説明

振動センサ

【課題】振動時に発生する衝突音を軽減し、身体に装着する運動計測装置などへ搭載した場合にも、使用者に不快感を与えることが無い振動センサを提供する。
【解決手段】振動センサ1は、絶縁性の樹脂で形成された中空ケース2と、中空ケース2の内部に転動可能に収容された導電性球体3と、中空ケース2の内面2aに交互に櫛歯状に配設された第1電極11及び前記第2電極12と、中空ケース2の外部に突出して設けられ、第1電極11及び第2電極12のそれぞれと電気的に接続された第1端子11a及び第2端子とを備え、第1電極11と前記第2電極12との間隔は、静止状態において、導電性球体3が隣り合う第1電極11と第2電極12との間に跨って、両電極に接触した状態となるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体が動いたときに生じる振動や傾斜を検知する振動センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からの振動センサとしては、例えば、図9に示すような振動センサが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この振動センサ101は、凹部を有し、中空ケースを構成する一対の電極部材121、122を、間隙を保って対向させ、その状態で成形絶縁物127によってそれらを固着することにより、互いに対向する電極部材121、122の凹部により空間123を形成する。その空間123の内部には、2個の導電性球体125、126を転動可能に収納されている。そして、静止状態では、その姿勢の如何に拘らず、常に2個の導電性球体125、126が互いに接触した状態で、一対の電極部材121、122に接触して、電極部材121、122相互を導通させる。さらに、振動が発生すると、その振動方向の如何に拘らず、導電性球体125、126が移動することで、電極部材121、122とを導通した状態と、導通しない状態とが繰り返され、これにより振動を検知することが可能であるとされている。
【特許文献1】特開2003−161653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図9に示した従来の振動センサ101は、導電性球体125、126が互いに衝突したり、導電性球体125、126と電極部材121、122が衝突したりすることで、金属同士の衝突音が著しく発生してしまう。このような衝突音は、例えば、身体に装着する運動計測装置などにこの振動センサに搭載した場合においては、使用者に不快感を与えてしまうという問題があった。
【0004】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、振動時に発生する衝突音を軽減し、身体に装着する運動計測装置などへ搭載した場合にも、使用者に不快感を与えることが無い振動センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の振動センサは、絶縁性の樹脂で形成された中空ケースと、該中空ケースの内部に転動可能に収容された導電性球体と、前記中空ケースの内面に交互に櫛歯状に配設された第1電極及び前記第2電極と、前記中空ケースの外部に突出して設けられ、前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれと電気的に接続された第1端子及び第2端子とを備え、前記第1電極と前記第2電極との間隔は、静止状態において、前記導電性球体が隣り合う前記第1電極と前記第2電極との間に跨って、両電極に接触した状態となるように設定されていることを特徴としている。
【0006】
この発明に係る振動センサによれば、絶縁性の中空ケースの内面に第1電極と第2電極とが交互に櫛歯状に配列し、静止状態においては、中空ケースに転動可能に収容された導電性球体が第1電極と第2電極とを導通させている。一方、振動が与えられると、導電性球体が中空ケースの内部で転動することによって、第1電極と第2電極との間に跨って両方に接続された状態と、片方のみに接続された状態を繰り返す。すなわち、第1端子と第2端子とを回路に接続すれば、静止状態においては回路を閉じて電気的に接続した状態を保つことができるとともに、振動が発生すると回路の開閉が繰り返されることになり、電圧の変動をもって振動を検出することができる。この際、中空ケース2の内部で導電性球体3が転動することで、繰り返し第1電極または第2電極と衝突する。しかしながら、第1電極及び第2電極が配設された中空ケースが樹脂で形成されているので、その衝撃を効果的に吸収することができる。このため、導電性球体が繰り返し衝突することによって連続的に発生する衝突音を抑えることができる。
【0007】
