説明

振動減衰体及び振動減衰配管

【課題】配管に取付けられた制振具の重量より、制振具が取付けられている部位の配管の重量が十分に重い場合は、制振具の振動速度分の衝突や摺動によるエネルギー吸収しか期待できず、十分な減衰効果が得られない従来の課題を解決し、振動減衰体の重量が軽量であっても、配管の振動を効果的に減衰することができる振動減衰体を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の素線11、12と、複数の素線11、12が互いに接触する接触部20と、複数の素線11、12が互いに離間した間隙部21と、を有し、接触部20と間隙部21とが交互に配置された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントや給湯機、エアコン等の配管に取付け、その配管の振動を減衰する振動減衰体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラントや給湯機やエアコン等の配管の振動を減衰するためには、ブチルゴムなどの粘弾性を有する素材を用いた減衰材を取付けることが公知である。この粘弾性素材を用いた減衰材は、常温では高い振動減衰性能を有する。このため、配管が振動した場合、減衰材が振動し、内部でせん断変形することで、振動エネルギーを熱に変換し、振動を低減することが可能である。
【0003】
しかしながら、配管の温度が零下となる場合や、高温となる場合ではその減衰性能が低下するだけではなく、変形して外れてしまう可能性があるため使用することができない。また、配管の外周前面に対して設置した場合、多大な労力が必要となるだけでなく、重量増加による配管強度など追加コストが必要となる問題があった。そのため、これに対し、特許文献1の制振構造が提案されている。
【0004】
特許文献1の制振構造は、管の表面にらせん状に巻き付けられ得る線状体に対し、挿通孔(通し穴)のある複数の粒子を数珠状に通している制振具を用い、管の表面に線状体をらせん状に巻き付けるとともに、間隔保持手段によりその線状体を、巻付けピッチ(またはリード)の変化がないように保つように、この制振具を管の表面上にらせん状に巻き付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−204861号公報(0016段、0026段、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の制振構造は、粒子が配管(管)の表面に接触し、かつ配管に対して相対変位し得るように行うものである。配管が振動した場合、その表面(外面または内面)に巻かれた制振具と振動する配管の間で微小な衝突や摺動が発生し、振動エネルギーを熱エネルギーの変換することで振動を低減するとしているものの、取付けられた制振具の重量より、制振具が取付けられている部位の配管の重量が十分に重い場合は、制振具の振動速度分の衝突や摺動によるエネルギー吸収しか期待できない。
【0007】
通常、取付けられた制振具の重量より、制振具が取付けられている部位の配管の重量が十分に重いと考えられる。特許文献1の実験では、配管の重量は4.6kgであり、制振具の重量は0.7kg〜1.3kgであった。このような場合、制振具の振動速度と比較して配管の振動速度が十分に小さくなるため、制振具と配管間の相対的な速度は、ほぼ制振具の振動速度と一致する。そのため、制振具の振動速度分の衝突や摺動によるエネルギー吸収しか期待できない。
【0008】
特許文献1の制振構造において、より高い減衰効果を得るためには、制振具の取り付け量を増加させる必要がある。しかしながら、制振具と配管の重さが近い場合には、重量の大幅な増加や取付け作業が困難になり、作業人数の増加や作業時間の増加する問題があっ
た。また、制振具の衝突により、管に損傷を与える可能性が生じる問題があった。これらの問題は、衝突や摺動が発生する場所が、制振具と配管間のみであることに起因して、制振具の取り付け量を増加させる必要があったからである。
【0009】
本発明は、振動減衰体の重量が軽量であっても、配管の振動を効果的に減衰することができる振動減衰体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る振動減衰体は、複数の素線と、複数の素線が互いに接触する接触部と、複数の素線が互いに離間した間隙部と、を有し、接触部と間隙部とが交互に配置されたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接触部と間隙部を有するので、配管が振動した場合、配管の振動を減衰する振動減衰体と配管との間での振動減衰に加えて、振動減衰体内での振動減衰が行われ、これにより重量が軽量でありながら、配管の振動を効果的に減衰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1による振動減衰体を示す図である。
