説明

挿入装置

【課題】一人の医師による操作を実現できる医療用線状体の挿入装置を提供する。
【解決手段】デリバリーワイヤ104を人体131内の血管132へ挿入する挿入装置は、デリバリーワイヤ104を長手軸方向へ移動させる駆動装置1の起動停止を制御する信号を発信するフットスイッチ41,46を備える。また挿入装置は、デリバリーワイヤ104に作用する長手軸方向の圧縮力を計測する挿入力センサ60と、挿入力センサ60で計測された圧縮力を術者に通報するスピーカ92および表示器93とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用線状体を体内の管へ挿入する挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、カテーテルを使用した治療などの、低侵襲の外科手術が行われている。カテーテルを使用した治療には、たとえば、コイル塞栓術治療が挙げられる。コイル塞栓術治療とは、脳動脈瘤内にコイルを留置して塞栓させ、くも膜下出血の原因である脳動脈瘤の破裂を防止する治療である。図13は、コイル塞栓術治療に用いられる医療器具を示す模式図である。
【0003】
図13に示す医療器具100において、脳動脈瘤133をコイル塞栓させるための白金製のコイル101は、デリバリーワイヤ104の先頭に接続されている。デリバリーワイヤ104が内部に挿通されるカテーテルは、親カテーテル103を外管とし、子カテーテル102を内管とする、二重管カテーテルである。子カテーテル102は中空であり、デリバリーワイヤ104は子カテーテル102の中空部に挿入される。デリバリーワイヤ104はYコネクタ121に挿入され、子カテーテル102はYコネクタ111に挿入されている。
【0004】
Yコネクタ121の入り口付近の把持部106において、医師がデリバリーワイヤ104を操作する。Yコネクタ111の入り口付近の把持部105において、他の医師がカテーテル102を操作する。つまり、Yコネクタ111,121の入り口付近において、二人の医師がそれぞれデリバリーワイヤ104と子カテーテル102とを操作する。
【0005】
Yコネクタ111,121には3つの接続ポートがある。1つはカテーテルの接続ポート、他の1つはカテーテルやデリバリーワイヤなどの線状体を挿入するポート、他の1つは生理食塩水や薬剤の入力ポート112,122である。
【0006】
親カテーテル103は、人体131の血管132内に挿入されており、先端が脳動脈瘤133の近傍部まで達している。子カテーテル102は、親カテーテル103の内部に挿入されており、親カテーテル103の先端から脳動脈瘤133の内部へ進められる。脳動脈瘤133の内部に到達した子カテーテル102からコイル101が押し出され、細くやわらかいコイル101が脳動脈瘤133に詰められる。これにより、脳動脈瘤133の破裂を防止する。
【0007】
図14は、コイル塞栓術治療の手順を示す流れ図である。コイル塞栓術治療は、一般に図14に示す手順で行なわれる。まず工程(S10)において、大腿部の動脈に、二重管構造の二本のカテーテル(親カテーテル103および子カテーテル102)と、カテーテルを目的部位にまで導くために使用されるガイドワイヤとを挿入する。子カテーテル102は親カテーテル103の中に挿入され、ガイドワイヤは子カテーテル102の中に挿入されている。次に工程(S20)において、子カテーテル102の先端がガイドワイヤによって誘導されて、脳動脈瘤133の中におかれる。
【0008】
次に工程(S30)において、ガイドワイヤを子カテーテル102から引き抜く。続いて工程(S40)において、先端に白金製のコイル101のついたデリバリーワイヤ104を、ガイドワイヤに代って、子カテーテル102の中に挿入する。
【0009】
次に工程(S50)において、コイル101を脳動脈瘤133内に留置する。その後工程(S60)において、デリバリーワイヤ104に電極を接続し、人体131に予め穿刺した針にも電極を接続して、その後、これら電極を介してデリバリーワイヤ104と人体131との間に電流を流す。コイル101とデリバリーワイヤ104とは、電気分解する材料で接続されているので、通電によってコイル101とデリバリーワイヤ104は分離され、その結果、コイル101が脳動脈瘤133内に留置される。
【0010】
次に工程(S70)において、デリバリーワイヤ104を子カテーテル102から引き抜く。その後工程(S80)において、コイル101が脳動脈瘤133内に密に充填されたか否かを判断する。脳動脈瘤133内がコイル101で密に充填されていないと判断されれば、工程(S40)に戻って、別のコイル101のついたデリバリーワイヤ104を子カテーテル102の中に挿入する。コイル101が脳動脈瘤133内に密に充填されるまで、工程(S40)〜(S70)を繰り返す。
【0011】
脳動脈瘤133内がコイル101で密に充填されたと判断されれば、次に工程(S90)において、親カテーテル103および子カテーテル102を人体131から引き抜く。このようにして、脳動脈瘤133のコイル塞栓術治療が完了する。
【0012】
図15は、コイルを脳動脈瘤内に留置するときのカテーテル操作について示す模式図である。図15(a)に示すように、デリバリーワイヤ104の先端に接続されたコイル101を脳動脈瘤133内へ留置して脳動脈瘤133を塞栓させるとき、脳動脈瘤133の内部でコイル101が偏在して、子カテーテル102先端部近傍のコイル101密度が大きくなる場合がある。子カテーテル102の先端部がコイル密度大領域134内にあると、脳動脈瘤133内へのコイル101の挿入抵抗が大きくなる。
【0013】
挿入抵抗が大きい状態でデリバリーワイヤ104をさらに血管132内へ挿入すると、血管壁が薄くて脆くなっている脳動脈瘤133に破裂を生じる場合がある。そのため、コイル101の挿入抵抗が大きいことを感知すると、デリバリーワイヤ104を操作する医師は、デリバリーワイヤ104の挿入を一時中止する。
【0014】
また、子カテーテル102を操作する医師は、子カテーテル102を後退させる。つまり、図15(b)に示すように、子カテーテル102を操作する医師は、血管132から引き抜くDR1方向へ子カテーテル102を移動させる。その後、子カテーテル102を操作する医師は、子カテーテル102を再度前進させる。つまり子カテーテル102を操作する医師は、図15(c)に示すように、血管132内へ挿入するDR2方向へ子カテーテル102を移動させる。
【0015】
子カテーテル102を一旦後退させて再度前進させる操作によって、子カテーテル102の先端部の位置が変わり、子カテーテル102の先端部は、脳動脈瘤133内のコイル密度小領域135内へ移動する。子カテーテル102の先端部近傍におけるコイル101の密度が小さくなると、脳動脈瘤133内へのコイル101の挿入抵抗が小さくなる。この状態で、デリバリーワイヤ104を操作する医師が、デリバリーワイヤ104の挿入、すなわち脳動脈瘤133内へのコイル101の挿入を再開する。
【0016】
このように、カテーテル治療には、カテーテル102,103やデリバリーワイヤ104の操作に微妙なコントロールが必要なために、術者の熟練を必要とする。そこで、カテーテル治療におけるカテーテル102,103やデリバリーワイヤ104の操作性を改善するために、いくつかのマスタースレーブ型の駆動装置が提案されている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2000−42116号公報
【特許文献2】特開2001−157662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、マスタースレーブ型の駆動装置においては、手作業でデリバリーワイヤ104やカテーテル102,103などの線状体を操作する場合とは、要求される操作が異なる。そのため、術者の訓練が新たに必要となる。また、マスタースレーブ装置を用いた場合、患者の拍動や血管132などにおける細かな変化を感じとることが難しい。したがって、術者が線状体を把持して、手作業で線状体を操作する方が好ましい。
【0018】
上述したように、従来のカテーテル治療では、子カテーテル102およびデリバリーワイヤ104をそれぞれ把持する二人の医師が連携して治療を行なっているが、どちらか一人の手技が異なる場合や手技のレベルに差がある場合などでは、十分な連携をとるのに時間がかかることがある。また、連携をとるために医師にストレスがかかることがある。特許文献1に記載の駆動装置では、カテーテルとワイヤに見立てた線状体の操作は上述の従来の手術と変わらないため、線状体を2人の医師で操作する必要があり、この課題を解決する手段は提案されていない。
【0019】
また、マスタスレーブシステムにおいて、操作性を向上させるためのスケール機能に関する別の課題が生じていた。スケール機能は、微細な操作を行なうときにマスタ側の操作量に対するスレーブ側の線状体の移動量の比率を変化させ、人間の扱いやすいスケールにするものである。スケール値をN倍とすれば、マスタ側の操作に対してスレーブ側の移動量はスケール値の逆数の1/N倍となるが、このときにマスタ側の線状体の操作部の長さは、スレーブ側の線状体の移動量のN倍となる。そのため、最大スケール値に比例した長さを持つ操作部を用意する必要があるが、カテーテルおよびワイヤは1mから2mの長さがあるために、このような操作部は非現実的である。さらに、操作される線状体同士は同心で重ねているため、内側の線状体は、外側の線状体がない部分で操作しなくてはならず、操作する2人の医師間の距離がスケール値に比例して長くなることになり、医師間の連携がますます難しくなる。
【0020】
さらに、医療機器の場合、清潔性を維持する必要があり、人体に触れる部分は使い捨てが望ましい。使い捨てのためには安価にしなくてはならないが、部品点数が多いマスタスレーブシステムでは、高価となってしまう。
