振動型静電発電機ユニット
【課題】静電誘導型変換素子を用いて電力源として実用可能な振動型静電発電機ユニットを提供する。
【解決手段】対向面に導体が形成された固定基板と、対向面にエレクトレットが形成された可動基板とを備え、可動基板が固定基板に対して相対的な往復運動可能に支持され、外部から加わる力によって2つの基板に生ずる相対運動の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する静電誘導型変換素子を固定板110の表面に複数個備え、各静電誘導型変換素子200の可動基板の往復運動の方向が2つ以上の異なる方向に設定されている振動型静電発電機ユニット100を構成する。
【解決手段】対向面に導体が形成された固定基板と、対向面にエレクトレットが形成された可動基板とを備え、可動基板が固定基板に対して相対的な往復運動可能に支持され、外部から加わる力によって2つの基板に生ずる相対運動の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する静電誘導型変換素子を固定板110の表面に複数個備え、各静電誘導型変換素子200の可動基板の往復運動の方向が2つ以上の異なる方向に設定されている振動型静電発電機ユニット100を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動などで外部から加わる力によって生ずる運動エネルギーを電気エネルギーに変換する静電誘導型変換素子を複数備えた振動型静電発電機ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境を汚染しない電気エネルギーの生成技術の開発が注目されており、太陽光発電や風力発電などが実用化されている。このような技術開発において、他の電気エネルギーの生成技術として、振動などの外部から加わる力によって生ずる運動エネルギーを電気エネルギーに変換する静電誘導型変換素子の開発も進められている。
【0003】
この静電誘導型変換素子に関しては、例えば、特開2006−180450号公報(特許文献1)に開示される静電誘導型変換素子、特開2007−312551号公報(特許文献2)に開示される静電誘導型変換素子が知られている。
【0004】
特開2006−180450号公報(特許文献1)に開示される静電誘導型変換素子は、図10に示すように、絶縁材料の表面付近に電荷を注入して形成されたエレクトレット11が、2つの導体12,13の間に位置して一方の導体12に電気的に接触して配置され、他方の導体13がエレクトレット11に対して所定の間隔をあけて対向し、導体13とエレクトレット11が相対的に運動して運動エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成されている。これにより、2つの導体12、13を負荷14に電気的に接続し、例えば導体13を図10の矢印方向に往復運動させると、エレクトレット11に注入された電荷(図では負電荷)により導体13に正電荷が静電誘導され、負荷14に電流が流れる。従って、上記構成の静電誘導型変換素子が発電機として機能する。
【0005】
特開2007−312551号公報(特許文献2)に開示される静電誘導型変換素子は、対向する基板が互いに相対運動する際に、互いの距離を適正に維持することができるように改良を施したものである。すなわち、図11及び図12に示すように、2つの基板21,22が互いに対向して配置されており、各基板21,22の対向面上には、エレクトレット23と導体24とが形成されている。また、上記基板21,22は、対向面に平行な方向(図の矢印A、B方向)に相対運動し、エレクトレット23は、基板21,22の相対運動に伴い導体24に対して相対的に運動し、導体24に静電誘導による起電力を発生させる。このエレクトレット23と導体24とは、基板21,22間の距離を適正に維持するために、エレクトレット23と導体24とが対向して発生する吸引力と、エレクトレット23同士が対向して発生する反発力とが釣り合うように配置されている。
【特許文献1】特開2006−180450号公報
【特許文献2】特開2007−312551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の静電誘導型変換素子は、振動などによる基板の相対運動を生ずるためには形状を小型にする必要があるので、素子1つあたりの発電量はごく微量であるため、電力源として使用するには電力量が少なすぎて実用化に至っていないという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、静電誘導型変換素子を用いて電力源として実用可能な振動型静電発電機ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、所定間隔をあけて互いに対向し、対向面に対して平行な方向に相対運動可能な2つの基板と、少なくとも一方の基板の対向面の所定位置に形成されたエレクトレットと、該エレクトレットに対向する基板の表面にエレクトレットに対向する位置に形成された導体と、前記対向面に対して平行な所定直線方向に相対的な往復運動可能に前記基板を支持する支持手段とを有し、外部から加わる力によって前記2つの基板に生ずる相対運動の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する静電誘導型変換素子を複数個備えてなる振動型静電発電機ユニットであって、2つ以上の異なる方向に前記所定直線方向が設定されている複数の前記静電誘導型変換素子を備えている振動型静電発電機ユニットを提案する。
