振動アクチュエータ
【課題】駆動力を向上させると共に回転軸方向の小型化を図る振動アクチュエータを提供することを課題とする。
【解決手段】振動アクチュエータ101は、ステータ2と、回転子1と、分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を有するA相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2と、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を有するB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2とを備える。第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12は、電圧の印加時に撓む方向と異なる方向に分極されている。ステータ2には、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2から伝達するたわみ振動によって進行波が発生する。
【解決手段】振動アクチュエータ101は、ステータ2と、回転子1と、分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を有するA相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2と、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を有するB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2とを備える。第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12は、電圧の印加時に撓む方向と異なる方向に分極されている。ステータ2には、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2から伝達するたわみ振動によって進行波が発生する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
小型で高トルクを出力するアクチュエータとして、超音波振動を発生して駆動する振動アクチュエータが使用されている。
例えば、特許文献1には、振動アクチュエータの1つとして進行波型超音波モータが記載されている。この特許文献1の超音波モータは、弾性体に圧電セラミック等の圧電体を接合させて構成されたステータと、リングに摩擦係数が高い材料からなるスライダを接合させて構成されたロータと、ロータと一体に連結され超音波モータの外部に延びるシャフトとを有している。さらに、ロータは、そのスライダをステータの弾性体に接触させて、ステータに対して加圧されている。そして、圧電体には交互分極処理が施されており、圧電体に二種以上の高周波電圧を印加すると、ステータに弾性進行波が発生し、さらに、発生した弾性進行波によってステータの表面に楕円振動が発生する。この楕円振動によって、ステータに加圧接触されているスライダが摩擦駆動され、それによりロータ及びシャフトが回転し、シャフトを介して回転駆動力が外部に伝達される。
【0003】
また、特許文献2には、振動アクチュエータの1つとして、ボルト締めランジュバン型振動子を有する超音波モータが記載されている。この特許文献2の超音波モータの振動子は、ヘッドマス、縦振動用圧電素子、中間シリンダ、捩り振動用圧電素子、リアマスの順で積層されたこれらの部材を、貫通するボルトとナットとによって両側から締め付けることにより、形成されている。さらに、縦振動用圧電素子及び捩り振動用圧電素子に高周波電圧を印加すると、縦振動用圧電素子及び捩り振動用圧電素子が発生する複合振動によって、ヘッドマスの表面に楕円振動が発生し、それによりヘッドマスに加圧接触して配置されるロータが回転する。そして、ロータの回転駆動力は、ロータと一体のギヤを介して外部に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−91676号公報
【特許文献2】特公平7−48957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧電素子は、交流電圧が印加されることによって膨張及び収縮を繰り返す伸縮動作による振動を行うが、印加する電圧を大きくすると、圧電素子の膨張及び収縮する力が大きくなるため、振動アクチュエータの駆動力すなわち出力を大きくすることができる。
このため、特許文献1の進行波型超音波モータにおいて、印加する電圧を大きくすることによってその駆動力を大きくすることができるが、圧電素子は、圧縮力に対する強度は高いが引張力に対する強度が低いため、印加される電圧が大きいと膨張時に圧電素子に発生する引張応力に耐えきれずに破損することがある。
【0006】
ここで、特許文献2の超音波モータの振動子では、ナットとヘッドマスとでボルトを介して縦振動用圧電素子及び捩り振動用圧電素子に圧縮力を加え、電圧の印加時に縦振動用圧電素子及び捩り振動用圧電素子の内部に引張応力が生じないようにしている。
よって、特許文献1の進行波型超音波モータにおいて、特許文献2の超音波モータの振動子のように、圧電体の膨張方向であるシャフトの軸方向に沿った両側から圧縮力を加えて圧電体に引張応力が生じないようにすることによって、印加電圧が大きい場合でも圧電体の破損を防ぐことができる。しかしながら、圧電体に両側から圧縮力を加える場合、圧電体の両側には、ボルトの頭、ナット、ヘッドマス及びリアマスが配置されるため、特許文献1の進行波型超音波モータは、シャフトの回転軸方向に大型化してしまうという問題がある。
【0007】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、駆動力を向上させると共に回転軸方向の小型化を図る振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る振動アクチュエータは、ステータと、ステータに対して移動可能に接触させて設けられる移動体と、分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第一圧電素子体を有し、ステータに対して第一圧電素子体のたわみ振動を伝達可能に接触して設けられる第一振動素子部と、分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第二圧電素子体を有し、ステータに対して第二圧電素子体のたわみ振動を伝達可能に接触して設けられる第二振動素子部とを備え、第一圧電素子体及び第二圧電素子体は、電圧の印加時に撓む方向と異なる方向に分極され、移動体は、第一振動素子部及び第二振動素子部からステータに伝達したたわみ振動によって形成される進行波が発生するステータの部位と接触する。
【0009】
第一振動素子部は、第一圧電素子体と、第一圧電素子体を挟むようにして設けられる第一共振体及び第二共振体と、第一共振体及び第二共振体を連結する第一固定部材とを有する第一振動素子を少なくとも1つ備え、第二振動素子部は、第二圧電素子体と、第二圧電素子体を挟むようにして設けられる第三共振体及び第四共振体と、第三共振体及び第四共振体を連結する第二固定部材とを有する第二振動素子を少なくとも1つ備え、第一振動素子は、ステータに沿って、第一共振体、第一圧電素子体及び第二共振体が並ぶようにして配置され、第二振動素子は、ステータに沿って、第三共振体、第二圧電素子体及び第四共振体が並ぶようにして配置されてもよい。
【0010】
第一圧電素子体は、電圧が印加されると膨張又は収縮し且つ互いに異なる動きをするように分極された第一圧電素子及び第二圧電素子を有し、第一共振体及び第二共振体は、第一圧電素子及び第二圧電素子が膨張又は収縮する方向から第一圧電素子体を挟み、第二圧電素子体は、電圧が印加されると膨張又は収縮し且つ互いに異なる動きをするように分極された第三圧電素子及び第四圧電素子を有し、第三共振体及び第四共振体は、第三圧電素子及び第四圧電素子が膨張又は収縮する方向から第二圧電素子体を挟んでもよい。
【0011】
第一振動素子部及び第二振動素子部は、第一振動素子部からステータに伝達するたわみ振動及び第二振動素子部からステータに伝達するたわみ振動がそれぞれステータに別個の定在波を形成するように、互いに間隔をあけて設けられてもよい。
ステータは環状であり、第一振動素子及び第二振動素子は、ステータに沿って環状に配置されてもよい。
ステータは直線状であり、第一振動素子及び第二振動素子は、ステータに沿って直線状に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、振動アクチュエータは、駆動力を向上させると共に回転軸方向の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図2】図1のx−x線及びy−y線を含む面をIIの方向より見た模式断面平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面を示す模式断面側面図である。
【図4】実施の形態1に係る振動アクチュエータに印加する電圧の時間変化を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る振動アクチュエータの各振動素子の変位の時間変化を示す図である。
【図6】実施の形態1に係る振動アクチュエータのステータに発生する定在波を示す図である。
【図7】実施の形態1に係る振動アクチュエータのステータに発生する進行波を示す図である。
【図8】実施の形態1に係る振動アクチュエータの振動素子の配置を変更した変形例を示すステータから振動素子に向かって見た模式断面平面図である。
【図9】実施の形態1に係る振動アクチュエータの振動素子の構成を変更した変形例を示すステータから振動素子に向かって見た模式断面平面図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータの構成を示すステータから振動素子に向かって見た模式断面平面図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る振動アクチュエータの構成を示す模式平面図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係る振動アクチュエータの構成を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、この発明の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、図1〜3を用いて、この発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータ101の構成を示す。
【0015】
図1を参照すると、振動アクチュエータ101は、外部に接続されて回転駆動力を伝達するための回転子1を有している。回転子1は、円盤状のロータ部1bと、ロータ部1bの互いに平行に対向する平坦な面である上面1ba及び下面1bbの中心を貫通しこれらの面に対して垂直に延びる円柱状の軸部1aとを、一体に有している。軸部1a及びロータ部1bは、金属等から製作されており、高い剛性を有している。
さらに、振動アクチュエータ101は、回転子1のロータ部1bの下面1bbに接触するようにして配置された略円筒状のステータ2を有している。なお、回転子1は、移動体を構成している。
【0016】
ここで、説明の便宜上、回転子1の軸部1aに沿って回転子1のロータ部1bからステータ2に向かう方向を下方向と呼び、その反対方向を上方向と呼ぶ。なお、振動アクチュエータ101が使用される際、その使用時の向きは、図1に示されるような回転子1がステータ2の上方向となる向きに限定されるものでない。
【0017】
ステータ2における回転子1と接触する上面2aには、上面2aの外周から回転子1の軸部1aに向かう方向に延びる溝2bが複数形成され、これにより、溝2b同士の間に、回転子1に向かって突出する略直方体状の爪部2cが形成されている。そして、ステータ2は、この複数の爪部2cを回転子1に接触させている。さらに、ステータ2は、上面2aからその反対側の下面2dに向かう方向及びその反対方向、つまり上下方向に可撓性を有している。
【0018】
また、振動アクチュエータ101は、ステータ2の下面2dに接合させた略直方体状の複数の振動素子を有している。この複数の振動素子は、同形状をしたA相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2によって構成されており、それぞれの一側面がステータ2に接合されている。
ここで、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2は、第一振動素子部を構成し、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、第二振動素子部を構成している。
【0019】
さらに、振動アクチュエータ101は、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2のそれぞれにおけるステータ2と反対側の側面に接合させた円筒状の支持部材3を有している。支持部材3は、その平坦な上面3aがA相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2のそれぞれの一側面に接合されている。そして、支持部材3は、上面3aからその反対側の下面3bに向かう方向及びその反対方向、つまり上下方向に可撓性を有している。
【0020】
また、振動アクチュエータ101は、支持部材3に対して、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2と反対側に位置する支持台4を有している。支持台4は、円筒状の形状をして突出する台座部4aを有し、台座部4aには、支持部材3が、台座部4aに対向する下面3bと台座部4aとの間に間隙を有するようにして、固定されている。
【0021】
さらに、回転子1の軸部1aが、支持台4に向かって延びており、支持台4との間にバネ等の予圧機構5を介して、支持台4に回転可能に連結されている。予圧機構5は、回転子1の軸部1aに対して支持台4に向かう方向Fに引張する力を加えている。このため、軸部1aと一体の回転子1のロータ部1bは、予圧機構5の引張力によってステータ2に押し付けられている。つまり、回転子1のロータ部1bには、ステータ2に対して加圧する予圧力が付与されている。
また、振動アクチュエータ101は、通常、回転子1のロータ部1b、ステータ2、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1、B相第二振動素子B2、及び支持部材3を上方から覆う図示しないカバーが、支持台4に取り付けられ、このカバーから回転子1の軸部1aが突出している。
【0022】
さらに、図2を参照すると、図1においてステータ2の下面2dを通るx−x線及びy−y線を含む面をステータ2から支持台4に向かうIIの方向より見た模式断面平面図が示されており、ステータ2に対するA相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2の配置状態が示されている。
【0023】
A相第一振動素子A1は、矩形状の上面A1aをステータ2の下面2dと接触させている。そして、上面A1aは、ステータ2の下面2dの中央を通る環状の中心線CL2の中心点C2から中心線CL2に向かって中心角α1を形成する2本の直線を放射状に延ばしたとき、下面2dにおいて上記の2本の直線によって挟まれる領域D1内にほぼ収まるような位置及び形状で配置されている。このとき、上面A1aは、領域D1において、中心線CL2が領域D1の端部と交わる点の一方である交点D1bから他方である交点D1aまで及ぶように位置している。
【0024】
A相第二振動素子A2は、A相第一振動素子A1に対して、中心点C2を中心として紙面上で反時計回りの方向である方向R2側に隣接するようにして配置され、矩形状の上面A2aをステータ2の下面2dと接触させている。そして、上面A2aは、中心点C2を中心として中心角α2を形成する2本の直線によって挟まれる下面2dの領域D2内にほぼ収まるような位置及び形状で配置されている。なお、下面2dにおいて領域D2は領域D1と隣接し、上面A2aは、領域D2において、中心線CL2が領域D2の端部と交わる点の一方である交点D1aから他方である交点D2aまで及ぶように位置している。
【0025】
B相第一振動素子B1は、A相第一振動素子A1に対して、中心点C2を中心として紙面上で時計回りの方向である方向R1側に配置され、矩形状の上面B1aをステータ2の下面2dと接触させている。そして、上面B1aは、中心点C2を中心として中心角β1を形成する2本の直線によって挟まれる下面2dの領域D3内にほぼ収まるような位置及び形状で配置されている。このとき、上面B1aは、領域D3において、中心線CL2が領域D3の端部と交わる点の一方である交点D3aから他方である交点D3bまで及ぶように位置している。なお、下面2dにおいて、領域D3は、領域D1との間に領域D5の間隙を有する位置となっており、領域D5は、中心点C2を中心として中心角γを形成する2本の直線によって挟まれる下面2dの領域である。
【0026】
B相第二振動素子B2は、B相第一振動素子B1に対して、方向R1側に隣接するようにして配置され、矩形状の上面B2aをステータ2の下面2dと接触させている。そして、上面B2aは、中心点C2を中心として中心角β2を形成する2本の直線によって挟まれる下面2dの領域D4内にほぼ収まるような位置及び形状で配置されている。なお、下面2dにおいて領域D4は領域D3と隣接し、上面B2aは、領域D4において、中心線CL2が領域D4の端部と交わる点の一方である交点D3bから他方である交点D4bまで及ぶように位置している。
よって、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、同一円周上、つまり中心線CL2上で1つの輪を形成するようにして並べられている。そして、詳細は後述するが、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2がステータ2に形成する定在波と、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2がステータ2に形成する定在波とが、ステータ2の周方向である中心線CL2に沿って進行する進行波を発生するには、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、上述のような同一円周にあることが好ましい。
【0027】
なお、本実施の形態1では、中心角α1、α2、β1及びβ2はいずれも、π/4(0.25π)ラジアン(rad)とし、中心角γは、π/8(0.125π)ラジアン(rad)とする。
【0028】
次に、図3を参照すると、図2においてA相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2の中央を通るIII−III線に沿った模式断面側面図が示されている。
A相第一振動素子A1は、いずれもが略直方体状をした第一共振部材13、第一圧電素子部11及び第二共振部材14を有している。
第一圧電素子部11は、第一圧電素子部11を貫通する貫通穴11aを有している。さらに、貫通穴11aには、外表面に雄ねじが形成された棒状の締結ねじ15が貫通挿入され、締結ねじ15は、貫通穴11aの両端から突出している。
【0029】
また、第一共振部材13は、内側に雌ねじが形成されたねじ穴13aを有している。第一共振部材13は、第一圧電素子部11の両側から突出する締結ねじ15aの一方の突出部分をねじ穴13aに螺合させている。
また、第二共振部材14は、内側に雌ねじが形成されたねじ穴14aを有している。第二共振部材14は、第一圧電素子部11の両側から突出する締結ねじ15aの他方の突出部分をねじ穴14aに螺合させている。
そして、締結ねじ15aに螺合している第一共振部材13及び第二共振部材14を第一圧電素子部11に対して締め付けることによって、第一共振部材13及び第二共振部材14が、第一圧電素子部11に対して接触し押し付けられて一体となる。このとき、第一圧電素子部11は、第一共振部材13と第二共振部材14とから締結ねじ15aを介して圧縮力を受けている。
【0030】
よって、A相第一振動素子A1では、第一圧電素子部11が第一共振部材13及び第二共振部材14によって挟まれ、すなわち、第一共振部材13、第一圧電素子部11及び第二共振部材14がこの順で直列に配置されて、締結ねじ15を介して締結されることによって一体になっている。そして、A相第一振動素子A1は、ステータ2と支持部材3との間で、ステータ2の下面2d及び支持部材3の上面3aに沿って第一共振部材13、第一圧電素子部11及び第二共振部材14が順次並ぶようにして配置されている。さらに、図2に示されるように、A相第一振動素子A1は、ステータ2の下面2dに対して、ステータ2の周方向である中心線CL2に沿って領域D1から領域D2に向かう方向に第一共振部材13、第一圧電素子部11及び第二共振部材14が順次並ぶようにして配置されている。
ここで、A相第一振動素子A1は、第一振動素子を構成し、A相第一振動素子A1の第一共振部材13、第一圧電素子部11、第二共振部材14及び締結ねじ15はそれぞれ、第一共振体、第一圧電素子体、第二共振体及び第一固定部材を構成している。
【0031】
図3に戻り、また、第一圧電素子部11は、第一共振部材13から第二共振部材14に向かって、略矩形板状をした電極板16、略直方体状をした圧電素子10及び略矩形板状をした電極板17が順次重ね合わされた積層構造を有している。そして、圧電素子10に電圧を印加するための駆動回路6が別に設けられており、駆動回路6は電極板16と電気的に接続されている。一方、電極板17は、電気的に接地されている。
【0032】
さらに、圧電素子10は、ステータ2の下面2d及び支持部材3の上面3aに向かう上下の方向に離れるような形状に分割されている。つまり、圧電素子10は、締結ねじ15の中心軸を通り且つステータ2の下面2dと平行である面から下面2dにわたる第一圧電素子10aと、上記平行である面から支持部材3の上面3aにわたる第二圧電素子10bとによって構成されている。
第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bは、それぞれ締結ねじ15の軸方向(第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bの厚み方向)に分極され、さらに、電圧が印加されると膨張と収縮との反対の変形挙動を行うように互いに逆極性に分極されている。つまり、電極板16に電圧が印加された場合、例えば、第一圧電素子10aが、締結ねじ15の軸方向両端側に向かう方向である図面上の方向Pに膨張するとき、第二圧電素子10bは、締結ねじ15の軸方向中央側に向かう方向である図面上の方向Qに収縮する。
【0033】
