説明

排ガス処理触媒の再生方法及びこの方法を使用した排ガス処理触媒

【課題】長期間にわたって連続して使用できる排ガス処理触媒の再生方法を提供する。
【解決手段】使用済みの排ガス処理触媒11を粗粉砕する使用済み触媒粗粉砕工程S1と、粗粉砕物を粗片12と細粉13とに分離する分離工程S2と、粗片12を微粉砕する使用済み触媒微粉砕工程S3と、微粉体を他の原料と混練りして成型加工した後に乾燥して焼成処理することにより基体14を得る各工程S4〜S7と、新規の排ガス処理触媒15を粉砕する新規触媒粉砕工程S8と、粉砕された新規の排ガス処理触媒15をスラリー液化するスラリー化工程S9と、基体14の表面にスラリー液16を被覆するスラリー被覆工程S10と、スラリー液16を被覆された基体14を乾燥させて、排ガス処理触媒15の製造時の焼成温度よりも高い温度で焼成処理する被覆乾燥工程S11及び被覆焼成工程S12とを行って、再生された排ガス処理触媒17を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に灰分が付着した排ガス処理触媒の再生方法及びこの方法を使用した排ガス処理触媒に関し、特に、酸化チタンを主成分として、燃焼した石炭からの排ガス中の窒素酸化物を除去する排ガス処理触媒を再生する場合に適用すると、極めて有効である。
【背景技術】
【0002】
例えば、石炭焚きボイラ等のような石炭を燃焼させる機器からの排ガスの排出ラインには、当該排ガス中の窒素酸化物(NOx)を処理する排ガス処理触媒が配設されている。この排ガス処理触媒は、酸化チタン(TiO2)を主成分として、さらに、酸化タングステン(WO3)や酸化バナジウム(V25)等をバインダと共に練りあげて、孔を多数有するようにハニカム形に成型して焼成したものであり、上記孔の内部に上記排ガスと共にアンモニア(NH3)等の還元剤を流通させて、当該排ガス中の上記窒素酸化物と共に上記還元剤を当該孔の壁面に接触させることにより、当該窒素酸化物の分解除去を可能にしている。
【0003】
このような排ガス処理触媒においては、石炭の燃焼に伴って発生した灰分(フライアッシュ)が排ガスと共に前記孔内を流通すると、使用していくにしたがって、当該フライアッシュ中のカルシウム(Ca)等の成分が当該孔の内壁表面に次第に付着して(厚さ:数十μm)、当該触媒表面における前記窒素酸化物と前記還元剤との接触反応を阻害してしまうと共に、当該フライアッシュ自身が上記孔の内部に部分的に堆積して、当該孔内に排ガスを次第に流通させにくくしてしまい、最後には当該孔を完全に閉塞して目詰まりさせてしまい、脱硝性能の低下を引き起こしてしまっている。
【0004】
このため、所定期間使用された上記排ガス処理触媒においては、例えば、下記特許文献1に記載されているように、排ガス処理触媒の全重量に対して70〜95重量%の範囲で閾値サイズS(0.105〜1.0mmの範囲内の任意のある値)超の粗片を生じさせるように、排ガス処理触媒を粗粉砕して(粗粉砕工)、排ガス処理触媒の粗粉砕物を閾値サイズS超の粗片と閾値サイズS以下の細粉とに分離し(分離工程)、分離された粗片を平均粒径0.1mm以下の微粉体とするように微粉砕して(微粉砕工程)、微粉体を他の原料と混練りして排ガス処理触媒に成型加工した後(混練工程及び成型工程)、成型された原型を乾燥して焼成処理(500℃前後)することにより(乾燥工程及び焼成工程)、排ガス処理触媒を再生するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−226388号公報
【特許文献2】特開平9−108573号公報
【特許文献3】特開昭57−180433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に記載されている再生方法においては、特に問題を生じることがない排ガス処理触媒を多くの場合で得ることができるが、所定期間使用された上記排ガス処理触媒の被毒状態等によっては、脱硝性能を十分に回復できない場合が稀に発生することが判明した。
【0007】
