説明

挿管監視装置と方法

本発明は胸部でのインピーダンス測定に基づき患者の吸吸用気管内管の設置状態を体外から評価し監視する器具と方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は挿管直後から正常な気管内挿管が行われたかを評価し、その気管内管が正常に設置されているかを継続的に監視する装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気管内管は全身麻酔、集中治療、及び心肺蘇生を行う時に使用される。気管内管は患者の肺への気道を確保するために用いる。気管内管は喉頭鏡の助けで挿入される。この装置によりオペレーターは喉頭を目で確認し、この管を喉頭を通じて気管へ挿入することが出来る。ある時には喉頭が見えずに管を誤って気管とは反対の食道に挿入する事がある。
【0003】
気管内管が誤って食道に挿入された場合は十分な気道が確保できず、その結果患者は酸素欠乏となり重大な害となり死に至る事もあり得る。
【0004】
患者の搬送又は移動時に気管内管が異常に移動し、その状態の臨床的兆候が現れず手遅れになる事がある。
【0005】
従って最も重要なのは正常に気管内挿管されていることを出来るだけ早く確認する事である。管が異常な移動が起す危険がある場合には挿管状態を監視できることは又重要である。
【0006】
管の正しい位置の確認には通常管を通じて患者に一定量の空気或いはガスを送り込む方法である。管が気管に入っていれば聴診器により正常な呼吸音が聞ける。しかしストレスのある状態及び(又は)周囲が騒がしい場合にはこの重要な呼吸音が聞こえにくくなる。
【0007】
その結果呼吸音を聞く事に基づかない装置が幾つか紹介されている。これらは例えば圧力と呼吸後炭酸ガス測定を基礎とした装置である。呼吸後炭酸ガス測定は、空気が炭酸ガスを含み、患者の肺を通りかつ正しく挿管されていると仮定して、患者の排気空気を分析することに基づいている。しかし炭酸ガス含量の測定は幾つかのパラメーター(肺を通過する血流、肺内でのガス交換、一呼吸当たりの呼吸容積、1分当たりの呼吸量など)に依存する。肺を通過する血流が極端に減少しながら患者の呼吸が安定である場合には、呼吸後炭酸ガス濃度はほぼゼロであろう。この結果は正しくない挿管だと誤解される。呼吸後炭酸ガス法は挿管時に衰弱している患者の他の生理学的パラメーターに依存するので、信頼できる方法とは考えられない。
【0008】
その他の装置では正しい挿管を検出する要素として胸管直径の変化を用いる。胸管直径の測定も又幾つかの誤りを起こす原因により影響される。時々患者の胸部が堅すぎて呼吸により十分に膨張しない。このような場合横隔膜の動きにより腹腔が膨張する。これは勿論患者の胃に空気が入っている(間違った挿管)と誤解される。
【0009】
国際出願1987―07415(WO89/07415)には気管内管或いは食道内管の位置を見分ける器具が記載されている。この器具は患者の気管或いは食道に挿入する管からなる。この管ではその末端に一対の電極を取り付けたプローブを気管又は食道内に取り付けた時、その違いが導体間のインピーダンスの違いで判るようになっている。やや堅めのチューブである気管にプローブを取り付けると、電極の内の一つは気管と接触し他の電極は接触していない。その結果一つのインピーダンス値が得られる。柔らかいチューブである食道にプローブがある時にはプローブは食道と接触し、両電極は粘膜と接触し第二のインピーダンスを読みる。この測定原理は患者の気管及び食道がプローブの設置に対しどのように反応するかと言う前提に立っている為非常に信頼しにくい。この原理では胸部や食道が標準形状でない患者や体のこの部分に損傷のある患者には信頼性のある結果が得られない。その上通常の挿管プローブと一緒にこの器具を使うのは二重の挿管したことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の技術と方法に関連した上述の欠陥から、挿管直後に気管内管の正確な位置を評価し、経時的その位置を監視する器具と方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は胸腔のインピーダンスを測定することに基づいている。この測定は胸部外