また、上記の振動センサにおいて、前記中空ケースと、前記第1電極及び前記第2電極と、前記第1端子及び前記第2端子とは、予め前記第1電極及び前記第2電極の凸パターンが表面に形成された1枚のプリント基板によって形成されており、該プリント基板を折り曲げて組み立てた多面体であることがより好ましいとされている。
この発明に係る振動センサによれば、プリント基板を折り曲げて組み立てた多面体により構成することができるので、第1電極及び第2電極を容易に形成することができ、安価に製造することができる。
【0008】
さらに、上記の振動センサにおいて、前記プリント基板は、フレキシブルプリント基板であることがより好ましいとされている。
この発明に係る振動センサによれば、フレキシブルプリント基板であることで、さらに組み立てが容易となり、安価で製造することができるとともに、導電性球体が接触した際の衝突音をさらに軽減させることもできる。
【0009】
また、上記の振動センサにおいて、前記第1電極と前記第2電極とは、交互に略平行に配設されているとともに、角部を有する波形に形成されていることがより好ましいとされている。
この発明に係る振動センサによれば、導電性球体は、第1電極の角部と第2電極の角部とが対向する位置を安定点として、静止した状態を保つことができる。このため、センサとしての安定性が向上するとともに、無用な衝突音の発生を防ぐことができる。また、外部から振動が与えられた時は、方向性を持たず転がるので、設置方向による感度差を無くすくことができる。
【0010】
また、上記の振動センサにおいて、前記導電性球体は、少なくとも表面に導電性を有した軟質材で形成されていることがより好ましいとされている。
この発明に係る振動センサによれば、表面に導電性を有していることで第1電極及び第2電極と導通することが可能であるとともに、軟質の材質で形成されていることで、第1電極及び第2電極と衝突して、中空ケースを介して発生する衝突音をさらに軽減させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の振動センサによれば、内面に第1電極と第2電極が交互に配設された中空ケースと、導電性球体とを備えることで、振動を検知することができるとともに、振動時に発生する衝突音を軽減することができる。このため、身体に装着する運動計測装置などへ搭載した場合にも、使用者に不快感を与えることが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1及び図4は、この発明に係る第1の実施形態を示している。図1は振動センサの外観斜視図、図2は中空ケースとその内部に収容された導電性球体の関係を示す断面図、図3は導電性球体と第1電極及び第2電極との関係を示す拡大図、図4は振動センサを構成するフレキシブルプリント基板の展開図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、振動センサ1は、多面体である立方体に形成された中空ケース2と、その内部に転動可能に収容された1個の導電性球体3と、中空ケース2の内面2a全体に亘って配設された第1電極11及び第2電極12とを備えている。中空ケース2は、絶縁性の樹脂で形成されている。導電性球体3は、少なくとも表面に導電性を有しており、本実施形態においては金属で形成されている。また、図2に示すように、第1電極11と第2電極12とは、所定の間隔Lを有して交互に櫛歯状に配設されているとともに、導電性球体3が中空ケース2の内面2aに接触する領域Rにおいて、少なくとも配設されている。図3に示すように、第1電極11と第2電極12との間に導電性球体3が配置されて静止している状態において、導電性球体3は、中空ケース2と僅かに隙間を有し、第1電極11と第2電極12との間に跨って常に接触するように設定されている。すなわち、第1電極11及び第2電極12の高さhと、間隔Lと、導電性球体3の半径rとの間には、(r−r´)≦h、(但し、r´=√{r−(L/2)})の関係が満たされている。なお、第1電極11または第2電極12を乗り越える傾斜角度θの臨界は、次の式で表わすことができる。θ=arcsin{(L/2)/r}また、中空ケース2に外部には、第1端子11a及び第2端子12aが突出して設けられており、第1端子11aと第1電極11とが、第2端子12aと第2電極12とが、それぞれ電気的に接続されている。
【0014】
また、図4に示すように、振動センサ1は、中空ケース2を展開した基板2bと、基板2b上にプリントされた第1電極11及び第2電極12と、これら電極と接続された第1端子11a及び第2端子12aとで構成されたフレキシブルプリント基板(FPC)2Pを折り曲げて組立てられている。本実施形態においては、中空ケース2は立方体であるから、同じ正方形の6面2A、2B、2C、2D、2E、及び2Fの片面に第1電極11と第2電極12とが交互にプリントされている。また、第1端子11a及び第2端子12aのそれぞれは、2面2D、2Eの側縁に設けた突片5上に形成されている。
