する国際特許出願PCT/US2006/019325(代理人案件番号PP028062.0003(035784/311608))、出願日2006年5月18日、WO2006/125117として公開されたものに記載された試験を包含し;これらの内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。
【0133】
「腫瘍」とは、本明細書においては、悪性又は良性に関わらず全ての新生物性の細胞の成育及び増殖、全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を指す。「新生物性」とは、本明細書においては、異常な組織の成育をもたらす、悪性又は良性に関わらず、脱調節された、又は未調節の細胞の生育の何れかの形態を指す。即ち「新生物性の細胞」とは、脱調節された、又は未調節の細胞の生育を有する悪性及び良性の細胞を包含する。
【0134】
「抗腫瘍活性」とは、悪性のCD40発現細胞の増殖又は蓄積の速度の低下、その結果として生じる既存の腫瘍の成育速度又は治療中に生じた腫瘍の減少、及び/又は既存の新生物性(腫瘍)細胞又は新規に形成された新生物細胞の破壊、その結果として生じる治療中の腫瘍の全体寸法の低下を意図している。本明細書の拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物を用いた治療はヒトにおけるCD40発現細胞上のCD40シグナリングの刺激に関連する癌及び前悪性の状態の治療に関連して有利である生理学的応答をもたらす。
【0135】
「癌」及び「癌性の」という用語は未調節の細胞成育を典型的特徴とする哺乳類における生理学的状態を指すか、説明するものである。癌の例は限定しないが、リンパ腫又は白血病、及び固形腫瘍を包含する。「B細胞関連癌」又は「B細胞系統の癌」とは、脱調節された、又は未調節の細胞の生育がB細胞に関連している癌の何れかの型を意図している。
【0136】
「難治性」とは、癌に関する場合、特定の癌が特定の治療薬、例えば目的の拮抗剤抗CD40抗体を用いた治療に対して抵抗性又は非応答性であることを意図している。癌は、特定の治療薬を用いた治療に対して、特定の治療薬を用いた治療の開始時から(即ち治療薬への初回曝露に対して非応答性)、又は治療薬に対する抵抗性の発生の結果として、治療薬を用いた最初の治療機関の過程に渡って、又は治療薬を用いた後の治療期間の間、難治性となる場合がある。
【0137】
本発明の医薬組成物はCD40発現細胞上のCD40シグナリングの刺激により媒介される癌又は前悪性の状態に対して、又はCD40発現細胞上のCD40シグナリングにより媒介される何れかの炎症性又は自己免疫性の疾患に対して、治療介入を必要としている対象を治療する場合に使用される。「CD40発現細胞」とは、CD40抗原を発現する正常、前悪性及び悪性の細胞を意図している。一部の実施形態においては、CD40発現細胞は悪性B細胞である。「悪性」B細胞とは、何れかの新生物性のB細胞、例えば限定しないが、リンパ腫、例えば低、中及び高等級のB細胞リンパ腫、免疫芽細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、エプスタイン・バーウィルス(EBV)誘導リンパ腫、及びエイズ関連リンパ腫、並びにB細胞急性リンパ芽球性白血病、骨髄腫、慢性リンパ性白血病等から誘導されたB細胞を意図している。他の実施形態によれば、CD40発現細胞は癌腫又は肉腫の細胞である。「CD40発現癌腫細胞」又は「CD40発現肉腫細胞」とは、CD40細胞表面抗原を発現する固形腫瘍の何れかの悪性(即ち新生物性)又は前悪性の癌腫又は肉腫の細胞を意図している。本発明の目的のためには、CD40抗原を発現する癌性及び前癌性又は前悪性の細胞は「CD40発現新生物細胞」と称する。細胞におけるCD40発現を検出するための方法は当該分野で周知であり、限定しないがPCRの手法、免疫組織化学、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、ELISA等を包含する。拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを用いた治療が認可される場合、拮抗剤抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物は何れかの適当な投与経路により投与できる。
【0138】
本発明の医薬組成物を用いた治療介入を要する対象はCD40発現新生物細胞上のCD40シグナリングにより媒介される何れかの癌又は前悪性の状態に罹患しているか、発症又は再発の危険性がある場合がある。そのような癌又は前悪性の状態は、限定しないが、B細胞系統の癌、非B細胞血液学的悪性疾患、及びCD40発現新生物細胞上のCD40シグナリングにより媒介されることが分かっている固形腫瘍を包含する。
【0139】
CD40発現新生物細胞を含むB細胞系統の癌の例は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ性白血病(PLL)、ヘアリー細胞白血病、ホジキン病、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖疾患及びリンパ腫、例えば限定しないが、びまん性小細胞型リンパ性リンパ腫、小胞性、DLBCL、粘膜関連のリンパ様組織のリンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、脾リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、血管内リンパ腫症、免疫芽球リンパ腫、エイズ関連リンパ腫等である。
【0140】
即ち、本発明の医薬組成物は異常な、制御不能なB細胞の増殖又は蓄積に関連する非ホジキンリンパ腫を有する対象の治療において使用される。本発明の目的のためには、そのようなリンパ腫はWorking Formulationの分類スキームに従って、低等級、中等級、及び高等級としてカテゴリー化されるB細胞となる(The Non−Hodgkin’s Lymphoma Pathologic Classification Project,” Cancer 49(1982):2112−2135参照)。低等級のB細胞リンパ腫は、小リンパ球性、小胞性小型切れ込み核細胞、及び小胞性混合型小型切れ込み核細胞、及び大細胞リンパ腫を包含し;中等級リンパ腫は小胞性大細胞、びまん性小型切れ込み核細胞、びまん性混合型小及び大細胞、及びびまん性大細胞リンパ腫を包含し;高等級リンパ腫は大細胞免疫芽球、リンパ芽球、及び小型非切れ込み核細胞リンパ腫のバーキット及び非バーキット型を包含する。
【0141】
本発明の医薬組成物はRevised European and American Lymphoma Classification(REAL)のシステムに従って分類されるB細胞リンパ腫の施療的治療において有用である。そのようなB細胞リンパ腫は、限定しないが、前駆体B細胞新生物に分類されるリンパ腫、例えばBリンパ芽球性白血病/リンパ腫;末梢B細胞新生物、例えばB細胞慢性リンパ性白血病/小細胞リンパ性リンパ腫、リンパプラズマ細胞様リンパ腫/免疫細胞腫、被膜細胞リンパ腫(MCL)、小胞中心リンパ腫(小胞性)(例えばびまん性小細胞、びまん性混合型小及び大細胞、及びびまん性大細胞リンパ腫)、境界域B細胞リンパ腫(例えば節外、節性、及び脾性)、プラズマ細胞腫/骨髄腫、びまん性大細胞リンパ腫のサブタイプ一次縦隔(胸腺)バーキットリンパ腫、及びバーキット様高悪性度B細胞リンパ腫;及び未分類の低等級又は高等級のB細胞リンパ腫を包含する。
【0142】
本発明の医薬組成物は又、MGUS(意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症)として知られている前悪性状態を有する対象を治療するためにも使用される。MGUSを有する患者の約25%が最終的には多発性骨髄腫(MM)又は関連のプラズマ細胞障害を発症する(Kyle(1993)Mayo Clinic.Proc.68:26−36)。骨髄における悪性プラズマ細胞の増殖、血清中又は尿中の単一クローンタンパク(Mタンパク質)の検出、貧血、高カルシウム血症、腎不全、及び崩壊性の骨髄疾患がMMの臨床所見であるのに対し、MGUSは臨床的にはMMの他の臨床特徴を伴わない血清または尿中のMタンパク質の存在として認識される(例えばKyle and Lust(1989)Semin.Hematol.26:176−200;Greipp and Lust Stem Cells(1995)13:10−21参照)。MGUS患者は無症候性であり、Mタンパク質の安定した測定値を有している(Kyle(1993)Mayo Clinic.Proc.68:26−36)。MGUSが対象に発見されれば、本発明の適切な医薬組成物、例えば本明細書に開示した拮抗剤抗CD40抗体を含む組成物を用いた維持療法がこれらの対象における多発性骨髄腫の発症をブロックする場合がある。
【0143】
特に本発明の医薬組成物は第1選択肢の癌療法治療に対して難治性である(即ち抵抗性であるか、又は抵抗性となっている)B細胞リンパ腫、例えば上記したものを治療するために有用である。「癌療法」という用語は癌の治療、例えば化学療法、手術、放射線療法、単一の抗癌抗体療法、及びこれらの組み合わせを意味する。CD40L媒介CD40シグナリングを調節する、ADCCを調節する、又はその両方である抗CD40抗体1つ以上を用いた治療介入が必要である患者のサブ集団が存在する。
【0144】
本発明の医薬組成物はまた非B細胞関連の血液学的悪性疾患を治療するためにも有用である。そのような悪性疾患は、限定しないが急性白血病;骨髄芽球性白血病;急性骨髄性白血病;前骨髄性白血病;骨髄単球性白血病;単球性白血病;赤白血病;顆粒球性白血病(慢性骨髄性白血病);真性赤血球増加症等を包含する。
【0145】
CD40発現新生物細胞を含み、このため本発明の医薬組成物を用いた治療に有利に応答する固形腫瘍は、限定しないが卵巣、肺(例えば扁平上皮細胞癌、腺癌、及び第細胞癌腫の型の非小細胞肺癌;及び小細胞肺癌)、乳房、肝臓(例えば肝細胞癌を包含する)、胃、支給警部、前立腺、鼻咽頭、甲状腺(例えば甲状腺乳頭状癌)、皮膚癌、例えば黒色腫、及び肉腫、例えば骨肉腫及びユーイング肉腫を包含する。
【0146】
癌又は前悪性の状態を有する対象に本発明の医薬組成物を投与することにより達成できる有利な結果はその癌又は状態に関する何らかの正の治療応答を包含する。「正の治療応答」とは、癌治療に関する場合、抗CD40治療薬の抗腫瘍活性に関連する疾患の改善及び/又は目的の疾患に伴う症状の改善を意図している。即ち、抗増殖作用、更に腫瘍が派生することの防止、腫瘍サイズの低減、癌細胞数の低減、及び/又はCD40発現細胞の刺激により媒介される症状1つ以上の低下が観察される。即ち、例えば、正の治療応答とは疾患における以下の改善点、即ち、(1)腫瘍サイズの低減;(2)癌(新生物)細胞数の低減;(3)新生物細胞の死滅の増大;(4)新生物細胞の生存の抑制;(4)腫瘍生育の抑制(即ち、ある程度までの緩徐化、好ましくは停止);(5)周辺臓器内への癌細胞の浸潤の抑制(即ち、ある程度までの緩徐化、好ましくは停止);(6)腫瘍転移の抑制(即ち、ある程度までの緩徐化、好ましくは停止);(7)更に腫瘍が派生することの防止;(8)患者生存率の増大;及び(9)癌に伴う症状1つ以上のある程度までの緩解、の1つ以上を指す。何れかの所定の悪性疾患における正の治療応答はその悪性疾患に特化された標準化された応答の基準により測定できる。腫瘍の応答はスクリーニング手法、例えば磁気共鳴画像化(MRI)スキャン、X線撮影画像化、コンピューター断層撮影(CT)、骨スキャン画像化、内視鏡撮影、及び腫瘍生検試料採取、例えば骨髄吸引(BMA)及び循環系中の腫瘍細胞の計数を用いながら腫瘍形態(即ち全体的腫瘍負荷、腫瘍サイズ等)の変化に関して試験することができる。これらの正の治療応答の他に、本発明の拮抗剤抗CD40抗体含有医薬組成物を用いた治療を受けている対象は疾患に伴う症状の改善の有利な作用を経験する場合がある。即ちB細胞腫瘍に関しては、対象はいわゆるB症状、即ち寝汗、発熱、体重減少、及び/又は蕁麻疹の低下を経験する場合がある。前悪性状態に関しては、抗CD40治療薬を用いた治療は関連の悪性状態の発症、例えば意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)に罹患した対象における多発性骨髄腫の発症をブロック及び/又はそれに至る時間を延長する場合がある。
【0147】
「抗炎症活性」とは、炎症の低減又は防止を意図している。本発明の拮抗剤抗CD40抗体含有液体医薬組成物を用いた治療は疾患にCD40抗原を発現する細胞が関与している場合の自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患の治療に関して有利である生理学的応答を誘発する。本発明の組成物は増殖、活性化などのような細胞における表現型の変化を防止する場合に有用である。
【0148】
本発明の拮抗剤抗CD40抗体含有液体医薬組成物を用いた治療介入を受けている対象はCD40発現細胞上のCD40シグナリングにより媒介される何れかの炎症性または自己免疫性の疾患に罹患しているか、発症又は再発の危険性がある場合がある。炎症性疾患は炎症及び組織の破壊又はこれらの組み合わせを特徴とする。「炎症性疾患」は自己免疫応答の開始事象又は標的に非自己抗原、例えば同種抗原、異種抗原、ウィルス抗原、細菌抗原、未知抗原又はアレルゲンが関与している何れかの炎症性の免疫媒介性のプロセスを包含する。
【0149】
更に又、本発明の目的のためには「炎症性疾患」という用語は「自己免疫疾患」を包含する。本明細書においては、「自己免疫」という用語は一般的に「自己」抗原が関与する炎症性免疫媒介のプロセスを包含すると理解される。自己免疫疾患においては、自己抗原が宿主免疫応答をトリガーする。
【0150】
更に又、本発明の医薬組成物は組織移植片拒絶に関連する炎症の治療のために使用できる。「移植片拒絶」又は「移植組織拒絶」とは移植片、例えば限定しないがHLA抗原、血液型群抗原等を包含するがこれらに限定されない移植片に対しての、何れかの宿主性の免疫応答を指す。
【0151】
本発明の医薬組成物は又対宿主性移植片病、例えば骨髄移植に関連する者の治療のために有用である場合がある。そのような対宿主性移植片病において、ドナーの骨髄はリンパ球及び成熟してリンパ球となる細胞を包含する。ドナーのリンパ球はレシピエントの抗原を非自己として認識し、炎症免疫応答を生じさせる。従って、本明細書においては、「対宿主性移植片病」又は「対宿主性移植片反応」とはドナーリンパ球が宿主の抗原に反応する何れかのT細胞媒介免疫応答を指す。
【0152】
