説明

振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラ

【課題】静音化が可能な振動アクチュエータ及びカメラを提供する。
【解決手段】本発明の振動アクチュエータ10は、電気機械変換素子112により振動波を生じるとともに、固定部材13に支持される支持部111cを有する振動子11と、前記振動子11に加圧接触され、前記振動波によって駆動される移動子12と、前記振動子11及び前記移動子12の周囲を覆う防音カバー310と、前記支持部111cと前記固定部材13との間に介在する振動減衰部材320と、を備えること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動アクチュエータは、他のアクチュエータと比較して静粛であることが特徴の一つである。しかし、振動アクチュエータにおいても、ステータとロータの摺動音、ギア音、電源のオンオフ時に発生する突発音等が発生する場合がある。近年、振動アクチュエータは、動画の録画が可能なカメラのレンズ駆動等に用いられる場合があり、さらなる静音化が望まれている。
静音化対策としては、従来、複数の超音波モータを同時に駆動した場合に、合成波が非可聴音域の周波数になるようにすることで、可聴音の発生を防止する超音波モータの駆動回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願平9−358916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、単独であっても、静音化が可能な振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1に記載の発明は、電気機械変換素子(112)により振動波を生じるとともに、固定部(13)に支持される支持部(111c)を有する振動子(11)と、前記振動子(11)に加圧接触され、前記振動波によって駆動される移動子(12)と、前記振動子(11)及び前記移動子(12)の周囲を覆う防音カバー(310,40,51)と、前記支持部(111c)と前記固定部(13)との間に介在する振動減衰部材(320,412)と、を備えること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,10A,10B)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータ(10)であって、前記振動減衰部材(412)は前記防音カバー(40)と一体的に製造され、前記防音カバー(40)から前記支持部(111c)と前記固定部(13)との間に延びていること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の振動アクチュエータ(10,10A)であって、前記防音カバー(310,40)は、前記振動子(11)及び前記移動子(12)の外周を覆う外周部と、該外周部に装着される蓋部(312)とを備えること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,10A)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10B)であって、前記防音カバー(51)の内側に吸収部材が設けられていること、を特徴とする振動アクチュエータ(10B)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10,10A,10B)であって、前記防音カバー(310,40,51)は、透磁性を有していること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,10A,10B)である。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10,10A,10B)を備えるレンズ鏡筒(3)である。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10,10A,10B)を備えるカメラ(1)である。
【0006】
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラの静音化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態におけるカメラの概念的な構成図である。
【図2】第1実施形態における超音波モータの縦断面図である。
【図3】第2実施形態における超音波モータの縦断面図である。