【0021】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、医療用線状体を体内の管へ挿入する挿入装置であって、一人の医師が操作することができ、安価で使い易い挿入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る挿入装置は、医療用線状体を体内の管へ挿入する挿入装置であって、医療用線状体を長手軸方向へ移動させる駆動装置と、駆動装置の起動停止を制御する信号を発信するフットスイッチと、医療用線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を計測する計測装置と、医療用線状体に作用する圧縮力を術者に通報する圧縮力通報装置とを備える。駆動装置は、回転力発生器と、回転力発生器で発生した回転力によって回転運動を行なう駆動ローラと、駆動ローラの回転に従動して回転運動を行なう従動ローラと、回転力発生器と駆動ローラとの間に介在し、回転力発生器で発生した回転力の回転速度を減じて出力する減速機と、回転力発生器および減速機を内包するケースと、減速機から駆動ローラへ回転力を伝達する回転部とを含む。駆動ローラの回転面と、従動ローラの回転面とによって、医療用線状体が挟持される。ケースには、回転部が貫通する孔部が形成されている。孔部の内周面には、回転部の外周面と接触し、ケースの内部を外部から遮断するシール部が設けられている。
【0023】
医療用線状体は、カテーテル、ガイドワイヤ、塞栓用コイルを先端に取り付けたデリバリーワイヤのいずれかであってもよい。
【0024】
また、フットスイッチは挿入用フットスイッチと引抜用フットスイッチとを含み、駆動装置は、挿入用フットスイッチの操作により医療用線状体を管へ挿入する方向へ移動させるように作動し、引抜用フットスイッチの操作により医療用線状体を管から引抜く方向へ移動させるように作動してもよい。
【0025】
また、計測装置は、医療用線状体の湾曲の度合いを検出するセンサと、センサにより検出される医療用線状体の湾曲の度合いを医療用線状体に作用する圧縮力へ変換する変換回路とを有してもよい。
【0026】
また、圧縮力通報装置は、医療用線状体に作用する圧縮力を表示する視覚化器具と、医療用線状体に作用する圧縮力に対応した音声に変換する聴覚化器具との、少なくともいずれか一方を含んでもよい。
【0027】
また、回転力発生器は電動機であって、電動機の回転数は、電動機に印加される電圧によって制御されてもよい。
【0028】
また、挿入装置は、駆動装置が医療用線状体を移動させる移動速度を調整可能な速度制御部をさらに備えてもよい。
【0029】
また、駆動装置は、1mm/s以上4mm/s以下の移動速度で、医療用線状体を管へ挿入する方向へ移動させてもよい。
【0030】
また、駆動装置は医療用線状体を挿通可能な貫通孔の形成された医療器具を保持するハウジングを含み、ハウジングは手動で開閉可能に設けられた蓋部材を有し、駆動装置は蓋部材に取り付けられた弾性体をさらに含み、蓋部材には開閉を操作するレバーが設けられており、蓋部材を閉めると弾性体が蓋部材を押圧する弾性力によってレバーは押止され、レバーを弾性変形させて蓋部材を開けてもよい。
【0031】
駆動ローラおよび従動ローラの回転面は、弾性材料で形成されていてもよい。
駆動ローラおよび従動ローラの少なくともいずれか一方の回転面には溝部が形成されており、医療用線状体は溝部の内側に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の挿入装置によると、術者が手で医療用線状体を把持して手作業で医療用線状体を操作できるとともに、足でフットスイッチを操作することにより医療用線状体の長手軸方向への移動および停止を制御できるので、一人の医師による医療用線状体の操作を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0034】
なお、以下に説明する実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下の実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、上記個数などは例示であり、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0035】
図1は、本発明の一実施の形態に係る、デリバリーワイヤを血管へ挿入する挿入装置の構成を示す模式図である。図1を参照して、コイル塞栓術治療に用いられる、カテーテル102,103内に挿通されたデリバリーワイヤ104を体内の血管132へ挿入する挿入装置について説明する。
【0036】
図1に示すように、医療用線状体としてのデリバリーワイヤ104は、Yコネクタ31に挿入されている。デリバリーワイヤ104の先頭には、脳動脈瘤133をコイル塞栓させるための、白金製のコイル101が接続されている。デリバリーワイヤ104は、第一の入力ポート32からYコネクタ31に挿入され、Yコネクタ31を貫通して、出力ポート34に接続された子カテーテル102の中へ挿入されている。なお、Yコネクタ31の出力ポート34から人体131の内部に至るまでの挿入装置の構成は、図13に示す従来の医療器具100と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0037】
挿入装置は、デリバリーワイヤ104を長手軸方向へ移動させる駆動装置1を備える。駆動装置1は、駆動ローラ5と従動ローラ6とを備える。デリバリーワイヤ104は、駆動ローラ5の回転面と従動ローラ6の回転面とによって挟持されるとともに、駆動ローラ5の回転を受けて長手軸方向に移動する。駆動装置1によるデリバリーワイヤ104の長手軸方向の移動は、制御回路40によって制御される。制御回路40には、配線42によって挿入用フットスイッチ41が電気的に接続されており、また配線47によって引抜用フットスイッチ46が電気的に接続されている。
【0038】
図2は、医療用線状体の駆動装置の断面模式図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿う駆動装置の部分断面模式図である。図4は、図2に示すIV−IV線に沿う駆動装置の断面模式図である。図5は、図2〜図4に示す駆動装置の側面図である。図2〜図5を参照して、医療用線状体(デリバリーワイヤ104)の駆動装置1の構成を説明する。なお図2は、図5に示すII−II線に沿う駆動装置の断面図である。
【0039】
図2〜図5に示すように、駆動装置1は、ハウジング2を備える。ハウジング2は、蝶番11を支軸として回転移動することにより開閉可能に設けられた、蓋部材10を有する。ハウジング2と蓋部材10とによって囲まれるように形成された駆動装置1の内部空間内には、隔壁16が設けられている。隔壁16によって、駆動装置1の内部空間は、第一空間である大室2aと第二空間である小室2bとに仕切られている。小室2b内には、回転力発生器としてのモータ3と、モータ3で発生した回転力の回転速度を減じて出力する減速機9とが配置されている。モータ3は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変える電動機である。
【0040】
隔壁16には、隔壁16を厚み方向に貫通する孔部16aが形成されている。孔部16aを貫通するように、回転部としての回転シャフト4が配置されている。回転シャフト4は、モータ3で発生し減速機9で回転速度を減じられた回転力を、駆動ローラ5へ伝達する。
【0041】
小室2bの外殻を形成するケースは、ハウジング2の一部および隔壁16によって形成されている。ハウジング2の一部と隔壁16とは、モータ3および減速機9を内包するケースの壁部を形成する。図3および図4に示すように、ケースは直方形状の箱型に形成されており、隔壁16はケースの壁面の一面を形成し、ハウジング2はケースの底面、天井面および壁面の三面を形成する。ケースの一部を構成する隔壁16に、回転シャフト4が貫通する孔部16aが形成されている。
【0042】
隔壁16に形成された孔部16aの内周面には、シール部19が設けられている。シール部19は、孔部16aの内周面と接触し、かつ回転シャフト4の外周面と接触するように、形成されている。シール部19は隔壁16と回転シャフト4との間の隙間を閉塞させ、上記ケースの内部である小室2bを外部から遮断する。モータ3および減速機9が配置されている小室2bは、孔部16aを介してのみ大室2aと連通しているが、シール部19によって孔部16aが閉塞されているために、大室2aと小室2bとは別空間とされている。シール部19が孔部16aを塞ぐことにより、小室2bは密閉空間とされている。シール部19は、孔部16aを経由して液体が大室2aから小室2bへ漏洩することを抑制している。
【0043】
大室2a内には、モータ3で発生し回転シャフト4を介在させて伝達された回転力によって回転運動を行なう、駆動ローラ5が設けられている。駆動ローラ5は、回転シャフト4および減速機9を介在させてモータ3に取り付けられた送りローラであって、略円筒形状に形成されている。減速機9は、モータ3と駆動ローラ5との間に介在する。回転シャフト4は、減速機9から駆動ローラ5へ回転力を伝達する。駆動ローラ5の円筒形状の側面である回転面5aには、送り溝5bが形成されている。
【0044】
また大室2a内には、駆動ローラ5の回転面5aと対向するように、従動ローラ6が配置されている。デリバリーワイヤ104に圧力を加える抑えローラである従動ローラ6は、略円筒形状に形成されている。その円筒形状の側面である従動ローラ6の回転面6aと、駆動ローラ5の回転面5aとによって、デリバリーワイヤ104が挟持される。駆動ローラ5の回転面5aと、従動ローラ6の回転面6aとは、デリバリーワイヤ104を介在させて、対向するように位置している。デリバリーワイヤ104は、駆動ローラ5の回転面5aに形成された送り溝5bに沿うように、回転面5a,6aの間に配置される。
