説明

振動ローラ車両

【課題】簡単な構造で運転席前方の足下スペースを確保し、転圧作業の作業性を向上させた振動ローラ車両を提供する。
【解決手段】振動ローラ車両は、車体の幅方向に延びるベンチシート型の運転席と、この運転席の前方に位置して立設され、車体を操向させるハンドル(22)を有する操作スタンド(20)と、車体を前進又は後進させる操作装置とを備え、この操作装置は、操作スタンド(20)の両側に沿って上下方向にそれぞれ延びる一対の操作レバー(30)であって、何れかの操作レバー(30)が前進用位置と後進用位置との間を車体の前後方向に回動されることで、車体を前進又は後進させる一対の操作レバー(30)と、ハンドル(22)と操作スタンド(20)との間に配置され、一対の操作レバー(30)を連結する連結ロッド(36)とを含み、操作スタンド(20)には、車体の運転席に向けて開口し、運転席前方の足下スペースを増加させる凹所(28)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が無理のない作業姿勢にて作業を行え、作業性の向上を図った振動ローラ車両に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の振動ローラ車両は、車体の前部又は後部のいずれか一方に振動ローラを兼用する車輪を備え、車体の上部には運転席と、この運転席の前方の操作スタンドとが設けられている。この操作スタンドには、車体の操向をなすハンドル、車体の前後進をなす操作レバー及び計器類等が配置されている。
操作レバーは、例えば、操作スタンドの一方の側面から突出する回動軸部と、この回動軸部から上方に向かって延び、その上端部が把持部として形成されたレバー本体とからなり、把持部はハンドルの近傍に位置付けられている。そして、操作レバーが車体の前後方向に回動軸部を中心に回動されることで、振動ローラ車両は前進又は後進し、この際、振動ローラが振動されることで、地面の締め固め作業、所謂、転圧作業を実施する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−43495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転席は車体の幅方向に延びるベンチシートであることが望ましい。このようなベンチシートであれば、路肩の転圧作業中、作業者は、路肩側の運転席の端に寄って着座し、路肩の転圧状況を目視しながらハンドルを操作することができる。
しかしながら、上記特許文献1に開示された振動ローラ車両においては、操作レバーが操作スタンドの一方の側面に沿って取り付けられているので、作業者がハンドルを挟んで操作レバーと反対側の運転席の端に寄って着座した際、ハンドルを操作することはできても操作レバーを操作することは難しい。
【0005】
このため、作業者が運転席のいずれかの端に寄って着座した場合であっても、操作レバーの操作が可能となるように、例えば、操作スタンドの両側にそれぞれ操作レバーを設けることが考えられる。この場合、一方の操作レバーが操作された際、他方の操作レバーも連動して操作されるためには、例えば、これら操作レバーの回動軸部が連結ロッドを介して互いに連結されている必要があり、このような連結ロッドは操作スタンド内に配置され、操作スタンドを横断する方向、即ち、車体の幅方向に延びる。
【0006】
一方、この種の振動ローラ車両には、車輪の周面に対するアスファルト合材の付着を防ぐため、散水装置及びスクレーパが備えられていることが多い。この場合、散水装置は散水用の水を貯留する水タンクを有しており、この水タンクは、例えば、車体の後部、即ち、運転席の後側に配置される。ここで、水タンクの容量は大きければ大きい程望ましいものの、運転席に着座した作業者の視界性及び振動ローラ車両の安定したバランスを考慮すれば、水タンクの高さを増加させるのではなく、水平方向の横断面積を増加させて、十分な容量を確保することが望ましい。
【0007】
しかしながら、水タンクの最大幅は車体の幅に制約されることから、水タンクは車体の前後方向に長くならざるを得ない。このため、水タンクの容量を十分に確保するためには、操作スタンドと運転席との間隔が必然的に狭くなり、しかも、操作スタンドはその内部に前述の連結ロッドが配置されることになるために、その下部を開放することができないことから、運転席と操作スタンドとの間に作業者のための足下スペースを十分に確保することができない。
【0008】
それ故、作業者は運転席に着座しても、転圧作業中、膝や足が操作スタンドに当たってしまい、窮屈な姿勢で転圧作業を行わなければならない。
