説明

排ガス処理装置

【課題】排ガスの流れに沿った方向成分のイオン風の流れに対する圧力損失を低減させ、同一エネルギーにおけるイオン風の入り込み量を増加させ、PMの捕集及び凝集効果を促進させることが可能な排ガス処理装置を提供することにある。
【解決手段】筒形状をなす外殻1と、外殻1内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置2と、集塵フィルタ装置2の内側に形成され、PMを含む排ガスが流れる排ガス通路7と、排ガス通路7中に設置され、電圧が印加されたときに集塵フィルタ装置2との間に排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風30を発生させる放電電極40とを備えた排ガス処理装置50において、集塵極及び集塵フィルタ層は、一体化された1層の構造体であり、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数の細線ワイヤ12により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の排ガス中に含まれる粒子状物質(パティキュレートマター、以下PMという)などの除去を行う排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディーゼルエンジン等の排ガス中のPMを除去して浄化処理を行うには、黒煙除去装置であるディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFという)が利用されている。しかしながら、かかるDPFには、フィルタ故に次のような問題点がある。
すなわち、経時的に、フィルタの目詰まりによる圧力損失が上昇し、定期的に目詰まりの除去再生を行わないと、フィルタの目詰まりにより排気側に負荷が掛かり燃料消費率が上昇するとともに、エンジン出力の低下を来たす、などの悪影響を及ぼすことになる。しかも、このフィルタの目詰まりがさらに進行すると、エンジン停止の事態が発生するおそれがある。
【0003】
そこで、先行技術として、コロナ放電を用いた電気式集塵装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の電気式集塵装置は、コロナ放電に伴って発生するイオン風を有効に利用して、PMを低圧力損失で処理するタイプである。
図6は、特許文献1に開示された電気式集塵装置の例を示す概略断面図である。
図6において、集塵装置100は、筒状の外殻1と、放電極主部4及び放電極放電部3からなる放電電極40と、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置2とを備えている。放電電極40は、高圧導線5a及び碍子5を介して高電圧発生装置20に接続されている。また、碍子5は、碍子室6内に収納されている。
【0004】
上記外殻1は筒状に形成され、その内部はPMを含む排ガスが流れる排ガス通路7となっており、排ガスは、排ガス通路7を放電電極40に沿って、図6中の矢印のように流れるようになっている。このため、放電電極40は、排ガス通路7の中央に排ガス流の方向へ沿って延在する放電極主部4と、該放電極主部4から排ガス通路7を横切って集塵フィルタ装置2の側に向かって延びる刺状に形成された複数の放電極放電部3とから構成されている。
【0005】
このような集塵装置100においては、高電圧発生装置20からの高電圧を、高圧導線5aを介して放電電極40に印加すると、放電極主部4及び複数の放電極放電部3から集塵フィルタ装置2の集塵極に向けて飛び出すイオンに誘起されたイオン風が生じる。これによって、排ガス流中に含まれるPMは集塵極を通り、該PMはガスとともに集塵極の外側に配置された集塵フィルタ層に導かれ、該集塵フィルタ層にてPMが捕集され、浄化ガスになる。
また、この構造の電気式集塵装置100を使用すると、排ガス流中に含まれるPM同士が排ガス通路7の空間、集塵極表面、及び集塵フィルタ層表面で凝集、肥大化する効果がある。したがって、集塵フィルタ装置2の集塵極及び集塵フィルタ層に到達しないで排出されるPM、及び一度これら集塵極及び集塵フィルタ層に到達した後、高流速の排ガス流れによって全て再飛散し排出されるPMの総数は、当該集塵装置100の入口側に比べて低下することになる。近年、排ガスに含まれる微細粒子による健康被害が問題となっており、対策として本電気式集塵装置100を凝集装置として使用することで、排ガス中の粒子の肥大化、及び粒子個数の低下による健康被害の低減化を図っている。
【0006】
【特許文献1】WO2005/021161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の電気式集塵装置100は、通常、DPFよりも捕集率及び粒子個数低減率が低いという特性を有しているので、より捕集性及び凝集効果を向上させるような手段が求められている。