【0045】
モータ3が起動して駆動ローラ5が回転運動を行なうと、従動ローラ6は、駆動ローラ5の回転に従動して回転運動を行なう。駆動ローラ5と従動ローラ6とが、互いに逆方向に回転することにより、デリバリーワイヤ104は、デリバリーワイヤ104の長手軸方向に移動する。デリバリーワイヤ104は、駆動ローラ5によって駆動される。回転力を発生させるモータ3と、回転力を伝達する減速機9および回転シャフト4と、回転運動を行なう駆動ローラ5および従動ローラ6とは、デリバリーワイヤ104をその長手軸方向に移動させる送り装置である、アクチュエータに含まれる。アクチュエータは、デリバリーワイヤ104を挟持してその長手軸方向に送るように移動させる。アクチュエータは、ハウジング2の内部空間内に配置されており、ハウジング2によって保持されている。
【0046】
従動ローラ6が駆動ローラ5へ押し付けられてデリバリーワイヤ104を挟持するとき、デリバリーワイヤ104に損傷が発生することを抑制でき、かつデリバリーワイヤ104を円滑に移動させることができるように、駆動ローラ5の回転面5aおよび従動ローラ6の回転面6aを形成することが望ましい。たとえば、駆動ローラ5および従動ローラ6の材質としてステンレスを使用し、回転面5a,6aの材質としてウレタン樹脂などをコーティングして使用することができる。
【0047】
駆動ローラ5の回転面5aおよび従動ローラ6の回転面6aを、ウレタン樹脂などの弾性材料で形成することにより、デリバリーワイヤ104の表面を回転面5a,6aに面接触させ、回転面5a,6aとデリバリーワイヤ104との間に発生する摩擦力を増大させることができる。この摩擦力により、デリバリーワイヤ104を移動させるときに、デリバリーワイヤ104に対しその長手軸方向に作用する圧縮力が増大しても、デリバリーワイヤ104が回転面5a,6aに対して滑ることを抑制することができる。また、駆動ローラ5の回転面5aに送り溝5bが形成されているため、デリバリーワイヤ104と回転面5aとの接触面積が増加している。この送り溝5bの形成によっても、回転面5a,6aとデリバリーワイヤ104との間に発生する摩擦力を増大させることができる。
【0048】
図3では、送り溝5bが駆動ローラ5の回転面5aに形成されている例が図示されているが、この構成に限られない。駆動ローラ5の回転面5aは溝が形成されず起伏のない平滑な曲面に形成され、従動ローラ6の回転面6aに線状体が内部に配置される送り溝が形成されてもよい。また、回転面5a,6aの両方に送り溝が形成されてもよい。つまり、駆動ローラ5および従動ローラ6の少なくともいずれか一方の回転面5a,6aに溝部が形成され、デリバリーワイヤ104がその溝部内に配置され、デリバリーワイヤ104の表面が溝部の内表面と面接触する構成であれば、デリバリーワイヤ104と回転面5a,6aとの接触面積を増加させて摩擦力を増大させ、デリバリーワイヤ104の滑りを抑制する効果を得ることができる。
【0049】
従動ローラ6は、駆動装置1の内部空間の大室2a内において、従動ローラ6を回転可能に支持する支持部材7と、弾性体8とを介在させて、蓋部材10によって支持されている。従動ローラ6は、蓋部材10から吊り下げられた状態で支持されている。弾性体8は、蓋部材10に取り付けられている。従動ローラ6は、蓋部材10との間にたとえばゴムなどの弾性体8を介在させて、蓋部材10に支持されている。
【0050】
蓋部材10は、蓋部材10の開閉を操作するレバー12を有する。レバー12は、弾性変形可能に形成されている。図3に示すレバー12は、略U字型の形状を有している。レバー12は、U字型の幅を狭くする、またはU字型の幅を広げるように、弾性変形可能である。レバー12には、突起部13が形成されている。この突起部13がハウジング2の係止部14に係止することによって、レバー12はハウジング2に固定される。
【0051】
ハウジング2および蓋部材10には、弾性部15,15が設けられている。図2に示すように、ハウジング2側の弾性部15と蓋部材10側の弾性部15とよって挟持されるように、Yコネクタ31が固定されている。ハウジング2は、医療器具としてのYコネクタ31を保持する。Yコネクタ31には、第一の入力ポート32から出力ポート34に至るように内部を貫通する、貫通孔が形成されている。デリバリーワイヤ104は、Yコネクタ31の貫通孔に挿通される。またYコネクタ31には、第二の入力ポート33から出力ポート34に至るように内部を貫通する、他の貫通孔が形成されている。
【0052】
Yコネクタ31は、駆動装置1の固定部において固定される、被固定部材である。固定部は、ハウジング2の側壁と蓋部材10の側壁との突合せ部に形成された穴形状と、当該穴形状の内周側に設けられたゴムなどの弾性部15とを有する。駆動装置1は、上記固定部において、被固定部材としてのYコネクタ31を固定可能である。Yコネクタ31は、ハウジング2と蓋部材10とに取り付けられた弾性部15によって挟み込まれて、固定部に取り付けられる。弾性部15は、ハウジング2によって保持されている。
【0053】
Yコネクタ31を固定可能な固定部が設けられているハウジング2および蓋部材10の一の側壁と対向する、ハウジング2の他の側壁と蓋部材10の他の側壁との突合せ部には、案内溝17が形成されている。案内溝17は、蓋部材10との突合せ部において、弾性部15が設けられているハウジング2の側壁に対向するハウジング2の他の側壁に形成されている。蓋部材10の上記他の側壁には、案内溝17と嵌合する形状の突き出し部18が形成されている。案内溝17は、ハウジング2の上記他の側壁の一部を切り取って形成されている。
【0054】
蓋部材10が閉められているとき、突き出し部18は案内溝17の内部へ嵌合する。このとき、突き出し部18と案内溝17とによって囲まれる空間は、デリバリーワイヤ104の径よりもわずかに大きな径を有することになり、デリバリーワイヤ104は上記空間に挿通可能とされている。つまり、蓋部材10を閉めてデリバリーワイヤ104およびYコネクタ31を一体として駆動装置1の固定部に取り付けるときに、デリバリーワイヤ104は案内溝17によって位置決めがされる。駆動装置1には、デリバリーワイヤ104の位置決めをする案内部としての、デリバリーワイヤ104を通す案内溝17が設けられている。
【0055】
デリバリーワイヤ104が載置される位置である案内溝17の最深部は、Yコネクタ31に形成された貫通孔の延長線がハウジング2および蓋部材10の上記他の側壁と交わる位置の付近に(典型的には、ハウジング2の上記他の側壁を貫通する案内溝17の最深部の延びる方向がYコネクタ31の貫通孔の延びる方向と一致するように)形成されている。
【0056】
案内部が設けられている駆動装置1の蓋部材10を閉めることにより、デリバリーワイヤ104の位置決めがされ、デリバリーワイヤ104は正しい位置に設置される。つまり、蓋部材10を閉めるとき、デリバリーワイヤ104は、駆動ローラ5と従動ローラ6との間に正しく設置される。そのため、デリバリーワイヤ104が蓋部材10とハウジング2との突合せ部に挟まれて、デリバリーワイヤ104の移動が妨げられたり、デリバリーワイヤ104が損傷したりする不具合の発生を抑制することができる。
【0057】
案内溝17は、図5に示すようにV字状の形状に形成されてもよく、またはU字状や円弧形状などの適当な曲率を持つ曲面を有する形状に形成されても構わない。
【0058】
以下、駆動装置1の蓋部材10の開閉動作について説明する。図2および図3に示す蓋部材10が閉められた状態から、U字型の幅を狭くするようにレバー12を弾性変形させて、突起部13と係止部14との係合を外す。突起部13が係止部14から外れると、蓋部材10は蝶番11を回転軸として回転自在となる。図3に示す断面視では、蓋部材10を蝶番11を回転中心として反時計回り方向に動かすことによって、蓋部材10が開けられる。術者がレバー12を把持して操作することにより、手動で蓋部材10を開放できる形状になっている。レバー12を弾性変形させて突起部13と係止部14との係合を解除し、蓋部材10を開けることができる。
【0059】
蓋部材10が開けられると、蓋部材10に取り付けられた弾性部15は、蓋部材10と共に移動する。弾性部15から加えられる弾性力により保持されていたYコネクタ31の外周の一部に、当該弾性力が加えられなくなる。そのため、Yコネクタ31は、手動で移動可能となる。また、従動ローラ6も蓋部材10と共に移動する。従動ローラ6の回転面6aから駆動ローラ5の回転面5aへ向かって加えられていた押圧力が解放され、デリバリーワイヤ104の挟持が外れるので、当該押圧力によって押さえられていたデリバリーワイヤ104は、手動で移動可能となる。蓋部材10が移動して案内溝17の周縁の一部が開放されるので、デリバリーワイヤ104は、長手軸方向に限らず自由に移動できるようになる。
【0060】
Yコネクタ31とデリバリーワイヤ104とがいずれも手動で移動できるようになるので、デリバリーワイヤ104がYコネクタ31の貫通孔に挿通された状態で、デリバリーワイヤ104およびYコネクタ31を一体として移動させることができる。駆動装置1に設けられた蓋部材10は、駆動ローラ5と従動ローラ6とを含むローラ部、Yコネクタ31が固定される固定部、および案内溝17を開放することができる。蓋部材10を開けることで、Yコネクタ31に挿入されたデリバリーワイヤ104およびYコネクタ31を一体として、Yコネクタ31を固定する固定部から取り外し可能となる。そのため、停電など何らかの異常事態が発生して駆動装置1が停止しても、手動でデリバリーワイヤ104とYコネクタ31とを一体のまま取り外すことができる。
