説明

排ガスの処理方法および触媒担持セラミックフィルター

【課題】焼却炉と電気集塵器またはサイクロンとからなる既存の焼却設備を低コストで改造し、ダイオキシン類の排出を効果的に防止し得るようにした、排ガスの処理方法、およびこの処理方法に使用するに好適な触媒構造体としての触媒担持セラミックフィルターを提供する。
【解決手段】焼却炉の排ガスを、電気集塵器またはサイクロンで除塵処理した後、触媒担持セラミックフィルターと接触させる。触媒担持セラミックフィルターとして、ダイオキシン類分解触媒を、ムライト、SiCまたはコージエライトからなり、0.1μm微細粒子の集塵効率が90%以上のセラミックフィルターに担持したものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガスの処理方法および触媒担持セラミックフィルターに関し、詳しくは焼却炉からの排ガス中に含まれるダイオキシンなどの有害物質を長期にわたり安定して除去し得るようにした排ガスの処理方法、および焼却炉からの排ガスの処理に使用するに好適な触媒担持セラミックフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
既設の焼却炉の多くは、焼却炉からの排ガスを電気集塵器またはサイクロンで処理して除塵した後、大気中に放出するタイプのものである。しかし、除塵処理しただけの排ガス中にはダイオキシンなどの有害物質(本発明ではダイオキシン類という。)が含まれており、社会的に重大な問題となっている。ダイオキシン類の除去については効果的な方法が開発されており、これら新規技術を採用した焼却炉を新設することによりダイオキシン類の問題はかなり解決することができる。しかし、直ちに既存の焼却炉を取り壊して、新規技術を採用した焼却炉を新設することは経済的に困難である。このため、既存の焼却設備を利用し、大幅な改造工事を行うことなく、ダイオキシン類の問題を解決できるようにすることが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、焼却炉と電気集塵器またはサイクロンとからなる既存の焼却設備を低コストで改造し、ダイオキシン類の排出を効果的に防止し得るようにした、排ガスの処理方法、およびこの処理方法に使用するのに好適な触媒構造体としての触媒担持セラミックフィルターを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らの研究により次のことがわかった。
(1)電気集塵器またはサイクロンの後に触媒層を設置することによりダイオキシン類を効果的に除去できる。
(2)電気集塵器またはサイクロンの集塵効率は悪いのでダストの除去が不十分である。触媒層では、ガス状のダイオキシン類は分解できるが、ダスト中に含まれるダイオキシン類や粒子状のダイオキシン類は除去することができない。ダイオキシン類は、通常、ダスト、粒子状、ガス状のものを合わせて測定する。このため、結果として、十分に高いダイオキシン類除去率を得ることができないことになる。
(3)電気集塵器またはサイクロンの代わりにバグフィルターを設置することも考えられるが、転換工事に多大のコストがかかる。バグフィルターは集塵効率が高いためダスト、粒子状のダイオキシン類の大部分は除去できるが、バグフィルターの運転温度は低いため、触媒層でのダイオキシン類の十分な分解のためには、触媒量を増加させる必要があり、結果として経済的に不利となる。また、運転温度が低いがために、排ガスに硫黄酸化物が含まれることになり、これが触媒劣化の問題を引き起こすことになる。なお、バグフィルターで処理した排ガスを加熱して触媒層に導入することも考えられるが、加熱がコストアップにつながる。
(4)電気集塵器またはサイクロンの後にセラミックフィルターを設けて除塵効率を高め、排ガス中のダストを十分除去した後に触媒層に導入することにより排ガス中のダイオキシン類を効果的に除去することができる。また、触媒層の耐久性を高めることができる。
(5)セラミックフィルターに触媒を担持して排ガスを処理すると、セラミックフィルターで除塵処理した後、触媒層に接触させる場合と同様の効果が得られる。
【0005】
本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、焼却炉の排ガスを、焼却炉の排ガスを、電気集塵器またはサイクロンで除塵処理した後、触媒担持セラミックフィルターと接触させて排ガスを処理する方法であって、該触媒担持セラミックフィルターとして、ダイオキシン類分解触媒を、ムライト、SiCまたはコージエライトからなり、0.1μm微細粒子の集塵効率が90%以上のセラミックフィルターに担持したものを用いることを特徴とする排ガスの処理方法である。
【0007】
また、本発明は、ダイオキシン類分解触媒を、ムライト、SiCまたはコージエライトからなり、0.1μm微細粒子の集塵効率が90%以上のセラミックフィルターに担持してなる触媒担持セラミックフィルターである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の主たる効果を列挙すると次のとおりである。
