振動波駆動装置
【課題】振動子の駆動振動を阻害せず、摺動面から励振される不要な振動を効果的に減衰させて、鳴きや異音の発生を抑制することが可能となる振動波駆動装置を提供する。
【解決手段】複数の定在波振動の合成によって楕円運動が形成可能に構成された振動子と、該振動子を支持する支持部材を備え、
前記振動子は少なくとも圧電素子と接触部材とからなり、前記振動子の楕円運動によって、該振動子の接触部材と接触する被駆動体を駆動する振動波駆動装置であって、
該振動波駆動装置には振動抑制部材が備えられており、該振動子に励振される前記複数の定在波振動における節円または節線が含まれるそれぞれの節がお互いに交差し重なり合う共通の節の内、
該振動子の支持部分と異なる節に対して前記振動抑制部材が当接するよう設けられた構造を備えている。
【解決手段】複数の定在波振動の合成によって楕円運動が形成可能に構成された振動子と、該振動子を支持する支持部材を備え、
前記振動子は少なくとも圧電素子と接触部材とからなり、前記振動子の楕円運動によって、該振動子の接触部材と接触する被駆動体を駆動する振動波駆動装置であって、
該振動波駆動装置には振動抑制部材が備えられており、該振動子に励振される前記複数の定在波振動における節円または節線が含まれるそれぞれの節がお互いに交差し重なり合う共通の節の内、
該振動子の支持部分と異なる節に対して前記振動抑制部材が当接するよう設けられた構造を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動波駆動装置に関に関し、特に鳴きおよび異音を防止するようにした振動波駆動装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より超音波モータは回転型やリニア型など種々の機能を有するものが提案されている。
その超音波モータを振動子の駆動原理で大別すると、定在波型と進行波形に分類できる。
定在波型の振動子は、屈曲振動、または伸縮振動などを同時に励振して重ね合わせた駆動振動モードとして定在波が形成されたものである。
一方、進行波型の振動子は、同様に複数の定在波振動を重ね合わせて、進行波を形成するものである。
【0003】
従来において、上記の進行波型の超音波モータとして、例えば、特許文献1では図14に示されるような構造のモータが提案されている。
図14において、超音波モータは、圧電体102と弾性体103とを有する振動子101と、弾性体103の駆動面に加圧接触される移動子105とを備えており、振動子101の内周側のフランジ103cを支持部材106a、106bで挟持して固定し、移動子105を駆動するような構成になっている。
また、移動子105はゴムなどの緩衝部材107を介してシャフト108に接合されており、加圧バネ109とシャフト108に固定された出力ギア110とで移動子105と振動子101との摩擦面に加圧力が付勢されるように構成されている。
このように構成された超音波モータは、低速で大トルクを出力することができ、静粛性に優れている。
【0004】
また、特許文献2では、図15に示すように円盤状の振動子113はその中心部で支持部材114により支持される構造を備えた超音波モータが提案されている。
この超音波モータでは、振動子113は弾性体111と圧電素子112とが結合されて形成されており、この振動モードは半径方向に1次の振動、すなわち、円盤の中心が振動の節となり、最外周側が振動の腹になるモードを形成している。そのため、振動子の振動を阻害しないために、振動の節である中心部を固定する構造が採られている。
【特許文献1】特開2006−271143号公報
【特許文献2】特開2001−268949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例の超音波モータにおいては、つぎのような課題を有している。
すなわち、上記従来例の特許文献1のものでは、振動、摩擦を積極的に使うという駆動原理上の特徴から、振動体には減衰が小さい材料が選択され、また、摩擦材には摩擦係数が大きな材料が採用されるため、摩擦面から不要振動が発生し騒音の原因となっていた。
これらの現象は、振動子や移動子などのローコスト化を図ろうとする際に、摺動面の面精度などの悪化を招くことから、特に顕著に現れる。
そのため、静粛性などの機能(性能)とローコスト化の両立を阻むものであった。
こけらの対策として、従来においては振動子の裏側(フレキシブル基盤接合面)に減衰ゴムを装着する解決策等が試みられてきた。
しかし、このような減衰ゴムによる方法では、振動子の駆動振動をも減衰してしまうため、モータ効率も低下させてしまうという問題が生じる。
また、上記従来例の特許文献2の超音波モータにおいても、摺動部のスティックスリップなどの原因により、異音や鳴きの現象が生じるという問題を有している。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、振動子の駆動振動を阻害せず、摺動面から励振される不要な振動を効果的に減衰させて、鳴きや異音の発生を抑制することが可能となる振動波駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、つぎのように構成した振動波駆動装置を提供するものである。
本発明の振動波駆動装置は、複数の定在波振動の合成によって楕円運動が形成可能に構成された振動子と、該振動子を支持する支持部材を備え、
前記振動子は少なくとも圧電素子と接触部材とからなり、前記振動子の楕円運動によって、該振動子の接触部材と接触する被駆動体を駆動する振動波駆動装置であって、
該振動波駆動装置には振動抑制部材が備えられており、該振動子に励振される前記複数の定在波振動のそれぞれの節(節円または節線)がお互いに交差し重なり合う共通の節(節点)の内、該振動子の支持部分と異なる節に対して前記振動抑制部材が当接するよう設けられた構造を備えていることを特徴とする。
また、本発明の振動波駆動装置は、前記振動抑制部材が、振動減衰部材によって構成されていることを特徴とする。