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、簡単な構造で運転席前方の足下スペースを十分に確保でき、転圧作業の作業性を向上させた振動ローラ車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成すべく、請求項1記載の振動ローラ車両は、前後の車輪の少なくともいずれか一方が振動ローラを兼用する車体と、車体に設けられ、車体の幅方向に延びるベンチシート型の運転席と、車体に運転席の前方に位置して立設され、車体を操向させるハンドルを有する操作スタンドと、車体を前進又は後進させる操作装置とを備え、操作装置は、操作スタンドの両側にそれぞれ配置され、操作スタンドに沿って上下方向に延びる一対の操作レバーであって、何れかの操作レバーが前進用位置と後進用位置との間を車体の前後方向に回動されることで、車体を前進又は後進させる一対の操作レバーと、操作スタンドの外側に配置され、一方の操作レバーが回動された際、他方の操作レバーを連動させて回動させるべく、一対の操作レバーを連結する連結ロッドとを含み、操作スタンドには、車体の運転席に向けて開口し、運転席前方の足下スペースを増加させる凹所が形成されている。
【0010】
転圧作業の際、作業者は運転席のいずれかの端に寄って着座した場合であっても、操作レバーが操作スタンドの両側にそれぞれ配置されているので、作業者は自身に近い方の操作レバーを握って、その操作レバーを操作することができる。それ故、作業者は例えば路肩を転圧する際、路肩に対する振動ローラの転圧位置を目視すべく、車体の側方に上半身を投げ出した姿勢にあっても、その姿勢を維持したまま近い側の操作レバー及びハンドルの操作が可能である。
【0011】
また、操作スタンドには、運転席に向かって開口した凹所が形成されているので、運転席の足元スペースが拡がる。それ故、作業者は運転席に着座し転圧作業をする際、膝や脛が操作スタンドに当たることもなく、楽な姿勢にて転圧作業を行うことができる。
また、請求項2記載の振動ローラ車両によれば、連結ロッドは前記ハンドルより下方に位置付けられているのが望ましい。この場合、連結ロッドが運転席に着座している作業者の前方視野を遮ることはない。
【0012】
また、請求項3記載の振動ローラ車両によれば、操作レバーはその上端に水平方向に延びるグリップを有することができる。
また、請求項4記載の振動ローラ車両によれば、連結ロッドは、操作レバーの上端同士を連結し、グリップを兼用していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜4の振動ローラ車両は、簡単な構造で運転席前方の足下スペースを十分に確保でき、作業者は窮屈な姿勢をとることなくハンドル及び操作レバーを操作して、転圧作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る振動ローラ車両の側面図である。
【図2】リアフレームの平面図である。
【図3】同図(a)は図2の矢視A方向から視た際の操作スタンドの正面図であり、同図(b)は同図(a)のB−B線に沿う操作スタンドの断面図である。
【図4】操作レバーを回動させた際の概念図である。
【図5】振動ローラ車両の前方視野を示す図である。
【図6】連結ロッドの他の例を示す操作スタンドの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る振動ローラ車両について図面を参照して説明する。
図1に示す振動ローラ車両1はフロントフレーム2及びリアフレーム3からなる車体を備え、リアフレーム3はその後部に複数の後輪5を有する。一方、フロントフレーム2は前輪を兼用する振動ローラ4を有し、この振動ローラ4はフロントフレーム2に回転可能に軸支されている。なお、フロント及びリアフレーム2、3はステアリングリンク10を介して関節方式により互いに連結されている。
【0016】
リアフレーム3の上部中央には運転席12が設けられており、この運転席12はリアフレーム3の幅方向に延びるベンチシートである。それ故、図2に示されるように、作業者が運転席12の左右のいずれかの端に寄って着座した際、作業者は地面に対する振動ローラ4の側面位置、即ち、転圧面の境界を目視可能である。
また、フロントフレーム2にはエンジンルーム(図示しない)が設けられており、このエンジンルームは開閉可能なエンジンカバー8を有する。また、エンジンルーム内にはディーゼルエンジン(図示しない)及びこのディーゼルエンジンの近傍に油圧ポンプ(図示しない)が配置されており、この油圧ポンプはディーゼルエンジンにより駆動され、振動ローラ4を振動及び回転させる振動用及び走行用モータ等の油圧機器に向けて作動油を供給する。
【0017】
フロントフレーム2及びリアフレーム3は、振動ローラ4及び後輪5の近傍に泥掻き装置としてのスクレーパ7をそれぞれ備えている。詳しくは、これらスクレーパ7は、振動ローラ4の前側及び後側のそれぞれに配置されている一方、後輪5の後側にも配置されている。そして、これらスクレーパ7は、振動ローラ4及び後輪5と略等しい幅をそれぞれ有する一方、その先端に振動ローラ4又は後輪5の周面をそれぞれ摺接させる作動位置と対応する周面から離間した休止位置との何れかに選択的に位置付け可能である。