自己免疫性及び/又は炎症性の疾患の例は、限定しないが全身エリテマトーデス(SLE)、円板状エリテマトーデス、ループス腎炎、サルコイドーシス、炎症性関節炎、例えば若年性関節炎、慢性関節リューマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎、及び痛風性関節炎、臓器又は組織の移植片の拒絶、超急性、急性又は慢性の拒絶及び/又は対宿主性移植片病、多発性硬化症、高IgE症候群、結節性多発性動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病(グルテン感受性腸症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、硬皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス症、橋本甲状腺炎、免疫複合体病、慢性疲労性免疫機能不全症候群(CFIDS)、多発性筋炎及び皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓崩壊、心筋症、尋常性天疱瘡、肺間質性腺維症、I型及びII型の真性糖尿病、1、2、3及び4型遅延過敏症、アレルギー又はアレルギー性障害、治療用タンパク質に対する望ましくない/意図しない免疫応答(例えば米国特許出願US2002/0119151及びKoren等(2002)Curr.Pharm.Biotechnol.3:349−60参照)、喘息、チャーグ−ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性及び刺激性の接触皮膚炎、蕁麻疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化症、血管炎、特発性炎症性ミオパシー、溶血性疾患、アルツハイマー病、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害等を包含する。一部の実施形態においては、本発明の医薬組成物は肺の炎症、例えば限定しないが、肺の移植片拒絶、喘息、サルコイドーシス、肺気腫、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎及び肺のアレルギー性疾患、例えば過敏性肺炎、好酸球性肺炎、骨髄及び/又は肺の移植又は他の原因による閉塞性細気管支炎、移植片のアテローム性動脈硬化症/移植片の静脈硬化症、並びにコラーゲンに起因する肺線維症、血管及び自己免疫性の疾患、例えば慢性関節リューマチ及びエリテマトーデスに対して個体を治療するために使用される。
【0153】
他の実施形態においては、本発明の医薬組成物は、CD40L媒介CD40シグナリングのモジュレーション、ADCCのモジュレーション、又は両方を介するものではない作用様式を有する他の既知治療法に対して初期に抵抗性であるか抵抗性を発生させる自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療するために有用である。本発明の医薬組成物はCD40L媒介CD40シグナリングを調節するか、ADCCを調節するか、両方である拮抗剤抗CD40抗体1つ以上を用いた治療介入が望ましい患者のサブ集団を治療するために有用である場合がある。
【0154】
炎症性疾患又は自己免疫疾患を有する対象に本発明の医薬組成物を投与することにより達成できる有利な結果はその疾患に関する何れかの正の治療応答を包含する。「正の治療応答」とは、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患に関する場合、これらの抗体又はその抗原結合フラグメントの抗炎症活性に関連する疾患の改善、及び/又は疾患に関連する症状の改善を意図している。即ち、抗増殖作用、CD40発現細胞の追加的増殖の防止、炎症応答の低減、例えば限定しないが炎症性サイトカイン、接着分子、補欠分子族、免疫グロブリン(CD40担持細胞がB細胞の場合)、これらの組み合わせ等の分泌の低減、抗炎症タンパク質の生産増大、自己反応性細胞の数の低減、免疫耐容性の増大、自己反応性細胞の生存の抑制、及び/又はCD40発現細胞の刺激により媒介される症状1つ以上の低下が観察できる。そのような正の治療応答は投与経路に限定されず、ドナー、ドナー組織(例えば臓器灌流)、宿主、これらの何れかの組み合わせなどへの投与を含んでよい。
【0155】
臨床応答はスクリーニング手法、例えば磁気共鳴画像化(MRI)スキャン、X線撮影画像化、コンピューター断層撮影(CT)、フローサイトメトリー又は蛍光活性化細胞ソーター(FACS)分析、組織学、肉視的病理学、及び血液科学、例えば限定しないがELISA、RIA、クロマトグラフィー等により検出可能な変化を用いて試験できる。これらの正の治療応答のほかに、本発明の拮抗剤抗CD40抗体含有液体医薬組成物による治療を受けている対象は疾患に関連する症状における改善の有利な作用を経験する場合がある。
【0156】
以下の実施例は説明のために提示しており、限定するものではない。
【実施例】
【0157】
CHIR−12.12はCHO細胞培養プロセスにより製造される完全ヒト化抗CD40IgG1モノクローナル抗体である。分子は150kDaの分子量を有し、分子構造はジスルフィド結合により共に連結された重鎖2つ及び軽鎖2つより成る。CHIR−12.12はヒトCD40細胞表面受容体タンパク質をターゲティングする。これは強力な拮抗剤であり、正常B細胞のインビトロのCD40リガンド媒介増殖を抑制、並びにNHL及びCLL患者由来の癌細胞のインビトロのCD40リガンド媒介増殖を抑制する。CHIR−12.12抗体を発現するハイブリドーマ系統153.8E2.D10.D6.12.12(CMCC#12056)は特許寄託番号PTA−5543の下に2003年9月17日にAmerican Type Culture Collection[ATCC;10801 University Blvd.,Manassas,Virginia20110−2209(USA)]に寄託されている。
【0158】
理論に制約されないが、CHIR−12.12抗体は属性の独特の組み合わせを有する二重作用性の拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体である。この完全ヒトモノクローナル抗体はB細胞の生存及び増殖のためのCD40L媒介CD40シグナリング経路をブロックし;この亀甲作用は究極的には細胞死をもたらす。CHIR−12.12は又エフェクター細胞による認識及び結合を媒介し、抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を開始させる。CHIR−12.12がエフェクター細胞に結合すると細胞溶解酵素が放出され、B細胞のアポトーシス及び溶解をもたらす。
【0159】
CHIR−12.12の生物学的活性及びそれを測定するために使用される試験に関するより詳細な説明に関しては、仮出願である表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2003年11月4日、2003年11月26日及び2004年4月27日のもの、及び、譲渡された各々の米国特許出願60/517,337(代理人案件番号PP20107.001(035784/258442))、60/525,579(代理人案件番号PP20107.002(035784/271525))、及び60/565,710(代理人案件番号PP20107.003(035784/277214))、及び国際出願PCT/US2004/037152(代理人案件番号PP20107.004(035784/282916))、同様に、表題「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」、出願日2004年11月4日、WO2005/044854として公開されたものを参照できる。同様に国際公開WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、及びWO2005/044294も参照でき;その内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。更に又、仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Proliferative Disorders Mediated by CD40 Signaling」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,285(代理人案件番号PP028035.0002(035784/304312))、及び相当する国際出願PCT/US2006/019414(代理人案件番号PP028035.0003(035784/311611))、出願日2006年5月18日、WO2006/125143として公開;及び仮出願である表題「Methods for Diagnosis and Treatment of Diseases Having an Autoimmune and/or Inflammatory Component」、出願日2005年12月9日、及び譲渡された米国特許出願60/749,336(代理人案件番号PP028062.0002(035784/304311))、及び相当する国際特許出願(代理人案件番号PP028062.0003(035784/311608))、出願日2006年5月18日、WO2006/125117として公開されたものに記載された試験も参照でき;これらの各々の内容は参照として全てが本明細書に組み込まれる。
【0160】
CHIR−12.12の主要な臨床適用は、B細胞関連悪性疾患、例えば慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫(MM)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)、及びCD40発現細胞に関連する自己免疫及び/又は炎症性の疾患の治療である。臨床治験用のCHIR−12.12薬品は液体製剤中20mg/mLCHIR−12.12抗体において製剤される。以下の試験は最適な緩衝液、等張性付与剤、及び液体製剤中の抗体を安定化させるための種々の賦形剤を決定するために実施した。
【0161】
実施例1:CHIR−12.12の安定化に対する種々の緩衝物質種及びメチオニンの作用
溶液の条件(例えばpH、緩衝物質種、及びイオン強度)及び賦形剤(例えば界面活性剤及び安定化剤)は液体製剤中のタンパク質の安定性のための重要な要因である。CHIR−12.12の物理化学的安定性はpH5.5において最適となる。しかしながらCHIR−12.12タンパク質は望ましくない溶液条件下では凝集形成及びフラグメント化を介して分解する場合があり;更に又、特に過酸化物の夾雑物及び/又はTweenのような生原料賦形剤と共に導入される金属の痕跡量の存在下において、酸化する場合もある。以下の実験は最適pH5.5において製剤した場合に、凝集形成、フラグメント化及び酸化に対抗してCHIR−12.12を安定化させるための最良の鑑賞物質種及び適切な賦形剤を発見するために実施した。
【0162】
材料
試験のためのCHIR−12.12薬品物質(DS)ロットはCHO誘導精製バルクのロット#CD021105A及びロット#PD010705Aであった。DSロットはXoma,Ltd(Berkeley,CA)において製造された。本試験のための製剤試料は該当する緩衝溶液に対するDSの透析とその後のTween所望量の強制添加により調製した。全試料中のCHIR−12.12タンパク質の濃度は約20mg/mlであった。
【0163】
分析方法
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
SEC−HPLCは分子量が低下する順序で分子を分離する。その結果、CHIR−12.12凝集体はHPLCカラムから溶出する最初のものであり、その後、単量体が続き最後にフラグメントが溶出する。CHIR−12.12の純度、凝集及びフラグメント化は、0.7mL/分の流量において移動相として50mMリン酸ナトリウム、200mMNaCl、pH7.0を用いながらTosohaasTSK−GEL3000SWX1カラムを有するWaters AllianceHPLCにより分析した。
【0164】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)
CHIR−12.12の酸化はWaterAlliance HPLCシステムを用いながらToshoTSKゲルブチル−NPRカラム、移動相Aとしての2M硫酸アンモニウム/20mMTris、pH7.0、及び移動相Bとしての20mMTris、pH7.0を用いて流量1.0ml/分で測定した。CHIR−12.12抗体をパパインで消化することによりFabおよびFcフラグメントが生じる。CHIR−12.12の酸化生成物は酸化Fcフラグメント(metSO)であり、これはHPLCカラムから主要なFab物質種と主要なFc物質種の間に溶出する前Fc物質種である。
【0165】
実験及び結果
凝集及びフラグメント化に対するクエン酸塩緩衝液の安定化作用
DSロット#PD010705Aに由来するCHIR−12.12を150mMNaCl、0.1%(w/v)Tween80及びpH5.5において、10mMのクエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、又はリン酸塩の緩衝溶液中20mg/mlで製剤した。製剤試料は3ccのガラスバイアル内に1.2ml溶液として充填し、5℃、25℃および40℃において保存した。CHIR−12.12安定性試料はSEC試験により所定の時点において分析した。
【0166】
図1〜3は25℃で保存した試料における、それぞれ純度、凝集体及びフラグメントに関するSEC分析を示す。図4〜6は40℃で保存した試料における、それぞれ純度、凝集体及びフラグメントに関するSEC分析をまとめたものである。すべてのけkkはクエン酸塩系の製剤試料が試験した4製剤のうちで最も高い純度及び最も低い凝集及びフラグメント化のレベルを維持していたことを示している。5か月を通じて5℃で保存した試料については殆ど変化が観察されなかったが(データ示さず)、加速SECデータは、クエン酸塩緩衝液が他の3つの一般的に使用されている緩衝物質種よりも凝集及びフラグメント化に対抗してCHIR−12.12の長期リアルタイム安定性を改善する場合に優秀であると考えられることを予測している。
【0167】
CHIR−12.12に対するクエン酸塩緩衝液の酸化抑制作用
CHIR−12.12安定性試料を0.1%及び0.2%(w/v)のTween80を用いながらクエン酸塩、酢酸塩及びコハク酸塩中に調製した。試料を5℃、25℃および40℃において保存し、所定の時点において酸化に関して疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により分析した。CHIR−12.12の酸化生物はPreFcピーク物質種の合計のパーセント、すなわちPre−Fc%として測定した。表1に示す結果はクエン酸塩系の製材がコハク酸塩及び酢酸塩の緩衝製剤よりも少ない酸化生成物を形成し、クエン酸塩緩衝液がCHIR−12.12の酸化を最小限としたことを示している。これらの結果は、クエン酸が恐らくはキレート形成剤として作用することによりCHIR−12.12タンパク質の微量金属誘導酸化を抑制したことを示唆している。
【0168】
SEC及びHIC分析は凝集及びフラグメント化からCHIR−12.12を保護する場合にコハク酸塩、酢酸塩及びリン酸塩緩衝物質種よりもクエン酸塩緩衝液が優れていることを示している。クエン酸塩緩衝液は又CHIR−12.12タンパク質の酸化を最小限にすることから、コハク酸塩及び酢酸塩の緩衝液よりも優れている。
【0169】
表1 HIC試験により測定した場合のCHIR−12.12(20mg/ml)の酸化に対する緩衝物質種の作用
【0170】
【表1】
N/D:測定せず。
【0171】
CHIR−12.12に対するL−メチオニンの酸化抑制作用
