説明

振動検出プローブ

【課題】 共振周波数を高くし、測定可能な周波数の範囲を広くすることのできる振動検出プローブを提供すること
【解決手段】 ハウジング2と、そのハウジングに対して可動であって振動検出時に測定対象物8に接触して振動するヘッドチップ3と、ヘッドチップを付勢するバネ24と、ハウジングとヘッドチップとの間に配置され、両者間での振動の伝達を絶縁する振動絶縁物41と、ヘッドチップに接続された加速度センサ35を備える。ヘッドチップは、金属製の接触子31と、その接触子に取り付けられる樹脂部材32とを有し、接触子の一端側が測定対象物に接触する接触面33aとなり、接触子の他端側が、加速度センサの取り付け面となる。樹脂部材は、接触子の他端側に配置され、振動絶縁部材に接するようした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動検出プローブに関するもので、測定対象物に接触してその測定対象物の振動を検出するための振動検出プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の振動検出センサユニットとしては、特許文献1や特許文献2に開示されたものがある。各特許文献に開示されたセンサユニットは、測定対象物である振動物体に接触する部分がバネで付勢された可動部となっており、この可動部に振動を電気信号に変換する圧電素子等を設け、可動部を振動物体に押し当てて使用するようになっている。
【0003】
特許文献1に示される装置はその一例であり、検出針が可動部の主部をなし、可動部の検出針が測定対象物に接触する側とは反対側の端部に振動検出素子が備えられている。
【0004】
また、特許文献2に開示された装置は、可動部を複数の異なる金属を接合して構成している。具体的には、測定対象物と接触する先端側に従来と同様の硬い金属(例えば、ステンレス)を用い、非先端側を先端側の金属の硬度よりも軟らかく比重の小さい材質から成る金属(例えばアルミニウム)を用い、その非先端側の金属に振動検出素子を接続するようにしている。
【0005】
【特許文献1】実公平5−24192号公報
【特許文献2】特開平11−64093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
測定対象物に可動部を接触させて計測を行う場合、ある周波数で共振を生じてしまい、その共振周波数付近では振動を正確に測定することができないという問題がある。特許文献2の装置では、可動部の一部を比重の小さい金属で形成したことで、特許文献1の装置に比べて共振周波数を高くすることが可能となるものの、実際には、測定に必要なある程度の硬さを持つ金属材料は比重が大きいことから、軽量化に伴う効果が薄い(共振周波数を十分に高くすることはできない)。更に特許文献2の装置では、複数の金属を組み合わせることで各金属に応じた複数の共振点が発生するし、金属同士の接合部分で新たな共振を生じるおそれもある。
【0007】
この発明は、共振周波数を高くし、測定可能な周波数の範囲を広くすることのできる振動検出プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による振動検出プローブは、開口部を持ち、使用時に保持される固定部と、固定部内で固定部に対して可動かつ開口部から突出しており、振動検出時に測定対象物に接触して振動する可動部と、可動部を固定部に対して開口部から突出する方向に付勢する付勢手段と、固定部と可動部との間に配置され、両者間での振動の伝達を絶縁する振動絶縁部材と、可動部に固定された振動検出素子と、を備えた振動検出プローブにおいて、可動部は、金属製の接触子と、その接触子に設けられた樹脂部材とを有し、接触子の一端側が、測定対象物に接触する接触面となり、振動検出素子は接触子の他端側に取り付けられ、樹脂部材は、接触子の他端側に配置され、振動絶縁部材に接するように構成した。
【0009】
振動検出素子は、実施形態では加速度センサを用いたが、圧電素子その他の各種のセンサを用いることができる。振動絶縁部材は、実施形態では、環状のゴム材から形成したが振動が絶縁されれば、その形状並びに材質は任意である。付勢手段は、実施形態ではコイルスプリングとしたが、板バネその他の各種バネや、ゴムその他の弾性体等、各種のものを利用できる。