【図2】図1の振動減衰体を配管へ取付けた振動減衰配管を示す図である。
【図3】図1の振動減衰体の作用を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態1による振動減衰体と比較例における試験条件及び結果を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1による振動減衰体と比較例における振動伝達特性を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2による振動減衰体を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3による振動減衰体を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態4による振動減衰体を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態5による振動減衰体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による振動減衰体を示す図である。図1(a)は横方向から見た図であり、図1(b)はA−Aにおける断面図であり、図1(c)はB−Bにおける断面図である。図2は本発明の実施の形態1による振動減衰体を配管へ取付けた状態の図であり、振動減衰配管を示す図である。振動減衰体1は、少なくとも2本の素線11、素線12を縒ったものであり、素線11と素線12とが接触する接触部20と、素線11と素線12とが接触しないように(離間するように)間隙を設けた間隙部21を有するものである。図1に示した振動減衰体1は、2本の素線11、12を互いに縒り合わせて、接触部20と間隙部21とが交互に配置するようにした例である。図1(b)のA−A断面図は接触部20の断面を示し、図1(c)のB−B断面図は間隙部21を示している。図1(c)において素線11と素線12との間隙長はbである。振動減衰配管2は、配管3に振動減衰体1を取付けたものである。
【0014】
図3を用いて振動減衰体1の作用を説明する。図3は、本発明の実施の形態1による振動減衰体の作用を説明する図である。図3(a)は素線の動きを説明する側面図であり、図3(b)は素線間における摺動を説明するC−C断面図であり、図3(c)は素線間における衝突を説明するD−D断面図である。図3(a)に示すように、配管3が振動した場合、配管3に巻きつけられた振動減衰部体1全体や振動減衰部体1を構成する素線11(12)が接触部22において配管表面31に衝突したり、振動減衰部体1全体や素線1
1(12)が配管表面31を摺動したりする。また、これに加えて、振動減衰部体1を構成する素線11や素線12も振動する。例えば、図3(a)に示すように、素線11が点線で示した素線111で示す位置まで振動した場合、図3(b)に示すように、素線11が素線12に対して摺動し素線111の位置まで移動する、すなわち、C−C断面では矢印に示すように素線11と素線12の間で摺動する。図3(c)に示すように、素線11が素線12に対して素線111の位置まで移動し衝突する、すなわち、D−D断面では矢印に示すように素線11と素線12の間で衝突及び跳ね返りが起こる。
【0015】
以上のように、本発明の実施の形態1による振動減衰体1によれば、配管3が振動した場合、振動減衰部体1と配管3との間で摺動や衝突が起こることにより、振動エネルギーを熱エネルギーに変換することで振動を減衰するだけでなく、振動減衰部体1を構成する素線11と素線12との間でも摺動と衝突が発生するため、振動減衰部体1と配管3間、及び素線11と素線12間において振動エネルギーを熱エネルギーに変換することで振動を減衰するので、高い振動減衰効果を得ることが可能である。
【0016】
この素線間での摺動と衝突の効果を確認するため、配管3の制振仕様を変更して振動減衰効果を計測した。配管3には空調機の冷媒用銅配管を使用し、素線にははんだを用いた。素線を取付ける配管部位・配管長は一定とした。また、配管制振仕様間で素線は同一径とした。実施例及び比較例の試験条件及び試験結果を図4に示す。図4は本発明の実施の形態1による振動減衰体と比較例における試験条件及び結果を示す図である。図5は本発明の実施の形態1による振動減衰体と比較例における配管の振動加速度の周波数応答関数を示す図である。比較例1は、素線を巻いていない配管のみの場合である。比較例2は、素線長比が1であり、素線数は1である。比較例3の素線長比が2であり、すなわち、比較例3の素線長は比較例2の素線長の2倍であり、比較例3の素線数は1である。つまり、比較例3の素線の巻き数は比較例2の約2倍であり、比較例3の付加重量(素線の重量)は比較例2の付加重量(1.3kg)の倍である2.6kgとなっている。なお、素線長比は、基準となる素線長との比である。実施例1の素線長比は1であり、実施例1の素線数は2である。実施例1は、比較例2で使用したものと同じ長さの素線を2本縒ったものである。そのため、実施例1の付加重量は、比較例3と同じ重量となっている。