また、従来の電気式集塵装置100では、集塵フィルタ装置2の集塵極及び集塵フィルタ層として通常の金網やフィルタ材料が使用されているので、集塵極及び集塵フィルタ層の圧損率が高く、イオン風が集塵極及び集塵フィルタ層内の開口を通るのが難しい構造となっている。そのため、従来の電気式集塵装置100においては、排ガス中の粒子の凝集を促進させることが困難であるという問題を有している。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、排ガスの流れに沿った方向成分のイオン風の流れに対する圧力損失を低減させ、同一エネルギーにおけるイオン風の入り込み量を増加させ、PMの捕集及び凝集効果を促進させることが可能な排ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、筒形状をなす外殻と、前記外殻内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置と、前記集塵フィルタ装置の内側に形成され、粒子状物質を含む排ガスが流れる排ガス通路と、前記排ガス通路中に設置され、電圧が印加されたときに前記集塵フィルタ装置との間に前記排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風を発生させる放電電極とを備えた排ガス処理装置において、前記集塵極及び集塵フィルタ層は、一体化された1層の構造体であり、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数の細線ワイヤにより構成されている。
【0010】
また、本発明は、筒形状をなす外殻と、前記外殻内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置と、前記集塵フィルタ装置の内側に形成され、粒子状物質を含む排ガスが流れる排ガス通路と、前記排ガス通路中に設置され、電圧が印加されたときに前記集塵フィルタ装置との間に前記排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風を発生させる放電電極とを備えた排ガス処理装置において、前記集塵極と前記集塵フィルタ層とは、別体の内外2層の構造体であり、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数の細線ワイヤによりそれぞれ構成され、内側層を構成する前記集塵極の細線ワイヤは、外側層を構成する前記集塵フィルタ層の細線ワイヤの間に配置されている。
【0011】
本発明において、前記集塵フィルタ層の構造体は、2層以上配置されていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、筒形状をなす外殻と、前記外殻内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置と、前記集塵フィルタ装置の内側に形成され、粒子状物質を含む排ガスが流れる排ガス通路と、前記排ガス通路中に設置され、電圧が印加されたときに前記集塵フィルタ装置との間に前記排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風を発生させる放電電極とを備えた排ガス処理装置において、 前記集塵極及び集塵フィルタ層は、一体化された1層の筒状構造体であり、この筒状構造体には、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数のスリットが設けられている。
【0013】
そして、本発明は、筒形状をなす外殻と、前記外殻内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置と、前記集塵フィルタ装置の内側に形成され、粒子状物質を含む排ガスが流れる排ガス通路と、前記排ガス通路中に設置され、電圧が印加されたときに前記集塵フィルタ装置との間に前記排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風を発生させる放電電極とを備えた排ガス処理装置において、前記集塵極と前記集塵フィルタ層とは、別体の内外2層の筒状構造体であり、これら筒状構造体には、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数のスリットがそれぞれ設けられ、内側層を構成する前記集塵極の筒状構造体のスリットは、外側層を構成する前記集塵フィルタ層の筒状構造体のスリット間に配置されている。
【0014】
本発明において、前記集塵フィルタ層の筒状構造体は、2層以上配置されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明において、前記構造体と前記外殻との間には、前記イオン風及び排ガスの流れる空間部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上述の如く、本発明に係る排ガス処理装置は、筒形状をなす外殻と、前記外殻内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置と、前記集塵フィルタ装置の内側に形成され、粒子状物質を含む排ガスが流れる排ガス通路と、前記排ガス通路中に設置され、電圧が印加されたときに前記集塵フィルタ装置との間に前記排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風を発生させる放電電極とを備えたものであって、前記集塵極及び集塵フィルタ層は、一体化された1層の構造体であり、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数の細線ワイヤにより構成されているので、放電に伴い、放電電極から集塵極に向かって発生するイオン風により、排ガスに含まれるPMをガス流れに対して鉛直方向へ移動させて集塵極及び集塵フィルタ層に付着させて捕集する際、排ガスの流れに沿った方向成分のイオン風の流れに対する圧力損失が通常の金網やフィルタ材料よりも小さくなり、同一エネルギーにおけるイオン風の入り込み量が増加し、集塵極の表面及び集塵フィルタ層の表面にPMが付着しやすくなり、PMの捕集及び凝集効果を促進することができる。