このため、電極板16に交流電圧が印加されると、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bが互いに方向Pへの膨張及び方向Qへの収縮の反対の変形挙動を行うことによって、圧電素子10、すなわち第一圧電素子部11が、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bの分極方向と垂直な方向となる、ステータ2の下面2dに向かう上方向及び支持部材3の上面3aに向かう下方向に交互に撓む動作を行う。このとき、第一圧電素子部11と共に第一共振部材13及び第二共振部材14が動作し、A相第一振動素子A1の全体が、圧電素子10の厚み方向(締結ねじ15の軸方向)の中心部を、たわみの山の頂部又は谷の頂部として、つまり振動の腹として、ステータ2の下面2dに向かう上方向及び支持部材3の上面3aに向かう下方向に交互に撓むたわみ振動を発生する。
なお、A相第一振動素子A1のたわみ面である上面A1aにおいて、圧電素子10の厚み方向(締結ねじ15の軸方向)の中心部には、点A1cが位置し、点A1cは、領域D1(図2参照)の中央且つ中心線CL2(図2参照)上に位置する。
ここで、A相第一振動素子A1の第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bはそれぞれ、第一圧電素子及び第二圧電素子を構成している。
【0034】
次に、A相第二振動素子A2は、第一圧電素子部11を除きA相第一振動素子A1と同様の構成を有し、第一共振部材13、第二圧電素子部12、第二共振部材14及び締結ねじ15によって構成されている。
A相第二振動素子A2では、第一共振部材13、第二圧電素子部12及び第二共振部材14が、この順で直列に配置され、締結ねじ15を介して締結されて一体になっている。そして、A相第二振動素子A2は、ステータ2と支持部材3との間で、その第一共振部材13をA相第一振動素子A1の第二共振部材14に隣接させ、ステータ2の下面2d及び支持部材3の上面3aに沿って第一共振部材13、第二圧電素子部12及び第二共振部材14が順次並ぶようにして配置されている。さらに、図2に示されるように、A相第二振動素子A2は、ステータ2の下面2dに対して、中心線CL2に沿って領域D1から領域D2に向かう方向に第一共振部材13、第二圧電素子部12及び第二共振部材14が順次並ぶようにして配置されている。
ここで、A相第二振動素子A2は、第一振動素子を構成し、A相第二振動素子A2の第一共振部材13、第二圧電素子部12、第二共振部材14及び締結ねじ15はそれぞれ、第一共振体、第一圧電素子体、第二共振体及び第一固定部材を構成している。
【0035】
図3に戻り、また、第二圧電素子部12は、第一共振部材13から第二共振部材14に向かって、電極板16、略直方体状をした圧電素子20及び電極板17が順次重ね合わされた積層構造を有している。そして、第二圧電素子部12の電極板16は、駆動回路6と電気的に接続され、電極板17は、電気的に接地されている。
さらに、第二圧電素子部12の電極板16には、駆動回路6によって、A相第一振動素子A1の第一圧電素子部11の電極板16と同じ位相の交流電圧が印加されるようになっている。
これにより、第二圧電素子部12及び第一圧電素子部11、すなわちA相第二振動素子A2及びA相第一振動素子A1と駆動回路6とにより1つの回路が形成され、この回路はA相を構成している。
【0036】
さらに、圧電素子20は、ステータ2の下面2d及び支持部材3の上面3aに向かう上下の方向に離れるような形状に分割されている。圧電素子20は、圧電素子10と同様に、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bによって構成されるが、第二圧電素子10bは、締結ねじ15の中心軸を通り且つステータ2の下面2dと平行である面から下面2dにわたって配置され、第一圧電素子10aは、上記平行である面から支持部材3の上面3aにわたって配置されている。
よって、圧電素子20は、第一圧電素子10aがステータ2に接触し第二圧電素子10bが支持部材3に接触している圧電素子10に対して、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bの配置を上下方向に反対にしたものであり、第二圧電素子10bがステータ2に接触し第一圧電素子10aが支持部材3に接触している構成となっている。
ここで、A相第二振動素子A2の第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bはそれぞれ、第一圧電素子及び第二圧電素子を構成している。
【0037】
また、第二圧電素子部12の電極板16及び第一圧電素子部11の電極板16には、駆動回路6によって同じ位相の交流電圧が印加されるが、このような同じ位相の電圧が印加されると、第二圧電素子部12は、第一圧電素子部11が撓む方向と反対方向に撓む。
このため、A相第二振動素子A2は、交流電圧が印加されたとき、A相第一振動素子A1のように、圧電素子20の厚み方向(締結ねじ15の軸方向)の中心部を振動の腹として、ステータ2の下面2dに向かう上方向及び支持部材3の上面3aに向かう下方向に交互に撓むたわみ振動を発生する。しかしながら、A相第二振動素子A2のたわみ振動は、A相第一振動素子A1と同等のたわみ量を有しつつもA相第一振動素子A1のたわみ方向と反対方向に撓む振動となる。
なお、A相第二振動素子A2のたわみ面である上面A2aにおいて、圧電素子20の厚み方向(締結ねじ15の軸方向)の中心部には、点A2cが位置し、点A2cは、領域D2(図2参照)の中央且つ中心線CL2(図2参照)上に位置する。
【0038】
また、図2を参照すると、B相第一振動素子B1は、A相第一振動素子A1と同様の構成を有し、B相第二振動素子B2は、A相第二振動素子A2と同様の構成を有している。
つまり、B相第一振動素子B1は、第一共振部材13、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10b(図3参照)を有する第一圧電素子部11、第二共振部材14、並びに締結ねじ15によって構成され、B相第二振動素子B2は、第一共振部材13、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10b(図3参照)を有する第二圧電素子部12、第二共振部材14、並びに締結ねじ15によって構成されている。
【0039】
ここで、B相第一振動素子B1は、第二振動素子を構成し、B相第一振動素子B1の第一共振部材13、第一圧電素子部11、第二共振部材14及び締結ねじ15はそれぞれ、第三共振体、第二圧電素子体、第四共振体及び第二固定部材を構成している。また、B相第二振動素子B2は、第二振動素子を構成し、B相第二振動素子B2の第一共振部材13、第二圧電素子部12、第二共振部材14及び締結ねじ15はそれぞれ、第三共振体、第二圧電素子体、第四共振体及び第二固定部材を構成している。さらに、B相第一振動素子B1の第一圧電素子部11及びB相第二振動素子B2の第二圧電素子部12の第一圧電素子10a及び第二圧電素子10b(図3参照)はそれぞれ、第三圧電素子及び第四圧電素子を構成している。
【0040】
B相第一振動素子B1は、ステータ2の下面2dにおいて中心線CL2に沿って領域D3から領域D4に向かう方向に第一共振部材13、第一圧電素子部11及び第二共振部材14が順次並ぶようにして、配置されている。さらに、B相第二振動素子B2は、その第一共振部材13をB相第一振動素子B1の第二共振部材14に隣接させ、ステータ2の下面2dにおいて中心線CL2に沿って領域D3から領域D4に向かう方向に第一共振部材13、第二圧電素子部12及び第二共振部材14が順次並ぶようにして、配置されている。
【0041】
また、B相第一振動素子B1の第一圧電素子部11及びB相第二振動素子B2の第二圧電素子部12は、駆動回路6(図3参照)に電気的に接続されており、駆動回路6によって同じ位相の交流電圧が印加されるようになっている。
これにより、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12、すなわち、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2と駆動回路6とは1つの回路を形成し、この回路はB相を構成している。なお、B相は、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2が構成するA相と電気的に分離されている。
【0042】
よって、B相第一振動素子B1は、交流電圧が印加されたとき、第一圧電素子部11の厚み方向(締結ねじ15の軸方向)の中心部を振動の腹として、ステータ2の下面2dに向かう上方向及び支持部材3の上面3a(図3参照)に向かう下方向に交互に撓むたわみ振動を発生する。また、B相第二振動素子B2は、交流電圧が印加されたとき、第二圧電素子部12の厚み方向(締結ねじ15の軸方向)の中心部を振動の腹として、ステータ2の下面2dに向かう上方向及び支持部材3の上面3aに向かう下方向に交互に撓むたわみ振動を発生する。しかしながら、B相第二振動素子B2のたわみ振動は、B相第一振動素子B1と同等のたわみ量を有しつつもB相第一振動素子B1のたわみ方向と反対方向に撓む振動となる。
【0043】
なお、B相第一振動素子B1のたわみ面である上面B1aにおいて、第一圧電素子部11の厚み方向の中心部には、点B1cが位置し、点B1cは、領域D3の中央且つ中心線CL2上に位置する。また、B相第二振動素子B2のたわみ面である上面B2aにおいて、第二圧電素子部12の厚み方向の中心部には、点B2cが位置し、点B2cは、領域D4の中央且つ中心線CL2上に位置する。
【0044】
次に、図1〜7を用いて、この発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータ101の動作を示す。
図1を参照すると、駆動回路6(図3参照)によって、A相第一振動素子A1の第一圧電素子部11、A相第二振動素子A2の第二圧電素子部12、B相第一振動素子B1の第一圧電素子部11及びB相第二振動素子B2の第二圧電素子部12に交流電圧が印加されると、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2はそれぞれ、超音波振動であるたわみ振動を発生する。
【0045】
このとき、可撓性を有するステータ2及び支持部材3は、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2と共に撓むため、ステータ2にもたわみ振動が発生する。さらに、ステータ2では、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2のそれぞれによるたわみ振動が複合し、ステータ2の円周、すなわち中心線CL2(図2参照)に沿って進む進行波が発生する。
【0046】
発生した進行波によって、ステータ2の爪部2cの先端には、爪部2cから回転子1の軸部1aに向かう軸を中心に回る楕円振動が発生する。そして、爪部2cは、その先端に発生した楕円振動によって、回転子1のロータ部1bの下面1bbを引っ掻くように動作し、それにより、ロータ部1bは、爪部2cとの間の摩擦力によってその周方向となる方向R1又は方向R2に回転する。よって、振動アクチュエータ101は、回転子1の軸部1aをその中心軸を中心に方向R1又は方向R2に回転させ、振動アクチュエータ101の外部で軸部1aに接続されたものに回転駆動力を伝達する。なお、軸部1aの回転方向は、印加する交流電圧を制御することによって、制御される。また、上述から、振動アクチュエータ101は、進行波型の振動アクチュエータを構成している。
ここで、ステータ2の爪部2cは、進行波が発生するステータの部位を構成している。
【0047】
次に、ステータ2における進行波の発生の仕組みを詳述する。
図2及び図4を参照すると、駆動回路6(図3参照)によって、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2が構成するA相には、最大電圧がV1である所定の周波数fの交流電圧vaが印加され、このA相に印加される交流電圧vaの時間変化は、図4の実線曲線で示される。そして、交流電圧vaは、次の式で示される。
va=V1cos2πft (式1)
なお、fは、交流電圧vaの周波数であり、tは、経過時間である。
また、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2が構成するB相には、A相の交流電圧vaと最大電圧V1及び周波数fが同一であるが交流電圧vaに対して周期の4分の1に相当する位相π/2を進ませた交流電圧vbが印加され、このB相に印加される交流電圧vbの時間変化は、図4の破線曲線で示される。そして、交流電圧vbは、次の式で示される。
vb=V1cos(2πft+π/2) (式2)
なお、fは、交流電圧vbの周波数であり、tは、経過時間である。
【0048】
また、図3を参照すると、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2に正の電圧が印加されている場合、A相第一振動素子A1は、第一圧電素子部11をステータ2に向かって突出させるようにして撓み、A相第二振動素子A2は、第二圧電素子部12を支持部材3に向かって突出させるようにして撓む。一方、負の電圧が印加されている場合、A相第一振動素子A1は、第一圧電素子部11を支持部材3に向かって突出させるようにして撓み、A相第二振動素子A2は、第二圧電素子部12をステータ2に向かって突出させるようにして撓む。
同様に、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2(図2参照)に正の電圧が印加されている場合、B相第一振動素子B1は、第一圧電素子部11(図2参照)をステータ2に向かって突出させるようにして撓み、B相第二振動素子B2は、第二圧電素子部12(図2参照)を支持部材3に向かって突出させるようにして撓む。一方、負の電圧が印加されている場合、B相第一振動素子B1は、第一圧電素子部11を支持部材3に向かって突出させるようにして撓み、B相第二振動素子B2は、第二圧電素子部12をステータ2に向かって突出させるようにして撓む。
【0049】
そして、図4、式1及び式2に示される交流電圧va及びvbが印加された場合、A相第一振動素子A1の上面A1aの点A1c、A相第二振動素子A2の上面A2aの点A2c、B相第一振動素子B1の上面B1aの点B1c、及びB相第二振動素子B2の上面B2aの点B2cのそれぞれにおける変位の時間変化が、図5のグラフ(i)〜グラフ(iv)に示される。
【0050】
なお、図5において、それぞれの変位は、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2の厚み方向であるステータ2から支持部材3に向かう上下方向の変位である。そして、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2に撓みが発生していない場合、点A1c、点A2c、点B1c及び点B2cの変位は0である。撓みにより点A1c、点A2c、点B1c及び点B2cがステータ2に向かう上方向に変位した場合、変位は正の値をとり、その最大変位はAとなる。一方、点A1c、点A2c、点B1c及び点B2cが支持部材3に向かう下方向に変位した場合、変位は負の値をとり、その最小変位は−Aとなる。
【0051】
図2に戻り、交流電圧vaの印加によりA相第一振動素子A1は、ステータ2に対して、交点D1a及びD1bの位置を振動の節としてこれら節の間に1つの振動の山又は谷を形成するようにして領域D1のステータ2を上下方向に撓ませるたわみ振動を発生させる。同時に、交流電圧vaの印加によりA相第二振動素子A2は、ステータ2に対して、交点D1a及びD2aの位置を振動の節としてこれら節の間に1つの振動の山又は谷を、ステータ2の領域D1のたわみ方向と反対方向に形成するようにして領域D2のステータ2を上下方向に撓ませるたわみ振動を発生させる。
【0052】
さらに、領域D1及びD2のたわみ振動がステータ2を伝達し、それによって、ステータ2には、領域D1及びD2をそれぞれ半波長とした中心線CL2に沿う第一定在波が生成される。そして、第一定在波は、回転子1(図1参照)に向かう上方向及び支持部材3(図1参照)に向かう下方向に振幅する。
【0053】
また、領域D1は、中心点C2を中心とする中心角α1の領域であり、領域D2は、中心点C2を中心とする中心角α2の領域であり、中心角α1及びα2はいずれも、π/4ラジアンである。よって、ステータ2に形成される第一定在波は、領域D1及び領域D2を合わせた中心角がπ/2ラジアンの領域に1つの波長を形成する定在波であり、ステータ2の全周では4つの波長を形成する定在波となる。すなわち、第一定在波は、円環4次モードの定在波となる。
【0054】
ここで、図2において、中心点C2から交点D3aに延ばした線を基準線L1とする。そして、基準線L1の位置を位相0ラジアンとし、中心点C2を中心として方向R1に角度θラジアンだけ基準線L1を回転させた時、回転後の基準線L1の位置を位相θラジアンとする。
このとき、B相第一振動素子B1の点B1cの位置を位相θ1、B相第二振動素子B2の点B2cの位置を位相θ2、A相第二振動素子A2の点A2cの位置を位相θ3、A相第一振動素子A1の点A1cの位置を位相θ4とすると、位相θ1、位相θ2、位相θ3及び位相θ4はそれぞれ、π/8ラジアン、3π/8ラジアン、3π/2ラジアン及び7π/4ラジアンとなる。
【0055】
そして、図6を参照すると、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2のたわみ振動がステータ2に形成する第一定在波による、ステータ2の中心線CL2上の各位置における変位が実線曲線で示されている。
図6では、ステータ2の中心線CL2上の各位置は、基準線L1の位置を0ラジアンとする位相で示され、図示される実線曲線は、第一定在波の振幅が最大振幅である振幅Aになった時の状態を示している。なお、図6において、変位は、ステータ2の厚み方向である回転子1(図1参照)から支持部材3(図1参照)に向かう上下方向の変位であり、回転子1に向かう上方向の変位は正の値をとり、支持部材3に向かう下方向の変位は負の値をとる。
そして、ステータ2の中心線CL2上での位置の位相をθとすると、位相θの位置での円環4次モードの第一定在波によるステータ2の変位uaは、式1から次の式で示される。
ua=Acos4θcos2πft (式3)
なお、fは、交流電圧va(式1参照)の周波数であり、tは、経過時間である。
【0056】
また、図2に戻り、交流電圧vbの印加によりB相第一振動素子B1は、ステータ2に対して、交点D3a及びD3bの位置を振動の節とした1つの振動の山又は谷を形成するようにして領域D3のステータ2を上下方向に撓ませるたわみ振動を発生させる。同時に、交流電圧vbの印加によりB相第二振動素子B2は、ステータ2に対して、交点D3b及びD4bの位置を振動の節とした1つの振動の山又は谷を、領域D3のたわみ方向と反対方向に形成するようにして領域D4のステータ2を上下方向に撓ませるたわみ振動を発生させる。これによって、ステータ2には、領域D3及びD4をそれぞれ半波長とした中心線CL2に沿う第二定在波が生成され、第二定在波は、回転子1(図1参照)に向かう上方向及び支持部材3(図1参照)に向かう下方向に振幅する。
【0057】
また、領域D3は、中心点C2を中心とする中心角β1の領域であり、領域D4は、中心点C2を中心とする中心角β2の領域であり、中心角β1及びβ1はいずれも、π/4ラジアンである。よって、ステータ2に形成される第二定在波は、領域D3及び領域D4を合わせた中心角がπ/2ラジアンの領域に1つの波長を形成する定在波であり、ステータ2の全周では4つの波長を形成する定在波となる。すなわち、第二定在波は、円環4次モードの定在波でとなる。
【0058】
また、領域D5の中心角γがπ/8ラジアンであるため、第二定在波の節となる交点D3aの位置と、第一定在波の節となる交点D1bの位置との位相差はπ/8ラジアンとなる。一方、第一定在波及び第二定在波の1波長が形成される領域は、π/2ラジアンを中心角とする領域に相当するため、領域D5は、第一定在波及び第二定在波の1波長の1/4に相当する。よって、第二定在波及び第一定在波は、互いに1/4波長ずれた状態でステータ2に形成される。
【0059】
そして、図6を参照すると、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2のたわみ振動がステータ2に形成する第二定在波による、ステータ2の中心線CL2上の各位置における変位が破線曲線で示されている。なお、図示される破線曲線は、図示される第一定在波と同時に形成されている第二定在波を示している。
さらに、ステータ2の中心線CL2上での位置の位相をθとすると、位相θの位置での円環4次モードの第二定在波によるステータ2の変位ubは、式2から次の式で示される。
ub=Acos{4(θ+π/8)}cos(2πft+π/2)
=Acos(4θ+π/2)cos(2πft+π/2) (式4)
なお、fは、交流電圧vb(式2参照)の周波数であり、tは、経過時間である。
【0060】
上述のように、ステータ2には、第一定在波及び第二定在波が生じるが、この2つの定在波は、いずれもが同一の円周である中心線CL2に沿って形成されているため、互いに重なり合うことで進行波を形成する。
そして、図7を参照すると、形成された進行波による、ステータ2の中心線CL2上の各位置における変位が実線曲線で示されている。なお、図7において、変位は、図6と同様に、ステータ2の厚み方向の変位であり、上方向の変位は正の値をとり、下方向の変位は負の値をとる。また、図示される実線曲線は、ある特定の時刻における進行波による変位を示している。
さらに、ステータ2の中心線CL2上での位置の位相をθとすると、位相θの位置での進行波によるステータ2の変位uは、式3及び式4から次の式で示される。
u=ua+ub
=Acos4θcos2πft+Acos(4θ+π/2)cos(2πft+π/2)
=Acos(4θ−2πft) (式5)
【0061】
よって、進行波は、図7において位相θの正方向である方向Wに進行する波であり、図2において、B相第一振動素子B1からB相第二振動素子B2に向かう方向R1に進行する。
上述のようにして、ステータ2に、その中心線CL2(図2参照)に沿って進行する進行波が発生し、そして、進行波の進行によって、ステータ2の爪部2c(図1参照)の先端には、楕円振動が発生する。なお、ステータ2の中心線CL2に沿って振幅Aを有して進行する進行波を発生させるためには、中心線CL2に沿って振幅Aの第一定在波及び第二定在波を発生させることが好ましく、そのためには、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2が、同一の円周上である中心線CL2上で1つの輪を形成するようにして並べられることが好ましい。
【0062】