【0009】
本発明の振動型静電発電機ユニットは、複数の静電誘導型変換素子を備えているので、各素子によって生成された電力を得られるため、1つの素子形状を大型化することなく必要な量の電力を得ることが可能となる。さらに、2つ以上の異なる方向に前記所定直線方向が設定されている複数の静電誘導型変換素子を備えているので、何れかの素子の基板に相対運動を生じさせる外部力が加えられることによって効率よい発電を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の振動型静電発電機ユニットによれば、2つ以上の異なる方向に前記所定直線方向が設定されている複数の静電誘導型変換素子を備え、何れかの素子の基板に相対運動を生じさせる外部力が加えられることによって効率よい発電を行うことができるので、1つの素子形状を大型化することなく必要な量の電力を得られる電力源として実用化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
図1乃至図7は本発明の一実施形態における振動型静電発電機ユニットを示すもので、図1は本発明の一実施形態における振動型静電発電機ユニットを示す平面図、図2は図1の一部拡大図、図3は本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子を示す透過斜視図、図4は本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子を示す要部分解斜視図、図5は本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子を示す平面図、図6は図5におけるA−A線矢視方向断面図、図7は本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子の電気系回路を示す図である。
【0013】
これらの図において、100は振動型静電発電機ユニットで、所定厚さを有する長方形の固定板110の表面に複数の静電誘導型変換素子200が配置されて固定されている。
【0014】
静電誘導型変換素子200は、その上面が正方形をなした直方体形状の筐体210を備え、筐体210の内部には固定基板220と可動基板230を有し、可動基板230は上面の一辺と平行な所定直線方向に往復運動可能なようにバネ251,252によって支持されている。
【0015】
ここで、静電誘導型変換素子200は、その上面の各辺が、固定板110の辺に平行になるように固定板110の表面に配置され、さらに、隣り合う静電誘導型変換素子200の可動基板230の可動方向が互いに直交するようにマトリックス状に配置されている。
【0016】
静電誘導型変換素子200は、筐体210を備え、その内部には櫛歯形状の導体を有する固定基板220と、櫛歯形状のエレクトレットを有する可動基板230が設けられ、これらの固定基板220と可動基板230が相対的に往復運動することにより発電を行うものである。
【0017】
固定基板220はその底面が筐体210の内部底面に固定されており、固定基板220の上面(対向面)には櫛歯形状の導体221が形成されている。この櫛歯形状の導体221は、その櫛歯が、可動基板230の可動方向(図3におけるC1方向)に直交するように形成されている。さらに、この導体221は、筐体210の外部底面に設けられた外部電極212に配線を介して電気的に接続されている。
【0018】
可動基板230はその底面(対向面)が固定基板220の上面に対して所定の間隔をあけて平行に対向するようにベアリングボール241によって支えられている。また、可動基板230の底面(対向面)には櫛歯形状のエレクトレット231と、エレクトレット231に導電接続された導電体膜232が形成されている。この櫛歯形状のエレクトレット231は、その櫛歯が、可動基板230の可動方向(図3におけるC1方向)に直交するように形成されている。
【0019】
さらに、可動基板230の上部には、可動方向C1に対して直交する方向に延びる支持部材241が設けられ、支持部材241の両端部の垂直片431bが可動基板230の対向する2つの辺に固定されている。また、支持部材241は導電体からなり、一方の垂直片431bが導電体膜232に導電接続されている。
【0020】
また、支持部材241の水平片431aの中央には2つのバネ251,252のそれぞれの一端が接続されている。これらのバネ251,252は、その伸縮方向が可動方向C1に一致するように配置されている。さらに、バネ251,252のそれぞれの他端は筐体210の内面に固定されている。また、支持部材241はバネ252に設けられた導電体からなる配線252aと配線を介して筐体210の外部底面に設けられた外部電極213に電気的に接続されている。本実施形態では、バネ251,252は菱形の各辺にプラスチックの薄い板バネを配置したパンタグラフ形状のバネを使用している。バネ251,251としてコイルバネやトーションバーを用いても良い。
【0021】
上記構成の静電誘導型変換素子200は、外部から振動などの力が加えられ、これによって可動基板230が可動方向C1に往復運動すると、櫛歯形状のエレクトレット231に注入された電荷(例えば負電荷)により、固定基板220の櫛歯形状の導体221に正電荷が静電誘導され、外部電極212,213から電力を取り出すことができる。従って、上記構成の静電誘導型変換素子が発電機として機能する。
【0022】