また、本発明の振動波駆動装置は、前記振動減衰部材が、前記振動子と接触する部分がほぼ点に近い状態で接触する形状を備えていることを特徴とする。
また、本発明の振動波駆動装置は、前記振動減衰部材の前記振動子と接触する部分が、半球状または円錐状に形成されていることを特徴とする。
また、本発明の振動波駆動装置は、前記振動減衰部材が、弾性を有するゴムまたは高減衰特性を有するエラストマーで構成されていることを特徴とする。
また、本発明の振動波駆動装置は、前記振動抑制部材が、前記振動子と前記被駆動体とを加圧接触させる加圧手段で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の振動波駆動装置は、前記振動抑制部材が、前記振動子と前記被駆動体との間に発生させる駆動力の伝達部材で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動子に励振される駆動振動モードを阻害せずに不要振動を減衰させて、モータの効率を低下させず、異音、鳴きなどの不快な音の発生を抑制することが可能となる振動波駆動装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、圧電素子等の振動体によって振動子に励振される定在波の節には節円または節線が含まれる。そして、これらの節円又は節線がお互いに交差し重なり合う共通の節を節点ともいう。
本発明は、このような共通の節点の内、該振動子の支持部分と異なる節に対して振動抑制部材が当接するよう設けられた構造を備えている。
本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0010】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1においては、本発明の複数の定在波振動の合成によって楕円運動が形成可能に構成された振動子と、該振動子を支持する支持部材を備えた振動波駆動装置の構成を適用して構成されたリニア型の超音波モータの構成例について説明する。
図1に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
図1において、20は振動板、21は圧電素子、22は振動子、23は振動減衰部材、24はホルダー(支持部材)、25は被駆動体(スライダー)である。
図2及び図3は、本実施例の超音波モータにおける振動モードを説明する図である。
図4は、本実施例の超音波モータにおける減衰部材を設置するポイントについて説明する図である。
図5は、本実施例の超音波モータにおける減衰ゴムの構成について説明する図である。
図6及び図7は、本実施例の超音波モータにおける減衰させたい不要モードについて説明する図である。
【0011】
本実施例の超音波モータは、図1に示される鉄系の金属(例えばSUS420j2)で構成された振動板20が、プレス等で図2〜図4に示されるような形状に加工される。
その際、図4に示されるように、この振動板20における振動板本体20−1のほぼ中央に、摩擦接触部突起(20−2、20−3)が形成される。
また、この振動板本体20−1の4隅から延出されたそれぞれ2組の支持部(20−4、20−5)および(20−6、20−7)を介して固定部20−8、20−9が形成される。
振動板本体20−1の裏面には圧電素子21が接着等で接合されており、また、この圧電素子の電極面には給電フレキ(不図示)が接合され、振動子22を形成している。
また、振動子22は固定部20−8,20−9が樹脂等で形成されたホルダー24に固定され、不図示のキャリッジ等に接続されている。
振動子22と接触する被駆動体25は永久磁石で構成されており、振動子22との接触面には耐摩耗処理が施されている。
このレール状の被駆動体25は両端が筐体に固定されており、磁性体で構成された振動子22はこの磁石の吸引力により被駆動体25に加圧接触している。
【0012】
ここにおいて、不図示の電源から給電フレキを介して振動子22に電界が印加されると、振動子22には、図2と図3に示すような2つの曲げ振動が励振される。
図2は振動体本体20−1が面に垂直な方向に曲げ振動する定在波振動モードの内の1つで、突き上げ振動モードの変形状態を表している。図2において、振動体本体の中央部は曲げ振動の変位が最も大きい(振動振幅が最も大きい)部分であり、この部分を振動の腹と呼ぶ。また、図2に示すL1,L2の部分は振動の変位がほとんどゼロの部分であり、これらの部分を振動の節と一般に呼ばれる。節が点で存在する場合には節点とも呼ぶ。尚、本実施例のように矩形板の振動では、節が点で存在するのではなく線状に形成されているので、本発明においてはこれらの節を特に節線と呼ぶ(振動板が円板の場合、半径方向に形成される節線は、同心円状になるので、この場合は節円と呼ぶ)。
また、図3には振動体本体に形成されるもう1つの定在波振動モードを示しており、ここに示した節線L3〜L5は前記L1,L2とは直交する方向に形成される。
これらの2つの振動モードを時間的な位相差π/2をもって重ね合わせると、前記摩擦接触部突起(20−2、20−3)に楕円運動が発生する。
これにより、前記被駆動体との接触部に摩擦駆動力が発生するため、この振動子22およびこれに接続するホルダー24等は、被駆動体25に対して相対的に駆動される。
このように、本実施例のリニア超音波モータは、圧電素子と接触部材とを有する振動子の上記楕円運動によって、該振動子の接触部材と接触する被駆動体を駆動するように構成されている。
【0013】
以上のように構成されたリニア超音波モータにおいては、前述したような摩擦駆動をすることにより、しばしば鳴きなどの異音を発生することがある。
これらの鳴き(異音)の原因は、モータ駆動に供する振動モード以外の不要振動モード(本実施例で示した形状では、図6に示すような振動)が発生し、
その不要振動の固有振動数と駆動振動の周波数との差分の周波数が鳴きとして聞こえていることが明らかとなった。
そこで、本実施例では、このような鳴きについての問題を解決するため、この不要振動モードに対して効果的に減衰力を与え、かつ、駆動モードに対しては振動の阻害とならないように、支持部材と振動子との間に振動抑制部材を設けた構成とした。
