説明

振動型センサ装置

【課題】本発明は、振動型センサ素子をパッケージ内に配置した振動型センサ装置に関し、振動型センサ装置の小型低背化に伴う検出精度の劣化を抑制することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために、パッケージ1の開口部1aに振動型センサ素子2及びこれを制御する制御回路素子3を配置して上蓋4で封口する振動型センサ装置において、上蓋4を金属で成形し、この上蓋4に自己共振周波数を調節する自己共振周波数調整手段12を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型センサ素子をパッケージの内部に配置した振動型センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の振動型センサ装置は、セラミクスからなるパッケージの内部に、加速度や角速度といった物理量を検出する振動型センサ素子や、この振動型センサ素子を制御する制御回路素子を収容し、パッケージの開口部を上蓋で封口する構造が知られている。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−266321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、昨今の部品小型低背化に伴い、振動型センサ素子とパッケージの内周面や周辺部品と密接するようになり、また、上蓋もセラミクス製の厚みが厚いものから、薄くても強度が確保できる金属製のものへと変化してきている。
【0006】
しかしながら、金属製の上蓋を用いて振動型センサ装置を小型化していく場合、パッケージ内に収容された各部品が密接し、この結果、振動型センサ素子の振動が金属製の上蓋に伝達し易くなる。また、上蓋はパッケージの開口寸法や材料となる金属板の厚みにより、上蓋の自己共振周波数が決定される。
【0007】
そして、この上蓋の自己共振周波数と振動型センサ素子の振動周波数が近接するような場合、これらが共鳴して振動型センサ素子の振動状態が変動するという問題が生じる。具体的には、振動型センサ素子が角速度や加速度といった物理量が印加されていない初期状態において、本来であれば2.5ボルトの電圧が出力されるものが、上蓋との共鳴により振動型センサ素子の振幅が変化し初期の出力電圧とは異なる2.6ボルトの電圧が出力されてしまうというように、振動型センサ装置の検出精度を劣化させてしまうことになる。
【0008】
そこで、本発明はこのような問題を解決し、小型低背化に伴う振動型センサ装置の検出精度の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明は、パッケージの開口部に振動型センサ素子及びこれを制御する制御回路素子を配置し、開口部を上蓋で封口する振動型センサ装置において、上蓋を金属で成形し、この上蓋に自己共振周波数を調節する自己共振周波数調整手段を設けた構造としたのである。
【発明の効果】
【0010】
この構造により本発明は、振動型センサ装置の小型低背化に伴う検出精度の劣化を抑制することが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る慣性力センサの分解斜視図
【図2】同慣性力センサを構成する振動型センサ素子の上面図
【図3】同振動型センサ装置の断面図
【図4】同振動型センサ装置の比較例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態における振動型センサ装置について図を用いて説明する。
【0013】
図1に示す振動型センサ装置は、コリオリ力を利用した角速度を検出するものであり、その基本的な構造は、セラミクスからなる一端開口のパッケージ1の内部に角速度を検出する振動型センサ素子2と、この振動型センサ素子2を制御する制御回路素子3を配置し、パッケージ1の開口部1aを上蓋4で封口する構造となっている。なお、振動型センサ素子2は制御回路素子3の上面に支持台(特に図示せず)を介在させることで、振動型センサ素子2を振動可能に支持する構成としている。
【0014】
また、振動型センサ素子2は、図2に示すように、振動型センサ素子2の外周部分に設けられた外部接続用の固定部5と、固定部5の対向する辺に支持された「日」の字形の梁部6と、この梁部6の中央部6aから対称に延びる「の」の字形の4つの振動腕7と、各振動腕7の先端に設けられた錘部8を備え、各振動腕7には、駆動電極9、検出電極10a,10b,10c、電極パッド11や、それらを適宜接続する配線電極(特に図示せず)が設けられている。
【0015】