【0015】
次に、この振動センサ1の作用について説明する。図5は、この振動センサ1が組み込まれた電子機器20の回路図であり、回路21に第1端子11a及び第2端子12aが接続されている。また、第2端子12a側には、電子機器本体22の電源制御手段23がコンデンサ24を介して接続されている。電子機器20としては、例えば、身体に装着して使用者の運動量を測定する運動計測装置などであり、使用者の運動の有無を振動センサ1で検知して、その検知結果に基いて、人間が運動を行っているときのみ電源制御手段23が電子機器本体22への電力の供給を行い、運動量を測定するものである。
【0016】
人間が静止状態を保っている場合には、振動センサ1の導電性球体3も中空ケース2の内部において静止している。すなわち、図3に示すように、第1電極11と第2電極12とは、導電性球体3を介して導通している。このため、図5に示すように、回路21は、振動センサ1を介して接続された状態となっており、回路21の電圧は一定に保たれている。
【0017】
そして、使用者が何らかの運動を開始すると、その振動が振動センサ1にも伝達され、導電性球体3も中空ケース2の内部で転動する。導電性球体3は、中空ケース2の内部で転動することで、第1電極11と第2電極12との間に跨って両方に接続された状態と、片方のみに接続された状態を繰り返す。すなわち、この状態では、回路21を閉じた状態と、開いた状態とを繰り返すことになるので、回路21の電圧が変動する。そして、この電圧の変動をコンデンサ24を介して電源制御手段23で検出することで、人間が運動を行っているときのみ、測定を行うことを可能とさせている。
【0018】
上記のように、振動が発生して、振動センサ1の中空ケース2の内部で導電性球体3が転動する場合には、導電性球体3が第1電極11及び第2電極12に繰り返し衝突する。しかしながら、導電性球体3が金属で形成されている一方、第1電極11及び第2電極12が配設された中空ケースが絶縁性の樹脂で形成されているので、その衝撃を吸収することができる。このため、導電性球体3が繰り返し衝突することによって連続的に発生する衝突音を抑えることができる。特に、本実施形態においては、中空ケース2を、フレキシブルプリント基板2Pを折り曲げて組み立てて構成しているので、第1電極11及び第2電極12を簡単に形成することができて安価に製造することができると共に、中空ケース2の衝撃吸収性能を高めることができ、衝突音をさらに軽減することができる。このため、上記のようにこの振動センサ1を身体に装着する電子機器20に組み込んだとしても、連続した衝突音による不快感を使用者に与えること無く、振動センサとしての機能を果たすことができる。
【0019】
(第2の実施形態)
図6及び図7は、この発明に係る第2の実施形態を示している。図6は振動センサの外観斜視図、図7は振動センサを構成するフレキシブルプリント基板の展開図である。図6に示すように、前記第1実施形態の振動センサ1では中空ケース2を立方体で構成した場合を示したが、第2の実施形態の振動センサ30では、中空ケース31を正四面体(多面体)で構成している。それ以外の点は第1実施形態と同様であるので、同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0020】
図7に示すように、振動センサ30は、中空ケース31を展開した基板31aと、基板31a上にプリントされた第1電極11及び第2電極12と、これら電極と接続された第1端子11a及び第2端子12aとで構成されたフレキシブルプリント基板(FPC)31Pを折り曲げて組立てられている。また、第1端子11a及び第2端子12aは一面22Dの側縁に設けた突片5上に形成されている。
【0021】
この振動センサ30は、中空ケース31の形状が異なるだけで、第1の実施形態の振動センサ1と同様の作用効果を奏する。
(第3実施形態)
図8は第3の実施形態の振動センサの第1電極と第2電極の配置を示す図である。この振動センサ40では、第1電極41と第2電極42とが、略平行に、交互に配設されているとともに、角部41a、42aを有した波形に形成されている。
【0022】
このように構成することにより、静止状態においては導電性球体は、第一の電極41の角部41aと第2電極42の角部42aとが対向する位置を安定点Sとして、導電性球体の3箇所が接触することで静止した状態を保つことができるので、振動センサとしての安定性が向上するとともに、無用な衝突音の発生を防ぐことができる。また、外部から振動が与えられた時は、方向性を持たず転がるため、設置方向による感度差を無くすことができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0024】