そこで、脱硝性能を十分に回復できなかったものに対して、例えば、上記特許文献2等に記載されているように、0.1〜50μmの間に2つのピークを有する粒度分布をもつ脱硝性能を有する粒状成分をコートすることにより、当該コートを表面から徐々に摩耗できるようにして、十分な脱硝性能を長期(約15000時間程度)にわたって常に発現できるようにすることが考えられるものの、近年、さらなる長期間(約2〜3万時間)にわたって連続して使用できることが強く求められていることから、ニーズに対して満足できる対応が難しくなってしまう。
【0008】
このようなことから、本発明は、一旦粉砕した後に再び成型して焼成すると共に表面を被覆して再生する場合であっても、長期間(約2〜3万時間)にわたって連続して使用できる排ガス処理触媒の再生方法及びこの方法を使用した排ガス処理触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための、第一番目の発明に係る排ガス処理触媒の再生方法は、表面に灰分が付着した排ガス処理触媒の再生方法であって、使用済みの前記排ガス処理触媒を粗粉砕する使用済み触媒粗粉砕工程と、粗粉砕された前記排ガス処理触媒を閾値サイズS超の粗片と当該閾値サイズS以下の細粉とに分離する分離工程と、分離された前記粗片を微粉体とするように微粉砕する使用済み触媒微粉砕工程と、微粉砕された前記微粉体を原料として排ガス処理触媒に成型加工する成型工程と、成型された上記排ガス処理触媒の原型を焼成処理する原型焼成工程と、新規の前記排ガス処理触媒を粉砕する新規触媒粉砕工程と、粉砕された新規の前記排ガス処理触媒をスラリー液化させるスラリー化工程と、前記原型焼成工程で焼成されて得られた基体の表面に前記スラリー液を被覆するスラリー被覆工程と、前記スラリー液を被覆された前記基体を、粉砕された新規の前記排ガス処理触媒の製造時の焼成温度よりも高い温度で焼成処理する被覆焼成工程とを行うことを特徴とする。ただし、前記閾値サイズSは、0.105mm以上のある値である。
【0010】
第二番目の発明に係る排ガス処理触媒の再生方法は、第一番目の発明において、前記被覆焼成工程が、粉砕された新規の前記排ガス処理触媒の製造時の焼成温度よりも25℃以上の高い温度で焼成処理する工程であることを特徴とする。
【0011】
第三番目の発明に係る排ガス処理触媒の再生方法は、第二番目の発明において、前記被覆焼成工程が、700℃以下の温度で焼成処理する工程であることを特徴とする。
【0012】
第四番目の発明に係る排ガス処理触媒の再生方法は、第一番目から第三番目の発明のいずれかにおいて、粉砕されてスラリー液化された新規の前記排ガス処理触媒の平均粒径が3〜8μmであることを特徴とする。
【0013】
第五番目の発明に係る排ガス処理触媒の再生方法は、第一番目から第四番目の発明のいずれかにおいて、前記排ガス処理触媒が、酸化チタンを主原料とするものであることを特徴とする。
【0014】
第六番目の発明に係る排ガス処理触媒の再生方法は、第五番目の発明において、前記排ガス処理触媒が、燃焼した石炭からの排ガスを処理するものであることを特徴とする。
【0015】
第七番目の発明に係る排ガス処理触媒の再生方法は、第六番目の発明において、前記排ガス処理触媒が、前記排ガス中の窒素酸化物を処理するものであることを特徴とする。
【0016】
第八番目の発明に係る排ガス処理触媒の再生方法は、第一番目から第七番目の発明のいずれかにおいて、前記使用済み触媒粗粉砕工程が、使用済みの前記排ガス処理触媒の全重量に対して70〜95重量%の範囲で前記閾値サイズS超の前記粗片を生じさせるように、使用済みの当該排ガス処理触媒を粗粉砕する工程であることを特徴とする。
【0017】
第九番目の発明に係る排ガス処理触媒の再生方法は、第八番目の発明において、前記閾値サイズSが、1.0mm以下の値であることを特徴とする。
【0018】
第十番目の発明に係る排ガス処理触媒の再生方法は、第一番目から第九番目の発明のいずれかにおいて、前記使用済み触媒微粉砕工程が、前記微粉体の平均粒径を0.1mm以下とするように、前記粗片を微粉砕する工程であることを特徴とする。
【0019】
