説明

指袋付編地およびその編成方法

【課題】 指股の伸縮性に優れ、縫合も不要な指袋付編地およびその編成方法を提供する。
【解決手段】 靴下1をつま先側から編成する場合、指股3a,3b,3cを連ねる位置が編出しライン6となる。五本胴5は、大略的に編幅の変化が少ない筒状に編成され、基端側に足挿入口5aが開口する。5本の指袋2a,2b,2c,2d,2eは、一方の針床を使用する引返し編みで形成される。隣接する指袋または胴部分との間の指股3a,3b,3c,3d部分では、編幅の一部を重ねるので、指股3a,3b,3c,3dの伸縮性に優れる指股付編地を得ることができる。複数の指袋2a,2b,2c,2d,12eと接合され、複数段階で編幅が変化する胴部分としての四本胴4および五本胴5は、横編機の両方の針床を使用して筒状に編成するので、指袋付編地を容易に無縫製で編成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機で筒状に編成する靴下や手袋などで、段階的に編幅が変化する胴部分と複数の指袋とを有する指袋付編地およびその編成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の指袋を設ける靴下などを編無縫製で編成するために、前後に対向して設けた針床を有する横編機が用いられている(たとえば、特許文献1参照。)。横編機では、前後の針床を用いる周回編成で各指袋と胴部分とをそれぞれ形成し、指袋と胴部分とを指股で重ねるなどの処理を行って無縫製で接合することができる。
【0003】
複数の指袋を設ける靴下などを、丸編機のみでは無縫製で編成することができない(たとえば、特許文献2参照。)。特許文献2では、複数の指袋で足指を個別的に収容するつま先部を横編機などで編成し、つま先部以外の足の部位にフィットするように丸編機で編成される筒状部とつま先部とを縫合するようにしている。
【特許文献1】特開平9−157908号公報
【特許文献2】特開2002−201501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている編成コース図では、各指袋を周回編成で筒状に順次編成すると、周回編成による胴部分の筒状編成に移行している。このような編成方法では、指股の部分で足表側と足裏側との間に厚みを充分に得ることができない。また、このような編成方法では、指股に孔が開いてしまう。種々の股閉じ方法が知られているけれども、それらの股閉じ方法では、指股の伸縮性が制限される。
【0005】
特許文献2に開示されているように、つま先部を横編機で編成する場合も、指袋を筒状に編成して指股で重ねる点では特許文献1と同様な問題を有する。また、つま先部と丸編機で編成する筒状部との縫合部分には、着用感の難点が生じる。また縫合を必要とするので、靴下の編成に必要な手間が増加する。
【0006】
本発明の目的は、指股での厚みを充分に得ることができ、伸縮性に優れ、縫合も不要な指袋付編地およびその編成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも一対の対向する針床を有する横編機で編成され、胴部分と複数の指袋とを備える無縫製の指袋付編地において、
胴部分は、大略的に筒状で、一方側に開口し、他方側の先端付近では段階的に編幅が減少するように、対向する針床の両方を使用する周回編成で形成され、
複数の指袋は、胴部分の編幅が段階的に減少する位置で編幅が小さい方の胴部分とともに編幅が大きい方の胴部分から分岐する指袋と、編幅が最小の胴部分から他の指袋とともに分岐する指袋とを含み、
各指袋は、一方の針床を使用する引返し編みで形成され、かつともに分岐して隣接する指袋または胴部分との間の指股部分で編幅の一部が重なっていることを特徴とする指袋付編地である。
【0008】
さらに本発明は、少なくとも一対の対向する針床を有する横編機で、段階的に編幅が変化する胴部分と複数の指袋とを備える無縫製の指袋付編地を編成する方法において、
対向する針床の両方の編針に掛け目して編出す編出しステップと、