DSロット#CD010705Aを10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mMNaCl、0.1%Tween80又はTween20、並びに種々の量(0〜5mM)のL−メチオニン中、20mg/mlに製剤した。製剤試料は3ccのガラスバイアル内に2.5mlを充填し、40℃において保存した。表2は初期及び40℃3か月における試料に関するHIC結果を示す。初期においては全製剤中のCHIR−12.12の酸化は元のバルク薬品物質(DS)ロット#CD010705Aと同等であった。L−メチオニンを含有しない製剤における酸化のレベルは40℃3か月では倍加を超過していた。しかしながらL−メチオニンを含有する製剤における酸化のレベルは40℃における3か月の保存中を通して殆ど変化していなかった。
【0172】
結果は5mMのL−メチオニンが高ストレス保存条件下のCHIR−12.12の酸化の防止において有効かつ十分であることを示している。CHIR−12.12に対するL−メチオニンの酸化抑制作用はLyc−ペプチドマップにより確認した。
【0173】
表2 CHIR−12.12の酸化に対するL−メチオニンの抑制作用
【0174】
【表2】
N/D:測定せず。
【0175】
総括すれば、クエン酸塩緩衝液はCHIR−12.12の凝集、フラグメント化及び酸化最小限とし、これによりCHIR−12.12液体製剤のための最適な緩衝液となっている。L−メチオニンはCHIR−12.12の酸化を効果的に抑制し、5mMのL−メチオニンが好ましい。
【0176】
実施例2:CHIR−12.12に対する塩酸アルギニンの安定化作用
以下の試験は静脈内注入を介した投与を意図した液体医薬組成物として製剤されたCHIR−12.12の長期保存安定性のために張力付与剤および安定化剤を選択することを目的とした。タンパク質の非経腸製品に対してはNaClが最も一般的に使用されている張力付与剤であるが、抗体治療薬に対しては最適な安定化作用を有していない。本試験は水性製剤中のCHIR−12.12に対する塩化ナトリウム及びアルギニンの酸性形態(塩酸アルギニン)の比較対照させた安定化作用に関して報告する。
【0177】
CHIR−12.12バルク抗体薬品物質をCHIR−12.12液体製剤に対して295mOsm/kgの目標浸透圧重量モル濃度を達成するために150mMNaCl又は150mM塩酸L−アルギニンのいずれかを用いながらクエン酸塩緩衝液中pH5.5において製剤した。示差走査熱量測定(DSC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC)、SDS−PAGE及びカチオン交換HPLC(CIEX−HPLC)を用いてCHIR−12.12抗体の生物物理的及び/又は生物化学的な安定性を評価した。試験は150mMの塩酸L−アルギニンがCHIR−12.12水性製剤に等張性を付与するのみならず、凝集、フラグメント化及び脱アミド化に対抗してCHIR−12.12の立体構造的安定性を増大させることを示した。塩酸L−アルギニンは加速安定性試験条件下においてNaClよりも優れていることが証明された。更に又、加速安定性データはCHIR−12.12塩酸L−アルギニン製剤に関してより長期のシェルフライフを予測させている。
【0178】
材料
本試験のために使用したCHIR−12.12薬品物質(DS)はCHO誘導精製バルクのロット#CD021105Aであった。DSロットはXoma Ltd(Berkeley,CA)において製造された。
【0179】
DSロット由来のCHIR−12.12を以下の製剤において使用した。
製剤1:20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mMNaCl、0.1%Tween80及びpH5.5
製剤2:20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mM塩酸L−アルギニン、0.1%Tween80及びpH5.5
分析方法
示差走査熱量測定(DSC)
CHIR−12.12製剤試料の立体構造的安定性は、MicroCalVP−DSCを用いながら、1℃/分で15℃〜90℃に加熱することにより評価した。
【0180】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC)
CHIR−12.12の純度、凝集、及びフラグメント化は、0.7mL/分の流量において移動相として50mMリン酸ナトリウム、200mMNaCl、pH7.0を用いながらTosohaasTSK−GEL3000SWXLカラムを有するWaters AllianceHPLCにより分析した。
【0181】
SDS−PAGE(非還元及び還元)
CHIR−12.12の純度もまた非還元及び還元条件下において12%Tris−グリシンゲルを用いながら評価した。タンパク質はクーマシーブルー染色により検出した。
【0182】
カチオン交換HPLC(CIEX−HPLC)
CHIR−12.12の電荷変化関連脱アミド化は、Dionex PropacWCX−10カラムを有するWaterAlliance HPLCシステム、移動相Aとしての50mMHEPES、pH7.3及び移動相Bとしての500mMNaCl含有50mMHEPES、pH7.3を用いながら、0.8ml/分の流量で測定した。
【0183】
以下に後述する結果のセクションにおいて言及する図面における略記に対する略語一覧を示す。
コハク酸塩、NaCl,0.1%Tw80=10mMコハク酸ナトリウム/コハク酸緩衝液、150mMNaCl、0.1%Tween 80,pH5.5
クエン酸塩、NaCl,0.1%Tw80=10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤、150mMNaCl、0.1%Tween 80,pH5.5
酢酸塩、NaCl,0.1%Tw80=10mM酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液、150mMNaCl、0.1%Tween 80,pH5.5
リン酸塩、NaCl,0.1%Tw80=10mM2塩基性リン酸ナトリウム/1塩基性リン酸ナトリウム緩衝液、150mMNaCl、0.1%Tween 80,pH5.5
クエン酸塩、Arg,0.1%Tw80=10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤、150mM塩酸L−アルギニン、0.1%Tween 80,pH5.5
結果
示差走査熱量測定(DSC)
図7は上記「材料」のセクションにおいて記載した2種の製剤中のCHIR−12.12のDSCセオグラムを示す。CHIR−12.12の熱的展開(thermal unfolding)は少なくとも2つの熱遷移を呈し、恐らくはそれぞれFab及びFcドメインの展開/融解を示していると考えられる。より高温においては、タンパク質はおそらくは凝集し、DSCシグナルの損失をもたらす。本試験においては、最低の熱遷移温度は融解温度Tmとして定義した。塩酸L−アルギニン含有製剤はNaCl含有製剤よりも高値のTmを呈し、塩酸L−アルギニンがNaClを用いた場合よりも高い立体構造的安定性を有するCHIR−12.12を与えることが示唆された。
【0184】
SEC−HPLC分析
6か月まで5℃でインキュベートしたのち、SEC−HPLCによれば塩酸L−アルギニン及びNaCl含有製剤中ではタンパク質の凝集体およびフラグメントの量は無視できる程度であり(<0.5%)、2種の製剤の間には安定性にほとんど差がなかった(データ示さず)。加速保存条件下、即ち25℃6か月においては、塩酸L−アルギニン含有製剤は図8に示す通りより高値のパーセントの単量体を含有していた。単量体に費やされたため、凝集体およびフラグメントの含量は両方とも保存時間とともに緩徐に増大した。しかしながら、塩酸L−アルギニン含有製剤が発生した凝集体及びフラグメンはそれぞれ図9及び10に示す通りNaCl含有製剤よりも少量であった。同様に、40℃で保存した場合、塩酸L−アルギニン含有製剤はそれぞれ図11、12及び13に示す通り、NaCl含有製剤の場合よりも高値のパーセントの単量体及び低値のパーセントの凝集体及びフラグメントを示していた。40℃4カ月保存により、塩酸L−アルギニン含有製剤では残存単量体91.8%、凝集体1.7%、及びフラグメント6.5%であったのに対し、NaCl含有製剤の場合は、単量体87.9%、凝集体2.2%、及びフラグメント9.9%であった。SEC−HPLCの結果は塩酸L−アルギニンはNaClと比較して、CHIR−12.12タンパク質の安定性を向上させることを示している。
【0185】
SDS−PAGE(非還元及び還元)
表3は非還元(NR)及び還元(R)条件下に分析した塩酸L−アルギニン及びNaCl含有製剤に関するSDS−PAGEの結果を示す。CHIR−12.12の純度は非還元条件下の主要バンドのパーセントとして、又は、還元条件下の重鎖及び軽鎖の合計のパーセントとして測定した。ゼロ時を除き、塩酸L−アルギニン含有製剤は非還元及び還元条件下の両方においてNaCl含有製剤の場合よりも高値の純度を示した。SDS−PAGEの観察結果はNaClよりも塩酸L−アルギニンがCHIR−12.12の安定性を増大させたSEC−HPLCの結果と合致していた。
【0186】
表3 SDS−PAGE分析による塩酸L−アルギニンとNaClの比較
【0187】
【表3】
CIEX−HPLC分析
CIEX−HPLCは酸性の変異体が主要ピーク物質種の前に溶出し、、塩基性の変異体が主要ピーク物質種の後に溶出するように電荷に基づいて分子を分離する。CHIR−12.12の純度及びその脱アミド化産物の含有量をそれぞれ主要ピークのパーセント及び酸性変異体のパーセントとして測定した。
【0188】
図14、15及び16はそれぞれ、2種の製剤中の純度、脱アミド化産物の含有量、及び塩基性変異体の含有量を示す。ゼロ時においては、2種の製材は純度68.6%及び脱アミド化産物15.5%並びに塩基性変異体15.9%を有していた。25℃で保存した場合、塩酸L−アルギニン含有製剤はNaCl含有製剤よりも高値の純度及び高値の塩基性変異体含有量を有しており、低いパーセントの脱アミド化産物を示した。25℃6カ月保存時には、塩酸L−アルギニン含有製剤は純度47.3%、塩基性変異体12.5%、及び生成した脱アミド化産物40.0%を有していたのに対し、NaCl含有製剤は純度45.6%、塩基性変異体11.7%、及び脱アミド化産物42.7%を有していた。塩酸L−アルギニン及びNaCl含有製剤は5℃で6カ月保存中を通じてほとんど変化を示さなかったが、加速保存条件(25℃)下のCIEX−HPLCの結果は、塩酸L−アルギニンが脱アミド化に対抗してCHIR−12.12の長期リアルタイム安定性を改善する場合にNaClよりも優秀であると考えられることを予測している。
【0189】
総括すれば、本試験は150mM塩酸L−アルギニンがCHIR−12.12液体製剤に等張性を付与するのみならず、凝集、フラグメント化及び脱アミド化に対抗してCHIR−12.12の立体構造的安定性を増大させることを示している。塩酸L−アルギニンは加速安定性試験条件下においてNaClよりも優れており、、加速安定性データはCHIR−12.12塩酸L−アルギニン製剤に関してより長期のシェルフライフを予測させている。
【0190】
実施例3:凍結保存由来のCHIR−12.12バルク薬品物質の凝集を最小限とする場合のTween80及びTween20の作用
CHIR−12.12バルク薬品物質の凍結保存は幾つかの理由、例えば向上した製品の安定性及びシェルフライフ、低下した微生物生育、並びに輸送中の発泡の排除などのために、液体保存よりも好ましい。しかしながら凍結及びその後の解凍は、氷/液体の界面及び溶液の濃度勾配をもたらすことにより、タンパク質溶液にストレスをもたらす場合がある。ストレスはタンパク質を変成させ、凝集、及び悪い例においては目視可能な粒子又は沈殿物の形成をもたらす場合がある。タンパク質の凝集体は低減した薬剤の力価及び増大した免疫原性を伴う場合が多いため、タンパク質製剤の成分及び凍結解凍条件を最適化することにより凝集を最小限とすることは極めて重要である。
【0191】
製剤賦形剤、例えば糖類、多価アルコール、アミノ酸、及び界面活性剤は恐らくはタンパク質及び抗体を凝集に対抗して安定化させることができる。1つのモノクローナル抗体試験において、数種の一般的に使用されている糖類、多価アルコール、及びアミノ酸が凍結解凍誘発性の凝集体形成の低減において界面活性剤よりも有効であることが分かっている。しかしながら、CHIR−12.12を用いた早期の試験は糖類(例えばトレハロース)、多価アルコール(例えばソルビトール)、又はアミノ酸(例えばグリシン)を単独で使用した場合には凍結及び解凍の間のCHIR−12.12の凝集を有意に低減できなかったことを示している。
【0192】
本試験は凍結及び解凍の間のCHIR−12.12の凝集を最小限とするための製剤方法に着目している。この態様において、CHIR−12.12の凍結解凍誘導性の凝集を最小限にするために種々の界面活性剤を評価した。実際に凍結されているCHIR−12.12薬品物質が本試験で評価するように多数回の凍結解凍のサイクル反復を経験することは考えにくいが、広範な凍結解凍ストレス試験は、長期の保存及び輸送の間に偶発的に多数回の凍結及び解凍が起こったとした場合に、製剤バルク薬品が凝集する潜在的可能性を予測するために使用される最悪事例のシナリオの評価となる。
【0193】
材料
CHIR−12.12バルクDSロット#UA7870、#TC23−2、#UB1291、#PD010705A、及び#CD083005Aを本試験のために使用した。Tween80、Tween20、Brij35、及びプルロニックF68はそれぞれ、Sigma、J.T.Baker、Alfa Aesar及びMediaTechCellgroより購入した。CHIR−12.12薬品物質の凍結保存用のポリカーボネート(PC)ビンはNalgeneから購入した。
【0194】
方法
対照試料を除いて、全ての他の試料は−20℃及び−60℃における完全凍結とその後の多数サイクル反復する周囲温度における完全解凍に付した。
【0195】
これらの分析方法は単量体から目視可能な凝集体までの範囲のCHIR−12.12タンパク質を検出するために使用した。目視による観察は目視可能な粒子を検出するためのTyndalライト(M.W.Technologiies,Inc.)の下で実施した。液体粒子計数システム(HIAC/Royco)を用いて≧10μmおよび≧25μmの目視可能に至らない凝集体を計数した。動的光散乱分析器(MalvernNanoSeries)を用いて単量体及び凝集体の流体力学的直径及び粒径分布を測定した。
【0196】
目視可能な粒子の評価
凍結解凍試験のための試料はCHIR−12.12薬品物質ロット#UA7870及び#TC23−2から作成した。全試料は10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mMNaCl、及びpH5.5の緩衝溶液中、透析とその後の種々のパーセント(0〜0.5%w/v)の以下のノニオン系界面活性剤、即ちTween80、Tween20、Brij35、及びプルロニックF68の1つを添加することにより製剤した。2.5mlの各試料をガラスバイアル中に充填し、−60℃で一夜凍結し、最大8サイクルまで周囲温度において完全解凍した。初期(ゼロ時)及び各凍結解凍サイクル後の試料を透明性及び目視可能な沈殿/凝集体に関して目視的に検査した。
【0197】
目視可能に至らない粒子の計数
CHIR−12.12薬剤物質ロット#UB1291及び#PD010705Aを溶液(20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mMNaCl、pH5.5)中に製剤し、その後0〜0.5%(w/v)のTween80又はTween20を添加した。製剤試料20mlの小分量ずつを125ccのポリカーボネートのビンに充填し、−60℃凍結及び周囲温度解凍に付した。凍結解凍5サイクルの後、HIAC−Royco液体粒子計数システムを用いて≧10μm及び≧25μmの目視可能に至らない凝集体に関して試料を測定した。