また、本発明の排ガス処理装置では、集塵極及び集塵フィルタ層を構成する細線ワイヤの構造体にイオン風が流れやすくなっているので、排ガスの流れ方向に対して直交する方向のイオン風の流速が速くなり、排ガス通路の空間におけるPM同士の衝突が起こり、当該空間でもPMの凝集率を向上させることができる。
【0017】
また、本発明に係る排ガス処理装置は、筒形状をなす外殻と、前記外殻内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置と、前記集塵フィルタ装置の内側に形成され、粒子状物質を含む排ガスが流れる排ガス通路と、前記排ガス通路中に設置され、電圧が印加されたときに前記集塵フィルタ装置との間に前記排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風を発生させる放電電極とを備えたものであって、前記集塵極と前記集塵フィルタ層とは、別体の内外2層の構造体であり、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数の細線ワイヤによりそれぞれ構成され、内側層を構成する前記集塵極の細線ワイヤは、外側層を構成する前記集塵フィルタ層の細線ワイヤの間に配置されているので、集塵極及び集塵フィルタ層におけるより大きな付着表面積を確保することができ、PMの捕集及び凝集効果をより一層促進することができる。
この効果は、集塵フィルタ層の構造体を多層に配置することにより、更に大きな付着表面積を確保することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る排ガス処理装置は、筒形状をなす外殻と、前記外殻内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置と、前記集塵フィルタ装置の内側に形成され、粒子状物質を含む排ガスが流れる排ガス通路と、前記排ガス通路中に設置され、電圧が印加されたときに前記集塵フィルタ装置との間に前記排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風を発生させる放電電極とを備えたものであって、前記集塵極及び集塵フィルタ層は、一体化された1層の筒状構造体であり、この筒状構造体には、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数のスリットが設けられているので、上記発明と同様の効果を奏することができるとともに、集塵極及び集塵フィルタ層の構造体を容易に製作及び組立てることができ、製作性及び組立作業性の向上を図ることができる。
【0019】
そして、本発明に係る排ガス処理装置は、筒形状をなす外殻と、前記外殻内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置と、前記集塵フィルタ装置の内側に形成され、粒子状物質を含む排ガスが流れる排ガス通路と、前記排ガス通路中に設置され、電圧が印加されたときに前記集塵フィルタ装置との間に前記排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風を発生させる放電電極とを備えたものであって、前記集塵極と前記集塵フィルタ層とは、別体の内外2層の筒状構造体であり、これら筒状構造体には、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数のスリットがそれぞれ設けられ、内側層を構成する前記集塵極の筒状構造体のスリットは、外側層を構成する前記集塵フィルタ層の筒状構造体のスリット間に配置されているので、集塵極及び集塵フィルタ層におけるより大きな付着表面積を確保することができ、PMの捕集及び凝集効果をより一層促進することができる。
この効果は、集塵フィルタ層の筒状構造体を多層に配置することにより、更に大きな付着表面積を確保することができる。
【0020】
また、本発明において、前記構造体と前記外殻との間に、前記イオン風及び排ガスの流れる空間部が設けられていると、イオン風によって移動させられた排ガス中のPMが、空間部の存在で螺旋を描きながら構造体を繰返し出入りすることになり、PMの捕集及び凝集効果を更に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る排ガス処理装置について、図面を参照しながら、その実施形態に基づき詳細に説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係る排ガス処理装置を示す概略断面図、図2は図1におけるA−A線断面図である。
図1及び図2において、本実施形態の排ガス処理装置50は、筒形状をなす外殻1と、放電極主部4及び放電極放電部3からなる放電電極40と、集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置2とを備えている。そして、放電電極40は、碍子室6内に配置された高圧導線5a及び碍子5を介して図示しない高電圧発生装置(図6参照)に接続されている。
【0023】
上記外殻1は、横向きに配置する円筒状に形成されている。外殻1の内部は、PMを含む排ガスが矢印のように流れる排ガス通路7となっており、該排ガス通路7の中央部には、放電電極40が配置されている。この放電電極40は、排ガス通路7の中央に位置し、排ガス通路7の軸方向へ沿って延在しながら配置される軸状の放電極主部4と、該放電極主部4の軸方向に対して直交する方向で、排ガス通路7を横切って集塵フィルタ装置2の側に向かって延びるピンで刺状に形成された複数の放電極放電部3とから構成されている。
