説明

捕虫装置および遠隔閲覧システム

【課題】粘着性シートに捕虫した虫の計数精度や画像解析精度の向上を図ることができる捕虫装置を提供する。
【解決手段】虫を付着し捕獲する粘着性シート18と、粘着性シート18の粘着面である一方面18aを撮像する撮像装置6と、粘着性シート18の一方面18a側を照明する第1の照明具4と、粘着性シート18の他方面18b側を照明する第2の照明具24とを備えた捕虫装置1。捕虫装置1は、撮像装置6によって、第1の照明具4のみを用いた粘着性シート18の一方面18aの反射光画像と、第2の照明具24のみを用いた粘着性シート18の一方面18aの透過光画像とを取得可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性シートを用いて虫を捕獲する捕虫装置に関し、特に工場や店舗等で好適に使用できる捕虫装置および遠隔閲覧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、捕虫装置は、虫を捕獲駆除することを主な目的として工場や店舗等に設置されるが、衛生管理を要する工場や店舗等などでは、虫を捕獲駆除するだけでなく、捕えた虫の種類や数などの捕獲状況を把握することが要求されている。
この種の捕虫装置としては、粘着性シートに付着した虫の種類や数などの捕獲状況を、CCDカメラ等による撮像データによって把握するものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1記載の捕虫装置では、粘着性シートに付着した虫を撮像するCCDカメラを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−259448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置では、粘着性シートに捕捉された虫をCCDカメラで撮影するが、粘着性シート表面の反射による光のムラや虫体の影の影響で鮮明な虫体画像が得られず、捕獲した虫の正確な計数や画像解析が難しくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、粘着性シートで捕獲した虫の計数精度や画像解析精度の向上を図ることができる捕虫装置および遠隔閲覧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る捕虫装置は、虫を付着し捕獲する粘着性シートと、前記粘着性シートの粘着面である一方面を撮像する撮像装置と、前記粘着性シートの一方面側を照明する第1の照明具と、前記粘着性シートの他方面側を照明する第2の照明具と、を備え、前記撮像装置によって、前記第1の照明具のみを用いた前記粘着性シートの一方面の反射光画像と、前記第2の照明具のみを用いた前記粘着性シートの一方面の透過光画像とを取得可能である。
本発明に係る捕虫装置は、前記第1および第2の照明具の点灯および消灯を制御する制御部をさらに備えていることが好ましい。
本発明に係る遠隔閲覧システムは、前記捕虫装置と、前記捕虫装置によって得られた画像データを転送する画像転送装置と、前記画像転送装置によって、画像データが転送されるサーバーとを備え、前記サーバーには、1または複数の遠隔端末装置が接続可能とされ、前記遠隔端末装置により前記画像データの閲覧が可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1の照明具のみを用いた粘着性シートの反射光画像と、第2の照明具のみを用いた粘着性シートの透過光画像とを取得可能であるので、反射光画像と、透過光画像とを照合することによって、透過光画像により特定した虫の形状(外形)、大きさ、位置などの情報に基づいて、反射光画像において虫自体の画像を特定することができる。
このため、虫の形状(外形)、大きさに加えて、色彩や模様なども正確に把握でき、画像解析精度の向上を図ることができる。
従って、捕獲した虫の数や種類などの捕獲状況を正確に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の捕虫装置の一実施形態の外観斜視図である。
【図2】前図に示す捕虫装置の断面図である。
【図3】誘虫灯のみを用いて粘着性シートの上面を撮影した反射光画像を示す平面図である。
【図4】前図に示す画像を拡大した平面図である。
【図5】第2照明具のみを用いて粘着性シートの上面を撮影した透過光画像を示す平面図である。
【図6】前図に示す画像を拡大した平面図である。
【図7】前記捕虫装置を用いた遠隔閲覧システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る捕虫装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の捕虫装置の一実施形態である捕虫装置1の外観斜視図である。図2は、捕虫装置1のA−A断面図である。
以下の説明において、図2における左方を前方といい、右方を後方ということがある。
【0010】
図1および図2に示すように、捕虫装置1は、捕虫ケース3(ケース体)と、捕虫ケース3内に設けられた粘着性シート18と、粘着性シート18の上面18aを撮影するCCDカメラ6と、粘着性シート18の上面18a側を照明する誘虫灯4と、粘着性シート18の下面18b側を照明する第2照明具24と、誘虫灯4および第2照明具24の点灯および消灯を制御する制御部8とを備えている。
【0011】