また、前述した課題を解決するための、第十一番目の発明に係る排ガス処理触媒は、第一番目から第十番目の発明のいずれかの排ガス処理触媒の再生方法により再生されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る排ガス処理触媒の再生方法によれば、粉砕された新規の排ガス処理触媒のスラリー液を基体の表面に被覆して、粉砕された新規の排ガス処理触媒を製造するときよりも高い温度で焼成することにより、再生された排ガス処理触媒の表面の焼結度合を確実に進行させることができる。このため、本発明に係る排ガス処理触媒によれば、表面が高強度を発現するようになり、十分な脱硝性能を維持しながら十分な耐摩耗性を発現することができるようになるので、長期間(約2〜3万時間)にわたって連続して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る排ガス処理触媒の再生方法の主な実施形態で用いた排ガス処理触媒の概略構成図である。
【図2】本発明に係る排ガス処理触媒の再生方法の主な実施形態の手順を表すフロー図である。
【図3】本発明に係る排ガス処理触媒の再生方法の試験例2における焼成温度差と摩耗率との関係を求めたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る排ガス処理触媒の再生方法及びこの方法を使用した排ガス処理触媒を図面に基づいて以下に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態のみに限定されるものではない。
【0023】
[主な実施形態]
本発明に係る排ガス処理触媒の再生方法及びこの方法を使用した排ガス処理触媒の主な実施形態を図1,2に基づいて説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る排ガス処理触媒10は、酸化チタン(TiO2)を主成分として、さらに、酸化タングステン(WO3)や酸化バナジウム(V25)等をバインダと共に練りあげて、多数の孔10aを有するようにハニカム形に成型して焼成(500℃前後)したものである。
【0025】
このような排ガス処理触媒10は、石炭焚きボイラ等のような石炭を燃焼させる機器からの排ガスの排出ラインに配設され、上記孔10aの内部に上記排ガスと共にアンモニア(NH3)等の還元剤を流通させて、当該排ガス中の上記窒素酸化物(NOx)と共に上記還元剤を当該孔10aの壁面に接触させることにより、当該窒素酸化物の分解除去が可能となっている。
【0026】
上記排ガス処理触媒10においては、石炭の燃焼に伴って発生した灰分(フライアッシュ)が排ガスと共に前記孔10a内を流通すると、使用していくにしたがって、当該フライアッシュ中のカルシウム(Ca)等の成分が当該孔10aの内壁表面に次第に付着して(厚さ:数μm〜数十μm)、当該孔10aの表面における前記窒素酸化物と前記還元剤との接触反応を阻害してしまうと共に、当該フライアッシュ自身が上記孔10aの内部に部分的に堆積して、当該孔内に排ガスを次第に流通させにくくしてしまい、最後には当該孔を完全に閉塞して目詰まりさせてしまい、脱硝性能の低下を引き起こしてしまうようになるため、所定期間使用後に排ガスラインから取り出されて、再生処理設備へ搬送される。
【0027】
そして、再生処理設備に搬入された使用済みの排ガス処理触媒11は、水等の洗浄液による洗浄処理工程を施されることなく、クラッシャ等の粗粉砕機に投入され、全重量に対して70〜95重量%の範囲で閾値サイズS(0.105mm〜1.0mmの範囲内の任意のある値)超の粗片12を生じるように、粗粉砕される(図2中、使用済み触媒粗粉砕工程S1)。
【0028】
粗粉砕された上記排ガス処理触媒11の粗粉砕物は、メッシュサイズが上記閾値サイズSの篩上に供給され、当該閾値サイズS超の粗片12と当該閾値サイズS以下の細粉13とに分離される(図2中、分離工程S2)。
【0029】
上記篩のメッシュを通過した上記細粉13は、廃棄処理される。他方、上記篩のメッシュ上に残った粗片12は、ハンマーミル等の微粉砕機に投入され、平均粒径が0.1mm(好ましくは70μm)以下の微粉体となるように、微粉砕される(図2中、使用済み触媒微粉砕工程S3)。
【0030】
そして、上記微粉体は、バインダ及び水等の他の配合物と共にニーダ等の混練機に原料として供給されて均一に混練りされる(図2中、混練工程S4)。この混練物は、押出成型機に供給されてハニカム状に成型加工される(図2中、成型工程S5)。この成型された原型を自然乾燥してから熱風(100℃)等により乾燥した後(図2中、原型乾燥工程S6)、焼成炉内で焼成(500℃前後)することにより(図2中、原型焼成工程S7)、再生された排ガス処理触媒の基体14となる。