から行う。インピーダンス測定はほぼ一定の直流(又は交流)を受ける少なくとも二個の電極の使用、電極間の直流(又は交流)電圧測定、及び電圧と電流の比(インピーダンス)を計算することからなる。この発明の好ましい実施形態ではこの器具は電極のインピーダンスが測定に含まれれないよう4個の電極からなる。供給電流は周波幅50乃至100kHz、例えば80kHzの交流である。
【0012】
本発明の背後にある原理は膨張した肺の胸管インピーダンスは収縮した(又は空の)肺のインピーダンスとは異なることにある。これは肺が膨張したときに電極間に絶縁材料(空気)が存在することによる。この発明はインピーダンスのこの変化を利用して正しい挿管と誤った挿管を区別する。気管内管を気管に挿入し肺が呼吸すると、胸管内インピーダンスの変化が直ちに認められる。反対にその管が食道又は胃に設置されたときには有意な胸部インピーダンスの変化は測定出来ない。
【0013】
本発明は従って患者の呼吸用気管内管の位置を即座にかつ連続的に監視する器具からなる。患者の呼吸用気管内管の設置を評価し監視する器具は
少なくとも2個の測定用電極を持った一つの測定装置、
測定用電極作動電源、
監視開始/停止用使用者インターフェース装置
肺の膨張の有無、その結果挿管装置の位置の正誤を知らせる表示装置又は警報装置、及び
電極間信号の送信用連結装置、電源、使用者インターフェース装置、及び表示装置
からなる。この器具の特徴は胸部インピーダンスが体外で測定できるよう電極を胸腔上に設置することである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の器具により患者に不必要なストレスを与えることなく正常な挿管を迅速かつ確実に評価できる。この装置は傷害患者、呼吸をしていない患者、PEA(無拍脈活性)の場合に使用でき、さらに除細動装置とも共用出来る。
【0015】
本発明による器具はどのような挿管装置とも共用できその結果高い融通性を持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好ましい実施形態において測定装置は4個の電極からなり、そのうち2つの電極は胸腔への電流供給に他の2つの電極は胸腔間の電圧降下測定に使われる。
【0017】
この発明のより好ましい実施形態においては連結装置は次の目的のための処理装置からなる:使用者インターフェース装置からの始動命令の授受、測定作業の管理、インピーダンス信号の計算及び分析、時間に伴う有意なインピーダンス変化の確認、“呼吸”又は“無呼吸”表示信号の表示装置又は警報装置への伝送、及び測定値、計算値、及び参照値保存用記憶装置。
【0018】
本発明は又患者の呼吸用気管内管の設置を評価し監視する方法からなるがその場合a) 気管内インピーダンス信号を測定装置から得の測定データをもとに得、かつ b) インピーダンス信号を分析し経時に伴うインピーダンス変化を確認し、c) インピーダンス変化を既定の閾値と比較し、d) もしその変化の大きさが既定値を越える場合は第一の表示装置又は警報装置を作動して正常挿管の信号を出し、さらに(又は)変化の大きさが既定値を越えない場合は最初の装置とは異なる第二の表示装置又は警報装置を作動して誤挿管を指示するという特徴を持つ。
【0019】
この発明の方法の有利な実施形態ではステップa)からステップc)を測定装置に連結した処理装置で行い、処理装置と接続した記憶装置に閾値を保存する。本実施形態を変形したものではステップa)を実施する前に使用者が開始信号を処理装置に出して、ステップa)からステップd)を既設定時間繰り返すかあるいは使用者が停止信号を処理装置に出す迄繰り返す。
【0020】
本発明の器具は低電力消費であることを指摘することは重要である。何故ならば本装置で動力が必要なのはインピーダンス測定装置、処理装置/記憶装置及び警報装置だけである。衝撃付与時に高い動力が必要な除細動器とはこの発明は明らかに異なる。この発明による器具は低動力しか必要でないから、その一つの実施形態として電源が低エネルギー、例えば小型携帯電池を持つ器具を提供出来る。
【0021】
この発明による器具の測定用電池は高感度の物が使用される。これらは損失が出来る限り低くいように皮膚と接触する。電極の主な働きは電極(電子)と組織(イオン)との間の電流伝導を促進することである。
【0022】