上述の説明から、実施の形態1に係る振動アクチュエータ101は、ステータ2と、ステータ2に対して移動可能に接触させて設けられる回転子1と、分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を有し、ステータ2に対して第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12のたわみ振動を伝達可能に接触して設けられるA相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2と、分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を有し、ステータ2に対して第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12のたわみ振動を伝達可能に接触して設けられるB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2とを備え、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12は、電圧の印加時に撓む方向と異なる方向に分極され、回転子1は、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2からステータ2に伝達したたわみ振動によって形成される進行波が発生するステータ2の爪部2cと接触する。
【0063】
このとき、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2からステータ2にたわみ振動を加える方向と、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12の分極方向とが異なる。そして、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12に対して、たわみ振動時に内部に発生する引張応力を低減する場合、分極方向から圧縮力を付与すればよい。よって、圧縮力を付与する部材は、ステータ2とA相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2とが積層される方向(積層方向)と異なる方向に配置することができるため、振動アクチュエータ101がこの積層方向に大型化することを抑えることが可能になる。従って、振動アクチュエータ101は、発生する引張応力を低減することにより第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12への印加電圧を増大させてその回転駆動力を増大させることを可能にすると共に、振動アクチュエータ101の回転軸方向の小型化を図ることを可能にする。
【0064】
また、振動アクチュエータ101は、A相に、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12と、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を挟むようにして設けられる第一共振部材13及び第二共振部材14と、第一共振部材13及び第二共振部材14を連結する締結ねじ15とを有するA相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2を備える。さらに、振動アクチュエータ101は、B相に、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12と、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を挟むようにして設けられる第一共振部材13及び第二共振部材14と、第一共振部材13及び第二共振部材14を連結する締結ねじ15とを有するB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2を備える。そして、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2は、ステータ2に沿って、第一共振部材13、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12、及び第二共振部材14が並ぶようにして配置され、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、ステータ2に沿って、第一共振部材13、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12、及び第二共振部材14が並ぶようにして配置される。
【0065】
これによって、第一共振部材13及び第二共振部材14は、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12を拘束しさらに締め付けることによってこれらに圧縮力を付与することができるため、膨張時に第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12に発生する引張応力を低減しさらには引張応力を発生させなくすることもできる。よって、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12に印加する電圧を高くすることができるため、振動アクチュエータ101の回転駆動力をより増大させることが可能になる。さらに、第一共振部材13、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12、及び第二共振部材14は、ステータ2に沿って並ぶようにして配置されるため、回転子1及びステータ2の積層方向である回転子1の軸部1aの軸方向において、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2、並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2の厚さを小さく抑えることができる。よって、振動アクチュエータ101は、扁平形状で製作することができる。さらに、回転子1及びステータ2の大きさに合わせて、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2の数量を変更することによって、回転子1及びステータ2の大きさが変わる毎にその大きさを変えることなく、回転子1を回転駆動することができる。よって、同形状のA相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2の汎用性を向上させ、製作コストを低減することが可能になる。
【0066】
また、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12は、電圧が印加されると膨張又は収縮し且つ互いに異なる動きをするように分極された第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bを有し、第一共振部材13及び第二共振部材14は、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bが膨張又は収縮する方向から第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を挟む。このとき、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bが互いに異なる膨張動作及び収縮動作をすることによって、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12は、分極方向と異なる方向に撓む動作を行うことができる。さらに、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bは、膨張する方向と反対方向から第一共振部材13及び第二共振部材14による圧縮力を受けるため、引張応力による破損を低減することが可能になる。
【0067】
また、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2とB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2とは、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2からステータ2に伝達するたわみ振動とB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2からステータ2に伝達するたわみ振動とがそれぞれ、ステータ2に別個の第一定在波及び第二定在波を形成するように、定在波の1/4波長に相当する中心角γの間隔を互いにあけて設けられる。このとき、第一定在波及び第二定在波が別個に形成されるため、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2とB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2とに印加する交流電圧の位相をずらすようにして調節することにより、第一定在波及び第二定在波が、ステータ2に進行波を効果的に形成することが可能になる。
ステータ2は円筒状すなわち環状であり、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2、並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、ステータ2に沿って環状に配置される。ステータ2が環状であることによって、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2、並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2から伝達したたわみ振動は、ステータ2の円周に沿って全体に伝播する。よって、A相第一振動素子A1とB相第一振動素子B1が少なくとも1つずつあれば、ステータ2全体に進行波を発生させることができるため、コストを低減することが可能になる。
【0068】
また、実施の形態1の振動アクチュエータ101では、ステータ2において、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2によって円環4次モードの第一定在波を形成し、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2によって円環4次モードの第二定在波を形成していたが、これに限定されるものでなく、以下のような変形例を挙げることができる。
【0069】
(変形例1)
図8に示すように、ステータ2に対して、1つのA相振動素子A21と、1つのB相振動素子B21とを配置し、A相振動素子A21及びB相振動素子B21のそれぞれによって円環4次モードの第一定在波及び第二定在波を形成するようにしてもよい。
このとき、A相振動素子A21は、中心点C2を中心として中心角α(αはπ/2ラジアンである)とするステータ2の下面2dの領域の端部から端部まで及ぶように位置し、B相振動素子B21は、中心点C2を中心として中心角β(βはπ/2ラジアンである)とするステータ2の下面2dの領域の端部から端部まで及ぶように位置している。そして、A相振動素子A21及びB相振動素子B21はいずれも、第一共振部材13、第一圧電素子部11、第二共振部材14、並びに、第一共振部材13及び第二共振部材14を第一圧電素子部11に対して押し付けて一体にする締結ねじ215によって構成されている。
【0070】
A相振動素子A21は、交流電圧が印加されると、ステータ2の下面2dにおける中心角α(π/2ラジアン)の領域を1つの波長とする下面2dの周方向に沿った第一定在波を形成し、この第一定在波は、ステータ2の全周では4つの波長を形成する円環4次モードの定在波となる。同様に、B相振動素子B21は、交流電圧が印加されると、ステータ2の下面2dにおける中心角β(π/2ラジアン)の領域を1つの波長とする下面2dの周方向に沿った第二定在波を形成し、この第二定在波は、ステータ2の全周では4つの波長を形成する円環4次モードの定在波となる。
【0071】
さらに、紙面上で時計回りにA相振動素子A21からB相振動素子B21に向かう方向にあるA相振動素子A21とB相振動素子B21との間の間隙領域について、その中心角γを3/8πラジアンとすると、A相振動素子A21に交流電圧va(式1参照)、B相振動素子B21に交流電圧vb(式2参照)を印加することによって、位相θの位置のステータ2の変位が式5に示す変位uとなる進行波が、ステータ2に発生する。
【0072】
また、ステータ2において、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2によって形成される第一定在波、並びに、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2によって形成される第二定在波は、円環4次モードの定在波に限定されるものでなく、以下のような変形例を挙げることができる。
【0073】
(変形例2)
図9に示すように、ステータ2に対して、中心点C2を中心として中心角α1(α1はπ/2ラジアンである)とするステータ2の下面2dの領域の端部から端部までほぼ及ぶようにA相第一振動素子A21を配置し、A相第一振動素子A21に隣接させ且つ中心角α2(α2はπ/2ラジアンである)とするステータ2の下面2dの領域の端部から端部までほぼ及ぶようにA相第二振動素子A22を配置する。さらに、ステータ2に対して、中心点C2を中心として中心角β1(β1はπ/2ラジアンである)とするステータ2の下面2dの領域の端部から端部までほぼ及ぶようにB相第一振動素子B21を配置し、B相第一振動素子B21に隣接させ且つ中心角β2(β2はπ/2ラジアンである)とするステータ2の下面2dの領域の端部から端部までほぼ及ぶようにB相第二振動素子B22を配置する。そして、A相第一振動素子A21とB相第一振動素子B21とを間隙を介して隣接させ、A相第二振動素子A22とB相第二振動素子B22とを間隙を介して隣接させる。
【0074】
なお、A相第一振動素子A21及びB相第一振動素子B21は、上述のA相振動素子A21及びB相振動素子B21と同様の構成を有している。一方、A相第二振動素子A22及びB相第二振動素子B22はいずれも、第一共振部材13、第二圧電素子部12、第二共振部材14、並びに、第一共振部材13及び第二共振部材14を第二圧電素子部12に対して押し付けて一体にする締結ねじ215によって構成されている。
【0075】
A相第一振動素子A21は、交流電圧が印加されると、ステータ2の下面2dにおける中心角α1(π/2ラジアン)の領域を半波長とする下面2dの周方向に沿った定在波の一部を形成し、A相第二振動素子A22は、下面2dにおける中心角α2(π/2ラジアン)の領域を半波長とする下面2dの周方向に沿った定在波の一部を形成する。よって、A相第一振動素子A21及びA相第二振動素子A22によって、ステータ2の下面2dにおける中心角をπラジアンとする領域を1つの波長とする下面2dの周方向に沿った第一定在波が形成され、この第一定在波は、ステータ2の全周では2つの波長を形成する円環2次モードの定在波となる。
【0076】
同様に、交流電圧が印加されると、B相第一振動素子B21及びB相第二振動素子B22によって、ステータ2の下面2dにおける中心角をπラジアンとする領域を1つの波長とする下面2dの周方向に沿った第二定在波が形成され、この第二定在波は、ステータ2の全周では2つの波長を形成する円環2次モードの定在波となる。
そして、A相第一振動素子A21及びA相第二振動素子A22からなるA相と、B相第一振動素子B21及びB相第二振動素子B22からなるB相とに印加する交流電圧の位相差を調節することによって、ステータ2に進行波を発生させることができる。なお、印加する交流電圧の周波数が同一の場合、定在波の円環モードの次数を減少させることで、進行波の進行速度が増加して回転子1の回転速度が増加し、その次数を増加させることで進行波の進行速度が減少して回転子1の回転速度が減少する。
【0077】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータ201は、実施の形態1において、ステータ2の下面2dの周方向である中心線CL2に沿って、第一共振部材13、第一圧電素子部11及び第二共振部材14が順次並ぶように配置されていたA相第一振動素子A1及びB相第一振動素子B1、並びに、第一共振部材13、第二圧電素子部12及び第二共振部材14が順次並ぶように配置されていたA相第二振動素子A2及びB相第二振動素子B2を、下面2dの周方向と垂直な方向に沿って並ぶように配置したものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0078】
図10を参照すると、振動アクチュエータ201のステータ2の下面2dにおいて、A相第一振動素子A1は、締結ねじ15の軸方向となる中心軸A1CLが下面2dの周方向と垂直な方向、すなわち、中心点C2に向かう方向となるように方向付けられている。さらに、A相第一振動素子A1は、中心軸A1CLが中心点C2を中心とする中心角α1(α1はπ/4ラジアンである)の領域D1の中央を通り且つ第一圧電素子部11が領域D1内にあるように位置付けられている。このため、中心点C2を中心とした中心軸A1CLと領域D1の端部とによる中心角はα1/2(0.5α1)となる。
【0079】
また、下面2dにおいて、A相第二振動素子A2は、その締結ねじ15の軸方向となる中心軸A2CLが中心点C2に向かう方向となるように方向付けられ、さらに、中心軸A2CLが中心角α2(α2はπ/4ラジアンである)の領域D2の中央を通り且つ第二圧電素子部12が領域D2内にあるように位置付けられている。このため、中心点C2を中心とした中心軸A2CLと領域D2の端部とによる中心角はα2/2(0.5α2)となる。
【0080】
また、下面2dにおいて、B相第一振動素子B1は、その締結ねじ15の軸方向となる中心軸B1CLが中心点C2に向かう方向となるように方向付けられ、さらに、中心軸B1CLが中心角β1(β1はπ/4ラジアンである)の領域D3の中央を通り且つ第一圧電素子部11が領域D3内にあるように位置付けられている。このため、中心点C2を中心とした中心軸B1CLと領域D3の端部とによる中心角はβ1/2(0.5β1)となる。
さらに、下面2dにおいて、B相第二振動素子B2は、その締結ねじ15の軸方向となる中心軸B2CLが中心点C2に向かう方向となるように方向付けられ、さらに、中心軸B2CLが中心角β2(β2はπ/4ラジアンである)の領域D4の中央を通り且つ第二圧電素子部12が領域D4内にあるように位置付けられている。このため、中心点C2を中心とした中心軸B2CLと領域D4の端部とによる中心角はβ2/2(0.5β2)となる。
また、領域D1及び領域D3の間の領域D5の中心角γは、π/8ラジアンである。
【0081】
これにより、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2は、交流電圧が印加されると互いに反対方向に変形するたわみ振動を発生するため、ステータ2の下面2dにおける中心角α1+α2(α1+α2はπ/2ラジアンである)の領域D1+領域D2を1つの波長とする下面2dの周方向に沿った第一定在波を、ステータ2に形成する。よって、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2は、ステータ2の全周で4つの波長を形成する円環4次モードの第一定在波を発生し、この第一定在波は、実施の形態1でステータ2に形成される第一定在波と同様のものである。
【0082】
また、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2も同様に、交流電圧が印加されると互いに反対方向に変形するたわみ振動を発生するため、ステータ2の下面2dにおける中心角β1+β2(β1+β2はπ/2ラジアンである)の領域D3+領域D4を1つの波長とする下面2dの周方向に沿った第二定在波を、ステータ2に形成する。よって、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、ステータ2の全周で4つの波長を形成する円環4次モードの第二定在波を発生し、この第二定在波は、実施の形態1でステータ2に形成される第二定在波と同様のものである。
【0083】
従って、ステータ2には、実施の形態1と同様にして、第一定在波及び第二定在波の複合波である進行波が発生する。
また、この発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータ201のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0084】
このように、実施の形態2に係る振動アクチュエータ201において、上記実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様な効果が得られる。
また、振動アクチュエータ201のように、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1、B相第二振動素子B2は、ステータ2の下面2dの周方向に垂直な方向に沿うように配置されることによって互いに干渉しにくくなるため、それぞれの大きさによって配置上の制約を受けにくくなる。よって、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1、B相第二振動素子B2は、ステータ2の大きさが変わる毎にその大きさを変える必要がなく様々な大きさのステータに対して使用することができるため、汎用性が向上し製作コストを低減することが可能になる。
【0085】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る振動アクチュエータ301は、実施の形態1において、ステータ2の上方向に回転子1を配置し、ステータ2の下方向にA相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2を配置していたものを、ステータ32の外側に回転子31を配置し、ステータ32の内側にA相第一振動素子A31、A相第二振動素子A32、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32を配置するようにしたものである。
【0086】
図11を参照すると、振動アクチュエータ301は、略円筒状のステータ32を有している。ステータ32の円筒状の外周面32aには、溝32bが複数形成され、それによって外周面32aの外側に向かって突出する複数の爪部32cが形成されている。
さらに、振動アクチュエータ301は、ステータ32の外周面32aを取り囲む略円筒状をした回転子31を有している。回転子31は、その円筒状の内周面31bbをステータ32の爪部32cに接触させている。
【0087】
また、振動アクチュエータ301は、ステータ32の円筒状の内周面32dに接合させたA相第一振動素子A31、A相第二振動素子A32、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32を有している。