【0014】
図4はその減衰部材を設置するポイントを示している。
図2の振動モードから明らかなように、2つの駆動モードの共通する振動の節は、図4におけるL1,L2とL3〜L5との交点(Q1〜Q6)であり、6つ存在する。
一方、減衰させたい不要モードは図6および図7に示すように3本の節線(L6〜L8)をもっている。
これらの節線は前記Q1〜Q6のポイントとは厳密には一致しないため、どのポイントに減衰を与えても不要モードに対してそれなりの減衰効果が得られる。
しかし、本実施例では、より効果的に不要振動を減衰せさるために、Q1〜Q6の中で不要モードの振動振幅が最も大きなポイント、Q1,Q2を選択し、振動抑制部材として振動減衰部材23を設置した。
【0015】
図5にはその振動減衰部材23の形状を示している。
図5に示されるように、平板状のベース部に半球状の突起が2つ(P1〜P2)形成された形状をしており、この部材は減衰能が高い材質、例えば弾性を有するゴム(ブチルゴム)や高減衰特性を有するエラストマー等で構成することができる。
また、P1〜P2はそれぞれの位置が前記Q1〜Q2に対応するように成形されている。
この振動減衰部材23を、ホルダー24と振動体22の間に挟み、振動体の圧電素子面の2ポイントに前記P1〜P2が接触するように設置することで、上記したような鳴きを抑制することができ、このような鳴きに対して大きな効果を得ることが可能となる。
【0016】
[実施例2]
実施例2においては、実施例1とは異なる形態によるリニア型の超音波モータの構成例について説明する。
図8に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
本実施例では、振動体が被駆動体であるスライダーに接触して駆動される構成が取られる。
そのため、長いスパンに亙ってこれらが安定した接触状態を保つ必要があることから、イコライズバネ26で支持する構造になっている。
イコライズバネ26は、図中のY方向に対し振動体の自由度を拘束すると共に、X軸回り、Y軸回りおよびZ方向の自由度に関しては、振動体とスライダ間に作用している加圧力に影響を与えないくらい小さな剛性になるように設定されている。
そのため、イコライズバネ26は薄板形状をとることが多く、その影響でこの板バネが有する多くの共振モードに起因する騒音がしばしば発生し、問題となる。
【0017】
このようなことから、本実施例では、振動抑制部材である減衰ゴムの一方の面をイコライズバネに接合し、他面に設けた突起を振動子の前記Q1〜Q6に対応するポイントに当接させる構造とした。
これにより、振動子に発生し、鳴きの原因になる不要モードの発生を押さえるとともに、駆動中にイコライズバネが励振され騒音が発生する現象を無くすことができた。
【0018】
[実施例3]
実施例3として、イコライズバネに振動抑制部材である減衰ゴムが一体成形された構成例について説明する。
図9に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
本実施例の超音波モータは、図9に示されるように、減衰定数が高いブチルゴムをイコライズバネ全体にコーティングされるようにアウトサート成形し、振動子の前記節Q1,Q2の位置には前記突起と同形状のプロジェクションが、同様に一体で成形されている。
このように、イコライズバネ全体をゴムでコーティングすることにより、ゴムとバネとの密着性を高め、バネに与える減衰効果を向上させると共に、信頼性を格段に向上することができるため、より安定した騒音減衰効果を発揮することが可能となる。
【0019】
[実施例4]
実施例4として、前記共通の節点において振動抑制部材を振動体22とスライダー25とを加圧接触させる加圧手段として加圧バネを構成した構成例について説明する。
図10に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
本実施例において、板状の加圧バネ28は両端をキャリッジ等の本体部に固定されて設置され、中央付近に設けられた2つの突起部28−1、28−2が振動体22の圧電素子部に直接接触して振動体に対して加圧力を付与している。
ここで示された2つの突起部28−1、28−2が接触する位置は、前記実施例において減衰部材を接触させていた共通の節Q1,Q2と同位置である。
このように、振動体における共通の節に対し直接加圧部材を接触させて加圧力を付与することにより、従来における加圧により駆動体の振動を拘束するために発生する損失(支持損失)を、極端に小さくし、かつ、不要振動モードのみを抑制することが可能となる。
【0020】
[実施例5]
実施例5として、上記実施例4における加圧部材の突起部が加圧バネと別部材(突起部材29)で構成された構成例について説明する。
図11に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
本実施例においては、上記突起部材29は振動体の圧電素子21と接触する部分が尖った形状になっているため、Q1,Q2部と接触する面積を点に近い状態にできるため、さらに駆動モードに与える影響を小さくすることが可能になる。
【0021】
[実施例6]
実施例6として、加圧突起部29と圧電素子21との間に駆動力発生方向(加圧方向と垂直方向)の結合力をアップさせて、この突起部29を介して駆動力を伝達する構成例について説明する。
図12に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
本実施例においては、圧電素子21のQ1,Q2ポイントに相当する位置には、例えば表面から0.2mmから0.3mm程度の深さに穴部が形成されており、この部分に前記突起部29の先端が係合して設置されている。
このように構成することで、加圧バネ28、突起部29により駆動振動モードに影響を与えないで加圧力を付与すると共に、これらの部材を介して駆動力をキャリッジ等の本体に伝達することが可能になり、構造も簡素化することができる。