【0010】
樹脂部材は、接触子の他端側から前記一端側に向けて径が次第に小さくなるように傾斜がつけられた形状をしており、固定部は樹脂部材の形状に対応して、開口部の内径が先端に向けて次第に小さくなるように傾斜がつけられた形状とすることができる。振動検出素子は前記稼動部の中心軸近傍に固定され、振動絶縁部材は振動検出素子を取り囲むように配置するとよい。樹脂部材は、ポリアセタール等の工業用プラスチックで形成することができる。接触子は、単一の金属を用いて形成するとよい。もちろん、複数の金属部品を結合して構成しても良い。接触子の接触面は、平坦形状に形成するとよい。
【0011】
可動部の一部を樹脂部材で構成したため、可動部全体を金属で構成した場合に比べて可動部全体の軽量化が図れる。これにより、共振点(共振周波数)が高くなる。さらに、本発明は、測定対象物に接触する部分から振動検出素子の取り付け面までを金属製の接触子としたため、測定対象物の振動を振動検出素子に伝達することができる。また、樹脂部材は、振動絶縁物と接触する部分に配置されたため、新たな共振が発生することが可及的に抑制される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、共振周波数を高くし、測定可能な周波数の範囲が広くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図4は、本発明の好適な実施形態である。図1は、振動検出プローブ1を備えた振動検出装置の概略構成を示している。振動検出プローブ1は、両端が開口された円筒状のハウジング2(固定部)と、そのハウジング2の一端に装着されるヘッドチップ3(可動部)と、を備えている。ヘッドチップ3は、ハウジング2内に挿入されたスプリングの弾性復元力を受けて、ハウジング2の一端より突出する方向へ付勢力を受ける。
【0014】
ハウジング2の外周面の一部には、ネジ部4が形成される。1つの固定用ナット5aをネジ部4に装着した状態の振動検出プローブ1を、ヘッドチップ3側より治具6に形成された貫通孔7に挿入するとともに、ヘッドチップ3側から他の固定用ナット5bをネジ部4に装着することで、振動検出プローブ1を治具6に固定する。2つの固定ナット5a,5bの位置を調整することで、治具6に対して振動検出プローブ1を上下方向の所望の位置で固定できる。治具6は、油圧シリンダーやエアシリンダーなどに接続され、下方に向けて付勢されている。或いは、治具6をロボットアームなどに連係させ、振動検出プローブ1を任意の位置に移動させるとともに、所定の圧力で測定対象物8に対して押圧することもできる。
【0015】
図1に示すように、内蔵するスプリングにより先端側へ付勢されるヘッドチップ3の先端は、油圧シリンダーなどの付勢力を受けて測定対象物8に対して所定の圧力で接触される。これにより、測定対象物8が振動すると、ヘッドチップ3も測定対象物8とともに振動する。この振動は、後述する振動検出プローブ1に内蔵された振動検出素子(加速度センサ)により検出される。この振動検出素子の出力である検出信号は、ケーブル10を介してセンサアンプ11に入力される。その入力された信号は、センサアンプ11で増幅され、A/D変換器12でデジタル信号に変換後、計測器13に与えられ、そこにおいて振動が計測される。
【0016】
図2に示すように、ハウジング2内には、筒状のスライド軸21が、軸方向に移動可能に実装される。ハウジング2の軸心と、スライド軸21の軸心とは一致している。このスライド軸21の下端に、ヘッドチップ3が接続されている。
【0017】
スライド軸21の上方側は、下方側に比べて外径が小さく設定されており、その境界部分に段差部21aが形成される。さらに、スライド軸21の上方のハウジング2内の所定位置に、ストッパー部材22が固定される。そして、スライド軸21の上方側にコイルスプリング等のバネ24が挿入される。そのバネ24の両端は、ストッパー部材22と段差部21aと、に接触する。これにより、バネ24の弾性復元力により、ストッパー部材22とスライド軸21が離反する方向に付勢され、ひいては、スライド軸21の下端に接続されたヘッドチップ3が下方(ハウジング2から突出する方向)に向けて付勢される。