また、上記構成の振動型静電発電機ユニット100は複数の静電誘導型変換素子200を備え、隣り合う静電誘導型変換素子200の可動基板230の可動方向C1が互いに直交するように配置されているため、何れかの素子の基板に相対運動を生じさせる外部力が加えられることによって効率よい発電を行うことができるので、1つの静電誘導型変換素子の形状を大型化することなく必要な量の電力を得られる電力源として使用することができる。
【0023】
なお、各静電誘導型変換素子200は、それぞれの可動基板230の可動方向C1が2つ以上の異なる方向に設定されるように配置されていればよいのであって、上記の配置に限定されることはない。例えば、図8及び図9に示す振動型静電発電機ユニット101のように、隣り合う静電誘導型変換素子200のそれぞれの可動基板230の可動方向C1が直交し且つ可動方向C1が固定板110の表面の直交する2つの辺のそれぞれと形成する鋭角が45度の角度をなすように複数の静電誘導型変換素子200を配置しても良い。また、同一平面上に各静電誘導型変換素子200を配置する必要もない。
【0024】
上記実施形態では固定板110として表面形状が長方形のものを用いたが正方形であっても良いし、これら以外の形状であっても良い。
【0025】
また、実施形態では導体221の形状とエレクトレット231の形状を櫛歯形状としたがこれに限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態における振動型静電発電機ユニットを示す平面図
【図2】図1の一部拡大図
【図3】本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子を示す透過斜視図
【図4】本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子を示す要部分解斜視図
【図5】本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子を示す平面図
【図6】図5におけるA−A線矢視方向断面図
【図7】本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子の電気系回路を示す図
【図8】本発明の一実施形態における振動型静電発電機ユニットの他の例を示す平面図
【図9】図8の一部拡大図
【図10】従来例の静電誘導型変換素子を示す図
【図11】従来例の静電誘導型変換素子を示す図
【図12】従来例の静電誘導型変換素子を示す図
【符号の説明】
【0027】
100,101…振動型静電発電機ユニット、110…固定板、200…静電誘導型変換素子、210…筐体、211…底面、212,213…外部電極、214…ベアリングボール、220…固定基板、221…導体、230…可動基板、231…エレクトレット、232…導電体膜、241…支持部材、251,252…バネ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動などで外部から加わる力によって生ずる運動エネルギーを電気エネルギーに変換する静電誘導型変換素子を複数備えた振動型静電発電機ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境を汚染しない電気エネルギーの生成技術の開発が注目されており、太陽光発電や風力発電などが実用化されている。このような技術開発において、他の電気エネルギーの生成技術として、振動などの外部から加わる力によって生ずる運動エネルギーを電気エネルギーに変換する静電誘導型変換素子の開発も進められている。
【0003】
この静電誘導型変換素子に関しては、例えば、特開2006−180450号公報(特許文献1)に開示される静電誘導型変換素子、特開2007−312551号公報(特許文献2)に開示される静電誘導型変換素子が知られている。
【0004】
特開2006−180450号公報(特許文献1)に開示される静電誘導型変換素子は、図10に示すように、絶縁材料の表面付近に電荷を注入して形成されたエレクトレット11が、2つの導体12,13の間に位置して一方の導体12に電気的に接触して配置され、他方の導体13がエレクトレット11に対して所定の間隔をあけて対向し、導体13とエレクトレット11が相対的に運動して運動エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成されている。これにより、2つの導体12、13を負荷14に電気的に接続し、例えば導体13を図10の矢印方向に往復運動させると、エレクトレット11に注入された電荷(図では負電荷)により導体13に正電荷が静電誘導され、負荷14に電流が流れる。従って、上記構成の静電誘導型変換素子が発電機として機能する。
【0005】
特開2007−312551号公報(特許文献2)に開示される静電誘導型変換素子は、対向する基板が互いに相対運動する際に、互いの距離を適正に維持することができるように改良を施したものである。すなわち、図11及び図12に示すように、2つの基板21,22が互いに対向して配置されており、各基板21,22の対向面上には、エレクトレット23と導体24とが形成されている。また、上記基板21,22は、対向面に平行な方向(図の矢印A、B方向)に相対運動し、エレクトレット23は、基板21,22の相対運動に伴い導体24に対して相対的に運動し、導体24に静電誘導による起電力を発生させる。このエレクトレット23と導体24とは、基板21,22間の距離を適正に維持するために、エレクトレット23と導体24とが対向して発生する吸引力と、エレクトレット23同士が対向して発生する反発力とが釣り合うように配置されている。