【0198】
動的光散乱分析
5サイクルの凍結解凍の前後において、製剤(20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mM塩酸L−アルギニン、5mML−メチオニン、0〜0.2%Tween20及びpH5.5)を動的光散乱分析器を用いて凝集体に関して評価した。
【0199】
動的光散乱(DLS)スペクトル分析器はストークス−アインシュタインの方程式及び粒子が球形であるという仮定を用いながら、粒子の拡散係数測定値から単量体及び凝集体を包含する粒子の流体力学的直径を計算する。凝集体物質種の数および多分散性もまたDLS試験から求められる。
【0200】
結果
目視可能な粒子の評価
表4は目視による観察の結果を総括したものである。凍結解凍サイクルを開始する前であるゼロ時において、試料は全て僅かに不透明であるが目視可能な凝集体/沈殿は含有していなかった。1回の凍結解凍サイクルの後、界面活性剤無添加の製剤全てにおいて、Tween80を0〜0.05%(w/v)含有する製剤において、及び0〜0.1%(w/v)Brij35を含有する製剤において、並びに0〜0.5%(w/v)プルロニックF68を含有する試料において、数個の目視可能な凝集体/沈殿が形成していた。0.0%〜0.5%(w/v)Tween20を含有する試料には凍結解凍8サイクル全体に渡って如何なる凝集体及び沈殿も観察されなかった。このことは、Tween20は多数回の凍結解凍サイクルに起因する大型の不溶性凝集体の形成を防止することにおいてTween80よりも有効であることを示唆している。Brij35及びプルロニックF68はTween80及びTween20よりもはるかに低有効性であった。
【0201】
表4 界面活性剤の種々の濃度を用いた場合のクエン酸塩緩衝製剤におけるCHIR−12.12の目視的外観
【0202】
【表4】
注:XFT=凍結解凍サイクル数;SO=僅かに不透明;ppt=沈澱/凝集体。
【0203】
目視可能に至らない粒子の計数
表5は種々の濃度のTween80を含有するクエン酸塩/クエン酸緩衝製剤のml当たりの目視可能に至らない凝集体の計数値を示す。Tween80濃度の上昇に伴って目視可能に至らない粒子の計数値の低下傾向が観察され、目視可能に至らない粒子の計数の低下はTween80が0.1%(w/v)を超えている場合に顕著さが低下し、Tween80の使用に関する適切な濃度は0.1〜0.2%(w/v)であることが示唆された。
【0204】
表5 20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mMNaCl、及び種々の濃度(0〜0.2%)のTween80をpH5.5で含有する製剤における目視可能に至らない粒子の計数
【0205】
【表5】
表6は種々の濃度のTween20含有又は非含有のクエン酸塩/クエン酸緩衝製剤のml当たりの目視可能に至らない凝集体の計数値を示す。製剤中のTween20添加により凝集体計数は大きく低減した。Tween20が0.05%(w/v)以上になった時点で、目視可能に至らない凝集体の計数値の低下はほぼ平衡状態に達し、Tween20の適切な濃度は約0.05〜0.2%(w/v)であることが示唆された。
【0206】
表6 20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mMNaCl、及び種々の濃度(0〜0.2%)のTween20をpH5.5で含有する製剤における目視可能に至らない粒子の計数
【0207】
【表6】
更に又、表5及び表6はTween80及びTween20含有製剤の両方において≧25μmの凝集体の形成は殆ど無く、Tween20含有製剤ではTween80含有製剤の場合よりも≧10μm凝集体が少数であることが5サイクルの凍結解凍後に観察されたことを示している。結果はCHIR−12.12クエン酸塩/クエン酸緩衝製剤における目視可能に至らない凝集体の形成を最小限とすることにおいてはTween20がTween80より効果的であることを示している。
【0208】
表4,5及び6における結果に基づけば、CHIR−12.12製剤における凝集体の形成を最小限にするためにはTween20がTween80より好ましい賦形剤となる。従って、な試験を実施することによりCHIR−12.12製剤における凝集体の形成を防止するために必要なT20の濃度を最適にするために追加的な試験を実施した。製剤(20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mM塩酸L−アルギニン、5mML−メチオニン、0〜0.2%Tween20、pH5.5)をCHIR−12.12薬品物質ロット#CD083005Aから調製した。20mlの製剤試料を125ccのポリカーボネートのビンに充填し、−20℃凍結及び周囲温度解凍に付した。凍結解凍5サイクルの前後において、HIAC−Royco液体粒子計数器を目視可能に至らない粒子の計数値について製剤試料を測定した。結果を表7に総括する。
【0209】
表7 20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mM塩酸L−アルギニン、5mML−メチオニン、0〜0.2%Tween20をpH5.5で含有する製剤における目視可能に至らない粒子の計数
【0210】
【表7】
注:XFT=凍結解凍サイクル数。
【0211】
凍結解凍5サイクルの後、塩酸L−アルギニン及びL−メチオニンを含有する試料は塩酸L−アルギニン及びL−メチオニンを含有しない製剤よりもはるかに少数の凝集体を形成し、即ち、169粒子/ml≧10μmであったのに対し、Tween20非存在下においては1439又は1671粒子/ml≧10μmであった(表6及び7参照)。しかしながら、Tween20を導入するまでは、塩酸L−アルギニン及びL−メチオニンは凍結解凍誘導凝集体を最低レベルまで有意に低下させることはなかった。このことは塩酸L−アルギニン及びL−メチオニンはCHIR−12.12の凍結解凍誘導凝集を最小限とするためには十分効果的ではないことを示唆している。
【0212】
表5〜7に総括したデータから、0.025〜0.1%(w/v)Tween20を含有する凍結解凍試料の目視可能に至らない凝集体の計数値は凍結解凍サイクル実施前の対応する試料と同等であり続けた。このことは塩酸L−アルギニン及びL−メチオニンと組み合わせてTween20を含有する製剤は最小限の目視可能に至らない凝集体を形成したことを示している。即ち、Tween20は凍結及び解凍の間の目視可能に至らない凝集体の形成からCHIR−12.12を効果的に回避させる製剤中の賦形剤である。Tween20の有効濃度は0.025〜0.1%(w/v)であると決定された。
【0213】
動的光散乱分析
表8はCHIR−12.12の粒子の平均の流体力学的直径、多分散性及び単量体物質種のパーセント強度を示す。動的光散乱分析は単量体物質種の100%強度で示されるとおり、凍結解凍の5サイクルの前後における全試料において唯一の単量体物質種のみを検出している。このことは全試料が主に単量体よりなるものであったことを示唆している。凍結乾燥試験5サイクルの後、流体力学的直径及び多分散性の増大により示される通り、Tween20を含有しない、0.005%(w/v)Tween20を含有する試料中では、数個の凝集体(恐らくは2量体又は3量体)が単量体と共存していると考えられる。0.025〜0.1%(w/v)Tween20を含有する試料は流体力学的直径及び多分散性の値の変化を殆ど示しておらず、それらがそれほど凝集体形成をすることなく単量体の以前のレベルであり続けたことを示している。
【0214】
表8 20mg/mlCHIR−12.12、10mMクエン酸ナトリウム/クエン酸、150mM塩酸L−アルギニン、5mML−メチオニン、及び種々の濃度(0〜0.2%)のTween20をpH5.5で含有する製剤における凍結解凍5サイクルの前後のCHIR−12.12の動的光散乱分析
【0215】
【表8】
注:FT=凍結解凍;XFT=凍結解凍サイクル数。
【0216】
目視による観察、目視可能に至らない粒子の計数値、及び動的光散乱分析に基づけば、凍結解凍誘導性の凝集体の形成からCHIR−12.12を回避させるためのTween20の最適濃度は0.025〜0.1%(w/v)であると決定された。
【0217】
総括すれば、Tween20及びTween80の両方とも凍結及び解凍の間のCHIR−12.12の凝集を最小限とすることが分かった。Tween20及びTween80の最適濃度はそれぞれ0.025〜0.1%(w/v)及び0.1〜0.2(w/v)%であった。Tween20が及びTween80よりも有効であった点は、より低濃度のTween20が凝集体形成の数及び程度をより低いレベルまで低減した点である。本試験は好ましくは塩酸L−アルギニン及びL−メチオニンと組み合わせたTweenの最適濃度の添加が有意な凝集を伴うことなく−20℃以下においてクエン酸塩/クエン酸緩衝CHIR−12.12バルク薬品物質の保存を可能にすることを示している。
【0218】
実施例4:抗CD40抗体の拮抗剤活性に関する試験
抗CD40抗体の拮抗剤活性を評価するために以下の試験を使用することができる。これらの試験のためのヒトB細胞は例えば本質的にDe Groot等(1990)Lymphokine Research(1990)9:321に記載されている通り、扁桃腺切除術を受けた個体から得られた扁桃腺から単離することにより得ることができる。慨すれば、組織をメスの刃を用いて分散させ、貪食細胞及びNK細胞を5mML−ロイシンメチルエステル処理により枯渇させ、臭化2−アミノエチルイソチオウロニウムで処理したヒツジ赤血球(SRBC)とのロゼット形成1サイクルによりT細胞を除去する。得られたBリンパ球プレパレーションの純度は抗(CD20)mAbB1(Coulter Clone,Hialeah,FA)又は抗(CD3)mAbOKT3(Ortho,Raritan,NJ)及びウサギ抗(マウスIg)のFITC共役F(ab’)2フラグメント(Zymed,San Francisco,CA)を用いた間接的免疫蛍光標識及びFACS分析により確認できる。
【0219】
B細胞増殖試験
B細胞(ウェル当たり4x104)を平底96穴マイクロプレート中10%うし胎児血清を添加した200μlのIMDM中で培養する。固定化抗(IgM)抗体(イムノビーズ;5μg/ml;BioRad,Richmond,California)を添加することによりB細胞を刺激する。所望により100U/mlの組み換えIL−2を添加する。種々の濃度の被験モノクローナル抗体(mAb)をマイクロ培養物発生時に添加し、第3日に18時間パルス処理後の(3H)チミジンの取り込みの測定により増殖を評価する。
【0220】
拮抗剤抗CD40抗体は固定化された抗IgMの存在下、又は固定化された抗IgM及びIL−2の存在下においてヒトB細胞増殖を有意に同時刺激しない。
【0221】
Banchereau様B細胞増殖試験
Banchereau等(1989)Science251:70に記載されたものと類似の培養系においてB細胞増殖を刺激する抗CD40モノクローナル抗体の能力に関して試験するために、ヒトFcγRIIのHR対立遺伝子型を発現するマウス3T6トランスフェクション体を使用する。B細胞(ウェル当たり2x104)を10%ウシ胎児血清及び100U/ml組み換えIL−4を添加した200μlのIMEM中、1x104のトランスフェクション体細胞(5000Radで照射)の存在下に平底マイクロウェル中で培養する。B細胞添加の前に、3T6細胞を少なくとも5時間培養プラスチックに接着させる。抗CD40mAbを15ng/ml〜200ng/mlの種々の濃度で添加し、B細胞の増殖を第7日に[3H]チミジンによる18時間パルス処理後のチミジン取り込みの測定により評価する。
【0222】
拮抗剤抗CD40mAbを用いたS2C6刺激B細胞増殖の抑制
拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体(mAb)はまた上記したB細胞増殖試験を用いながらS2C6(正常B細胞の増殖のCD40刺激のアゴニストとも報告されているSGN−14としても知られている;Francisco等(2000)Cancer Res.60:3225−3231)のような抗CD40抗体によるB細胞増殖の刺激を抑制するそれらの能力により特性化することもできる。ヒト扁桃腺B細胞(4x104)をセファロースビーズにカップリングさせた抗IgM(5μg/ml)及び抗CD40mAbS2C6(1.25μg/ml)の存在下にマイクロウェル中200μl中で培養する。種々の濃度の目的の抗CD40を添加し、[3H]チミジン取り込みを3日後に試験する。対照として抗(グルコセレブロシダーゼ)mAb8E4を同濃度において添加できる。Barneveldら(1983)Eur.J.Biochem.134:585。拮抗剤抗CD40抗体は例えば少なくとも75%以上mAbS2C6による抗IgM誘導ヒトB細胞増殖の同時刺激を抑制できる(即ち、拮抗剤抗CD40抗体存在下のS2C6刺激増殖は拮抗剤抗CD40抗体非存在下に観察されるものの25%以下である)。これとは対照的に、β−グルコセレブロシダーゼに対して指向された非関連のmAb8E4の等量を用いた場合には有意な抑制は観察されない。Barneveld等、上出。このような結果は、抗CD40mAbはヒトB細胞の増殖のための刺激シグナルは送達しないが、逆に、別のmAbでCD40をトリガーすることにより生じる刺激シグナルを抑制することができることを示している。
【0223】
EL4B5細胞を用いたB細胞活性化試験
Zubler等(1985)J.Immunol.(1985)134:3662の観察によれば、EL4B5として知られているマウス胸腺腫EL−4系統の突然変異体サブクローンは、ネズミ及びヒトの両方の起源のB細胞が増殖して免疫グロブリン分泌プラズマ細胞に分化することをインビトロで強力に刺激することができる。この活性化は、抗原非依存性であり、MHC制限性ではないことがわかっている。ヒトB細胞の最適な刺激のためには、活性化ヒトT細胞由来の上澄みの存在が必要であったが、B細胞応答は又EL4B5細胞をホルボール−12−ミリステート13−アセテート(PMA)又はIL−1で予備活性化した場合にも起こっている。Zubler等(1987)Immunological Reviews 99:281;及びZhang等(1990)J.Immunol.144:2955。この培養系におけるB細胞活性化は効率的であり、限界希釈法による実験ではヒトB細胞の大多数が活性化されて増殖し、抗体分泌細胞に分化した。Wen等(1987)Eur.J.Immunol.17:887。
【0224】
B細胞(ウェル当たり100)を10%熱不活性化ウシ胎児血清、5ng/mlホルボール−12−ミリステート13−アセテート(Sigma)及び5%ヒトT細胞上澄みを添加した200μlのIMDM中、平底マイクロウェル中で照射(5000Rad)EL4B5細胞(ウェル当たり5x104)とともに培養する。培養開始時にmAbを種々の濃度で添加し、第6日に[3H]チミジンによる18時間パルス処理後のチミジン取り込みを試験する。T細胞上澄みの調製のためには、精製したT細胞を1μg/mlPHA及び10ng/mlPMAの存在下に36時間106/mlの密度で培養する。Wen等(1987)Eur.J.Immunol.(1987)17:887。T細胞上澄みは細胞を遠心分離することにより得られ、−20℃において保存する。EL4B5細胞培養におけるヒトB細胞の増殖を増強する場合のT細胞上澄みの有効性を試験し、最も有効な上澄みを実験で使用するためにプールする。EL4B5誘導ヒトB細胞増殖に対する抗CD40抗体の作用を試験する場合は、MOPC−141(IgG2b)のようなモノクローナル抗体を対照として加えることができる。
