説明

指令生成装置

【課題】基準軸の位置に同期させたセンサフィードバック制御を可能にするモータ駆動制御システムを実現するための指令生成装置を得る。
【解決手段】機械装置の状態をセンサ5で検出して機械装置を駆動するモータ4をセンサフィードバック制御するモータ制御装置3に対して、基準軸の位置とセンサフィードバック制御の指令値の対応関係を示す指令プロファイルに基づいて、基準軸の位置に対応したセンサフィードバック制御の指令値の詳細を演算して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ制御装置にモータを駆動制御するための指令を与える指令生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のモータ軸を備える機械装置において、1つのモータ軸(基準軸)と同期して1台または複数台のモータを駆動制御する方法として電子カム制御が知られている。電子カム制御によるモータ駆動制御のための指令の生成は、基準軸の位置に対する他のモータ軸(従動軸)の位置の対応関係をカムテーブルとして記憶しておき、このカムテーブルに基づいて基準軸の位置から従動軸の位置指令を生成するものである(例えば、特許文献1参照)。これにより、基準軸の位置に対して従動軸の位置が所定の対応関係を保ちながら動作するような同期制御を容易に実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−73147号公報(第25−26頁、第74−78図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載されている従来の電子カム制御技術は、基準軸の位置に対して従動軸の位置を同期させる位置制御をするだけであり、センサによる検出値が目標値に追従するように(例えば、圧力センサを機械装置の内部に備え、圧力センサで検出した圧力値が圧力指令値に追従するように)モータを制御する、いわゆるセンサフィードバック制御には対応していなかった。例えば、基準軸の位置に対応させてセンサで検出した圧力値が圧力指令値に追従するようにトルク制御を行う場合、トルク出力値を逐一ユーザプログラムにより変更する必要があり、また、トルク出力値を切り換えるタイミングを計ることが困難であった。
【0005】
また、上記の特許文献1に記載されている従来の電子カム制御技術は、基準軸の位置に同期させる位置制御と、基準軸の位置に対応してセンサによる検出値(例えば圧力値)を目標値に追従させるセンサフィードバック制御とを切り換えてモータを制御することに適用できなかった。
【0006】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、基準軸の位置に同期させたセンサフィードバック制御を可能にするモータ駆動制御システムを実現するための指令生成装置を得ることを目的としている。
【0007】
また、従動軸を制御する複数の制御モードを基準軸の位置情報に対応して切り換える(例えば、基準軸の位置に同期させる位置制御とセンサフィードバック制御を切り換える)ことが可能なモータ駆動制御システムを実現するための指令生成装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る指令生成装置は、モータで駆動される機械装置の状態をセンサで検出した検出値が目標値に追従するようにモータをセンサフィードバック制御するモータ制御装置に対して、センサフィードバック制御の指令値を出力する指令生成装置であって、基準のモータである基準軸の位置を入力し、入力した基準軸の位置に対応するセンサフィードバック制御の指令値を生成し、他のモータである従動軸を駆動制御するモータ制御装置に出力するものである。
【0009】
また、この発明に係る指令生成装置は、機械装置を駆動するモータを制御するために複数の制御モードを切り換えてモータを制御するモータ制御装置に対して、各制御モードの指令値を出力する指令生成装置であって、基準のモータである基準軸の位置を入力し、入力した基準軸の位置に対応する各制御モードの指令値を生成し、他のモータである従動軸を駆動制御する前記モータ制御装置に出力するとともに、前記各制御モードを切り換える切換指令をモータ制御装置に出力するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明による指令生成装置によれば、基準軸の位置と従動軸をセンサフィードバック制御するための指令値との対応関係に基づき、基準軸の位置に対応したセンサフィードバック制御の指令値を生成しモータ制御装置に出力するように構成したので、従動軸を基準軸の位置に対応させてセンサフィードバック制御することを容易に実現することができる。
【0011】
また、この発明によれば、基準軸の位置に対応する制御モードの指令値を生成しモータ制御装置に出力するとともに、基準軸の位置に応じて制御モードを切り換える切換指令をモータ制御装置に出力するようにしたので、基準軸の位置に同期して複数の制御モードを切り換えて従動軸を駆動する制御を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る指令生成装置を含むモータ駆動制御システムの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る指令生成装置の構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る指令プロファイルの一例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る指令生成装置を含むモータ駆動制御システムの構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る指令生成装置の構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る指令プロファイルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る指令生成装置を含むモータ駆動制御システムの構成を示している。