【0022】
[実施例7]
実施例7として、振動抑制部材を、振動子と被駆動体との間に発生させる駆動力の伝達部材で構成した構成例について説明する。
図13に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
本実施例では、振動子に接合されている圧電素子21には給電部材31(フレキシブルプリント基板等:以降フレキと称す)が接合されており、その一部が両側の固定部材にビス33で固定されている。
この固定部材にはフレキを位置決めするための位置決めピン34が設けられているため、フレキに接合された振動子は固定部材に対して精度良く位置が決められている。
また、このフレキの背面には加圧バネ32が設置されており、このバネの半球状の先端は振動子の前記駆動モードの共通の節であるQ1,Q2を所定の力で加圧するように設定されている。
【0023】
ここにおいて、前記フレキ31はベースがポリイミド等の薄い樹脂材で形成されており、振動子の加圧方向(Z方向)に対しては非常に剛性が小さいため、スライダー25の摺動面に対してはならい機能を有している。
一方、駆動方向(X方向)に対してはフレキの幅を大きくとり、形状的に曲げ剛性が高くなるよう設計されているので、駆動力を効果的に伝達できるように設定している。
このため、このフレキは給電部材としての機能を有すると同時に振動子の支持機構と出力伝達機能も兼ねた構造となっている。
【0024】
以上に説明したように、本発明においては、駆動に供する複数の定在波振動の共通の節のうち、不要振動の振動振幅が大きい個所に、前記振動抑制部材を当接させている。
すなわち、駆動モード共通の節であり、かつ鳴き等の原因となる不要モードの振動の腹(振動振幅が大きいポイント)に、振動抑制部材として減衰部材、または加圧部材等を当接させることにより、不要モードのみ減衰させる構造を実現するものである。
これによって、モータの効率を低下させることも無く、効果的に鳴きなどの騒音を低減することが可能となる。
なお、上記各実施例の説明では、減衰部材のプロジェクションの形状を半球状としていたが、振動子の節に対してなるべく小さい面積で接触できる形状であれば、このような形状に限定されるものではない。例えば、円錐状の形状でもよいことは言うまでもない。
また、同様に加圧部材の接触部(28−1,28−2)や29の先端についても、半球状、円錐状に限られるものではなく、先端が尖った形状で、接触面積が極力小さく構成できる形状であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図2】本発明の実施例1の超音波モータにおける振動モードを説明する図。
【図3】本発明の実施例1の超音波モータにおける振動モードを説明する図。
【図4】本発明の実施例1の超音波モータにおける減衰部材を設置するポイントについて説明する図。
【図5】本発明の実施例1の超音波モータにおける減衰ゴムの構成について説明する図。
【図6】本発明の実施例1の超音波モータにおける減衰させたい不要モードについて説明する図。
【図7】本発明の実施例1の超音波モータにおける減衰させたい不要モードについて説明する図。
【図8】本発明の実施例2における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図9】本発明の実施例3における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図10】本発明の実施例4における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図11】本発明の実施例5における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図12】本発明の実施例6における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図13】本発明の実施例7における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図14】従来例の特許文献1における超音波モータについて説明する図。
【図15】従来例の特許文献2における超音波モータについて説明する図。
【符号の説明】
【0026】
20:振動板
21:圧電素子
22:振動子(振動体)
23:振動減衰部材
24:ホルダー
25:被駆動体(スライダー)
26:イコライズバネ
27:減衰ゴムコーティング部
28:加圧バネ
29:突起部
31:給電部材(フレキ)
32:加圧バネ
33:固定ビス
34:位置決めピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動波駆動装置に関に関し、特に鳴きおよび異音を防止するようにした振動波駆動装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より超音波モータは回転型やリニア型など種々の機能を有するものが提案されている。
その超音波モータを振動子の駆動原理で大別すると、定在波型と進行波形に分類できる。
定在波型の振動子は、屈曲振動、または伸縮振動などを同時に励振して重ね合わせた駆動振動モードとして定在波が形成されたものである。
一方、進行波型の振動子は、同様に複数の定在波振動を重ね合わせて、進行波を形成するものである。
【0003】
従来において、上記の進行波型の超音波モータとして、例えば、特許文献1では図14に示されるような構造のモータが提案されている。
図14において、超音波モータは、圧電体102と弾性体103とを有する振動子101と、弾性体103の駆動面に加圧接触される移動子105とを備えており、振動子101の内周側のフランジ103cを支持部材106a、106bで挟持して固定し、移動子105を駆動するような構成になっている。
また、移動子105はゴムなどの緩衝部材107を介してシャフト108に接合されており、加圧バネ109とシャフト108に固定された出力ギア110とで移動子105と振動子101との摩擦面に加圧力が付勢されるように構成されている。