一方の針床の編針を使用し、編幅が最小の胴部分から分岐する複数の指袋を、編出しの掛け目に続いて、引き返し編みで編幅を減少させてから増加させるように順次編成しながら、編幅の増加側の各編成コースの編端を編幅の減少側で対応する編成コースの編端に接続し、隣接する指袋間の指股では先行する指袋の編幅の途中から後続の指袋を編成して編幅の一部を重ね、最後に編成する指袋で最終となる編成コースの編目を他方の針床の編針に係止させる指袋編成ステップと、
両方の針床の編針を使用し、編幅が段階的に増加する胴部分を、筒状に編成する胴部分編成ステップと、
胴部分編成ステップ内で胴部分の編幅が段階的に増加する毎に、編幅の増加前の胴部分と隣接する指袋を、該胴部分の端部から両方の針床の編針によって編出し、編出しの範囲と該胴部分で編出しの範囲に隣接する部分とを含む編幅の範囲で、一方の針床の編針による引き返し編みで、編幅を減少させてから増加させるように順次編成しながら、編幅の増加側の各編成コースの編端を編幅の減少側で対応する編成コースの編端に接続する段階編成ステップとを含み、
各胴部分は、直前に編成される指袋の最終となる編成コースの編目の全てを部分的に含む編幅で編成することを特徴とする指袋付編地の編成方法である。
【0009】
また本発明の前記編出しステップは、前記編幅が最小の胴部分の編成に使用する編針について行うことを特徴とする。
【0010】
また本発明の前記編出しステップは、前記指袋編成ステップで最初に編成する指袋の編幅の範囲について行い、
前記指袋編成ステップで先行する指袋の途中から後続の指袋を編成する際に、該後続の指袋の編幅の範囲について前記両方の針床の編針に掛け目を行って編出すことを特徴とする。
【0011】
さらに本発明は、少なくとも一対の対向する針床を有する横編機で、段階的に編幅が変化する胴部分と複数の指袋とを備える無縫製の指袋付編地を編成する方法において、
編幅が最大の胴部分から段階的に編幅が減少する胴部分を、両方の針床の編針を用いて筒状に編成する胴部分編成ステップと、
胴部分編成ステップ内で胴部分の編幅が段階的に減少する毎に、編幅の減少後の胴部分に隣接する指袋を、編幅の減少前の胴部分の端部から、一方の針床の編針による引き返し編みで編幅を減少させてから増加させるように順次編成しながら、編幅の増加側の各編成コースの編端を編幅の減少側で対応する編成コースの編端に接続し、最終となる編成コースの編目の一部を他方側の針床に係止される編幅の増加前の胴部分の端部の編目と重ねて伏目接続するとともに、該伏目接続部分を除く編幅の増加前の胴部分の編幅で、編幅の減少後の胴部分を編成する段階編成ステップと、
編幅が最小の胴部分から分岐する複数の指袋を、編幅が最小の胴部分の端部から、一方の針床の編針による引き返し編みで編幅を減少させてから増加させるように順次編成しながら、編幅の増加側の各編成コースの編端を編幅の減少側で対応する編成コースの編端に接続し、隣接する指袋間の指股では先行する指袋の編幅の途中から後続の指袋を編成して編幅の一部を重ねる指袋編成ステップとを含むことを特徴とする指袋付編地の編成方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、指袋は、一方の針床を使用する引返し編みで形成され、隣接する指袋または胴部分との間の指股部分で編幅の一部が重なる。指袋付編地を着用して指袋に指を挿入すると、指股部分で編幅の一部が重なる部分で充分な厚みが得られるように編地がまわり込むので、指股の伸縮性に優れる指股付編地を得ることができる。複数の指袋と接合され、複数段階で編幅が変化する胴部分は、横編機の両方の針床を使用して筒状に編成するので、指袋付編地を容易に無縫製で編成することができる。
【0013】
さらに本発明によれば、少なくとも一対の対向する針床を有する横編機で、段階的に編幅が変化する胴部分と複数の指袋とを備える指袋付編地を、指袋の指股部分から編成することができる。指袋は、対向する針床の両方の編針に掛け目して編出して、一方の針床の編針を使用する引き返し編みで編幅を減少させてから増加させて順次編成し、編幅の減少側の編端と編幅の増加側の編端とを接続しながら、隣接する指袋間の指股では先行する指袋の編幅の途中から後続の指袋を編成して指袋の編幅の一部を重ねて接合する。指袋付編地を着用して指袋に指を挿入すると、指股部分で編幅の一部が重なる部分で充分な厚みが得られるように編地がまわり込む。指袋を筒状に編成して指股で隣接する指袋の編目を重ねて接合する場合のような、指股での伸縮性に優れる指袋付編地を無縫製で編成することができる。