【0018】
更に、振動ローラ車両には散水装置が備えられている。この散水装置は各スクレーパ7の近傍に配置された散水ノズル(図示しない)を有し、これら散水ノズルから振動ローラ4及び後輪5の周面や、地面に水を散水することがでる。このため、散水装置は、散水用の水を貯留する水タンク6及びこの水タンク6と散水ノズルとを接続する供給パイプ(図示しない)を更に有している。
【0019】
水タンク6はリアフレーム3の後端と運転席部に配置され、前述のように振動ローラ車両1の車重とのバランスを取りつつ、可能な限り大容量であるのが望ましい。それ故、水タンク6はリアフレーム3の幅とほぼ同一の幅を有する一方、その上面がリアフレーム3の後端から運転席12に向かって徐々に高くなり、そして、その底が運転席12の座面下側まで入り込む形状となっている。
【0020】
一方、リアフレーム3の前端部、即ち、運転席12の前方には、操作スタンド20が設けられている。詳しくは、この操作スタンド20にはハンドル22が取り付けられており、このハンドル22を運転席12に着座した作業者が操作することで、フロントフレーム2がステアリングリンク10を介して操向される。
また、操作スタンド20の両側面にはパイプ部材からなる手摺り24が側方に張り出すようにしてそれぞれ取り付けられている。図3から明らかなように、各手摺り24は操作スタンド20の対応する側面に沿って上下方向に延び、その上端部及び下端部がその側面に向けて折曲され、この側面の上部及び下部にそれぞれ固定されている。それ故、作業者がリアフレーム3の側方から運転席12に乗り込む際、対応する側の手摺り24を使用できる。また、手摺り24の上端部にはサイドミラー26が取付具(図示しない)を介して取り付けられている。
【0021】
更に、操作スタンド20の両側には一対の操作レバー30がそれぞれ配置され、これら操作レバー30は、振動ローラ車両1を前後進させる前後進用操作装置の一部を構成する。各操作レバー30は、操作スタンド20の側面と手摺り24との間を操作スタンド20の側面に沿って上下方向にそれぞれ延びるレバー本体30aと、このレバー本体30aの上端から操作スタンド20に向けて互いに近接する方向に略水平に延びるグリップ32とを有する。
【0022】
一方、各レバー本体30aの下部は、操作スタンド20に向けて近接すべく折曲され、その下端30bにて、操作スタンド20の側面下部に回動可能に支持されている。詳しくは、操作スタンド20の各側面の下部からは回動軸38が軸受(図示しない)を介して突設され、この回動軸38の突出端に対応するレバー本体30aの下端30bが一体に連結されている。即ち、下端30bには、操作スタンド20の側面に向かって開口し、回動軸38を挿入可能なボア(図示しない)が形成されているとともに、これら下端30b及び回動軸38はピン(図示しない)を介して一体的に結合されている。
【0023】
また、一方の操作レバー30側の回動軸38にはその内端にリンクを介してケーブル40が接続されており、このケーブル40は操作スタンド20及びリアフレーム3内を通り、走行モータの回転及びその回転方向を制御する方向制御弁(図示しない)に接続されている。なお、図3中、ケーブル40は操作スタンド20の外側を延びるように示されているが、これは作図上の都合による。
【0024】
更に、操作レバー30同士はそのレバー本体30aの上端部にて互いに連結ロッド36を介して連結されており、この連結ロッド36は操作スタンド20の操作パネル21とハンドル22との間を水平に延びている。それ故、運転席12に着座した作業者は、何れかのグリップ32を把持しても、操作レバー30を連動して回動させることができる。それ故、ここでの回動がケーブル40を介して方向制御弁の切換作動に変換される結果、走行モータは操作レバー30の回動方向に従う方向に回転駆動され、この結果、振動ローラ車両は前進又は後進する。
【0025】
なお、図4に示さるように、操作レバー30の回動範囲がハンドル22のハンドルコラム22aや操作スタンド20の操作パネル21に対する連結ロッド36の衝突を避けるべく規制されていることは言うまでもない。
更にまた、図3(a)及び(b)から明らかなように、操作スタンド20は操作パネル21の下側に凹所28を有する。この凹所28は、運転席12に向けて開口し、前方に向けて窪んでいる。詳しくは、凹所28は運転席12の幅と略等しい幅を有する一方、運転席12に着座した作業者の膝よりも高い位置からリアフレーム3の上面まで延びている。また、凹所28内にはリアフレーム3の上面近傍にブレーキペダル14が配置されている。
【0026】