【0061】
一方、蓋部材10が開かれた状態から、蝶番11を回転軸として蓋部材10を回転させると、蓋部材10は閉まる方向に移動する。図3に示す断面視では、蓋部材10を蝶番11を回転中心として時計回り方向に動かすことによって、蓋部材10が閉められる。術者がレバー12を把持して操作することにより、手動で蓋部材10を閉めることができる。レバー12の突起部13が係止部14に衝突すると、レバー12のU字型の幅が狭くなるようにレバー12が弾性変形する。突起部13が係止部14の表面を摺動するようにして、突起部13は係止部14を通過する。
【0062】
突起部13が係止部14を通過すると、レバー12はU字型の幅を広げるように弾性変形して、突起部13が係止部14に係合する。蓋部材10をハウジング2側へ近接するように押し下げるとき、蓋部材10に取り付けられた従動ローラ6および支持部材7のハウジング2側への移動は、ハウジング2に固定されているモータ3に軸支された駆動ローラ5によって妨げられる。そのため、蓋部材10と支持部材7とによって挟まれた弾性体8が弾性変形する。
【0063】
弾性変形している弾性体8が反作用として蓋部材10に及ぼす弾性力によって、蓋部材10が押圧される。弾性体8から蓋部材10側へ加えられる力によって、レバー12の突起部13は係止部14に密着して、レバー12はハウジング2に押し付けられる。蓋部材10を閉めると、弾性体8が蓋部材10を押圧する弾性力によって、レバー12はハウジング2へ押止される。弾性体8の弾性力によりレバー12がハウジング2へ押し付けられることによって、蓋部材10が閉められる。
【0064】
蓋部材10が開かれているとき、デリバリーワイヤ104が貫通孔を貫通している状態で、Yコネクタ31を、ハウジング2の弾性部15に組み付けることができる。この状態で蓋部材10が閉められると、Yコネクタ31は、ハウジング2側の弾性部15および蓋部材10側の弾性部15によって挟持される。またデリバリーワイヤ104は、駆動ローラ5の回転面5aと従動ローラ6の回転面6aとによって挟持されるとともに、案内溝17の形成されたハウジング2を貫通するように、案内溝17の内部に配置される。デリバリーワイヤ104とYコネクタ31とは、弾性部15、ローラ部の駆動ローラ5と従動ローラ6との間、および案内溝17において、駆動装置1に支持される。蓋部材10を閉めることで、デリバリーワイヤ104およびYコネクタ31を一体として、駆動装置1の固定部に装着することができる。
【0065】
蓋部材10の開閉は、レバー12を操作して、手動操作によって行なうことができる。上記の通り蓋部材10が開けられるとデリバリーワイヤ104およびYコネクタ31を一体のまま固定部から取り外し可能となり、蓋部材10を閉めることによりデリバリーワイヤ104およびYコネクタ31を一体で固定部へ装着することができる。つまり、本実施の形態のデリバリーワイヤ104の駆動装置1では、デリバリーワイヤ104およびYコネクタ31を一体として駆動装置1の固定部に手動で着脱可能である。
【0066】
なお、デリバリーワイヤ104とYコネクタ31とは、デリバリーワイヤ104がYコネクタ31の貫通孔に挿通された一体の状態で駆動装置1に着脱することが可能である。しかしながら、デリバリーワイヤ104とYコネクタ31とを必ず一体として駆動装置1に取り付ける必要はない。つまり、案内部が設けられている駆動装置1では、デリバリーワイヤ104を案内部によって確実に位置決めすることができる。そのため、蓋部材10を閉めてYコネクタ31を固定部に装着した後に、案内部を経由させてデリバリーワイヤ104を駆動装置1に挿通することで、デリバリーワイヤ104をYコネクタ31の貫通孔に挿通することも可能である。このようにすれば、常にデリバリーワイヤ104とYコネクタ31とを一体で取り扱う必要がなくなるために、駆動装置1の操作性をより向上させることができる。
【0067】
駆動装置1は、Yコネクタ31の貫通孔に接続された子カテーテル102の中空部にデリバリーワイヤ104を挿通して、デリバリーワイヤ104を人体131の血管132に挿入する、図1に示す挿入装置に適用されている。この場合、停電など何らかの異常事態が発生して駆動装置1が停止しても、手動でデリバリーワイヤ104とYコネクタ31とを一体のまま取り外すことができる。Yコネクタ31とデリバリーワイヤ104とを一体で駆動装置1から取り外せることにより、取り外し前後において子カテーテル102とデリバリーワイヤ104との位置関係は変わらない。したがって、血管132や脳動脈瘤133の中にあるコイル101の位置をほとんど変えることなく、すぐに治療を手動で再開することができる。
【0068】
以上説明した医療用線状体の駆動装置1は、デリバリーワイヤ104を長手軸方向に移動させるアクチュエータを備える。アクチュエータは、モータ3と、モータ3で発生した回転力の回転速度を減じて出力する減速機9と、モータ3から伝達された回転力によって回転運動を行なう駆動ローラ5と、駆動ローラ5の回転に従動して回転運動を行なう従動ローラ6を含む。
【0069】
このようにすれば、デリバリーワイヤ104を駆動する駆動ローラ5の回転はモータ3によって行なわれるが、モータ3の回転駆動力は減速機9を経由して駆動ローラ5に伝達される。減速機9によりモータ3で発生した回転駆動力の回転数が落とされると、モータ3の出力軸と減速機9の出力軸との回転数の比、すなわち減速比に比例して、トルクを増大させることができる。減速機9によって回転数を低減させることにより、駆動ローラ5に伝達されるトルクを増大させ、デリバリーワイヤ104を長手軸方向に移動させる駆動力を増大させることができる。したがって、小型のモータで所望のデリバリーワイヤ104の駆動力を得ることができるので、駆動装置1の製造コストを低減できる。
【0070】
たとえば、デリバリーワイヤ104の移動速度を1mm/s、駆動ローラ5の半径を10mmとすれば、駆動ローラ5の回転数は約1rpm(=1mm/s÷(10mm×2π)×60s)である。この駆動ローラ5の回転数を得るために、駆動ローラ5の回転数よりも大きな回転数で回転可能なモータ3を使用し、モータ3の出力軸の回転数を減速機9によって減じて駆動ローラ5に出力する構成とすれば、駆動ローラ5によるデリバリーワイヤ104の駆動力を増大させることができる。
【0071】
モータ3がデリバリーワイヤ104を駆動するときにデリバリーワイヤ104に外部から摩擦力などの外部負荷により抵抗が加えられても、その抵抗力は減速比の逆数になる。たとえば、100〜1000程度の比較的大きな減速比でモータ3を回転させれば、モータ3の回転駆動力に対してデリバリーワイヤ104に作用する抵抗力は無視できる。したがって、デリバリーワイヤ104を所定の速度で安定して駆動することができる。
【0072】
なお、デリバリーワイヤ104を長手軸方向に移動させるアクチュエータは、長尺のデリバリーワイヤ104をその延在する方向に移送できる設備であればどのようなものでもよいが、本実施の形態で説明した電動機としてのモータ3を含むアクチュエータが望ましい。電動機としてのモータ3を備え、モータ3で発生した回転力によってデリバリーワイヤ104を移動させる駆動装置1であれば、モータ3の回転数をモータ3に印加される電圧の増減によって制御することができる。
【0073】
デリバリーワイヤ104の移動速度はモータ3の回転数に従って決定される。たとえば実用範囲(挿入力数N以下)では、モータ3に印加される電圧とデリバリーワイヤ104の移動速度とは、線形関係となる。そこで、モータ3へ加える電圧とデリバリーワイヤ104の移動速度との関係表を予め用意しておくことにより、術者が意図するデリバリーワイヤ104の移動速度に合わせて、モータ3へ加える電圧を変更することができる。
【0074】
このようにすれば、モータ3に印加する電圧を変化させるだけで、任意の移動速度でデリバリーワイヤ104を長手軸方向に移動させることができるので、簡単な構成によりデリバリーワイヤ104の移動速度を制御できる。駆動ローラ5の回転速度を検出するためのエンコーダなどのセンサを必要とせず、駆動装置1の部品点数を削減することができるので、駆動装置1の製造コストを低減でき、かつ駆動装置1の信頼性を向上させることができる。
【0075】
また、モータ3および減速機9が配置されている小室2bの内部と外部とを連通する孔部16aを回転シャフト4が貫通しており、孔部16aの内部には、孔部16aの内周面および回転シャフト4の外周面と接触するシール部19が設けられている。
【0076】
デリバリーワイヤ104が人体に挿入されるデリバリーワイヤやガイドワイヤである場合、デリバリーワイヤ104を挟持して駆動する駆動ローラ5および従動ローラ6が配置されている大室2a内の洗浄および滅菌が容易にできるように、駆動装置1を構成する必要がある。また、手術中は、Yコネクタ31の第二の入力ポート33から注入された生理食塩水や薬剤を使用するため、モータ3や減速機9は防水しておく必要がある。そこで、シール部19を設けて小室2b内部を大室2aから隔離することにより、大室2aから小室2bへの液体の浸入を防止することができる。回転シャフト4と隔壁16との間に配置されるシール部19は、シリコーン樹脂に代表される樹脂材料などの弾性材料によって形成することができる。
【0077】
シール部19が設けられているために、回転シャフト4を回転させるとき、回転シャフト4の外周面がシール部19と接触摺動して、回転シャフト4の回転に必要なトルクが増加する。しかし本実施の形態では、モータ3で発生した回転力は減速機9を経由して回転シャフト4から駆動ローラ5へ伝達されており、駆動ローラ5に伝達されるトルクが増大している。そのため、回転シャフト4がシール部19に対し摺動することによる摩擦抵抗は、モータ3からは無視できる。したがって、デリバリーワイヤ104を所定の速度で安定して駆動することができる。