【0225】
拮抗剤抗CD40抗体は例えば少なくとも75%以上EL4B5細胞系統により刺激されたB細胞増殖を抑制できる(即ち、拮抗剤抗CD40抗体存在下のEL4B5誘導B細胞増殖は拮抗剤抗CD40抗体非存在下に観察されるものの25%以下である)。これとは対照的に、MOPC−141のような対照抗体はEL4B5誘導B細胞増殖に対して有意な作用を有さない。
【0226】
B細胞による抗体生産に関するヒトT細胞ヘルパー試験
拮抗剤抗CD40抗体はB細胞による免疫グロブリン生産の拮抗剤として機能できる。抗CD40抗体はこの型の拮抗剤活性に関して、T細胞ヘルパー試験において活性化されたT細胞により接触依存性の態様において刺激されているB細胞による免疫グロブリン生産を抑制する抗体の能力を評価することにより試験できる。この態様において、96穴組織培養プレートを抗CD3mAbCLB−T3/3の復水1:500希釈物でコーティングした(CLB、Amsterdam、The Neterlands)。記載通り、」同時刺激性のmAb、即ち、抗CD2mAbCLB−T11.1/1及びCLB−T11.2/1た(CLB、Amsterdam、The Neterlands)、両方の復水1:1000、及び抗CD28mAbCLB−28/1(CLB、Amsterdam、The Neterlands)を添加する。その後、扁桃腺T細胞(照射、3000Rad;ウェル当たり105)、扁桃腺B細胞(ウェル当たり104)、及びrIL−2(20U/ml)を添加した。各細胞培養物の最終容量は200μlとする。8日後、細胞を回転沈降させ、細胞非含有上澄みを採取する。(希釈した)試料中のヒトIgM及びIgGの濃度は後述する通りELISAにより推定する。
【0227】
1つの実施形態においては、ヒト扁桃腺B細胞(105/ウェル)を照射された精製T細胞(3000Rad;105/ウェル)とともに、抗CD3mAbでコーティングされた96穴プレート中、異なるmAbの存在下又は非存在下において培養することによりT細胞を同時刺激した。培養8日間の後、上澄みを採取してB細胞による免疫グロブリン生産の測定に付す。B細胞による免疫グロブリン生産は後述するELISAにより試験する。目的の抗CD40抗体を培養開始時から種々の濃度で添加する。対照としてmAbMOPC−141を添加できる。
【0228】
拮抗剤抗CD40抗体は少なくとも50%以上ヒトT細胞により刺激されたB細胞のIgG及びIgM抗体生産を抑制できる(即ち、拮抗剤抗CD40抗体存在下のB細胞によるT細胞誘導抗体生産は拮抗剤抗CD40抗体非存在下に観察されるものの50%以下である)。これとは対照的に、MOPC−141のような対照抗体はB細胞によるT細胞誘導抗体生産に対して有意な作用を有さない。
【0229】
免疫グロブリン定量のためのELISA試験
ヒトIgM及びIgGの濃度はELISAにより推定される。96穴ELISAプレートを4℃で16時間インキュベートすることにより4μg/mlのマウス抗ヒトIgGmAbMH16−01(CLB,Amsterdam,The Netherlands)又は1.2μg/mlのマウス抗ヒトIgMMab4102(Tago,Burlinga,e.CA)でコーティングする。プレートをPBS−0.05%Tween20(PBS−Tween)で3回洗浄し、1時間BSAで飽和させる。2回洗浄後、プレートを被験試料の種々の希釈度で37℃1時間インキュベートする。3回洗浄後、結合したIgを1μg/mlのパーオキシダーゼ標識マウス抗ヒトIgGmAbMH16−01(CLB)又はマウス抗ヒトIgMmAbMH15−01(CLB)とともに、37℃で1時間インキュベートすることにより検出する。プレートを4回洗浄し、結合パーオキシダーゼ活性を気質としてO−フェニレンジアミンを添加することにより顕在化する。ヒト標準血清(H00,CLB)を用いて各試験に関する標準曲線を確立する。
【0230】
本明細書においては、単数表記の物品は物品の文法的対象1つ又は1つより多く(即ち少なくとも1つ)を指す。例えば「要素」とは1つ以上の要素を意味する。
【0231】
本明細書において言及した全ての公開物及び特許出願は本出願関連する技術の当業者の水準を示している。全ての公開物及び特許出願は、各個別の公開物又は特許出願が特に個別に参照として本明細書に組み込まれることを示す場合と同程度に参照として本明細書に組み込まれる。
【0232】
上記した本発明は理解の明確化の目的のために説明および例示により一部詳細に説明したが、特定の変更及び改変は添付請求項の範囲内で実施されることは明らかである。
【0233】
【数1】
【0234】
【数2】
【0235】
【数3】
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1】図1はSEC−HPLC分析により測定した場合の3ヶ月間又は5ヶ月間25℃において採点されたmAbCHIR−12.12製剤の純度に対する緩衝物質種の作用を示す。
【図2】図2はSEC−HPLC分析により測定した場合の3ヶ月間又は5ヶ月間25℃において採点された種々の抗体製剤内におけるmAbCHIR−12.12の凝集体形成に対する緩衝物質種の作用を示す。
【図3】図3はSEC−HPLC分析により測定した場合の3ヶ月間又は5ヶ月間25℃において採点された種々の抗体製剤内におけるmAbCHIR−12.12のフラグメント化に対する緩衝物質種の作用を示す。
【図4】図4はSEC−HPLC分析により測定した場合の3ヶ月間又は5ヶ月間40℃において採点されたmAbCHIR−12.12製剤の純度に対する緩衝物質種の作用を示す。
【図5】図5はSEC−HPLC分析により測定した場合の3ヶ月間又は5ヶ月間40℃において採点された種々の抗体製剤内におけるmAbCHIR−12.12の凝集体形成に対する緩衝物質種の作用を示す。
【図6】図6はSEC−HPLC分析により測定した場合の3ヶ月間又は5ヶ月間40℃において採点された種々の抗体製剤内におけるmAbCHIR−12.12のフラグメント化に対する緩衝物質種の作用を示す。
【図7】図7は等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12に関する示差走査熱量測定のサーモグラムを示す。
【図8】図8はSEC−HPLC分析により測定した場合の2、4又は6ヶ月間25℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中に残存するmAbCHIR−12.12の%単量体形態を示す。
【図9】図9はSEC−HPLC分析により測定した場合の2、4又は6ヶ月間25℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%凝集体を示す。
【図10】図10はSEC−HPLC分析により測定した場合の2、4又は6ヶ月間25℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%フラグメントを示す。
【図11】図11はSEC−HPLC分析により測定した場合の2又は4ヶ月間40℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中に残存するmAbCHIR−12.12の%単量体形態を示す。
【図12】図12はSEC−HPLC分析により測定した場合の2又は4ヶ月間40℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%凝集体を示す。
【図13】図13はSEC−HPLC分析により測定した場合の2又は4ヶ月間40℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%フラグメントを示す。
【図14】図14はCIEX−HPLC分析により測定した場合の2、4又は6ヶ月間25℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%純度を示す。
【図15】図15はCIEX−HPLC分析により測定した場合の2、4又は6ヶ月間25℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%酸性変異体を示す。
【図16】図16はCIEX−HPLC分析により測定した場合の2、4又は6ヶ月間25℃において採点された等張性付与剤としてNaCl又は塩酸L−アルギニンの何れかを含有する製剤中のmAbCHIR−12.12の%塩基性変異体を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定な液体医薬組成物であって、以下:
(a)治療上又は予防上活性な成分としての拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体であって、該モノクローナル抗体はヒトB細胞の表面上に発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合することができ、該モノクローナル抗体は該B細胞の表面上に発現されるCD40抗原に結合している場合に有意なアゴニスト活性を有さない、抗体;
(b)該組成物をほぼ等張性とするために十分な量の酸性形態でのアルギニン(塩酸アルギニン);及び、
(c)約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に該組成物のpHを維持するための緩衝剤であって、該緩衝剤はクエン酸塩/クエン酸緩衝剤である、緩衝剤;
を含む、安定な液体医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物が約240mmol/kg〜約360mmol/kgの浸透圧重量モル濃度を有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記緩衝剤の濃度が約5mM〜約100mMである請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記緩衝剤の濃度が約5mM〜約20mMである請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記緩衝剤の濃度が約10mMである請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記緩衝剤がクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤である請求項1〜5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が約5.5のpHを有する請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が約50mM〜約200mMの濃度において塩酸アルギニンを含む請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が約100mM〜約175mMの濃度において塩酸アルギニンを含む請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が約150mMの濃度において塩酸アルギニンを含む請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記緩衝剤の濃度が約5mM〜約20mMである請求項8記載の組成物。
【請求項12】
前記緩衝剤がクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり、該緩衝剤の濃度が約10mMであり、前記組成物が約pH5.5のpHを有する請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が約150mMの濃度において塩酸アルギニンを含む請求項12記載の組成物。
【請求項14】
更に界面活性剤を含む請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記界面活性剤がポリソルベート20である請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記界面活性剤が約0.001%〜約1.0%(w/v)の濃度のポリソルベート20である請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が約0.025%〜約0.1%(w/v)の濃度でポリソルベート20を含む請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物の保存中、前記抗CD40モノクローナル抗体における酸化され得るアミノ酸残基少なくとも1つの酸化を抑制するために十分な量のメチオニンをさらに含む請求項1又は請求項14記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が約0.5mM〜約20.0mMの濃度においてメチオニンを含む請求項18記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が約1.0mM〜約20.0mMの濃度においてメチオニンを含む請求項19記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が約5.0mMの濃度においてメチオニンを含む請求項20記載の組成物。
【請求項22】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が下記:
a)モノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株5.9又は12.12により生産されるモノクローナル抗体;
c)配列番号6に示される配列、配列番号7に示される配列、配列番号8に示される配列、配列番号6及び配列番号7に示される配列の双方、及び配列番号6及び配列番号8に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2及び配列番号4に示される配列の双方、及び配列番号2及び配列番号5に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
e)配列番号1に示される配列、配列番号3に示される配列、及び配列番号1及び配列番号3に示される配列の双方よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
f)ハイブリドーマ細胞株5.9又は12.12により生産されるモノクローナル抗体を結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号10又は配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)配列番号10又は配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
i)競合的結合試験においてモノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
j)前述の項目a)のモノクローナル抗体又は前述の項目c)〜i)の何れか1つのモノクローナル抗体であって、該抗体は組み換え産生される、抗体;及び、