捕虫ケース3は、取り付け用のブラケット2を備えた直方体状の筐体であり、底板3aと、底板3aの前端に立設された前板3bと、底板3aの後端に立設された後板3cと、前板3bおよび後板3cの上端に設けられた上板3dとを有する。
図2に示すように、捕虫ケース3内には、虫を捕獲する捕獲部14と、CCDカメラ6やモータ等を収容する撮像機器収容部15とが形成されている。符号3eは捕獲部14と撮像機器収容部15とを上下に区画する仕切板である。
【0012】
捕虫ケース3の前板3bには、虫が通過可能な開口部16が形成されている。開口部16は、これを通過した虫が捕獲部14内に入るように形成されている。
符号16aは、所定の大きさ以上の物体(大型昆虫など)が捕虫ケース3内に入り込まないように開口部16に設けられた格子である。
【0013】
粘着性シート18と誘虫灯4は、捕獲部14内に設けられている。
粘着性シート18は、虫を粘着作用によって付着させて捕獲するもので、例えば紙の表面に粘着剤が塗布されたものを使用できる。図示例では上面18aが粘着面とされる。下面18bは粘着面ではないことが好ましい。
粘着性シート18は、ある程度の光透過性を有することが好ましい。
【0014】
粘着性シート18は、底板3a上に設けられたシート装着部5に設けられたセット部20に装着されている。
図示例では、粘着性シート18は、捕虫ケース3の長手方向(図2において紙面に垂直な方向)に間隔をおいて設けられた一対のセット部20間に、底板3aに平行に張架されているため、捕虫ケース3の長手方向に沿って延在している。
【0015】
シート装着部5は、下板部5aと、その前端に設けられた前板部5bとからなる断面略L字状に形成され、捕虫ケース3に対し前後に出し入れ可能となっている。前板部5bの下端部5cは、シート装着部5を前方に引き出すための取手となっている。
下板部5aの後端部には係止突起(図示略)が形成され、この係止突起は、シート装着部5が収納位置(図2に示す位置)にあるときに、捕虫ケース3の底板3aの係止部材17に係止してシート装着部5の前方移動を規制する。
【0016】
誘虫灯4(第1の照明具)は、粘着性シート18の粘着面(一方面)である上面18aを照明できる位置に設けられている。
図示例では、誘虫灯4は、セット部20よりも後方において底板3a上に立設された仕切板3fの前面側に、セット部20より高い位置に設けられている。
誘虫灯4としては、例えば、蛍光管や水銀灯などを用いることができ、例えば蠅などの小型昆虫が好む周波数である370nm付近の波長の光を出射するものが好適である。図示例の誘虫灯4は、捕虫ケース3の長手方向に沿う円筒状のものである。
【0017】
第2照明具24は、底板3aに形成された収容部3i内に設けられており、粘着性シート18の下面18bに、下方から光を当てることができる。
第2照明具24は、特に限定されないが、例えば蛍光灯や発光ダイオード等を使用できる。
【0018】
CCDカメラ6は、粘着性シート18に付着した虫の捕獲状況を撮影する撮像装置であって、撮像機器収容部15内に、粘着性シート18の上面18aに対面して設けられている。
CCDカメラ6は、一対の走行ローラ19a、19bを備えた走行台21上に設けられている。
走行台21は、捕虫ケース3の長手方向に延在する案内レール21a,21bに沿って走行可能であるため、CCDカメラ6は、粘着性シート18の長手方向に沿って往復移動可能である。
なお、撮像装置は、CCDカメラに限らず、ビデオカメラなどであってもよい。
【0019】
撮像機器収容部15には、図示しないステッピングモータ(駆動モータ)が設けられ、このステッピングモータは、伝動ベルト22を介して走行台21に駆動力を伝達できる。
前記ステッピングモータは、例えばサーボモータ等と同様のパルス駆動モータであり、駆動パルスの周波数に比例する速度で回転し、その回転数が駆動パルス数に比例するという特性を備えており、走行台21(CCDカメラ6)の位置を容易に確認することができる。
【0020】
撮像機器収容部15と捕獲部14を区画する仕切板3eには開口部3gが設けられ、CCDカメラ6はこの開口部3gを通して粘着性シート18を撮影可能となる。
開口部3gには、虫が捕獲部14から撮像機器収容部15に侵入しないように、開口部3gを閉止する透明板3hを取り付けることができる。透明板3hは粘着性シート18を透視可能な材料、例えばガラス、プラスチックなどからなる。
【0021】
図2に示すように、制御部8は、誘虫灯4および第2照明具24の点灯および消灯を制御することができるため、後述する撮影の際に、点灯および消灯の切り替えを容易に行うことができる。
制御部8は、後述する反射光画像(図3に示す画像P1)と、透過光画像(図5に示す画像P2)とを照合し、透過光画像により特定した虫の形状および大きさの情報に基づいて、反射光画像において虫の画像を抽出できるように構成してもよい。
【0022】
図1に示すように、捕虫ケース3の一方の端部には、外部から操作可能なON,OFF可能なスイッチ、電源ランプなどの電源機器を収容する第1収容部10が形成され、他方の端部には、制御機器(制御部)を収容する第2収容部12が形成されている。符号3j、3kは、それぞれ第1収容部10および第2収容部12を区画する仕切板である。
【0023】
次に、捕虫装置1の使用方法について説明する。
誘虫灯4の点灯によって誘引されることなどによって、開口部16を通して捕虫ケース3の捕獲部14内に入った虫は、粘着性シート18の上面18aに接触すると、粘着作用によって捕獲される。
【0024】
粘着性シート18による捕獲状況を把握するため、粘着性シート18の上面18aを、CCDカメラ6を用いて撮影する。