【0018】
図3,図4に拡大して示すように、ヘッドチップ3は、金属製の接触子31と、その接触子31に嵌め込むようにして装着された樹脂部材32と、を備えている。接触子31は、測定対象物8に接触する円柱状の接触端子33と、その接触端子33の平坦面状の接触面33aと反対側に連続する基部34と、を備えている。この基部34と接触端子33は、同一金属で一体に形成しているが、異なる金属で形成しても良い。また、特開平11−64093号公報に開示されたように接触端子33の接触面33a側をその他の部分と異なる金属で形成することもできる。
【0019】
樹脂部材32の内径は、基部34の外径よりも若干太くする。これにより、接触子31と樹脂部材32とは、樹脂部材32を基部34に装着するだけで固定される。樹脂部材32は絶縁部材と接触する面は広く、接触端子側は狭くなった形状をしている。固定部2の開口部25も樹脂部材の形状に対応して、先端が狭くなった形状をしている。これにより、接触子33が測定対象物8と垂直ではなく、斜め方向に接触して測定を行った場合、測定対象物8から離れた後、接触子33が固定部の中心軸と同軸の位置にもどるようになっており、再現性良く測定を行なうことができる。
【0020】
使用する金属としては、例えば、SUS440CやSKD−11などを用いることができる。これは、何れも硬い金属としての性質により選択される。これらの金属の比重は7.9g/cmで、ヤング率は20400kgf/mmである。接触子31の基部34の表面34a(接触面33aと反対側の面)に、加速度センサ35が固定される。この固定方法は、本実施形態では、表面34aにネジ穴36を形成し、そのネジ穴36を利用して加速度センサ35を固定する。
【0021】
樹脂部材32は、比重の軽い樹脂が選択される。この樹脂は、例えば、ポリアセタール等の工業用プラスチックを用いることができる。この樹脂の比重は1.4g/cmで、ヤング率は7kgf/mmである。
【0022】
この樹脂部材32とスライド軸21との間に、円筒状の振動絶縁物41を介在させる。振動絶縁物41は、例えばゴム等から形成され、ヘッドチップ3と、スライド軸21との間で、振動が伝達することを遮断し、加速度センサ35が測定対象物8の振動のみを検出するようにしている。さらに、振動絶縁物41は、係る振動の絶縁に加えて、測定対象物8の傾きを吸収し、測定対象物8に対して接触子31が安定的に垂直に押し付けられるようにする機能も有する。
【0023】
加速度センサ35とハウジング2の上端に設けたコネクタ45は、リード配線46にて接続される。このコネクタ45にケーブル10を連結することで、加速度センサ35の出力信号をセンサアンプ11に入力することができる。
【0024】
振動測定プローブ1は、接触子31が測定対象物8に接触して測定対象物8とともに振動することで、接触子31に取り付けられた加速度センサ35により振動を測定するものである。しかし、測定対象物8に接触して計測を行う場合、実際にはある周波数で共振を生じてしまい、その共振周波数付近では振動を正確に測定することができないという問題がある。
【0025】
本実施形態では、ヘッドチップ3の一部を樹脂で構成したため、仮に、従来の全体を金属で形成したヘッドチップ3′(図5参照)と比較し、ヘッドチップ3の全重量が軽くなる。よって、本実施形態のヘッドチップ3は軽量化が行え、共振周波数を高くすることができる。更に、振動絶縁物41と接触する部分に樹脂部材32を配置したため、新たな共振も発生することはない。また、仮に共振が発生したとしても樹脂に基づく共振は、そのレベルが小さいとともに周波数が非常に低いため、振動測定に影響を与えない。
【0026】
更に、硬さが必要とされる測定対象物8に接触する部分から加速度センサ35が固定される部分までは、金属から成る接触子31を配置したため、測定対象物8の振動をそのまま加速度センサ35に伝達することができる。
【0027】
本実施形態の効果を実証するため、本実施形態のヘッドチップ3(図3参照)と、同一の寸法形状からなる従来のヘッドチップ3′(図5参照)と、を用意し、それぞれについて周波数特性を測定した。ヘッドチップ3′は、その全体を1つの金属を用いて一体成型により製造した。その他の構成は、本実施形態のものと同一のものとした。