転圧作業を行うにあたり、作業者はリアフレーム3の側方から乗り込んで運転席12に着座する。そして、この着座姿勢で、作業者は、振動開始スイッチをオンにして振動ローラ4を振動させる一方、何れかの操作レバー30を車体前方側に押し倒し、振動ローラ車両1を前進させることで、舗装面を締め固める転圧作業を実施する。この場合、前述の散水装置の散水ノズルから振動ローラ4及び後輪5の周面や、地面に向かって水を噴出することで、アスファルト合材が振動ローラ4及び後輪5の周面に付着するのを防止する。
【0027】
この転圧作業の際、作業者は運転席12のいずれかの端に寄って着座した場合であっても、操作レバー30が操作スタンド20の両側にそれぞれ配置されているので、作業者は自身に近い方の操作レバー30のグリップ32を握って、その操作レバー30を操作することができる。それ故、作業者は例えば路肩を転圧する際、路肩に対する振動ローラの転圧位置を目視すべく、車体の側方に上半身を投げ出した姿勢にあっても、その姿勢を維持したまま近い側の操作レバー30及びハンドル22の操作が可能である。
【0028】
また、図5より明らかなように、連結ロッド36はハンドル22よりも下側に配置されているから、連結ロッド36が運転席12に着座している作業者の前方視野Eを遮ることはない。
更に、操作スタンド20には、運転席12に向かって開口した凹所28が形成されているので、運転席12の足元スペースが拡がる。それ故、作業者は運転席12に着座し転圧作業をする際、膝や脛が操作スタンド20に当たることもなく、楽な姿勢にて転圧作業を行うことができる。
【0029】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施形態を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。
例えば、図6に示されるように、連結ロッド36は、操作レバー30の上端同士を接続していてもよい。この場合、連結ロッド36は、各操作レバー30のグリップ32を兼用する。なお、連結ロッド36は、各操作レバー30の側方に延出する一対の延長部を有していてもよい。
【0030】
また、連結ロッド36はハンドル22のハンドルコラム22aより前方側に配置されているが、操作レバー30が回動されても、作業者の膝やハンドルコラム22aに連結ロッド36がぶつかることがなければ、ハンドルコラム22aの後方側、即ち、運転席12側に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 振動ローラ車両
2 フロントフレーム
3 リアフレーム
4 振動ローラ(前輪)
5 後輪
6 水タンク
7 スクレーパ
8 エンジンカバー
10 ステアリングリンク
12 運転席
14 ブレーキペダル
20 操作スタンド
21 操作パネル
22 ハンドル
22a ハンドルコラム
24 手摺り
26 サイドミラー
28 凹所
30 操作レバー
30a レバー本体
30b 下端
32 グリップ
36 連結ロッド
38 回動軸
40 ケーブル
E 前方視野

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後の車輪の少なくともいずれか一方が振動ローラを兼用する車体と、
前記車体に設けられ、前記車体の幅方向に延びるベンチシート型の運転席と、
前記車体に前記運転席の前方に位置して立設され、前記車体を操向させるハンドルを有する操作スタンドと、
前記車体を前進又は後進させる操作装置と
を備え、
前記操作装置は、
前記操作スタンドの両側にそれぞれ配置され、前記操作スタンドに沿って上下方向に延びる一対の操作レバーであって、何れかの操作レバーが前進用位置と後進用位置との間を前記車体の前後方向に回動されることで、前記車体を前進又は後進させる一対の操作レバーと、
前記操作スタンドの外側に配置され、一方の操作レバーが回動された際、他方の操作レバーを連動させて回動させるべく、前記一対の操作レバーを連結する連結ロッドと
を含み、
前記操作スタンドには、車体の運転席に向けて開口し、運転席前方の足下スペースを増加させる凹所が形成されていることを特徴とする振動ローラ車両。
【請求項2】
前記連結ロッドは前記ハンドルより下方に位置付けられていることを特徴とする請求項1に記載の振動ローラ車両。
【請求項3】
前記操作レバーはその上端に水平方向に延びるグリップを有することを特徴とする請求項2に記載の振動ローラ車両。
【請求項4】
前記連結ロッドは、前記操作レバーの上端同士を連結し、グリップを兼用することを特徴とする請求項2に記載の振動ローラ車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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