さらに、振動アクチュエータ301は、A相第一振動素子A31、A相第二振動素子A32、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32のそれぞれにおけるステータ32と反対側の側面に接合させた円筒状の支持部材33を有している。
【0088】
A相第一振動素子A31、A相第二振動素子A32、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32はそれぞれ、ステータ32の内周面32d及び支持部材33の円筒状の外周面33aに整合し、ステータ32の内周面32dに周方向に沿う形状を有している。
【0089】
A相第一振動素子A31は、ステータ32の内周面32dに沿って順次並ぶように配置した第一共振部材313、第一圧電素子部311及び第二共振部材314を有し、第一共振部材313、第一圧電素子部311及び第二共振部材314を、ステータ32の円筒軸となる中心軸C32を中心とした中心角α1(α1はπ/4ラジアンである)の領域内における内周面32dと、周方向全域にわたり接触させている。第一共振部材313及び第二共振部材314はそれぞれ、第一圧電素子部311を貫通する締結ねじ315と螺合し、締め付けられることによって、第一圧電素子部311に押し付けられて第一圧電素子部311と一体となっている。
【0090】
第一圧電素子部311は、実施の形態1の第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bとそれぞれ同様の第一圧電素子310a及び第二圧電素子310bを、締結ねじ315を境界として、ステータ32の内周面32d及び支持部材33の外周面33aに向かう方向に離れるような形状で有している。第一圧電素子310a及び第二圧電素子310bは、締結ねじ315の軸方向に互いに逆極性となるように分極されている。そして、第一圧電素子310aは、ステータ32の内周面32dと接触し、第二圧電素子310bは、支持部材33の外周面33aと接触している。
【0091】
A相第二振動素子A32も、A相第一振動素子A31と同様にして、ステータ32の内周面32dに沿って順次並ぶように配置した第一共振部材313、第二圧電素子部312及び第二共振部材314を有しており、その第一共振部材313をA相第一振動素子A31の第二共振部材314に隣接させて配置されている。さらに、A相第二振動素子A32は、第一共振部材313、第二圧電素子部312及び第二共振部材314を、中心軸C32を中心とした中心角α2(α2はπ/4ラジアンである)の領域内におけるステータ32の内周面32dと、周方向全域にわたり接触させている。第一共振部材313及び第二共振部材314はそれぞれ、第二圧電素子部312を貫通する締結ねじ315と螺合し、締め付けられることによって、第二圧電素子部312に押し付けられて第二圧電素子部312と一体となっている。
【0092】
また、第二圧電素子部312は、第一圧電素子部311と同様にして、第一圧電素子310a及び第二圧電素子310bを有しているが、第二圧電素子310bがステータ32の内周面32dと接触し、第一圧電素子310aが支持部材33の外周面33aと接触するようにして配置されている。
【0093】
このため、A相を構成するA相第一振動素子A31及びA相第二振動素子A32に同じ電圧が印加されると、例えば、第一圧電素子部311の第一圧電素子310aがステータ32の内周面32dの周方向に沿った方向Pに膨張する共に、第一圧電素子部311の第二圧電素子310bが内周面32dの周方向に沿った方向Qに収縮する。同時に、第二圧電素子部312の第二圧電素子310bが内周面32dの周方向に沿った方向Qに収縮する共に、第二圧電素子部312の第一圧電素子310aが内周面32dの周方向に沿った方向Pに膨張する。これにより、A相第一振動素子A31は、ステータ32に向かって突出するように撓み、A相第二振動素子A32は、支持部材33に向かって突出するように撓み、互いに反対の方向の変形挙動を行う。
【0094】
よって、A相第一振動素子A31及びA相第二振動素子A32は、同じ交流電圧が印加されて、ステータ32に向かう方向又は支持部材33に向かう方向に交互に互いに反対方向に撓むたわみ振動を発生する。
このとき、A相第一振動素子A31及びA相第二振動素子A32は、ステータ32における中心角α1+α2(α1+α2はπ/2ラジアンである)の領域を1つの波長としたステータ32の内周面32dの周方向に沿った第一定在波を、ステータ32に形成する。 従って、A相第一振動素子A31及びA相第二振動素子A32は、ステータ32の全周で4つの波長を形成する円環4次モードの第一定在波を発生する。なお、第一定在波は、回転子31に向かう方向及び支持部材33に向かう方向に振幅するものである。
【0095】
また、B相第一振動素子B31は、A相第一振動素子A31と同様の構成を有し、B相第二振動素子B32は、A相第二振動素子A32と同様の構成を有している。
つまり、B相第一振動素子B31は、第一共振部材313、第一圧電素子部311、第二共振部材314、及び締結ねじ315によって構成され、第一共振部材313、第一圧電素子部311及び第二共振部材314を、中心軸C32を中心とした中心角β1(β1はπ/4ラジアンである)の領域内におけるステータ32の内周面32dと、周方向全域にわたり接触させている。そして、第一圧電素子部311では、第一圧電素子310aがステータ32の内周面32dと接触し、第二圧電素子310bが支持部材33の外周面33aと接触している。
【0096】
また、B相第二振動素子B32は、第一共振部材313、第二圧電素子部312、第二共振部材314、及び締結ねじ315によって構成され、その第一共振部材313をB相第一振動素子B31の第二共振部材314に隣接させて配置されている。さらに、B相第二振動素子B32は、第一共振部材313、第二圧電素子部312及び第二共振部材314を、中心軸C32を中心とした中心角β2(β2はπ/4ラジアンである)の領域内におけるステータ32の内周面32dと、周方向全域にわたり接触させている。そして、第二圧電素子部312では、第二圧電素子310bがステータ32の内周面32dと接触し、第一圧電素子310aが支持部材33の外周面33aと接触している。
【0097】
よって、B相を構成するB相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32は、同じ交流電圧が印加されて、互いに反対方向に撓む変形挙動を行うことによって、ステータ32に向かう方向又は支持部材33に向かう方向に交互に互いに反対方向に撓むたわみ振動を発生する。
このとき、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32は、ステータ32における中心角β1+β2(β1+β2はπ/2ラジアンである)の領域を1つの波長としたステータ32の内周面32dの周方向に沿った第二定在波を、ステータ32に形成する。 従って、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32は、ステータ32の全周で4つの波長を形成する円環4次モードの第二定在波を発生する。なお、第二定在波は、回転子31に向かう方向及び支持部材33に向かう方向に振幅するものである。
【0098】
また、A相第一振動素子A31とB相第一振動素子B31とは、ステータ32の内周面32dにおいて、中心軸C32を中心とする中心角γ(γはπ/8ラジアンである)の領域に相当する間隔があけられて配置されている。このため、第一定在波及び第二定在波は、ステータ32において、1/4波長ずれた状態で形成される。
よって、ステータ32には、実施の形態1と同様にして、第一定在波及び第二定在波の複合波である進行波が発生する。さらに、発生した進行波によって、ステータ32の爪部32cの先端には、中心軸C32方向の軸を中心に回る楕円振動が発生し、爪部32cは、その先端に発生した楕円振動によって、回転子31の内周面31bbを引っ掻くように動作して回転子31を周方向に回転させる。
【0099】
また、この発明の実施の形態3に係る振動アクチュエータ301のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
このように、実施の形態3に係る振動アクチュエータ301において、上記実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様な効果が得られる。
【0100】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る振動アクチュエータ401は、実施の形態3における回転子31とA相第一振動素子A31、A相第二振動素子A32、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32との配置を逆にしたもので、ステータ42の内側に回転子41を配置し、ステータ42の外側にA相第一振動素子A41、A相第二振動素子A42、B相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42を配置していたものである。
【0101】
図12を参照すると、振動アクチュエータ401は、略円筒状のステータ42を有している。ステータ42の円筒状の内周面42aには、溝42bが複数形成され、それによって内周面42aの内側に向かって突出する複数の爪部42cが形成されている。
さらに、振動アクチュエータ401は、ステータ42の爪部42cにその外周面41bbを接触させている略円柱状の回転子41を有している。
【0102】
また、振動アクチュエータ401は、ステータ42の円筒状の外周面42dに接合させたA相第一振動素子A41、A相第二振動素子A42、B相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42を有している。
さらに、振動アクチュエータ401は、A相第一振動素子A41、A相第二振動素子A42、B相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42のそれぞれにおけるステータ42と反対側の側面に接合させた円筒状の支持部材43を有している。
【0103】
A相第一振動素子A41、A相第二振動素子A42、B相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42はそれぞれ、ステータ42の外周面42d及び支持部材43の円筒状の内周面43aに整合し、ステータ42の外周面42dに周方向に沿う形状を有している。
【0104】
A相第一振動素子A41は、ステータ42の外周面42dに沿って順次並ぶように配置した第一共振部材413、第一圧電素子部411及び第二共振部材414を有し、第一共振部材413、第一圧電素子部411及び第二共振部材414を、ステータ42の円筒軸となる中心軸C42を中心とした中心角α1(α1はπ/4ラジアンである)の領域内における外周面42dと、周方向全域にわたり接触させている。第一共振部材413及び第二共振部材414はそれぞれ、第一圧電素子部411を貫通する締結ねじ415と螺合し、締め付けられることによって、第一圧電素子部411に押し付けられて第一圧電素子部411と一体となっている。
【0105】
第一圧電素子部411は、実施の形態3の第一圧電素子部311と同様にして、第一圧電素子410a及び第二圧電素子410bを有している。第一圧電素子410a及び第二圧電素子410bは、締結ねじ415を境界として、ステータ42の外周面42d及び支持部材43の内周面43aに向かう方向に離れるような形状を有し、締結ねじ415の軸方向に互いに逆極性となるように分極されている。そして、第一圧電素子410aは、ステータ42の外周面42dと接触し、第二圧電素子410bは、支持部材43の内周面43aと接触している。
【0106】
A相第二振動素子A42も、A相第一振動素子A41と同様にして、ステータ42の外周面42dに沿って順次並ぶように配置した第一共振部材413、第二圧電素子部412及び第二共振部材414を有しており、その第一共振部材413をA相第一振動素子A41の第二共振部材414に隣接させて配置されている。さらに、A相第二振動素子A42は、第一共振部材413、第二圧電素子部412及び第二共振部材414を、中心軸C42を中心とした中心角α2(α2はπ/4ラジアンである)の領域内におけるステータ42の外周面42dと、周方向全域にわたり接触させている。第一共振部材413及び第二共振部材414はそれぞれ、第二圧電素子部412を貫通する締結ねじ415と螺合し、締め付けられることによって、第二圧電素子部412に押し付けられて第二圧電素子部412と一体となっている。
【0107】
また、第二圧電素子部412は、第一圧電素子部411と同様にして、第一圧電素子410a及び第二圧電素子410bを有しているが、第二圧電素子410bがステータ42の外周面42dと接触し、第一圧電素子410aが支持部材43の内周面43aと接触するようにして配置されている。
【0108】
このため、A相を構成するA相第一振動素子A41及びA相第二振動素子A42に同じ電圧が印加されると、第一圧電素子部411及び第二圧電素子部412それぞれの第一圧電素子410a及び第二圧電素子410bが、ステータ42の外周面42dの周方向に沿った方向Pへの膨張動作又は方向Qへの収縮動作を行うが、互いに反対の挙動を行う。これにより、A相第一振動素子A41及びA相第二振動素子A42は、ステータ42に向かう方向又は支持部材43に向かう方向へ撓み、さらに互いに反対方向に撓む変形挙動を行う。
【0109】
よって、A相第一振動素子A41及びA相第二振動素子A42は、交流電圧が印加されて、ステータ42に向かう方向又は支持部材43に向かう方向に交互に互いに反対方向に撓むたわみ振動を発生する。
このとき、A相第一振動素子A41及びA相第二振動素子A42は、ステータ42における中心角α1+α2(α1+α2はπ/2ラジアンである)の領域を1つの波長としたステータ42の外周面42dの周方向に沿った第一定在波を、ステータ42に形成する。 従って、A相第一振動素子A41及びA相第二振動素子A42は、ステータ42の全周で4つの波長を形成する円環4次モードの第一定在波を発生する。なお、第一定在波は、回転子41に向かう方向及び支持部材43に向かう方向に振幅するものである。
【0110】
また、B相第一振動素子B41は、A相第一振動素子A41と同様の構成を有し、B相第二振動素子B42は、A相第二振動素子A42と同様の構成を有している。
つまり、B相第一振動素子B41は、第一共振部材413、第一圧電素子部411、第二共振部材414、及び締結ねじ415によって構成され、第一共振部材413、第一圧電素子部411及び第二共振部材414を、中心軸C42を中心とした中心角β1(β1はπ/4ラジアンである)の領域内におけるステータ42の外周面42dと、周方向全域にわたり接触させている。そして、第一圧電素子部411では、第一圧電素子410aが、ステータ42の外周面42dと接触し、第二圧電素子410bが、支持部材43の内周面43aと接触している。
【0111】
また、B相第二振動素子B42は、第一共振部材413、第二圧電素子部412、第二共振部材414、及び締結ねじ415によって構成され、その第一共振部材413をB相第一振動素子B41の第二共振部材414に隣接させて配置されている。さらに、B相第二振動素子B42は、第一共振部材413、第二圧電素子部412及び第二共振部材414を、中心軸C42を中心とした中心角β2(β2はπ/4ラジアンである)の領域内におけるステータ42の外周面42dと、周方向全域にわたり接触させている。そして、第二圧電素子部412では、第二圧電素子410bが、ステータ42の外周面42dと接触し、第一圧電素子410aが、支持部材43の内周面43aと接触している。
【0112】
よって、B相を構成するB相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42は、交流電圧が印加されて、互いに反対方向の撓む変形挙動を行うことによって、ステータ42に向かう方向又は支持部材43に向かう方向に交互に互いに反対方向に撓むたわみ振動を発生する。
このとき、B相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42は、ステータ42における中心角β1+β2(β1+β2はπ/2ラジアンである)の領域を1つの波長としたステータ42の外周面42dの周方向に沿った第二定在波を、ステータ42に形成する。 従って、B相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42は、ステータ42の全周で4つの波長を形成する円環4次モードの第二定在波を発生する。なお、第二定在波は、回転子41に向かう方向及び支持部材43に向かう方向に振幅するものである。
【0113】
また、A相第一振動素子A41とB相第一振動素子B41とは、ステータ42の外周面42dにおいて、中心軸C42を中心とする中心角γ(γはπ/8でラジアンある)の領域に相当する間隔があけられて配置されている。このため、第一定在波及び第二定在波は、ステータ42において、1/4波長ずれた状態で形成される。
よって、ステータ42には、実施の形態3と同様にして、第一定在波及び第二定在波の複合波である進行波が発生する。さらに、発生した進行波によって、ステータ42の爪部42cの先端には、中心軸C42方向の軸を中心に回る楕円振動が発生し、爪部42cは、その先端に発生した楕円振動によって、回転子41の外周面41bbを引っ掻くように動作して回転子41を周方向に回転させる。
【0114】
また、この発明の実施の形態4に係る振動アクチュエータ401のその他の構成及び動作は、実施の形態3と同様であるため、説明を省略する。
このように、実施の形態4に係る振動アクチュエータ401において、上記実施の形態3の振動アクチュエータ301と同様な効果が得られる。
【0115】
また、実施の形態1〜4において、ステータ2,32,42は環状に限定されるものでなく直線状、すなわちリニアであってもよい。このとき、例えば、実施の形態1におけるA相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2、並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、ステータ2に沿ってリニアに配置される。
また、実施の形態1〜4において、A相を構成する振動素子として2つのA相第一振動素子A1,A31,A41及びA相第二振動素子A2,A32,A42を配置し、B相を構成する振動素子として2つのB相第一振動素子B1,B31,B41及びB相第二振動素子B2,B32,B42を配置していたが、これに限定されるものでない。3つ以上のA相を構成する振動素子及びB相を構成する振動素子を配置してもよい。
【0116】
また、実施の形態1〜4において、締結ねじ15,215,315,415を使用して、第一共振部材13,313,413及び第二共振部材14,314,414を、第一圧電素子部11,311,411又は第二圧電素子部12,312,412と連結し一体にしていたが、これに限定されるものでない。連結方法は、第一共振部材13,313,413及び第二共振部材14,314,414が、第一圧電素子部11,311,411又は第二圧電素子部12,312,412を両側から拘束できるものであればよい。締結ねじ15,215,315,415の代わりに、リベットを使用してもよく、また、第一共振部材13,313,413及び第二共振部材14,314,414にこれらを連結する部材を接着してもよい。又は、第一共振部材13,313,413及び第二共振部材14,314,414をクリップで外側から挟み込むことによって、連結してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1,31,41 回転子(移動体)、2,32,42 ステータ、2c,32c,42c 爪部(進行波が発生するステータの部位)、10a,310a,410a 第一圧電素子(第一圧電素子、第三圧電素子)、10b,310b,410b 第二圧電素子(第二圧電素子、第四圧電素子)、11,311,411 第一圧電素子部(第一圧電素子体、第二圧電素子体)、12,312,412 第二圧電素子部(第一圧電素子体、第二圧電素子体)、13,313,413 第一共振部材(第一共振体、第三共振体)、14,314,414 第二共振部材(第二共振体、第四共振体)、15,215,315,415 締結ねじ(第一固定部材、第二固定部材)、101,201,301,401 振動アクチュエータ、A1,A21,A31,A41 A相第一振動素子(第一振動素子、第一振動素子部)、A2,A22,A32,A42 A相第二振動素子(第一振動素子、第一振動素子部)、B1,B21,B31,B41 B相第一振動素子(第二振動素子、第二振動素子部)、B2,B22,B32,B42 B相第二振動素子(第二振動素子、第二振動素子部)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
小型で高トルクを出力するアクチュエータとして、超音波振動を発生して駆動する振動アクチュエータが使用されている。
例えば、特許文献1には、振動アクチュエータの1つとして進行波型超音波モータが記載されている。この特許文献1の超音波モータは、弾性体に圧電セラミック等の圧電体を接合させて構成されたステータと、リングに摩擦係数が高い材料からなるスライダを接合させて構成されたロータと、ロータと一体に連結され超音波モータの外部に延びるシャフトとを有している。さらに、ロータは、そのスライダをステータの弾性体に接触させて、ステータに対して加圧されている。そして、圧電体には交互分極処理が施されており、圧電体に二種以上の高周波電圧を印加すると、ステータに弾性進行波が発生し、さらに、発生した弾性進行波によってステータの表面に楕円振動が発生する。この楕円振動によって、ステータに加圧接触されているスライダが摩擦駆動され、それによりロータ及びシャフトが回転し、シャフトを介して回転駆動力が外部に伝達される。
【0003】
また、特許文献2には、振動アクチュエータの1つとして、ボルト締めランジュバン型振動子を有する超音波モータが記載されている。この特許文献2の超音波モータの振動子は、ヘッドマス、縦振動用圧電素子、中間シリンダ、捩り振動用圧電素子、リアマスの順で積層されたこれらの部材を、貫通するボルトとナットとによって両側から締め付けることにより、形成されている。さらに、縦振動用圧電素子及び捩り振動用圧電素子に高周波電圧を印加すると、縦振動用圧電素子及び捩り振動用圧電素子が発生する複合振動によって、ヘッドマスの表面に楕円振動が発生し、それによりヘッドマスに加圧接触して配置されるロータが回転する。そして、ロータの回転駆動力は、ロータと一体のギヤを介して外部に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−91676号公報
【特許文献2】特公平7−48957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧電素子は、交流電圧が印加されることによって膨張及び収縮を繰り返す伸縮動作による振動を行うが、印加する電圧を大きくすると、圧電素子の膨張及び収縮する力が大きくなるため、振動アクチュエータの駆動力すなわち出力を大きくすることができる。