【0031】
他方、前記排ガス処理触媒10と同様な新規の排ガス処理触媒15を用意して、これをクラッシャ等の粗粉砕機に投入して粗粉砕し(図2中、新規触媒粉砕工程S8)、得られた新規の上記排ガス処理触媒15の粗粉砕物を水と共にボールミルに投入することにより、さらに粉砕しながら(平均粒子径=約3〜8μm程度)スラリー液化させる(図2中、スラリー化工程S9)。
【0032】
次に、得られた上記スラリー液16中に上記基体14を浸漬して当該基体14の表面を当該スラリー液16で被覆して(図2中、スラリー被覆工程S10)、熱風(100℃)等により乾燥した後(図2中、被覆乾燥工程S11)、焼成炉内に入れて、前記排ガス処理触媒15の製造時の焼成温度(500℃前後)よりも高い温度(525〜700℃)で焼成することにより(図2中、被覆焼成工程S12)、再生された排ガス処理触媒17となる。
【0033】
つまり、本実施形態においては、粉砕された新規の排ガス処理触媒15のスラリー液16を基体14の表面に被覆して、当該排ガス処理触媒15を製造するときよりも高い温度で焼成することにより、表面の焼結度合を確実に進行させた排ガス処理触媒17を得るようにしたのである。
【0034】
したがって、本実施形態によれば、一旦粉砕した後に再び成型して焼成すると共に表面を被覆して再生する場合であっても、排ガス処理触媒17の表面が高強度を発現するようになり、排ガス処理触媒17が十分な脱硝性能を維持しながら十分な耐摩耗性を発現することができるようになるので、長期間(約2〜3万時間)にわたって連続して使用することができる。
【0035】
なお、粉砕して前記基体14に被覆した前記排ガス処理触媒15を新規に製造したときの焼成温度に対する、前記被覆焼成工程S12の焼成温度の差が、25℃以上であると、表面の焼結度合をより確実に進行させることができるので、非常に好ましい。他方、前記被覆焼成工程S12の焼成温度が700℃を超えると、主原料の酸化チタン(TiO2)がアナターゼ型からルチル型への結晶構造の変化を生じて、排ガス処理触媒17が収縮して脱硝性能の低下を引き起こすおそれを生じてしまい、好ましくない。
【0036】
また、粉砕されてスラリー液化された新規の前記排ガス処理触媒15の平均粒径が3〜8μmであると、耐摩耗性を最も向上させることができるので、非常に好ましい。
【0037】
また、上記使用済み触媒粗粉砕工程S1においては、上述したように、使用済みの排ガス処理触媒11の全重量に対して70〜95重量%の範囲で上記粗片12を生じさせるように粗粉砕すると好ましい。なぜなら、粗粉砕により生じる上記粗片12が、使用済みの排ガス処理触媒11の全重量に対して70重量%未満であると、フライアッシュ等と共に廃棄処分してしまう排ガス処理触媒量が多過ぎて再生効率の低下を招いてしまい、再生コストが高くついてしまう一方、粗粉砕により生じる上記粗片12が、使用済みの排ガス処理触媒11の全重量に対して95重量%を超えると、前記基体14の内部に取り込まれてしまうフライアッシュ等の混在量が多くなってしまうおそれがあるからである。
【0038】
[他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、ハニカム形に成型した排ガス処理触媒10の場合について説明したが、本発明はこれに限らず、他の実施形態として、例えば、ペレット形やパイプ形等に成型した排ガス処理触媒の場合であっても、前述した実施形態の場合と同様にして適用することが可能である。
【0039】
また、前述した実施形態においては、石炭焚きボイラ等のような石炭を燃焼させる機器からの排ガスの排出ラインに配設される排ガス処理触媒10の場合について説明したが、本発明はこれに限らず、排ガス中の灰分が表面に付着や堆積してしまう排ガス処理触媒の場合であれば、前述した実施形態の場合と同様にして適用することが可能である。
【実施例】
【0040】
本発明に係る排ガス処理触媒の再生方法及びこの方法を使用した排ガス処理触媒の効果を確認するために行った確認試験を以下に説明するが、本発明は以下に説明する確認試験のみに限定されるものではない。
【0041】