より簡単な形では作動用スイッチ(使用者インターフェース装置)、二個の電極、及び発光装置からなる器具がある。電極を患者の胸部に置くと器具は起動する。患者のインピーダンスを測定し既定の閾値を越えるインピーダンス変化を検出すると直ちに発光装置を起動する。発光装置はインピーダンス値が閾値を超えている限り作動し、そのインピーダンスが閾値以下に減少すると自動的に停止する。この実施形態では挿官の連続監視が可能である。もし閾値を超えたインピーダンス変化を検出しなかった時には、第二の警報装置又は表示装置が作動し誤挿官信号を出す。
【0023】
オフ、一回測定、及び監視という三点スイッチを持つ器具を提供することも出来る。“オフ”位置では検出は行われない。“一回測定”位置ではこの器具は既設定の回数だけ或いは停止するまでの既設定時間インピーダンス値を測定する。この運転モードは成人患者を監視するのに有用である。なぜなら一度正しく挿官されると管が元の位置からはずれるチャンスは低いからである。“監視”位置では測定は器具が停止するまで継続される。この設定モードは幼児の監視及び騒々しい条件下(ヘリコプター、ボート、山岳救助等において)での監視に有用である。“監視”状態では又患者の呼吸数を測定し分析することが出来、もし呼吸数が設定範囲でない場合には別の警報装置を作動させることが出来る。
【0024】
又数個の発光装置/音発生装置又は表示装置をもつ器具を提供することが出来る。これにより装置が作動しないことによる警報が出ない状態を避けられる。前述のようにこの発明の好ましい実施形態では、肺が呼吸していることを示す第一信号が出力され呼吸してないことを示す第二信号を出力される。この第二信号の出力はインピーダンス変化を検出すること無しに既設定時間(例えば5秒)後に作動する。
この発明の一つの実施形態において、器具は電池の充電状態を制御する装置と警報装置(発光装置/音発生装置)が正常に作動している事をチェックする装置からなる。この装置の一つの形態としては電池の充電状態を示す表示装置と、例えばボタンを押すと発光装置/音発生装置が電池と連結しこの装置が作動する事よりなる。
【0025】
この器具は又電極を制御する装置を含む。
【0026】
この発明の一つの実施形態では又使用者インターフェース装置から胸部内インピーダンス用参照値と閾値を処理装置に入力できる。更にこの装置に患者の特性、例えば患者の年齢を入力したり、患者間で患者がいずれのグループに属するか選択することも出来る。
【0027】
本発明の一つの実施形態にではこの器具は独立した携帯器具と見る事も出来るが、蘇生/監視処置に使用する除細動器やその他の装置(例えばECG)の中に組み込むことも出来る。ECG器具からなる器具及び本発明による器具は無脈拍電気活性(PEA)、即ち心臓は電気シグナルを送るが患者は呼吸しない状態を検出出来る。
【0028】
パッド又は電極を胸部に置くと直ちに器具は“安静”状態の患者特有のインピーダンスを測定し、その測定値を測定時間と共に後に使用するために保存する。それぞれの胸部が固有のインピーダンスを持つことが記される。胸部の空気量或いは血量が呼吸,血流又は胸部圧縮(心拍停止)により変化すると胸部インピーダンスが変化する。もし肺が膨張すると新規の測定と記憶値との比較でインピーダンス値は有意な違いとなる。胸部の空気容量変化によるインピーダンス変化の測定には呼吸一回だけで十分である。
【0029】
本発明は添付の図に示した非限定の例を用いて更に詳細に説明する。この図で
図1は本発明による器具の実施形態を示す。この器具はこの場合使用者インターフェース装置2としてオン”と“オフ”位置付きの回転スイッチを含むハウジングからなる。このハウジングには電源(表示されていない)としての携帯電池、発光装置3及び音発生装置4を含む。電極e1とe2は電線5でハウジングと接続する。本発明のこの実施形態では既設定の時間後に胸部インピーダンスに有意な変化を検知すると発光装置と音発生装置(それぞれ3と4)が作動する。実施形態として胸部インピーダンス変化の大きさに従って選択的に作動する数個の発光装置/音発生装置或いは表示装置が考えられる。
【0030】
後に詳しく述べる本発明の好ましい形態において、測定装置は4個の電極、その内2個の電極は胸腔に電流を流し他の2個は電圧信号を読みとる。一個の電流電極と一個の電圧電極を同じパッドに設置し2個だけのパッドを患者の胸部の設置することも出来る。
【0031】