これら放電極放電部3は、図1に示すように、排ガス通路7の上流側から下流側にかけて、放電極主部4の軸心方向に沿って一定の間隔を置いて設けられている。しかも、放電極放電部3は、図2に示すように、放電極主部4の軸心方向の同一位置において、互いに先端を離した状態で溶接固定され、放電極主部4の外周面に一定の間隔を開けて放射状に配置されている。本実施形態では、同一位置で4つの放電極放電部3が設けられており、90度間隔に配置されている。
【0024】
一方、本実施形態の集塵フィルタ装置2は、集塵極と集塵フィルタ層とが一体化された1層の構造体である。すなわち、集塵フィルタ装置2は、図2に示すように、排ガス流の方向へ沿って延在するものであって、かつ周方向に一定の間隔を開けて配置される複数本の細線ワイヤ12により構成されており、排ガスの流れに沿った方向成分のイオン風30の流れに対する圧力損失を極小化する構造となっている。
細線ワイヤ12は、導電性の材料を用いて形成されており、放電極放電部3からのイオン風30及び排ガス中のPMは、図2の矢印で示すように、隣接する細線ワイヤ12と細線ワイヤ12との間に設けた開口となる間隙を通過するようになっている。このような間隙は、従来の集塵極及び集塵フィルタ層の開口面積と比べて大きく、放電極放電部3からのイオン風30が流れやすく、同一エネルギーにおけるイオン風30の入り込み量が多くなるような大きさに設定されている。
【0025】
また、集塵フィルタ装置2の構造体は、図1に示すように、排ガス通路7の上下流端部が支持フレーム13にそれぞれ取付けられている。これら支持フレーム13の基端部は、先端部が排ガス通路7へ向かって突出する状態で外殻1の内周面に固定されており、集塵フィルタ装置2の構造体は、支持フレーム13の先端部に取付けられている。そのため、集塵フィルタ装置2の構造体と外殻1の内周面との間には、イオン風30及び排ガスが流れる空間部14が設けられることになる。
この空間部14は、排ガス通路7の上下流端部が支持フレーム13によって塞がれており、イオン風30にて移動させられた排ガス中のPMが、集塵フィルタ装置2の構造体を経て空間部14に入り込み、外殻1の内周面に当たって跳ね返り、当該構造体を経て排ガス通路7に戻ることになり、空間部14が介在した状態で、イオン風30及び排ガスの流れにより螺旋を描きながら当該構造体を繰返し出入りできるように構成されている。
【0026】
本実施形態の排ガス処理装置50においては、図示しない高電圧発生装置からの高電圧を、高圧導線5aを介して放電電極40に印加することで、放電極主部4及び複数の放電極放電部3から外殻1の内側に位置する集塵極及び集塵フィルタ層の集塵フィルタ装置2の構造体に向けてイオンが飛び出し、該イオンに誘起されたイオン風30が生じる。このイオン風30によって、排ガス流中に含まれるPMは、集塵フィルタ装置2の構造体を構成する細線ワイヤ12の隙間を通り、ガスとともに集塵フィルタ装置2の構造体の外側に設けられた空間部14に導かれ、外殻1の内周面に当たって跳ね返り、細線ワイヤ12の隙間を通って排ガス通路7に戻り、再び細線ワイヤ12の隙間を通るような動作を繰返し、当該集塵フィルタ装置2の構造体にてPMが捕集かつ凝集され、浄化ガスとして下流側に導かれることになる。
【0027】
このように、本発明の第1実施形態の排ガス処理装置50では、集塵フィルタ装置2の集塵極及び集塵フィルタ層が一体化された1層の構造体であり、排ガス通路7中を流れる排ガス流の方向へ沿って延在しながら、周方向に一定の間隙を開けた状態で配置される複数本の細線ワイヤ12により構成されているため、通常の金網やフィルタ材料を使用した従来の集塵極及び集塵フィルタ層に比べて、排ガスの流れに沿った方向成分のイオン風30の流れに対する圧力損失を低減させることができる。しかも、隣接する細線ワイヤ12間の間隙が広く形成されているため、図2に示すように、同一エネルギーにおいて、増加した量の放電極放電部3からのイオン風30を入り込ませることができ、集塵フィルタ装置2の構造体を構成する細線ワイヤ12の表面に排ガス中のPMが付着しやくなり、捕集及び凝集効果をさせることができる。その結果、本実施形態の排ガス処理装置50を使用すれば、捕集率及び粒子個数低減率を向上させることができ、残存PMの少ない浄化ガスが得られる。
【0028】
しかも、本実施形態の集塵フィルタ装置2では、この構造体を構成する細線ワイヤ12が、排ガス流の方向へ延在するとともに、周方向に間隔を開けながら配置され、隣接する細線ワイヤ12の間に排ガス流の方向に沿って長く、周方向の複数箇所に形成される間隙面積が大きく取れることになるため、イオン風30が流れやすくて、排ガス流の方向に対して直交する方向の流速が速くなり、排ガス通路7の空間においてPM同士の衝突が頻繁に起こり、当該空間でもPMの凝集が繰返し行われることになる。
【0029】
[第2実施形態]
図3は本発明の第2実施形態に係る排ガス処理装置を示すものであって、図1におけるA−A線断面図である。
図3において、本実施形態の排ガス処理装置60は、集塵フィルタ装置2の集塵極2aと集塵フィルタ層2bとが別体の内外2層の構造体である。すなわち、集塵フィルタ装置2は、図3に示すように、排ガス流の方向へ沿って延在するものであって、かつ周方向に一定の間隔を開けて配置される複数本の細線ワイヤ12a,12bによりそれぞれ構成されており、排ガスの流れに沿った方向成分のイオン風30の流れに対する圧力損失を極小化する構造となっている。しかも、内側層を構成する集塵極2aの細線ワイヤ12aは、外側層を構成する集塵フィルタ層2bの細線ワイヤ12bの間に配置されており、周方向へずれた位置で重ならないように設定されている。