このように構成された超音波モータは、低速で大トルクを出力することができ、静粛性に優れている。
【0004】
また、特許文献2では、図15に示すように円盤状の振動子113はその中心部で支持部材114により支持される構造を備えた超音波モータが提案されている。
この超音波モータでは、振動子113は弾性体111と圧電素子112とが結合されて形成されており、この振動モードは半径方向に1次の振動、すなわち、円盤の中心が振動の節となり、最外周側が振動の腹になるモードを形成している。そのため、振動子の振動を阻害しないために、振動の節である中心部を固定する構造が採られている。
【特許文献1】特開2006−271143号公報
【特許文献2】特開2001−268949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例の超音波モータにおいては、つぎのような課題を有している。
すなわち、上記従来例の特許文献1のものでは、振動、摩擦を積極的に使うという駆動原理上の特徴から、振動体には減衰が小さい材料が選択され、また、摩擦材には摩擦係数が大きな材料が採用されるため、摩擦面から不要振動が発生し騒音の原因となっていた。
これらの現象は、振動子や移動子などのローコスト化を図ろうとする際に、摺動面の面精度などの悪化を招くことから、特に顕著に現れる。
そのため、静粛性などの機能(性能)とローコスト化の両立を阻むものであった。
こけらの対策として、従来においては振動子の裏側(フレキシブル基盤接合面)に減衰ゴムを装着する解決策等が試みられてきた。
しかし、このような減衰ゴムによる方法では、振動子の駆動振動をも減衰してしまうため、モータ効率も低下させてしまうという問題が生じる。
また、上記従来例の特許文献2の超音波モータにおいても、摺動部のスティックスリップなどの原因により、異音や鳴きの現象が生じるという問題を有している。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、振動子の駆動振動を阻害せず、摺動面から励振される不要な振動を効果的に減衰させて、鳴きや異音の発生を抑制することが可能となる振動波駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、つぎのように構成した振動波駆動装置を提供するものである。
本発明の振動波駆動装置は、複数の定在波振動の合成によって楕円運動が形成可能に構成された振動子と、該振動子を支持する支持部材を備え、
前記振動子は少なくとも圧電素子と接触部材とからなり、前記振動子の楕円運動によって、該振動子の接触部材と接触する被駆動体を駆動する振動波駆動装置であって、
該振動波駆動装置には振動抑制部材が備えられており、該振動子に励振される前記複数の定在波振動のそれぞれの節(節円または節線)がお互いに交差し重なり合う共通の節(節点)の内、該振動子の支持部分と異なる節に対して前記振動抑制部材が当接するよう設けられた構造を備えていることを特徴とする。
また、本発明の振動波駆動装置は、前記振動抑制部材が、振動減衰部材によって構成されていることを特徴とする。
また、本発明の振動波駆動装置は、前記振動減衰部材が、前記振動子と接触する部分がほぼ点に近い状態で接触する形状を備えていることを特徴とする。
また、本発明の振動波駆動装置は、前記振動減衰部材の前記振動子と接触する部分が、半球状または円錐状に形成されていることを特徴とする。
また、本発明の振動波駆動装置は、前記振動減衰部材が、弾性を有するゴムまたは高減衰特性を有するエラストマーで構成されていることを特徴とする。
また、本発明の振動波駆動装置は、前記振動抑制部材が、前記振動子と前記被駆動体とを加圧接触させる加圧手段で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の振動波駆動装置は、前記振動抑制部材が、前記振動子と前記被駆動体との間に発生させる駆動力の伝達部材で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動子に励振される駆動振動モードを阻害せずに不要振動を減衰させて、モータの効率を低下させず、異音、鳴きなどの不快な音の発生を抑制することが可能となる振動波駆動装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、圧電素子等の振動体によって振動子に励振される定在波の節には節円または節線が含まれる。そして、これらの節円又は節線がお互いに交差し重なり合う共通の節を節点ともいう。
本発明は、このような共通の節点の内、該振動子の支持部分と異なる節に対して振動抑制部材が当接するよう設けられた構造を備えている。
本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0010】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1においては、本発明の複数の定在波振動の合成によって楕円運動が形成可能に構成された振動子と、該振動子を支持する支持部材を備えた振動波駆動装置の構成を適用して構成されたリニア型の超音波モータの構成例について説明する。
図1に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
図1において、20は振動板、21は圧電素子、22は振動子、23は振動減衰部材、24はホルダー(支持部材)、25は被駆動体(スライダー)である。
図2及び図3は、本実施例の超音波モータにおける振動モードを説明する図である。
図4は、本実施例の超音波モータにおける減衰部材を設置するポイントについて説明する図である。
図5は、本実施例の超音波モータにおける減衰ゴムの構成について説明する図である。
図6及び図7は、本実施例の超音波モータにおける減衰させたい不要モードについて説明する図である。
【0011】
本実施例の超音波モータは、図1に示される鉄系の金属(例えばSUS420j2)で構成された振動板20が、プレス等で図2〜図4に示されるような形状に加工される。