なお、各実施形態において、導電性球体3は、導電性を有する金属で形成されているものとしたがこれに限るものではない。例えば、表面に導電性を有するゴムで形成されているものとしても良い。少なくとも、表面に導電性を有し、第1電極11及び第2電極12と導通可能であれば良く、上記のゴムのように軟質材で形成することで、振動時における衝突音をさらに軽減することができる。また、各振動センサ1、30、40は、フレキシブルプリント基板で構成されているものとしたが、例えば、中空ケースの各辺を形成する位置で折曲可能であるならば、通常のプリント基板を使用するものとしても良い。さらには、少なくとも中空ケースが絶縁性の樹脂で形成されていて、内面に第1電極11及び第2電極12が配設されていれば、必ずしもプリント基板である必要は無く、振動時に発生する衝突音を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の第1の実施形態の振動センサの外観斜視図である。
【図2】この発明の第1の実施形態の中空ケースとその内部に収容された導電性球体の関係を示す断面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態の導電性球体と第1電極及び第2電極との関係を示す拡大図である。
【図4】この発明の第1の実施形態の振動センサを構成するフレキシブルプリント基板の展開図である。
【図5】この発明の第1の実施形態の振動センサを組み込んだ回路図である。
【図6】この発明の第2の実施形態の振動センサの外観斜視図である。
【図7】この発明の第2の実施形態の振動センサを構成するフレキシブルプリント基板の展開図である。
【図8】この発明の第2の実施形態の振動センサの第1電極と第2電極の配置図である。
【図9】従来の振動センサの断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1、30、40 振動センサ
2、31 中空ケース
2a 内面
2b、31a 基板
2P、31P フレキシブルプリント基板
3 導電性球体
11、41 第1電極
11a 第1端子
12、42 第2電極
12a 第2端子
41a、42a 角部
L 第1電極と第2電極の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の樹脂で形成された中空ケースと、
該中空ケースの内部に転動可能に収容された導電性球体と、
前記中空ケースの内面に交互に櫛歯状に配設された第1電極及び前記第2電極と、
前記中空ケースの外部に突出して設けられ、前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれと電気的に接続された第1端子及び第2端子とを備え、
前記第1電極と前記第2電極との間隔は、静止状態において、前記導電性球体が隣り合う前記第1電極と前記第2電極との間に跨って、両電極に接触した状態となるように設定されていることを特徴とする振動センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動センサにおいて、
前記中空ケースと、前記第1電極及び前記第2電極と、前記第1端子及び前記第2端子とは、予め前記第1電極及び前記第2電極の凸パターンが表面に形成された1枚のプリント基板によって形成されており、該プリント基板を折り曲げて組み立てた多面体であることを特徴とする振動センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の振動センサにおいて、
前記プリント基板は、フレキシブルプリント基板であることを特徴とする振動センサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の振動センサにおいて、
前記第1電極と前記第2電極とは、交互に略平行に配設されているとともに、角部を有する波形に形成されていることを特徴とする振動センサ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の振動センサにおいて、
前記導電性球体は、少なくとも表面に導電性を有した軟質材で形成されていることを特徴とする振動センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−205851(P2007−205851A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24643(P2006−24643)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】