【特許文献1】特開2006−180450号公報
【特許文献2】特開2007−312551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の静電誘導型変換素子は、振動などによる基板の相対運動を生ずるためには形状を小型にする必要があるので、素子1つあたりの発電量はごく微量であるため、電力源として使用するには電力量が少なすぎて実用化に至っていないという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、静電誘導型変換素子を用いて電力源として実用可能な振動型静電発電機ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、所定間隔をあけて互いに対向し、対向面に対して平行な方向に相対運動可能な2つの基板と、少なくとも一方の基板の対向面の所定位置に形成されたエレクトレットと、該エレクトレットに対向する基板の表面にエレクトレットに対向する位置に形成された導体と、前記対向面に対して平行な所定直線方向に相対的な往復運動可能に前記基板を支持する支持手段とを有し、外部から加わる力によって前記2つの基板に生ずる相対運動の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する静電誘導型変換素子を複数個備えてなる振動型静電発電機ユニットであって、2つ以上の異なる方向に前記所定直線方向が設定されている複数の前記静電誘導型変換素子を備えている振動型静電発電機ユニットを提案する。
【0009】
本発明の振動型静電発電機ユニットは、複数の静電誘導型変換素子を備えているので、各素子によって生成された電力を得られるため、1つの素子形状を大型化することなく必要な量の電力を得ることが可能となる。さらに、2つ以上の異なる方向に前記所定直線方向が設定されている複数の静電誘導型変換素子を備えているので、何れかの素子の基板に相対運動を生じさせる外部力が加えられることによって効率よい発電を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の振動型静電発電機ユニットによれば、2つ以上の異なる方向に前記所定直線方向が設定されている複数の静電誘導型変換素子を備え、何れかの素子の基板に相対運動を生じさせる外部力が加えられることによって効率よい発電を行うことができるので、1つの素子形状を大型化することなく必要な量の電力を得られる電力源として実用化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
図1乃至図7は本発明の一実施形態における振動型静電発電機ユニットを示すもので、図1は本発明の一実施形態における振動型静電発電機ユニットを示す平面図、図2は図1の一部拡大図、図3は本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子を示す透過斜視図、図4は本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子を示す要部分解斜視図、図5は本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子を示す平面図、図6は図5におけるA−A線矢視方向断面図、図7は本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子の電気系回路を示す図である。
【0013】
これらの図において、100は振動型静電発電機ユニットで、所定厚さを有する長方形の固定板110の表面に複数の静電誘導型変換素子200が配置されて固定されている。
【0014】
静電誘導型変換素子200は、その上面が正方形をなした直方体形状の筐体210を備え、筐体210の内部には固定基板220と可動基板230を有し、可動基板230は上面の一辺と平行な所定直線方向に往復運動可能なようにバネ251,252によって支持されている。
【0015】
ここで、静電誘導型変換素子200は、その上面の各辺が、固定板110の辺に平行になるように固定板110の表面に配置され、さらに、隣り合う静電誘導型変換素子200の可動基板230の可動方向が互いに直交するようにマトリックス状に配置されている。
【0016】
静電誘導型変換素子200は、筐体210を備え、その内部には櫛歯形状の導体を有する固定基板220と、櫛歯形状のエレクトレットを有する可動基板230が設けられ、これらの固定基板220と可動基板230が相対的に往復運動することにより発電を行うものである。
【0017】
固定基板220はその底面が筐体210の内部底面に固定されており、固定基板220の上面(対向面)には櫛歯形状の導体221が形成されている。この櫛歯形状の導体221は、その櫛歯が、可動基板230の可動方向(図3におけるC1方向)に直交するように形成されている。さらに、この導体221は、筐体210の外部底面に設けられた外部電極212に配線を介して電気的に接続されている。
【0018】
可動基板230はその底面(対向面)が固定基板220の上面に対して所定の間隔をあけて平行に対向するようにベアリングボール241によって支えられている。また、可動基板230の底面(対向面)には櫛歯形状のエレクトレット231と、エレクトレット231に導電接続された導電体膜232が形成されている。この櫛歯形状のエレクトレット231は、その櫛歯が、可動基板230の可動方向(図3におけるC1方向)に直交するように形成されている。