なお、駆動電極9や検出電極10a,10b,10cは、特に図示していないが、PZTからなる圧電体層をAuからなる上部電極とPtからなる下部電極で挟んだ積層電極構造であり、制御電圧を印加することで電極が伸縮し、コリオリ力により振動腕7が撓むことで電極が伸縮しこれにより検出信号を生成する。
【0016】
なお、この振動型センサ素子2による角速度の検出については、振動腕7に設けられた駆動電極9に制御回路素子3から所定の周波数、ここでは40kHzの制御信号を印加することで、各駆動電極9の伸縮作用により振動腕7の先端に設けられた錘部8を矢印で示すように斜め方向に振動させる。この状態においてX軸周りに角速度が印加された場合は、錘部8がZ軸方向に振動し、このZ軸方向の振動に伴い検出電極10aに生じる信号を制御回路素子3に出力し検出信号を形成する。また、Y軸周りに角速度が印加された場合は、錘部8がZ軸方向に振動し、このZ軸方向の振動に伴い検出電極10bに生じる信号を制御回路素子3に出力し検出信号を形成する。また、Z軸周りに角速度が印加された場合は、錘部8がY軸方向に振動し、このY軸方向の振動に伴い検出電極10cに生じる信号を制御回路素子3に3軸に対する検出信号に分離し出力する。つまり、この角速度センサは一つの振動型センサ素子2で3軸の角速度を検出することが出来るのである。
【0017】
そして、振動型センサ装置の構造設計を行う場合、上述したように、要望仕様を満足するようにパッケージ1の外形を決定し、開口部1aは、その内部に収容する制御回路素子3や振動型センサ素子2の組み付け寸法に基づいて設計する。ここでは、パッケージ1の外形を縦横が4mm、高さが0.0535mmで、開口部1aは縦横が3.3mmとしている。また、この開口部1aの形状寸法に合わせて上蓋4も設計される。なお、上蓋4は、通常、一般に販売されている規格厚みの金属板を購入し、抜き加工で外形形状を整えて絞り加工にて段差成形するので、金属板の材質、規格厚みおよび上蓋4の形状によりその自己共振周波数が決定されるため、上蓋4の自己共振周波数が振動型センサ素子2の振動数に近接していた場合には、上述したように上蓋4と振動型センサ素子2とが共鳴し、振動型センサ装置の検出精度を劣化させる要因となっていた。
【0018】
そこで、この一実施の形態においては、パッケージ1の開口部1aを覆う上蓋4に、上蓋4の自己共振周波数を調節する自己共振周波数調整手段12を設け、厚みや材料が限られた設計自由度の範囲内において上蓋4の持つ自己共振周波数を調節し、設計段階において上蓋4の自己共振周波数が振動型センサ素子2の振動数に近接しないように設計している。
【0019】
具体的には、この振動型センサ装置は、図3に示すように、パッケージ1の開口部1aの底面に制御回路素子3を実装し、その上面に振動型センサ素子2を実装した構造であり、各部品の電気的接続は、振動型センサ素子2の外周部分に設けられた電極パッド11とパッケージ1の上端面に設けられた電極パッド13をボンディングワイヤ14で接続したり、パッケージ1の内部に設けられたビアホール(特に図示せず)で接続している。なお、ボンディングワイヤ14が接続される電極パッド13をパッケージ1の上端面に設けたことで、部品の小型低背化に応じてパッケージ1の壁面の厚みを確保した構造としている。
【0020】
そして、この電極パッド13をパッケージ1の上端面に設けたことにより、上蓋4の外周部分はボンディングワイヤ14との接触を避けるために段差構造15を設けており、この段差構造15の段差を2段構造としたことで、上蓋4の自己共振周波数を調整する自己共振周波数調整手段12としての機能をもたせている。
【0021】
すなわち、上蓋4におけるボンディングワイヤ14との接触回避であれば、図4に示すように段差構造15を1段構造として十分な逃がしを確保すればよいが、これを2段もしくはそれ以上の多段構造とすることで、上蓋4の上段面4aの外周端が内側にオフセットされるので、上段面4aの一辺の長さが1段構造のものに比べて短くなる。また、段差構造15における上段面4aの外側に位置する立ち上げ側面4bは、上段面4aの振動を阻害する向きとなることから、この立ち上げ側面4bより外側部分が上段面4aの振動に寄与しない部分となる。従って、上蓋4に多段の段差構造15として上段面4aの大きさを調整することで、上蓋4とボンディングワイヤ14の当接を回避するとともに、上蓋4の自己共振周波数を高い側に調整することができる。
【0022】
例えば、パッケージ1を板厚0.045mmのステンレス板を用いて、縦横が3.79mm、高さが0.34mmの上蓋4を、図3に示す2段構造の上蓋4と、図4に示す1段構造の上蓋16を比較した場合、1段構造の上蓋16における上段面16aの縦横が3.24mmとなり自己共振周波数は40.5kHzとなるが、2段構造の上蓋4における上段面4aの縦横が2.63mmとなり自己共振周波数は55.85kHzというように自己共振周波数が変化する。