【0078】
図1に戻って、挿入装置は、フットスイッチを備える。フットスイッチは、足で踏む操作によって駆動装置1の起動停止を制御する信号を発信する。フットスイッチにより、子カテーテル102を手で操作する術者は、手を使わずに駆動装置1のON/OFF操作を行なうことが可能とされている。フットスイッチは、挿入用フットスイッチ41と引抜用フットスイッチ46とを含む。挿入用フットスイッチ41は、配線42により制御回路40と接続されている。引抜用フットスイッチ46は、配線47により制御回路40と接続されている。
【0079】
挿入用フットスイッチ41を足で踏み込む操作により、内蔵のマイクロスイッチが押圧され、デリバリーワイヤ104を血管132へ挿入する方向へ移動させるように、駆動装置1が作動する。具体的には、駆動ローラ5が回転して、前進する方向、つまり子カテーテル102の中に挿入される方向へ、デリバリーワイヤ104が駆動される。これにより、コイル101を脳動脈瘤133内部へ挿入する挿入操作が行なわれる。
【0080】
引抜用フットスイッチ46を足で踏み込む操作により、内蔵のマイクロスイッチが押圧され、デリバリーワイヤ104を血管132から引抜く方向へ移動させるように、駆動装置1が作動する。具体的には、駆動ローラ5が逆に回転して、後退する方向、つまり子カテーテル102から引き抜かれる方向へデリバリーワイヤ104が駆動される。これにより、コイル101が先端に取り付けられたデリバリーワイヤ104を血管132から引抜く引抜操作が行なわれる。
【0081】
挿入用フットスイッチ41、引抜用フットスイッチ46から足を離すことで、復帰スプリングの弾性力によって内臓のマイクロスイッチの押圧が解除される。その結果、デリバリーワイヤ104に駆動力が作用しなくなるため、デリバリーワイヤ104は停止する。
【0082】
この挿入装置を使用してコイル塞栓術治療を行なう医師は、Yコネクタ111の入り口付近の把持部105において、子カテーテル102の挿入されたYコネクタ111を左手で押さえ、右手で子カテーテル102を把持して操作できる。また同じ医師が、挿入用フットスイッチ41および引抜用フットスイッチ46を足で操作することで、子カテーテル102内へデリバリーワイヤ104を挿入して、脳動脈瘤133の中にコイル101を挿入することができる。すなわち、カテーテル102の操作とデリバリーワイヤ104の操作とを、一人の医師で実現することができる。
【0083】
したがって、この挿入装置を使用することによって、脳動脈瘤133の中にコイル101を留置して脳動脈瘤133を塞栓させるコイル塞栓術治療を、一人の医師が行なうことができる。従来は二人の医師により行なっていたコイル塞栓術治療を、医師一人でできるようになるために、二人の医師が連携して治療を行なう必要がなく、したがって連携に伴う医師のストレスを軽減することができる。
【0084】
このとき、子カテーテル102の操作は、従来と同様に医師が把持部105において子カテーテル102を把持することにより手で実施する。一方、デリバリーワイヤ104を移動させる駆動装置1を設け、デリバリーワイヤ104は駆動装置1で駆動される。駆動装置1の起動停止は、挿入用フットスイッチ41または引抜用フットスイッチ46の操作によって制御される。子カテーテル102を手で操作する医師が、足でフットスイッチを操作する。
【0085】
このように、一人の医師によるコイル塞栓術治療を可能とするデリバリーワイヤ104の挿入装置を、簡単な構成とすることができるので、挿入装置の製造コストを低減でき、かつ挿入装置の信頼性を向上させることができる。デリバリーワイヤ104を前進させるときに操作する挿入用フットスイッチ41と、デリバリーワイヤ104を後退させるときに操作する引抜用フットスイッチ46とを別々に設けたため、デリバリーワイヤ104の挿入時および引抜時の誤操作が起こりにくくなっている。したがって、挿入装置の信頼性をより向上させることができる。
【0086】
図1に示す制御回路40にはさらに、配線44によって挿入速度制御部43が電気的に接続されており、また配線49によって引抜速度制御部48が電気的に接続されている。挿入速度制御部43および引抜速度制御部48には、駆動装置1がデリバリーワイヤ104を移動させる移動速度を調整可能な、ボリュームスイッチ45,50がそれぞれ取り付けられている。
【0087】
速度制御部(挿入速度制御部43および引抜速度制御部48)に設けられたボリュームスイッチ45,50の操作により、デリバリーワイヤ104の挿入速度または引抜速度を増減させることができる。コイル塞栓術治療を一人で行なっている医師は、子カテーテル102をYコネクタ111の内部へ入れるとき左手でYコネクタ111を把持している。この医師がデリバリーワイヤ104の挿入速度または引抜速度を増減させたいときは、右手で速度制御部(すなわち挿入速度制御部43または引抜速度制御部48)のボリュームスイッチ45,50を操作する。これにより、デリバリーワイヤ104の長手軸方向への移動速度を制御することができる。
【0088】
速度制御部によりデリバリーワイヤ104の移動速度を可変とすることにより、コイル塞栓術治療中にデリバリーワイヤ104を連続的に血管132へ挿入できる。つまり、デリバリーワイヤ104の先端に取り付けられたコイル101を動脈瘤133の内部へ連続的に挿入することができる。そのため、コイル101が動脈瘤133の壁部(瘤壁)に静止状態で接触してコイル101と瘤壁との間に静止摩擦力が発生し、コイル101の挿入抵抗が増大することを抑制できる。つまり、コイル101を動脈瘤133へ挿入するときに、デリバリーワイヤ104に作用する長手軸方向の圧縮力が変動することを抑制することができる。
【0089】
また、速度制御部によってデリバリーワイヤ104の移動速度を微調整することができるので、たとえば動脈瘤133内にコイル101を留置する場合など慎重な操作を要するときには、デリバリーワイヤ104の移動速度を下げることにより、操作の確実性を向上することができる。
【0090】
駆動装置1を用いてデリバリーワイヤ104を動脈瘤133内へ挿入するとき、1mm/s以上4mm/s以下の範囲で挿入速度を調整可能であるように、速度制御部を設定することができる。その理由は次の通りである。
【0091】
まず、シリコーン樹脂製の模擬動脈瘤に医師がコイルを挿入したときの挿入速度を、表1に示す。医師はコイルの送り出しを指先の往復運動で行なっているために、速度は一定ではないが、コイルの長さおよび挿入時間から、コイル挿入速度の平均値を測定した。
【0092】
【表1】

【0093】
表1には、二人の医師A,Bが、いくつかの種類のコイルを使用して模擬動脈瘤に挿入したときの挿入速度の結果を示している。その速度は、およそ1.5〜4.4mm/sである。駆動装置1によるデリバリーワイヤ104の最大挿入速度を大きくし過ぎると、子カテーテル102の操作との連携が難しくなると考えられる。そのため、デリバリーワイヤ104の最大挿入速度は、表1に示す医師が手で挿入した場合の平均速度の最高値付近である、4.0mm/sが適切である。
【0094】
また、シリコーン樹脂で製作した模擬動脈瘤を用いて、モータを使用してコイルを一定速度で模擬動脈瘤に挿入したときの挿入力について、試験を行なった。ここで挿入力とは、線状体であるコイルに作用する長手軸方向の圧縮力であって、模擬動脈瘤に挿入する方向へコイルを移動させるときに必要な力を示す。図6は、模擬動脈瘤に0.5mm/sの速度でコイルを挿入したときの挿入力の経過を示すグラフである。図7は、模擬動脈瘤に1.0mm/sの速度でコイルを挿入したときの挿入力の経過を示すグラフである。図6および図7に示す横軸は、時間の経過(単位:秒)を示し、また縦軸は挿入力の相対値を示す。図6および図7を比較して、挿入力の平均値は、図6に示す挿入速度0.5m/sの場合の方が大きくなっている。
【0095】
図8は、模擬動脈瘤に0.5mm/sの速度でコイルを挿入したときの、模擬動脈瘤内部におけるコイルの挙動を示す模式図である。図8(a)に示すように、コイル101が子カテーテル102を経由して動脈瘤133内へ挿入されると、コイル101の一部が動脈瘤133の壁部(瘤壁)の一箇所の拘束点136において、瘤壁と接触する。拘束点136においてコイル101が瘤壁に対して静止し、コイル101と瘤壁との間に静摩擦力が発生する。静摩擦力が発生してコイル101と瘤壁との摩擦力が大きくなると、コイル101は、拘束点136において瘤壁に対して拘束される。その状態でコイル101の挿入を進めると、図8(b)に示すように、子カテーテル102の出口部分のコイル101が撓む。
【0096】
コイル101の挿入がさらに継続されると、図8(c)に示すように、コイル101の撓み量も増加する。この撓みによってコイル101に弾性エネルギーがたまるので、コイル101を動脈瘤133へ挿入する挿入力が増加する。そしてコイル101をさらに挿入すると、図8(d)に示すように、ある時点でコイル101が回転する。コイル101が動脈瘤133内で回転した結果、拘束点137においてコイル101が瘤壁に接触するようになり、拘束点137がコイル101を拘束する新たな拘束点となる。このときコイル101の弾性エネルギーが解放されるので、コイル101の挿入力は急減少する。
【0097】
つまり、図6のグラフに示す鋸歯状の挿入力の増減は、コイル101の一部が動脈瘤133の壁部などに拘束されることで発生する。コイル101が拘束点136に拘束されている間は、図8(c)に示すように、子カテーテル102の先頭から出ているコイル101の撓みが増加し、コイル101の挿入力が増加していく。さらに挿入力が増加すると、コイル101は図8(d)に示すように回転し、このとき挿入力が急減少する。この現象が発生するのは、コイル101の移動速度が遅いために、コイル101と瘤壁との接触部は静摩擦での接触状態となり、静摩擦力によって、コイル101の一部が瘤壁に拘束されるためである。