【0014】
また本発明によれば、最小の胴部分の編成に使用する両方の針床の編針で編出して、その胴部分に接合される複数の指袋を一方の針床の編針を使用する引き返し編みで編成する。編出しラインがそろうので、仕上りを美しくすることができる。
【0015】
また本発明によれば、最小の胴部分に接合される複数の指袋を、両方の針床の編針を使用する編出しと一方の針床の編針を使用する引き返し編みで順次編成するので、各指袋に胴部分を形成して、たとえば二本胴から五本胴のすべてを有する靴下なども編成することができる。
【0016】
さらに本発明によれば、少なくとも一対の対向する針床を有する横編機で、段階的に編幅が変化する胴部分と複数の指袋とを備える指袋付編地を、編幅が最大の胴部分から編出して編成することができる。指袋は、対向する針床の両方の編針に掛け目して編出して、一方の針床の編針を使用する引き返し編みで編幅を減少させてから増加させて編成し、編幅の減少側の編端と編幅の増加側の編端とを接続しながら、隣接する指袋間の指股では先行する指袋の編幅の途中から後続の指袋を編成して編幅の一部を重ねる。指袋付編地を着用して指袋に指を挿入すると、指股部分で編幅の一部が重なる部分で充分な厚みが得られるように編地がまわり込む。指袋を筒状に編成して隣接する指袋の編目を重ねる場合のような、指股での伸縮性に優れる指袋付編地を無縫製で編成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の実施の一形態である指袋付編地として編成される靴下1の足表の外観形状を簡略化して示す。靴下1は、つま先側に5本の指袋2a,2b,2c,2d,2eを備える右足用である。靴下1を左足用とする場合は、指袋2a,2b,2c,2d,2eの配置を対称にすればよい。拇指である第1指から小指である第5指までをそれぞれ収容する5本の指袋2a,2b,2c,2d,2eのうち、第1指袋2aから第4指袋2dまでは、指股3a,3b,3cを挟んでそれぞれ隣接し、四本胴4の先端から分岐する。第5指袋2eは、四本胴4に指股3dを挟んで隣接し、四本胴4とともに五本胴5の先端から分岐する。
【0018】
5本の指袋2a,2b,2c,2d,2eは、それぞれの付け根で編幅が最大となり、先端側で編幅が順次減少して閉じるような袋状に編成される。靴下1をつま先側から編成する場合、図2で説明するように、指股3a,3b,3cを連ねる位置が編出しライン6となる。五本胴5は、大略的に編幅の変化が少ない筒状に編成され、基端側に足挿入口5aが開口する。五本胴5の足挿入口5aの周辺は、ゴム編み組織の編成や、弾性糸の挿入などで、伸縮性が増大するように形成されている。五本胴5では、足裏側に踵を収容する凸部を設けたり、足首で細くしたりして、足の形状にフィットしやすくすることが多いけれども、図示は省略する。
【0019】
靴下1を足挿入口5a側から見る構成では、五本胴5が一方側に開口する筒状であり、他方側の先端付近では段階的に編幅が減少して四本胴4に連なる。第5指袋2eは、五本胴5と四本胴4とからなる胴部分の編幅が段階的に減少する位置で編幅が大きい方の胴部分である五本胴5の他方側から、編幅が小さい方の胴部分である四本胴4に隣接するように分岐する。他の4本の指袋2a,2b,2c,2dは、編幅が最小の胴部分となる四本胴4の他方側から他の指袋に隣接するように分岐する。
【0020】
図2は、編地を編成する歯口の前後に、少なくとも一対の針床を備える横編機で図1の靴下1を編成する方法の一例を、順次的なコース編成で形成する指袋付編地の範囲として概略的に示す。ただし、コース数および編幅は説明の便宜を図るために示すものであり、実際に靴下1として編成する場合のコース数とは同一とは限らない。特に指袋2a,2b,2c,2d,2eは同等に記載しているけれども、図1に示すようにコース数や編幅は各指袋2a,2b,2c,2d,2eで異なるようにすることができる。以下の説明で、各指袋2a,2b,2c,2d,2eおよび各指股3a,3b,3c,3dに共通な事項に対しては、指袋2および指股3のようにそれぞれ総称する。