【図4】第3実施形態における超音波モータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図には、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸を水平として横長の画像を撮影する場合のカメラの位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、正位置において被写体に向かう方向をZプラス方向とする。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態であるカメラ1の概念的な構成図である。
カメラ1は、撮像素子4を備えるカメラボディ2と、レンズ31を有するレンズ鏡筒3とを備えている。
レンズ鏡筒3は、カメラボディ2に着脱可能な交換レンズである。なお、本実施形態では、レンズ鏡筒3は、交換レンズである例を示したが、これに限らず、例えば、カメラボディと一体型のレンズ鏡筒であってもよい。
レンズ鏡筒3は、レンズ31、カム筒32、振動アクチュエータとしての超音波モータ10等を備えている。
【0011】
超音波モータ10は、カメラ1のフォーカス動作時に合焦レンズであるレンズ31を駆動するものである。超音波モータ10の回転力は、ギア5を介してカム筒32に伝えられる。レンズ31は、カム筒32に保持されており、超音波モータ10によって光軸方向(Z軸方向)に移動駆動されて焦点調節を行う。なお、レンズ鏡筒3は、レンズ31の他に、結像光学系を構成する図示しないレンズ群を備えている。
【0012】
カメラ1は、図1において、レンズ鏡筒3内に設けられたレンズ31を含む不図示のレンズ群によって、カメラボディ2における撮像素子4の撮像面に被写体像が結像される。そして、撮像素子4によって、結像された被写体像が電気信号に変換され、その信号をA/D変換することによって、画像データが得られる。
【0013】
つぎに、図2を参照して、本発明における振動アクチュエータの一実施形態としての超音波モータ10について説明する。
図2は、超音波モータ10の縦断面図である。
超音波モータ10は、振動子11、移動子12、固定部13、ベアリング14、出力軸15、加圧部材16等を備えている。振動子11は、固定部13に支持されており、移動子12を回転駆動する。移動子12は、固定部13にベアリング14を介して回転自在に支持された出力軸15に設けられており、その回転力は出力軸15を介して出力される。また、超音波モータ10は、防音構造50を備えている。
超音波モータ10は、固定部13を介して、被装着部材20(図1に示すレンズ鏡筒3の図示しない固定筒等)に固定される。
【0014】
以下、超音波モータ10における各部の構成を詳細に説明する。
振動子11は、弾性体111と、弾性体111に接合された圧電体112と、を有する略円環形状の部材であって、固定部13に支持されている。
【0015】
弾性体111は、共振先鋭度が大きな金属材料によって形成され、その形状は、略円環状である。弾性体111は、櫛歯部111a、ベース部111b、フランジ部111cを有する。
櫛歯部111aは、圧電体112が接合される面とは反対側の面に、複数の溝を切って形成され、この櫛歯部111aの先端面は、移動子12に加圧接触されて移動子12を駆動する駆動面111dとなる。この駆動面111dには、Ni−P(ニッケル−リン)メッキ等の潤滑性の表面処理が施されている。櫛歯部111aを設ける理由は、圧電体112の伸縮により駆動面に生じる進行波の中立面をできる限り圧電体112側へ近づけ、これにより駆動面の進行波の振幅を増幅させるためである。
【0016】
ベース部111bは、弾性体111の周方向に連続した部分であり、その櫛歯部111aとは反対側の面には圧電体112が接合されている。
フランジ部111cは、弾性体111の内径方向に突出した鍔状の部分であり、ベース部111bの厚さ方向の略中央に配置されている。弾性体111はこのフランジ部111cを介して固定部13に固定される。
【0017】
圧電体112は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電気機械変換素子である。なお、本実施形態では、圧電体112として圧電素子を用いているが、電歪素子を用いてもよい。
圧電体112は、略円環形状の部材であり、弾性体111の周方向に沿って2つの相(A相、B相)の電気信号が入力される範囲に分かれている。各相には、1/2波長毎に分極が交互となった要素が並べられており、A相とB相との間には1/4波長分間隔があくように設けてある。
圧電体112は、弾性体111に接合され、圧電体112の弾性体111側とは反対側の面には、圧電体112を励振する駆動信号を供給するフレキシブルプリント基板113が接続されている。
【0018】
