説明

振動アクチュエータ、光学機器及び振動アクチュエータの制御方法

【課題】作動音の発生を抑えることのできる振動アクチュエータの制御方法と振動アクチュエータおよびそれを用いる光学機器を提供する。
【解決手段】カメラは、合焦レンズを移動駆動する超音波モータと、超音波モータに所定の電圧および周波数の駆動信号を供給して回転制御する制御装置とを備えている。制御装置は、ウォブリング動作制御の際に、超音波モータへの電力(駆動信号)の供給を継続し続けたまま、その周波数を駆動周波数範囲と不機能周波数以上との間で変化させることで、超音波モータ30の駆動(回転)をON/OFF制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ、光学機器及び振動アクチュエータの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機械変換素子を用いて振動子を振動させ、その振動によって移動子を移動(回転等)させる振動アクチュエータが知られている。このような振動アクチュエータは、カメラレンズにおける合焦レンズを移動駆動する駆動源(合焦モータ)等に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−356071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時、一眼レフカメラタイプのデジタルカメラ等においても動画撮影機能を有するものが提案されている。動画撮影では、被写体の動きに合わせて合焦位置を追従させことが望まれる。このため、合焦レンズを前後に細かく移動させ、撮像素子が撮像した画像のコントラストの変化から合焦状態の変化を検出して、被写体への合焦を維持するいわゆるウォブリング動作を行うように構成される。このウォブリング動作には、合焦レンズを間欠的に移動させることが必要となり、その結果、合焦レンズを移動駆動する駆動源は駆動/停止を繰り返すこととなる。
【0005】
ところで、振動アクチュエータは、圧電素子に駆動電源を入力した瞬間に作動音が発生する。このため、合焦レンズを移動駆動する駆動源として振動アクチュエータを用いたものでは、動画撮影時にウォブリング動作の間欠駆動(駆動/停止)が継続して繰り返される。その結果、連続して発生する作動音がマイクに伝達して記録(録音)されてしまうおそれがある。このような作動音が記録されると、再生時に不自然で耳障りなものとなる。
【0006】
本発明の課題は、作動音の発生を抑えることのできる振動アクチュエータ、光学機器及び振動アクチュエータの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0008】
請求項1に記載の発明は、電気機械変換素子(31B)を有する振動子(31)と、前記振動子(31)の振動によって前記振動子(31)に対して相対移動する移動子(32)と、前記振動子(31)に印可する電圧の周波数を変化させて前記移動子(32)の移動および停止を制御する制御装置(12)と、を備えること、を特徴とする振動アクチュエータ(30)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータであって、前記制御装置(12)は、駆動電力の周波数を不機能周波数以上に変化させることで前記移動子(32)を停止制御すること、を特徴とする振動アクチュエータ(30)。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の振動アクチュエータを備える光学機器(1,20)である。
請求項4に記載の発明は、電気機械変換素子(31B)を有する振動子(31)と、前記振動子(31)の振動によって前記振動子(31)に対して相対移動する移動子(32)と、を備える振動アクチュエータ(30)において、前記振動子(31)に印可する電圧の周波数を変化させることで、前記移動子(32)の移動および停止を制御すること、を特徴とする振動アクチュエータの制御方法である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作動音の発生を抑えることのできる振動アクチュエータの制御方法と振動アクチュエータおよびそれを用いる光学機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における一実施形態のカメラ1を説明する概念図である。
【図2】(a)はウォブリング動作時における超音波モータ30の駆動信号の一例を示すグラフ、(b)は比較例としての従来のウォブリング動作時における超音波モータ30の駆動信号の一例を示すグラフである。
【図3】駆動信号の周波数と超音波モータの回転数との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
なお、図1には、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸Aを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラの位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、正位置において被写体に向かう方向をZプラス方向とする。