【0017】
図5は、本発明の実施の形態1による振動減衰体と比較例における振動伝達特性を示す図である。横軸は配管を加振する加振力の周波数であり、縦軸は加振力に対する配管の振動加速度(振動伝達特性)である。特性41は比較例1の振動伝達特性であり、特性42は比較例2の振動伝達特性であり、特性43は比較例3の振動伝達特性である。特性44は、実施例1の振動伝達特性である。
【0018】
配管制振仕様ごとの振動伝達特性を説明する。図4および図5に示すように、比較例1、すなわち、基準となる配管のみの場合、振動伝達特性のピーク値は52.5(m/s)/Nである。これに対して、比較例2、すなわち、素線1.3gを配管に取付けた場合は、振動伝達特性のピーク値が42.8(m/s)/Nまで低下した。また、比較例3、すなわち、素線2.6gを配管に取付けた場合は、振動伝達特性のピーク値が38.7(m/s)/Nまで低下した。ここで、振動伝達特性のピーク値の減少量を振動減衰量とする。比較例2の振動減衰量は、9.7(52.5−42.8)(m/s)/Nであり、比較例3の振動減衰量は、13.8(52.5−38.7)(m/s)/Nである。比較例2と比較例3を比較すると、比較例3の振動減衰量の方が、比較例2の振動減衰量より大きいことが分かる。これの要因として、比較例3の巻き数および重量が、比較例2より大きいことが挙げられる。
【0019】
これに対して、実施例1の振動減衰量は、29.9(52.5−22.6)(m/s)/Nであり、比較例2及び比較例3よりも少なくなっている。実施例1の振動減衰量は、比較例3の振動減衰量より大きい。実施例1は、比較例3と同一の重量であるが、比較例3とは巻き数及び巻き数が異なる。実施例1の振動減衰量が、比較例3の振動減衰量よりも少なくなっているのは、配管に付加する付加重量ではない、振動減衰体の構造の違いである。比較例2は、比較例1に比べて配管への巻き数を増加することで、配管と振動減衰体となる1本の素線との間の摺動や衝突も増加する。実施例1の配管への巻き数は、比較例1と同じであり、すなわち比較例3の1/2である。
【0020】
ここで、振動減衰量の主要因を理解するために、単純化して考える。振動減衰量は、主として、配管と振動減衰体との間の摺動や衝突による振動エネルギーの消散による減衰量1と、振動減衰体を構成する素線間の摺動や衝突による振動エネルギーの消散による減衰量2とからなっている。振動減衰量の成分を、減衰量1と減衰量2のみからなるとし、減衰量1をxとし、減衰量2をyとする。比較例3は、実施例1と比べて、素線長比が2倍あり、素線間の摺動や衝突は発生しないので、数式(1)のように表すことができる。実施例1は、比較例1と比べて、素線長比が1/2倍あり、素線間の摺動や衝突が発生するので、数式(2)のように表すことができる。
2×x+0×y=13.8 ・・・(1)
1×x+1×y=29.9 ・・・(2)
上記(1)式及び(2)式を計算すると、x=6.9、y=23.0を得る。
【0021】
上記の計算結果より、配管と振動減衰体との間の摺動や衝突による振動エネルギーの消散(減衰量1による消散)よりも、振動減衰体を構成する素線間での摺動や衝突による振動エネルギーの消散(減衰量2による消散)の方が効果的であることが分かる。また、振動減衰体を構成する素線間の摺動や衝突による振動エネルギーの消散による減衰量2は、配管と振動減衰体との間の摺動や衝突による振動エネルギーの消散による減衰量1よりも3倍程度の大きさであるとの実験結果であり、減衰量2による減衰効果は減衰量1による減衰効果よりも少なくとも2倍の効果はあると考えられる。
【0022】
したがって、実施の形態1の振動減衰体1は、配管と振動減衰体との間の摺動や衝突による振動エネルギーの消散による減衰量1による減衰効果と、減衰量1よりも大きな減衰量、すなわち、振動減衰体を構成する素線間の摺動や衝突による振動エネルギーの消散による減衰量2による減衰効果を発揮するので、比較例2や比較例3よりも配管の振動を効果的に減衰することができる。
【0023】
本試験では素線の材質にはんだを用いたが、先の課題に記載したとおり、素線の材料は取り付ける配管の使用温度や環境で著しく特性が悪化しない材料を用いるのが望ましいことから、使用温度や環境に応じて材料を変えてもよい。