【0028】
図6(a)は、本実施形態の測定結果を示し、図6(b)は従来品の測定結果を示している。図6(b)に示すように、従来品を用いた振動検出プローブでは、11kHz付近に共振点があり、応答性が20dBとなっている。応答性は、実際の振動に対して測定結果の増幅・減衰状況を示すもので、20dBは、10倍増幅していることを示す。これに対し、図6(a)に示すように、本実施形態の振動検出プローブでは、共振点が13kHz付近となっており、共振点が約2kHz高くなっていることが確認できる。例えば測定対象物8がエンジンなどの場合、測定対象となる周波数は10kHz付近であるため、本実施形態の振動検出プローブを用いることで、正確な測定が可能となる。もちろん、10kHz以下の低い周波数帯でも本実施形態では正確な振動の測定が行なえる。つまり、本実施形態の振動検出プローブは、測定可能な周波数範囲が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好適な実施形態である振動検出プローブを用いた振動測定装置の一例を示す図である。
【図2】振動検出プローブの内部構造の一例を示す図である。
【図3】ヘッドチップの一例を示す図である。
【図4】ヘッドチップの一例を示す図である。
【図5】従来のヘッドチップの一例を示す図である。
【図6】効果を実証するための測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
1 振動検出プローブ
2 ハウジング(固定部)
3 ヘッドチップ(可動部)
8 測定対象物
24 バネ(付勢手段)
25 開口部
31 接触子
32 樹脂部材
33 接触端子
33a 接触面
35 加速度センサ(振動検出素子)
41 振動絶縁物(振動絶縁部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を持ち、使用時に保持される固定部と、
前記固定部内で前記固定部に対して可動かつ前記開口部から突出しており、振動検出時に測定対象物に接触して振動する可動部と、
前記可動部を前記固定部に対して開口部から突出する方向に付勢する付勢手段と、
前記固定部と前記可動部との間に配置され、両者間での振動の伝達を絶縁する振動絶縁部材と、
前記可動部に固定された振動検出素子と、を備えた振動検出プローブにおいて、
前記可動部は、金属製の接触子と、その接触子に設けられた樹脂部材とを有し、
前記接触子の一端側が、前記測定対象物に接触する接触面となり、
前記振動検出素子は前記接触子の他端側に取り付けられ、
前記樹脂部材は、前記接触子の他端側に配置され、前記振動絶縁部材に接するように構
成したことを特徴とする振動検出プローブ。
【請求項2】
前記樹脂部材は、前記接触子の他端側から前記一端側に向けて径が次第に小さくなるように傾斜がつけられた形状をしており、
前記固定部は前記樹脂部材の形状に対応して、開口部の内径が先端に向けて次第に小さくなるように傾斜がつけられた形状をしていることを特徴とする請求項1に記載の振動検出プローブ。
【請求項3】
前記振動検出素子は前記稼動部の中心軸近傍に固定され、
前記振動絶縁部材は前記振動検出素子を取り囲むように配置されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の振動検出プローブ。
【請求項4】
前記樹脂部材は、ポリアセタール等の工業用プラスチックで形成されることを特徴とする
請求項1から3のいずれか1項に記載の振動検出プローブ。
【請求項5】
前記接触子は、単一の金属を用いて形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の振動検出プローブ。
【請求項6】
前記接触子の接触面は、平坦形状に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の振動検出プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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