図1において、モータを制御するための指令値を生成し出力する指令生成装置1は、基準軸の位置を検出する基準エンコーダ2から基準軸の位置を入力し、フィードバック制御の指令値を生成して、従動軸であるモータ4を駆動制御するモータ制御装置3へ出力する。また、モータ制御装置3は、基準軸の位置に同期してモータ4を駆動制御するとともに、複数のモータ軸を有するモータ駆動制御システムを備えた機械装置の状態を検出するセンサ5の検出値をフィードバックし、センサフィードバック制御によりモータ4を駆動制御する。センサフィードバック制御の指令値は指令生成装置1からモータ制御装置3に与えられる。
【0014】
図2は、この発明の実施の形態1に係る指令生成装置1の構成を示している。図2において、基準エンコーダ2から指令生成装置1に入力された基準軸の位置は、モータ制御の指令値を演算する指令値演算手段12に入力される。指令値演算手段12は、指令プロファイル記憶手段11に予め格納された基準軸の位置とセンサフィードバック制御の指令値の対応関係を示す指令プロファイルを参照することにより、基準軸の位置と同期したセンサフィードバック制御の指令値を演算してモータ制御装置3に出力する。
【0015】
図3は、この発明の実施の形態1に係る指令プロファイルの一例を示している。本実施の形態における指令プロファイルには、基準軸の位置とその基準軸の位置に対応するセンサフィードバック制御の指令値が格納される。図3に示す指令プロファイルの例においては、左列は基準軸の位置であり、その右列は左列の基準軸の位置に対応したセンサフィードバック制御の指令値である。
【0016】
指令値演算手段12は、図3に示す基準軸の位置とセンサフィードバック制御の指令値の対応関係を示す指令プロファイルに基づいて、基準エンコーダ2から入力した基準軸の位置に対応するセンサフィードバック制御の指令値の詳細を、直線補間やスプライン補間などのよく知られた内挿法により演算してモータ制御装置3に出力する。
【0017】
この実施の形態によれば、指令値演算手段12により、指令プロファイル記憶手段11に予め格納された基準軸の位置とセンサフィードバック制御の指令値の対応関係を示す指令プロファイルに基づいて、基準軸の位置に対応したセンサフィードバック制御の指令値の詳細を演算してモータ制御装置に出力するので、従動軸を基準軸の位置に同期してセンサフィードバック制御することを容易に実現することが可能となる。例えば、基準軸の位置に対応させてセンサで検出した圧力値が圧力指令値に追従するようにトルク制御を行う場合に、トルク出力値などをユーザプログラムなどにより逐一変更する必要もなく、その変更のタイミングを計る必要もない。
【0018】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2に係る指令生成装置を含むモータ駆動制御システムの構成を示している。なお、実施の形態1で説明した構成と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。図4において、モータ制御装置30は、モータ4に備えられモータ4の位置を検出する位置検出器6の値をフィードバックしてモータの位置を制御する位置制御モードと、センサ5の検出値をフィードバックしてセンサフィードバック制御によりモータ4を駆動制御するセンサフィードバック制御モードを有する。位置制御モードにおける位置指令値、センサフィードバック制御における指令値、および、位置制御モードとセンサフィードバック制御とを切り換える切換指令は、指令生成装置10からモータ制御装置30に与えられる。
【0019】
図5は、この発明の実施の形態2に係る指令生成装置10の構成を示している。図5において、基準エンコーダ2から指令生成装置10に入力された基準軸の位置は、モータ制御の指令値を演算する指令値演算手段14に入力される。指令値演算手段14は、指令プロファイル記憶手段13に予め格納された基準軸の位置と基準軸の位置に対する各制御モード種類および各制御モードの指令値との対応関係を示す指令プロファイルを参照することにより、各制御モードの指令値および制御モードを切り換える切換指令をモータ制御装置30に出力する。この実施の形態では、制御モードは位置制御モードとセンサフィードバック制御であり、指令値演算手段14は、位置制御モードにおける位置指令値、センサフィードバック制御における指令値、および、位置制御モードとセンサフィードバック制御とを切り換える切換指令をモータ制御装置30に出力する。
【0020】
図6は、この発明の実施の形態2に係る指令プロファイルの一例を示している。本実施の形態における指令プロファイルには、基準軸の位置と、その基準軸の位置に対応する制御モードの指令値と、その基準軸の位置に対応する制御モードの種類を示す情報が格納される。図6に示す指令プロファイルの例においては、左列は基準軸の位置であり、中央列は基準軸位置に対応する制御モードの指令値、右列は基準軸位置に対応する制御モードの種類の情報である。また、基準軸の位置が3つの区間(A、B、C)に分割されており、基準軸の位置が区間Aと区間Cでは位置制御モード、基準軸の位置が区間Bではセンサフィードバック制御モードとなっている。
【0021】
指令値演算手段14は、図6に示す指令プロファイルに基づいて、基準エンコーダ2から入力した基準軸の位置に対応する制御モードの指令値の詳細を、直線補間やスプライン補間などのよく知られた内挿法により演算してモータ制御装置30に出力する。また、指令値演算手段14は、図6に示す指令プロファイルに基づいて、基準軸の位置により制御モードが変わるタイミングでは、制御モードを切り換える切換指令をモータ制御装置30に出力する。