【0024】
以上のように、実施の形態1の振動減衰体1は、複数の素線11、12と、複数の素線11、12が互いに接触する接触部20と、複数の素線11、12が互いに離間した間隙部21と、を有し、接触部20と間隙部21とが交互に配置されたので、配管が振動した場合、配管の振動を減衰する振動減衰体と配管との間での振動減衰に加えて、振動減衰体内での振動減衰が行われ、これにより重量が軽量でありながら、配管の振動を効果的に減衰することができる。
【0025】
また、実施の形態1の振動減衰配管2は、配管3と、配管3に接触するように配置された振動減衰体1と、を備え、振動減衰体1は、複数の素線11、12と、複数の素線11、12が互いに接触する接触部20と、複数の素線11、12が互いに離間した間隙部21と、を有し、接触部20と間隙部21とが交互に配置されたので、配管が振動した場合、配管の振動を減衰する振動減衰体と配管との間での振動減衰に加えて、振動減衰体内での振動減衰が行われ、これにより振動減衰配管の重量が軽量でありながら、配管の振動を効果的に減衰することができる。
【0026】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2による振動減衰体を示す図である。図6に示すように、実施の形態2による振動減衰体1(1b)は、素線11(11b)と素線12(12b)との間の間隙長bを調整し、複数の間隙長bを有するようにしたものである。図6の例では、複数の間隙長bを有する基本区間Sが周期Pで、周期的に繰り返す構成になっている。基本区間Sは、6つの小区間s1、s2、s3、s4、s5、s6を有している。小区間の境界部は、素線11(11b)と素線12(12b)とが接触する接触部である。小区間の中央部は、素線11(11b)と素線12(12b)とが接触しないように間隙を設けた間隙部である。なお、基本区間Sにおいて、その小区間の間隙長bが全て異なる場合であっても、その小区間の間隙長bが同じものがある場合であっても構わない。
【0027】
実施の形態2の振動減衰体1(1b)によれば、振動減衰体1(1b)の局所的な部位(小区間)ごとの剛性に差異が生じるため、部位ごとに素線が振動しやすい周波数が変化する。すなわち、振動伝達特性において、剛性に対応したピーク周波数を有する特性が複数重なり合ったものにすることができ、広い周波数範囲で小さな振動伝達特性値(大きな振動減衰となる振動伝達特性値)を得ることができる。そのため、配管3の振動に周波数分布を有する場合にも、効果的に配管3の振動を減衰することが可能である。
【0028】
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3による振動減衰体を示す図である。図7(a)は振動減衰体1(1c)を横方向から見た図であり、図7(b)はE−Eにおける断面において振動減衰体1(1c)の作用を説明する図である。図7に示すように、素線11(11c)の径は、素線12(12c)の径より小さくしている。
【0029】
実施の形態3の振動減衰体1(1c)によれば、素線ごとに質量や剛性の違うため、図7(b)に示すように、径の大きな素線12(12c)と径の小さな素線11(11c)で振動レベルが異なる。素線12(12c)は、素線12(12c)の中心線15を中心に振動する。図7(b)において、断面18は素線12(12c)が最も上側に移動した場合の断面であり、断面19は素線12(12c)が最も下側に移動した場合の断面である。移動範囲L1は、断面18における最上点と断面19における最下点との距離である。
【0030】
素線11(11c)は、素線11(11c)の中心線14を中心に振動する。図7(b)において、断面16は素線11(11c)が最も上側に移動した場合の断面であり、断面17は素線11(11c)が最も下側に移動した場合の断面である。移動範囲L2は、断面16における最上点と断面17における最下点との距離である。
【0031】
実施の形態3の振動減衰体1(1c)によれば、素線ごとに振動レベルが異なり、これによって素線が振動した際に、実施の形態1や実施の形態2に比べて素線間の摺動や衝突が発生しやすくなり、実施の形態1や実施の形態2よりも効率的に配管3の振動を減衰することが可能である。
【0032】
なお、素線ごとに振動レベルを変化させるために、素線ごとの径が異なる例で説明したが、これに限ることはなく、例えば素線ごとの材質を変化させてもよい。このような構成であっても、素線ごとの質量や剛性の違いから素線ごとに振動レベルが異なり、これによって素線が振動した際に、実施の形態1や実施の形態2に比べて素線間の摺動や衝突が発生しやすくなるため、実施の形態1や実施の形態2よりも効率的に配管3の振動を減衰することが可能である。
【0033】
実施の形態4.