フレキシブルプリント基板113は、その配線が圧電体112の各相の電極に接続されている。フレキシブルプリント基板113には、外部に導出された図示しない接続部を介して駆動信号が供給されるようになっている。このフレキシブルプリント基板113を介して供給される駆動信号によって圧電体112が伸縮し、この圧電体112の伸縮によって弾性体111の駆動面111dに、たとえば4波の進行波が発生する。
【0019】
移動子12は、後述する出力軸15に相対回転不能且つ軸方向には移動可能に装着されている。移動子12は、振動子11における弾性体111の駆動面111dに圧接されて、駆動面111dに生じる楕円運動の進行波によって回転駆動される。
移動子12は、アルミニウム等の軽金属によって、概略形状円環状に形成されている。移動子12における、弾性体111の駆動面111dと接触する被駆動面12aには、耐磨耗性向上のためのアルマイト等の表面処理が施されている。
【0020】
固定部13は、前述したように、振動子11を支持すると共にベアリング14を介して出力軸15を支持し、また、当該超音波モータ10を被装着部材20に装着する部材である。固定部13は、ベアリング14を支持する内筒131と、内筒131の外周に嵌合する外筒132と、固定リングナット133と、によって構成されている。
【0021】
内筒131は、出力軸15が挿通可能な概略円筒状であって、ベアリング14が嵌合するベアリングケース部131aと、このベアリングケース部131aより小径の所定長さの支持管部131bとを備える。支持管部131bの先端部外周には、固定リングナット133が螺合するオネジが形成されている。
【0022】
外筒132は、内筒131のベアリングケース部131aの外周に嵌合する装着部132aと、内筒131の支持管部131bに嵌合する管状の支持部132bと、を備えている。装着部132aには、装着ネジ孔132dが形成されている。
【0023】
固定リングナット133は、外筒132の支持部132bの端面との間に、弾性体111のフランジ部111cと、防音ワッシャ320とを挟持した状態で、内筒131の支持管部131bのオネジに螺合されている。これにより、固定リングナット133は、内筒131と外筒132とを結合して一体の固定部13を構成すると共に、この固定部13に振動子11を固定している。
【0024】
内筒131のベアリングケース部131aの内周側には、ベアリング14が配置されている。ベアリング14の内輪には、出力軸15が嵌合している。
【0025】
出力軸15は、略円柱形状の軸部材であって、移動子12と共に回転して、移動子12の回転運動を外部に出力する部材である。
出力軸15には、移動子12が挿入され、さらに緩衝ワッシャ18、押さえリング19及びこれらの脱落を防ぐEリング151が係合装着されている。
また、出力軸15における移動子12と反対側の端部には、出力ギア17が固定されている。ベアリング14と出力ギア17の間には、加圧部材16が介設されている。
【0026】
緩衝ワッシャ18は、円環形状の部材であって、たとえばブチルゴム、シリコンゴム、プロピレンゴム等の弾性部材によって形成されている。緩衝ワッシャ18は、移動子12からの振動を出力軸15へ伝えないように振動を吸収する。
【0027】
出力ギア17は、図1に示すようにレンズ鏡筒3におけるギア5と噛合しており、出力軸15の回転に伴って回転して回転力をギア5に伝達(出力)する。
【0028】
加圧部材16は、本実施形態では圧縮コイルバネであって、出力軸15に外挿されてベアリング14と出力ギア17との間に設けられている。加圧部材16は、その弾性復帰力で出力ギア17をベアリング14から離間する方向に付勢している。なお、加圧部材16は、圧縮コイルバネに限定されるものではない。
【0029】
超音波モータ10は、加圧部材16の付勢力によって、出力軸15を介して移動子12が振動子11に向けて押圧付勢され、これによって移動子12の被駆動面15aが振動子11における弾性体111の駆動面111dに所定の押圧力で加圧接触している。
そして、超音波モータ10は、フレキシブルプリント基板113を介して供給される駆動信号によって圧電体112が伸縮し、この圧電体112の伸縮によって弾性体111の駆動面111dに進行波が発生する。この進行波によって、移動子12が回転駆動される。移動子12の回転は出力軸15に伝達され、その結果、出力軸15に固定された出力ギア17が回転する。
【0030】
超音波モータ10は、前述したように、固定部13を介して被装着部材20に固定ネジ21によって固定される。
【0031】
ここで、超音波モータ10は、前述したように、防音構造30を備えている。
本実施形態における防音構造30は、当該振動子11及び移動子12の周囲を覆う防音カバー310と、固定部と振動子11との間に介装された防音ワッシャ320と、によって構成されている。