k)前述の項目a)〜j)の何れか1つのモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、該フラグメントは前記ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体;
よりなる群から選択される請求項1〜21の何れか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記フラグメントがFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、及び単鎖Fvフラグメントから選択される請求項22記載の組成物。
【請求項24】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が約0.1mg/ml〜約50.0mg/mlの濃度において前記組成物中に存在する請求項1〜23の何れか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が約1.0mg/ml〜約35.0mg/mlの濃度において前記組成物中に存在する請求項24記載の組成物。
【請求項26】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が約10.0mg/ml〜約35.0mg/mlの濃度において前記組成物中に存在する請求項25記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が少なくとも18カ月の期間、約2℃〜約8℃の温度で安定である請求項1記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が少なくとも3か月の期間約25℃で安定である請求項1記載の組成物。
【請求項29】
治療上又は予防上活性な成分としての拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体、約50mM〜約200mMの濃度における酸性形態でのアルギニン(塩酸アルギニン);および約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に該組成物のpHを維持するための緩衝剤を含む安定な液体医薬組成物であって、該緩衝剤は約5mM〜約20mMの濃度のクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり、該拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が下記:
a)モノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株5.9又は12.12により生産されるモノクローナル抗体;
c)配列番号6に示される配列、配列番号7に示される配列、配列番号8に示される配列、配列番号6及び配列番号7に示される配列の双方、及び配列番号6及び配列番号8に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2及び配列番号4に示される配列の双方、及び配列番号2及び配列番号5に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
e)配列番号1に示される配列、配列番号3に示される配列、及び配列番号1及び配列番号3に示される配列の双方よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
f)ハイブリドーマ細胞株5.9又は12.12により生産されるモノクローナル抗体を結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号10又は配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)配列番号10又は配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
i)競合的結合試験においてモノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
j)前述の項目a)のモノクローナル抗体又は前述の項目c)〜i)の何れか1つのモノクローナル抗体であって、該抗体は組み換え産生される、抗体;及び、
k)前述の項目a)〜j)の何れか1つのモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、該フラグメントはヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体;
よりなる群から選択される安定な液体医薬組成物。
【請求項30】
前記フラグメントがFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、及び単鎖Fvフラグメントから選択される請求項29記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物が約150mMの濃度における塩酸アルギニンを含み、前記緩衝剤が約5mM〜約20mMの濃度におけるクエン酸ナトリウム/クエン酸であり、該組成物が約5.0〜約6.0のpH及び約250mmol/kg〜約330mmol/kgの浸透圧重量モル濃度を有する請求項29記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物が更にメチオニン、ポリソルベート20、又はメチオニンとポリソルベート20の両方を含み、該メチオニンは、存在する場合には、約0.5mM〜約20.0mMの濃度において該組成物中に存在し、該ポリソルベート20は、存在する場合には、約0.025%〜約0.1%(w/v)の濃度において該組成物中に存在する、請求項29記載の組成物。
【請求項33】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が約10.0mg/ml〜約35.0mg/mlの濃度において前記組成物中に存在する請求項29〜32の何れか1項に記載の組成物。
【請求項34】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体がモノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12である請求項33記載の組成物。
【請求項35】
CD40発現細胞に関連する癌又は前悪性状態を有する対象を治療するための方法であって、該方法が請求項1〜34の何れか1項に記載の医薬組成物の薬学的有効量を投与することを含む、方法。
【請求項36】
前記癌が新生物性B細胞生育を特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記癌が非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、中悪性度B細胞リンパ腫、低悪性度B細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、ホジキン病、プラズマ細胞腫、濾胞性リンパ腫、濾胞性小型切れ込み核リンパ腫、濾胞性大細胞型リンパ腫、濾胞性混合型小型切れ込み核リンパ腫、びまん性核切れ込み小細胞型リンパ腫、びまん性小リンパ球性リンパ腫、前リンパ性白血病、リンパプラズマ細胞性リンパ腫、辺縁層リンパ腫、粘膜関連リンパ様組織リンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、脾臓性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、びまん性大細胞型リンパ腫、縦隔大B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、血管内リンパ腫症、びまん性混合型細胞リンパ腫、びまん性大細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫、エイズ関連リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、マントル細胞リンパ腫、及び重鎖疾患よりなる群から選択される請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記癌が非B細胞血液学的悪性疾患である請求項35記載の方法。
【請求項39】
前記悪性疾患が急性白血病、骨髄芽球性白血病、急性骨髄性白血病、前骨髄性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、慢性骨髄性白血病、及び真性赤血球増加症よりなる群から選択される請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記癌がCD40抗原を発現する新生物細胞を含む固形腫瘍である請求項35記載の方法。
【請求項41】
前記固形腫瘍が肺癌、乳癌、卵巣癌、皮膚癌、結腸癌、膀胱癌、肝臓癌、胃癌、前立腺癌、腎細胞癌、鼻咽頭癌、扁平上皮細胞癌、甲状腺乳頭状癌、子宮頸癌、及び肉腫よりなる群から選択される請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記前悪性状態が意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)である請求項35記載の方法。
【請求項43】
CD40発現細胞に関連する炎症性疾患又は自己免疫疾患を有する対象を治療するための方法であって、該方法が請求項1〜34の何れか1項に記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項44】
前記炎症性疾患又は自己免疫疾患が全身エリテマトーデス(SLE)、円板状エリテマトーデス、ループス腎炎、サルコイドーシス、若年性関節炎、慢性関節リューマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎、痛風性関節炎、臓器又は組織の移植片の拒絶、対宿主性移植片病、多発性硬化症、高IgE症候群、結節性多発性動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病(グルテン感受性腸症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、硬皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス症、橋本甲状腺炎、免疫複合体病、慢性疲労性免疫機能不全症候群(CFIDS)、多発性筋炎及び皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓崩壊、心筋症、尋常性天疱瘡、肺間質性腺維症、サルコイドーシス、I型及びII型の真性糖尿病、1、2、3及び4型遅延過敏症、アレルギー又はアレルギー性障害、喘息、チャーグ−ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性及び刺激性の接触皮膚炎、蕁麻疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化症、血管炎、特発性炎症性ミオパシー、溶血性疾患、アルツハイマー病、及び慢性炎症性脱髄性多発性神経障害よりなる群から選択される請求項43記載の方法。
【請求項45】
液体医薬組成物中の抗CD40モノクローナル抗体の安定性を増大させるための方法であって、該方法が、該抗CD40モノクローナル抗体、該組成物をほぼ等張性とするために十分な量の塩酸アルギニン、及び約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に該組成物のpHを維持するための緩衝剤を組み合わせることにより該組成物を製剤することを含み、該緩衝剤はクエン酸塩/クエン酸緩衝剤である、方法。
【請求項46】
抗CD40モノクローナル抗体を含む液体医薬組成物を調製するための方法であって、該方法が、該抗CD40モノクローナル抗体、該組成物をほぼ等張性とするために十分な量の酸性形態でのアルギニン(塩酸アルギニン)、及び約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に該組成物のpHを維持するための緩衝剤を組み合わせることにより該組成物を製剤することを含み、該緩衝剤はクエン酸塩/クエン酸緩衝剤である、方法。
【請求項47】
前記組成物が約240mmol/kg〜約360mmol/kgの浸透圧重量モル濃度を有する請求項45又は46記載の組成物。
【請求項48】
前記緩衝剤の濃度が約5mM〜約100mMであり、約50mM〜約200mMの塩酸アルギニンを前記抗CD40モノクローナル抗体及び該緩衝剤と組み合わせる、請求項45又は46記載の組成物。
【請求項49】
前記緩衝剤の濃度が約5mM〜約20mMであり、約100mM〜約175mMの塩酸アルギニンを前記抗CD40モノクローナル抗体及び該緩衝剤と組み合わせる請求項48記載の組成物。
【請求項50】
前記緩衝剤の濃度が約10mMであり、約150mMの塩酸アルギニンを前記抗CD40モノクローナル抗体及び該緩衝剤と組み合わせる請求項49記載の組成物。
【請求項51】
前記緩衝剤がクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤である請求項45〜50の何れか1項に記載の組成物。
【請求項52】
前記組成物が約5.5のpHを有する請求項51記載の組成物。
【請求項53】
前記組成物が更にメチオニン、ポリソルベート20、又はメチオニンとポリソルベート20の両方を含むように製剤され、該メチオニンは、存在する場合には、約0.5mM〜約20.0mMの濃度において該組成物中に存在し、該ポリソルベート20は、存在する場合には、約0.025%〜約0.1%(w/v)の濃度において該組成物中に存在する請求項45又は46記載の方法。
【請求項54】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が下記:
a)モノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株5.9又は12.12により生産されるモノクローナル抗体;
c)配列番号6に示される配列、配列番号7に示される配列、配列番号8に示される配列、配列番号6及び配列番号7に示される配列の双方、及び配列番号6及び配列番号8に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2及び配列番号4に示される配列の双方、及び配列番号2及び配列番号5に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
e)配列番号1に示される配列、配列番号3に示される配列、及び配列番号1及び配列番号3に示される配列の双方よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
f)ハイブリドーマ細胞株5.9又は12.12により生産されるモノクローナル抗体を結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号10又は配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)配列番号10又は配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