【0012】
図1は、本発明における一実施形態のカメラ1を説明する概念図である。図2(a)はウォブリング動作時における超音波モータ30の駆動信号の一例を示すグラフ、図2(b)は比較例としての従来のウォブリング動作時における超音波モータ30の駆動信号の一例を示すグラフである。図3は、駆動信号の周波数と超音波モータの回転数との関係の一例を示すグラフである。
【0013】
図1に示す本実施形態におけるカメラ1は、動画撮影機能を有するカメラであって、振動アクチュエータの一例としての超音波モータ30を備えている。
カメラ1は、カメラボディ10と、レンズ鏡筒20とを備えている。レンズ鏡筒20は、カメラボディ10に着脱可能な交換レンズである。なお、本実施形態では、レンズ鏡筒20が交換可能な例を示したが、これに限らず、例えば、カメラボディとレンズ鏡筒が一体型のカメラであってもよい。
【0014】
カメラボディ10は、光電変換素子であるCCD等の撮像素子11と、制御装置12と、を備えている。
制御装置12は、当該カメラ1全体を統括的に制御する制御部である。制御装置12は、その制御機能部として、焦点調整情報を検出する焦点情報検出部12Aと、超音波モータ30の駆動電力を形成する駆動回路12B等を備えている。
【0015】
焦点情報検出部12Aは、動画撮影時において、撮像素子11が撮像した画像のコントラストの変化から合焦状態の変化を検出する。
駆動回路12Bは、後述する超音波モータ30を駆動する駆動電力を形成する。駆動回路12Bは、その出力する駆動電力の周波数を変更可能となっている。
【0016】
そして、制御装置12は、前述したように、当該カメラ1全体を制御する。また、制御装置12は、焦点情報検出部12Aによる焦点検出情報に基づいて駆動回路12Bを制御し、超音波モータ30を駆動して後述するレンズ鏡筒20における合焦レンズ21を移動させ、被写体の合焦状態を維持するように制御する。
【0017】
レンズ鏡筒20は、合焦レンズ21、カム筒22、アイドルギア23、超音波モータ30、及びこれらを包囲する外筒24等を備えている。
本実施形態では、超音波モータ30は、カム筒22と外筒24の間の円環状の隙間に配置されている。超音波モータ30は、カメラ1の合焦動作時に合焦レンズ21を駆動する駆動源である。超音波モータ30は、後述する出力ギア33が噛合するアイドルギア23を介してカム筒22を回転操作する。
【0018】
超音波モータ30は、振動子31と、振動子31に圧接配置された回転体32と、回転体32に結合された出力ギア33と、を備えている。
振動子31は、弾性体31Aと、弾性体31Aに接合された圧電体31Bと、により構成されている。振動子31は、図示しないフレキシブルプリント基板を介して制御装置12(駆動回路12B)から所定の電圧および周波数の駆動信号が供給され、これによって圧電体31Bが伸縮して弾性体31Aの駆動面に進行波を生ずる。
【0019】
そして、超音波モータ30は、振動子31の進行波によって回転体32が回転駆動され、出力ギア33が回転力を出力する。回転体32(出力ギア33)の速度(回転数)は、駆動信号の周波数に応じて変化する。つまり、超音波モータ30は、制御装置12による駆動回路12Bの駆動信号の周波数制御によって、回転数が制御されるようになっている。
【0020】
カム筒22は、超音波モータ30によって回転操作されると、外筒24内を光軸OAと平行する方向(Z軸方向)に移動可能に設けられている。
合焦レンズ21は、カム筒22に保持されている。そして、超音波モータ30の駆動によるカム筒22の移動によって、光軸OA方向に移動して焦点調節を行う。
なお、レンズ鏡筒20は、合焦レンズ21の他に、図示しないが複数のレンズ群を備えている。
【0021】
そして、カメラ1は、合焦レンズ21とレンズ鏡筒20内に設けられた図示しないレンズ群とによって、撮像素子11の撮像面に被写体像が結像される。撮像素子11は、結像された被写体像を電気信号に変換する。その電気信号は、A/D変換されて、画像データとされる。これらカメラ1における撮影に係る一連の動作は、制御装置12によって制御される。
【0022】
ここで、前述したように、カメラ1は、動画撮影機能を有している。動画撮影時には、ウォブリング動作を行う。すなわち、動画撮影時において、制御装置12は、合焦レンズ21を前後に細かく移動させ、撮像素子11が撮像した画像のコントラストの変化に伴って焦点情報検出部12Aが検出した合焦状態の変化情報に基づいて、駆動回路12Bを制御して合焦調整を行う。
【0023】
つぎに、この制御装置12による動画撮影時におけるウォブリング動作制御について、詳細に説明する。
制御装置12は、動画撮影時におけるウォブリング動作を、超音波モータ30への電力(駆動信号)の供給を継続したままその周波数を変更することで行う。
すなわち、図3に駆動信号の周波数に対する超音波モータ30の回転数の関係の一例を示すように、超音波モータ30は、印可する駆動信号の周波数を変化させると、周波数が所定の範囲(駆動周波数範囲)では、周波数の増加に対して回転数が所定の関係で変化する(小さくなる)。そして、駆動信号の周波数が所定の値(以下、不機能周波数と呼ぶ)を越えると、超音波モータ30は停止する。図3に示す例では、不機能周波数は略30(kHz)であって、それ以上の周波数では、超音波モータ30は停止する。