【0021】
編出しは、前後の針床の両方で四本胴4の編幅に対応する範囲の編針を使用し、前後に交互に掛け目して行う。次に、4本の指袋2の編成を、前後の針床のうちの一方、たとえば前針床の編針を用いる引き返し編みで、付け根から先端へ編幅が減少し、先端から付け根へ編幅が増大するようにして行う。各編成コースでは、入側でタックを行う。このタックを介して、編幅の減少側の編端と編幅の増加側の編端とが接合され、各指袋2は袋状に形成される。4本の指袋2を順次編成する際に、それぞれ隣接する指袋間の指股3では先行する指袋2の編幅の途中から後続の指袋2をそれぞれ編成して指袋2の編幅を部分的に重ねる。各編成コースの編端の接合は、タックを行わなくても可能である。しかしながら、タックを行う方が孔などを少なくすることができ、仕上りが美しくなるので好ましい。
【0022】
4本の指袋2a,2b,2c,2dが編成されると、前後両方の針床で、編出しの掛け目をした範囲の編針を使用し、編糸を周回させる筒編みで、四本胴4を編成する。四本胴4の最後の編成コースでは、四本胴4を形成する筒編みとともに、五本胴5の編成に使用する編針の範囲まで、前後両方の針床の編針を使用する掛け目で、第5指袋2e編成のための編出しを行う。
【0023】
第5指袋2eは、一方の針床の編針を使用して、他の4本の指袋2a,2b,2c,2dと同様に、袋状に編成する。ただし、最初の編成コースでは、編出しの掛け目の範囲とともに、四本胴4の最後の編成コースで編出しの掛け目に隣接する範囲の一部の編針を使用する。このようにして、第5指袋2eは、四本胴4の編幅の途中から重ねて編出し、袋状に編成することができる。第5指袋2eを編成すると、前後両方の針床の編針を使用する筒編みで、四本胴4および第5指袋2eを合わせた範囲の編幅で五本胴5を編成する。
【0024】
図3は、図2に示す方法で、第5指袋2eの編成後、五本胴5の編成を開始する直前の編地の状態を概略的に示す。前針床の編針11,12,13,14,15,16,17,18,19,…には、四本胴4の前針床側および第5指袋2eの最後の編成コースの編目がそれぞれ係止される。前針床に歯口で対峙する後針床の編針21,22,23,24,25,26,27,28,29,…には、四本胴4の後針床側の最後の編成コースおよび第5指袋2eの編出しの掛け目がそれぞれ係止されている。このような状態から、前後両方の針床の編針を使用して筒編みを行えば、五本胴5を編成することができる。なお、説明の便宜のために、編針のみ示して、針床の図示は省略する。また、編成に使用する編針の本数や各部分に使用する割合も便宜的なものである。
【0025】
図4は、実際に編成した靴下1つま先部分を示す。(a)は足表側から見た状態、(b)は第2指袋2b〜第5指袋2eを折返している状態を足裏側から見た状態を示す。(a)では、編出しライン6を破線で表示しているけれども、便宜的に書加えたものであり、実際には指股3a,3b,3cを連ねる位置に、ほとんど目立たないように存在する。指股3a,3b,3c,3dは、図では横方向に形成されているけれども、靴下1を着用すると、足裏から足表の厚み方向となるように編地がまわり込むので、充分な厚みを得ることができるとともに、編目の重なりなどは生じないので、ゴワツキがなく、伸縮性も優れている。
【0026】
図5は、図1の靴下1を編成する方法の他の例を、順次的なコース編成で形成する指袋付編地の範囲として概略的に示す。編出しライン7では、前後の針床の両方で第1指袋2aの編幅に対応する範囲の編針を使用し、前後に交互に掛け目して行う。次に第1指袋2aの編成を、図2の各指袋2a,2b,2c,2d,2eと同様に、前後の針床のうちの一方、たとえば前針床の編針を用いる引き返し編みで、付け根から先端へ編幅が減少し、先端から付け根へ編幅が増大するようにして行う。ただし、第1指袋2aの最後の編成コースでは、第2指袋2bを編成する範囲で、前後の針床の編針に掛け目する編出しも行う。第2指袋2bの編成は、一方の針床の編針を使用して、第1指袋2aと同様に行う。すなわち、第2指袋2bは、第1指袋2aの編幅の途中から重ねて編出し、袋状に編成することができる。以下同様に、第3指袋2cおよび第4指袋2dを順次編成する。四本胴4、第5指袋および五本胴5の編成は、図2と同様に行う。