“インピーダンス”という用語は一般に抵抗と誘導項/容量項からなる複素数に関するものであるが、本発明はインピーダンスの抵抗/容量項だけ及び(又は)誘導項を測定することにより明らかに実施出来る。交流又は直流の電圧/電流を用いて測定する。直流の場合にはインピーダンスの抵抗項のみ測定する。しかし測定に直流を使用するのは体組織が容量的であることから不適当である。直流による測定は従って単に皮膚層の抵抗を反映するにすぎない。このことから本発明の好ましい実施形態は交流の電圧/電流の使用である。
【0032】
明らかに電圧/電流/コンダクタンスの測定は胸部インピーダンスの決定と同様に使用できる。
【0033】
図2は本発明の器具1をいかに胸部内管6と一緒に使われかを示す。管6が正しい位置の時には、気管7は空気を肺に送り肺は膨張しインピーダンス値は電極e1とe2(或いはe1,
e2, e3及び e4)により測定される。この値が胸部インピーダンスの有意な増加に相当するなら、正しく挿管されおり第一の発光装置/音発生装置が作動する。反対にこの値が胸部インピーダンスの有意な増加に相当しないならば、第一の発光装置/音発生装置は作動しない。閾値を越えない場合には随意の発光装置/音発生装置が作動する。
【0034】
図3Aに呼吸している患者の胸部インピーダンスを時間に対してプロットした図を示す。この図から明らかなように、呼吸活動により胸部内インピーダンスがかなり変化する。又この事は後述のごとく本発明の方法によるテストでも示される。呼吸インピーダンスの山と谷との差は0.5オームの変化である。(図3B)これらの図はトマッサオ ペリス(Tommassao Pellis), ジョー ビセラ(Joe Bisera), ワンチャン タン(Wanchung Tang), マックス ハリー ベイル(Max Harry Weil)著, クリティカル ケアー メディスン誌、2002年、30巻、4号(Crit Care Med, 2002, Vol. 30, Nr. 4)に “心拍停止、呼吸停止及び心肺停止の自動検出可能な自動体外除細動器の拡大”(Expanding automatic external defibrillators to include automated detection of cardiac, respiratory, and cardiorespiratory arrest”と題する論文に見出され、本特許の文献としてリストしている。
【0035】
図4は本発明による器具の実施形態ブロック図を示す。この図は胸部インピーダンス測定用の電極e1とe2からなる測定装置e、測定装置eの作動用電源9、監視開始と停止用の使用者インターフェース装置2、使用者インターフェース装置2から開始命令を受け、測定プロセスを管理し、インピーダンス信号を計算、分析し、時間に伴う有意なインピーダンス変化を確認し、“呼吸”か“無呼吸”を表す信号を表示装置又は警報装置3、4に伝送する処理装置10と、測定値、計算値、参照値の保存用記憶装置11を示す。
【0036】
図5は本発明による方法の一つの実施形態を表す図である。ステップ20で開始命令を使用者インターフェース装置2から処理装置10に伝送する。ステップ21でインピーダンス(Z1)を測定装置eと処理装置10とで測定する。インピーダンス値の変化の確定には参照値(Z0)を処理装置10に供給せねばならない。参照値Z0が入手出来るかはステップ22で制御される。(Z0は保存又は記憶装置11に存在するか使用者インターフェース装置2により入力出来る)。もしZ0が入手出来るなら、インピーダンス変化(Zch)をステップ23で処理装置10により計算し、その変化をステップ24で閾値(Zthr)と比較する。この閾値(Zthr)は又保存装置或いは記憶装置11からも入手可能であり、又使用者インターフェース装置2からも供給される。もし閾値に到達しないなら(ステップ25)、“無呼吸”状態を評価し処理装置2により対応する警報装置3,4が作動する。本発明のこの実施形態では測定、比較、警報作動プロセスは使用者インターフェース装置2が停止信号が発するまで継続する。もし器具が停止すると(ステップ28)このプロセスは終了する。もし閾値に到達するか越えれば(ステップ26)、“呼吸”条件を確認し対応する警報装置が作動する。
【0037】