(1)電気集塵器またはサイクロンを備えた既設の焼却炉に触媒担持セラミックフィルターを設置するだけで排ガス中のダイオキシン類を効果的に除去することができる。
(2)既設の焼却施設の改造を低コストで行うことができる。
(3)セラミックフィルターは耐熱性があるため、高温域で運転可能であり、そのため、排ガスを高温で触媒層に導入できるので、触媒の分解効率が高まると同時に除塵も行えるのでダイオキシン類の除去効率が一段と向上し、結果的に出口ダイオキシン類の濃度を0.1ng−TEQ/m以下の低濃度まで低減することができる。
(4)排ガス中のダイオキシン類を長期にわたり安定して除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の方法の系統図である。図1において、1は焼却炉、2は電気集塵器(またはサイクロン)、3は触媒担持セラミックフィルター、4は煙突を示す。本発明の方法によれば、焼却炉1からの排ガスを、電気集塵器2に導入して集塵処理を行った後、触媒担持セラミックフィルター6で処理して排ガス中のダイオキシン類を分解除去する。
【0010】
触媒担持セラミックフィルターは、ダイオキシン類分解触媒を、ムライト、SiCまたはコージエライトからなり、0.1μm微細粒子の集塵効率が90%以上のセラミックフィルターに担持することにより容易に得られる。形状については特に制限はないが、ろ過面積が大きく、圧力損失の少ないハニカム形状が好ましい。
【0011】
ダイオキシン類分解触媒としては、ダイオキシン類を分解し得るものであればいずれでもよく、公知のダイオキシン類分解触媒のなかから適宜選ぶことができる。例えば、下記触媒(1)または(2)を用いることができる。
<触媒(1)>
(a)チタン酸化物、(b)バナジウム酸化物および(c)タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、スズ、タンタル、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含有する触媒。
<触媒(2)>
(a)チタン酸化物、(b)バナジウム酸化物、(c)タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、スズ、タンタル、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物および(d)チタン−ケイ素複合酸化物を含有する触媒。
【0012】
上記触媒(1)、(2)のなかでも、成分(c)がモリブデンまたはタングステン、特にモリブデンである触媒が、活性に優れ、好適に用いられる。なお、触媒(1)、(2)における各成分の含有量は後記の触媒(3)、(4)の場合と同じである。上記ダイオキシン類分解触媒のなかでも、本出願人が先に提案した触媒(3)、(4)が好適に用いられる(特願平11−180933号明細書参照)。なお、触媒(3)、(4)における細孔径分布は水銀圧入式ポリシメータを用いて測定したものである。
<触媒(3)>
(a)チタン酸化物、(b)バナジウム酸化物および(c)タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、スズ、タンタル、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含有し、0.01〜0.05μmおよび0.1〜0.8μmの範囲にピークを有する細孔径分布を示す触媒。なかでも、全細孔容積が0.2〜0.6cc/gであり、0.01〜0.05μmの範囲の細孔群の細孔容積が全細孔容積の10〜70%であり、0.1〜0.8μmの範囲の細孔群の細孔容積が全細孔容積の10〜70%である触媒が好ましい。また、成分(c)がモリブデンまたはタングステン、特にモリブデンである触媒が、活性に優れ、好適に用いられる。成分(b)の含有量は、成分(a)の0.1〜25質量%であり、成分(c)の含有量は、成分(a)の0.1〜25質量%である。平均粒子径は0.001〜100μm、好ましくは0.01〜100μmである。また、BET法による比表面積は30〜250m/g、好ましくは40〜200m/gである。触媒(3)は、触媒活性成分として成分(a)〜(c)を含有させる点を除けば、この種の触媒に一般に用いられている方法にしたがって調製することができる。上記細孔径分布を有する触媒も、(1)触媒調製時にデンプンなどの成型助剤や水分の添加量を調整する、(2)触媒焼成時に分解または揮発する樹脂を混練り時に添加する、などの従来公知の方法によって容易に得ることができる。
<触媒(4)>