このため、特許文献1の進行波型超音波モータにおいて、印加する電圧を大きくすることによってその駆動力を大きくすることができるが、圧電素子は、圧縮力に対する強度は高いが引張力に対する強度が低いため、印加される電圧が大きいと膨張時に圧電素子に発生する引張応力に耐えきれずに破損することがある。
【0006】
ここで、特許文献2の超音波モータの振動子では、ナットとヘッドマスとでボルトを介して縦振動用圧電素子及び捩り振動用圧電素子に圧縮力を加え、電圧の印加時に縦振動用圧電素子及び捩り振動用圧電素子の内部に引張応力が生じないようにしている。
よって、特許文献1の進行波型超音波モータにおいて、特許文献2の超音波モータの振動子のように、圧電体の膨張方向であるシャフトの軸方向に沿った両側から圧縮力を加えて圧電体に引張応力が生じないようにすることによって、印加電圧が大きい場合でも圧電体の破損を防ぐことができる。しかしながら、圧電体に両側から圧縮力を加える場合、圧電体の両側には、ボルトの頭、ナット、ヘッドマス及びリアマスが配置されるため、特許文献1の進行波型超音波モータは、シャフトの回転軸方向に大型化してしまうという問題がある。
【0007】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、駆動力を向上させると共に回転軸方向の小型化を図る振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る振動アクチュエータは、ステータと、ステータに対して移動可能に接触させて設けられる移動体と、分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第一圧電素子体を有し、ステータに対して第一圧電素子体のたわみ振動を伝達可能に接触して設けられる第一振動素子部と、分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第二圧電素子体を有し、ステータに対して第二圧電素子体のたわみ振動を伝達可能に接触して設けられる第二振動素子部とを備え、第一圧電素子体及び第二圧電素子体は、電圧の印加時に撓む方向と異なる方向に分極され、移動体は、第一振動素子部及び第二振動素子部からステータに伝達したたわみ振動によって形成される進行波が発生するステータの部位と接触する。
【0009】
第一振動素子部は、第一圧電素子体と、第一圧電素子体を挟むようにして設けられる第一共振体及び第二共振体と、第一共振体及び第二共振体を連結する第一固定部材とを有する第一振動素子を少なくとも1つ備え、第二振動素子部は、第二圧電素子体と、第二圧電素子体を挟むようにして設けられる第三共振体及び第四共振体と、第三共振体及び第四共振体を連結する第二固定部材とを有する第二振動素子を少なくとも1つ備え、第一振動素子は、ステータに沿って、第一共振体、第一圧電素子体及び第二共振体が並ぶようにして配置され、第二振動素子は、ステータに沿って、第三共振体、第二圧電素子体及び第四共振体が並ぶようにして配置されてもよい。
【0010】
第一圧電素子体は、電圧が印加されると膨張又は収縮し且つ互いに異なる動きをするように分極された第一圧電素子及び第二圧電素子を有し、第一共振体及び第二共振体は、第一圧電素子及び第二圧電素子が膨張又は収縮する方向から第一圧電素子体を挟み、第二圧電素子体は、電圧が印加されると膨張又は収縮し且つ互いに異なる動きをするように分極された第三圧電素子及び第四圧電素子を有し、第三共振体及び第四共振体は、第三圧電素子及び第四圧電素子が膨張又は収縮する方向から第二圧電素子体を挟んでもよい。
【0011】
第一振動素子部及び第二振動素子部は、第一振動素子部からステータに伝達するたわみ振動及び第二振動素子部からステータに伝達するたわみ振動がそれぞれステータに別個の定在波を形成するように、互いに間隔をあけて設けられてもよい。
ステータは環状であり、第一振動素子及び第二振動素子は、ステータに沿って環状に配置されてもよい。
ステータは直線状であり、第一振動素子及び第二振動素子は、ステータに沿って直線状に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、振動アクチュエータは、駆動力を向上させると共に回転軸方向の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図2】図1のx−x線及びy−y線を含む面をIIの方向より見た模式断面平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面を示す模式断面側面図である。
【図4】実施の形態1に係る振動アクチュエータに印加する電圧の時間変化を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る振動アクチュエータの各振動素子の変位の時間変化を示す図である。
【図6】実施の形態1に係る振動アクチュエータのステータに発生する定在波を示す図である。
【図7】実施の形態1に係る振動アクチュエータのステータに発生する進行波を示す図である。
【図8】実施の形態1に係る振動アクチュエータの振動素子の配置を変更した変形例を示すステータから振動素子に向かって見た模式断面平面図である。
【図9】実施の形態1に係る振動アクチュエータの振動素子の構成を変更した変形例を示すステータから振動素子に向かって見た模式断面平面図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータの構成を示すステータから振動素子に向かって見た模式断面平面図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る振動アクチュエータの構成を示す模式平面図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係る振動アクチュエータの構成を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、この発明の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、図1〜3を用いて、この発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータ101の構成を示す。
【0015】
図1を参照すると、振動アクチュエータ101は、外部に接続されて回転駆動力を伝達するための回転子1を有している。回転子1は、円盤状のロータ部1bと、ロータ部1bの互いに平行に対向する平坦な面である上面1ba及び下面1bbの中心を貫通しこれらの面に対して垂直に延びる円柱状の軸部1aとを、一体に有している。軸部1a及びロータ部1bは、金属等から製作されており、高い剛性を有している。
さらに、振動アクチュエータ101は、回転子1のロータ部1bの下面1bbに接触するようにして配置された略円筒状のステータ2を有している。なお、回転子1は、移動体を構成している。
【0016】
ここで、説明の便宜上、回転子1の軸部1aに沿って回転子1のロータ部1bからステータ2に向かう方向を下方向と呼び、その反対方向を上方向と呼ぶ。なお、振動アクチュエータ101が使用される際、その使用時の向きは、図1に示されるような回転子1がステータ2の上方向となる向きに限定されるものでない。
【0017】
ステータ2における回転子1と接触する上面2aには、上面2aの外周から回転子1の軸部1aに向かう方向に延びる溝2bが複数形成され、これにより、溝2b同士の間に、回転子1に向かって突出する略直方体状の爪部2cが形成されている。そして、ステータ2は、この複数の爪部2cを回転子1に接触させている。さらに、ステータ2は、上面2aからその反対側の下面2dに向かう方向及びその反対方向、つまり上下方向に可撓性を有している。
【0018】
また、振動アクチュエータ101は、ステータ2の下面2dに接合させた略直方体状の複数の振動素子を有している。この複数の振動素子は、同形状をしたA相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2によって構成されており、それぞれの一側面がステータ2に接合されている。
ここで、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2は、第一振動素子部を構成し、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、第二振動素子部を構成している。
【0019】
さらに、振動アクチュエータ101は、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2のそれぞれにおけるステータ2と反対側の側面に接合させた円筒状の支持部材3を有している。支持部材3は、その平坦な上面3aがA相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2のそれぞれの一側面に接合されている。そして、支持部材3は、上面3aからその反対側の下面3bに向かう方向及びその反対方向、つまり上下方向に可撓性を有している。
【0020】
また、振動アクチュエータ101は、支持部材3に対して、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2と反対側に位置する支持台4を有している。支持台4は、円筒状の形状をして突出する台座部4aを有し、台座部4aには、支持部材3が、台座部4aに対向する下面3bと台座部4aとの間に間隙を有するようにして、固定されている。
【0021】
さらに、回転子1の軸部1aが、支持台4に向かって延びており、支持台4との間にバネ等の予圧機構5を介して、支持台4に回転可能に連結されている。予圧機構5は、回転子1の軸部1aに対して支持台4に向かう方向Fに引張する力を加えている。このため、軸部1aと一体の回転子1のロータ部1bは、予圧機構5の引張力によってステータ2に押し付けられている。つまり、回転子1のロータ部1bには、ステータ2に対して加圧する予圧力が付与されている。
また、振動アクチュエータ101は、通常、回転子1のロータ部1b、ステータ2、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1、B相第二振動素子B2、及び支持部材3を上方から覆う図示しないカバーが、支持台4に取り付けられ、このカバーから回転子1の軸部1aが突出している。
【0022】
さらに、図2を参照すると、図1においてステータ2の下面2dを通るx−x線及びy−y線を含む面をステータ2から支持台4に向かうIIの方向より見た模式断面平面図が示されており、ステータ2に対するA相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2の配置状態が示されている。
【0023】
A相第一振動素子A1は、矩形状の上面A1aをステータ2の下面2dと接触させている。そして、上面A1aは、ステータ2の下面2dの中央を通る環状の中心線CL2の中心点C2から中心線CL2に向かって中心角α1を形成する2本の直線を放射状に延ばしたとき、下面2dにおいて上記の2本の直線によって挟まれる領域D1内にほぼ収まるような位置及び形状で配置されている。このとき、上面A1aは、領域D1において、中心線CL2が領域D1の端部と交わる点の一方である交点D1bから他方である交点D1aまで及ぶように位置している。
【0024】
A相第二振動素子A2は、A相第一振動素子A1に対して、中心点C2を中心として紙面上で反時計回りの方向である方向R2側に隣接するようにして配置され、矩形状の上面A2aをステータ2の下面2dと接触させている。そして、上面A2aは、中心点C2を中心として中心角α2を形成する2本の直線によって挟まれる下面2dの領域D2内にほぼ収まるような位置及び形状で配置されている。なお、下面2dにおいて領域D2は領域D1と隣接し、上面A2aは、領域D2において、中心線CL2が領域D2の端部と交わる点の一方である交点D1aから他方である交点D2aまで及ぶように位置している。
【0025】
B相第一振動素子B1は、A相第一振動素子A1に対して、中心点C2を中心として紙面上で時計回りの方向である方向R1側に配置され、矩形状の上面B1aをステータ2の下面2dと接触させている。そして、上面B1aは、中心点C2を中心として中心角β1を形成する2本の直線によって挟まれる下面2dの領域D3内にほぼ収まるような位置及び形状で配置されている。このとき、上面B1aは、領域D3において、中心線CL2が領域D3の端部と交わる点の一方である交点D3aから他方である交点D3bまで及ぶように位置している。なお、下面2dにおいて、領域D3は、領域D1との間に領域D5の間隙を有する位置となっており、領域D5は、中心点C2を中心として中心角γを形成する2本の直線によって挟まれる下面2dの領域である。
【0026】
B相第二振動素子B2は、B相第一振動素子B1に対して、方向R1側に隣接するようにして配置され、矩形状の上面B2aをステータ2の下面2dと接触させている。そして、上面B2aは、中心点C2を中心として中心角β2を形成する2本の直線によって挟まれる下面2dの領域D4内にほぼ収まるような位置及び形状で配置されている。なお、下面2dにおいて領域D4は領域D3と隣接し、上面B2aは、領域D4において、中心線CL2が領域D4の端部と交わる点の一方である交点D3bから他方である交点D4bまで及ぶように位置している。
よって、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、同一円周上、つまり中心線CL2上で1つの輪を形成するようにして並べられている。そして、詳細は後述するが、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2がステータ2に形成する定在波と、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2がステータ2に形成する定在波とが、ステータ2の周方向である中心線CL2に沿って進行する進行波を発生するには、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、上述のような同一円周にあることが好ましい。
【0027】
なお、本実施の形態1では、中心角α1、α2、β1及びβ2はいずれも、π/4(0.25π)ラジアン(rad)とし、中心角γは、π/8(0.125π)ラジアン(rad)とする。
【0028】
次に、図3を参照すると、図2においてA相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2の中央を通るIII−III線に沿った模式断面側面図が示されている。
A相第一振動素子A1は、いずれもが略直方体状をした第一共振部材13、第一圧電素子部11及び第二共振部材14を有している。
第一圧電素子部11は、第一圧電素子部11を貫通する貫通穴11aを有している。さらに、貫通穴11aには、外表面に雄ねじが形成された棒状の締結ねじ15が貫通挿入され、締結ねじ15は、貫通穴11aの両端から突出している。
【0029】
また、第一共振部材13は、内側に雌ねじが形成されたねじ穴13aを有している。第一共振部材13は、第一圧電素子部11の両側から突出する締結ねじ15aの一方の突出部分をねじ穴13aに螺合させている。
また、第二共振部材14は、内側に雌ねじが形成されたねじ穴14aを有している。第二共振部材14は、第一圧電素子部11の両側から突出する締結ねじ15aの他方の突出部分をねじ穴14aに螺合させている。
そして、締結ねじ15aに螺合している第一共振部材13及び第二共振部材14を第一圧電素子部11に対して締め付けることによって、第一共振部材13及び第二共振部材14が、第一圧電素子部11に対して接触し押し付けられて一体となる。このとき、第一圧電素子部11は、第一共振部材13と第二共振部材14とから締結ねじ15aを介して圧縮力を受けている。
【0030】
よって、A相第一振動素子A1では、第一圧電素子部11が第一共振部材13及び第二共振部材14によって挟まれ、すなわち、第一共振部材13、第一圧電素子部11及び第二共振部材14がこの順で直列に配置されて、締結ねじ15を介して締結されることによって一体になっている。そして、A相第一振動素子A1は、ステータ2と支持部材3との間で、ステータ2の下面2d及び支持部材3の上面3aに沿って第一共振部材13、第一圧電素子部11及び第二共振部材14が順次並ぶようにして配置されている。さらに、図2に示されるように、A相第一振動素子A1は、ステータ2の下面2dに対して、ステータ2の周方向である中心線CL2に沿って領域D1から領域D2に向かう方向に第一共振部材13、第一圧電素子部11及び第二共振部材14が順次並ぶようにして配置されている。
ここで、A相第一振動素子A1は、第一振動素子を構成し、A相第一振動素子A1の第一共振部材13、第一圧電素子部11、第二共振部材14及び締結ねじ15はそれぞれ、第一共振体、第一圧電素子体、第二共振体及び第一固定部材を構成している。
【0031】
図3に戻り、また、第一圧電素子部11は、第一共振部材13から第二共振部材14に向かって、略矩形板状をした電極板16、略直方体状をした圧電素子10及び略矩形板状をした電極板17が順次重ね合わされた積層構造を有している。そして、圧電素子10に電圧を印加するための駆動回路6が別に設けられており、駆動回路6は電極板16と電気的に接続されている。一方、電極板17は、電気的に接地されている。
【0032】
さらに、圧電素子10は、ステータ2の下面2d及び支持部材3の上面3aに向かう上下の方向に離れるような形状に分割されている。つまり、圧電素子10は、締結ねじ15の中心軸を通り且つステータ2の下面2dと平行である面から下面2dにわたる第一圧電素子10aと、上記平行である面から支持部材3の上面3aにわたる第二圧電素子10bとによって構成されている。
第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bは、それぞれ締結ねじ15の軸方向(第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bの厚み方向)に分極され、さらに、電圧が印加されると膨張と収縮との反対の変形挙動を行うように互いに逆極性に分極されている。つまり、電極板16に電圧が印加された場合、例えば、第一圧電素子10aが、締結ねじ15の軸方向両端側に向かう方向である図面上の方向Pに膨張するとき、第二圧電素子10bは、締結ねじ15の軸方向中央側に向かう方向である図面上の方向Qに収縮する。
【0033】
このため、電極板16に交流電圧が印加されると、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bが互いに方向Pへの膨張及び方向Qへの収縮の反対の変形挙動を行うことによって、圧電素子10、すなわち第一圧電素子部11が、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bの分極方向と垂直な方向となる、ステータ2の下面2dに向かう上方向及び支持部材3の上面3aに向かう下方向に交互に撓む動作を行う。このとき、第一圧電素子部11と共に第一共振部材13及び第二共振部材14が動作し、A相第一振動素子A1の全体が、圧電素子10の厚み方向(締結ねじ15の軸方向)の中心部を、たわみの山の頂部又は谷の頂部として、つまり振動の腹として、ステータ2の下面2dに向かう上方向及び支持部材3の上面3aに向かう下方向に交互に撓むたわみ振動を発生する。
なお、A相第一振動素子A1のたわみ面である上面A1aにおいて、圧電素子10の厚み方向(締結ねじ15の軸方向)の中心部には、点A1cが位置し、点A1cは、領域D1(図2参照)の中央且つ中心線CL2(図2参照)上に位置する。
ここで、A相第一振動素子A1の第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bはそれぞれ、第一圧電素子及び第二圧電素子を構成している。
【0034】
次に、A相第二振動素子A2は、第一圧電素子部11を除きA相第一振動素子A1と同様の構成を有し、第一共振部材13、第二圧電素子部12、第二共振部材14及び締結ねじ15によって構成されている。
A相第二振動素子A2では、第一共振部材13、第二圧電素子部12及び第二共振部材14が、この順で直列に配置され、締結ねじ15を介して締結されて一体になっている。そして、A相第二振動素子A2は、ステータ2と支持部材3との間で、その第一共振部材13をA相第一振動素子A1の第二共振部材14に隣接させ、ステータ2の下面2d及び支持部材3の上面3aに沿って第一共振部材13、第二圧電素子部12及び第二共振部材14が順次並ぶようにして配置されている。さらに、図2に示されるように、A相第二振動素子A2は、ステータ2の下面2dに対して、中心線CL2に沿って領域D1から領域D2に向かう方向に第一共振部材13、第二圧電素子部12及び第二共振部材14が順次並ぶようにして配置されている。
ここで、A相第二振動素子A2は、第一振動素子を構成し、A相第二振動素子A2の第一共振部材13、第二圧電素子部12、第二共振部材14及び締結ねじ15はそれぞれ、第一共振体、第一圧電素子体、第二共振体及び第一固定部材を構成している。
【0035】
図3に戻り、また、第二圧電素子部12は、第一共振部材13から第二共振部材14に向かって、電極板16、略直方体状をした圧電素子20及び電極板17が順次重ね合わされた積層構造を有している。そして、第二圧電素子部12の電極板16は、駆動回路6と電気的に接続され、電極板17は、電気的に接地されている。
さらに、第二圧電素子部12の電極板16には、駆動回路6によって、A相第一振動素子A1の第一圧電素子部11の電極板16と同じ位相の交流電圧が印加されるようになっている。
これにより、第二圧電素子部12及び第一圧電素子部11、すなわちA相第二振動素子A2及びA相第一振動素子A1と駆動回路6とにより1つの回路が形成され、この回路はA相を構成している。
【0036】
さらに、圧電素子20は、ステータ2の下面2d及び支持部材3の上面3aに向かう上下の方向に離れるような形状に分割されている。圧電素子20は、圧電素子10と同様に、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bによって構成されるが、第二圧電素子10bは、締結ねじ15の中心軸を通り且つステータ2の下面2dと平行である面から下面2dにわたって配置され、第一圧電素子10aは、上記平行である面から支持部材3の上面3aにわたって配置されている。
よって、圧電素子20は、第一圧電素子10aがステータ2に接触し第二圧電素子10bが支持部材3に接触している圧電素子10に対して、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bの配置を上下方向に反対にしたものであり、第二圧電素子10bがステータ2に接触し第一圧電素子10aが支持部材3に接触している構成となっている。
ここで、A相第二振動素子A2の第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bはそれぞれ、第一圧電素子及び第二圧電素子を構成している。
【0037】