i)競合的結合試験においてモノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
j)上記項目a)のモノクローナル抗体又は前述の項目c)〜i)の何れか1つのモノクローナル抗体であって、該抗体は組み換え産生される、抗体;及び、
k)前述の項目a)〜j)の何れか1つのモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、前記フラグメントは前記ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体;
よりなる群から選択される請求項45〜53の何れか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記フラグメントがFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、及び単鎖Fvフラグメントから選択される請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が約0.1mg/ml〜約50.0mg/mlの濃度において前記組成物中に存在する請求項45〜55の何れか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が約10.0mg/ml〜約35.0mg/mlの濃度において前記組成物中に存在する請求項56記載の方法。
【請求項58】
治療上又は予防上活性な成分としてのモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9又はその抗原結合フラグメント、約50mM〜約200mMの濃度の酸性形態でのアルギニン(塩酸アルギニン)、及び約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に該組成物のpHを維持するための緩衝剤であって、該緩衝剤は約5mM〜約20mMの濃度のクエン酸塩/クエン酸緩衝剤である、緩衝剤、を含む、安定な液体医薬組成物。
【請求項59】
CD40発現細胞に関連する癌又は前悪性状態を有する対象を治療するための方法であって、前記方法が請求項58記載の医薬組成物の薬学的有効量を投与することを含む、方法。
【請求項60】
CD40発現細胞に関連する炎症性疾患又は自己免疫疾患を有する対象を治療するための方法であって、該方法が請求項58記載の医薬組成物の薬学的有効量を投与することを含む、方法。
【請求項61】
液体医薬組成物におけるモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9又はその抗原結合フラグメントの安定性を増大させるための方法であって、該方法が、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと、約50mM〜約200mMの酸性形態でのアルギニン(塩酸アルギニン)、及び約pH5.0〜約pH7.0に該組成物のpHを維持するための緩衝剤であって、該緩衝剤は約5mM〜約20mMの濃度のクエン酸塩/クエン酸緩衝剤である、緩衝剤、とを組み合わせることにより該組成物を製剤することを含む、方法。
【請求項62】
モノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメントを含む液体医薬組成物を調製するための方法であって、該方法が、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと、約50mM〜約200mMの酸性形態でのアルギニン(塩酸アルギニン)、及び約pH5.0〜約pH7.0に該組成物のpHを維持するための緩衝剤であって、該緩衝剤は約5mM〜約20mMの濃度のクエン酸塩/クエン酸緩衝剤である、緩衝剤、とを組み合わせることにより該組成物を製剤することを含む、方法。
【請求項1】
安定な液体医薬組成物であって、以下:
(a)治療上又は予防上活性な成分としての拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体であって、該モノクローナル抗体はヒトB細胞の表面上に発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合することができ、該モノクローナル抗体は該B細胞の表面上に発現されるCD40抗原に結合している場合に有意なアゴニスト活性を有さない、抗体;
(b)該組成物をほぼ等張性とするために十分な量の酸性形態でのアルギニン(塩酸アルギニン);及び、
(c)約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に該組成物のpHを維持するための緩衝剤であって、該緩衝剤はクエン酸塩/クエン酸緩衝剤である、緩衝剤;
を含む、安定な液体医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物が約240mmol/kg〜約360mmol/kgの浸透圧重量モル濃度を有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記緩衝剤の濃度が約5mM〜約100mMである請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記緩衝剤の濃度が約5mM〜約20mMである請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記緩衝剤の濃度が約10mMである請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記緩衝剤がクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤である請求項1〜5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が約5.5のpHを有する請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が約50mM〜約200mMの濃度において塩酸アルギニンを含む請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が約100mM〜約175mMの濃度において塩酸アルギニンを含む請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が約150mMの濃度において塩酸アルギニンを含む請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記緩衝剤の濃度が約5mM〜約20mMである請求項8記載の組成物。
【請求項12】
前記緩衝剤がクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり、該緩衝剤の濃度が約10mMであり、前記組成物が約pH5.5のpHを有する請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が約150mMの濃度において塩酸アルギニンを含む請求項12記載の組成物。
【請求項14】
更に界面活性剤を含む請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記界面活性剤がポリソルベート20である請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記界面活性剤が約0.001%〜約1.0%(w/v)の濃度のポリソルベート20である請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が約0.025%〜約0.1%(w/v)の濃度でポリソルベート20を含む請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物の保存中、前記抗CD40モノクローナル抗体における酸化され得るアミノ酸残基少なくとも1つの酸化を抑制するために十分な量のメチオニンをさらに含む請求項1又は請求項14記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が約0.5mM〜約20.0mMの濃度においてメチオニンを含む請求項18記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が約1.0mM〜約20.0mMの濃度においてメチオニンを含む請求項19記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が約5.0mMの濃度においてメチオニンを含む請求項20記載の組成物。
【請求項22】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が下記:
a)モノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株5.9又は12.12により生産されるモノクローナル抗体;
c)配列番号6に示される配列、配列番号7に示される配列、配列番号8に示される配列、配列番号6及び配列番号7に示される配列の双方、及び配列番号6及び配列番号8に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2及び配列番号4に示される配列の双方、及び配列番号2及び配列番号5に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
e)配列番号1に示される配列、配列番号3に示される配列、及び配列番号1及び配列番号3に示される配列の双方よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
f)ハイブリドーマ細胞株5.9又は12.12により生産されるモノクローナル抗体を結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号10又は配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)配列番号10又は配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
i)競合的結合試験においてモノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
j)前述の項目a)のモノクローナル抗体又は前述の項目c)〜i)の何れか1つのモノクローナル抗体であって、該抗体は組み換え産生される、抗体;及び、
k)前述の項目a)〜j)の何れか1つのモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、該フラグメントは前記ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体;
よりなる群から選択される請求項1〜21の何れか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記フラグメントがFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、及び単鎖Fvフラグメントから選択される請求項22記載の組成物。
【請求項24】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が約0.1mg/ml〜約50.0mg/mlの濃度において前記組成物中に存在する請求項1〜23の何れか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が約1.0mg/ml〜約35.0mg/mlの濃度において前記組成物中に存在する請求項24記載の組成物。
【請求項26】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が約10.0mg/ml〜約35.0mg/mlの濃度において前記組成物中に存在する請求項25記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が少なくとも18カ月の期間、約2℃〜約8℃の温度で安定である請求項1記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が少なくとも3か月の期間約25℃で安定である請求項1記載の組成物。
【請求項29】
治療上又は予防上活性な成分としての拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体、約50mM〜約200mMの濃度における酸性形態でのアルギニン(塩酸アルギニン);および約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に該組成物のpHを維持するための緩衝剤を含む安定な液体医薬組成物であって、該緩衝剤は約5mM〜約20mMの濃度のクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤であり、該拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が下記:
a)モノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株5.9又は12.12により生産されるモノクローナル抗体;
c)配列番号6に示される配列、配列番号7に示される配列、配列番号8に示される配列、配列番号6及び配列番号7に示される配列の双方、及び配列番号6及び配列番号8に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2及び配列番号4に示される配列の双方、及び配列番号2及び配列番号5に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
e)配列番号1に示される配列、配列番号3に示される配列、及び配列番号1及び配列番号3に示される配列の双方よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
f)ハイブリドーマ細胞株5.9又は12.12により生産されるモノクローナル抗体を結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号10又は配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)配列番号10又は配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
i)競合的結合試験においてモノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
j)前述の項目a)のモノクローナル抗体又は前述の項目c)〜i)の何れか1つのモノクローナル抗体であって、該抗体は組み換え産生される、抗体;及び、
k)前述の項目a)〜j)の何れか1つのモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、該フラグメントはヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体;
よりなる群から選択される安定な液体医薬組成物。
【請求項30】