(a)チタン酸化物、(b)バナジウム酸化物、(c)タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、スズ、タンタル、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物および(d)チタン−ケイ素複合酸化物を含有し、0.01〜0.05μmおよび0.8〜4μmの範囲にピークを有する細孔径分布を示す触媒。なかでも、全細孔容積が0.2〜0.6cc/gであり、0.01〜0.05μmの範囲の細孔群の細孔容積が全細孔容積の20〜80%であり、0.8〜4μmの範囲の細孔群の細孔容積が全細孔容積の5〜70%である触媒が好ましい。また、成分(c)がモリブデンまたはタングステン、特にモリブデンである触媒が、活性に優れ、好適に用いられる。成分(b)の含有量は、成分(a)の0.1〜25質量%であり、成分(c)の含有量は、成分(a)の0.1〜25質量%であり、成分(d)の含有量は成分(a)の0.01〜7質量倍である。平均粒子径は0.001〜100μm、好ましくは0.01〜100μmである。また、BET法による比表面積は30〜250m/g、好ましくは40〜200m/gである。触媒(4)は、触媒(3)と同様に、触媒活性成分として成分(a)〜(d)を含有させる点を除けば、この種の触媒に一般に用いられている方法にしたがって調製することができる。
【0013】
本発明の触媒担持セラミックフィルターは、例えば、次のように調製することができる。
(1)触媒を粉砕した後、水に分散してスラリー状にする。このスラリー溶液にセラミックフィルターを浸漬して、触媒成分を担持した後、乾燥、焼成する。
(2)水に各触媒成分の水溶性塩を溶解し、均一混合溶液を調製する。この溶液にセラミックフィルターを浸漬して、触媒成分を含浸担持した後、乾燥、焼成する。
(3)チタン酸化物またはチタン−ケイ素複合酸化物をセラミックフィルターに担持した後、乾燥、焼成し、次いでこのセラミックフィルターにバナジウムや他の金属成分を含む溶液を含浸担持した後、乾燥、焼成する。触媒の担持量は、セラミックフィルターの質量に対し、通常、1〜20質量%であり、好ましくは2〜15質量%である。担持量が多すぎるとセラミックフィルターの気孔率が低下し、圧力損失が大きくなる。一方、担持量が少なすぎると十分な触媒活性が得られない。
【0014】
電気集塵器2および触媒担持セラミックフィルター3の運転条件については特に制限はなく、排ガスの温度、性状、要求される除去性能などを考慮して適宜決定することができる。触媒担持セラミックフィルターの使用温度は、電気集塵器2で集塵処理した後の排ガスは、通常、そのまま触媒担持セラミックフィルター3に導入するので、一般に採用されている電気集塵器の運転温度範囲内で適宜決定することができ、好ましくは200℃以上450℃未満である。触媒担持セラミックフィルター3での排ガスの空間速度は、通常、100〜100,000h−1(STP)、好ましくは200〜50,000hー1(STP)である。
【0015】
本発明のダイオキシン類とは、一般にダイオキシンといわれるものであり、具体的には、ポリハロゲン化ジベンゾパラダイオキシン、ポリハロゲン化ジベンゾフラン、ポリハロゲン化ビフェニルなどを挙げることができる。
【0016】
なお、本発明の触媒担持セラミックフィルターは、ダスト中に含まれるダイオキシン類や粒子状のダイオキシン類を除去すると同時に、ガス状のダイオキシン類の分解活性に優れ、これらダイオキシン類を含む産業廃棄物や都市廃棄物を処理する焼却施設から発生する排ガスの処理に好適に用いられる。
【実施例】
【0017】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
市販の酸化チタン粉体(DT−51(商品名)、ミレニアム社製)18kgに、メタバナジン酸アンモニウム1.29kgおよびシュウ酸1.68kgを水5リットルに溶解させた溶液と、パラモリブデン酸アンモニウム1.23kgおよびモノエタノールアミン0.43kgを水3リットルに溶解させた溶液とを加え、さらにフェノール樹脂(ベルバール(商品名)、カネボウ(株)製)0.9kgと成形助剤としてのデンプン0.45kgとを加えて混合し、ニーダーで混練りした後、押出成形機で5mmφx5mmLのペレット状に成形した。次いで、80℃で乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成した触媒を得た。この触媒の組成は、V:MoO:TiO=5:5:90(質量%)であった。また、この触媒(1)の細孔径分布を水銀圧入式ポロシメータにより測定した結果、全細孔容積は0.39cc/gであった。また、0.01〜0.05μmの範囲に細孔径分布のピークを有する細孔群の細孔容積および0.1〜0.8μmの範囲に細孔径分布のピークを有する細孔群の細孔容積は、それぞれ、全細孔容積の37%および54%であった。BET比表面積は73m/gであった。次に、上記触媒をハンマーミルを用いて粉砕し、この粉体2.5kgを10リットルの水に投入し、よく攪拌してスラリー状の溶液を調製した。このスラリー溶液にコージェライトハニカム型セラミックフィルター(目開き9mm、肉厚1mm、集塵効率99%)を浸漬した。余分なスラリーを除去した後、60℃で乾燥し、空気雰囲気下500℃で焼成して触媒担持セラミックフィルター(1)を得た。このときの触媒の担持量はセラミックフィルターの質量に対し10質量%であった。
(実施例2)