【0019】
さらに、可動基板230の上部には、可動方向C1に対して直交する方向に延びる支持部材241が設けられ、支持部材241の両端部の垂直片431bが可動基板230の対向する2つの辺に固定されている。また、支持部材241は導電体からなり、一方の垂直片431bが導電体膜232に導電接続されている。
【0020】
また、支持部材241の水平片431aの中央には2つのバネ251,252のそれぞれの一端が接続されている。これらのバネ251,252は、その伸縮方向が可動方向C1に一致するように配置されている。さらに、バネ251,252のそれぞれの他端は筐体210の内面に固定されている。また、支持部材241はバネ252に設けられた導電体からなる配線252aと配線を介して筐体210の外部底面に設けられた外部電極213に電気的に接続されている。本実施形態では、バネ251,252は菱形の各辺にプラスチックの薄い板バネを配置したパンタグラフ形状のバネを使用している。バネ251,251としてコイルバネやトーションバーを用いても良い。
【0021】
上記構成の静電誘導型変換素子200は、外部から振動などの力が加えられ、これによって可動基板230が可動方向C1に往復運動すると、櫛歯形状のエレクトレット231に注入された電荷(例えば負電荷)により、固定基板220の櫛歯形状の導体221に正電荷が静電誘導され、外部電極212,213から電力を取り出すことができる。従って、上記構成の静電誘導型変換素子が発電機として機能する。
【0022】
また、上記構成の振動型静電発電機ユニット100は複数の静電誘導型変換素子200を備え、隣り合う静電誘導型変換素子200の可動基板230の可動方向C1が互いに直交するように配置されているため、何れかの素子の基板に相対運動を生じさせる外部力が加えられることによって効率よい発電を行うことができるので、1つの静電誘導型変換素子の形状を大型化することなく必要な量の電力を得られる電力源として使用することができる。
【0023】
なお、各静電誘導型変換素子200は、それぞれの可動基板230の可動方向C1が2つ以上の異なる方向に設定されるように配置されていればよいのであって、上記の配置に限定されることはない。例えば、図8及び図9に示す振動型静電発電機ユニット101のように、隣り合う静電誘導型変換素子200のそれぞれの可動基板230の可動方向C1が直交し且つ可動方向C1が固定板110の表面の直交する2つの辺のそれぞれと形成する鋭角が45度の角度をなすように複数の静電誘導型変換素子200を配置しても良い。また、同一平面上に各静電誘導型変換素子200を配置する必要もない。
【0024】
上記実施形態では固定板110として表面形状が長方形のものを用いたが正方形であっても良いし、これら以外の形状であっても良い。
【0025】
また、実施形態では導体221の形状とエレクトレット231の形状を櫛歯形状としたがこれに限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態における振動型静電発電機ユニットを示す平面図
【図2】図1の一部拡大図
【図3】本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子を示す透過斜視図
【図4】本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子を示す要部分解斜視図
【図5】本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子を示す平面図
【図6】図5におけるA−A線矢視方向断面図
【図7】本発明の一実施形態における静電誘導型変換素子の電気系回路を示す図
【図8】本発明の一実施形態における振動型静電発電機ユニットの他の例を示す平面図
【図9】図8の一部拡大図
【図10】従来例の静電誘導型変換素子を示す図
【図11】従来例の静電誘導型変換素子を示す図
【図12】従来例の静電誘導型変換素子を示す図
【符号の説明】
【0027】
100,101…振動型静電発電機ユニット、110…固定板、200…静電誘導型変換素子、210…筐体、211…底面、212,213…外部電極、214…ベアリングボール、220…固定基板、221…導体、230…可動基板、231…エレクトレット、232…導電体膜、241…支持部材、251,252…バネ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔をあけて互いに対向し、対向面に対して平行な方向に相対運動可能な2つの基板と、少なくとも一方の基板の対向面の所定位置に形成されたエレクトレットと、該エレクトレットに対向する基板の表面にエレクトレットに対向する位置に形成された導体と、前記対向面に対して平行な所定直線方向に相対的な往復運動可能に前記基板を支持する支持手段とを有し、外部から加わる力によって前記2つの基板に生ずる相対運動の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する静電誘導型変換素子を複数個備えてなる振動型静電発電機ユニットであって、
2つ以上の異なる方向に前記所定直線方向が設定されている複数の前記静電誘導型変換素子を備えている
ことを特徴とする振動型静電発電機ユニット。
【請求項2】
前記基板の面に平行な表面を有する固定板の表面に複数の前記静電誘導型変換素子が固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項3】