撮影は、まず、誘虫灯4のみを用いて行う。すなわち、誘虫灯4を点灯状態とし、かつ第2照明具24を消灯状態として撮影を行う。
図3に示す画像P1は、誘虫灯4のみを用いて粘着性シート18の上面18aを撮影した画像の一例である。
誘虫灯4は、粘着性シート18の上面18a側に設けられているため、画像P1は、誘虫灯4からの光が上面18aに反射した光による画像(反射光画像)である。
図4に示すように、画像P1では虫7の影7aが形成されたり、上面18aからの反射により光のムラが生じることがあるが、虫7自体の画像は比較的鮮明である。
【0025】
次いで、粘着性シート18の下面18b側に設置された第2照明具24のみを用いて撮影を行う。すなわち、第2照明具24を点灯状態とし、かつ誘虫灯4を消灯状態として撮影を行う。
図5に示す画像P2は、第2照明具24のみを用いて粘着性シート18の上面18aを撮影した画像の一例である。
画像P2は、第2照明具24からの光が粘着性シート18を透過した光による画像(透過光画像)である。
図6に示すように、画像P2では、逆光のため虫7自体の画像は暗くなりやすいが、虫7の影はほとんど形成されず、光のムラも生じにくい。
【0026】
上述のように、図4に示す画像P1では、影7aにより虫7(符号7A〜7Dで示す)の形状(外形)を把握しにくい半面、虫7自体の画像は鮮明であるため、色彩や模様などの情報が得られやすい。また、羽根などの半透明部分についても特定しやすい。
一方、図6に示す画像P2では、逆光のため虫7(7A〜7D)の色彩や模様などがわかりにくいが、影がほとんど形成されず、光のムラも生じにくいため、形状(外形)、大きさ、および位置に関しては正確な情報が得られる。
【0027】
このため、画像P1と画像P2を照合し、画像P2(図6)により特定した虫7A〜7Dの形状(外形)、大きさ、位置などの情報に基づいて、画像P1(図4)において虫7A〜7D自体の画像を特定することができる。
画像P1によれば、虫7A〜7Dの色彩や模様等を特定できるため、虫7A〜7Dの形状(外形)、大きさに加えて、色彩や模様なども正確に把握でき、画像解析精度の向上を図ることができる。
従って、捕獲した虫の数や種類などの捕獲状況を正確に知ることができる。
【0028】
次に、捕虫装置1を用いた遠隔閲覧システムについて、図7を参照しつつ説明する。
図7に示すように、この遠隔閲覧システムは、捕虫装置1と、捕虫装置1で得られた画像データ(画像P1、画像P2)を転送する画像転送装置31と、サーバー32とを備えている。
サーバー32には、インターネット33を介して遠隔端末装置PC1、PC2が接続可能であり、遠隔端末装置PC1、PC2では、サーバー32を介して前記画像データの閲覧が可能になっている。
本システムでは、複数の画像データ(画像P1、画像P2)を転送するため、転送するデータの容量が大きくなることから、画像転送装置31が用いられる。
【0029】
この遠隔閲覧システムでは、画像データに基づいて自動計測された虫の捕獲数(1日ごとの捕獲数や累計数など)も閲覧可能とすることができる。
この遠隔閲覧システムによれば、遠隔端末装置PC1、PC2によって前記画像データおよび捕獲数をリアルタイムで確認できる。
なお、図示例では、2つの遠隔端末装置PC1、PC2が用いられているが、遠隔端末装置の数は1であってもよいし、3以上の任意の数であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…捕虫装置、3…捕虫ケース(ケース体)、4…誘引灯(第1の照明具)、6…CCDカメラ(撮像装置)、7…虫、8…制御部、16…開口部、18…粘着性シート、24…第2照明具(第2の照明具)、31…画像転送装置、32…サーバー、P1…反射光画像、P2…透過光画像、PC1、PC2…遠隔端末装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫を付着し捕獲する粘着性シートと、
前記粘着性シートの粘着面である一方面を撮像する撮像装置と、
前記粘着性シートの一方面側を照明する第1の照明具と、
前記粘着性シートの他方面側を照明する第2の照明具と、を備え、
前記撮像装置によって、前記第1の照明具のみを用いた前記粘着性シートの一方面の反射光画像と、前記第2の照明具のみを用いた前記粘着性シートの一方面の透過光画像とを取得可能であることを特徴とする捕虫装置。
【請求項2】
前記第1および第2の照明具の点灯および消灯を制御する制御部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の捕虫装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の捕虫装置と、
前記捕虫装置によって得られた画像データを転送する画像転送装置と、
前記画像転送装置によって、画像データが転送されるサーバーとを備え、
前記サーバーには、1または複数の遠隔端末装置が接続可能とされ、前記遠隔端末装置により前記画像データの閲覧が可能であることを特徴とする遠隔閲覧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−19697(P2012−19697A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157875(P2010−157875)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000101938)イカリ消毒株式会社 (33)
【Fターム(参考)】