また、第二圧電素子部12の電極板16及び第一圧電素子部11の電極板16には、駆動回路6によって同じ位相の交流電圧が印加されるが、このような同じ位相の電圧が印加されると、第二圧電素子部12は、第一圧電素子部11が撓む方向と反対方向に撓む。
このため、A相第二振動素子A2は、交流電圧が印加されたとき、A相第一振動素子A1のように、圧電素子20の厚み方向(締結ねじ15の軸方向)の中心部を振動の腹として、ステータ2の下面2dに向かう上方向及び支持部材3の上面3aに向かう下方向に交互に撓むたわみ振動を発生する。しかしながら、A相第二振動素子A2のたわみ振動は、A相第一振動素子A1と同等のたわみ量を有しつつもA相第一振動素子A1のたわみ方向と反対方向に撓む振動となる。
なお、A相第二振動素子A2のたわみ面である上面A2aにおいて、圧電素子20の厚み方向(締結ねじ15の軸方向)の中心部には、点A2cが位置し、点A2cは、領域D2(図2参照)の中央且つ中心線CL2(図2参照)上に位置する。
【0038】
また、図2を参照すると、B相第一振動素子B1は、A相第一振動素子A1と同様の構成を有し、B相第二振動素子B2は、A相第二振動素子A2と同様の構成を有している。
つまり、B相第一振動素子B1は、第一共振部材13、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10b(図3参照)を有する第一圧電素子部11、第二共振部材14、並びに締結ねじ15によって構成され、B相第二振動素子B2は、第一共振部材13、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10b(図3参照)を有する第二圧電素子部12、第二共振部材14、並びに締結ねじ15によって構成されている。
【0039】
ここで、B相第一振動素子B1は、第二振動素子を構成し、B相第一振動素子B1の第一共振部材13、第一圧電素子部11、第二共振部材14及び締結ねじ15はそれぞれ、第三共振体、第二圧電素子体、第四共振体及び第二固定部材を構成している。また、B相第二振動素子B2は、第二振動素子を構成し、B相第二振動素子B2の第一共振部材13、第二圧電素子部12、第二共振部材14及び締結ねじ15はそれぞれ、第三共振体、第二圧電素子体、第四共振体及び第二固定部材を構成している。さらに、B相第一振動素子B1の第一圧電素子部11及びB相第二振動素子B2の第二圧電素子部12の第一圧電素子10a及び第二圧電素子10b(図3参照)はそれぞれ、第三圧電素子及び第四圧電素子を構成している。
【0040】
B相第一振動素子B1は、ステータ2の下面2dにおいて中心線CL2に沿って領域D3から領域D4に向かう方向に第一共振部材13、第一圧電素子部11及び第二共振部材14が順次並ぶようにして、配置されている。さらに、B相第二振動素子B2は、その第一共振部材13をB相第一振動素子B1の第二共振部材14に隣接させ、ステータ2の下面2dにおいて中心線CL2に沿って領域D3から領域D4に向かう方向に第一共振部材13、第二圧電素子部12及び第二共振部材14が順次並ぶようにして、配置されている。
【0041】
また、B相第一振動素子B1の第一圧電素子部11及びB相第二振動素子B2の第二圧電素子部12は、駆動回路6(図3参照)に電気的に接続されており、駆動回路6によって同じ位相の交流電圧が印加されるようになっている。
これにより、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12、すなわち、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2と駆動回路6とは1つの回路を形成し、この回路はB相を構成している。なお、B相は、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2が構成するA相と電気的に分離されている。
【0042】
よって、B相第一振動素子B1は、交流電圧が印加されたとき、第一圧電素子部11の厚み方向(締結ねじ15の軸方向)の中心部を振動の腹として、ステータ2の下面2dに向かう上方向及び支持部材3の上面3a(図3参照)に向かう下方向に交互に撓むたわみ振動を発生する。また、B相第二振動素子B2は、交流電圧が印加されたとき、第二圧電素子部12の厚み方向(締結ねじ15の軸方向)の中心部を振動の腹として、ステータ2の下面2dに向かう上方向及び支持部材3の上面3aに向かう下方向に交互に撓むたわみ振動を発生する。しかしながら、B相第二振動素子B2のたわみ振動は、B相第一振動素子B1と同等のたわみ量を有しつつもB相第一振動素子B1のたわみ方向と反対方向に撓む振動となる。
【0043】
なお、B相第一振動素子B1のたわみ面である上面B1aにおいて、第一圧電素子部11の厚み方向の中心部には、点B1cが位置し、点B1cは、領域D3の中央且つ中心線CL2上に位置する。また、B相第二振動素子B2のたわみ面である上面B2aにおいて、第二圧電素子部12の厚み方向の中心部には、点B2cが位置し、点B2cは、領域D4の中央且つ中心線CL2上に位置する。
【0044】
次に、図1〜7を用いて、この発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータ101の動作を示す。
図1を参照すると、駆動回路6(図3参照)によって、A相第一振動素子A1の第一圧電素子部11、A相第二振動素子A2の第二圧電素子部12、B相第一振動素子B1の第一圧電素子部11及びB相第二振動素子B2の第二圧電素子部12に交流電圧が印加されると、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2はそれぞれ、超音波振動であるたわみ振動を発生する。
【0045】
このとき、可撓性を有するステータ2及び支持部材3は、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2と共に撓むため、ステータ2にもたわみ振動が発生する。さらに、ステータ2では、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2のそれぞれによるたわみ振動が複合し、ステータ2の円周、すなわち中心線CL2(図2参照)に沿って進む進行波が発生する。
【0046】
発生した進行波によって、ステータ2の爪部2cの先端には、爪部2cから回転子1の軸部1aに向かう軸を中心に回る楕円振動が発生する。そして、爪部2cは、その先端に発生した楕円振動によって、回転子1のロータ部1bの下面1bbを引っ掻くように動作し、それにより、ロータ部1bは、爪部2cとの間の摩擦力によってその周方向となる方向R1又は方向R2に回転する。よって、振動アクチュエータ101は、回転子1の軸部1aをその中心軸を中心に方向R1又は方向R2に回転させ、振動アクチュエータ101の外部で軸部1aに接続されたものに回転駆動力を伝達する。なお、軸部1aの回転方向は、印加する交流電圧を制御することによって、制御される。また、上述から、振動アクチュエータ101は、進行波型の振動アクチュエータを構成している。
ここで、ステータ2の爪部2cは、進行波が発生するステータの部位を構成している。
【0047】
次に、ステータ2における進行波の発生の仕組みを詳述する。
図2及び図4を参照すると、駆動回路6(図3参照)によって、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2が構成するA相には、最大電圧がV1である所定の周波数fの交流電圧vaが印加され、このA相に印加される交流電圧vaの時間変化は、図4の実線曲線で示される。そして、交流電圧vaは、次の式で示される。
va=V1cos2πft (式1)
なお、fは、交流電圧vaの周波数であり、tは、経過時間である。
また、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2が構成するB相には、A相の交流電圧vaと最大電圧V1及び周波数fが同一であるが交流電圧vaに対して周期の4分の1に相当する位相π/2を進ませた交流電圧vbが印加され、このB相に印加される交流電圧vbの時間変化は、図4の破線曲線で示される。そして、交流電圧vbは、次の式で示される。
vb=V1cos(2πft+π/2) (式2)
なお、fは、交流電圧vbの周波数であり、tは、経過時間である。
【0048】
また、図3を参照すると、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2に正の電圧が印加されている場合、A相第一振動素子A1は、第一圧電素子部11をステータ2に向かって突出させるようにして撓み、A相第二振動素子A2は、第二圧電素子部12を支持部材3に向かって突出させるようにして撓む。一方、負の電圧が印加されている場合、A相第一振動素子A1は、第一圧電素子部11を支持部材3に向かって突出させるようにして撓み、A相第二振動素子A2は、第二圧電素子部12をステータ2に向かって突出させるようにして撓む。
同様に、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2(図2参照)に正の電圧が印加されている場合、B相第一振動素子B1は、第一圧電素子部11(図2参照)をステータ2に向かって突出させるようにして撓み、B相第二振動素子B2は、第二圧電素子部12(図2参照)を支持部材3に向かって突出させるようにして撓む。一方、負の電圧が印加されている場合、B相第一振動素子B1は、第一圧電素子部11を支持部材3に向かって突出させるようにして撓み、B相第二振動素子B2は、第二圧電素子部12をステータ2に向かって突出させるようにして撓む。
【0049】
そして、図4、式1及び式2に示される交流電圧va及びvbが印加された場合、A相第一振動素子A1の上面A1aの点A1c、A相第二振動素子A2の上面A2aの点A2c、B相第一振動素子B1の上面B1aの点B1c、及びB相第二振動素子B2の上面B2aの点B2cのそれぞれにおける変位の時間変化が、図5のグラフ(i)〜グラフ(iv)に示される。
【0050】
なお、図5において、それぞれの変位は、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2の厚み方向であるステータ2から支持部材3に向かう上下方向の変位である。そして、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2に撓みが発生していない場合、点A1c、点A2c、点B1c及び点B2cの変位は0である。撓みにより点A1c、点A2c、点B1c及び点B2cがステータ2に向かう上方向に変位した場合、変位は正の値をとり、その最大変位はAとなる。一方、点A1c、点A2c、点B1c及び点B2cが支持部材3に向かう下方向に変位した場合、変位は負の値をとり、その最小変位は−Aとなる。
【0051】
図2に戻り、交流電圧vaの印加によりA相第一振動素子A1は、ステータ2に対して、交点D1a及びD1bの位置を振動の節としてこれら節の間に1つの振動の山又は谷を形成するようにして領域D1のステータ2を上下方向に撓ませるたわみ振動を発生させる。同時に、交流電圧vaの印加によりA相第二振動素子A2は、ステータ2に対して、交点D1a及びD2aの位置を振動の節としてこれら節の間に1つの振動の山又は谷を、ステータ2の領域D1のたわみ方向と反対方向に形成するようにして領域D2のステータ2を上下方向に撓ませるたわみ振動を発生させる。
【0052】
さらに、領域D1及びD2のたわみ振動がステータ2を伝達し、それによって、ステータ2には、領域D1及びD2をそれぞれ半波長とした中心線CL2に沿う第一定在波が生成される。そして、第一定在波は、回転子1(図1参照)に向かう上方向及び支持部材3(図1参照)に向かう下方向に振幅する。
【0053】
また、領域D1は、中心点C2を中心とする中心角α1の領域であり、領域D2は、中心点C2を中心とする中心角α2の領域であり、中心角α1及びα2はいずれも、π/4ラジアンである。よって、ステータ2に形成される第一定在波は、領域D1及び領域D2を合わせた中心角がπ/2ラジアンの領域に1つの波長を形成する定在波であり、ステータ2の全周では4つの波長を形成する定在波となる。すなわち、第一定在波は、円環4次モードの定在波となる。
【0054】
ここで、図2において、中心点C2から交点D3aに延ばした線を基準線L1とする。そして、基準線L1の位置を位相0ラジアンとし、中心点C2を中心として方向R1に角度θラジアンだけ基準線L1を回転させた時、回転後の基準線L1の位置を位相θラジアンとする。
このとき、B相第一振動素子B1の点B1cの位置を位相θ1、B相第二振動素子B2の点B2cの位置を位相θ2、A相第二振動素子A2の点A2cの位置を位相θ3、A相第一振動素子A1の点A1cの位置を位相θ4とすると、位相θ1、位相θ2、位相θ3及び位相θ4はそれぞれ、π/8ラジアン、3π/8ラジアン、3π/2ラジアン及び7π/4ラジアンとなる。
【0055】
そして、図6を参照すると、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2のたわみ振動がステータ2に形成する第一定在波による、ステータ2の中心線CL2上の各位置における変位が実線曲線で示されている。
図6では、ステータ2の中心線CL2上の各位置は、基準線L1の位置を0ラジアンとする位相で示され、図示される実線曲線は、第一定在波の振幅が最大振幅である振幅Aになった時の状態を示している。なお、図6において、変位は、ステータ2の厚み方向である回転子1(図1参照)から支持部材3(図1参照)に向かう上下方向の変位であり、回転子1に向かう上方向の変位は正の値をとり、支持部材3に向かう下方向の変位は負の値をとる。
そして、ステータ2の中心線CL2上での位置の位相をθとすると、位相θの位置での円環4次モードの第一定在波によるステータ2の変位uaは、式1から次の式で示される。
ua=Acos4θcos2πft (式3)
なお、fは、交流電圧va(式1参照)の周波数であり、tは、経過時間である。
【0056】
また、図2に戻り、交流電圧vbの印加によりB相第一振動素子B1は、ステータ2に対して、交点D3a及びD3bの位置を振動の節とした1つの振動の山又は谷を形成するようにして領域D3のステータ2を上下方向に撓ませるたわみ振動を発生させる。同時に、交流電圧vbの印加によりB相第二振動素子B2は、ステータ2に対して、交点D3b及びD4bの位置を振動の節とした1つの振動の山又は谷を、領域D3のたわみ方向と反対方向に形成するようにして領域D4のステータ2を上下方向に撓ませるたわみ振動を発生させる。これによって、ステータ2には、領域D3及びD4をそれぞれ半波長とした中心線CL2に沿う第二定在波が生成され、第二定在波は、回転子1(図1参照)に向かう上方向及び支持部材3(図1参照)に向かう下方向に振幅する。
【0057】
また、領域D3は、中心点C2を中心とする中心角β1の領域であり、領域D4は、中心点C2を中心とする中心角β2の領域であり、中心角β1及びβ1はいずれも、π/4ラジアンである。よって、ステータ2に形成される第二定在波は、領域D3及び領域D4を合わせた中心角がπ/2ラジアンの領域に1つの波長を形成する定在波であり、ステータ2の全周では4つの波長を形成する定在波となる。すなわち、第二定在波は、円環4次モードの定在波でとなる。
【0058】
また、領域D5の中心角γがπ/8ラジアンであるため、第二定在波の節となる交点D3aの位置と、第一定在波の節となる交点D1bの位置との位相差はπ/8ラジアンとなる。一方、第一定在波及び第二定在波の1波長が形成される領域は、π/2ラジアンを中心角とする領域に相当するため、領域D5は、第一定在波及び第二定在波の1波長の1/4に相当する。よって、第二定在波及び第一定在波は、互いに1/4波長ずれた状態でステータ2に形成される。
【0059】
そして、図6を参照すると、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2のたわみ振動がステータ2に形成する第二定在波による、ステータ2の中心線CL2上の各位置における変位が破線曲線で示されている。なお、図示される破線曲線は、図示される第一定在波と同時に形成されている第二定在波を示している。
さらに、ステータ2の中心線CL2上での位置の位相をθとすると、位相θの位置での円環4次モードの第二定在波によるステータ2の変位ubは、式2から次の式で示される。
ub=Acos{4(θ+π/8)}cos(2πft+π/2)
=Acos(4θ+π/2)cos(2πft+π/2) (式4)
なお、fは、交流電圧vb(式2参照)の周波数であり、tは、経過時間である。
【0060】
上述のように、ステータ2には、第一定在波及び第二定在波が生じるが、この2つの定在波は、いずれもが同一の円周である中心線CL2に沿って形成されているため、互いに重なり合うことで進行波を形成する。
そして、図7を参照すると、形成された進行波による、ステータ2の中心線CL2上の各位置における変位が実線曲線で示されている。なお、図7において、変位は、図6と同様に、ステータ2の厚み方向の変位であり、上方向の変位は正の値をとり、下方向の変位は負の値をとる。また、図示される実線曲線は、ある特定の時刻における進行波による変位を示している。
さらに、ステータ2の中心線CL2上での位置の位相をθとすると、位相θの位置での進行波によるステータ2の変位uは、式3及び式4から次の式で示される。
u=ua+ub
=Acos4θcos2πft+Acos(4θ+π/2)cos(2πft+π/2)
=Acos(4θ−2πft) (式5)
【0061】
よって、進行波は、図7において位相θの正方向である方向Wに進行する波であり、図2において、B相第一振動素子B1からB相第二振動素子B2に向かう方向R1に進行する。
上述のようにして、ステータ2に、その中心線CL2(図2参照)に沿って進行する進行波が発生し、そして、進行波の進行によって、ステータ2の爪部2c(図1参照)の先端には、楕円振動が発生する。なお、ステータ2の中心線CL2に沿って振幅Aを有して進行する進行波を発生させるためには、中心線CL2に沿って振幅Aの第一定在波及び第二定在波を発生させることが好ましく、そのためには、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2が、同一の円周上である中心線CL2上で1つの輪を形成するようにして並べられることが好ましい。
【0062】
上述の説明から、実施の形態1に係る振動アクチュエータ101は、ステータ2と、ステータ2に対して移動可能に接触させて設けられる回転子1と、分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を有し、ステータ2に対して第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12のたわみ振動を伝達可能に接触して設けられるA相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2と、分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を有し、ステータ2に対して第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12のたわみ振動を伝達可能に接触して設けられるB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2とを備え、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12は、電圧の印加時に撓む方向と異なる方向に分極され、回転子1は、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2からステータ2に伝達したたわみ振動によって形成される進行波が発生するステータ2の爪部2cと接触する。
【0063】
このとき、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2からステータ2にたわみ振動を加える方向と、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12の分極方向とが異なる。そして、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12に対して、たわみ振動時に内部に発生する引張応力を低減する場合、分極方向から圧縮力を付与すればよい。よって、圧縮力を付与する部材は、ステータ2とA相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2とが積層される方向(積層方向)と異なる方向に配置することができるため、振動アクチュエータ101がこの積層方向に大型化することを抑えることが可能になる。従って、振動アクチュエータ101は、発生する引張応力を低減することにより第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12への印加電圧を増大させてその回転駆動力を増大させることを可能にすると共に、振動アクチュエータ101の回転軸方向の小型化を図ることを可能にする。
【0064】
また、振動アクチュエータ101は、A相に、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12と、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を挟むようにして設けられる第一共振部材13及び第二共振部材14と、第一共振部材13及び第二共振部材14を連結する締結ねじ15とを有するA相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2を備える。さらに、振動アクチュエータ101は、B相に、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12と、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を挟むようにして設けられる第一共振部材13及び第二共振部材14と、第一共振部材13及び第二共振部材14を連結する締結ねじ15とを有するB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2を備える。そして、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2は、ステータ2に沿って、第一共振部材13、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12、及び第二共振部材14が並ぶようにして配置され、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、ステータ2に沿って、第一共振部材13、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12、及び第二共振部材14が並ぶようにして配置される。
【0065】