もし参照値Z0が利用できない時には、第一回の測定結果か初期測定で得た値を新しいZ0とし(ステップ29)前述したようにステップ21からステップ28のプロセスを継続する。
【0038】
記憶装置或いは保存装置11は更に処理装置10が演算を行うとき本発明の方法を実施するための実行可能なコンピュータープログラム命令を含む記憶部からなる。
【0039】
この技術を熟知する人は本発明の開示に従い普通の仕事としてこれらの実行可能な命令を実施する。
【0040】
図5はこの方法の一つの可能な実施形態を示すがその他の変形も可能である。参照値Z0と閾値Zthrは患者の特性(性別、年齢、体重など)に関する表に保存できる。使用者インターフェース装置の別のスイッチを用いて患者グループ間の選択ができ、従って現在のZ0値 及びZthr値が確立できる。
【0041】
図6は本発明の一実施形態での測定装置eの図を示す。この測定装置は次の物からなる。
- 種々のコンポネントを作動させる動力供給源でこの供給源は詳しくは図7に示し、
- 胸部に電流を流すための電極e3, e4に電流を供給する“電流運搬回路”で電流は電流源9により供給され,その大きさは500μA、周波数は80Hzであり,その回路の詳細は図8に示し、
- 電極e1, e2からなる“ピックアップ”回路或いは検出回路、差信号の測定乃至増幅用の機器増幅器12, 低域濾波器13(信号の交流成分のみが重要であるため整流前に直流を濾波する)、及び直流出力を供給する精密整流器14でこの回路は詳しく図9に示す。
【0042】
図7はコンポネントへの動力供給を示す。これは二個の直流9Vの電池14,二個の抵抗器R1とR2,LM74/CN型集積回路を備えた増幅器15、二個の16V、47μFのコンデンサーC1とC2、及び二個のL7805及びL7905型集積回路からなる。
【0043】
図8は電流運搬回路を示す。この回路は正弦波発信器15、定電流発生装置16、及び出力時の緩衝回路17からなる。
【0044】
図9はピックアップ回路を示す。
【0045】
器具を胸部に接続すると電流運搬回路と連結した電流電極e1とe2をとうして電流が送られる。ピックアップ回路と連結している他の電極e1とe2は胸部での電圧降下を示す。この電圧降下は前述の表示装置及び警報装置を制御する処理装置に送られる。
【0046】
図6から9に示した測定装置で豚を用いて本発明の方法をテストした。
【0047】
豚を手術台上に仰向けに寝かせ麻酔を施した。第一胸部内管を胸部に設置した。この準備中豚はこの管(管1)を通して呼吸した。第二の管(管2)を胃に呼吸させるため(誤った挿管)食道に設置した。電極e1, e2 , e3, e4を豚の胸の4つの異なる個所に取り付け測定装置と連結した。測定装置の出力はオシロスコープに連結した。
【0048】
管1をとうして肺呼吸をしている間はオシロスコープ出力に変動が認められ、この変動はインピーダンスの変化に対応し図10に示した。変動は10mV程度の大きさであった。
【0049】
アンビュウバッグを管2とつなぎ“呼吸”を試みた。インピーダンスの変化を測定したが変動は検知されなかった。その結果を図11に示す。
【0050】
本発明の挿管状態監視用器具の出力信号(光/音/画像)は周囲の騒音に影響されなく(従来技術の聴診器法とは反対に聴診器で肺の音を聞くのは困難である)、低心拍出力(これは呼吸後炭酸ガス測定に影響する)にも影響されず、十分な呼吸に到達する前の数回の呼吸による遅れはない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この器具は成人、子供、新生児の監視に使用出来る。前述のように年齢に関わらず患者の集中治療や搬送時に正常な管の設置を監視する警報装置としても用いられる。
【0052】
本発明は又挿管が正常か正常でないかを直ちに検出できる。即ち挿管した患者の集中治療や搬送時に管の設置が正常か正常でないかを即座に検出できる方法からなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による器具の実施形態図である。
【図2】患者用の胸部内管及び本発明による器具を示す。
【図3】時間に対する胸部インピーダンスのプロット図を示す。
【図4】本発明による器具の実施形態のブロック図である。
【図5】本発明の一つの実施形態図を示す。
【図6】本発明による測定装置の実施形態を示す。