前記フラグメントがFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、及び単鎖Fvフラグメントから選択される請求項29記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物が約150mMの濃度における塩酸アルギニンを含み、前記緩衝剤が約5mM〜約20mMの濃度におけるクエン酸ナトリウム/クエン酸であり、該組成物が約5.0〜約6.0のpH及び約250mmol/kg〜約330mmol/kgの浸透圧重量モル濃度を有する請求項29記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物が更にメチオニン、ポリソルベート20、又はメチオニンとポリソルベート20の両方を含み、該メチオニンは、存在する場合には、約0.5mM〜約20.0mMの濃度において該組成物中に存在し、該ポリソルベート20は、存在する場合には、約0.025%〜約0.1%(w/v)の濃度において該組成物中に存在する、請求項29記載の組成物。
【請求項33】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が約10.0mg/ml〜約35.0mg/mlの濃度において前記組成物中に存在する請求項29〜32の何れか1項に記載の組成物。
【請求項34】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体がモノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12である請求項33記載の組成物。
【請求項35】
CD40発現細胞に関連する癌又は前悪性状態を有する対象を治療するための方法であって、該方法が請求項1〜34の何れか1項に記載の医薬組成物の薬学的有効量を投与することを含む、方法。
【請求項36】
前記癌が新生物性B細胞生育を特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記癌が非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、中悪性度B細胞リンパ腫、低悪性度B細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、ホジキン病、プラズマ細胞腫、濾胞性リンパ腫、濾胞性小型切れ込み核リンパ腫、濾胞性大細胞型リンパ腫、濾胞性混合型小型切れ込み核リンパ腫、びまん性核切れ込み小細胞型リンパ腫、びまん性小リンパ球性リンパ腫、前リンパ性白血病、リンパプラズマ細胞性リンパ腫、辺縁層リンパ腫、粘膜関連リンパ様組織リンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、脾臓性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、びまん性大細胞型リンパ腫、縦隔大B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、血管内リンパ腫症、びまん性混合型細胞リンパ腫、びまん性大細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫、エイズ関連リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、マントル細胞リンパ腫、及び重鎖疾患よりなる群から選択される請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記癌が非B細胞血液学的悪性疾患である請求項35記載の方法。
【請求項39】
前記悪性疾患が急性白血病、骨髄芽球性白血病、急性骨髄性白血病、前骨髄性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、慢性骨髄性白血病、及び真性赤血球増加症よりなる群から選択される請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記癌がCD40抗原を発現する新生物細胞を含む固形腫瘍である請求項35記載の方法。
【請求項41】
前記固形腫瘍が肺癌、乳癌、卵巣癌、皮膚癌、結腸癌、膀胱癌、肝臓癌、胃癌、前立腺癌、腎細胞癌、鼻咽頭癌、扁平上皮細胞癌、甲状腺乳頭状癌、子宮頸癌、及び肉腫よりなる群から選択される請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記前悪性状態が意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)である請求項35記載の方法。
【請求項43】
CD40発現細胞に関連する炎症性疾患又は自己免疫疾患を有する対象を治療するための方法であって、該方法が請求項1〜34の何れか1項に記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項44】
前記炎症性疾患又は自己免疫疾患が全身エリテマトーデス(SLE)、円板状エリテマトーデス、ループス腎炎、サルコイドーシス、若年性関節炎、慢性関節リューマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎、痛風性関節炎、臓器又は組織の移植片の拒絶、対宿主性移植片病、多発性硬化症、高IgE症候群、結節性多発性動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病(グルテン感受性腸症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、硬皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス症、橋本甲状腺炎、免疫複合体病、慢性疲労性免疫機能不全症候群(CFIDS)、多発性筋炎及び皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓崩壊、心筋症、尋常性天疱瘡、肺間質性腺維症、サルコイドーシス、I型及びII型の真性糖尿病、1、2、3及び4型遅延過敏症、アレルギー又はアレルギー性障害、喘息、チャーグ−ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性及び刺激性の接触皮膚炎、蕁麻疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化症、血管炎、特発性炎症性ミオパシー、溶血性疾患、アルツハイマー病、及び慢性炎症性脱髄性多発性神経障害よりなる群から選択される請求項43記載の方法。
【請求項45】
液体医薬組成物中の抗CD40モノクローナル抗体の安定性を増大させるための方法であって、該方法が、該抗CD40モノクローナル抗体、該組成物をほぼ等張性とするために十分な量の塩酸アルギニン、及び約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に該組成物のpHを維持するための緩衝剤を組み合わせることにより該組成物を製剤することを含み、該緩衝剤はクエン酸塩/クエン酸緩衝剤である、方法。
【請求項46】
抗CD40モノクローナル抗体を含む液体医薬組成物を調製するための方法であって、該方法が、該抗CD40モノクローナル抗体、該組成物をほぼ等張性とするために十分な量の酸性形態でのアルギニン(塩酸アルギニン)、及び約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に該組成物のpHを維持するための緩衝剤を組み合わせることにより該組成物を製剤することを含み、該緩衝剤はクエン酸塩/クエン酸緩衝剤である、方法。
【請求項47】
前記組成物が約240mmol/kg〜約360mmol/kgの浸透圧重量モル濃度を有する請求項45又は46記載の組成物。
【請求項48】
前記緩衝剤の濃度が約5mM〜約100mMであり、約50mM〜約200mMの塩酸アルギニンを前記抗CD40モノクローナル抗体及び該緩衝剤と組み合わせる、請求項45又は46記載の組成物。
【請求項49】
前記緩衝剤の濃度が約5mM〜約20mMであり、約100mM〜約175mMの塩酸アルギニンを前記抗CD40モノクローナル抗体及び該緩衝剤と組み合わせる請求項48記載の組成物。
【請求項50】
前記緩衝剤の濃度が約10mMであり、約150mMの塩酸アルギニンを前記抗CD40モノクローナル抗体及び該緩衝剤と組み合わせる請求項49記載の組成物。
【請求項51】
前記緩衝剤がクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤である請求項45〜50の何れか1項に記載の組成物。
【請求項52】
前記組成物が約5.5のpHを有する請求項51記載の組成物。
【請求項53】
前記組成物が更にメチオニン、ポリソルベート20、又はメチオニンとポリソルベート20の両方を含むように製剤され、該メチオニンは、存在する場合には、約0.5mM〜約20.0mMの濃度において該組成物中に存在し、該ポリソルベート20は、存在する場合には、約0.025%〜約0.1%(w/v)の濃度において該組成物中に存在する請求項45又は46記載の方法。
【請求項54】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が下記:
a)モノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株5.9又は12.12により生産されるモノクローナル抗体;
c)配列番号6に示される配列、配列番号7に示される配列、配列番号8に示される配列、配列番号6及び配列番号7に示される配列の双方、及び配列番号6及び配列番号8に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2及び配列番号4に示される配列の双方、及び配列番号2及び配列番号5に示される配列の双方よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
e)配列番号1に示される配列、配列番号3に示される配列、及び配列番号1及び配列番号3に示される配列の双方よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
f)ハイブリドーマ細胞株5.9又は12.12により生産されるモノクローナル抗体を結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号10又は配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)配列番号10又は配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
i)競合的結合試験においてモノクローナル抗体CHIR−5.9又はCHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
j)上記項目a)のモノクローナル抗体又は前述の項目c)〜i)の何れか1つのモノクローナル抗体であって、該抗体は組み換え産生される、抗体;及び、
k)前述の項目a)〜j)の何れか1つのモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、前記フラグメントは前記ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体;
よりなる群から選択される請求項45〜53の何れか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記フラグメントがFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、及び単鎖Fvフラグメントから選択される請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が約0.1mg/ml〜約50.0mg/mlの濃度において前記組成物中に存在する請求項45〜55の何れか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記拮抗剤抗CD40モノクローナル抗体が約10.0mg/ml〜約35.0mg/mlの濃度において前記組成物中に存在する請求項56記載の方法。
【請求項58】
治療上又は予防上活性な成分としてのモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9又はその抗原結合フラグメント、約50mM〜約200mMの濃度の酸性形態でのアルギニン(塩酸アルギニン)、及び約pH5.0〜約pH7.0の範囲内に該組成物のpHを維持するための緩衝剤であって、該緩衝剤は約5mM〜約20mMの濃度のクエン酸塩/クエン酸緩衝剤である、緩衝剤、を含む、安定な液体医薬組成物。
【請求項59】
CD40発現細胞に関連する癌又は前悪性状態を有する対象を治療するための方法であって、前記方法が請求項58記載の医薬組成物の薬学的有効量を投与することを含む、方法。
【請求項60】
CD40発現細胞に関連する炎症性疾患又は自己免疫疾患を有する対象を治療するための方法であって、該方法が請求項58記載の医薬組成物の薬学的有効量を投与することを含む、方法。
【請求項61】
液体医薬組成物におけるモノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9又はその抗原結合フラグメントの安定性を増大させるための方法であって、該方法が、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと、約50mM〜約200mMの酸性形態でのアルギニン(塩酸アルギニン)、及び約pH5.0〜約pH7.0に該組成物のpHを維持するための緩衝剤であって、該緩衝剤は約5mM〜約20mMの濃度のクエン酸塩/クエン酸緩衝剤である、緩衝剤、とを組み合わせることにより該組成物を製剤することを含む、方法。
【請求項62】
モノクローナル抗体CHIR−12.12又はCHIR−5.9、又はその抗原結合フラグメントを含む液体医薬組成物を調製するための方法であって、該方法が、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと、約50mM〜約200mMの酸性形態でのアルギニン(塩酸アルギニン)、及び約pH5.0〜約pH7.0に該組成物のpHを維持するための緩衝剤であって、該緩衝剤は約5mM〜約20mMの濃度のクエン酸塩/クエン酸緩衝剤である、緩衝剤、とを組み合わせることにより該組成物を製剤することを含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2009−534401(P2009−534401A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506711(P2009−506711)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/066757
【国際公開番号】WO2007/124299
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【出願人】(500570793)ゾーマ テクノロジー リミテッド (26)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/066757
【国際公開番号】WO2007/124299
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【出願人】(500570793)ゾーマ テクノロジー リミテッド (26)
【Fターム(参考)】
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