【0098】
一方、模擬動脈瘤に1.0mm/sの速度でコイルを挿入したときの、模擬動脈瘤内部におけるコイルの挙動を示す模式図を、図9に示す。図9(a)に示すコイル101が瘤壁と接触した状態からコイル101の挿入を進めると、コイル101と瘤壁との間の摩擦力が小さいので、図9(b)に示すように、コイル101はそのまま挿入される。そして図9(c)および図9(d)に示すように、挿入抵抗が少ないためにコイル101に撓みが発生することなく、たとえば螺旋形状のコイルの場合、元の螺旋形状を描き、螺旋形状のままコイル101が動脈瘤133内に挿入される。
【0099】
つまり、コイル101の挿入速度が1.0mm/sの場合、図9に示すように瘤壁とコイル101との接触面は動摩擦状態が維持され、コイル101は瘤壁を滑って動脈瘤133内に挿入される。図8に示す0.5mm/sでの挿入速度の場合に発生した現象は発生しない。そのため、図7のグラフに示すように、全体的に鋸歯状の挿入力の増減は少なくなり、平均的に小さな挿入力でコイル101を動脈瘤133へ挿入することができる。
【0100】
図6〜図9に示す結果は、シリコーン樹脂製の模擬動脈瘤を使った結果ではあるが、生体にコイル101を挿入する場合にも、動摩擦領域で使用したほうがよいことは容易に想像できる。表1に示す平均速度も勘案すると、1.0mm/s以上の移動速度でコイル101を脳動脈瘤133へ挿入するのが望ましい。すなわち、駆動装置1は、1mm/s以上4mm/s以下の速度で、デリバリーワイヤ104を血管132へ挿入する方向へ移動させるのが望ましい。
【0101】
図1に戻って、Yコネクタ31の内部には、挿入力センサ60が組み込まれている。デリバリーワイヤ104に作用する長手軸方向の圧縮力(すなわち、デリバリーワイヤ104の挿入力)を計測する計測装置は、この挿入力センサ60を含んで構成される。図10は、挿入力センサの構成を示す断面模式図である。図10に示すように、挿入力センサ60は、センサ本体62を備え、センサ本体62には、デリバリーワイヤ104などの可撓性を有する医療用線状体が貫通する貫通孔63が形成される。デリバリーワイヤ104は、センサ本体62に形成された貫通孔63の中を通過している。
【0102】
貫通孔63には、デリバリーワイヤ104が貫通する出入口を大きくして挿入性を向上させるために、出入口にテーパ状の入出力ポート64が形成されている。貫通孔63は、その両端部においてデリバリーワイヤ104の長手軸方向以外への移動を規制する拘束部65,66を有するように形成される。センサ本体62の内部の拘束部65,66において、貫通孔63の直径はデリバリーワイヤ104の直径よりもわずかに大きく(たとえばデリバリーワイヤ104の直径の105%〜120%)、かつ、デリバリーワイヤ104の長手軸方向に沿った貫通孔63の長さは、デリバリーワイヤ104の直径の数倍以上である。よってデリバリーワイヤ104は、拘束部65,66において、長手軸方向以外への動作を拘束される。
【0103】
センサ本体62は、デリバリーワイヤ104に長手軸方向の圧縮力が作用するときに、貫通孔63の内部におけるデリバリーワイヤ104の湾曲方向を規定する。すなわち、貫通孔63は、2つの拘束部65,66の間で曲がっており、デリバリーワイヤ104が貫通孔63を貫通すると湾曲形状となる。また貫通孔63は、その内部の2つの拘束部65,66の間において、内壁68,69が内壁67から離れて貫通孔63の径が広げられた、空間71を成すように形成される。デリバリーワイヤ104の湾曲の外側にある内壁68,69が広がって、空間71が形成されている。空間71では、デリバリーワイヤ104は紙面と平行方向の動作を拘束されないようになっている。デリバリーワイヤ104は、空間71において曲がりながらセンサ本体62の内部を通過している。
【0104】
入出力ポート64および空間71において、貫通孔63の紙面と垂直方向の高さはデリバリーワイヤ104の直径よりもわずかに大きく(たとえばデリバリーワイヤ104の直径の105%〜120%)、デリバリーワイヤ104に対して紙面と垂直方向の動作を拘束している。すなわち、入出力ポート64および空間71において、デリバリーワイヤ104の長手軸方向に垂直な断面における貫通孔63の断面形状は、長方形状である。これらによって、貫通孔63の内部におけるデリバリーワイヤ104の湾曲方向を規定し、デリバリーワイヤ104に長手軸方向の圧縮力が作用するときのデリバリーワイヤ104の湾曲部の湾曲の山の高さ(すなわち、内壁67からデリバリーワイヤ104までの距離の最大値)が定まるように、デリバリーワイヤ104を位置決めしている。
【0105】
空間71には、空間71における貫通孔63の断面を横断するように、ラインセンサ80が配置されている。ラインセンサ80は、貫通孔63の内壁67から、内壁67に対向する貫通孔63の内壁を構成する後述する凹部70の内部に亘るように、空間71の内部を横断して配置されている。ラインセンサ80は、センサ本体62の内部の空間71において、デリバリーワイヤ104に長手軸方向の圧縮力が作用するときにデリバリーワイヤ104が湾曲して形成される、湾曲の山の頂点の軌跡に沿って、配置されている。
【0106】
図11は、挿入力センサに線状体を貫通させるときの線状体の湾曲の度合いを検出する光学系を示す断面模式図である。図11に示すように、センサ本体62の内部には、光を発する光源器81が配置されている。また、光源器81が発する光を受ける受光器であるラインセンサ80、すなわち光を受ける受光素子を複数有し、複数の受光素子が一列に配置される1次元の光学式のアレイセンサが、センサ本体62の内部に配置される。センサ本体62の内部において、光源器81からラインセンサ80に至る光路は、検出に使用する光が透過する透光性材料で構成されている。
【0107】
光源器81とラインセンサ80とは、デリバリーワイヤ104を挟んで対向するように、2つの拘束部65,66の間に形成される空間71を挟んで配置される。光源器81とラインセンサ80とは、デリバリーワイヤ104の長手軸方向と交差する方向に沿って、かつデリバリーワイヤ104に長手軸方向の圧縮力を作用させるときにデリバリーワイヤ104が湾曲する方向と同じ方向に、配置されている。ラインセンサ80は、内壁67の延在方向に対し垂直な方向に沿って配置されており、湾曲の山の頂点においてデリバリーワイヤ104(104a,104b)と直交するように配置されている。
【0108】
また、センサ本体62の外部には、点灯回路82と、変換回路83とが設けられる。点灯回路82は、光源器81を発光させる。変換回路83は、光源器81が発する光量に対しラインセンサ80が受ける光量によって検出されるデリバリーワイヤ104の湾曲の度合いを、デリバリーワイヤ104に作用する長手軸方向の圧縮力へ変換して出力する。変換回路83は、ラインセンサ80の出力を増幅する増幅回路を有してもよい。
【0109】
デリバリーワイヤ104に長手軸方向の圧縮力が作用するときの、計測装置の具体的な動作について説明する。デリバリーワイヤ104に圧縮力を作用するとき、デリバリーワイヤ104は貫通孔63内の空間71において湾曲し、圧縮力の増加に伴って湾曲の山の高さ、すなわち内壁67からデリバリーワイヤ104までの距離が増加する。たとえば図10に示すように、圧縮力p1を作用させるときデリバリーワイヤ104aのように湾曲し、デリバリーワイヤ104に圧縮力が作用していない状態から湾曲の山の高さがh1増加する。同様に、p1よりも大なる圧縮力p2を作用させるとき、デリバリーワイヤ104bのように湾曲し、デリバリーワイヤ104に圧縮力が作用していない状態から湾曲の山の高さがh2増加する。
【0110】
デリバリーワイヤ104が湾曲したときのデリバリーワイヤ104の湾曲の山の高さは、ラインセンサ80を用いて検出できる。つまり、空間71を挟んでラインセンサ80と対向する位置に配置される光源器81が発する光をラインセンサ80が受けるとき、ラインセンサ80のある受光素子の上にデリバリーワイヤ104があると、光源器81が発する光をデリバリーワイヤ104が遮ることにより、その受光素子が受ける光量が小さくなる。その受光素子の位置を検出することにより、デリバリーワイヤ104の位置を特定し、デリバリーワイヤ104の湾曲の山の高さの増減、すなわちデリバリーワイヤ104の湾曲の度合いを検出することができる。
【0111】
図11に示す変換回路83は、ラインセンサ80の各受光素子の出力に基づいて、デリバリーワイヤ104の湾曲の度合いを検出することができる。そして、予め決定されたデリバリーワイヤ104の湾曲の山の高さとデリバリーワイヤ104に作用する圧縮力との相関関係(たとえば、圧縮力p1,p2に対する湾曲の山の高さの増加量h1,h2)に基づき、デリバリーワイヤ104の湾曲の山の高さを変換回路によってデリバリーワイヤ104へ作用する圧縮力へ変換し、出力することができる。このようにして、デリバリーワイヤ104の長手軸方に作用する圧縮力を計測することが可能となる。なお、デリバリーワイヤ104の像をラインセンサ80へ適切に結像させるために、レンズやスリットまたは外光を遮断するフィルタなどの光学的要素を、本光学系に設置してもよい。
【0112】
また、図10に示すように、空間71の壁面を構成する内壁68,69は、貫通孔63の内側に向かって凸の曲面形状となるように形成されている。図10に示すように、拘束部65における貫通孔63の内壁に接する曲面形状に内壁68が形成されており、拘束部66における貫通孔63の内壁に接する曲面形状に内壁69が形成されている。また、空間71の内壁68と内壁69との間には凹部70が形成される。凹部70は、空間71の内壁68と内壁69との間における貫通孔63の内壁が内壁67からより離れるように、センサ本体62の外部側に向かって貫通孔63の内壁が窪んで形成されている。