防音カバー310は、外周部311と、蓋部312とに2分割されて構成されている。外周部311および蓋部312は、それぞれ防振効果を有する材料、たとえば、制振鋼板、樹脂、不織布、ガラス、ウレタン、ゴム等を用いて形成されている。
【0032】
外周部311は、振動子11及び移動子12の外周を覆う円筒状に形成されている。
外周部311の基端部には、内周側に鍔状に突出する装着フランジ311aが形成されている。装着フランジ311aの内径は、ベアリングケース部131aの外径に嵌合するように設定されている。
【0033】
外周部311の開放側の端部内周には、2条の係止突条(外突条311b,内突条311c)が回転軸方向に所定間隔で形成されている。各係止突条311b,311cは、それぞれ略半円形の断面形状で、周方向に巡って形成されている。
【0034】
上記のように形成された外周部311の装着フランジ311aは、超音波モータ10を被装着部材20に固定する際に、外筒132と被装着部材20との間に介装される。これにより、外周部311は、振動子11及び移動子12の周囲を覆うように装着される。
【0035】
蓋部312は、断面形状台形に形成されている。その開口側の外径は、外周部311の内周に嵌合するように設定されている。
このように形成された蓋部312は、開口側を外周部311の開口端に嵌合させて押し込むことで、開口側の外縁が弾性変形して外周部311の外突条311bを乗り越え、外突条311bと内突条311cとの間に嵌り込んで係止される。これにより、蓋部312は、外周部311の開口部を閉止する。なお、この係止状態において、蓋部312の頂部の内面と超音波モータ10の最も突出した部位(出力軸15の端部)との間には、所定の間隔を有するように設定されている。
【0036】
上記のように、防音カバー310(外周部311及び蓋部312)が、振動子11及び移動子12の周囲を覆って装着され、超音波モータ10の運転音(振動子11と移動子12の摺動音や電源のON/OFF時に生ずる突発音等)を吸収・遮断する。
また、固定部13における外筒132の装着面132cと被装着部材20との間に介在する装着フランジ311aは、振動子11の振動に起因する固定部13の振動の被装着部材20への伝達を防止する。
【0037】
防音ワッシャ320は、環状であって、固定部13における固定リングナット133と、振動子11における弾性体111のフランジ部111cとの間に介設されている。防音ワッシャ320は、防音カバー310と同様に、防振効果を有する材料、たとえば、制振鋼板、樹脂、不織布、ガラス、ウレタン、ゴム等によって形成される。
このように、固定リングナット133と振動子11における弾性体111のフランジ部111cとの間に介設された防音ワッシャ320は、振動子11の振動の固定リングナット133への伝達を低減する。
【0038】
上記のような防音構造30を備えた超音波モータ10は、防音カバー310が超音波モータ10の運転音を吸収・遮断して外部への伝播を防止する。また、防音カバー310における外周部311の装着フランジ311aが、振動子11の振動の固定部13を介した被装着部材20への伝達を遮断すると共に、防音ワッシャ320が振動子11の振動の固定リングナット133(固定部13)への伝達を遮断し、振動子11の振動が被装着部材20に伝達することに起因する異音の発生を防止する。これにより、超音波モータ10は、運転音の外部への漏洩を抑制した静粛な運転が可能となる。
【0039】
ここで、防音カバー310(外周部311および蓋部312)を、防振効果に加えて透磁性の高い素材によって形成して、防振効果に加えて磁力遮断機能を持たせても良い。透磁性の高い素材は、たとえば、パーマロイ、純鉄、珪素鋼、鉄等がある。
また、防振効果を有する素材と透磁性の高い素材とによる2層構造に防音カバー310を形成しても良い。つまり、たとえば、防振効果を有する素材(制振鋼板、樹脂、不織布、ガラス、ウレタン、ゴム等)の外面に、磁力を遮断する素材(パーマロイ、純鉄、珪素鋼、鉄等)による磁力遮断層を形成する。
【0040】
このように、防音カバー310に磁力遮断機能を持たせることで、超音波モータ10への電力印加時等における外部への磁力の漏洩を阻止できる。これにより、超音波モータ10から発生した磁力によって、レンズ鏡筒3(図1参照)が備える電子回路やジャイロに電磁気的な影響を与えることを防ぐことができる。
【0041】
(第2実施形態)
つぎに、図3に示す本発明における振動アクチュエータの第2実施形態を説明する。
図3は、第2実施形態である超音波モータ10Aの縦断面図である。
図3に示す超音波モータ10Aは、前述した第1実施形態とは防音構造が異なる防音カバー40を備えている。防音カバー40を除く超音波モータの基本的な構成は前述した第1実施形態と同様であり、同機能の構成要素については同符号を付して説明は省略する。