【0027】
以上で説明したように、5本の指袋2a,2b,2c,2d,2eは、一方の針床を使用する引返し編みで形成され、隣接する指袋または胴部分との間の指股3で編幅の一部が重ねられるので、指股3の伸縮性に優れる指股付編地を得ることができる。複数の指袋2と接合され、複数段階で編幅が変化する胴部分としての四本胴4および五本胴5は、横編機の両方の針床を使用して筒状に編成するので、指袋付編地を容易に無縫製で編成することができる。
【0028】
図1の靴下1を編成する方法として、図5の編成方向を逆にすることも可能である。すなわち、五本胴5を足挿入口5a側から編成し、途中で足裏側に踵の部分などを付加した後、第5指袋2eを編成する。第5指袋2eでは、図5で前後掛け目を行っている部分に相当する部分を、対向する針床の五本胴5の編目と重ねて伏目接続する。伏目接続する編幅は、第5指袋2eの編幅よりも狭くし、残りの編幅を含む筒状の部分で、四本胴4を編成する。四本胴4の編成後、第1指袋2a〜第4指袋2dを順次編成し、図5で前後掛目を行っている部分に相当する部分を、それぞれ対向する針床の四本胴4の編目と重ねて伏目接続すればよい。
【0029】
図6は、一方の針床としての前針床の編針に第1指袋2a、第2指袋2b、第3指袋2cおよび第4指袋2dの最後の編成コースの編目をそれぞれ係止している状態を太い実線で示す。他方の針床としての後針床の編針には、太い二点鎖線で示すように、四本胴4の後針床での最後の編成コースの編目が係止されている。説明の便宜上、編針や針床の図示は省略する。この状態では、四本胴4および4つの指袋2a,2b,2c,2dの編成が終了し、それぞれの編地は歯口の下方に垂れ下がる。四本胴4の途中からは第5指袋2eが接合して五本胴5が形成される。前後の針床に係止されている太線で示す編目を重ねて伏目を行えば、図1に示す靴下1を完成させることができる。
【0030】
また、各指袋2a,2b,2c,2dの編成毎に、最終となる編成コースの編目の一部を後針床の編針に係止される四本胴4で各指袋2a,2b,2c,2dに対応する編目と重ねて伏目接続してもよい。各指袋での最終となる編成コースの編目の残部を含むように、次の指袋の編成を開始して、最後の指袋2dの最終となる編成コースの編目を後編針に係止される四本胴4の端部で残存する編目と重ねて伏目接続すれば、図1に示す靴下1を完成させることができる。
【0031】
以上の説明では、胴部分として、四本胴4および五本胴5を備えているけれども、指袋2本分の二本胴、3本分の三本胴を同様に編成することもできる。また、指袋2は、足表側と足裏側とを編端で接続するので、指股3から指先まで段階的に編幅を狭くしなければならない。したがって、手袋の指袋のような長いものを編成することは困難であるけれども、側面に大きな孔を設けるようなデザインとすれば編成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の一形態である指袋付編地として編成される靴下1の足表の外観形状を簡略化して示す平面図である。
【図2】図1の靴下1を編成する方法の一例を概略的に示す図である。
【図3】図2に示す方法で、第5指袋2eの編成後、五本胴5の編成を開始する直前の編地の状態を概略的に示す斜視図である。
【図4】図1の靴下1のつま先部分を示す写真である。
【図5】図1の靴下1を編成する方法の他の例を概略的に示す図である。
【図6】図5の編成方法を逆にする編成方法で、前針床の編針に第1指袋2a、第2指袋2b、第3指袋2cおよび第4指袋2dの最後の編成コースの編目をそれぞれ係止している状態を示す簡略化した斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 靴下
2a,2b,2c,2d,2e 指袋
3a,3b,3c,3d 指股
4 四本胴
5 五本胴
6,7 編出しライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の対向する針床を有する横編機で編成され、胴部分と複数の指袋とを備える無縫製の指袋付編地において、