その際、図4に示されるように、この振動板20における振動板本体20−1のほぼ中央に、摩擦接触部突起(20−2、20−3)が形成される。
また、この振動板本体20−1の4隅から延出されたそれぞれ2組の支持部(20−4、20−5)および(20−6、20−7)を介して固定部20−8、20−9が形成される。
振動板本体20−1の裏面には圧電素子21が接着等で接合されており、また、この圧電素子の電極面には給電フレキ(不図示)が接合され、振動子22を形成している。
また、振動子22は固定部20−8,20−9が樹脂等で形成されたホルダー24に固定され、不図示のキャリッジ等に接続されている。
振動子22と接触する被駆動体25は永久磁石で構成されており、振動子22との接触面には耐摩耗処理が施されている。
このレール状の被駆動体25は両端が筐体に固定されており、磁性体で構成された振動子22はこの磁石の吸引力により被駆動体25に加圧接触している。
【0012】
ここにおいて、不図示の電源から給電フレキを介して振動子22に電界が印加されると、振動子22には、図2と図3に示すような2つの曲げ振動が励振される。
図2は振動体本体20−1が面に垂直な方向に曲げ振動する定在波振動モードの内の1つで、突き上げ振動モードの変形状態を表している。図2において、振動体本体の中央部は曲げ振動の変位が最も大きい(振動振幅が最も大きい)部分であり、この部分を振動の腹と呼ぶ。また、図2に示すL1,L2の部分は振動の変位がほとんどゼロの部分であり、これらの部分を振動の節と一般に呼ばれる。節が点で存在する場合には節点とも呼ぶ。尚、本実施例のように矩形板の振動では、節が点で存在するのではなく線状に形成されているので、本発明においてはこれらの節を特に節線と呼ぶ(振動板が円板の場合、半径方向に形成される節線は、同心円状になるので、この場合は節円と呼ぶ)。
また、図3には振動体本体に形成されるもう1つの定在波振動モードを示しており、ここに示した節線L3〜L5は前記L1,L2とは直交する方向に形成される。
これらの2つの振動モードを時間的な位相差π/2をもって重ね合わせると、前記摩擦接触部突起(20−2、20−3)に楕円運動が発生する。
これにより、前記被駆動体との接触部に摩擦駆動力が発生するため、この振動子22およびこれに接続するホルダー24等は、被駆動体25に対して相対的に駆動される。
このように、本実施例のリニア超音波モータは、圧電素子と接触部材とを有する振動子の上記楕円運動によって、該振動子の接触部材と接触する被駆動体を駆動するように構成されている。
【0013】
以上のように構成されたリニア超音波モータにおいては、前述したような摩擦駆動をすることにより、しばしば鳴きなどの異音を発生することがある。
これらの鳴き(異音)の原因は、モータ駆動に供する振動モード以外の不要振動モード(本実施例で示した形状では、図6に示すような振動)が発生し、
その不要振動の固有振動数と駆動振動の周波数との差分の周波数が鳴きとして聞こえていることが明らかとなった。
そこで、本実施例では、このような鳴きについての問題を解決するため、この不要振動モードに対して効果的に減衰力を与え、かつ、駆動モードに対しては振動の阻害とならないように、支持部材と振動子との間に振動抑制部材を設けた構成とした。
【0014】
図4はその減衰部材を設置するポイントを示している。
図2の振動モードから明らかなように、2つの駆動モードの共通する振動の節は、図4におけるL1,L2とL3〜L5との交点(Q1〜Q6)であり、6つ存在する。
一方、減衰させたい不要モードは図6および図7に示すように3本の節線(L6〜L8)をもっている。
これらの節線は前記Q1〜Q6のポイントとは厳密には一致しないため、どのポイントに減衰を与えても不要モードに対してそれなりの減衰効果が得られる。
しかし、本実施例では、より効果的に不要振動を減衰せさるために、Q1〜Q6の中で不要モードの振動振幅が最も大きなポイント、Q1,Q2を選択し、振動抑制部材として振動減衰部材23を設置した。
【0015】
図5にはその振動減衰部材23の形状を示している。
図5に示されるように、平板状のベース部に半球状の突起が2つ(P1〜P2)形成された形状をしており、この部材は減衰能が高い材質、例えば弾性を有するゴム(ブチルゴム)や高減衰特性を有するエラストマー等で構成することができる。
また、P1〜P2はそれぞれの位置が前記Q1〜Q2に対応するように成形されている。
この振動減衰部材23を、ホルダー24と振動体22の間に挟み、振動体の圧電素子面の2ポイントに前記P1〜P2が接触するように設置することで、上記したような鳴きを抑制することができ、このような鳴きに対して大きな効果を得ることが可能となる。
【0016】
[実施例2]
実施例2においては、実施例1とは異なる形態によるリニア型の超音波モータの構成例について説明する。
図8に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
本実施例では、振動体が被駆動体であるスライダーに接触して駆動される構成が取られる。
そのため、長いスパンに亙ってこれらが安定した接触状態を保つ必要があることから、イコライズバネ26で支持する構造になっている。
イコライズバネ26は、図中のY方向に対し振動体の自由度を拘束すると共に、X軸回り、Y軸回りおよびZ方向の自由度に関しては、振動体とスライダ間に作用している加圧力に影響を与えないくらい小さな剛性になるように設定されている。
そのため、イコライズバネ26は薄板形状をとることが多く、その影響でこの板バネが有する多くの共振モードに起因する騒音がしばしば発生し、問題となる。
【0017】
このようなことから、本実施例では、振動抑制部材である減衰ゴムの一方の面をイコライズバネに接合し、他面に設けた突起を振動子の前記Q1〜Q6に対応するポイントに当接させる構造とした。
これにより、振動子に発生し、鳴きの原因になる不要モードの発生を押さえるとともに、駆動中にイコライズバネが励振され騒音が発生する現象を無くすことができた。
【0018】
[実施例3]