【0024】
このような超音波モータ30の特性を利用し、駆動信号の周波数を駆動周波数範囲と不機能周波数以上との間で変化させることで、超音波モータ30への電力(駆動信号)の供給を継続し続けたたままで、超音波モータ30の駆動(回転)をON/OFFできる。
【0025】
つまり、図2(a)に一例を示すように、動画撮影の開始に伴って、超音波モータ30に所定電圧の駆動信号を印可して、合焦レンズ21を移動させる。この例では、駆動周波数は27.5(kHz)とし、駆動開始時には28〜27.5(kHz)に変化させている。そして、合焦状態が検出されると、駆動信号の周波数を不機能周波数(30kHz)に変化させて、合焦レンズ21の移動を停止させる。次いで、駆動方向を切り換えて、駆動信号の周波数を駆動周波数(27.5kHz)に変化させて、合焦レンズ21を移動させる。
【0026】
これにより、超音波モータ30への駆動信号のON/OFFを繰り返すことなく、ウォブリング動作を行うことができる。その結果、ウォブリング動作の際に超音波モータ30に駆動信号を入力した瞬間の作動音の発生がなく、作動音がマイクに伝達して記録(録音)されることがない。
【0027】
つまり、従来では、比較例である図2(b)に示すように、ウォブリング動作の際に、超音波モータ30のON/OFFを行うと、そのON(駆動開始)の都度作動音が発生し、この作動音が記録される虞がある。本実施形態では、このようなウォブリング動作における作動音の発生・記録を防ぐことができる。なお、駆動開始時における作動音は極めて小さく、音声を記録しない静止画撮影の際には問題とならない。
【0028】
超音波モータ30を停止させる際における駆動信号の周波数は、不機能周波数以上であれば良いものであるが、下記条件をクリアした周波数に設定することが好ましい。
すなわち、
[1]弾性体が異常な振動を起こしてしまうような別の振動モードが無いこと。
[2]他の機能で使用している周波数との干渉が無いこと。
[3]駆動回路の破壊など、異常を引き起こさないこと。
【0029】
以上、本実施形態によると、超音波モータ30への駆動信号のON/OFFを繰り返すことなく、ウォブリング動作を行うことができる。その結果、ウォブリング動作の際に超音波モータ30に駆動信号を入力した瞬間の作動音の発生がなく、作動音が図示しないマイクに伝達して記録(録音)されることを防ぐことができる。
【0030】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、振動アクチュエータとして超音波モータ30を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、超音波領域以外の振動を利用する振動アクチュエータとしてもよい。
(2)本実施形態においては、超音波モータ30が、カメラ1の焦点調節の駆動源として用いられる例を示したが、これに限らず、例えば、カメラのズーム動作の駆動源や、カメラの撮像系の一部を駆動して手振れを補正する手振れ補正機構の駆動源等に適用することができる。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0031】
1:カメラ、11:撮像素子、12:制御装置、12A:焦点情報検出部、12B:駆動回路、20:レンズ鏡筒、21:合焦レンズ、30:超音波モータ、31:振動子、31A:弾性体、31B:圧電体、32:回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械変換素子を有する振動子と、
前記振動子の振動によって前記振動子に対して相対移動する移動子と、
前記振動子に駆動電力の供給を継続した状態で周波数を変化させて前記移動子の移動および停止を制御する制御装置と、
を備えること、を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動アクチュエータであって、
前記制御装置は、駆動電力の周波数を不機能周波数以上に変化させることで前記移動子を停止制御すること、を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の振動アクチュエータを備える光学機器。
【請求項4】
電気機械変換素子を有する振動子と、前記振動子の振動によって前記振動子に対して相対移動する移動子と、を備える振動アクチュエータにおいて、前記振動子に駆動電力の供給を継続した状態で周波数を変化させて、前記移動子の移動および停止を制御すること、を特徴とする振動アクチュエータの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−152025(P2012−152025A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9029(P2011−9029)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】