胴部分は、大略的に筒状で、一方側に開口し、他方側の先端付近では段階的に編幅が減少するように、対向する針床の両方を使用する周回編成で形成され、
複数の指袋は、胴部分の編幅が段階的に減少する位置で編幅が小さい方の胴部分とともに編幅が大きい方の胴部分から分岐する指袋と、編幅が最小の胴部分から他の指袋とともに分岐する指袋とを含み、
各指袋は、一方の針床を使用する引返し編みで形成され、かつともに分岐して隣接する指袋または胴部分との間の指股部分で編幅の一部が重なっていることを特徴とする指袋付編地。
【請求項2】
少なくとも一対の対向する針床を有する横編機で、段階的に編幅が変化する胴部分と複数の指袋とを備える無縫製の指袋付編地を編成する方法において、
対向する針床の両方の編針に掛け目して編出す編出しステップと、
一方の針床の編針を使用し、編幅が最小の胴部分から分岐する複数の指袋を、編出しの掛け目に続いて、引き返し編みで編幅を減少させてから増加させるように順次編成しながら、編幅の増加側の各編成コースの編端を編幅の減少側で対応する編成コースの編端に接続し、隣接する指袋間の指股では先行する指袋の編幅の途中から後続の指袋を編成して編幅の一部を重ねる指袋編成ステップと、
両方の針床の編針を使用し、編幅が段階的に増加する胴部分を、筒状に編成する胴部分編成ステップと、
胴部分編成ステップ内で胴部分の編幅が段階的に増加する毎に、編幅の増加前の胴部分と隣接する指袋を、該胴部分の端部から両方の針床の編針によって編出し、編出しの範囲と該胴部分で編出しの範囲に隣接する部分とを含む編幅の範囲で、一方の針床の編針による引き返し編みで、編幅を減少させてから増加させるように順次編成しながら、編幅の増加側の各編成コースの編端を編幅の減少側で対応する編成コースの編端に接続する段階編成ステップとを含み、
各胴部分は、直前に編成される指袋の最終となる編成コースの編目の全てを部分的に含む編幅で編成することを特徴とする指袋付編地の編成方法。
【請求項3】
前記編出しステップは、前記編幅が最小の胴部分の編成に使用する編針について行うことを特徴とする請求項2記載の指袋付編地の編成方法。
【請求項4】
前記編出しステップは、前記指袋編成ステップで最初に編成する指袋の編幅の範囲について行い、
前記指袋編成ステップで先行する指袋の途中から後続の指袋を編成する際に、該後続の指袋の編幅の範囲について前記両方の針床の編針に掛け目を行って編出すことを特徴とする請求項2記載の指袋付編地の編成方法。
【請求項5】
少なくとも一対の対向する針床を有する横編機で、段階的に編幅が変化する胴部分と複数の指袋とを備える無縫製の指袋付編地を編成する方法において、
編幅が最大の胴部分から段階的に編幅が減少する胴部分を、両方の針床の編針を用いて筒状に編成する胴部分編成ステップと、
胴部分編成ステップ内で胴部分の編幅が段階的に減少する毎に、編幅の減少後の胴部分に隣接する指袋を、編幅の減少前の胴部分の端部から、一方の針床の編針による引き返し編みで編幅を減少させてから増加させるように順次編成しながら、編幅の増加側の各編成コースの編端を編幅の減少側で対応する編成コースの編端に接続し、最終となる編成コースの編目の一部を他方側の針床に係止される編幅の減少前の胴部分の端部の編目と重ねて伏目接続するとともに、該伏目接続部分を除く編幅の減少前の胴部分の編幅で、編幅の減少後の胴部分を編成する段階編成ステップと、
編幅が最小の胴部分から分岐する複数の指袋を、編幅が最小の胴部分の端部から、一方の針床の編針による引き返し編みで編幅を減少させてから増加させるように順次編成しながら、編幅の増加側の各編成コースの編端を編幅の減少側で対応する編成コースの編端に接続し、隣接する指袋間の指股では先行する指袋の編幅の途中から後続の指袋を編成して編幅の一部を重ねる指袋編成ステップとを含むことを特徴とする指袋付編地の編成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−121152(P2008−121152A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306879(P2006−306879)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】