実施例3として、イコライズバネに振動抑制部材である減衰ゴムが一体成形された構成例について説明する。
図9に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
本実施例の超音波モータは、図9に示されるように、減衰定数が高いブチルゴムをイコライズバネ全体にコーティングされるようにアウトサート成形し、振動子の前記節Q1,Q2の位置には前記突起と同形状のプロジェクションが、同様に一体で成形されている。
このように、イコライズバネ全体をゴムでコーティングすることにより、ゴムとバネとの密着性を高め、バネに与える減衰効果を向上させると共に、信頼性を格段に向上することができるため、より安定した騒音減衰効果を発揮することが可能となる。
【0019】
[実施例4]
実施例4として、前記共通の節点において振動抑制部材を振動体22とスライダー25とを加圧接触させる加圧手段として加圧バネを構成した構成例について説明する。
図10に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
本実施例において、板状の加圧バネ28は両端をキャリッジ等の本体部に固定されて設置され、中央付近に設けられた2つの突起部28−1、28−2が振動体22の圧電素子部に直接接触して振動体に対して加圧力を付与している。
ここで示された2つの突起部28−1、28−2が接触する位置は、前記実施例において減衰部材を接触させていた共通の節Q1,Q2と同位置である。
このように、振動体における共通の節に対し直接加圧部材を接触させて加圧力を付与することにより、従来における加圧により駆動体の振動を拘束するために発生する損失(支持損失)を、極端に小さくし、かつ、不要振動モードのみを抑制することが可能となる。
【0020】
[実施例5]
実施例5として、上記実施例4における加圧部材の突起部が加圧バネと別部材(突起部材29)で構成された構成例について説明する。
図11に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
本実施例においては、上記突起部材29は振動体の圧電素子21と接触する部分が尖った形状になっているため、Q1,Q2部と接触する面積を点に近い状態にできるため、さらに駆動モードに与える影響を小さくすることが可能になる。
【0021】
[実施例6]
実施例6として、加圧突起部29と圧電素子21との間に駆動力発生方向(加圧方向と垂直方向)の結合力をアップさせて、この突起部29を介して駆動力を伝達する構成例について説明する。
図12に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
本実施例においては、圧電素子21のQ1,Q2ポイントに相当する位置には、例えば表面から0.2mmから0.3mm程度の深さに穴部が形成されており、この部分に前記突起部29の先端が係合して設置されている。
このように構成することで、加圧バネ28、突起部29により駆動振動モードに影響を与えないで加圧力を付与すると共に、これらの部材を介して駆動力をキャリッジ等の本体に伝達することが可能になり、構造も簡素化することができる。
【0022】
[実施例7]
実施例7として、振動抑制部材を、振動子と被駆動体との間に発生させる駆動力の伝達部材で構成した構成例について説明する。
図13に、本実施例における超音波モータの構成例を説明する断面図を示す。
本実施例では、振動子に接合されている圧電素子21には給電部材31(フレキシブルプリント基板等:以降フレキと称す)が接合されており、その一部が両側の固定部材にビス33で固定されている。
この固定部材にはフレキを位置決めするための位置決めピン34が設けられているため、フレキに接合された振動子は固定部材に対して精度良く位置が決められている。
また、このフレキの背面には加圧バネ32が設置されており、このバネの半球状の先端は振動子の前記駆動モードの共通の節であるQ1,Q2を所定の力で加圧するように設定されている。
【0023】
ここにおいて、前記フレキ31はベースがポリイミド等の薄い樹脂材で形成されており、振動子の加圧方向(Z方向)に対しては非常に剛性が小さいため、スライダー25の摺動面に対してはならい機能を有している。
一方、駆動方向(X方向)に対してはフレキの幅を大きくとり、形状的に曲げ剛性が高くなるよう設計されているので、駆動力を効果的に伝達できるように設定している。
このため、このフレキは給電部材としての機能を有すると同時に振動子の支持機構と出力伝達機能も兼ねた構造となっている。
【0024】
以上に説明したように、本発明においては、駆動に供する複数の定在波振動の共通の節のうち、不要振動の振動振幅が大きい個所に、前記振動抑制部材を当接させている。
すなわち、駆動モード共通の節であり、かつ鳴き等の原因となる不要モードの振動の腹(振動振幅が大きいポイント)に、振動抑制部材として減衰部材、または加圧部材等を当接させることにより、不要モードのみ減衰させる構造を実現するものである。
これによって、モータの効率を低下させることも無く、効果的に鳴きなどの騒音を低減することが可能となる。
なお、上記各実施例の説明では、減衰部材のプロジェクションの形状を半球状としていたが、振動子の節に対してなるべく小さい面積で接触できる形状であれば、このような形状に限定されるものではない。例えば、円錐状の形状でもよいことは言うまでもない。
また、同様に加圧部材の接触部(28−1,28−2)や29の先端についても、半球状、円錐状に限られるものではなく、先端が尖った形状で、接触面積が極力小さく構成できる形状であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図2】本発明の実施例1の超音波モータにおける振動モードを説明する図。
【図3】本発明の実施例1の超音波モータにおける振動モードを説明する図。
【図4】本発明の実施例1の超音波モータにおける減衰部材を設置するポイントについて説明する図。
【図5】本発明の実施例1の超音波モータにおける減衰ゴムの構成について説明する図。