図8は、本発明の実施の形態4による振動減衰体を示す図である。図8に示した振動減衰体1(1d)は、3本の素線11(11d)、12(12d)、13を互いに縒り合わせて、接触部20と間隙部21とが交互に配置するようにした例である。図8(a)は振動減衰体1(1d)を横方向から見た図であり、図8(b)はF−Fにおける断面図である。実施の形態4による振動減衰体1(1d)は、実施の形態1の振動減衰体1(a)とは、素線13がさらに追加され、素線が3本である点で異なる。振動減衰体1(1d)は、図8に示すように、素線11(11d)と素線12(12d)と素線13の3本の素線を有する。
【0034】
実施の形態4による振動減衰体1(1d)によれば、素線の数が増加したことにより、実施の形態1と比べて素線間の衝突の回数が増加するため、実施の形態1よりも効果的に配管3の振動を低減することが可能である。
【0035】
実施の形態5
図9は本発明の実施の形態5の振動減衰体を示す図である。図9に示すように、実施の形態5の振動減衰体1(1e)は、2本の素線11(11e)及び素線12(12e)を縒り合わせた基本振動減衰体が、配管3が振動する際に、互いに接触可能に隣接して配置したものである。図9の例では4つの基本振動減衰体g1、g2、g3、g4がある。基本振動減衰体g1と基本振動減衰体g2が隣接し、基本振動減衰体g2と基本振動減衰体g3が隣接し、基本振動減衰体g3と基本振動減衰体g4が隣接するように配置している。
【0036】
実施の形態5による振動減衰体1(1e)は、基本振動減衰体を構成する2本の素線間の接触部20と間隙部21(図1参照)以外に、基本振動減衰体間において接触部を増やすことができる。すなわち、振動減衰体1(1e)が振動する際に、基本振動減衰体g1と基本振動減衰体g2が接触したり、基本振動減衰体g2と基本振動減衰体g3が接触したり、基本振動減衰体g3と基本振動減衰体g4が接触したりする。したがって、実施の形態5の振動減衰体1(1e)は、実施の形態1に比べて、素線間の接触部を多数有する。したがって、実施の形態5の振動減衰体1(1e)は、実施の形態1に比べて、多数の素線間の接触部を有するので、実施の形態1よりも単位時間当たりの素線間の衝突の回数を増加させることができる。
【0037】
実施の形態5による振動減衰体1(1e)によれば、多数の素線間の接触部を有し、単位時間当たりの素線間の衝突の回数が増加するので、実施の形態1よりも効果的に配管3の振動を低減することが可能である。
【0038】
なお、2本の素線11(11e)及び素線12(12e)を縒り合わせた基本振動減衰体が隣接するように配置した例で説明したが、これに限ることはなく、例えば、配管表面31に対して上側に素線を折り曲げて、上側に重ねて取付けてもよい。また、素線間の接触部を増やし、結果として衝突の回数を増加させるために、複数回巻いて取付けてもよい。すなわち、配管表面31に対して上側に基本振動減衰体を複数段配置し(基本振動減衰体層を構成し)、これらを配管3の周方向に複数の基本振動減衰体を隣接させてもよいし、配管3の周方向に複数の基本振動減衰体を隣接させて配置した基本振動減衰体層を、配管表面31に対して上側に複数重ねて配置してもよい。
【0039】
なお、実施の形態1乃至5における内容は、矛盾しない範囲で組み合わせて適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1、1a、1b、1c、1d、1e…振動減衰体、2…振動減衰配管、3…配管、11、11a、11b、11c、11d、11e…素線、12、12a、12b、12c、12d、12e…素線、13…素線、20…接触部、21…間隙部、S…基本区間、s1、s2、s3、s4、s5、s6…小区間、g1、g2、g3、g4…基本振動減衰体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に接触するように配置され、前記配管の振動を減衰する振動減衰体であって、
複数の素線と、前記複数の素線が互いに接触する接触部と、前記複数の素線が互いに離間した間隙部と、を有し、
前記接触部と前記間隙部とが交互に配置されたことを特徴とする振動減衰体。
【請求項2】
前記複数の素線は互いに縒り合わせられたことを特徴とする請求項1記載の振動減衰体。
【請求項3】
複数の前記接触部及び複数の前記間隙部からなる基本区間を有し、
前記基本区間は周期的に配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の振動減衰体。
【請求項4】
前記基本区間は、隣接する2つの前記接触部の間で区切られた小区間を複数有し、
前記小区間は前記間隙部を有し、
前記基本区間は、間隙長の異なる前記間隙部を含むことを特徴とする請求項3記載の振動減衰体。
【請求項5】
前記複数の素線は、径の異なる素線を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の振動減衰体。
【請求項6】
前記複数の素線は、材質の異なる素線を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の振動減衰体。
【請求項7】
複数の前記接触部及び複数の前記間隙部からなる基本振動減衰体を複数有し、
前記基本振動減衰体は、前記配管が振動する際に、互いに接触可能に隣接して配置されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の振動減衰体。
【請求項8】
配管と、前記配管に接触するように配置された振動減衰体と、を備え、
前記振動減衰体は請求項1乃至7のいずれか1項に記載の振動減衰体であることを特徴とする振動減衰配管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−184779(P2012−184779A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46281(P2011−46281)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】