[試験例1]
〈試験体の作製〉
《試験体A》
石炭焚きボイラの排ガスラインで約70000時間使用されたハニカム形(縦=150mm,横=150mm,長さ=800mm,壁の厚さ=1.15mm,ピッチ(隣り合う壁の中心同士の間の長さ)=7.4mm,目数(n)=20×20)の脱硝用の排ガス処理触媒A(TiO2=77.3%,WO3=9.00%,V25=0.55%,その他=13.15%)をクラッシャで粗粉砕して粗粉砕物aを得る。
【0042】
次に、上記粗粉砕物aを篩(メッシュサイズ(日本工業規格(JIS)で規定された呼び寸法)=0.5mm)で篩い分けし、篩上に残った粗片をハンマーミルで微粉砕(平均粒径=約20μm)し、得られた微粉体(15kg)と有機バインダ(0.7kg)とガラス繊維(1.5kg(直径=11μm,長さ=3mm))と水(適量)とをニーダで混練りして均一に混合し、得られた混練物を押出成形機に供給してハニカム形(縦=69mm,横=69mm,長さ=800mm,目ピッチ=7.4mm、目開き=6.25mm,目数(n)=9×9)の排ガス処理触媒の原型を作製し、この原型を充分に自然乾燥させてから熱風乾燥(100℃×5時間)して、焼成炉で焼成処理(500℃×3時間)することにより、再生した排ガス処理触媒(基体)の試験体Aを得た。
【0043】
《試験体B》
石炭焚きボイラの排ガスラインで約65000時間使用されたハニカム形(縦=150mm,横=150mm,長さ=800mm,壁の厚さ=1.15mm,ピッチ(隣り合う壁の中心同士の間の長さ)=7.4mm,目数(n)=20×20)の脱硝用の排ガス処理触媒B(TiO2=77.3%,WO3=9.00%,V25=0.55%,その他=13.15%)をクラッシャで粗粉砕して粗粉砕物bを得る。
【0044】
次に、上記粗粉砕物bを上記試験体Aの上記粗粉砕物aと同様に処理することにより、再生した排ガス処理触媒(基体)の試験体Bを得た。
【0045】
《試験体C》
石炭焚きボイラの排ガスラインで約60000時間使用されたハニカム形(縦=150mm,横=150mm,長さ=800mm,壁の厚さ=1.15mm,ピッチ(隣り合う壁の中心同士の間の長さ)=7.4mm,目数(n)=20×20)の脱硝用の排ガス処理触媒C(TiO2=77.3%,WO3=9.00%,V25=0.55%,その他=13.15%)をクラッシャで粗粉砕して粗粉砕物cを得る。
【0046】
次に、上記粗粉砕物cを上記試験体Aの上記粗粉砕物aと同様に処理することにより、再生した排ガス処理触媒(基体)の試験体Cを得た。
【0047】
〈試験方法〉
《脱硝率》
上記試験体A〜Cからそれぞれ切断した(目数(n)=6×7,長さ=800mm)1本のみを反応器に充填し、下記に示す条件で脱硝率をそれぞれ求めた。なお、比較のため、新規の排ガス処理触媒(比較体)の脱硝率を併せて求めた。
【0048】
*試験条件
・排ガス組成−NOx:150ppm
NH3:150ppm
SO2:800ppm
2:4%
CO2:12.5%
2O:11.5%
2:バランス
・排ガス温度:380℃
・排ガス量:19.56Nm3/hr
・Ugs:2.3Nm/sec
・AV:23.26Nm3/m2・hr
【0049】
・脱硝率(%)={1−(触媒出口NOx濃度/触媒入口NOx濃度)}×100
【0050】
〈試験結果〉
上記試験体A〜C及び上記比較体の試験結果を下記の表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
上記表1からわかるように、上述した条件で使用された排ガス処理触媒A〜Cを原料に用いた試験体A〜Cにおいては、比較体(新規品)よりも脱硝率が約3〜6%程度低下してしまった。この理由は定かではないが、被毒成分を比較的多く含有した石炭を使用してしまったことにより、触媒成分が比較的多く被毒してしまったためと考えられる。
【0053】
[試験例2]
〈試験体の作製〉
《スラリー液α》
石炭焚きボイラで使用されるハニカム形の脱硝用の新規の排ガス処理触媒(TiO2=77.3%,WO3=9.00%,V25=0.55%,その他=13.15%,焼成温度=500℃)をクラッシャで粗粉砕し、この粗粉砕物(1.5kg)と水(5リットル)とをアルミナボール(直径25mmと15mmとをそれぞれ2.1kgずつ)と共にボールミル(容積7.2リットル)に入れて粉砕(平均粒径4.94μm)した後、濃度を調整(21%)することにより、スラリー液αを作製した。