【図6】本発明の実施例1の超音波モータにおける減衰させたい不要モードについて説明する図。
【図7】本発明の実施例1の超音波モータにおける減衰させたい不要モードについて説明する図。
【図8】本発明の実施例2における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図9】本発明の実施例3における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図10】本発明の実施例4における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図11】本発明の実施例5における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図12】本発明の実施例6における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図13】本発明の実施例7における超音波モータの構成例を説明する断面図。
【図14】従来例の特許文献1における超音波モータについて説明する図。
【図15】従来例の特許文献2における超音波モータについて説明する図。
【符号の説明】
【0026】
20:振動板
21:圧電素子
22:振動子(振動体)
23:振動減衰部材
24:ホルダー
25:被駆動体(スライダー)
26:イコライズバネ
27:減衰ゴムコーティング部
28:加圧バネ
29:突起部
31:給電部材(フレキ)
32:加圧バネ
33:固定ビス
34:位置決めピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の定在波振動の合成によって楕円運動が形成可能に構成された振動子と、該振動子を支持する支持部材を備え、
前記振動子は少なくとも圧電素子と接触部材とからなり、前記振動子の楕円運動によって、該振動子の接触部材と接触する被駆動体を駆動する振動波駆動装置であって、
該振動波駆動装置には振動抑制部材が備えられており、該振動子に励振される前記複数の定在波振動における節円または節線が含まれるそれぞれの節がお互いに交差し重なり合う共通の節の内、
該振動子の支持部分と異なる節に対して前記振動抑制部材が当接するよう設けられた構造を備えていることを特徴とする振動波駆動装置。
【請求項2】
前記振動抑制部材は、振動減衰部材によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置。
【請求項3】
前記振動減衰部材は、前記振動子と接触する部分がほぼ点に近い状態で接触する形状を備えていることを特徴とする請求項2に記載の振動波駆動装置。
【請求項4】
前記振動減衰部材の前記振動子と接触する部分は、半球状または円錐状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の振動波駆動装置。
【請求項5】
前記振動減衰部材は、弾性を有するゴムまたは高減衰特性を有するエラストマーで構成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の振動波駆動装置。
【請求項6】
前記振動抑制部材は、前記振動子と前記被駆動体とを加圧接触させる加圧手段で構成されていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の振動波駆動装置。
【請求項7】
前記振動抑制部材は、前記振動子と前記被駆動体との間に発生させる駆動力の伝達部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置。
【請求項1】
複数の定在波振動の合成によって楕円運動が形成可能に構成された振動子と、該振動子を支持する支持部材を備え、
前記振動子は少なくとも圧電素子と接触部材とからなり、前記振動子の楕円運動によって、該振動子の接触部材と接触する被駆動体を駆動する振動波駆動装置であって、
該振動波駆動装置には振動抑制部材が備えられており、該振動子に励振される前記複数の定在波振動における節円または節線が含まれるそれぞれの節がお互いに交差し重なり合う共通の節の内、
該振動子の支持部分と異なる節に対して前記振動抑制部材が当接するよう設けられた構造を備えていることを特徴とする振動波駆動装置。
【請求項2】
前記振動抑制部材は、振動減衰部材によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置。
【請求項3】
前記振動減衰部材は、前記振動子と接触する部分がほぼ点に近い状態で接触する形状を備えていることを特徴とする請求項2に記載の振動波駆動装置。
【請求項4】
前記振動減衰部材の前記振動子と接触する部分は、半球状または円錐状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の振動波駆動装置。
【請求項5】
前記振動減衰部材は、弾性を有するゴムまたは高減衰特性を有するエラストマーで構成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の振動波駆動装置。
【請求項6】
前記振動抑制部材は、前記振動子と前記被駆動体とを加圧接触させる加圧手段で構成されていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の振動波駆動装置。
【請求項7】
前記振動抑制部材は、前記振動子と前記被駆動体との間に発生させる駆動力の伝達部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−158127(P2010−158127A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335545(P2008−335545)
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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