【図7】本発明による測定装置の実施形態を示す。
【図8】本発明による測定装置の実施形態を示す。
【図9】本発明による測定装置の実施形態を示す。
【図10】図5−9の測定装置使用によるテスト結果を示す。
【図11】図5−9の測定装置使用によるテスト結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の呼吸用気管内管の設置を評価し監視するに際し器具が
少なくとも二個の測定用電極を有する測定装置、
測定用電極の作動用電源、
監視を開始或いは停止する使用者インターフェース装置、
肺の膨張の有無、その結果挿管装置の位置の正誤を知らせる信号を出す表示装置或いは警報装置、及び
電極、電源、使用者インターフェース装置及び表示装置間の信号伝達用連結器
からなり、胸部インピーダンスを外部から測定するために電極を胸腔に設置することを特徴とする器具。
【請求項2】
器具が胸部インピーダンス測定に適用する4個の電極からなることを特徴とする請求項1の器具。
【請求項3】
連結器が使用者インターフェース装置から開始命令を受け、測定プロセスを管理し、インピーダンス信号を計算、分析し、時間経過と共に有意なインピーダンス変化を確認し、“呼吸”か“無呼吸”かを表す信号を表示装置或いは警報装置に伝送するための処理装置からなり、かつこの装置が測定値、計算値及び参照値を保存する記憶装置からなることを特徴とする請求項1の器具。
【請求項4】
電源が携帯電池からなる事を特徴とする請求項1の器具。
【請求項5】
使用者インターフェース装置が“オン/オフ”スイッチ又は第一が“オフ”位置、第二が“一回測定”位置、第三が“監視中”位置を有する三点スイッチからなる事を特徴とする請求項1の器具。
【請求項6】
警報装置が音発生装置及び(又は)発光装置からなることを特徴とする請求項1の器具。
【請求項7】
処理装置が収縮及び膨張した肺のインピーダンスを計算、分析し、測定したインピーダンス値を記憶装置に保存し、更に参照値が記憶装置にない場合は測定値をもとに参照値を作成することを特徴とする請求項1の器具。
【請求項8】
使用者インターフェースが参照胸部インピーダンス値、閾インピーダンス値及び(又は)患者特性を処理装置に入力することを特徴とする請求項1の器具。
【請求項9】
器具が除細動器と統合されることを特徴とする上記の請求項のいずれかによる器具。
【請求項10】
胸部内挿管の管理及び監視するため胸部インピーダンス測定用器具の使用。
【請求項11】
患者呼吸用の胸部内管の設置状態を体外で評価し管理する方法においてa)胸部インピーダンス信号を患者の胸部に設置した測定用電極から得られる測定データをもとにして得、更にb)インピーダンス信号を分析して時間に伴うインピーダンス変化を確認し、c)インピーダンス変化を既定の閾値と比較し、さらにd)もし変化の大きさが既定値を越えていれば第一の表示装置か警報装置を作動して正常な挿管を示し更に(又は)変化の大きさが既定値を越えない場合は、第一の装置とは異なる第二の表示装置か警報装置を作動して誤挿管を示すことを特徴とする方法。
【請求項12】
ステップa) からステップc)を測定用電極に連結した処理装置で行い、その閾値を処理装置と接続した記憶装置に保存することを特徴とする請求項11の方法。
【請求項13】
ステップa)に先立ち使用者が開始信号を処理装置に送りかつステップa)からステップd)を既定の時間の間或いは使用者が停止信号を処理装置に送る迄繰り返すことを特徴とする請求項12の方法。
【請求項14】
処理装置運転用プログラムが請求項10から12のいずれかの方法で実行する指令を含むことを特徴とし、記憶装置に保存されたコンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−511249(P2006−511249A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−519372(P2004−519372)
【出願日】平成15年6月19日(2003.6.19)
【国際出願番号】PCT/NO2003/000208
【国際公開番号】WO2004/004541
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(504460533)
【Fターム(参考)】