【0023】
そして、この振動型センサ装置を構成する振動型センサ素子2の振動周波数が40kHzであることを考慮した場合、図4に示す1段構造の上蓋16の自己共振周波数は40.5kHzとなり振動型センサ素子2の振動周波数に近接して、その振動状態に影響を及ぼす結果となるのに対して、図3に示す2段構造の上蓋4の自己共振周波数は55.85kHzとなり振動型センサ素子2の振動周波数と十分に離れて振動型センサの振動状態に影響を与えない結果が得られた。
【0024】
なお、上蓋4の自己共振周波数調整手段12としては、上蓋4の材料変更や厚み変更によっても実現できるが、材料変更であれば加工性や信頼性の確認など確認事項が多く、一旦設計した後に材料変更を検討すると大幅な設計遅延につながり、厚み変更であれば上蓋4を構成する金属板の規格厚み以外の物を用いると材料価格が高くなってしまうため選択肢が少なく好ましくない。しかし、自己共振周波数調整手段12としてパッケージ1に多段の段差構造15を設けることは、規格外厚みの材料や特殊な工法を用いずとも上蓋4の固有振動周波数を調整することができるので、物作りの観点からも有効な手段である。
【0025】
また、上蓋4の自己共振周波数と振動型センサ素子2の振動周波数との関係を見ると、これらの周波数の差が5kHz以上あれば互いの振動の干渉が問題とならないことが確認できた。
【0026】
なお、多段の段差構造15を設けるにあたっては、段差構造15を上蓋4の外周端に沿って形成することで、ボンディングワイヤ14との接触を避けるために必要な高さを複数段に分割できるので、段差構造15を形成するにあたり不要な高さ方向の増加を抑制でき、振動型センサ装置の小型低背化に寄与できる。
【0027】
また、このような上蓋4はパッケージ1の開口側の面には、ボンディングワイヤ14などの電気経路との短絡を防止するため絶縁膜(特に図示せず)が設けられている。そして、段差構造15を形成する段差の曲げ部分の曲げ半径が小さすぎると、段差構造15を形成する際の絞り加工において絶縁膜が破断し、上蓋4の金属材料が露出してしまう恐れがあり、また、曲げ半径が大きすぎると一つ一つの段差が大きくなってしまい部品の大型化につながってしまうので、曲げ半径は0.05mm以上かつ0.15mm以下とすることが好ましい。
【0028】
なお、この一実施の形態においては、自己共振周波数調整手段12として上蓋4に2段の段差構造15を設けたものを例に挙げて説明したが、多段の段差構造15は2段以上の段差であれば同様の効果を奏する。
【0029】
また、振動型センサ装置の検出対象についても、コリオリ力を利用した角速度を対象としたが、加速度など振動型センサ素子2の振動をもとに検出可能なものであれば、検出軸の数によらず同様の効果を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、振動型センサ素子を用いた振動型センサ装置の検出精度を高めるという効果を有し、特にデジタルカメラや、カーナビゲーションシステムなどの小型で高精度な特性を要求する電子機器に用いる振動型センサ装置において有用となる。
【符号の説明】
【0031】
1 パッケージ
1a 開口部
2 振動型センサ素子
3 制御回路素子
12 自己共振周波数調整手段
15 段差構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するパッケージと、前記開口部の内部に配置された制御回路素子と、前記開口部の内部に配置されるとともに前記制御回路素子により制御される振動型センサ素子と、前記開口部を封口する上蓋を備え、前記上蓋は金属からなるとともに前記上蓋にその自己共振周波数を調節する自己共振周波数調整手段を設けたことを特徴とする振動型センサ装置。
【請求項2】
上蓋の自己共振周波数と振動型センサ素子の振動周波数の差を5kHz以上としたことを特徴とする請求項1に記載の振動型センサ装置。
【請求項3】
上蓋に多段の段差構造を設け、この段差構造を自己共振周波数調整手段としたことを特徴とする請求項2に記載の振動型センサ装置。
【請求項4】
段差構造を上蓋の外周端に沿って設けたことを特徴とする請求項3に記載の振動型センサ装置。
【請求項5】
段差構造の曲げ部分の曲げ半径を0.05mm以上0.15mm以下としたことを特徴とする請求項3に記載の振動型センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−88337(P2013−88337A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230497(P2011−230497)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】