10質量%アンモニア水700リットルにスノーテックス−20(日産化学(株)製シリカゾル、約20質量%のSiO含有)21.3kgを加え、攪拌、混合した後、硫酸チタニルの硫酸溶液(TiOとして125g/リットル、硫酸濃度0.55g/リットル)340リットルを攪拌しながら徐々に滴下した。得られたゲルを3時間放置した後、ろ過、水洗し、続いて150℃で10時間乾燥した。これを500℃で焼成し、さらにハンマーミルを用いて粉砕し、分級機で分級して平均粒子径10μmの粉体を得た。得られた粉体の組成はTiO:SiO=8.5:1.5(モル比)であり、粉体のX線回折チャートではTiOやSiOの明らかな固有のピークは認められず、ブロードな回折ピークによって非晶質な微細構造を有するチタンとケイ素との複合酸化物(Ti−Si複合酸化物)であることが確認された。上記Ti−Si複合酸化物9kgおよび市販の酸化チタン粉体(DT−51(商品名)、ミレニアム社製)9kgに、メタバナジン酸アンモニウム1.29kgおよびシュウ酸1.68kgを水5リットルに溶解させた溶液と、パラモリブデン酸アンモニウム1.23kgおよびモノエタノールアミン0.43kgを水3リットルに溶解させた溶液とを加え、さらにフェノール樹脂(ベルバール(商品名)、カネボウ(株)製)0.9kgと成形助剤としてのデンプン0.45kgとを加えて混合し、ニーダーで混練りした後、押出成形機で5mmφx5mmLのペレット状に成形した。次いで、80℃で乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成した触媒を得た。この触媒の組成は、V:MoO:Ti−Si複合酸化物=5:5:45:45(質量%)であった。また、この触媒の細孔径分布を水銀圧入式ポロシメータにより測定した結果、全細孔容積は0.37cc/gであった。また、0.01〜0.05μmの範囲に細孔径分布のピークを有する細孔群の細孔容積および0.8〜4μmの範囲に細孔径分布のピークを有する細孔群の細孔容積は、それぞれ、全細孔容積の55%および20%であった。BET比表面積は73m/gであった。次に、上記触媒をハンマーミルを用いて粉砕し、この粉体2.5kgを10リットルの水に投入し、よく攪拌してスラリー状の溶液を調製した。このスラリー溶液に実施例1で使用したと同じセラミックフィルターを浸漬した。余分なスラリーを除去した後、60℃で乾燥し、空気雰囲気下500℃で焼成して触媒担持セラミックフィルター(2)を得た。このときの触媒の担持量はセラミックフィルターの質量に対し10質量%であった。
(実施例3)
実施例1で使用したのと同じ、酸化チタン粉体2.5kgとフェノール樹脂0.5kgとを10リットルの水に投入し、よく攪拌してスラリー状の溶液を調製した。このスラリー溶液に実施例1で使用したと同じセラミックフィルターを浸漬した。余分はスラリーを除去した後、60℃で乾燥し、空気雰囲気下500℃で焼成して酸化チタン担持セラミックフィルターを得た。このときの酸化チタンの担持量はセラミックフィルターの質量に対し10質量%であった。次いで、メタバナジン酸アンモニウム1.16kgおよびシュウ酸0.21kgを水5リットルに溶解させた溶液と、パラモリブデン酸アンモニウム0.154kgおよびモノエタノールアミン0.048kgを水5リットルに溶解させた溶液を混合し、均一溶液を調製した。この溶液に上記酸化チタン担持セラミックフィルターを浸漬した後、80℃で乾燥し、空気雰囲気下450℃で焼成して触媒担持セラミックフィルター(3)を調製した。この場合の、触媒成分の組成は、V:MoO:TiO=5:5:90(質量%)であった。この触媒成分の担持量はセラミックフィルターの質量に対し10質量%であった。
(実施例4)
実施例3において、酸化チタンに加えて実施例2で調製したTi−Si複合酸化物を用い、実施例3の方法に準じて、触媒担持セラミックフィルター(4)を調製した。この場合の、触媒成分の組成は、V:MoO:TiO:Ti−Si複合酸化物=5:5:45:45(質量%)であった。この触媒成分の担持量はセラミックフィルターの質量に対し10質量%であった。
(実施例5)
実施例2において、モリブデンの代わりにタングステンを使用した以外は、実施例2と同様の方法で触媒を調製した。この触媒の組成は、V:MoO:TiO:Ti−Si複合酸化物=5:5:45:45(質量%)であった。この触媒の細孔径分布を水銀圧入式ポロシメータにより測定した結果、全細孔容積は0.40cc/gであった。また、0.01〜0.05μmの範囲に細孔径分布のピークを有する細孔群の細孔容積および0.8〜4μmの範囲に細孔径分布のピークを有する細孔群の細孔容積は、それぞれ、全細孔容積の58%および24%であった。BET比表面積は83m/gであった。以下、上記触媒を用いた以外は、実施例1と同様にして触媒担持セラミックフィルター(5)を得た。触媒の担持量はセラミックフィルターの質量に対し10質量%であった。
(実施例6)
図1に示すように、電気集塵器の出口側(ダイオキシン類濃度:1ngーTEQ/m)に触媒担持セラミックフィルター(1)を設置し排ガスの処理を行った。初期性能、2,000時間、5,000時間、10,000時間後のダイオキシン類除去率および出口ダイオキシン類濃度を表1に示す。