その他の構成は上記第1実施形態と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示されている。
【0030】
このように、本発明の第2実施形態の排ガス処理装置60においては、集塵フィルタ装置2の集塵極2aと集塵フィルタ層2bとが別体の内外2層の構造体であり、排ガス流の方向へ沿って延在するとともに、周方向に一定の間隔を開けて配置される複数本の細線ワイヤ12a,12bによりそれぞれ構成されているため、集塵極2aの細線ワイヤ12aと集塵フィルタ層2bの細線ワイヤ12bの内外2層の構造体によって大きな付着表面積を確保でき、排ガス中のPMが付着しやく、PMの捕集及び凝集効果をより一層促進することができる。それに加えて、本実施形態の排ガス処理装置60においても、集塵極2aの細線ワイヤ12aが集塵フィルタ層2bの細線ワイヤ12bの間に配置されているため、発生したイオン風30を内外2層の構造体内に円滑に通過させることができ、上記第1実施形態の排ガス処理装置50と同様の作用効果を奏することができる。なお、集塵極2aは、導電性の材料にて形成されている。一方、集塵フィルタ層2bは、導電性、非導電性を問わないため、例えば、セラミック等によって形成することができる。
【0031】
[第3実施形態]
図4は本発明の第3実施形態に係る排ガス処理装置を示すものであって、図1におけるA−A線断面図である。
図4において、本実施形態の排ガス処理装置70は、集塵フィルタ装置22の集塵極と集塵フィルタ層とが一体化された1層の筒状構造体である。この集塵フィルタ装置22の筒状構造体は、図4に示すように、排ガス流の方向へ沿って延在するとともに、周方向に一定の間隔を開けて配置される複数のスリット23が設けられており、排ガスの流れに沿った方向成分のイオン風30の流れに対する圧力損失を極小化する構造となっている。
上記筒状構造体は、導電性の材料を用いて形成されており、放電極放電部3からのイオン風30及び排ガス中のPMは、各スリット23を通過するようになっている。このようなスリット23は、従来の集塵極及び集塵フィルタ層の開口と比べて、放電極放電部3からのイオン風30が流れやすく、同一エネルギーにおけるイオン風30の入り込み量が多くなるような大きさに設定されている。
【0032】
このように、本発明の第3実施形態の排ガス処理装置70は、集塵フィルタ装置22の集塵極及び集塵フィルタ層が一体化された1層の筒状構造体であり、この筒状構造体には、排ガス通路7中を流れる排ガス流の方向へ沿って延在しながら、周方向に一定の間隙を開けて配置される複数のスリット23が設けられているため、上記第1実施形態の排ガス処理装置50と同様の作用効果が得られる上、集塵フィルタ装置22の構造が簡単となる。したがって、集塵フィルタ装置22を容易に製作できるとともに、組立作業も迅速に行うことができる。
【0033】
[第4実施形態]
図5は本発明の第4実施形態に係る排ガス処理装置を示すものであって、図1におけるA−A線断面図である。
図5において、本実施形態の排ガス処理装置80は、集塵フィルタ装置22の集塵極22aと集塵フィルタ層22bとが別体の内外2層の筒状構造体である。これら集塵極22a及び集塵フィルタ層22bの筒状構造体は、図5に示すように、排ガス流の方向へ沿って延在するとともに、周方向に一定の間隔を開けて配置される複数のスリット23a,23bがそれぞれ設けられており、排ガスの流れに沿った方向成分のイオン風30の流れに対する圧力損失を極小化する構造となっている。しかも、内側層を構成する集塵極22aの筒状構造体のスリット23aは、外側層を構成する集塵フィルタ層22bの筒状構造体のスリット23b間に配置されており、周方向へずれた位置で重ならないように設定されている。
その他の構成は上記第1実施形態〜上記第3実施形態と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示されている。
【0034】
このように、本発明の第4実施形態の排ガス処理装置80は、集塵フィルタ装置22の集塵極22aと及び集塵フィルタ層22bとが別体の内外2層の筒状構造体であり、これら筒状構造体には、排ガス通路7中を流れる排ガス流の方向へ沿って延在しながら、周方向に一定の間隙を開けて配置される複数のスリット23a,23bがそれぞれ設けられているため、上記第1実施形態〜第3実施形態の排ガス処理装置50,60,70と同様の作用効果が得られる。なお、集塵極22aは、導電性の材料にて形成されている。一方、集塵フィルタ層22bは、導電性、非導電性を問わないため、例えば、セラミック等によって形成することができる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変更及び変形が可能である。
例えば、既述の実施形態の集塵フィルタ層2b,22bは、2層以上配置して多層とすることもできる。このような構成にすると、排ガス中のPMに対して更に大きな付着表面積を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排ガス処理装置を示す概略断面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る排ガス処理装置を示すものであり、図1におけるA−A線断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る排ガス処理装置を示すものであり、図1におけるA−A線断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る排ガス処理装置を示すものであり、図1におけるA−A線断面図である。