【0042】
図3に示す超音波モータ10Aは、当該超音波モータ10Aに周囲を覆う防音カバー40を備えている。
防音カバー40は、外周部410と、蓋部312とに、回転軸方向に2分割されて構成されている。外周部410および蓋部312は、それぞれ防振効果を有する材料、たとえば、制振鋼板、樹脂、不織布、ガラス、ウレタン、ゴム等を用いて所定厚さに形成されている。第2実施形態における防音カバー40は、前述した第1実施形態における防音カバー310(図2参照)と、固定部13への装着構造のみが異なり、外周部410に装着される蓋部312の形状およびその外周部410への装着構造は第1実施形態と同様である。
【0043】
外周部410は、振動子11及び移動子12の外周を覆う円筒状に形成されている。
外周部410の基端部には、内周側に鍔状に突出する装着フランジ411が形成されている。
【0044】
装着フランジ411の内径は、弾性体111のフランジ部111cの内径より小さく、その内周縁に装着部412を備えている。
装着部412には、外径側に開放する断面U字状の嵌合スリット413が形成されている。
嵌合スリット413は、振動子11における弾性体111のフランジ部111cに嵌合するように、周方向に連続して形成されている。
【0045】
外周部410は、装着部412の嵌合スリット413に、振動子11における弾性体111のフランジ部111cを嵌入させて、振動子11に係止される。
そして、外周部410は、その装着フランジ411における装着部412が、固定部13における内筒131の支持管部131bに螺合した固定リングナット133によって外筒132に押圧されて、弾性体111のフランジ部111cと共に固定部13に固定されている。つまり、外周部410は、弾性体111(振動子11)の固定部13への固定と同時に、固定部13に固定されるようになっている。
【0046】
これにより、弾性体111のフランジ部111cと固定部13における固定リングナット133の間、および、フランジ部111cと固定部13における外筒132との間に、それぞれ外周部410の装着部412が介在する。
なお、外周部410における装着フランジ411の形状は、固定部13に振動子11と共に固定された状態において、振動子11および固定部13とそれぞれ接触しない形状となっている。
【0047】
上記のように形成された外周部410は、超音波モータ10Aを組み立てる際に、その装着フランジ411が振動子11と共に固定部13に固定され、振動子11及び移動子12の外周を覆うように配設される。
外周部410の開放端部には、蓋部312が係合装着されて閉止される。
【0048】
上記構成の防音カバー40は、外周部410と蓋部312とが、振動子11及び移動子12の周囲を覆う。これにより、防音カバー40は、超音波モータ10Aの運転音(振動子11と移動子12の摺動音や電源のON/OFF時に生ずる突発音等)を吸収・遮断する。
【0049】
また、弾性体111のフランジ部111cと固定部13における固定リングナット133の間、および、フランジ部111cと固定部13における外筒132との間に、それぞれ介在する装着フランジ411における装着部412が、振動子11の振動の固定部13への伝達を遮断する。
【0050】
上記のように、第2実施形態における防音カバー40を備えた超音波モータ10Aは、防音カバー40が超音波モータ10Aの運転音を吸収・遮断して外部への伝播を防ぐ。また、防音カバー40における外周部410の装着フランジ411が、振動子11の振動の固定部13への伝達を遮断し、振動子11の振動が被装着部材20に伝達することに起因する異音の発生を防ぐ。これにより、超音波モータ10Aは、運転音の外部への漏洩を抑制した静粛な運転が可能となる。
【0051】
なお、第2実施形態の構成においても、前述した第1実施形態の場合と同様に、防音カバー40を防振効果に加えて透磁性の高い素材によって、または、防振効果を有する素材と透磁性の高い素材とによって2層構造に構成し、防振効果に加えて磁力遮断機能を持たせても良い。
【0052】
(第3実施形態)
つぎに、図4に示す本発明における振動アクチュエータの第3実施形態を説明する。
図4は、第3実施形態である超音波モータ10Bの縦断面図である。
図4に示す超音波モータ10Bは、防音構造50を備えている。防音構造50は、防音カバー51と、移動子吸音材52と、固定部吸音材53とにより構成されている。この防音構造50を除く超音波モータ10Bの基本的な構成は、第1実施形態における超音波モータ10(図2参照)と同様であり、同機能の構成要素については同符号を付して説明は省略する。
【0053】