空間速度:2,000h−1
反応温度:250〜350℃
なお、ダイオキシン類除去率は次の式にしたがって求めた。
ダイオキシン類除去率(%)=[(触媒担持セラミックフィルター入口ダイオキシン類濃度−触媒担持セラミックフィルター出口ダイオキシン類濃度)/(触媒担持セラミックフィルター入口ダイオキシン類濃度)]×100
(実施例7)
実施例6において、触媒担持セラミックフィルター(1)の代わりに触媒担持セラミックフィルター(2)、(3)、(4)または(5)を用いた以外は実施例6と同様に排ガスの処理を行った。初期性能、2,000時間、5,000時間、10,000時間後のダイオキシン類除去率および出口ダイオキシン類濃度を表1に示す。
(比較例1)
実施例6において、触媒担持セラミックフィルター(1)の代わりに実施例1で使用したセラミックフィルターを、触媒成分を担持しないで、250℃で使用した場合のダイオキシン類除去率は15%であった。また、その時の出口ダイオキシン類濃度は0.85ng−TEQ/mであった。
(比較例2)
実施例6において、触媒担持セラミックフィルター(1)の代わりに実施例1で使用した触媒で、目開き9mm、肉厚1mmのハニカム形状に成形した以外は同様の方法で調製した触媒のみを用いて、250℃でのダイオキシン類の除去率を測定した。初期性能、2,000時間、5,000時間、10,000時間後のダイオキシン類除去率および出口ダイオキシン類濃度を表1に示す。
【0018】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の方法の系統図である。
【符号の説明】
【0020】
1.焼成炉
2.電気集塵器またはサイクロン
3.触媒担持セラミックフィルター
4.煙突

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉の排ガスを、電気集塵器またはサイクロンで除塵処理した後、触媒担持セラミックフィルターと接触させて排ガスを処理する方法であって、該触媒担持セラミックフィルターとして、ダイオキシン類分解触媒を、ムライト、SiCまたはコージエライトからなり、0.1μm微細粒子の集塵効率が90%以上のセラミックフィルターに担持したものを用いることを特徴とする排ガスの処理方法。
【請求項2】
ダイオキシン類分解触媒が、下記触媒(1)または(2)である請求項1記載の排ガスの処理方法。
<触媒(1)>
(a)チタン酸化物、(b)バナジウム酸化物および(c)タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、スズ、タンタル、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含有する触媒。
<触媒(2)>
(a)チタン酸化物、(b)バナジウム酸化物、(c)タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、スズ、タンタル、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物および(d)チタン−ケイ素複合酸化物を含有する触媒。
【請求項3】
ダイオキシン類分解触媒を、ムライト、SiCまたはコージエライトからなり、0.1μm微細粒子の集塵効率が90%以上のセラミックフィルターに担持してなる触媒担持セラミックフィルター。
【請求項4】
ダイオキシン類分解触媒が、下記触媒(1)または(2)である請求項3記載の触媒担持セラミックフィルター。
<触媒(1)>
(a)チタン酸化物、(b)バナジウム酸化物および(c)タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、スズ、タンタル、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含有する触媒。
<触媒(2)>
(a)チタン酸化物、(b)バナジウム酸化物、(c)タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、スズ、タンタル、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物および(d)チタン−ケイ素複合酸化物を含有する触媒。

【図1】
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【公開番号】特開2006−75834(P2006−75834A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288013(P2005−288013)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【分割の表示】特願平11−374128の分割
【原出願日】平成11年12月28日(1999.12.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】