【0054】
《試験体A11〜A16》
次に、前記試験例1で得られた前記試験体Aを上記スラリー液α中にそれぞれ浸漬して、当該試験体Aの表面を当該スラリー液αでそれぞれ被覆した後、熱風乾燥(100℃×5時間)して、焼成炉において各種温度(500℃,550℃,600℃,650℃,700℃,750℃)で焼成処理(5時間)することにより、表面を被覆した排ガス処理触媒(外表面積当たりのコート量:100g/m2)の試験体A11〜A16をそれぞれ作製した。
【0055】
〈試験方法〉
《脱硝率》
前記試験例1の場合と同様にして上記試験体A11〜A16の脱硝率をそれぞれ求めた。
【0056】
《摩耗率》
上記試験体A11〜A16を縦型の反応器に1本充填し、硅砂(平均粒子径=50μm)を含ませたガス(含有濃度=300g/m3)を下記に示す条件で上方から下方へ向けて流通させることにより、摩耗率をそれぞれ求めた。ただし、上記試験体Aとして、目数(n)を6×6,長さを100mmとしたものを使用した。なお、比較のため、新規の排ガス処理触媒(比較体)の摩耗率も併せて求めた。
【0057】
*試験条件
・温度:20℃
・圧力:大気圧
・流速(触媒断面当り):10m/sec
・流通時間:1時間
【0058】
・摩耗率(%)={(W0−W)/W0}×100
ただし、W0は試験前の触媒重量、Wは試験後の触媒重量である。
【0059】
〈試験結果〉
上記脱硝率及び上記摩耗率の試験結果を下記の表2に示すと共に、粉砕してスラリー液化させた上記排ガス処理触媒の新規製造時の焼成温度に対する焼成温度差と摩耗率との関係を求めたグラフを図3に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
上記表2からわかるように、試験体A16は、焼成温度が高過ぎて(750℃)、主原料の酸化チタン(TiO2)がアナターゼ型からルチル型への結晶構造の変化を生じることにより、焼結度合が進み過ぎて収縮してしまい、触媒としての機能を発現できる状態ではなかった。
【0062】
他方、試験体A11〜A15(被覆焼成温度=500〜700℃)は、脱硝率において十分な性能を発現できることが確認された。
【0063】
そして、図3の記載からわかるように、試験体A12〜A15(焼成温度差≧25℃)は、摩耗率において十分な性能(1%以下/2〜3万時間にわたる連続使用が可能)を発現できることが確認された。
【0064】
[試験例3]
〈試験体の作製〉
《スラリー液α1〜α5》
前記試験例2のスラリー液αと同様にして、下記の表3に示す平均粒径を有するスラリー液α1〜α5を作製した。
【0065】
《試験体A21〜A25》
次に、前記試験例1で得られた前記試験体Aを上記スラリー液α1〜α5中にそれぞれ浸漬して、当該試験体Aの表面を当該スラリー液α1〜α5でそれぞれ被覆した後、熱風乾燥(100℃×5時間)して、焼成炉において焼成処理(550℃×5時間)することにより、表面を被覆した排ガス処理触媒(外表面積当たりのコート量:100g/m2)の試験体A21〜A25をそれぞれ作製した。
【0066】
〈試験方法〉
《脱硝率》
前記試験例1の場合と同様にして上記試験体A21〜A25の脱硝率をそれぞれ求めた。
【0067】
《摩耗率》
前記試験例2の場合と同様にして上記試験体A21〜A25の摩耗率をそれぞれ求めた。
【0068】
〈試験結果〉
上記脱硝率及び上記摩耗率の試験結果を下記の表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
上記表3からわかるように、平均粒径3〜8μmのスラリー液α2〜α4を使用した試験体A22〜A24は、十分な摩耗性能(1%以下/2〜3万時間にわたる連続使用が可能)を発現できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る排ガス処理触媒の再生方法及びこの方法を使用した排ガス処理触媒は、各種産業において極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 排ガス処理触媒