【0113】
空間71の壁部は、貫通孔63の内側に向かって凸の曲面形状である内壁68,69と、凹部70とを組み合わせた形状に成形されている。このような空間71の形状により、デリバリーワイヤ104が湾曲する貫通孔63の内部の空間71において、デリバリーワイヤ104に長手軸方向の圧縮力が作用してデリバリーワイヤ104が湾曲するとき、デリバリーワイヤ104の湾曲の外側にある貫通孔63の内壁(すなわち、内壁68および内壁69)に沿って、デリバリーワイヤ104が湾曲できる。またデリバリーワイヤ104の一部は、内壁68および内壁69から離れるように湾曲できる。また圧縮力が増大するにつれて、デリバリーワイヤ104が内壁68,69から離れる点である接点間の距離は減少する。
【0114】
そのため、空間71内部でデリバリーワイヤ104が座屈することを抑制できる。すなわち、座屈荷重の小さなデリバリーワイヤ104を用いる場合でも、デリバリーワイヤ104が空間71において座屈することなく湾曲するため、デリバリーワイヤ104の湾曲の度合いを精度よく検出することができる。検出される湾曲の度合いを変換することにより、デリバリーワイヤ104に作用する長手軸方向の圧縮力を計測することができる。
【0115】
また、空間71には凹部70が形成されているために、デリバリーワイヤ104に作用する圧縮力を、広範囲に亘り精度よく計測することが可能となる。すなわち、空間71におけるデリバリーワイヤ104の湾曲の山の高さを検出することによって、デリバリーワイヤ104に作用する圧縮力が計測される。このとき、空間71内にあるデリバリーワイヤ104の湾曲部の頂点、すなわち空間71内にあるデリバリーワイヤ104において内壁67から最も離れた点が、空間71の内壁に接触していなければ、デリバリーワイヤ104に作用する圧縮力を計測することができる。凹部70が形成されていれば、デリバリーワイヤ104の湾曲部の頂点を空間71の内壁へ接触させるために、より大きな長手軸方向の圧縮力を必要とすることになる。したがって、デリバリーワイヤ104に作用する圧縮力の計測範囲を広げることができる。
【0116】
ヤング率または断面形状の異なる種々のデリバリーワイヤ104について、圧縮力と湾曲の山の高さとの相関関係を予め計測し、これらの相関関係を変換回路に記憶しておき、使用するデリバリーワイヤ104に合わせてどの相関関係を用いるのか選択することができる。このようにすれば、デリバリーワイヤ104の座屈荷重の大小によらずデリバリーワイヤ104に作用する長手軸方向の圧縮力を計測可能な挿入力センサ60を提供することができ、同一の挿入力センサ60を種々の材質および直径を有するデリバリーワイヤ104に適用できるので、経済的である。
【0117】
図12は、挿入力センサがYコネクタに組み込まれて使用される例を示す模式図である。図12に示すように、挿入力センサ60が組み込まれた他の医療器具としてのYコネクタ31は、入力ポート32と他の入力ポート33と出力ポート34とを備える。挿入力センサ60は、Yコネクタ31の内部の、入力ポート32と出力ポート34とを連通する通路に組み込まれている。デリバリーワイヤ104は、入力ポート32側からの操作によって体内の目的部位まで誘導される。
【0118】
この挿入力センサ60を用いて、体内の管の中へ挿入される医療用線状体に作用する長手軸方向の圧縮力の増加を計測することによって、圧縮力の反力として、医療用線状体が体内の管に作用する荷重を計測することができる。すなわち、医療用線状体の先端が管の内壁に接触することを検知することができる。したがって、体内の管に過大な荷重が作用することを防止することができる。
【0119】
また、挿入力センサ60がYコネクタ31に組み込まれているので、Yコネクタ31の入力ポート32からデリバリーワイヤ104を操作し、また他の入力ポート33から薬剤を注入することができる。たとえば、カテーテルとガイドワイヤとの摩擦を低減するための生理食塩水を他の入力ポート33から注入することができる。またたとえば、血管の中に挿入したカテーテルを人体外部から目的部位まで誘導した後に、他の入力ポート33から血管造影剤を注入して、血管造影剤を体内の目的部位に注入することができる。
【0120】
デリバリーワイヤ104に作用する圧縮力を計測する挿入力センサ60には、光学式のセンサであるラインセンサ80が用いられている。光学的センサを使用することにより、図11に示すように、光源器81と空間71との間、およびラインセンサ80と空間71との間に、透明な樹脂材料などの透光性材料を配置することができる。光源器81、ラインセンサ80などのセンサ部品を、センサ本体62内に内包することができるので、センサ部品は空間71に露出していない。そのため、Yコネクタ31の他の入力ポート33から注入された生理食塩水などの液体に、センサ部品が接触することを防止できる。したがって、液体に接触してセンサ部品が故障するなどの不具合の発生を考慮する必要がないので、挿入力センサ60を組み込んだYコネクタ31の洗浄や滅菌を容易に実現することができる。
【0121】
挿入力センサ60を用いて検出される圧縮力を出力して術者に通報する圧縮力通報装置としては、代表的には、挿入力センサ60によって検出される圧縮力を数値やメータ表示またはグラフ表示する視覚化器具や、圧縮力に対応した音声に変換する聴覚化器具が用いられる。本実施の形態の挿入装置は、視覚化器具と聴覚化器具とのいずれか一方を備えることができ、または両方を併用して備えることもできる。
【0122】
図1に示すように、挿入力センサ60には、視覚化器具と聴覚化器具との出力を制御するセンサ出力制御装置90が、配線91によって電気的に接続されている。図1には、挿入力センサ60の電圧出力をデリバリーワイヤ104に作用する圧縮力に変換した数値を表示する視覚化器具としての表示器93が例示されている。また図1には、挿入力センサ60の電圧出力が予め決定されてある所定のしきい値以上の場合、すなわちデリバリーワイヤ104に作用する圧縮力が所定のしきい値以上の場合に、音響効果を変化させる、たとえば警告音をスピーカ92から鳴らす聴覚化器具が例示されている。
【0123】
コイル塞栓術治療中、医師は動脈瘤133とコイル101とのX線透視画像に注目している。そのため、聴覚化器具を使用して、駆動装置1で駆動するときにデリバリーワイヤ104に作用する圧縮力を、音により医師に提示すると都合がよい。たとえば、デリバリーワイヤ104に作用する圧縮力が所定のしきい値を超えたとき、警告音を発生し、圧縮力の増加とともにステップ状に警告音の音色(断続音と連続音、低音と高音など)を変更することができる。
【0124】
また、デリバリーワイヤ104に作用する圧縮力が所定のしきい値以上となることは、光を利用した視覚効果の変化によっても、医師に提示することができる。たとえば、圧縮力が所定のしきい値を超えたとき、レベルメータや警告灯を点灯させることができる。また、所定のしきい値の前後でランプの発光色を変更してもよい。圧縮力の増加とともに、ステップ状にランプの発光色や点滅速度を変更してもよい。スピーカ92とランプとを併用してもよい。また、しきい値の前後で視覚効果または音響効果を急激に変更すると、医師の注意を確実に喚起することができるので一層効果的である。
【0125】
視覚化器具や聴覚化器具を用いることにより、デリバリーワイヤ104に作用する圧縮力が予め定められたしきい値以上となったときに、警告音やランプの点灯によって医師が確実に認識することができる。したがって、コイル塞栓術治療において、一人の医師が子カテーテル102とデリバリーワイヤ104との両方の操作を行なう場合でも、デリバリーワイヤ104に作用する挿入力が過大となり脳動脈瘤133に過大な荷重が作用することを、容易に抑制することができる。
【0126】
以上説明したように、デリバリーワイヤ104を人体131内の血管132へ挿入する本実施の形態の挿入装置は、デリバリーワイヤ104を長手軸方向へ移動させる駆動装置1と、駆動装置1の起動停止を制御する信号を発信するフットスイッチ41,46とを備える。このようにすれば、デリバリーワイヤ104が挿通されている子カテーテル102を手で操作する医師が、フットスイッチ41,46を足で操作してデリバリーワイヤ104を移動させることができ、挿入装置の操作の容易性が向上している。したがって、子カテーテル102とデリバリーワイヤ104との操作を一人の医師で実現することができる。
【0127】
また挿入装置は、デリバリーワイヤ104に作用する長手軸方向の圧縮力を計測する計測装置と、当該計測装置で計測された圧縮力を術者に通報する圧縮力通報装置とを備える。このようにすれば、デリバリーワイヤ104の先端のコイル101が脳動脈瘤133に作用する圧縮力が増大したとき、確実に医師に認識させることができるので、脳動脈瘤133に過大な荷重が作用することを防止できる。つまり、子カテーテル102とデリバリーワイヤ104との操作を一人の医師で行なっている場合でも、デリバリーワイヤ104の先端のコイル101が脳動脈瘤133に過大な荷重が作用することを確実に防止することができるので、挿入装置の操作の容易性をさらに向上させることができる。
【0128】
また、デリバリーワイヤ104を長手軸方向へ移動させる駆動装置1は、モータ3で発生した回転力の回転速度を減じて出力する減速機9を含む。このようにすれば、減速比に比例して駆動ローラ5に伝達されるトルクを増大させることができるので、小型のモータ3を用いた場合でもデリバリーワイヤ104の駆動力を増大させることができ、駆動装置1の製造コスト低減および小型化を実現することができる。モータ3の回転数はモータ3に印加される電圧によって制御され、電圧を変化させるだけでデリバリーワイヤ104の移動速度を調整することができるので、駆動装置1の製造コストをさらに低減でき、かつ、駆動装置1の信頼性を向上させることができる。