これによって、第一共振部材13及び第二共振部材14は、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12を拘束しさらに締め付けることによってこれらに圧縮力を付与することができるため、膨張時に第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12に発生する引張応力を低減しさらには引張応力を発生させなくすることもできる。よって、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12に印加する電圧を高くすることができるため、振動アクチュエータ101の回転駆動力をより増大させることが可能になる。さらに、第一共振部材13、第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12、及び第二共振部材14は、ステータ2に沿って並ぶようにして配置されるため、回転子1及びステータ2の積層方向である回転子1の軸部1aの軸方向において、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2、並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2の厚さを小さく抑えることができる。よって、振動アクチュエータ101は、扁平形状で製作することができる。さらに、回転子1及びステータ2の大きさに合わせて、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2の数量を変更することによって、回転子1及びステータ2の大きさが変わる毎にその大きさを変えることなく、回転子1を回転駆動することができる。よって、同形状のA相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2の汎用性を向上させ、製作コストを低減することが可能になる。
【0066】
また、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12は、電圧が印加されると膨張又は収縮し且つ互いに異なる動きをするように分極された第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bを有し、第一共振部材13及び第二共振部材14は、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bが膨張又は収縮する方向から第一圧電素子部11又は第二圧電素子部12を挟む。このとき、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bが互いに異なる膨張動作及び収縮動作をすることによって、第一圧電素子部11及び第二圧電素子部12は、分極方向と異なる方向に撓む動作を行うことができる。さらに、第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bは、膨張する方向と反対方向から第一共振部材13及び第二共振部材14による圧縮力を受けるため、引張応力による破損を低減することが可能になる。
【0067】
また、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2とB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2とは、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2からステータ2に伝達するたわみ振動とB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2からステータ2に伝達するたわみ振動とがそれぞれ、ステータ2に別個の第一定在波及び第二定在波を形成するように、定在波の1/4波長に相当する中心角γの間隔を互いにあけて設けられる。このとき、第一定在波及び第二定在波が別個に形成されるため、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2とB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2とに印加する交流電圧の位相をずらすようにして調節することにより、第一定在波及び第二定在波が、ステータ2に進行波を効果的に形成することが可能になる。
ステータ2は円筒状すなわち環状であり、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2、並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、ステータ2に沿って環状に配置される。ステータ2が環状であることによって、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2、並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2から伝達したたわみ振動は、ステータ2の円周に沿って全体に伝播する。よって、A相第一振動素子A1とB相第一振動素子B1が少なくとも1つずつあれば、ステータ2全体に進行波を発生させることができるため、コストを低減することが可能になる。
【0068】
また、実施の形態1の振動アクチュエータ101では、ステータ2において、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2によって円環4次モードの第一定在波を形成し、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2によって円環4次モードの第二定在波を形成していたが、これに限定されるものでなく、以下のような変形例を挙げることができる。
【0069】
(変形例1)
図8に示すように、ステータ2に対して、1つのA相振動素子A21と、1つのB相振動素子B21とを配置し、A相振動素子A21及びB相振動素子B21のそれぞれによって円環4次モードの第一定在波及び第二定在波を形成するようにしてもよい。
このとき、A相振動素子A21は、中心点C2を中心として中心角α(αはπ/2ラジアンである)とするステータ2の下面2dの領域の端部から端部まで及ぶように位置し、B相振動素子B21は、中心点C2を中心として中心角β(βはπ/2ラジアンである)とするステータ2の下面2dの領域の端部から端部まで及ぶように位置している。そして、A相振動素子A21及びB相振動素子B21はいずれも、第一共振部材13、第一圧電素子部11、第二共振部材14、並びに、第一共振部材13及び第二共振部材14を第一圧電素子部11に対して押し付けて一体にする締結ねじ215によって構成されている。
【0070】
A相振動素子A21は、交流電圧が印加されると、ステータ2の下面2dにおける中心角α(π/2ラジアン)の領域を1つの波長とする下面2dの周方向に沿った第一定在波を形成し、この第一定在波は、ステータ2の全周では4つの波長を形成する円環4次モードの定在波となる。同様に、B相振動素子B21は、交流電圧が印加されると、ステータ2の下面2dにおける中心角β(π/2ラジアン)の領域を1つの波長とする下面2dの周方向に沿った第二定在波を形成し、この第二定在波は、ステータ2の全周では4つの波長を形成する円環4次モードの定在波となる。
【0071】
さらに、紙面上で時計回りにA相振動素子A21からB相振動素子B21に向かう方向にあるA相振動素子A21とB相振動素子B21との間の間隙領域について、その中心角γを3/8πラジアンとすると、A相振動素子A21に交流電圧va(式1参照)、B相振動素子B21に交流電圧vb(式2参照)を印加することによって、位相θの位置のステータ2の変位が式5に示す変位uとなる進行波が、ステータ2に発生する。
【0072】
また、ステータ2において、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2によって形成される第一定在波、並びに、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2によって形成される第二定在波は、円環4次モードの定在波に限定されるものでなく、以下のような変形例を挙げることができる。
【0073】
(変形例2)
図9に示すように、ステータ2に対して、中心点C2を中心として中心角α1(α1はπ/2ラジアンである)とするステータ2の下面2dの領域の端部から端部までほぼ及ぶようにA相第一振動素子A21を配置し、A相第一振動素子A21に隣接させ且つ中心角α2(α2はπ/2ラジアンである)とするステータ2の下面2dの領域の端部から端部までほぼ及ぶようにA相第二振動素子A22を配置する。さらに、ステータ2に対して、中心点C2を中心として中心角β1(β1はπ/2ラジアンである)とするステータ2の下面2dの領域の端部から端部までほぼ及ぶようにB相第一振動素子B21を配置し、B相第一振動素子B21に隣接させ且つ中心角β2(β2はπ/2ラジアンである)とするステータ2の下面2dの領域の端部から端部までほぼ及ぶようにB相第二振動素子B22を配置する。そして、A相第一振動素子A21とB相第一振動素子B21とを間隙を介して隣接させ、A相第二振動素子A22とB相第二振動素子B22とを間隙を介して隣接させる。
【0074】
なお、A相第一振動素子A21及びB相第一振動素子B21は、上述のA相振動素子A21及びB相振動素子B21と同様の構成を有している。一方、A相第二振動素子A22及びB相第二振動素子B22はいずれも、第一共振部材13、第二圧電素子部12、第二共振部材14、並びに、第一共振部材13及び第二共振部材14を第二圧電素子部12に対して押し付けて一体にする締結ねじ215によって構成されている。
【0075】
A相第一振動素子A21は、交流電圧が印加されると、ステータ2の下面2dにおける中心角α1(π/2ラジアン)の領域を半波長とする下面2dの周方向に沿った定在波の一部を形成し、A相第二振動素子A22は、下面2dにおける中心角α2(π/2ラジアン)の領域を半波長とする下面2dの周方向に沿った定在波の一部を形成する。よって、A相第一振動素子A21及びA相第二振動素子A22によって、ステータ2の下面2dにおける中心角をπラジアンとする領域を1つの波長とする下面2dの周方向に沿った第一定在波が形成され、この第一定在波は、ステータ2の全周では2つの波長を形成する円環2次モードの定在波となる。
【0076】
同様に、交流電圧が印加されると、B相第一振動素子B21及びB相第二振動素子B22によって、ステータ2の下面2dにおける中心角をπラジアンとする領域を1つの波長とする下面2dの周方向に沿った第二定在波が形成され、この第二定在波は、ステータ2の全周では2つの波長を形成する円環2次モードの定在波となる。
そして、A相第一振動素子A21及びA相第二振動素子A22からなるA相と、B相第一振動素子B21及びB相第二振動素子B22からなるB相とに印加する交流電圧の位相差を調節することによって、ステータ2に進行波を発生させることができる。なお、印加する交流電圧の周波数が同一の場合、定在波の円環モードの次数を減少させることで、進行波の進行速度が増加して回転子1の回転速度が増加し、その次数を増加させることで進行波の進行速度が減少して回転子1の回転速度が減少する。
【0077】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータ201は、実施の形態1において、ステータ2の下面2dの周方向である中心線CL2に沿って、第一共振部材13、第一圧電素子部11及び第二共振部材14が順次並ぶように配置されていたA相第一振動素子A1及びB相第一振動素子B1、並びに、第一共振部材13、第二圧電素子部12及び第二共振部材14が順次並ぶように配置されていたA相第二振動素子A2及びB相第二振動素子B2を、下面2dの周方向と垂直な方向に沿って並ぶように配置したものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0078】
図10を参照すると、振動アクチュエータ201のステータ2の下面2dにおいて、A相第一振動素子A1は、締結ねじ15の軸方向となる中心軸A1CLが下面2dの周方向と垂直な方向、すなわち、中心点C2に向かう方向となるように方向付けられている。さらに、A相第一振動素子A1は、中心軸A1CLが中心点C2を中心とする中心角α1(α1はπ/4ラジアンである)の領域D1の中央を通り且つ第一圧電素子部11が領域D1内にあるように位置付けられている。このため、中心点C2を中心とした中心軸A1CLと領域D1の端部とによる中心角はα1/2(0.5α1)となる。
【0079】
また、下面2dにおいて、A相第二振動素子A2は、その締結ねじ15の軸方向となる中心軸A2CLが中心点C2に向かう方向となるように方向付けられ、さらに、中心軸A2CLが中心角α2(α2はπ/4ラジアンである)の領域D2の中央を通り且つ第二圧電素子部12が領域D2内にあるように位置付けられている。このため、中心点C2を中心とした中心軸A2CLと領域D2の端部とによる中心角はα2/2(0.5α2)となる。
【0080】
また、下面2dにおいて、B相第一振動素子B1は、その締結ねじ15の軸方向となる中心軸B1CLが中心点C2に向かう方向となるように方向付けられ、さらに、中心軸B1CLが中心角β1(β1はπ/4ラジアンである)の領域D3の中央を通り且つ第一圧電素子部11が領域D3内にあるように位置付けられている。このため、中心点C2を中心とした中心軸B1CLと領域D3の端部とによる中心角はβ1/2(0.5β1)となる。
さらに、下面2dにおいて、B相第二振動素子B2は、その締結ねじ15の軸方向となる中心軸B2CLが中心点C2に向かう方向となるように方向付けられ、さらに、中心軸B2CLが中心角β2(β2はπ/4ラジアンである)の領域D4の中央を通り且つ第二圧電素子部12が領域D4内にあるように位置付けられている。このため、中心点C2を中心とした中心軸B2CLと領域D4の端部とによる中心角はβ2/2(0.5β2)となる。
また、領域D1及び領域D3の間の領域D5の中心角γは、π/8ラジアンである。
【0081】
これにより、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2は、交流電圧が印加されると互いに反対方向に変形するたわみ振動を発生するため、ステータ2の下面2dにおける中心角α1+α2(α1+α2はπ/2ラジアンである)の領域D1+領域D2を1つの波長とする下面2dの周方向に沿った第一定在波を、ステータ2に形成する。よって、A相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2は、ステータ2の全周で4つの波長を形成する円環4次モードの第一定在波を発生し、この第一定在波は、実施の形態1でステータ2に形成される第一定在波と同様のものである。
【0082】
また、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2も同様に、交流電圧が印加されると互いに反対方向に変形するたわみ振動を発生するため、ステータ2の下面2dにおける中心角β1+β2(β1+β2はπ/2ラジアンである)の領域D3+領域D4を1つの波長とする下面2dの周方向に沿った第二定在波を、ステータ2に形成する。よって、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、ステータ2の全周で4つの波長を形成する円環4次モードの第二定在波を発生し、この第二定在波は、実施の形態1でステータ2に形成される第二定在波と同様のものである。
【0083】
従って、ステータ2には、実施の形態1と同様にして、第一定在波及び第二定在波の複合波である進行波が発生する。
また、この発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータ201のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0084】
このように、実施の形態2に係る振動アクチュエータ201において、上記実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様な効果が得られる。
また、振動アクチュエータ201のように、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1、B相第二振動素子B2は、ステータ2の下面2dの周方向に垂直な方向に沿うように配置されることによって互いに干渉しにくくなるため、それぞれの大きさによって配置上の制約を受けにくくなる。よって、A相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1、B相第二振動素子B2は、ステータ2の大きさが変わる毎にその大きさを変える必要がなく様々な大きさのステータに対して使用することができるため、汎用性が向上し製作コストを低減することが可能になる。
【0085】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る振動アクチュエータ301は、実施の形態1において、ステータ2の上方向に回転子1を配置し、ステータ2の下方向にA相第一振動素子A1、A相第二振動素子A2、B相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2を配置していたものを、ステータ32の外側に回転子31を配置し、ステータ32の内側にA相第一振動素子A31、A相第二振動素子A32、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32を配置するようにしたものである。
【0086】
図11を参照すると、振動アクチュエータ301は、略円筒状のステータ32を有している。ステータ32の円筒状の外周面32aには、溝32bが複数形成され、それによって外周面32aの外側に向かって突出する複数の爪部32cが形成されている。
さらに、振動アクチュエータ301は、ステータ32の外周面32aを取り囲む略円筒状をした回転子31を有している。回転子31は、その円筒状の内周面31bbをステータ32の爪部32cに接触させている。
【0087】
また、振動アクチュエータ301は、ステータ32の円筒状の内周面32dに接合させたA相第一振動素子A31、A相第二振動素子A32、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32を有している。
さらに、振動アクチュエータ301は、A相第一振動素子A31、A相第二振動素子A32、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32のそれぞれにおけるステータ32と反対側の側面に接合させた円筒状の支持部材33を有している。
【0088】
A相第一振動素子A31、A相第二振動素子A32、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32はそれぞれ、ステータ32の内周面32d及び支持部材33の円筒状の外周面33aに整合し、ステータ32の内周面32dに周方向に沿う形状を有している。
【0089】
A相第一振動素子A31は、ステータ32の内周面32dに沿って順次並ぶように配置した第一共振部材313、第一圧電素子部311及び第二共振部材314を有し、第一共振部材313、第一圧電素子部311及び第二共振部材314を、ステータ32の円筒軸となる中心軸C32を中心とした中心角α1(α1はπ/4ラジアンである)の領域内における内周面32dと、周方向全域にわたり接触させている。第一共振部材313及び第二共振部材314はそれぞれ、第一圧電素子部311を貫通する締結ねじ315と螺合し、締め付けられることによって、第一圧電素子部311に押し付けられて第一圧電素子部311と一体となっている。
【0090】
第一圧電素子部311は、実施の形態1の第一圧電素子10a及び第二圧電素子10bとそれぞれ同様の第一圧電素子310a及び第二圧電素子310bを、締結ねじ315を境界として、ステータ32の内周面32d及び支持部材33の外周面33aに向かう方向に離れるような形状で有している。第一圧電素子310a及び第二圧電素子310bは、締結ねじ315の軸方向に互いに逆極性となるように分極されている。そして、第一圧電素子310aは、ステータ32の内周面32dと接触し、第二圧電素子310bは、支持部材33の外周面33aと接触している。
【0091】
A相第二振動素子A32も、A相第一振動素子A31と同様にして、ステータ32の内周面32dに沿って順次並ぶように配置した第一共振部材313、第二圧電素子部312及び第二共振部材314を有しており、その第一共振部材313をA相第一振動素子A31の第二共振部材314に隣接させて配置されている。さらに、A相第二振動素子A32は、第一共振部材313、第二圧電素子部312及び第二共振部材314を、中心軸C32を中心とした中心角α2(α2はπ/4ラジアンである)の領域内におけるステータ32の内周面32dと、周方向全域にわたり接触させている。第一共振部材313及び第二共振部材314はそれぞれ、第二圧電素子部312を貫通する締結ねじ315と螺合し、締め付けられることによって、第二圧電素子部312に押し付けられて第二圧電素子部312と一体となっている。
【0092】
また、第二圧電素子部312は、第一圧電素子部311と同様にして、第一圧電素子310a及び第二圧電素子310bを有しているが、第二圧電素子310bがステータ32の内周面32dと接触し、第一圧電素子310aが支持部材33の外周面33aと接触するようにして配置されている。
【0093】
このため、A相を構成するA相第一振動素子A31及びA相第二振動素子A32に同じ電圧が印加されると、例えば、第一圧電素子部311の第一圧電素子310aがステータ32の内周面32dの周方向に沿った方向Pに膨張する共に、第一圧電素子部311の第二圧電素子310bが内周面32dの周方向に沿った方向Qに収縮する。同時に、第二圧電素子部312の第二圧電素子310bが内周面32dの周方向に沿った方向Qに収縮する共に、第二圧電素子部312の第一圧電素子310aが内周面32dの周方向に沿った方向Pに膨張する。これにより、A相第一振動素子A31は、ステータ32に向かって突出するように撓み、A相第二振動素子A32は、支持部材33に向かって突出するように撓み、互いに反対の方向の変形挙動を行う。
【0094】
よって、A相第一振動素子A31及びA相第二振動素子A32は、同じ交流電圧が印加されて、ステータ32に向かう方向又は支持部材33に向かう方向に交互に互いに反対方向に撓むたわみ振動を発生する。
このとき、A相第一振動素子A31及びA相第二振動素子A32は、ステータ32における中心角α1+α2(α1+α2はπ/2ラジアンである)の領域を1つの波長としたステータ32の内周面32dの周方向に沿った第一定在波を、ステータ32に形成する。 従って、A相第一振動素子A31及びA相第二振動素子A32は、ステータ32の全周で4つの波長を形成する円環4次モードの第一定在波を発生する。なお、第一定在波は、回転子31に向かう方向及び支持部材33に向かう方向に振幅するものである。
【0095】
また、B相第一振動素子B31は、A相第一振動素子A31と同様の構成を有し、B相第二振動素子B32は、A相第二振動素子A32と同様の構成を有している。
