説明

捲回筒形密閉式鉛蓄電池

【課題】捲回形密閉式鉛蓄電池のセパレータが集電タブのばりによって破損して短絡することを防止しするとともに、自己放電特性を向上させる。
【解決手段】帯状の正極、負極が帯状のセパレータ4を介して捲回された捲回群を有する鉛蓄電池において、集電体と打ち抜き加工により一体形成される集電タブ2が捲回群の端縁に設けられている正極又は負極の各集電タブのばり3を有する面が内側になるように捲回することで、ばりとセパレータの間に緩衝地帯となる空隙を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は捲回形密閉式鉛蓄電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、帯状の正極、負極が帯状のセパレータを介して捲回された捲回群を備え、該極板群が有底筒状の電槽内に収容されている捲回形密閉式鉛蓄電池を対象とする。
【0003】
捲回形密閉式鉛蓄電池は、長尺の正負極板をセパレータを介して捲回された構造をもっている。このような捲回形電池の集電タブは1つではなく、捲回された電極群を真上から見たときに、同極性の集電タブが一列にそろうように、複数設定されている。また、電極群の外周に行くほど半径が大きくなるため、集電タブの幅を広げることができる。集電タブの幅を広げることにより、電池内部抵抗を低減し出力特性を向上することが可能となる。
【0004】
しかしながら、この集電タブを設ける際に打ち抜き加工工程で一方の面にばりを有する場合があり、この集電タブのばりを有する面が正極では外側、負極では内側とランダムな組み合わせで捲回された構造であった。特許文献1では短絡の危険性を低減するために正極格子の桟の交点と負極格子の桟の交点とが重なり合わないように構成された捲回群を備えた円筒形密閉式鉛蓄電池を提供しているが、正極格子、負極格子の桟が重なり合わないようにしても、集電タブのばりを有する面が正極では外側、負極では内側とランダムな組み合わせであれば短絡の危険性が高い。また各格子の桟が重なり合わないようにしても、各集電タブのばりを有する面が内側になるように構成されていれば短絡率が下がる。さらに例え各格子の桟が重なり合っていても各集電タブのばりを有する面が内側になるように構成されていれば短絡率が下がる。各格子の桟が重なり合わなくするよりも、各集電タブのばりを有する面が内側になるように構成されているほうが短絡防止に効果がある。各格子の桟が重なり合わなくするのは、正極、負極で打ち抜き工程で金型を変更する必要があり、また捲回された時に確認するのは難しいなど量産する際には適していない。
【0005】
【特許文献1】特開2002‐203591号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような構造の捲回形密閉式鉛蓄電池は、集電タブのばりで根元近傍のものが、セパレータを介して対極と重なり合っているのでばりを有する面が外側に捲回された場合、セパレータを突き抜けて短絡する危険性があるという問題点があった。
【0007】
本発明の目的は、ばりによる短絡を抑制できる捲回形密閉式鉛蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る捲回形密閉式鉛蓄電池では、捲回群の端縁に正極又は負極の各集電タブが設けられており、該各集電タブは、打ち抜き加工により一方の面にばりを有するものであり、前記捲回群は、前記各集電タブのばりを有する面が内側になるように捲回されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
各集電タブの根元近傍にばりを有していても、ばりを有する面が内側になるように捲回されることで、ばりとセパレータの間に空隙ができる。この空隙が緩衝地帯となって、集電タブがセパレータを突き抜ける短絡を抑制することができる。
【実施例】
【0010】
本発明の実施例を以下に説明する。
【0011】
正極厚さ0.7mmの鉛合金箔を用いて幅80mm×長さ600mmの極板基体を打ち抜き図1に示す集電体1を作製した。
【0012】
次に前記格子体を用いて電極を作製した。正極は酸化度70%の鉛粉と希硫酸とを混練し活物質ペーストを得た後、集電体1に充填した。負極は酸化度70%の鉛粉に少量の炭素粉末、リグニン、バリウム化合物を加え、希硫酸と混練した後、集電体1に充填した。
続いて帯状の極板を正極と負極の間にセパレータを介して捲回する。各極板の集電タブのばりの向きを変えて表1に示すような構造の捲回群を作製した。
【0013】
その後、捲回群を電槽に挿入し、上蓋を溶着し、比重1.250の希硫酸を注液し電槽化成して捲回形密閉式鉛蓄電池を得た。
【0014】
【表1】

【0015】
(実施例1)
それぞれの電池を100個ずつ作製し初期不良率を調べた。ここでいう初期不良とは、電槽化成中の短絡による不良を指す。結果を表2に示す。
【0016】
【表2】

【0017】
比較例である電池B、電池Cおよび電池Dは初期不良が発生した。本発明例である電池Aは初期不良がなく、正極タブ2および負極タブ2のばりを有する面が内側になるように捲回されたことで図2のような状態になり、ばりとセパレータの間に空隙が出来ることが分かる。比較例は図3のような状態となり、各集電タブ2のばりで根元近傍のばり3がセパレータを介して対極に押し付けられて短絡が起こる。
【0018】
(実施例2)
次にそれぞれの電池で初期不良が発生しなかったものに関して40℃雰囲気下で放置し、電池電圧の推移を測定した。この結果を図4に示す。集電タブ2の根元近傍にばり3が存在しセパレータを押し付けている場合、この部分の極間距離が非常に狭くなっており、またセパレータが傷つけられているため、自己放電が早くなり、電池電圧の低下が大きくなる。本発明である電池Aは電池電圧の低下が遅いのに対し、比較例の電池B、C、Dは電池電圧の低下が早い結果となった。つまり、本発明電池Aは、ばり3を有する面が内側になるように捲回されているので集電タブの根元近傍のばり3がセパレータに強く押し付けられることがないのに対し、比較例は集電タブの根元近傍のばり3がセパレータに強く押し付けられたために、自己放電が早くなったことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る捲回形密閉式鉛蓄電池の集電体である。
【図2】ばりを有する面が内側になるように捲回された捲回群の集電タブ根元近傍の断面図である。
【図3】ばりを有する面が外側になるように捲回された捲回群の集電タブ根元近傍の断面図である。
【図4】放置期間と電圧維持率の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 集電体
2 集電タブ
3 集電タブの根元近傍のばり
4 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極、負極が帯状のセパレータを介して捲回された捲回群を有する鉛蓄電池であって、前記捲回群の端縁に前記正極又は負極の各集電タブが設けられており、該集電タブは、前記正極又は負極の集電体と一体に形成されており、また打ち抜き加工により一方の面にばりを有するものであり、前記捲回群は、前記各集電タブのばりを有する面が内側になるように捲回されたものであることを特徴とする捲回筒形密閉式鉛蓄電池。
【請求項2】
前記ばりの位置は、前記集電タブの根元近傍であることを特徴とする請求項1記載の捲回筒形密閉式鉛蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−196379(P2006−196379A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8555(P2005−8555)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】