【0022】
この実施の形態によれば、指令値演算手段14により、指令プロファイル記憶手段13に予め格納された指令プロファイル(基準軸の位置と、その基準軸の位置に対応する制御モードの指令値と、その基準軸の位置に対応する制御モードの種類を示す情報との対応関係)に基づいて、基準軸の位置に対応する制御モードの指令値の詳細を演算してモータ制御装置に出力するとともに、基準軸の位置により制御モードが変わるタイミングでは、制御モードを切り換える切換指令をモータ制御装置30に出力するようにしたので、基準軸の位置に同期した複数の制御モード(位置制御モードとセンサフィードバック制御)を切り換えて従動軸を駆動する制御を、切り換えのための特別なユーザプログラムを作成することなく、容易に実現することが可能となる。
【0023】
なお、この実施の形態では、モータ制御装置30において位置制御モードとセンサフィードバック制御モードの2つの制御モードを切り換える例を示したが、モータ制御装置30の制御モードはこれらに限らず、他に、モータ4の速度を制御する速度制御モードやモータ4のトルクを制御するトルク制御モードなどを有することも可能である。また、切り換える制御モードも2つに限らず、3つあるいはそれ以上の制御モードを切り換えるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は、機械装置の複数の軸を同期制御するモータ制御装置に、制御のための指令を与える指令生成装置として用いられるのに適している。
【符号の説明】
【0025】
1、10 指令生成装置、
2 基準エンコーダ、
3、30 モータ制御装置、
4 モータ、
5 センサ、
6 位置検出器、
11、13 指令プロファイル記憶手段、
12、14 指令値算出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータで駆動される機械装置の状態をセンサで検出し、前記センサの検出値が目標値に追従するように前記モータをセンサフィードバック制御するモータ制御装置へ、センサフィードバック制御の指令値を出力する指令生成装置であって、
基準のモータである基準軸の位置を入力し、入力した基準軸の位置に対応するセンサフィードバック制御の指令値を生成して、他のモータである従動軸を駆動制御する前記モータ制御装置に出力することを特徴とする指令生成装置。
【請求項2】
前記指令生成装置は、
基準軸の位置と従動軸をセンサフィードバック制御するための指令値との対応関係を示す指令プロファイルを記憶する指令プロファイル記憶手段と、
基準軸の位置を入力し、前記指令プロファイルに基づき、入力した基準軸の位置に対応するセンサフィードバック制御の指令値を演算して、従動軸を駆動制御する前記モータ制御装置に出力する指令値演算手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の指令生成装置。
【請求項3】
機械装置を駆動するモータの速度あるいはトルクを制御するモータ制御装置へ、速度制御の指令値あるいはトルク制御の指令値を出力する指令生成装置であって、
基準のモータである基準軸の位置を入力し、入力した基準軸の位置に対応する前記速度制御の指令値あるいは前記トルク制御の指令値を生成して、他のモータである従動軸を駆動制御する前記モータ制御装置に出力することを特徴とする指令生成装置。
【請求項4】
前記指令生成装置は、
基準軸の位置と従動軸を速度制御するための指令値あるいはトルク制御するための指令値との対応関係を示す指令プロファイルを記憶する指令プロファイル記憶手段と、
基準軸の位置を入力し、前記指令プロファイルに基づき、入力した基準軸の位置に対応する速度制御の指令値あるいはトルク制御の指令値を演算して、従動軸を駆動制御する前記モータ制御装置に出力する指令値演算手段と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の指令生成装置。
【請求項5】
機械装置を駆動するモータを制御するために複数の制御モードを切り換えてモータを制御するモータ制御装置へ、前記各制御モードの指令値を出力する指令生成装置であって、
基準のモータである基準軸の位置を入力し、入力した基準軸の位置に対応する前記各制御モードの指令値を生成して、他のモータである従動軸を駆動制御する前記モータ制御装置に出力するとともに、
前記各制御モードを切り換える切換指令を前記モータ制御装置に出力すること、
を特徴とする指令生成装置。
【請求項6】
前記指令生成装置は、
基準軸の位置と前記各制御モードの指令値と前記各制御モードの種類との対応関係を示す指令プロファイルを記憶する指令プロファイル記憶手段と、
基準軸の位置を入力し、前記指令プロファイルに基づき、入力した基準軸の位置に対応して前記各制御モードを切り換える切換指令、および、入力した基準軸の位置に対応する前記各制御モードの指令値を演算して、従動軸を駆動制御する前記モータ制御装置に出力する指令値演算手段と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の指令生成装置。
【請求項7】
前記複数の制御モードは、
従動軸の位置を制御する位置制御モード、従動軸の速度を制御する速度制御モード、従動軸のトルクを制御するトルク制御モード、前記機械装置の状態をセンサで検出した検出値が目標値に追従するように従動軸を制御するセンサフィードバック制御モード、のうち少なくとも2つの制御モードを含むことを特徴とする請求項5または6に記載の指令生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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