超音波モータ10Bにおける防音構造50を構成する防音カバー51は、振動子11及び移動子12に対して、移動子12の側から外挿されてその周囲を覆い得る有底円筒状を呈している。防音カバー51の閉塞された先端は、円錐の頂部を中心軸と直交する平面でカットした断面形状台形に形成されている。
【0054】
防音カバー51は、防振効果を有する材料、たとえば、制振鋼板、樹脂、不織布、ガラス、ウレタン、ゴム等を用いて所定厚さに形成されている。
防音カバー51の内周面には、吸音材51aが略全面に亘って貼り付けられている。
吸音材51aの内面は、たとえば、連続する凹凸状に形成され、表面積が広く吸音作用するようになっている。なお、この凹凸は、防音カバー51の内面に一体に形成しても良い。
【0055】
また、防音カバー51の開放側の内周には、断面形状略半円形の係合突条51bが周方向に巡って形成されている。一方、超音波モータ10Bにおける固定部13の外筒132の外周面には、2条の係止突条13a,13bが回転軸方向に所定間隔で形成されている。
【0056】
上記構成の防音カバー51は、振動子11及び移動子12に移動子12の側から外挿される。そして防音カバー51の弾性変形によって係合突条51bが固定部13の一方の係止突条13bを乗り越えて係止突条13a,13bの間に係止され、これによって超音波モータ10に装着されている。
この装着状態において、防音カバー51の内周に設けられた吸音材51aの内面は、超音波モータ10Bの外面に接触することなく所定間隔を有するように設定されている。
【0057】
移動子吸音材52は、吸音性を有する素材によって形成され、超音波モータ10Bにおける移動子12の周面に貼り付けられている。移動子吸音材52の外面には、吸音機能を有する連続する凹凸が設けられている。
【0058】
固定部吸音材53は、吸音性を有する素材によって所定厚さの円盤状に形成され、超音波モータ10Bにおける固定部13(外筒132)の振動子11と対向する面に貼り付けられている。固定部吸音材53の外面にも、吸音機能を有する連続する凹凸が設けられている。
【0059】
上記のような防音構造50を備えた超音波モータ10Bにおいて、防音カバー51が、さらに振動子11及び移動子12の周囲を覆う。これにより、防音カバー51が超音波モータ10Bの運転音(振動子11と移動子12の摺動音や電源のON/OFF時に生ずる突発音等)を吸収・遮断する。防音カバー51の内周には吸音材51aが設けられているため、この吸音材51aの吸音によって外部への音の伝播をより一層抑制できる。また、移動子吸音材52及び固定部吸音材53は、空気伝播する音波を吸収する。
【0060】
上記のように、第3実施形態における防音構造50を備えた超音波モータ10Bは、防音カバー51が超音波モータ10Bの運転音を吸収・遮断して外部への伝播を防ぐ。防音カバー51の内周面の吸音材51aは、超音波モータ10Bからの音波を吸音・減衰させる。移動子吸音材52と固定部吸音材53は、空気伝播する音波を吸収する。これにより、超音波モータ10Aは、運転音の外部への漏洩を抑制した静粛な運転が可能となる。
【0061】
第3実施形態の構成においても、前述した第1実施形態の場合と同様に、防音カバー51を防振効果に加えて透磁性の高い素材によって、または、防振効果を有する素材と透磁性の高い素材とによって2層構造に構成し、防振効果に加えて磁力遮断機能を持たせても良い。
【0062】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)第1実施形態における超音波モータ10においては、振動子11及び移動子12の周囲を覆って装着された防音カバー310が、超音波モータ10の運転音を吸収・遮断して外部への伝播を防止する。また、防音カバー310における外周部311の装着フランジ311aが、振動子11の振動の固定部13を介した被装着部材20への伝達を遮断する。さらに、防音ワッシャ320が振動子11の振動の固定部13への伝達を遮断する。これによって、振動子11の振動が被装着部材20に伝達することに起因する異音の発生が防止される。
以上、超音波モータ10は、運転音の外部への漏洩を抑制した静粛な運転が可能となり、カメラ1におけるレンズ鏡筒3の合焦時における作用音を抑制し、高い静粛性の要求される場所での合焦撮影も可能となる。また、動画撮影時に合焦作動音が記録されてしまうといった不具合を回避できる。
【0063】
(2)第2実施形態における超音波モータ10Aにおいては、振動子11及び移動子12の周囲を覆って装着された防音カバー40が、超音波モータ10Aの運転音を吸収・遮断して外部への伝播を防止する。また、防音カバー40における外周部41の装着フランジ411が、振動子11の振動の固定部13への伝達を遮断し、振動子11の振動が被装着部材20に伝達することに起因する異音の発生を防止する。これにより、超音波モータ10Aは、運転音の外部への漏洩を抑制した静粛な運転が可能となる。