【0129】
また、モータ3および減速機9は、ハウジング2および隔壁16により形成されるケース内(すなわち小室2b内)に内包され、隔壁16には孔部16aが形成され、減速機9から駆動ローラ5へ回転力を伝達する回転シャフト4は孔部16aを貫通している。孔部16aの内周面には、回転シャフト4の回転面である外周面と接触し、小室2bの内部を外部から遮断するシール部19が設けられている。このようにすれば、駆動ローラ5および従動ローラ6が配置されている大室2aの内部空間と、小室2bの内部空間とを隔離することができるので、大室2aから小室2bへの液体の浸入を防止できる。したがって、モータ3および減速機9を防水できるので、大室2a内の洗浄および滅菌を容易に行なうことができる。
【0130】
また、駆動装置1は、1mm/s以上4mm/s以下の移動速度で、デリバリーワイヤ104を血管132へ挿入する方向へ移動させる。駆動装置1の移動速度を1mm/s以上とすれば、デリバリーワイヤ104の先端のコイル101が動脈瘤133の壁部に対して静止することを抑制できるので、平均的に小さな挿入力でコイル101を動脈瘤133へ挿入することができる。駆動装置1の移動速度を4mm/s以下とすれば、デリバリーワイヤ104の移動と子カテーテル102の操作とを容易に連携させることができる。
【0131】
また、駆動ローラ5および従動ローラ6の回転面5a,6aは、弾性材料で形成されている。さらに、駆動ローラ5の回転面5aには送り溝5bが形成されており、デリバリーワイヤ104は送り溝5bの内側に配置される。このようにすれば、回転面5a,6aと、回転面5a,6a間に挟持されるデリバリーワイヤ104との間に発生する摩擦力を増大させることができるので、デリバリーワイヤ104の移動中にデリバリーワイヤ104が回転面5a,6aに対して滑ることを抑制することができる。
【0132】
これまでの説明においては、脳動脈瘤133を塞栓するための塞栓治療用のコイル101を先端に取り付けたデリバリーワイヤ104を、人体131内の血管132へ挿入する挿入装置について説明した。本発明の挿入装置は、可撓性を有する線状の医療器具である医療用線状体を、血管、尿管、気管支、消化管またはリンパ管などの体内の管の中へ挿入し、体外からの操作によって目的部位まで誘導する挿入装置であればよい。たとえば医療用線状体は、カテーテルまたはガイドワイヤであってもよい。
【0133】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の一実施の形態に係る、デリバリーワイヤを血管へ挿入する挿入装置の構成を示す模式図である。
【図2】医療用線状体の駆動装置の断面模式図である。
【図3】図2に示すIII−III線に沿う駆動装置の部分断面模式図である。
【図4】図2に示すIV−IV線に沿う駆動装置の断面模式図である。
【図5】図2〜図4に示す駆動装置の側面図である。
【図6】模擬動脈瘤に0.5mm/sの速度でコイルを挿入したときの挿入力の経過を示すグラフである。
【図7】模擬動脈瘤に1.0mm/sの速度でコイルを挿入したときの挿入力の経過を示すグラフである。
【図8】模擬動脈瘤に0.5mm/sの速度でコイルを挿入したときの、模擬動脈瘤内部におけるコイルの挙動を示す模式図である。
【図9】模擬動脈瘤に1.0mm/sの速度でコイルを挿入したときの、模擬動脈瘤内部におけるコイルの挙動を示す模式図である。
【図10】挿入力センサの構成を示す断面模式図である。
【図11】挿入力センサに線状体を貫通させるときの線状体の湾曲の度合いを検出する光学系を示す断面模式図である。
【図12】挿入力センサがYコネクタに組み込まれて使用される例を示す模式図である。
【図13】コイル塞栓術治療に用いられる医療器具を示す模式図である。
【図14】コイル塞栓術治療の手順を示す流れ図である。
【図15】コイルを脳動脈瘤内に留置するときのカテーテル操作について示す模式図である。
【符号の説明】
【0135】
1 駆動装置、2 ハウジング、2a 大室、2b 小室、3 モータ、4 回転シャフト、5 駆動ローラ、5a,6a 回転面、5b 送り溝、6 従動ローラ、7 支持部材、8 弾性体、9 減速機、10 蓋部材、11 蝶番、12 レバー、13 突起部、14 係止部、15 弾性部、16 隔壁、16a 孔部、17 案内溝、18 突き出し部、19 シール部、31 Yコネクタ、32,33 入力ポート、34 出力ポート、40 制御回路、41 挿入用フットスイッチ、43 挿入速度制御部、45,50 ボリュームスイッチ、46 引抜用フットスイッチ、48 引抜速度制御部、60 挿入力センサ、62 センサ本体、63 貫通孔、64 入出力ポート、65,66 拘束部、67,68,69 内壁、70 凹部、71 空間、80 ラインセンサ、81 光源器、82 点灯回路、83 変換回路、90 センサ出力制御装置、92 スピーカ、93 表示器、100 医療器具、101 コイル、102 子カテーテル、103 親カテーテル、104,104a,104b デリバリーワイヤ、105,106 把持部、111,121 Yコネクタ、112,122 入力ポート、131 人体、132 血管、133 動脈瘤、134 コイル密度大領域、135 コイル密度小領域、136 拘束点、137 拘束点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用線状体を体内の管へ挿入する挿入装置であって、
医療用線状体を長手軸方向へ移動させる駆動装置と、
前記駆動装置の起動停止を制御する信号を発信するフットスイッチと、
医療用線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を計測する計測装置と、
医療用線状体に作用する圧縮力を術者に通報する圧縮力通報装置とを備え、
前記駆動装置は、
回転力発生器と、
前記回転力発生器で発生した回転力によって回転運動を行なう駆動ローラと、
前記駆動ローラの回転に従動して回転運動を行なう従動ローラと、
前記回転力発生器と前記駆動ローラとの間に介在し、前記回転力発生器で発生した回転力の回転速度を減じて出力する減速機と、
前記回転力発生器および前記減速機を内包するケースと、
前記減速機から前記駆動ローラへ回転力を伝達する回転部とを含み、
前記駆動ローラの回転面と、前記従動ローラの回転面とによって、医療用線状体が挟持され、
前記ケースには、前記回転部が貫通する孔部が形成されており、
前記孔部の内周面には、前記回転部の外周面と接触し、前記ケースの内部を外部から遮断するシール部が設けられている、挿入装置。
【請求項2】
医療用線状体は、カテーテル、ガイドワイヤ、塞栓用コイルを先端に取り付けたデリバリーワイヤのいずれかである、請求項1に記載の挿入装置。
【請求項3】
前記フットスイッチは、挿入用フットスイッチと、引抜用フットスイッチとを含み、
前記挿入用フットスイッチの操作により、前記駆動装置は、医療用線状体を管へ挿入する方向へ移動させるように作動し、
前記引抜用フットスイッチの操作により、前記駆動装置は、医療用線状体を管から引抜く方向へ移動させるように作動する、請求項1または請求項2に記載の挿入装置。
【請求項4】
前記計測装置は、
医療用線状体の湾曲の度合いを検出するセンサと、
前記センサにより検出される医療用線状体の湾曲の度合いを、医療用線状体に作用する圧縮力へ変換する、変換回路とを有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の挿入装置。
【請求項5】
前記圧縮力通報装置は、医療用線状体に作用する圧縮力を表示する視覚化器具と、医療用線状体に作用する圧縮力に対応した音声に変換する聴覚化器具との、少なくともいずれか一方を含む、請求項1から請求項4のいずれかに記載の挿入装置。
【請求項6】
前記回転力発生器は、電動機であって、
前記電動機の回転数は、前記電動機に印加される電圧によって制御される、請求項1から請求項5のいずれかに記載の挿入装置。
【請求項7】
前記駆動装置が医療用線状体を移動させる移動速度を調整可能な速度制御部をさらに備える、請求項1から請求項6のいずれかに記載の挿入装置。
【請求項8】
前記駆動装置は、1mm/s以上4mm/s以下の移動速度で、医療用線状体を管へ挿入する方向へ移動させる、請求項1から請求項7のいずれかに記載の挿入装置。
【請求項9】
前記駆動装置は、医療用線状体を挿通可能な貫通孔の形成された医療器具を保持するハウジングを含み、
前記ハウジングは、手動で開閉可能に設けられた蓋部材を有し、
前記駆動装置は、前記蓋部材に取り付けられた弾性体をさらに含み、
前記蓋部材には、開閉を操作するレバーが設けられており、
前記蓋部材を閉めると、前記弾性体が前記蓋部材を押圧する弾性力によって前記レバーは押止され、
前記レバーを弾性変形させて前記蓋部材を開ける、請求項1から請求項8のいずれかに記載の挿入装置。
【請求項10】
前記駆動ローラおよび前記従動ローラの回転面は、弾性材料で形成されている、請求項1から請求項9のいずれかに記載の挿入装置。
【請求項11】
前記駆動ローラおよび前記従動ローラの少なくともいずれか一方の回転面には、溝部が形成されており、
医療用線状体は、前記溝部の内側に配置される、請求項1から請求項10のいずれかに記載の挿入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−94235(P2010−94235A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266483(P2008−266483)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】