つまり、B相第一振動素子B31は、第一共振部材313、第一圧電素子部311、第二共振部材314、及び締結ねじ315によって構成され、第一共振部材313、第一圧電素子部311及び第二共振部材314を、中心軸C32を中心とした中心角β1(β1はπ/4ラジアンである)の領域内におけるステータ32の内周面32dと、周方向全域にわたり接触させている。そして、第一圧電素子部311では、第一圧電素子310aがステータ32の内周面32dと接触し、第二圧電素子310bが支持部材33の外周面33aと接触している。
【0096】
また、B相第二振動素子B32は、第一共振部材313、第二圧電素子部312、第二共振部材314、及び締結ねじ315によって構成され、その第一共振部材313をB相第一振動素子B31の第二共振部材314に隣接させて配置されている。さらに、B相第二振動素子B32は、第一共振部材313、第二圧電素子部312及び第二共振部材314を、中心軸C32を中心とした中心角β2(β2はπ/4ラジアンである)の領域内におけるステータ32の内周面32dと、周方向全域にわたり接触させている。そして、第二圧電素子部312では、第二圧電素子310bがステータ32の内周面32dと接触し、第一圧電素子310aが支持部材33の外周面33aと接触している。
【0097】
よって、B相を構成するB相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32は、同じ交流電圧が印加されて、互いに反対方向に撓む変形挙動を行うことによって、ステータ32に向かう方向又は支持部材33に向かう方向に交互に互いに反対方向に撓むたわみ振動を発生する。
このとき、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32は、ステータ32における中心角β1+β2(β1+β2はπ/2ラジアンである)の領域を1つの波長としたステータ32の内周面32dの周方向に沿った第二定在波を、ステータ32に形成する。 従って、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32は、ステータ32の全周で4つの波長を形成する円環4次モードの第二定在波を発生する。なお、第二定在波は、回転子31に向かう方向及び支持部材33に向かう方向に振幅するものである。
【0098】
また、A相第一振動素子A31とB相第一振動素子B31とは、ステータ32の内周面32dにおいて、中心軸C32を中心とする中心角γ(γはπ/8ラジアンである)の領域に相当する間隔があけられて配置されている。このため、第一定在波及び第二定在波は、ステータ32において、1/4波長ずれた状態で形成される。
よって、ステータ32には、実施の形態1と同様にして、第一定在波及び第二定在波の複合波である進行波が発生する。さらに、発生した進行波によって、ステータ32の爪部32cの先端には、中心軸C32方向の軸を中心に回る楕円振動が発生し、爪部32cは、その先端に発生した楕円振動によって、回転子31の内周面31bbを引っ掻くように動作して回転子31を周方向に回転させる。
【0099】
また、この発明の実施の形態3に係る振動アクチュエータ301のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
このように、実施の形態3に係る振動アクチュエータ301において、上記実施の形態1の振動アクチュエータ101と同様な効果が得られる。
【0100】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る振動アクチュエータ401は、実施の形態3における回転子31とA相第一振動素子A31、A相第二振動素子A32、B相第一振動素子B31及びB相第二振動素子B32との配置を逆にしたもので、ステータ42の内側に回転子41を配置し、ステータ42の外側にA相第一振動素子A41、A相第二振動素子A42、B相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42を配置していたものである。
【0101】
図12を参照すると、振動アクチュエータ401は、略円筒状のステータ42を有している。ステータ42の円筒状の内周面42aには、溝42bが複数形成され、それによって内周面42aの内側に向かって突出する複数の爪部42cが形成されている。
さらに、振動アクチュエータ401は、ステータ42の爪部42cにその外周面41bbを接触させている略円柱状の回転子41を有している。
【0102】
また、振動アクチュエータ401は、ステータ42の円筒状の外周面42dに接合させたA相第一振動素子A41、A相第二振動素子A42、B相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42を有している。
さらに、振動アクチュエータ401は、A相第一振動素子A41、A相第二振動素子A42、B相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42のそれぞれにおけるステータ42と反対側の側面に接合させた円筒状の支持部材43を有している。
【0103】
A相第一振動素子A41、A相第二振動素子A42、B相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42はそれぞれ、ステータ42の外周面42d及び支持部材43の円筒状の内周面43aに整合し、ステータ42の外周面42dに周方向に沿う形状を有している。
【0104】
A相第一振動素子A41は、ステータ42の外周面42dに沿って順次並ぶように配置した第一共振部材413、第一圧電素子部411及び第二共振部材414を有し、第一共振部材413、第一圧電素子部411及び第二共振部材414を、ステータ42の円筒軸となる中心軸C42を中心とした中心角α1(α1はπ/4ラジアンである)の領域内における外周面42dと、周方向全域にわたり接触させている。第一共振部材413及び第二共振部材414はそれぞれ、第一圧電素子部411を貫通する締結ねじ415と螺合し、締め付けられることによって、第一圧電素子部411に押し付けられて第一圧電素子部411と一体となっている。
【0105】
第一圧電素子部411は、実施の形態3の第一圧電素子部311と同様にして、第一圧電素子410a及び第二圧電素子410bを有している。第一圧電素子410a及び第二圧電素子410bは、締結ねじ415を境界として、ステータ42の外周面42d及び支持部材43の内周面43aに向かう方向に離れるような形状を有し、締結ねじ415の軸方向に互いに逆極性となるように分極されている。そして、第一圧電素子410aは、ステータ42の外周面42dと接触し、第二圧電素子410bは、支持部材43の内周面43aと接触している。
【0106】
A相第二振動素子A42も、A相第一振動素子A41と同様にして、ステータ42の外周面42dに沿って順次並ぶように配置した第一共振部材413、第二圧電素子部412及び第二共振部材414を有しており、その第一共振部材413をA相第一振動素子A41の第二共振部材414に隣接させて配置されている。さらに、A相第二振動素子A42は、第一共振部材413、第二圧電素子部412及び第二共振部材414を、中心軸C42を中心とした中心角α2(α2はπ/4ラジアンである)の領域内におけるステータ42の外周面42dと、周方向全域にわたり接触させている。第一共振部材413及び第二共振部材414はそれぞれ、第二圧電素子部412を貫通する締結ねじ415と螺合し、締め付けられることによって、第二圧電素子部412に押し付けられて第二圧電素子部412と一体となっている。
【0107】
また、第二圧電素子部412は、第一圧電素子部411と同様にして、第一圧電素子410a及び第二圧電素子410bを有しているが、第二圧電素子410bがステータ42の外周面42dと接触し、第一圧電素子410aが支持部材43の内周面43aと接触するようにして配置されている。
【0108】
このため、A相を構成するA相第一振動素子A41及びA相第二振動素子A42に同じ電圧が印加されると、第一圧電素子部411及び第二圧電素子部412それぞれの第一圧電素子410a及び第二圧電素子410bが、ステータ42の外周面42dの周方向に沿った方向Pへの膨張動作又は方向Qへの収縮動作を行うが、互いに反対の挙動を行う。これにより、A相第一振動素子A41及びA相第二振動素子A42は、ステータ42に向かう方向又は支持部材43に向かう方向へ撓み、さらに互いに反対方向に撓む変形挙動を行う。
【0109】
よって、A相第一振動素子A41及びA相第二振動素子A42は、交流電圧が印加されて、ステータ42に向かう方向又は支持部材43に向かう方向に交互に互いに反対方向に撓むたわみ振動を発生する。
このとき、A相第一振動素子A41及びA相第二振動素子A42は、ステータ42における中心角α1+α2(α1+α2はπ/2ラジアンである)の領域を1つの波長としたステータ42の外周面42dの周方向に沿った第一定在波を、ステータ42に形成する。 従って、A相第一振動素子A41及びA相第二振動素子A42は、ステータ42の全周で4つの波長を形成する円環4次モードの第一定在波を発生する。なお、第一定在波は、回転子41に向かう方向及び支持部材43に向かう方向に振幅するものである。
【0110】
また、B相第一振動素子B41は、A相第一振動素子A41と同様の構成を有し、B相第二振動素子B42は、A相第二振動素子A42と同様の構成を有している。
つまり、B相第一振動素子B41は、第一共振部材413、第一圧電素子部411、第二共振部材414、及び締結ねじ415によって構成され、第一共振部材413、第一圧電素子部411及び第二共振部材414を、中心軸C42を中心とした中心角β1(β1はπ/4ラジアンである)の領域内におけるステータ42の外周面42dと、周方向全域にわたり接触させている。そして、第一圧電素子部411では、第一圧電素子410aが、ステータ42の外周面42dと接触し、第二圧電素子410bが、支持部材43の内周面43aと接触している。
【0111】
また、B相第二振動素子B42は、第一共振部材413、第二圧電素子部412、第二共振部材414、及び締結ねじ415によって構成され、その第一共振部材413をB相第一振動素子B41の第二共振部材414に隣接させて配置されている。さらに、B相第二振動素子B42は、第一共振部材413、第二圧電素子部412及び第二共振部材414を、中心軸C42を中心とした中心角β2(β2はπ/4ラジアンである)の領域内におけるステータ42の外周面42dと、周方向全域にわたり接触させている。そして、第二圧電素子部412では、第二圧電素子410bが、ステータ42の外周面42dと接触し、第一圧電素子410aが、支持部材43の内周面43aと接触している。
【0112】
よって、B相を構成するB相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42は、交流電圧が印加されて、互いに反対方向の撓む変形挙動を行うことによって、ステータ42に向かう方向又は支持部材43に向かう方向に交互に互いに反対方向に撓むたわみ振動を発生する。
このとき、B相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42は、ステータ42における中心角β1+β2(β1+β2はπ/2ラジアンである)の領域を1つの波長としたステータ42の外周面42dの周方向に沿った第二定在波を、ステータ42に形成する。 従って、B相第一振動素子B41及びB相第二振動素子B42は、ステータ42の全周で4つの波長を形成する円環4次モードの第二定在波を発生する。なお、第二定在波は、回転子41に向かう方向及び支持部材43に向かう方向に振幅するものである。
【0113】
また、A相第一振動素子A41とB相第一振動素子B41とは、ステータ42の外周面42dにおいて、中心軸C42を中心とする中心角γ(γはπ/8でラジアンある)の領域に相当する間隔があけられて配置されている。このため、第一定在波及び第二定在波は、ステータ42において、1/4波長ずれた状態で形成される。
よって、ステータ42には、実施の形態3と同様にして、第一定在波及び第二定在波の複合波である進行波が発生する。さらに、発生した進行波によって、ステータ42の爪部42cの先端には、中心軸C42方向の軸を中心に回る楕円振動が発生し、爪部42cは、その先端に発生した楕円振動によって、回転子41の外周面41bbを引っ掻くように動作して回転子41を周方向に回転させる。
【0114】
また、この発明の実施の形態4に係る振動アクチュエータ401のその他の構成及び動作は、実施の形態3と同様であるため、説明を省略する。
このように、実施の形態4に係る振動アクチュエータ401において、上記実施の形態3の振動アクチュエータ301と同様な効果が得られる。
【0115】
また、実施の形態1〜4において、ステータ2,32,42は環状に限定されるものでなく直線状、すなわちリニアであってもよい。このとき、例えば、実施の形態1におけるA相第一振動素子A1及びA相第二振動素子A2、並びにB相第一振動素子B1及びB相第二振動素子B2は、ステータ2に沿ってリニアに配置される。
また、実施の形態1〜4において、A相を構成する振動素子として2つのA相第一振動素子A1,A31,A41及びA相第二振動素子A2,A32,A42を配置し、B相を構成する振動素子として2つのB相第一振動素子B1,B31,B41及びB相第二振動素子B2,B32,B42を配置していたが、これに限定されるものでない。3つ以上のA相を構成する振動素子及びB相を構成する振動素子を配置してもよい。
【0116】
また、実施の形態1〜4において、締結ねじ15,215,315,415を使用して、第一共振部材13,313,413及び第二共振部材14,314,414を、第一圧電素子部11,311,411又は第二圧電素子部12,312,412と連結し一体にしていたが、これに限定されるものでない。連結方法は、第一共振部材13,313,413及び第二共振部材14,314,414が、第一圧電素子部11,311,411又は第二圧電素子部12,312,412を両側から拘束できるものであればよい。締結ねじ15,215,315,415の代わりに、リベットを使用してもよく、また、第一共振部材13,313,413及び第二共振部材14,314,414にこれらを連結する部材を接着してもよい。又は、第一共振部材13,313,413及び第二共振部材14,314,414をクリップで外側から挟み込むことによって、連結してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1,31,41 回転子(移動体)、2,32,42 ステータ、2c,32c,42c 爪部(進行波が発生するステータの部位)、10a,310a,410a 第一圧電素子(第一圧電素子、第三圧電素子)、10b,310b,410b 第二圧電素子(第二圧電素子、第四圧電素子)、11,311,411 第一圧電素子部(第一圧電素子体、第二圧電素子体)、12,312,412 第二圧電素子部(第一圧電素子体、第二圧電素子体)、13,313,413 第一共振部材(第一共振体、第三共振体)、14,314,414 第二共振部材(第二共振体、第四共振体)、15,215,315,415 締結ねじ(第一固定部材、第二固定部材)、101,201,301,401 振動アクチュエータ、A1,A21,A31,A41 A相第一振動素子(第一振動素子、第一振動素子部)、A2,A22,A32,A42 A相第二振動素子(第一振動素子、第一振動素子部)、B1,B21,B31,B41 B相第一振動素子(第二振動素子、第二振動素子部)、B2,B22,B32,B42 B相第二振動素子(第二振動素子、第二振動素子部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータに対して移動可能に接触させて設けられる移動体と、
分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第一圧電素子体を有し、前記ステータに対して前記第一圧電素子体のたわみ振動を伝達可能に接触して設けられる第一振動素子部と、
分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第二圧電素子体を有し、前記ステータに対して前記第二圧電素子体のたわみ振動を伝達可能に接触して設けられる第二振動素子部とを備え、
前記第一圧電素子体及び前記第二圧電素子体は、電圧の印加時に撓む方向と異なる方向に分極され、
前記移動体は、前記第一振動素子部及び前記第二振動素子部から前記ステータに伝達したたわみ振動によって形成される進行波が発生する前記ステータの部位と接触する振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記第一振動素子部は、前記第一圧電素子体と、前記第一圧電素子体を挟むようにして設けられる第一共振体及び第二共振体と、前記第一共振体及び前記第二共振体を連結する第一固定部材とを有する第一振動素子を少なくとも1つ備え、
前記第二振動素子部は、前記第二圧電素子体と、前記第二圧電素子体を挟むようにして設けられる第三共振体及び第四共振体と、前記第三共振体及び前記第四共振体を連結する第二固定部材とを有する第二振動素子を少なくとも1つ備え、
前記第一振動素子は、前記ステータに沿って、前記第一共振体、前記第一圧電素子体及び前記第二共振体が並ぶようにして配置され、
前記第二振動素子は、前記ステータに沿って、前記第三共振体、前記第二圧電素子体及び前記第四共振体が並ぶようにして配置される請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記第一圧電素子体は、電圧が印加されると膨張又は収縮し且つ互いに異なる動きをするように分極された第一圧電素子及び第二圧電素子を有し、
前記第一共振体及び前記第二共振体は、前記第一圧電素子及び前記第二圧電素子が膨張又は収縮する方向から前記第一圧電素子体を挟み、
前記第二圧電素子体は、電圧が印加されると膨張又は収縮し且つ互いに異なる動きをするように分極された第三圧電素子及び第四圧電素子を有し、
前記第三共振体及び前記第四共振体は、前記第三圧電素子及び前記第四圧電素子が膨張又は収縮する方向から前記第二圧電素子体を挟む請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記第一振動素子部及び前記第二振動素子部は、前記第一振動素子部から前記ステータに伝達するたわみ振動及び前記第二振動素子部から前記ステータに伝達するたわみ振動がそれぞれ前記ステータに別個の定在波を形成するように、互いに間隔をあけて設けられる請求項1〜3のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記ステータは環状であり、
前記第一振動素子及び前記第二振動素子は、前記ステータに沿って環状に配置される請求項2〜4のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記ステータは直線状であり、
前記第一振動素子及び前記第二振動素子は、前記ステータに沿って直線状に配置される請求項2〜4のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項1】
ステータと、
前記ステータに対して移動可能に接触させて設けられる移動体と、
分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第一圧電素子体を有し、前記ステータに対して前記第一圧電素子体のたわみ振動を伝達可能に接触して設けられる第一振動素子部と、
分極され且つ電圧が印加されるとたわみ振動を発生可能な第二圧電素子体を有し、前記ステータに対して前記第二圧電素子体のたわみ振動を伝達可能に接触して設けられる第二振動素子部とを備え、
前記第一圧電素子体及び前記第二圧電素子体は、電圧の印加時に撓む方向と異なる方向に分極され、
前記移動体は、前記第一振動素子部及び前記第二振動素子部から前記ステータに伝達したたわみ振動によって形成される進行波が発生する前記ステータの部位と接触する振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記第一振動素子部は、前記第一圧電素子体と、前記第一圧電素子体を挟むようにして設けられる第一共振体及び第二共振体と、前記第一共振体及び前記第二共振体を連結する第一固定部材とを有する第一振動素子を少なくとも1つ備え、
前記第二振動素子部は、前記第二圧電素子体と、前記第二圧電素子体を挟むようにして設けられる第三共振体及び第四共振体と、前記第三共振体及び前記第四共振体を連結する第二固定部材とを有する第二振動素子を少なくとも1つ備え、
前記第一振動素子は、前記ステータに沿って、前記第一共振体、前記第一圧電素子体及び前記第二共振体が並ぶようにして配置され、
前記第二振動素子は、前記ステータに沿って、前記第三共振体、前記第二圧電素子体及び前記第四共振体が並ぶようにして配置される請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記第一圧電素子体は、電圧が印加されると膨張又は収縮し且つ互いに異なる動きをするように分極された第一圧電素子及び第二圧電素子を有し、
前記第一共振体及び前記第二共振体は、前記第一圧電素子及び前記第二圧電素子が膨張又は収縮する方向から前記第一圧電素子体を挟み、
前記第二圧電素子体は、電圧が印加されると膨張又は収縮し且つ互いに異なる動きをするように分極された第三圧電素子及び第四圧電素子を有し、
前記第三共振体及び前記第四共振体は、前記第三圧電素子及び前記第四圧電素子が膨張又は収縮する方向から前記第二圧電素子体を挟む請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記第一振動素子部及び前記第二振動素子部は、前記第一振動素子部から前記ステータに伝達するたわみ振動及び前記第二振動素子部から前記ステータに伝達するたわみ振動がそれぞれ前記ステータに別個の定在波を形成するように、互いに間隔をあけて設けられる請求項1〜3のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記ステータは環状であり、
前記第一振動素子及び前記第二振動素子は、前記ステータに沿って環状に配置される請求項2〜4のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記ステータは直線状であり、
前記第一振動素子及び前記第二振動素子は、前記ステータに沿って直線状に配置される請求項2〜4のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−65454(P2012−65454A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207688(P2010−207688)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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