隣り合う前記静電誘導型変換素子の前記所定直線方向が直交するように複数の前記静電誘導型変換素子が配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項4】
前記基板の面に平行な長方形或いは正方形をなす表面を有する固定板の表面に、隣り合う前記静電誘導型変換素子の前記所定直線方向が直交し且つ前記所定直線方向が前記固定板の表面の直交する2つの辺の何れか一方と平行になるように複数の前記静電誘導型変換素子が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項5】
前記基板の面に平行な長方形或いは正方形をなす表面を有する固定板の表面に、隣り合う前記静電誘導型変換素子の前記所定直線方向が直交し且つ前記所定直線方向が前記固定板の表面の直交する2つの辺のそれぞれと形成する鋭角が45度の角度をなすように複数の前記静電誘導型変換素子が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項6】
前記2の基板のうちの一方の基板の対向面の所定位置に前記エレクトレットが形成され、前記2の基板のうちの他方の基板の対向面の所定位置に導体が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項7】
前記一方の基板に形成されているエレクトレットと前記他方の基板に形成されている導体のそれぞれは互いに平行な櫛歯形をなし、前記エレクトレットと前記導体のそれぞれの櫛歯が前記所定直線方向と直交する
ことを特徴とする請求項6に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項8】
前記支持手段は、一方の前記基板を固定する固定手段と、他方の前記基板が前記往復運動可能なように他方の基板に装着されたバネからなることを特徴とする請求項1に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項1】
所定間隔をあけて互いに対向し、対向面に対して平行な方向に相対運動可能な2つの基板と、少なくとも一方の基板の対向面の所定位置に形成されたエレクトレットと、該エレクトレットに対向する基板の表面にエレクトレットに対向する位置に形成された導体と、前記対向面に対して平行な所定直線方向に相対的な往復運動可能に前記基板を支持する支持手段とを有し、外部から加わる力によって前記2つの基板に生ずる相対運動の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する静電誘導型変換素子を複数個備えてなる振動型静電発電機ユニットであって、
2つ以上の異なる方向に前記所定直線方向が設定されている複数の前記静電誘導型変換素子を備えている
ことを特徴とする振動型静電発電機ユニット。
【請求項2】
前記基板の面に平行な表面を有する固定板の表面に複数の前記静電誘導型変換素子が固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項3】
隣り合う前記静電誘導型変換素子の前記所定直線方向が直交するように複数の前記静電誘導型変換素子が配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項4】
前記基板の面に平行な長方形或いは正方形をなす表面を有する固定板の表面に、隣り合う前記静電誘導型変換素子の前記所定直線方向が直交し且つ前記所定直線方向が前記固定板の表面の直交する2つの辺の何れか一方と平行になるように複数の前記静電誘導型変換素子が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項5】
前記基板の面に平行な長方形或いは正方形をなす表面を有する固定板の表面に、隣り合う前記静電誘導型変換素子の前記所定直線方向が直交し且つ前記所定直線方向が前記固定板の表面の直交する2つの辺のそれぞれと形成する鋭角が45度の角度をなすように複数の前記静電誘導型変換素子が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項6】
前記2の基板のうちの一方の基板の対向面の所定位置に前記エレクトレットが形成され、前記2の基板のうちの他方の基板の対向面の所定位置に導体が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項7】
前記一方の基板に形成されているエレクトレットと前記他方の基板に形成されている導体のそれぞれは互いに平行な櫛歯形をなし、前記エレクトレットと前記導体のそれぞれの櫛歯が前記所定直線方向と直交する
ことを特徴とする請求項6に記載の振動型静電発電機ユニット。
【請求項8】
前記支持手段は、一方の前記基板を固定する固定手段と、他方の前記基板が前記往復運動可能なように他方の基板に装着されたバネからなることを特徴とする請求項1に記載の振動型静電発電機ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−284240(P2009−284240A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134480(P2008−134480)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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