10a 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に灰分が付着した排ガス処理触媒の再生方法であって、
使用済みの前記排ガス処理触媒を粗粉砕する使用済み触媒粗粉砕工程と、
粗粉砕された前記排ガス処理触媒を閾値サイズS超の粗片と当該閾値サイズS以下の細粉とに分離する分離工程と、
分離された前記粗片を微粉体とするように微粉砕する使用済み触媒微粉砕工程と、
微粉砕された前記微粉体を原料として排ガス処理触媒に成型加工する成型工程と、
成型された上記排ガス処理触媒の原型を焼成処理する原型焼成工程と、
新規の前記排ガス処理触媒を粉砕する新規触媒粉砕工程と、
粉砕された新規の前記排ガス処理触媒をスラリー液化させるスラリー化工程と、
前記原型焼成工程で焼成されて得られた基体の表面に前記スラリー液を被覆するスラリー被覆工程と、
前記スラリー液を被覆された前記基体を、粉砕された新規の前記排ガス処理触媒の製造時の焼成温度よりも高い温度で焼成処理する被覆焼成工程と
を行うことを特徴とする排ガス処理触媒の再生方法。
ただし、前記閾値サイズSは、0.105mm以上のある値である。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス処理触媒の再生方法において、
前記被覆焼成工程が、粉砕された新規の前記排ガス処理触媒の製造時の焼成温度よりも25℃以上の高い温度で焼成処理する工程である
ことを特徴とする排ガス処理触媒の再生方法。
【請求項3】
請求項2に記載の排ガス処理触媒の再生方法において、
前記被覆焼成工程が、700℃以下の温度で焼成処理する工程である
ことを特徴とする排ガス処理触媒の再生方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の排ガス処理触媒の再生方法において、
粉砕されてスラリー液化された新規の前記排ガス処理触媒の平均粒径が3〜8μmである
ことを特徴とする排ガス処理触媒の再生方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の排ガス処理触媒の再生方法において、
前記排ガス処理触媒が、酸化チタンを主原料とするものである
ことを特徴とする排ガス処理触媒の再生方法。
【請求項6】
請求項5に記載の排ガス処理触媒の再生方法において、
前記排ガス処理触媒が、燃焼した石炭からの排ガスを処理するものである
ことを特徴とする排ガス処理触媒の再生方法。
【請求項7】
請求項6に記載の排ガス処理触媒の再生方法において、
前記排ガス処理触媒が、前記排ガス中の窒素酸化物を処理するものである
ことを特徴とする排ガス処理触媒の再生方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の排ガス処理触媒の再生方法において、
前記使用済み触媒粗粉砕工程が、使用済みの前記排ガス処理触媒の全重量に対して70〜95重量%の範囲で前記閾値サイズS超の前記粗片を生じさせるように、使用済みの当該排ガス処理触媒を粗粉砕する工程である
ことを特徴とする排ガス処理触媒の再生方法。
【請求項9】
請求項8に記載の排ガス処理触媒の再生方法において、
前記閾値サイズSが、1.0mm以下の値である
ことを特徴とする排ガス処理触媒の再生方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の排ガス処理触媒の再生方法において、
前記使用済み触媒微粉砕工程が、前記微粉体の平均粒径を0.1mm以下とするように、前記粗片を微粉砕する工程である
ことを特徴とする排ガス処理触媒の再生方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の排ガス処理触媒の再生方法により再生されたものである
ことを特徴とする排ガス処理触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−251245(P2011−251245A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126513(P2010−126513)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】