【図6】従来の電気式集塵装置の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 外殻
2,22 集塵フィルタ装置
2a,22a 集塵極
2b,22b 集塵フィルタ層
3 放電極放電部
4 放電極主部
5a 高圧導線
7 排ガス通路
12、12a,12b 細線ワイヤ
14 空間部
23,23a,23b スリット
30 イオン風
40 放電電極
50,60,70,80 排ガス処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状をなす外殻と、前記外殻内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置と、前記集塵フィルタ装置の内側に形成され、粒子状物質を含む排ガスが流れる排ガス通路と、前記排ガス通路中に設置され、電圧が印加されたときに前記集塵フィルタ装置との間に前記排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風を発生させる放電電極とを備えた排ガス処理装置において、
前記集塵極及び集塵フィルタ層は、一体化された1層の構造体であり、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数の細線ワイヤにより構成されていることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
筒形状をなす外殻と、前記外殻内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置と、前記集塵フィルタ装置の内側に形成され、粒子状物質を含む排ガスが流れる排ガス通路と、前記排ガス通路中に設置され、電圧が印加されたときに前記集塵フィルタ装置との間に前記排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風を発生させる放電電極とを備えた排ガス処理装置において、
前記集塵極と前記集塵フィルタ層とは、別体の内外2層の構造体であり、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数の細線ワイヤによりそれぞれ構成され、内側層を構成する前記集塵極の細線ワイヤは、外側層を構成する前記集塵フィルタ層の細線ワイヤの間に配置されていることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項3】
前記集塵フィルタ層の構造体は、2層以上配置されていることを特徴とする請求項2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
筒形状をなす外殻と、前記外殻内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置と、前記集塵フィルタ装置の内側に形成され、粒子状物質を含む排ガスが流れる排ガス通路と、前記排ガス通路中に設置され、電圧が印加されたときに前記集塵フィルタ装置との間に前記排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風を発生させる放電電極とを備えた排ガス処理装置において、
前記集塵極及び集塵フィルタ層は、一体化された1層の筒状構造体であり、この筒状構造体には、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数のスリットが設けられていることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項5】
筒形状をなす外殻と、前記外殻内に沿って配置され、開口を有する集塵極及び集塵フィルタ層からなる集塵フィルタ装置と、前記集塵フィルタ装置の内側に形成され、粒子状物質を含む排ガスが流れる排ガス通路と、前記排ガス通路中に設置され、電圧が印加されたときに前記集塵フィルタ装置との間に前記排ガス流と直交する方向に2次流れを誘起形成するイオン風を発生させる放電電極とを備えた排ガス処理装置において、
前記集塵極と前記集塵フィルタ層とは、別体の内外2層の筒状構造体であり、これら筒状構造体には、排ガス流の方向へ沿って延在し、かつ周方向に間隔を開けて配置される複数のスリットがそれぞれ設けられ、内側層を構成する前記集塵極の筒状構造体のスリットは、外側層を構成する前記集塵フィルタ層の筒状構造体のスリット間に配置されていることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項6】
前記集塵フィルタ層の筒状構造体は、2層以上配置されていることを特徴とする請求項5に記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記構造体と前記外殻との間には、前記イオン風及び排ガスの流れる空間部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−22950(P2010−22950A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188197(P2008−188197)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】