【0064】
(3)第3実施形態における防音構造50を備えた超音波モータ10Bにおいては、振動子11及び移動子12の周囲を覆って装着された防音カバー51が、超音波モータ10Bの運転音を吸収・遮断して外部への伝播を防止する。防音カバー51の内周面の吸音材51aは、超音波モータ10Bからの音波を減衰させる。移動子吸音材52と固定部吸音材53は、空気伝播する音波の超音波モータ10Bへの入力を防止する。これにより、超音波モータ10Aは、運転音の外部への漏洩を抑制した静粛な運転が可能となる。
【0065】
(4)第1実施形態における防音カバー310、第2実施形態における防音カバー40、第3実施形態における防音カバー51を、防振効果に加えて透磁性の高い素材によって、または、防振効果を有する素材と透磁性の高い素材とによる2層構造に構成し、防振効果に加えて磁力遮断機能を持たせて構成することにより、超音波モータ10,10A,10Bへの電力印加時等における外部への磁力の漏洩を阻止できる。これにより、漏洩した磁力がレンズ鏡筒3(図1参照)の備える電子回路やジャイロに影響を与える不具合を防ぐことができる。
【0066】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)第1実施形態における防音カバー310および第2実施形態における防音カバー40の分割数は2分割に限らず、分割位置も適宜設定可能である。また、第3実施形態における防音カバー51も、分割した構成としても良い。
【0067】
(2)本実施形態では、振動アクチュエータとして超音波領域の振動を用いる超音波モータを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、超音波領域以外の振動を用いる振動アクチュエータに適用してもよい。
【0068】
(3)本実施形態においては、振動アクチュエータとしての超音波モータが、カメラの焦点調節の駆動源として用いられる例を示したが、これに限らず、例えば、カメラのズーム動作の駆動源や、カメラの撮像系の一部を駆動して手振れを補正する手振れ補正機構の駆動源等に適用することができる。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0069】
1:カメラ、3:レンズ鏡筒、4:撮像素子、10,10A,10B:超音波モータ、11:振動子、12:移動子、13:固定部、20:被装着部材、30:防音構造、310:防音カバー、311:外周部、312:蓋部、320:防音ワッシャ、40:防音カバー、410:外周部、50:防音構造、51:防音カバー、51a:吸音材、52:移動子吸音材、53:固定部吸音材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械変換素子により振動波を生じ、固定部に支持される支持部を有する振動子と、
前記振動子に加圧接触され、前記振動波によって駆動される移動子と、
前記振動子及び前記移動子の周囲を覆う防音カバーと、
前記支持部と前記固定部との間に介在する振動減衰部材と、
を備えること、を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動アクチュエータであって、
前記振動減衰部材は、前記防音カバーと一体的に製造され、前記防音カバーから前記支持部と前記固定部との間に延びていること
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の振動アクチュエータであって、
前記防音カバーは、前記振動子及び前記移動子の外周を覆う外周部と、該外周部に装着される蓋部とを備えること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動アクチュエータであって、
前記防音カバーの内側に吸収部材が設けられていること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動アクチュエータであって、
前記防音カバーは、透磁性を有していること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備えるレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備えるカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−65435(P2012−65435A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207116(P2010−207116)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】